説明

乾燥ガスの供給方法及び装置

【課題】乾燥ガスの供給方法及び装置を提供する。
【解決手段】低い水分含有量を有する本質的に窒素を含まないガスのボンベ用内蔵式浄化装置であって、ガスから水を吸着するための分子篩3A吸着材を備え、前記3A吸着材が窒素に関して特に低い吸着能力を有するボンベ用内蔵式浄化装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低い水分含有量と低い窒素含有量を有するガスの供給のための方法及び装置に関する。本発明は、加圧ボンベからのガスの供給に特に関連する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,409,526号は、ガス供給ボンベ用の内蔵式浄化装置について記述している。浄化装置は、ボンベの加圧ガス内容物と接触する吸着材本体を含み、この吸着材は通常、ボンベを退出するガスの流路内に配置されている。非常に乾燥したガスの供給が必要とされ得る状況がいくつか存在し、その1つは、エレクトロニクス産業、例えば半導体製造における用途向けである。吸着材が収納された水浄化装置を、ガスボンベに連結すべき供給ライン内に収容することができる一方で、このような浄化装置が曝露されているガス中に含まれる水の量を最小限に抑えてこの浄化装置の寿命を最大限にすることによって、運転コストを削減することができる。米国特許第5,409,526号において、内蔵式浄化装置内での使用のために示唆されている吸着材はタイプ4Aのゼオライトであった。米国特許第5,409,526号中に記載された内蔵式浄化装置は、非常に有効であることが証明されている。
【0003】
しかしながら我々は今、一部の場合において、内部のガスが本質的に窒素を含まないと想定されるボンベから供給されるガスが、たとえボンベを充填するバルク供給物の窒素量レベルが満足のいくほどに低い場合であったとしても、本来あるべき量よりも多い窒素を実際には含有しているということを発見した。
【発明の概要】
【0004】
今回、本発明は、第1の態様において、1ppmv(100万分の1体積分率)未満の窒素含有量と100ppmv未満の水分含有量を有する無機ガスの供給物から微量の水を除去するための方法であって、前記ガスから水を吸着する能力を有する吸着材と前記ガスを接触させるステップを含み、前記吸着材が23℃、101キロパスカルで0.01mgモル/g(1グラムあたりのミリグラムモル)未満の純粋窒素吸着能力を有する方法を提供する。
【0005】
第2の変形形態において、本発明は、1ppmv未満の窒素含有量と100ppmv未満の水分含有量を有する無機ガスの供給物から微量の水を除去するための方法であって、前記ガスから水を吸着する能力を有する吸着材と前記ガスを接触させるステップを含み、前記吸着材が15%以上のカリウム交換レベルを有し、カチオン残分がナトリウムである3Aゼオライトである方法を提供する。3Aゼオライトは、形成された吸着材粒子の内部に含まれていてよく、ここで、形成された吸着材粒子は、別に窒素吸着成分を含まない。より一般的には、吸着材は好ましくは、非3A窒素吸着成分を含まない。他の成分は、それらが23℃、101キロパスカルで0.01mgモル/g(1グラムあたりのミリグラムモル)未満の窒素吸着能力を有する場合に、窒素吸着性をもたないとみなされ得る。
【0006】
吸着材は、それがより大きい窒素能力を有することを回避するために、例えば他のゼオライトタイプを含むと考えられる窒素吸着成分を含むべきでなく、同様に、例えば一部の結合剤などの窒素吸着能力をもつ非ゼオライト材料も含むべきではない。窒素吸着能力の欠如という意味合いで不活性である材料が存在してもよい。
【0007】
ゼオライトのカリウム交換レベルは、好ましくは20%以上である。
【0008】
このような吸着材と接触した状態で供給された窒素含有量が非常に低いガスについて我々が行なった測定は、4Aベースの内蔵式浄化装置システムについて以上で言及した余剰の窒素濃度を示さなかった。以下の理論に拘束されるわけではないが、例えば4Aタイプのゼオライトなどの選択された水吸着材が窒素を吸着する有意な能力を有する場合、例えば内蔵式浄化装置ガスボンベシステムを組立て、供給すべき低窒素含有量ガスをそれに充填するプロセスにおける瞬間的な大気に対する曝露により吸着材が窒素を偶然取込む可能性が存在することを我々は疑っている。このとき、この吸着された窒素は、顧客による使用中に供給されるガスを汚染する。
【0009】
この危険性は、本発明によると、水吸着用に使用される吸着材が、大気からの窒素を吸着する有意な能力を有していないことを保証することにより回避される。
【0010】
好ましくは、無機ガスの供給物は加圧容器中に入っており、前記吸着材は前記容器内に存在する。
【0011】
好ましくは、吸着材は、前記容器からのガスの出口に連結された導管内に存在する。典型的には、容器はガスボンベである。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、供給すべき加圧された無機ガスを収納するボンベであって、前記ガスが、1ppmv未満の窒素含有量と100ppmv未満の水分含有量を有する前記ガスのバルク供給物から前記ボンベ内に導入されており、前記ボンベが、前記ガスから水を吸着するための、前記ガスと接触している吸着材を収納し、前記吸着材が前記ガスから水を吸着する能力を有し、23℃、101キロパスカルで0.01mgモル/g未満の純粋窒素吸着能力を有するボンベを提供する。
【0013】
一変形態様において、本発明は、供給すべき加圧された無機ガスを収納するボンベであって、前記ガスが、1ppmv未満の窒素含有量と100ppmv未満の水分含有量を有する前記ガスのバルク供給物から前記ボンベ内に導入されており、前記ボンベが、前記ガスから水を吸着するための、前記ガスと接触している吸着材を収納し、前記吸着材が15%以上のナトリウム交換用カリウムを有しかつ窒素吸着成分を含まない3Aゼオライトであるボンベを提供する。
【0014】
ナトリウム交換のためのカリウムの度合は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)、原子吸着分光法(AAS)又はX線蛍光分光法(XRF)を含めた、ゼオライト中の金属を決定するための一般的な技術を用いて判定されてよい。さらなる詳細は、Zamechek W.「Determination of the elemental compositor of zeolitic mateirals」,2001,Verified Syntheses of Zeolitec Materials’,H.Robson Ed.Elsevier Sciences BV.www.iza−online.org/synthesesに見ることができる。このような分析から、ナトリウムとカリウムの合計ミリグラム当量が得られる。本明細書では、カリウム及びナトリウムのミリグラム当量の合計でカリウムミリグラム当量の100倍を除したものとして、カリウム交換百分率を報告する。
【0015】
これらの態様のいずれかによると、好ましくは、前記吸着材は、入口と出口とを有しかつ前記入口と前記出口との間に前記吸着材を通る流路を画定するチャンバ内に収納されており、前記チャンバの入口が前記ボンベ内の前記ガスと流体連通し、前記チャンバの出口が前記ボンベからの前記ガスの供給用出口と流体連通している状態で前記吸着材が配置されている。
【0016】
ただし、本発明は、ボンベからのガスの供給に限定されず、いわゆる内蔵式浄化装置内に吸着材が存在する必要はない。同じ種類の窒素汚染の危険性は、ガス供給源にガス供給パイプライン内のインライン浄化装置を連結する上でも発生する可能性がある。
【0017】
供給すべきガスはそれ自体、1ppmv以下の窒素含有量を有する事実上窒素を含まないガスである。より好ましくは、供給すべきガスの窒素含有量は、500ppbv(10億分の1の体積分率)以下、例えば200ppbv以下である。ガスがボンベ又は他の容器から供給される場合、これらの濃度は、充填前のバルクガスにあてはまる。
【0018】
好ましくは、供給すべきガスの水分含有量は、吸着材との接触前にすでに非常に低く、例えば、ボンベに供給される充填用ガス又は吸着材を介して別の供給源から供給されるガスの含有量は、10ppmv/vol以下、より好ましくは5ppmv/vol以下そしてより好ましくは1ppmv/vol以下であってよい。
【0019】
米国特許第5,409,526号は、水吸着用にタイプ4Aのゼオライトの使用を開示していたが、本発明によると、充分なカリウムイオン交換レベルを有するタイプ3Aのゼオライトを使用することが好まれる。タイプ3Aのゼオライトは、典型的に、タイプ4Aのゼオライトのナトリウムイオンを少なくとも部分的にカリウムで交換することによって、タイプ4Aのゼオライトから形成される。公知の通り(例えばBreckら、J.Am.Chem.Soc.Dec 8,1956,No.23,Vol.78,pp5963−5972)、このような交換は、カリウム交換の程度の増加に伴って漸進的に細孔径を減少させる。以下の例で示す通り、市販のタイプ3Aのゼオライトは、カリウム交換度の変動に起因する可変的な窒素能力度を有する。例えば、多重窓ガラス用のガラス間のガスの乾燥という状況における水吸着のためには、UOPXL8が販売されている。
【0020】
しかしながら、このような材料は、本発明における使用のためには不適切であることがわかっている。以下で記述する通り、我々は、その窒素能力が大きすぎて適当でないと判定した。
【0021】
タイプ3Aのゼオライトは一般に乾燥剤として提案されているが、一般に交換レベルは特定されておらず、有意なものとして見られてはいない。こうして例えば、国際公開第97/06104号(W097/06104)は、半導体業界での用途向けに、アンモニアから水を除去するためのタイプ3Aのゼオライトの使用を開示しているが、交換レベルを一切特定していない。Kaushikら、Microporous and Mesoporous Materials,vol.51,pp139−144(2002)に示されているように、交換レベルを増大させると、水についての3A吸着材の能力は低減する。したがって、通常は、乾燥において使用するためにカリウム交換度の高いタイプAの材料を選択する理由は全くなかったと思われる。
【0022】
同様にして、ハロカーボンを含む消火器内の乾燥剤として分子篩タイプ3Aを含み入れることを教示する米国特許出願公開第2005/0178566号は、いずれの特定の交換度についての必要性も教示していない。
【0023】
英国特許第2109359号は、その水吸着能力及びエチレン自体を吸着する能力の欠如を考慮してそれが好適とされるエチレン向けの乾燥剤として使用するための3Aタイプのゼオライトの製造について記述している。窒素吸着については論述されていない。
【0024】
好ましくは、吸着材は加圧ガスの容器内部、好ましくは前記容器からのガスの出口と連通する導管内に収納されている。容器は、ガス供給ボンベであってよく、その中の吸着材の配置は、米国特許第5,409,526号中に記載される通りであってよい。
【0025】
第3の態様において、本発明は、1ppmv未満の窒素含有量と100ppmv未満の水分含有量を有する供給すべきガスの供給源と、前記供給源と連通するガス供給導管と、前記ガスから水を吸着するため前記ガスと接触している吸着材とを含むガス供給装置において、前記吸着材が、前記ガスから水を吸着する能力を有しかつ23℃で0.01mgモル/g未満の窒素吸着能力を有するガス供給装置を提供する。
【0026】
代替的には、第4の態様において、本発明は、1ppmv未満の窒素含有量と100ppmv未満の水分含有量を有する供給すべきガスの供給源と、前記供給源と連通するガス供給導管と、前記ガスから水を吸着するための、前記ガスと接触している吸着材とを含み、前記吸着材が15%以上のナトリウム交換レベル用カリウムを有する3Aゼオライトでありかつ非3Aの窒素吸着成分を含まないガス供給装置を提供する。
【0027】
本発明のこれらの態様のいずれかによると、装置は、ボンベ又は前記ボンベを閉じるように適応されたバルブを有する加圧ガス用の他の容器を含んでいてよく、このボンベ又は他の容器は、流体の充填及び除去用手段に連結された2つの内部ポートを介して前記ボンベの流体を充填し取出すための手段及び前記ポートの1つに連結されたユニットを有し、前記ユニットは前記吸着材を収納し、こうして不純物は前記ユニットを通って前記ボンベから撤去されるときに前記流体から除去される。
【0028】
任意には、前記2つの内部ポートのうち第2のポートは、前記ボンベ内に直接開放し、装置はさらに、前記流体の充填及び取出し用手段から前記2つの内部ポートのうち第2のポートまでの流体の流動を許可及び防止するための充填用バルブ部材と、前記2つの内部ポートのうちの第1のポートから前記流体の充填及び取出し用手段までの流体の流れを許可及び防止するための放出バルブ部材とを含む。
【0029】
装置はさらに、前記流体の充填及び取出し用手段内に挿入された時点で、流体が前記流体の充填及び取出し用手段から前記内部ポートのうちの第1のポートまで流動するのを防ぐ充填アダプターを含んでいてよい。
【0030】
装置はさらに、前記流体の充填及び除去用手段内に挿入された時点で、流体が前記2つの内部ポートのうちの第2のポートから前記流体の充填及び除去用手段まで流動するのを防ぐ放出アダプターを含んでいてよい。
【0031】
本発明の態様のいずれにおいても、本発明の作用を増強するため、例えば酸素を除去するために、触媒を提供してよい。
【0032】
供給するべきガスは、水素、ヘリウム、酸素、アルゴン又は他の希ガスあるいはこれらのガスのいずれかの配合物であってよい。
【0033】
本発明は、添付図面を参照してさらに説明され例示される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】簡略化された断面図で本発明の装置を示す。
【図2】図1の装置と併用するための充填アダプターを断面図で示す。
【図3】図1の装置と併用するための放出アダプターを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明に係る装置を示す。装置の構成は、吸着材に関して以外、米国特許第5,409,526号に記載の通りである。全体として参照番号201で識別されているボンベバルブを有するボンベ200が示されている。ボンベバルブ201は、第1の内部ポート203、第2の内部ポート204及び外部ポート205を有する本体202を含む。
【0036】
充填バルブ部材206が、本体202内のボア207内に螺入式に取付けられており、図示された位置において、ボア208とボア209によって形成される通路を介した外部ポート205と第1の内部ポート203の間のガスの流れを防止する。
【0037】
放出バルブ部材210が、本体202内のボア211内に螺入式に取付けられており、図示された位置において、ボア212とボア213を介した外部ポート205と第2の内部ポート204の間のガスの流れを防止する。
【0038】
第2の内部ポート204にユニットが取付けられ、アセンブリ全体はボンベに嵌込まれ、このボンベには頸部214を介してバルブ201が螺入式に取付けられている。
【0039】
ボンベに充填するため、図2中に示された充填アダプター215は、外部ポート205内に螺入される。充填アダプター215の先端部216はボア212内に入り、これを塞ぐ。次に充填バルブ206が開放されて、ボンベは最初にボア209及び208を介して空にされる。その後、ボア208及び209を介して所望されるガスがボンベに充填される。
【0040】
充填作業中、ボア212は高圧ガスの供給から隔離され、こうして、放出バルブ部材210が不注意に開放状態に放置された場合でもユニットの内部に高圧ガスが取込まれることがないようになっている、という点を指摘しておく。
【0041】
充填の完了時点で、充填バルブ部材206は閉じられ、充填アダプター215が取外される(放出バルブ部材210は、閉じられていなければならない)。その後、充填バルブ部材206の不正開封を抑止するために、パッキン押えナット217上に安全シールを設置してもよい。
【0042】
納入後、顧客は、図8に示された放出アダプターを介して外部ポート205上に圧力調節装置を取付ける。放出アダプターは、ボア212と連通し、ボア208を閉じる。圧力調節装置がひとたび適切に連結されたならば、顧客は放出バルブ部材210を開放して、ボンベ内のガスが、ユニットを通って圧力調節装置まで、第2の内部ポート204及びボア213及び212を介して流動できるようにする。
【0043】
充填バルブ部材206が不正開封されたり及び/又は不注意に開放された場合、ボンベからのガスの流れは放出アダプターによって停止される。
【0044】
吸着ユニット218は、内部ポート204に連結され、ボンベ200内に延在し、入口220を有している。このユニット218は、入口220に隣接して位置づけされ15ミクロン超の直径を有する粒子を除去するように設計されている第1のフィルターを含む。
【0045】
第1のフィルターより上に、ユニット218は、適切なカリウム交換度と低い窒素能力を有するゼオライト3Aの層を少なくとも一層含む。この3A層は、第1のフィルターに隣接しかつこのフィルターのすぐ上になくてはならない。吸着材又はゲッターの追加層を、3A層より上に設置してもよい。第2のフィルターがユニット218の出口に隣接して取付けられ、0.5ミクロン超の直径を有する粒子を除去することができる。
【0046】
適切なゼオライト3Aの例としては、UOP EPG及びUOP XH−11が含まれる。
【0047】
以下の例は、本発明及びその利点をさらに例示するものである。
【実施例】
【0048】
[例1:ゼオライト4A吸着N2等温線]
現在内蔵式浄化吸着器で商業的に使用されている吸着材は、UOP S.A.B.Dビーズ4Aである。それは水を吸着するように設計されているが、空気の主成分(N2、O2)も同様に吸着することができる。
【0049】
吸着材が確実に完全に活性化されているようにするため、以下の活性化手順を実施した。4Aビーズの9mL試料をステンレス鋼管内に投入し、実験室用管状炉内に設置した。管を通して400mL/分の気化液体窒素流を確立した。予め設定したプログラムを用いて、炉を1℃/分の温度勾配で400℃まで加熱した。温度を400℃で4時間保持し、その後、熱を遮断し、試料を400mL/分の窒素流の下で室温まで冷却させた。その後、試料を窒素パージ済みグローブボックス内の等温セルに移して、水の再吸着を防止した。
【0050】
1torrの圧力トランスジューサオプションを伴うMicromerities ASAP2010を用いて純粋窒素吸着等温線を測定し、窒素の予測された取込みが存在することを見極めた。
【0051】
【表1】

【0052】
[例2:UOP XL8 3A吸着N2等温線]
XL8は、断熱ガラス窓において使用するように設計された3A分子篩製品(すなわち他のゼオライト相を全く含まないもの)である。それは、水を吸着するものの空気の主要成分(N2、O2、Ar)は吸着しないように設計されている。
【0053】
吸着材が確実に完全に活性化されているようにするため、上述の活性化手順を実施した。
【0054】
上述の通り窒素等温線を測定し、例1の4Aの場合よりも取込みははるかに少ないものの、それでもなお窒素の幾分かの測定可能な取込みが存在することを見極めた。
【0055】
【表2】

【0056】
[例3:UOP EPG3A吸着N2等温線]
エチレン精製用に設計された市販製品であるUOP EPG3Aを入手した。吸着材が確実に完全に活性化されているようにするため、以下の活性化手順を実施した。3Aビーズの9mL試料をステンレス鋼管内に投入し、実験室用管状炉内に設置した。管を通して400mL/分の気化液体窒素流を確立した。予め設定したプログラムを用いて、炉を1℃/分の温度勾配で400℃まで加熱した。温度を400℃で4時間保持し、その後、熱を遮断し、試料を400mL/分の窒素流の下で室温まで冷却させた。その後、試料を窒素パージ済みグローブボックス内の等温セルに移して、水の再吸着を防止した。
【0057】
例2の場合と同じ機器を使用して、UOPEPG3Aの窒素等温線を測定した。検出可能な窒素取込みが全く存在しないことを発見した。
【0058】
【表3】

【0059】
[例4:UOP XH−11 3A吸着等温線]
市販の3AであるUOP XH−11を入手した。吸着材が確実に完全に活性化されているようにするため、上述の活性化手順を実施した。
【0060】
例2の場合と同じ機器を使用して、UOP XH−11 3Aの窒素等温線を測定した。検出可能な窒素取込みが全く存在しないことを発見した。
【0061】
【表4】

【0062】
[例5:水素中のN2汚染を示す4A内蔵式浄化装置ボンベ投入試験]
以下のプロトコルにしたがって、0.4ppmvの窒素レベルを有する純粋水素をボンベに充填した。
1.バルク容器由来のUOP SABD 4A分子篩を空の吸着材管に充填する。
2.洗浄器管の底面にフリットディスクとサークリップを追加して管内に媒体を保持する。
3.管をバルブに嵌込む。
4.少なくとも250℃に加熱したオーブン内に内蔵式浄化装置アセンブリを挿入し、少なくとも1slpmで流動するヘリウムで、およそ±20時間パージする。
5.高温の内蔵式浄化装置アセンブリを取出し、それを、底面接続金具において低いヘリウムパージ圧力を有する冷却ラック内に設置する。目的は、管が冷却し圧力が降下する間不活性雰囲気を提供することにある。
6.内蔵式浄化装置アセンブリを冷却した後、冷却ラックから取出し、Oリング封止キャップを嵌込んで空気の流入を防ぐ。
7.ヘリウムでボンベを前処理し、内部に低い残留圧力を放置する。
8.ボンベから前処理バルブを取外し、浄化管の底面からOリング封止キャップを除去し、ボンベ内に内蔵式浄化装置アセンブリをすばやく挿入する。バルブにトルクを加えてボンベ内に入れる。
9.充填マニホルドピグテールをバルブ出口に嵌込む。マニホルドを空にした後、内蔵式浄化装置充填バルブを開き、ボンベを空にする。
10.その後H2を充填する。
【0063】
この手順が完了した後、ボンベから供給されたガスの窒素含有量を以下の通りに査定した。水素ガスを8時間80ml/分という制御された速度で吸着材を通して排出させ、次にボンベから流れる水素を、高周波放電検出器(HFDD)を伴うOrthodyne HE12ガス分析装置を用いた分析に付した。5本のボンベについて、この手順を行った。
【0064】
結果は以下の通りであった。
【0065】
【表5】

【0066】
一部のボンベ内の窒素レベルが、当初の充填ガスの含有量を大幅に超過したことがわかる。特定の理論により束縛されることなく、我々は、大気中のN2が、内蔵式浄化装置前処理ステップ6又は8において4A吸着材上に取込まれるものと考えている。
【0067】
[例6:N2による汚染を示す内蔵式浄化装置ボンベ内へのUOP XL8 3A投入試験]
分析に先立て浄化装置を通した制御された排出が全く行われず、市販のゼオライト3A、すなわちUOP XL8 3Aを使用したという点を除いて、例5の手順を反復した。経時的な変化を観察するため、分析を多数回くり返した。
【0068】
2中の初期N2汚染を測定し、以下の結果を得た。
【0069】
【表6】

【0070】
連続する多数回の分析により、5基の浄化装置のうち2基を除いて窒素値の減少が示された。値の減少は、分子篩からの捕捉されたN2のパージを実証している。パージを行わなかった2基の浄化装置は、明らかに高レベルで汚染されていた。
【0071】
3Aタイプの分子篩が水素の窒素汚染を防止しなかったということがわかる。
【0072】
[例7:N2での汚染を全く示さなかった内蔵式浄化装置ボンベ内へのUOP EPG及びUOP XH−11 3A吸着材の投入試験]
2つのさらなる3A分子篩、すなわちUOP XH−II及びUOP EPGを用いて、例6の手順を2回反復した。内蔵式浄化装置内ではこれらの吸着材のいずれの場合も、水素の窒素汚染は全く検出されなかった。具体的には、分子篩UOP 3A XH11を収納する内蔵式浄化装置を用いた5本の水素ボンベに対する試験は、以下の窒素測定値を生み出した。
【0073】
【表7】

【0074】
分子篩UOP 3A EPGを収納する内蔵式浄化装置を用いた5本の水素ボンベに対する試験は、以下の窒素測定値を生み出した。
【0075】
【表8】

【0076】
ボンベからのガスは、測定された窒素充填濃度と統計的に有意な形で異なるものではない。
【0077】
[例8:窒素汚染に対するK+交換度の影響の調査]
Liuら、Chem.Commun.46、pp4502〜4504 RSC 2010中の手順にしたがって、Sigma−Aldrichから購入した4A粉末の一連のK+交換を準備した。ナトリウム及びカリウムカチオンのイオン交換レベルを決定した。イオン交換の後、以下の手順を用いて2〜3グラムの試料を活性化した。
【0078】
磁器製皿に入れてオーブン内で試料を加熱する。70℃で開始し、30分間保持する。10℃の増分と保持で温度を110℃まで上昇させる。約45分間、110℃で保持する。
【0079】
窒素パージしたグローブボックスに取り出し、真空活性化のためセル内に投入する。
【0080】
真空活性化ユニット上に置き、室温でおよそ5×10-5torrまで減圧する。
【0081】
0.5℃/分で350℃までの加熱を開始する。8時間350℃に温度を保つ。
【0082】
冷却し、グローブボックス内に取り出す。
【0083】
試料を活性化した後、ASAP2010を用いて23℃でN2等温線を測定した。結果は下表に示されている。16%のK+交換では、N2、O2又はArの吸着を検出することができなかった。
【0084】
【表9】

【0085】
したがって、例6において3A分子篩を用いて見られた窒素汚染が、有意な窒素吸着能力を導く高レベルのカリウム交換レベルが不充分であったことに起因するものであったこと、そして例7で得られた良好な結果は、試験された3A分子篩が充分な高さのカリウム交換レベルを有していたことに起因するものであったことが演繹された。
【0086】
本明細書では、別段の明示的記載がない限り、「又は」という語は、条件の1つのみが満たされることを要求する演算子「排他的又は」とは対照的に、記載された条件のいずれか又は両方が満たされる場合に真の値を返す演算子の意味で使用される。「含む」という語は、「から構成される」という意味よりはむしろ「含んでいる」という意味で使用される。上で認識される全ての先行技術の教示は、その参照により本明細書に含められる。本明細書中の先行技術の公開された文献のいずれも、その教示が本願の出願日にオーストラリア又は他の国における一般常識であったことの承認又は表示とみなされるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1ppmv未満の窒素含有量と100ppmv未満の水分含有量を有する無機ガスの供給物から微量の水を除去するための方法であって、前記ガスから水を吸着する能力を有する吸着材と前記ガスを接触させるステップを含み、前記吸着材が23℃、101キロパスカルで0.01mgモル/g未満の純粋窒素吸着能力を有する、方法。
【請求項2】
前記吸着材が、15%以上のナトリウム交換用カリウムを有しかつ窒素吸着成分を含まない3Aゼオライトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記無機ガスの供給物が加圧容器内にあり、前記吸着材が前記容器内に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記吸着材が前記容器からのガスの出口に連結された導管内に存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ガスが、水素、ヘリウム、酸素、アルゴン若しくは他の希ガス又はこれらのガスの任意の配合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記吸着材との接触前の前記無機ガスの窒素含有量が500ppbv以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記窒素含有量が250ppbv以下である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記吸着材との接触前の前記ガスの水分含有量が10ppmv以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記吸着材との接触前の前記ガスの水分含有量が5ppmv以下である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
1ppmv未満の窒素含有量と100ppmv未満の水分含有量を有する供給すべき無機ガスの供給源と、前記供給源と連通するガス供給導管と、前記ガスから水を吸着するための、前記ガスと接触している吸着材とを含み、前記吸着材が15%以上のナトリウム交換用カリウムを有しかつ窒素吸着成分を含まない3Aゼオライトである、ガス供給装置。
【請求項11】
前記3Aゼオライトが、形成された吸着材粒子の内部に含まれ、前記形成された吸着材粒子が別に窒素吸着成分を含まない、請求項10に記載のガス供給装置。
【請求項12】
前記吸着材が前記ガスから水を吸着する能力を有し、23℃、101キロパスカルで0.01mgモル/g未満の純粋窒素吸着能力を有する、請求項10に記載のガス供給装置。
【請求項13】
前記無機ガスの供給源が加圧容器であり、前記吸着材が前記容器内に存在する、請求項10に記載のガス供給装置。
【請求項14】
前記吸着材が前記ガス供給導管内に存在し、前記ガス供給導管が前記容器からのガスの出口に連結されている、請求項13に記載のガス供給装置。
【請求項15】
前記ガスが、水素、ヘリウム、酸素、アルゴン若しくは他の希ガス又はこれらのガスの任意の配合物である、請求項10に記載のガス供給装置。
【請求項16】
前記吸着材との接触前の前記無機ガスの窒素含有量が500ppbv以下である、請求項10に記載のガス供給装置。
【請求項17】
前記窒素含有量が250ppbv以下である、請求項16に記載のガス供給装置。
【請求項18】
前記吸着材との接触前の前記ガスの水分含有量が10ppmv以下である、請求項10に記載のガス供給装置。
【請求項19】
前記吸着材との接触前の前記ガスの水分含有量が5ppmv以下である、請求項18に記載のガス供給装置。
【請求項20】
供給すべき加圧された無機ガスを収納するボンベであって、前記ガスが、1ppmv未満の窒素含有量と100ppmv未満の水分含有量を有する前記ガスのバルク供給物から前記ボンベ内に導入されており、前記ボンベが、前記ガスから水を吸着するための、前記ガスと接触している吸着材を収納し、前記吸着材が前記ガスから水を吸着する能力を有し、23℃、101キロパスカルで0.01mgモル/g未満の純粋窒素吸着能力を有する、ボンベ。
【請求項21】
前記吸着材が、15%以上のナトリウム交換用カリウムを有しかつ窒素吸着成分を含まない3Aゼオライトである、請求項20に記載のボンベ。
【請求項22】
前記吸着材が、入口と出口とを有しかつ前記入口と前記出口との間に前記吸着材を通る流路を画定するチャンバ内に収納されており、前記チャンバの入口が前記ボンベ内の前記ガスと流体連通し、前記チャンバの出口が前記ボンベからの前記ガスの供給用出口と流体連通している状態で前記吸着材が配置されている、請求項20に記載のボンベ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−44429(P2013−44429A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−182556(P2012−182556)
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】