説明

乳酸類の製造方法

【課題】炭水化物含有原料から乳酸類を効率的に製造するための代替法の提供。
【解決手段】インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物と、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩とを触媒とし、水及び/又はアルコールを含有する溶媒中で、炭水化物含有原料を加熱処理することを特徴とする、乳酸類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭水化物含有原料からインジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物と、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩とを触媒として用いて乳酸類を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、工業的に実施されている乳酸の製造法は糖類の乳酸発酵によるものである(特許文献1参照)。しかしながらこの方法でセルロースを乳酸発酵の原料とするには、酸又は酵素などを用いた糖化工程を経る必要がある。また一般に発酵による乳酸製造法は反応速度が遅く、巨大な発酵槽が必要となり、生成する乳酸の濃度が低いため、精製のためのエネルギー消費量が大きくなる問題がある。加えて、乳酸発酵は発酵の進行とともに溶液のpHが低下することにより、乳酸菌の発酵効率が低下してしまうため、塩基で中和させながら発酵が行われる。従って、この乳酸発酵法により生成するのは乳酸塩であり、乳酸塩より乳酸を遊離させるために酸で処理することが行われ、そこから生じる中和塩の処理もプロセス上大きな問題となっている。
【0003】
生物学的な方法によらない乳酸の製造法としては、炭水化物をアルカリ存在下で水熱処理する化学的な方法が知られている。例えば糖類(非特許文献1、2参照)、セルロース(特許文献2、非特許文献3参照)、又は有機性廃棄物(非特許文献4参照)をこの方法で処理すると、高温高圧の反応条件下で分解した炭水化物の一部が異性化して乳酸が生成する。しかし、この方法では乳酸は触媒として加えられたアルカリと反応し、乳酸塩となっているため、乳酸を酸として分離するためには反応液になんらかの無機酸を添加して酸性にしなければならず、アルカリと無機酸が量論的に消費されるという問題がある。
【0004】
アルカリを使わない乳酸の化学的製造法としては、金属ハロゲン化物を触媒として、デンプン、オリゴ糖又は単糖を、アルコールと反応させることにより、乳酸エステルに変換する方法が報告されている(特許文献3参照)。しかし、本発明者らが検討したところ、この方法は200℃未満ではセルロース系の原料を分解できず、乳酸や乳酸エステルの生成が認められなかった。
【0005】
またアルカリを使用せず、セルロース系の原料を化学的な反応により直接、乳酸へ変換した例も報告されているが、これは非常に高温高圧(温度350℃以上400℃未満、圧力20MPa以上35MPa)の反応条件を必要としておりエネルギー消費量が大きい上、乳酸の収率も不十分である(特許文献4参照)。
【0006】
またセルロース系の原料より一段階で乳酸を製造した報告として、第3族金属塩を触媒として用いた例(特許文献5、6参照)及び希土類金属酸化物を触媒として用いた例(特許文献7参照)が報告されている。これらの方法では比較的、原料濃度の低い条件でのみ乳酸収率が高く、実用上より高い原料濃度で乳酸収率の良好な製造法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−311886号公報
【特許文献2】特開2005−232116号公報
【特許文献3】特開2004−359660号公報
【特許文献4】特開2004−323403号公報
【特許文献5】特開2008−120796号公報
【特許文献6】特開2009−263242号公報
【特許文献7】特開2009−263241号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Byung Y.Y. and Montgomery R., Carbohydrate Research, Vol.280 (1996) p.27−45
【非特許文献2】Byung Y.Y. and Montgomery R., Carbohydrate Research, Vol.280 (1996) p.47−57
【非特許文献3】Niemelae K. and Sjoestroem E., Biomass, 11 (1986) p.215−221
【非特許文献4】Armando T.Q. et al., Journal of Hazardous Materials, B93 (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は炭水化物含有原料から乳酸類を効率的に製造するための代替法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物と、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩とを触媒として用いることにより、触媒使用量が少量でも、炭水化物含有原料から乳酸類を効率的に製造できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物と、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩とを触媒とし、水及び/又はアルコールを含有する溶媒中で、炭水化物含有原料を加熱処理することを特徴とする、乳酸類の製造方法であって、ただし、以下の化合物の組み合わせは該触媒より除く、上記乳酸類の製造方法:スズ又は有機スズのハロゲン化物および第一遷移系列金属のハロゲン化物、スズ又は有機スズのハロゲン化物および四級アンモニウム塩のハロゲン化物、ならびにレニウム化合物および第一遷移系列金属のハロゲン化物。
[2] インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物と、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩とがアート錯体を形成していることを特徴とする、[1]の乳酸類の製造方法。
[3] インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物が、ハロゲン化物塩及びカルボン酸塩からなる群から選択される、[1]または[2]の乳酸類の製造方法。
【0012】
[4] インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物が塩化物塩である、[3]の乳酸類の製造方法。
[5] アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩が、ハロゲン化物塩、カルボン酸塩及びホウ酸塩からなる群から選択される、[1]〜[4]のいずれかの乳酸類の製造方法。
【0013】
[6] さらに、スズ又は有機スズのパーフルオロアルキルスルホン酸塩の少なくとも1種を触媒として利用することを含む、[1]〜[5]のいずれかの乳酸類の製造方法。
[7] パーフルオロアルキルスルホン酸塩が、トリフルオロメタンスルホン酸塩である、[6]の乳酸類の製造方法。
[8] 炭水化物含有原料がセルロースを含む、[6]または[7]の乳酸類の製造方法。
[9] 加熱処理を、100℃〜300℃にて行う、[1]〜[8]のいずれかの乳酸類の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法では、炭水化物含有原料から、少量の触媒を用いて、短時間に乳酸類を効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、塩化インジウム(III)四水和物及びビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムクロライドより生成されるアート錯体についての、ESI/MS測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明では、水及び/又はアルコールを含有する溶媒中で、触媒として機能する、インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物並びに、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩の存在下、炭水化物含有原料を加熱処理することにより、乳酸類を反応生成物として取得することができる。
【0018】
本発明の方法を用いれば、炭水化物含有原料中の炭水化物、例えば、セルロースなどの多糖、グルコースやフルクトースなどの単糖、スクロースなどのオリゴ糖から、乳酸類を簡便かつ高効率に製造することができる。
【0019】
本発明において「乳酸類」とは、乳酸及び/又は乳酸エステルを意味する。乳酸エステルは特に限定されないが、好ましくは乳酸メチルである。
【0020】
炭水化物からの乳酸又は乳酸エステルの生成反応は、セルロースを出発原料とする場合には、例えば、以下のように進行する。
【0021】
【化1】

【0022】
セルロースはアルコール中又は水中、高温高圧下で加溶媒分解されて糖類を生成する。この反応条件下では、生成された糖類はさらに分解して低分子化合物に変化するか、逆に重合して炭素質の高分子化合物となる。その分解反応としては、脱水反応とレトロアルドリゼーションがある。脱水反応では5−メトキシメチルフルフラール、レトロアルドリゼーションでは、グリコールアルデヒド(二炭糖)、ジヒドロキシアセトン又はグリセルアルデヒド(三炭糖)、エリスリトール(四炭糖)が生成する。このうち三炭糖は、異性化により、乳酸に変換することができる。さらに乳酸は、アルコールとの脱水縮合反応により乳酸エステルへと変換される。
【0023】
本発明の方法において原料として使用できる炭水化物含有原料は、炭水化物を含有する任意の原料であってよい。限定するものではないが、炭水化物含有原料は、単糖、オリゴ糖(単糖が2〜9個結合したもの)、若しくは多糖(単糖が10個以上結合したもの)などの任意の炭水化物、又はそれを含む生物由来材料であってよい。多糖としては、限定するものではないが、セルロースが好ましい。炭水化物含有原料は、例えば、セルロース、ホロセルロース、セロビオース、デンプン(例えば、可溶性デンプン)、マルトース、グルコース、マンノース、フルクトース、ガラクトース、グロース等の六炭糖を含む炭水化物、ヘミセルロース、キシロース、アラビノース等の五炭糖を含むヘミセルロース系物質、又はそれらの少なくとも1つを含有する、例えばリグノセルロース系の原料であってもよい。炭水化物含有原料は、特に限定されないが、例えば、上記のような炭水化物(例えば、セルロース等)を含むバイオマス材料であってもよい。炭水化物含有原料の例としては、古紙、製材残材、麦藁、コーンストーバー、コーンコブ、トウモロコシの穂などの農産廃棄物をはじめとするリグノセルロース系バイオマス材料、デンプンやグルコース等の糖類を含む食品廃棄物等が挙げられる。本発明の方法において使用する炭水化物含有原料はセルロース等の炭水化物に加えて水を含んでいることも好ましい。
【0024】
本発明の方法に用いる、水及び/又はアルコールを含有する溶媒は、水若しくはアルコール、又はその両方を含む溶液である。この溶媒は、水又はアルコール単独であってもよいし、水とアルコールの混合液であってもよいし、それらに他の成分、例えば他の有機溶媒が混合された溶液であってもよい。水としては、蒸留水、イオン交換水、工業用水等を使用することができる。アルコールとしては、特に限定されないが、炭素数1から8までの脂肪族アルコールが好ましい。例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、エチレングリコールなどを挙げることができる。含水アルコールも本発明において溶媒として好適に使用できる。1種又は2種以上のアルコールが溶媒に含まれていてもよい。また本発明の方法において、乳酸を製造する場合は水を溶媒として使用し、乳酸エステルを製造する場合は、アルコールを含有する溶媒を使用すればよい。
【0025】
本発明の方法では、インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物を、炭水化物化合物に対する分解反応及び異性化反応、さらに中間体として生成する三炭糖の乳酸類への異性化反応のための触媒として用いる。
【0026】
本発明において、「スズ化合物」には、スズ又は有機スズが含まれる。「有機スズ」とは、1つ以上の有機置換基(炭化水素基)が結合したスズ(Sn)をいう。本発明で使用され得る有機スズのスズ原子上に結合する置換基としては、特に限定されないが例えば、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基などが挙げられる。
【0027】
「金属化合物」としては、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物)塩、アセチルアセトン化合物、アルコキシド化合物、カルボン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩などが挙げられ、好ましくはハロゲン化物塩及びカルボン酸塩である。このような金属化合物としては、限定されるものではないが、例えば、臭化インジウム(III)、塩化インジウム(III)、ヨウ化インジウム(III)、塩化インジウム(III)四水和物、酢酸インジウム(III)、アセチルアセトンインジウム(III)、三塩化ガリウム(III)、塩化アルミニウム(III)六水和物、塩化スズ(II)、ジ−n−ブチルスズ(II)塩化物、レニウムカルボニルなどが挙げられる。
【0028】
1つの反応系において、これら金属化合物より選択される1種類の化合物を使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
本発明の方法ではさらに、上記金属化合物に加えて、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩を、セルロースの分解反応、及び糖の分解・異性化反応のための触媒として使用する。好ましくは、これらの塩は、ハロゲン化物塩、カルボン酸塩、又はホウ酸塩であり、限定されるものではないが、例えば、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムクロライド([PPN]Cl)、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムブロミド([PPN]Br)、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムヨード([PPN]I)、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムカルボン酸([PPN]OOCH)、塩化テトラエチルアンモニウム(EtNCl)、塩酸トリエチルアミン(EtNHCl)、塩化トリオクチルメチルアンモニウム(OctNMeCl)、塩化トリエチル(2−メトキシエトキシメチル)アンモニウム(MeOCHCHOCHNEtCl)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド([bmim]Cl)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート([bmim]OAc)、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド([bdmim]Cl)、テトラフェニルホスホニウムクロライド(PhPCl)、塩化リチウム、塩化亜鉛、塩化マンガン四水和物、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート、ピコリン酸ナトリウム、ナトリウム(トリヒドロキシ)フェニルボラートが挙げられる。
【0030】
1つの反応系において、これら塩より選択される1種類を使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
ただし、以下の化合物の組み合わせは、本発明の範囲より除かれる:スズ又は有機スズのハロゲン化物および第一遷移系列金属のハロゲン化物、スズ又は有機スズのハロゲン化物および四級アンモニウム塩のハロゲン化物、ならびにレニウム化合物および第一遷移系列金属のハロゲン化物。
【0032】
本発明において、インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物と、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩を組み合わせて使用した場合、これらの化合物が反応溶液中で結合し、アート錯体を形成しても良い。
【0033】
アート錯体とは、ルイス酸性を有する、インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物に、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩より供給されるアニオン種を配位させることにより生成する錯体型金属酸塩を意味する。
【0034】
アート錯体を、触媒として用いることによって、以下のように、糖の環化を抑制しつつ、選択的に糖の逆アルドール反応を進行させることができる。したがって、効率的に乳酸類への異性化反応をすすめることができる。
【0035】
【化2】

【0036】
本発明において、アート錯体の生成は、インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩を作用させることによって得ることができる。本発明の方法において、アート錯体は予め生成されたものを上記水及び/又はアルコールを含有する溶媒中に含めて用いても良いし、あるいは上記金属化合物の少なくとも1種と上記塩の少なくとも1種とを上記水及び/又はアルコールを含有する溶媒中に含めてアート錯体を生成させ、それを直接乳酸類の生成反応に用いても良い。
【0037】
本発明の方法において、炭水化物含有原料に対する、水及び/又はアルコールを含有する溶媒の使用量は、当業者が適宜選択することができ、特に限定されるものではないが、通常、重量比で原料:溶媒=1:1〜1:1000であり、好ましくは1:5〜1:100である。
【0038】
水及び/又はアルコールを含有する溶媒に含有させる、インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物の合計量(使用量)は、炭水化物含有原料中に含まれる単糖類のモル数を基準として決定することができ、例えば、炭水化物含有原料中のグルコース残基1mol当たり、質量比で0.001〜1.0mol、好ましくは0.005mol〜0.1mol、例えば0.01〜0.05molに相当する量を使用できる(特にこれらに限定するものではない)。また、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩を使用する場合、その使用量は、当業者であれば適宜調節することができるが、上記金属化合物の使用量1.0molに対して0.1〜10.0molであり、好ましくは上記金属化合物の使用量と同等又はそれ以上の範囲であり、さらに好ましくは1.0molから4.0molの範囲である。
【0039】
触媒として、インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物並びにアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩、あるいはこれらから生成されるアート錯体を用いた乳酸類の製造方法は単糖類からの乳酸類の生成に特に適しており、従って炭水化物含有原料が単糖類を含む場合に特に好適である。
【0040】
本発明の方法では、インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物並びにアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩に加えて、スズ又は有機スズのパーフルオロアルキルスルホン酸塩をさらなる触媒として組み合わせて使用することもできる。スズ又は有機スズのパーフルオロアルキルスルホン酸塩は、セルロースなどの多糖類の分解反応及び糖の分解・異性化反応のための触媒として使用することができ、従って炭水化物含有原料がセルロースなどの多糖類を含む場合に特に好適である。
【0041】
本発明において、スズ又は有機スズのパーフルオロアルキルスルホン酸塩は、スズ(II)塩であってもスズ(IV)塩であってもよい。「パーフルオロアルキルスルホン酸塩」としては、特に限定されないが、例えばトリフルオロメタンスルホン酸塩、ペンタフルオロメタンスルホン酸塩、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸塩、ノナフルオロブタンスルホン酸塩等が挙げられる。本発明において、より好ましいパーフルオロアルキルスルホン酸塩は、トリフルオロメタンスルホン酸塩(慣用名:トリフラート)である。スズのパーフルオロアルキルスルホン酸塩としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸スズ(II)(Sn(OTf))(Tfはトリフルオロメチルスルホニル基CFSO−を表す。以後同様。)をとりわけ好適に使用することができる。有機スズのパーフルオロアルキルスルホン酸塩としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸ジブチルスズ(II)をとりわけ好適に使用することができる。1つの反応系で、スズ又は有機スズのパーフルオロアルキルスルホン酸塩を1種類を使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
スズ又は有機スズのパーフルオロアルキルスルホン酸塩の使用量としては、インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物の使用量1.0molに対して0〜1000molに相当する量を使用できる。当該金属化合物と同量又はそれより多い量を用いることが好ましく、当該金属化合物の使用量1.0molに対して1.0〜50mol、例えば2.0〜5.0molの範囲で使用することがさらに好ましい。
【0043】
本発明の方法では、上記触媒に加えて、さらにフェノール性化合物を溶媒に添加して使用することも好ましい。フェノール性化合物としては、特に限定するものではないが、例としてフェノール、クレゾール、アルキルフェノール、カテコール、ピロガロール、アルコキシフェノール、サリチル酸、サリチル酸エステル、2,2’−ビフェノール、及びキノリノールなどが挙げられる。フェノール性化合物の使用量は、当業者であれば適宜調節することができるが、インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物の合計量(使用量)1.0molに対して0.1〜10.0molであることが好ましく、1.0molから4.0molの範囲であることがさらに好ましい。フェノール性化合物の添加により、乳酸類の収率を大幅に向上させることができる。
【0044】
本発明の方法では、水及び/又はアルコールを含有する溶媒中で、触媒として機能するインジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物の存在下、炭水化物含有原料を加熱処理する。金属化合物に加えて、他の触媒、すなわち、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩、スズ又は有機スズのパーフルオロアルキルスルホン酸塩、フェノール性化合物などを共に使用する場合には、それらも、水及び/又はアルコールを含有する溶媒中に加えればよい。加熱処理の条件は、原料に含まれる糖類やアルコールの種類などによって当業者であれば適宜調節することができるが、100℃〜300℃が好ましく、120℃〜250℃がより好ましく、例えば170℃〜200℃を好適に使用できる。本発明の方法ではこのように従来技術と比べて比較的低めの加熱温度で実施できる。
【0045】
本発明の方法では、加熱処理を、酸素の非存在下で行うことも好ましい。酸素の非存在条件にするためには、加熱処理前に不活性ガスを反応容器に充填して、空気をパージ(排除)することが好適である。不活性ガスの種類は特に限定されるものではないが、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、炭酸ガスなどが例として挙げられる。
【0046】
本発明の加熱処理は、加圧下で行うことも好ましい。反応圧力は大気圧以上であることが好ましく、0.3MPa〜20MPaが好ましく、0.4MPa〜10MPaがさらに好ましい。
【0047】
本発明方法における水及び/又はアルコールを含有する溶媒中での反応は、限定するものではないが、例えばオートクレーブ中で行うことが好ましい。また他の好ましい反応形態として、連続流通系反応方法(連続法)が挙げられる。原料・溶媒・触媒を混合した反応液を、所定温度、圧力に制御された反応器に連続的に供給して、所定時間反応器内に滞留させて反応させることができる。
【0048】
本発明の方法では、例えば、電磁撹拌式オートクレーブにインジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物、炭水化物含有原料、必要に応じてアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩、スズ又は有機スズのパーフルオロアルキルスルホン酸塩、フェノール性化合物など、並びに水及び/又はアルコールを含有する溶媒を仕込み、不活性ガスで空気をパージした後、上記加熱温度まで加熱して所定時間反応させればよい。加熱時間は、当業者であれば適宜調節でき、特に限定するものではないが、加熱温度に達してから30分間〜10時間とすればよく、1時間〜5時間が好ましい。本発明の方法では、従来法と比較して、比較的短時間の処理時間でよい。所定の加熱時間経過後は、加熱を停止し、室温まで放冷させればよい。室温まで冷却した後、オートクレーブから反応生成物を取り出す。
【0049】
また連続流通系反応方法を用いる本発明の方法では、炭水化物含有原料、水及び/又はアルコールを含有する溶媒、インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物、必要に応じてアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩、スズ又は有機スズのパーフルオロアルキルスルホン酸塩、フェノール性化合物などを混合した反応液を、所定の加熱温度及び圧力に制御された反応器に連続的に供給し、所定の加熱時間にわたり反応器内に滞留させて反応させればよい。加熱時間経過後は、加熱を停止し、室温まで放冷させればよい。室温まで冷却した後、反応器から反応生成物を取り出す。
【0050】
以上のような方法により、乳酸類を高収率で生成させることができる。炭水化物含有材料が単糖又はオリゴ糖を含む場合、インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物並びにアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩を触媒として使用した場合、それらの糖から乳酸類を効率よく製造できる。例えばこの方法により、乳酸類を、炭水化物含有原料中の1単糖又はオリゴ糖当たりに生成されたモル数の基準で、15%〜75%、例えば50〜70%の収率で得ることができる。
【0051】
また、炭水化物含有原料がセルロースなどの多糖類を含む場合、スズ又は有機スズのパーフルオロアルキルスルホン酸塩を触媒として使用することによって、多糖類を効率よく加溶媒分解して糖類を得ることができ、その糖類から乳酸類を多量に生成することができる。例えばこの方法により、乳酸類を、炭水化物含有原料中の1グルコース残基当たりに生成されたモル数の基準で、15%〜75%、例えば50〜70%の収率で得ることができる。
【0052】
さらに、インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物並びにアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩に加えて、フェノール性化合物を組み合わせて使用した場合には、フェノール化合物を加えない場合と比較して、乳酸類の収率を例えば1〜20%程度増加させることができる。
【0053】
上記のようにして得られる反応液から、乳酸類を分離することも好ましい。この分離は、例えば液体クロマトグラフィー等の当業者に公知の有機酸分離方法によって行うことができる。
【0054】
本発明の方法では、触媒として使用する酸の使用量を少量に抑え、かつ短い処理時間ながらも乳酸類の収率を向上させることができて有用である。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
内容積50mlのステンレス製加圧反応装置(日東高圧製)に、金属化合物として塩化インジウム(III)四水和物14.9mg(0.05mmol)および塩としてビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムクロライド28.7mg(0.05mmol)、原料炭水化物としてフルクトース450.4mg(2.5mmol)、溶媒としてメタノール20mLと、撹拌子を加え、蓋を閉めた。このオートクレーブ中の空気を窒素ガスでパージし、0.5MPaまで加圧した後、マグネティックスターラーで混合物を撹拌しながら、電気炉を用いてオートクレーブを150℃になるまで加熱した。その後、150℃に保持しながら5時間撹拌を続けた後、オートクレーブを室温中で放冷した。冷却後、オートクレーブ中から反応溶液を取り出し、溶液中の生成物を液体クロマトグラフィーにより定量分析した。その分析結果における乳酸類の収率を後掲の表1に示す。なお各収率は、原料のD−フルクトースより理論上生成される、乳酸類のモル数(乳酸類/フルクトース=5mmol/2.5mmol)に対する、生成物のモル数(mol)の百分率(%)で表した。
【0057】
(実施例2)
加熱温度を180℃とした以外は、実施例1と同様に反応を行い、溶液中の生成物を液体クロマトグラフィーにより定量分析した。その分析結果における乳酸類の収率を後掲の表1に示す。
【0058】
(実施例3)
金属化合物として臭化インジウム(III)17.7mg(0.05mmol)を用いた以外は、実施例2と同様に反応を行い、溶液中の生成物を液体クロマトグラフィーにより定量分析した。その分析結果における乳酸類の収率を後掲の表1に示す。
【0059】
(実施例4)
金属化合物として酢酸インジウム(III)14.6mg(0.05mmol)を用いた以外は、実施例2と同様に反応を行い、溶液中の生成物を液体クロマトグラフィーにより定量分析した。その分析結果における乳酸類の収率を後掲の表1に示す。
【0060】
(実施例5)
金属化合物としてアセチルアセトンインジウム(III)20.6mg(0.05mmol)を用いた以外は、実施例2と同様に反応を行い、溶液中の生成物を液体クロマトグラフィーにより定量分析した。その分析結果における乳酸類の収率を後掲の表1に示す。
【0061】
(実施例6)
塩としてビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムブロミド30.9mg(0.05mmol)を用いた以外は、実施例2と同様に反応を行い、溶液中の生成物を液体クロマトグラフィーにより定量分析した。その分析結果における乳酸類の収率を後掲の表1に示す。
【0062】
(実施例7)
塩としてビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムヨード33.3mg(0.05mmol)を用いた以外は、実施例2と同様に反応を行い、溶液中の生成物を液体クロマトグラフィーにより定量分析した。その分析結果における乳酸類の収率を後掲の表1に示す。
【0063】
(実施例8)
塩として塩化リチウム2.1mg(0.05mmol)を用いた以外は、実施例2と同様に反応を行い、溶液中の生成物を液体クロマトグラフィーにより定量分析した。その分析結果における乳酸類の収率を後掲の表1に示す。
【0064】
(実施例9)
塩として1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート9.9mg(0.05mmol)を用いた以外は、実施例2と同様に反応を行い、溶液中の生成物を液体クロマトグラフィーにより定量分析した。その分析結果における乳酸類の収率を後掲の表1に示す。
【0065】
(実施例10)
塩として1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート11.3mg(0.05mmol)を用いた以外は、実施例2と同様に反応を行い、溶液中の生成物を液体クロマトグラフィーにより定量分析した。その分析結果における乳酸類の収率を後掲の表1に示す。
【0066】
(実施例11)
塩としてピコリン酸ナトリウム7.3mg(0.05mmol)を用いた以外は、実施例2と同様に反応を行い、溶液中の生成物を液体クロマトグラフィーにより定量分析した。その分析結果における乳酸類の収率を後掲の表1に示す。
【0067】
(実施例12)
塩としてナトリウム(トリヒドロキシ)フェニルボラート8.1mg(0.05mmol)を用いた以外は、実施例2と同様に反応を行い、溶液中の生成物を液体クロマトグラフィーにより定量分析した。その分析結果における乳酸類の収率を後掲の表1に示す。
【0068】
(実施例13)
金属化合物として三塩化ガリウム(III)8.8mg(0.05mmol)を用いて、加熱温度を190℃とし、2時間攪拌した以外は、実施例1と同様に反応を行い、溶液中の生成物を液体クロマトグラフィーにより定量分析した。その分析結果における乳酸類の収率を後掲の表1に示す。
【0069】
(実施例14)
金属化合物として塩化アルミニウム(III)六水和物12.1mg(0.05mmol)を用いて、加熱温度を190℃とし、2時間攪拌した以外は、実施例1と同様に反応を行い、溶液中の生成物を液体クロマトグラフィーにより定量分析した。その分析結果における乳酸類の収率を後掲の表1に示す。
【0070】
(結果)
表1に示すように、金属化合物と塩との反応により生成したアート錯体を触媒として用いた結果、乳酸類を高い収率で得ることができた。特に、金属化合物として塩化インジウム(III)四水和物を用いて、塩としてビス(トリフェニルホスフィン)イミニウム塩、塩化リチウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、ピコリン酸ナトリウムまたはナトリウム(トリヒドロキシ)フェニルボラートを用いて、かつ加熱温度を180℃とした場合(実施例2,3,6,7,8,9,11および12)、60%を超える高い収率で乳酸類が得られた。
【0071】
【表1】

【0072】
(アート錯体の生成)
金属化合物として塩化インジウム(III)四水和物(0.05mmol)と塩としてビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムクロライド(0.05mmol)を、メタノール(20mL)に溶解させ、オートクレーブ中で窒素ガス(0.5MPa)下190℃にて2時間加熱した(原料炭水化物の糖は加えていないが、実施例1の反応条件と同条件)。その後、オートクレーブを室温中で放冷した。冷却後、オートクレーブ中から反応溶液を取り出し、溶液中の生成物をESI−MSにて測定した。
【0073】
測定結果より、InCl4-のアート錯体の生成が観察された(図1)。
したがって、塩化インジウム(III)四水和物と、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムクロライドは、アート錯体を形成し、当該錯体が糖の分解・異性化反応のための触媒として作用することが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の方法は、単糖、多糖類等の糖類を含むバイオマスを乳酸類へ効率的に変換する新規な触媒反応系を提供する。本発明の方法を用いれば、炭水化物を含むバイオマスを利用した、乳酸類の効率的な製造が可能となる。本発明の方法を用いることで、例えば、炭水化物含有原料中の糖類から化学反応により一段階で、副生成物の生成を抑制しつつ、乳酸類を効率よく製造することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物と、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩とを触媒とし、水及び/又はアルコールを含有する溶媒中で、炭水化物含有原料を加熱処理することを特徴とする、乳酸類の製造方法であって、ただし、以下の化合物の組み合わせは該触媒より除く、上記乳酸類の製造方法:スズ又は有機スズのハロゲン化物および第一遷移系列金属のハロゲン化物、スズ又は有機スズのハロゲン化物および四級アンモニウム塩のハロゲン化物、ならびにレニウム化合物および第一遷移系列金属のハロゲン化物。
【請求項2】
インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物と、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩とがアート錯体を形成していることを特徴とする、請求項1に記載の乳酸類の製造方法。
【請求項3】
インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物が、ハロゲン化物塩及びカルボン酸塩からなる群から選択される、請求項1ないし2に記載の乳酸類の製造方法。
【請求項4】
インジウム化合物、ガリウム化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、及びレニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物が塩化物塩である、請求項3に記載の乳酸類の製造方法。
【請求項5】
アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第一遷移系列金属塩、四級アンモニウム塩、及び四級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩が、ハロゲン化物塩、カルボン酸塩及びホウ酸塩からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の乳酸類の製造方法。
【請求項6】
さらに、スズ又は有機スズのパーフルオロアルキルスルホン酸塩の少なくとも1種を触媒として利用することを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の乳酸類の製造方法。
【請求項7】
パーフルオロアルキルスルホン酸塩が、トリフルオロメタンスルホン酸塩である、請求項6に記載の乳酸類の製造方法。
【請求項8】
炭水化物含有原料がセルロースを含む、請求項6または7に記載の乳酸類の製造方法。
【請求項9】
加熱処理を、100℃〜300℃にて行う、請求項1〜8のいずれか1項に記載の乳酸類の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−214396(P2012−214396A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80108(P2011−80108)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】