説明

乾燥ポリマーと脂質の組成物

本発明は、経口投与可能な組成物であって、ポリマー、脂質及び生物活性剤の乾燥混合物を含み、水又は胃腸管液に接触することで、前記脂質及び前記生物活性剤、並びに、必要に応じてさらに水を含む粒子を形成することができる組成物を提供する。前記粒子は、液晶相構造を有することが好ましい。本発明は、また、ポリマー、脂質及び生物活性剤を含む組成物の形成方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物活性剤を含む経口投与可能な組成物、例えば、医薬、獣医学又は食品薬の組成物、とりわけ、生物活性剤の制御放出が可能な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生物活性剤を含む経口供給される組成物、例えば、医薬の多くにとって、前記生物活性剤の胃腸(GI)管からの取り込みが所定の期間(例えば、短期若しくは長期)起こり又は胃腸管の特定領域で起こるためには、前記生物活性剤が前記組成物の他の構成成分から制御又は持続した様式で放出されることが重要である。
【0003】
最も広く実施されている制御放出技術は、圧縮された親水性ポリマーマトリクスの使用を含む。前記マトリクスは、胃腸管内で水和してゲル層を形成する。このマトリクスは、受食性(例えば、可溶性若しくは生分解性)又は非受食性の場合があり、多孔性又は非多孔性の場合がある。そして、前記生物活性剤は、一般的には、前記マトリクスの中で溶解及び/又は分散している。前記従来の制御放出技術は、例えば、『医薬放出制御技術ハンドブック』(非特許文献1)に記載されている。
【0004】
非受食性ポリマーマトリクスからの制御放出は、前記生物活性剤の溶解とその後に続く傾斜依存拡散によって、ゲル層から膨潤ポリマーネットワーク自身又は前記ゲルの溶剤が充填された孔を通して起こる。
【0005】
前記生物活性剤が親水性で可溶性が高い場合、前記生物活性剤が前記マトリクスから比較的急速に放出されてしまうため、持続放出を達成することが困難な場合がある。一方、前記生物活性剤が疎水性又は低水溶性である場合、前記マトリクスからの前記生物活性剤の高度の放出が困難な場合があり、さらには、一旦放出されると、前記生物活性剤が胃腸管内で沈殿することがあり、その結果として、胃腸管からの取り込みが予測不能で極めて変わりやすくなることがある。
【0006】
別の受食性マトリクスのケースでは、前記生物活性剤の制御放出は、前記ポリマーマトリクスが浸食され、埋め込まれた前記生物活性剤が浸食表面から放出されることにより達成される。したがって、その放出速度は、主に、前記マトリクスポリマーの浸食速度によって決定される。可溶性が高い親水性生物活性剤は、また、水和したポリマーマトリクスを通して拡散により放出されうる。しかしながら、拡散による放出は、低水溶性又は疎水性生物活性剤では、多くは、無視できるほどである。非受食性ポリマーマトリクスの場合もまた、前記生物活性剤が胃腸管内で沈殿し、前記胃腸管からの前記生物活性剤の取り込みが予測不要で極めて変わりやすくなるという問題がある。
【非特許文献1】Donald L. Wise、Marcell Dekker編集『医薬放出制御技術ハンドブック』“Handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology”New York, 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
我々は、これらの従来の制御放出技術についての問題は、ポリマーと脂質を含むハイブリッドマトリクスであって、水に接触することで自己組織化するナノ構造体、例えば、液晶構造を有するナノ構造体を放出するハイブリッドマトリクスの使用により対処できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、1つの態様として、本発明は、経口投与可能な組成物であって、生理学的に許容される親水性ポリマー(好ましくは、ゲル化可能な親水性ポリマー)、生理学的に許容される脂質及び生物活性剤の乾燥混合物を含み、前記脂質、生物活性剤及びポリマーは分子レベルで相互に分散しており、水に接触することで前記脂質及び前記生物活性剤並びに必要に応じてさらに水を含む粒子を形成できる組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
水に接触することで形成される前記粒子は、エマルジョン滴、ミセル、逆ミセル相の粒子、小胞、多層状体、又は、立方相、L3相、ラメラ相若しくは六方相の液晶構造体の凝集体若しくは断片であることが好ましい。前記脂質とポリマーとが分子レベルで相互に混合された状態で、前記粒子は、水又は胃腸管液に接触することで自動的に集合し、概して、ナノメートルサイズとなる。前記ナノメートルサイズとは、例えば、最大寸法が、ナノメートルからマイクロメートルの規模であって、例えば、0.5nm〜20μmであり、より一般的には、10〜5000nmであり、とりわけ、100〜1000nmである。
【0010】
脂質とポリマーの分子レベルの相互分散は、顆粒化のような技術では達成できないが、一般的な溶剤を使用した脂質とポリマーの溶液の溶剤除去により、又は、例えば、溶融押出しのような高温及び/若しくは高圧での混合により、特に効率的に達成される。
【0011】
分子レベルでの相互分散が達成されたかどうかは、前記組成物の走査型電子顕微鏡観察により容易に決定できる。例えば、20重量%を超える大部分の脂質相が、例えば、500nm以上(より好ましくは、100nm以上)の検出可能な小滴として得ることができた場合には、前記混合工程は、適当な分子レベルの相互混合を達成できていないだろう。脂質とポリマーの混合に続く保管の際に、分離が起こることがある。しかしながら、前記構成成分の分散は、やはり、顆粒化による達成できるものよりも優れており、その産物は、やはり、本発明に含まれる。
【0012】
別のアプローチとして、前記組成物は、生物活性剤及び脂質を含む予め形成された粒子であって、水に接触することで、例えば、L2相、La相、L3相、立方相又は六方相のナノ粒子(好ましくは、液晶ナノ粒子)を形成する粒子を含むポリマーマトリクスの形をとってもよい。
【0013】
したがって、その他の態様として、本発明は、経口投与可能な組成物であって、生理学的に許容される水溶性の親水性ポリマーを含み、前記ポリマーには、粒子が分散しており、前記粒子が、生理学的に許容される脂質及び生物活性剤を含み、水又は胃腸管液に接触することで、前記脂質、前記生物活性剤及び水を含むナノメートルサイズの粒子(とりわけ、液晶粒子)を形成する粒子である組成物を提供する。
【0014】
改めて、「ナノメートルサイズの」とは、粒子が有する最大寸法が、ナノメートルからマイクロメートルの規模であること、例えば、0.5nm〜20μmであり、より一般的には、10〜5000nmであり、特に、100〜1000nmであることを意味する。別の態様において、ここで使用される「ナノメートルサイズの」とは、例えば、10nm〜100μm、より一般的には、50nm〜10μm、特に、100nm〜1μm等のナノメートルからマイクロメートルの粒子を示す。
【0015】
好ましい実施形態の1つにおいて、本発明の組成物は、低pHで小さい粒子を形成し、より高いpHでより大きな粒子を形成する。具体的には、pH7未満、特にpH3未満、とりわけpH2.5未満の水性液にさらされた場合、形成される前記粒子は、0.5〜1000nmの粒子、特に10〜500nmの粒子、とりわけ10〜200nmの粒子とすることができる。対照的に、pH6を超える水性液にさらされた場合、200〜100000nmサイズの粒子、好ましくは250〜10000nmの粒子、より好ましくは400〜5000nmの粒子が形成される(場合により、前記粒子は、1000nmを超える)。
【0016】
前記予め形成された液晶前駆体粒子を含む組成物の製造は、例えば、前記脂質及び前記ポリマーを、前記ポリマーが可溶であり前記脂質が液晶相の小滴、小胞、粒子等を形成する溶液に分散させ、そして、その溶剤を除去することで達成できる。前記生物活性剤は、前記脂質に溶解又は分散した状態で存在する。
【0017】
前記組成物のケースでは、例えば、胃腸管の内容物等の水性液との接触は、前記ポリマーマトリクスに、水及び前記生物活性剤を含み、例えば、L2相、La相、立方相、L3相又は六方相等の液晶構造を有する脂質粒子の放出を起こさせる。すなわち、これらは、(単純な)水中油型エマルジョンの場合のような、単に構造のない小滴や、水に影響されない小滴ではない。
【0018】
本発明の組成物は、最終生成物の望ましい相挙動を達成するために適当な構成成分の組み合わせを使用して製造することができる。前記適当な組み合わせの選択方法は、十分に当業者の通常の能力範囲内であるが、それにもかかわず、ここでは、脂質、界面活性剤、及びその他の両親媒性化合物の相挙動を理解するために、いくつか簡単な法則を再検討することが役立つ。正確な分子構造又は特定の種類の物質を特定するよりはむしろ、前記教示が、分離した位置に局在する親水性及び疎水性の部分を有する二極性構造により特徴づけされるすべての化合物にあてはまることを理解すべきである。このことは、このタイプの分子に、親水性部分が極性環境を好み、一方、疎水性部分が無極性環境を好むという両親媒性特性を与える。これが、このような分子が極性領域と無極性領域との境界面に集合して分子的に組織化された相を形成する理由である。
【0019】
すべての両親媒性分子の相挙動は、同じタイプの物理化学法則に支配される。所定の界面活性剤若しくは脂質の相挙動の予測、又は、望ましい相挙動を得るためどの化合物を使用すべきかの予測を可能にするには、いくつかの経験則が有用であることが示されている(Israelachvili, J.“Intermolecular and Surface Forces”, 2ndEdn., Academic Press, NY, 1991、及び、Jonsson et al.“Surfactants and Polymers in Aqueous Solution”, John Wiley & Sons, Chichester, 1998参照)。
【0020】
相のタイプの“スペクトル”は、実質的に下記に示すようであると考えられる。
【0021】
【表1】

【0022】
上記において、CPPは、無次元の値であって、v/l・aで表される。前記において、vは、前記両親媒性物質の疎水性構成成分の体積であって、lは、前記疎水性構成成分の延長された長さであって、aは、前記両親媒性物質の最大断面積である。このスキームにおいて、前記両親媒性物質は、一方の先端の形状が円錐状であって、親水性基が、ミセルでは円錐の基底部であり、逆ミセルでは円錐の頂点部であると考えることができる。前記ラメラ相の両先端間の“鏡面”を通過する際、前記両親媒性物質は、円筒型、すなわち、その体積が、単純にその長さ×その最大断面積であり、よって、CPP=1である。
【0023】
ラメラ相は、多くの場合、曲率がゼロであると言われる。なぜなら、両親媒性物質のフィルムは、どの方向にも曲がる優先傾向を持たないからである。前記スキームの“水中油型”端では、構造体は油の方に曲がり“順(normal)の”凝集体を与え、一方、“油中水型”端では、構造体は水の方に曲がり“逆(reverse)の”凝集体を与える。
【0024】
高い曲率のフィルムを形成する傾向が強い場合、好んでミセルのような小さい球形の凝集体となり、一方、曲がったフィルムへの傾向が強くない場合は、より大きくより複雑な凝集構造体となる。したがって、一般的に、両親媒性化合物は、ミセルとラメラ相との中間の曲率のフィルムとなる優先傾向があることが知られている。
【0025】
両親媒性化合物は、1つの方法として、フィルムの自然曲率により特徴づけされる。その数値は、フィルムの曲率半径の逆数として算出される。原則的に、その数値は、前記両親媒性物質分子の長さの逆数から同様の負の値までの間で変わりうる(ラメラ相は、鏡面において、自然曲率がゼロである)。前記自然曲率は順構造と逆構造とを区別する有用な概念ではあるものの、問題になっている極性脂質や両親媒性化合物の分子構造とは直接的には関連していない。
【0026】
相挙動の予測が可能なより有用な方法は、“臨界パッキングパラメータ”(CPP)の概念を使用することである。CPPは、前述のとおり、両親媒性化合物の分子構造の幾何学的検討により算出される。v及びlは、凝集体においては、平均して、どうのように流体鎖が一緒に固まるのかについて制限を課す。したがって、平均的な分子配座は、v及びlに依存する。aが、“実効的な”面積を意味することを認識することは重要である。その関連性は、イオン性界面活性剤間の頭部基の反発力が、電解質濃度が増加するとともに減少するように、遮蔽電界質により強く影響される事実により実証される。このことは、同じイオン性両親媒性化合物は、静電気的遮蔽状況に応じて、異なる構造をとりうることを意味する。類似の状況は、頭部基を含むオリゴオキシエチレンを有する非イオン性界面活性剤の温度を上昇させた場合や、多くの界面活性化合物それ自身の濃度を増大させた場合に起こる。
【0027】
前述のとおり、順球状ミセルは、1/3以下のCPP値をとり、鏡面におけるラメラ構造は、CPPがほぼ1である。他方、逆構造は、1を超えるCPP値により特徴付けされる。一般的には液晶相(例えば、立方相や六方相)に見られるより複雑な凝集構造は、中間のCPP値をとる。例えば、六方構造は、1/3<CPP<1/2であり、他方、2つの主要な曲率半径が異符号のサドル形状である同相立方相は、1に近いCPP値である。
【0028】
前述のとおり、界面活性剤の形状やパッキングが、凝集構造を決定し、多くの場合、単鎖の界面活性剤は、“順”構造(例えば、ミセル)を形成し、他方、二重鎖の界面活性剤や脂質は、ラメラ相や逆相を形成する優先傾向がある。望ましい相挙動(及び実効的なCPP値)は、異なるCPP値の2以上の構成成分を混合して得られることを認識することも、また、最重要である。
【0029】
これに関連して、両親媒性分子を特徴付けするためのもう一つの関連する経験則的アプローチとして、バンクロフトの法則(Bancroft's rule)もまた、言及するに値する。すなわち、水溶性乳化剤は、O/W型エマルジョンを形成する傾向があり、油溶性乳化剤は、W/O型エマルジョンを形成する傾向がある。この経験則は、主に、エマルジョン技術で使用され、後に、親水性親油性バランス(HLB)の概念にまで展開された。分子構造に基づき、両親媒性化合物へHLB番号を割り当てることできる。前記HLB番号は、前記両親媒性化合物を構成する個々の化学基のHLB基番号の総和として算出できる。そして、両親媒性分子のHLB番号は、順か逆のどちらのエマルジョンが形成されやすいかを予測するために使用できる。
【0030】
一定の親水性基及び親油性基についてのHLB基番号は、以下のとおりである。
【0031】
【表2】

【0032】
そして、HLBは、7に親水性基番号及び親油性基番号の合計を加算して算出する。HLBが、3〜6の場合、その化合物は、W/O乳化剤として使用でき、7〜9の場合には湿潤剤として、8〜18の場合にはO/W乳化剤として、13〜15の場合には洗浄剤として、15〜18の場合には可溶化剤として使用できる。
【0033】
“順”構造を形成する系では、相凝集体の変態及び/又は崩壊が、著しく過度の水相による希釈により頻繁におこる。このことは、過度の水と平衡状態にある逆相により特徴付けられる両親媒性化合物の相挙動とは対照的である。そのような挙動は、CPP値が1を超える両親媒性分子に見受けられる。順相も逆相も、本発明において使用することができる。
【0034】
本発明の組成物は、典型的には、乾燥粒子として製造される。これらは、その後、望ましい固形剤形に変換することができる。例えば、圧縮によりタブレット剤に(必要に応じて、続いて、例えば、胃酸耐性コーティング等のコーティングする)、充填してカプセル剤に変換でき、また、顆粒化、ペレット化、すしつぶし等もできる。このような工程において、さらなる構成成分、例えば、タブレット化助剤、結合剤、フレーバー、芳香剤、抗酸化剤、pH調整剤、粘度調整剤等を加えてもよい。これらのすべての剤形も、本発明の組成物と見なす。
【0035】
本発明の組成物は、一般的には、医薬組成物、獣医学組成物、又は、食品薬組成物であるが、前記生物活性剤は、親水性、疎水性、両親媒性、又は、例えば、pH、腸内細菌叢、酵素、若しくは、そこで遭遇する細胞表面により胃腸管で可溶化される物質であってよい。前記組成物それ自体において前記生物活性剤は、前記脂質内及び/又は前記ポリマー内で溶解若しくは分散していてもよく、これらのいずれか1つと若しくは両方と分子レベルで相互に分散していてもよい。
【0036】
前記生物活性剤は、前記脂質と溶解若しくは分散しているか、又は、前記脂質と分子レベルで相互に分散していることが好ましい。この前記生物活性剤の配置は、(脂質可溶性の場合)前記脂質に溶解することで、又は、前記脂質中に粒子の形で分散させることで、容易に達成できる。前記粒子の形態としては、例えば、水溶性の場合には、油中水型エマルジョンであり、又は、非脂質可溶性の場合には、(例えば、ナノ粒子サイズの)微粉である。あるいは、前記生物活性剤を、前記ポリマー及び前記脂質が可溶な溶剤に溶解又は分散させて、脂質、ポリマー及び生物活性剤の溶液又は分散を形成してもよい。前記組成物は、前記溶液又は分散から、例えば、減圧下で、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、若しくは、蒸発乾燥等の溶剤除去をすることにより製造できる。
【0037】
したがって、さらなる態様として、本発明は、経口投与可能な組成物、好ましくは本発明の組成物の製造方法であって、生理学的に許容される親水性のゲル形成ポリマー、生理学的に許容される脂質、及び、生物活性剤の溶液から溶剤を除去すること、並びに、必要に応じて、得られた固体のすりつぶし、圧縮成形し、コーティング、及び/又は、カプセル封入を含む。この方法において、前記溶剤(溶剤の混合物であってもよいことは明らかである)は、前記ポリマー、脂質、及び、生物活性剤を、分子的に混合された溶液として可溶化できることが好ましい。前記溶剤は、また、前記混合物からの除去を助けるため、揮発性であることが好都合である。適切な溶剤の例としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ギ酸、酢酸(例えば、氷酢酸若しくは水との混合物)、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、エチルアセテート、及び、これらの適切な混合物が挙げられる。エタノール及び酢酸が、特に適切である。
【0038】
その他の態様として、本発明は、経口投与可能な組成物、好ましくは本発明の組成物の製造方法であって、生理学的に許容されるポリマー(一般的には、親水性のゲル形成ポリマー)、生理学的に許容される脂質、及び、生物活性剤の混合物を溶融押出しすること、並びに、必要に応じて、得られた個体のすりつぶし、圧縮成形、コーティング、及び/又は、カプセル封入を含む。
【0039】
さらにその他の態様として、本発明は、経口投与可能な組成物、好ましくは、本発明の組成物の製造方法であって、溶解した生理学的に許容される水溶性の親水性ポリマー、及び、分散した生理学的に許容される脂質を含む溶液であって、そこに生物活性剤が溶解又は分散している溶液から、溶剤を除去することを含む。
【0040】
さらにその他の態様として、本発明は、経口投与可能な組成物、好ましくは、本発明の組成物の製造方法であって、溶解した生理学的に許容される水溶性の親水性ポリマー、溶解又は分散した生物活性剤、及び、分散した生理学的に許容される脂質を含む溶液から用剤を除去することを含む。前記脂質は、構造化された粒子の形で、とりわけ、(ここで記載するように)液晶相のナノメーター粒子の形で溶液に分散していることが好ましい。
【0041】
脂質、ポリマー、生物活性剤に加え、本発明の製造方法に使用される前記溶液は、また、HLB値が8〜18の範囲の界面活性剤、例えば、Tween、Cremophor、Solutol、Brij、Triton等を含むことが望ましい。前記界面活性剤は、イオン性でもよく非イオン性でもよく、例えば、糖界面活性剤でもよい。好ましい糖界面活性剤は、糖(特に、スクロース)脂肪酸エステル、特に、スクロースオレアート、スクロースパルミテート、及び/又は、スクロースラウレートを含む。特に、大きなポリオキシエチレン頭部基を有する界面活性剤に言及することができる。さらに、(例えば、液晶の)粒子の分散又はエマルジョンを安定させるため、使用する前記溶液は、また、さらなる界面活性ポリマー、例えば、デンプン若しくはデンプン誘導体、アルキレンオキシド残基を含むコポリマー(例えば、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー等)、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)若しくはそれらのグラフト疎水的に修飾された誘導体、アラビアゴム、疎水的に修飾されたポリアクリル酸若しくはポリアクリレート等を含むことが好ましい。前記界面活性ポリマーは、また、前記粒子の表面に機能的効果を与えるため、例えば、望ましい作用部位に選択的に前記粒子を結合し又は標的とするために使用することができる。とりわけ、例えば、ポリアクリル酸やキトサンのようなポリマーは、粘液粘着性粒子を提供するために使用することができる。それゆえ、そのような粒子は、ポリマーマトリクスから放出される部位に局在したままとなりやすく、活性剤の放出に対する特別な制御を増大させる。そのような表面を修飾した粒子を含む本発明の組成物は、本発明のさらなる実施形態を形成する。
【0042】
特に注目すべき脂質と界面活性剤との組合せの一つは、糖界面活性剤(例えば、上記に示したもの)と、脂質若しくはモノ−、ジ−若しくはトリ−グリセリド、とりわけ、モノ−グリセリド、最も好ましくは、グリセリルモノオレアートを含む脂質の混合物との組合せである。これらの組合せは、本発明の組成物又は方法において使用される場合に、高度に望ましい自己分散特性及び自己乳化特性を示す。
【0043】
本発明の組成物の調製に使用されるポリマーは、水と接触する前に前記組成物を固形形状に維持する働きをし、水と接触した後に前記組成物から脂質粒子、例えば、液晶ナノ粒子等の放出速度を制御する働きをする任意のポリマー材料であってよい。固形製剤(特に、フリーフローイングパウダー、これは好ましい形状である)は、服用しやすさのみならず、製造における取扱いや処理のしやすさにおいて利点がある。
【0044】
適切なポリマーの例としては、水溶性の水膨潤性多糖(例えば、デンプン、及び、マルトデキストリン、カラギーナン、キサンタンガム、イナゴマメガム、アラビアゴム、キトサン、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、ペクチン等のようなデンプン誘導体)、セルロース誘導体、とりわけ、セルロースエーテル(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、並びに、合成ポリマー(例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド若しくはポリエチレングリコール(PEGs)))等があげられる。
【0045】
本発明の組成物の調製に使用される脂質は、例えば、文献「small in the journal of american oil chemists society45 : 108 (1968)」で定義されるような任意の膨潤若しくは非膨潤極性脂質であってよい。非膨潤極性脂質の適切な例は、ジグリセリド、トリグリセリド、脂肪酸(例えば、C6-26のアルカン酸及びアルケン酸であって、後者の用語は、単一及び複数のエチレンの不飽和酸を含む)、ワックス、ステロールエステル、ステロール(例えば、コレステロール、デスモステロール、シトステロール等)、C6-26アルコール、フィトロール、レチノール、ビタミンA、K、E及びD等である。
【0046】
膨潤極性脂質の適切な例は、ガラクト脂質、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、モノグリセリド、酸性セッケン、セレブロシド、ホスファチジン酸、プラスマロゲン、カルジオリピン、脂肪酸ジ−、オリゴ−、ポリ−グリセロールエステル、及び、脂肪アルコールグリセロールエーテル等である。
【0047】
本発明の組成物の構成成分である脂質、ポリマー及び界面活性剤は、それぞれ、単一化合物であってもよいが、しかしながら、概して、これらの3つのカテゴリーのうち1、2又は3つにおいて2以上の物質が使用される。物質の中には、2以上の前記カテゴリーに分類されるものもある。例えば、アラビアゴムのような両親媒性のポリマー又は両親媒性の構成成分を含むポリマーを使用できる。これらは、前記組成物において、二重又は三重の役割を果たすことがきる。例えば、望ましい堅さ、放出プロファイル、表面修飾(例えば、ターゲティング又は表面接着性のため)、及び、脂質相安定性を与えることができる。脂質の場合、例えば、前記脂質が少なくともその構成成分の1つとして飽和若しくはモノ若しくはポリ不飽和脂肪酸、又は、それらに由来する塩、エステル若しくはエーテル、例えば、オレイン酸、リノール酸等若しくはそれらの塩、エステル若しくはエーテルを含む場合、一定の疎水性及び両親媒性生物活性剤を含む放出される脂質粒子の装填能が向上するという驚くべきことがわかっている。
【0048】
分子レベルで混合された脂質/ポリマーの組成物が水又は胃腸液と接触すると、水の作用により、前記ポリマーはゲルを形成し、一方、前記脂質は脂質及び生物活性剤を含む粒子を形成する。前記ポリマー(例えば、ポリマーゲル)が受食性である場合、前記脂質は、粒子を形成し、浸食境界の近くで放出される。前記ポリマー(例えば、ポリマーゲル)が多孔性である場合又は前記組成物の構成成分の1つにより多孔化される場合、前記脂質粒子は、その中で形成されて前記孔を通して拡散する。前記粒子は、完全に形成される場合もあり、また、前記ポリマーマトリクスから放出された後に水を吸収し続ける形の場合もある。
【0049】
前記脂質は、分子的に混合された脂質/ポリマーの組成物において、前記ポリマーの水膨潤に反応し、構造化又は非構造化脂質粒子、例えば、L2、Lα、立方若しくは六方相液晶ナノ構造体、若しくは、L3粒子、ミセル、マイクロエマルジョン滴若しくは無定形構造体を形成することができる。非構造化モノ粒子の形成は、疎水性及び両親媒性の生物活性剤にとって特に実効的な可溶化媒体(ビヒクル)を提供する。L2、Lα、立方又は六方相モノ構造体(これらは、分離した親水性、疎水性及び両親媒性のマイクロドメインを有する)の形成は、異なる親水性/疎水性の生物活性剤の混合物と同様、親水性、疎水性及び両親媒性の生物活性剤にとって特に実効的な可溶化媒体(ビヒクル)を提供する。
【0050】
前記脂質が、前もって形成された構造化粒子の形でポリマーに取り込まれている場合、これらは、液晶相、例えば、断片化した逆ミセル(L2)相、断片化したラメラ(Lα)相、断片化した立方相、又は、断片化した六方相等からなる。このような粒子は、脂質、水、生物活性剤を含む。L2、Lα、L3、立方、又は、六方相構造体の場合、前記生物活性剤は、前記構造体の脂質又は水性ドメイン内にあり、両親媒性剤は、前記ドメイン間の境界にある。しかしながら、より一般的には、前記ポリマーに取り込まれている構造化粒子は、水を吸収して液晶ナノ構造を産生する粒子(例えば、結晶若しくは無定形の構造を有する固体、半固体、又は、流体粒子)の形をとることができる。前記粒子が構造化された形態を維持できる範囲は、少なくとも部分的には、前記組成物にここで見なされるような“乾燥”を付与するために実行する乾燥の度合いに依存する。前記粒子が最初の構造が変化する程度まで溶剤を失った場合、生体液における水への曝露は、前記粒子に、例えば、L2、Lα、L3、立方、又は、六方相構造等の液晶ナノ構造の生成を引き起こす。
【0051】
このように、水と脂質/ポリマー組成物との接触は、モード最大寸法が、一般的には、0.5nm〜20μm、より一般的には10〜5000nm、とりわけ100〜1000nmの生物活性剤を含む脂質ナノ粒子の水への制御(例えば、即時、持続、及び/又は、使用部位特異的)放出という結果となり、これらから、前記生物活性剤が、胃腸管の取り込みを最適化して沈殿又は過速度の放出や取り込みを最小限とするよう選択される速度で(例えば、胃腸管の内容物のような水へ)放出される。そのほか、放出速度は、望ましい場合、即時放出を得るために制御される。
【0052】
したがって、本発明の組成物は、2つの必須の構成成分のセット:水に接触することで前記組成物から放出される脂質ナノ構造体の前駆体、及び、放出速度を決定するマトリクスの前駆体を含むと考えられる。これに加えて、前記組成物は、もちろん、前述のとおり、コーティング材料、結合剤、フレーバー、保存料等を含むことができる。
【0053】
前記脂質ナノ構造前駆体は、1つ以上の生物活性剤、1つ以上の脂質、必要に応じて、1つ以上の界面活性剤、及び、必要に応じて、水を含む。前記マトリクスから放出される脂質ナノ構造の性質は、前記脂質/水/界面活性剤の混合物の化学組成と同様に、脂質(すなわち、分子レベルで前記ポリマーと混合された脂質、又は、前記ポリマーにナノ粒子として埋め込まれた脂質)の混和の物理的様式に依存する。望ましい性質の脂質ナノ粒子の放出を起こすように前記前駆体の前記化学組成及び取り込み様式を選択することは、例えば、文献「“The Aqueous Phase Behaviour of Surfactants”R. G. Laughlin, Academic Press, London, 1994.」に記載のような標準的な技術を使用して水若しくはその他の水媒体に対する前記前駆体構成成分の反応についての相挙動研究により、容易に実施できる。
【0054】
脂質/ポリマーの本発明の組成物の調製は、前述した、少なくとも2つの好ましい製造方法により達成することができる。すなわち、脂質及びポリマーの溶液であって、界面活性剤が存在する溶液(前記溶液には、前記生物活性剤が溶解し、そうでなければ分散する)からの溶剤除去により達成でき、そうでなければ、前記ポリマーの溶液(水性溶液が一般的ではあるが、必須ではない。)における脂質の分散からの溶剤除去により達成できる。この後者の場合、前記生物活性剤は、界面活性剤及び/又は水をさらに含むことができる前記脂質相に溶解、そうでなければ分散される。
【0055】
別の方法として、前記ポリマー溶液(水性溶液が一般的ではあるが、必須ではない。)における脂質の分散からの溶剤除去は、ポリマー溶液に溶解した前記生物活性剤とともに行ってもよい。
【0056】
取り込まれているナノ粒子の状態とは対照的に、分子的に混合されている状態の利点の一つは、例えば、タブレット化又は顆粒化の間の圧力への曝露に対して感受性が低いことである。さらに、溶剤除去から得られた組成物は、タブレット剤の前駆体材料とすることができ、その場合、この前駆体材料は、単一ステップで形成される。
【0057】
溶剤除去は、例えば、溶剤蒸発乾燥、凍結乾燥、又は、噴霧乾燥等の従来技術により実効でき、“乾燥”材料を得て、必要に応じて、パウダー化、顆粒化、タブレット化、コート化、カプセル封入化等をして、固形剤形を形成することができる。乾燥とは、前記材料を圧縮してタブレット剤を形成できることを意味する。しかしながら、“乾燥”混合物は、パウダー形態においては、安定で、易流動性であることが好ましい。
【0058】
本発明の組成物の構成成分が熱に弱い場合、前記溶剤除去は、周囲温度又は周囲温度以下で、例えば、凍結乾燥により、実施できる。前記組成物の作用物質又は賦形剤が熱に弱い又は不安定な場合、溶剤除去は、一般的に、高温を含む製法(例えば、溶融押出し)よりも本発明の組成物の調製において好ましい。
【0059】
本発明の組成物は、また、脂質、ポリマー及び生物活性剤の厳格な脱気水における分散からの溶剤除去(乾燥)により調製できる。そのような脱気は、水相と非水相との混合を促進し、乳化剤や安定剤の必要性を低減できる。
【0060】
脂質/ポリマー混合物が例えば水や有機溶剤のポリマーの溶液における脂質の分散から製造される場合、脂質は、例えば、高速混合、多孔性マトリクスからの押出し、ボルテクス、ソニケーション、高圧ホモジナイゼーション、微流動化、ローターステーター混合等の従来技術の使用の前に、まず、生物活性剤並びに必要に応じて界面活性剤及び/又は水と混合される。分散は、一般的に、溶剤中におかれ、その後、ポリマーが加えられ、引き続いて、溶剤除去が行われる。界面活性剤がさらに前記組成物に加えられる場合、自己分散混合物を形成することが可能であり、その場合、たとえあったとしてもわずかな機械的分散しか必要としない。ここで記載するような糖界面活性剤は、この方法に適している。必要に応じて、例えば、望ましい含水量を維持するため、前記脂質は、固体又は半固体の(例えば、冷却粉砕若しくは冷却噴霧により製造された)粒子形態で、溶剤とポリマーとの混合物、又は、ポリマー溶液に加えられ、引き続いて、周囲温度以下で溶剤除去がまた行われる。分散の間のエネルギー導入量は、望ましい粒子サイズを得るために選択される。有機溶剤の使用が回避されるべき場合、一般的な溶剤が見つからない場合、又は、特定の好ましい構造の脂質ナノ粒子の取り込みが望ましい場合には、このプレ分散技術が、脂質とポリマーの溶液からの溶剤除去を含むその他に技術よりも好ましい。前述のように、構成成分のいずれかが熱に弱い場合には、溶剤除去は、周囲温度又は周囲温度以下で、例えば、凍結乾燥により、実施できる。
【0061】
前記生物活性成分が例えば溶剤除去や周囲温度以下への冷却に際して結晶化する傾向がある場合、前記プレ分散技術は、また、好ましい。なぜなら、前記生物活性剤が、分子的に溶解又は可溶化した形態で脂質粒子内により閉じ込められやすいからである。
【0062】
前記プレ分散技術を使用したとりわけ好ましい実施形態において、前記生物活性剤は、得られる脂質/ポリマー混合物において過飽和状態となるような濃度で前記脂質に溶解させてもよい。そして、胃腸管内の液との接触により、結果として準安定過飽和状態の前記生物活性剤を含む脂質ナノ粒子を放出する。このようなナノ粒子は、前記生物活性剤を前記胃腸管の内層に吸収のために提示することについて、生物活性剤が通常の安定した溶解状態である脂質粒子と比較して、高い効能を発揮することがわかっている。より好ましい実施形態において、前記生物活性剤は、得られる脂質/ポリマー混合物が生物活性剤を熱力学的に安定した溶液として含むが、胃腸管の液に接触することで準安定過飽和状態の前記生物活性剤を含む脂質ナノ粒子を産生するような濃度で前記脂質に溶解させてもよい。
【0063】
本発明の脂質/ポリマー組成物を形成するさらなる好ましい技術は、(例えば、溶融押出し、又は、単に高温及び必要に応じて高圧での混合による)融解と混合である。この方法は、溶剤の体積の除去をすることなく迅速かつ簡便に実施できるという点で有利である。前記生物活性剤が少なくともその混合物の融点までの高温に弱くない場合の使用に最も適している。“溶剤除去”技術と“溶融と混合”技術とを混合したものを含む方法もまた使用できることは明白である。この方法では、比較的少量の適切な溶剤(上記参照)を含む成分が、やや高温下でまた好ましくは高圧下で混合される。好ましい混合物(例えば、溶液)は、このように、周囲温度又は周囲温度以下で必要な溶剤よりも少ない溶剤で形成されるが、前記温度は、前記構成成分の真の溶融に必要な温度以下に維持される。前記溶剤は、その後、減圧、又は、任意の適切な技術(例えば、前述の溶剤除去方法で示した技術)により除去できる。
【0064】
本発明の組成物は、また、前記ポリマーマトリクスを多孔化する材料、又は、胃腸管へ吸収される際にガスを産生する働きをする材料、例えば、前記ポリマーよりも水溶性の化合物、体温未満では液体で体温でガスとなるフルオロカーボン、若しくは、炭酸水素ナトリウムのようなガス発生体等を含むように配合することができる。これらは、脂質放出を容易にし、又は、前記組成物の浮揚性を増加するよう作用してガス放出が起こる胃腸管の領域、例えば、胃における前記組成物の長期残留をもたらすことができる。
【0065】
また、胃における前記組成物の残留及び/又は放出プロファイルの制御は、製造工程の一環としてガスを直接乾燥パウダー内に閉じ込めることで達成することができる。これは、例えば、溶剤、ポリマー及び活性剤の混合物の不混和性の低沸点溶剤(例えば、フルオロカーボン)の分散を含む結果として起こりうる。大量の溶剤が除去された場合、揮発溶剤は、蒸発してポリマー内に孔、泡、又は、その他の空隙を作ることができる。同様に、ガスは、化学的手段により発生させ、前記ポリマー内に閉じ込めることができる。多孔性マトリクスを形成した後、最初のガスは、必要に応じて望ましい他のものと置換することができる。これは、例えば、胃の水溶液におけるガスの溶解のしやすさを変化させることで前記活性剤の放出プロファイルを制御するために使用することができる。ガスが溶解すると、その孔はより敏速に液で満たされる。
【0066】
脂質/ポリマーのハイブリッドの乾燥パウダーがいったん得られると、これは、さらに、例えば、タブレット剤、ペレット剤、顆粒剤、又は、カプセル剤のような固形剤形に、従来技術により、加工することができる。必要に応じて、さらに賦形剤を一般に固形剤形に使用できる。前記賦形剤としては、充填剤、結合剤、崩壊助剤、流動促進剤、潤滑剤、着色剤、フレーバー、甘味剤、調味剤及びフィルムコーティング材料があげられる。しかしながら、脂質/ポリマーのハイブリッドの組成物のためには、結合剤又は潤滑剤を添加する必要がないことが多い。なぜなら、前記脂質/ポリマーハイブリッドのポリマー又は脂質構成成分は、それぞれ、例えば、タブレット化の間、そのように作用できるからである。この理由により、脂質/ポリマーハイブリッド材料は、また、直接圧縮にとりわけ適している。
【0067】
前記生物活性剤の時間に関する放出プロファイルは、化学的性質及びポリマーの分子量の適切な選択により、(下記実施例に示すように)必要に応じて変更することができる。これは、添付の図1で示される。同図は、前記ポリマーが、それぞれ、(○)低分子量PVP、(●)高分子量PVP、(◇)ヒドロキシプロピルセルロース、及び、(×)ヒドロキシプロピルメチルセルロースのシクロスポリンA(CsA)を含む組成物の異なる放出プロファイルを示す。シクロスポリンAは、CsAを有する脂質担体の形で、これらの組成物から放出される。PVPは、ここでは、ポリビニルピロリドンを示すものとして使用される。
【0068】
脂質/ポリマーハイブリッドのさらなる利点は、それらが乾燥しているということである。ここで使用される“乾燥”とは、それらが、機能上固体又は半固体であって、液体と対立するものであることを意味する。好ましくは、ここで使用される“乾燥”とは、その組成物を破壊、切断、粉砕若しくはパウダー化できること、又は、さもなければ制御された大きさ及び/形状の片に形成できることを意味する。そのような片は、その後、製造工程において、粒のサイズを大きく、小さく若しくは均一化し、被覆し、結合剤若しくはその他の試薬と混合し、及び、適切かつ容易な取扱い性を付与する加工をすることができる(例えば、一律のフリーフローパウダーとして)。“乾燥”の用語は、また、水のような溶剤がないことを示唆し、より一般的には、乾燥若しくは固形材料特性を有する材料の機能を示唆することができるが、そうである必要はない。したがって、例えば、液晶脂質/水/活性剤粒子を閉じ込めるポリマーマトリクスは、液晶粒子の含水量に関わらず、乾燥材料として機能することができる。
【0069】
本発明の組成物の乾燥性質は、それらに、相当な付加的な利点を与える。とりわけ、脂質賦形剤を含む組成物は、一般に、流動性であり、例えば、水では、活性剤と脂質のエマルジョンの形、又は、予め濃縮されたエマルジョンのような、油性脂質製剤の形である。流動性製剤は、しかしながら、パッキングと配置、用量、及び、患者のコンプライアンスに関し、乾燥製剤と比較して付加的な問題を提示する。流動体は、患者が運び、量り、そして、服用することが、乾燥タブレット剤よりもより難しい。そして、患者は、流動剤を与えれた場合、タブレット剤の場合ほど彼らの治療計画を正しく満たす可能性は高くない。流動剤は、ゼラチンカプセルに詰め込むことができるが、これらは、製造が複雑であり、飲み込むには大きくて不快な場合が多い。現在の乾燥製剤は、したがって、脂質賦形剤のその他の利点を維持しながら、投与の容易性に関して相当の利点を与える。この利点は、全てのタイプの“制御”放出製剤にあてはまる。その制御は、(例えば、胃における)即時放出の形でもよく、活性剤は、胃腸管の1つ以上の領域における段階型、遅延型又は選択型の放出でもよい。
【0070】
製剤設計における課題の1つは、問題となっている活性化合物に適した組成を見出すことである。活性化合物は、3つのグループに分類できる:高い水溶解度で特徴づけされる親水性物質;水溶解度は低いが、油への溶解度が高い疎水性物質;親水性ドメインと疎水性度面(膜を含む)との間の界面を好む両親媒性若しくは膜可溶性物質である。
【0071】
本発明の利点と潜在的用途を理解するために、3つのグループを短く説明する。
【0072】
溶解度賦活剤は、一般的に、第1のグループには必要ない。焦点を望ましい放出プロファイルの獲得に絞ることができる。これは、標準的技術で達成できる。しかしながら、高い水溶解度の親水性物質、例えば、ペプチドやたんぱく質であって、経口投与されるものの中には、胃腸管内の厳しい環境(pH、酵素活性等)への曝露に弱いものもや、化学修飾(例えば、配位子交換)を受けるものがある。その他のもの、例えば、ヘパリンは、腸粘膜を透過することが難しい。本発明は、これらの問題を克服するために使用できる。胃腸管への曝露に弱い物質は、脂質媒体(ビヒクル)内の親水性ドメイン内に封入することができ、このようにして、劣化を防ぐことができる。本発明の固形マトリクスから放出される脂質媒体(ビヒクル)は、また、吸収を媒介する脂質を含むように設計することができる。例えば、カプリン酸は、大きな親水性化合物、例えば、ペプチドデスモプレシンの吸収を促進する。さらに、放出される脂質粒子は、(例えば、キトサンや、その誘導体のような)適切なポリマーにより表面を修飾し、粘膜付着性やその他の標的指向性(ターゲティング)特性を付与することができる。一定の作用物質が直面するその他の問題は、さまざまな水溶解度、すなわち、沈殿する化合物(例えば、pHの変化や胃腸管のカルシウムとの接触が原因で沈殿するもの)である。本発明の脂質媒体(ビヒクル)は、前記脂質媒体(ビヒクル)内の局所環境のバッファリングのため、又は、前記作用物質の溶解度が低い周囲媒体においても前記作用物質の溶解を促進する局所環境を維持するために使用することができる。さらに、低水溶解度の状態への移行が起こっても、医薬分子は、前記脂質媒体(ビヒクル)の他のドメインに溶解することができる。
【0073】
第2のグループは、疎水性物質を含み、一般的に、上皮細胞に十分量提示するために溶解度賦活剤を必要とする。これは、疎水性ドメインを含む本発明の脂質媒体(ビヒクル)を使用して達成できる。
【0074】
最後の分類は、両親媒性又は膜可溶性化合物であって、この発明は、独自の可能性を付与する。なぜなら、ナノ構造液晶相は、大きな界面領域により特徴づけされるからである。したがって、両親媒性物質は、大量に取り込まれて、高い薬剤積載量となる。
【0075】
親水性物質について述べたことに関連して言及した利点(保護特性及び取り込み媒介)は、後者の2つの分類の作用物質においてもまた有効であることに注意すべきである。さらにまた、高温に弱い物質は、標準的製法、例えば、溶融押し出しを使用した製造の間に劣化する場合があるので、本発明の利点を生かして都合よく配合し製造することができる。
【0076】
本発明の組成物に使用できる生物活性剤の例は、以下の物を含むが、これらに限定されない。プロゲステロン、シクロスポリン(cyclosporin)A、シクロスポリンG、[O−(2−ヒドロキシエチル)−(D)Ser]8−シクロスポリン、[3’−デヒドロキシ−3’−ケト−MeBmt]1−[Val]2−シクロスポリン、ベザフィブラット(bezafibrat)、ジルチアゼム(diltiazem)、イスラジピン(isradipin)、ベラパミル(verapamil)、アンホテリシンB、コエンザイムQ10、ダナゾール(danazole)、アトバクオン(atovaquone)、アムロジピン(amlodipine)、ニフェジピン(nifedipine)、ニモジピン(nimodipine)、フェロジピン(felodipine)、パクリタキセル、エトポシド、イリノテカン、テリチノイン(tretinoin)、シロリムス、タクロリムス(tacrolimus)、イトラコナゾール、ケトコナゾール、プロプラノロール、アテノロール、アトロバスタチン(atorvastatin)、ロバスタチン(lovastatin)、プラバスタチン(pravastatin)、シムバスタチン(simvastatin)、エナラプリル(enalapril)、リシノプリル(lisinopril)、カンデサルタン(candesartan)、ロサルタン(losartan)、バスサルタン(valsartan)、オランザピン(olanzapine)、セルトラリン(sertraline)、ベンラファクシン(venlafaxine)、ミルタゼピン(mirtazepine)、ラロキシフェン(raloxifene)、シルデナフィル(sildenafil)、タダラフィル(tadalafil)、クラリスロマイシン(clarithromycin)、アジスロマイシン(azithromycin)、シプロフロキサシン(ciprofloxacin)、ピオグリタゾン(pioglitazone)、ロジグリタゾン(rosiglitazone)、アトモキセチン(atomoxetine)、シロスタゾール(cilostazol)、セレコキシブ(celecoxib)、ロフェコキシブ(rofecoxib)、ジクロフェナック(diclofenac)、イブプロフェン(ibuprofen)、ナプロキセン(naproxen)、アルドステロン(aldosterone)、ベタメタゾン(betametasone)、デキサメタゾン(dexametasone)、メドロキシプロゲステロン(medroxyprogesterone)、プレドニソロン(prednisolone)、ジアゼパム(diazepam)、フルラゼパム(flurazepam)、ロラゼパム(lorazepam)、ミダゾラム(midazolam)、ニトラゼパム(nitrazepam)及びクロメチアゾール(clomethiazol)。
【0077】
本発明で使用する前記生物活性剤は、特に都合よくは、20℃の水の溶解度が、1%w/v未満であって、さらに特には、0.01%w/v未満である。
【0078】
我々は、また、シクロスポリン及びシクロスポリン誘導体、とりわけ、シクロスポリンAが、特に有利に、投与のため脂肪酸に溶解して配合できることを見出した。前記脂肪酸は、例えば、炭素原子数26までで、さらに特には、炭素原子数6〜20であって、例えば、不飽和脂肪酸、特に、モノ不飽和脂肪酸、より特には、C18モノ不飽和脂肪酸、さらにとりわけ、オレイン酸、また、好ましくは、リノール酸である。
【0079】
我々は、さらに、シクロスポリン及びシクロスポリン誘導体、とりわけ、シクロスポリンAが、特に有利に、投与のため少なくとも1つの脂肪酸を含む製剤に溶解して配合できることを見出した。前記脂肪酸は、例えば、炭素原子数26までで、さらに特には、炭素原子数6〜20であって、例えば、不飽和脂肪酸、特に、モノ不飽和脂肪酸、より特には、C18モノ不飽和脂肪酸、さらにとりわけ、オレイン酸、また、好ましくは、リノール酸である。この製剤は、本発明の好ましい製剤である。
【0080】
シクロスポリン、シクロスポリン誘導体、環状ペプチド及びとりわけシクロスポリンAのような化合物が、上記のような脂肪酸を含む本発明の組成物として配合された場合、その後、水相に接触することで、小さい(とりわけ、単様式でサブミクロンの)粒子を形成することが観察される。これらの粒子は、非常に高濃度の前記生物活性剤を含むことができ、そして、濃縮され過飽和の脂質組成物は、取り込みの促進が可能であると考えられているから、前記生物活性剤の有利なデリバリー方法である。この製剤は、また、下記のとおり、pH感受性である。
【0081】
やや溶けにくい一定の生物活性剤(例えば、シクロスポリン、シクロスポリン誘導体、シクロスポリンA、環状ペプチド)の溶解度を向上させることに加えて、脂肪酸は、また、周囲のpHに依存して特性を変えることができるという利点がある。その結果、脂肪酸を含む製剤は、例えば、それらの相挙動、安定性、溶解度等の特性を胃腸管の領域のpHに依存して変えることができる。ここで記載したような乾燥製剤を含む脂肪酸は、例えば、小さな(特に、サブミクロンの)粒子を低pH(胃)で放出し、一方、液滴サイズは、(腸液中のような)より高いpHで(例えば、0.5μmを超え、特に、1μmを超えるまで)増大する。不安定化は、胃腸管の特定部位で起こり、この不安定化は、前記組成物若しくは放出された粒子の相変化、沈殿、及び/又は、生物活性剤の過飽和に関係する。その結果、本発明の製剤の脂質構成成分におけるある割合の脂肪酸の含有は、生物活性剤放出に対するさらなる制御を与え、本発明のさらなる実施形態を形成する。したがって、pHに伴って粒子サイズ放出が変化する本発明の組成物は、脂肪酸を含むことが好ましい。
【0082】
本発明の実施形態の1つにおいて、本発明の組成物は、脂肪酸を含み、pH3未満の水性溶液で粒子を放出し、pH6を超える水性溶液でより大きな粒子を放出する。ここで、pH3未満で放出される前記粒子は、ナノメートル以下(サブナノメートル)のサイズである。本発明の組成物は、pH7未満、好ましくはpH3未満への曝露でサブミクロン(例えば、0.5〜1000nm、好ましくは、1〜250nm、より好ましくは、10〜150nm)の粒子をもたらし、pH6.0、好ましくは、pH7を超えるpHで、より大きな粒子をもたらすのに十分量の脂肪酸を含む構成成分を含むことが好ましい。そのような組成物は、(例えば、レーザー光散乱のような)公知の方法や、ここに記載される下記実施例、とりわけ、実施例4を参照して、容易により調製され、同定される。
【0083】
我々は、また、プロゲルテロンが、とりわけ有利に、C6-10のアルカン酸、特に、カプリル酸、又は、その様な脂肪酸を含む組成物に溶解して投与のために配合されうることを見出した。
【0084】
さらなる態様として、本発明は、プロゲステロン若しくはその誘導体を含み、C6-10のアルカン酸若しくは生理学的に許容されるその塩に溶解しており、前記組成物は、必要に応じてさらに生理学的に許容される脂質を含むことが好ましい。
【0085】
そのような組成物は、任意の使用しやすい剤形に配合することができる。例えば、カプセル剤、溶液、散剤、タブレット剤等である。また、任意の使用しやすい薬学的な担体及び賦形剤を使用してもよい。
【0086】
しかしながら、前記組成物は、前述の本発明の態様のとおり、経口投与可能な組成物として配合することが好ましい。
【0087】
以下の制限されない実施例を参照して、本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0088】
ポリビニルピロリドン(PVP)で固められた製剤からのプロゲステロンを含む内部構造のない小滴の放出
2つの組成物を低分子量及び高分子量のPVP(Plasdone K29/32及びK90、ISP Technologies,Inc社製)を使用して調製し、その後、凍結乾燥した。前記2つの組成物の組成内容をテーブル1及び2に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
【表4】

【0091】
エタノールが前記製剤の構成成分を可溶化するから、分子混合物が得られた。前記製剤は、凍結乾燥によりエタノールを除去して固形化された。これにより、固形製剤が得られ、これをKBr IR−タブレットプレスで圧縮することにより、タブレット剤(約200mg)を得た。
【0092】
次に、放出プロファイルを、テーブル3に示す組成の模擬腸液(SIF)pH7.4を使用して調べた。
【0093】
【表5】

【0094】
前記タブレット剤を、Erweka溶解槽内の37℃、500mlのSIF中のバスケット(100rpmで回転する)の中に配置した。過剰な水相と接触することで、内部構造のない、作用物質を担持するマイクロエマルジョン滴が前記固形製剤から放出された。データポイントが得られる時間ごとに、試料(100μl)を引き抜き、その時間の溶解培地中のプロゲステロン濃度を得るためHPLCで解析した。その放出プロファイルは、一次のように見えた。そして、その放出速度は、前記固形化ポリマーの分子量の変化により制御することができた(PVPの分子量の増加が、放出速度を低減させた)。
【実施例2】
【0095】
ポリビニルピロリドン(PVP)で固められた製剤からのシクロスポリンAを含む内部構造のない小滴の放出
実施例1と同様に、Plasdone K29/32及びK90を使用して、2つの製剤を調製し、凍結乾燥し、タブレット形状に圧縮した。その組成内容を下記テーブル4及び5にそれぞれ示す。
【0096】
【表6】

【0097】
【表7】

【0098】
模擬腸液(SIF)を使用して(実施例1と同様に)過剰の水相に接触することで、内部構造のない、作用物質を担持するマイクロエマルジョン滴が前記固形製剤から放出された。前記小滴は、主に、1μm未満のサイズであった。その放出プロファイルは、一次であり、その速度は、固形化ポリマーの分子量を変化させることで制御された。今度も、分子量の増加は、放出を遅延させた。
【実施例3】
【0099】
セルロースに基づいたポリマーで固められた製剤からのシクロスポリンAを含む内部構造のない小滴の放出
この実施例は、製剤に含まれるべき構成成分の全ての分子混合物を得ることができる溶剤を見つけることができない場合には、脂質凝集体を形成する水性溶液からポリマー/脂質ハイブリッドを形成することが便利であることを示すものである。この手段は、脂質凝集体が、ある程度、前記水相からその構造を保持するタブレット剤を生み出すことが期待される手段である。
【0100】
固形化ポリマー以外の前記製剤の組成をテーブル6に示す。高濃度のシクロスポリンAは、オレイン酸を前記製剤で使用することにより可能とされた。前記製剤の10%は水中で乳化し、セルロースベースのポリマーの水性溶液(1%(HPC)又は2%(HPMC))と混合した。その混合物を凍結乾燥し、ポリマーと製剤とを重量比1:1で含む固形脂質製剤を得た(テーブル7参照)。
【0101】
KBr IR−タブレットプレスで圧縮することにより、タブレット剤を調製した。過剰の水相(模擬腸液(SIF))に接触することで、内部構造のない小滴を含む薬物が形成された。前記小滴は、主に、1μm未満のサイズであった。その放出プロファイルは、Erweka溶解槽内の37℃、500mlのSIF中のバスケット(100rpmで回転する)を使用して得た。データポイントが得られる時間ごとに、一部(100μl)を引き抜き、その時間の溶解培地中のCsA濃度を得るためHPLCで解析した。
【0102】
先の実施例と同様に、放出キネティクスは、固形化ポリマーを変えることで制御できた。
【0103】
【表8】

【0104】
【表9】

【実施例4】
【0105】
乾燥用の組成の選択
以下の例は、脂肪酸が分離する媒体中で希釈により相変化を示し、そのような分離が起こらない酸性媒体では安定性を示す薬物組成物の選択の手順を説明する。この製剤は、例えば、実施例3で概説された手段により乾燥することができる。
【0106】
シクロスポリンを含む液体製剤(テーブル8a参照)は、以下のように製造された。シクロスポリンA及びエタノールの重さをはかりグラスバイアルにいれ、ゴム製ストッパーとアルミニウムカップで閉じ込めた。前記バイアルを、前記物質がエタノールに溶解するまで回転テーブル上に置いた。残りの賦形剤は、その後、前記シクロスポリンA溶液に添加した。前記バイアルは、再び、閉じられ、少なくとも2時間は、回転テーブル上に配置された。結果として得られた液体組成物は、前記試料が均一であって、使用前に結晶がないことを決定するために偏光により調査された。
【0107】
【表10】

【0108】
前記試料の相変化は、水性媒体における分散後の時間で粒子サイズの増加としてモニターした。この実験は、以下の方法で行った。自己分散製剤の小滴を、粒子寸法測定器(Coulter LS230)の試料コンパートメントの脱気水性媒体の表面に直接添加した。この分散手順は、PIDSオブスキュレーション値が45%を超えるまで続けた。前記製剤を分散するために使用するこの媒体は、模擬胃液(SGF)及び模擬腸液(SIF)であった。SGFは、2gの塩化ナトリウム及び7mLの塩酸を1000mLの水に添加して調製し(pHは、約1.2)、SIFは、6.8gのリン酸カリウム及び190mLの0.2M水酸化ナトリウムを400mLの水に添加し、続いて、最終的に水で1000mLまで希釈する前にpHを7.5±0.1に調整した。
【0109】
【表11】

【0110】
粒子粒度分布の測定は、分散手順を停止後0分及び20分で行った。この実験の結果を、上記テーブル8bにまとめる。このテーブルは、分散した製剤の平均粒子サイズは中性pHでは時間とともに増大するが、しかし酸性媒体で前記製剤が分散した場合には平均粒子サイズにおける変化は観察されないことを明白に示す。
【実施例5】
【0111】
PVPで固められた製剤からのプロゲステロン又はシクロスポリンAを含む断片化した逆ミセル(L2)相粒子の放出
前記製剤の組成を、テーブル9a及び9bに示す。
【0112】
【表12】

【0113】
【表13】

【0114】
重量基準で、前記製剤は、50%wtの低分子量PVPポリマー(Plasdone K29/32)を含む。前記乾燥製剤は、次のように調製した。1wt%のPVPを除くテーブル8における製剤をソニケーションにより水中で分散させた。この溶液に、適量のPVPポリマーを添加し、綿密に混合し、凍結乾燥した。再溶解の後、薬物材料を含む脂質媒体(ビヒクル)が形成され、内部構造が生じた。これらの粒子は、断片化した逆ミセル(L2)相であった。この粒子の粒度分布は、前記ポリマーや、タブレット剤から放出された場合にも影響されなかった。
【実施例6】
【0115】
低及び高分子量PVPで固められた製剤からのシクロスポリンAを含む断片化したラメラ相(リポソーム)の放出
この実施例では、水相に接触することで断片化したラメラ相(リポソーム)を放出する分子的に混合した乾燥製剤が、一般的な溶剤中の構成成分の混合から得られることを説明する。構成成分の混合の後、一般的な溶剤(EtOH)は凍結乾燥により除去された。前記乾燥製剤は、圧縮してタブレット剤とすることができた。
【0116】
凍結乾燥前後の前記製剤の組成は、下記テーブル10及び11から得られる。
【0117】
【表14】

【0118】
【表15】

【0119】
前記乾燥製剤が水相(模擬腸液(SIF))と過剰に接触すると、薬物を担持した断片化したラメラ相(リポソーム)の粒子が形成された。前記リポソームの粒度分布は、前記ポリマーや、乾燥して圧縮されたタブレット剤から放出された場合にも影響されなかった。リポソームの異方性特性もまた(交差偏光子を備えた顕微鏡による調査では、)変化しなかった。
【0120】
先の実施例と同様に、放出キネティクスは、固形化ポリマーを変えることで制御できた。使用する分子量が高いほど、観察される放出はゆっくりであった。
【実施例7】
【0121】
PVPで固められた製剤からの断片化したラメラ相(リポソーム)の放出、及び、放出されたリポソームのサイズ粒度分布の制御
粒子サイズが縮小したリポソームは、凍結乾燥前のソニケーションにより得ることができる。前記縮小粒子サイズは、乾燥タブレット形態では保存され、再溶解の際に再現される。3つの粒度分布が下記方法により得られる。1つ目の製剤は、テーブル12に示す組成を乳化することにより得ることができる。
【0122】
【表16】

【0123】
2つめは、まず、テーブル12の組成をPVPポリマーを適当量含む水性溶液に乳化させ、続いて凍結乾燥を行う。結果として得られる組成物は、テーブル13に示す成分を有する。
【0124】
【表17】

【0125】
3つ目の組成物は、前記2つ目のものと内容は同じで、凍結乾燥の前にソニケーションをした。ソニケーションは、主要な様式の放出リポソームの粒子直径を約4μmから約0.4μmに減小することに役立った。
【実施例8】
【0126】
リポソーム構造のサイズ減少の効果
テーブル14は、凍結乾燥の際、断片化したラメラ(リポソーム)構造をとる製剤の組成を示す。リポソームの粒度分布は、ソニケーションにより縮小できる。ソニケーションの形態がない場合、粒子サイズは、0.1〜2μmの範囲であった。1分間のソニケーションで、これは、単一モード約0.1μmにまで減少した。より小さい粒度分布の製剤は、Ussingモデルにおけるインビトロでも、in situ潅流を使用したラットモデルにおけるインビボでも(添付の図2に示す)、より高い取り込みを示す。図2では、近位小腸のin situ潅流を使用したラットモデルにおける3H−CsAの腸細胞膜への時間依存性吸収が、テーブル14の組成物でソニケーションがない場合(○)と1分間のソニケーションがある場合(●)とについて、dpm(壊変毎分)の関数として時間に対してプロットされている。
【0127】
【表18】

【実施例9】
【0128】
高分子量PVPで固められた製剤からの生物活性剤アンホテリシンBを含む二重層構造の放出
アンホテリシンBを含む製剤を以下のようにして調製した。
(A)リソ−オレオイルホスファチジルコリン(LOPC、24%)、ホスファチジルコリン(PC38%)、コレステロール(5.2%)及びエタノール(33%)を一晩混合し溶液を得た。
(B)高分子量ポリビニルピロリドン(Plasdone K−90、ISP Technologies,Inc社製)PVP(10%)及び水(90%)を一晩混合し溶液を得た。
(C)アンホテリシンB(AmB,1.5%)を、氷酢酸/水の混合物(90/10)に溶解した。30分後には、その混合物は、均一な溶液となった。
これらの3つの溶液(A、B及びC)を13/74/13の割合で混合し、綿密な混合により均一溶液とした後、その混合物をフリーズドライしてテーブル15の乾燥製剤を得た。
【0129】
300mgの前記乾燥製剤を圧縮してタブレット剤とし、これをバスケット(100rpmで回転する)内に配置し、500mlの模擬腸液(SIF)中で放出させた。断片化した二重層担体のAmBの放出は、415nm及び500nmで動作するUV−vis検出によりモニターした。放出されたリポソーム薬物担体の平均モードサイズは、1μm未満であった。
【0130】
【表19】

【実施例10】
【0131】
ポリエチレングリコールで固められたタブレット剤からの脂肪酸スクロースエステルで安定化され、シクロスポリンAを含む立方相粒子の放出
この実施例は、自己分散工程において水相に接触することで乾燥製剤から立方相粒子を形成できることを説明する。テーブル16の構成成分を混合することで分子的な混合物を得た。脂肪酸スクロースエステルのみが異なる2つの異なるバージョンの製剤を調製した。使用したスクロースエステルは、スクロースモノパルミテート(Ryoto P−1570,Mitsubishi Kagaku)又はスクロースモノオレアート(Ryoto 0−1570,Mitsubishi Kagaku)であった。
【0132】
EtOHを、前記分子的混合物から蒸発させて乾燥パウダーを得て、これを圧縮してタブレット剤を得た。前記2つの製剤のいずれかをSIF(0.1%)と接触させた後、立方相粒子の分散が形成された。前記粒子は、幅広い粒度分布を有していた(<100μm)。
【0133】
【表20】

【実施例11】
【0134】
PEGで固められた製剤からの、生物活性剤(ケトコナゾール)を含み弱い塩基特性であってわずかにSIFに溶解する立方相粒子の放出
(A)0.5gのケトコナゾール(KC)を50g氷酢酸(HAc)に溶解した。
(B)50%のポリエチレングリコール(PEG、Mw=35,000)、6%のポリソルベート80(P80)、6%のルトロール(Lutorl)F127、2%のオレイン酸(OA)、及び、36%のグリセロールモノオレアート(GMO)を含む4.5gの溶液を分子的に混合し、70℃で溶融状態とした。
前記(A)及び(B)溶液を70℃で混合し、均一溶液とした。氷酢酸を蒸発により除去した。温度を下げることで、テーブル17の固形製剤が形成された。前記固形製剤をカプセルに充填した。各カプセルあたり、0.650gであった。
【0135】
放出プロファイルを、2つの前記カプセル剤と500mlの模擬腸液(SIF)とを37℃のErweka溶解槽(100rpmの回転バスケットを使用した)内で接触させた。各タイムポイントごとに1mlの試料を引き抜き、KCを含む立方相粒子を分子的に溶解した後、引き続き、0.75mlの1.25M HCl(EtOH中)、及び、1.75mlのEtOHを加え、ケトコナゾールの濃度を吸収276nmのUV−Visにより評価した。ケトコナゾールを有する立方相粒子の放出は、一次であるように見え、その放出は、約1.5時間後に終了した。
【0136】
【表21】

【実施例12】
【0137】
正の表面チャージを得るためにキトサンにコートされた立方相粒子
90%のグリセロールモノオレアート(GMO)と10%ルトロールF127との融解混合物を水性溶液に分散し、ホモジナイザーを用いて粗い分散とした(重量で5%の脂質)。高圧ホモジナイザーを使用して(5サイクル、5000psi)前記粗い分散を細かい分散へ変換した(120℃、20分のオートクレーブ後、平均モードサイズ200nm)。0.5%のキトサンを含む20mlの水性溶液(5%酢酸)を20mlの前記5%立方相脂質分散と混合した。この分散は、平均モードサイズが250nmであり、pH4〜6.5の範囲のζ−ポテンシャルが+4mVであることで特徴づけされる立方液晶相からなっていた。pH7を超えると前記粒子は、非チャージとなった。
【実施例13】
【0138】
PEGで固められたタブレット剤からのキトサンでコートされた立方相粒子の放出
90%のグリセロールモノオレアート(GMO)と10%のルトロールF127との融解混合物を水性溶液に分散し、ホモジナイザーを用いて粗い分散とした(重量で5%の脂質)。高圧ホモジナイザーを使用して(5サイクル、5000psi)前記粗い分散を細かい分散へ変換した(120℃、20分のオートクレーブ後、平均モードサイズ200nm)。0.5%のキトサンを含む20mlの水性溶液(5%酢酸溶液に溶解したもの)を20mlの前記5%立方相脂質分散及び10mlの10%PEG(Mw=4000)溶液と混合した。pHは、1M NaOHの滴定により、pH=7.12に調整した。この分散をフリーズドライして、乾燥パウダーとし、これを圧縮してテーブル18のタブレット剤を得た。500mlの模擬腸液(SIF)への溶解の後、幅広いサイズ分布(<100μm)の立方液晶相粒子を得た。
【0139】
【表22】

【実施例14】
【0140】
ポリエチレングリコールで固められたタブレット剤からのキトサンでコートされた立方相粒子の放出
50%のポリエチレングリコール(PEG、Mw=35,000)、6%のポリソルベート80、6%のルトロールF127、2%のオレイン酸、及び、36%のグリセロールモノオレアートを含む4.5gの溶液を分子的に混合し、70℃で溶融状態とした。温度を下げることで固形製剤が形成された。前記固形製剤を水に分散させて(5%の固形構成成分)立方相粒子を形成させた。0.5%のキトサンを含む20mlの水性溶液(5%酢酸溶液に溶解したもの)を20mlの前記5%立方相粒子の分散と混合した。pHは、1M NaOHの滴定により、pH=7.12に調整した。この分散をフリーズドライして、テーブル19の乾燥パウダーを得た。500mlの模擬腸液(SIF)への溶解の後、幅広いサイズ分布(<100μm)の立方液晶相粒子を得た。
【0141】
【表23】

【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】図1は、化学的性質及びポリマーの分子量の適切な選択により、生物活性剤の時間に関する放出プロファイルを変化させることができる一例のグラフである。
【図2】図2は、ソニケーションにより生物活性剤の腸細胞膜への吸収時間を変化させることができる一例のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口投与可能な組成物であって、少なくとも1つの生理学的に許容されるポリマーを含み、前記ポリマーには、粒子が分散しており、前記粒子は、少なくとも1つの生理学的に許容される脂質及び生物活性剤を含み、前記粒子は、水又は胃腸管液に接触することで、前記脂質、前記生物活性剤及び水を含むナノメートルサイズの粒子を形成する組成物。
【請求項2】
前記ナノメートルサイズの粒子が、液晶性である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、親水性の水溶性ポリマーである請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
経口投与可能な組成物であって、少なくとも1つの生理学的に許容されるポリマー、少なくとも1つの生理学的に許容される脂質、及び、少なくとも1つの生物活性剤の乾燥混合物を含み、前記脂質、生物活性剤及びポリマーは、分子レベルで相互に分散しており、水又は胃腸管液に接触することで前記脂質及び前記生物活性剤並びに必要に応じてさらに水を含む粒子を形成することができる組成物。
【請求項5】
前記ポリマーが親水性ポリマーであり、前記親水性ポリマーは、水性溶剤に溶解した場合にゲルを形成することができる請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記粒子が、水を含み、かつ、順立方相、逆立方相、順六方相、逆六方相及びL3相から選択される相である請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記粒子の最大寸法が、10nmから100μmである請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
さらに、界面活性剤を含む請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記界面活性剤が、糖界面活性剤である請求項8記載の組成物。
【請求項10】
前記粒子が、界面活性ポリマーで表面修飾されている請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記界面活性ポリマーが、キトサン、キトサン誘導体、アルギン酸塩、アルギン酸塩誘導体、セルロース、セルロース誘導体、及び、それらの混合物から選択される請求項10記載の組成物。
【請求項12】
前記粒子が、粘膜付着性である請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記脂質が、ガラクト脂質、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、モノグリセリド、酸性セッケン、セレブロシド、ホスファチジン酸、プラスマロゲン、カルジオリピン、脂肪酸ジ−グリセロールエステル、脂肪酸オリゴ−グリセロールエステル、脂肪酸ポリ−グリセロールエステル、脂肪アルコールジ−グリセロールエーテル、脂肪アルコールオリゴ−グリセロールエーテル、脂肪アルコールポリ−グリセロールエーテル及びそれらの混合物から選択される膨潤極性脂質である請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記脂質が、少なくとも1つの脂肪酸を含む請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、pH3未満の水性溶液で粒子を放出し、pH6を超える水性溶液でより大きな粒子を放出するものであって、pH3未満で放出される前記粒子が、ナノメートル以下のサイズである請求項14記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリマーが、多糖、セルロース誘導体、セルロースエーテル、及び、合成ポリマーから選択されるポリマーである請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリマーが、デンプン、マルトデキストリン、カラギーナン、キサンタンガム、イナゴマメガム、アラビアゴム、キトサン、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、及び、ペクチンから選択される多糖である請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、pH7未満の水性液にさらされた場合に0.5から1000nmの粒子を形成し、pH6を超える水性液にさらされた場合に250から10000nmの粒子を形成する請求項1から17のいずれかに一項に記載の組成物。
【請求項19】
経口投与可能な組成物の製造方法であって、少なくとも1つの生理学的に許容されるポリマー、少なくとも1つの生理学的に許容される脂質、及び、少なくとも1つの生物活性剤の溶液から溶剤を除去すること、及び、必要に応じて、得られた固体をすりつぶし、圧縮成形し、コーティングし、及び/又は、カプセル封入することを含む製造方法。
【請求項20】
経口投与可能な組成物の製造方法であって、少なくとも1つの生理学的に許容される親水性ポリマー、少なくとも1つの生理学的に許容される脂質、及び、少なくとも1つの生物活性剤の混合物を融解して混合すること、並びに、必要に応じて、得られた固体をすりつぶし、圧縮成形し、コーティングし、及び/又は、カプセル封入することを含む製造方法。
【請求項21】
前記融解及び混合が、溶融押出しを含む請求項20記載の製造方法。
【請求項22】
請求項1記載の組成物の製造方法であって、溶解した生理学的に許容される水溶性の親水性ポリマー、及び、分散した生理学的に許容される脂質を含む溶液であって、前記溶液中に溶解又は分散した生物活性剤を含む溶液から溶剤を除去することを含む製造方法。
【請求項23】
経口投与可能な組成物の製造方法であって、溶解した生理学的に許容された水溶性の親水性ポリマー、溶解又は分散した生物活性剤、及び、分散した生理学的に許容される脂質を含む溶液から溶剤を除去することを含み、前記脂質が、構造化された粒子の形で前記溶液に分散している製造方法。
【請求項24】
前記溶剤の除去が、凍結乾燥又は噴霧乾燥により実施される請求項19、22又は23に記載の製造方法。
【請求項25】
請求項1から18にいずれか一項に記載の組成物を含む医薬製剤であって、必要に応じて、少なくとも1つの生理学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬製剤。
【請求項26】
請求項25記載の医薬製剤であって、請求項1から18にいずれか一項に記載の組成物であって、タブレット剤の形にプレスされた組成物を含む医薬製剤。
【請求項27】
医薬組成物であって、C6-10アルカン酸に溶解したプロゲステロン若しくはその誘導体、又は、生理学的に許容されるその塩を含み、必要に応じて及び好ましくは、さらに生理学的に許容される脂質を含む医薬組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口投与可能な乾燥組成物であって、少なくとも1つの生理学的に許容されるポリマーを含み、前記ポリマーには、粒子が分散しており、前記粒子は、少なくとも1つの生理学的に許容される脂質及び生物活性剤を含み、前記粒子は、水又は胃腸管液に接触することで、前記脂質、前記生物活性剤及び水を含む立方相、六方相又はL3のナノメートルサイズの粒子を形成し、前記脂質が、ジグリセリドを含む組成物。
【請求項2】
経口投与可能な乾燥組成物であって、少なくとも1つの生理学的に許容されるポリマー、少なくとも1つの生理学的に許容される脂質、及び、少なくとも1つの生物活性剤の乾燥混合物を含み、前記脂質、生物活性剤及びポリマーは、分子レベルで相互に分散しており、水又は胃腸管液に接触することで前記脂質及び前記生物活性剤並びに必要に応じてさらに水を含む立方相、六方相又はL3相の粒子を形成することができる組成物。
【請求項3】
経口投与可能な乾燥組成物であって、少なくとも1つの生理学的に許容されるポリマーを含み、前記ポリマーには、粒子が分散しており、前記粒子は、少なくとも1つの生理学的に許容される脂質及び生物活性剤を含み、前記粒子は、水又は胃腸管液に接触することで、前記脂質、前記生物活性剤及び水を含むナノメートルサイズの逆六方液晶粒子を形成する組成物。
【請求項4】
前記ポリマーが、親水性の水溶性ポリマーである請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマーが親水性ポリマーであり、前記親水性ポリマーは、水性溶剤に溶解した場合にゲルを形成することができる請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記粒子が、水を含み、かつ、順立方相、逆立方相、順六方相、逆六方相及びL3相から選択される相である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記粒子の最大寸法が、10nmから100μmである請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
さらに、界面活性剤を含む請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記界面活性剤が、糖界面活性剤である請求項8記載の組成物。
【請求項10】
前記粒子が、界面活性ポリマーで表面修飾されている請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記界面活性ポリマーが、キトサン、キトサン誘導体、アルギン酸塩、アルギン酸塩誘導体、セルロース、セルロース誘導体、及び、それらの混合物から選択される請求項10記載の組成物。
【請求項12】
前記粒子が、粘膜付着性である請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記脂質が、ガラクト脂質、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、モノグリセリド、酸性セッケン、セレブロシド、ホスファチジン酸、プラスマロゲン、カルジオリピン、脂肪酸ジ−グリセロールエステル、脂肪酸オリゴ−グリセロールエステル、脂肪酸ポリ−グリセロールエステル、脂肪アルコールジ−グリセロールエーテル、脂肪アルコールオリゴ−グリセロールエーテル、脂肪アルコールポリ−グリセロールエーテル及びそれらの混合物から選択される膨潤極性脂質である請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記脂質が、少なくとも1つの脂肪酸を含む請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、pH3未満の水性溶液で粒子を放出し、pH6を超える水性溶液でより大きな粒子を放出するものであって、pH3未満で放出される前記粒子が、ナノメートル以下のサイズである請求項14記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリマーが、多糖、セルロース誘導体、セルロースエーテル、及び、合成ポリマーから選択されるポリマーである請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリマーが、デンプン、マルトデキストリン、カラギーナン、サンタンガム、イナゴマメガム、アラビアゴム、キトサン、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、及び、ペクチンから選択される多糖である請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、pH7未満の水性液にさらされた場合に0.5から1000nmの粒子を形成し、pH6を超える水性液にさらされた場合に250から10000nmの粒子を形成する請求項1から17のいずれかに一項に記載の組成物。
【請求項19】
経口投与可能な組成物の製造方法であって、少なくとも1つの生理学的に許容されるポリマー、少なくとも1つの生理学的に許容される脂質、及び、少なくとも1つの生物活性剤の溶液から溶剤を除去すること、及び、必要に応じて、得られた固体をすりつぶし、圧縮成形し、コーティングし、及び/又は、カプセル封入することを含む製造方法。
【請求項20】
経口投与可能な組成物の製造方法であって、少なくとも1つの生理学的に許容される親水性ポリマー、少なくとも1つの生理学的に許容される脂質、及び、少なくとも1つの生物活性剤の混合物を融解して混合すること、並びに、必要に応じて、得られた固体をすりつぶし、圧縮成形し、コーティングし、及び/又は、カプセル封入することを含む製造方法。
【請求項21】
前記融解及び混合が、溶融押出しを含む請求項20記載の製造方法。
【請求項22】
請求項1又は2に記載の組成物の製造方法であって、溶解した生理学的に許容される水溶性の親水性ポリマー、及び、分散した生理学的に許容される脂質を含む溶液であって、前記溶液中に溶解又は分散した生物活性剤を含む溶液から溶剤を除去することを含む製造方法。
【請求項23】
経口投与可能な組成物の製造方法であって、溶解した生理学的に許容された水溶性の親水性ポリマー、溶解又は分散した生物活性剤、及び、分散した生理学的に許容される脂質を含む溶液から溶剤を除去することを含み、前記脂質が、構造化された粒子の形で前記溶液に分散している製造方法。
【請求項24】
前記溶剤の除去が、凍結乾燥又は噴霧乾燥により実施される請求項19、22又は23に記載の製造方法。
【請求項25】
請求項1から18にいずれか一項に記載の組成物を含む医薬製剤であって、必要に応じて、少なくとも1つの生理学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬製剤。
【請求項26】
請求項25記載の医薬製剤であって、請求項1から18にいずれか一項に記載の組成物であって、タブレット剤の形にプレスされた組成物を含む医薬製剤。
【請求項27】
請求項25又は26に記載の医薬製剤であって、プロゲステロンを含む医薬製剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2006−520375(P2006−520375A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505963(P2006−505963)
【出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001099
【国際公開番号】WO2004/080438
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(505345749)カムルス エービー (17)
【Fターム(参考)】