説明

乾燥キノコ類の製造方法および乾燥キノコ類の製造装置

【課題】ミネラルを多く含むと共に、色の劣化がなく、食味や芳香のよい乾燥キノコ類を製造する方法および乾燥キノコ類の乾燥装置を提供する。
【解決手段】キノコ類と海洋深層水とを接触させることにより、キノコ類内の水分の少なくとも一部を海洋深層水と置換した後に、60℃以下の乾燥空気を直接キノコ類に当てることによりキノコ類を乾燥することを特徴とする乾燥キノコ類の製造方法。該製造方法によって、製造された乾燥キノコ類は、海洋深層水が含むミネラルを多く含み、色の劣化がなく、食味や芳香のよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥キノコ類の製造方法および乾燥キノコ類の製造装置に関する。更に詳しくは、海洋深層水のミネラル成分を付加した乾燥キノコ類の製造方法および乾燥キノコ類の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向が高まっていることから、ローカロリーなキノコ類が注目されているが、キノコ類は人体が必要とするミネラル成分が少なく、それ自体で健康用食品として満足するものとは言い難い。
一方、海洋深層水は、多量のミネラル成分を含むことが知られており、特許文献1には、培地基材にミネラルを多く含む海洋深層水を混合して調製した培地を栽培ビンに詰めて、該培地に接種したキノコ種菌を、培養、生育処理して製造したことを特徴とする栽培ビンを使用したキノコ類が開示されている。
【0003】
また、キノコ類には、干しシイタケに代表されるように乾燥されて販売されているものも多い。乾燥したキノコ類の品質は、乾燥前の処理方法、乾燥の方法や状態に著しく左右される。乾燥が不十分である場合は、カビ臭や腐敗臭が発生するなど、商品として販売されずに廃棄されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−23857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の記載の方法で栽培されたキノコ類は、培養,生育において海洋深層水を取り込むことができることから、内部にミネラルを多く含む。しかしながら、真水と異なるミネラルを多く含む海洋深層水が、キノコの培養、生育に適しているとは言い難いため、特許文献1の記載の方法では、キノコ類が十分に成長できないことがある。そのため、この方法で作製したキノコ類は、食味や食感がよくない場合が多い。
【0006】
また、キノコ類の乾燥方法としては、かつては天日干しが主流であったが、天候に左右されることもあり、現在では乾燥機によって乾燥させることによって製造されることが多い。一方で、従来の乾燥機では、ボイラー、電熱ヒータ等からの熱により、キノコ類を乾燥するが、キノコ類自体が加熱されるため、キノコ類が黒く変色したり、食味や芳香が低下したりする場合がある。そのため、従来の天日干しのように低温でありながら、十分に乾燥することが望まれている。
【0007】
かかる状況下、本発明の目的は、ミネラルを多く含むと共に、色の劣化がなく、食味や芳香のよい乾燥キノコ類を製造する方法および乾燥キノコ類の乾燥装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の乾燥キノコ類の製造方法は、キノコ類と海洋深層水とを接触させることにより、キノコ類内の水分の少なくとも一部を海洋深層水と置換した後に、60℃以下の乾燥空気を直接キノコ類に当てることによりキノコ類を乾燥することを特徴とする。
この方法では、キノコの培養、生育に海洋深層水を使用する場合と異なり、成長後のキノコ類の水分を海洋深層水と置換するため、キノコ類に対して海洋深層水が含むミネラルをその内部に十分に行き渡らせることができ、さらにキノコ類が加熱されることがないため、乾燥後のキノコ類は、味や食感が損なわれることはない。
【0009】
また、キノコ類から放出された水分を含む湿潤空気を、非加熱式水分除去によって乾燥空気に戻して循環させて再びキノコ類に当てることが好ましい。
前記非加熱式水分除去の方法としては、圧縮除湿や吸着剤への水分吸着などが挙げられるが、循環する空気中の湿潤空気を凝縮、もしくは吸着させる時に出る温度(吸着熱)を使用するため、乾燥されるキノコ類が過度に加熱されることがない。そのため、キノコ類の変色や味の低下を回避することができる。また、乾燥に当たり加温に電気ヒータ、石油等の熱源を用いないことも特徴の一つであり、これにより運転コストを低減することができる。
【0010】
前記非加熱式水分除去の方法としては、この中でも、吸着剤への水分吸着が好ましい。吸着剤としては、シリカゲル、ゼオライト、活性炭などが挙げられる。
【0011】
さらに本発明の乾燥キノコ類の製造方法において、乾燥中のキノコ類および循環した乾燥空気に、紫外線を照射することが好ましい。乾燥時に紫外線を照射することにより、キノコ類に繁殖する雑菌や、循環する空気中に浮遊する雑菌を殺菌することができる。また、紫外線を照射するとことによって、キノコ類に含まれる旨み成分等を引き出すことができる。
【0012】
本発明の乾燥キノコ類の製造装置は、キノコ類を乾燥する乾燥室と、前記乾燥室の空気を循環させる空気循環装置と、循環した空気中の水分を除去する非加熱式水分除去装置と、キノコ類に紫外線を照射する紫外線照射ランプとを設けたことを特徴とする。
このような構成とすれば、本発明の乾燥キノコ類の製造方法を好適に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、海洋深層水が含むミネラルを多く含み、色の劣化がなく、食味や芳香のよい乾燥キノコ類を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係るキノコ類乾燥装置の内部構造を示す概略正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るキノコ類乾燥装置の内部構造を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態として、本発明に係るキノコの乾燥装置を使用した、乾燥キノコの製造方法について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係るキノコ類乾燥装置の内部構造を示す概略図であり、図2はその側面図である。図1,2において、1は乾燥装置であり、その内部は、上面板2a、側面板2b、下面板2cからなる外枠2と、出入り用のドア(図示せず)によって密閉することができる。
【0017】
乾燥装置1内の上部には、複数枚の網状板3aからなる収容棚3が設けられ、網状板3aの上には、キノコ類を入れる複数のトレー3bが配置されている。側面板2bにおける収容棚3の近傍には、複数の紫外線ランプ4が設けられている。また、乾燥装置1内の下部には送風機を備えた非加熱式の水分分離機5が設けられている。また、水分分離機5の周囲には、湿潤空気と、水分が除去された乾燥空気が混ざらないように仕切板6が配置されている。
【0018】
本発明の乾燥キノコの製造方法を適用することができるキノコ類に特に限定はないが、好適なキノコ類を例示すると、シイタケ、マイタケ、エノキタケ、シメジ、ナメコなどが挙げられ、シイタケが特に好適である。
【0019】
キノコ類は、ぼた木、菌床から採取された後、キノコ類がぼた木もしくは菌床から生えていた食性にならない部分を鋭利な小刀等で切除される。なお、キノコ類の幹に存在する導管をつぶすと、キノコ類への海洋深層水の浸透が悪くなるため、切除に際して導管を潰すことのないようにすることである。導管が潰れると海洋深層水を吸水性が著しく低下する傾向にある。
【0020】
次にキノコ全体、もしくは幹の部分のみを海洋深層水に浸漬するか、あるいは海洋深層水を噴霧する。キノコ類の導管等から海洋深層水を吸い上げ、キノコ類内の水分の少なくとも一部を海洋深層水に置換することができ、海洋深層水が含むミネラルをキノコ類の内部に十分に行き渡らせることができる。
キノコ類を海洋深層水に浸漬あるいはキノコ類に海洋深層水を噴霧してから静置する時間は、キノコ類の大きさや浸漬する際の温度にもよるが、通常、30〜120分程度である。また、浸漬温度あるいは噴霧後の温度が低すぎるとキノコ類への海洋深層水の浸透が悪くなり、高すぎるとキノコ類自体の風味が失われることがあるため、浸漬温度あるいは噴霧後の温度は、0〜60℃である。
【0021】
海洋深層水を浸透させたキノコ類をトレー3bに入れ、収容棚3の網状板3aの上には、等間隔に並べる。キノコ類の一つのトレーに入れすぎるとトレー下部に配置されたキノコの乾燥が悪くなる傾向にあるため、トレー3bにいれるキノコ類の量としては、シイタケの場合で1〜3層である。
【0022】
キノコ類を入れたトレー3bを収容棚3に収容した後にドア(図示せず)を閉じて、乾燥装置1の内部を密閉する。次いで、送風機を備えた水分分離機5を作動させることにより、乾燥装置1内の下部の空気を強制的に上部へ流動させる。
送風機を備えた水分分離機5によって流動された空気は、水分分離機5の内部、収容棚3を順に介して、最上部まで移動した後に、外壁部の空気流路を通って乾燥装置1内の下部に流動することによって、装置内の空気が循環する。なお、図2に示すように装置最上部の上面板2aには、下部から流動してきた空気が一定方向へ流れるように案内板2dが備えられ、空気が収容棚3に逆流して混在しないようになっている。
【0023】
水分分離機5は、吸着剤であるシリカゲルを充填した容器であり、シリカゲルに水分が吸着することによって、循環空気中の水分を除去することができる。吸着剤に水分が吸着すると、吸着熱により発熱するため、乾燥機内の適度に温度を上げることができる。一方で、吸着による発熱が穏やかであり、また、装置内の温度が上昇すると吸着剤への水分の吸着量が減少して発熱量が低減するため、装置内部が過度に加熱されることはない。装置内の温度は、吸着剤の発熱量と、装置自体の断熱性によって制御することができ、好適には、キノコ類の乾燥に適した60℃以下の温度となるようにされている。
【0024】
なお、本実施形態では、吸着剤としてシリカゲルを使用したが、従来公知の吸着剤を使用することができる。具体的には、ゼオライト、活性炭などを挙げることができる。なお、これらの吸着剤は、高温(通常100℃以上)で加熱処理を行うことによって、再生することができる。
また、水分分離機5は、吸着剤を使用したものに限定されず、非加熱式の水分除去装置であればよい。特に乾燥機が大型化する場合には、圧縮空気除湿装置を好適に使用することができる。
【0025】
供給された空気は、水分分離機5を介することで水分が除去され、乾燥空気として、上部の収容棚3に供給される。収容棚3に配置された、キノコ類が入れられたトレー3bはメッシュ状であり、収容棚3の網状板3aと同様に通風性であるため、乾燥空気は直接トレー3bの下方からキノコ類に効率よく接触することができる。キノコ類に接触した乾燥空気は、キノコ類から蒸発する水分で徐々に湿潤しながら上部へ流動する。最上部で湿潤した空気は、外壁部に設けられた空気流路を通って再び下部へ流動し、水分分離機5に供給され、装置全体で空気が循環する。
【0026】
なお、紫外線ランプ4をキノコ類および乾燥装置内部の空気に対して、照射することで雑菌の繁殖を抑制することができ、さらに紫外線照射によって、天日干しと同様にビタミンDを増加させることができる。
【0027】
本発明の製造方法によると、乾燥に供するキノコ類の量や、その含水量にもよるが、通常、15〜20時間程度で、キノコ類の水分含有量を15%以下とすることができる。
乾燥後のキノコ類は、表面の変色がなく、海洋深層水が含む、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)などのミネラルを十分に含み、さらに、水戻しをすると、食味や食感がよい。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
キノコ類として、十分に発育したシイタケを使用し、海洋深層水としては、石川県能都町沖で採取した海洋深層水を使用した。
まず、シイタケ10kgを、適量の海洋深層水中に60分間浸漬した後に、海洋深層水から取り出し、タオルで表面の水分を取り除いた。次いで、シイタケを複数のトレーに重ならないように並べ、図1と同様の構成の「乾燥キノコ類製造装置」(MC羽賀社製)に配置し、送風機を備えた水分分離機を作動して、空気を吸着剤であるシリカゲルを充填した水分除去器を介して、水分を除去した後にシイタケに供給し、シイタケの乾燥を行った。なお、紫外線照射ランプにて、常時、320mmから380mm波長の紫外線ランプを照射して装置内部の殺菌を行った。
運転中、水分分離器入り口での空気中の水分量をモニターし、空気の湿度が3%になった段階で運転を停止した。なお、水分分離器出口で測定した、空気の湿度は、常時3%以下であった。
【0030】
乾燥後のシイタケは、表面が黒く変色しておらず、天日干しに近い色をしていた。乾燥後のシイタケを水戻しした後の色もきれいであり、味も良好であった。
【0031】
乾燥後のシイタケに含まれるミネラル成分(Na,K,Ca,Mg)を測定した。試験機器にはICP発光分光分析装置(日本ジャーレル・アッシュ(株)製IRIS Advantage/SSEA)を使用した。
【0032】
表1に乾燥後のシイタケに含まれるミネラル成分量を示す。単位は化学分析値mg/100gである。
なお、シイタケAは、「海洋深層水の浸透なし」の比較例であり、シイタケBは、「海洋深層水の浸透あり」の実施例である。シイタケ中の含有量が少ないミネラル成分である、Na、Ca、Mgの含有量が、シイタケBの方が明らかに大きくなっており、海洋深層水への浸漬によって、これらのミネラル成分量が増加していることがわかる。一方、元来シイタケに多く含まれる成分であるカリウムは溶水して減少しているが必要な量に対して十分な量を含有している。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の製造方法によると、海洋深層水が含むミネラルを多く含み、色の劣化がなく、食味や芳香のよい乾燥キノコ類を製造することができ、該乾燥キノコ類はヘルシーな食材として利用出来る。
【符号の説明】
【0035】
1 乾燥装置
2 外枠
2a 上面板
2b 側面板
2c 下面板
2d 案内板
3 収容棚
3a 網状板
3b トレー
4 紫外線ランプ
5 水分分離機
5a 水分分離機の入口
5b 水分分離機の出口
6 仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノコ類と海洋深層水とを接触させることにより、キノコ類内の水分の少なくとも一部を海洋深層水と置換した後に、60℃以下の乾燥空気を直接キノコ類に当てることによりキノコ類を乾燥することを特徴とする乾燥キノコ類の製造方法。
【請求項2】
キノコ類から放出された水分を含む湿潤空気を、非加熱式水分除去によって乾燥空気に戻して循環させて再びキノコ類に当てる請求項1記載の乾燥キノコ類の製造方法。
【請求項3】
前記非加熱式水分除去が、吸着剤への水分吸着である請求項2記載の乾燥キノコ類の製造方法。
【請求項4】
乾燥中のキノコ類に、紫外線照射を照射する請求項1から3のいずれかに記載の乾燥キノコ類の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の製造方法で製造した乾燥キノコ類。
【請求項6】
キノコ類を乾燥する密閉型乾燥室と、前記乾燥室の空気を循環させる空気循環装置と、循環した空気中の水分を除去する非加熱式水分除去器と、キノコ類に紫外線を照射する紫外線照射ランプとを設けたことを特徴とする乾燥キノコ類の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−19481(P2011−19481A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169400(P2009−169400)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(392012836)株式会社泉の台開発 (1)
【Fターム(参考)】