説明

乾式二重床の施工方法及びそれに用いる乾式二重床ユニット

【目的】 捨て張り合板が不要で、施工現場において簡単に施工でき、歩行の際に床パネル間の隙間部を足で踏んでも段差を生じず違和感を感じない二重床を施工する。
【構成】 基礎床面上にユニット支持脚4を所定ピッチで配置し、床パネル15をその縁部でユニット支持脚により支持されるよう所定の間隙を介して配置する。回転軸の下端部外周に溝加工刃を有しかつ上部所定箇所に突設された回転切削刃を有する切削工具により、隣接する各床パネルの上端縁部の段差加工と同時に端面に端縁に沿って溝加工を行い、隙間閉塞部材29のシート状上部材30の長手方向縁部30a、30bが床パネルの段差部27に載置されるように脚部材31を隣接する床パネル間の間隙に嵌挿すると共に、脚部材の外側に突出した爪部32を床パネルの端面の溝部28に嵌合し、隣接する床パネル間の間隙を閉塞する。その後、床仕上げ材を敷設する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、集合住宅等の各種建物において既存の基礎床面との間に空間を形成して二重床を施工する方法及びそれに用いる乾式二重床ユニット、特に床パネルと各床パネル間の間隙を閉塞する部材の配置に関する。
【0002】
【従来の技術】二重床は、木、金属、コンクリート、珪酸カルシウム系材質などで成形された複数枚の床パネル(床板材)を、基礎床に配置した複数の支持脚によって一定の高さに支持するようにして構築されており、既存床面と二重床との間の空間は、給排水管、ガス管などの各種配管を通すための空間、電気用、通信用の配線を通すための空間、床下に空調用ダクトや冷暖房用ダクトを設置するための空間、床下に保温材、防音材を敷設するための空間などとして利用されたり、防音効果又は保温効果を高めるための空調用ダクトなどとして利用されている。
【0003】従来の二重床の施工方法は、基礎床上に床ユニットを隙間なく配置し、または所定の間隙をとって配置し、この上に捨て張り合板を張るものである。仮に捨て張り合板を張らないで、敷設した床ユニット上に直接、床仕上げ材、特にCFシートや絨毯のような柔らかい仕上げ材を敷く場合には、仮に床ユニットを隙間なく配置しても隣接する床ユニット間に段差が生じる。他方、隙間をとって配置したものは、人が歩行する度にその隙間部分がへこんでしまって歩行しにくく、また、隙間部分の強度に問題がでる。従って、必ず捨て張り合板を張らなければならなかった。従って、捨て張り合板の材料費によるコストの上昇、捨て張り合板を張る手間による人件費の上昇及び工期の長期化は避けられないところとなる。しかし、現況の人手不足や物価の上昇を反映し、なるべく手間がかからない、低コストの乾式二重床の施工方法が求められている。
【0004】特開平3−17348号公報には、棒状脚部と該棒状脚部の上端部に上下調節可能に装着された受け板とからなるユニット支持脚群と定尺長方形の床パネル群とを組み合わせて用いる乾式二重床の施工方法が開示されている。この方法は、基礎床の床面上にユニット支持脚を所定ピッチで配置し、所定の間隙を介して配置した床パネルをその縁部及び長手方向中心線上の所定の位置で上記ユニット支持脚により支持するものである。この方法によれば、床パネルの敷設を比較的簡単にかつ効率的に行うことができる。しかしながら、この施工方法においても、隣接する各床パネル間の間隔をあけてその縁部をユニット支持脚により支持するものであるため、敷設した床パネルの上面に捨て張り合板を張り、さらにその上に床仕上げ材を敷く。捨て張り合板を敷き詰めない場合には、歩行の際に各床パネル間の隙間部分を足で踏む毎に、足の裏で隙間部を感じたり、また一般にいずれか一方の床パネルの方に体重が掛かるため、床パネル間に段差が生じ、安定性が悪くなると共に、その段差を足の裏で感ずることにより違和感を生じるなどの問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、捨て張り合板を使用することなく乾式二重床を比較的簡単に施工できる方法を提供することにある。さらに、本発明の目的は、捨て張り合板を使用しないにも拘らず、歩行の際に各床パネル間の隙間部を足で踏んでも段差を生じず、違和感を感じないような一様な床面レベルに乾式二重床を施工できる方法を提供することにある。さらに、本発明の目的は、CFシート、絨毯等の薄い柔らかい仕上げ材を使用する場合でも捨て張り合板を使用せずに充分な強度を有し、施工を効率化、簡略化できる乾式二重床の施工方法を提供することにある。本発明の別の目的は、上記のような乾式二重床の施工に有利に用いることができる乾式二重床ユニットを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、前記目的を達成するために、棒状脚部と該棒状脚部の上端部に上下調節可能に装着された受け板とからなるユニット支持脚群と正方形及び/又は長方形の床パネル群とを組み合せて用いて床パネルの敷設を行う乾式二重床の施工方法において、(A)基礎床の床面上に複数のユニット支持脚を床パネルの形状に対応する所定のピッチで配置し、複数の床パネルをその縁部で上記ユニット支持脚により支持されるように所定の間隙を介して配置する工程、(B)回転軸の下端部外周に溝加工刃を有しかつその上部所定箇所に突設された回転切削刃を有する切削工具を用いて、隣接する各床パネルの上端縁部の段差加工と同時に端面に端縁に沿って溝加工を行う工程、及び(C)隣接する床パネル間の間隙よりも広い巾及び上記(B)工程で形成された段差部の深さと略等しい厚さを有する細長いシート状上部材と、該シート状上部材の側縁から所定の間隔をあけて下方に垂下された少なくとも2本の平行な細長い脚部材とから一体的に成形され、かつ両側の脚部材下部に外側に突出した爪部が設けられている可撓性を有する隙間閉塞部材を用い、上記シート状上部材の長手方向縁部が上記(B)工程で形成された床パネルの上端縁の段差部に載置されるように上記脚部材を隣接する床パネル間の間隙に嵌挿すると共に、両側の脚部材の外側に突出した爪部を床パネルの端面に形成された溝部に嵌合し、隣接する床パネル間の間隙を閉塞する工程からなることを特徴とする乾式二重床の施工方法が提供される。
【0007】さらに本発明によれば、別の態様として、棒状脚部と該棒状脚部の上端部に上下調節可能に装着された受け板とからなるユニット支持脚群と正方形及び/又は長方形の床パネル群とを組み合せて用いて床パネルの敷設を行う乾式二重床の施工方法において、(A)基礎床の床面上に複数のユニット支持脚を床パネルの形状に対応する所定のピッチで配置し、複数の床パネルをその縁部で上記ユニット支持脚により支持されるように所定の間隙を介して配置する工程、(B)各床パネルの上端縁部に段差を加工する工程、(C)隣接する床パネルの端面に端縁に沿って溝を加工する工程、及び(D)隣接する床パネル間の間隙よりも広い巾及び上記(B)工程で形成された段差部の深さと略等しい厚さを有する細長いシート状上部材と、該シート状上部材の側縁から所定の間隔をあけて下方に垂下された少なくとも2本の平行な細長い脚部材とから一体的に成形され、かつ両側の脚部材下部に外側に突出した爪部が設けられている可撓性を有する隙間閉塞部材を用い、上記シート状上部材の長手方向縁部が上記(B)工程で形成された床パネルの上端縁の段差部に載置されるように上記脚部材を隣接する床パネル間の間隙に嵌挿すると共に、両側の脚部材の外側に突出した爪部を床パネルの端面に形成された溝部に嵌合し、隣接する床パネル間の間隙を閉塞する工程からなることを特徴とする乾式二重床の施工方法が提供される。
【0008】さらにまた本発明によれば、(a)中央部に挿入孔を有しかつ上面に粘着シートが貼着された受け板と、その上部が前記受け板の挿入孔に嵌合され、かつ外周に突設された環状の支持部を有するレベル調整用ナットと、上部ネジ部が前記レベル調整用ナットに螺合された支持ボルトと、該支持ボルトの下端部に固着された台座とから構成される複数のユニット支持脚と、(b)周囲上端縁に段差部が形成されかつ周囲端面に端縁に沿って溝部が形成された正方形及び/又は長方形の複数の床パネルと、(c)該床パネルの段差部の深さと略等しい厚さを有する細長いシート状上部材と、該シート状上部材の側縁から所定の間隔をあけて下方に垂下された少なくとも2本の平行な細長い脚部材とから一体的に成形され、かつ両側の脚部材下部に外側に突出した爪部が設けられている可撓性を有する複数の隙間閉塞部材とから構成される乾式二重床ユニットが提供される。
【0009】
【発明の作用】本発明によれば、基礎床の床面上に複数のユニット支持脚を床パネルの形状に対応する所定のピッチで配置し、上記ユニット支持脚によりその縁部で支持されるように所定の間隙を介して配置した隣接する各床パネルの上端縁部に段差部を加工すると共に端面に端縁に沿って溝加工を行い、その後、隣接する床パネル間の間隙よりも広い巾及び上記段差部の深さと略等しい厚さを有する細長いシート状上部材と、該シート状上部材の側縁から所定の間隔をあけて下方に垂下された少なくとも2本の平行な細長い脚部材とから一体的に成形され、かつ両側の脚部材下部に外側に突出した爪部が設けられている可撓性を有する隙間閉塞部材を用い、上記シート状上部材の長手方向縁部が上記床パネルの上端縁の段差部に載置されるように上記脚部材を隣接する床パネル間の間隙に嵌挿すると共に、両側の脚部材の外側に突出した爪部を床パネルの端面に形成された溝部に嵌合し、隣接する床パネル間の間隙を閉塞するものである。従って、接着剤を用いなくても隣接する床パネル間の間隙を隙間閉塞部材により簡単に閉塞でき、また一旦取り付けた後は、隙間閉塞部材の脚部材下部の外側に突出した爪部が床パネルの端面に形成された溝部に嵌合しているので、容易に抜け出ることはない。また、隙間閉塞部材のシート状上部材の厚さは床パネル上端縁に形成された段差部の深さと等しいので、隣接する床パネルとその間隙に嵌挿された隙間閉塞部材の表面が面一となる。このようにして、二重床を極めて簡単に施工できると共に、各床パネルの縁部がユニット支持脚により安定して支持されるので各床パネル間の隙間部分の強度上の問題もなく、また上記隙間閉塞部材は充分な強度及び可撓性を有するため、歩行の際に各床パネル間の隙間部分を足で踏んで一方の床パネルの方に体重が掛かっても、床パネル間の隙間部分には上記可撓性の隙間閉塞部材によりなだらかな表面が形成される。従って、従来のように隙間や段差を足の裏で感ずるような違和感もない。また、従来のように捨て張り合板を張らずに、CFシート、絨毯等を施工することができる。
【0010】なお、各床パネル上端縁の段差部及び端面の溝部の加工は施工現場において行ってもよく、あるいは工場で既に加工された床パネルを用いて敷設してもよい。施工現場において加工する場合には、回転軸の下端部外周に溝加工刃を有しかつその上部所定箇所に突設された回転切削刃を有する切削工具を用い、該切削工具を隣接する床パネル間の間隙端部に載置し、その間隙に沿って移動させることにより、各床パネルの上端縁部の段差加工と同時に端面の溝加工を簡単に行うことができる。
【0011】以下、添付図面に示す実施例を説明しつつ、本発明についてさらに具体的に説明する。図1は、基礎床1上に本発明に従って乾式二重床を施工する一実施例を示す。ユニット支持脚4は、その基本的な構成においては従来公知のものと異なるものではなく、図2及び図3に示すように、ゴム等の弾性材料からなる防振台座7に下端部が植設された支持ボルト6からなる棒状脚部5と、外周下端部に突設された環状の支持部10を有するレベル調整用ナット9と、中央部に挿入孔12を有し、かつ上面に粘着シート13が貼着された受け板11とから構成される。レベル調整用ナット9は、受け板11に穿設された挿入孔12に嵌合して取り付けられ、あるいはさらに支持部10上面にリング状の粘着シート(図示せず)を貼着し、これを受け板11の挿入孔12周囲下面に接着して取り付けることもできる。このようにして受け板11の挿入孔12に嵌合されたレベル調整用ナット9に棒状脚部5の支持ボルト6がねじ込まれ、図3に示すようにユニット支持脚4が組み立てられる。なお、支持ボルト6の上端面にはマイナス溝8(プラス溝や多角形凹陥部でもよい)が設けられており、該溝8にドライバー等の回転用工具の先端を嵌め込んで棒状脚部5を回転させることにより、レベル調整用ナット9及びそれが嵌合された受け板11が上下動し、受け板11により支持されている床パネルの床面レベルを調整することができる。使用に際しては、粘着シート13上面の剥離紙14を剥して用いる。
【0012】図4は床パネルの配置形態を示すものである。床パネル15を支持ボルト6の直径に相当する程度の所定の間隙wをあけて配置し、ユニット支持脚4により床パネル15の端縁部を支持する。床パネルの配置は、図示の形態に限らず、千鳥状等任意の形態に配置できる。現場では図1に示すように部屋壁2(または間仕切)の所定の高さに沿って際根太または根太ユニット3を設け、その上に床パネル15の一辺を支持する。際根太に接しない床パネル15の他の縁部は、約450mmのピッチで基礎床1上に配置したユニット支持脚4に片持たせの状態で載せて取り付ける。ユニット支持脚4と床パネル15の取付は、ユニット支持脚4の受け板11上面に接着した粘着シート13等を介して行う。ユニット支持脚4の受け板11の挿入孔12は床パネル15の縁部から露出した状態とする。隣合う床パネルも同様に、既に設置したユニット支持脚4上へ床パネル15のレベル調整ができる所定の間隙を開けて載せ、同様に他のユニット支持脚を配置して取り付ける。床パネル15のレベル(受け板11の上面位)は、前記挿入孔12を通してその先端が支持ボルト上面に形成された溝8に嵌合されたドライバー等を回転させて棒状脚部5を回すことにより調節する。このような作業を床パネルごと繰り返し、部屋の隅など定尺の床パネルが入らない狭い箇所では、際根太を取付後、定尺板を加工し、寸法を合わせて、適宜にユニット支持脚を配置して床パネルを敷き詰める。
【0013】この後、図5及び図6に示すような切削工具16を用いて各床パネル上端縁の段差部加工及び端面の溝加工を行う。切削工具16は、本体17から下方に突出している回転軸18に固定された回転切削刃19と、回転軸下端部に固定された溝加工刃22とを有する。回転切削刃19は筒体下部の環状体20の下面に多数の刃21が設けられており、一方、溝加工刃22は筒体23の下端外周に突設された多数の刃24を有し、いずれも回転軸18に高さ調整自在に取付け可能である。また、切削工具16の本体17下面には、床パネルの加工を行うときにその下面が床パネル表面に載置される4本の支持脚25a、25b、25c、25dが対称的に垂下して取り付けられており、対向する2本の支持脚25a、25cの下面には隣接する床パネル間の所定の間隙wと略等しい巾を有するガイド部材26a、26cがそれぞれ突設されている。符号27は把手、28はスイッチである。
【0014】加工に際しては、上記切削工具16のスイッチ28を押して本体17内のモータ(図示せず)を作動させ、回転軸18及びそれに固定された回転切削刃19及び溝加工刃22を回転させながら、隣接する床パネル15間の間隙wの端部(又は4枚の床パネルの角が相対する角隙間)に上記溝加工刃22を降ろし、かつ一方の支持脚25aの下面に突設されたガイド部材26aを床パネル間の間隙wに挿入しながら支持脚25aを床パネル上に載置し、この状態で支持脚25a、25cのガイド部材26a、26cを案内体として床パネル間の間隙wに沿って切削工具16を移動させると、図7及び図8R>8に示すように、隣接する床パネル15の上端縁部に上記回転切削刃19により段差部27が切削加工されると同時に床パネル端面下部に上記溝加工刃22により端縁に沿って溝部28が形成される。他の隣接する床パネルにも上記と同様にして段差部及び溝部の加工を行う。なお、工場において各床パネルの段差部及び溝部の加工が行われ、それを用いる場合には上記施工現場での加工は不要となる。また、既に段差部(又は溝部)の加工がなされ、溝部(又は段差部)のみの加工を施工現場において行う場合には、上記切削工具16から回転切削刃19(又は溝加工刃22)を取り外して用いればよい。
【0015】以上のようにして各床パネル15の段差部27及び溝部28の加工を終えた後、図9に示すように、隣接する床パネル間の間隙wよりも広い巾を有し、かつ上記床パネル15の段差部27の深さと略等しい厚さを有する細長いシート状上部材30と、該シート状上部材30の側縁から所定の間隔をあけて下方に垂下された少なくとも2本の平行な細長い脚部材31とから一体的に成形され、かつ両側の脚部材下端部に外側に突出した爪部32が設けられている可撓性を有する隙間閉塞部材29を用い、上記シート状上部材30の長手方向縁部30a、30bが上記各床パネル15の上端縁の段差部27に載置されるように上記脚部材31を隣接する床パネル間の間隙に嵌挿すると共に、両側の脚部材の外側に突出した爪部32を床パネルの端面に形成された溝部28に嵌合し、図10に示すように隣接する床パネル間の間隙を閉塞する。また、4枚の床パネルの角が相対するユニット支持脚4の支持ボルト6上部の角隙間(床パネル間の間隙が交わる箇所)は、1つの隙間閉塞部材29を延ばして閉塞することもでき、あるいは別個のキャップ部材を嵌め込むこともできる。例えば、図11に示すように、床パネルの高さ調節の際、棒状脚部5の支持ボルト6の先端がユニット支持脚4の受け板11より突出する場合は、中空角筒状のキャップ状嵌め込み部材、即ち、ボルトカバー33を支持ボルト6に対応する位置の床パネル間の隙間に嵌め込む。このように隙間閉塞部材29(及びボルトカバー33)をすべての床パネル間の間隙に嵌め込んだ後、敷設された床パネル15上にCFシートや絨毯等の床仕上げ材34を敷く(図1参照)。
【0016】以上、本発明の好適な実施例について説明したが、当然のことながら、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、各種の設計変更が可能である。例えば、図12は、図9に示す隙間閉塞部材の変形例を示し、この隙間閉塞部材29aは、両側の脚部材31aの間にこれらと平行にさらにもう1本の補強用の脚部材34が形成されている。また、爪部としては、図9に示すように脚部材31の長手方向全体に形成されていてもよく、また図12に示すように、脚部材31a下端部に長手方向に所定の間隔を開けて散点状に爪部32aを形成してもよい。なお、上記隙間閉塞部材29、29aは、歩行の際に隣接する床パネル15の辺縁部に段差が生じたときに、それに充分に追従し、隙間部分になだらかな表面が形成されるように、充分な強度及び可撓性を有することが必要であり、例えばプラスチック、金属等で作製することができる。また、図13に示すように、各床パネル15の段差部27と隙間閉塞部材29の縁部30a、30bとの間に粘着性緩衝シート35を介挿し、隙間閉塞部材の床パネルへの接着および歩行時の床鳴り防止、床パネルの膨張吸収を図ることもできる。尚、上記のような床仕上げ材がCFシート、絨毯でも捨て張り合板を使用しない工法の場合、それに使用する床パネルは一般に使用されている床パネルより強度の強い特種なパネルを使用することが好ましい。
【0017】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載のような効果を奏する。
(イ)歩行の際に各床パネル間の隙間部分を足で踏んで一方の床パネルの方に体重が掛かっても、床パネル間の隙間部分には前記可撓性の隙間閉塞部材によりなだらかな表面が形成されるので、従来のように隙間や段差を足の裏で感ずるような違和感もない。
(ロ)回転軸の下端部外周に溝加工刃を有しかつその上部所定箇所に突設された回転切削刃を有する切削工具を用いることにより、各床パネルの上端縁部の段差加工と同時に端面の溝加工を簡単に行うことができる。また、接着剤を用いなくても隣接する床パネル間の間隙を隙間閉塞部材により簡単に閉塞でき、また一旦取り付けた後は、隙間閉塞部材の脚部材下部の外側に突出した爪部が床パネルの端面に形成された溝部に嵌合されているので容易に抜け出ることはない。従って、床パネルの施工及び加工並びに隙間閉塞部材の施工を簡単に行うことができ、各施工現場においてその状況に合わせ現場加工にて施工することができる。さらに、隙間閉塞部材はすでに取りつけられ安定している隣接する床パネル間に取り付けられるため、捨て張り合板なしでも強度と安定性に優れた床を施工できる。
(ハ)従来は床仕上げ材がCFシート、絨毯等薄く柔らかいものの場合には、床パネルの上に必ず捨て張り合板を施工しなければならなかったが、本発明の工法では捨て張り合板を張る必要がなくなり、床パネルの上に直接床仕上げ材を施工できるため、捨て張り合板の材料費が低減される。また、捨て張り合板を施工する手間が省け、簡単な載置作業をするだけで床仕上げ材が施工できるため、工期を短縮でき、施工費を低減できる。
(ニ)ユニット支持脚の受け板と床パネルとの間及び床パネルと隙間カバー材との間に吸収材を介在するように取り付けることにより、床パネルの膨張によるせりあがりや床鳴りを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の二重床施工方法により通常の現場において床パネル敷設後隙間閉塞部材を一部施工した実施例を示す破断斜視図である。
【図2】本発明の乾式二重床施工方法に用いるユニット支持脚の分解斜視図である。
【図3】図2に示すユニット支持脚の組立体の斜視図である。
【図4】本発明の二重床施工方法において通常の床パネル施工までの施工例の部分平面配置図である。
【図5】本発明の床パネルの段差部及び溝部の現場加工において用いる切削工具の一実施例を示す側面図である。
【図6】図5に示す切削工具の底面図である。
【図7】本発明の二重床施工方法でユニット支持脚上に載置された隣接する床パネルに段差部及び溝部が加工された状態を示す部分側面図である。
【図8】段差部及び溝部が加工された床パネルの部分破断斜視図である。
【図9】本発明で用いる隙間閉塞部材の一実施例を示す部分斜視図である。
【図10】本発明の二重床施工方法で隣接する各床パネル間の間隙に隙間閉塞部材を嵌挿した一実施例の部分斜視図である。
【図11】本発明の二重床施工方法の他の実施例を示し、ユニット支持脚の棒状脚部に対応する床パネル間の間隙部分にキャップ部材を嵌挿した状態を示す部分断面図である。
【図12】本発明で用いる隙間閉塞部材の他の実施例を示す部分斜視図である。
【図13】本発明の二重床施工方法のさらに他の実施例を示す部分斜視図である。
【符号の説明】
1 基礎床、 2 壁又は間仕切、 3 際根太又は根太ユニット、 4 ユニット支持脚、 5 棒状脚部、 6 支持ボルト、 7 防振台座、 8 マイナス溝、 9 レベル調整用ナット、 10 支持部、 11 受け板、 12 挿入孔、 13 粘着シート、 15 床パネル、 16 切削工具、 17 本体、 18 回転軸、 19 回転切削刃、 21,24 刃、 22溝加工刃、 25a,25b,25c,25d 支持脚、 26a,26c ガイド部材、 27 段差部、 28 溝部、 29,29a 隙間閉塞部材、30 シート状上部材、 30a,30b 縁部、 31,31a,34 脚部材、 32,32a 爪部、 33 ボルトカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 棒状脚部と該棒状脚部の上端部に上下調節可能に装着された受け板とからなるユニット支持脚群と正方形及び/又は長方形の床パネル群とを組み合せて用いて床パネルの敷設を行う乾式二重床の施工方法において、(A)基礎床の床面上に複数のユニット支持脚を床パネルの形状に対応する所定のピッチで配置し、複数の床パネルをその縁部で上記ユニット支持脚により支持されるように所定の間隙を介して配置する工程、(B)回転軸の下端部外周に溝加工刃を有しかつその上部所定箇所に突設された回転切削刃を有する切削工具を用いて、隣接する各床パネルの上端縁部の段差加工と同時に端面に端縁に沿って溝加工を行う工程、及び(C)隣接する床パネル間の間隙よりも広い巾及び上記(B)工程で形成された段差部の深さと略等しい厚さを有する細長いシート状上部材と、該シート状上部材の側縁から所定の間隔をあけて下方に垂下された少なくとも2本の平行な細長い脚部材とから一体的に成形され、かつ両側の脚部材下部に外側に突出した爪部が設けられている可撓性を有する隙間閉塞部材を用い、上記シート状上部材の長手方向縁部が上記(B)工程で形成された床パネルの上端縁の段差部に載置されるように上記脚部材を隣接する床パネル間の間隙に嵌挿すると共に、両側の脚部材の外側に突出した爪部を床パネルの端面に形成された溝部に嵌合し、隣接する床パネル間の間隙を閉塞する工程からなることを特徴とする乾式二重床の施工方法。
【請求項2】 棒状脚部と該棒状脚部の上端部に上下調節可能に装着された受け板とからなるユニット支持脚群と正方形及び/又は長方形の床パネル群とを組み合せて用いて床パネルの敷設を行う乾式二重床の施工方法において、(A)基礎床の床面上に複数のユニット支持脚を床パネルの形状に対応する所定のピッチで配置し、複数の床パネルをその縁部で上記ユニット支持脚により支持されるように所定の間隙を介して配置する工程、(B)各床パネルの上端縁部に段差を加工する工程、(C)隣接する床パネルの端面に端縁に沿って溝を加工する工程、及び(D)隣接する床パネル間の間隙よりも広い巾及び上記(B)工程で形成された段差部の深さと略等しい厚さを有する細長いシート状上部材と、該シート状上部材の側縁から所定の間隔をあけて下方に垂下された少なくとも2本の平行な細長い脚部材とから一体的に成形され、かつ両側の脚部材下部に外側に突出した爪部が設けられている可撓性を有する隙間閉塞部材を用い、上記シート状上部材の長手方向縁部が上記(B)工程で形成された床パネルの上端縁の段差部に載置されるように上記脚部材を隣接する床パネル間の間隙に嵌挿すると共に、両側の脚部材の外側に突出した爪部を床パネルの端面に形成された溝部に嵌合し、隣接する床パネル間の間隙を閉塞する工程からなることを特徴とする乾式二重床の施工方法。
【請求項3】 床パネル敷設後、前記ユニット支持脚の受け板の高さを調節して床パネルのレベルを一定にする工程をさらに含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】 床パネルと隙間閉塞部材を組み立てた後にさらに床パネルの上面に床仕上げ材を敷設する工程を含む請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】 (a)中央部に挿入孔を有しかつ上面に粘着シートが貼着された受け板と、その上部が前記受け板の挿入孔に嵌合され、かつ外周に突設された環状の支持部を有するレベル調整用ナットと、上部ネジ部が前記レベル調整用ナットに螺合された支持ボルトと、該支持ボルトの下端部に固着された台座とから構成される複数のユニット支持脚と、(b)周囲上端縁に段差部が形成されかつ周囲端面に端縁に沿って溝部が形成された正方形及び/又は長方形の複数の床パネルと、(c)該床パネルの段差部の深さと略等しい厚さを有する細長いシート状上部材と、該シート状上部材の側縁から所定の間隔をあけて下方に垂下された少なくとも2本の平行な細長い脚部材とから一体的に成形され、かつ両側の脚部材下部に外側に突出した爪部が設けられている可撓性を有する複数の隙間閉塞部材とから構成される乾式二重床ユニット。
【請求項6】 複数の中空キャップ部材をさらに含む請求項5に記載の乾式二重床ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開平6−185190
【公開日】平成6年(1994)7月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−353858
【出願日】平成4年(1992)12月16日
【出願人】(591220780)有限会社泰成電機工業 (19)