説明

乳酸重合体及びその製造方法

【課題】生理活性物質を取り込んだマイクロカプセルからの生理活性物質の初期過剰放出を十分に抑制し、且つ長期に亘りその放出速度を安定に保ち得る徐放性製剤用基材として有用な乳酸重合体を提供すること。
【解決手段】高分子量の乳酸重合体を加水分解し、得られた加水分解生成物を含む溶液を、そこに含有される目的とする乳酸重合体が析出し得る条件下に置き、析出物を分離、取得することを特徴とする、重量平均分子量約5000以下の重合体含有量が約5重量%以下である、重量平均分子量15000〜50000の乳酸重合体の製造方法、重量平均分子量5000以下の重合体含有量が約5重量%以下である、重量平均分子量15000〜50000の乳酸重合体、当該乳酸重合体を含んで成る徐放性製剤用基材、及び当該乳酸重合体の徐放性製剤用基材としての用途。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製剤における基材として有用な生体内分解性ポリマーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
徐放性を有する生体内分解性ポリマーは、例えば生理活性物質を内包させるためのマイクロカプセル等の基材として有用である。この様な生体内分解性ポリマーとして、ポリ乳酸、乳酸とグリコール酸との共重合体を含むもの等(特開平11−269094号等)が有用であることが知られている。
【0003】
これら生体内分解性ポリマーは、従来の合成法によって作られたものがそのまま用いられていたが、合成されたものそのままでは末端カルボキシル基量が少ないために徐放性基材としての有用性に乏しいことが判ってきた。そこで、上記の如き生体内分解性ポリマーであって高分子量のものを加水分解処理し、重量平均分子量を適当なものとした後に徐放性製剤用基材として使用することが検討された。
【0004】
しかしながら、加水分解処理、水洗して得られたものは、適当な重量平均分子量と末端カルボキシル基量を有するものであっても、初期バーストを起こしやすく徐放性基材としては不適当なものであった。そのため、その改良が要望されている現状にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した如き状況に鑑みなされたもので、生理活性物質を取り込んだマイクロカプセルからの生理活性物質の初期過剰放出(初期バースト)を十分に抑制し、且つ長期に亘りその放出速度を安定に保ち得る徐放性製剤用基材として有用な乳酸重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記した如き状況に鑑み鋭意研究を行った結果、加水分解処理して得られた乳酸重合体、即ち生体内分解性ポリマー中から低分子量の乳酸重合体、特に重量平均分子量が5000以下のものの含量を低減させることにより、初期過剰放出を起こし難い、徐放性製剤用基材として良好なものが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、高分子量の乳酸重合体を加水分解し、得られた加水分解生成物を含む溶液を、そこに含有される目的とする乳酸重合体が析出し得る条件下に置き、析出物を分離、取得することを特徴とする、重量平均分子量約5000以下の重合体含有量が約5重量%以下である、重量平均分子量15000〜50000の乳酸重合体の製造方法、の発明である。
【0008】
また、本発明は、高分子量の乳酸重合体を加水分解し、得られた加水分解生成物を含む溶液を、そこに含有される目的とする乳酸重合体が析出し得る条件下に置き、析出物を分離することを特徴とする、乳酸重合体に含有する重量平均分子量約5000以下の重合体を除去する方法、の発明である。
【0009】
また、本発明は、重量平均分子量5000以下の重合体含有量が約5重量%以下である、重量平均分子量15000〜50000の乳酸重合体、の発明である。
【0010】
更にまた、本発明は、上記した如き乳酸重合体の徐放性製剤用基材としての用途及び上記した如き乳酸重合体を含んで成る徐放性製剤用基材、の発明である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の重量平均分子量5000以下の重合体含有量が約5重量%以下である乳酸重合体は、主に医薬品の徐放性製剤用基材として有用なものであり、これを用いて生理活性物質を包含するマイクロカプセル型徐放性製剤を製造した場合、マイクロカプセルからの生理活性物質の初期過剰放出を十分に抑制し、且つ長期に亘りその放出速度を安定に保ち得るという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の乳酸重合体は、乳酸のみから成る重合体、或いは乳酸とその他のモノマー(例えばグリコール酸等)との共重合体を含み、通常重量平均分子量5000以下の重合体含有量が約5重量%以下、好ましくは重量平均分子量5000以下の重合体含有量が約5重量%以下であり且つ重量平均分子量3000以下の重合体含有量が約1.5重量%以下、更に好ましくは重量平均分子量5000以下の重合体含有量が約5重量%以下、重量平均分子量3000以下の重合体含有量が約1.5重量%以下であり且つ重量平均分子量1000以下の重合体含有量が約0.1重量%以下のものである。
【0013】
また、本発明の乳酸重合体の重量平均分子量は通常15000〜50000、好ましくは15000〜30000、より好ましくは20000〜25000である。
【0014】
本発明の乳酸重合体の原料となる高分子量の乳酸重合体は、市販品でも公知の方法で重合したものでもよく、その重量平均分子量は通常15000〜500000、好ましくは30000〜100000、である。公知の重合方法としては、例えば、乳酸及び要すればグリコール酸とを縮合重合させる方法、例えばラクチドを、要すればグリコリドと共に、例えばジエチル亜鉛、トリエチルアルミニウム、オクチル酸スズ等のルイス酸又は金属塩等の触媒を用いて開環重合させる方法、前記方法に更にカルボキシル基が保護されたヒドロキシカルボン酸誘導体を存在させてラクチドを開環重合させる方法(例えば特許国際公開WO00/35990等)、その他ラクチドに加熱下で触媒を添加して開環重合させる方法(例えばJ. Med. Chem, 16, 897(1973)等)、例えばラクチドとグリコリドとを共重合させる方法等が挙げられる。
【0015】
重合形態としては、ラクチド等を溶融させて重合反応に付すバルク重合、ラクチド等を適当な溶媒に溶解して重合反応に付す溶液重合が挙げられるが、中でも溶液重合によって得られる重合体を本発明の乳酸重合体の原料として使用することが工業生産上好ましい。
【0016】
溶液重合においてラクチドを溶解する溶媒としては、例えばベンゼン,トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素類、デカリン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0017】
上記の如くして得られた高分子量の乳酸重合体を加水分解するには、自体公知の加水分解方法が用いられ、例えば該高分子量の乳酸重合体を適当な溶媒に溶解した後、水及び要すれば酸を加えて反応させればよい。
【0018】
高分子量の乳酸重合体を溶解する溶媒としては、乳酸重合体の10重量倍以下の量で該重合体を溶解し得るものであればよく、具体的には、例えばクロロホルム,ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、例えばトルエン,o−キシレン,m−キシレン,p−キシレン等の芳香族炭化水素、例えばテトラヒドロフラン等の環状エーテル、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。尚、高分子量の乳酸重合体の重合時に、高分子量の乳酸重合体の加水分解で使用できる溶媒を用いた場合には、重合した高分子量の乳酸重合体を単離せず、重合及び加水分解の操作を連続して行うことができる。
【0019】
高分子量乳酸重合体を溶解する溶媒の使用量は、溶質である乳酸重合体に対して通常0.1〜100倍重量、好ましくは1〜10倍重量である。
【0020】
添加する水の量は、高分子量乳酸重合体に対して通常0.001〜1倍重量、好ましくは0.01〜0.1倍重量である。
【0021】
必要に応じて添加する酸としては、例えば塩酸,硫酸,硝酸等の無機酸、例えば乳酸,酢酸,トリフルオロ酢酸等の有機酸等が挙げられ、好ましくは乳酸が挙げられる。
【0022】
添加する酸の量は、高分子量乳酸重合体に対して通常0〜10倍重量、好ましくは0.1〜1倍重量である
加水分解反応温度は、通常0〜150℃、好ましくは20〜80℃である。
【0023】
加水分解反応時間は、高分子量の乳酸重合体の重量平均分子量及び反応温度によっても異なり、通常10分〜100時間、好ましくは1〜20時間である。
【0024】
加水分解処理の終了時期は、加水分解生成物の重量平均分子量に基づいて判断する。即ち、加水分解処理中に適宜サンプリングを行い、サンプル中の加水分解生成物の重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、当該分子量が約15000〜50000、好ましくは約15000〜30000、より好ましくは約20000〜25000となっていることが確認できたら加水分解処理を停止させる。
【0025】
上記の如く高分子量の乳酸重合体を加水分解する操作に付すことにより得られる、加水分解生成物を含有する溶液から、そこに含有される目的の乳酸重合体を析出させる方法としては、該加水分解生成物含有溶液を、そこに含有される目的の乳酸重合体を析出させ得る溶媒と接触させる方法等が挙げられる。
【0026】
加水分解生成物含有溶液の好ましい態様としては、例えばクロロホルム,ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、例えばトルエン,o−キシレン,m−キシレン,p−キシレン等の芳香族炭化水素、例えばテトラヒドロフラン等の環状エーテル、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド等の高分子量乳酸重合体を溶解する溶媒に、重量平均分子量15000〜50000、好ましくは15000〜30000、より好ましくは20000〜25000の乳酸重合体が約10〜50重量%溶解しているもの等が挙げられる。
【0027】
加水分解生成物含有溶液中に含有される目的の乳酸重合体を析出させ得る溶媒としては、例えばメタノール,エタノール等のアルコール類、例えばイソプロピルエーテル等の鎖状エーテル類、例えばヘキサン等の脂肪族炭化水素、水等が挙げられる。
【0028】
目的とする乳酸重合体を析出させ得る溶媒の使用量は、加水分解生成物含有溶液の溶媒に対して通常0.1〜100倍重量、好ましくは1〜10倍重量である。
【0029】
この様な各溶媒の種類と使用量の組み合わせの好ましい具体例としては、例えば溶質の1〜5倍重量のジクロロメタンを溶媒として用いられている加水分解生成物含有溶液に、溶解度を低下させる溶媒としてイソプロピルエーテルを、該ジクロロメタンに対して2〜10倍重量使用する態様等が挙げられる。
【0030】
目的の乳酸重合体溶質を析出させ得る溶媒を加水分解生成物含有溶液に接触させる際の、溶媒の温度は、通常−20〜60℃、好ましくは0〜40℃であり、加水分解生成物含有溶液の温度は通常0〜40℃、好ましくは10〜30℃である。
【0031】
溶媒と加水分解生成物含有溶液とを接触させる方法としては、加水分解生成物含有溶液を溶媒中に一度に加える方法、加水分解生成物含有溶液を溶媒中に滴下する方法、溶媒を加水分解生成物含有溶液中に一度に加える方法、或いは溶媒を加水分解生成物含有溶液中に滴下する方法等が挙げられる。
【0032】
上記のようにして得られた本発明の乳酸重合体は、末端カルボキシル基量が徐放性製剤用基材として好ましい範囲にあるため、徐放性製剤用基材として好ましいものである。これを徐放性製剤用基材として用いる場合、内包される生理活性物質は、薬理学的に有用なものであれば特に限定を受けず、非ペプチド化合物でもペプチド化合物でもよい。非ペプチド化合物としては、アゴニスト、アンタゴニスト、酵素阻害作用を有する化合物などがあげられる。
【0033】
また、ペプチド化合物としては、例えば、生理活性ペプチドが好ましく、分子量約300〜約40,000、好ましくは約400〜約30,000、さらに好ましくは約500〜約25,000、より好ましくは約500〜20,000の生理活性ペプチドなどが好適である。
【0034】
該生理活性ペプチドとしては、例えば、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)、インスリン、ソマトスタチン、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン(GH−RH)、プロラクチン、エリスロポイエチン、副腎皮質ホルモン、メラノサイト刺激ホルモン、甲状腺ホルモン放出ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、バソプレシン、オキシトシン、カルシトニン、ガストリン、セクレチン、パンクレオザイミン、コレシストキニン、アンジオテンシン、ヒト胎盤ラクトーゲン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、エンケファリン、エンドルフィン、キョウトルフィン、タフトシン、サイモポイエチン、サイモシン、サイモチムリン、胸腺液性因子、血中胸腺因子、腫瘍壊死因子、コロニー誘導因子、モチリン、デイノルフィン、ボンベシン、ニューロテンシン、セルレイン、ブラジキニン、心房性ナトリウム排泄増加因子、神経成長因子、細胞増殖因子、神経栄養因子、エンドセリン拮抗作用を有するペプチド類等、それらの誘導体、これらのフラグメント或いはフラグメントの誘導体等が挙げられる。
【0035】
また、該生理活性ペプチドは遊離形でもよく、それらの薬理学的に許容される塩であってもよい。このような塩としては、該生理活性ペプチドがアミノ基等の塩基性基を有する場合、例えば炭酸,重炭酸,塩酸,硫酸,硝酸,ホウ酸等の無機酸との塩、例えばコハク酸,酢酸,プロピオン酸,トリフルオロ酢酸等の有機酸等との塩が挙げられる。
【0036】
生理活性ペプチドがカルボキシル基等の酸性基を有する場合、例えばナトリウム,カリウム等のアルカリ金属、例えばカルシウム,マグネシウム等のアルカリ土類金属等の無機塩基や例えばトリエチルアミン等の有機アミン類、例えばアルギニン等の塩基性アミノ酸類等の有機塩基等との塩が挙げられる。また、生理活性ペプチドは例えば銅錯体,亜鉛錯体等の金属錯体化合物を形成していてもよい。
【0037】
上記した生理活性ペプチドの中でも、前立腺癌、前立腺肥大症、子宮内膜症、子宮筋腫、思春期早発症、乳癌等の性ホルモン依存性の疾患および避妊に有効な例えばリュープロレリン、ブセレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、ナファレリン、ヒストレリン、デスロレリン、メテレリン、ゴナドレリン等のLH−RH誘導体又はその塩等が好ましいものとして挙げられる。
【0038】
本発明の乳酸重合体を基材として用いて製造される徐放性製剤は、生理活性物質以外に、例えばTween80(アトラスパウダー社製)、HCO−60(日光ケミカルズ社製)等の界面活性剤、例えばカルボキシメチルセルロース,アルギン酸ナトリウム,ヒアルロン酸ナトリウム等の多糖類、例えば硫酸プロタミン,ポリエチレングリコール400等の分散剤、例えばメチルパラベン,プロピルパラベン等の保存剤、例えば塩化ナトリウム,マンニトール,ソルビトール,ブドウ糖等の等張化剤、例えばゴマ油,コーン油等の油脂類、例えばレシチン等のリン脂質、例えば乳糖,コーンスターチ,マンニトール,セルロース賦形剤、例えばショ糖,アラビアゴム,メチルセルロース,カルボキシメチルセルロース等のデキストリン結合剤、例えばカルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤、例えばゼラチン,ヒドロキシナフトエ酸,サリチル酸等の薬物保持剤等を含んでいてもよい。
【0039】
発明の乳酸重合体を生体内分解性ポリマーとして含む徐放性製剤は、自体公知の方法、例えば水中乾燥法、相分離法、噴霧乾燥法あるいはこれらに準ずる方法などによって製造される。
【0040】
以下に、徐放性製剤として、例えばマイクロカプセル(マイクロスフェアと称する場合がある)を製造する場合の製造方法について記述する。
【0041】
以下の製造工程中、必要に応じて、薬物保持剤(例えば、ゼラチン、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸など)を自体公知の方法により添加してもよい。
【0042】
(I)水中乾燥法
(i)O/W法
本方法においては、まず本発明の乳酸重合体(以下、本発明の生体内分解性ポリマーと記載する場合がある。)の有機溶媒溶液を作製する。本発明の徐放性製剤の製造の際に使用する有機溶媒は、沸点が120℃以下であることが好ましい。
【0043】
該有機溶媒としては、例えば、ハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)、エーテル類(例、エチルエーテル、イソプロピルエーテル等)、脂肪酸エステル(例、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、アルコール類(例えば、エタノール、メタノール等)、アセトニトリルなどが用いられる。なかでもハロゲン化炭化水素が好ましく、特にジクロロメタンが好適である。また、これらは適宜の割合で混合して用いてもよい。その場合は、ハロゲン化炭化水素とアルコール類との混液が好ましく、特にジクロロメタンとエタノールとの混液が好適である。
【0044】
本発明の生体内分解性ポリマーの有機溶媒溶液中の濃度は、本発明の生体内分解性ポリマーの分子量、有機溶媒の種類によって異なるが、例えば、ジクロロメタンを有機溶媒として用いた場合、一般的には約0.5〜約70重量%、より好ましくは約1〜約60重量%、特に好ましくは約2〜約50重量%から選ばれる。
【0045】
また、ジクロロメタンとの混有機溶媒としてエタノールを用いた場合、エタノールの使用量は、両者の合計容量に基づいて、一般的には約0.01〜約50%(v/v)、より好ましくは約0.05〜約40%(v/v)、特に好ましくは約0.1〜約30%(v/v)から選ばれる。
【0046】
このようにして得られた本発明の生体内分解性ポリマーの有機溶媒溶液中に、生理活性物質を添加し、溶解あるいは分散させる。この際、生理活性物質の添加量は、生理活性物質:本発明の生体内分解性ポリマーの重量比の上限が約1:1まで、好ましくは約1:2までとなるようにする。
【0047】
次いで,得られた生理活性物質又はその塩及び本発明の生体内分解性ポリマーから成る組成物を含む有機溶媒溶液を水相中に加え、O(油相)/W(水相)エマルションを形成させた後、油相中の溶媒を蒸発させ、マイクロカプセルを調製する。この際の水相体積は、一般的には油相体積の約1倍〜約10,000倍、より好ましくは約5倍〜約50,000倍、特に好ましくは約10倍〜約2,000倍から選ばれる。
【0048】
上記の外水相中には乳化剤を加えてもよい。該乳化剤は、一般に安定なO/Wエマルションを形成できるものであればいずれでもよい。具体的には、例えば、アニオン性界面活性剤(オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなど)、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル〔ツイーン(Tween)80、ツイーン(Tween)60、アトラスパウダー社〕、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体〔HCO-60、HCO-50、日光ケミカルズ〕など)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、レシチン、ゼラチン、ヒアルロン酸などが用いられる。これらの中の1種類か、いくつかを組み合わせて使用してもよい。使用の際の濃度は、好ましくは約0.01〜10重量%の範囲で、さらに好ましくは約0.05〜約5重量%の範囲で用いられる。
【0049】
上記の外水相中には浸透圧調節剤を加えてもよい。該浸透圧調節剤としては、水溶液とした場合に浸透圧を示すものであればよい。
【0050】
該浸透圧調節剤としては、例えば、多価アルコール類、一価アルコール類、単糖類、二糖類、オリゴ糖およびアミノ酸類またはそれらの誘導体などがあげられる。
【0051】
上記の多価アルコール類としては、例えば、グリセリン等の三価アルコール類、アラビトール,キシリトール,アドニトール等の五価アルコール類、マンニトール,ソルビトール,ズルシトール等の六価アルコール類などが用いられる。なかでも、六価アルコール類が好ましく、特にマンニトールが好適である。
【0052】
上記の一価アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどがあげられ、このうちエタノールが好ましい。
【0053】
上記の単糖類としては、例えば、アラビノース,キシロース,リボース,2ーデオキシリボース等の五炭糖類、ブドウ糖,果糖,ガラクトース,マンノース,ソルボース,ラムノース,フコース等の六炭糖類が用いられ、このうち六炭糖類が好ましい。
【0054】
上記のオリゴ糖としては、例えば、マルトトリオース,ラフィノース糖等の三糖類、スタキオース等の四糖類などが用いられ、このうち三糖類が好ましい。
【0055】
上記の単糖類、二糖類およびオリゴ糖の誘導体としては、例えば、グルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸、ガラクツロン酸などが用いられる。
【0056】
上記のアミノ酸類としては、L−体のものであればいずれも用いることができ、例えば、グリシン、ロイシン、アルギニンなどがあげられる。このうちL−アルギニンが好ましい。
【0057】
これらの浸透圧調節剤は単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0058】
これらの浸透圧調節剤は、外水相の浸透圧が生理食塩水の浸透圧の約1/50〜約5倍、好ましくは約1/25〜約3倍となる濃度で用いられる。
【0059】
有機溶媒を除去する方法としては、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法が用いられる。例えば、プロペラ型撹拌機またはマグネチックスターラーなどで撹拌しながら常圧もしくは徐々に減圧にして有機溶媒を蒸発させる方法、ロータリーエヴァポレーターなどを用いて真空度を調節しながら有機溶媒を蒸発させる方法などがあげられる。
【0060】
このようにして得られたマイクロカプセルは遠心分離または濾過して分取した後、マイクロカプセルの表面に付着している遊離の生理活性物質、乳化剤などを蒸留水で数回繰り返し洗浄し、再び蒸留水などに分散して凍結乾燥する。
【0061】
製造工程中、粒子同士の凝集を防ぐために凝集防止剤を加えてもよい。該凝集防止剤としては、例えば、マンニトール,ラクトース,ブドウ糖,デンプン類(例、コーンスターチ等)などの水溶性多糖、グリシンなどのアミノ酸、フィブリン,コラーゲンなどのタンパク質などが用いられる。なかでも、マンニトールが好適である。
【0062】
また、凍結乾燥後、必要であれば、減圧下マイクロカプセル同士が融着しない条件下で加温してマイクロカプセル中の水分および有機溶媒の除去を行ってもよい。好ましくは、毎分10〜20℃の昇温速度の条件下で示差走査熱量計で求めた生体内分解性ポリマーの中間点ガラス転移温度よりも若干高い温度で加温する。より好ましくは生体内分解性ポリマーの中間点ガラス転移温度からこれより約30℃高い温度範囲内で加温する。とりわけ,生体内分解性ポリマーとして乳酸-グリコール酸重合体を用いる場合には好ましくはその中間点ガラス転移温度以上中間点ガラス転移温度より10℃高い温度範囲,さらに好ましくは、中間点ガラス転移温度以上中間点ガラス転移温度より5℃高い温度範囲で加温する。
【0063】
加温時間はマイクロカプセルの量などによって異なるものの、一般的にはマイクロカプセル自体が所定の温度に達した後、約12時間〜約168時間、好ましくは約24時間〜約120時間、特に好ましくは約48時間〜約96時間である。
【0064】
加温方法は、マイクロカプセルの集合が均一に加温できる方法であれば特に限定されない。
【0065】
該加温乾燥方法としては、例えば、恒温槽、流動槽、移動槽またはキルン中で加温乾燥する方法、マイクロ波で加温乾燥する方法などが用いられる。なかでも恒温槽中で加温乾燥する方法が好ましい。
【0066】
(ii)W/O/W法
まず、本発明の生体内分解性ポリマーの有機溶媒溶液を作る。
【0067】
該有機溶媒としては、例えば、ハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)、エーテル類(例、エチルエーテル、イソプロピルエーテル等)、脂肪酸エステル(例、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、アルコール類(例えば、エタノール、メタノール等)、アセトニトリルなどが用いられる。なかでも、ハロゲン化炭化水素が好ましく、特にジクロロメタンが好適である。これらは適宜の割合で混合して用いてもよい。その場合は、ハロゲン化炭化水素とアルコール類の混液が好ましく、特にジクロロメタンとエタノールとの混液が好適である。
【0068】
本発明の生体内分解性ポリマーの有機溶媒溶液中の濃度はその分子量、有機溶媒の種類によって異なるが、例えば、ジクロロメタンを有機溶媒として用いた場合、一般的には約0.5〜約70重量%、より好ましくは約1〜約60重量%、特に好ましくは約2〜約50重量%から選ばれる。
【0069】
次いで、本発明の生体内分解性ポリマーの有機溶媒溶液(油相)に生理活性物質またはその塩の溶液〔該溶媒としては、水、水とアルコール類(例、メタノール、エタノール等)の混液〕を添加する。この混合物をホモジナイザーまたは超音波等の公知の方法で乳化し、W/Oエマルションを形成させる。
【0070】
次いで,得られた生理活性物質および本発明の生体内分解性ポリマーから成るW/Oエマルションを水相中に加え、W(内水相)/O(油相)/ W(外水相)エマルションを形成させた後、油相中の溶媒を蒸発させ、マイクロカプセルを調製する。この際の外水相体積は一般的には油相体積の約1倍〜約10,000倍、より好ましくは約5倍〜約50,000倍、特に好ましくは約10倍〜約2,000倍から選ばれる。
【0071】
上記の外水相中に加えてもよい乳化剤や浸透圧調節剤、およびその後の調製法は前記(I)(i)項に記載と同様である。
【0072】
(II)相分離法
本法によってマイクロカプセルを製造する場合には,前記(I)の水中乾燥法に記載した生理活性物質及び本発明の生体内分解性ポリマーから成る組成物を含む有機溶媒溶液にコアセルベーション剤を撹拌下徐々に加えてマイクロカプセルを析出,固化させる。該コアセルベーション剤は油相体積の約0.01〜1,000倍、好ましくは約0.05〜500倍、特に好ましくは約0.1〜200倍から選ばれる。
【0073】
コアセルベーション剤としては、有機溶媒と混和する高分子系,鉱物油系または植物油系の化合物等で本発明の生体内分解性ポリマーを溶解しないものであれば特に限定はされない。具体的には、例えば、シリコン油,ゴマ油,大豆油,コーン油,綿実油,ココナッツ油,アマニ油,鉱物油,n-ヘキサン,n-ヘプタンなどが用いられる。これらは2種類以上混合して使用してもよい。
【0074】
このようにして得られたマイクロカプセルを分取した後、ヘプタン等で繰り返し洗浄して生理活性物質及び本発明の生体内分解性ポリマーからなる組成物以外のコアセルベーション剤等を除去し、減圧乾燥する。もしくは、前記(I)(i)の水中乾燥法で記載と同様の方法で洗浄を行った後に凍結乾燥、さらには加温乾燥する。
【0075】
(III)噴霧乾燥法
本法によってマイクロカプセルを製造する場合には,前記(I)の水中乾燥法に記載した生理活性物質及び本発明の生体内分解性ポリマーの2者から成る組成物を含有する有機溶媒溶液または分散液をノズルを用いてスプレードライヤー(噴霧乾燥器)の乾燥室内に噴霧し、極めて短時間内に微粒化液滴内の有機溶媒を揮発させ、マイクロカプセルを調製する。該ノズルとしては、例えば、二流体ノズル型,圧力ノズル型,回転ディスク型等がある。この後、必要であれば、前記(I)の水中乾燥法で記載と同様の方法で洗浄を行った後に凍結乾燥、さらには加温乾燥してもよい。
【0076】
上述のマイクロカプセル以外の剤形としてマイクロカプセルの製造法(I)の水中乾燥法に記載した生理活性物質及び本発明の生体内分解性ポリマーから成る組成物を含む有機溶媒溶液または分散液を、例えば、ロータリーエヴァポレーターなどを用いて真空度を調節しながら有機溶媒および水を蒸発させて乾固した後、ジェットミルなどで粉砕して微粒子(マイクロパーティクル)としてもよい。
【0077】
さらには、粉砕した微粒子をマイクロカプセルの製造法(I)の水中乾燥法で記載と同様の方法で洗浄を行った後に凍結乾燥、さらには加温乾燥してもよい。
【0078】
ここで得られるマイクロカプセルまたは微粒子は、使用する生体内分解性ポリマーの分解速度に対応した薬物放出が達成できる。
【0079】
このようにして得られる徐放性組成物は、そのまままたはこれらを原料物質として種々の剤形に製剤化し、筋肉内、皮下、臓器などへの注射剤または埋め込み剤、鼻腔、直腸、子宮などへの経粘膜剤、経口剤(例、カプセル剤(例、硬カプセル剤、軟カプセル剤等)、顆粒剤、散剤等の固形製剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等の液剤等)などとして投与することができる。
【0080】
例えば、このようにして得られる徐放性組成物を注射剤とするには、これらを分散剤(例、ツイーン(Tween)80,HCO-60等の界面活性剤、ヒアルロン酸ナトリウム,カルボキシメチルセルロース,アルギン酸ナトリウム等の多糖類など)、保存剤(例、メチルパラベン、プロピルパラベンなど)、等張化剤(例、塩化ナトリウム,マンニトール,ソルビトール,ブドウ糖,プロリンなど)等と共に水性懸濁剤とするか、ゴマ油、コーン油などの植物油と共に分散して油性懸濁剤として実際に使用できる徐放性注射剤とすることができる。
【0081】
このようにして得られる徐放性組成物の粒子径は、懸濁注射剤として使用する場合には、その分散度、通針性を満足する範囲であればよく、例えば、平均粒子径として約0.1〜300μm、好ましくは約0.5〜150μmの範囲、さらに好ましくは約1から100μmの範囲である。該平均粒子径は、例えばレーザー解析式粒度分布測定装置(SALD2000A:島津)などを用いて、自体公知の方法により測定することが可能である。
【0082】
本発明の乳酸重合体を基材として用いて得られる徐放性組成物を無菌製剤にするには、製造全工程を無菌にする方法、ガンマ線で滅菌する方法、防腐剤を添加する方法等があげられるが、特に限定されない。
【0083】
本発明の乳酸重合体を基材として用いて得られる徐放性組成物は、低毒性であるので、哺乳動物(例、ヒト、牛、豚、犬、ネコ、マウス、ラット、ウサギ等)に対して安全な医薬などとして用いることができる。
【0084】
上記徐放性組成物は、含有する生理活性物質の種類に応じて、種々の疾患などの予防・治療剤として用いることができるが、例えば、生理活性物質が、LH−RH誘導体である場合には、ホルモン依存性疾患、特に性ホルモン依存性癌(例、前立腺癌、子宮癌、乳癌、下垂体腫瘍など)、前立腺肥大症、子宮内膜症、子宮筋腫、思春期早発症、月経困難症、無月経症、月経前症候群、多房性卵巣症候群等の性ホルモン依存性の疾患の予防・治療剤、および避妊(もしくは、その休薬後のリバウンド効果を利用した場合には、不妊症の予防・治療)剤などとして用いることができる。さらに、性ホルモン非依存性であるがLH−RH感受性である良性または悪性腫瘍などの予防・治療剤としても用いることができる。
【0085】
該徐放性組成物の投与量は、主薬である生理活性物質の種類と含量、剤形、生理活性物質放出の持続時間、対象疾病、対象動物などによって種々異なるが、生理活性物質の有効量であればよい。主薬である生理活性物質の1回当たりの投与量としては、例えば、徐放性製剤が6カ月製剤である場合、好ましくは、成人1人当たり約0.01mg〜10mg/kg体重の範囲,さらに好ましくは約0.05mg〜5mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。
【0086】
1回当たりの徐放性組成物の投与量は、成人1人当たり好ましくは、約0.05mg〜50mg/kg体重の範囲、さらに好ましくは約0.1mg〜30mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。
【0087】
投与回数は、数週間に1回、1ヶ月に1回、または数か月(例、3ヶ月、4ヶ月、6ヶ月など)に1回等、主薬である生理活性物質の種類と含量、剤形、生理活性物質放出の持続時間、対象疾病、対象動物などによって適宜選ぶことができる。
【0088】
上記の如く、本発明の乳酸重合体は、生理活性物質を含有する徐放性製剤用の基材として、有用であり、特に初期過剰放出を最小限に抑えて、例えば6ヶ月以上の長期に亘り安定した放出速度を維持させる等の優れた性質を有している。
【0089】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0090】
以下の実施例における重量平均分子量及び各重合体含有量は、単分散ポリスチレンを基準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量及びそれらから算出した各重合体含有量である。また、測定は全て高速GPC装置(東ソー(株)製;HLC−8120GPC)で行い、カラムはSuperH4000×2及びSuperH2000(何れも東ソー(株)製)を使用し、移動相としてテトラヒドロフランを流速0.6mL/minで使用した。尚、検出方法は示差屈折率によるものである。
【0091】
合成例1.高分子量乳酸重合体の合成
脱水キシレン230mLに1.0mol/Lジエチル亜鉛ヘキサン溶液4.1mL、乳酸tert−ブチル1.35g及びDL−ラクチド230gを加え、120〜130℃で約2時間重合反応させた。反応終了後、反応液にジクロロメタン120mLを注入し、トリフルオロ酢酸230mLを加え脱保護反応させた。反応終了後、反応液にジクロロメタン300mLを加えた後、該反応液をイソプロピルエーテル2800mL中に注ぎ、目的物を沈殿させ、次いでジクロロメタン/イソプロピルエーテルで再沈殿操作を繰り返し、重量平均分子量約40000の乳酸重合体を得た。
【0092】
参考例1
合成例1で得られた重合体をジクロロメタン600mLに溶解し、該溶液の液性が中性となるまで水洗した後、90%乳酸水溶液70gを添加し、40℃で反応させた。反応液中に溶解している重合体の重量平均分子量が約20,000となったところで室温まで冷却し、ジクロロメタン600mLを注入して反応を停止させ、反応液の液性が中性となるまで水洗した。水洗後、反応液を濃縮、乾燥させて乳酸重合体を得た。得られた乳酸重合体の末端カルボキシル基は重合体1g当たり約80μmolであり、重量平均分子量5000以下の重合体含有量は7.29重量%であった。
【0093】
実施例1.
合成例1で得られた重合体をジクロロメタン600mLに溶解し、該溶液の液性が中性となるまで水洗した後、90%乳酸水溶液70gを添加し、40℃で反応させた。反応液中に溶解している重合体の重量平均分子量が約20,000となったところで室温まで冷却し、ジクロロメタン600mLを注入して反応を停止させ、反応液の液性が中性となるまで水洗した後、反応液をイソプロピルエーテル2800mL中に滴下し、目的とする乳酸重合体を沈殿させた。デカンテーションにより得られた沈殿物をジクロロメタン600mLに溶解した後、溶液を濃縮、乾燥して乳酸重合体160gを得た。得られた乳酸重合体の末端カルボキシル基量は重合体1g当たり約70μmolであった。また、使用した高分子量乳酸重合体の重量平均分子量、加水分解処理後の乳酸重合体の重量平均分子量、得られた目的の乳酸重合体の重量平均分子量及びその分子量分画を表1に示す。
【0094】
実施例2〜6.
実施例1と同様な操作を行い、本発明の乳酸重合体を得た。使用した高分子量乳酸重合体の重量平均分子量、加水分解処理後の乳酸重合体の重量平均分子量、得られた目的の乳酸重合体の重量平均分子量及びその分子量分画を表1に併せて示す。
【0095】
【表1】

【0096】
表1から明らかな如く、本発明の方法によって得られた本発明の乳酸重合体は、重量平均分子量5000以下の重合体含有量が約5重量%以下であり、重量平均分子量3000以下の重合体含有量が約1.5重量%以下であり、また重量平均分子量1000以下の重合体含有量が約0.1重量%以下であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の重量平均分子量5000以下の重合体含有量が約5重量%以下である乳酸重合体は、主に医薬品の徐放性製剤用基材として有用なものであり、これを用いて生理活性物質を包含するマイクロカプセル型徐放性製剤を製造した場合、マイクロカプセルからの生理活性物質の初期過剰放出を十分に抑制し、且つ長期に亘りその放出速度を安定に保ち得るという効果を奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量5000以下の重合体含有量が5重量%以下である、重量平均分子量15000〜50000の乳酸重合体。
【請求項2】
重量平均分子量3000以下の重合体含有量が1.5重量%以下である請求項1に記載の乳酸重合体。
【請求項3】
重量平均分子量1000以下の重合体含有量が0.1重量%以下である請求項2に記載の乳酸重合体。
【請求項4】
重量平均分子量が15000〜30000である請求項1〜3の何れかに記載の乳酸重合体。
【請求項5】
重量平均分子量が20000〜25000である請求項1〜3の何れかに記載の乳酸重合体。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の乳酸重合体を含んで成る、徐放性製剤用基材。
【請求項7】
請求項1〜5の何れかに記載の乳酸重合体の徐放性製剤用基材としての用途。

【公開番号】特開2012−107256(P2012−107256A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−36422(P2012−36422)
【出願日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【分割の表示】特願2001−237210(P2001−237210)の分割
【原出願日】平成13年8月6日(2001.8.6)
【出願人】(000252300)和光純薬工業株式会社 (105)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】