説明

乾式ガスホルダーのシール材摩耗量検出方法およびシール材摩耗量検出装置

【課題】乾式ガスホルダーのシール材の摩耗量を簡単に正確でかつ安全に検出することができるガスホルダーのシール材摩耗量検出方法およびシール材摩耗量検出装置を提供する。
【解決手段】シールゴム23に永久磁石25が埋設されているとともに、シールゴム23と相対する位置の側板12外面に磁力検出器26が配設されていて、永久磁石25の磁力を磁力検出器26で測定することによってシールゴム23の摩耗量を検出するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式ガスホルダーのシール材摩耗量検出方法およびシール材摩耗量検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスホルダーは、製鉄所で発生する副生ガス等の貯蔵設備であり、ガスバランスの短時間調整及びガス圧調整を行うためのものである。
【0003】
図3に示すように、本発明が対象とする乾式ガスホルダー10は、基柱11と円筒状の側坂12からなる側壁構造と、円盤状のピストン13と、屋根14および底板15とで構成されていて、ピストン13は、基柱11または側板12をガイドとして、ガス19の流出入に応じて側板12に沿って上下に摺動し、その外周にはピストン13と側坂12の間の気密保持をするためのシール装置16が設けられている。このシール装置16には、シール油の静圧でガスをシールするシール油方式と、摺動部にシール材(シールゴム)を多段に配設するゴムパッキン方式の2タイプがある。シール油方式はシール油の静圧をガス圧以上に保つことでガスをシールするとともに、シール油を側板との摺動部の潤滑に使っている。一方、ゴムパッキン方式は多段に配設したシール材(シールゴム)の面圧でガスをシールし、摺動部に潤滑材としてグリースを注入している。
【0004】
図4は、シール油方式のシール装置16の一例を示すものである。シール油24の静圧をガス圧以上に保つことでガスをシールするとともに、シール材(ここでは、シールゴム)23からなる摺動部をカウンタウエイトによる押し付け機構(図示せず)で側板12に押し付けて、その面圧でシール油24とガス19間をシールするものである。なお、図4中、21はピストンフートリング、22はシール材保持部材を示す。
【0005】
このようなシール装置16の摺動部(シール材)23は乾式ガスホルダーの心臓部であり、その摩耗劣化度合いや寿命を正確に測定・評価することが防災上非常に重要となっている。
【0006】
これまでは、摺動部(シール材)の摩耗劣化度合い(摩耗量)を正確に測定するには、ガスホルダーの運転を停止し、シール油24を除去した後、シール材23を取り外して、摩耗量の測定を行なっていた。
【0007】
また、シール材の寿命をこれまでの実績からピストン走行距離などで予測する手法がとられていた。
【0008】
また、シール材に複数のループ回路からなる摩耗検知回路を埋設し、各ループ回路の電気的導通の有無を検知してシール材の摩耗度を知る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
また、シール装置に超音波距離計を設置し、その設置位置から側板までの距離を検出してシール材の摩耗量を計測する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】実開昭58−172804号公報
【特許文献2】特開昭63−083499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、ガスホルダーの運転を停止し、シール油を除去した後、シール材を取り外して、シール材の摩耗量の測定を行なう方法では、時間と費用が莫大となるとともに、ガスホルダー停止中に圧力変動等が大きくなることや、高炉の突発休風等があった場合に、運用容量や保安容量が不足し、防災上のリスクが極めて大きくなる問題があった。
【0011】
また、ピストンの走行距離よりシール材の寿命を予測する方法では、ガスホルダーの使用方法やガス需給状態の違いにより実績との誤差が大きくなる可能性があり、予測した寿命前にガスホルダーシール性能が著しく低下し、ガス漏洩事故、最悪の場合爆発事故に発展する可能性があった。
【0012】
また、特許文献1、2のように、シール装置に電気回路あるいは超音波距離計を設置する方法では、ガスホルダー内に配設した電気回路あるいは超音波距離計の保守・点検が困難である。しかも、検出用の電気配線等をガスホルダー内に配設する必要があるため、それが着火源となる危険性がある。
【0013】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、乾式ガスホルダーのシール材の摩耗量を簡単に正確でかつ安全に検出することができる乾式ガスホルダーのシール材摩耗量検出方法およびシール材摩耗量検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0015】
[1]側板に沿って上下動するピストンの外周に、該ピストンと前記側坂の間の気密保持をするためのシール装置が配設された乾式ガスホルダーにおいて、
前記シール装置のシール材の摩耗にともなって側板に近づくように永久磁石をシール装置に取り付けておき、その永久磁石の磁力を当該ガスホルダーの外部から測定することによって前記シール材の摩耗量を検出することを特徴とする乾式ガスホルダーのシール材摩耗量検出方法。
【0016】
[2]側板に沿って上下動するピストンの外周に、該ピストンと前記側坂の間の気密保持をするためのシール装置が配設された乾式ガスホルダーにおいて、
前記シール装置のシール材の摩耗にともなって側板に近づくようにシール装置に取り付けられた永久磁石と、その永久磁石の磁力を当該ガスホルダーの外部から測定することによって前記シール材の摩耗量を検出するための磁力測定器を備えたことを特徴とする乾式ガスホルダーのシール材摩耗量検出装置。
【0017】
[3]前記[2]に記載のシール材摩耗量検出装置を備えたことを特徴とする乾式ガスホルダー。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、乾式ガスホルダーの心臓部である摺動部(シール材)の摩耗量を簡単に正確でかつ安全に検出することができる。その結果、摩耗量測定費用を大幅に削減できるとともに、シール性能低下によるガス漏れやそれに起因する爆発等のリスクを大幅に低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態を図面に基づいて以下に述べる。
【0020】
前述したように、この実施形態においては乾式ガスホルダーを対象としており、図3に示したように、乾式ガスホルダー10は、基柱11と円筒状の側坂12からなる側壁構造と、円盤状のピストン13と、屋根14および底板15とで構成されていて、ピストン13は、基柱11または側板12をガイドとして、ガス19の流出入に応じて側板12に沿って上下に摺動し、その外周にはピストン13と側坂12の間の気密保持をするためのシール装置16が設けられている。
【0021】
図1は、そのシール装置16を示すものであり、シール油方式のシール装置である。すなわち、シール油24の静圧をガス圧以上に保つことでガスをシールするとともに、シール材(ここでは、シールゴム)23からなる摺動部をカウンタウエイトによる押し付け機構(図示せず)で側板12に押し付けて、その面圧でシール油24とガス19間をシールするようになっている。なお、図1中、21はピストンフートリング、22はシール材保持部材を示す。
【0022】
そして、この実施形態においては、シールゴム23に永久磁石25が埋設されているとともに、シールゴム23と相対する位置の側板12外面に磁力検出器26が配設されていて、永久磁石25からの磁力を磁力検出器26で測定し、増幅器27を経由させて、記録計やモニター(図示せず)に表示することによって、シールゴム23の摩耗量を検出するようになっている。
【0023】
すなわち、シールゴム23の摩耗量が増加するにつれて、永久磁石25が側板12に近づくようになるので、図2に示すように、磁力検出器26が測定する永久磁石25からの磁力が増加する。したがって、磁力検出器26による磁力の測定結果に基づいて、シールゴム23の摩耗量を検出することができる。
【0024】
これにより、この実施形態では、シールゴム23の摩耗量を検出するに際し、ガスホルダーの運転を停止することなく正確に検出することができる。しかも、ガスホルダー内に電気回路や超音波距離計等の機器を配設していないので、保守・点検が容易であるとともに、着火源となる危険性もない。
【0025】
このようにして、この実施形態においては、乾式ガスホルダーの心臓部であるシール材(摺動部)23の摩耗量を簡単に正確でかつ安全に検出することができる。その結果、摩耗量測定費用を大幅に削減できるとともに、シール性能低下によるガス漏れやそれに起因する爆発等のリスクを大幅に低減させることができる。
【0026】
なお、上記の実施形態においては、シール油方式のシール装置を用いた場合で説明したが、ゴムパッキン方式のシール装置を用いた場合は、摺動部として多段に配設したシールゴムに永久磁石を埋設すればよい。
【0027】
また、シール油方式のシール装置において、摺動部(シール材)として鋼板が配設されている場合は、シール材(鋼板)に永久磁石を埋設すると、シール材(鋼板)が磁化されてしまって、シール材の摩耗量と磁力検出器26の測定磁力との関係が明確にならないので、シール材(鋼板)の外部に永久磁石を設置・固定して、シール材(鋼板)の摩耗にともなって永久磁石が側板に近づくようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態における乾式ガスホルダーのシール装置を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるシールゴムの摩耗量と永久磁石からの磁力の関係を示す図である。
【図3】乾式ガスホルダーの構成を示す図である。
【図4】乾式ガスホルダーのシール装置を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10 乾式ガスホルダー
11 基柱
12 側坂
13 ピストン
14 屋根
15 底板
16 シール装置
19 ガス
21 ピストンフートリング
22 シール材保持部材
23 シールゴム(摺動部)
24 シール油
25 永久磁石
26 磁力検出器
27 増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側板に沿って上下動するピストンの外周に、該ピストンと前記側坂の間の気密保持をするためのシール装置が配設された乾式ガスホルダーにおいて、
前記シール装置のシール材の摩耗にともなって側板に近づくように永久磁石をシール装置に取り付けておき、その永久磁石の磁力を当該ガスホルダーの外部から測定することによって前記シール材の摩耗量を検出することを特徴とする乾式ガスホルダーのシール材摩耗量検出方法。
【請求項2】
側板に沿って上下動するピストンの外周に、該ピストンと前記側坂の間の気密保持をするためのシール装置が配設された乾式ガスホルダーにおいて、
前記シール装置のシール材の摩耗にともなって側板に近づくようにシール装置に取り付けられた永久磁石と、その永久磁石の磁力を当該ガスホルダーの外部から測定することによって前記シール材の摩耗量を検出するための磁力測定器を備えたことを特徴とする乾式ガスホルダーのシール材摩耗量検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシール材摩耗量検出装置を備えたことを特徴とする乾式ガスホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−102008(P2008−102008A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284431(P2006−284431)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】