説明

乾式メダル清掃装置

【課題】 洗浄水を用いることなく、メダルの表面の凹凸模様や傷の窪みに溜まっている手垢や金属粉等の汚れを確実に除去する。
【解決手段】 メダル投入口2の下方位置にメダル排出口5aが側面に開口された筒体5を設け、メダル投入口2の下端にブラシ毛3aが下面に植毛された上側ブラシ盤3を取り付け、筒体5の内部にブラシ毛4aが上面に植毛された下側ブラシ盤4をブラシ毛3a,4aが対向するように回転自在に設け、メダル排出口5aの先方の搬送路6の位置にメダルmの表面の汚れを掻き出す上下一対のブラシローラ11を設け、そのブラシローラ11の先方の搬送路6の位置に掻き出された汚れを吸着する上下一対の粘着ローラ12を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットマシン等の遊技に使用されるメダルの清掃装置に関し、詳しくは、洗浄水を用いることなくメダルの表面の凹凸模様や傷の窪みに溜まっている汚れを確実に除去できる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の乾式メダル清掃装置が特許文献1で開示されている。この技術は、図9に示すように、メダル投入口21の下方位置にメダルmを搬送するベルトコンベヤ22を設け、そのベルトコンベヤ22の途中位置に重なったメダルmをバラして一枚づつ通過させる整列ローラ23を設け、ベルトコンベヤ22の搬送先にメダルmの表面の汚れを粘着力で吸着しながら送り出す上下一対の粘着ローラ24を複数組設けたことを特徴としている。
【0003】
ところで、メダルmの表面には凹凸模様や使用中に形成された傷を有しているから、前記技術の粘着ローラ24による吸着では大きなゴミや汚れは除去されるが、凹凸模様や傷の窪みに溜まっている手垢や金属粉等の汚れは粘着面が届き難いから除去が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−148629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、洗浄水を用いることなく、メダルの表面の凹凸模様や傷の窪みに溜まっている手垢や金属粉等の汚れを確実に除去できる乾式メダル清掃装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) メダル投入口の下方位置に複数枚のメダルを重ならないようにして送り出すメダル送り装置を設け、そのメダル送り装置の送り先の搬送路位置にメダルの表面の汚れを掻き出す上下一対のブラシローラを設け、そのブラシローラの先方の搬送路位置に掻き出された汚れを吸着する上下一対の粘着ローラを設けた、乾式メダル清掃装置
2) 粘着ローラより粘着力の強い強粘着ローラを粘着ローラと接するように設けた、前記1)記載の乾式メダル清掃装置
3) 上下一対のブラシローラのブラシ毛が、線径0.4mm以下で、長さ5〜13mmの範囲である、前記1)又は2)記載の乾式メダル清掃装置
4) 上下一対のブラシローラのブラシ毛が、線径0.2〜0.3mmの範囲で、そのブラシ毛を植毛密度が円周方向1cm当り80〜120本となるように螺旋状に植毛したものである、前記1)又は2)記載の乾式メダル清掃装置
5) メダル送り装置が、メダル投入口の下方位置にメダル排出口が側面に開口された筒体を設け、その筒体のメダル排出口の高さをメダルの2枚分の厚さ以下の高さに形成し、筒体の内部に回転盤をその上面がメダル排出口の底面と同じ高さになるように設けた構造である、前記1)〜4)いずれか記載の乾式メダル清掃装置
6) 回転盤が、上面にブラシ毛を植毛したブラシ盤であって、そのブラシ盤の上方位置にブラシ毛が下面に植毛された上側ブラシ盤を対向して設け、その上側ブラシ盤の中央部にメダル投入口と連通する開口を形成した、前記5)記載の乾式メダル清掃装置
にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、メダル投入口に投入された複数枚のメダルがメダル送り装置で重ならないようにして送り出され、その送り出されたメダルが搬送路の途中で上下一対のブラシローラにより両面が擦られ、凹凸模様や傷の窪みに溜まっている汚れが掻き出される。その後、掻き出された汚れが上下一対の粘着ローラで吸着されながら送り出される。よって、粘着ローラだけでは除去され難かった凹凸模様や傷の窪みの汚れまで確実に除去できるようになり、従来技術と比較して清掃能力が高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例の乾式メダル清掃装置の縦断面図である。
【図2】実施例の乾式メダル清掃装置の分解斜視図である。
【図3】実施例のブラシローラと粘着ローラの斜視図である。
【図4】実施例のブラシローラの説明図である。
【図5】実施例の乾式メダル清掃装置の使用状態を示す説明図である。
【図6】実施例のブラシローラのブラシ毛の動きを示す説明図である。
【図7】実施例の他の例の乾式メダル清掃装置の縦断面図である。
【図8】実施例の他の例の乾式メダル清掃装置の縦断面図である。
【図9】従来の乾式メダル清掃装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のブラシローラとしては、線径0.4mm以下、望ましくは0.2〜0.3mmの範囲で、長さ5〜13mmのブラシ毛を植毛したものが、メダル表面の凹凸模様や傷の窪みに溜まった汚れを確実に掻き出せて好ましい。ブラシ毛は螺旋状に植毛すると、メダルの搬送方向に対してブラシ毛が斜めに移動することになり、その相対的な動きで摩擦が生じて清掃能力が向上する。植毛密度は円周方向1cm当り80〜120本の範囲が実用的である。さらに、上下のブラシローラの回転数を異ならせるか、あるいはメダル送り装置によるメダルの送り速度とブラシローラの送り速度を異ならせると、その相対的な動きで摩擦を生じさせて清掃能力がさらに向上する。
【0010】
粘着ローラとしては、ゴム系・アクリル系・シリコン系等の粘着剤が添加された硬質又は弾性を有する合成樹脂でローラ全体を構成したもの、基材ローラの表層を前記合成樹脂で構成したもの、基材ローラの外周面に前記粘着剤を塗布したもの、基材ローラの外周面に粘着テープを巻き付けたものなどがあり、特に洗浄により粘着力が回復して繰り返し使用できるものが望ましい。上下の粘着ローラ間の間隔はメダルの厚さよりやや小さくし、メダルの両面に粘着ローラが確実に接するようにする。あるいは、互いの粘着力で回転に影響を与えない程度に粘着ローラ同士を軽く接するようにしてもよい。粘着ローラより粘着力の強い強粘着ローラを粘着ローラと接するように設けると、粘着ローラの表面の汚れが強粘着ローラに転移して粘着ローラの粘着力が維持され、粘着ローラの交換頻度を少なくできて好ましい。強粘着ローラの材質としては、前記粘着ローラと同様のもので、粘着剤をより多く添加して粘着力を増したものが用いられる。ブラシローラと粘着ローラは、清掃能力に応じて1組又は複数組設けられる。
【0011】
メダル送り装置としては、重なったメダルを遠心力で円周方向へ移行させながらバラして送り出す回転盤や、搬送面上に設けたローラで重なったメダルをバラしながら送り出すベルトコンベヤなど、メダルの両面を清掃できるように重なりをバラして送り出せる構造のものが用いられる。回転盤としては、ブラシ毛を植毛したブラシ盤を用い、そのブラシ盤と上方位置に対向して取り付けた別のブラシ盤とでメダルの両面を研磨しながら送り出せるようにしたものが、より清掃効果が向上して好ましい。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。図1は実施例の乾式メダル清掃装置の縦断面図、図2は実施例の乾式メダル清掃装置の分解斜視図、図3は実施例のブラシローラと粘着ローラの斜視図、図4は実施例のブラシローラの説明図、図5は実施例の乾式メダル清掃装置の使用状態を示す説明図、図6は実施例のブラシローラのブラシ毛の動きを示す説明図である。
【0013】
図中、1は乾式メダル清掃装置、2はメダル投入口、3は上側ブラシ盤、3aはブラシ毛、3bは開口、4は下側ブラシ盤、4aはブラシ毛、4bは軟質シート、5は筒体、5aはメダル排出口、6は搬送路、7は排出口、8は回転軸、8aは従動ローラ、9はモータ、9aは駆動ローラ、10は駆動ベルト、11はブラシローラ、11aは芯材、11bはブラシ毛、11cはギヤ、12は粘着ローラ、12aはギヤ、13は回転軸、13aはギヤ、13bは小ギヤ、14はモータ、14aは駆動ギヤ、15は駆動チェーン、16は受皿、mはメダルである。
【0014】
本実施例の乾式メダル清掃装置1は、図1,2に示すように、上部にすり鉢状のメダル投入口2を備え、そのメダル投入口2の下端にブラシ毛3aが下面に植毛され開口3bが中央部に形成された上側ブラシ盤3を取り付けている。メダル投入口2の下方位置にはメダル排出口5aが側面に開口された筒体5を取り付け、その筒体5の内部にブラシ毛4aが上面に植毛された下側ブラシ盤4を回転自在に配置している。筒体5の底面中央部は開口して下側ブラシ盤4と回転軸8とを軸着し、その回転軸8の従動ローラ8aとモータ9の駆動ローラ9aとの間に駆動ベルト10を掛架している。
【0015】
下側ブラシ盤4は、そのブラシ毛4aの毛先及び軟質シート4bの上面がメダル排出口5aの底面と同じ高さになるように配置している。軟質シート4bは摩擦を有する材質で構成され、メダルmがブラシ毛4a上で滑らないようにするために設けられるものである。ブラシ毛3a,4a間の間隔は、メダルmの厚さよりやや小さい間隔としている。メダル排出口5aは、メダルmの2枚分の厚さ以下の高さに形成し、メダルmが重なったまま排出されようとした場合に、メダル排出口5aの上壁で遮られて一枚づつ排出されるようになっている。メダル排出口5aの幅は、複数枚のメダルmが同時に排出できる幅に形成している。
【0016】
搬送路6の途中位置には上下一対の1組のブラシローラ11と上下一対の2組の粘着ローラ12を搬送方向に沿って設け、その粘着ローラ12の送り出し先に清掃済みのメダルmを排出する排出口7を開口している。ブラシローラ11と粘着ローラ12の軸端には、図3に示すようにギヤ11c,12aを取り付け、下側のブラシローラ11と粘着ローラ12の直下位置にギヤ13aを備えた回転軸13を配置し、上下のギヤ11c,12a,13a同士を互いに歯合している。また、回転軸13の軸端には小ギヤ13bを取り付け、その小ギヤ13bとモータ14の駆動ギヤ14aとの間に駆動チェーン15を掛架して連動できるようにしている。ブラシローラ11と粘着ローラ12は、縦長の軸受(図示せず)に上方から取り外し可能に挿入してギヤ11c,12a,13a同士を歯合する構造にし、整備時に容易に交換できるようにしてもよい。
【0017】
ブラシローラ11は、図4に示すように、芯材11aの周面に線径0.2mmで且つ長さ8mmのナイロン樹脂製のブラシ毛11bを植毛密度が円周方向1cm当り100本となるように螺旋状に植毛し、上下対向するブラシ毛11bの毛先同士がほぼ接触する位置に軸支している。下側のブラシローラ11と粘着ローラ12の下方位置には、落下したゴミを受ける受皿16を設けている。メダルmは厚さ1.6mm、外径25mm、凹凸の窪みの深さは約0.3mmである。
【0018】
本実施例では、モータ9,14を作動させると、下側ブラシ盤4とブラシローラ11と粘着ローラ12が回転する。図5に示すように、汚れたメダルmをメダル投入口2へ投入すると、下側ブラシ盤4の回転でブラシ毛3a,4a間に進入して水平の姿勢になり、ブラシ毛3a,4aで両面が研磨されながら遠心力で円周方向へ移行し、メダル排出口5aから一枚づつ(幅方向は複数枚が同時に)排出される。除去された大きなゴミや汚れは下側ブラシ盤4の周縁から筒体5の底部に落下する。
【0019】
排出されたメダルmは上下一対のブラシローラ11間に進入し、図6に示すように、ブラシ毛11bがメダルmに接触して変形しながらメダルmの表面を押圧し、毛先が凹凸模様や傷の窪みに当たる。メダルmはブラシローラ11の回転力で搬送されてブラシローラ11を通過し、ブラシ毛11bがメダルmの表面から離れる際、ブラシ毛11bの反発力で毛先が凹凸模様や傷の窪みから跳ねるように離れて汚れが掻き出される。掻き出された汚れはブラシ毛11bに付着するか、メダルmの表面に再付着するか、又は受皿16に落下する。
【0020】
その後、上下一対の粘着ローラ12間に進入し、メダルmの表面に再付着した掻き出し済みの汚れが吸着され、排出口7へ送り出されて排出される。粘着ローラ12に吸着された汚れは粘着力で吸着したままとなるが、剥離した場合は受皿16に落下する。このように、本実施例によれば、粘着ローラ12だけでは除去され難かった凹凸模様や傷の窪みの汚れまで確実に除去できるようになり、従来技術と比較して清掃能力が高いものとなった。
【0021】
図7に示すのは、強粘着ローラを設けた実施例の乾式メダル清掃装置の他の例である。図7は実施例の他の例の乾式メダル清掃装置の縦断面図である。図中、17は強吸着ローラである。この例では、粘着ローラ12より強い粘着力を示す小径の強粘着ローラ17を粘着ローラ12と接するように設けている。これにより、粘着ローラ12に吸着された汚れは強吸着ローラ17に転移されて粘着ローラ12の粘着力が維持され、粘着ローラ12の交換頻度を少なくできる。強粘着ローラ17は直接駆動してもよいし、互いの粘着力又は圧接による摩擦で粘着ローラ12の回転に従動させてもよい。その他、符号、構成、作用効果は実施例と同じである。
【0022】
図8に示すのは、下側ブラシ盤に代えて平板状の回転盤を用いた実施例の乾式メダル清掃装置の他の例である。図8は実施例の他の例の乾式メダル清掃装置の縦断面図である。図中、18は回転盤、18aは軟質シートである。この例では、実施例の上側ブラシ盤3を省略するとともに、下側ブラシ盤4に代えて滑り止めの軟質シート18aを上面に備えた平板状の回転盤18を取り付けている。さらに、粘着ローラ12を1組にしてブラシローラ11を2組設け、メダルmの汚れは大きなゴミも含めて2組のブラシローラ11で除去するようにしている。この例は、メダルmの清掃枚数が比較的少ない場合に用いられ、構造が簡易で低コストにて実施できる。その他、符号、構成、作用効果は実施例と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の技術は、スロットマシン等の遊技に使用されるメダルの他、硬貨やこれに類似する形状の物品の清掃に利用できる。
【符号の説明】
【0024】
1 乾式メダル清掃装置
2 メダル投入口
3 上側ブラシ盤
3a ブラシ毛
3b 開口
4 下側ブラシ盤
4a ブラシ毛
4b 軟質シート
5 筒体
5a メダル排出口
6 搬送路
7 排出口
8 回転軸
8a 従動ローラ
9 モータ
9a 駆動ローラ
10 駆動ベルト
11 ブラシローラ
11a 芯材
11b ブラシ毛
11c ギヤ
12 粘着ローラ
12a ギヤ
13 回転軸
13a ギヤ
13b 小ギヤ
14 モータ
14a 駆動ギヤ
15 駆動チェーン
16 受皿
17 強粘着ローラ
18 回転盤
18a 軟質シート
21 メダル投入口
22 ベルトコンベヤ
23 整列ローラ
24 粘着ローラ
m メダル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メダル投入口の下方位置に複数枚のメダルを重ならないようにして送り出すメダル送り装置を設け、そのメダル送り装置の送り先の搬送路位置にメダルの表面の汚れを掻き出す上下一対のブラシローラを設け、そのブラシローラの先方の搬送路位置に掻き出された汚れを吸着する上下一対の粘着ローラを設けた、乾式メダル清掃装置。
【請求項2】
粘着ローラより粘着力の強い強粘着ローラを粘着ローラと接するように設けた、請求項1記載の乾式メダル清掃装置。
【請求項3】
上下一対のブラシローラのブラシ毛が、線径0.4mm以下で、長さ5〜13mmの範囲である、請求項1又は2記載の乾式メダル清掃装置。
【請求項4】
上下一対のブラシローラのブラシ毛が、線径0.2〜0.3mmの範囲で、そのブラシ毛を植毛密度が円周方向1cm当り80〜120本となるように螺旋状に植毛したものである、請求項1又は2記載の乾式メダル清掃装置。
【請求項5】
メダル送り装置が、メダル投入口の下方位置にメダル排出口が側面に開口された筒体を設け、その筒体のメダル排出口の高さをメダルの2枚分の厚さ以下の高さに形成し、筒体の内部に回転盤をその上面がメダル排出口の底面と同じ高さになるように設けた構造である、請求項1〜4いずれか記載の乾式メダル清掃装置。
【請求項6】
回転盤が、上面にブラシ毛を植毛したブラシ盤であって、そのブラシ盤の上方位置にブラシ毛が下面に植毛された上側ブラシ盤を対向して設け、その上側ブラシ盤の中央部にメダル投入口と連通する開口を形成した、請求項5記載の乾式メダル清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−67257(P2011−67257A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218921(P2009−218921)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000108247)株式会社ジェッター (42)
【Fターム(参考)】