説明

乾式ポリイミド系水処理用分離膜及びその製造方法

【課題】 アミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法において、アミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸の非溶剤を含む水溶性凝固液に導くことなく、優れた空孔特性を有するアミドイミド系ポリマー又はイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜が得られる製造方法を得る。
【解決手段】 本発明のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法は、アミドイミド系ポリマー若しくはポリアミック酸と、該アミドイミド系ポリマー若しくはポリアミック酸の良溶媒である溶剤とからなる液組成物を基材の片面に塗布しフィルム状に流延した後、アミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸の非溶剤を含む水溶性凝固液に導くことなく加湿乾燥に付し、ポリアミック酸を用いた場合にはさらにイミド化工程を経てイミド系ポリマーとする工程を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式ポリイミド系水処理用分離膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる多孔性フィルムの製造法として、相転換法が知られている。特許文献1には、アミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸、特定の水溶性ポリマー、水、及びアミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸の良溶媒を特定の割合で含む混合溶液をフィルム状に流延する際、特定の相対湿度及び温度雰囲気下で特定時間保持した後、アミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸の非溶剤からなる水溶性凝固液に導き、ポリアミック酸を用いた場合にはさらにイミド化工程を経てイミド系ポリマーとする方法が記載されている。また、特許文献2には、基板にポリアミック酸/NMP液を塗布し、水浴にて凝固脱溶媒し、その後乾燥してフィルムを得る方法が記載されている。これらの方法では、いずれも均一な開孔率や孔径を持つ多孔性フィルムを得ることを目的としていた。さらに、水浴にて凝固脱溶媒する必要があり、製造工程が煩雑となるという不具合があった。また、この製法で作られたフィルムは、分離膜としては、一般的に孔径が小さいため水処理には適さず、ガス分離用途として利用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3963765号公報
【特許文献2】特開2004−359860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、水浴にて凝固脱溶媒する必要がない、新規なアミドイミド系ポリマー又はイミド系ポリマーからなる耐溶剤性や機械的強度に優れた水処理用分離膜を提供することにある。
本発明の他の目的は、水浴にて凝固脱溶媒することなく、新規なアミドイミド系ポリマー又はイミド系ポリマーからなる耐溶剤性や機械的強度に優れた水処理用分離膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記に述べた公知技術の欠点を克服すべく鋭意研究を重ねた結果、アミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸を含む成膜液(液組成物)を、アミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸の非溶剤を含む水溶性凝固液に導くことなく加湿乾燥に付すことにより、又は特定条件の加湿乾燥に付すことにより、水処理に適した、連通性を有する微小孔が多数形成された多孔性膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、アミドイミド系ポリマー若しくはポリアミック酸と、該アミドイミド系ポリマー若しくはポリアミック酸の良溶媒である溶剤とからなる液組成物を基材の片面に塗布しフィルム状に流延した後、アミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸の非溶剤を含む水溶性凝固液に導くことなく加湿乾燥工程に付し、ポリアミック酸を用いた場合にはさらにイミド化工程を経てイミド系ポリマーとする工程を有することを特徴とする、アミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法を提供する。
前記加湿乾燥工程は、フィルムを相対湿度50〜100%、温度15〜90℃からなる雰囲気下に0.2分間〜8時間保持する工程(A)を含んでいることが好ましい。
また、前記加湿乾燥工程は、温度80〜120℃の水蒸気を吹き付ける水蒸気吹付工程(B)を含んでいることが好ましい。
また、本発明は、アミドイミド系ポリマー若しくはポリアミック酸と、該アミドイミド系ポリマー若しくはポリアミック酸の良溶媒である溶剤とからなる液組成物を基材の片面に塗布しフィルム状に流延した後、加湿乾燥工程に付し、ポリアミック酸を用いた場合にはさらにイミド化工程を経てイミド系ポリマーとする工程を有するアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法であって、加湿乾燥工程が、フィルムを相対湿度50〜100%、温度15〜90℃からなる雰囲気下に1時間以上保持する工程、又は、温度80〜120℃の水蒸気を吹き付ける水蒸気吹付工程を含むことを特徴とする、アミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法を提供する。
さらにまた、本発明は、連通孔を有する水処理用分離膜であって、フィルムのいずれか一方の表面の最大孔径dmaxと最小孔径dminとが、0.02<dmin/dmax<0.5の関係を満たし、且つ、0.1MPaでの純水透水速度が300L/m2/hr以上であることを特徴とする、アミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法では、流延されたフィルムを、アミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸の非溶剤を含む水溶性凝固液に導くことなく加湿乾燥に付すため、水浴等により凝固脱溶媒する必要がなく、製造工程を簡略化できる。
また、本発明のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法では、特定条件の加湿乾燥に付すことにより、水処理に適した、不均一な開孔率や孔径を持った新規なアミドイミド系ポリマー又はイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜が得られる。開孔率や孔径が不均一である水処理用分離膜は、膜表面だけでなく、膜断面方向を利用して粒子捕捉を行うことが可能となるため、優れた分離性能を有する。
さらに、この方法で製造された水処理用分離膜は、フィルムの表面の最大孔径dmaxと最小孔径dminとが特定の比の範囲にあるという特別な空孔特性を有するため、精密濾過、分離濃縮等の膜分離技術に利用できる。
本発明のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜は、孔径が従来法で得られたものより大きいため、水処理に適しており、従来の水処理に使用されている樹脂(酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンなど)に比べ、強度に優れているので、耐久性に優れ、長期寿命を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、無孔の基材、多孔性基材等の基材上にポリイミド溶液を塗布し、貧溶剤接触による相分離により多孔質膜を形成する際に、例えば貧溶媒として蒸気(水蒸気)を用いる加湿乾燥により、ポリイミドの連通孔を有する多孔質層を形成したフィルム及び製造方法を特徴とする。アミドイミド系ポリマーは、耐熱性があり、熱成形が可能で、機械的強度、耐薬品性、電気特性に優れていることから、各種成形材料や耐熱性絶縁塗料等に応用されており、通常無水トリメリット酸とジイソシアネートとの反応、又は無水トリメリット酸クロライドとジアミンとの反応により重合した後、イミド化することによって製造することができる。一方、イミド系ポリマーは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との反応によりポリアミック酸を得て、それをさらにイミド化することにより製造することができる。イミド系ポリマーの場合も耐熱性があり、前述のアミドイミド系ポリマーと同様の性質を有しているが、イミド化すると溶解性が悪くなるために、まずポリアミック酸の段階で多孔膜を形成してからイミド化されることが多い。
【0009】
[アミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法]
本発明のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法は、アミドイミド系ポリマー若しくはポリアミック酸と、該アミドイミド系ポリマー若しくはポリアミック酸の良溶媒である溶剤とからなる液組成物を基材の片面に塗布しフィルム状に流延した後、アミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸の非溶剤を含む水溶性凝固液に導くことなく加湿乾燥工程に付し、ポリアミック酸を用いた場合にはさらにイミド化工程を経てイミド系ポリマーとする工程を有することを特徴とする。
また、本発明のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法は、アミドイミド系ポリマー若しくはポリアミック酸と、該アミドイミド系ポリマー若しくはポリアミック酸の良溶媒である溶剤とからなる液組成物を基材の片面に塗布しフィルム状に流延した後、加湿乾燥工程に付し、ポリアミック酸を用いた場合にはさらにイミド化工程を経てイミド系ポリマーとする工程を有するアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法であって、加湿乾燥工程が、フィルムを相対湿度50〜100%、温度15〜90℃からなる雰囲気下に1時間以上保持する工程、又は、温度80〜120℃の水蒸気を吹き付ける水蒸気吹付工程を含むことを特徴とする。この場合には、流延したフィルムをアミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸の非溶剤を含む水溶性凝固液に導いてもよい。
【0010】
<加湿乾燥工程>
加湿乾燥工程は、相対湿度50〜100%、温度15〜90℃からなる雰囲気下で1時間以上(例えば1〜8時間)、好ましくは2時間以上(例えば2〜8時間)で行うか、又は温度80〜120℃の水蒸気を吹き付ける。流延したフィルムをアミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸の非溶剤を含む水溶性凝固液に導かない場合、加湿乾燥工程は、好ましくは、フィルムを相対湿度50〜100%、温度15〜90℃からなる雰囲気下に0.2分間〜8時間保持する工程(A)、又は、温度80〜120℃の水蒸気を吹き付ける水蒸気吹付工程(B)を含むか、または、上記工程(A)と(B)の両方を含んでいても良い。
【0011】
上記工程(A)における相対湿度は、好ましくは70〜90%、さらに好ましくは75〜85%とすることができる。温度は、好ましくは30〜80℃、さらに好ましくは55〜70℃とすることができる。保持時間は、好ましくは1分間〜7時間、さらに好ましくは1分間〜6時間とすることができる。保持条件は、相対湿度70〜90%、温度30〜80℃で1分間〜8時間が好ましく、相対湿度約80%(例えば、75〜85%)、温度55〜70℃で1分間〜6時間がさらに好ましい。加湿乾燥工程をこのような条件で行うことにより、フィルムの表面の最大孔径dmaxと最小孔径dminとが、0.02<dmin/dmax<0.5の関係を満たし、不均一な開孔率や孔径を持った水処理用分離膜を得ることができる。湿度が上記範囲を下回ると、表面の開孔率が充分でなくなる場合がある。
【0012】
上記水蒸気吹付工程(B)における水蒸気の温度は、通常80〜120℃であり、好ましくは80〜100℃、さらに好ましくは85〜95℃とすることができる。水蒸気を吹き付ける時間は、例えば0.2〜60分間、好ましくは0.2〜30分間、さらに好ましくは1〜15分間とすることができる。水蒸気吹付工程は、80〜100℃の水蒸気を0.2〜30分間吹き付けることが好ましく、85〜95℃の水蒸気を0.2〜10分間吹き付けることがさらに好ましい。
【0013】
水蒸気吹付工程(B)の前に上記工程(A)を設けてもよい。この場合、上記工程(A)の時間は0.2〜60分間とすることができ、好ましくは0.2〜30分間、さらに好ましくは0.2〜10分間とすることができる。上記水蒸気吹付工程に付すことにより、両面に開孔を有する水処理用分離膜を短時間で得ることができる。また、加湿乾燥工程において、上記工程(A)のみを行う場合には、保持条件は、好ましくは相対湿度70〜90%、温度30〜80℃で1〜8時間、さらに好ましくは相対湿度約80%(例えば、75〜85%)、温度55〜70℃で4〜6時間とすることができる。
【0014】
<低湿度の乾燥工程(C)>
本発明のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法では、上記加湿乾燥工程後、低湿度の乾燥工程(C)に付すことができる。乾燥工程(C)における相対湿度は、上記工程(A)における相対湿度より低ければよいが、例えば、0〜40%、好ましくは0〜30%である。乾燥工程(C)は、通常15℃以上320℃以下、好ましくは15℃以上100℃以下、さらに好ましくは15℃以上60℃未満で行うことができる。乾燥工程(C)における乾燥温度は、上記加湿乾燥工程における乾燥温度よりも低く設定することが好ましい。乾燥時間は、1分間〜15時間の範囲に設定できる。乾燥工程は、例えば、15℃以上60℃未満の、加湿乾燥工程における乾燥温度よりも低い温度において、5〜15時間、好ましくは10〜15時間行うことができる。乾燥工程をこのような条件で行うことにより、水処理用分離膜内の溶剤を完全に除去することができる。
【0015】
<アミドイミド系ポリマー、イミド系ポリマー>
アミドイミド系ポリマーは、耐熱性があり、熱成形が可能で、機械的強度、耐薬品性、電気特性に優れていることから、各種成形材料や耐熱性絶縁塗料等に応用されており、通常無水トリメリット酸とジイソシアネートとの反応、又は無水トリメリット酸クロライドとジアミンとの反応により重合した後、イミド化することによって製造することができる。一方、イミド系ポリマーは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との反応によりポリアミック酸を得て、それをさらにイミド化することにより製造することができる。イミド系ポリマーの場合も耐熱性があり、前述のアミドイミド系ポリマーと同様の性質を有しているが、イミド化すると溶解性が悪くなるために、まずポリアミック酸の段階で多孔膜を形成してからイミド化されることが多い。
【0016】
本発明のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法としては、例えば、アミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸8〜25重量%と、アミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸の良溶媒75〜92重量%とからなる液組成物をフィルム状に流延した後、該フィルムを相対湿度50〜100%、温度15〜90℃からなる雰囲気下に0.2分間〜8時間保持した後、アミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸の非溶剤を含む水溶性凝固液に導くことなく(接触させることなく)、ポリアミック酸の場合にはさらにイミド化工程を経て水処理用分離膜を得る方法が挙げられる。
【0017】
また、本発明のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法としては、例えば、アミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸8〜25重量%と、アミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸の良溶媒75〜92重量%とからなる液組成物をフィルム状に流延した後、必要に応じて該フィルムを相対湿度50〜100%、温度15〜90℃からなる雰囲気下に0.2〜60分間保持した後、温度80〜120℃の水蒸気を0.2〜60分間吹き付ける水蒸気吹付工程に付し、アミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸の非溶剤を含む水溶性凝固液に導くことなく又は導いて(接触させることなく又は接触させて)、ポリアミック酸の場合にはさらにイミド化工程を経て本水処理用分離膜を得る方法が挙げられる。
【0018】
さらに、本発明のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法としては、例えば、アミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸8〜25重量%と、アミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸の良溶媒75〜92重量%とからなる液組成物をフィルム状に流延した後、該フィルムを相対湿度50〜100%、温度15〜90℃からなる雰囲気下に1時間以上保持した後、アミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸の非溶剤を含む水溶性凝固液に導くことなく又は導いて(接触させることなく又は接触させて)、ポリアミック酸の場合にはさらにイミド化工程を経て本水処理用分離膜を得る方法が挙げられる。
【0019】
アミドイミド系ポリマーは、前述の通り、通常無水トリメリット酸とジイソシアネートとの反応、または無水トリメリット酸クロライド等の酸成分とジアミンとの反応により重合される。酸成分としては、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸クロライドやそれらの誘導体等が、一方、ジアミン成分としては、m−フェニレンジアミン、p−パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ジアミノピリジン等が例示されるがこれらに限定されるものではない。また、特開昭63−283705号公報や特開平2−198619号公報には化学構造に関する開示例があり、これらを使用することも可能である。
【0020】
イミド化は熱イミド化でも化学イミド化でもよく、化学イミド化の例としては特許第3192762号公報に記載例がある。またイミド系ポリマーに関しては、前述の通りテトラカルボン酸成分とジアミン成分を反応させることにより重合されるが、一旦ポリアミック酸を合成し、その状態で多孔膜を形成してから熱イミド化または化学イミド化される例が多い。テトラカルボン酸成分の例としては、無水ピロメリット酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物やそれらの誘導体が、一方、ジアミン成分としては、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテルや、前述のアミドイミド系ポリマーに使用するジアミン成分や、特開昭63−283704号公報、特開平4−110027号公報、特開平4−110028号公報、特開平4−110029号公報、特開平4−110030号公報に開示の成分を使用することも可能である。またイミド化は前述のアミドイミド系ポリマーと同じ手法をとることが可能である。
【0021】
アミドイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜を製造する場合、流延に付す液組成物は、アミドイミド系ポリマー8〜25重量%と、アミドイミド系ポリマーの良溶媒75〜92重量%とから構成することができるが、この際に、アミドイミド系ポリマーの濃度が低すぎるとフィルムの強度が弱くなり、また高すぎると空孔率が小さくなる。
【0022】
<溶剤>
製膜用の塗布液(液組成物)を調製する場合の、アミドイミド系ポリマーやイミド系ポリマーの前駆体であるポリアミック酸に使用する溶媒(良溶媒)は、アミドイミド系ポリマー若しくはポリアミック酸の良溶媒であり、具体的には、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、NMP/キシレン/メチルエチルケトン系混合溶媒、NMP/キシレン系混合溶媒、エチルアルコール/トルエン系混合溶媒等やこれらの混合物でもよく、使用するポリマーの化学骨格に応じて溶解性を有するものを使用することができる。
【0023】
<他の成分>
また、膜構造をよりスポンジ状に多孔化するためには、流延に付す液組成物に、水溶性ポリマーや水を加えてもよい。水溶性ポリマーを使用することにより、水蒸気を吹き付ける場合には、フィルム内部をより均質なスポンジ状の多孔構造にすることができる場合がある。上記液組成物を構成するアミドイミド系ポリマーとアミドイミド系ポリマーの良溶媒との総量100重量部に対し、水溶性ポリマーを0〜40重量部、水を0〜10重量部添加することができる。
【0024】
水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、多糖類等やその誘導体などが挙げられる。これらの水溶性ポリマーは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、ポリビニルピロリドンが特に好ましい。多孔化のためには、水溶性ポリマーの分子量は1000以上が良く、好ましくは5000以上、特に好ましくは1万以上(例えば、1万〜20万程度)である。なかでも分子量1000以上のポリビニルピロリドンが好ましい。水の添加はボイド径の調整に用いることができ、添加量を増やすことで径を大きくすることが可能となる。
【0025】
<基板>
溶液をキャストする際に用いる基板(キャスト板)としては、無孔の基材、多孔性基材等の基材が使用でき、具体的には、例えば、天然繊維、合成繊維、無機質繊維等からなる織布および不織布;ガラス板;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等のフッ素系樹脂、塩化ビニル樹脂、その他の樹脂からなるプラスチックシート;ステンレス板、アルミニウム板等の金属板等が使用できる。なお表面素材と内部素材とを違うもので組合せた複合板でもよい。キャスト板における表面素材の種類や粗度は、水処理用分離膜との剥がれやすさや、水処理用分離膜表面の孔径・開孔率・平滑性に影響を与えるので、目的に応じて適宜選択するのが好ましい。基材としては、多孔性基材が好ましい。
【0026】
[アミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜]
本発明のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜は、アミドイミド系ポリマー又はイミド系ポリマーを主成分とするフィルム状成型物であり、該成型物には連通性を有する微小孔(連続微小孔、連通孔)が多数存在し、フィルムの表面の最大孔径dmaxと最小孔径dminとが、0.02<dmin/dmax<0.5の関係を満たすことを特徴とする。
【0027】
<最大孔径、最小孔径>
本発明のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜では、最大孔径dmaxと最小孔径dminとが0.02<dmin/dmax<0.5の関係を満たし、好ましくは、0.03<dmin/dmax<0.3の関係を満たす。最大孔径dmaxと最小孔径dminとが、このような関係を有することにより、膜表面だけでなく、膜断面方向を利用して粒子捕捉を行うことが可能となるため、優れた分離性能を有するという効果が奏される。
【0028】
本発明のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜は、好ましくは、フィルムの一方の表面における孔径と、他方の表面における孔径の比率が1.2以上であり、さらに好ましくは1.3以上、特に好ましくは1.5以上である。上記孔径の比率が、このような範囲にあることにより、膜表面だけでなく、膜断面方向を利用して粒子捕捉を行うことが可能となるため、優れた分離性能を有するという効果が得られる。
【0029】
また、本発明のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜は、好ましくは、多孔質層が複数重なっており、それらの各層の表面開孔率や孔径が、一方の表面から他方の表面に向かって連続的に変化している。孔径の変化の仕方はポリマーの種類により異なる傾向がある。例えば、ポリアミック酸では、孔径が、流延時に基板に接していた側の表面から流延時に基板に接していなかった側の表面へ向かって減少する傾向があるのに対し、アミドイミド系ポリマーでは、ポリアミック酸に比べて、水(水蒸気)に接触した際の相分離速度が速いため、孔径は、流延時に基板に接していた側の表面から、流延時に基板に接していなかった側の水分と接触しやすい表面へ向かって増加する傾向がある。
【0030】
本発明のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜では、表面の孔径は、通常、最小孔径(dmin)0.01μm〜最大孔径(dmax)15μmであり、好ましくは最小孔径(dmin)0.07μm〜最大孔径(dmax)13μmである。さらに、フィルムの流延時に基板と接していない側の表面においては、通常、最小孔径(dmin)0.01μm〜最大孔径(dmax)15μmであり、好ましくは最小孔径(dmin)0.07μm〜最大孔径(dmax)13μmである。また、フィルムの流延時に基板(特に無孔の基材である基板)と接している側の表面においては、通常、最小孔径(dmin)0.01μm〜最大孔径(dmax)15μmであり、好ましくは最小孔径(dmin)0.1μm〜最大孔径(dmax)7μmである。最大孔径dmaxと最小孔径dminとが、このような範囲にあることにより、膜表面だけでなく、膜断面方向を利用して粒子捕捉を行うことが可能となるため、優れた分離性能を有するという効果が得られる。
【0031】
<平均開孔率>
本発明のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜は、好ましくは、フィルムの一方の表面における平均開孔率(例えば、フィルムの流延時に基板と接していない側の表面の平均開孔率(S))と、他方の表面における平均開孔率(例えば、フィルムの流延時に基板(特に無孔の基材である基板)と接している側の表面の平均開孔率(R))との比率(S)/(R)が1.2以上(例えば1.2〜5.0)であり、さらに好ましくは1.5以上(例えば1.5〜4.0)、特に好ましくは1.9以上(例えば1.9〜4.0)である。上記平均開孔率の比率が、このような範囲にあることにより、膜表面だけでなく、膜断面方向を利用して粒子捕捉を行うことが可能となるため、優れた分離性能を有するという効果が得られる。
【0032】
本発明のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜における、フィルムの流延時に基板と接していない側の表面の平均開孔率(S)は通常2〜80%、好ましくは3〜70%、フィルムの流延時に基板(特に無孔の基材である基板)と接している側の表面の平均開孔率(R)は通常2〜50%、好ましくは2〜30%とすることができる。両表面の平均開孔率(S)、(R)がこのような範囲にある場合、膜の収縮などが抑制されるという効果が奏される。
【0033】
本発明のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の厚みは、5〜200μmであり、好ましくは10〜150μm、さらに好ましくは20〜130μmである。厚みが薄くなりすぎるとフィルムの機械強度が充分でなくなり、一方厚すぎる場合には孔径分布の制御が困難になる。
【0034】
<純水透水速度>
本発明のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜は、通液性に優れており、0.1MPaでの純水透水速度は300L/m2/hr以上(例えば、300〜3000L/m2/hr)であり、好ましくは500L/m2/hr以上(例えば、500〜2500L/m2/hr)、より好ましくは800L/m2/hr以上(例えば、800〜2500L/m2/hr)、さらに好ましくは1000L/m2/hr以上(例えば、1000〜2300L/m2/hr)である。0.1MPaでの純水透水速度がこのような範囲にあることにより、スムーズに水処理できる。なお、純水透水速度(L/m2/hr)は、0.1MPaの圧力で純水をデッドエンド濾過(膜面積22.4cm2)し、単位時間、単位面積あたりに透過する純水量を測定することにより得ることができる。
【実施例】
【0035】
次に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、得られた水処理膜の評価は次のようにして行った。
【0036】
[最大孔径、最小孔径]
公開特許2005−162885記載の測定法に従い、算出した。フィルムの表面の電子顕微鏡写真から、任意の20×20μmの面積を5箇所選び、その中に存在する孔を真円であると仮定した時の孔径に換算し、その中で最も大きくなるものを最大孔径、最も小さくなるものを最小孔径とした。
【0037】
[平均開孔率]
表面の平均開孔率は、フィルム表面の電子顕微鏡写真から、任意の20×20μmの面積を選び、その中に存在する孔の合計面積が全体に占める比率を算出した。この操作を任意の5箇所について実施し平均値を求めた。
【0038】
[純水透水速度]
得られた膜に、0.1MPaの圧力で純水をデッドエンド濾過(膜面積22.4cm2)し、単位時間、単位面積あたりに透過する純水量を測定した。
【0039】
実施例1
ポリマーとしてポリアミック酸、溶剤としてN−メチルピロリドンからなる製膜溶液を用いた。この溶液は、商品名U−ワニスとして、宇部興産から入手できる。測定によれば、ポリアミック酸15重量部、N−メチルピロリドン85重量部の混合物である。不織布(日本パイリーン社製NF)上に製膜液を100μmの厚みでアプリケーターにより流延しキャストした。その後、恒温恒湿槽内で温度60℃、湿度80RH%の下、5時間乾燥した。次いで、乾燥機内で55℃、12時間乾燥して脱溶剤を行った。得られた多孔膜は膜厚60μmであり、最表面層(流延時に基板と接していなかった側のフィルム表面)の平均開孔率は10%、最小/最大孔径は0.1μm/1μmであった。また、得られた膜の0.1MPaでの純水透水速度は1150L/m2/hrであった。
【0040】
実施例2
ポリマーとしてポリアミドイミド、溶剤としてN−メチルピロリドンからなる製膜溶液を用いた。この溶液は、商品名バイロマックスHR11NNとして、東洋紡(株)から入手できる。測定によれば、ポリアミドイミド15重量部、N−メチルピロリドン85重量部の混合物である。不織布(日本パイリーン社製NF)上に製膜液を100μmの厚みでアプリケーターにより流延しキャストした。その後、恒温恒湿槽内で温度60℃、湿度80RH%の下、5時間乾燥した。次いで、乾燥機内で55℃、12時間乾燥して脱溶剤を行った。得られた多孔膜は、膜厚129μmであり、最表面層(流延時に基板と接していなかった側のフィルム表面)の平均開孔率は68%、最小/最大孔径は0.5μm/12μmであった。また、得られた膜の0.1MPaでの純水透水速度は1830L/m2/hrであった。
【0041】
実施例3
実施例2記載の溶液を用いて、不織布(日本パイリーン社製NF)上に製膜液を100μmの厚みでアプリケーターにより流延しキャストした。その後、恒温恒湿槽内で温度60℃、湿度80RH%の下、3時間乾燥した。次いで、乾燥機内で55℃、12時間乾燥して脱溶剤を行った。得られた多孔膜は、膜厚37μmであり、最表面層(流延時に基板と接していなかった側のフィルム表面)の平均開孔率は23%、最小/最大孔径は0.5μm/4μmであった。また、得られた膜の0.1MPaでの純水透水速度は1430L/m2/hrであった。
【0042】
実施例4
実施例2記載の溶液を用いて、不織布(日本パイリーン社製NF)上に製膜液を100μmの厚みでアプリケーターにより流延しキャストした。その後、恒温恒湿槽内で温度60℃、湿度80RH%の下、2分間乾燥させ、さらに、90℃蒸気を5分間直接吹き付けた。次いで、乾燥機内で55℃、12時間乾燥して脱溶剤を行った。得られた多孔膜は膜厚35μmであり、最表面層(流延時に基板と接していなかった側のフィルム表面)の平均開孔率は5%、最小/最大孔径は0.2μm/0.8μmであった。また、得られた膜の0.1MPaでの純水透水速度は1180L/m2/hrであった。
【0043】
比較例1
実施例2記載の溶液を用いて、不織布(日本パイリーン社製NF)上に製膜液を100μmの厚みでアプリケーターにより流延しキャストした。その後、常温の水槽に不織布(日本パイリーン社製NF)ごと12時間浸漬させた。次いで、乾燥機内で55℃、12時間乾燥して脱溶剤を行った。得られた多孔膜は膜厚100μmであり、最表面層(流延時に基板と接していなかった側のフィルム表面)の平均開孔率は6%、最小/最大孔径は0.1μm/1.1μmであった。また、得られた膜の0.1MPaでの純水透水速度は120L/m2/hrであった。
【0044】
実施例5
ポリマーとしてポリアミック酸、溶剤としてN−メチルピロリドンからなる製膜溶液を用いた。この溶液は、商品名U−ワニスとして、宇部興産から入手できる。測定によれば、ポリアミック酸15重量部、N−メチルピロリドン85重量部の混合物である。ガラス板上に製膜液を100μmの厚みでアプリケーターにより流延しキャストした。その後、恒温恒湿槽内で温度60℃、湿度80RH%の下、5時間乾燥した。次いで、乾燥機内で55℃、12時間乾燥して脱溶剤を行った。得られた多孔膜は膜厚60μmであり、最表面層(流延時に基板と接していなかった側のフィルム表面)は平均開孔率10%、最小/最大孔径0.1μm/1μmであり、最裏面層(流延時に基板と接していた側のフィルム表面)は平均開孔率5%、最小/最大孔径0.2μm/2μmであった。
【0045】
実施例6
ポリマーとしてポリアミドイミド、溶剤としてN−メチルピロリドンからなる製膜溶液を用いた。この溶液は、商品名バイロマックスHR11NNとして、東洋紡(株)から入手できる。測定によれば、ポリアミドイミド15重量部、N−メチルピロリドン85重量部の混合物である。ガラス板上に製膜液を100μmの厚みでアプリケーターにより流延しキャストした。その後、恒温恒湿槽内で温度60℃、湿度80RH%の下、5時間乾燥した。次いで、乾燥機内で55℃、12時間乾燥して脱溶剤を行った。得られた多孔膜は、膜厚129μmであり、最表面層は平均開孔率68%、最小/最大孔径0.5μm/12μmであり、最裏面層は平均開孔率21%、最小/最大孔径0.3μm/5μmであった。
【0046】
実施例7
実施例6記載の溶液を用いて、ガラス板上に製膜液を100μmの厚みでアプリケーターにより流延しキャストした。その後、恒温恒湿槽内で温度60℃、湿度80RH%の下、3時間乾燥した。次いで、乾燥機内で55℃、12時間乾燥して脱溶剤を行った。得られた多孔膜は、膜厚37μmであり、最表面層は平均開孔率23%、最小/最大孔径0.5μm/4μmであり、最裏面層は平均開孔率15%、最小/最大孔径0.2μm/3μmであった。
【0047】
実施例8
実施例6記載の溶液を用いて、ガラス板上に製膜液を100μmの厚みでアプリケーターにより流延しキャストした。その後、恒温恒湿槽内で温度60℃、湿度80RH%の下、2分間乾燥させ、さらに、90℃蒸気を5分間直接吹き付けた。次いで、乾燥機内で55℃、12時間乾燥して脱溶剤を行った。得られた多孔膜は膜厚35μmであり、最表面層は平均開孔率5%、最小/最大孔径0.2μm/0.8μmであり、最裏面層は平均開孔率3%、最小/最大孔径0.2μm/0.8μmであった。
【0048】
比較例2
実施例6記載の溶液を用いて、ガラス板上に製膜液を100μmの厚みでアプリケーターにより流延しキャストした。その後、常温の水槽にガラス板ごと12時間浸漬させた。次いで、乾燥機内で55℃、12時間乾燥して脱溶剤を行った。得られた多孔膜は膜厚100μmであり、最表面層は平均開孔率6%、最小/最大孔径0.1μm/1.1μmであったが、最裏面層には孔の存在が確認できなかった。
【0049】
実施例1〜4、及び比較例1の結果を表1に、実施例5〜8、及び比較例2の結果を表2に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
実施例1〜8で得られた膜では、充分な透水性能が得られた。アミドイミド系ポリマーはポリアミック酸に比べて、水(水蒸気)に接触した際の相分離速度が速いため、孔径が大きくなった。また、多孔質膜を膜断面方向に観察した際には、孔が連通していることが観察された。これに対し、比較例1、2の膜は連通孔を有さず、純水透水速度が小さかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミドイミド系ポリマー若しくはポリアミック酸と、該アミドイミド系ポリマー若しくはポリアミック酸の良溶媒である溶剤とからなる液組成物を基材の片面に塗布しフィルム状に流延した後、アミドイミド系ポリマー又はポリアミック酸の非溶剤を含む水溶性凝固液に導くことなく加湿乾燥工程に付し、ポリアミック酸を用いた場合にはさらにイミド化工程を経てイミド系ポリマーとする工程を有することを特徴とする、アミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法。
【請求項2】
前記加湿乾燥工程が、フィルムを相対湿度50〜100%、温度15〜90℃からなる雰囲気下に0.2分間〜8時間保持する工程(A)を含む、請求項1記載のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法。
【請求項3】
前記加湿乾燥工程が、温度80〜120℃の水蒸気を吹き付ける水蒸気吹付工程(B)を含む、請求項1又は2記載のアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法。
【請求項4】
アミドイミド系ポリマー若しくはポリアミック酸と、該アミドイミド系ポリマー若しくはポリアミック酸の良溶媒である溶剤とからなる液組成物を基材の片面に塗布しフィルム状に流延した後、加湿乾燥工程に付し、ポリアミック酸を用いた場合にはさらにイミド化工程を経てイミド系ポリマーとする工程を有するアミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法であって、加湿乾燥工程が、フィルムを相対湿度50〜100%、温度15〜90℃からなる雰囲気下に1時間以上保持する工程、又は、温度80〜120℃の水蒸気を吹き付ける水蒸気吹付工程を含むことを特徴とする、アミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜の製造方法。
【請求項5】
連通孔を有する水処理用分離膜であって、フィルムのいずれか一方の表面の最大孔径dmaxと最小孔径dminとが、0.02<dmin/dmax<0.5の関係を満たし、且つ、0.1MPaでの純水透水速度が300L/m2/hr以上であることを特徴とする、アミドイミド系ポリマー若しくはイミド系ポリマーからなる水処理用分離膜。

【公開番号】特開2012−223712(P2012−223712A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94059(P2011−94059)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】