説明

乾式銀塩感光体

【目的】 熱現像性の乾式銀塩感光体の生保存性を高める。
【構成】 支持体上に少なくとも(a)有機銀塩(b)還元剤(c)感光性ハロゲン化銀及び又は感光性ハロゲン化銀形成形分(d)バインダーからなる熱現像性感光要素を一層若しくは多層に形成してなる乾式銀塩感光体の前記熱現像性感光要素の層の中の残存溶媒量(重量基準)を30〜5000ppmにする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は現像工程を熱処理によって行ない画像形成をする乾式銀塩感光体に関し、更に詳述すれば本発明は、熱現像時にかぶり濃度が低く、かつ使用前の保存安定性が良好な、乾式銀塩感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、乾式銀塩感光体を用いるハロゲン化銀写真法は、感光性、階調性等において他の写真法に比して優れたものであるが、定着、漂白等の処理工程が乾式であるが為に、その取扱いが煩雑であり、また、処理工程を機械化する場合にも不都合な面が多い。
【0003】かかる問題を有するハロゲン化銀写真法の代りに乾式処理による画像形成が数多く試みられている。これらの画像形成法に比較して特に優れたものとして、現像工程を熱処理で行なう熱現像性感光材料を用いた画像形成法が提案されている。
【0004】上記の乾式銀塩感光体の製造においては、乾式銀塩感光体組成物を有機溶剤に溶解、あるいは分散した液を支持体に塗布し、熱風を吹き付けて乾燥させることにより、支持体上に熱現像性感光要素の層を有する乾式銀塩感光体を得ている。
【0005】しかし、このような製造方法を採用する場合、製造した乾式銀塩感光体は、かぶり濃度が増加したり、感度劣化を生じる問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記問題を解決するために種々検討した結果、乾式銀塩感光体はその製造時に前述のように支持体に感光体組成物を塗布して熱現像性感光要素を形成するものであるが、この感光体組成物の塗布液は高沸点の有機溶媒、例えば、n−ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等を構成成分として含んでいるため、形成した熱現像性感光要素は外観上は乾燥していても残留溶剤が非常に多いことがあり、この場合には乾式銀塩感光体のかぶり濃度が増加し、また使用前の保存性を低下させること、また乾燥時間を長くし、残留溶剤を減らしすぎると乾式銀塩感光体の感度劣化を生じることを知得した。
【0007】更に本発明者らは、種々研究を重ねた結果、乾式銀塩感光体組成物を支持体上に塗布後30℃〜150℃の熱風を吹き付け、残留溶剤が10ppm以上5000ppm以下に乾燥すると上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】従って、本発明の目的はかぶり濃度が低く、かつ使用前の保存安定性が良好な乾式銀塩感光体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、支持体上に少なくとも(a)有機銀塩、(b)還元剤、(c)感光性ハロゲン化銀、及び、又は感光性ハロゲン化銀形成形分、(d)バインダーからなる熱現像性感光要素を一層若しくは多層に形成してなる乾式銀塩感光体において、前記熱現像性感光要素が溶剤を合計量(重量基準)で30〜5000ppm含有してなるように構成するものである。
【0010】以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】本発明の乾式銀塩感光体は、前述のように、支持体上に熱現像性感光要素を一層若しくは多層に形成している。
【0012】支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、酢酸セルロース等の合成樹脂フィルム、合成紙、ポリエチレン等の合成樹脂フィルムで被覆された紙、アート紙、写真用バライタ紙等の紙類、又はアルミニウム等の金属板(箔)、通常の方法により金属蒸着膜を有する合成樹脂フィルム又はガラス板等を挙げることができる。
【0013】本発明に用いる熱現像性感光要素は、(a)有機銀塩、(b)還元剤、(c)感光性ハロゲン化銀又は(及び)感光性ハロゲン化銀形成成分、及び(d)バインダーを少なくとも含有しており、これらのものを単一層に含有させることができる。また、長鎖脂肪酸銀塩及び還元剤を別個の層にして多層とするか、もしくは上記の単一層の上又は下に更に長鎖脂肪酸銀塩又は還元剤を含有する層を設けた多層とすることもできる。
【0014】また、重合性化合物、光重合開始剤を用いる場合、これらを単一層に含有させることができるが、上記組成物と重合性化合物、光重合開始剤とを別個の層にして多層としてもよい。この層は積層された状態でも分離された状態でもよい。また、熱拡散性色素をも含んだ単一層にしても良いし、重合性化合物、光重合開始剤と同一層にした多層でもよい。また、更に重合性化合物、光重合開始剤と分離した多層としてもよい。
【0015】(a)有機銀塩は室内光下で着色化等の不都合な変化を受け難いことにより、炭素数12〜24個のものが好ましい。具体的には、ベンゾトリアゾール銀、ベヘン酸銀、ステアリン酸銀、パルミチン酸銀、ミリスチン酸銀、ラウリン酸銀、オレイン酸銀、またはヒドロキシステアリン酸銀などを挙げることができる。そのうち特にベヘン酸銀が最も有効である。使用される有機銀塩の量は0.3g/m2 〜30g/m2 、特に0.7g/m2 〜15g/m2 、更には1.2g/m2 〜8g/m2 が好ましい。
【0016】また、(b)還元剤は種々のものを挙げることができる。一般的には、通常のハロゲン化銀感光材料に用いられる現像薬、具体的にはハイドロキノン、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン、メチルヒドロキシナフタレン、N,N’−ジエチル−p−フェニレンジアミン、アミノフェノール、アスコルビン酸、1−フェニル−3−ピラゾリドン等を挙げることができ、また、これらの他に、2,2’−メチレンビス(6−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−ターシャリーブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−ターシャリーブチル−3−メチルフェノール)等、更には特開昭46−6074号公報に記載のビスナフトール系還元性化合物、あるいはベルギー特許第802519号明細書に記載の4−ベンゼンスルホンアミドフェノール系化合物、あるいは特開平2−210352号、特開平3−135564号に記載の化合物などを挙げることができる。還元剤の好ましい含有量は有機銀塩1モルに対して0.05〜3モル、より好ましくは0.2〜2モルである。
【0017】(c)ハロゲン化銀は、例えば塩化銀、臭化銀、沃化銀、沃臭化銀、沃塩化銀、沃塩臭化銀を挙げることができる。このハロゲン化銀は、特に微細な粒子状のものが有効である。これを調製する方法として被還元性有機銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀形成成分、例えば臭化アンモニウム、臭化リチウム、塩化ナトリウム、N−ブロムコハク酸イミド等によりハロゲン化し、微細なハロゲン化銀を調整する方法などが挙げられる。また、いわゆる系外ハロゲン化銀を含有させる方法も用いることができる。
【0018】この系外ハロゲン化銀を含有する熱現像性感光要素は例えば、ベルギー特許第774436号公報に記載されている。即ち熱現像性感光要素とは別のところで、換言すると、有機銀塩、還元剤の存在しない所で感光性ハロゲン化銀を調製し、次いで調製後、そのハロゲン化銀を上記画像形成成分に添加して混合することによって調製される。ハロゲン化銀(又は、ハロゲン化銀形成成分)の好ましい含有量は、被還元性有機銀塩1モル当り0.001モル〜0.50モル、特に好ましくは0.01モル〜0.30モルの範囲である。又、上記ハロゲン化銀は、結晶表面層にイリジウムイオンを含有させることもできる。結晶表面層とはハロゲン化銀の結晶表面から所定の深さのところまでの層をいう。
【0019】ハロゲン化銀の結晶形状は、(1,0,0)面の正方晶形が好ましい。ハロゲン化銀粒子の一辺は0.001μmから1.0μmが好ましく、さらには0.01μmから0.2μmが好ましく、特に0.03μmから0.1μmが好ましい。イリジウムイオンを含有する結晶表面層の厚さは、結晶の一辺の長さの10%以下、さらには5%以下が好ましい。また、イリジウムイオンを含有する結晶表面層は結晶の一辺の長さの少なくとも0.5%以上であることが望ましい。
【0020】イリジウムイオンを含有するハロゲン化銀を調製するには、被還元性有機銀塩とハロゲン化銀形成成分とからハロゲン化銀を生成する際に、イリジウムイオン供給体を投入すればよい。イリジウムイオン供給体としては、例えば四塩化イリジウム、六塩化イリジウム(IV)カリウム、六塩化イリジウム(IV)ナトリウム等が好ましい。
【0021】ハロゲン化銀の結晶表面層にイリジウムイオンを含有させるには、ハロゲン化銀の生成を開始してから暫く経過してからイリジウムイオン供給体を投入すればよい。例えば、ハロゲン化銀が所定量の90重量%生成したところでイリジウムイオン供給体を投入し始めればよい。
【0022】イリジウムイオンの含有量は、感光性層に含有する全ハロゲン化銀1モル当たり、1×10-5モル〜1×10-2モル、さらには5×10-5〜5×10-3モルの割合が好ましい。
【0023】(d)バインダーは単独もしくは組み合わせて層中に含有させることができる。バインダーの適当な材料は疎水性あるいは親水性であることができ、又、透明もしくは半透明であることができる。具体的には、ポリビニルブチラール、セルロースアセテートブチレート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カナダ特許第774054号公報に記載のスルホベタイン繰返し単位を有するもの等を挙げることができる。バインダーの使用量は被還元性有機銀塩に対し、重量比で10:1乃至1:10が好ましい。更に好ましくは4:1乃至1:2の範囲である。
【0024】熱現像性感光要素には、画像の色調性、画像形成後の安定性を改善するために有機酸を添加することが好ましく、特に長鎖脂肪酸銀塩と同一か又は近傍の脂肪酸を単独あるいは組み合わせて含有させるのが好ましい。それらの脂肪酸の添加量は、被還元性有機銀塩に対して25モル%〜200モル%であり、特に好ましくは30モル%〜120モル%である。
【0025】熱現像性感光要素は、色調剤を含有することができる。色調剤としては米国特許第3080254号公報に記載のフタラジノン又はその誘導体、特開昭46−6074号公報に記載の環式イミド類、特開昭50−32927号公報に記載のフタラジンジオン化合物等を含む。
【0026】熱現像性感光要素は、公知の適当なかぶり防止剤を併用することができる。かぶり防止剤としては、特公昭55−42375号公報に記載の1,2,4−トリアゾール化合物、特開昭57−30828号公報に記載のテトラゾール化合物、特開昭57−138630号公報に記載の安息香酸類及び特開昭57−147627号公報に記載のスルホニルチオ基を有する化合物、特開昭58−107534号公報に記載の二塩基酸類を挙げることができる。特に、本発明に用いられるカブリ防止剤としては、特開昭58−107534号公報に記載されている二塩基酸類が好ましく、この二塩基酸は下記一般式Iで表わされる。
【0027】
【化1】


(式中、R2 は炭素数4個以上の直鎖又は分枝のアルキレン基又はアルケニレン基を表わす。)熱現像性感光要素は、画像形成後の光などによる非画像部の着色を防止するための化合物を含有することができる。この着色防止剤としては、特開昭61−129642号公報に記載された化合物が好ましく、この化合物は下記の一般式IIで表わされる。
【0028】
【化2】


(式中、R3 は置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を、R4 は水素原子、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアリール基を表わす。X2 は塩素原子、臭素原子又は沃素原子を表わす。)本発明の感光体は、下記一般式(III )又は(IV)で表わされる化合物を含有することができる。
【0029】
【化3】


【0030】
【化4】


(式中、R5 〜R14は水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルコキシ基、カルボキシル基、置換または非置換のアリール基、スルホン酸塩、置換または非置換のアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アミド基、アルケニル基またはアルキニル基を表わし、R5 とR6 、R6 とR7 、R7 とR8は、それぞれ縮合環を形成してもよい。X3 は−O−、−N(R15)−、または−S−を表わし、R15は水素、アルキル基またはアリール基を表わす。)具体的化合物としては例えば、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプト−6−メチルベンゾオキサゾール、2−メルカプト−5−スルホキシベンゾオキサゾール、2−メルカプト−4−メチルベンゾオキサゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾオキサゾール、2−メルカプト−5−クロロベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダゾール等があり、好ましくはXが−O−となるオキサゾール系化合物である。
【0031】熱現像性感光要素は、更に現像促進剤を含有することができる。好ましい現像促進剤としては、特公昭64−8809号公報に記載の脂肪酸のアルカリ金属塩化合物を挙げることができる。
【0032】本発明の熱現像性感光要素は、帯電防止剤として含フッ素系界面活性剤、又は特開昭64−24245号公報に記載された含フッ素系界面活性剤とノニオン界面活性剤とを併用して含有することができる。
【0033】熱現像性感光要素は、更に、増感色素(例えばシアニン色素、メロシアニン色素など)、紫外線吸収剤、イラジェーション防止染料、蛍光増白剤、フィルター染料(層)等を含有することができる。
【0034】また、これらに加え重合性化合物、光重合開始剤を含んでいてもよい。重合性化合物としては、一分子中に反応性ビニル基を少なくとも1個もつ化合物が利用できる。例えば、反応性ビニル基含有単量体、反応性ビニル基含有オリゴマー及び反応性ビニル基含有ポリマーからなる群より選択した1種以上を用いることができる。
【0035】これら化合物の反応性ビニル基としては、スチレン系ビニル基、アクリル酸系ビニル基、メタクリル酸ビニル基、アリル系ビニル基、ビニルエーテル等の他に酢酸ビニル等のエステル系ビニル基等重合反応性を有する置換もしくは非置換ビニル基が挙げられる。
【0036】かかる条件を満たす重合性ポリマー前駆体の具体例としてはスチレン、メトキシスチレン、ジメチルアミノスチレン、ヒドロキシスチレン、アミノスチレン、カルボキシスチレン、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリルアミド、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エーテル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、N−メチル−2−ビニルイミダゾール、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、β−クロロエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、p−メチルフェニルビニルエーテル、p−クロロフェニルビニルエーテル等の一価の単量体;例えばジビニルベンゼン、シュウ酸ジスチリル、マロン酸ジスチリル、コハク酸ジスチリル、グルタル酸ジスチリル、アジピン酸ジスチリル、マレイン酸ジスチリル、フマル酸ジスチリル、β,β−ジメチルグルタル酸ジスチリル、2−ブロモグルタル酸ジスチリル、α,α’−ジクロログルタル酸ジスチリル、テレフタル酸ジスチリル、シュウ酸ジ(エチルアクリレート)、シュウ酸ジ(メチルエチルアクリレート)、マロン酸ジ(エチルアクリレート)、マロン酸ジ(メチルアクリレート)、コハク酸ジ(エチルアクリレート)、グルタル酸ジ(エチルアクリレート)、アジピン酸ジ(エチルアクリレート)、マレイン酸ジ(ジエチルアクリレート)、フマル酸ジ(エチルアクリレート)、エチレンジアクリルアミド、プロピレンジアクリルアミド、1,4−フェニレンジアクリルアミド、1,4−フェニレンビス(オキシエチルアクリレート)、1,4−フェニレンビス(オキシメチルエチルアクリレート)、1,4−ビス(アクリロイルオキシメチルエトキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(アクリロイルオキシエトキシカルバモイル)ベンゼン、1,4−ビス(アクリロイルオキシメチルエトキシカルバモイル)ベンゼン、1,4−ビス(アクリロイルオキシエトキシカルバモイル)シクロヘキサン、ビス(アクリロイルオキシエトキシカルバモイルシクロヘキシル)メタン、シュウ酸ジ(エチルメタクリレート)、シュウ酸ジ(メチルエチルメタクリレート)、マロン酸ジ(エチルメタクリレート)、マロン酸ジ(メチルエチルメタクリレート)、コハク酸ジ(エチルメタクリレート)、アジピン酸ジ(エチルメタクリレート)、マレイン酸ジ(エチルメタクリレート)、フマル酸ジ(エチルメタクリレート)、β,β’−ジメチルグルタル酸ジ(エチルメタクリレート)、1,4−フェニレンビス(オキシエチルメタクリレート)、1,4−ビス(メタクリロイルオキシエトキシ)シクロヘキサンアクリロイルオキシエトキシエチルビニルエーテル等の二価の単量体;例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリ(ヒドロキシスチレン)、シアヌル酸トリアクリレート、シアヌル酸トリメタクリレート、1,1,1−トリメチロールプロパントリアクリレート、1,1,1−トリメチロールプロパントリメタクリレート、シアヌル酸トリ(エチルアクリレート)、1,1,1−トリメチロールプロパントリ(エチルアクリレート)、シアヌル酸トリ(エチルビニルエーテル)、1,1,1−トリメチロールプロパンと3倍モルのトルエンジイソシアネートとの反応物とヒドロキシエチルアクリレートとの縮合物、1,1,1−トリメチロールプロパンと3倍モルのヘキサンジイソシアネートとの反応物とp−ヒドロキシスチレンとの縮合物等の三価単量体;例えばエチレンテトラアクリルアミド、プロピレンテトラアクリルアミド等の四価の単量体等、さらには、オリゴマー又はポリマーの末端に反応性ビニル基を残した重合性ポリマー前駆体あるいはオリゴマー又はポリマーの側鎖に反応性ビニル基をつけた重合性ポリマー前駆体等を挙げることができる。なお、前述のようにこれらの重合性ポリマー前駆体を2種以上用いてもよい。
【0037】熱現像性要素に含有される光重合開始剤としては、例えばカルボニル化合物、イオウ化合物、ハロゲン化合物、レドックス系重合開始剤等が挙げられる。
【0038】具体的には、カルボニル化合物としては、例えばベンジル、4,4’−ジメトキシベンジル、ジアセチル、カンファーキノン等のジケトン類;例えば4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;例えばアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン類;例えばベンゾインアルキルエーテル類;例えば2−クロロチオキサントン、2,5−ジエチルチオキサントン、チオキサントン−3−カルボン酸−β−メトキシエチルエステル等のチオキサントン類;ジアルキルアミノ基を有するカルコン類及びスチリルケトン類;3,3’−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)等のクマリン類等が挙げられる。
【0039】イオウ化合物としてはジベンゾチアゾリルスルフィド、デシルフェニルスリフィド等のジスルフィド類等が挙げられる。
【0040】ハロゲン化合物としては、例えば四臭化炭素、キノリンスルホニルクロライド、トリハロメチル基を含有するS−トリアジン類等が挙げられる。
【0041】レドックス系の光重合開始剤としては、三価の鉄イオン化合物(例えばクエン酸第二鉄アンモニウム)と過酸化物等を組合せて用いるものや、リボフラビン、メチレンブルー等の光還元性色素とトリエタノールアミン、アスコルビン酸等の還元剤を組合せて用いるもの等が挙げられる。
【0042】また以上に述べた光重合開始剤において、2種以上を組合せてより効率のよい光重合反応を得ることができる。
【0043】このような光重合開始剤の組合せとしては、ジアルキルアミノ基を有するカルコン及びスチリルスチリルケトン類、クマリン類とトリハロメチル基を有するS−トリアジン類、カンファーキノンとの組合せ等が挙げられる。
【0044】これらの重合開始剤もその2種以上を併用したり、上述の化合物と組合せて用いてもよい。
【0045】この場合、重合性化合物、光重合開始剤を単一の要素層に含有させることができるが上記要素の層と重合性化合物及び光重合開始剤とを別個の層にして多層としてもよい。この層は積層された状態でも、さらには要素層と分離させた状態であってもよい。
【0046】上記の構成の乾式銀塩感光体を製造するに際しては、乾式銀塩感光体組成物を溶剤に溶解又は分散させて、支持体上に塗工する等の方法が採用できる。
【0047】上記溶剤としては、例えばケトン類としてアセトン、イソフォロン、エチルアミルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が、アルコール類としてメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等が、グリコール類としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等が、エーテルアルコール類としてエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が、エーテル類としてエチルエーテル、ジオキサン、イソプロピルエーテル等が、エステル類として酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソプロピル等が、炭化水素類としてn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が、塩化物類として塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロルベンゼン等が、アミン類としてモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン等が、その他として水、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、ピリジン、トルイジン、テトラヒドロフラン、酢酸等が好ましいが、これらに限定されるものではない。また、これらの溶剤は単独、又は数種類組み合せて使用してもかまわない。
【0048】また塗工後の乾燥は30℃〜150℃の熱風を吹き付けて乾燥することが好ましい。
【0049】本発明においては、上記のようにして構成される乾式銀塩感光体の熱現像性感光要素の層中の溶剤の合計量(重量基準)が30〜5000ppmとなるようにするものである。
【0050】熱現像性感光要素の層中の溶剤量の調整は、例えば感光要素を上記塗工により形成する場合には、塗工後の乾燥工程において、熱風の温度、吹き付け時間等を適宜選択することにより調整できる。
【0051】本発明の感光体に像露光すると同時にあるいはしたのちに、加熱することにより、露光部が現像される。第1工程の露光は400〜900nmの波長を含む光で行なうことができる。露光の光源としては、LED、ガスレーザー、半導体レーザー、Xeランプ、Wランプ、太陽光、などが用いられる。
【0052】第2工程の加熱する工程は、像露光と同時に、あるいは像露光の後に実施してもよい。加熱については感光体を80℃から160℃までの温度範囲で、1秒から3分間、好ましくは90℃から140℃までの温度範囲で、3秒以上90秒以下で加熱する。加熱手段としては、ホットプレート、ヒートロール、サーマルヘッド等を使用することができる。さらに支持体に発熱素子をつけ、通電加熱してもよい。
【0053】本発明の乾式銀塩感光体が重合性化合物を有するものである場合には、第3工程である全面露光の重合露光は300nmから600nmの波長光を用いる。光源としてはハロゲンランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、水銀灯、蛍光灯、レーザー等がある。
【0054】このようにして形成された重合画像を重合部と未重合部に分離する方法として感光体をエッチング処理する方法、あるいは剥離により重合部と未重合部に分離する方法、あるいはマイクロカプセルを使用した場合等によく適用される加圧による受像体への転写方法などがある。
【0055】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜3,比較例1,2)下記処方により乾式銀塩感光体分散液を調製した。
【0056】
ポリビニルブチラール 3.0部 ベヘン酸銀 2.5部 ベヘン酸 1.5部 ホモフタル酸 0.6部 臭化銀 0.3部 フタラジノン 0.5部 2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)
2.4部 キシレン 15 部 n−ブタノール 15 部上記組成物のうち、臭化銀は臭化銀結晶の面指数{100}の立方晶のものであって、その結晶の1辺の平均長さは0.07μmであった。
【0057】上記分散液に更に下記構造の色素0.03部をジメチルホルムアミド(DMF)5.0部にとかして添加し分散液を得た。
【0058】
【化5】


色素を添加したこの分散液をポリエチレンテレフタレートフィルム上に乾燥条件を種々変えて塗工し熱風乾燥時間を変化させて溶剤の残存量を変化させた。乾燥膜厚は12μmにした。更に感光要素の層の上面に厚さ2μmのポリビニルアルコールの保護層を設け本発明の感光体(実施例1〜3)と、比較のための感光体(比較例1〜2)を得た。得られた感光要素中の溶剤の残存量はガスクロマトグラフィーで測定した。
【0059】
【表1】


<評価>680nmの半導体レーザーが組込まれたポリゴンスキャン型露光機(スポット径20μm×40μm、1.67×10-7sec/dot、像画照度3.8mW)を用いて像露光し、種々の温度に調節した熱現像機で10秒間加熱し、露光部と未露光部の光学濃度を測定した。結果を表2に示した。表2中の分数は、左上の数値が露光部の光学濃度で、右下の数値が未露光部の光学濃度(かぶり濃度)を示している。
【0060】
【表2】


表2より判るように、残存溶媒量が5000ppmを越える比較例1はかぶり濃度が高く、又残存溶媒量が50ppm以下である比較例2は画像部(露光部)の濃度が実施例に比べて低かった。
【0061】また、実施例1で用いた感光体と、比較例1で用いた感光体とを強制経時試験に供した。50℃、相対湿度80%の環境に24時間放置したものを評価した。その結果、実施例1の感光体は表2に記載されたものと同等の性能を保有していたが、比較例1の感光体はかぶり濃度が増加し、コントラスト差が生じなかった。
【0062】
【発明の効果】本発明の乾式銀塩感光体は、熱現像性感光要素の層中の溶剤量を30〜5000ppmにしたので、かぶり濃度が低く、かつ使用前の保存安定性が良好なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体上に少なくとも(a)有機銀塩、(b)還元剤、(c)感光性ハロゲン化銀、及び、又は感光性ハロゲン化銀形成形分、(d)バインダーからなる熱現像性感光要素を一層若しくは多層に形成してなる乾式銀塩感光体において、前記熱現像性感光要素が溶剤を合計量(重量基準)で30〜5000ppm含有してなることを特徴とする乾式銀塩感光体。

【公開番号】特開平6−301140
【公開日】平成6年(1994)10月28日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−90020
【出願日】平成5年(1993)4月16日
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(000103862)オリエンタル写真工業株式会社 (3)