説明

乾式除湿機

【目的】 本発明は、乾式除湿機に関するものである。
【構成】 本発明は、一側に処理空気吸入口と処理空気排出口を設け、他側に再生空気吸入口と再生空気排出口とを設けたケース中に、ドーナツ状の円板を多層に積層して形成した多層円板ファンを収納し、しかも同多層円板ファンの回転を正逆切替えることができるように構成することにより、多層円板ファンの回転方向に応じてケース中に形成した処理空気流路と再生空気流路とのいずれか一方の流路のみに空気流通が行われるように構成すると共に、多層円板ファンの前後基礎円板上にガイド羽根を設け、同ガイド羽根に空気ファン入口を形成した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、乾式除湿機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、乾式除湿機として、除去すべき空気中に含まれる水分をファンに担持させた除湿剤で吸収して除湿すると共に、吸湿した除湿剤はヒータ加熱による乾燥空気と接触させて吸湿剤から吸着水分を除去して再生させるようにしたものがある。
【0003】このように、乾式除湿機では、ファンに担持させた除湿剤で湿気を吸収して、乾燥空気で除湿剤を再生するために、除湿空気の流路と再生空気の通路とを切替えるダンパが設けられており、除湿作業中には、再生空気の通路はダンパで閉塞し、再生作業中には除湿空気の通路を閉塞するように互いに各通路に除湿空気あるいは再生空気が混入しないように配慮されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、このような乾式除湿機においては、ダンパを用いて通路の切替を行うために通路の切替の駆動部品が必要になるために、構造上複雑となり、全体容積もコンパクトにできない欠点があった。
【0005】更にはダンパを用いずに通路切替の駆動部品を形状記憶合金等を利用しておこなうことも考えられるが(特開平2-194870参照)、応答速度が遅く、切替が瞬時に行えない欠点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明では、一側に処理空気吸入口と処理空気排出口を設け、他側に再生空気吸入口と再生空気排出口とを設けたケース中に、ドーナツ状の円板を多層に積層して構成し、該円板に除湿剤を担持させて形成した多層円板ファンを収納し、しかも同多層円板ファンの回転を正逆切替えることができるように構成することにより、多層円板ファンの回転方向に応じてケース中に形成した処理空気流路と再生空気流路とのいずれか一方の流路のみに空気流通が行われるように構成したことを特徴とする乾式除湿機を提供せんとするものである。
【0007】また、本発明では、中心部にそれぞれ処理空気吸入開口、再生空気吸入開口を開口し、各空気吸入開口には空気流入のガイドを行うガイド羽根を突設すると共に、ガイド羽根の突設位置を前後基礎円板において、空気吸入開口に対しそれぞれ逆向きにしたことにも特徴を有する。
【0008】
【実施例】本発明の実施例を図面に基づき説明する。
【0009】図1は、本発明に係る乾式除湿機Kの一部切欠斜視図であり、図2は同平面図であり、図3は同正面図であり、図4は同断面平面図である。
【0010】乾式除湿機Kの用途しては、食品乾燥庫、ユニットバス乾燥、下駄箱の乾燥、おし入れ乾燥等に用いられるもので、その構造は次の通りである。
【0011】図1〜図4に示すように、乾式除湿機Kは、箱状のケース1と、同ケース1中に収納される多層円板ファンFと、同ファンFを駆動するためのモータMと、除湿剤30再生用のヒータ8と多層円板ファンFをカバーするファンケースF1と、該ファンケースF1に連通連設するダクト9とより構成されている。
【0012】ケース1は、ケース前側板1aの中央部全面に再生空気吸入口20を、左側下方には再生空気排出口21を開口しており、またケース後側板1bの中央部左右には処理空気吸入口10を、右側下方には処理空気排出口11を開口しており、それぞれの空気吸入口10,20 は網状のフィルタでカバーされ、それぞれの空気排出口11,21 はスリット状に形成されている。
【0013】また、ケース1の内部には、同ケース1を前後に区画するように、仕切板4が配設され、該仕切板4中央にファンケースF1が付設されている。
【0014】また、ファンケースF1の底部には、ケース1の内底部に対角線状に配設したダクト9の中央天井部が連通連設されており、該ダクト9の一端はファンケースF1の左斜め前方向に伸延して、ケース前側板1aの左下に開口した再生空気排出口21に連通し、他端はファンケースF1から右斜め後方向に伸延して、ケース後側板1bに開口した処理空気排出口11に連通している。
【0015】なお、図1中、12は操作パネルであり、また、図4中、9a,9b,9c,9d は空気の流れを導くべくダクト9内部に配設した整流板である。
【0016】ファンケースF1は短い筒状体よりなり、ファンケースF1の前後側にそれぞれ再生空気ケース入口17、処理空気ケース入口18を開口しており、ファンケースF1の底部には空気ケース排出口19が穿設され、空気ケース排出口19と上述したダクト9の中央天井部とが連通連設されている。
【0017】従って、ケース1中には、処理空気吸入口10から、多層円板ファンFを介してダクト9内の流路から処理空気排出口11に至るまでの処理空気流路R1と、再生空気吸入口20から、多層円板ファンFを収納するファンケースF1を介してダクト9内の流路から再生空気排出口21に至るまでの再生空気流路R2とが形成されていることになり、処理空気流路R1及び再生空気流路R2は多層円板ファンFを収納したファンケースF1においてのみ流路として交叉して、他の部分では両流路中の空気が混合されることがないように密閉状に区画形成されている。
【0018】モータMは、ケース1の前側板1aに固設され、出力軸3によって多層円板ファンFと連設され、しかも同モータMは正逆回転の切替が可能に構成されている。
【0019】ヒータ8は、再生空気流路R2の中途でケース1のケース後側板1bと多層円板ファンFの間に配設されており、通電により加熱可能なセラミックヒータを用いている。
【0020】多層円板ファンFは、図2及び図3に示すように、ドーナツ状の円板2を一定の間隔dを保持して前後基礎円板5,6間に多数に積層することにより、各円板2,2間に薄い空気の層としての空気薄層eを形成して構成しており、しかも前後基礎円板5,6は、モータMの出力軸3先端と連設されてモータMの作動により回転するように構成されている。かかる多層円板ファンFは、ケース1の内部中央に配設したファンケースF1中に収納されている。なお、50は各円板2を多層に連結するための連結ピンである。
【0021】かかる多層円板ファンFの前後基礎円板5,6には、それぞれ空気吸入開口40,41 が穿設されており、該空気吸入開口40,41 の一側にはそれぞれガイド羽根40a,41a が突設されている。
【0022】即ち、かかるガイド羽根40a,41a は前後基礎円板5,6上の中央近傍に、中心から90°の間隔でそれぞれ同一方向に開口部を向けて4個づつ打起し状に成形されており、打起しにより形成された開口部はそれぞれ処理空気吸入開口41及び再生空気吸入開口40を形成しており、しかも打起しにより形成されたガイド羽根40a,41a の突設位置は前基礎円板5と後基礎円板6とにおいて、空気吸入開口40,41 に対して互いに逆向きとなっている。
【0023】即ち、前基礎円板5上に設けられた再生空気吸入開口41は右回り(時計回り)方向に開口すべくガイド羽根41a が開口部の左側端縁に突設され、後基礎円板6上に設けられた処理空気吸入開口40は左回り(反時計回り)方向に開口すべくガイド羽根40a が開口部の右側端縁に突設されている。
【0024】従って、多層円板ファンFの回転方向により、空気の多層円板ファンF内への流入は、前基礎円板5の再生空気吸入開口41か、後基礎円板6の処理空気吸入開口40かのどちらか一方から吸入されることになる。
【0025】また、各円板2の両側面には、処理空気中の水分を吸収して除湿するためのシリカゲル等の除湿剤30を担持させている。
【0026】ここで担持とは、含浸、塗布、あるいは材料そのものが除湿剤30で形成されるものを指している。
【0027】除湿剤30は、両側面ではなく一側面のみに担持させることも可能であり、また各円板2に除湿剤30を担持させるのではなく、円板2自体を除湿機能を有した不織紙等で成形することもでき、また各円板2を繊維質材料で形成し、除湿剤30を各円板2に含浸させて多層円板ファンFを形成することもできる。
【0028】そして、除湿剤30としては、上記したシリカゲルの他、ゼオライト、塩化カルシウム、活性アルミナ等がある。
【0029】なお、図中Wは乾式除湿機Kを取付けるための壁である。
【0030】本発明の実施例は上記のように構成されており、しかも本実施例の乾式除湿機Kの設置に際しては、ケース1のケース後側板1b側を除湿の必要な空間(庫内)に向け、ケース1のケース前側板1aを庫外へ向けて装置している。
【0031】かかる乾式除湿機Kの作動について説明すると、以下の通りである。
【0032】即ち、除湿作業を行う場合には、図1においてモータMを左回り(反時計回り)に回転作動させることにより、多層円板ファンFを左回りに回転させる。
【0033】多層円板ファンFが回転すると、円板2の間に形成された空気薄層eが円板との摩擦力によって、やはり左回りに回転を始め、その回転によって生じる遠心力により、空気は外側に移動することになり、漸次円板2の外側から、ファンケースF1の底部に設けられた空気ケース排出口19に流出し、ダクト9内へ流入する。その流出方向は回転方向により定められるために、ケース後側板1bに開口している処理空気排出口11方向へ流れるものである。
【0034】このように、円板2間から空気が排出されると各円板2間は、その上流側に対して負圧となるので、処理空気流路R1中の空気は、各円板2間に連続的に流入して空気薄層eを形成し、上述の作用によって排出されることになる。
【0035】かかる作用が連続して行われるために、除湿されるべき庫内の空気は後基礎円板6に開口した処理空気吸入開口40から連続的に吸入されることになる。
【0036】しかも、該処理空気吸入開口40の端縁に突設したガイド羽根40a により、空気は効率良く処理空気吸入開口40へと導かれれることになる。
【0037】上記した基本的な処理空気の流れの途中で、多層円板ファンF内に吸込まれた空気は円板2に担持された除湿剤30により除湿されることになる。
【0038】即ち、本実施例では、多層に積層された円板2に除湿剤30を担持させた構成としており、処理空気を、同空気と円板2との間の摩擦力によって遠心力を発生させ移動するようにしているので、湿り空気と除湿剤30との接触面積を十分に確保することができ、除湿効率を高めることができる。
【0039】そして多層円板ファンFは左回りに回転しているので、同ファンF内の空気の流れも同方向に向いており、ダクト9の処理空気排出口11方向に集まることになり、除湿された処理空気は処理空気排出口11より排出される。
【0040】また、この時、前基礎円板5上に開口されたガイド羽根41a の再生空気ファン入口41は、多層円板ファンFの回転方向(左回り)と逆向きに開口しているので、再生空気吸入口20からの空気は多層円板ファンF内には流入しない。
【0041】一方、除湿剤30の再生作業を行う場合には、モータMを右回り(時計回り)に回転させることにより多層円板Fを右回り(時計回り)に回転させると、上記した空気の流れとは逆に、処理空気吸入口10からの空気は多層円板ファンF内には流入せず、再生用の空気がファンF内に流入することになる。
【0042】即ち、再生空気吸入口20から吸入された空気は、ヒータ8によって加熱・乾燥され、後基礎円板5上に設けられた再生空気吸入開口40から多層円板ファンF内に流入し、環状円板2に担持された除湿剤30の水分を除去して再生させながら、ダクト9の再生空気排出口21方向に流れ、同排出口21より排出される。
【0043】多層円板ファンFの回転方向を除湿作業と除湿剤30の再生作業とに正逆切換えるタイミングとしては、除湿剤30の水分の飽和状態に至るまでの時間に合せたタイマ作動によるものである。
【0044】従って、防湿剤30は定期的に再生され、長寿命の除湿効果を維持できる。
【0045】このように、多層円板ファンFの回転方向により、処理空気と再生空気はそれぞれ混合されることなく処理空気流路R1と再生空気流路R2とを流通するように切替えることができ、従って、流路切替用の駆動部材が不要となり、安価でコンパクトな設計が可能となる。
【0046】しかも多層円板ファンFを使用しているために静音化が図れ、更に同ファンFにガイド羽根40a,41a を設けたことによって、空気の多層円板ファンF内への吸入効率を高め、従って、送風効率を高めることができる。
【0047】
【発明の効果】多層円板ファンの回転を正逆切替えることができるように構成し、同ファンの回転方向に応じて処理空気の流路と再生空気の流路とのいずれか一方にのみ空気が流れるように構成したことで、流路切替用の駆動部材が不要となり、安価で、コンパクトで、しかも機器の信頼性の高い除湿機の提供が可能となる。
【0048】また、多層円板ファンを用いたことで静かとなり、更にファンの入口部に設けたガイド羽根によって空気の多層円板ファンF内への吸入効率を高め、従って送風効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る乾式除湿機Kの一部切欠斜視図。
【図2】同一部切欠平面図。
【図3】同一部切欠正面図。
【図4】図3のI-I 線における断面図。
【符号の説明】
1 ケース
2 円板
5 前基礎円板
6 後基礎円板
10 処理空気吸入口
11 処理空気排出口
20 再生空気吸入口
21 再生空気排出口
40,41 空気吸入開口
40a,41a ガイド羽根
F 多層円板ファン
R1 処理空気流路
R2 再生空気流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一側に処理空気吸入口(10)と処理空気排出口(11)を設け、他側に再生空気吸入口(20)と再生空気排出口(21)とを設けたケース(1) 中に、ドーナツ状の円板(2) を多層に積層して構成し、該円板(2) に除湿剤(30)を担持させた多層円板ファン(F) を収納し、しかも同多層円板ファン(F) の回転を正逆切替えることができるように構成することにより、多層円板ファン(F) の回転方向に応じてケース(1) 中に形成した処理空気流路(R1)と再生空気流路(R2)とのいずれか一方の流路のみに空気流通が行われるように構成したことを特徴とする乾式除湿機。
【請求項2】 中心部にそれぞれ処理空気吸入開口(40)、再生空気吸入開口(41)を開口し、各空気吸入開口(40),(41) には空気流入のガイドを行うガイド羽根(40a),(41a) を突設すると共に、ガイド羽根(40a),(41a) の突設位置を前後基礎円板(5),(6) において、空気吸入開口(40),(41) に対しそれぞれ逆向きにしたことを特徴とする請求項1記載の乾式除湿機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平5−200232
【公開日】平成5年(1993)8月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−13409
【出願日】平成4年(1992)1月28日
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)