説明

乾燥よもぎの製造方法

【課題】変色,風味の劣化を抑えるとともに、殺菌効果が高く、しかも製造コストを削減できる乾燥よもぎの製造方法を提供をする。
【解決手段】よもぎを常温の水酸化カルシウム水溶液に浸漬する工程と、水蒸気処理する工程と、乾燥する工程とを備える。水酸化カルシウム水溶液に浸漬する工程においては、水酸化カルシウム水溶液が、焼成カルシウムを水に溶解させて得られるものであり、水溶液の温度が5〜40℃であって、浸漬時間が3〜30分である。水蒸気処理する工程が、過熱水蒸気処理を行うものであり、乾燥する工程が、熱風による強制乾燥によるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、よもぎの変色,風味の劣化を抑えるとともに、殺菌効果が高く、しかも製造コストを削減できる乾燥よもぎの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
よもぎは昔から親しまれている植物であり、容易に使用できるよう、よもぎを乾燥させて、長期保存可能とした乾燥よもぎの製造が行なわれている。このような乾燥よもぎの中でも特に食用とするものは、単に水分含量を減少させて長期間保存可能とするだけでなく、風味が良い、見栄えがよいということも要求される。また、衛生面も重要となり、よもぎを殺菌し、付着する菌類を少なくすることが必要となる。
【0003】
しかしながら、よもぎは、アクが多く含まれ、また、菌類も付着しているため、乾燥に先立って、アクを抜きや、殺菌を目的として、例えば、重曹水溶液でボイル(煮沸)することが行なわれている。しかし、重曹水溶液でボイルするだけでは、アクを抜くことはできても、よもぎ特有の葉の形状(裏面に軟毛が密生している)に入り込んでいる等の菌類を死滅させることは容易ではない。このよもぎの付着菌数は、生の状態では一般に問題となるレベルではないが、乾燥させると重量当たりの菌数が非常に高くなってしまうため問題となる。そこで、菌類を死滅させるために、長時間ボイル(煮沸)することも考えられるが、そうすると色や風味が劣化するという問題がある。よもぎは、和菓子の材料として用いられることも多く、和菓子は見た目(特に色調)も重要視されることから、この問題の解決が強く望まれている。
【0004】
一方、野菜の緑色の褪色及び風味の変化を防止する方法として、例えば、野菜を0.005重量%〜0.07重量%の水酸化カルシウムを含有する水溶液に浸漬しブランチング(加熱して酵素等の働きを止める)方法(特許文献1参照)や、緑葉を0.001〜1重量%の炭酸カルシウムを加えた水でブランチングする方法(特許文献2参照)、さらには、ヨモギをpH10以上の焼成カルシウムアルカリ水溶液中で煮沸し、pH10未満の焼成カルシウムアルカリ水溶液で洗浄する方法(特許文献3参照)が提案されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のものは、強アルカリである水酸化カルシウム水溶液を沸騰させた中に野菜を入れるものであるから、上記特許文献2にも記載があるように、強アルカリの条件下で加熱処理をすると、緑色の発色源であるクロロフィルが変性し、鮮やかな緑色を保持できないのみならず、植物細胞が軟化して破壊され、風味が損なわれるという問題が懸念される。上記特許文献3に記載のものも、強いアルカリ性で煮沸するブランチング処理を行なうため、仮に緑色が保持できたとしても、上記特許文献1の場合と同様、植物細胞が軟化して破壊され、風味が損なわれるという問題がある。
【0006】
しかも、よもぎは、一般的な野菜,緑葉等の植物とは異なり、特有の葉の形状(裏面に軟毛が密生している等)をしているため、上記特許文献1〜3に記載のように、アルカリの条件下でボイル(煮沸)しても、菌類が死滅しにくという問題が依然として存在している。仮に菌類を死滅させようとすると、長時間ボイル(煮沸)することが必要となり、色や風味がさらに劣化するという問題がある。
【0007】
また、焼成カルシウム製剤を添加し、60℃以上の温度で加熱処理することによって野菜を滅菌する方法も提案されているが(例えば、特許文献4参照)、先に記載したように、よもぎは、特有の葉の形状(裏面に軟毛が密生している等)をしているため、単に強アルカリ性の条件下で加熱するだけでは、菌類が死滅しにくいという問題が依然として存在している。しかも、このものは、強アルカリ性の条件下で60℃以上の温度で加熱処理をするものであるから、見栄えや風味に劣るものとなり、菌類を死滅させようとすると、長時間の加熱が必要となるため、色や風味がさらに劣化するという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−112073号公報
【特許文献2】特開2002−34446号公報
【特許文献3】特開2007−236225号公報
【特許文献4】特開2001−29007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、よもぎを簡便に殺菌することができ、しかも変色および風味を損なうことのない乾燥よもぎの製造方法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、よもぎを常温の水酸化カルシウム水溶液に浸漬する工程と、浸漬後に水蒸気処理する工程と、水蒸気処理後に乾燥する工程とを備える乾燥よもぎの製造方法を第1の要旨とし、上記水酸化カルシウム水溶液が、焼成カルシウムを水に溶解させて得られるものである乾燥よもぎの製造方法を第2の要旨とする。さらに、上記水酸化カルシウム水溶液に浸漬する工程において、水酸化カルシウム水溶液の温度が5〜40℃であって、浸漬時間が3〜30分である乾燥よもぎの製造方法を第3の要旨とし、上記水蒸気処理する工程が、過熱水蒸気処理を行うものである乾燥よもぎの製造方法を第4の要旨とし、上記乾燥する工程が、強制乾燥によるものである乾燥よもぎの製造方法を第5の要旨とする。
【0011】
ここで、本発明において、水蒸気処理に用いる水蒸気は、飽和(常圧)水蒸気および過熱水蒸気を意味するものであり、通常、前者は、80〜100℃、後者は100〜240℃の温度範囲になる。したがって、本発明に用いる水蒸気は、通常、80〜240℃の温度範囲を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、よもぎを、高温ではなく、常温の水酸化カルシウム水溶液に浸漬し、それを水由来の水蒸気で処理し、乾燥することにより、よもぎの鮮緑色の褪色あるいは風味の劣化が少なく、しかも付着菌数の少ない乾燥よもぎの製造を実現したものである。これによれば、従来のブランチング処理のように熱水中で茹でるという加熱処理の必要がなくなるため、加熱設備が不要となるとともに作業の効率化を図ることができ、コストの削減ができる。また、強アルカリの条件下で加熱処理することがないため、よもぎの細胞が軟化して破壊されず、色調あるいは風味の劣化を招くことがなくなる。さらに、このように処理したよもぎに対して水蒸気処理を行うことにより、葉の裏面に密生する軟毛の間に入り込んだ菌も殺菌することができると考えられるため、よもぎの色調あるいは風味の劣化を招くことなく、充分に殺菌された乾燥よもぎを得ることができる。
【0013】
そして、上記水酸化カルシウム水溶液が、焼成カルシウムを水に溶解させて得られるものである場合には、焼成カルシウムがホタテ等の貝殻等から作られるものであり、天然物由来であることから、乾燥よもぎを食用とする場合に消費者の安心感を得ることができるようになる。そのうえ、水溶液中に水酸化カルシウムの他に微量成分として、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化第二鉄、酸化チタン、酸化ナトリウム、酸化カリウム、三酸化硫黄、五酸化リン等が含まれ、得られる乾燥よもぎはこれらの成分を多少なりとも含むようになるため、さらに風味の良化が期待できる。
【0014】
また、上記水酸化カルシウム水溶液に浸漬する工程において、水酸化カルシウム水溶液の温度が5〜40℃であって、浸漬時間が3〜30分である場合には、よもぎ本来の鮮緑色を損なうことが少なく、かつ、風味のよい乾燥よもぎを効率よく製造することができる。
【0015】
さらに、上記水蒸気処理する工程が、過熱水蒸気処理を行うものである場合には、極めて酸素濃度の低い環境下での高温処理が可能となるため、酸化による品質劣化を防ぐことができる。また、ボイルによるブランチングとは異なり、よもぎを熱水に浸さなくてすむため、栄養成分の流出を少なくすることができる。さらに、高い殺菌効果を有しているから、より短時間で処理が完了し、褪色をより防ぐことができる。そして、上記乾燥する工程が、強制乾燥によるものである場合には、よもぎの水分含量を短時間で減少させるため、新たな菌の付着および増殖を防ぐことができる。
【0016】
なお、本発明において「常温」とは、加熱を行なわないことを意味するものであり、一般に夏場においても40℃以下の温度である。また、「乾燥よもぎ」とは、水分含量が10重量%以下のよもぎを意味するものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0018】
本発明の製造方法により得られる乾燥よもぎは、例えば、つぎのようにして得ることができる。
【0019】
まず、生のよもぎ500gを選別し、流水で洗浄し異物を取り除く。そして、焼成カルシウム(オホーツクカルシウムF/日本天然素材社)を用いて、0.1重量%焼成カルシウム水溶液1000mLを作製し、これに先のよもぎを15分間浸漬する。このときの焼成カルシウム水溶液の温度は20℃であった。
【0020】
つぎに、上記浸漬後のよもぎを水で軽く洗い流し、その後、バスケット式遠心脱水機で脱水を行う。そして、脱水後のよもぎを、過熱水蒸気処理(常圧:101.3Pa、温度180℃)5分間施した後、熱風乾燥(60℃、7時間)し、水分含量8重量%の乾燥よもぎを得た。通常、上記過熱水蒸気処理は、上記よもぎを蒸し機等の機器に入れ、そのなかに常圧の水蒸気(飽和水蒸気)を吹き込むことにより行なわれる。なお、本発明において、過熱水蒸気処理とは、与えられた圧力下で、液体としての水と水蒸気が平衡を保ち共存しうる温度以上に熱せられた状態にある水蒸気(過熱蒸気:例えば、101.3kPa(1気圧)で100℃以上に熱せられた水蒸気)にて処理を行うことをいう。また、常圧の水蒸気(飽和水蒸気)とは、常圧下で水を加熱したときに発生する水蒸気のことをいう。
【0021】
この方法によれば、従来のように、熱水で茹でるという加熱処理(ブランチング)が不要となるため、加熱設備が不要で作業効率が良くなり、コストを削減することができる。しかも、水酸化カルシウム水溶液のような強アルカリの条件下で加熱処理を行なわないため、よもぎの細胞が軟化して破壊されず、色調および風味の劣化を招くことがなくなる。また、よもぎを焼成カルシウム水溶液に浸漬しているため、焼成カルシウムに含まれる微量の元素により風味の良化も期待できる。そして、熱水で茹でずに、上記処理後のよもぎを過熱水蒸気処理しているため、色調、風味および品質の劣化、栄養素の流出を招くことなく、焼成カルシウム水溶液に浸漬させたこととも相俟って、短時間で効率よく殺菌することができる。さらに、熱風による強制乾燥を行なっているから、短時間で効率よく充分に殺菌された乾燥よもぎを得ることができる。
【0022】
なお、上記の例において、水酸化カルシウム水溶液の作製に焼成カルシウムを用いているが、これに限らず、水酸化カルシウムを用いてもよい。ただし、乾燥よもぎを食用にする場合には、消費者の心理を考えて、焼成カルシウムを用いることが好ましい。
【0023】
また、上記の例において、よもぎを焼成カルシウム水溶液に15分間浸漬しているが、よもぎの生長度合い(全体の大きさ、茎の太さ、葉の厚み等)や水温(季節による変動)によって、浸漬時間は適宜設定することが好ましく、例えば、よもぎが良く生長している場合や水温が低い場合には、15分〜25分程度浸漬し、逆に、よもぎがまだ若い場合や水温が高い場合には、7〜15分程度浸漬することが好ましい。浸漬時間は、短かすぎると浸漬の効果が得られず、逆に、長すぎても得られる効果に差がなく単なる時間のロスになるからである。なお、常温の水酸化カルシウム水溶液によもぎを一定時間浸漬すると、よもぎのアクの成分の一つであるシュウ酸などの有機酸が、水溶液中のカルシウムと結びつき除かれるため、色の褪色や風味の劣化を防ぐ一因になっているのではないかと考えられる。
【0024】
また、上記の例では、浸漬後のよもぎを水で軽く洗い流しているが、洗い流さなくても、得られる乾燥よもぎの色調の変化や風味の劣化に大きな影響はないため、省略することもできる。
【0025】
さらに、上記の例では、バスケット式遠心脱水機で脱水しているが、一般的な遠心式脱水機などでも脱水が可能である。
【0026】
また、上記の例では、脱水後のよもぎを、過熱水蒸気処理をしているが、通常の飽和水蒸気処理でも同様の効果が得られる。しかし、酸化による品質の劣化を防止できる点や効率の点から過熱水蒸気処理を行うことが好ましい。また、処理時間は、水蒸気の温度にもよるが、過熱水蒸気処理の場合は2〜15分、飽和水蒸気処理の場合は5〜20分が好ましい。短すぎると殺菌効果を充分に得ることができず、逆に、長すぎると色調や風味が劣化するおそれがあるからである。
【0027】
さらに、上記の例では、熱風乾燥により強制的によもぎの乾燥を行なっているが、これに代えて、日陰に干すなどの自然乾燥を行うことによっても、本発明の乾燥よもぎを得ることができる。また、強制乾燥の方法は、上記の熱風乾燥に限らず、凍結乾燥、真空乾燥などの方法によることもできる。
【0028】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0029】
〔実施例1〕
まず、生のよもぎ500gを水道水で洗浄し、異物や汚れを取り除いた後、1000mLの0.1重量%焼成カルシウム水溶液(25℃)に15分間浸漬した。次に、これを水道水で軽くすすぎ、バスケット式遠心脱水機で脱水後、過熱水蒸気処理(常圧:101.3Pa、温度180℃)を5分間行った。これを、60℃の熱風乾燥機で7時間乾燥させて、目的の乾燥よもぎを得た。得られた乾燥よもぎの水分含量は6.5重量%であった。
【0030】
〔実施例2〕
過熱水蒸気処理に代えて、飽和水蒸気処理(常圧:101.3Pa、温度98℃)を10分間行なった以外は、実施例1と同様にして、目的の乾燥よもぎを得た。得られた乾燥よもぎの水分含量は7.1重量%であった。
【0031】
〔実施例3〕
焼成カルシウムに代えて、水酸化カルシウムを用いた以外は、実施例1と同様にして、目的の乾燥よもぎを得た。得られた乾燥よもぎの水分含量は6.2重量%であった。
【0032】
〔比較例1〕
焼成カルシウム水溶液に代えて、水(蒸留水)を用いた以外は、実施例1と同様にして、目的の乾燥よもぎを得た。得られた乾燥よもぎの水分含量は6.8重量%であった。
【0033】
〔比較例2〕
焼成カルシウム水溶液に代えて、0.2重量%の重曹水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、目的の乾燥よもぎを得た。得られた乾燥よもぎの水分含量は6.9重量%であった。
【0034】
〔比較例3〕
焼成カルシウム水溶液に代えて、アルカリイオン水(pH9.5)を用いた以外は、実施例1と同様にして、目的の乾燥よもぎを得た。得られた乾燥よもぎの水分含量は6.0重量%であった。
【0035】
〔比較例4〕
生のよもぎ500gを水道水で洗浄し、異物や汚れを取り除いた後、90℃の0.1重量%焼成カルシウム水溶液で5分間ボイルした。次に、これを水道水で軽くすすぎ、バスケット式遠心脱水機で脱水後、60℃の熱風乾燥機で7時間乾燥させて、目的の乾燥よもぎを得た。得られた乾燥よもぎの水分含量は6.5重量%であった。
【0036】
〔比較例5〕
焼成カルシウム水溶液の温度を60℃にした以外は、比較例4と同様にして、目的の乾燥よもぎを得た。得られた乾燥よもぎの水分含量は6.3重量%であった。
【0037】
これらの実施例品および比較例品について、「色の変化」、「生菌数」、「大腸菌群」および「風味」の評価を、それぞれ下記の手順に従って行ない、その結果を、後記の表1に併せて示した。
【0038】
〔色の変化〕
得られた実施例品および比較例品を、モニター10名が目視により観察し、色の変化について、変化がなく鮮緑色を呈しているものを◎、少し変化しているが緑色を呈しているものを○、変化の度合いが進んで部分的に茶色を帯びているものを△、変化の度合いがさらに進んで全体が茶色を帯びているものを×、の4段階で評価し、その平均的な評価を求めた。
【0039】
〔生菌数〕および〔大腸菌群〕
得られた実施例品および比較例品を、ロータリーカッター式粉砕機で粉砕し、開口径1mmの多孔を通過する粉末とし、これを各試験試料とした。この各試験試料1gを生理食塩水10mLに希釈し、希釈試料液を作製した。そして、希釈試料液をそれぞれ生菌数と大腸菌群の測定に用いた。生菌数については、上記希釈試料液1mLを生菌数測定用ペトリフィルム(登録商標)で35℃±1℃で48時間±3時間培養し、培地に見えるコロニーの数を測定した。そして、測定したコロニーの数に希釈倍率をかけて、実施例品および比較例品1gあたりの菌数とした。なお、上記希釈試料液を培養し測定した結果、コロニーの測定数が10より多くなる場合には、上記希釈試料液1mLをさらに生理的食塩水10mLに希釈し、その希々試料液を培養・測定することで、正確な生菌数を算出している。また、大腸菌群については、大腸菌群測定用ペトリフィルム(登録商標)で35℃±1℃で24時間±3時間培養し、培地にコロニーが確認できるか否かを観察した。そして、1つでもコロニーが確認できたものを陽性、コロニーの確認できなかったものを陰性とした。
【0040】
〔風味〕
得られた実施例品および比較例品を、ロータリーカッター式粉砕機で粉砕し、開口径1mmの多孔を通過する粉末とし、これを各試験試料とした。この各試験試料5gを、白玉粉60g,砂糖10gおよび水90gからなる餅に混ぜ込み、よもぎ餅を作製した。作製したよもぎ餅をモニター10名が試食し、風味が良いものを◎、風味を感じるものを○、あまり感じないものを△、まったく感じないものを×の4段階で評価し、その平均的な評価を求めた。
【0041】
【表1】

【0042】
上記の結果から、実施例品は、いずれの項目についてもその評価が概ね良好であるから、よもぎの色が変化せず、風味も保たれ、しかも充分に殺菌されていることがわかる。しかし、比較例品は、これらの評価のすべてが良好であるものがなく、実施例品に劣ることがわかる。また、実施例2と同様にして、水酸化カルシウム水溶液の浸漬時間を5分、10分と変えても実施例2と同等のものが得られた。さらに、実施例2と同様にして、焼成カルシウム水溶液の温度を38℃、10℃に変えても実施例2と同等のものが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、殺菌効果が高く、よもぎの変色を抑えることができ、しかも風味のよい乾燥よもぎを簡便に製造する方法である。この方法により製造された乾燥よもぎは、緑色が鮮やかで風味もよく、しかも付着菌数が少ないことから、食用に供するのに適するものとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
よもぎを常温の水酸化カルシウム水溶液に浸漬する工程と、浸漬後に水蒸気処理する工程と、水蒸気処理後に乾燥する工程とを備えることを特徴とする乾燥よもぎの製造方法。
【請求項2】
上記水酸化カルシウム水溶液が、焼成カルシウムを水に溶解させて得られるものである請求項1記載の乾燥よもぎの製造方法。
【請求項3】
上記水酸化カルシウム水溶液に浸漬する工程において、水酸化カルシウム水溶液の温度が5〜40℃であって、浸漬時間が3〜30分である請求項1または2記載の乾燥よもぎの製造方法。
【請求項4】
上記水蒸気処理する工程が、過熱水蒸気処理を行うものである請求項1〜3いずれか一項に記載の乾燥よもぎの製造方法。
【請求項5】
上記乾燥する工程が、強制乾燥によるものである請求項1〜4いずれか一項に記載の乾燥よもぎの製造方法。

【公開番号】特開2011−78315(P2011−78315A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230616(P2009−230616)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(504005035)三笠産業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】