説明

乾式載置プロセスにおけるセルロース繊維からなる繊維ウェブの製造方法

天然由来のセルロース繊維だけから、次の方法工程で繊維ウェブを製造する方法:僅かな水分含有量を有するルーズな繊維から、主に均一な厚さの乾燥した繊維載置物を形成し、前記繊維載置物を圧縮及びエンボス加工してエンボス模様を形成させながら繊維ウェブにし、前記繊維ウェブを、高い水含有量(水75〜99質量%)を有する水−ラテックス−混合物で湿らせ、繊維を結合させながら繊維結合領域の内側及び外側で乾燥によりラテックスを析出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式載置プロセスにおいて吸収特性を有するセルロース繊維からなる繊維ウェブを製造する方法に関する。本発明は、さらに、前記方法により製造された繊維ウェブに関する。
【0002】
本発明による繊維ウェブは、衛生製品、特に失禁用品、使い捨ておむつ、パンティーライナー又は生理用品の製造用に適していて、その際、この繊維ウェブは主に前記衛生製品用の吸収性コアとして利用される。他の適用は、食料品包装用の吸収性ライナーである。他の繊維材料を回避してセルロース繊維の使用が重要となる他の適用は、当業者に公知である。
【0003】
湿式載置プロセスとは異なり、繊維を空気流中でベルト上に載置し、プレスロールにより圧縮する、乾式載置プロセスにおけるセルロース繊維からなる繊維ウェブの製造は、数年来公知である。
【0004】
衛生製品用で使用できるセルロース繊維とは、いわゆる「フラフパルプ」繊維であると解釈され、前記「フラフパルプ」繊維は北欧産針葉樹又は米国産サザンパインから得られる。この種のセルロース繊維の平均繊維長は、約2.4〜2.8mmである。緩く圧縮された乾燥繊維の吸収性は、繊維1グラムあたり液体約10〜12gである。相応するデータは、WO 9316228(Norlander)、未処理の対照材料についての表2、又はWO 8804704(Graef)、表7に見られる。他の吸収性材料を前記繊維マトリックス中に組み込むことは公知であり、特に、このために、ポリマー1gあたり液体10gよりも著しく大きな吸収性を有するいわゆる高吸収性ポリマー(SAP)(このポリマーは繊維状にも製造される(SAF=高吸収性繊維))は公知である。
【0005】
米国特許第3692622号明細書は、ペーパータオルの製造用のセルロース繊維ウェブの形の吸収性繊維複合材料を記載していて、その際、前記ウェブには所定のエンボス模様が設けられている。前記繊維ウェブは、乾式で載置された主に結合していない、1.27cmよりも短い長さを有する繊維からなる連続体であり、前記連続体はエンボス加工部(このエンボス加工部は前記ウェブ表面の5〜40%を覆い、かつ個々の繊維の長さよりも相互に短い間隔を有する)によって結合して互いにつながったウェブになり、エンボス加工されていない領域のその厚さは、エンボスされた領域の厚さと比較して少なくとも2.5倍厚い。
【0006】
セルロース繊維だけからなる繊維ウェブの場合には、吸水性を高水準にしかつ同時に粉塵発生を低く保つことが課題である。確かに、溶融接着可能な合成繊維を用いた繊維ウェブ、いわゆる二成分繊維が製造され、これは低い粉塵成分を有することは公知である。しかしながら、本発明については、この種の合成繊維混合を行わないとする部分的課題がある。むしろ、繊維ウェブはセルロース繊維から製造し、製造時にいわゆる粉塵の範囲内の繊維による磨耗屑が出発ウェブの0.1%を下回ることを達成すべきである。この場合、ラテックス結合材の使用は低水準に保つべきである、つまり乾燥状態での面積重量は5g/m2未満の範囲にすべきである。
【0007】
前記課題は、つまり特に繊維粉塵である「リンティング」の抑制は、次の方法工程を有する乾式載置プロセスにおいて吸収特性を有するセルロース繊維から繊維ウェブを製造する方法により解決される:
− 残留水分の範囲内にある僅かな水分含有量を有するルーズな繊維からほぼ均一な乾燥した繊維載置物を形成する工程、
− 前記繊維載置物を圧縮及びエンボス加工して、繊維が主に互いにセルフボンディングしながら結合している圧縮された繊維結合領域を有するエンボス模様を形成させながら繊維ウェブにする工程、
− 高い水割合を有する水−ラテックス−混合物を用いて前記繊維ウェブの少なくとも外側領域を湿らせる工程、
− 前記繊維結合領域の内側及び外側で前記繊維が結合しながら乾燥によりラテックスを析出させる工程。
【0008】
セルロース繊維として、製造元によりウェアハウザー法又はタータス(Tartas)法で製造された「フラフパルプ」繊維が挙げられ、前記繊維は圧縮ロールに供給され、ハンマーミルによって再び綿状繊維にし、個々の繊維に解される。この繊維ウェブに加工される繊維の繊維長は、出発材料に応じて、2.0〜3.0mm、有利に2.3〜2.8mmの程度にある。
【0009】
繊維の結合のためのラテックスの適用は、基本的に公知である。一般に、ラテックスは、エンボス加工されていないセルロース繊維ウェブの結合を達成するためだけに使用される。しかしながら、繊維ウェブの外側領域に存在するラテックス結合と共に、繊維が主に互いにセルフボンディングしながら結合している圧縮された繊維結合領域を有するエンボス模様の形成により、繊維粉塵(「リンティング」又は繊維屑とも言われる)を本質的に抑制することは十分である。「残留水分」とは、製造後のセルロース繊維中の自然の水分であると解釈される。
【0010】
セルフボンディング(self bonding)とは、高圧でかつ予め水分を供給せずに結合するセルロース繊維の場合に公知の傾向であると解釈される。
【0011】
さらに固定に寄与するために、有利に高い水含有量を有する水−ラテックス−混合物をプレス工程の後に塗布し、その際、一般に水90〜99質量%にラテックス10〜1質量%を添加した混合物が使用される。塗布された水の量は重要である、それというのもこの水は、蒸発の際に、セルロース繊維間の水素架橋形成を生じるためである。
【0012】
繊維載置物の圧縮及びエンボス加工は、プレスロール装置中で行われる。ロールの少なくとも1つがピン付きロールであるのが有利である。この場合、この適用される線圧力は、繊維載置物の単位面積あたりの質量に依存し;この圧力は有利に30N/mm〜120N/mmの範囲内にある。
【0013】
この繊維ウェブは、繊維ウェブにかけられた負圧で覆われるため、繊維ウェブを水−ラテックス−混合物で湿らせている間及び/又は湿らせた後に浸透を制御することができる。使用されたパルプ繊維及びその平均繊維長及び/又は繊維ウェブの面積重量に応じて、異なる浸透深さが必要である。
【0014】
吸収性を高めるために、前記繊維載置物もしくは繊維ウェブには、高吸収性ポリマー(いわゆるSAP)からなる繊維又は顆粒が圧縮又はエンボス加工の前に混入される。この高吸収性ポリマーは、載置されるべき繊維の下に混入されるか又は繊維載置物中に層を形成させて導入することができる。
【0015】
SAPとして、特に、次の有機酸のアルカリ金属塩であるヒドロゲル形成するポリマーが適している:ポリ−アクリル酸)、ポリメタクリル酸);アクリル酸及びメタクリル酸と、アクリルアミド、ビニルアルコール、アクリルエステル、ビニルピロリドン、ビニル−スルホン酸、ビニルアセタート、ビニルモルホリノン、及びビニルエーテルとのコポリマー;加水分解された化工デンプン;エチレン、イソブチレン、スチレン及びビニルとの無水マレイン酸−コポリマー;多糖類、例えばカルボキシメチル−デンプン、カルボキシメチル−セルロース及びヒドロキシプロピル−セルロース;ポリアクリルアミド;ポリビニルピロリドン;ポリビニルモルホリノン;ポリビニルピリジン;前記物質のコポリマー及び混合物。前記ヒドロゲル形成するポリマーは特に架橋されていて、それによりこのポリマーは非水溶性になっている。特に、僅かに架橋したポリ−Na−アクリラートが使用される。この架橋は、照射によって誘導することができるか又は共有、イオン性又はファンデルワールス力によって並びに水素架橋結合によって引き起こされていてもよい。前記高吸収性ポリマーは、任意の、それぞれの処理方法に適した形態で、つまり例えば顆粒として、繊維の形で、繊維グループ(フィラメント)として、フロックの形で、小球として、棒材等として混合することができる。
【0016】
繊維結合領域の密度は、必要とされる引き裂き強さに依存する。通常では、繊維ウェブ中で1cm2あたり16〜49個の圧縮された繊維結合領域が導入される。
【0017】
圧縮された繊維結合領域は、この場合、有利にそれぞれ0.03〜1mm2の面積をカバーする。
【0018】
この水−ラテックス−混合物はロール調湿によって又は繊維ウェブへの吹き付けによって適用することができる。ラテックスを析出させるための水の乾燥は、熱照射を用いて又は繊維ウェブに温かい空気の吹込によって行うことができる。
【0019】
ラテックスとして、例えばエアレイド工業において通常の物質を使用することができる。例として、エチレン−ビニル−アセタート−エマルションが挙げられ、これは商品名AIRFLEX(製造元Air Products and Cemicals Inc., Allentown, USA)で入手可能である。生分解性のラテックス、特にデンプン系のラテックスを使用することもできる。付加的に、生分解性の高吸収性ポリマーも製造する場合には、前記繊維ウェブは利用後にコンポスト化工程で分解される。
【0020】
前記ラテックスにも特に注意が向けられる。これは、最初から、相応する仕上げ処理により析出及び繊維ウェブの結合の後に親水性又は疎水性の特性を有するように調節されていてもよい。この場合、繊維ウェブの反対側に対して異なるラテックスを使用することもできる。おむつ用には例えば身体側とは反対側に疎水性繊維ウェブが用いられ、身体側については親水性の調節が選択されている。
【0021】
本発明は、僅かなラテックス結合剤を用いて製造された繊維ウェブにも関し、その際、標準方法により測定して、0.1%未満の粉塵度である。
【0022】
CONCERT GmbH社で適用されているような繊維材料ウェブ中の粉塵含有量を決定するための標準方法は次のものである:
使用した機器:
透明な隔絶されたチャンバを備え、2本の垂直なロッドを備えた回転ディスクを備えた粉塵試験機、試料用の固定クリップ、150rpmの回転数のモーター、タイマー、試料を保護するためのポリエステルシート、卓上試料切断機、ストップウオッチ、実験室用手袋及びMETTLER社の分析天秤AG205
試験条件:
測定のために使用した試料は、次の周囲条件下で試験した:
室温23℃±2℃
相対湿度50%±2%
測定原理:
測定すべき試料を、試験機中に取り付け規定された時間打撃した(粉塵の払い落とし)。この処置の前及び後の試料の秤量差により粉塵損失量を測定し、その量から粉塵含有量をパーセントで計算した。
【0023】
測定の実施:
a) 試料準備:
粉塵測定のための試料は、測定の前に、実験室中で少なくとも2時間上記の室内環境に適合させなければならない。前記試料は吸湿性でありかつ水分を吸収するため、可能な限り手袋を用いて取扱い、分析結果への影響を抑制する。
【0024】
b) SAP不含のエアレイドタイプの場合の粉塵測定の実施:
aa) 相応する試料箇所から、1つの分析について125mm×スリット幅(=1試料単位)のそれぞれ2つの試料を切断し、同様に同じ大きさの断片のポリエステルシートを切断した。
【0025】
bb) この試料単位を20秒間(ストップウオッチ)の安定時間の後に、分析天秤で0.0001gの精度で秤量した。
【0026】
cc) この試料単位を引き続き、粉塵試験機中のクリップに次のように挟んだ:両方の試料は、粉塵を有すると思われる側で外側に合同に折り畳まれ、その上にもしくはその背後に支持するポリエステルシートを置いた。この単位は、短い側で約4〜5cm(残りは上側に突き出す)で、回転ディスクのロッドが前記試料単位の中央に当たるようにクリップで挟んだ。このために、チャンバドアは開けられ、引き続き再び閉じられた。
【0027】
dd) 粉塵試験機をスイッチによって右に(右回り)又は左に(左回り)に始動し、前記試料(シートなし)をまず最初に打撃した。この機器は、約150rpmの回転数で運転され、1分後に前記装置が自動的に停止するタイマーを有していた。この時間の間に、試料は約300回打撃され、存在する粉塵が落下した。
【0028】
ee) 1分後に、この試料を回転させ、他の側をクリップに挟んだ。この場合、この試料は裏返され(外側が内側になる)、シートの場合にはその側が交換される(試料の前、試料の背後)。前記機器を次いでさらに1分間、それぞれ反対方向に始動する。
【0029】
ff) 引き続き、前記試料単位を新たに0.0001gで秤量した。この場合、前記天秤は正確に20秒間安定化された。
【0030】
c) SAP含有のエアレイドタイプの粉塵測定の実施:
aaa) 相応する試料箇所から、1つの分析について125mm×スリット幅の1つの試料を切断し、同様に同じ大きさの断片のポリエステルシートを切断した。
【0031】
bbb) この試料単位を約3分間(ストップウオッチ)の安定時間の後に、分析天秤で0.0001gの精度で秤量した。
【0032】
ccc) この試料単位を引き続き、粉塵試験機中のクリップに次のように挟んだ:両方の試料は、粉塵を有すると思われる側で外側に合同に折り畳まれ、その上にもしくはその背後に支持するポリエステルシートを置いた。この単位は、短い側で約4〜5cm(残りは上側に突き出す)で、回転ディスクのロッドが前記試料の中央に当たるようにクリップで挟んだ。このために、チャンバドアは開けられ、引き続き再び閉じられた。
【0033】
ddd) 粉塵試験機をスイッチによって右に(右回り)又は左に(左回り)に始動し、前記試料(シートなし)をまず最初に打撃した。この機器は、約150rpmの回転数で運転され、1分後に前記装置が自動的に停止するタイマーを有していた。この時間の間に、試料は約300回衝撃され、存在する粉塵が落下した。
【0034】
eee) 1分後に、この試料を回転させ、他の側をクリップに挟んだ。この場合、この試料は裏返され(外側が内側になる)、シートの場合にはその側が交換される(試料の前、試料の背後)。前記機器を次いでさらに1分間、それぞれ反対方向に始動する。
【0035】
fff) 引き続き、前記試料単位を新たに0.0001gで秤量した。この場合、前記計量器は正確に3分間安定化された。
【0036】
それぞれの分析を、粉塵試験器中の両方のクリップをそれぞれ2つの同じ種類の試料(試料単位)で利用することにより二重の測定として実施した。
【0037】
少なくともそれぞれ4回目の分析の後に、試験機中の払い落とされた粉塵を除去した。
【0038】
計算:
粉塵(%) = (A−B)*100/A
A= 試験前の試料の重量
B= 試験後の試料の重量
二重の測定から、平均値を計算することができる。
【0039】
この方法工程の実施例は、図1を用いて記載する。
【0040】
ハンマーミル(図示されていない)から、2.4mmの平均繊維長を有するセルロース繊維10を、第1のフォーマー1.1により、ルーズな不織布11としてコンベアベルト3上に連続的に載置し、互いに雑然と載置されたセルロース繊維からなる層を製造する。この層は、まだ十分に圧縮されていない。他の予め成形されたセルロース繊維層を、フォーマー1.2により層として載置する。最終的に第3層がフォーマー1.3により載置する。個々の繊維載置物は多様な繊維及び異なる繊維密度を有していてもよい。さらに、前記繊維を高吸収性ポリマーと混合し、吸収性を高めることも可能である。これは、衛生分野において以前から使用されていて、既に記載されている市販の製品である。層系中の混合は、貯蔵容器2.1及び2.2によって行われる。しかしながら、高吸収性ポリマーは、振り撒く前に繊維と均質に混合することもできる。
【0041】
繊維−SAP混合物の水分含有量は、いわゆる残留水分によってのみ与えられる。この残留水分は、ここで使用されているような天然繊維の場合に、約6〜10質量%である。SAPとして、記載された実施例において架橋した形のナトリウムポリアクリラートを使用し、これは商品名Favor、製造元Stockhausen GmbH & Co. KGで市販されていて、特に衛生用品用に市販されている。
【0042】
「ウェブトランスファー」といわれる供給装置4を介して、予備圧縮が行われ、かつ、エンボスロール5.1と、前記エンボスロールに対応する平滑ロール5.2とからなる対ロール5に運ばれる。この両方のロールは互いに平行に配置されている。成形ベルトはロールを通過するように搬送されない。ロールの材料は鋼である。
【0043】
前記エンボスロール5.1はエンボスピンを有し、このエンボスピンは比較的急勾配の側面を有する。前記ピンの高さは0.3〜1.0mmである。両方の加圧ロールの間の高い線圧力は、エンボスされない領域とエンボスされた領域との間の、少なくとも1:8、有利に1:10の高度差を提供する。この場合、繊維載置物の面積重量に応じて異なる圧力が必要となる。
【0044】
エンボス領域は、全体のウェブ表面の約8〜40%である。大きすぎる面積割合は吸収性に不利に影響し、他方で小さすぎる面積割合はもはや不十分な引き裂き強さを生じさせる。ウェブの場合に、ウェブ幅50mmあたり少なくとも15Nの引き裂き強さが目標とされる。
【0045】
全体の結合領域の面積割合の他に、結合密度も重要である、この結合密度は規則的な平面模様で分布する繊維結合領域を有するのが好ましい。個々の結合領域の間の間隔は、平均繊維長よりも小さいのが好ましい。繊維ウェブ1cm2あたり、16〜49個の圧縮された繊維結合領域が良好な値の領域であると判明した。
【0046】
結合領域中で圧縮する際に、十分な圧力を生じさせなければならない、それにより個々の結合領域中の繊維はセルフボンディングすることができる。500g/m2の範囲内の繊維載置物の場合に必要な線圧力は約40N/mmであり、150g/m2の範囲内の繊維載置物の場合には前記圧力は110N/mmである。
【0047】
圧縮を行うことにより、この繊維ウェブは高い引き裂き強さ及び統合性が得られ、つまり層剥離は生じない、それというのも繊維ウェブのZ軸方向では高い結束性が観察されるためである。
【0048】
このエンボスされた繊維ウェブに引き続き水−ラテックス−混合物を液体スプレー装置6.1で吹き付ける。この水−ラテックス−混合物は、実施例中では水96%及びラテックス4%(質量%)を含有する。この値は、当業者の判断によって使用されるラテックスのタイプ及び繊維種及び繊維圧縮に応じて可変であることができる。この高い水割合は、繊維からの製紙において公知であるように、水が蒸発される場合に付加的に結合を支援する。さらに、塗布された水−ラテックス−混合物中の高い水割合により及び繊維ウェブのフィルター作用により、ラテックスは繊維ウェブの外側領域にだけ侵入し、従ってラテックス結合は外側にある繊維領域についてのみ生じることが重要である。この水は、繊維ウェブ内へ深く浸透し、上記した結合の形成を提供する。
【0049】
水−ラテックス−混合物の侵入を調節するために、吸引装置16.1がコンベアベルト13の下側に配置され、その際、負圧を調節することにより多様な侵入深さを生じさせることができる。
【0050】
ラテックスとして合成ポリマーが、つまり水性エマルションとしての自己架橋性基を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体が使用される(例えば、AIRFLEX;製造元Air-Products and Chemical Allentown、PA, USA)。繊維ウェブの結束に応じて、1立方メートルあたり乾燥状態でラテックス1〜5グラムで十分である。
【0051】
水の乾燥は、組み合わせられた赤外線−熱風乾燥機7.1により行われる。この繊維材料ウェブは、引き続き裏返され、場合により背面側に水−ラテックス−混合物を吹き付けられる(符号6.2)。ここでも、吸引装置16.2によって侵入深さに影響を及ぼすことができる。同様に更なる乾燥機7.2が設けられている。引き続き、巻き取り及び仕上げを通常のように巻き取り装置8,9によって行う。
【0052】
ラテックスの乾燥、析出及び架橋の後で、実際に、繊維領域から生じる毛羽立ちによる粉塵形成、繊維破断片、SAP顆粒及び粉塵はもはや観察されない。付加的に、ラテックスを用いたこの仕上げ処理は、繊維ウェブを折り曲げる挙動を、繊維ウェブをジグザグに置くために望ましいように緩和させる、その際、これは空間を節約する包装形状のために必要である。
【0053】
類似の市販製品と比較して、粉塵形成は90%以上低減されている。
【0054】
図2は、本発明による繊維ウェブについて作業工程の後に生じる繊維構造体の暗い領域及び明るい領域を11倍の拡大図で示す。この暗い部分20はピン付きロールのエンボス部であり、同時にここで暗く着色されているラテックスが表面で明らかになっている領域である。ラテックスによる平面的な、染み通らない濡れが生じることは明らかである。この濡れは凝集性であるが、上側に対して平行である所定の平面を染み通るのではないため、繊維ウェブの良好な吸収性は維持される。圧縮された繊維結合領域20も識別でき、この場合、繊維ウェブの厚さは著しく低減している。
【0055】
図3及び4は、前記結合領域20の走査顕微鏡写真を示し、この写真からロールの高い圧力により押し潰された繊維のセルフボンディングが明らかである。図3は、50倍の拡大図であり、全体の圧縮点を示し、それに対して図4は、結合領域の一部分だけの500倍の拡大図を示す。
【0056】
この試験において使用された繊維は、いわゆるフラフパルプ(ウェアハウザー法又はタータス法)である。同様の画像は他の天然繊維、例えば綿又は化学的、熱的又は機械的に変性されたセルロースの使用の場合に生じ、従ってこれらも同様に使用可能である。高吸収性ポリマーを使用しなくてもよい。
【0057】
粉塵発生の「リンティング」を他の製品と比較するために、比較試験を実施した。繊維ウェブVE150.200(SAPなし)を、繊維ウェブVE150.202(SAPあり)と並びに下着類ライナー、いわゆるパンティーライナーから取り出されたセルロース−エアレイド材料からなる吸収性コアからなる2つの繊維ウェブと比較した。次の表は測定結果を示す:
【表1】

【0058】
この表から認識されるように、本発明により製造された試料の場合に、より低い粉塵発生度が達成された。
【0059】
合成ポリマーをラテックスとして使用する場合でさえ、前記ポリマーの僅かな含有量によって、いまだに堆肥化性を達成できる。これは、確かに、使用した高吸収性ポリマーの種類にも依存する。この場合、しかしながら、堆肥化可能なSAP(商品名:Lysorb及びSorbfresh、製造元Lysac Technologies Inc., Kanada(食品用吸収ライナーについて特に適している))を使用することもできる。
【0060】
測定方法EDANA20.02.89による引き裂き強さは、乾燥後に50mmのウェブ幅あたり約20Nであり、その際、この強度の一部はラテックス塗布に起因する。ラテックスとして、酢酸ビニル、アクリル−エステル−ポリマー、エチレン−酢酸ビニル−コポリマー、スチレン−ブタジエン−カプロキシラート−コポリマー及びポリアクリルニトリルを有する水性エマルションが適している。分解可能なラテックスとして、デンプン系のラテックス(例えば、Vinamul-PolymersのStructureCote)が使用される。
【0061】
この最終生成物は、衛生製品における使用に適している引き裂き強さを有する。次の表2による比較試験の場合に、さらに、0.9質量%の塩含有量を有する食塩溶液7mlで濡らし、200cm2の面積に広げた場合に、僅かな背面の濡れ(wetback)が生じたことが確認された。セルロース繊維が溶融した二成分繊維と結合していてかつラテックス吹き付け層を有するエアレイド−ハイブリッド製品は、より高い背面の濡れを示した。本発明により製造された製品の改善された水分吸収性は、結合するラテックスによる染み通らない濡れが明らかである。
【0062】
【表2】

【0063】
他の適用例は、所定の適用例に対する組合せ例を示す次の表3から明らかである。この場合、ラテックスの割合は比較的高い面積重量の場合に減少し、使用した水の割合は乾燥した最終生成物に対する比率で同じであることが強調される。これは、ラテックス−水−混合物の著しい希釈によって実現される。例えば、ラテックス6〜8質量%と水92〜94質量%とのラテックス−水−混合物は120g/m2の面積重量を有する態様(表3参照)において使用することができる。500g/m2の面積重量を有する繊維ウェブの場合に、ラテックス2〜4質量%を有する分散液を吹き付けることができる。塗布された水の量は重要である、それというのもこの水は、蒸発の際に、セルロース繊維間の水素架橋形成を生じさせるためである。
【0064】
【表3】

*) SAF=高吸収性繊維
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の方法工程を示す略図。
【図2】本発明による繊維ウェブの暗い領域及び明るい領域の11倍の拡大図。
【図3】走査顕微鏡写真による結合領域の全体の圧縮点の50倍の拡大図。
【図4】走査顕微鏡写真による結合領域の一部分だけの500倍の拡大図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生製品、例えば特に失禁用品、使い捨ておむつ、パンティーライナー又は生理用品、又は吸収用ライナーの製造のために適した、天然由来のセルロース繊維だけからなる繊維ウェブの製造方法において、次の方法工程:
− 残留水分の範囲内にある僅かな水分含有量を有するルーズな繊維からほぼ均一な厚さの乾燥した繊維載置物を形成する工程、
− 前記繊維載置物を圧縮及びエンボス加工して、繊維が主に互いにセルフボンディングしながら結合している圧縮された繊維結合領域を有するエンボス模様を形成させながら繊維ウェブにする工程、
− 水−ラテックス−混合物を用いて前記繊維ウェブの少なくとも外側領域を湿らせる工程、
− 前記繊維結合領域の内側及び外側で前記繊維を結合させながら乾燥によりラテックスを析出させる工程
を有する繊維ウェブの製造方法。
【請求項2】
乾燥した繊維ウェブの面積重量が20〜500g/m2、有利に100〜200g/m2の範囲内に調節されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ウェブの上側及び下側を、連続する工程で水−ラテックス−混合物で湿らされることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
水−ラテックス−混合物が水90〜99質量%とラテックス10〜1質量%を含有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
水−ラテックス−混合物が水92〜99質量%とラテックス8〜1質量%を含有することを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
水−ラテックス−混合物が水95〜99質量%とラテックス5〜1質量%を含有することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
繊維ウェブを湿らせる間及び/又は湿らせた後で、繊維ウェブにかけられた負圧を用いて繊維ウェブの浸透を制御することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
繊維載置物の圧縮及びエンボス加工を一つのプレスロール装置中で実施し、その際少なくとも1つのロールがピン付きロールであることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
繊維載置物の面積重量に応じて、30N/mm〜120N/mmの線圧力の範囲内の多様な圧力を導入することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
繊維載置物もしくは繊維ウェブに高吸収性ポリマー(SAP)が、有利に高吸収性繊維として、圧縮及びエンボス加工の前に混合されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
高吸収性ポリマー(SAP)は、有利に高吸収性繊維として、層を形成させながら繊維載置物中へ導入されることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
高吸収性ポリマー(SAP)をセルロース繊維に、繊維載置物の形成前に均質に分布した形で混合されることを特徴とする、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
繊維ウェブ1cm2あたり16〜49個の圧縮された繊維結合領域が導入されていることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
圧縮された繊維結合領域がそれぞれ0.03〜1mm2の面積を有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
水−ラテックス−混合物がロールを用いてフォーム塗布として又は吹き付けにより塗布されることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
ラテックスの析出のための水の乾燥を、熱放射装置を用いて又は熱風を繊維ウェブに吹き込むことによって行うことを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
生分解性ラテックス、特にデンプン系のラテックスを使用することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
析出及び乾燥の後で繊維ウェブの少なくとも一方の側にラテックスは親水性であることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
繊維ウェブの反対側のために異なるラテックスを使用することを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
析出及び乾燥の後に、繊維ウェブの一方の側でラテックスは親水性であり、他方の側で疎水性であることを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
標準方法により測定して0.2%を下回る粉塵度を有する、請求項1から20までのいずれか1項記載の方法により製造された衛生製品の製造のために適した繊維ウェブ。
【請求項22】
乾燥した繊維ウェブ中の高吸収性ポリマーの割合が0〜70質量%の間にあることを特徴とする、請求項21記載の繊維ウェブ。
【請求項23】
繊維ウェブと結合したラテックスの質量は乾燥状態で1〜5g/m2であることを特徴とする、請求項21又は22記載の繊維ウェブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−527473(P2007−527473A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500104(P2007−500104)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001552
【国際公開番号】WO2005/080655
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(506288151)コンサート ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (4)
【氏名又は名称原語表記】Concert GmbH
【住所又は居所原語表記】Am Lehmberg 10, D−16928 Falkenhagen, Germany
【Fターム(参考)】