乾式クリーニング筐体及び乾式クリーニング装置
【課題】洗浄ムラや洗浄媒体の漏出等の問題を来たすことなく大面積同時クリーニング化に対応でき、クリーニングの自由度も維持できる乾式クリーニング筐体を提供する。
【解決手段】筐体50の開口部18が洗浄対象物に当てられて塞がれると、吸気手段によって筐体50内が負圧化され、インレット24から高速気流が流入して旋回空気流が生じ、これによって洗浄媒体5が飛翔して洗浄がなされる。筐体50の中央部には中空円筒状の流路制限部材16が設けられ、その両端部には多孔性の分離板14が設けられている。流路制限部材16が吸引流路として機能するため、開口部18が離されたとき、筐体内の洗浄媒体5は両方の分離板14に吸着される。これにより、洗浄時における洗浄媒体の軸心方向の分布が均一となり、洗浄ムラが抑制される。
【解決手段】筐体50の開口部18が洗浄対象物に当てられて塞がれると、吸気手段によって筐体50内が負圧化され、インレット24から高速気流が流入して旋回空気流が生じ、これによって洗浄媒体5が飛翔して洗浄がなされる。筐体50の中央部には中空円筒状の流路制限部材16が設けられ、その両端部には多孔性の分離板14が設けられている。流路制限部材16が吸引流路として機能するため、開口部18が離されたとき、筐体内の洗浄媒体5は両方の分離板14に吸着される。これにより、洗浄時における洗浄媒体の軸心方向の分布が均一となり、洗浄ムラが抑制される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔する洗浄媒体を洗浄対象物に接触(衝突の概念を含む)させて洗浄する乾式クリーニング装置に関し、詳しくは、洗浄対象物の任意の部位に当てて洗浄することが可能で特にハンディタイプとして好適な乾式クリーニング装置及び該乾式クリーニング装置に用いられる乾式クリーニング筐体、該乾式クリーニング装置を用いた乾式クリーニング方法に関する。
本発明は、例えば、フローはんだ槽工程で用いられる、ディップパレットもしくはキャリアパレットと呼称されるマスク治具に付着したフラックスを除去するのに用いられ、特に洗浄対象物の側面や開口部の周辺など、狭い領域に固着したフラックスを除去することに適している。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント基板製造におけるフローはんだ槽によるはんだ付け工程において、はんだ付け処理する領域以外をマスクする治具が多く用いられている。このようなマスク治具(ディップパレット、キャリアパレットと呼ばれる)は、繰り返し使用されるうちに、表面にフラックスが堆積して固着しマスクの精度を下げるために、定期的に洗浄する必要があった。
一般的には、このような洗浄は溶剤に浸漬して行うため、大量の溶剤を消費しており、コストアップを避けられず、作業者への負荷も極めて大きい。浸漬せずに装置内で溶剤を洗浄対象物に噴射する方式も知られているが、溶剤を大量に使用するという点に変わりはない。
【0003】
この問題を解消する技術として、飛翔する洗浄媒体を洗浄対象物に接触させて洗浄する乾式の洗浄装置が知られている。特許文献1、2には、円筒形の容器の側面に開口部を設け、容器内で圧縮気流の旋回空気流により円周方向に洗浄媒体を飛翔させ、開口部に接した洗浄対象物に洗浄媒体を衝突させる洗浄方法が開示されている。しかしながらこの方式では、圧縮気流で旋回空気流を形成しているため、開口部から洗浄対象物が離された際に、洗浄媒体が容器外部に漏出するという問題を避けられない。
この問題を解消すべく、特許文献1では開口部に網部材を設けて漏出を防いでいるが、洗浄媒体が洗浄対象物に衝突する際のエネルギーが低下したり、網部材に洗浄媒体が挟まって洗浄能力が低下するなどの新たな問題を抱えている。
特許文献2では、開口部を塞ぐ開閉蓋を設けて漏出を防ぐようにしているが、開口部から洗浄対象物が離された際に開閉蓋を素早く移動させて塞ぐ必要があり、作業者に余計な注意力や労力を強いるとともに、機構的に複雑で操作が難しく、故障しやすいという問題があった。
【0004】
このような状況に鑑み、本出願人は、筐体に吸気手段を接続し、開口部が洗浄対象物で塞がれた状態で通気路を介して筐体外部から内部へ流入する気流により発生する旋回空気流によって薄片状の洗浄媒体を飛翔させるとともに、筐体内に気体や粉塵の通過を許容し且つ洗浄媒体の通過を不可とする、例えば網目状の多孔手段を設けて旋回空気流形成領域で洗浄媒体が留まるようにし、旋回空気流によって洗浄媒体の循環飛翔が継続する乾式クリーニング装置を提案した(特願2010−175687号)。
この乾式クリーニング装置によれば、開口部から洗浄対象物が離されても、通気路が大気圧と同レベルとなって旋回空気流が消失するとともに、吸気による負圧で開口部から外気が筐体内に多く流入するため、筐体内の洗浄媒体は多孔手段に吸着された状態となって筐体内に留まり、開口部からは漏れない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記本出願人による先願技術は、図17に示すように、吸気手段6によって筐体4の内部を吸引し、筐体4の開口部18を洗浄対象物20に当てて塞ぎ、筐体4の内部を負圧化させてインレット24から外部空気を筐体内に高速で流入させて旋回空気流30を生じせしめ、これによって洗浄媒体5を飛翔させ、開口部18における洗浄対象物20の被洗浄面に衝突させてクリーニングするものである。旋回空気流30はその流路断面積を流路制限部材16により制限されている。
開口部18が塞がれる前は、洗浄媒体5は吸引作用により多孔手段としての分離板14に吸着されて筐体内部に保持された状態となっている。
この構成によれば、作業者が手に持って筐体を移動させることができ、洗浄対象物20の所望の部位をスポット的にクリーニングすることができ、クリーニングの自由度が極めて高い。しかしながら、1回の作業でクリーニングできる範囲は開口部18の範囲に限られ、小面積であるため、広い面積をクリーニングする場合には、筐体をこまめに移動させなければならず、煩わしさを否めない。
【0006】
クリーニングの自由度を維持しつつ広い面積の同時クリーニング化に対応する場合、必然的に筐体および開口部を大型化する必要がある。この場合、旋回空気流の回転軸方向(以下、「軸心方向」という)にサイズを大きくすることが、洗浄の原理的に望ましい。しかしながら、単純に乾式クリーニング筐体を軸心方向に引き延ばした場合、筐体の底面(軸心方向の一端)に配置された分離板14と遠い位置に洗浄媒体が飛翔しにくくなり、その部分の洗浄能力が低下し、全体では洗浄ムラが発生する。
上記のように、開口部18が塞がれるまでは、洗浄媒体5は分離板14に吸着保持されており、その状態からインレット24からの高速空気流で分離板14から剥がされて飛翔するため、必然的に分離板14から遠い位置では洗浄媒体は飛翔しにくくなる。
【0007】
また、筐体および開口部を大型化した場合、これに対応して洗浄媒体の数量も増やす必要があるが、軸心方向に筐体サイズを大きくしても分離板14の面積は変化しないため、分離板14から遠い位置では、洗浄媒体飛翔・吸着効果が薄れ、開口部を離したときに吸着しきれなかった洗浄媒体が開口部から漏れやすくなる。
また、筐体を軸心方向に複数直列配置するレイアウトも考えられるが、筐体4は、旋回空気流を生じさせる上部筐体4Aと、吸引手段(吸気手段)を接続するための下部筐体4Bとから構成されているため、下部筐体4Bが干渉することを避けられない。
このため、複数の筐体を軸心方向に隙間無く並べることができず、複数の筐体を同時に用いた大面積の洗浄も不向きであるという課題があった。
【0008】
本発明は、上記のような現状に鑑みてなされたもので、洗浄ムラや洗浄媒体の漏出等の問題を来たすことなく大面積同時クリーニング化に対応でき、クリーニングの自由度も維持できる乾式クリーニング筐体及び該乾式クリーニング筐体を備えた乾式クリーニング装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、旋回空気流の流路断面積を制限する流路制限部材を吸引流路として機能させることにより、筐体毎の下部筐体の必要性を無くし、軸心方向における筐体の複数配置レイアウトを可能にするとともに、開口部の大面積化を企図したものである。
【0010】
上記着想の下、本発明は、洗浄媒体を気流により飛翔させ、上記洗浄媒体を洗浄対象物に当てて洗浄対象物の洗浄を行う乾式クリーニング筐体において、上記洗浄媒体を飛翔させる内部空間と、上記洗浄対象物に当接して上記洗浄媒体を上記洗浄対象物に衝突させる開口部と、外部からの空気を上記内部空間へ通す通気路と、上記通気路を介して上記内部空間に導気された空気を吸引することにより上記内部空間に旋回気流を生じさせる吸気口と、上記洗浄対象物から除去された除去物を上記吸気口側へ通過させる多孔手段と、上記旋回気流の軸心方向に延びる筒形状に設けられると共に該筒形状の内部は吸引流路として上記吸気口に連通される流路制限部材と、からなる筐体部を有し、上記筐体部は上記軸心方向で複数領域に区画され、該複数領域の各領域で上記洗浄媒体を独立して収容することを特徴とする。
【0011】
本明細書における用語の定義は以下の通りである。
本発明における筐体とは、内側に旋回空気流を発生させやすい形状の空間を備えた容器状の構造物を示す。旋回空気流を発生させやすい形状とは、気流が筐体の内壁を沿って流れて循環する、連続した内壁を持つ形状であり、より望ましくは回転体形状の内壁または内部空間を備える形状である。
通気路とは、気流を一定の方向に流れやすくする手段のことであり、滑らかな内面を備える管形状であることが一般的である。しかしながら、たとえば滑らかな面を持つ、板状の流路制御板などを用いても、気体を面に沿った方向に流れやすくする、整流効果が発現するため、このような形態も含めて通気路とする。
【0012】
また、気流が直線的に流れる形状が一般的であるが、流路抵抗をあまり生じない緩やかなカーブを備えていても整流効果を得ることができる。ただし、特に記載されない場合、通気路の方向とは空気流入口において噴出する気流の方向のことを意味する。直線の管形状を備え、一方の端部が筐体内壁の空気流入口に接続し、もう一方の端部が筐体外の大気に開放されている空気取り入れ口である通気路を、本発明ではインレットと呼称する。インレットは一般的に流体抵抗が低く、滑らかな内面を持ち、管の断面は円形、長方形、スリット形状などが用いられる。
【0013】
本発明において、旋回空気流とは、空気流入口からの流入気流により加速された気流が、筐体の内壁に沿って方向を変えつつ流れ、空気流入口の位置に、循環して戻り、流入気流と合流する気流である。一般的には、内壁が連続している閉空間内で、内壁の接線方向に向けて気流を流入させることにより発生する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、軸心方向における筐体の長さを大きくしても均一な洗浄能力を得ることができるとともに洗浄媒体の飛散を抑制でき、洗浄能力の低下を来たすことなくクリーニング面積の拡大化を容易に実現することができる。
また、軸心方向において筐体を複数連結することにより筐体の所望の長サイズ化を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る乾式クリーニング筐体を示す図で、(a)は縦断面図、(b)は(a)のE-E線での断面図である。
【図2】筐体を複数連結した構成の乾式クリーニング筐体の断面図である。
【図3】図2のC1における拡大断面図である。
【図4】図2のC2における拡大断面図である。
【図5】筐体を複数連結した構成の乾式クリーニング筐体の斜視図である。
【図6】各クリーニング筐体による洗浄能力を視覚化した実験結果を示す写真画像である。
【図7】同各写真画像をグラフ化した特性図である。
【図8】クリーニング筐体を連結した各構成による洗浄能力を視覚化した実験結果を示す写真画像である。
【図9】同各写真画像をグラフ化した特性図である。
【図10】筐体を複数連結した構成の乾式クリーニング筐体の変形例を示す図である。
【図11】第2の実施形態に係る乾式クリーニング筐体を示す図で、(a)は縦断面図、(b)は(a)のE-E線での断面図である。
【図12】第2の実施形態に係る筐体を複数連結した構成の概要断面図である。
【図13】第3の実施形態に係る筐体を示す単体使用時の分解斜視図である。
【図14】同筐体を複数連結した構成の斜視図である。
【図15】比較例に係る乾式クリーニング筐体を示す図で、(a)は縦断面図、(b)は(a)のE-E線での断面図である。
【図16】比較例に係る筐体を複数連結した構成の概要斜視図である。
【図17】本発明の基本となる乾式クリーニング装置を示す概要断面図である。
【図18】同装置の洗浄動作を示す図である。
【図19】同乾式クリーニング装置の使用状態を示す斜視図である。
【図20】負圧と流量との関係を示す特性図である。
【図21】洗浄媒体の旋回速度と旋回流路幅との関係を示す特性図である。
【図22】洗浄媒体の衝突角度と洗浄能力との関係を示す特性図である。
【図23】空気流入口から開口部までの距離と洗浄能力との関係を示す特性図である。
【図24】洗浄媒体の量と洗浄能力との関係を示す特性図である。
【図25】薄片状の洗浄媒体の衝突時のパターンを示す模式図である。
【図26】各洗浄媒体の機械的物性の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
まず、図17乃至図19に基づいて、本発明の基本となる上記本出願人による先願技術としての乾式クリーニング装置の構成及び機能について説明する。
また、本発明を想到するに至った上記先願技術に基づく考察を、図20乃至図24の特性図を交えて説明する。
図17に基づいて、本発明の基本技術としてのハンディタイプの乾式クリーニング装置2の構成の概要を説明する。図17(a)はA−A線での横断面図、(b)はB−B線での縦断面図である。
乾式クリーニング装置2は、内部に洗浄媒体5の飛翔空間を有する乾式クリーニング筐体(以下、単に「筐体」という)4と、筐体4内を負圧化する吸気手段6とを備えている。
筐体4は、筐体本体部としての円筒形状の上部筐体4Aと、逆円錐形状の下部筐体4Bとから一体として構成されている。筐体4の大きさは、特に限定されないが、作業者が持ち運べる大きさであり、直径10〜300mm程度が好ましい。
ここでの上部、下部は図面上の便宜的呼称であって、実機上の上下とは必ずしも関係はない。
【0017】
下部筐体4Bは、その円錐頂部に吸気口8を一体に備えており、吸引ダクトとして機能する。
吸気手段6は、吸気口8に一端を接続されたフレキシブルな吸引ホース10と、該吸引ホース10の他端に接続された吸引装置12とを有している。吸気口8の大きさは、吸引ホース10と同じであり、特に限定されないが、断面積100〜10000mm2程度が好ましく乾式クリーニング装置2の大きさと吸引装置12の性能によって最適なものを選択する。吸引装置12としては、家庭用掃除機、真空モータや真空ポンプ、あるいは流体の圧送により間接的に低圧化ないし負圧化を生じさせる装置などを適宜用いることができる。吸引装置12の性能は、図20に示すように負圧が高いと流量が少なくなり、負圧が低いと流量が多くなる右肩下がりの特性であり、種類によって図18の(a)や(b)の特性がある。また乾式クリーニング装置2の形状によって図20の(c)や(d)の特性があるため、一般的には(c)のような特性では(a)を、(d)のような特性では(b)を選択するのが良い。なお、部材の上面、底面等の上下の位置関係は図面上の基準にすぎない。
【0018】
上部筐体4Aの底面部は、下部筐体4Bの上端部を結合する嵌合凹部4A−1となっており、上部筐体4Aと下部筐体4Bは分離可能となっている。上部筐体4Aの上面4A−2は密閉されている。便宜上、結合構成を嵌合としたが、位置決めと密閉が可能であればなんでもよく、ネジ、ピン止め、接着でもかまわない。
上部筐体4Aの底面部における下部筐体4Bとの境界部分には、多孔手段としての多孔性の分離板14が設けられている。分離板14は、パンチングメタルのような穴が空いた板状の部材である。分離板14の穴の大きさは、吸引されたときの洗浄媒体5の下部筐体4B側への移動を阻止するものであり、洗浄媒体5の大きさによって直径が0.1〜10mmから最適なものを選択する。図17(a)では分離板14の表示を一部省略している。なお、洗浄媒体5は分かり易くするためにその大きさを誇張表示している。
多孔手段としては、洗浄媒体5を通さずに空気及び粉塵(洗浄対象物から除去された除去物)を通過させる大きさの細孔を多く備える多孔形状であればよく、スリット板や網などを用いてもよく、材質も滑らかな面を備えていれば、樹脂や金属などを自由に選択して良い。
多孔手段は旋回空気流の中心軸と直交する面として配置されている。旋回空気流の中心軸と直交することによって、多孔手段に沿う方向に気流が流れることにより、洗浄媒体5の滞留を防ぐ効果がある。
旋回空気流の減衰と洗浄媒体5の滞留を抑えるために、筐体内面は段差、凹凸がなく平滑であることが望ましい。
【0019】
多孔手段は、旋回空気流に沿った面に配置されることにより、表面に吸着した洗浄媒体を再飛翔させることができる。
筐体4の材質は特に限定されないが、異物の付着や洗浄媒体との摩擦による消耗を防ぐために、例えばアルミ二ウムやステンレスなどの金属製が好適であるが、摩擦による消耗に耐えうるものであれば樹脂製のものを用いることもできる。
【0020】
上部筐体4Aの内部中心には、上部筐体4Aの円筒軸を共通の軸とするように、円筒状の流路制限部材16が筐体の一部として設けられ、流路制限部材16の下端は分離板14に固定されている。
流路制限部材16は旋回空気流の流路断面積を絞って流速を向上させる目的で設けられている。流路制限部材16により上部筐体4A内には滑らかな壁面を有するリング状の旋回空気流移動空間(洗浄媒体の飛翔空間)が形成されている。
上部筐体4Aの形状によっては、流路制限部材16の中心軸と上部筐体4Aの中心軸を必ずしも共通にする必要はなく、リング状の空間が確保できていれば偏芯していても良い。
流路制限部材16の大きさは、特に限定されないが、図1に示すように、洗浄媒体5が密集して目詰まりしない程度の上部筐体4Aとの旋回流路幅W5が必要である。また図21に示すように、上記旋回流路幅W5が狭いと洗浄媒体5同士が混み合い洗浄媒体5の旋回速度が遅くなる。上記旋回流路幅W5が広いと流路断面積が大きくなるため流速が遅くなり旋回速度が遅くなる。そのため流路制限部材16の大きさは、洗浄媒体5の大きさと投入量に左右されるが、5〜50mm程度の旋回流路幅W5となる。
【0021】
上部筐体4Aの側面の一部には、旋回空気流で飛翔する洗浄媒体5を洗浄対象物に接触ないし衝突させるための開口部18が形成されている。
上部筐体4Aは円筒形状であり、側面の一部に開口部18を設けることにより、筐体4全体としては、図17(b)に示すように、開口部18以外の外周部分が洗浄対象物20から大きく逃げる(離れる)レイアウトとなり、洗浄対象物20に対する局所的当接、換言すればピンポイントクリーニングの自由度が高められている。
開口部18は、上部筐体4Aの側面を円筒軸に平行な平断面により切断した形状であり、円筒軸と直交する方向から見て矩形形状をなしている。
【0022】
上部筐体4Aの側面には空気流入口22が形成されており、空気流入口22には、旋回空気流発生手段で且つ通気路としてのインレット24が上部筐体4Aの外方から接続されて上部筐体4Aに一体に固定されている。
インレット24は分離板14に略平行に設定されており、その通気方向は、上部筐体4Aの半径方向に対して傾き、その通気路中心の延長線が開口部18に達するように位置している。
傾きの角度は、特に限定されないが、洗浄媒体5の衝突角度とほぼ同義であるために水平に近い角度で衝突するほど衝突エネルギーが分散してしまう。そのため図22に示すように90°が最も洗浄能力が高く、低い角度では洗浄能力が低くなる。
また図23に示すように、空気流入口22から開口部18までの距離が短いほど洗浄能力が高く、長くなるほど洗浄能力が低くなる。
そのため、上記2つの条件のバランスを考慮して、インレット24の位置を決定する。
空気流入口22の大きさは、空気流入口22での流速が50〜150m/sになるように決定するのが好ましい。これは吸気手段6の性能により、下記式から簡単に求まる。
流速V(m/s)=吸気流量Q(m3/s)/空気流入口面積S(m2)
流速がこの値から外れると、洗浄媒体5を衝突させるエネルギー効率が悪くなり、洗浄能力が低くなる。
【0023】
インレット24は、上部筐体4Aの高さ方向に延びる幅を有している。インレット24は上部筐体4Aの高さよりも径又は幅が小さいものを1つ配置してもよく、単体のインレットを高さ方向に複数配置する構成としてもよい。
また、空気流入口22の大きさは吸気流量によって変動するため、インレット24に開口面積の異なる入れ子状の通気路部材(通気路幅変更手段)を交換可能に設け、吸気流量に応じて空気流入口22の大きさを変更することで、簡単に最適な流速にすることができる(後述の第3の実施形態参照)。
閉空間が形成された時に生じる旋回空気流は、分離板14上に吸着した洗浄媒体を吹き払い、再飛翔させる効果を有する。
【0024】
開口部18は、開放されたときに、空気流入口22における内圧を、大気圧もしくはその近傍にするために十分な大きさの面積を備える。また、空気流入口22も、開口部18の開放時に大気圧もしくはその近傍になりやすい位置に配置される。
このような構成を備えることにより、乾式クリーニング装置2を洗浄対象物に当てていない間は、空気流入口22が大気圧に近づくことによって、外部との差圧が低下し、その結果流入する気流が劇的に低減する。一方、開口部18から流入する気流は多くなるため、洗浄媒体5が筐体4内から漏れ出ることを防ぐことができる。
また、開口部18が開放されている状態では、閉塞されている場合に比べて流入する気流の総量が2〜3倍になるため、とくに薄片状の洗浄媒体では多孔手段上に吸着されるため、再飛翔せず筐体の外に漏れることがない。
開口部18の大きさは、空気流入口22の影響を受けないように、空気流入口22の2〜3倍の面積が必要である。開口部18の上記軸心方向の幅が、上部筐体4Aの軸心方向における幅と同一であれば、軸心方向と直交する方向の幅は空気流入口22の2〜3倍となる。
また、吸気手段6を変更せずに上部筐体4Aの高さを大きくする場合、空気流入口22の流速を一定にするために空気流入口22の面積を小さくする必要がある。それに伴い、開口部18の軸心方向と直交する方向の幅を小さくする。
これにより、開口部18の閉塞時での密閉度が高くなり、また開放時での洗浄媒体5の飛び出し防止につながる。
【0025】
洗浄媒体5は、薄片状の洗浄片の集合であるが、ここでは薄片状の洗浄片単体としての意味でも用いている。
薄片状の洗浄媒体とは面積が100mm2以下の薄片である。また、洗浄媒体の材質はポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタラート、アクリル、セルロース樹脂などの耐久性のある素材からなるフィルムであり、厚みは0.02mm以上0.2mm以下である。但し、洗浄対象物によっては洗浄媒体の厚みやサイズや材質を変えることが効果的な場合もあり、これらの洗浄媒体を使用する場合も本発明の範囲に含まれるため、前記洗浄媒体条件にはとらわれないものとする。
洗浄媒体の材質に関しては、樹脂だけにとどまらず、紙、布などの薄片や、あるいは、雲母などの鉱物、セラミックやガラス、金属箔であっても、薄く軽量で飛翔しやすい形状にすることで使用することができる。
乾式クリーニング装置2に投入する洗浄媒体5の量は、内部空間26の容積によって適量が決定される。図24に示すように、適量より少なければ洗浄媒体5が洗浄対象物20に衝突する頻度が少なくなり、洗浄能力が落ちる。適量より多ければ、内部空間26の洗浄媒体5が互いに干渉し合い、必要とする旋回速度に到達せずに洗浄能力が落ちてしまう。
また、洗浄媒体5自体の形状による飛翔のしやすさにも影響されるので、適宜洗浄媒体5の量は変わる。
これらのことから、洗浄媒体5には内部空間内での適正量が存在するので、乾式クリーニング装置2が長尺化する場合には、全体の内部空間を仕切板で区画し、他の区域に洗浄媒体が入り込まないように分けることで洗浄媒体5の偏りが少なくなり、洗浄むらの抑制になる。
【0026】
上部筐体4Aのリング状の内部空間26は、旋回空気流によって洗浄媒体5を飛翔させて開口部18に対向する洗浄対象物20に接触させる機能を担う空間である。
流路制限部材16の内部空間34は、旋回空気流が作用しない空間である。
【0027】
以上のように構成される乾式クリーニング装置2による洗浄動作(以下、クリーニング動作という)を、図18を参照して説明する。なお、図18では、部材の厚み等を省略し、分かり易くするために静空間としての内部空間34をハッチングで表示している。
図18(b)は、開口部18を洗浄対象物20から離して開口部18を開放し吸気を行っている状態を、図18(a)は、開口部18を洗浄対象物20に当てて閉塞した状態を示している。
クリーニング動作に先立って、洗浄媒体5を筐体4内に供給する。筐体4内に供給された洗浄媒体5は、図18(b)下図に示すように、分離板14に吸い付けられて筐体4内に保持される。
筐体4内は吸気により負圧状態となっているので、筐体外部の空気がインレット24を通して筐体4内に流入するが、このときのインレット24内の流れは流速・流量ともに小さいので、筐体4内に発生する旋回空気流30は洗浄媒体5を飛翔させる強さには至らない。
【0028】
筐体4内に洗浄媒体5が供給・保持されたら、図18(a)に示すように、開口部18を洗浄対象物20の表面のクリーニングすべき部位に当てて閉塞状態にする。
開口部18が塞がれると、開口部18からの吸気が止まるので、筐体4内の負圧は一気に増大し、インレット24を通じて吸い込まれる空気量・流速ともに増大し、インレット24内で整流され、インレット出口(空気流入口22)から筐体4内に高速空気流となって吹き出す。
吹き出した空気流は、分離板14上に保持されている洗浄媒体5を開口部18に対向する洗浄対象物20の表面に向けて飛翔させる。
上記空気流は、旋回空気流30となって、筐体4の内壁に沿って円環状に流れつつ、一部は分離板14の穴を通って吸気手段6により吸気される。
このように筐体4内を円環状に流れた旋回空気流30がインレット24の出口部に戻ると、インレット24から入り込む空気流が旋回空気流30に合流しつつ加速する。このため、厳密には旋回空気流30は上部筐体4Aの上面4A−2から分離板14へと進む螺旋気流が常に発生している。このようにして筐体4内に安定した旋回空気流30が形成される。
【0029】
洗浄媒体5は、この旋回空気流により筐体4内で旋回し、洗浄対象物20の表面に繰り返し衝突する。この衝突による衝撃で、洗浄対象物20の表面から汚れが微小粒状あるいは粉状となって分離する。
分離した汚れは、分離板14の穴を通って吸気手段6により筐体4の外部へ排出される。
筐体4内に形成される旋回空気流30は、その旋回軸が、分離板14の表面に直交しており、旋回空気流30は分離板14の表面に平行方向の気流となる。
このため、旋回空気流30は分離板表面に吸い着けられた洗浄媒体5に、横方向から吹き付けて洗浄媒体5と分離板14の間に入り込み、分離板14に吸い付けられている洗浄媒体5を分離板14から引き剥がして再度飛翔させる効果が生じる。
また、開口部18が塞がれて上部筐体4A内の負圧が増大して、下部筐体4B内の負圧に近くなるため、洗浄媒体5を分離板14の表面に吸い付ける力も低下して、洗浄媒体5の飛翔がより容易になる効果が生じる。
旋回空気流30は、一定の方向に気流が加速されるため高速の気流が生成しやすく、洗浄媒体5の高速飛翔運動も容易となる。高速で旋回移動する洗浄媒体5は、分離板14に吸い付けられにくく、洗浄媒体5に付着した汚れが、遠心力により洗浄媒体5から分離され易い。
【0030】
図19に上述した乾式クリーニング装置2によるクリーニングの実際的な例を示す。
洗浄対象物は前述したフローはんだ槽工程で用いられるディップパレットであり、符号100で示す。
ディップパレット100には、マスク開口部101、102、103が開口しており、これらマスク開口部の穴周辺にフラックスFLが堆積・固化している。この堆積・固化したフラックスFLが除去すべき汚れである。
図19に示すように、下部筐体4Bの根元部(吸気口8部位)を手HDで握り、吸気状態で、筐体4の開口部18を被クリーニング部位に押し当てる。
開口部18が被クリーニング部位に押し当てられる以前は、筐体4内は吸気され、洗浄媒体5は分離板14に吸い付けられているので、開口部18は下方を向いているものの、筐体4内から洗浄媒体5が外部へ漏れることは無い。
勿論、開口部18が被クリーニング部位に押し当てられた以後は、筐体内が気密状態となり、洗浄媒体の漏れ出しはない。
【0031】
開口部18を被クリーニング部位に押し当てると、インレット24による流入気流が急増し、筐体4内に強い旋回空気流30を発生させ、分離板14に吸い付けられた洗浄媒体5を飛翔させ、ディップパレット100の被クリーニング部位に付着固化したフラックスFLに衝突させてフラックスFLを除去する。
クリーニング作業者は、上述の如く下部筐体4Bの根元を手HDに持ち、ディップパレット100に対して移動させて、被クリーニング部位を順次移動させ、付着・固化したフラックスFLを全て除去することができる。
図19の状態では、ディップパレット100のマスク開口部101の周辺部がクリーニングされ、マスク開口部102、103の周辺部がクリーニング途上である。
被クリーニング部位に対して開口部を移動させる時に被クリーニング部位から開口部18が離されても、前述の洗浄媒体吸着効果により、洗浄媒体5が筐体内から漏れ出さないため、洗浄媒体数が維持され、洗浄媒体量の減少によるクリーニング性能の低下は生じない。
【0032】
洗浄媒体5は、繰り返し使用される間にクリーニング部位に対する衝突による衝撃により次第に破壊され、クリーニング部位のディップパレット100から除去したフラックス(汚れ)と共に、吸引装置12に吸引回収されるため、乾式クリーニング装置を長時間使用していると、筐体内に保持された洗浄媒体の量が減少する。
このような場合は、新しい洗浄媒体群を筐体4内に補給する。
【0033】
図1乃至図10に基づいて、本発明の第1の実施形態を説明する。なお、上記基本技術と同一部分は同一符号で示し、要部のみ説明する(以下の他の実施形態において同じ)。
図1は、本実施形態における筐体50を示している。筐体50は上記基本技術の上部筐体4Aに相当する。流路制限部材16は中空円筒状であり、その軸心方向の長さLは同方向における筐体幅W1よりも短く設定されている。
流路制限部材16の軸心方向両端から分離板14が円錐状に拡がって、筐体端部に固定されている。すなわち、分離板14を軸心方向における筐体内方へ引き込んだ構成としている。これにより、開口部18の軸心方向の幅W2は筐体幅W1に近い長さとなっている。
【0034】
筐体50の軸心方向一端部には、外周面側を肉抜きした段差状の凹嵌合部(メス嵌合部)50aが形成されており、他端部には内周面側を肉抜きした段差状の凸嵌合部(オス嵌合部)50bが形成されている。
筐体50の図中右側の端部に、メス嵌合部50aに嵌合するオス嵌合部を有するとともに吸気口8を備えた吸気カバー52(図2参照)を結合し、左側の端部に、オス嵌合部50bに嵌合するメス嵌合部を有する終端カバー54(図2参照)を結合し、吸気カバー52の吸気口8を吸気手段6に接続すれば、図19で示したのと同様の乾式クリーニング装置が構成される。
この場合、流路制限部材16は吸引流路としてなり、吸気手段6による吸引が可能に吸気口8に連通している。
【0035】
筐体50は、両端部に結合構造を有した区分筐体(単位筐体)であり、これを軸心方向に連結することにより、筐体の大型化、開口部の大面積化を容易に実現することができる。
図2に、区分筐体50を3個結合した例を示す。吸気カバー52と終端カバー54は簡略表示している。また分かり易くするために、筐体50間の各結合部は若干分離した状態を示している。
連結筐体400全体の軸心方向の幅W3は、筐体50が1つの場合に比べて3倍となり、開口部の面積(クリーニング可能面積)も約3倍となる。
図3は図2における結合部C1の拡大図であり、図4は図2における結合部C2の拡大図である。図5は図2に示した連結筐体400の斜視図である(但し、図2よりも1個多い4連構成を示す)。
【0036】
図2において、吸気手段6による吸引がなされると、矢印で示すように各流路制限部材16が吸引流路となって連なり、各筐体50における内部空間26が吸気されて負圧化され、開口部18が洗浄対象物で塞がれるとインレット24から高速に気流が流入して旋回空気流が形成され、洗浄媒体5が飛翔する。洗浄媒体5による洗浄のメカニズムは上記基本技術で説明した通りである。
連結筐体400の幅W3は区分筐体としての筐体50の個数を増やすことにより容易に大きくすることができ、これに伴って開口部の面積も拡大する。
各筐体50では上記した洗浄機能が独立に生じるので、筐体50の個数を多くして連結筐体400の幅を大きくしても、各筐体50における洗浄媒体飛翔・吸着効果はサイズ拡大に関係なく一定である。
したがって、分離板14から遠い位置では洗浄媒体が飛翔しにくくなり、その部分の洗浄能力が低下し、洗浄ムラが発生するという問題もサイズ拡大に拘わらず生じない。
ただし連結筐体400の幅が大きくなるほど、内部空間26の流路断面積が増えて旋回流速がそれに比例して遅くなり、洗浄能力の低下になる。しかし、連結筐体400の外径を小さくして内部空間26の流路断面積が変わらなければ、連結筐体400の幅を大きくしても旋回流速が変わらずに洗浄能力が確保される。
【0037】
本実施形態では、流路制限部材16の両端に仕切板としても機能する分離板14を円錐状に設ける構成としたが、各筐体50における終端カバー54側の分離板14は分離機能を有しない平面板としてもよく、さらにはこの平面板を円錐状ではなく軸心方向と直交する方向に延びる面としてもよい。
平面板にする場合には、開口部18を阻害することがないように、すなわち連結した場合の開口部18間の非洗浄領域を大きくしないように、薄板にすることが良い。平面板の役割は洗浄媒体5の移動を防ぐことであり、それを満たすものであればなんでも良い。
また、平面板に多孔形状があることによって、連結筐体間の気流の行き来が可能となり、連結筐体間ごとの旋回流速のばらつきが少なくなり、洗浄ムラが少なくなる(後述の第3の実施形態参照)。
ただし、吸気手段6と繋がり多孔形状を持つ円錐状の分離板14の方が、吸気効率が高くなるため、高い洗浄能力と洗浄むらの解消に有効である。
図2に示すように、流路制限部材16の両端に分離板14を設ける構成とすることにより、開口部18が開放されているときの洗浄媒体5の吸着を両側に振り分けることができる。
このことは、開口部18が塞がれて旋回流が生じたときに、内部空間26内での洗浄媒体5の飛翔分布が軸心方向においてより均一になることを意味し、ひいては各筐体50における軸心方向の洗浄ムラが高精度に解消されることを意味する。
また、分離板14の中央部を軸心方向における筐体内方へ引き込んだ構成とすることにより、筐体50間の連結における干渉構成を無くすことができて連結が容易となるとともに、開口部18の軸心方向の幅を無駄なく拡大することができる。
【0038】
図4に示すように、連結部分の幅Sは連結筐体400の幅W3に比べて極めて小さいものの、これによって開口部18の軸心方向での連続性が絶たれる。すなわち、この部分は洗浄されない。未洗浄部分が残ることを解消するには、連結筐体400を洗浄後又は洗浄中に若干軸心方向にずらせばよい。
上記連結部分における洗浄残りを構成上無くすには、図4に二点鎖線で示すように、結合したときに例えば断面が逆三角形状で洗浄対象物20に点接触する突起56で開口部18の周囲を囲むようにすればよい。
【0039】
図6に、各クリーニング筐体による洗浄能力を視覚化した実験結果を写真画像として示す。本写真は、樹脂板に貼り付けた感圧紙に対して10秒間洗浄を加え、洗浄媒体の衝突による打痕を感圧紙上に生じさせて、スキャナーで画像読み取りしたものである。画像が黒い領域ほど打痕の密度が高く、洗浄媒体が多く衝突しているために洗浄能力が高い。また、画像をグラフ化したものを図7に示す。
【0040】
図6(a)は、下記構成において図1で示した構成のクリーニング筐体(以下、「両分離25mmタイプ」という)を用いた結果である。
筐体4の外径:φ100mm
流路制限部材16の外径:φ60mm
筐体4の高さ(=W1;以下同じ):25mm
開口部18の大きさ:(W1)25mm×(W4;図1(b)参照)25mm
洗浄媒体5の量:1g
図6(b)は、下記構成において図1で示した構成のクリーニング筐体(以下、「両分離50mmタイプ」という)を用いた結果である。すなわち、筐体の軸心方向の長さを図6(a)の筐体よりも長くした例による結果である。
筐体4の外径:φ100mm
流路制限部材16の外径:φ60mm
筐体4の高さ:50mm
開口部18の大きさ:(W1)50mm×(W4)25mm
洗浄媒体5の量:2g
図6(c)は、図6(b)で用いた長いサイズの筐体の分離板の片方(終端カバー側)を目張りして塞ぎ、1つの分離板のみを有するクリーニング筐体(以下「片分離50mmタイプ」という)を用いた結果である。
図6(d)は、下記構成において図1で示した構成のクリーニング筐体(以下、「小型両分離50mmタイプ」という)を用いた結果である。すなわち、筐体の外径と流路制限部材16の径を図6(b)の筐体よりも小さくした例による結果である。
筐体4の外径:φ50mm
流路制限部材16の外径:φ30mm
筐体4の高さ:50mm
開口部18の大きさ:(W1)50mm×(W4)25mm
洗浄媒体5の量:1g
吸気手段は同一の集塵機を用いた。
図6の紙面において、右側が吸気口側、左側が終端カバー側で、左右方向が軸心方向である。
【0041】
図6(c)に示すように、片分離50mmタイプでは、分離板がある側に打痕が偏り、軸心方向において洗浄ムラが生じている。また、分離板の面積が両分離50mmタイプに比べて少ないため、吸着保持し得る洗浄媒体の量が少なく、洗浄能力が低い。さらに、洗浄対象物(感圧紙)からクリーニング筐体を離すと、洗浄媒体を保持しきれず周囲に飛散させてしまった。これは、分離板14から遠い位置に存在した洗浄媒体は分離板14に吸着されにくいからである。
【0042】
図6(b)に示すように、両分離50mmタイプでは洗浄対象物からクリーニング筐体を離したとき、片分離50mmタイプに比べて少ないものの、洗浄媒体を保持しきれず周囲に飛散させてしまった。これは、筐体長さが所定以上になると開口部を離したときの洗浄媒体の飛散を抑制できないことを意味する。
しかしながら、流路制限部材16が多孔形状で、吸気手段6による吸引が可能な場合には、流路制限部材16に洗浄媒体を保持することができ、飛散がほとんどなかった。
また洗浄能力に関しては、開口部の面積拡大化(クリーニング面積の拡大化)したことで、両分離25mmタイプに比べて、低くなってしまった。
【0043】
図6(d)に示すように、小型両分離50mmタイプでは、内部空間26の容積が小さくなったことにより、上記基本技術に比べて所定の洗浄能力を維持しつつ開口部の面積拡大化(クリーニング面積の拡大化)が可能であることがわかる。
【0044】
図8に、クリーニング筐体を連結したものによる洗浄能力を視覚化した実験結果を写真画像として示す。測定条件は前述と同一である。また、画像をグラフ化したものを図9に示す。
図8(a)は、下記構成において小型両分離50mmタイプの筐体を2つ連結したもの(以下、「連結タイプ」という)を用いた結果である。
筐体4の外径:φ50mm
流路制限部材16の外径:φ30mm
筐体4の高さ:50mm×2
開口部18の大きさ:(W1)100mm×(W4)25mm
洗浄媒体5の量:1g×2
流路制限部材16:多孔形状
図8(b)は、連結タイプの構成において、吸気手段6を吸引能力が2倍程度の集塵機を用いた結果である。
図8(c)は、連結タイプの構成において、分離板14を厚みのある平面板を用いた結果である。
【0045】
図8(c)に示すように、分離板14に厚みのある平面板を用いた連結タイプでは、100mmの長さの領域で、筐体間の継ぎ目(結合部分)で洗浄されない部分が多く洗浄むらが発生した。それ以外では比較的均一な打痕が得られるが洗浄能力は低い。
【0046】
図8(a)に示すように、連結タイプでは、100mmの長さの領域で、筐体間の継ぎ目(結合部分)のわずかな部分を除けば比較的均一な打痕が得られた。
また、流路制限部材16が多孔形状であるため、分離板の面積が長さに応じて拡大するため、より多くの洗浄媒体を筐体内に保持することができた。その結果、洗浄対象物から開口部を離したときも洗浄媒体の漏れは発生しなかった。
ただ洗浄能力に関しては、開口部の面積拡大化(クリーニング面積の拡大化)したことで、小型両分離50mmタイプに比べて、低くなってしまった。
【0047】
図8(b)に示すように、吸気手段を強力にした連結タイプでは、100mmの長さの領域でも、上記基本技術に比べて所定の洗浄能力を維持しつつ開口部の面積拡大化(クリーニング面積の拡大化)が可能であることがわかる。
【0048】
図5に示すように、連結筐体400は片持ち方式であるため、筐体長さが長くなればなるほど移動操作性が低下し、使用性ないし機動性が低下しやすい。このような場合には、図10に示すように、連結筐体400の両側に吸気カバー52を設けて両側吸引方式とし、形状保持性を有するパイプ58、60で合流させ、パイプ60を吸気手段6に接続する構成とすればよい。
上記実施形態では、区分筐体としての筐体50を複数個連結して連結筐体400を構成する例を示したが、勿論、一体構成において筐体50と同様の洗浄機能を有する領域に分ける構成としてもよい。
【0049】
図11及び図12に基づいて、第2の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既にした構成上及び機能上の説明は省略して要部のみ説明する。
本実施形態では、流路制限部材16を吸引流路として機能させる点は上記実施形態と同一であるが、流路制限部材16が分離板14の機能を兼ねることを特徴としている。
図11に示すように、筐体60は、洗浄媒体を通過させずに空気を通す多孔性の流路制限部材16を有している。
このように分離機能を有する部材が円筒形状を有していても、旋回流の流れる方向に沿った面であるため、筐体60の軸心方向全体に亘って「洗浄媒体飛翔・吸着効果」が得られる。すなわち、筐体60の軸心方向の長さを大きくしても洗浄媒体の吸着が偏らないため、開口部の幅全体に亘って均一な洗浄機能が得られるとともに、開口部を離したときの洗浄媒体の漏れも抑制できる。
【0050】
筐体60を複数連結すれば、上記実施形態と同様に均一な洗浄能力を保ちつつクリーニング面積を拡大できる。図12では、一体構成の筐体500を示しているが、上記実施形態と同様に筐体60に結合構成を付与して連結する方式としてもよい。
図12では、パイプ62を流路制限部材16に直結して吸気手段6へ接続する構成としているが、上記実施形態と同様に吸気カバーを介して接続してもよい。
【0051】
上記各実施形態における乾式クリーニング筐体を用いた乾式クリーニング装置は、図示しないが、乾式クリーニング筐体が変わるだけで、図17乃至図19で示した乾式クリーニング装置2と同様である。
【0052】
図13及び図14に基づいて第3の実施形態を説明する。
本実施形態では、分離板14と流路制限部材16の双方が多孔性であることを特徴としている。
図13に示すように、区分筐体50の軸方向端面には、多孔性の流路制限部材16に連通するようにそれぞれ平板状の分離板14が固定されている。インレット24には、通気路内の幅を変更する通気路幅変更手段としての通気路幅変更部材80が着脱自在に設けられており、開口面積が異なる複数の通気路幅変更部材80を用意して、吸気流量に合ったものを選択して装着するようになっている。
これにより空気流入口22の流速を容易に最適化することができる。
本実施形態では、通気路幅変更手段を交換方式としたが、インレットに設けた機構(弁)を調整することによって開口面積を変化させる構成としてもよい。
図13は、1つの区分筐体50を用いた両側吸気方式の構成を示しているが、クリーニング面積を拡大する場合には、図14に示すように、区分筐体50を複数連結する。ここでは4連両側吸気方式を示している。
分離板14と流路制限部材16の双方が多孔性であるため、連結筐体間の気流の行き来が可能となり、連結筐体間ごとの旋回流速のばらつきが少なくなり、洗浄ムラが少なくなる。
【0053】
図15及び図16に基づいて、本発明(上記各実施形態)を想到するに至った過程で検討された構成を比較例として説明する。
本例に係る筐体70は、図15に示すように、分離板14を斜めに配置し、これによって確保された筐体70の側面に吸気口72を形成している。流路制限部材16は吸引流路としては機能しない。
上記基本技術における筐体の軸心方向への複数連結を容易にするための対策である。吸気口72を円筒状筐体の底面ではなく側面に形成することによって連結における干渉構成を無くしている。
図16は連結筐体600を示しているが、各筐体70にそれぞれ吸気口72及び吸引パイプ74が存在するため、吸引構成が複雑となり、取り扱い性並びにハンディタイプ化を阻害する。
勿論、このような構成としても、上記基本技術に比べて開口部の大面積化(クリーニング面積の拡大化)を容易にできるメリットに関しては、上記実施形態と変わりはない。
【0054】
上記のように、洗浄媒体の材質特性や大きさは洗浄対象物の汚れの種類に応じて適宜選択されるが、フラックス等の膜状の付着物を除去するのに適した洗浄媒体について説明する。
図25は、薄片状の洗浄媒体5の衝突時のパターンを示す模式図である。塑性変形し易い洗浄媒体の場合、図25(c)で示されるように洗浄媒体の端部の変形が大きくなり、接触面積の増大や衝撃力の緩和が起こる。この結果、衝突時の端部における接触力が分散されてしまい、洗浄能力が低下してしまう。そのため膜状の付着物に対する食い込み量が低下し、洗浄装置の洗浄効率が低下してしまう。
延性破壊する洗浄媒体の場合も、図25(d)で示されるように洗浄媒体の破面端部の塑性変形が大きくなり、接触面積の増大や衝撃力の緩和が起こる。この結果、衝突時の端部における接触力が分散されてしまい、洗浄能力が低下してしまう。そのため、膜状の付着物に対する食い込み量が低下し、洗浄装置の洗浄効率が低下してしまう。
これに対し、脆性破壊する洗浄媒体では洗浄媒体の破面端部の塑性変形が小さいため、端部における接触力の分散が生じにくい。
また、洗浄媒体の端部に膜状の付着物が付着しても脆性破壊を繰り返すことにより、新たな端部を形成し続けることが可能であり、洗浄効率が低下することはない。
【0055】
脆性材料としては、例えばガラス片、セラミック片、アクリル樹脂、ポリスチレン、又はポリ乳酸等の樹脂フィルム片等が挙げられる。
洗浄媒体に折り曲げられる力が繰り返し加わることで洗浄媒体が破壊される。本発明では、洗浄媒体が脆性であるか否かを耐折性によって定義している。
耐折性65未満の脆性材料である洗浄媒体を用いると、洗浄媒体が繰り返し衝突することによって発生するバリが洗浄媒体に残留せずに折れて分離されて排出される(図25(b)参照)。バリが残留しないため洗浄媒体のエッジが維持される。
さらに、洗浄媒体が耐折性10未満の脆性材料である場合、洗浄媒体はバリが発生する前に中央から折れて新しいエッジを生じさせる(図25(a)参照)。
これにより、洗浄媒体のエッジが維持される効果がある。洗浄媒体のエッジが維持されることにより洗浄媒体の衝突時の食い込み量が低下しないため、洗浄媒体の固着膜除去能力が径時劣化しないという効果がある。
【0056】
ここでの洗浄媒体の薄片状とは0.02mm以上0.2mm以下の厚みを備え、面積100mm2以下のものと定義する。
鉛筆硬度とはJIS K−5600−5−4に準拠した手法で計測したものであって、評価した薄片状の洗浄媒体に傷、へこみが付かない最も硬い鉛筆の芯番のことを意味する。
また、耐折性とは、JIS P8115に準拠して計測したものであり、薄片状の洗浄媒体をR=0.38mmで135度に曲げる動作を繰り返し、破損にいたるまでの往復回数を意味する。
【0057】
[実施例]
ここではフラックスが付着した、ガラス繊維入りエポキシ樹脂製のパレットを洗浄対象物のサンプルとして使用した。パレットは、フローはんだ槽によるはんだ付け工程の際に、PCBの半田付けしない領域をマスクするために用いられている。このようなマスク治具は繰り返し使用されることによりフラックスが膜状に厚く堆積するため、定期的にフラックスを除去する必要がある。固着したフラックスの鉛筆硬度は2Bである。また膜厚は0.5〜1mmである。
洗浄装置は図1に示した乾式クリーニング筐体を備えた乾式クリーニング装置を用いた。クリーニング装置には、真空度20Kpaの吸引能力を備える吸引手段を使用し、フラックスを固着させたパレットを用意し、開口部面積45×60mmの領域を1サンプル単位として、3秒かけて洗浄した。洗浄媒体は各2gを使用した。使用した薄片状洗浄媒体と洗浄結果を表1に示した。
同表における判定記号は次の通りである。
×:ほとんど汚れが取れない。
△:一部洗浄残りがある。
○:ほぼきれいになっている。
◎:非常にきれいになっている。
−:洗浄媒体が消耗して、すべて洗浄槽内から排出されてしまう。
【0058】
各洗浄媒体の物性として、耐折性および鉛筆硬度を表1に示す。
表1の初期洗浄能力の判定結果より、洗浄媒体の鉛筆硬度がフラックスの鉛筆硬度2B以下であればほとんどフラックス汚れが取れない。これは、衝突した際に、膜状のフラックス汚れに洗浄媒体が食い込めないためである。
洗浄媒体は、気流によって飛翔し洗浄対象に繰り返し衝突する。衝突によって洗浄媒体にはダメージが蓄積され、破損または変形などの劣化をおこす。
また、各洗浄媒体の機械的物性(耐折性及び鉛筆硬度)の分布を図26に示す。
【0059】
表1及び図25に基づいて、洗浄媒体の劣化パターンを再度具体的に説明する。洗浄媒体の耐折性が10未満であるガラス、アクリル1(表中では丸数字で表示:以下同じ)、アクリル2、COC(ポリオレフィン)の場合、図25(a)に示したように衝突の衝撃によって、洗浄媒体の中心付近で破断する。このとき、破断面は新しいエッジとなりフラックスに食い込むため、固着除去能力は低下しない。
洗浄媒体の素材の耐折性が10以上65未満のTAC1、TAC2、PI2においては、図25(b)に示したように、中央付近では破断せず、衝突の衝撃でエッジにバリが発生し、そのバリだけが破断する。洗浄媒体の厚みが維持されるため、洗浄媒体がフラックスに食い込み、除去する効果が維持される。
洗浄媒体の素材の耐折性が65以上である場合、洗浄媒体は衝撃によって折れず、エッジ部分が塑性変形する。
図25(c)は、塑性変形してエッジが潰れて端部がだれる様子を図示しており、PI1がこのような挙動を示す。
図25(d)は、塑性変形によりエッジがカールする様子を図示しており、SUS、PS1、PS2、PE、PET、TPXがこのような挙動を示す。
図25(c)や図25(d)の例に示した洗浄媒体は、エッジが塑性変形することにより、エッジがだれ、衝突時の衝撃力が緩和されてしまうために、表1に示したように複数サンプル処理後に洗浄能力が大きく低下する。
これらの結果により、膜状に固着したフラックスの除去に対しては、まずフラックス以上の鉛筆硬度を備え、かつ耐折性が0以上65未満の脆性材料の洗浄媒体を用いると、良好な結果が長時間安定して得られることがわかる。
【0060】
本実施例に挙げた数値の根拠として、表1、表2に、各洗浄媒体の耐折性数値の範囲を示す。
表1、表2に示したように耐折性の平均値や最小値が0である薄片状洗浄媒体(ここでは、ガラス、COC、アクリル2)は、折れに対して極めて脆い素材であり、表1に示したように非常に短時間で消耗してしまうため、ランニングコストが高くなる。
また、良好な洗浄特性を示したPI2の最大耐折性は52である。
したがって、洗浄媒体の耐折性が1以上52以下であると、長時間良好な洗浄能力を維持できる。
また、図25(a)のような脆性破壊を示す洗浄媒体のうちで、最大の耐折性数値はアクリル1製洗浄媒体における9であった。したがって0以上9以下の耐折性数値を示す洗浄媒体は、図25(a)に示した脆性破壊が発生し、10以上52以下の洗浄媒体は図25(b)に示した脆性破壊が発生すると分類できる。
また、耐折性最小値が0を示したアクリル2製の洗浄媒体は、きわめて脆く、表1に示したように長時間の使用に耐えない。一方耐折性最小値が1であるアクリル1製の洗浄媒体は、表1に示したように長時間洗浄能力を維持することができた。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表1に示した各洗浄媒体の耐折性平均値から、より確実にフラックス等の膜状の付着物を除去するには、膜状の付着物以上の鉛筆硬度を備え、且つ、2以上45以下の耐折特性を有している洗浄媒体を用いることが望ましい。
【符号の説明】
【0064】
5 洗浄媒体
6 吸気手段
8 吸気口
14 多孔手段としての分離板
16 流路制限部材
18 開口部
20 洗浄対象物
24 通気路としてのインレット
50 区分筐体としての乾式クリーニング筐体
52 吸気カバー
54 終端カバー
80 通気路幅変更手段としての通気路幅変更部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特開平4−83567号公報
【特許文献2】特開昭60−188123号公報
【特許文献3】特開2009−226394号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔する洗浄媒体を洗浄対象物に接触(衝突の概念を含む)させて洗浄する乾式クリーニング装置に関し、詳しくは、洗浄対象物の任意の部位に当てて洗浄することが可能で特にハンディタイプとして好適な乾式クリーニング装置及び該乾式クリーニング装置に用いられる乾式クリーニング筐体、該乾式クリーニング装置を用いた乾式クリーニング方法に関する。
本発明は、例えば、フローはんだ槽工程で用いられる、ディップパレットもしくはキャリアパレットと呼称されるマスク治具に付着したフラックスを除去するのに用いられ、特に洗浄対象物の側面や開口部の周辺など、狭い領域に固着したフラックスを除去することに適している。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント基板製造におけるフローはんだ槽によるはんだ付け工程において、はんだ付け処理する領域以外をマスクする治具が多く用いられている。このようなマスク治具(ディップパレット、キャリアパレットと呼ばれる)は、繰り返し使用されるうちに、表面にフラックスが堆積して固着しマスクの精度を下げるために、定期的に洗浄する必要があった。
一般的には、このような洗浄は溶剤に浸漬して行うため、大量の溶剤を消費しており、コストアップを避けられず、作業者への負荷も極めて大きい。浸漬せずに装置内で溶剤を洗浄対象物に噴射する方式も知られているが、溶剤を大量に使用するという点に変わりはない。
【0003】
この問題を解消する技術として、飛翔する洗浄媒体を洗浄対象物に接触させて洗浄する乾式の洗浄装置が知られている。特許文献1、2には、円筒形の容器の側面に開口部を設け、容器内で圧縮気流の旋回空気流により円周方向に洗浄媒体を飛翔させ、開口部に接した洗浄対象物に洗浄媒体を衝突させる洗浄方法が開示されている。しかしながらこの方式では、圧縮気流で旋回空気流を形成しているため、開口部から洗浄対象物が離された際に、洗浄媒体が容器外部に漏出するという問題を避けられない。
この問題を解消すべく、特許文献1では開口部に網部材を設けて漏出を防いでいるが、洗浄媒体が洗浄対象物に衝突する際のエネルギーが低下したり、網部材に洗浄媒体が挟まって洗浄能力が低下するなどの新たな問題を抱えている。
特許文献2では、開口部を塞ぐ開閉蓋を設けて漏出を防ぐようにしているが、開口部から洗浄対象物が離された際に開閉蓋を素早く移動させて塞ぐ必要があり、作業者に余計な注意力や労力を強いるとともに、機構的に複雑で操作が難しく、故障しやすいという問題があった。
【0004】
このような状況に鑑み、本出願人は、筐体に吸気手段を接続し、開口部が洗浄対象物で塞がれた状態で通気路を介して筐体外部から内部へ流入する気流により発生する旋回空気流によって薄片状の洗浄媒体を飛翔させるとともに、筐体内に気体や粉塵の通過を許容し且つ洗浄媒体の通過を不可とする、例えば網目状の多孔手段を設けて旋回空気流形成領域で洗浄媒体が留まるようにし、旋回空気流によって洗浄媒体の循環飛翔が継続する乾式クリーニング装置を提案した(特願2010−175687号)。
この乾式クリーニング装置によれば、開口部から洗浄対象物が離されても、通気路が大気圧と同レベルとなって旋回空気流が消失するとともに、吸気による負圧で開口部から外気が筐体内に多く流入するため、筐体内の洗浄媒体は多孔手段に吸着された状態となって筐体内に留まり、開口部からは漏れない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記本出願人による先願技術は、図17に示すように、吸気手段6によって筐体4の内部を吸引し、筐体4の開口部18を洗浄対象物20に当てて塞ぎ、筐体4の内部を負圧化させてインレット24から外部空気を筐体内に高速で流入させて旋回空気流30を生じせしめ、これによって洗浄媒体5を飛翔させ、開口部18における洗浄対象物20の被洗浄面に衝突させてクリーニングするものである。旋回空気流30はその流路断面積を流路制限部材16により制限されている。
開口部18が塞がれる前は、洗浄媒体5は吸引作用により多孔手段としての分離板14に吸着されて筐体内部に保持された状態となっている。
この構成によれば、作業者が手に持って筐体を移動させることができ、洗浄対象物20の所望の部位をスポット的にクリーニングすることができ、クリーニングの自由度が極めて高い。しかしながら、1回の作業でクリーニングできる範囲は開口部18の範囲に限られ、小面積であるため、広い面積をクリーニングする場合には、筐体をこまめに移動させなければならず、煩わしさを否めない。
【0006】
クリーニングの自由度を維持しつつ広い面積の同時クリーニング化に対応する場合、必然的に筐体および開口部を大型化する必要がある。この場合、旋回空気流の回転軸方向(以下、「軸心方向」という)にサイズを大きくすることが、洗浄の原理的に望ましい。しかしながら、単純に乾式クリーニング筐体を軸心方向に引き延ばした場合、筐体の底面(軸心方向の一端)に配置された分離板14と遠い位置に洗浄媒体が飛翔しにくくなり、その部分の洗浄能力が低下し、全体では洗浄ムラが発生する。
上記のように、開口部18が塞がれるまでは、洗浄媒体5は分離板14に吸着保持されており、その状態からインレット24からの高速空気流で分離板14から剥がされて飛翔するため、必然的に分離板14から遠い位置では洗浄媒体は飛翔しにくくなる。
【0007】
また、筐体および開口部を大型化した場合、これに対応して洗浄媒体の数量も増やす必要があるが、軸心方向に筐体サイズを大きくしても分離板14の面積は変化しないため、分離板14から遠い位置では、洗浄媒体飛翔・吸着効果が薄れ、開口部を離したときに吸着しきれなかった洗浄媒体が開口部から漏れやすくなる。
また、筐体を軸心方向に複数直列配置するレイアウトも考えられるが、筐体4は、旋回空気流を生じさせる上部筐体4Aと、吸引手段(吸気手段)を接続するための下部筐体4Bとから構成されているため、下部筐体4Bが干渉することを避けられない。
このため、複数の筐体を軸心方向に隙間無く並べることができず、複数の筐体を同時に用いた大面積の洗浄も不向きであるという課題があった。
【0008】
本発明は、上記のような現状に鑑みてなされたもので、洗浄ムラや洗浄媒体の漏出等の問題を来たすことなく大面積同時クリーニング化に対応でき、クリーニングの自由度も維持できる乾式クリーニング筐体及び該乾式クリーニング筐体を備えた乾式クリーニング装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、旋回空気流の流路断面積を制限する流路制限部材を吸引流路として機能させることにより、筐体毎の下部筐体の必要性を無くし、軸心方向における筐体の複数配置レイアウトを可能にするとともに、開口部の大面積化を企図したものである。
【0010】
上記着想の下、本発明は、洗浄媒体を気流により飛翔させ、上記洗浄媒体を洗浄対象物に当てて洗浄対象物の洗浄を行う乾式クリーニング筐体において、上記洗浄媒体を飛翔させる内部空間と、上記洗浄対象物に当接して上記洗浄媒体を上記洗浄対象物に衝突させる開口部と、外部からの空気を上記内部空間へ通す通気路と、上記通気路を介して上記内部空間に導気された空気を吸引することにより上記内部空間に旋回気流を生じさせる吸気口と、上記洗浄対象物から除去された除去物を上記吸気口側へ通過させる多孔手段と、上記旋回気流の軸心方向に延びる筒形状に設けられると共に該筒形状の内部は吸引流路として上記吸気口に連通される流路制限部材と、からなる筐体部を有し、上記筐体部は上記軸心方向で複数領域に区画され、該複数領域の各領域で上記洗浄媒体を独立して収容することを特徴とする。
【0011】
本明細書における用語の定義は以下の通りである。
本発明における筐体とは、内側に旋回空気流を発生させやすい形状の空間を備えた容器状の構造物を示す。旋回空気流を発生させやすい形状とは、気流が筐体の内壁を沿って流れて循環する、連続した内壁を持つ形状であり、より望ましくは回転体形状の内壁または内部空間を備える形状である。
通気路とは、気流を一定の方向に流れやすくする手段のことであり、滑らかな内面を備える管形状であることが一般的である。しかしながら、たとえば滑らかな面を持つ、板状の流路制御板などを用いても、気体を面に沿った方向に流れやすくする、整流効果が発現するため、このような形態も含めて通気路とする。
【0012】
また、気流が直線的に流れる形状が一般的であるが、流路抵抗をあまり生じない緩やかなカーブを備えていても整流効果を得ることができる。ただし、特に記載されない場合、通気路の方向とは空気流入口において噴出する気流の方向のことを意味する。直線の管形状を備え、一方の端部が筐体内壁の空気流入口に接続し、もう一方の端部が筐体外の大気に開放されている空気取り入れ口である通気路を、本発明ではインレットと呼称する。インレットは一般的に流体抵抗が低く、滑らかな内面を持ち、管の断面は円形、長方形、スリット形状などが用いられる。
【0013】
本発明において、旋回空気流とは、空気流入口からの流入気流により加速された気流が、筐体の内壁に沿って方向を変えつつ流れ、空気流入口の位置に、循環して戻り、流入気流と合流する気流である。一般的には、内壁が連続している閉空間内で、内壁の接線方向に向けて気流を流入させることにより発生する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、軸心方向における筐体の長さを大きくしても均一な洗浄能力を得ることができるとともに洗浄媒体の飛散を抑制でき、洗浄能力の低下を来たすことなくクリーニング面積の拡大化を容易に実現することができる。
また、軸心方向において筐体を複数連結することにより筐体の所望の長サイズ化を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る乾式クリーニング筐体を示す図で、(a)は縦断面図、(b)は(a)のE-E線での断面図である。
【図2】筐体を複数連結した構成の乾式クリーニング筐体の断面図である。
【図3】図2のC1における拡大断面図である。
【図4】図2のC2における拡大断面図である。
【図5】筐体を複数連結した構成の乾式クリーニング筐体の斜視図である。
【図6】各クリーニング筐体による洗浄能力を視覚化した実験結果を示す写真画像である。
【図7】同各写真画像をグラフ化した特性図である。
【図8】クリーニング筐体を連結した各構成による洗浄能力を視覚化した実験結果を示す写真画像である。
【図9】同各写真画像をグラフ化した特性図である。
【図10】筐体を複数連結した構成の乾式クリーニング筐体の変形例を示す図である。
【図11】第2の実施形態に係る乾式クリーニング筐体を示す図で、(a)は縦断面図、(b)は(a)のE-E線での断面図である。
【図12】第2の実施形態に係る筐体を複数連結した構成の概要断面図である。
【図13】第3の実施形態に係る筐体を示す単体使用時の分解斜視図である。
【図14】同筐体を複数連結した構成の斜視図である。
【図15】比較例に係る乾式クリーニング筐体を示す図で、(a)は縦断面図、(b)は(a)のE-E線での断面図である。
【図16】比較例に係る筐体を複数連結した構成の概要斜視図である。
【図17】本発明の基本となる乾式クリーニング装置を示す概要断面図である。
【図18】同装置の洗浄動作を示す図である。
【図19】同乾式クリーニング装置の使用状態を示す斜視図である。
【図20】負圧と流量との関係を示す特性図である。
【図21】洗浄媒体の旋回速度と旋回流路幅との関係を示す特性図である。
【図22】洗浄媒体の衝突角度と洗浄能力との関係を示す特性図である。
【図23】空気流入口から開口部までの距離と洗浄能力との関係を示す特性図である。
【図24】洗浄媒体の量と洗浄能力との関係を示す特性図である。
【図25】薄片状の洗浄媒体の衝突時のパターンを示す模式図である。
【図26】各洗浄媒体の機械的物性の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
まず、図17乃至図19に基づいて、本発明の基本となる上記本出願人による先願技術としての乾式クリーニング装置の構成及び機能について説明する。
また、本発明を想到するに至った上記先願技術に基づく考察を、図20乃至図24の特性図を交えて説明する。
図17に基づいて、本発明の基本技術としてのハンディタイプの乾式クリーニング装置2の構成の概要を説明する。図17(a)はA−A線での横断面図、(b)はB−B線での縦断面図である。
乾式クリーニング装置2は、内部に洗浄媒体5の飛翔空間を有する乾式クリーニング筐体(以下、単に「筐体」という)4と、筐体4内を負圧化する吸気手段6とを備えている。
筐体4は、筐体本体部としての円筒形状の上部筐体4Aと、逆円錐形状の下部筐体4Bとから一体として構成されている。筐体4の大きさは、特に限定されないが、作業者が持ち運べる大きさであり、直径10〜300mm程度が好ましい。
ここでの上部、下部は図面上の便宜的呼称であって、実機上の上下とは必ずしも関係はない。
【0017】
下部筐体4Bは、その円錐頂部に吸気口8を一体に備えており、吸引ダクトとして機能する。
吸気手段6は、吸気口8に一端を接続されたフレキシブルな吸引ホース10と、該吸引ホース10の他端に接続された吸引装置12とを有している。吸気口8の大きさは、吸引ホース10と同じであり、特に限定されないが、断面積100〜10000mm2程度が好ましく乾式クリーニング装置2の大きさと吸引装置12の性能によって最適なものを選択する。吸引装置12としては、家庭用掃除機、真空モータや真空ポンプ、あるいは流体の圧送により間接的に低圧化ないし負圧化を生じさせる装置などを適宜用いることができる。吸引装置12の性能は、図20に示すように負圧が高いと流量が少なくなり、負圧が低いと流量が多くなる右肩下がりの特性であり、種類によって図18の(a)や(b)の特性がある。また乾式クリーニング装置2の形状によって図20の(c)や(d)の特性があるため、一般的には(c)のような特性では(a)を、(d)のような特性では(b)を選択するのが良い。なお、部材の上面、底面等の上下の位置関係は図面上の基準にすぎない。
【0018】
上部筐体4Aの底面部は、下部筐体4Bの上端部を結合する嵌合凹部4A−1となっており、上部筐体4Aと下部筐体4Bは分離可能となっている。上部筐体4Aの上面4A−2は密閉されている。便宜上、結合構成を嵌合としたが、位置決めと密閉が可能であればなんでもよく、ネジ、ピン止め、接着でもかまわない。
上部筐体4Aの底面部における下部筐体4Bとの境界部分には、多孔手段としての多孔性の分離板14が設けられている。分離板14は、パンチングメタルのような穴が空いた板状の部材である。分離板14の穴の大きさは、吸引されたときの洗浄媒体5の下部筐体4B側への移動を阻止するものであり、洗浄媒体5の大きさによって直径が0.1〜10mmから最適なものを選択する。図17(a)では分離板14の表示を一部省略している。なお、洗浄媒体5は分かり易くするためにその大きさを誇張表示している。
多孔手段としては、洗浄媒体5を通さずに空気及び粉塵(洗浄対象物から除去された除去物)を通過させる大きさの細孔を多く備える多孔形状であればよく、スリット板や網などを用いてもよく、材質も滑らかな面を備えていれば、樹脂や金属などを自由に選択して良い。
多孔手段は旋回空気流の中心軸と直交する面として配置されている。旋回空気流の中心軸と直交することによって、多孔手段に沿う方向に気流が流れることにより、洗浄媒体5の滞留を防ぐ効果がある。
旋回空気流の減衰と洗浄媒体5の滞留を抑えるために、筐体内面は段差、凹凸がなく平滑であることが望ましい。
【0019】
多孔手段は、旋回空気流に沿った面に配置されることにより、表面に吸着した洗浄媒体を再飛翔させることができる。
筐体4の材質は特に限定されないが、異物の付着や洗浄媒体との摩擦による消耗を防ぐために、例えばアルミ二ウムやステンレスなどの金属製が好適であるが、摩擦による消耗に耐えうるものであれば樹脂製のものを用いることもできる。
【0020】
上部筐体4Aの内部中心には、上部筐体4Aの円筒軸を共通の軸とするように、円筒状の流路制限部材16が筐体の一部として設けられ、流路制限部材16の下端は分離板14に固定されている。
流路制限部材16は旋回空気流の流路断面積を絞って流速を向上させる目的で設けられている。流路制限部材16により上部筐体4A内には滑らかな壁面を有するリング状の旋回空気流移動空間(洗浄媒体の飛翔空間)が形成されている。
上部筐体4Aの形状によっては、流路制限部材16の中心軸と上部筐体4Aの中心軸を必ずしも共通にする必要はなく、リング状の空間が確保できていれば偏芯していても良い。
流路制限部材16の大きさは、特に限定されないが、図1に示すように、洗浄媒体5が密集して目詰まりしない程度の上部筐体4Aとの旋回流路幅W5が必要である。また図21に示すように、上記旋回流路幅W5が狭いと洗浄媒体5同士が混み合い洗浄媒体5の旋回速度が遅くなる。上記旋回流路幅W5が広いと流路断面積が大きくなるため流速が遅くなり旋回速度が遅くなる。そのため流路制限部材16の大きさは、洗浄媒体5の大きさと投入量に左右されるが、5〜50mm程度の旋回流路幅W5となる。
【0021】
上部筐体4Aの側面の一部には、旋回空気流で飛翔する洗浄媒体5を洗浄対象物に接触ないし衝突させるための開口部18が形成されている。
上部筐体4Aは円筒形状であり、側面の一部に開口部18を設けることにより、筐体4全体としては、図17(b)に示すように、開口部18以外の外周部分が洗浄対象物20から大きく逃げる(離れる)レイアウトとなり、洗浄対象物20に対する局所的当接、換言すればピンポイントクリーニングの自由度が高められている。
開口部18は、上部筐体4Aの側面を円筒軸に平行な平断面により切断した形状であり、円筒軸と直交する方向から見て矩形形状をなしている。
【0022】
上部筐体4Aの側面には空気流入口22が形成されており、空気流入口22には、旋回空気流発生手段で且つ通気路としてのインレット24が上部筐体4Aの外方から接続されて上部筐体4Aに一体に固定されている。
インレット24は分離板14に略平行に設定されており、その通気方向は、上部筐体4Aの半径方向に対して傾き、その通気路中心の延長線が開口部18に達するように位置している。
傾きの角度は、特に限定されないが、洗浄媒体5の衝突角度とほぼ同義であるために水平に近い角度で衝突するほど衝突エネルギーが分散してしまう。そのため図22に示すように90°が最も洗浄能力が高く、低い角度では洗浄能力が低くなる。
また図23に示すように、空気流入口22から開口部18までの距離が短いほど洗浄能力が高く、長くなるほど洗浄能力が低くなる。
そのため、上記2つの条件のバランスを考慮して、インレット24の位置を決定する。
空気流入口22の大きさは、空気流入口22での流速が50〜150m/sになるように決定するのが好ましい。これは吸気手段6の性能により、下記式から簡単に求まる。
流速V(m/s)=吸気流量Q(m3/s)/空気流入口面積S(m2)
流速がこの値から外れると、洗浄媒体5を衝突させるエネルギー効率が悪くなり、洗浄能力が低くなる。
【0023】
インレット24は、上部筐体4Aの高さ方向に延びる幅を有している。インレット24は上部筐体4Aの高さよりも径又は幅が小さいものを1つ配置してもよく、単体のインレットを高さ方向に複数配置する構成としてもよい。
また、空気流入口22の大きさは吸気流量によって変動するため、インレット24に開口面積の異なる入れ子状の通気路部材(通気路幅変更手段)を交換可能に設け、吸気流量に応じて空気流入口22の大きさを変更することで、簡単に最適な流速にすることができる(後述の第3の実施形態参照)。
閉空間が形成された時に生じる旋回空気流は、分離板14上に吸着した洗浄媒体を吹き払い、再飛翔させる効果を有する。
【0024】
開口部18は、開放されたときに、空気流入口22における内圧を、大気圧もしくはその近傍にするために十分な大きさの面積を備える。また、空気流入口22も、開口部18の開放時に大気圧もしくはその近傍になりやすい位置に配置される。
このような構成を備えることにより、乾式クリーニング装置2を洗浄対象物に当てていない間は、空気流入口22が大気圧に近づくことによって、外部との差圧が低下し、その結果流入する気流が劇的に低減する。一方、開口部18から流入する気流は多くなるため、洗浄媒体5が筐体4内から漏れ出ることを防ぐことができる。
また、開口部18が開放されている状態では、閉塞されている場合に比べて流入する気流の総量が2〜3倍になるため、とくに薄片状の洗浄媒体では多孔手段上に吸着されるため、再飛翔せず筐体の外に漏れることがない。
開口部18の大きさは、空気流入口22の影響を受けないように、空気流入口22の2〜3倍の面積が必要である。開口部18の上記軸心方向の幅が、上部筐体4Aの軸心方向における幅と同一であれば、軸心方向と直交する方向の幅は空気流入口22の2〜3倍となる。
また、吸気手段6を変更せずに上部筐体4Aの高さを大きくする場合、空気流入口22の流速を一定にするために空気流入口22の面積を小さくする必要がある。それに伴い、開口部18の軸心方向と直交する方向の幅を小さくする。
これにより、開口部18の閉塞時での密閉度が高くなり、また開放時での洗浄媒体5の飛び出し防止につながる。
【0025】
洗浄媒体5は、薄片状の洗浄片の集合であるが、ここでは薄片状の洗浄片単体としての意味でも用いている。
薄片状の洗浄媒体とは面積が100mm2以下の薄片である。また、洗浄媒体の材質はポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタラート、アクリル、セルロース樹脂などの耐久性のある素材からなるフィルムであり、厚みは0.02mm以上0.2mm以下である。但し、洗浄対象物によっては洗浄媒体の厚みやサイズや材質を変えることが効果的な場合もあり、これらの洗浄媒体を使用する場合も本発明の範囲に含まれるため、前記洗浄媒体条件にはとらわれないものとする。
洗浄媒体の材質に関しては、樹脂だけにとどまらず、紙、布などの薄片や、あるいは、雲母などの鉱物、セラミックやガラス、金属箔であっても、薄く軽量で飛翔しやすい形状にすることで使用することができる。
乾式クリーニング装置2に投入する洗浄媒体5の量は、内部空間26の容積によって適量が決定される。図24に示すように、適量より少なければ洗浄媒体5が洗浄対象物20に衝突する頻度が少なくなり、洗浄能力が落ちる。適量より多ければ、内部空間26の洗浄媒体5が互いに干渉し合い、必要とする旋回速度に到達せずに洗浄能力が落ちてしまう。
また、洗浄媒体5自体の形状による飛翔のしやすさにも影響されるので、適宜洗浄媒体5の量は変わる。
これらのことから、洗浄媒体5には内部空間内での適正量が存在するので、乾式クリーニング装置2が長尺化する場合には、全体の内部空間を仕切板で区画し、他の区域に洗浄媒体が入り込まないように分けることで洗浄媒体5の偏りが少なくなり、洗浄むらの抑制になる。
【0026】
上部筐体4Aのリング状の内部空間26は、旋回空気流によって洗浄媒体5を飛翔させて開口部18に対向する洗浄対象物20に接触させる機能を担う空間である。
流路制限部材16の内部空間34は、旋回空気流が作用しない空間である。
【0027】
以上のように構成される乾式クリーニング装置2による洗浄動作(以下、クリーニング動作という)を、図18を参照して説明する。なお、図18では、部材の厚み等を省略し、分かり易くするために静空間としての内部空間34をハッチングで表示している。
図18(b)は、開口部18を洗浄対象物20から離して開口部18を開放し吸気を行っている状態を、図18(a)は、開口部18を洗浄対象物20に当てて閉塞した状態を示している。
クリーニング動作に先立って、洗浄媒体5を筐体4内に供給する。筐体4内に供給された洗浄媒体5は、図18(b)下図に示すように、分離板14に吸い付けられて筐体4内に保持される。
筐体4内は吸気により負圧状態となっているので、筐体外部の空気がインレット24を通して筐体4内に流入するが、このときのインレット24内の流れは流速・流量ともに小さいので、筐体4内に発生する旋回空気流30は洗浄媒体5を飛翔させる強さには至らない。
【0028】
筐体4内に洗浄媒体5が供給・保持されたら、図18(a)に示すように、開口部18を洗浄対象物20の表面のクリーニングすべき部位に当てて閉塞状態にする。
開口部18が塞がれると、開口部18からの吸気が止まるので、筐体4内の負圧は一気に増大し、インレット24を通じて吸い込まれる空気量・流速ともに増大し、インレット24内で整流され、インレット出口(空気流入口22)から筐体4内に高速空気流となって吹き出す。
吹き出した空気流は、分離板14上に保持されている洗浄媒体5を開口部18に対向する洗浄対象物20の表面に向けて飛翔させる。
上記空気流は、旋回空気流30となって、筐体4の内壁に沿って円環状に流れつつ、一部は分離板14の穴を通って吸気手段6により吸気される。
このように筐体4内を円環状に流れた旋回空気流30がインレット24の出口部に戻ると、インレット24から入り込む空気流が旋回空気流30に合流しつつ加速する。このため、厳密には旋回空気流30は上部筐体4Aの上面4A−2から分離板14へと進む螺旋気流が常に発生している。このようにして筐体4内に安定した旋回空気流30が形成される。
【0029】
洗浄媒体5は、この旋回空気流により筐体4内で旋回し、洗浄対象物20の表面に繰り返し衝突する。この衝突による衝撃で、洗浄対象物20の表面から汚れが微小粒状あるいは粉状となって分離する。
分離した汚れは、分離板14の穴を通って吸気手段6により筐体4の外部へ排出される。
筐体4内に形成される旋回空気流30は、その旋回軸が、分離板14の表面に直交しており、旋回空気流30は分離板14の表面に平行方向の気流となる。
このため、旋回空気流30は分離板表面に吸い着けられた洗浄媒体5に、横方向から吹き付けて洗浄媒体5と分離板14の間に入り込み、分離板14に吸い付けられている洗浄媒体5を分離板14から引き剥がして再度飛翔させる効果が生じる。
また、開口部18が塞がれて上部筐体4A内の負圧が増大して、下部筐体4B内の負圧に近くなるため、洗浄媒体5を分離板14の表面に吸い付ける力も低下して、洗浄媒体5の飛翔がより容易になる効果が生じる。
旋回空気流30は、一定の方向に気流が加速されるため高速の気流が生成しやすく、洗浄媒体5の高速飛翔運動も容易となる。高速で旋回移動する洗浄媒体5は、分離板14に吸い付けられにくく、洗浄媒体5に付着した汚れが、遠心力により洗浄媒体5から分離され易い。
【0030】
図19に上述した乾式クリーニング装置2によるクリーニングの実際的な例を示す。
洗浄対象物は前述したフローはんだ槽工程で用いられるディップパレットであり、符号100で示す。
ディップパレット100には、マスク開口部101、102、103が開口しており、これらマスク開口部の穴周辺にフラックスFLが堆積・固化している。この堆積・固化したフラックスFLが除去すべき汚れである。
図19に示すように、下部筐体4Bの根元部(吸気口8部位)を手HDで握り、吸気状態で、筐体4の開口部18を被クリーニング部位に押し当てる。
開口部18が被クリーニング部位に押し当てられる以前は、筐体4内は吸気され、洗浄媒体5は分離板14に吸い付けられているので、開口部18は下方を向いているものの、筐体4内から洗浄媒体5が外部へ漏れることは無い。
勿論、開口部18が被クリーニング部位に押し当てられた以後は、筐体内が気密状態となり、洗浄媒体の漏れ出しはない。
【0031】
開口部18を被クリーニング部位に押し当てると、インレット24による流入気流が急増し、筐体4内に強い旋回空気流30を発生させ、分離板14に吸い付けられた洗浄媒体5を飛翔させ、ディップパレット100の被クリーニング部位に付着固化したフラックスFLに衝突させてフラックスFLを除去する。
クリーニング作業者は、上述の如く下部筐体4Bの根元を手HDに持ち、ディップパレット100に対して移動させて、被クリーニング部位を順次移動させ、付着・固化したフラックスFLを全て除去することができる。
図19の状態では、ディップパレット100のマスク開口部101の周辺部がクリーニングされ、マスク開口部102、103の周辺部がクリーニング途上である。
被クリーニング部位に対して開口部を移動させる時に被クリーニング部位から開口部18が離されても、前述の洗浄媒体吸着効果により、洗浄媒体5が筐体内から漏れ出さないため、洗浄媒体数が維持され、洗浄媒体量の減少によるクリーニング性能の低下は生じない。
【0032】
洗浄媒体5は、繰り返し使用される間にクリーニング部位に対する衝突による衝撃により次第に破壊され、クリーニング部位のディップパレット100から除去したフラックス(汚れ)と共に、吸引装置12に吸引回収されるため、乾式クリーニング装置を長時間使用していると、筐体内に保持された洗浄媒体の量が減少する。
このような場合は、新しい洗浄媒体群を筐体4内に補給する。
【0033】
図1乃至図10に基づいて、本発明の第1の実施形態を説明する。なお、上記基本技術と同一部分は同一符号で示し、要部のみ説明する(以下の他の実施形態において同じ)。
図1は、本実施形態における筐体50を示している。筐体50は上記基本技術の上部筐体4Aに相当する。流路制限部材16は中空円筒状であり、その軸心方向の長さLは同方向における筐体幅W1よりも短く設定されている。
流路制限部材16の軸心方向両端から分離板14が円錐状に拡がって、筐体端部に固定されている。すなわち、分離板14を軸心方向における筐体内方へ引き込んだ構成としている。これにより、開口部18の軸心方向の幅W2は筐体幅W1に近い長さとなっている。
【0034】
筐体50の軸心方向一端部には、外周面側を肉抜きした段差状の凹嵌合部(メス嵌合部)50aが形成されており、他端部には内周面側を肉抜きした段差状の凸嵌合部(オス嵌合部)50bが形成されている。
筐体50の図中右側の端部に、メス嵌合部50aに嵌合するオス嵌合部を有するとともに吸気口8を備えた吸気カバー52(図2参照)を結合し、左側の端部に、オス嵌合部50bに嵌合するメス嵌合部を有する終端カバー54(図2参照)を結合し、吸気カバー52の吸気口8を吸気手段6に接続すれば、図19で示したのと同様の乾式クリーニング装置が構成される。
この場合、流路制限部材16は吸引流路としてなり、吸気手段6による吸引が可能に吸気口8に連通している。
【0035】
筐体50は、両端部に結合構造を有した区分筐体(単位筐体)であり、これを軸心方向に連結することにより、筐体の大型化、開口部の大面積化を容易に実現することができる。
図2に、区分筐体50を3個結合した例を示す。吸気カバー52と終端カバー54は簡略表示している。また分かり易くするために、筐体50間の各結合部は若干分離した状態を示している。
連結筐体400全体の軸心方向の幅W3は、筐体50が1つの場合に比べて3倍となり、開口部の面積(クリーニング可能面積)も約3倍となる。
図3は図2における結合部C1の拡大図であり、図4は図2における結合部C2の拡大図である。図5は図2に示した連結筐体400の斜視図である(但し、図2よりも1個多い4連構成を示す)。
【0036】
図2において、吸気手段6による吸引がなされると、矢印で示すように各流路制限部材16が吸引流路となって連なり、各筐体50における内部空間26が吸気されて負圧化され、開口部18が洗浄対象物で塞がれるとインレット24から高速に気流が流入して旋回空気流が形成され、洗浄媒体5が飛翔する。洗浄媒体5による洗浄のメカニズムは上記基本技術で説明した通りである。
連結筐体400の幅W3は区分筐体としての筐体50の個数を増やすことにより容易に大きくすることができ、これに伴って開口部の面積も拡大する。
各筐体50では上記した洗浄機能が独立に生じるので、筐体50の個数を多くして連結筐体400の幅を大きくしても、各筐体50における洗浄媒体飛翔・吸着効果はサイズ拡大に関係なく一定である。
したがって、分離板14から遠い位置では洗浄媒体が飛翔しにくくなり、その部分の洗浄能力が低下し、洗浄ムラが発生するという問題もサイズ拡大に拘わらず生じない。
ただし連結筐体400の幅が大きくなるほど、内部空間26の流路断面積が増えて旋回流速がそれに比例して遅くなり、洗浄能力の低下になる。しかし、連結筐体400の外径を小さくして内部空間26の流路断面積が変わらなければ、連結筐体400の幅を大きくしても旋回流速が変わらずに洗浄能力が確保される。
【0037】
本実施形態では、流路制限部材16の両端に仕切板としても機能する分離板14を円錐状に設ける構成としたが、各筐体50における終端カバー54側の分離板14は分離機能を有しない平面板としてもよく、さらにはこの平面板を円錐状ではなく軸心方向と直交する方向に延びる面としてもよい。
平面板にする場合には、開口部18を阻害することがないように、すなわち連結した場合の開口部18間の非洗浄領域を大きくしないように、薄板にすることが良い。平面板の役割は洗浄媒体5の移動を防ぐことであり、それを満たすものであればなんでも良い。
また、平面板に多孔形状があることによって、連結筐体間の気流の行き来が可能となり、連結筐体間ごとの旋回流速のばらつきが少なくなり、洗浄ムラが少なくなる(後述の第3の実施形態参照)。
ただし、吸気手段6と繋がり多孔形状を持つ円錐状の分離板14の方が、吸気効率が高くなるため、高い洗浄能力と洗浄むらの解消に有効である。
図2に示すように、流路制限部材16の両端に分離板14を設ける構成とすることにより、開口部18が開放されているときの洗浄媒体5の吸着を両側に振り分けることができる。
このことは、開口部18が塞がれて旋回流が生じたときに、内部空間26内での洗浄媒体5の飛翔分布が軸心方向においてより均一になることを意味し、ひいては各筐体50における軸心方向の洗浄ムラが高精度に解消されることを意味する。
また、分離板14の中央部を軸心方向における筐体内方へ引き込んだ構成とすることにより、筐体50間の連結における干渉構成を無くすことができて連結が容易となるとともに、開口部18の軸心方向の幅を無駄なく拡大することができる。
【0038】
図4に示すように、連結部分の幅Sは連結筐体400の幅W3に比べて極めて小さいものの、これによって開口部18の軸心方向での連続性が絶たれる。すなわち、この部分は洗浄されない。未洗浄部分が残ることを解消するには、連結筐体400を洗浄後又は洗浄中に若干軸心方向にずらせばよい。
上記連結部分における洗浄残りを構成上無くすには、図4に二点鎖線で示すように、結合したときに例えば断面が逆三角形状で洗浄対象物20に点接触する突起56で開口部18の周囲を囲むようにすればよい。
【0039】
図6に、各クリーニング筐体による洗浄能力を視覚化した実験結果を写真画像として示す。本写真は、樹脂板に貼り付けた感圧紙に対して10秒間洗浄を加え、洗浄媒体の衝突による打痕を感圧紙上に生じさせて、スキャナーで画像読み取りしたものである。画像が黒い領域ほど打痕の密度が高く、洗浄媒体が多く衝突しているために洗浄能力が高い。また、画像をグラフ化したものを図7に示す。
【0040】
図6(a)は、下記構成において図1で示した構成のクリーニング筐体(以下、「両分離25mmタイプ」という)を用いた結果である。
筐体4の外径:φ100mm
流路制限部材16の外径:φ60mm
筐体4の高さ(=W1;以下同じ):25mm
開口部18の大きさ:(W1)25mm×(W4;図1(b)参照)25mm
洗浄媒体5の量:1g
図6(b)は、下記構成において図1で示した構成のクリーニング筐体(以下、「両分離50mmタイプ」という)を用いた結果である。すなわち、筐体の軸心方向の長さを図6(a)の筐体よりも長くした例による結果である。
筐体4の外径:φ100mm
流路制限部材16の外径:φ60mm
筐体4の高さ:50mm
開口部18の大きさ:(W1)50mm×(W4)25mm
洗浄媒体5の量:2g
図6(c)は、図6(b)で用いた長いサイズの筐体の分離板の片方(終端カバー側)を目張りして塞ぎ、1つの分離板のみを有するクリーニング筐体(以下「片分離50mmタイプ」という)を用いた結果である。
図6(d)は、下記構成において図1で示した構成のクリーニング筐体(以下、「小型両分離50mmタイプ」という)を用いた結果である。すなわち、筐体の外径と流路制限部材16の径を図6(b)の筐体よりも小さくした例による結果である。
筐体4の外径:φ50mm
流路制限部材16の外径:φ30mm
筐体4の高さ:50mm
開口部18の大きさ:(W1)50mm×(W4)25mm
洗浄媒体5の量:1g
吸気手段は同一の集塵機を用いた。
図6の紙面において、右側が吸気口側、左側が終端カバー側で、左右方向が軸心方向である。
【0041】
図6(c)に示すように、片分離50mmタイプでは、分離板がある側に打痕が偏り、軸心方向において洗浄ムラが生じている。また、分離板の面積が両分離50mmタイプに比べて少ないため、吸着保持し得る洗浄媒体の量が少なく、洗浄能力が低い。さらに、洗浄対象物(感圧紙)からクリーニング筐体を離すと、洗浄媒体を保持しきれず周囲に飛散させてしまった。これは、分離板14から遠い位置に存在した洗浄媒体は分離板14に吸着されにくいからである。
【0042】
図6(b)に示すように、両分離50mmタイプでは洗浄対象物からクリーニング筐体を離したとき、片分離50mmタイプに比べて少ないものの、洗浄媒体を保持しきれず周囲に飛散させてしまった。これは、筐体長さが所定以上になると開口部を離したときの洗浄媒体の飛散を抑制できないことを意味する。
しかしながら、流路制限部材16が多孔形状で、吸気手段6による吸引が可能な場合には、流路制限部材16に洗浄媒体を保持することができ、飛散がほとんどなかった。
また洗浄能力に関しては、開口部の面積拡大化(クリーニング面積の拡大化)したことで、両分離25mmタイプに比べて、低くなってしまった。
【0043】
図6(d)に示すように、小型両分離50mmタイプでは、内部空間26の容積が小さくなったことにより、上記基本技術に比べて所定の洗浄能力を維持しつつ開口部の面積拡大化(クリーニング面積の拡大化)が可能であることがわかる。
【0044】
図8に、クリーニング筐体を連結したものによる洗浄能力を視覚化した実験結果を写真画像として示す。測定条件は前述と同一である。また、画像をグラフ化したものを図9に示す。
図8(a)は、下記構成において小型両分離50mmタイプの筐体を2つ連結したもの(以下、「連結タイプ」という)を用いた結果である。
筐体4の外径:φ50mm
流路制限部材16の外径:φ30mm
筐体4の高さ:50mm×2
開口部18の大きさ:(W1)100mm×(W4)25mm
洗浄媒体5の量:1g×2
流路制限部材16:多孔形状
図8(b)は、連結タイプの構成において、吸気手段6を吸引能力が2倍程度の集塵機を用いた結果である。
図8(c)は、連結タイプの構成において、分離板14を厚みのある平面板を用いた結果である。
【0045】
図8(c)に示すように、分離板14に厚みのある平面板を用いた連結タイプでは、100mmの長さの領域で、筐体間の継ぎ目(結合部分)で洗浄されない部分が多く洗浄むらが発生した。それ以外では比較的均一な打痕が得られるが洗浄能力は低い。
【0046】
図8(a)に示すように、連結タイプでは、100mmの長さの領域で、筐体間の継ぎ目(結合部分)のわずかな部分を除けば比較的均一な打痕が得られた。
また、流路制限部材16が多孔形状であるため、分離板の面積が長さに応じて拡大するため、より多くの洗浄媒体を筐体内に保持することができた。その結果、洗浄対象物から開口部を離したときも洗浄媒体の漏れは発生しなかった。
ただ洗浄能力に関しては、開口部の面積拡大化(クリーニング面積の拡大化)したことで、小型両分離50mmタイプに比べて、低くなってしまった。
【0047】
図8(b)に示すように、吸気手段を強力にした連結タイプでは、100mmの長さの領域でも、上記基本技術に比べて所定の洗浄能力を維持しつつ開口部の面積拡大化(クリーニング面積の拡大化)が可能であることがわかる。
【0048】
図5に示すように、連結筐体400は片持ち方式であるため、筐体長さが長くなればなるほど移動操作性が低下し、使用性ないし機動性が低下しやすい。このような場合には、図10に示すように、連結筐体400の両側に吸気カバー52を設けて両側吸引方式とし、形状保持性を有するパイプ58、60で合流させ、パイプ60を吸気手段6に接続する構成とすればよい。
上記実施形態では、区分筐体としての筐体50を複数個連結して連結筐体400を構成する例を示したが、勿論、一体構成において筐体50と同様の洗浄機能を有する領域に分ける構成としてもよい。
【0049】
図11及び図12に基づいて、第2の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既にした構成上及び機能上の説明は省略して要部のみ説明する。
本実施形態では、流路制限部材16を吸引流路として機能させる点は上記実施形態と同一であるが、流路制限部材16が分離板14の機能を兼ねることを特徴としている。
図11に示すように、筐体60は、洗浄媒体を通過させずに空気を通す多孔性の流路制限部材16を有している。
このように分離機能を有する部材が円筒形状を有していても、旋回流の流れる方向に沿った面であるため、筐体60の軸心方向全体に亘って「洗浄媒体飛翔・吸着効果」が得られる。すなわち、筐体60の軸心方向の長さを大きくしても洗浄媒体の吸着が偏らないため、開口部の幅全体に亘って均一な洗浄機能が得られるとともに、開口部を離したときの洗浄媒体の漏れも抑制できる。
【0050】
筐体60を複数連結すれば、上記実施形態と同様に均一な洗浄能力を保ちつつクリーニング面積を拡大できる。図12では、一体構成の筐体500を示しているが、上記実施形態と同様に筐体60に結合構成を付与して連結する方式としてもよい。
図12では、パイプ62を流路制限部材16に直結して吸気手段6へ接続する構成としているが、上記実施形態と同様に吸気カバーを介して接続してもよい。
【0051】
上記各実施形態における乾式クリーニング筐体を用いた乾式クリーニング装置は、図示しないが、乾式クリーニング筐体が変わるだけで、図17乃至図19で示した乾式クリーニング装置2と同様である。
【0052】
図13及び図14に基づいて第3の実施形態を説明する。
本実施形態では、分離板14と流路制限部材16の双方が多孔性であることを特徴としている。
図13に示すように、区分筐体50の軸方向端面には、多孔性の流路制限部材16に連通するようにそれぞれ平板状の分離板14が固定されている。インレット24には、通気路内の幅を変更する通気路幅変更手段としての通気路幅変更部材80が着脱自在に設けられており、開口面積が異なる複数の通気路幅変更部材80を用意して、吸気流量に合ったものを選択して装着するようになっている。
これにより空気流入口22の流速を容易に最適化することができる。
本実施形態では、通気路幅変更手段を交換方式としたが、インレットに設けた機構(弁)を調整することによって開口面積を変化させる構成としてもよい。
図13は、1つの区分筐体50を用いた両側吸気方式の構成を示しているが、クリーニング面積を拡大する場合には、図14に示すように、区分筐体50を複数連結する。ここでは4連両側吸気方式を示している。
分離板14と流路制限部材16の双方が多孔性であるため、連結筐体間の気流の行き来が可能となり、連結筐体間ごとの旋回流速のばらつきが少なくなり、洗浄ムラが少なくなる。
【0053】
図15及び図16に基づいて、本発明(上記各実施形態)を想到するに至った過程で検討された構成を比較例として説明する。
本例に係る筐体70は、図15に示すように、分離板14を斜めに配置し、これによって確保された筐体70の側面に吸気口72を形成している。流路制限部材16は吸引流路としては機能しない。
上記基本技術における筐体の軸心方向への複数連結を容易にするための対策である。吸気口72を円筒状筐体の底面ではなく側面に形成することによって連結における干渉構成を無くしている。
図16は連結筐体600を示しているが、各筐体70にそれぞれ吸気口72及び吸引パイプ74が存在するため、吸引構成が複雑となり、取り扱い性並びにハンディタイプ化を阻害する。
勿論、このような構成としても、上記基本技術に比べて開口部の大面積化(クリーニング面積の拡大化)を容易にできるメリットに関しては、上記実施形態と変わりはない。
【0054】
上記のように、洗浄媒体の材質特性や大きさは洗浄対象物の汚れの種類に応じて適宜選択されるが、フラックス等の膜状の付着物を除去するのに適した洗浄媒体について説明する。
図25は、薄片状の洗浄媒体5の衝突時のパターンを示す模式図である。塑性変形し易い洗浄媒体の場合、図25(c)で示されるように洗浄媒体の端部の変形が大きくなり、接触面積の増大や衝撃力の緩和が起こる。この結果、衝突時の端部における接触力が分散されてしまい、洗浄能力が低下してしまう。そのため膜状の付着物に対する食い込み量が低下し、洗浄装置の洗浄効率が低下してしまう。
延性破壊する洗浄媒体の場合も、図25(d)で示されるように洗浄媒体の破面端部の塑性変形が大きくなり、接触面積の増大や衝撃力の緩和が起こる。この結果、衝突時の端部における接触力が分散されてしまい、洗浄能力が低下してしまう。そのため、膜状の付着物に対する食い込み量が低下し、洗浄装置の洗浄効率が低下してしまう。
これに対し、脆性破壊する洗浄媒体では洗浄媒体の破面端部の塑性変形が小さいため、端部における接触力の分散が生じにくい。
また、洗浄媒体の端部に膜状の付着物が付着しても脆性破壊を繰り返すことにより、新たな端部を形成し続けることが可能であり、洗浄効率が低下することはない。
【0055】
脆性材料としては、例えばガラス片、セラミック片、アクリル樹脂、ポリスチレン、又はポリ乳酸等の樹脂フィルム片等が挙げられる。
洗浄媒体に折り曲げられる力が繰り返し加わることで洗浄媒体が破壊される。本発明では、洗浄媒体が脆性であるか否かを耐折性によって定義している。
耐折性65未満の脆性材料である洗浄媒体を用いると、洗浄媒体が繰り返し衝突することによって発生するバリが洗浄媒体に残留せずに折れて分離されて排出される(図25(b)参照)。バリが残留しないため洗浄媒体のエッジが維持される。
さらに、洗浄媒体が耐折性10未満の脆性材料である場合、洗浄媒体はバリが発生する前に中央から折れて新しいエッジを生じさせる(図25(a)参照)。
これにより、洗浄媒体のエッジが維持される効果がある。洗浄媒体のエッジが維持されることにより洗浄媒体の衝突時の食い込み量が低下しないため、洗浄媒体の固着膜除去能力が径時劣化しないという効果がある。
【0056】
ここでの洗浄媒体の薄片状とは0.02mm以上0.2mm以下の厚みを備え、面積100mm2以下のものと定義する。
鉛筆硬度とはJIS K−5600−5−4に準拠した手法で計測したものであって、評価した薄片状の洗浄媒体に傷、へこみが付かない最も硬い鉛筆の芯番のことを意味する。
また、耐折性とは、JIS P8115に準拠して計測したものであり、薄片状の洗浄媒体をR=0.38mmで135度に曲げる動作を繰り返し、破損にいたるまでの往復回数を意味する。
【0057】
[実施例]
ここではフラックスが付着した、ガラス繊維入りエポキシ樹脂製のパレットを洗浄対象物のサンプルとして使用した。パレットは、フローはんだ槽によるはんだ付け工程の際に、PCBの半田付けしない領域をマスクするために用いられている。このようなマスク治具は繰り返し使用されることによりフラックスが膜状に厚く堆積するため、定期的にフラックスを除去する必要がある。固着したフラックスの鉛筆硬度は2Bである。また膜厚は0.5〜1mmである。
洗浄装置は図1に示した乾式クリーニング筐体を備えた乾式クリーニング装置を用いた。クリーニング装置には、真空度20Kpaの吸引能力を備える吸引手段を使用し、フラックスを固着させたパレットを用意し、開口部面積45×60mmの領域を1サンプル単位として、3秒かけて洗浄した。洗浄媒体は各2gを使用した。使用した薄片状洗浄媒体と洗浄結果を表1に示した。
同表における判定記号は次の通りである。
×:ほとんど汚れが取れない。
△:一部洗浄残りがある。
○:ほぼきれいになっている。
◎:非常にきれいになっている。
−:洗浄媒体が消耗して、すべて洗浄槽内から排出されてしまう。
【0058】
各洗浄媒体の物性として、耐折性および鉛筆硬度を表1に示す。
表1の初期洗浄能力の判定結果より、洗浄媒体の鉛筆硬度がフラックスの鉛筆硬度2B以下であればほとんどフラックス汚れが取れない。これは、衝突した際に、膜状のフラックス汚れに洗浄媒体が食い込めないためである。
洗浄媒体は、気流によって飛翔し洗浄対象に繰り返し衝突する。衝突によって洗浄媒体にはダメージが蓄積され、破損または変形などの劣化をおこす。
また、各洗浄媒体の機械的物性(耐折性及び鉛筆硬度)の分布を図26に示す。
【0059】
表1及び図25に基づいて、洗浄媒体の劣化パターンを再度具体的に説明する。洗浄媒体の耐折性が10未満であるガラス、アクリル1(表中では丸数字で表示:以下同じ)、アクリル2、COC(ポリオレフィン)の場合、図25(a)に示したように衝突の衝撃によって、洗浄媒体の中心付近で破断する。このとき、破断面は新しいエッジとなりフラックスに食い込むため、固着除去能力は低下しない。
洗浄媒体の素材の耐折性が10以上65未満のTAC1、TAC2、PI2においては、図25(b)に示したように、中央付近では破断せず、衝突の衝撃でエッジにバリが発生し、そのバリだけが破断する。洗浄媒体の厚みが維持されるため、洗浄媒体がフラックスに食い込み、除去する効果が維持される。
洗浄媒体の素材の耐折性が65以上である場合、洗浄媒体は衝撃によって折れず、エッジ部分が塑性変形する。
図25(c)は、塑性変形してエッジが潰れて端部がだれる様子を図示しており、PI1がこのような挙動を示す。
図25(d)は、塑性変形によりエッジがカールする様子を図示しており、SUS、PS1、PS2、PE、PET、TPXがこのような挙動を示す。
図25(c)や図25(d)の例に示した洗浄媒体は、エッジが塑性変形することにより、エッジがだれ、衝突時の衝撃力が緩和されてしまうために、表1に示したように複数サンプル処理後に洗浄能力が大きく低下する。
これらの結果により、膜状に固着したフラックスの除去に対しては、まずフラックス以上の鉛筆硬度を備え、かつ耐折性が0以上65未満の脆性材料の洗浄媒体を用いると、良好な結果が長時間安定して得られることがわかる。
【0060】
本実施例に挙げた数値の根拠として、表1、表2に、各洗浄媒体の耐折性数値の範囲を示す。
表1、表2に示したように耐折性の平均値や最小値が0である薄片状洗浄媒体(ここでは、ガラス、COC、アクリル2)は、折れに対して極めて脆い素材であり、表1に示したように非常に短時間で消耗してしまうため、ランニングコストが高くなる。
また、良好な洗浄特性を示したPI2の最大耐折性は52である。
したがって、洗浄媒体の耐折性が1以上52以下であると、長時間良好な洗浄能力を維持できる。
また、図25(a)のような脆性破壊を示す洗浄媒体のうちで、最大の耐折性数値はアクリル1製洗浄媒体における9であった。したがって0以上9以下の耐折性数値を示す洗浄媒体は、図25(a)に示した脆性破壊が発生し、10以上52以下の洗浄媒体は図25(b)に示した脆性破壊が発生すると分類できる。
また、耐折性最小値が0を示したアクリル2製の洗浄媒体は、きわめて脆く、表1に示したように長時間の使用に耐えない。一方耐折性最小値が1であるアクリル1製の洗浄媒体は、表1に示したように長時間洗浄能力を維持することができた。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表1に示した各洗浄媒体の耐折性平均値から、より確実にフラックス等の膜状の付着物を除去するには、膜状の付着物以上の鉛筆硬度を備え、且つ、2以上45以下の耐折特性を有している洗浄媒体を用いることが望ましい。
【符号の説明】
【0064】
5 洗浄媒体
6 吸気手段
8 吸気口
14 多孔手段としての分離板
16 流路制限部材
18 開口部
20 洗浄対象物
24 通気路としてのインレット
50 区分筐体としての乾式クリーニング筐体
52 吸気カバー
54 終端カバー
80 通気路幅変更手段としての通気路幅変更部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特開平4−83567号公報
【特許文献2】特開昭60−188123号公報
【特許文献3】特開2009−226394号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄媒体を気流により飛翔させ、上記洗浄媒体を洗浄対象物に当てて洗浄対象物の洗浄を行う乾式クリーニング筐体において、
上記洗浄媒体を飛翔させる内部空間と、
上記洗浄対象物に当接して上記洗浄媒体を上記洗浄対象物に衝突させる開口部と、
外部からの空気を上記内部空間へ通す通気路と、
上記通気路を介して上記内部空間に導気された空気を吸引することにより上記内部空間に旋回気流を生じさせる吸気口と、
上記洗浄対象物から除去された除去物を上記吸気口側へ通過させる多孔手段と、
上記旋回気流の軸心方向に延びる筒形状に設けられると共に該筒形状の内部は吸引流路として上記吸気口に連通される流路制限部材と、
からなる筐体部を有し、
上記筐体部は上記軸心方向で複数領域に区画され、該複数領域の各領域で上記洗浄媒体を独立して収容することを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項2】
請求項1に記載の乾式クリーニング筐体において、
上記各領域が、上記軸心方向に互いに結合可能な区分筐体としてなり、該区分筐体を複数結合して1つの筐体部が構成されていることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項3】
請求項2に記載の乾式クリーニング筐体において、
上記区分筐体間の結合が、着脱自在な凹凸の嵌合構成によってなされることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の乾式クリーニング筐体において、
上記1つの筐体部の上記軸心方向一端に上記吸気口を備えた吸気カバーが結合され、他端には吸引流路の他端を閉塞する終端カバーが結合されていることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の乾式クリーニング筐体において、
上記1つの筐体部の上記軸心方向両端に上記吸気口を備えた吸気カバーが結合され、上記軸心方向両側から吸引可能であることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の乾式クリーニング筐体において、
上記開口部の上記軸心方向の幅が、上記筐体部の上記領域毎の上記軸心方向における幅と略同一であることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の乾式クリーニング筐体において、
上記多孔手段が上記流路制限部材の上記軸心方向における少なくとも一方の端に設けられ、上記多孔手段が上記流路制限部材の上記軸心方向における少なくとも一方の端の外縁と、上記筐体部の内縁とを連結し、かつ上記旋回気流の流れに沿った連続面を備える形態であることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか1つに記載の乾式クリーニング筐体において、
上記複数の区分筐体が仕切板で隔てられ、上記仕切板が多孔手段を兼ねることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項9】
請求項2〜7のいずれか1つに記載の乾式クリーニング筐体において、
上記複数の区分筐体が仕切板で隔てられ、上記仕切板が薄板状であることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項10】
請求項2〜7のいずれか1つに記載の乾式クリーニング筐体において、
上記複数の区分筐体が仕切板で隔てられ、上記仕切板が吸引流路に連結されていることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項11】
請求項10に記載の乾式クリーニング筐体において、
上記多孔手段が上記筐体部内方に引き込まれた円錐形状であることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の乾式クリーニング筐体において、
上記流路制限部材が上記多孔手段を兼ねることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1つに記載の乾式クリーニング筐体において、
上記通気路内の幅を変更する通気路幅変更手段を有していることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1つに記載の乾式クリーニング筐体と、上記乾式クリーニング筐体の上記内部に収容され、あるいは上記内部に供給される上記洗浄媒体と、上記乾式クリーニング筐体の上記吸気口に接続される吸気手段とからなることを特徴とする乾式クリーニング装置。
【請求項1】
洗浄媒体を気流により飛翔させ、上記洗浄媒体を洗浄対象物に当てて洗浄対象物の洗浄を行う乾式クリーニング筐体において、
上記洗浄媒体を飛翔させる内部空間と、
上記洗浄対象物に当接して上記洗浄媒体を上記洗浄対象物に衝突させる開口部と、
外部からの空気を上記内部空間へ通す通気路と、
上記通気路を介して上記内部空間に導気された空気を吸引することにより上記内部空間に旋回気流を生じさせる吸気口と、
上記洗浄対象物から除去された除去物を上記吸気口側へ通過させる多孔手段と、
上記旋回気流の軸心方向に延びる筒形状に設けられると共に該筒形状の内部は吸引流路として上記吸気口に連通される流路制限部材と、
からなる筐体部を有し、
上記筐体部は上記軸心方向で複数領域に区画され、該複数領域の各領域で上記洗浄媒体を独立して収容することを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項2】
請求項1に記載の乾式クリーニング筐体において、
上記各領域が、上記軸心方向に互いに結合可能な区分筐体としてなり、該区分筐体を複数結合して1つの筐体部が構成されていることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項3】
請求項2に記載の乾式クリーニング筐体において、
上記区分筐体間の結合が、着脱自在な凹凸の嵌合構成によってなされることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の乾式クリーニング筐体において、
上記1つの筐体部の上記軸心方向一端に上記吸気口を備えた吸気カバーが結合され、他端には吸引流路の他端を閉塞する終端カバーが結合されていることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の乾式クリーニング筐体において、
上記1つの筐体部の上記軸心方向両端に上記吸気口を備えた吸気カバーが結合され、上記軸心方向両側から吸引可能であることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の乾式クリーニング筐体において、
上記開口部の上記軸心方向の幅が、上記筐体部の上記領域毎の上記軸心方向における幅と略同一であることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の乾式クリーニング筐体において、
上記多孔手段が上記流路制限部材の上記軸心方向における少なくとも一方の端に設けられ、上記多孔手段が上記流路制限部材の上記軸心方向における少なくとも一方の端の外縁と、上記筐体部の内縁とを連結し、かつ上記旋回気流の流れに沿った連続面を備える形態であることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか1つに記載の乾式クリーニング筐体において、
上記複数の区分筐体が仕切板で隔てられ、上記仕切板が多孔手段を兼ねることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項9】
請求項2〜7のいずれか1つに記載の乾式クリーニング筐体において、
上記複数の区分筐体が仕切板で隔てられ、上記仕切板が薄板状であることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項10】
請求項2〜7のいずれか1つに記載の乾式クリーニング筐体において、
上記複数の区分筐体が仕切板で隔てられ、上記仕切板が吸引流路に連結されていることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項11】
請求項10に記載の乾式クリーニング筐体において、
上記多孔手段が上記筐体部内方に引き込まれた円錐形状であることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の乾式クリーニング筐体において、
上記流路制限部材が上記多孔手段を兼ねることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1つに記載の乾式クリーニング筐体において、
上記通気路内の幅を変更する通気路幅変更手段を有していることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1つに記載の乾式クリーニング筐体と、上記乾式クリーニング筐体の上記内部に収容され、あるいは上記内部に供給される上記洗浄媒体と、上記乾式クリーニング筐体の上記吸気口に接続される吸気手段とからなることを特徴とする乾式クリーニング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
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【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2012−121017(P2012−121017A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153243(P2011−153243)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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