説明

乳酸菌発酵によるカゼイン由来ペプチドの製造方法

【課題】脳機能の低下に起因する症状又は疾患を予防し、さらに改善効果を示すような医薬品又は食品への適用に優れたより安全な化合物を、簡便かつ効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】配列番号1〜4又は16のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドの製造方法であって、少なくとも1種の乳酸菌及び/又はその処理物を用いて獣乳又は乳タンパク質を発酵させ、得られる発酵乳から該ペプチドを採取することを特徴とするペプチドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌発酵によるカゼイン由来ペプチドの製造方法に関する。また本発明は、該ペプチドを含む組成物又は機能性食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脳機能の低下に起因する症状及び疾患には、うつ病、統合失調症、せん妄、認知症(脳血管性認知症、アルツハイマー病等)などがある。現代社会の高齢化に伴って、特に認知症患者の増加は大きな社会問題となってきている。認知症の症状は人によって様々であるが、共通して見られる症状としては、記憶障害、見当識障害、判断力・思考力の低下などが挙げられる。認知症の中で患者数の多いのは脳血管性認知症とアルツハイマー病である。例えば、脳血管性認知症は、脳血流障害により大脳皮質や海馬の神経細胞が損傷されるために認知・記憶障害が現れる。そのため、脳血管障害を生じる可能性のある高血圧、糖尿病、高コレステロール血症などの基礎疾患を治療することに加え、脳血流を改善する薬物や脳神経細胞を保護する薬物が適用される。一方、アルツハイマー病は、原因が未だはっきりと解明されていないが、その患者には脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンのレベルの低下が認められることから、コリン作動性神経の機能低下が原因の一つであると考えられている(例えば、非特許文献1参照)。そのため、アルツハイマー病においては、アセチルコリンの濃度を高めてコリン作動性神経の機能低下を防ぐことを目的とする治療方法が主流となっている。
【0003】
現在、アルツハイマー病の治療薬として、例えば塩酸ドネペジル等のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤が市販されている。しかし、塩酸ドネペジル等のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤は肝臓毒性や強い副作用を有するため長期間服用できず、また高価であるという問題があった。
【0004】
また、ペプチドに関して健忘改善効果を示した報告として、例えばXPLPR(XはL、I、M、F又はWである)が300mg/kgの側脳室内投与又は経口投与によりスコポラミン誘発健忘に対する改善効果を示すことが報告されており、そのメカニズムの一つとして脳内C3aレセプターによるアセチルコリンの放出が示唆されている(特許文献1)。スコポラミンはムスカリン受容体拮抗薬としてコリン作動性神経の機能低下を引き起こすとされており、脳機能障害誘発剤として働くため、アルツハイマー病治療薬開発の際のモデル動物作製に用いられている。このスコポラミンの作用による脳機能障害の予防及び/又は改善作用については、例えばY字迷路試験、八方向迷路試験、受動的回避試験などの行動薬理試験により効果を実証することができる。また、正常動物を用いた同様の行動薬理試験によって、脳機能の改善及び/又は強化の効果を実証することができる。しかし、何れのペプチドも、作用を示すために大量の経口投与、若しくは腹腔内投与、脳室内投与等の投与をする必要があり、経口摂取可能な物質として十分な効果を示すものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3898389号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Science, 217, 408-414(1982)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高齢化社会の進行に伴い、脳機能の低下に起因する症状又は疾患を予防し、さらに改善効果を示すような医薬品及び食品への適用に優れたより安全な化合物の開発がますます強く要望されている。またそのような化合物を簡便かつ効率的に製造する方法も求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、乳タンパク質カゼインに由来するペプチドが脳機能改善作用を有することを見出している。本発明者は今回、かかるカゼイン由来ペプチドが乳酸菌発酵により簡便かつ効率的に製造できることを見出した。従って、乳酸菌発酵を利用して、特定のカゼイン由来ペプチドを製造し、また脳機能改善作用を有するペプチド及び組成物を製造することができるという知見を得、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は以下を包含する。
[1]配列番号1〜4又は16のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドの製造方法であって、少なくとも1種の乳酸菌及び/又はその処理物を用いて獣乳又は乳タンパク質を発酵させ、得られる発酵乳から該ペプチドを採取することを特徴とするペプチドの製造方法。
[2]乳酸菌が、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ビフィドバクテリウム属、エンテロコッカス属、ロイコノストック属、ラクトコッカス属、ペディオコッカス属、及びワイセラ属からなる群より選択される属に属する少なくとも1種の細菌である、[1]に記載の方法。
[3]乳酸菌が、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・デルブルッキ サブスピーシーズ ブルガリカス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガリナーラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・プランタラム、及びラクトバチルス・ジョンソニーからなる群より選択される少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]乳酸菌が、ストレプトコッカス・サーモフィルスである、[1]又は[2]に記載の方法。
[5]乳酸菌が、ラクトバチルス・ヘルベティカスCM4株(受託番号 FERM BP-6060)である、[1]又は[2]に記載の方法。
[6]発酵開始から3〜96時間後にペプチドを採取する、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]少なくとも1種の乳酸菌及び/又はその処理物を用いて獣乳又は乳タンパク質を発酵させ、得られる発酵乳又はそれから採取された配列番号1〜4又は16のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを製剤化することを特徴とする、配列番号1〜4又は16のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含有する組成物の製造方法。
[8]配列番号1〜4若しくは16のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含むことを特徴とする組成物。
[9]少なくとも1種の乳酸菌及び/又はその処理物を用いて獣乳又は乳タンパク質を発酵させて得られ、配列番号1〜4若しくは16のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含むことを特徴とする発酵乳組成物。
[10]0.1μg/ml以上の前記ペプチドを含む、[9]に記載の組成物。
[11][8]〜[10]のいずれかに記載の組成物を配合した飲食品。
[12][8]〜[10]のいずれかに記載の組成物を配合したサプリメント。
[13]少なくとも1種の乳酸菌及び/又はその処理物を用いて獣乳又は乳タンパク質を発酵させ、得られる発酵乳又はそれから採取された配列番号1〜4又は16のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを飲食品に配合することを特徴とする、機能性飲食品の製造方法。
[14]配列番号1〜4又は16のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを生成するための少なくとも1種の乳酸菌又はその処理物の使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、カゼイン由来ペプチドの製造方法が提供される。かかるカゼイン由来ペプチドは、主に脳機能改善作用を有するものであり、本発明に係る製造方法によりそのような機能性ペプチドを簡便かつ効率的に製造することができる。また本発明により、該ペプチドを含む組成物又は機能性食品の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】Lactobacillus helveticus CM4株を用いた発酵乳中のペプチド量の経時変化を示すグラフである。
【図2】配列番号1のペプチドのスコポラミン誘発健忘予防効果を示すグラフである。**は水投与対照群に対してP<0.01であることを示す。#はスコポラミン対照群に対してP<0.05、##はスコポラミン対照群に対してP<0.01であることを示す。
【図3】配列番号1、2、7又は8のペプチドのスコポラミン誘発健忘予防効果を示すグラフである。**は水投与対照群に対してP<0.01であることを示す。##はスコポラミン対照群に対してP<0.01であることを示す。
【図4】配列番号1又は10のペプチドのスコポラミン誘発健忘予防効果を示すグラフである。**は水投与対照群に対してP<0.01であることを示す。#はスコポラミン対照群に対してP<0.05であることを示す。
【図5】配列番号1のペプチドの記憶力増強効果を示すグラフである。*は水投与対照群に対してP<0.05であることを示す。
【図6】配列番号11のペプチドのスコポラミン誘発健忘予防効果を示すグラフである。**は水投与対照群に対してP<0.01であることを示す。#はスコポラミン対照群に対してP<0.05であることを示す。
【図7】配列番号12〜15のペプチドのスコポラミン誘発健忘予防効果を示すグラフである。**は水投与対照群に対してP<0.01であることを示す。#はスコポラミン対照群に対してP<0.05、†はスコポラミン対照群に対してP<0.1であることを示す。
【図8】配列番号3のペプチドのスコポラミン誘発健忘予防効果を示すグラフである。**は水投与対照群に対してP<0.01であることを示す。##はスコポラミン対照群に対してP<0.01、†はスコポラミン対照群に対してP<0.1であることを示す。
【図9】配列番号3、4、16又は17のペプチドのスコポラミン誘発健忘予防効果を示すグラフである。**は水投与対照群に対してP<0.01であることを示す。##はスコポラミン対照群に対してP<0.01、†はスコポラミン対照群に対してP<0.1であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者は、以下のようなアミノ酸配列を有するカゼイン由来ペプチドが脳機能改善作用を有することを見出している(後述する実施例4〜11参照):
Xaa-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Xaa(配列番号5)
〔式中、1位のXaaは存在しないか、又はIle若しくはAsn-Ileを表し、19位のXaaは存在しないか、又はVal-Metを表す〕。
Xaa-Met-His-Gln-Pro-His-Gln-Pro-Leu-Pro-Pro-Thr-Val-Met-Phe-Pro-Pro-Gln-Ser-Val-Leu(配列番号6)
〔式中、1位のXaaは存在しないか、又はSer-Trp若しくはLeu-Gln-Ser-Trpを表す〕。
【0013】
配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとして、特に配列番号1又は2に示されるアミノ酸配列からなるペプチドが好ましい:
Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(配列番号1)
Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met(配列番号2)。
【0014】
また配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとして、特に配列番号3、4又は16に示されるアミノ酸配列からなるペプチドが好ましい:
Ser-Trp-Met-His-Gln-Pro-His-Gln-Pro-Leu-Pro-Pro-Thr-Val-Met-Phe-Pro-Pro-Gln-Ser-Val-Leu(配列番号3)
Leu-Gln-Ser-Trp-Met-His-Gln-Pro-His-Gln-Pro-Leu-Pro-Pro-Thr-Val-Met-Phe-Pro-Pro-Gln-Ser-Val-Leu(配列番号4)
Met-His-Gln-Pro-His-Gln-Pro-Leu-Pro-Pro-Thr-Val-Met-Phe-Pro-Pro-Gln-Ser-Val-Leu(配列番号16)。
【0015】
本発明は、配列番号5又は6(特に配列番号1〜4又は16)に示されるアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるペプチドを乳酸菌発酵により製造する方法に関する。但し、本発明において製造するペプチドは、目的の作用、例えば脳機能改善作用を有する限り、配列番号5又は6に示されるアミノ酸配列に1若しくは数個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドであってもよい。また、ペプチドの塩であってもよい。本発明においては、配列番号5又は6に関連する脳機能改善作用又はその他の有用な機能を有するペプチドをまとめて「機能性ペプチド」という。なお、本発明との関連において、アミノ酸の三文字表記及び一文字表記並びにペプチドの表記は当業者によく知られた一般的規則に従うものとする。
【0016】
なお、機能の1つである脳機能改善作用は、例えばY字型迷路を用いた、アルツハイマー病治療薬の評価系に準じた系を用いて確認することができる。具体的には、ラット又はマウスにスコポラミンのようなムスカリン受容体拮抗薬を用いることでコリン作動性神経の機能低下を起こし、脳機能障害を引き起こすことで健忘症を誘発する薬剤と被験ペプチドを同時に投与し、又はそのような薬剤の投与に先立って被験ペプチドを投与し、Y字型迷路を用いた試験において異なるアームへの自発的交替行動変化率や迷路への総進入回数を指標として被験ペプチドの健忘予防作用を確認することができる。あるいは、脳機能改善作用は、例えばラット又はマウスを用いた新奇物体認識試験を行うことで確認することができる。具体的には、被験ペプチドを投与し、実験箱を用いた試験において2つの物体を記憶させる訓練試行を行った後、時間の経過により記憶の除去を行い、2つの物体の内の1つの物体を新奇なものに交換した場合に、交換した物体を覚えていれば、新奇な物体への探索時間が増加することを指標として被験ペプチドの記憶力増強作用を確認することができる。
本発明では、上述のような機能性ペプチドを、獣乳又は乳タンパク質を発酵乳酸菌又はその処理物で発酵することにより生成する。
【0017】
本発明において使用する乳酸菌とは、発酵によって糖類から乳酸を産生する細菌であり、例えばラクトバチルス(Lactobacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、ワイセラ(Weissella)属などに属する細菌が含まれる。本発明においては、乳酸菌又はその処理物が発酵によって機能性ペプチドを生成することができるのであれば、当技術分野で公知の乳酸菌株を使用することができる。なお、上記の機能性ペプチドのうち少なくとも1種を生成することができる乳酸菌であればよく、全ての機能性ペプチドを生成するものである必要はない。
【0018】
乳酸菌のより具体的な種としては、ラクトバチルス属に属する細菌として、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・デルブルッキ サブスピーシーズ ブルガリカス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガリナーラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・プランタラム、及びラクトバチルス・ジョンソニーなどがある。
【0019】
また乳酸菌の具体的な別の種としては、ストレプトコッカス属に属する細菌として、ストレプトコッカス・サーモフィルスが挙げられる。ビフィドバクテリウム属に属する細菌としては、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・カテニュラータム、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュラータム、及びビフィドバクテリウム・マグナムが挙げられる。エンテロコッカス属に属する細菌としては、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・ヒラエ、及びエンテロコッカス・フェシウムが挙げられる。ロイコノストック属に属する細菌としては、ロイコノストック・メセンテロイデス、及びロイコノストック・ラクティスが挙げられる。ラクトコッカス属に属する細菌としては、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトコッカス・プランタラム、及びラクトコッカス・ラフィノラクティスが挙げられる。ペディオコッカス属に属する細菌としては、ペディオコッカス・ペントサセウス、及びペディオコッカス・ダムノサスが挙げられる。ワイセラ属に属する細菌としては、ワイセラ・チバリア、ワイセラ・コンフューザ、ワイセラ・ハロトレランス、ワイセラ・ヘレニカ、ワイセラ・カンドレリ、ワイセラ・キムチイ、ワイセラ・コレエンシス、ワイセラ・ミノール、ワイセラ・パラメセンテロイデス、ワイセラ・ソリ、ワイセラ・タイランデンシス、及びワイセラ・ビリデスセンスが挙げられる。
【0020】
使用する乳酸菌又はその処理物が機能性ペプチドを生成する能力を有するか否かは、当技術分野で公知の方法により、例えば後述する実施例に記載のように判定することができる。簡単に説明すると、まず乳酸菌又はその処理物を、乳タンパク質(例えば獣乳)を基質として25〜42℃、好ましくは28〜37℃において、5〜50時間発酵させ、得られる乳タンパク質発酵乳中に含まれる機能性ペプチドの量を測定することにより、判定することができる。
【0021】
従って、本発明においては、上述したような方法により乳酸菌又はその処理物が機能性ペプチドの生成能を有すると評価された乳酸菌であれば、任意の乳酸菌を用いることができる。好ましい乳酸菌としては、ラクトバチルス・ヘルベティカスCM4株(受託番号 FERM BP-6060)が挙げられる。この乳酸菌は、後述する実施例において機能性ペプチドの生成能が確認されたものであり、複数種の機能性ペプチドを多く生成し、好ましい菌株である。なお、ラクトバチルス・ヘルベティカスCM4株(受託番号 FERM BP-6060)は、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 つくばセンター中央第6)から入手することができる。さらに後述する実施例においては、参考のため数種の乳酸菌(ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属)が機能性ペプチドの生成能を有することを確認しており、上記菌株に限定されるものではない。
【0022】
また本発明においては、上述した具体的な菌株の変異株も、機能性ペプチドの生成能を有する限り使用することができる。例えば、ラクトバチルス・ヘルベティカスCM4株(受託番号 FERM BP-6060)の変異株は、機能性ペプチドの生成能を有している蓋然性が高く、そのような変異株も本発明において使用することができる。
【0023】
本発明において、「変異株」とは、親株から得られた任意の株を意味する。具体的には、親株から自然突然変異や化学的若しくは物理的変異原による誘発変異によって人工的に突然変異の頻度を高める方法、又は特異的な突然変異誘発技術(例えば、遺伝子組換え)により得られる株を意味する。こうした方法により生じた微生物個体を、選別、分離を繰り返し、有用な微生物個体を育種することにより、目的の性質を有する変異株を得ることができる。
【0024】
例えば、ラクトバチルス・ヘルベティカスCM4株(受託番号FERM BP-6060)に由来する変異株は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法による乳酸菌のゲノムDNAの増幅断片の分子量分布により、他の乳酸菌株と容易に識別することができる。簡単に説明すると、目的とする乳酸菌について、DNA試料を調製し、特徴的な配列(例えば16S rDNA塩基配列)を有するプライマーを用いたPCR法により遺伝子増幅を行い、得られた断片の電気泳動パターンを分析することにより、ラクトバチルス・ヘルベティカスCM4株(受託番号 FERM BP-6060)に由来する変異株であるか否かを判定することができる。ただし、変異株であるか否かを確認する方法はこの方法に限定されるものではなく、菌学的性質などの当技術分野で公知の手法により変異株であるかどうかを確認することができる。例えばラクトバチルス・ヘルベティカスCM4株を親株として得られる変異株として、ラクトバチルス・ヘルベティカスCP3232株(FERM BP-11271)が知られており、本発明に従って用いることができる。なお、ラクトバチルス・ヘルベティカスCP3232株は、本出願人により、特許微生物の寄託のためのブダペスト条約に基づく国際寄託当局である独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に、平成22年8月4日付でFERM BP-11271として寄託されている。
【0025】
このような変異株又はその処理物が機能性ペプチドの生成能を有するか否かを判定することによって、本発明において使用することができる菌株を取得することができる。
【0026】
乳酸菌は、乳酸菌の培養に通常用いられる培地を使用して、適当な条件下で培養することにより調製することができる。培養に用いる培地は、炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、乳酸菌の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよく、当業者であれば使用する菌株に適切な公知の培地を適宜選ぶことができる。炭素源としてはラクトース、グルコース、ガラクトース、廃糖蜜などを使用することができ、窒素源としてはカゼインの加水分解物、ホエータンパク質加水分解物、大豆タンパク質加水分解物等の有機窒素含有物を使用することができる。また無機塩類としては、リン酸塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどを用いることができる。乳酸菌の培養に適した培地としては、例えばMRS液体培地、GAM培地、BL培地、Briggs Liver Broth、獣乳、脱脂乳、乳性ホエーなどが挙げられる。好ましくは、滅菌した脱脂粉乳を含む乳培地を使用する。
【0027】
また乳酸菌の培養は、20℃から50℃、好ましくは25℃から42℃、より好ましくは28℃から37℃において、嫌気条件下で行う。温度条件は、恒温槽、マントルヒーター、ジャケットなどにより調整することができる。また、嫌気条件下とは、乳酸菌が増殖可能な程度の低酸素環境下のことであり、例えば嫌気チャンバー、嫌気ボックス又は脱酸素剤を入れた密閉容器若しくは袋などを使用することにより、あるいは単に培養容器を密閉することにより、嫌気条件とすることができる。培養の形式は、静置培養、振とう培養、タンク培養などである。また、培養時間は3時間から96時間とすることができる。培養開始時の培地のpHは4.0〜8.0に維持することが好ましい。
【0028】
乳酸菌の具体的な調製例を簡単に説明する。例えばラクトバチルス・ヘルベティカスCM4株(受託番号 FERM BP-6060)を用いる場合には、滅菌した乳培地(9.0%(w/w)還元脱脂粉乳を含む乳培地など)に乳酸菌を約3〜5%の割合で植菌し、28〜37℃で一晩(約18〜28時間)かけて培養を行う。この培養操作を繰り返し行うことが好ましい。
【0029】
培養後、得られる培養物をそのまま発酵に使用してもよいし、さらに必要に応じて遠心分離などによる粗精製及び/又は濾過等による固液分離や滅菌操作を行ってもよい。
【0030】
また、目的とする性質を有する限り、乳酸菌に処理を行って得られる乳酸菌の処理物を用いてもよいし、また乳酸菌の処理物にさらなる処理を行ってもよい。そのような処理の例を以下に記載する。
【0031】
乳酸菌の菌体及び/又は処理物を用いて生乳、脱脂乳又は豆乳を発酵することにより、発酵乳を調製することができる。例えば、乳酸菌又は他の処理を行った乳酸菌を、生乳、脱脂乳又は豆乳などに接種し、当技術分野で公知の乳酸菌発酵条件(上述した乳酸菌培養の条件とほぼ同じである)にて発酵を行う。得られる発酵乳は、そのまま使用してもよいし、又は濾過、滅菌、希釈、濃縮などの他の処理を行ってもよい。
【0032】
乳酸菌の菌体及び/又は処理物を適当な溶媒に懸濁又は希釈することによって、懸濁物又は希釈物として調製することができる。使用することができる溶媒としては、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などが挙げられる。
【0033】
乳酸菌の菌体及び/又は処理物を滅菌処理によって、滅菌処理物として調製することができる。乳酸菌の菌体及び/又は処理物を滅菌処理するには、例えば、濾過滅菌、放射性殺菌、過熱式殺菌、加圧式殺菌などの公知の滅菌処理を行うことができる。
【0034】
また、乳酸菌の菌体及び/又は処理物を加熱処理することにより、加熱処理物として調製することができる。加熱処理物を調製するには、乳酸菌の菌体及び/又は処理物を、一定時間、例えば約10分〜1時間(例えば約10〜20分)にわたり、高温処理(例えば80〜150℃)する。
【0035】
乳酸菌の菌体及び/又は処理物を破砕、細砕又は磨砕することによって、破砕物、無細胞抽出物を調製することができる。例えばそのような破砕は、物理的破砕(撹拌、フィルター濾過など)、酵素溶解処理、薬品処理又は自己溶解処理などによって行うことができる。
【0036】
乳酸菌の菌体及び/又は処理物を、適当な水性溶媒又は有機溶媒を用いて抽出することによって、抽出物を得ることができる。抽出方法としては、水性溶媒又は有機溶媒を抽出溶媒として用いる抽出方法であれば特に制限されないが、上記の乳酸菌又は乳酸菌に他の処理を行った処理物を、水性又は有機溶媒(例えば水、メタノール、エタノールなど)中に浸漬、攪拌又は還流する方法など公知の方法を挙げることができる。
【0037】
また、乳酸菌の菌体及び/又は処理物を乾燥して粉状物(粉末)又は粒状物とすることができる。具体的な乾燥方法としては、特に制限されないが、例えば、噴霧乾燥、ドラム乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などが挙げられ、これらを単独で又は組み合わせて採用できる。その際、必要に応じて通常用いられる賦形剤を添加してもよい。
【0038】
なお、本発明において使用する乳酸菌は、湿潤菌体であっても又は乾燥菌体であってもよい。
【0039】
上述した処理は、単一の処理を行ってもよいし、あるいは複数を適宜組み合わせて行ってもよい。本発明においては、このような処理物も乳酸菌と同様に用いることができる。
【0040】
上記で得られた乳酸菌及び/又は処理物は、単独で又は他の成分と共に、獣乳又は乳タンパク質から機能性ペプチドの生成のための組成物として用いることができる。すなわち本発明は、少なくとも1種の乳酸菌又はその処理物を含有する、機能性ペプチドを生成するための組成物を提供する。本発明の組成物は、獣乳又は乳タンパク質を発酵させることにより機能性ペプチドを生成することができるものである。本発明の組成物は、有効成分として上述した乳酸菌及び/又は処理物を含むものであるが、1種の乳酸菌及び/又は処理物を含んでもよいし、複数の異なる乳酸菌及び/又は処理物、さらには異なる処理を行った複数の乳酸菌処理物を組み合わせて含んでもよい。なお、本発明の組成物には乳酸菌の菌体が1×107個/ml以上含まれることが好ましい。
【0041】
また本発明の組成物には、有効成分である乳酸菌に加えて、目的とする作用を阻害しない限り、当技術分野で公知の添加剤及び賦形剤を単独又は複数組み合わせて添加してもよい。また、本発明の組成物は、乳酸菌の発酵を促進するような添加物(例えばグルタミン酸や、グルコースなどの糖)を含んでもよい。本発明の組成物の形態は特に制限されないが、懸濁液、顆粒、粉末、カプセルなどとすることができる。本発明の組成物中の有効成分(乳酸菌)の含有量は、その形態により異なるが、乳酸菌の量として、通常は、0.0001〜99質量%、好ましくは0.001〜80質量%、より好ましくは0.001〜75質量%の範囲である。また、本発明の組成物に含まれる乳酸菌は、約107個/g〜約1012個/gである。
【0042】
上記の乳酸菌又はその処理物を用いて、獣乳又は乳タンパク質を発酵することにより、機能性ペプチドを高濃度で含む発酵乳(発酵乳組成物)が得られる。また、上記の乳酸菌又はその処理物を用いて、獣乳又は乳タンパク質を発酵し、その発酵乳から機能性ペプチドを単離することができる。
【0043】
発酵は、獣乳又は乳タンパク質に少なくとも1種の乳酸菌又はその処理物を添加し、適当な条件下で培養することにより行うことができる。獣乳としては、牛乳、山羊乳、馬乳などの哺乳動物由来の乳汁、又はこれらの脱脂乳、還元乳、コンデンスミルクなどの加工乳を用いることができ、1種の乳汁を使用してもよいし、複数種の乳汁や加工乳を組み合わせて使用してもよい。乳の固形分濃度は特に限定されないが、例えば、脱脂乳を用いる場合の無脂乳固形分濃度は、3〜15質量%程度、好ましくは6〜15質量%である。獣乳は、発酵の前に殺菌処理を行ってもよい。獣乳には、乳酸菌の発酵を促進するような添加物(例えばグルタミン酸や、グルコースなどの糖)を加えてもよい。あるいは、獣乳から乳タンパク質成分を単離し、そのような乳タンパク質成分を基質として発酵を行うことも可能である。乳タンパク質成分には、例えばカゼインタンパク質が含まれる。
【0044】
獣乳に添加する乳酸菌は、前培養を行った乳酸菌をスターターとして用いることが好ましい。また添加する乳酸菌量は、限定されるものではないが、通常乾燥乳酸菌体換算で0.005〜10質量%であり、好ましくは0.05〜5質量%である。使用する乳酸菌は、乳酸菌培養物のままであってもよいし、その処理物であってもよい。すなわち培養した乳酸菌を濾過や遠心分離により培地から分離したものであってもよいし、培地から分離後に凍結又は凍結乾燥して保存しておいたものであってもよい。
【0045】
発酵の条件は、上述した乳酸菌の培養条件とほぼ同じであり、20℃から50℃、好ましくは25℃から42℃、より好ましくは28℃から37℃において、嫌気条件下で行う。温度条件は、恒温槽、マントルヒーター、ジャケットなどにより調整することができる。発酵処理は、静置培養、振とう培養、タンク培養などの形式により行うことができる。また、発酵時間は、3〜96時間、好ましくは12〜36時間とすることができる。なお、後述する実施例において、32℃においては発酵開始から8〜48時間、特に10〜16時間において機能性ペプチドが多く生成されることが確認された。また37℃においては発酵開始から6〜48時間、特に7〜16時間において機能性ペプチドが多く生成されることが確認された。そのため、発酵時間は32℃においては8〜48時間、特に10〜16時間とすることが好ましく、37℃においては6〜48時間、特に7〜16時間とすることが好ましい。また発酵槽のpH及び酸度を測定しながら発酵を行うことが好ましく、pHは4.0〜8.0に維持することが好ましい。
【0046】
上述のようにして発酵乳を得ることができる。なお、本発明において「発酵乳(組成物)」とは、発酵物全体又は発酵上清のいずれをも意味するものであり、発酵に使用した乳酸菌菌体又は菌体の破砕物、基質である獣乳又は乳タンパク質、その他の成分が含まれていてもよい。得られた発酵乳中に機能性ペプチドが含まれるか否かは、当技術分野で公知の技法、例えば高速液体クロマトグラフィー、質量分析法等、又はそれらの技法の組み合わせにより確認することができる。
【0047】
得られる発酵乳組成物には機能性ペプチドが含まれるが、その濃度は0.1μg/ml以上、好ましくは0.5μg/ml以上、より好ましくは1μg/ml以上、さらに好ましくは4μg/ml以上、特に5μg/ml〜50μg/ml若しくはそれ以上である。なお、発酵乳組成物が複数種の機能性ペプチドを含む場合には、それぞれの機能性ペプチドの濃度は異なるものであってよい。例えば、本発明の発酵乳組成物は、配列番号1からなるペプチドを4μg/ml以上含み、及び/又は配列番号3からなるペプチドを1μg/ml以上含む。
【0048】
上述のようにして得られる発酵乳組成物は、所望の機能性ペプチドを含む限り、発酵乳に処理を行ってもよいし、また発酵乳の処理物にさらなる処理を行ってもよい。そのような処理の例を以下に記載する。
【0049】
発酵乳及び/又は発酵乳処理物を適当な溶媒に懸濁又は希釈することによって、懸濁物又は希釈物として調製することができる。使用することができる溶媒としては、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などが挙げられる。
【0050】
発酵乳及び/又は発酵乳処理物を滅菌処理することによって、滅菌処理物として調製することができる。発酵乳及び/又は発酵乳処理物を滅菌処理するには、例えば、濾過滅菌、放射性殺菌、過熱式殺菌、加圧式殺菌などの公知の滅菌処理を行うことができる。
【0051】
発酵乳及び/又は発酵乳処理物を加熱処理することにより、加熱処理物として調製することができる。加熱処理物を調製するには、一定時間、例えば約10分〜1時間(例えば約10〜20分)にわたり、高温処理(例えば80〜150℃)する。
【0052】
また、発酵乳及び/又は発酵乳処理物を濾過又は遠心分離することにより、その上清(ホエー)を調製することができる。
【0053】
さらに発酵乳及び/又は発酵乳処理物を乾燥して粉状物(粉末)又は粒状物とすることができる。具体的な乾燥方法としては、特に制限されないが、例えば、噴霧乾燥、ドラム乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などが挙げられ、これらを単独で又は組み合わせて採用できる。その際、必要に応じて通常用いられる賦形剤を添加してもよい。
【0054】
上述した処理は、単一の処理を行ってもよいし、あるいは複数を適宜組み合わせて行ってもよい。本発明では、このような発酵乳処理物も「発酵乳(組成物)」に包含される。
【0055】
上述のようにして得られる発酵乳組成物は、少なくとも1種の機能性ペプチドを含むものであるが、複数種の機能性ペプチドを組み合わせて含んでもよい。
【0056】
また、得られる発酵乳又はその処理物から、公知の分離・精製法を用いて、機能性ペプチド又はそれを含む画分を精製することができる。タンパク質又はペプチドの単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、機能性ペプチドを単離・精製することができる。さらに、単離した機能性ペプチドを当技術分野で公知の方法により、例えば後述する製剤化手法により、組成物として調製してもよい。
【0057】
上述のようにして得られた発酵乳組成物又は機能性ペプチド若しくはその組成物は、その機能性ペプチドの性質を利用した用途に用いることができる。例えば配列番号5又は6に示されるアミノ酸配列からなるペプチドは、脳機能改善作用を有するため、発酵乳組成物又は機能性ペプチド若しくはその組成物は、脳機能を改善することで、健忘を予防し、記憶能力を増強させることができる。また、発酵乳組成物又は機能性ペプチド若しくはその組成物は、脳機能の低下に起因する症状及び疾患であるうつ病、統合失調症、せん妄、認知症(脳血管性認知症、アルツハイマー病など)などの治療又は予防に使用することができる。
【0058】
また上述のように得られる発酵乳組成物又は機能性ペプチド若しくはその組成物には、目的とする作用を阻害しない限り、後述する添加剤、脳機能改善作用を有する他の公知の成分などを単独又は複数組み合わせて添加してもよい。従って、発酵乳組成物又は機能性ペプチド若しくはその組成物を当技術分野で公知の方法により製剤化することができる。
【0059】
上記組成物の形態は特に制限されないが、例えば、発酵後に得られる発酵乳のままの懸濁液の形態、並びに当技術分野で公知の手法により処理して得られる錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、シロップ剤、ドライシロップ剤などの形態とすることができる。組成物は、経口的に投与又は摂取することが容易な形態とするのが好ましい。なお、懸濁液などの液体は、投与又は摂取直前に水又は他の適当な媒体に懸濁する形であってもよく、また錠剤、顆粒剤の場合には周知の方法でその表面をコーティングしてもよい。
【0060】
上述した形態の組成物は、発酵により得られる発酵乳又は機能性ペプチドに、通常用いられる賦形剤、崩壊剤、結合剤、湿潤剤、安定剤、緩衝剤、滑沢剤、保存剤、界面活性剤、甘味料、矯味剤、芳香剤、酸味料、着色剤などの添加剤を配合し、常法に従って製造することができる。例えば、発酵乳又は機能性ペプチドを医薬又は健康増進目的で使用する場合には、薬学的に許容される担体又は添加剤を配合することができる。そのような薬学的に許容される担体及び添加物の例として、水、薬学的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、水溶性デキストリン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などが挙げられる。
【0061】
さらに、組成物には、医薬、飲食品、飼料の製造に用いられる種々の添加剤やその他種々の物質を共存させてもよい。このような物質や添加剤としては、各種油脂(例えば、大豆油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油などの植物油、牛脂、イワシ油などの動物油脂)、生薬(例えばロイヤルゼリー、人参など)、アミノ酸(例えばグルタミン、システイン、ロイシン、アルギニンなど)、多価アルコール(例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、糖アルコール、例としてソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトールなど)、天然高分子(例えばアラビアガム、寒天、水溶性コーンファイバー、ゼラチン、キサンタンガム、カゼイン、グルテン又はグルテン加水分解物、レシチン、澱粉、デキストリンなど)、ビタミン(例えばビタミンC、ビタミンB群など)、ミネラル(例えばカルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄など)、食物繊維(例えばマンナン、ペクチン、ヘミセルロースなど)、界面活性剤(例えばグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、精製水、賦形剤(例えばブドウ糖、コーンスターチ、乳糖、デキストリンなど)、安定剤、pH調製剤、酸化防止剤、甘味料、呈味成分、酸味料、着色料及び香料などが挙げられる。
【0062】
また、組成物には、上記有効成分以外の機能性成分、医薬成分又は添加剤として、例えば以下のような成分を配合することができる:
食品成分:
イチョウ葉エキス、アラキドン酸(ARA)、ギャバ(GABA)、テアニン、セラミド、カフェイン、カルニチン、α‐グリセリルホスホリルコリン(α-GPC)、バコパモニエラ、DHA結合リン脂質、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルコリン、セントジョーンズワート、アスタキサンチン、ナイアシン、ピロロキノリンキノン(PQQ)、コエンザイムQ10(CoQ10)、不飽和脂肪酸(ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等)、ポリフェノール類(レスベラトロール、クロロゲン酸、カテキン等);
医薬品:
認知症治療薬:アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、タクリン等)、NMDA受容体拮抗薬(メマンチン等);
抗不安薬:ベンゾジアゼピン系抗不安薬;
抗うつ薬:選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)再取り込み阻害薬(SNRI)、三環系抗うつ薬(TCA)、四環系抗うつ薬、トリアゾロピリジン系抗うつ薬(SARI)、モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬)、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)、ノルエピネフリン・ドパミン再取り込み阻害薬(NDRI)等;
抗精神病薬;
睡眠薬。
【0063】
これらの機能性成分、医薬成分又は添加剤の配合量は、その種類と所望すべき摂取量に応じて適宜決められる。
なお、製造される組成物を投与する又は摂取させる対象は、脊椎動物、具体的には、哺乳動物、例えばヒト、霊長類(サル、チンパンジーなど)、家畜動物(ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、トリなど)、ペット用動物(イヌ、ネコなど)、実験動物(マウス、ラットなど)、さらには爬虫類及び鳥類である。特に、機能性ペプチドの摂取が望まれる対象、例えば脳機能の低下に起因する症状及び疾患の治療が必要なヒトなどが対象として好ましい。組成物の投与又は摂取量は、対象の年齢及び体重、投与・摂取経路、投与・摂取回数、投与目的などにより異なり、目的とする作用を達成できるように当業者の裁量によって広範囲に変更することができる。組成物に含まれる機能性ペプチドの含有割合は特に限定されず、製造の容易性や好ましい一日投与量等に合わせて適宜調節すればよい。1日当たりの摂取量は、1回で摂取してもよいが、数回に分けて摂取してもよい。また、その投与又は摂取の頻度も、特に限定されず、投与・摂取経路、対象の年齢及び体重、目的とする効果の種々の条件に応じて適宜選択することが可能である。組成物の投与・摂取経路は特に限定されないが、経口投与又は経口摂取することが好ましい。例えば、飲食品又は飼料中に配合して、あるいは錠剤や顆粒剤などとして、経口的に投与又は摂取することが可能である。
【0064】
また製造される組成物は、他の医薬、治療又は予防法等と併用してもよい。このような他の医薬は、組成物と共に一製剤を成していてもよいし、また、別々の製剤であって同時に又は間隔を空けて投与してもよい。
【0065】
また本発明により製造される発酵乳組成物又は機能性ペプチド若しくはその組成物は、安全性が高く長期間の継続的摂取が容易であるため、飲食品及び飼料にも使用できる。発酵乳組成物又は機能性ペプチド若しくはその組成物を種々の飲食品に添加又は配合して継続的に摂取することにより様々な効果が期待される。
【0066】
従って、本発明では、上述のように製造された発酵乳組成物又は機能性ペプチド若しくはその組成物を飲食品に配合することにより機能性飲食品を製造する。本発明において、飲食品には飲料及びサプリメントも包含される。本発明の飲食品には、機能性ペプチドにより健康増進を図る健康飲食品、機能性飲食品、特定保健用飲食品、サプリメント(栄養補助食品、健康補助食品、栄養補助剤)などの他、全ての飲食品が含まれる。
【0067】
飲食品の具体例としては、経管経腸栄養剤などの流動食、錠菓、錠剤、チュアブル錠、錠剤、粉剤、散剤、カプセル剤、顆粒剤及びドリンク剤などの製剤形態の健康飲食品及び栄養補助飲食品;緑茶、ウーロン茶及び紅茶などの茶飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、野菜飲料、果汁飲料、醗酵野菜飲料、醗酵果汁飲料、発酵乳飲料、発酵乳(ドリンクヨーグルト、固形ヨーグルト)、発酵乳飲料(殺菌)、乳酸菌飲料、濃縮タイプ飲料、濃縮固形物、乳飲料(コーヒー牛乳など)、粉末飲料、ココア飲料、牛乳並びに精製水などの飲料;バター、ジャム、ふりかけ及びマーガリンなどのスプレッド類;マヨネーズ、ショートニング、カスタードクリーム、ドレッシング類、パン類、米飯類、麺類、パスタ、味噌汁、豆腐、ヨーグルト、スープ又はソース類、菓子(例えば、ビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)などが挙げられる。
【0068】
本発明において、飲食品は、発酵乳組成物又は機能性ペプチドのほかに、その飲食品の製造に用いられる他の食品素材、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、食物繊維、種々の添加剤(例えば呈味成分、甘味料、有機酸などの酸味料、安定剤、フレーバー)などを配合して、常法に従って製造することができる。飲食品中の発酵乳又は機能性ペプチドの配合量は、飲食品の形態や求められる食味又は食感を考慮して、当業者が適宜定めることができる。
【0069】
飲食品は、当業者が利用可能である任意の適切な方法によって製造することができる。例えば、発酵乳又は機能性ペプチドを、液体状、ゲル状、固体状、粉末状又は顆粒状に調製した後、それを飲食品に配合することができる。あるいは発酵乳又は機能性ペプチドを、飲食品の原料中に直接混合又は溶解してもよい。発酵乳又は機能性ペプチドは、飲食品に塗布、被覆、浸透又は吹き付けてもよい。発酵乳又は機能性ペプチドは、飲食品中に均一に分散させてもよいし、偏在させてもよい。発酵乳又は機能性ペプチドを入れたカプセルなどを調剤してもよい。発酵乳又は機能性ペプチドを、可食フィルムや食用コーティング剤などで包み込んでもよい。また発酵乳又は機能性ペプチドに適切な賦形剤等を加えた後、錠剤などの形状に成形してもよい。飲食品はさらに加工してもよく、そのような加工品の製造方法も本発明の範囲に包含される。
【0070】
本発明の飲食品の製造方法においては、飲食品に慣用的に使用されるような各種添加物を使用してもよい。添加物としては、限定するものではないが、発色剤(亜硝酸ナトリウム等)、着色料(クチナシ色素、赤102等)、香料(オレンジ香料等)、甘味料(ステビア、アステルパーム等)、保存料(酢酸ナトリウム、ソルビン酸等)、乳化剤(コンドロイチン硫酸ナトリウム、プロピレングリコール脂肪酸エステル等)、酸化防止剤(EDTA二ナトリウム、ビタミンC等)、pH調整剤(クエン酸等)、化学調味料(イノシン酸ナトリウム等)、増粘剤(キサンタンガム等)、膨張剤(炭酸カルシウム等)、消泡剤(リン酸カルシウム)等、結着剤(ポリリン酸ナトリウム等)、栄養強化剤(カルシウム強化剤、ビタミンA等)、賦形剤(水溶性デキストリン等)等が挙げられる。さらに、オタネニンジンエキス、エゾウコギエキス、ユーカリエキス、杜仲茶エキス等の機能性素材をさらに添加してもよい。
【0071】
上述のようにして製造される飲食品は、機能性ペプチドに起因する種々の機能を有し、なおかつ安全性が高く副作用の心配がない。
【0072】
さらに発酵乳組成物又は機能性ペプチド若しくはその組成物は、ヒト用の飲食品のみならず、家畜(ウシ、ブタなど)、競走馬、ペット(イヌ、ネコなど)の動物の飼料にも配合することができる。飼料は、対象がヒト以外であることを除き飲食品とほぼ等しいことから、上記の飲食品に関する記載は、飼料についても同様に当てはめることができる。
【0073】
さらに本発明の製造方法により製造されたペプチドをベースとして、当技術分野において公知の方法を用いてさらに1若しくは数個のアミノ酸を欠失、置換又は付加することによって、配列番号5又は6に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを製造することも可能である。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例及び図面によりさらに具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0075】
[実施例1]
本実施例では、乳酸菌を用いて発酵乳を調製した。9.0%(w/w)還元脱脂粉乳を105℃で10分間オートクレーブして殺菌したものを乳培地として用いた。その後、調製した乳培地に乳酸菌を含む発酵乳を3%の割合で接種し、37℃で24時間培養を行い得られた発酵乳をスターターとして用いた。本培養は、乳培地にスターターを3%添加し、37℃で24時間発酵を行った。発酵の進みが悪いサンプルについては発酵時間を延長して48〜72時間とした。
【0076】
スターターとしてLactobacillus helveticus CM4株(受託番号 FERM BP-6060)を用い、また参考のためLactobacillus helveticus JCM1120株、Lactobacillus helveticus JCM1004株、Lactobacillus delbrueckii bulgaricus JCM1002株、Lactobacillus acidophilus JCM1132株、Lactobacillus casei JCM1134株、及びStreptococcus thermophilus JCM20026株も評価した。
【0077】
[実施例2]
本実施例では、発酵乳上清中のペプチド(配列番号1〜4)の含有量を測定した。具体的には、実施例1で得られた発酵乳100μlに、超純水600μl、アセトニトリル200μl、10%トリクロロ酢酸水溶液100μlを添加しよく混合させた。続いて、15,000rpmで10分間遠心して上清を回収し、さらに得られた溶液を20%アセトニトリル水溶液で初期濃度の50倍に希釈し、各ペプチドを高速液体クロマトグラフトリプル四重極型質量分析計(LC/MS/MS、Waters TQD)にて定量分析した。分離カラムに逆相のODSカラム、溶離液に0.1%ギ酸水溶液及び0.1%ギ酸含有アセトニトリルを用いてグラジエント分析により各成分を分離し、定量は合成ペプチドを標準物質として検量線を作成し、含有量を算出した。
各発酵乳上清中の各ペプチド(配列番号1〜4)の定量結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1の結果から、乳酸菌発酵によってペプチド(配列番号1〜4)が生成されることが示された。また、特にLactobacillus helveticus及びLactobacillus delbrueckii bulgaricusを使用することにより、これらのペプチドが高産生されることを見出した。さらに、発酵乳中のペプチドの濃度は0.1μg/ml〜約50μg/mlであることがわかった。
【0080】
[実施例3]
本実施例においては、発酵乳上清中のペプチド(配列番号1〜4)の発酵中の経時変化を調べた。具体的には、9.0%(w/w)還元脱脂粉乳を105℃で10分間オートクレーブして殺菌したものを乳培地として利用した。その後、調製した乳培地にLactobacillus helveticus CM4株(受託番号 FERM BP-6060)を含む発酵乳を3%の割合で接種し、37℃で24時間培養を行い得られた発酵乳をスターターとして用いた。本培養は、乳培地にスターターを3%添加し32℃又は37℃で発酵させ、1、2、4、8、12、16、24、48時間で経時的に回収した。その後、実施例2と同様の前処理を行い、各ペプチド(配列番号1、3、4)を高速液体クロマトグラフトリプル四重極型質量分析計(LC/MS/MS、Waters TQD)を用いて定量分析した。実施例2と同様に、分離カラムに逆相のODSカラム、溶離液に0.1%ギ酸水溶液及び0.1%ギ酸含有アセトニトリルを用いてグラジエント分析により各成分を分離し、定量は合成ペプチドを標準物質として検量線を作成し、含有量を算出した。
【0081】
また、比較のためLactobacillus helveticus発酵乳中に産生される生理活性ペプチドとして公知である血圧降下作用を有するトリペプチド(Val-Pro-Pro及びIle-Pro-Pro)についても同様に定量分析した。
各上清中のペプチドの定量結果を表2及び図1に示す。
【0082】
【表2】

【0083】
以上の結果より、これらのペプチドは、培養開始から3〜96時間において生成されることがわかった。具体的には、32℃においては発酵開始から8〜48時間、特に10〜16時間において機能性ペプチドが多く生成され、また37℃においては発酵開始から6〜48時間、特に7〜16時間において機能性ペプチドが多く生成された。すなわち、従来知られていた生理活性ペプチドよりも比較的短時間の発酵(8〜12時間程度)でより高産生されることがわかった。さらに、発酵乳中のペプチドの濃度は、培養開始から2時間において0.5μg/ml以上であり、培養開始から8時間(32℃)又は6時間(37℃)において1μg/ml以上又は場合によっては5μg/ml以上であった。
【0084】
[実施例4]
本実施例では、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(NIPPLTQTPVVVPPFLQPE:配列番号1)の健忘予防作用を示す。
【0085】
ddY系雄性マウス(約7週齢)を用い(n=15-75)、餌及び水は自由摂取させた。被験物質として、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(配列番号1)0.05nmol/kg体重(0.1μg/kg体重)、0.5nmol/kg体重(1μg/kg体重)、1.5nmol/kg体重(3μg/kg体重)、5nmol/kg体重(10μg/kg体重)、50nmol/kg体重(100μg/kg体重)、500nmol/kg体重(1000μg/kg体重)を用いた。被験物質は自発的交替行動を評価するY字迷路試験の実施60分前にマウスに単回経口投与した。また、Y字迷路試験の実施30分前には、マウスに脳機能障害(記憶障害及び/又は認知障害)を誘発するため、スコポラミンを1mg/kg体重となるよう背部に皮下投与した。Y字迷路試験では、一本のアームの長さが40cm、壁の高さが12cm、床の幅が3cm、上部の幅が10cmで3本のアームがそれぞれ120度の角度で接続されたY字迷路を実験装置として用いた。マウスをY字迷路のいずれかのアームの先端に置き、8分間にわたって迷路内を自由に探索させ、マウスが移動したアームを順に記録した。マウスが測定時間内に各アームに移動した回数をカウントし、これを総進入数とし、この中で連続して異なる三つのアームを選択した組み合わせ(例えば、3本のアームをそれぞれA、B、Cとした際に、進入したアームの順番がABCBACACBの場合は重複も含めて4とカウントする)を調べ、この数を自発的交替行動数とした。自発的交替行動数を総進入数から2を引いた数で割り、それに100を掛けて求めた値を自発的交替行動変化率とし、これを自発的交替行動の指標とした。本指標が高値である程、短期記憶が保持されていたことを示す。測定値は群毎に平均値±標準誤差で表した。対照群とスコポラミン対照群との有意差検定はスチューデント(Student)のt検定で行った。また、スコポラミン対照群とペプチド投与群との有意差検定は、一元配置分散分析後にダネット(Dunnett)型多重比較検定で行った。
【0086】
結果を図2に示す。NIPPLTQTPVVVPPFLQPE(配列番号1)は0.05nmol/kg体重〜500nmol/kg体重(0.1μg/kg体重〜1000μg/kg体重)の範囲で健忘予防作用を有することが示された。
【0087】
[実施例5]
本実施例では、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(NIPPLTQTPVVVPPFLQPE)関連ペプチドの健忘予防作用を示す。
【0088】
ddY系雄性マウス(約7週齢)を用い(n=15-45)、餌及び水は自由摂取させた。被験物質として、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(配列番号1)50nmol/kg体重(100μg/kg体重)、又はAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu-Val-Met(NIPPLTQTPVVVPPFLQPEVM:配列番号2)50nmol/kg体重(120μg/kg体重)、又はIle-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(IPPLTQTPVVVPPFLQPE:配列番号7)50nmol/kg体重(100μg/kg体重)、又はAsn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro(NIPPLTQTPVVVPPFLQP:配列番号8)50nmol/kg体重(100μg/kg体重)、又はThr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe(TQTPVVVPPF:配列番号9)50nmol/kg体重(50μg/kg体重)を用いた。実施例4と同様に自発的交替行動変化率を求め、これを自発的交替行動の指標とした。測定値は群毎に平均値±標準誤差で表した。対照群とスコポラミン対照群との有意差検定はスチューデント(Student)のt検定で行った。また、スコポラミン対照群と各ペプチド投与群との有意差検定は、一元配置分散分析後にダネット(Dunnett)型多重比較検定で行った。
【0089】
結果を図3に示す。NIPPLTQTPVVVPPFLQPE(配列番号1)は50nmol/kg体重(100μg/kg体重)、NIPPLTQTPVVVPPFLQPEVM(配列番号2)は50nmol/kg体重(120μg/kg体重)、IPPLTQTPVVVPPFLQPE(配列番号7)は50nmol/kg体重(100μg/kg体重)で健忘予防作用を有することが示された。NIPPLTQTPVVVPPFLQP(配列番号8)は50nmol/kg体重(100μg/kg体重)及びTQTPVVVPPF(配列番号9)は50nmol/kg体重(50μg/kg体重)については、スコポラミン対照群と比較して有意差が認められなかった。
【0090】
[実施例6]
本実施例では、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(NIPPLTQTPVVVPPFLQPE)関連ペプチドの健忘予防作用を示す。
【0091】
ddY系雄性マウス(約7週齢)を用い(n=14-15)、餌及び水は自由摂取させた。被験物質として、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(配列番号1)500nmol/kg体重(1000μg/kg体重)、又はPro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(PPLTQTPVVVPPFLQPE:配列番号10)500nmol/kg体重(1000μg/kg体重)を用いた。実施例4と同様に自発的交替行動変化率を求め、これを自発的交替行動の指標とした。測定値は群毎に平均値±標準誤差で表した。対照群とスコポラミン対照群との有意差検定はスチューデント(Student)のt検定で行った。また、スコポラミン対照群と各ペプチド投与群との有意差検定は、一元配置分散分析後にダネット(Dunnett)型多重比較検定で行った。
【0092】
結果を図4に示す。NIPPLTQTPVVVPPFLQPE(配列番号1)は500nmol/kg体重(1000μg/kg体重)、PPLTQTPVVVPPFLQPE(配列番号10)は500nmol/kg体重(1000μg/kg体重)で健忘予防作用を有することが示された。
【0093】
[実施例7]
本実施例では、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(NIPPLTQTPVVVPPFLQPE:配列番号1)の記憶力増強作用を示す。
【0094】
ddY系雄性マウス(約7週齢)を用い(n=14-15)、餌及び水は自由摂取させた。被験物質として、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(配列番号1)500nmol/kg体重(1000μg/kg体重)を用いた。被験物質は記憶保持を評価する新奇物体認識試験の実施60分前にマウスに単回経口投与した。新奇物体認識試験では、30×30×30 cmの箱を実験装置として用いた。馴化操作として、床敷きを敷いた実験装置内にマウスを5分間入れて自由に装置内を探索させた。馴化操作の翌日に訓練試行を実施した。訓練試行では実験装置内に3種類の物体のうち2個を選んで設置した(物体は床の中心線に沿って両サイドの壁からそれぞれ8 cmの位置に置き、その位置をX1及びX2とした)。なお、設置する物体の選択については、動物及び群間で偏りがないようにあらかじめランダムに選択した。被験物質又は水を経口投与した60分後にマウスを実験装置に5分間入れ、マウスが各物体に対して1 cm以内に接近して探索した時間(秒)を測定した。訓練試行の48時間後に保持試行を実施した。保持試行では訓練試行と同様に実験装置内に物体を2個設置するが、そのうち1個は訓練試行で使用したものとは異なる物体(新奇物体)に替え、その位置をYとした。(例として、訓練試行で物体AをX1に物体BをX2に設置した場合、保持試行では物体Aに替えて物体Cを新奇物体として設置し、その位置をYとした。)訓練試行及び保持試行について、マウスが各物体に対して1 cm以内に接近して探索した時間(秒)を測定した。(ただし、物体の上に乗っている状態を除く。)訓練試行及び保持試行について、それぞれ2個の物体に対して探索を行った時間の比率を求めた。各物体に対する探索時間の比率(%)は各群とも平均値±標準誤差で表した。有意差検定は、保持試行での新奇物体(Yに設置された物体)に対する探索時間の比率と、訓練試行で新奇物体が置かれていた場所に設置されていた物体(X1又はX2に設置された物体)に対する探索時間の比率について、対照群とペプチド群の間でスチューデント(Student)のt検定で行った。
【0095】
結果を図5に示す。NIPPLTQTPVVVPPFLQPE(配列番号1)は500nmol/kg体重(1000μg/kg体重)で記憶力増強作用を有することが示された。
【0096】
[実施例8]
本実施例では、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(NIPPLTQTPVVVPPFLQPE)関連ペプチドの健忘予防作用を示す。
【0097】
ddY系雄性マウス(約7週齢)を用い(n=27-40)、餌及び水は自由摂取させた。被験物質として、Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(TQTPVVVPPFLQPE:配列番号11)50nmol/kg体重(80μg/kg体重)を用いた。実施例4と同様に自発的交替行動変化率を求め、これを自発的交替行動の指標とした。測定値は群毎に平均値±標準誤差で表した。対照群とスコポラミン対照群との有意差検定はスチューデント(Student)のt検定で行った。また、スコポラミン対照群とペプチド投与群との有意差検定はスチューデント(Student)のt検定で行った。
【0098】
結果を図6に示す。TQTPVVVPPFLQPE(配列番号11)は50nmol/kg体重(80μg/kg体重)で健忘予防作用を有することが示された。
【0099】
[実施例9]
本実施例では、Asn-Ile-Pro-Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(NIPPLTQTPVVVPPFLQPE)関連ペプチドの健忘予防作用を示す。
【0100】
ddY系雄性マウス(約7週齢)を用い(n=11-40)、餌及び水は自由摂取させた。被験物質として、Pro-Leu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(PLTQTPVVVPPFLQPE:配列番号12)500nmol/kg体重(900μg/kg体重)、又はLeu-Thr-Gln-Thr-Pro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(LTQTPVVVPPFLQPE:配列番号13)500nmol/kg体重(850μg/kg体重)、又はPro-Val-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(PVVVPPFLQPE:配列番号14)500nmol/kg体重(630μg/kg体重)、又はVal-Val-Val-Pro-Pro-Phe-Leu-Gln-Pro-Glu(VVVPPFLQPE:配列番号15)500nmol/kg体重(580μg/kg体重)を用いた。実施例4と同様に自発的交替行動変化率を求め、これを自発的交替行動の指標とした。測定値は群毎に平均値±標準誤差で表した。対照群とスコポラミン対照群との有意差検定はスチューデント(Student)のt検定で行った。また、スコポラミン対照群と各ペプチド投与群との有意差検定はスチューデント(Student)のt検定で行った。
【0101】
結果を図7に示す。PLTQTPVVVPPFLQPE(配列番号12)は500nmol/kg体重(900μg/kg体重)、LTQTPVVVPPFLQPE(配列番号13)は500nmol/kg体重(850μg/kg)、PVVVPPFLQPE(配列番号14)は500nmol/kg体重(630μg/kg)、VVVPPFLQPE(配列番号15)は500nmol/kg体重(580μg/kg)で健忘予防作用を有することが示された。
【0102】
[実施例10]
本実施例では、Ser-Trp-Met-His-Gln-Pro-His-Gln-Pro-Leu-Pro-Pro-Thr-Val-Met-Phe-Pro-Pro-Gln-Ser-Val-Leu(SWMHQPHQPLPPTVMFPPQSVL:配列番号3)の健忘予防作用を示す。
【0103】
ddY系雄性マウス(約7週齢)を用い(n=15-30)、餌及び水は自由摂取させた。被験物質として、Ser-Trp-Met-His-Gln-Pro-His-Gln-Pro-Leu-Pro-Pro-Thr-Val-Met-Phe-Pro-Pro-Gln-Ser-Val-Leu(配列番号3)150nmol/kg体重(380μg/kg体重)、500nmol/kg体重(1280μg/kg体重)を用いた。実施例4と同様に自発的交替行動変化率を求め、これを自発的交替行動の指標とした。測定値は群毎に平均値±標準誤差で表した。対照群とスコポラミン対照群間の有意差検定はスチューデント(Student)のt検定で行った。また、スコポラミン対照群とペプチド投与群との有意差検定は、スチューデントのt検定で行った。
【0104】
結果を図8に示す。SWMHQPHQPLPPTVMFPPQSVL(配列番号3)は150nmol/kg体重〜500nmol/kg体重(380μg/kg体重〜1280μg/kg)の範囲で健忘予防作用を有することが示された。
【0105】
[実施例11]
本実施例では、Ser-Trp-Met-His-Gln-Pro-His-Gln-Pro-Leu-Pro-Pro-Thr-Val-Met-Phe-Pro-Pro-Gln-Ser-Val-Leu関連ペプチドの健忘予防作用を示す。
【0106】
ddY系雄性マウス(約7週齢)を用い(n=15-30)、餌及び水は自由摂取させた。被験物質として、Ser-Trp-Met-His-Gln-Pro-His-Gln-Pro-Leu-Pro-Pro-Thr-Val-Met-Phe-Pro-Pro-Gln-Ser-Val-Leu(配列番号3)500nmol/kg体重(1280μg/kg体重)、又はMet-His-Gln-Pro-His-Gln-Pro-Leu-Pro-Pro-Thr-Val-Met-Phe-Pro-Pro-Gln-Ser-Val-Leu(MHQPHQPLPPTVMFPPQSVL:配列番号16)500nmol/kg体重(1140μg/kg体重)、又はLeu-Gln-Ser-Trp-Met-His-Gln-Pro-His-Gln-Pro-Leu-Pro-Pro-Thr-Val-Met-Phe-Pro-Pro-Gln-Ser-Val-Leu(LQSWMHQPHQPLPPTVMFPPQSVL:配列番号4)500nmol/kg体重(1400μg/kg体重)、又はSer-Trp-Met-His-Gln-Pro-His-Gln-Pro-Leu-Pro-Pro-Thr-Val-Met-Phe-Pro-Pro-Gln(SWMHQPHQPLPPTVMFPPQ:配列番号17)500nmol/kg体重(1150μg/kg体重)を用いた。実施例4と同様に自発的交替行動変化率を求め、これを自発的交替行動の指標とした。測定値は群毎に平均値±標準誤差で表した。対照群とスコポラミン対照群間の有意差検定はスチューデント(Student)のt検定で行った。また、スコポラミン対照群と各ペプチド投与群との有意差検定はスチューデント(Student)のt検定で行った。
【0107】
結果を図9に示す。SWMHQPHQPLPPTVMFPPQSVL(配列番号3)500nmol/kg体重(1280μg/kg体重)、又はMHQPHQPLPPTVMFPPQSVL(配列番号16)500nmol/kg体重(1140μg/kg体重)、又はLQSWMHQPHQPLPPTVMFPPQSVL(配列番号4)500nmol/kg体重(1400μg/kg体重)で健忘予防作用を有することが示されたが、SWMHQPHQPLPPTVMFPPQ(配列番号17)500nmol/kg体重(1150μg/kg体重)は有意差を確認することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明により、カゼイン由来ペプチドの製造方法が提供される。かかるカゼイン由来ペプチドは、主に脳機能改善作用を有するものであり、本発明に係る製造方法によりそのような機能性ペプチドを簡便かつ効率的に製造することができる。また本発明により、該ペプチドを含む組成物又は機能性食品の製造方法が提供される。従って、本発明は、医薬、飲食品、健康増進などの分野において有用である。
【受託番号】
【0109】
受託番号FERM BP-6060(ラクトバチルス・ヘルベティカスCM4株、平成9年8月15日寄託)
受託番号FERM BP-11271(ラクトバチルス・ヘルベティカスCP3232株、平成22年8月4日寄託)
【配列表フリーテキスト】
【0110】
配列番号5〜8及び10〜17:人工タンパク質(機能性ペプチド)
配列番号9:人工タンパク質(合成ペプチド)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜4又は16のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドの製造方法であって、少なくとも1種の乳酸菌及び/又はその処理物を用いて獣乳又は乳タンパク質を発酵させ、得られる発酵乳から該ペプチドを採取することを特徴とするペプチドの製造方法。
【請求項2】
乳酸菌が、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ビフィドバクテリウム属、エンテロコッカス属、ロイコノストック属、ラクトコッカス属、ペディオコッカス属、及びワイセラ属からなる群より選択される属に属する少なくとも1種の細菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
乳酸菌が、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・デルブルッキ サブスピーシーズ ブルガリカス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガリナーラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・プランタラム、及びラクトバチルス・ジョンソニーからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
乳酸菌が、ストレプトコッカス・サーモフィルスである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
乳酸菌が、ラクトバチルス・ヘルベティカスCM4株(受託番号 FERM BP-6060)である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
発酵開始から3〜96時間後にペプチドを採取する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種の乳酸菌及び/又はその処理物を用いて獣乳又は乳タンパク質を発酵させ、得られる発酵乳又はそれから採取された配列番号1〜4又は16のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを製剤化することを特徴とする、配列番号1〜4又は16のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含有する組成物の製造方法。
【請求項8】
配列番号1〜4若しくは16のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含むことを特徴とする組成物。
【請求項9】
少なくとも1種の乳酸菌及び/又はその処理物を用いて獣乳又は乳タンパク質を発酵させて得られ、配列番号1〜4若しくは16のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含むことを特徴とする発酵乳組成物。
【請求項10】
0.1μg/ml以上の前記ペプチドを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の組成物を配合した飲食品。
【請求項12】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の組成物を配合したサプリメント。
【請求項13】
少なくとも1種の乳酸菌及び/又はその処理物を用いて獣乳又は乳タンパク質を発酵させ、得られる発酵乳又はそれから採取された配列番号1〜4又は16のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを飲食品に配合することを特徴とする、機能性飲食品の製造方法。
【請求項14】
配列番号1〜4又は16のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを生成するための少なくとも1種の乳酸菌又はその処理物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−5757(P2013−5757A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140737(P2011−140737)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000104353)カルピス株式会社 (35)
【Fターム(参考)】