乾式化学の側方流動−再構成されたクロマトグラフィー的酵素駆動式アッセイ法
迅速な酵素駆動式アッセイ法を実施するための側方流動クロマトグラフィーアッセイ形式を記載する。意図された試料には存在しないか、または所望の反応を完了させるには不十分にそこに存在する、特異的酵素反応を誘発するために必要な構成成分の組合せは、乾燥型の基質として、所望の反応の発生時に所望の色を形成するのに必要な成分と共に、予め沈着されている。ストリップには、 液体試料が適用された、流動流中の基質沈着の前方に配置された試料パッドが装着されている。この試料は、試料パッドから基質ゾーンへと流動し、そこで直ちに、乾燥成分を再構成すると同時に、それらを密に混合し、それらと流体最前部で反応する。流体最前部は、迅速に最終「リードゾーン」へ移動し、そこで発色した色は、所望の反応について予め決定された色標準に対して読みとられる。必要ならば、試料の前処理パッド(例えば、全血中の赤血球溶解のための溶解パッド)が、適宜流路中の試料パッドの最前部に配置される。本発明の形式のアッセイ法は、類似の湿式化学アッセイ法よりも、迅速かつ容易に行うことができる。グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(「G-6PD」)、総血清コレステロール、β-ラクタマーゼ活性およびペルオキシダーゼ活性に関する特異的アッセイ法を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年2月24日に出願された米国特許出願第10/370,574号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、側方流動クロマトグラフィーを使用する迅速な、乾式化学の酵素駆動式化学アッセイ法の実施に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ヒト酵素グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(「G6PD」)は、ヒトの生化学において重要な機能を果たしている。これは、酸化的ペントース回路の一部であり、そこでこれは、還元性等価物を提供すること、すなわち、G6PDはグルコース-6-リン酸を6-ホスホグルコン酸(6-phosphoglutonate)に転換し、これによりニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸NAPDをNAPDHへ還元し、プロトンを遊離することにより、フリーラジカルの細胞に対する酸化的攻撃を最小化するように機能する。NAPDHは、一連の下流の反応を開始し、これは最終的にはフリーラジカル酸化物質を還元し、かつそれらの多くを正常なヒト生化学において無効とする。
【0004】
G6PDは、全てのヒト細胞中に存在するが、赤血球中の濃度がより高く、このことはそれらの主な機能のひとつとして、これらは酸素輸送ビヒクルとして作用し、その結果特に酸化的攻撃を受けやすい。G6PDシステムは、正常な活性の場合、望ましくない酸化作用を攻撃および防止することに利用されるのはその能力の1%未満であるという事実を反映し、G6PDシステムの効率は驚くほど高い。しかし、マラリヤ治療薬のキニーネクラスの一員のような強力な酸化物質がヒトに導入されなければならない場合、還元物質の迅速な生成の必要が大きく増加する。
【0005】
G6PDをコードしている遺伝子のいくつかの変異が知られており、これらは、それらのゲノムの両方の半分の変異のような個別のプロセッシングの生化学における酵素の効率を低下し、正常な遺伝子を持つヒトと同じレベルで維持されるそれらのG6PD量を生じるが、大きく低下した比活性を示すそれらのG6PDも生じる。これらの個体において、キニーネ-型マラリヤ治療薬のクラスの一員のような、強力な酸化物質の投与は、溶血性貧血のような重度の臨床合併症を引き起こすことがあり、その理由はそれらのG6DPの低い比活性は、それらの赤血球に対する迅速な望ましくない酸化的作用を防止するのに十分な還元物質を生成することができないからである。マラリア感染症が一般的な地域でありかつ更に蔓延している時点において、G6PD活性が正常であるヒトから比活性が低いG6PDを有するヒトを容易に識別する迅速な効率的試験の必要性が存在し、これにより医療関係者は、(1)キニーネ系マラリヤ治療薬は、正常またはより良いG6PD特異性活性を伴う個体にのみ処方されること、および(2)正常より低いG6PD活性を有するヒトは、マラリヤ治療薬の代替品により治療されることを確実にすることができる。
【0006】
従来、あらゆる状況において、酵素活性に関連したアッセイ法は、それらを調製しかつ実施するために訓練された実験技術員を必要とする「湿式化学」形式で最も一般的に行われてきた。このようなアッセイ法のための試薬は、乾燥構成成分から新たに作成されるか、または市販の乾燥製剤から再構成されるかのいずれかであるはずである。湿式試薬は、乾燥成分または乾燥製剤よりも安定性が低く、これらが貯蔵されなければならない範囲で、より厳密で、夾雑を防ぐための特別な操作技術を含む、慎重にモニタリングされた貯蔵条件が必要である。これらのアッセイ法は、分光計、蛍光計などの機器またはその他のアッセイ法のエンドポイントの結果を読みとるためのそのような機器装置なども必要である。このようなアッセイ法は、蔓延した状況下における、医院(doctor's offices)、病院および養護施設における使用、または家庭もしくは野外での利用のためには実践的でない。
【0007】
自動化された臨床化学分析システムは、試料中に存在するまたは存在しない物質の存在、非存在、濃度または比活性が決定されるような、乾式化学形式アッセイ法を行う産業用途である。このような物質は、この用途を目的として、「分析物」と称され、これはそれ自身酵素であるか(以下に詳細に説明されるG6PDアッセイ法のように)または特異的酵素活性の誘発のために必要な物質であることができる。自動化された臨床化学分析システムの例は、Johnson and Johnson Vitros(商標)システムおよびRoche Cobas(商標)システムがある。これらのシステムおよび類似の自動化されたシステムは、設計されたように実施される場合、ヒトが実施する乾式化学アッセイ作業に関連した調製技術の必要要件および貯蔵寿命に関する問題点がない。プログラムされたロボットは、巧みな操作で作業を実施するので、集中的に訓練された人員の必要もない。しかしこのシステムは、広範な読取り用の機器編成が必要であり、かつこれらは、医院または家庭ならびに多くの病院、診療所および同様の場所において使用するために実践するには、余りにも巨大であり、余りにも複雑であり、かつ概して余りにも重荷となるインフラ要件を伴う。明らかにこれらは、野外で使用するには、余りにも多くの技術的必要要件がある。
【0008】
これらは更に、野外において唾液中のアルコール含量を決定するためのアルコールデヒドロゲナーゼ酵素の使用をベースとしている、アルコールのためのOrasure QED(商標)アッセイ法などのような、ごく少数の機器ベースでない乾式化学アッセイ法が利用可能である。この遺伝子(genre)のこのアッセイ法および他の公知のアッセイ法は、酵素の作用または含量のある局面に応じて決定を、不明瞭化し、阻害しまたは一部の他の様式においてこれに本質的に干渉し、かつ不正確にすることがある物質を含まない試料について行うことができるような決定に、従来限定されてきた。
【0009】
視覚的に不明瞭な物質を含む試料を操作し、および酵素分析物を選択するために抗体捕獲ゾーンを使用する酵素アッセイ法の例は、US Patent 5,506,114に開示されている。このシステムは、視覚的に不明瞭な物質を除去するための洗浄工程を必要とし、かつ実施には十分に厄介であり、野外使用または医院、家庭、ほとんどの診療所および多くの病院などで使用するには実用的でない。
【発明の開示】
【0010】
発明の簡単な説明
最も広範な局面において、本発明は、迅速な乾式化学の酵素駆動式アッセイ法は側方流動クロマトグラフィーを用い有利に実施することができるという認識に基づいており、ここで以下に定義するような予め沈着された乾燥基質は、液体試料の側方流動によりクロマトグラフィー的に再構成され、かつ側方流動装置の少なくともひとつの領域を通って基質を同伴し、このクロマトグラフィー装置のエンドポイントまたは「リード」ゾーンにおける試料-基質混合液の前向き流動の最前部で比色反応を生じる。形成された色は、対応する湿式化学臨床アッセイ法のエンドポイント色の典型であり、前向き流動が停止するその装置の領域において、すなわち試料導入点から最も遠いゾーンにおいて得られる。実施される具体的アッセイ法に応じて、試料中に存在する干渉物質を除去する装置内のクロマトグラフィー的領域、および/または分析物がエンドポイント反応ゾーンに移動する前に、これを予め濃縮するように処理する領域を含むことも、本発明の範囲内である。一部のアッセイ法において、エンドポイント観察と干渉すると従来考えられた少なくともひとつの物質、すなわちヘモグロビンは、除去される必要はなく、その理由はそうでなければエンドポイントを不明確化する色は、エンドポイントゾーンおよびその直ぐ前のゾーン中で等しく沈着するからである。この場合の結果は、このエンドポイントは、エンドポイントゾーンに形成された色を、隣接する直ぐ前のゾーン中の未反応の赤色の色と直接比較することにより、容易に観察可能であることである。
【0011】
一般に、本発明の側方クロマトグラフィー酵素駆動式アッセイ法において、可動性で予め沈着された乾燥基質は、試料受けパッドおよびクロマトグラフィー用ストリップ上の試料流路中の次のパッドの接合部の近傍およびこれを超えて直ぐの所に配置される。しかしそれがエンドポイントの実質的に前の流路中、または試料流動が止まりかつあらゆる過剰な液体の存在が提供され得る吸収パッドもしくは他のシンク装置に流出されるような「リード」ゾーン内に配置される限りは、これは、試料または基質中の1種もしくは複数の成分のいずれかの特定の必要要件に順応する試料流路中の他の場所へ配置することができる。
【0012】
乾燥基質は、試料の前向き流動により完全に取込まれることを促進するために、密に閉鎖された(tightly confined)領域内に沈着されることは重要である。この乾燥基質の流路内の配置は、液体試料中に溶解または分散された形の基質の再構成は、試料の流動が停止する地点に試料が到達する時点までにより完全であることが望ましいことも考慮されなければならない。
【0013】
この酵素駆動式側方流動アッセイ法は、公知の固相分離法と組合わせることができること、ならびに少なくとも一部の例において、このアッセイ法が行われる場合、望ましいエンドポイントの検出感度は実質的に増強されることも知られている。
【0014】
そのような方法の形式は、標的酵素のリガンドの、粒状固相支持体材料(例えば、濾紙のディスク、またはニトロセルロース、ナイロン、ポリエチレンなどであるがこれらに限定されるものではない他の常用の固相支持体材料、もしくは超常磁性粒子など)への、カップリング、コーティング、含浸またはいずれか他の公知の方法による結合に関連している。その後リガンド-結合した粒子は、標的酵素を含むことが知られている流体の試料と混合され、標的酵素のリガンドへの結合を可能にするのに必要な期間インキュベーションされる。それらに結合した酵素-リガンド反応生成物を含むこれらの粒子は、次に、濾過、沈降、遠心および超常磁性粒子の場合は十分な強度の磁界勾配の影響下に置くことなどの公知の分離技術により、流体試料から分離される。
【0015】
次に結合した酵素-リガンド反応生成物を含む回収された粒子は、最初の試料からの分離後、酵素-リガンド反応生成物にとって適していることが知られているある量の選択された公知の緩衝液中に懸濁され、かつこの緩衝懸濁液は、酵素濃度または酵素の他のいくつかのパラメータの決定のために構築された酵素駆動式試験アッセイ法における試料として利用される。この方法は、β-ラクタマーゼ濃厚化および検出の方法において特別な価値があり、ここでは細菌培養物または鼻洗浄液もしくは尿検体のようなヒトの液体試料中に存在する全てのβ-ラクタマーゼは、リガンド-結合した粒子による免疫学的分離により、予め濃縮され、次に酵素駆動式試験の吸収量(uptake volume)に移される。
【0016】
出荷、貯蔵および使用に都合が良いように、本発明のクロマトグラフィー用ストリップは各々、ストリップが側方に配置されるように構築された適当な装置内に収容されることが好ましい。このような装置の多くは、当該技術分野において周知であり、その中に配置されたクロマトグラフィー用ストリップ上でのアッセイ法の実施が、側方流動により行われるように構築されたそれらのいずれかが、適宜利用され得る。
【0017】
酵素駆動式アッセイ法を実施するこの形式は、以下に詳細に説明するような多くの利点を有する。
【0018】
野外、家庭、医院または訓練を受けた実験技術員および機器編成の存在しないあらゆる場所において、誰かが操作することにより、容易にうまく使用することができる特異的G6PDアッセイ法が、総血清コレステロール、β-ラクタマーゼ活性、およびペルオキシダーゼ活性に関するアッセイ法として、以下に詳細に説明されており、かつ添付図面において図示されている。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明をその最も広範な範囲で説明する目的で、下記の4つの定義を、本出願において使用した用語に適用する:
(1)「試料」は、アッセイされるいずれかの液体の生体のもしくは環境のマトリックス、またはそれらのいずれかの液体抽出物もしくは液体濃縮物を意味する。
(2)「分析物」は、試料中に存在するかまたはしないことができる、本アッセイ法の標的物質を意味する。分析物は、それ自身酵素であるか、またはこれは、特異的酵素活性を誘発するために必要とされる物質、例えば基質、補基質もしくは補因子などであってよい。
(3)「基質」は、特異的酵素反応を誘発するのに必要なそれらの構成成分の組合せであり、この構成成分は、試料中に存在しないかまたは分析物が酵素でない場合、もしくは最初の酵素反応が所望の最終決定に必要な追加反応のカスケードを起動する場合に、その中に不充分な量で存在するものを意味する。基質は、補因子、前文で定義された基質、補基質、色素もしくは比色構成成分、または酵素それら自身のいずれかの組合せを含んでも良い。
(4)用語「乾式化学」は、試料に関する所定の決定に必要とされる構成成分が、アッセイ手法に先立ち再構成されかつそれから分離されるよりもむしろ、アッセイ法それ自身の実施により再構成されるまで、乾燥型で維持されるアッセイ形式を意味する。
【0020】
側方流動クロマトグラフィーによる酵素駆動式アッセイ法において必要な基質構成成分の再構成は、そのようなクロマトグラフィーを利用しない方法と比較して、多数の利点を示す。それらの少なくとも一部は、下記のように確定される。
【0021】
通常の手動操作の酵素駆動式アッセイ法において、迅速な酵素速度論を制御するためには、試料を連続希釈することが必要であるが;本発明の側方流動アッセイ法においては、非常に少量の試料のみを、その上でアッセイ法が実施されるクロマトグラフィー用ストリップに適用するので、試料希釈は不要である。
【0022】
試料それ自身が、基質を再構成し、これにより個別の再構成のための緩衝液および工程の必要がない。
【0023】
この基質のクロマトグラフィー的再構成は、同様のアッセイ法の通常の実験室実施において提供されるものを上回るように、試料が利用可能な基質濃度を増大する。
【0024】
利用されるクロマトグラフィー用媒体は、当該技術分野において周知でありかつ良く特徴付けられたものである。これらの公知の特性は、その中に存在する流体の一部を除去することにより分析物を濃縮するストリップのゾーンを保留するか、または望ましい酵素反応を阻害または緩衝する傾向がある試料中に存在する物質を、そのゾーン内に完全にまたは部分的に固定するか、もしくはそれらの流動性を遅らせるために、ストリップのゾーンを保留し、かつこれを適宜前処理することにより、特にそれが望ましいアッセイ法において、容易に利用することができる。
【0025】
また、エンドポイント色形成は単独のエンドポイントゾーンに制限されるために、大きい液体容量全体に色が拡散する場合よりも、分光光度計のような機器を使用しなくとも読取りかつ評価することははるかに容易である。
【0026】
更にその流体の最前部で乾燥基質を取込む際の試料の作用は、エンドポイントゾーンに直ぐ隣接する本質的に基質を含まないゾーンの残存を生じる。試料は前向きに移動するので、ヘモグロビンからの残留色と流体最前部に形成される望ましいエンドポイント色の間には明らかな区別が存在する。このことは、場合によっては、液体試料による手動の化学試験が実施される場合、視覚的に不明瞭な色を生じることが知られている試料中のいずれかの物質(例えばヘモグロビンの赤)を除去するあらゆる必要性を排除する。
【0027】
更になお、クロマトグラフィー的側方流動試験を特徴付ける試料導入からエンドポイント反応までの相対速度は、この酵素駆動試験の大きい利点を提供する。これらの試験は、古典的な手動の分析法で行われる場合、30〜45分の桁および更に長いような、試料と基質を接触するための消化時間を必要とすることが多い。注目すべきはこれらの時間は、希釈を行い、濃縮工程または物質除去工程、および同様の操作を行うための、これらの古典的な手動の方法においては必要とされる時間を含まないことである。対照的に、この側方流動アッセイ法は通常、試料のストリップへの導入から始まり、エンドポイント結果の評価で終わる、5〜20分幅の期間で実施される。
【0028】
本明細書の実施例1のG6PD分析物のような、赤血球中の分析物を測定するために、赤血球は、分析物を測定する前に、界面活性剤または他の溶解剤により溶解(開裂)されなければならない。本発明の乾式化学形式において考案される測定用アッセイ法の、通常赤血球中に認められる別のこのような分析物は、ピルビン酸キナーゼである。
【0029】
分析物が、赤血球よりもむしろ、血液の血清または血漿中に通常存在する多くの例もあり、これは酵素駆動されかつ有益なことに本発明の「乾式化学」形式に転換することができる。とりわけこのような試験は、グルコース、コレステロール、HDL-コレステロール、トリグリセリド、尿素窒素、クレアチン、アラニン、アミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、クレアチニンキナーゼ(CK)などに関するものである。
【0030】
本発明は同じく、唾液中のアルコールを測定するかまたは尿中のアセトアミノフェンもしくはサリチル酸のような薬物を測定するような、分析物が、他の生物学的流体中に存在する場合にも有用であろう。
【0031】
全般的に、本発明は、下記の状況における特別な利用性を有することが認められる:
(A)例えば腎機能測定のための、クレアチニンおよび尿酸の試験のような、試料中の分析物の代表的濃度が、非常に低い場合;ここで、流体最前部の試料および基質の密な混合液は、この試験の感度を、古典的手動による方法のものと比べ改善する;
(B)定性的「イエス」または「ノー」の結果を提供するスクリーニング試験は、例えば、特に肝損傷を引き起こす可能性のある薬物を服用している患者における肝損傷に関する、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)およびAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)のスクリーニングのような、疾患の発症または重症度を決定するために実施され、例えばフェニルケトン尿症(PKU)試験またはガラクトース血症の検出に使用されるガラクトース試験などのような、スクリーニングは、遺伝により引き起こされた疾患について乳児において実施される;ならびに
(C)試料の一部が、別のタンパク質の測定前に除去される必要があるような試験−例えば、HDL(高密度リポタンパク質)-コレステロールの測定の場合、ここでLDL(低密度リポタンパク質)およびVLDL(超低密度リポタンパク質)は、総HDL-コレステロールが測定される前に、沈殿または他の方法で除去される必要がある。
【0032】
前述のことから明らかであるように、本発明は、定性的および定量的の両形式に適合させることができる。前述のものに加え、広範に影響を受け易い他の環境のいくつかは、未知の試料中の疑わしい抗原の存在を検出するために、酵素-標識した抗体が湿式化学法において使用され、引き続き酵素-タグ付き抗体-抗原反応生成物が、適当な発色剤と反応されるようなものである。これらの試験は従来、湿式化学形式で定性的および定量的の両方で実施されてきた。それらを本発明に従い実施するように適合することは、先に他の酵素駆動式反応において記した速度、操作の容易さなどの恩恵を全て生じるであろう。
【0033】
全血化学試験への本発明の適用については、今日まで、特別な注意が払われている。
【0034】
例えばグルコースは、糖尿病患者から採取した血液において頻繁に使用される還元的アッセイ法により決定することができる。本発明に従いこのアッセイ法を実施するためには、グルコースデヒドロゲナーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(「NAD」)、ニトロブルーテトラゾリウムおよびジアホラーゼからなる予め沈着された乾燥成分を伴う免疫クロマトグラフィー用ストリップが、調製される。グルコースはその水素化物に還元し、この水素化物は、ジアホラーゼの存在下でニトロブルーテトラゾリウムを還元し、「リード」ゾーン中に紫がかった青色を生じる。
【0035】
グルコースの酸化的アッセイ法において、基質ゾーン内に沈着された乾燥成分は、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、4-アミノアンチピリンおよびフェノール、またはフェノール誘導体である。酸素の存在下でグルコースおよびグルコースオキシダーゼは、過酸化水素を生成し、これは次に、アミノピリンおよびフェノール(またはフェノール誘導体)と反応し、「リード」ゾーンに識別できる色を生じる。
【0036】
血液脂質プロファイルを実施する上で利用されることが多いコレステロールアッセイ法は、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、4-アミノ-アンチピリンおよびフェノール誘導体を、基質ゾーンに、全て乾燥型で沈着することにより、本発明に従い実施される。血液試料がストリップに導入され、溶解されおよびストリップに沿った流動が可能になる場合、試料中のコレステロール濃度に比例した強度を有する識別できる色が、リードゾーンにおいて認められる。このことは、周知の方法による色標準の発色を可能にする。このような標準は都合の良いことに、例えば医院、家庭、野外などの、色強度を読みとる機器が容易に利用できないような状況において使用される。
【0037】
HDL-コレステロールを測定するための本発明の試験は、第一のゾーンに直ぐ続く「溶解」ゾーンが、試料中の低密度リポタンパク質(「LDL」)および超低密度リポタンパク質(「VLDL」)を捕獲しかつこれに結合し、試料中のHDL-コレステロールのみを基質ゾーンに通過させるような、沈着され固定された沈殿試薬と共に提供されている、調製されたICTストリップを使用する。基質ゾーンの成分は、同じく乾燥コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、4-アミノアンチピリンおよびフェノール誘導体であり、「リード」ゾーンに形成された色の強度は、試料中のHDL-コレステロールの濃度に対し比例する。
【0038】
本発明の方法に従い腎機能不全評価のためのクレアチニンアッセイ法を実施するために、基質ゾーン中に予め沈着された乾燥成分は、クレアチニンイムノヒドロラーゼ、サルコシンオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、4-アミノアンチピリンおよびフェノール誘導体である。
【0039】
肝機能不全に関するALTアッセイ法は、基質ゾーンに予め沈着された乾燥成分がピルビン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、4-アミノアンチピリンおよびフェノール誘導体である、ICTストリップ上で、本発明に従い実施することができる。
【0040】
クレアチニン、アデノシン三リン酸、ホスホフェノールピルビン酸、ピルビン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、4-アミノアンチピリンおよびフェノール誘導体からなる基質ゾーン内の予め沈着された乾燥成分を伴う本明細書に説明されたようなICTストリップの調製は、うっ血性心不全に関するアッセイ法のために本発明を実施することを可能にする。
【0041】
新生児においてフェニルケトン尿症(PKU)が疑われる場合、本発明は、ICTストリップに、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドおよびジアホラーゼの乾燥沈着物が含まれているような、簡便な「イエス−ノー」アッセイ法を提供する。血液試料が添加され、かつ色がリードゾーンに出現した場合、この試験は、PKUについて陽性であり;色が出現しない場合は、この疾患は存在しない。
【0042】
血中のアルコール含有に関する試験は、本発明の方法において酸化的および還元的の両方で行うことができる。還元的試験のための試験ストリップは、基質ゾーン中に乾燥型で、アルコールデヒドロゲナーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、ニトロブルーテトラゾリウムおよびジアホラーゼが沈着されることにより、調製することができ;同じ目的の酸化的試験は、そこに乾燥したアルコールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、4-アミノアンチピリンおよびフェノール誘導体が予め沈着された基質ゾーンのICTストリップを使用する。いずれの場合にも、エンドポイント、または「リード」ゾーンの色は、血液試料のアルコール含量に比例するであろう。
【0043】
血液中のアセトアミノフェン(タイレノールR)のアッセイは、本発明に従い都合良く行うことができる。この目的のためのICTストリップは、予め沈着された乾燥したアリアシルアミニダーゼ、オルト-クレゾール、および酸化物質、例えば亜硫酸水素ナトリウムなどを含むであろう。血液試料が添加された場合、その色強度を、予め確立された色標準のものと比較することにより、患者はアセトアミノフェンを過剰投与されたかどうかを決定することができる。
【0044】
迅速乾式化学側方流動アッセイ法は、本発明を具体的に例証するために考え出されている。G6PD欠損の検出は、機器を使用せず、かつ訓練された実験技術者が居なくとも、野外で実施することができるというこの目的のための信頼できる試験の必要性が認められているので、G6PD欠損の検出が、この目的のために選択された。総血清コレステロール、β-ラクトマーゼ活性およびペルオキシダーゼ活性に関するアッセイ法も例証されている。
【0045】
具体的実施例
実施例1
本試験は、図1Aに図示された側方流動ストリップ上で行われ、これは、そこから試料が前向きに第二のパッドまたは基質パッドへと流動する「溶解」パッドまたは吸上パッドを有する。基質パッドはふたつの領域を有する。第一のそのような領域は、試料中のG6PDがかすかな黄色色素のニトロブルーテトラゾリウムを還元し暗青色のホルマザンとする当該技術分野において従来使用されている、乾燥構成成分の全てが可動性に予め沈着されている、密に閉鎖された基質ゾーンである。ニトロブルーテトラゾリウムの暗青色のホルマザンへの転換速度は、G6PD比活性を測定するために当該技術分野において使用されるいくつかの「湿式化学」試験のひとつである。この基質パッドは、試料導入点からストリップの最も遠端に配置された、最初に基質を含まないゾーンも含む。試料が基質を取込み、かつ前向きに流動するにつれて、最初に基質を含まないゾーンは、再構成された基質を含む試料がこれを占拠しおよび前向き流動が停止した時、「リード」ゾーンまたはエンドポイントゾーンとなり始める。エンドポイントゾーンの前に、試料がストリップに沿って移動するにつれ、その前向き流動モーメントは、乾燥した基質構成成分を取込み、それがストリップの末端に移動するにつれて、取込んだ乾燥した成分の再構成は、流体最前部で濃厚化し、これは迅速にエンドポイントまたは「リード」ゾーンとなり、そこで色が発色する。その後そこから乾燥した基質が流体最前部により除去されるリードゾーンの直前のストリップの領域は、本質的に基質を含まなくなるが、一方ではこのゾーンを通過した試料中のヘモグロビンにより赤色に着色する。
【0046】
G6PD活性決定のために選択された試料は血液であるので、この試験のための側方流動クロマトグラフィー形式の、「湿式化学」試験法に勝る具体的利点が認められる。これは、先に記したように、血液細胞は、各ヒト個体のG6PDの大部分を含むからである。この血液細胞は、この反応に利用可能なG6PDをコードしている酵素を生じるために、溶解されなければならない。血液細胞の溶解、すなわち(開裂)は、ヘモグロビンを放出し、試料を赤色にするが、これは試験が湿式化学法で行われる場合、均一な赤色が既についている拡散性液体試料中で視覚的に識別するためには、ホルマザンの青は極めて困難であり、ほぼ不可能に近いので、赤色は取り除かれるか、または少なくとも実質的に強度が軽減されなければならない。このような拡散性液体試料中のホルマザンの青色は、最初の赤色を単に暗色化するように出現するので、これは容易に認めることができ;更に色の変化を調べようとする異なる個体は、典型的には所定の試験を異なるように読みとる。しかし本明細書に説明したようなクロマトグラフィー的試験においては、赤色を除去する必要はなく、その理由は、試料およびクロマトグラフィー的に再構成された乾燥成分の反応は、流体最前部の良く限定された流動領域において生じ、そのためクロマトグラフィー用ストリップの末端で流動が終結し、かつ試料中の過剰な流体が、少しでも存在し、シンクへ流れる場合は、ストリップの二つの隣接領域は、明確に視認可能であるからである。ストリップの末端、エンドポイントまたは「リード」領域に最も近いものは、紫がかった青色であるが、隣接領域は、ヘモグロビンの赤色を示し、これらふたつは互いに明らかに識別できる。
【0047】
G6PD試験装置により実施される実際の試験において、ヒト全血試料を、試料の凝固を防ぐために、ヘパリン含有チューブに採取した。この試料の一部を、最初に、先行技術の臨床「湿式化学」実験手法を用いG6PD活性についてアッセイし、かつ紫外分光光度法分析により、正常なヒトG6PD活性レベル116U/dlを有することを確認した。試料の一部を、血液対溶解液の容積比10:1で水性10%Triton X-100を添加することにより溶解した。得られる10%Triton X-100、90%全血溶解液を、37℃で6時間インキュベーションし、その最初のG6PD活性をタンパク質分解性に分解させた。全血の一部について用いたものと同じ従来型の「湿式化学」実験手法を用い、この試料は、G6PD活性を有さないことがわかった。
【0048】
第二の溶解試料を、第一と同じ様式で作成した。標的とするG6PD活性104、80、40および20U/dlを有する、新鮮な溶解液および分解した溶解液の希釈物を作成した。これらの各試料の実際の活性は、同じ従来型の「湿式化学」実験手法を用いて測定した。新鮮な溶解液試料の結果は、それらについて確立した標的と一致したが、分解した試料は一貫して活性を示さなかった。
【0049】
支持体上に側方に取付けられた一連の個別に調製したクロマトグラフィー的G6PDストリップの各々の試料受け端に、新鮮なおよび分解した溶解液試料を各々45μl添加した。これらの試料を、側方に配置したストリップに沿ってそれらの終端へとクロマトグラフィー的に流動させた。各試料はストリップの終端に到達したので、時間測定を開始し、かつ視認可能な紫がかった青色がエンドポイントゾーンに出現するまでに要した時間を記録した。新鮮な溶解液試料の活性レベルは、図2Aのチャートに示した。図2Bにおいて、紫がかった青色の出現までの時間を、各新鮮な溶解液試料に関する酵素活性レベルに対してグラフとした。新鮮な溶解液の全ての濃度レベルは、G6PD活性を有し、かつ最終的には予想されたようにストリップのエンドポイントまたは「リード」ゾーンにおいて紫がかった青色を生じた。
【0050】
これらの実験は、予め溶解した血液試料で必ずしも行わなかったが、その理由は、G6PD欠損血液試料が入手できずおよび本試験をバリデーションするためにG6PDレベルの範囲を試験することが必要であったからである。クロマトグラフィー用ストリップの試料導入末端での血液試料の溶解は、当該技術分野において公知の手法であり、かつ未知のG6PD活性の試料による実際の実践におけるこれらの試験ストリップについて公知の方法において実施することが意図されており、従って試験前に試料を処理する必要性を取り除いている。先に説明された試験は、野外におけるこの試験ストリップの使用者が、G6PD欠損血液とG6PD正常血液の間を容易に識別することができるように、時間設定したエンドポイントを確立する目的のために必要であると考えられた。
【0051】
従来臨床的に関連したG6PD欠損レベルは、20U/dlに固定されてきた。このアッセイ法は、37℃と高い周囲温度で試行するように設計されており、これは典型的にはマラリア感染症が流行しおよびマラリア治療薬を処方する前にG6PD-欠損個体を同定する必要が急務であるような暖かい気候で生じる。37℃でのG6PD酵素活性速度は、25℃の通常の室温での速度の2倍であることが知られている。G6PDクロマトグラフィー的試験を実施するために、標的活性レベルのカットオフ値は、室温で50U/dlに設定した(37℃で25U/dlに相当)。試料および同伴され再構成された基質がストリップの終端に到達した時点から70秒に試験エンドポイントを設定することにより、正常G6PDレベルを有する個体と、G6PDレベルが臨床的に欠損している個体の間の識別を、野外において容易に行うことができる。
【0052】
マラリアが最も流行している世界の地域において、G6PD欠損は比較的一般的である。実験の訓練を受けない人員による試験の実施の容易さおよびその速度の組合せは、本発明の側方流動クロマトグラフィーG6PD試験の使用は、マラリア-感染したG6PD-欠損の個体は、自分たちの健康の問題をかなり増悪するマラリヤ用医薬品をもはや受け取らないことを確実にするという実質的価値を有することを示す。
【0053】
実施例2
先に記したように、液体試料中のコレステロール濃度の測定は、G6PDに関する様式に類似した本発明の酵素駆動クロマトグラフィー的アッセイ法により行うことができる。側方流動試験ストリップは、総血清コレステロールに関する湿式化学試験において通常使用される試薬と、コレステロール成分の濃度に比例する速度で色の変化を生じるために必要な発色成分の全てを沈着することにより構成した。この実験において使用したフェノール誘導体は、TOOS、すなわち、3-(N-エチル-3-メチルアニリノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(Sigma, E-8631)であり、これは全血液試料のヘモグロビンバックグラウンドから容易に識別可能である青/紫色を生じる。血清コレステロール標準の市販のパネル(Sigma, C-0534)を、これらの試験ストリップ上を試行させ、可視化までの時間がコレステロール濃度により左右されることを確認した。図3Aおよびそのプロット図3Bにおいて認められたように、明確な用量依存性が観察された。
【0054】
全血液試料によりこれらの総コレステロールストリップ試験を評価するために、全血液試料のパネルを構築した。この場合38mg/dlであるように、ウサギの自然の血清コレステロールレベルは非常に低いので、ウサギの血液を用い、極端な高コレステロール血症を模倣した。比較的高レベルでのこれらの試験のバランスをとるために、この血液は遠心し、かつ血清画分を回収し、かつアリコートに分離した。各アリコートに、先に示した血清コレステロール標準を各々等容量添加した。
【0055】
調節した全血液試料の得られたパネルを、市販の湿式化学分光光度法アッセイ法によりアッセイした(Thermo Trace、コレステロール濃度38〜328mg/dl)。これらの調節した試料の各々は、溶解し、かつ前述のように試験ストリップ上でアッセイした。再度明確な用量依存性が、これらの全血液溶解液試料において認められた。この依存型の関係は図4Aに示し、かつ対応するデータプロットは図4Bに示した。
【0056】
図3Bおよび4Bの各々において、y=コレステロール(mg/dl)、およびx=リードゾーン内の色の可視化までの秒単位の時間である。記号R2は、描かれた曲線に対するデータの相関係数を示す。
【0057】
実施例3
β-ラクタムは、ペニシリンおよびセファロスポリンを含む抗生物質の種類であり、これは特徴的β-ラクタム環構造を含んでいる。この構造は、ペプチドグリカンの合成に必要な酵素と干渉し、分裂している細菌において欠損した細胞壁を生じ、これらの壁を浸透圧により溶解されやすくする。これらの抗生物質に対する細菌の抵抗性のひとつの機構は、β-ラクタマーゼ酵素の生成であり、これはβラクタム環を特異的に切断し、抗生物質を無効にし、細菌のうまく複製する能力を回復する。
【0058】
ラクタマーゼの存在を検出するための側方流動酵素駆動クロマトグラフィー的試験ストリップは、β-ラクタマーゼの濃度に比例した割合で色の変化を生じるために、指示された先行技術の湿式化学法に従い必要な全ての試薬を沈着することにより構成した。実施例1のように、液体試料は、この実施例においては色素形成性セファロスポリン(Oxoid, Sr0112C)である、β-ラクタマーゼ活性を測定するクロマトグラフィー用ストリップ上に沈着された乾燥成分を、クロマトグラフィー的に再構成する。色形成は、β-ラクタマーゼが当初の試料容量中に存在する場合にのみ、ストリップの遠端の反応ゾーンに認められる。
【0059】
これらのストリップによる色の可視化までの時間がβ-ラクタマーゼ活性に左右されることを確認するために、市販の精製されたβ-ラクタマーゼ標準(Sigma, P-4524)を入手し、再構成し、β-ラクタマーゼ活性の範囲に希釈し、これらの試験ストリップ上を流した。図5Aおよびそのデータプロットの図5Bに示したように、明らかな用量依存性が認められた。
【0060】
β-ラクタマーゼを産生することが知られている大腸菌(ATCC#35218)の試料を入手し、それに添付された指示に従い培養することにより増殖した。培養した細菌におけるβ-ラクタマーゼ活性の存在は、従来の湿式化学分光光度法アッセイ法により確認した。次に濃縮した培養物を希釈し、その細胞濃度を濁度測定値から計算し、連続希釈物を、本実施例において先に示したβ-ラクタマーゼ活性について同じ試験ストリップ上を流した。ここで再度、明らかな用量依存性が、これらの希釈した細菌培養試料において認められた。この依存型の関係は、図6Aおよびそのデータプロットの図6Bから明らかである。図5Bおよび6Bにおいて、yは、β-ラクタマーゼ活性単位を表し、「Ln」は、数値「x」の自然対数であり、xはエンドポイントまたはリードゾーンにおける色の可視化までの測定時間(秒)を表している。図6Bにおいて、記号「E」は底(factor)10を意味するが、「E」の後の+記号および数値は、その数値の10の正の乗数を意味し−例えば、1.00 E+08は、1x108を意味する。「E」の後の−記号および数値は、その数値の10の負の乗数を意味し−従って、図6Bにおいて、「R2=9.955E-01」;「E-01」=10-1およびR2は0.9955である。図5Bおよび6Bの両方において、R2は、描かれた曲線に対するデータの相関係数である。
【0061】
βラクタマーゼ酵素を検出する現在の方法は、発生した抗生物質に対する免疫を有することが疑われる細菌が、培養され、細菌コロニーのサイズに拡大され、結果的に存在するβ-ラクタマーゼの量が拡大することを必要とする。その後このコロニーは、色素形成性のセファロスポリンを予め含浸させたディスクと共にインキュベーションされる。各ディスクは、非常に小容量の試料を吸収し、かつ存在するβ-ラクタマーゼ酵素は、色素形成性のセファロスポリンを切断し、ディスクの際だった色の変化を生じる。
【0062】
この方法の精度、効率および感度を改善する努力において、希土類磁石の磁界への曝露により分離されるのに十分な磁気モーメントの超常磁性粒子が、β-ラクタマーゼ酵素に特異的な抗体に複合された。その後これらの粒子は、抗生物質に対する反応が満足できるものではない感染患者から得た大容量の試料へ添加される。例えば抵抗性上気道疾患の症例において、試料は鼻洗浄液である。疑われる細菌が尿路病原菌である場合は、尿検体が理想的である。この試料および粒子は、反応が生じるのに十分な長さインキュベーションした。酵素-抗体複合体を保持する磁気粒子は、未反応の粒子および液体試料から、希土類磁石の磁界により分離される。その後これらの粒子は、磁石から離され、β-ラクタマーゼのためのクロマトグラフィー的試験ストリップ上の試験試薬と同等の少量の緩衝液中に再懸濁される。説明された技術により認められる予想された効率に対し、色素形成性のセファロスポリン-含浸したディスクおよび患者由来の病原体の培養により得た拡大した細菌コロニーによる本実践の予備的評価は、顕著に改善された感度が認められることを強力に示唆している。更に迅速な情報の入手は、多くの症例において、β-ラクタムを含まない医薬品へ至急交換することの必要性を指摘することにより、患者の命を救うであろう。
【0063】
実施例4
New England Journal of Medicine(Prognostic Value of Myeloperoxidase in Patients with Chest Pains : Vol. 349 #17, 1595-1604)の記事を含む最近の文献は、心臓疾患のマーカーとしてのミエロペルオキシダーゼの潜在的重要性を強調している。可能性のある診断道具として、血清または全血のいずれか中のペルオキシダーゼ活性を検出するために、プロトタイプ酵素駆動クロマトグラフィー的アッセイ法が構成された。側方流動試験ストリップは、試験試料のペルオキシダーゼ活性に比例した割合で色の変化を生じる現存する湿式化学法に必要な全ての試薬の沈着により構成した。
【0064】
簡単に述べると、グルコースオキシダーゼ(Sigma, G-2133)、4-アミノアンチピリジン(Sigma, 4382)およびフェノール誘導体TOOS(Sigma, E-8631)を、溶液中で一緒にし、クロマトグラフィー用ストリップの試料受け端に適用し、乾燥した。同様にグルコース(Sigma, G-7528)溶液を調製し、処理された領域間に空隙を残存する容量で、同じストリップの遠端に適用し、混合を生じず、かつ乾燥した。これらの乾燥した構成成分の再構築時に、当該技術分野において公知であるように、グルコースおよびグルコースオキシダーゼは、過酸化水素を生成し、これは試料中のペルオキシダーゼ活性により利用され、先に無色のフェノール化合物から特徴的紫色を形成することができる。
【0065】
全血の血清画分に少量存在し、かつ未分離の全血中に大量に存在するヘモグロビンは、固有の偽ペルオキシダーゼ活性を有し、この活性が本試験により干渉されなかったことを確認するために、追加の試薬は含んだ。硝酸ナトリウムは、強力な酸化物質であり、これはUS Patent 6,200,773に開示されたように、迅速にヘモグロビンを酸化し、かつその偽ペルオキシダーゼ活性を排除する。硝酸ナトリウム(Sigma, S-2252)を、前述の試験ストリップの第一の試薬ゾーンに、中等度に溶血されたヒト血清試料の偽ペルオキシダーゼ活性を排除するのに十分な量で添加した。
【0066】
これらのストリップによる可視化時間が、被験物質中のペルオキシダーゼ活性により左右されるかどうかを決定するために、市販のホースラディッシュペルオキシダーゼ標準(Sigma, P-8375)を入手し、再構成した。次にこの標準を、中等度に溶血されたヒト血清中のペルオキシダーゼ活性の範囲に希釈し、かつこれらの試験ストリップ上を流した。図7に示されたような、可視化時間において明らかな用量依存性が認められた。
【0067】
本明細書に説明された乾式化学の側方流動-クロマトグラフィー形式を使用し、ほとんどの酵素駆動式試験は直ぐに、より容易に、より迅速におよびより安価にすることができる。イオン交換、特異性アフィニティー、サイズ排除などのクロマトグラフィー分離技術を、乾式化学の側方流動試験形式と組合せることで、多くの例においてより大きな恩恵を得る。
【0068】
側方流動クロマトグラフィー試験を設計する当業者は、現在臨床湿式化学として実施されるものの多くを、ほぼだれでも事実上あらゆる場所で実施可能である低コストの簡便な試験に変えるために、これらの技術を適用する方法を容易に認める。特に基質ゾーンにおける使用に関して本明細書において詳細に説明された代替の乾燥試薬により実施可能である様々な試験が、周知である。同様に、本発明の真意からいかなる意味においても逸脱することなく、試料の基質ゾーン内の乾燥成分との接触前に、追加の工程の実施が可能であるよう、ICTストリップを調製することが可能である。従って本発明は添付された「特許請求の範囲」によってのみ制限されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1A】本発明のG6PDアッセイ法の実施のために調製されたクロマトグラフィー用ストリップを表している。
【図1B】試料をそれに適用した後および試料がエンドポイントゾーンに到達する前の、同じストリップを示している。
【図1C】アッセイ法が完了した時点で出現するストリップを示している。
【図2A】本発明のG6PD試験の使用から得たデータを示すチャートである。
【図2B】ストリップの末端での前向き流動の停止からエンドポイントゾーンの紫がかった青色の出現までに経過した秒単位の時間のグラフであり、図2Aのチャートに示された測定された活性レベルである試料のG6PD活性レベルに対してプロットしている。
【図3A】総血清コレステロールに関する本発明の試験において得られたデータを示すチャートである。
【図3B】総血清コレステロール(mg/dl)に対する、ストリップの末端での前向き流動の停止から「リード」またはエンドポイントゾーン中の青/紫色の出現までに経過した秒単位の時間のプロットである。
【図4A】これに関して実施例2において説明されたような、総血清コレステロール試験において全血で得られたデータを示すチャートである。
【図4B】コレステロール(mg/dl)に対する青みがかかった紫色の出現までの秒単位の時間プロットである。
【図5A】市販のβ-ラクタマーゼ標準を用いるβ-ラクタマーゼ活性の測定において本発明のストリップを使用し得られたデータのチャートである。
【図5B】標準活性(U/ml)に対する青みがかかった紫色の出現までの秒単位の時間のプロットであり、ここで「U」は活性単位を表す。
【図6A】β-ラクタマーゼを生成することが知られている大腸菌培養物中のβ-ラクタマーゼ活性の測定から得られたチャートである。
【図6B】図6Aのデータのグラフであり、CFU(コロニー-形成単位)/mlで測定されたβ-ラクタマーゼ活性に対する青みがかかった紫色の出現までの秒単位の時間を示している。
【図7】実施例4に説明されたペルオキシダーゼの測定からのデータのチャートである。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年2月24日に出願された米国特許出願第10/370,574号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、側方流動クロマトグラフィーを使用する迅速な、乾式化学の酵素駆動式化学アッセイ法の実施に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ヒト酵素グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(「G6PD」)は、ヒトの生化学において重要な機能を果たしている。これは、酸化的ペントース回路の一部であり、そこでこれは、還元性等価物を提供すること、すなわち、G6PDはグルコース-6-リン酸を6-ホスホグルコン酸(6-phosphoglutonate)に転換し、これによりニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸NAPDをNAPDHへ還元し、プロトンを遊離することにより、フリーラジカルの細胞に対する酸化的攻撃を最小化するように機能する。NAPDHは、一連の下流の反応を開始し、これは最終的にはフリーラジカル酸化物質を還元し、かつそれらの多くを正常なヒト生化学において無効とする。
【0004】
G6PDは、全てのヒト細胞中に存在するが、赤血球中の濃度がより高く、このことはそれらの主な機能のひとつとして、これらは酸素輸送ビヒクルとして作用し、その結果特に酸化的攻撃を受けやすい。G6PDシステムは、正常な活性の場合、望ましくない酸化作用を攻撃および防止することに利用されるのはその能力の1%未満であるという事実を反映し、G6PDシステムの効率は驚くほど高い。しかし、マラリヤ治療薬のキニーネクラスの一員のような強力な酸化物質がヒトに導入されなければならない場合、還元物質の迅速な生成の必要が大きく増加する。
【0005】
G6PDをコードしている遺伝子のいくつかの変異が知られており、これらは、それらのゲノムの両方の半分の変異のような個別のプロセッシングの生化学における酵素の効率を低下し、正常な遺伝子を持つヒトと同じレベルで維持されるそれらのG6PD量を生じるが、大きく低下した比活性を示すそれらのG6PDも生じる。これらの個体において、キニーネ-型マラリヤ治療薬のクラスの一員のような、強力な酸化物質の投与は、溶血性貧血のような重度の臨床合併症を引き起こすことがあり、その理由はそれらのG6DPの低い比活性は、それらの赤血球に対する迅速な望ましくない酸化的作用を防止するのに十分な還元物質を生成することができないからである。マラリア感染症が一般的な地域でありかつ更に蔓延している時点において、G6PD活性が正常であるヒトから比活性が低いG6PDを有するヒトを容易に識別する迅速な効率的試験の必要性が存在し、これにより医療関係者は、(1)キニーネ系マラリヤ治療薬は、正常またはより良いG6PD特異性活性を伴う個体にのみ処方されること、および(2)正常より低いG6PD活性を有するヒトは、マラリヤ治療薬の代替品により治療されることを確実にすることができる。
【0006】
従来、あらゆる状況において、酵素活性に関連したアッセイ法は、それらを調製しかつ実施するために訓練された実験技術員を必要とする「湿式化学」形式で最も一般的に行われてきた。このようなアッセイ法のための試薬は、乾燥構成成分から新たに作成されるか、または市販の乾燥製剤から再構成されるかのいずれかであるはずである。湿式試薬は、乾燥成分または乾燥製剤よりも安定性が低く、これらが貯蔵されなければならない範囲で、より厳密で、夾雑を防ぐための特別な操作技術を含む、慎重にモニタリングされた貯蔵条件が必要である。これらのアッセイ法は、分光計、蛍光計などの機器またはその他のアッセイ法のエンドポイントの結果を読みとるためのそのような機器装置なども必要である。このようなアッセイ法は、蔓延した状況下における、医院(doctor's offices)、病院および養護施設における使用、または家庭もしくは野外での利用のためには実践的でない。
【0007】
自動化された臨床化学分析システムは、試料中に存在するまたは存在しない物質の存在、非存在、濃度または比活性が決定されるような、乾式化学形式アッセイ法を行う産業用途である。このような物質は、この用途を目的として、「分析物」と称され、これはそれ自身酵素であるか(以下に詳細に説明されるG6PDアッセイ法のように)または特異的酵素活性の誘発のために必要な物質であることができる。自動化された臨床化学分析システムの例は、Johnson and Johnson Vitros(商標)システムおよびRoche Cobas(商標)システムがある。これらのシステムおよび類似の自動化されたシステムは、設計されたように実施される場合、ヒトが実施する乾式化学アッセイ作業に関連した調製技術の必要要件および貯蔵寿命に関する問題点がない。プログラムされたロボットは、巧みな操作で作業を実施するので、集中的に訓練された人員の必要もない。しかしこのシステムは、広範な読取り用の機器編成が必要であり、かつこれらは、医院または家庭ならびに多くの病院、診療所および同様の場所において使用するために実践するには、余りにも巨大であり、余りにも複雑であり、かつ概して余りにも重荷となるインフラ要件を伴う。明らかにこれらは、野外で使用するには、余りにも多くの技術的必要要件がある。
【0008】
これらは更に、野外において唾液中のアルコール含量を決定するためのアルコールデヒドロゲナーゼ酵素の使用をベースとしている、アルコールのためのOrasure QED(商標)アッセイ法などのような、ごく少数の機器ベースでない乾式化学アッセイ法が利用可能である。この遺伝子(genre)のこのアッセイ法および他の公知のアッセイ法は、酵素の作用または含量のある局面に応じて決定を、不明瞭化し、阻害しまたは一部の他の様式においてこれに本質的に干渉し、かつ不正確にすることがある物質を含まない試料について行うことができるような決定に、従来限定されてきた。
【0009】
視覚的に不明瞭な物質を含む試料を操作し、および酵素分析物を選択するために抗体捕獲ゾーンを使用する酵素アッセイ法の例は、US Patent 5,506,114に開示されている。このシステムは、視覚的に不明瞭な物質を除去するための洗浄工程を必要とし、かつ実施には十分に厄介であり、野外使用または医院、家庭、ほとんどの診療所および多くの病院などで使用するには実用的でない。
【発明の開示】
【0010】
発明の簡単な説明
最も広範な局面において、本発明は、迅速な乾式化学の酵素駆動式アッセイ法は側方流動クロマトグラフィーを用い有利に実施することができるという認識に基づいており、ここで以下に定義するような予め沈着された乾燥基質は、液体試料の側方流動によりクロマトグラフィー的に再構成され、かつ側方流動装置の少なくともひとつの領域を通って基質を同伴し、このクロマトグラフィー装置のエンドポイントまたは「リード」ゾーンにおける試料-基質混合液の前向き流動の最前部で比色反応を生じる。形成された色は、対応する湿式化学臨床アッセイ法のエンドポイント色の典型であり、前向き流動が停止するその装置の領域において、すなわち試料導入点から最も遠いゾーンにおいて得られる。実施される具体的アッセイ法に応じて、試料中に存在する干渉物質を除去する装置内のクロマトグラフィー的領域、および/または分析物がエンドポイント反応ゾーンに移動する前に、これを予め濃縮するように処理する領域を含むことも、本発明の範囲内である。一部のアッセイ法において、エンドポイント観察と干渉すると従来考えられた少なくともひとつの物質、すなわちヘモグロビンは、除去される必要はなく、その理由はそうでなければエンドポイントを不明確化する色は、エンドポイントゾーンおよびその直ぐ前のゾーン中で等しく沈着するからである。この場合の結果は、このエンドポイントは、エンドポイントゾーンに形成された色を、隣接する直ぐ前のゾーン中の未反応の赤色の色と直接比較することにより、容易に観察可能であることである。
【0011】
一般に、本発明の側方クロマトグラフィー酵素駆動式アッセイ法において、可動性で予め沈着された乾燥基質は、試料受けパッドおよびクロマトグラフィー用ストリップ上の試料流路中の次のパッドの接合部の近傍およびこれを超えて直ぐの所に配置される。しかしそれがエンドポイントの実質的に前の流路中、または試料流動が止まりかつあらゆる過剰な液体の存在が提供され得る吸収パッドもしくは他のシンク装置に流出されるような「リード」ゾーン内に配置される限りは、これは、試料または基質中の1種もしくは複数の成分のいずれかの特定の必要要件に順応する試料流路中の他の場所へ配置することができる。
【0012】
乾燥基質は、試料の前向き流動により完全に取込まれることを促進するために、密に閉鎖された(tightly confined)領域内に沈着されることは重要である。この乾燥基質の流路内の配置は、液体試料中に溶解または分散された形の基質の再構成は、試料の流動が停止する地点に試料が到達する時点までにより完全であることが望ましいことも考慮されなければならない。
【0013】
この酵素駆動式側方流動アッセイ法は、公知の固相分離法と組合わせることができること、ならびに少なくとも一部の例において、このアッセイ法が行われる場合、望ましいエンドポイントの検出感度は実質的に増強されることも知られている。
【0014】
そのような方法の形式は、標的酵素のリガンドの、粒状固相支持体材料(例えば、濾紙のディスク、またはニトロセルロース、ナイロン、ポリエチレンなどであるがこれらに限定されるものではない他の常用の固相支持体材料、もしくは超常磁性粒子など)への、カップリング、コーティング、含浸またはいずれか他の公知の方法による結合に関連している。その後リガンド-結合した粒子は、標的酵素を含むことが知られている流体の試料と混合され、標的酵素のリガンドへの結合を可能にするのに必要な期間インキュベーションされる。それらに結合した酵素-リガンド反応生成物を含むこれらの粒子は、次に、濾過、沈降、遠心および超常磁性粒子の場合は十分な強度の磁界勾配の影響下に置くことなどの公知の分離技術により、流体試料から分離される。
【0015】
次に結合した酵素-リガンド反応生成物を含む回収された粒子は、最初の試料からの分離後、酵素-リガンド反応生成物にとって適していることが知られているある量の選択された公知の緩衝液中に懸濁され、かつこの緩衝懸濁液は、酵素濃度または酵素の他のいくつかのパラメータの決定のために構築された酵素駆動式試験アッセイ法における試料として利用される。この方法は、β-ラクタマーゼ濃厚化および検出の方法において特別な価値があり、ここでは細菌培養物または鼻洗浄液もしくは尿検体のようなヒトの液体試料中に存在する全てのβ-ラクタマーゼは、リガンド-結合した粒子による免疫学的分離により、予め濃縮され、次に酵素駆動式試験の吸収量(uptake volume)に移される。
【0016】
出荷、貯蔵および使用に都合が良いように、本発明のクロマトグラフィー用ストリップは各々、ストリップが側方に配置されるように構築された適当な装置内に収容されることが好ましい。このような装置の多くは、当該技術分野において周知であり、その中に配置されたクロマトグラフィー用ストリップ上でのアッセイ法の実施が、側方流動により行われるように構築されたそれらのいずれかが、適宜利用され得る。
【0017】
酵素駆動式アッセイ法を実施するこの形式は、以下に詳細に説明するような多くの利点を有する。
【0018】
野外、家庭、医院または訓練を受けた実験技術員および機器編成の存在しないあらゆる場所において、誰かが操作することにより、容易にうまく使用することができる特異的G6PDアッセイ法が、総血清コレステロール、β-ラクタマーゼ活性、およびペルオキシダーゼ活性に関するアッセイ法として、以下に詳細に説明されており、かつ添付図面において図示されている。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明をその最も広範な範囲で説明する目的で、下記の4つの定義を、本出願において使用した用語に適用する:
(1)「試料」は、アッセイされるいずれかの液体の生体のもしくは環境のマトリックス、またはそれらのいずれかの液体抽出物もしくは液体濃縮物を意味する。
(2)「分析物」は、試料中に存在するかまたはしないことができる、本アッセイ法の標的物質を意味する。分析物は、それ自身酵素であるか、またはこれは、特異的酵素活性を誘発するために必要とされる物質、例えば基質、補基質もしくは補因子などであってよい。
(3)「基質」は、特異的酵素反応を誘発するのに必要なそれらの構成成分の組合せであり、この構成成分は、試料中に存在しないかまたは分析物が酵素でない場合、もしくは最初の酵素反応が所望の最終決定に必要な追加反応のカスケードを起動する場合に、その中に不充分な量で存在するものを意味する。基質は、補因子、前文で定義された基質、補基質、色素もしくは比色構成成分、または酵素それら自身のいずれかの組合せを含んでも良い。
(4)用語「乾式化学」は、試料に関する所定の決定に必要とされる構成成分が、アッセイ手法に先立ち再構成されかつそれから分離されるよりもむしろ、アッセイ法それ自身の実施により再構成されるまで、乾燥型で維持されるアッセイ形式を意味する。
【0020】
側方流動クロマトグラフィーによる酵素駆動式アッセイ法において必要な基質構成成分の再構成は、そのようなクロマトグラフィーを利用しない方法と比較して、多数の利点を示す。それらの少なくとも一部は、下記のように確定される。
【0021】
通常の手動操作の酵素駆動式アッセイ法において、迅速な酵素速度論を制御するためには、試料を連続希釈することが必要であるが;本発明の側方流動アッセイ法においては、非常に少量の試料のみを、その上でアッセイ法が実施されるクロマトグラフィー用ストリップに適用するので、試料希釈は不要である。
【0022】
試料それ自身が、基質を再構成し、これにより個別の再構成のための緩衝液および工程の必要がない。
【0023】
この基質のクロマトグラフィー的再構成は、同様のアッセイ法の通常の実験室実施において提供されるものを上回るように、試料が利用可能な基質濃度を増大する。
【0024】
利用されるクロマトグラフィー用媒体は、当該技術分野において周知でありかつ良く特徴付けられたものである。これらの公知の特性は、その中に存在する流体の一部を除去することにより分析物を濃縮するストリップのゾーンを保留するか、または望ましい酵素反応を阻害または緩衝する傾向がある試料中に存在する物質を、そのゾーン内に完全にまたは部分的に固定するか、もしくはそれらの流動性を遅らせるために、ストリップのゾーンを保留し、かつこれを適宜前処理することにより、特にそれが望ましいアッセイ法において、容易に利用することができる。
【0025】
また、エンドポイント色形成は単独のエンドポイントゾーンに制限されるために、大きい液体容量全体に色が拡散する場合よりも、分光光度計のような機器を使用しなくとも読取りかつ評価することははるかに容易である。
【0026】
更にその流体の最前部で乾燥基質を取込む際の試料の作用は、エンドポイントゾーンに直ぐ隣接する本質的に基質を含まないゾーンの残存を生じる。試料は前向きに移動するので、ヘモグロビンからの残留色と流体最前部に形成される望ましいエンドポイント色の間には明らかな区別が存在する。このことは、場合によっては、液体試料による手動の化学試験が実施される場合、視覚的に不明瞭な色を生じることが知られている試料中のいずれかの物質(例えばヘモグロビンの赤)を除去するあらゆる必要性を排除する。
【0027】
更になお、クロマトグラフィー的側方流動試験を特徴付ける試料導入からエンドポイント反応までの相対速度は、この酵素駆動試験の大きい利点を提供する。これらの試験は、古典的な手動の分析法で行われる場合、30〜45分の桁および更に長いような、試料と基質を接触するための消化時間を必要とすることが多い。注目すべきはこれらの時間は、希釈を行い、濃縮工程または物質除去工程、および同様の操作を行うための、これらの古典的な手動の方法においては必要とされる時間を含まないことである。対照的に、この側方流動アッセイ法は通常、試料のストリップへの導入から始まり、エンドポイント結果の評価で終わる、5〜20分幅の期間で実施される。
【0028】
本明細書の実施例1のG6PD分析物のような、赤血球中の分析物を測定するために、赤血球は、分析物を測定する前に、界面活性剤または他の溶解剤により溶解(開裂)されなければならない。本発明の乾式化学形式において考案される測定用アッセイ法の、通常赤血球中に認められる別のこのような分析物は、ピルビン酸キナーゼである。
【0029】
分析物が、赤血球よりもむしろ、血液の血清または血漿中に通常存在する多くの例もあり、これは酵素駆動されかつ有益なことに本発明の「乾式化学」形式に転換することができる。とりわけこのような試験は、グルコース、コレステロール、HDL-コレステロール、トリグリセリド、尿素窒素、クレアチン、アラニン、アミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、クレアチニンキナーゼ(CK)などに関するものである。
【0030】
本発明は同じく、唾液中のアルコールを測定するかまたは尿中のアセトアミノフェンもしくはサリチル酸のような薬物を測定するような、分析物が、他の生物学的流体中に存在する場合にも有用であろう。
【0031】
全般的に、本発明は、下記の状況における特別な利用性を有することが認められる:
(A)例えば腎機能測定のための、クレアチニンおよび尿酸の試験のような、試料中の分析物の代表的濃度が、非常に低い場合;ここで、流体最前部の試料および基質の密な混合液は、この試験の感度を、古典的手動による方法のものと比べ改善する;
(B)定性的「イエス」または「ノー」の結果を提供するスクリーニング試験は、例えば、特に肝損傷を引き起こす可能性のある薬物を服用している患者における肝損傷に関する、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)およびAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)のスクリーニングのような、疾患の発症または重症度を決定するために実施され、例えばフェニルケトン尿症(PKU)試験またはガラクトース血症の検出に使用されるガラクトース試験などのような、スクリーニングは、遺伝により引き起こされた疾患について乳児において実施される;ならびに
(C)試料の一部が、別のタンパク質の測定前に除去される必要があるような試験−例えば、HDL(高密度リポタンパク質)-コレステロールの測定の場合、ここでLDL(低密度リポタンパク質)およびVLDL(超低密度リポタンパク質)は、総HDL-コレステロールが測定される前に、沈殿または他の方法で除去される必要がある。
【0032】
前述のことから明らかであるように、本発明は、定性的および定量的の両形式に適合させることができる。前述のものに加え、広範に影響を受け易い他の環境のいくつかは、未知の試料中の疑わしい抗原の存在を検出するために、酵素-標識した抗体が湿式化学法において使用され、引き続き酵素-タグ付き抗体-抗原反応生成物が、適当な発色剤と反応されるようなものである。これらの試験は従来、湿式化学形式で定性的および定量的の両方で実施されてきた。それらを本発明に従い実施するように適合することは、先に他の酵素駆動式反応において記した速度、操作の容易さなどの恩恵を全て生じるであろう。
【0033】
全血化学試験への本発明の適用については、今日まで、特別な注意が払われている。
【0034】
例えばグルコースは、糖尿病患者から採取した血液において頻繁に使用される還元的アッセイ法により決定することができる。本発明に従いこのアッセイ法を実施するためには、グルコースデヒドロゲナーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(「NAD」)、ニトロブルーテトラゾリウムおよびジアホラーゼからなる予め沈着された乾燥成分を伴う免疫クロマトグラフィー用ストリップが、調製される。グルコースはその水素化物に還元し、この水素化物は、ジアホラーゼの存在下でニトロブルーテトラゾリウムを還元し、「リード」ゾーン中に紫がかった青色を生じる。
【0035】
グルコースの酸化的アッセイ法において、基質ゾーン内に沈着された乾燥成分は、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、4-アミノアンチピリンおよびフェノール、またはフェノール誘導体である。酸素の存在下でグルコースおよびグルコースオキシダーゼは、過酸化水素を生成し、これは次に、アミノピリンおよびフェノール(またはフェノール誘導体)と反応し、「リード」ゾーンに識別できる色を生じる。
【0036】
血液脂質プロファイルを実施する上で利用されることが多いコレステロールアッセイ法は、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、4-アミノ-アンチピリンおよびフェノール誘導体を、基質ゾーンに、全て乾燥型で沈着することにより、本発明に従い実施される。血液試料がストリップに導入され、溶解されおよびストリップに沿った流動が可能になる場合、試料中のコレステロール濃度に比例した強度を有する識別できる色が、リードゾーンにおいて認められる。このことは、周知の方法による色標準の発色を可能にする。このような標準は都合の良いことに、例えば医院、家庭、野外などの、色強度を読みとる機器が容易に利用できないような状況において使用される。
【0037】
HDL-コレステロールを測定するための本発明の試験は、第一のゾーンに直ぐ続く「溶解」ゾーンが、試料中の低密度リポタンパク質(「LDL」)および超低密度リポタンパク質(「VLDL」)を捕獲しかつこれに結合し、試料中のHDL-コレステロールのみを基質ゾーンに通過させるような、沈着され固定された沈殿試薬と共に提供されている、調製されたICTストリップを使用する。基質ゾーンの成分は、同じく乾燥コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、4-アミノアンチピリンおよびフェノール誘導体であり、「リード」ゾーンに形成された色の強度は、試料中のHDL-コレステロールの濃度に対し比例する。
【0038】
本発明の方法に従い腎機能不全評価のためのクレアチニンアッセイ法を実施するために、基質ゾーン中に予め沈着された乾燥成分は、クレアチニンイムノヒドロラーゼ、サルコシンオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、4-アミノアンチピリンおよびフェノール誘導体である。
【0039】
肝機能不全に関するALTアッセイ法は、基質ゾーンに予め沈着された乾燥成分がピルビン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、4-アミノアンチピリンおよびフェノール誘導体である、ICTストリップ上で、本発明に従い実施することができる。
【0040】
クレアチニン、アデノシン三リン酸、ホスホフェノールピルビン酸、ピルビン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、4-アミノアンチピリンおよびフェノール誘導体からなる基質ゾーン内の予め沈着された乾燥成分を伴う本明細書に説明されたようなICTストリップの調製は、うっ血性心不全に関するアッセイ法のために本発明を実施することを可能にする。
【0041】
新生児においてフェニルケトン尿症(PKU)が疑われる場合、本発明は、ICTストリップに、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドおよびジアホラーゼの乾燥沈着物が含まれているような、簡便な「イエス−ノー」アッセイ法を提供する。血液試料が添加され、かつ色がリードゾーンに出現した場合、この試験は、PKUについて陽性であり;色が出現しない場合は、この疾患は存在しない。
【0042】
血中のアルコール含有に関する試験は、本発明の方法において酸化的および還元的の両方で行うことができる。還元的試験のための試験ストリップは、基質ゾーン中に乾燥型で、アルコールデヒドロゲナーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、ニトロブルーテトラゾリウムおよびジアホラーゼが沈着されることにより、調製することができ;同じ目的の酸化的試験は、そこに乾燥したアルコールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、4-アミノアンチピリンおよびフェノール誘導体が予め沈着された基質ゾーンのICTストリップを使用する。いずれの場合にも、エンドポイント、または「リード」ゾーンの色は、血液試料のアルコール含量に比例するであろう。
【0043】
血液中のアセトアミノフェン(タイレノールR)のアッセイは、本発明に従い都合良く行うことができる。この目的のためのICTストリップは、予め沈着された乾燥したアリアシルアミニダーゼ、オルト-クレゾール、および酸化物質、例えば亜硫酸水素ナトリウムなどを含むであろう。血液試料が添加された場合、その色強度を、予め確立された色標準のものと比較することにより、患者はアセトアミノフェンを過剰投与されたかどうかを決定することができる。
【0044】
迅速乾式化学側方流動アッセイ法は、本発明を具体的に例証するために考え出されている。G6PD欠損の検出は、機器を使用せず、かつ訓練された実験技術者が居なくとも、野外で実施することができるというこの目的のための信頼できる試験の必要性が認められているので、G6PD欠損の検出が、この目的のために選択された。総血清コレステロール、β-ラクトマーゼ活性およびペルオキシダーゼ活性に関するアッセイ法も例証されている。
【0045】
具体的実施例
実施例1
本試験は、図1Aに図示された側方流動ストリップ上で行われ、これは、そこから試料が前向きに第二のパッドまたは基質パッドへと流動する「溶解」パッドまたは吸上パッドを有する。基質パッドはふたつの領域を有する。第一のそのような領域は、試料中のG6PDがかすかな黄色色素のニトロブルーテトラゾリウムを還元し暗青色のホルマザンとする当該技術分野において従来使用されている、乾燥構成成分の全てが可動性に予め沈着されている、密に閉鎖された基質ゾーンである。ニトロブルーテトラゾリウムの暗青色のホルマザンへの転換速度は、G6PD比活性を測定するために当該技術分野において使用されるいくつかの「湿式化学」試験のひとつである。この基質パッドは、試料導入点からストリップの最も遠端に配置された、最初に基質を含まないゾーンも含む。試料が基質を取込み、かつ前向きに流動するにつれて、最初に基質を含まないゾーンは、再構成された基質を含む試料がこれを占拠しおよび前向き流動が停止した時、「リード」ゾーンまたはエンドポイントゾーンとなり始める。エンドポイントゾーンの前に、試料がストリップに沿って移動するにつれ、その前向き流動モーメントは、乾燥した基質構成成分を取込み、それがストリップの末端に移動するにつれて、取込んだ乾燥した成分の再構成は、流体最前部で濃厚化し、これは迅速にエンドポイントまたは「リード」ゾーンとなり、そこで色が発色する。その後そこから乾燥した基質が流体最前部により除去されるリードゾーンの直前のストリップの領域は、本質的に基質を含まなくなるが、一方ではこのゾーンを通過した試料中のヘモグロビンにより赤色に着色する。
【0046】
G6PD活性決定のために選択された試料は血液であるので、この試験のための側方流動クロマトグラフィー形式の、「湿式化学」試験法に勝る具体的利点が認められる。これは、先に記したように、血液細胞は、各ヒト個体のG6PDの大部分を含むからである。この血液細胞は、この反応に利用可能なG6PDをコードしている酵素を生じるために、溶解されなければならない。血液細胞の溶解、すなわち(開裂)は、ヘモグロビンを放出し、試料を赤色にするが、これは試験が湿式化学法で行われる場合、均一な赤色が既についている拡散性液体試料中で視覚的に識別するためには、ホルマザンの青は極めて困難であり、ほぼ不可能に近いので、赤色は取り除かれるか、または少なくとも実質的に強度が軽減されなければならない。このような拡散性液体試料中のホルマザンの青色は、最初の赤色を単に暗色化するように出現するので、これは容易に認めることができ;更に色の変化を調べようとする異なる個体は、典型的には所定の試験を異なるように読みとる。しかし本明細書に説明したようなクロマトグラフィー的試験においては、赤色を除去する必要はなく、その理由は、試料およびクロマトグラフィー的に再構成された乾燥成分の反応は、流体最前部の良く限定された流動領域において生じ、そのためクロマトグラフィー用ストリップの末端で流動が終結し、かつ試料中の過剰な流体が、少しでも存在し、シンクへ流れる場合は、ストリップの二つの隣接領域は、明確に視認可能であるからである。ストリップの末端、エンドポイントまたは「リード」領域に最も近いものは、紫がかった青色であるが、隣接領域は、ヘモグロビンの赤色を示し、これらふたつは互いに明らかに識別できる。
【0047】
G6PD試験装置により実施される実際の試験において、ヒト全血試料を、試料の凝固を防ぐために、ヘパリン含有チューブに採取した。この試料の一部を、最初に、先行技術の臨床「湿式化学」実験手法を用いG6PD活性についてアッセイし、かつ紫外分光光度法分析により、正常なヒトG6PD活性レベル116U/dlを有することを確認した。試料の一部を、血液対溶解液の容積比10:1で水性10%Triton X-100を添加することにより溶解した。得られる10%Triton X-100、90%全血溶解液を、37℃で6時間インキュベーションし、その最初のG6PD活性をタンパク質分解性に分解させた。全血の一部について用いたものと同じ従来型の「湿式化学」実験手法を用い、この試料は、G6PD活性を有さないことがわかった。
【0048】
第二の溶解試料を、第一と同じ様式で作成した。標的とするG6PD活性104、80、40および20U/dlを有する、新鮮な溶解液および分解した溶解液の希釈物を作成した。これらの各試料の実際の活性は、同じ従来型の「湿式化学」実験手法を用いて測定した。新鮮な溶解液試料の結果は、それらについて確立した標的と一致したが、分解した試料は一貫して活性を示さなかった。
【0049】
支持体上に側方に取付けられた一連の個別に調製したクロマトグラフィー的G6PDストリップの各々の試料受け端に、新鮮なおよび分解した溶解液試料を各々45μl添加した。これらの試料を、側方に配置したストリップに沿ってそれらの終端へとクロマトグラフィー的に流動させた。各試料はストリップの終端に到達したので、時間測定を開始し、かつ視認可能な紫がかった青色がエンドポイントゾーンに出現するまでに要した時間を記録した。新鮮な溶解液試料の活性レベルは、図2Aのチャートに示した。図2Bにおいて、紫がかった青色の出現までの時間を、各新鮮な溶解液試料に関する酵素活性レベルに対してグラフとした。新鮮な溶解液の全ての濃度レベルは、G6PD活性を有し、かつ最終的には予想されたようにストリップのエンドポイントまたは「リード」ゾーンにおいて紫がかった青色を生じた。
【0050】
これらの実験は、予め溶解した血液試料で必ずしも行わなかったが、その理由は、G6PD欠損血液試料が入手できずおよび本試験をバリデーションするためにG6PDレベルの範囲を試験することが必要であったからである。クロマトグラフィー用ストリップの試料導入末端での血液試料の溶解は、当該技術分野において公知の手法であり、かつ未知のG6PD活性の試料による実際の実践におけるこれらの試験ストリップについて公知の方法において実施することが意図されており、従って試験前に試料を処理する必要性を取り除いている。先に説明された試験は、野外におけるこの試験ストリップの使用者が、G6PD欠損血液とG6PD正常血液の間を容易に識別することができるように、時間設定したエンドポイントを確立する目的のために必要であると考えられた。
【0051】
従来臨床的に関連したG6PD欠損レベルは、20U/dlに固定されてきた。このアッセイ法は、37℃と高い周囲温度で試行するように設計されており、これは典型的にはマラリア感染症が流行しおよびマラリア治療薬を処方する前にG6PD-欠損個体を同定する必要が急務であるような暖かい気候で生じる。37℃でのG6PD酵素活性速度は、25℃の通常の室温での速度の2倍であることが知られている。G6PDクロマトグラフィー的試験を実施するために、標的活性レベルのカットオフ値は、室温で50U/dlに設定した(37℃で25U/dlに相当)。試料および同伴され再構成された基質がストリップの終端に到達した時点から70秒に試験エンドポイントを設定することにより、正常G6PDレベルを有する個体と、G6PDレベルが臨床的に欠損している個体の間の識別を、野外において容易に行うことができる。
【0052】
マラリアが最も流行している世界の地域において、G6PD欠損は比較的一般的である。実験の訓練を受けない人員による試験の実施の容易さおよびその速度の組合せは、本発明の側方流動クロマトグラフィーG6PD試験の使用は、マラリア-感染したG6PD-欠損の個体は、自分たちの健康の問題をかなり増悪するマラリヤ用医薬品をもはや受け取らないことを確実にするという実質的価値を有することを示す。
【0053】
実施例2
先に記したように、液体試料中のコレステロール濃度の測定は、G6PDに関する様式に類似した本発明の酵素駆動クロマトグラフィー的アッセイ法により行うことができる。側方流動試験ストリップは、総血清コレステロールに関する湿式化学試験において通常使用される試薬と、コレステロール成分の濃度に比例する速度で色の変化を生じるために必要な発色成分の全てを沈着することにより構成した。この実験において使用したフェノール誘導体は、TOOS、すなわち、3-(N-エチル-3-メチルアニリノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(Sigma, E-8631)であり、これは全血液試料のヘモグロビンバックグラウンドから容易に識別可能である青/紫色を生じる。血清コレステロール標準の市販のパネル(Sigma, C-0534)を、これらの試験ストリップ上を試行させ、可視化までの時間がコレステロール濃度により左右されることを確認した。図3Aおよびそのプロット図3Bにおいて認められたように、明確な用量依存性が観察された。
【0054】
全血液試料によりこれらの総コレステロールストリップ試験を評価するために、全血液試料のパネルを構築した。この場合38mg/dlであるように、ウサギの自然の血清コレステロールレベルは非常に低いので、ウサギの血液を用い、極端な高コレステロール血症を模倣した。比較的高レベルでのこれらの試験のバランスをとるために、この血液は遠心し、かつ血清画分を回収し、かつアリコートに分離した。各アリコートに、先に示した血清コレステロール標準を各々等容量添加した。
【0055】
調節した全血液試料の得られたパネルを、市販の湿式化学分光光度法アッセイ法によりアッセイした(Thermo Trace、コレステロール濃度38〜328mg/dl)。これらの調節した試料の各々は、溶解し、かつ前述のように試験ストリップ上でアッセイした。再度明確な用量依存性が、これらの全血液溶解液試料において認められた。この依存型の関係は図4Aに示し、かつ対応するデータプロットは図4Bに示した。
【0056】
図3Bおよび4Bの各々において、y=コレステロール(mg/dl)、およびx=リードゾーン内の色の可視化までの秒単位の時間である。記号R2は、描かれた曲線に対するデータの相関係数を示す。
【0057】
実施例3
β-ラクタムは、ペニシリンおよびセファロスポリンを含む抗生物質の種類であり、これは特徴的β-ラクタム環構造を含んでいる。この構造は、ペプチドグリカンの合成に必要な酵素と干渉し、分裂している細菌において欠損した細胞壁を生じ、これらの壁を浸透圧により溶解されやすくする。これらの抗生物質に対する細菌の抵抗性のひとつの機構は、β-ラクタマーゼ酵素の生成であり、これはβラクタム環を特異的に切断し、抗生物質を無効にし、細菌のうまく複製する能力を回復する。
【0058】
ラクタマーゼの存在を検出するための側方流動酵素駆動クロマトグラフィー的試験ストリップは、β-ラクタマーゼの濃度に比例した割合で色の変化を生じるために、指示された先行技術の湿式化学法に従い必要な全ての試薬を沈着することにより構成した。実施例1のように、液体試料は、この実施例においては色素形成性セファロスポリン(Oxoid, Sr0112C)である、β-ラクタマーゼ活性を測定するクロマトグラフィー用ストリップ上に沈着された乾燥成分を、クロマトグラフィー的に再構成する。色形成は、β-ラクタマーゼが当初の試料容量中に存在する場合にのみ、ストリップの遠端の反応ゾーンに認められる。
【0059】
これらのストリップによる色の可視化までの時間がβ-ラクタマーゼ活性に左右されることを確認するために、市販の精製されたβ-ラクタマーゼ標準(Sigma, P-4524)を入手し、再構成し、β-ラクタマーゼ活性の範囲に希釈し、これらの試験ストリップ上を流した。図5Aおよびそのデータプロットの図5Bに示したように、明らかな用量依存性が認められた。
【0060】
β-ラクタマーゼを産生することが知られている大腸菌(ATCC#35218)の試料を入手し、それに添付された指示に従い培養することにより増殖した。培養した細菌におけるβ-ラクタマーゼ活性の存在は、従来の湿式化学分光光度法アッセイ法により確認した。次に濃縮した培養物を希釈し、その細胞濃度を濁度測定値から計算し、連続希釈物を、本実施例において先に示したβ-ラクタマーゼ活性について同じ試験ストリップ上を流した。ここで再度、明らかな用量依存性が、これらの希釈した細菌培養試料において認められた。この依存型の関係は、図6Aおよびそのデータプロットの図6Bから明らかである。図5Bおよび6Bにおいて、yは、β-ラクタマーゼ活性単位を表し、「Ln」は、数値「x」の自然対数であり、xはエンドポイントまたはリードゾーンにおける色の可視化までの測定時間(秒)を表している。図6Bにおいて、記号「E」は底(factor)10を意味するが、「E」の後の+記号および数値は、その数値の10の正の乗数を意味し−例えば、1.00 E+08は、1x108を意味する。「E」の後の−記号および数値は、その数値の10の負の乗数を意味し−従って、図6Bにおいて、「R2=9.955E-01」;「E-01」=10-1およびR2は0.9955である。図5Bおよび6Bの両方において、R2は、描かれた曲線に対するデータの相関係数である。
【0061】
βラクタマーゼ酵素を検出する現在の方法は、発生した抗生物質に対する免疫を有することが疑われる細菌が、培養され、細菌コロニーのサイズに拡大され、結果的に存在するβ-ラクタマーゼの量が拡大することを必要とする。その後このコロニーは、色素形成性のセファロスポリンを予め含浸させたディスクと共にインキュベーションされる。各ディスクは、非常に小容量の試料を吸収し、かつ存在するβ-ラクタマーゼ酵素は、色素形成性のセファロスポリンを切断し、ディスクの際だった色の変化を生じる。
【0062】
この方法の精度、効率および感度を改善する努力において、希土類磁石の磁界への曝露により分離されるのに十分な磁気モーメントの超常磁性粒子が、β-ラクタマーゼ酵素に特異的な抗体に複合された。その後これらの粒子は、抗生物質に対する反応が満足できるものではない感染患者から得た大容量の試料へ添加される。例えば抵抗性上気道疾患の症例において、試料は鼻洗浄液である。疑われる細菌が尿路病原菌である場合は、尿検体が理想的である。この試料および粒子は、反応が生じるのに十分な長さインキュベーションした。酵素-抗体複合体を保持する磁気粒子は、未反応の粒子および液体試料から、希土類磁石の磁界により分離される。その後これらの粒子は、磁石から離され、β-ラクタマーゼのためのクロマトグラフィー的試験ストリップ上の試験試薬と同等の少量の緩衝液中に再懸濁される。説明された技術により認められる予想された効率に対し、色素形成性のセファロスポリン-含浸したディスクおよび患者由来の病原体の培養により得た拡大した細菌コロニーによる本実践の予備的評価は、顕著に改善された感度が認められることを強力に示唆している。更に迅速な情報の入手は、多くの症例において、β-ラクタムを含まない医薬品へ至急交換することの必要性を指摘することにより、患者の命を救うであろう。
【0063】
実施例4
New England Journal of Medicine(Prognostic Value of Myeloperoxidase in Patients with Chest Pains : Vol. 349 #17, 1595-1604)の記事を含む最近の文献は、心臓疾患のマーカーとしてのミエロペルオキシダーゼの潜在的重要性を強調している。可能性のある診断道具として、血清または全血のいずれか中のペルオキシダーゼ活性を検出するために、プロトタイプ酵素駆動クロマトグラフィー的アッセイ法が構成された。側方流動試験ストリップは、試験試料のペルオキシダーゼ活性に比例した割合で色の変化を生じる現存する湿式化学法に必要な全ての試薬の沈着により構成した。
【0064】
簡単に述べると、グルコースオキシダーゼ(Sigma, G-2133)、4-アミノアンチピリジン(Sigma, 4382)およびフェノール誘導体TOOS(Sigma, E-8631)を、溶液中で一緒にし、クロマトグラフィー用ストリップの試料受け端に適用し、乾燥した。同様にグルコース(Sigma, G-7528)溶液を調製し、処理された領域間に空隙を残存する容量で、同じストリップの遠端に適用し、混合を生じず、かつ乾燥した。これらの乾燥した構成成分の再構築時に、当該技術分野において公知であるように、グルコースおよびグルコースオキシダーゼは、過酸化水素を生成し、これは試料中のペルオキシダーゼ活性により利用され、先に無色のフェノール化合物から特徴的紫色を形成することができる。
【0065】
全血の血清画分に少量存在し、かつ未分離の全血中に大量に存在するヘモグロビンは、固有の偽ペルオキシダーゼ活性を有し、この活性が本試験により干渉されなかったことを確認するために、追加の試薬は含んだ。硝酸ナトリウムは、強力な酸化物質であり、これはUS Patent 6,200,773に開示されたように、迅速にヘモグロビンを酸化し、かつその偽ペルオキシダーゼ活性を排除する。硝酸ナトリウム(Sigma, S-2252)を、前述の試験ストリップの第一の試薬ゾーンに、中等度に溶血されたヒト血清試料の偽ペルオキシダーゼ活性を排除するのに十分な量で添加した。
【0066】
これらのストリップによる可視化時間が、被験物質中のペルオキシダーゼ活性により左右されるかどうかを決定するために、市販のホースラディッシュペルオキシダーゼ標準(Sigma, P-8375)を入手し、再構成した。次にこの標準を、中等度に溶血されたヒト血清中のペルオキシダーゼ活性の範囲に希釈し、かつこれらの試験ストリップ上を流した。図7に示されたような、可視化時間において明らかな用量依存性が認められた。
【0067】
本明細書に説明された乾式化学の側方流動-クロマトグラフィー形式を使用し、ほとんどの酵素駆動式試験は直ぐに、より容易に、より迅速におよびより安価にすることができる。イオン交換、特異性アフィニティー、サイズ排除などのクロマトグラフィー分離技術を、乾式化学の側方流動試験形式と組合せることで、多くの例においてより大きな恩恵を得る。
【0068】
側方流動クロマトグラフィー試験を設計する当業者は、現在臨床湿式化学として実施されるものの多くを、ほぼだれでも事実上あらゆる場所で実施可能である低コストの簡便な試験に変えるために、これらの技術を適用する方法を容易に認める。特に基質ゾーンにおける使用に関して本明細書において詳細に説明された代替の乾燥試薬により実施可能である様々な試験が、周知である。同様に、本発明の真意からいかなる意味においても逸脱することなく、試料の基質ゾーン内の乾燥成分との接触前に、追加の工程の実施が可能であるよう、ICTストリップを調製することが可能である。従って本発明は添付された「特許請求の範囲」によってのみ制限されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1A】本発明のG6PDアッセイ法の実施のために調製されたクロマトグラフィー用ストリップを表している。
【図1B】試料をそれに適用した後および試料がエンドポイントゾーンに到達する前の、同じストリップを示している。
【図1C】アッセイ法が完了した時点で出現するストリップを示している。
【図2A】本発明のG6PD試験の使用から得たデータを示すチャートである。
【図2B】ストリップの末端での前向き流動の停止からエンドポイントゾーンの紫がかった青色の出現までに経過した秒単位の時間のグラフであり、図2Aのチャートに示された測定された活性レベルである試料のG6PD活性レベルに対してプロットしている。
【図3A】総血清コレステロールに関する本発明の試験において得られたデータを示すチャートである。
【図3B】総血清コレステロール(mg/dl)に対する、ストリップの末端での前向き流動の停止から「リード」またはエンドポイントゾーン中の青/紫色の出現までに経過した秒単位の時間のプロットである。
【図4A】これに関して実施例2において説明されたような、総血清コレステロール試験において全血で得られたデータを示すチャートである。
【図4B】コレステロール(mg/dl)に対する青みがかかった紫色の出現までの秒単位の時間プロットである。
【図5A】市販のβ-ラクタマーゼ標準を用いるβ-ラクタマーゼ活性の測定において本発明のストリップを使用し得られたデータのチャートである。
【図5B】標準活性(U/ml)に対する青みがかかった紫色の出現までの秒単位の時間のプロットであり、ここで「U」は活性単位を表す。
【図6A】β-ラクタマーゼを生成することが知られている大腸菌培養物中のβ-ラクタマーゼ活性の測定から得られたチャートである。
【図6B】図6Aのデータのグラフであり、CFU(コロニー-形成単位)/mlで測定されたβ-ラクタマーゼ活性に対する青みがかかった紫色の出現までの秒単位の時間を示している。
【図7】実施例4に説明されたペルオキシダーゼの測定からのデータのチャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択された分析物に関する予め選択された酵素駆動式アッセイ法の実施に適合された、クロマトグラフィー用ストリップであり、該ストリップは
(a)支持装置中に側方に配置されるように適合され、その全長に沿った側方流動を確実にし、
(b)その隙間を通る側方クロマトグラフィー的流動を可能にする材料から構築され、ならびに
(c)接着性裏打ち上に並べて配置された少なくとも2個のパッド、すなわち
(1)それを通して側方におよびクロマトグラフィー的に流動する液体試料を受けるように適合された試料受けパッド、および
(2)その上に同じ分析物に関する湿式化学アッセイ法において従来利用されている構成成分の乾燥混合物が、パッドとの境界近傍の領域内に移動可能なように沈着された基質パッドを含む、クロマトグラフィー用ストリップ。
【請求項2】
試料受けパッドが、そこに導入された液体血液試料への溶解剤の添加を可能にし、該溶解された血液試料が、側方様式で、第二のそのようなパッドへクロマトグラフィー的に流動することができるように適合された、請求項1記載のクロマトグラフィー用ストリップ。
【請求項3】
第一のパッドの領域は、その中に存在するならば意図されたアッセイ法と干渉するか、アッセイ法の結果を不明瞭にするか、さもなければアッセイ法の実施を妨害することが知られている物質の、その中を通って流動する際の液体試料中の濃度を除去または減少するように前処理されている、請求項1記載のクロマトグラフィー用ストリップ。
【請求項4】
第一のパッドの領域は、その液体含有物の一部を除去することによって、そこを通って流動する際に液体試料を濃縮するように処理されている、請求項1記載のクロマトグラフィー用ストリップ。
【請求項5】
中間パッドが、試料受けパッドとパッドの間に配置されており、該中間パッドは、そうでなければアッセイ法と干渉するかまたはアッセイ法の結果を不明瞭にするであろう少なくとも1つの試料構成成分を除去して結合する、少なくとも1つの物質の不動の沈着により処理されている、請求項1記載のクロマトグラフィー用ストリップ。
【請求項6】
基質パッドは、新鮮なヒト血液の液体試料と共にクロマトグラフィー的に側方前方への流動により再構築された場合に、該試料についてG6PD活性に関する酵素駆動式アッセイ法を実施する乾燥構成成分を含む、請求項2記載のクロマトグラフィー用ストリップ。
【請求項7】
a)各々そこを通る側方クロマトグラフィー的流動を可能にする材料で構築された、接着性ストリップ上に配置された少なくとも2個の隣接パッドを含む、側方に配置されたクロマトグラフィー用ストリップの試料受け端に、新鮮なヒト血液の液体試料を適用する工程;
b)試料に溶解剤を適用し、それらの赤血球を開裂する工程;
c)溶解した血液試料を、該ストリップに沿って第二のパッドへ流動させ、そこでその前向き流動モーメントが、G6PD活性に関する湿式化学臨床アッセイ法において従来利用されている乾燥構成成分を含む可動性の予め沈着された乾燥基質混合物を取込む工程;
d)その前向き流動最前部の乾燥基質構成成分を含む溶解した血液試料を、それらの終端へ該ストリップに沿って一緒に流動させる工程;ならびに
e)溶解した血液試料および乾燥した基質構成成分が、該ストリップの終端に到達した時点で、ホルマザン形成による、前向き流動最前部の明確な紫がかった青色の出現に注意する工程;
を含む、ヒト血液中のG6PD活性のクロマトグラフィー的側方流動アッセイ法。
【請求項8】
工程(e)において、試料および再構成された基質がストリップ末端に到達した後の紫がかった青色の発色に必要な時間が測定され、測定された時間およびアッセイ法実施時の周囲温度を基に、血液試料を採取された個体が、G6PD活性レベルに対する既知の時間-温度関係に基づいて、正常または正常以下のG6PD活性を有するかどうかが決定される、請求項6記載のアッセイ法。
【請求項9】
約37℃の周囲温度で実施される、請求項6記載のアッセイ法であって、ここで工程(e)は、試料および再構成された基質がクロマトグラフィー用ストリップの終端に到達した時点から70秒間進行することができ、かつ紫がかった青色が依然形成されていない場合は、血液試料がアッセイされた個体はG6PD活性が欠損しているとして分類されるが、そのような色が70秒の制限以内に形成される場合は、血液試料がアッセイされた個体は正常なG6PD活性を有するとして分類される、アッセイ法。
【請求項10】
酵素により駆動される予め選択された分析物に関するクロマトグラフィー的側方流動アッセイ法であって、
(a)接着裏打ち上に隣接関係で配置された少なくとも2個のパッドを含む、側方に配置されたクロマトグラフィー用ストリップの試料受け端に、液体試料を適用する工程;
(b)該試料を第一のパッドを通って第二のパッドへと流動させる工程であって、試料の前向き流動モーメントが、予め選択された分析物に関する湿式化学アッセイ法の実施において利用される乾燥構成成分の混合物を取込み、かつこれと共に該パッドの反対側の端へと運搬する工程;ならびに
c)これにより乾燥構成成分は、液体試料との接触により再構成され、アッセイ法のエンドポイントの色指標を流動最前部位に形成する工程;
により実施される、アッセイ法。
【請求項11】
哺乳類血液中の総血清コレステロールを測定するための、請求項2記載のクロマトグラフィー的側方流動アッセイ法であり、ストリップはその上に、総血清コレステロールに関する湿式化学アッセイ法において従来利用されている構成成分および色素形成成分の乾燥混合物が、パッドとの境界近傍の領域内に可動性に沈着されている基質パッドを有する、アッセイ法。
【請求項12】
細菌培養物中のβ-ラクタマーゼ活性を測定するための、請求項1記載のクロマトグラフィー的側方流動アッセイ法であって、ストリップはその上に、β-ラクタマーゼ活性に関する湿式化学アッセイ法において従来利用されている構成成分および色素形成成分の乾燥混合物が、パッドとの境界近傍の領域内に可動性に沈着されている基質パッドを有する、アッセイ法。
【請求項13】
ヒト血清または全血中のペルオキシダーゼ活性を測定するための、請求項2記載のクロマトグラフィー的側方流動アッセイ法であって、ストリップはその上に、ペルオキシダーゼ活性に関する湿式化学アッセイ法においてこれまで利用されている構成成分に加え、色素形成成分および偽ペルオキシダーゼ活性を排除するのに十分量の硝酸ナトリウムの乾燥混合物が、パッドとの境界近傍の領域内に可動性に沈着されている基質パッドを有する、アッセイ法。
【請求項14】
選択された分析物に関する予め選択された酵素駆動式アッセイ法を実施するプロセスであって、該酵素は通常、それが存在することが知られている環境内に非常に低い濃度で存在する、以下の工程を含むプロセス:
(a)その中で該酵素および/または該酵素のリガンドを含浸もしくは複合した粒状支持体材料の移動が起こる媒体を提供するために、該酵素が十分に水性ベースの液体を生じることが知られているような環境に添加される工程;
(b)該媒体に、該媒体中に存在し得る任意の天然の粒子よりもサイズが大きい粒状支持体材料の増分を添加する工程であって、該粒状支持体材料は、該酵素のリガンドを複合または含浸している工程;
(c)該酵素のリガンドを複合または含浸している該粒状支持体材料および該酵素を、該酵素と該リガンド間の接触の促進を導く条件下で、該酵素が該粒状支持体材料を複合または含浸した該リガンドと反応することが可能になるのに十分な時間インキュベーションする工程;
(d)該媒体から、その上にリガンド-酵素複合体が形成された該粒状支持体材料を回収する工程;
(e)これに関して工程(d)で回収された、その上でリガンド-酵素複合体が形成された該粒状支持体材料を、該リガンド-酵素複合体中に存在する酵素により駆動されるアッセイ法を実施するのに適合されたクロマトグラフィー用ストリップ上の、アッセイ法を行うために必要な試料サイズの、水性ベースの媒体容量中に分散する工程;
(f)その上でリガンド-酵素複合体が形成された該粒状支持体材料を含む該容量の水性ベースの媒体を、該リガンド-酵素複合体中に存在する酵素により駆動されるアッセイ法の実施のために適合された請求項1記載のクロマトグラフィー用ストリップの試料パッドに適用する工程;
(g)アッセイ法を進行させる工程;ならびに
(h)その結果を、予め決定された色基準を用い読みとる工程;
を含む、プロセス。
【請求項15】
粒状支持体材料が、多孔質紙またはプラスチック材料であり、および工程(d)は、その上にリガンド-酵素複合体が形成された該粒状支持体材料を濾過して取り除くことにより実施される、請求項14記載のプロセス。
【請求項16】
粒状支持体材料は、多孔質紙またはプラスチック材料であり、工程(d)は、媒体の遠心、その上にリガンド-酵素複合体が形成された該粒状支持体材料中の相の分離、ならびに該相中に存在する任意の液体の吸引もしくは濾過により実施される、請求項14記載のプロセス。
【請求項17】
粒状支持体材料は、多孔質紙またはプラスチック材料であり、工程(d)は、その上にリガンド-酵素複合体が形成された該粒状支持体材料を含む媒体を、静置しかつ自然沈降により相に分離し、続いてその上にリガンド-酵素複合体が形成された該粒状支持体材料を含む相を分離し、吸引もしくは濾過によりその中に存在する液体を除去することにより実施される、請求項14記載のプロセス。
【請求項18】
粒状支持体材料が超常磁性粒子であり、工程(d)は、媒体を、その上にリガンド-酵素複合体が形成された粒子をそれに引き寄せるのに十分な強度の磁界作用へ曝すことにより実施され、該媒体はデカンテーションまたは吸引により除去され、単離された粒子は磁石から離され、直ちに工程(e)に供される、請求項14記載のプロセス。
【請求項19】
磁石は希土類磁石である、請求項18記載のプロセス。
【請求項1】
選択された分析物に関する予め選択された酵素駆動式アッセイ法の実施に適合された、クロマトグラフィー用ストリップであり、該ストリップは
(a)支持装置中に側方に配置されるように適合され、その全長に沿った側方流動を確実にし、
(b)その隙間を通る側方クロマトグラフィー的流動を可能にする材料から構築され、ならびに
(c)接着性裏打ち上に並べて配置された少なくとも2個のパッド、すなわち
(1)それを通して側方におよびクロマトグラフィー的に流動する液体試料を受けるように適合された試料受けパッド、および
(2)その上に同じ分析物に関する湿式化学アッセイ法において従来利用されている構成成分の乾燥混合物が、パッドとの境界近傍の領域内に移動可能なように沈着された基質パッドを含む、クロマトグラフィー用ストリップ。
【請求項2】
試料受けパッドが、そこに導入された液体血液試料への溶解剤の添加を可能にし、該溶解された血液試料が、側方様式で、第二のそのようなパッドへクロマトグラフィー的に流動することができるように適合された、請求項1記載のクロマトグラフィー用ストリップ。
【請求項3】
第一のパッドの領域は、その中に存在するならば意図されたアッセイ法と干渉するか、アッセイ法の結果を不明瞭にするか、さもなければアッセイ法の実施を妨害することが知られている物質の、その中を通って流動する際の液体試料中の濃度を除去または減少するように前処理されている、請求項1記載のクロマトグラフィー用ストリップ。
【請求項4】
第一のパッドの領域は、その液体含有物の一部を除去することによって、そこを通って流動する際に液体試料を濃縮するように処理されている、請求項1記載のクロマトグラフィー用ストリップ。
【請求項5】
中間パッドが、試料受けパッドとパッドの間に配置されており、該中間パッドは、そうでなければアッセイ法と干渉するかまたはアッセイ法の結果を不明瞭にするであろう少なくとも1つの試料構成成分を除去して結合する、少なくとも1つの物質の不動の沈着により処理されている、請求項1記載のクロマトグラフィー用ストリップ。
【請求項6】
基質パッドは、新鮮なヒト血液の液体試料と共にクロマトグラフィー的に側方前方への流動により再構築された場合に、該試料についてG6PD活性に関する酵素駆動式アッセイ法を実施する乾燥構成成分を含む、請求項2記載のクロマトグラフィー用ストリップ。
【請求項7】
a)各々そこを通る側方クロマトグラフィー的流動を可能にする材料で構築された、接着性ストリップ上に配置された少なくとも2個の隣接パッドを含む、側方に配置されたクロマトグラフィー用ストリップの試料受け端に、新鮮なヒト血液の液体試料を適用する工程;
b)試料に溶解剤を適用し、それらの赤血球を開裂する工程;
c)溶解した血液試料を、該ストリップに沿って第二のパッドへ流動させ、そこでその前向き流動モーメントが、G6PD活性に関する湿式化学臨床アッセイ法において従来利用されている乾燥構成成分を含む可動性の予め沈着された乾燥基質混合物を取込む工程;
d)その前向き流動最前部の乾燥基質構成成分を含む溶解した血液試料を、それらの終端へ該ストリップに沿って一緒に流動させる工程;ならびに
e)溶解した血液試料および乾燥した基質構成成分が、該ストリップの終端に到達した時点で、ホルマザン形成による、前向き流動最前部の明確な紫がかった青色の出現に注意する工程;
を含む、ヒト血液中のG6PD活性のクロマトグラフィー的側方流動アッセイ法。
【請求項8】
工程(e)において、試料および再構成された基質がストリップ末端に到達した後の紫がかった青色の発色に必要な時間が測定され、測定された時間およびアッセイ法実施時の周囲温度を基に、血液試料を採取された個体が、G6PD活性レベルに対する既知の時間-温度関係に基づいて、正常または正常以下のG6PD活性を有するかどうかが決定される、請求項6記載のアッセイ法。
【請求項9】
約37℃の周囲温度で実施される、請求項6記載のアッセイ法であって、ここで工程(e)は、試料および再構成された基質がクロマトグラフィー用ストリップの終端に到達した時点から70秒間進行することができ、かつ紫がかった青色が依然形成されていない場合は、血液試料がアッセイされた個体はG6PD活性が欠損しているとして分類されるが、そのような色が70秒の制限以内に形成される場合は、血液試料がアッセイされた個体は正常なG6PD活性を有するとして分類される、アッセイ法。
【請求項10】
酵素により駆動される予め選択された分析物に関するクロマトグラフィー的側方流動アッセイ法であって、
(a)接着裏打ち上に隣接関係で配置された少なくとも2個のパッドを含む、側方に配置されたクロマトグラフィー用ストリップの試料受け端に、液体試料を適用する工程;
(b)該試料を第一のパッドを通って第二のパッドへと流動させる工程であって、試料の前向き流動モーメントが、予め選択された分析物に関する湿式化学アッセイ法の実施において利用される乾燥構成成分の混合物を取込み、かつこれと共に該パッドの反対側の端へと運搬する工程;ならびに
c)これにより乾燥構成成分は、液体試料との接触により再構成され、アッセイ法のエンドポイントの色指標を流動最前部位に形成する工程;
により実施される、アッセイ法。
【請求項11】
哺乳類血液中の総血清コレステロールを測定するための、請求項2記載のクロマトグラフィー的側方流動アッセイ法であり、ストリップはその上に、総血清コレステロールに関する湿式化学アッセイ法において従来利用されている構成成分および色素形成成分の乾燥混合物が、パッドとの境界近傍の領域内に可動性に沈着されている基質パッドを有する、アッセイ法。
【請求項12】
細菌培養物中のβ-ラクタマーゼ活性を測定するための、請求項1記載のクロマトグラフィー的側方流動アッセイ法であって、ストリップはその上に、β-ラクタマーゼ活性に関する湿式化学アッセイ法において従来利用されている構成成分および色素形成成分の乾燥混合物が、パッドとの境界近傍の領域内に可動性に沈着されている基質パッドを有する、アッセイ法。
【請求項13】
ヒト血清または全血中のペルオキシダーゼ活性を測定するための、請求項2記載のクロマトグラフィー的側方流動アッセイ法であって、ストリップはその上に、ペルオキシダーゼ活性に関する湿式化学アッセイ法においてこれまで利用されている構成成分に加え、色素形成成分および偽ペルオキシダーゼ活性を排除するのに十分量の硝酸ナトリウムの乾燥混合物が、パッドとの境界近傍の領域内に可動性に沈着されている基質パッドを有する、アッセイ法。
【請求項14】
選択された分析物に関する予め選択された酵素駆動式アッセイ法を実施するプロセスであって、該酵素は通常、それが存在することが知られている環境内に非常に低い濃度で存在する、以下の工程を含むプロセス:
(a)その中で該酵素および/または該酵素のリガンドを含浸もしくは複合した粒状支持体材料の移動が起こる媒体を提供するために、該酵素が十分に水性ベースの液体を生じることが知られているような環境に添加される工程;
(b)該媒体に、該媒体中に存在し得る任意の天然の粒子よりもサイズが大きい粒状支持体材料の増分を添加する工程であって、該粒状支持体材料は、該酵素のリガンドを複合または含浸している工程;
(c)該酵素のリガンドを複合または含浸している該粒状支持体材料および該酵素を、該酵素と該リガンド間の接触の促進を導く条件下で、該酵素が該粒状支持体材料を複合または含浸した該リガンドと反応することが可能になるのに十分な時間インキュベーションする工程;
(d)該媒体から、その上にリガンド-酵素複合体が形成された該粒状支持体材料を回収する工程;
(e)これに関して工程(d)で回収された、その上でリガンド-酵素複合体が形成された該粒状支持体材料を、該リガンド-酵素複合体中に存在する酵素により駆動されるアッセイ法を実施するのに適合されたクロマトグラフィー用ストリップ上の、アッセイ法を行うために必要な試料サイズの、水性ベースの媒体容量中に分散する工程;
(f)その上でリガンド-酵素複合体が形成された該粒状支持体材料を含む該容量の水性ベースの媒体を、該リガンド-酵素複合体中に存在する酵素により駆動されるアッセイ法の実施のために適合された請求項1記載のクロマトグラフィー用ストリップの試料パッドに適用する工程;
(g)アッセイ法を進行させる工程;ならびに
(h)その結果を、予め決定された色基準を用い読みとる工程;
を含む、プロセス。
【請求項15】
粒状支持体材料が、多孔質紙またはプラスチック材料であり、および工程(d)は、その上にリガンド-酵素複合体が形成された該粒状支持体材料を濾過して取り除くことにより実施される、請求項14記載のプロセス。
【請求項16】
粒状支持体材料は、多孔質紙またはプラスチック材料であり、工程(d)は、媒体の遠心、その上にリガンド-酵素複合体が形成された該粒状支持体材料中の相の分離、ならびに該相中に存在する任意の液体の吸引もしくは濾過により実施される、請求項14記載のプロセス。
【請求項17】
粒状支持体材料は、多孔質紙またはプラスチック材料であり、工程(d)は、その上にリガンド-酵素複合体が形成された該粒状支持体材料を含む媒体を、静置しかつ自然沈降により相に分離し、続いてその上にリガンド-酵素複合体が形成された該粒状支持体材料を含む相を分離し、吸引もしくは濾過によりその中に存在する液体を除去することにより実施される、請求項14記載のプロセス。
【請求項18】
粒状支持体材料が超常磁性粒子であり、工程(d)は、媒体を、その上にリガンド-酵素複合体が形成された粒子をそれに引き寄せるのに十分な強度の磁界作用へ曝すことにより実施され、該媒体はデカンテーションまたは吸引により除去され、単離された粒子は磁石から離され、直ちに工程(e)に供される、請求項14記載のプロセス。
【請求項19】
磁石は希土類磁石である、請求項18記載のプロセス。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【公表番号】特表2006−518603(P2006−518603A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503810(P2006−503810)
【出願日】平成16年2月24日(2004.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/005319
【国際公開番号】WO2004/076054
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(505318846)バイナックス インコーポレイティッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年2月24日(2004.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/005319
【国際公開番号】WO2004/076054
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(505318846)バイナックス インコーポレイティッド (5)
【Fターム(参考)】
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