説明

乾溜ガス化焼却処理装置

【課題】燃焼炉における安定した燃焼を維持しながら燃焼排気の熱量の再回収を可能とするこができる乾溜ガス化焼却処理装置を提供する。
【解決手段】燃焼炉3は、バーナ部18に燃焼酸素供給路20を介して酸素が供給されると共に、燃焼部19に燃焼排気循環路23を介して燃焼排気が供給される。このとき、酸素の供給量と燃焼排気の供給量とが制御装置14により、廃棄物Aへの着火から燃焼炉3内の温度が設定温度となるまでの第1段階においては、酸素のみが供給され、燃焼炉3内の温度が設定温度に維持される第2段階においては、酸素の供給量を減少させつつ燃焼排気の供給量を増加させるように制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を収納すると共に、廃棄物の一部を燃焼させつつ燃焼熱により廃棄物の残部を乾溜して可燃性ガスを生じさせる乾溜ガス化炉に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物は、その成分が塩化ビニールなどの塩素分を多く含むものが多くなっているため、これらを焼却する焼却処理装置では、焼却の際に、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、ダイオキシン類等の大気汚染物質が発生し得る。そのため、これらの大気汚染物質に対しては、排出量を抑制する一定の環境基準が策定されている。
【0003】
特に、廃棄物の焼却処理に伴って発生するダイオキシン類は、塩素分を含む廃棄物を250〜350℃程度の温度で燃焼させると、前記廃棄物から遊離する前記塩素と、樹脂等の不完全燃焼により生成する炭化水素とが、該廃棄物中に含まれる重金属を触媒として反応することによりダイオキシン類が生成するというものである。
【0004】
前記廃棄物の焼却処理によるダイオキシン類の排出を防止するためには、前記廃棄物を800℃以上の温度に2秒間以上滞留させて、生成したダイオキシン類を完全に熱分解させることが有効であるとされている。
【0005】
ところで、本出願人は、先にダイオキシン類の排出を防止しつつ廃タイヤ等の廃棄物を焼却処理する装置として、該廃棄物を収納すると共に、該廃棄物の一部を燃焼させつつ、その燃焼熱により該廃棄物の残部を乾溜して可燃性ガスを生ぜしめる乾溜炉と、該可燃性ガスを該乾溜炉から導入して完全燃焼させる燃焼炉とを備える乾溜ガス化焼却処理装置を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
前記装置では、燃焼炉内の温度を他の燃料の燃焼によりダイオキシン類の熱分解が可能とされる800℃以上に暖気した上で、廃棄物に着火して可燃性ガスを発生させ、発生した可燃性ガスを他の燃料と共に燃焼炉に燃焼させる。そして、可燃性ガスのみの燃焼で燃焼炉の温度が800℃より高温の安定温度を維持できるようになったときに他の燃料の燃焼を終了する。これにより、廃棄物の乾溜開始後、可燃性ガスが燃焼炉で自発的に安定して燃焼を継続するようになるまでの段階において、燃焼炉内の温度を800℃以上としてダイオキシン類の排出を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4005770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記装置では、燃焼炉内で燃焼された可燃性ガスの燃焼排気は、ボイラ等による熱回収と無害化のための排ガス処理が施され、約200℃で全て煙突から放出される。そのため、可燃性ガスが有する燃焼熱量の一部は、ボイラ等により熱回収されることなくそのまま排気される。そのため、煙突から排気される燃焼排気の熱量を再回収することが望まれている。
【0009】
ここで、燃焼排気を燃焼炉内に戻して、煙突から排気される燃焼排気の熱量を再回収することも考えられるが、燃焼炉内が低酸素雰囲気下となってしまい、燃焼炉における安定した燃焼を実現することはできない。
【0010】
そこで、本発明は、以上の事情に鑑みて、燃焼炉における安定した燃焼を維持しながら燃焼排気の熱量の再回収を可能とするこができる乾溜ガス化焼却処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明の乾溜ガス化焼却処理装置は、
廃棄物を収納すると共に、該廃棄物の一部を燃焼させつつ該燃焼熱により該廃棄物の残部を乾溜して可燃性ガスを発生させる乾溜炉と、該乾溜炉から導入される該可燃性ガスを燃焼させる燃焼炉と、該燃焼炉に導入される該可燃性ガスの燃焼に要する酸素を燃焼炉に供給する燃焼酸素供給手段と、該燃焼炉内における温度を検知する燃焼炉温度検知手段と、該燃焼炉における該可燃性ガスの燃焼が開始された後に該燃焼炉温度検知手段により検知される該燃焼炉内の温度を予め設定された設定温度に維持するように該乾溜炉への酸素供給量を調整しつつ該廃棄物の一部の燃焼に必要な酸素を該乾溜炉に供給する乾溜酸素供給手段とを備えた乾溜ガス化焼却処理装置であって、
前記燃焼酸素供給手段は、前記燃焼炉に、酸素を供給する第1供給手段と、前記燃焼炉内で燃焼された前記可燃性ガスの燃焼排気を供給する第2供給手段と、該第1供給手段により供給する酸素の供給量と該第2供給手段により供給する燃焼排気の供給量とを制御する供給制御手段とを有し、
前記供給制御手段は、前記廃棄物への着火から前記燃焼炉内の温度が前記設定温度に維持されるようになるまでの第1段階において、前記第1供給手段により酸素を前記燃焼炉へ供給すると共に、該燃焼炉内の温度が前記設定温度となる第2段階において、前記第1供給手段による酸素の供給量を減少させつつ前記第2供給手段による前記燃焼排気の供給量を増加させることを特徴とする。
【0012】
第1発明の乾溜ガス化焼却処理装置によれば、廃棄物への着火から燃焼炉内の温度が予め設定された設定温度となるまでの第1段階においては、第1供給手段により酸素が燃焼炉に供給される。このように、可燃性ガスの発生量が安定しない第1段階においては、燃焼排気を燃焼炉内に供給しないことで、燃焼炉内が低酸素雰囲気下となって安定した燃焼が阻害されることを回避することができる。
【0013】
次に、燃焼炉内の温度が前記設定温度となる第2段階においては、第2供給手段により燃焼排気が燃焼炉内に供給されることで、外部へ排気されてしまう燃焼排気の熱量をボイラ等で再回収することが可能となる。さらに、このとき、第1供給手段による酸素の供給量を減少させつつ第2供給手段による燃焼排気の供給量を増加させることで、燃焼排気の燃焼炉内への導入が外乱となることを防止して、燃焼炉内の安定した燃焼状態が阻害されることを回避することができる。
【0014】
このように第1発明の乾溜ガス化焼却処理装置によれば、燃焼炉における安定した燃焼を維持しながら燃焼排気の熱量の再回収を可能とするこができる。
【0015】
第2発明の乾溜ガス化焼却処理装置は、第1発明において、
前記供給制御手段は、前記第2段階において、前記設定温度が維持されることを条件として、前記第1供給手段による酸素の供給量を減少させつつ前記第2供給手段による前記燃焼排気の供給量を増加させることを特徴とする。
【0016】
第2発明の乾溜ガス化焼却処理装置によれば、燃焼炉内の温度が予め設定された設定温度に維持されることを条件として、燃焼排気を燃焼炉に供給することで、燃焼排気が急激に燃焼炉内に供給されることにより、燃焼炉内の温度が低下して安定した燃焼が阻害されることを回避することができる。
【0017】
さらに、設定温度をボイラ等の熱回収手段に適した温度とすることで、燃焼排気の熱量をボイラ等で高効率に回収することが可能となる。
【0018】
第3発明の乾溜ガス化焼却処理装置は、第1または第2発明において、
前記供給制御手段は、前記第1供給手段による酸素の供給量および前記第2供給手段による前記燃焼排気の供給量により決定される定常状態としての第3段階において、前記燃焼炉内の温度が前記所定温度に維持され、且つ、前記燃焼排気中の酸素濃度が所定値となるように、前記第1供給手段による酸素の供給量と前記第2供給手段による前記燃焼排気の供給量との供給割合を決定することを特徴とする。
【0019】
第3発明の乾溜ガス化焼却処理装置によれば、第2段階の過渡状態を経て実現される定常状態としての第3状態において、この定常状態が燃焼炉内の温度が前記所定温度に維持され、且つ、燃焼排気中の酸素濃度が所定値となるように、第1供給手段による酸素の供給量と第2供給手段による燃焼排気の供給量との供給割合が決定される。これにより、定常状態において、燃焼排気中の酸素濃度が所定値となるような安定した燃焼状態を実現することができ、燃焼炉内が低酸素雰囲気下となって安定した燃焼が阻害されることを回避することができる。さらに、設定温度に燃焼炉の温度が維持されることで、該設定温度をボイラ等の熱回収手段に適した温度として、燃焼排気の熱量をボイラ等で高効率に回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の乾溜ガス化焼却処理装置の一実施形態を示すシステム構成図。
【図2】弁開度と燃焼炉内の温度と燃焼排気の酸素濃度の経時変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように、本実施形態の廃棄物の乾溜ガス化焼却処理装置は、廃紙、廃木材、廃プラスチック等を主とする各種廃棄物の混合物である廃棄物Aを収容する乾溜炉1と、該乾溜炉1にガス通路2を介して接続される燃焼炉3とを備える。乾溜炉1の上面部には、開閉自在な投入扉4を備える投入口5が形成され、投入口5から廃棄物Aを乾溜炉1内に投入可能とされている。そして、乾溜炉1はその投入扉4を閉じた状態では、その内部が実質的に外部と遮断されるようになっている。
【0022】
乾溜炉1の外周部には、その冷却構造として、乾溜炉1の内部と隔離されたウォータージャケット6が形成されている。ウォータージャケット6は、図示しない給水装置により給水され、内部の水量が所定水位に維持されるようになっている。
【0023】
乾溜炉1の下部は下方に突出した円錐台形状に形成され、その円錐台形状の下部の外周部には、乾溜炉1の内部と隔離された空室7が形成されている。この空室7は、乾溜炉1の内壁部に設けられた複数の給気ノズル8を介して、乾溜炉1の内部に連通している。
【0024】
乾溜炉1の下部の前記空室7には、乾溜酸素供給路9が接続されている。乾溜酸素供給路9は、空気供給路10を介して押込ファン等により構成された空気供給源11に接続されている。乾溜酸素供給路9には制御弁12が設けられ、制御弁12は弁駆動器13によりその開度が制御されるようになっている。この場合、弁駆動器13は、CPU等を含む電子回路により構成された制御装置14により制御される。
【0025】
さらに、乾溜炉1の下側には、制御装置14に制御されて、乾溜炉1に収容された廃棄物Aに着火するための着火装置15が取り付けられている。着火装置15は点火バーナ等により構成され、重油等の燃料が貯留されている燃料供給装置16から燃料供給路17を介して供給される燃料を燃焼させることにより、廃棄物Aに燃焼炎を供給する。
【0026】
燃焼炉3は、廃棄物Aの乾溜により生じる可燃性ガスとその完全燃焼に必要な酸素(空気)とを混合するバーナ部18と、酸素と混合された可燃性ガスを燃焼せしめる燃焼部19とからなり、燃焼部19はバーナ部18の先端側で該バーナ部18に連通している。バーナ部18の後端部には、ガス通路2が接続され、乾溜炉1における廃棄物Aの乾溜により生じた可燃性ガスがガス通路2を介してバーナ部18に導入される。
【0027】
バーナ部18の外周部には、その内部と隔離された第1空室21が形成され、該第1空室21はバーナ部18の内周部に穿設された複数のノズル孔21aを介してバーナ部18の内部に連通している。第1空室21には、空気供給路10から分岐する燃焼酸素供給路20が接続されている。燃焼酸素供給路20には制御弁21bが設けられ、制御弁21bは弁駆動器21cによりその開度が制御されるようになっている。この場合、弁駆動器21cは、前記制御装置14により制御される。
【0028】
さらに、燃焼部19の後端側の外周部には、第1空室21と隣接する位置に第2空室22が形成されており、該第2空室22は燃焼部19の内周部に穿設された複数のノズル孔22aを介して燃焼部19の内部に連通している。第2空室22には、後述するダクト26cから分岐する燃焼排気循環路23が接続されている。燃焼排気循環路23には制御弁22bが設けられ、制御弁22bは弁駆動器22cによりその開度が制御されるようになっている。この場合、弁駆動器22cは、前記制御装置14により制御される。
【0029】
バーナ部18の後端部には、制御装置14に制御されて、燃料供給装置16から燃料供給路17を介して供給される重油等の燃料を燃焼させる燃焼装置25(本発明の燃焼手段に相当する)が取り付けられている。燃焼装置25は点火バーナ等により構成され、前記燃料の供給量を段階的に調整しながら燃焼させる。例えば、本実施形態の燃焼装置25では、燃料の供給量が多い高温燃焼と燃料の供給量が少ない低温燃焼とが切り替え可能となっている。尚、燃焼装置25はバーナ部18に導入された可燃性ガスに着火する場合にも用いられる。
【0030】
燃焼部19の先端部には、燃焼炉3内で燃焼された燃焼排気を冷却する冷却炉(温水ボイラ)27が取り付けられている。冷却炉27には図示しない給水装置により給水され、廃棄物の燃焼熱を利用して冷却炉27で加熱された温水を空調等に利用できるようにしている。
【0031】
冷却炉27の出口側には、冷却された後の燃焼排気を排出するダクト26aが設けられており、ダクト26aは冷却塔28の一端の端部に接続されている。
【0032】
冷却塔28は、冷却炉27からの燃焼排気に散水するスプレー28aを備えており、スプレーに冷却水を供給する図示しない給水装置および空気圧縮機とが接続されている。
【0033】
冷却塔28の他方の端部は、ダクト26bを介してバグフィルタ29の一方の端部に接続されており、冷却塔28からバグフィルタ29に送られる燃焼排気には消石灰29aおよび活性炭29bが混合され、脱硫および脱臭が行われる。
【0034】
バグフィルタ29は、図示しないフィルタ部と、フィルタ部によって排ガスから分離された灰等を回収する回収部とを備え、フィルタ部にはその清浄のための空気圧縮機が接続されている。
【0035】
バグフィルタ29の他方の端部は、ダクト26cを介して煙突30に接続されている。バグフィルタ29と煙突30との間には、燃焼炉3内の燃焼排気をダクト26a〜26cを介して煙突30に誘引する誘引ファン31が設けられており、誘引ファン31を介して煙突30から燃焼排気が大気中に排出される。さらに、ダクト26cは誘引ファン31の下流側が分岐しており、その分岐部に燃焼排気循環路23が接続されている。
【0036】
誘引ファン31は、制御装置14により燃焼炉3内の燃焼排気を誘引する圧力が当該装置の運転状態に応じた所望の圧力となるように制御される。また、煙突30の出口には、図示しない酸素濃度、塩化水素濃度および一酸化炭素濃度とを検出するセンサがそれぞれ取り付けられており、煙突30から排気される燃焼排気の酸素濃度、塩化水素濃度および一酸化炭素濃度とが監視される。
【0037】
さらに、本実施形態の装置において、乾溜炉1の下部には乾溜炉1内の温度Tを検知する温度センサ32が取着され、燃焼炉3には燃焼炉3内の温度Tを検知する温度センサ33が、バーナ部18の先端部に臨む位置に取着されている。温度センサ32,33の検知信号は制御装置14に入力される。
【0038】
次に、本実施形態の装置による廃棄物の焼却処理方法について、図1および図2を参照しながら説明する。
【0039】
図1に示す装置において、廃棄物Aを焼却処理する際には、まず、乾溜炉1の投入扉4を開き、投入口5から廃棄物Aを乾溜炉1内に投入する。前記廃棄物Aは、廃紙、廃木材、廃プラスチック等を主とする各種廃棄物を混合して、乾溜炉1内における乾溜により発生する可燃性ガスが安定して燃焼を継続するときにその燃焼温度が800℃以上になる熱量を有するように調整されており、本実施形態ではさらに燃焼温度が1000℃以上になる熱量を有するように調整されている。
【0040】
次いで、投入扉4を閉じて乾溜炉1内を密封状態としたのち、前記廃棄物Aの着火に先立って、制御装置14により燃焼炉3の燃焼装置25を作動させることにより、前記燃料の燃焼による暖気運転を開始する。具体的には、図2に示す経時変化を示すグラフにおいて、時刻tで燃料の燃焼が開始される。
【0041】
次に、燃焼炉3内の温度Tは前記燃料の燃焼により次第に上昇し、時刻t1で温度センサ33により検知される温度Tが800℃を超えると、制御装置14により乾溜炉1の着火装置15が作動されて廃棄物Aに着火され、廃棄物Aの部分的燃焼により発生する可燃性ガスを前記燃料と共に燃焼炉3内で燃焼させる助燃運転が開始される(本発明の第1段階に相当する)。
【0042】
この着火時の助燃運転では、図2に示すように、制御装置14により酸素供給路20の制御弁21bが徐々に開放される。これにより、乾溜炉1からバーナ部18に導入された可燃性ガスと空気供給源11から供給された空気とがバーナ部18内で混合され、生成された混合ガスが燃焼装置25の火炎によりバーナ部18内で燃焼を開始すると共に、燃焼部19へと誘引される。
【0043】
この助燃運転では、燃焼炉3内の温度センサ33の検出温度が800℃以下となると、燃焼装置25を作動させて燃焼炉内の温度が800℃を上回るように維持する。このような燃焼装置25の動作により、燃焼炉3内の温度は、図2に示すように、800℃前後で細かく振れ、燃焼装置25の作動に応じてその燃料が消費される。
【0044】
次いで、乾溜炉1から発生する可燃性ガスの発生量の増加に伴って、燃焼炉3内の温度が上昇して予め設定された設定温度(例えば、1000℃)となると、制御装置14は、燃焼部19への燃焼排気の供給を開始する(本発明の第2段階に相当する)。これにより、燃焼排気が燃焼炉3内に供給されることで、煙突30を介して外部へ排気されてしまう燃焼排気の熱量を冷却炉(温水ボイラ)27で再回収することが可能となる。
【0045】
より具体的には、制御装置14は、時刻tで、燃焼炉3内の温度が設定温度である1000℃となると、制御弁21bを絞ってバーナ部18への空気の供給量を減少させつつ、制御弁22bを開放して燃焼部19への燃焼排気の供給量を徐々に増加させる。
【0046】
このとき、制御装置14は、燃焼炉3内の温度が設定温度である1000℃に維持されることを条件として、制御弁21bおよび22bの開度を制御する。これにより、燃焼炉3内の温度が急激に低下して安定した燃焼が阻害されることを回避することができる。さらに、ダイオキシン類の熱分解が可能とされる800℃以上であれば、設定温度を冷却炉(温水ボイラ)27の熱回収効率に適した温度とすることで、外部へ排気されてしまう燃焼排気の熱量を効率よく再回収することが可能となる。
【0047】
次いで、バーナ部18への空気の供給量を減少させつつ、燃焼部19への燃焼排気の供給量を徐々に増加させる過渡状態(第2段階)を経て実現される定常状態(本発明の第3段階に相当する)は、燃焼炉3内の温度が前記所定温度に維持され、且つ、燃焼排気中の酸素濃度が所定値となるように、制御弁21bを介してのバーナ部18への空気の供給量と、制御弁22bを介しての燃焼部19への燃焼排気の供給量との供給割合が決定される。
【0048】
より具体的には、制御装置14は、第2状態において(時刻t〜)、燃焼排気中の酸素濃度を所定の目標値(例えば、6%)として、バーナ部18への空気の供給量を減少させつつ燃焼部19への燃焼排気の供給量を徐々に増加させる。そして、時刻tで、燃焼排気中の酸素濃度がその目標値となると、その状態が維持される。
【0049】
すなわち、制御装置14は、第3段階において(時刻t〜)、第2状態の条件である、燃焼炉3内の温度を1000℃に維持しつつ、燃焼排気中の酸素濃度がその目標値となるように保持する。
【0050】
これにより、定常状態である第3段階において、燃焼排気中の酸素濃度が目標とする所定値となり、燃焼炉3内が低酸素雰囲気下となって安定した燃焼が阻害されることを回避することができる。加えて、設定温度である1000℃に燃焼炉3内の温度が維持されることで、該設定温度をボイラ等の熱回収手段に適した温度として、燃焼排気の熱量をボイラ等で高効率に回収することが可能となる。
【0051】
ここで、上記条件下での第3段階におけるシミュレーション結果からは、通常の燃焼排気の約30%が燃焼排気循環路23を介して燃焼炉3の燃焼部19に供給される状態で、上記条件(燃焼炉3の温度が1000℃に維持され、かつ、燃焼排気中の酸素濃度が所定の目標値(例えば、6%)で維持される条件)を満たす定常状態を実現することができる。
【0052】
さらに、燃焼排気は、その酸素濃度が通常の燃焼排気の酸素濃度(10〜12%)に比して、約6%に低減される。そのため、燃焼排気の酸素濃度を基準とする法規制を遵守することができる。
【0053】
例えば、燃焼排気の酸素濃度を基準とする法規制としては、大気汚染防止法にその排出基準が次式(1)の酸素12%換算方法により定められている。
【0054】
C=(21−12)/(21−Os)×Cs ・・・(1)
ここで、Cは、12%換算後の窒素酸化物または塩化水素の濃度であり、Osは、燃焼排気中の酸素濃度であり、Csは、燃焼排気中の窒素酸化物または塩化水素の濃度の実測値である。
【0055】
上式(1)によれば、燃焼排気中の酸素濃度Osが低減されることにより、燃焼排気中の窒素酸化物または塩化水素の濃度の実測値Csは、より小さな換算値Cとなる。これにより、より法規制を遵守した形で法規制をクリアした乾溜ガス化焼却処理装置を提供することができる。
【0056】
以上、詳しく説明したように本実施形態の乾溜ガス化焼却処理装置によれば、燃焼炉における安定した燃焼を維持しながら燃焼排気の熱量の再回収を可能とするこができる。
【0057】
尚、本実施形態では、燃焼排気を燃焼排気循環路23を介して燃焼炉3の燃焼部19へ供給したが、燃焼排気の循環路はこれに限定されるものではない。例えば、冷却炉27の出口側に接続されたダクト26aを分岐させて、冷却塔28に入る前の高温の燃焼排気(約300℃)を燃焼炉3の燃焼部19へ供給するようにしてもよい。
【0058】
補足をすれば、本実施形態では、バグフィルタ29により燃焼排気中の塩化水素や煤塵等が除去された燃焼排気を燃焼炉3の燃焼部19に循環させることにより、煤塵等が燃焼炉3を繰り返し循環することを回避することができる。すなわち、乾溜炉1内で乾溜される廃棄物Aが煤塵等を発生させるものであっても適用可能である。
【0059】
一方、乾溜炉1内で乾溜される廃棄物Aが煤塵等の発生がないか、非常に少ないものであれば(例えば、紙、木材等のバイオマスや成分の安定したポリエチレン等のプラスチック製品)、冷却炉27の出口側に接続されたダクト26aを分岐させて、高温の燃焼排気(約300℃)を燃焼炉3の燃焼部19へ供給するようにすることができる。
【0060】
さらに、この場合、燃焼排気の導入により燃焼炉3内の温度が下がり難いため、より多くの燃焼排気を燃焼炉3に導入することができる。シミュレーション結果では、燃焼排気の約50%を燃焼炉3に導入することができる。これにより、燃焼排気に含まれる熱量をより高効率に回収することができる。加えて、燃焼排気の約50%を燃焼炉3に導入することで、冷却塔28における燃焼排気に対する散水量を低減することができ、煙突から排出される燃焼排気量をさらに約30%低減させることができる。
【符号の説明】
【0061】
1…乾溜炉、3…燃焼炉、18…バーナ部、19…燃焼部、20…燃焼酸素供給路(第1供給手段)、21…第1空室(第1供給手段)、22…第2空室(第2供給手段)、23…燃焼排気循環路、A…廃棄物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を収納すると共に、該廃棄物の一部を燃焼させつつ該燃焼熱により該廃棄物の残部を乾溜して可燃性ガスを発生させる乾溜炉と、該乾溜炉から導入される該可燃性ガスを燃焼させる燃焼炉と、該燃焼炉に導入される該可燃性ガスの燃焼に要する酸素を燃焼炉に供給する燃焼酸素供給手段と、該燃焼炉内における温度を検知する燃焼炉温度検知手段と、該燃焼炉における該可燃性ガスの燃焼が開始された後に該燃焼炉温度検知手段により検知される該燃焼炉内の温度を予め設定された設定温度に維持するように該乾溜炉への酸素供給量を調整しつつ該廃棄物の一部の燃焼に必要な酸素を該乾溜炉に供給する乾溜酸素供給手段とを備えた乾溜ガス化焼却処理装置であって、
前記燃焼酸素供給手段は、前記燃焼炉に、酸素を供給する第1供給手段と、前記燃焼炉内で燃焼された前記可燃性ガスの燃焼排気を供給する第2供給手段と、該第1供給手段により供給する酸素の供給量と該第2供給手段により供給する燃焼排気の供給量とを制御する供給制御手段とを有し、
前記供給制御手段は、前記廃棄物への着火から前記燃焼炉内の温度が前記設定温度となるまでの第1段階において、前記第1供給手段により酸素を前記燃焼炉へ供給すると共に、該燃焼炉内の温度が前記設定温度に維持される第2段階において、前記第1供給手段による酸素の供給量を減少させつつ前記第2供給手段による前記燃焼排気の供給量を増加させることを特徴とする乾溜ガス化焼却処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の乾溜ガス化焼却処理装置において、
前記供給制御手段は、前記第2段階において、前記設定温度が維持されることを条件として、前記第1供給手段による酸素の供給量を減少させつつ前記第2供給手段による前記燃焼排気の供給量を増加させることを特徴とする乾溜ガス化焼却処理装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の乾溜ガス化焼却処理装置において、
前記供給制御手段は、前記第1供給手段による酸素の供給量と前記第2供給手段による前記燃焼排気の供給量との供給割合により決定される定常状態としての第3段階において、前記燃焼炉内の温度が前記所定温度に維持され、且つ、前記燃焼排気中の酸素濃度が所定値となるように、前記第1供給手段による酸素の供給量と前記第2供給手段による前記燃焼排気の供給量との供給割合を決定することを特徴とする乾溜ガス化焼却処理装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−78034(P2012−78034A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224908(P2010−224908)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(391060281)株式会社キンセイ産業 (17)
【Fターム(参考)】