説明

乾燥キムチの製造方法

【課題】キムチの製造に際して白菜等の野菜を発酵させて得た乳酸菌が不活性となることがなく発酵食品としての効果が低減せず、かつ、製造に掛かる時間を短くして生産効率を向上させることができる乾燥キムチの製造方法を提供する。
【解決手段】野菜に少なくとも唐辛子粉と動物性タンパク質材料を混ぜて野菜を発酵させることによりキムチを製造し(S1)、所定の大きさに切断し(S2)、キムチを40℃以下の温度で減圧乾燥することにより(S3)、乾燥キムチを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥キムチの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、乾燥キムチの製造方法としては、第1工程として、通常のキムチを小さくきざみ、第2工程として、きざんだキムチを温度45℃〜65℃の熱風にさらし、さらに、第3工程とし、65℃〜85℃の熱風にさらす方法がある(特許文献1)。
【0003】
また、従来における他の例として、キムチ漬けを室温で乾燥させた後に、35℃〜40℃までの領域を3〜5℃/時間の昇温速度(第1昇温速度)で加熱し、さらに、60℃未満までの領域を第1の昇温速度よりも低い昇温速度(第2昇温速度)で加熱するものがある(特許文献2)。なお、この特許文献2における実施例では、乾燥のトータル時間を24時間とする点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−211821号公報
【特許文献2】特開2007−274957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の製造方法においては、キムチを45℃〜65℃の熱風にさらし、さらに、65℃〜85℃の熱風にさらしてしまうため、発酵により得られた乳酸菌が死滅してしまうという問題がある。
【0006】
また、特許文献2の製造方法においても、40℃以上の60℃未満の温度にまで加熱するので、発酵により得られた乳酸菌が死滅又は弱まってしまうという問題がある。
【0007】
すなわち、乳酸菌は40℃よりも温度が高くなると不活性となって弱くなってしまうので、特許文献1の製造方法と特許文献2の製造方法ともに、発酵食品としての効果が弱くなってしまうという問題がある。
【0008】
また、特許文献2においては、乾燥に掛かる時間が24時間と長いため生産効率が悪いという問題がある。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする問題点は、キムチの製造に際して白菜等の野菜を発酵させて得た乳酸菌が不活性となることがなく発酵食品としての効果が低減せず、かつ、製造に掛かる時間を短くして生産効率を向上させることができる乾燥キムチの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記問題点を解決するために創作されたものであって、第1には、乾燥キムチの製造方法であって、
野菜に、動物性タンパク質を含む材料と唐辛子粉とを少なくとも混ぜて野菜を発酵させることによりキムチを製造するキムチ製造工程と、
キムチ製造工程により製造されたキムチを40℃以下の温度で減圧乾燥する減圧乾燥工程と、
を有することを特徴とする。
【0011】
第1の構成の乾燥キムチの製造方法によれば、キムチを40℃以下の温度で乾燥させるので、キムチに含まれる乳酸菌が不活性(弱る)となることがなく、キムチの発酵食品としての効果を維持することができる。また、40℃以下の温度で乾燥しても、減圧乾燥させるので、短時間で効率よく乾燥を行うことができ、生産効率を向上させることができる。特に、乾燥温度が低くても減圧によって水分が蒸発しやすくなるので、食品の品質、栄養価、色調を損なわずに短時間で乾燥を行うことができる。
【0012】
また、第2には、上記第1の構成において、減圧乾燥工程において、990hPa以下の気圧で乾燥を行うことを特徴とする。よって、短時間で効率よく乾燥を行うことができ、生産効率を向上させることができる。
【0013】
また、第3には、上記第1又は第2の構成において、減圧乾燥工程において、30℃以上の温度で乾燥を行うことを特徴とする。よって、30℃以上40℃以下の温度で乾燥させることにより、乳酸菌発酵を十分に行うことが可能となり、また、旨味を向上させることができる。
【0014】
また、第4には、前記第1から第3までのいずれかの構成において、キムチ製造工程と減圧乾燥工程の間、又は、減圧乾燥工程の後にキムチを所定の長さごとに切断する切断工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に基づく乾燥キムチの製造方法によれば、キムチを40℃以下の温度で乾燥させるので、キムチに含まれる乳酸菌が不活性(弱る)となることがなく、キムチの発酵食品としての効果を維持することができる。また、40℃以下の温度で乾燥しても、減圧乾燥させるので、短時間で効率よく乾燥を行うことができ、生産効率を向上させることができる。特に、乾燥温度が低くても減圧によって水分が蒸発しやすくなるので、食品の品質、栄養価、色調を損なわずに短時間で乾燥を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】乾燥キムチの製造工程を示すフローチャートである。
【図2】キムチを製造する際の製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明においては、キムチの製造に際して白菜等の野菜を発酵させて得た乳酸菌が弱くなることがなく発酵食品としての効果が低減せず、かつ、製造に掛かる時間を短くして生産効率を向上させることができる乾燥キムチの製造方法を提供するという目的を以下のようにして実現した。
【0018】
本実施例の乾燥キムチは、キムチを切断して減圧乾燥することにより製造したものである。
【0019】
本実施例の乾燥キムチの製造方法を図1、図2を使用して説明する。まず、キムチを製造する(S1)。このキムチは従来からのキムチと同様のものであり、例えば、図2に示すように製造する。
【0020】
すなわち、図2を使用して以下に説明すると、まず、白菜等の野菜を6〜24時間塩漬けにし(S11)、その後、塩漬けにした野菜を水洗いして塩抜きをし(S12)、その後、本漬けを行う(S13)。なお、野菜としては、白菜以外の野菜でもよく、例えば、胡瓜(キュウリ)や大根であってもよい。
【0021】
本漬けに際しては、野菜に薬念(ヤンニョム)を加えて容器に入れて40〜120時間発酵させる。薬念としては、唐辛子粉、塩、砂糖、動物性タンパク質材料(動物性タンパク質を含む材料)(例えば、あみ(小エビ)・イカ・イワシ等の魚介類の塩辛(つまり、魚介類を塩漬けにしたもの))、水を混ぜたものとする。野菜と薬念(水以外の構成物)の合計重量に対する重量割合は、例えば、野菜が85〜90重量%、塩が2〜3重量%、唐辛子が3〜4重量%、砂糖が2〜3重量%、動物性タンパク質材料が2〜3重量%とする。
【0022】
なお、薬念には、次の追加材料を混ぜてもよい。すなわち、ニンニク、ショウガ等が挙げられる。この場合には、野菜と薬念(水以外の構成物)の合計重量に対する重量割合は、例えば、野菜と追加材料の合計が85〜90重量%、塩が2〜3重量%、唐辛子が3〜4重量%、砂糖が2〜3重量%、動物性タンパク質材料が2〜3重量%とする。また、薬念には、水の代わりに、出し汁(牛肉、煮干し、昆布等の出し汁)を混ぜてもよい。
【0023】
薬念に混ぜる水や出し汁の量は少量とし、例えば、野菜と薬念(水以外の構成物)の合計重量に対して5〜15重量%とする。
【0024】
以上のようにしてキムチを製造する。製造されたキムチの水分量は、野菜等の具材の内部の水分と具材の外部の水分を併せて85〜90%となっている。また、製造されたキムチにおいて、野菜は動物性タンパク質材料により発酵しているので、大量の乳酸菌が含まれている。
【0025】
以上のようにして製造されたキムチを所定の長さ(例えば、30〜50mmの長さ)ごとにに切断し(S2)、その後、減圧乾燥を行う(S3)。
【0026】
この減圧乾燥に際しては、990hPa(ヘクトパスカル)以下の気圧(好適には、980hPa以上990hPa以下の気圧)で、乾燥温度を35℃以上40℃以下とし、乾燥時間を9〜18時間とする。具体的は、減圧乾燥における乾燥温度と乾燥時間としては、例えば、所定時間(2〜3時間)ごとに所定温度(0.5℃〜1.5℃)昇温していく。例えば、第1工程で35.5℃以上36.5℃未満で2.5時間〜3.5時間、第2工程で36.5℃以上37.5℃未満で2.5時間〜3.5時間、第3工程で37.5℃以上38.5℃未満で2.5時間〜3.5時間、第4工程で39℃以上40℃以下で1.5時間〜2.5時間とする。なお、徐々に温度を上昇させるのは、食品の品質、栄養価、色調を損わずに雑菌の繁殖を抑えるためである。なお、例えば、最初から40℃の温度で乾燥すると、食品の品質が劣化するおそれがある。また、1時間当たりの上昇温度は、0.3℃〜1℃程度が好ましい。つまり、1時間当たりの上昇温度を1℃よりも高くすると、食品の品質を劣化させるおそれがある。
【0027】
なお、40℃以下で乾燥するので、乳酸菌が不活性化することがなく、発酵を促進させることができる。また、35℃以上で乾燥するので、キムチを乾燥させることができる。なお、乳酸菌発酵を十分に行うには、少なくとも30℃以上の温度で乾燥する必要がある。つまり、30℃以上40℃以下の温度が発酵促進に最適な温度である。また、気圧が990hPaを超えると、減圧の効果(乾燥時間の短縮)を十分得ることができない。
【0028】
以上のように減圧乾燥を行うことにより、乾燥キムチが製造される。製造された乾燥キムチの水分量は、8〜12%程度となる。
【0029】
なお、製造された乾燥キムチは、キムチ風味の調味料として使用でき、例えば、いわゆる鍋料理に使用することによりキムチ風味の鍋料理とすることができる。
【0030】
以上のように、本実施例の乾燥キムチの製造方法によれば、キムチを40℃以下の温度で乾燥させるので、キムチに含まれる乳酸菌が不活性(弱る)となることがなく、キムチの発酵食品としての効果を維持することができる。また、40℃以下の温度で乾燥しても、990hPa以下の減圧下で乾燥させるので、短時間で効率よく乾燥を行うことができ、生産効率を向上させることができる。特に、乾燥温度が低くても減圧によって水分が蒸発しやすくなるので、食品の品質、栄養価、色調を損なわずに短時間で乾燥を行うことができる。また、乾燥によりキムチの水分が蒸発するが、その分旨味が濃縮された食品となり、特に、30℃以上40℃以下の低い温度で乾燥することにより旨味が顕著となる。つまり、高温で乾燥させる場合に比べて旨味が向上する。
【0031】
なお、上記の説明では、ステップS1で製造されたキムチを切断(S2)した後に減圧乾燥する(S3)ものとして説明したが、製造されたキムチを減圧乾燥した後に切断するようにしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥キムチの製造方法であって、
野菜に、動物性タンパク質を含む材料と唐辛子粉とを少なくとも混ぜて野菜を発酵させることによりキムチを製造するキムチ製造工程と、
キムチ製造工程により製造されたキムチを40℃以下の温度で減圧乾燥する減圧乾燥工程と、
を有することを特徴とする乾燥キムチの製造方法。
【請求項2】
減圧乾燥工程において、990hPa以下の気圧で乾燥を行うことを特徴とする請求項1に記載の乾燥キムチの製造方法。
【請求項3】
減圧乾燥工程において、30℃以上の温度で乾燥を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の乾燥キムチの製造方法。
【請求項4】
キムチ製造工程と減圧乾燥工程の間、又は、減圧乾燥工程の後にキムチを所定の長さごとに切断する切断工程を有することを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の乾燥キムチの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−205923(P2011−205923A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74861(P2010−74861)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(399084720)八尋産業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】