説明

乾燥モルタル混合物

調製された、かつ、まだ完全に硬化されていない状態で安定した特性を有する少なくとも1つの水硬性及び/又は潜在水硬性のバインダーをベースとする乾燥モルタル混合物が特許請求される。新規の乾燥モルタル混合物は、それが少なくとも分散剤の代表物質及び超吸収特性を有する化合物を含有することを特徴としている。この混合物を用いて、水平適用のための公知のタイル接着剤の利点を垂直の適用手段にも当てはめることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥モルタル混合物及びその使用に関する。
【0002】
"R.Bayer,H.Lutz,Dey Mortars,Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry,6th ed.,vol.11,Wiley−VCH,Weinheim,(2003),83−108"には、乾燥モルタルの使用及び組成について概観されている。乾燥モルタルは、バインダー、骨材及び種々の添加剤から成る。
【0003】
組成に応じて、乾燥モルタルは、例えばグラウトモルタル、セルフレベリング系サーフェーサー、スクリード、流動スクリード、タイル接着剤、目地モルタル、下塗り、複合断熱システム(WDVS)用の接着モルタル及び補強用モルタルとして又は補修用モルタルとして使用される。乾燥モルタルは、屋内適用にも屋外適用にも使用されることができる。後者の適用には、例えば、既に挙げたWDVS用の接着モルタル及び補強用モルタル、下塗り及び補修用モルタルが含められる。このような乾燥モルタルは、その硬化後に環境と直接的に接触し、そのため気候に直接曝される。それゆえ、このような系には、屋内適用のための製品より高い要求も課せられている。なかでも雨や濃縮された大気湿分は、屋外領域における乾燥モルタルに激しく加わることから、その寿命に悪影響を及ぼす可能性がある。当業者は、この関連において、かつ、これらのマイナスの作用を緩和するために、添加剤として疎水化剤を用いようとする。
【0004】
殊にタイル接着剤及び更なる幾つかの適用領域における、現代の乾燥モルタル混合物に課せられる要求は、その特性に関して、まだ完全に硬化されていない状態(耐滑り性及び保水性といった流動学的な加工特性)のみならず、完全に硬化された状態(様々な基材上での耐摩耗性、曲げ強度、接着引張強度)においても非常に高い。これらの特性は、上記の"R.Bayer"の項目に記載されているように、乾燥混合物の分野で公知の添加剤、例えば多糖(例えばセルロースエーテル)及び再分散性ポリマー粉末をベースとする保水剤によって改善される。
【0005】
流動性の乾燥モルタル混合物中では、いわゆる流動化剤又は分散剤が、モルタルの流動性を改善するために使用される。分散剤によって、無機バインダー及びフィラーが分散されることから、低い含水量ですら非常に良好な流動性が得られる。それに対して、安定した乾燥モルタル、例えばタイル接着剤、目地モルタル、下塗り、複合断熱システム(WDVS)用の接着モルタル及び補強用モルタルにおいて、流動化剤の使用は、必要とされる安定性がもはや得られないことからこれまで定着していなかった。
【0006】
いわゆる"接着モルタル"は、例えば独国公開公報DE102004030121A1から公知である。"接着モルタル"は、当業者であれば、特にセメント含有の補強用モルタル等と理解し、これは主成分として無機バインダーをセメントの形態で並びにフィラーを石英及び/又はカーボネートを含有する原料を含む。上述の公開公報に記載の接着モルタルは、水硬性バインダー、ポゾラン性及び/又は潜在水硬性の添加剤をベースとする添加物、フィラー、高分子流動化剤、再分散性ポリマー粉末及び/又はポリマー分散液、保水剤、並びに促進剤、遅延剤、増粘剤、着色含量、還元剤、AE剤(Luftporenbildner)及び加工助剤から成る群から選択されるそれ以外の添加剤から成り、残分として水が記載されている。
【0007】
DE102004030121Aは、床適用のために適しており、それゆえモルタルの安定性について高い要求を課さないタイル接着剤中での分散剤の使用によって、非常に優れた加工特性、例えば付着挙動、修正可能性及び接着オープンタイムが達成されることを記載している。そのうえまた、硬化されたモルタルの物理的特性、特にコンクリート下地上での破壊挙動及び接着引張強度にも良い影響が及ぼされる。さらに、これらの接着モルタルの場合にはエフロレッセンスが観察されないことから、特にこれは屋外適用において有利である。
【0008】
疎水化剤は、R.Bayerの上記記事の第3.2.2章に記載されている。この章では、疎水化の2つの原則的な方法も挙げられている。これらは、本質的に脂肪酸の金属塩、例えばステアリン酸亜鉛及びオレイン酸ナトリウムの使用である。代わりに若しくは補足的に、或いはまた、疎水性に改質された再分散性粉末も使用可能であり、それは例えば疎水化されたVinnapas(R)型粉末である。
【0009】
疎水性で水に再分散可能なポリマー粉末は、例えばWO2006/061139A1から公知である。それに従って、ポリマー粉末は、酢酸ビニルモノマー単位50〜90質量部、炭素原子2〜20個を有するα−分岐モノカルボン酸のビニルエステルのビニルエステルモノマー単体5〜50質量部、炭素原子1〜15個を有するアルコールのメタクリル酸エステルモノマー単位1〜30質量部、炭素原子10〜20個を有する長鎖モノカルボン酸のビニルエステルモノマー単位40質量部まで、エチレン単位20質量部まで並びに場合により更なる補助モノマー単位を含有する。
【0010】
疎油性及び疎水性に働く混合ポリマーは、DE102006028663B4から公知である。これらの混合ポリマーは、水性分散液として又は他方で水分散性粉末の形態で存在してよい。
【0011】
同様に疎水性及び水に再分散可能な脂肪酸をベースとする添加剤を、DE10323205A1が記載する。
【0012】
DE102006028663に記載されているように、特に脂肪酸の金属塩の場合、疎水化のための添加は、より不十分な濡れしかもたらさず、そのため加工性はより悪化する。さらに、慣用の疎水化剤は洗い落とされる可能性があり、それによって疎水化作用は、長期にわたって著しく低下する。さらに当業者には、高性能の疎水化剤、例えば純粋なオレイン酸ナトリウムが、なかでも屋外領域における壁塗り用塗料において亀裂形成を生じる傾向にあることが公知であるこの理由から、このような疎水化剤は、ステアリン酸金属塩との混合物として組み合わされる。
【0013】
特に、添加剤、例えば再分散性ポリマー粉末及び/又はセルロースエーテルによって、ポリマー調質されたセメント含有の乾燥混合物が一般に使われているが、しかしながら、これらの添加剤、特に再分散性ポリマー粉末は、時に高い適用量(6質量%まで)に基づき非常に費用が掛かる。
【0014】
それゆえ、疎水性に改質された再分散性粉末の使用は、実際上は、コストが高まることに基づき殆ど定着していない。さらに付け加えられる点は、分散粉末によって建築化学混合物に採り入れられる重要な特性、例えば強度及び接着引張値が、他の特性、例えば疎水性と必然的に結び付けられ、そのことによって、配合者に重要な自由度が選び取られる点である。時に強い疎水化特性に基づき、分散粉末は、疎水化されなかった変形物と比較して、より多く配量され、そうして下地に対して必要とされる付着結合力が保証されなければならない。これは、付着特性に関して、EPS及びXPSタイプのポリスチレンベース絶縁材の加工に際して特に効力を発揮する。
【0015】
建材混合物中での超吸収性ポリマーの使用も同様に公知である。例えば、US−A−2003144386には、強度増進の改善のためにセメント含有の建材混合物中で超吸収体を使用することが記載される。この文献中に開示される、カルシウム含有系、例えばセメント含有系における超吸収体の吸水容量若しくは保水容量は、しかしながら、比較的僅かである。
【0016】
公開公報DE10202039A1は、固体の、微細かつヒドロゲルを形成するポリマー並びに水硬性固化建築材料から成る混合物を記載する。ポリマーは、200μmより大きい粒径を有する粒子を2質量%より下の割合で有する。ポリマーは、好ましくは、モノエチレン性不飽和C3〜C25−カルボン酸又はそれらの無水物をモノマーとして含有する。このようなポリマーの超吸収体の場合の欠点は、セメント含有系において破壊してしまう特性であり、なぜなら、それらは実質的に純粋なアクリル酸から合成されているからである。
【0017】
超吸収性ポリマー(SAP)は、通常、水中又は水性塩溶液中で膨潤可能な粉末状コポリマーである。特にSAPは、適したエチレン性不飽和ビニル化合物のラジカル重合と、そのようにして得られたコポリマーの引き続く乾燥によって得られる、架橋した高分子量のアニオン性高分子電解質又はカチオン性高分子電解質のいずれかである。水又は水系と接触すると、膨潤及び吸水下でヒドロゲルが形成し、その際、粉末状コポリマーの重さの数倍の水を吸収することができる。したがって、"ヒドロゲル"とは、親水性の、一方で、架橋した水不溶性のポリマーをベースとする、三次元網目構造として存在する水を含有するゲルと理解される。
【0018】
特に乾燥モルタル中での超吸収体の使用が公知である。そのため、例えばDE102007027470A1には、水硬性バインダーとしてセメント又は石膏をベースとし、SAPを含有する乾燥モルタル混合物が記載されている。しかしながら、そこに開示された乾燥モルタル配合物は、セメント水和及び硬化挙動のために硬化促進剤として高い量のギ酸カルシウムを必ず含有していなければならない。この理由からまた、比較的高価なモノマーの2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)をとりわけ多量に含有する特定のSAPのみを使用することが可能である。
【0019】
上述の従来技術から公知の工業技術は、その経済的側面に関して、特にその生産性に関して、なお改善の余地がある。一方、なかでも、所望の乾燥混合物は、特に、加工していない状態、或いはまた硬化された状態において良好な生成物特性を示すべきである。
【0020】
なかでも、好ましい生成物特性は、ある一定の安定性を有していなければならない(このことは、垂直方向に取り付けられる適用分野の場合に効力を発揮する)、まだ完全には硬化していないモルタル混合物において所望されている。
【0021】
接着モルタルには、セルロースエーテルの形態の保水剤がしばしば加えられ、そのようにして加工特性が最適化される。それ以外に、このようなブレンドに、2成分モルタル系の場合において再分散可能なポリマー粉末又は液状のポリマー分散液が、ある一定の柔軟性を付与し、それによって、このいわゆる"柔軟モルタル(Flexmoertel)"は、下地への施与に特に適したものとなり、引き続き、これに堅いセラミック板及び/又は天然石材板が張られることができる。水平の下地への上述の適用に特に関連して、結合強度及び特に湿潤接着引張強度がより重要視される。係るタイル接着剤は、薄床用モルタル又は中型床用モルタルとして施与される。それらは、このために良好な流動性を有していなければならず、そのため増粘剤を含まないか若しくは少量分しか含まない。
【0022】
したがって、本発明において、経済的な観点の下で有利に製造することができ、かつ、特に垂直の適用領域において加工技術的な及び質的な利点を有する、少なくとも1つの水硬性バインダー及び/又は潜在水硬性バインダーをベースとする新規の乾燥モルタル混合物を提供するという課題が設定された。
【0023】
殊にタイル接着剤及び更なる幾つかの適用分野における、現代の乾燥モルタル混合物に課せられる要求は、その特性に関して、まだ完全に硬化されていない状態(耐滑り性及び保水性といった流動学的な加工特性)のみならず、完全に硬化された状態(様々な基材上での耐摩耗性、曲げ強度、接着引張強度)においても非常に高い。これらの特性は、"R.Bayer,H.Lutz,Dey Mortars,Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry,6th ed.,vol.11,Wiley−VCH,Weinheim,(2003),83−108"に記載される通り、乾燥混合物の分野で公知の添加剤、例えば多糖ベース(例えばセルロースエーテル)の保水剤及び再分散ポリマー粉末によって改善される。しかしながら、上述の添加剤、とりわけ分散粉末は、他の乾燥混合物と比較して非常に費用が掛かる。或いはまた、広げられた乾燥モルタルの量に対する覆われた面の比として定義されている乾燥混合物の生産性は、ユーザーにとっての更なる利点に基づき(例えば、より少ない乾燥モルタルを保持する必要がある)、経済的な理由から改善の余地がある。固化速度、若しくは乾燥モルタルの(初期)強度の発生を促す必要性も存在する。これは、好ましい手法で、なかでも、その良好な効果に基づき、ギ酸カルシウム又はそれに他のカルシウム塩の使用によって行われる。他の公知の固化促進剤、例えばアルカノールアミンは、とりわけ屋内領域での適用に際して、不快な臭いが発生するという欠点を持つと考えられ、若しくは健康的にも憂慮すべきものとなる可能性がある。
【0024】
技術的な課題として、そこから導き出せることは、適切な措置によって、なかでも、建材品の品質の低下を被ることなく乾燥モルタルの安定性を高め、かつ、特にWDVSの適用分野において十分な疎水性及び耐亀裂性を達成することである。
【0025】
課題設定の更なる側面は、水平な面にそれらの適用が制限されているタイル接着剤又は柔軟モルタルの利点の転用において、垂直の領域における安定した系に当てはめることであり、その際、モルタル系は、完全に硬化された状態において欠点を被らない。
【0026】
この課題の解決は、高められたW/C値に対する許容範囲を高めるために適した、超吸収性の、たいてい粉末状のコポリマー(超吸収体)を含有する本発明による乾燥モルタル混合物の使用によって行われる。その際、超吸収体の高分子化学を、本発明により、水系、例えば、さらに付加的に分散剤を含有する本発明による水硬性固化系若しくは潜在水硬性固化系における十分に高い吸水容量が保証されるように適応させた。
【0027】
少なくとも1つの水硬性バインダー及び/又は潜在水硬性バインダーをベースとする本発明による乾燥モルタル混合物は、調製された、かつ、完全に硬化されていない状態で、DIN EN 1308に従って突き止められる安定した特性と、<18cmのHaegermannスランプを有し、かつ、これはDIN EIN1015に従って測定される。この乾燥モルタル混合物は、それが該乾燥モルタル混合物の全組成物を基準として0.01〜5.0質量%の量の分散剤の少なくとも1つの代表物質(a)、及び超吸収特性を有する少なくとも1つの化合物を含有することを特徴としている。
【0028】
意想外にも、その際、前述の生成物特性の要求が垂直の加工領域においてすら遵守されるか又は改善されることができるばかりでなく、そのうえまた、非常に少ない吸水性が観察され、かつ、疎水性特性のさもなければ減退する作用が生じないことが見出された。それ以外に、完全に硬化された乾燥モルタル混合物の柔軟性を上昇させ、かつ、該混合物の亀裂成形を著しく低下させることができた。更なる利点は、分散剤を超吸収体と組み合わせて使用することにより、増粘剤の計量供給量も減らすことができ、それに分散粉末の量も明らかに低下させることができる点である。これは特に意想外であり、それというのも、水平な適用領域における分散剤の使用は、このような乾燥モルタル系の安定性とは本来相容れず、かつ、加工技術的な特性を通常は悪化させるからである。上記の意想外の効果及び利点のすべては、分散剤と超吸収体との組合せに明らかに伴うものであり、かつ、意想外にも、<18cmのスランプを有する安定した乾燥モルタル混合物において生じる。例えばタイル又は天然石材板を敷き詰めるために使用されるような、水平な領域での使用における分散剤含有タイル接着剤は、通常>20cmのスランプを有し、その際、このスランプはまたDIN EN 1015−3に従って測定される。
【0029】
定義のために、乾燥モルタル混合物は、文献中では乾燥混合物又は乾燥モルタルとも呼ばれることが強調されるべきである。
【0030】
本発明の詳細な説明
a)本発明に従った乾燥モルタル混合物は、更なる成分c)として疎水化剤を含有してよい。これは、好ましくは、0.1〜0.6質量%の量で、とりわけ有利には0.2〜0.4質量%の量で、かつ、特に0.2〜0.3質量%の量で、そのつど乾燥モルタル混合物の全組成物を基準として含有されているべきである。
【0031】
疎水化剤として、一般に、大量に低コストで入手できる脂肪酸の金属塩が適している。通常、それらは、配合成分として乾燥モルタルの製造に際して添加される。
【0032】
疎水化剤の添加によって、完全に硬化された乾燥モルタル中への水の浸入が軽減されるか又は全面的に防止される。それによって寿命が延び、なぜなら、湿分が入り込むと、特に凍結によって、例えば破片となって損傷をもたらすからである。本発明による適した疎水化剤は、脂肪酸誘導体、特に、ラウリン酸及び/又はオレイン酸のC1-14−アルキルエステル及びC1-14−アルキルアリールエステル、ラウリン酸及び/又はオレイン酸のモノグリコールエステル及び/又はジグリコールエステル、グリセリンとラウリン酸及び/又はオレイン酸とのモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステル及びトリ脂肪酸エステル、脂肪酸の金属塩及びとりわけ有利にはステアリン酸亜鉛及び/又はオレイン酸ナトリウム、それらは混合物としても添加されることができる。同様に考慮に入れられるのは、従来技術から良く知られている疎水性に改質された再分散性粉末である。これらは、酢酸ビニルモノマー単位、ビニルエステルモノマー単位及び/又はメタクリル酸エステルモノマー単位をベースに合成されることができる。有利なメタクリル酸エステルモノマー単位は、炭素原子1〜8個を有する非分岐又は分岐アルコールのアクリル酸エステルであり、その際、とりわけ有利なのは、炭素原子1〜8を有する非分枝状又は分枝状アルコールアクリル酸エステルである。特に適しているのは、メチルアクリレート、n−エチルアクリレート、t−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートである。有利なビニルモノマー単位として、特にビニルラウレートから誘導される、炭素原子10〜20個を有する長鎖分岐モノカルボン酸が該当する。最終的に、本発明により、炭素原子2〜20個を有するα−分岐モノカルボン酸のビニルエステルが有利なものと見なされている。特に、この箇所で挙げられるのは、ビニルピバレート及び炭素原子9〜15個を有するα−分岐モノカルボン酸(バーサチック酸)のビニルエステルである。
【0033】
b)セメント含有水硬性バインダーは、セメントの種類に関して特別な制限を受けない。特にCEM、I、II、III、IV及びVの群から選択されたポルトランドセメント及び/又はアルミナセメント(aluminous cement)を使用することができる。とりわけ製品の相応する着色付与を担う場合には、白色セメントが適している。上述のセメントは、単独で又はその混合物として使用されることができる。乾燥モルタル混合物中でのセメント含有水硬性バインダーの質量割合は、適用に応じて、3〜50質量%であり、有利なのは、5〜40質量%の質量割合であり、とりわけ有利なのは、10〜30質量%の質量割合である。そのうえ、しばしば、付加的な非水硬性バインダーCa(OH)2(水酸化カルシウム)が添加され、これは周囲空気中に含まれる二酸化炭素により固化する。水酸化カルシウムの質量割合は、適用に応じて、1〜15質量%であり、有利なのは、2質量%〜10質量%の質量割合である。更なる実施形態において、上述のセメントの代わりに又は加えて、ポゾラン性及び又は潜在水硬性バインダーも乾燥モルタル混合物中に含まれていてよい。ポゾラン性及び又は潜在水硬性添加剤の場合、好ましくは、フライアッシュ、マイクロシリカ、メタカオリン、トラス粉、アルミノケイ酸塩、凝灰岩、フォノライト、ケイ藻土、非晶質沈降シリカ、オイルシェール並びに主として結晶質でない成分を有する高炉スラグが使用される。乾燥モルタル混合物中でのその割合は、好ましくは、乾燥モルタル混合物の全組成物を基準として5〜50質量%である。
【0034】
c)更なる成分として、本発明による乾燥モルタル混合物は、アグリゲートを含有してよく、該アグリゲートは、好ましくは、5mmまでの平均粒径、好ましくは0.5〜3mmの平均粒径、とりわけ有利には1.0〜2.0mmの平均粒径を有する骨材である。それらの割合は、本発明に従って、好ましくは、乾燥モルタル混合物の全組成物を基準として5〜85質量%であるべきである。
【0035】
本発明による乾燥モルタル混合物の上述のアグリゲート又はそれに充填材は、水系に僅かな程度でしか溶解しないか、若しくは膨潤可能でない。それらは特にバインダーとしては作用しない。
【0036】
無機充填材として適したアグリゲートは、例えば、珪砂、石灰石粉、白亜、大理石、粘土、泥灰岩、酸化アルミニウム、滑石及び/又は重晶石であり、その際、ケイ酸塩砂、ケイ酸塩粉、石灰石粉、石灰石砕砂、白亜、苦灰石、菱苦土石の形態の炭酸塩及びそれらより成る混合物が有利である。無機充填材は、有利には、軽量充填材、例えば、膨張ガラスのようなガラス中空微小球として、並びに、パーライトのようなアルミノケイ酸塩及び膨張粘土としても存在してよい。例えば無機質フォーム、軽石、発泡溶岩及び/又は膨潤バーミキュライトのような天然ベースの軽量充填材も同様に有利である。本発明による有機充填剤は、例えば、細片状の廃棄プラスチック、例えばポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン又はメラミン樹脂より成るものである。ゴム粒子及びポリスチレン球は、有利な本発明による有機充填材である。
【0037】
d)本発明は、分散剤成分(a)及び超吸収特性を有する化合物(b)に関して、成分中で(a)+(b)1:0.5〜5である量比を規定する。
【0038】
本発明の更なる観点は、成分(a)+(c)、つまり、分散剤+疎水化剤の組合せ物が、0.20質量%〜0.8質量%の割合、有利には0.25〜0.45質量%の割合、特に有利には0.25質量%〜0.35質量%の割合を有することである。上述の量割合は、そのつど乾燥モルタル混合物の全組成物を基準とする。
【0039】
成分(b)+(c)、つまり、超吸収特性を有する化合物と疎水化剤との組合せ物について、本発明は、0.3質量%〜1.0質量%の有利な割合、とりわけ有利には0.3〜0.8質量%の割合、特に0.35質量%〜0.6質量%の割合を規定する。これらの上述の割合は、そのつど乾燥モルタル混合物の全組成物を基準とする。
【0040】
最終的に、本発明はなお、成分(a)+(b)+(c)の組合せ物について、0.4質量%〜1.0質量%、有利には0.4〜0.8質量%、とりわけ有利には0.5〜0.7質量%に達する割合を規定する。上述の量割合は、そのつど乾燥モルタル混合物の全組成物を基準とする。
【0041】
本発明による特徴は、分散剤(a)に見られる。適した代表物質は、本発明によれば、ポリエーテル側鎖を有する少なくとも1つの櫛形ポリマーを含有する一連の化合物から選択される;しかし、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物系("BNS")及びメラミンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物系("MFS")も考慮に入れられる。
【0042】
ポリエーテル側鎖を有する適した分岐櫛形ポリマーは、例えばWO2006/133933A2の中で定められている。
【0043】
これらのコポリマーは、2つのモノマー成分から成り、その際、第一のモノマー成分は、オレフィン不飽和モノカルボン酸コモノマー又はそれらのエステル又は塩及び/又はオレフィン不飽和硫酸コモノマー又はそれらの塩であり、かつ、第二のモノマー成分は、一般式(I)
【化1】

であり、かつ、R2は、H又は炭素原子1〜5個を有する脂肪族炭化水素基である;R3=非置換又は置換されたアリール基、有利にはフェニル及びR4=H又は炭素原子1〜20個を有する脂肪族炭化水素基、炭素原子5〜8個を有する脂環式炭化水素基、炭素原子6〜14個を有する置換されたアリール基又は
【化2】

[式中、R5及びR7は、それぞれアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルカリール基であり、かつ、R6は、アルキリデン基、アリーリデン基、アラルキリデン又はアルカリーリデン基である]のグループの代表例
及び
p=0、1、2、3又は4、
m、nは、互いに無関係に、2、3、4又は5を意味し、
x及びyは、互いに無関係に、≦350の整数であり、かつ、z=0〜200]のコモノマーである。
【0044】
WO2006/133933A2の内容は、そこに記載されたコポリマーに関して、本開示内容の実質的な部分である。
【0045】
特に、本発明は、コポリマーが、コモノマー成分1)を30〜99モル%の割合で含有し、かつ、コモノマー成分2)を70〜1モル%の割合で含有する配合物を含む。この組成物中で特に好ましいと判明したのは、コモノマー成分1を40〜90モル%の割合で含有し、かつ、コモノマー成分2)を60〜10モル%の割合で含有するコポリマーである。
【0046】
コモノマー成分1)は、好ましくは、アクリル酸又はその塩であってよく、かつ、コモノマー成分2)は、p=0又は1である場合、ビニル基又はアリル基、及び基R1としてポリエーテルを含有する別形であってよい。
【0047】
さらに、本発明の枠内で好ましいと見なされるのは、コモノマー成分1)が、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸及びそれらの適した塩並びにそれらのアルキルエステル又はヒドロキシアルキルエステルに由来する場合である。
【0048】
それ以外に、コポリマーは、付加的な構造ユニットを共重合した形態で有してよく、このことは本発明によって同様に考慮される。この場合、付加的な構造ユニットは、スチレン、アクリルアミド及び/又は疎水性化合物であるべきであり、その際、エステル構造単位、ポリプロピレンオキシド単位及びポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシド単位が、とりわけ有利である。コポリマーa)は、上述の付加的な構造ユニットを、5モル%まで、有利には0.05〜3.0モル%、特に0.1〜1.0モル%の割合で含有するべきである。
【0049】
それ以外に、式(I)が、アリル基含有又はビニル基含有のポリエーテルである場合に好ましい。
【0050】
スルホン酸基含有のs−トリアジン又はナフタレンホルムアルデヒド縮合生成物が従来技術から同様に十分に公知であり、かつ、セメントをベースとする系、例えばコンクリート用の流動化剤として頻繁に使用される。ナフタレンホルムアルデヒドスルホン酸塩("NFS")とも呼ばれるスルホン化されたβナフタレンホルムアルデヒド縮合生成物("BNS")が、セメント粒子を静電反発力によって分散することができる。
【0051】
BNS又はNFSは、セメント粒子に高い分散性を付与することに特に適しており、その際、フォーム形成が抑制され、かつ、保水性が高められる。これらの効果によって、水硬性バインダー、例えばセメントを節約し、かつ、加工性を改善することが可能である。
【0052】
BNSの代表物質は、通常、芳香族スルホン酸、例えばナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの常圧下における及び100℃までの温度での縮合反応によって得られる。BNC化合物の製造は良く知られており、かつ、例えばEP0214412及びDE−PS2007603に記載される。
【0053】
BNS縮合生成物は、通常、乾燥モルタル混合物に、バインダー成分を基準として0.01〜6.0質量%の量で添加される。
【0054】
スルホン化されたメラミンホルムアルデヒド縮合生成物("MFS")も同様に、水硬性バインダーを含有する組成物、例えば乾燥モルタル混合物中の流動化剤として非常に良く知られている。
【0055】
メラミンは、この関連においてs−トリアジンの代表物質である。MFS樹脂は、建築化学材料に良好な流動性を付与することができ、その際、バインダー成分を基準として0.3〜1.2質量%の量が有利であると見なされている。
【0056】
MFS化合物と関連して、従来技術としてDE19609614A1、DE4411791A1、EP0059353A1及びDE19538821A1が参照される。
【0057】
本発明による分散剤成分(a)の更なる適した代表例は、(I)芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物及びポリエーテル側鎖を有する少なくとも1つの構造単位及び(II)芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物を有する少なくとも1つのリン酸塩処理された構造単位及び(III)芳香族化合又はヘテロ芳香族化合物を有する少なくとも1つの構造単位を含有する重縮合生成物に見出され、その際、構造単位(II)と構造単位(III)は、構造単位(II)のOP(OH)2基が構造単位(III)中でHに置き換えられていること、かつ、構造単位(III)が構造単位(I)と違うということによってもっぱら異なる。
【0058】
上述の全ての分散剤の代表物質は、個々に、或いはまた適した混合物として、本発明による提案された乾燥モルタル混合物中に存在していてよい。
【0059】
e)既に説明した通り、SAPとして公知の、かつ、水又は水性塩溶液により膨潤可能な粉末状のコポリマーは、適したエチレン性不飽和ビニル化合物のラジカル重合及び得られたコポリマーの引き続く乾燥措置によって得られる、架橋された、高分子量のアニオン性又はカチオン性いずれかの高分子電解質である。工業界においては、通常、単に超吸収体とも呼ばれる。水又は水系と接触すると、膨潤及び吸水下でヒドロゲルが形成し、その際、粉末状コポリマーの数倍の重さを吸収することができる。"ヒドロゲル"とは、親水性の、一方で、架橋した水不溶性のポリマーをベースとする、三次元網目構造として存在する含水ゲルと理解される。粉末状の超吸収性コポリマーから吸水によって形成されたヒドロゲルは、建材混合物のレオロジー特性に悪影響を及ぼさないために、水に可溶性の成分を可能な限り少量で有するべきである。本発明において、セメント含有水系に通常は存在する高い塩濃度、特に高いカルシウムイオン濃度でも、高い吸水能力を有する超吸収体を使用することが好ましい。
【0060】
同様に既に言及したように、本発明による粉末状のコポリマー(超吸収体)は、有利には、アニオン性又はカチオン性のいずれかの高分子電解質として存在し、かつ、実質的に高分子両性電解質としては存在しない。高分子両性電解質とは、ポリマー鎖にカチオン電荷もアニオン電荷も有する高分子電解質と理解される。つまり、最も有利なのは、純粋にアニオン性質又はカチオン性質を持つコポリマーである。しかしながら、高分子電解質の全電荷量の10%まで、有利には5%未満までが、反対電荷の部分によって置き換えられていてよい。これは、比較的小さいカチオン性部分を有する主としてアニオン性のコポリマーの場合のみならず、逆に比較的小さいアニオン性部分を有する主としてカチオン性コポリマーの場合にも該当する。
【0061】
まず、アニオン性超吸収体コポリマーを記載する:
アニオン性構造単位として、一般式(II)
【化3】

[式中、
1は、同じであるか又は異なっており、かつ、水素及び/又はメチル基によって表され、
2、R3、R4は、それぞれ同じであるか又は異なっており、かつ、互いに無関係に、それぞれ水素、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族の分岐状又は非分岐状の炭化水素基及び/又は6〜14個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基によって表され、
Mは、同じであるか又は異なっており、かつ、水素、一価又は二価の金属カチオン及び/又はアンモニウムイオンによって表され、
aは、同じであるか又は異なっており、かつ、1/2及び/又は1によって表される]
に従ったスルホン酸基含有構造単位である。
【0062】
スルホン酸基含有モノマーは、カルボン酸基含有モノマーと比べて有利であり、それというのも、該モノマーは、水性塩溶液中で、特にカルシウムイオンの存在下で、水をたくさん吸収することができるより安定なヒドロゲルを形成するからである。特に、スルホン酸基含有超吸収体は、この特性に関して、主としてカルボン酸基を含有する超吸収体、例えば架橋された高分子量のポリアクリル酸をベースとする超吸収体より優れている。有利には、一般式(II)に相当するスルホン酸基含有構造単位は、モノマー種の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドブタンスルホン酸及び/又は2−アクリルアミド−2,4,4−トリメチルペンタンスルホン酸の1つ又は複数、若しくはそれぞれ上述の酸の塩から生じる。とりわけ有利なのは、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩化合物である。その際、酸の塩化合物に含まれるカチオンは、そのつど一価又は二価の金属カチオン、例えば、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンとして、又はアンモニア、第一級、第二級又は第三級のC1〜C20−アルキルアミン、C1〜C20−アルカノールアミン、C5〜C8−シクロアルキルアミン及びC6〜C14−アリールアミンから誘導されるアンモニウムイオンとして存在してよい。アルキル基は、そのつど分岐状又は非分岐状であってよい。相応するアミンの例は、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、フェニルアミン並びにジフェニルアミンである。有利なカチオンは、アルカリ金属イオン及び/又はアンモニウムイオンであり、とりわけ有利なのはナトリウムイオンである。アニオン性の超吸収性コポリマー中には、スルホン酸基含有構造単位が、10〜70モル%で、有利には15〜60モル%で、極めて有利には20〜50モル%で含まれている。
【0063】
アニオン性の超吸収性コポリマー中には、さらに、一般式(III):
【化4】

[式中、
1は、前述の意味を有し、
5及びR6は、それぞれ同じであるか又は異なっており、かつ、互いに無関係に、それぞれ水素、1〜20個の炭素原子を有する分岐状又は非分岐状の脂肪族炭化水素基及び/又は5〜8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基及び/又は6〜14個の炭素原子を有するアリール基によって表される]に従った(メタ)アクリルアミド基含有構造単位が含まれている。
【0064】
(メタ)アクリルアミド基含有構造体は、同じようにカチオン性超吸収性コポリマー中にも含まれている。以下の説明は、アニオン性超吸収性コポリマーだけでなく、カチオン性超吸収性コポリマーにも当てはめられる。例えば、構造単位は、モノマー種のアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド及び/又はN−t−ブチルアクリルアミドから生じる。有利なのは、メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、及びメタクリルアミドであり、とりわけ有利なのは、アクリルアミドである。アニオン性超吸収性コポリマー中及びカチオン性超吸収性コポリマー中でも、(メタ)アクリルアミド基含有構造単位が30〜90モル%で、有利には40〜85モル%で、極めて有利には50〜80モル%で含まれている。
【0065】
1個より多いラジカル重合可能なエチレン性不飽和ビニル基を有する、有利には水溶性モノマー化合物から誘導されるアニオン性超吸収性コポリマーの構造単位は、更なる説明では架橋モノマーと呼ぶ。それらは同じようにカチオン性超吸収性コポリマー中にも含まれている。架橋モノマーの以下の説明は、アニオン性超吸収性コポリマーだけでなく、カチオン性超吸収性コポリマーにも当てはめられる。
【0066】
有利には、架橋モノマーに相応する構造単位は、次のモノマー種の1つ又は複数のものの重合から生じる:多価(メタ)アクリル官能性モノマー、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エトキシル化ビスフェノール−A−ジアクリレート、エトキシル化ビスフェノール−A−ジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、シクロペンタジエンジアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート及び/又はトリス(2−ヒドロキシ)イソシアヌレートトリメタクリレート;相応するカルボン酸を持つ1個より多いビニルエステル基若しくはアリルエステル基を有するモノマー、例えばポリカルボン酸のジビニルエステル、ポリカルボン酸のジアリルエステル、トリアリルテレフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、トリビニルトリメリテート、ジビニルジアジペート及び/又はジアリルスクシネート;1個より多い(メタ)アクリルアミド基を有するモノマー、例えばN,N'−メチレンビスアクリルアミド及び/又はN,N'−メチレンビスメタクリルアミド及び1個より多いマレインイミド基を有するモノマー、例えばヘキサメチレンビスマレインイミド;1個より多いビニルエーテル基を有するモノマー、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル及び/又はシクロヘキサンジオールジビニルエーテル。1個より多いアリル基、例えばトリアリルアミン及び/又はテトラアリルアンモニウム塩を有するアリルアミノ化合物又はアリルアンモニウム化合物も使用されることができる。1個よりビニル芳香族基を有するモノマーの群からは、ジビニルベンゼンが挙げられる。
【0067】
1個より多いエチレン性不飽和ビニル基を有する相応するモノマーが選択される場合、有利には、これらが、水系で、特にセメント含有系において見込まれる高いpH値にて加水分解安定性を有するように注意される。建材混合物を混合すると、機械的な負荷が剪断力として生じ、これは、高分子量の架橋されたポリマー系の場合に、結合の破壊を生む可能性がある。この理由から、相応するメタクリル官能性架橋モノマーが、アクリル官能性架橋モノマーに比べて有利であり、(メタ)アクリルアミド官能性モノマー及びアリルアミノ若しくはアリルエーテル官能性モノマーがとりわけ有利である。とりわけ有利な架橋モノマーの例は、N,N'−メチレンビスアクリルアミド、N,N'−メチレンビスメタクリルアミド、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルアミン及び/又はテトラアリルアンモニウム塩並びにペンタエリトリトールトリアリルエーテルであり、特に有利な架橋モノマーは、N,N'−メチレンビスアクリルアミド、N,N'−メチレンビスメタクリルアミド、トリアリルイソシアヌレート及び/又はトリアリルアミン並びにペンタエリトリトールトリアリルエーテルである。そのつど架橋モノマーの1つ又は複数がコポリマー中に存在していてよい。アニオン性及びカチオン性の超吸収性コポリマー中には、架橋モノマーが0.03〜1モル%で、有利には0.05〜0.7モル%で含まれている。その際、架橋モノマーの量は、少なくとも、可能な限り水不溶性のコポリマー若しくは少ない可溶性部分若しくは少ない抽出可能な部分を有するコポリマーが得られるような量で選択されるべきである。その際、当業者であれば、架橋モノマーの量は、日常試験を行うことによって簡単に決めることができる。架橋は、共重合反応の進行中に行われ、付加的に、共重合反応に続けて、例えば"F.Buchholz,A.Graham,Modern Superabsorber Technology,John Wiley & Sons Inc.,1989,第55頁〜第67頁"で超吸収体について記載されているような後架橋が行われこともできる。
【0068】
前述の3つのタイプのアニオン性コポリマーの構造単位に加えてなお1〜30モル%で、有利には親水性の更なる構造単位が含まれていてよい。これらは、好ましくは、中性又はアニオン性の、エチレン性不飽和のモノマーに由来する。カチオン性モノマーには、アニオン性コポリマー中での量割合に関する前述の制限が当てはめられ、すなわち、アニオン電荷10%まで、有利には5%未満がカチオン電荷で置き換えられることができる。中性モノマーとして、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルピリジン、ビニルアセテート及び/又はヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、例えばヒドロキシエチルアクリル酸、ヒドロキシプロピルアクリル酸及び/又はヒドロキシプロピルメタクリル酸が可能である。
【0069】
有利には、任意の構造単位は、エチレン性不飽和カルボン酸又はジカルボン酸又はジカルボン酸又はそれらの無水物、例えばメタクリル酸、エタクリル酸、α−クロロアクリル酸、α−シアノアクリル酸、β−メチルアクリル酸(クロトン酸)、α−フェニルアクリル酸、β−アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、α−クロロソルビン酸、2'−メチルイソクロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸及び無水マレイン酸、p−クロロケイ皮酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、フマル酸及び/又はトリカルボキシエチレンの群から選択されるモノマーに由来する。とりわけ有利には、更なる構造単位は、アクリル酸及びその塩及び/又はエチレン性不飽和スルホン酸モノマー及びそのつどその相応する塩、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチルアクリレート、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルアクリレート、スルホプロピルメタクリレート及び/又は2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルスルホン酸に由来する。
【0070】
以下では、カチオン性超吸収性コポリマーを説明する。カチオン性コポリマーにおいては、一般式(IV)に相応する、第四級窒素原子を有する構造単位は、有利には、[2−(アクリロイルオキシ)−エチル]−トリメチルアンモニウム塩、[2−(メタクリロイルオキシ)−エチル]−トリメチルアンモニウム塩、[3−(アクリロイルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウム塩及び/又は[3−(メタクリロイルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウム塩の群から選択された1つ又は複数のモノマー種の重合から生じる:
【化5】

[式中、
1は、上述の意味を有し、
7、R8、R9、R10は、そのつど同じであるか又は異なっており、かつ、互いに無関係に、それぞれ水素、1〜20個の炭素原子を有する分岐状又は非分岐状の脂肪族炭化水素基及び/又は5〜8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基及び/又は6〜14個の炭素原子を有するアリール基によって表され、
mは、同じであるか又は異なっており、かつ、1〜6の整数によって表され、
Xは、同じであるか又は異なっており、かつ、酸素及び/又はN−R10によって表され、
-aは、同じであるか又は異なっており、かつ、ハロゲン化物、C1〜C4−アルキルスルフェート、C1〜C4−アルキルスルホネート及び/又はスルフェートによって表され、
aは、同じであるか又は異なっており、かつ、1/2及び/又は1によって表される]。
【0071】
上述の塩は、有利には、ハロゲン化物又はメトサルフェートとして存在する。とりわけ有利なのは、[3−(アクリロイルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウム塩及び/又は[3−(メタクリロイルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウム塩である。特に有利なのは、[3−(アクリロイルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウムクロリド(DIMAPA−Quat)及び/又は[3−(メタクリロイルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)である。カチオン性の超吸収性コポリマー中には、第四級窒素原子を有する一般式IIIの構造単位が、10〜70モル%で、有利には15〜60モル%で、とりわけ有利には20〜50モル%で含まれている。
【0072】
アニオン性の超吸収性コポリマーと同じように、カチオン性の超吸収性コポリマーも、一般式(III)に従った同じ(メタ)アクリルアミド基含有構造単位を含有する。一般式(III)に従った構造単位は、前でアニオン性コポリマーの箇所で既に詳細に記載していた;これをもって、この説明の内容を参照し、かつ、ここで該内容を組み込んだものとする。
【0073】
1個より多いラジカル重合可能なエチレン性不飽和ビニル基を有する(架橋モノマー)、有利には水溶性モノマー化合物から誘導される構造単位も同様に、カチオン性のみならずアニオン性の超吸収性ポリマー中に含まれている。この構造単位も同様に前でアニオン性の超吸収性コポリマーの箇所で詳細に記載していた。これをもって、この記載内容を参照し、かつ、ここで該内容を組み込んだものとする。
【0074】
前述の3つのタイプのカチオン性コポリマーの構造単位に加えてなお1〜20モル%で、有利には親水性の更なる構造単位が含まれていてよい。これらは、好ましくは、中性又はそれにカチオン性の、エチレン性不飽和のモノマーに由来する。アニオン性モノマーには、カチオン性コポリマー中での量割合に関する前述の制限が当てはめられ、すなわち、カチオン電荷10%まで、有利には5%未満がアニオン電荷で置き換えられることができる。中性モノマーとして、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルピリジン、ビニルアセテート及び/又はヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、例えばヒドロキシエチルアクリル酸、ヒドロキシプロピルアクリル酸及び/又はヒドロキシプロピルメタクリル酸が可能である。カチオン性モノマーとして、例えば、N,N'−ジメチルジアリルアンモニウムクロリド及びN,N'−ジエチルジアリルアンモニウムクロリドが適している。
【0075】
アニオン性の超吸収性コポリマーのとりわけ有利な実施形態において、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(構造単位Iに相当)20〜50モル%、アクリルアミド50〜80モル%(構造単位IIに相当)に由来する構造単位が含まれており、かつ、架橋モノマーは、トリアリルアミン及び/又はN,N'−メチレンビスアクリルアミド及び/又はペンタエリトリトールトリアリルエーテルである。カチオン性の超吸収性コポリマーの同様にとりわけ有利な実施形態において、[3−(アクリロイルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウムクロリド(式(IV)に相当)20〜50モル%、アクリルアミド(式(III)に相当)50〜80モル%に由来する構造単位が含まれており、かつ、架橋モノマーは、トリアリルアミン及び/又はN,N'−メチレンビスアクリルアミド及び/又はペンタエリトリトールトリアリルエーテルである。
【0076】
本発明によるアニオン性又はカチオン性の超吸収性コポリマーの製造は、自体公知の方法で、それぞれの構造単位を形成するモノマーをラジカル重合によって結合させることによって行われることができる(アニオン性コポリマー:一般式(II)、(III)に従った構造単位及び上記の架橋モノマー、任意に更なるアニオン性又は中性のモノマー;カチオン性コポリマー:一般式(VI)、(III)に従った構造単位及び上記の架橋モノマー、任意に更なるカチオン性又は中性のモノマー)。
【0077】
酸として存在する全てのモノマーは、遊離酸として又はそれらの塩の形態で重合されることができる。加えて、酸の中和は、相応する塩基の添加によって、共重合後に行ってもよく、同様に、重合前の又は重合後の部分中和も可能である。モノマー若しくはコモノマーの中和は、例えば、塩基の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び/又はアンモニアを用いて行ってよい。同様に塩基として適しているのは、第一級、第二級又は第三級の、それぞれ分岐状又は非分岐状のアルキル基を有するC1〜C20−アルキルアミン、C1〜C20−アルカノールアミン、C5〜C8−シクロアルキルアミン及び/又はC6〜C14−アリールアミンである。1つの塩基又は複数の塩基を使用することができる。有利なのは、アルカリ金属水酸化物及び/又はアンモニアによる中和であり、とりわけ有利なのは水酸化ナトリウムである。無機塩基又は有機塩基は、それらが、そのつどの酸と比較的良好に水溶性塩を形成するように選択されるべきである。
【0078】
モノマーの共重合は、有利にはラジカル塊状重合、ラジカル溶液重合、ラジカルゲル重合、ラジカル乳化重合、ラジカル分散重合又はラジカル懸濁重合によって行われる。本発明による生成物は、親水性の、水の中で膨潤可能なコポリマーであるので、水相中での重合、逆エマルジョン中での重合、若しくは逆懸濁液中での重合が有利である。とりわけ有利な実施形態において、ゲル重合としての又は逆懸濁重合としての反応は有機溶媒中で行われる。
【0079】
超吸収性ポリマーの共重合は、とりわけ有利な実施形態において断熱重合として実施することができ、レドックス開始剤系を用いても光開始剤を用いても開始することができる。それ以外に、双方の開始変形例の組合せも可能である。レドックス開始剤系は、少なくとも2つの成分、有機若しくは無機の酸化剤と有機若しくは無機の還元剤から成る。その際、過酸化物単位を有する化合物、例えば、無機過酸化物、例えばアルカリ金属過硫酸塩及びアンモニウム過硫酸塩、アルカリ金属過リン酸塩及びアンモニウム過リン酸塩、過酸化水素及びその塩(過酸化ナトリウム、過酸化バリウム)又は有機過酸化物、例えばベンゾイルペルオキシド、ブチルヒドロペルオキシド又は過酸、例えば過酢酸が使用される。それに加えて、他の酸化剤、例えば、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム及び塩素酸カリウム、二クロム酸カリウム等も使用されることができる。還元剤として、硫黄含有化合物、例えば亜硫酸、チオ硫酸塩、スルフィン酸、有機チオール(例えば、エチルメルカプタン、2−ヒドロキシエタンチオール、2−メルカプトエチルアンモニウムクロリド、チオグリコール酸)その他も使用されることができる。それに加えて、アスコルビン酸及び低原子価金属塩が可能である[銅(I);マンガン(II);鉄(II)]。リン化合物、例えば次亜リン酸ナトリウムも使用されることができる。
【0080】
光重合の場合、これは、光開始剤の分解を引き起こすUV光を用いて開始される。光開始剤として、例えば、ベンゾイン及びベンゾイン誘導体、例えばベンゾインエーテル、ベンジル及びその誘導体、例えばベンジルケタール、アクリルジアゾニウム塩、アゾ開始剤、例えば2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ヒドロクロリド及び/又はアセトフェノン誘導体が使用されることができる。
【0081】
レドックス開始剤系での酸化成分及び還元成分の質量割合は、有利には、それぞれ0.00005〜0.5質量%、とりわけ有利には、それぞれ0.001〜0.1質量%の範囲にある。光開始剤について、この範囲は、有利には0.001〜0.1質量%、とりわけ有利には0.002質量%〜0.05質量%である。その際、酸化成分及び還元成分及び光開始剤についての上述の質量%の値は、それぞれ共重合のために使用されるモノマーの材料を基準としている。重合条件、特に開始剤量の選択は、可能な限り長鎖のポリマーを作製する目的を持って行われる。ただし、架橋されたコポリマーの不溶性に基づき、分子量は非常に測定がし難い。
【0082】
共重合は、有利には水溶液中で、有利には濃縮された水溶液中で、不連続的に重合容器(バッチ処理)中で実施されるか、又は連続的にUS−A−4857610に記載の"連続ベルト(endlosen Band)"法に従って実施される。更なる可能性は、連続的又は不連続的に動かされる混練反応器中での重合である。処理は、通常、−20〜20℃の温度、有利には−10〜10℃の温度で開始され、外側から熱を供給せずに雰囲気圧力で実施され、その際、重合熱によって、モノマー含有量に依存する50〜150℃の最終温度が得られる。共重合の終了後、一般に、ゲルとして存在する重合体の微粉砕が行われる。微粉砕されたゲルは、実験室規模で実施される場合、70〜180℃での、有利には80〜150℃での循環空気乾燥庫内で乾燥される。工業的規模において、乾燥は、同じ温度範囲内で連続的に行ってもよく、例えばベルト型乾燥機で又は流動層乾燥機中で行ってもよい。
【0083】
更なる有利な実施形態において、共重合は、有機溶媒中での水性モノマー相の逆懸濁重合として行われる。この場合、有利には、水に溶解した、かつ、場合により中和されたモノマー混合物は、有機溶媒(該溶媒に水性モノマー相は溶けないか又は溶け難い)の存在下で重合されるように処理が行われる。好ましくは、モノマーを基準として0.05質量%〜5質量%、有利には0.1質量%〜3質量%の割合で使用される、油中水型エマルジョン(W/O乳化剤)及び/又は低分子量−若しくは高分子量化合物をベースとする保護コロイドの存在下で処理される。W/O乳化剤及び保護コロイドは、安定化剤とも呼ばれる通常の、逆懸濁重合技術において安定化剤として公知の化合物、例えばヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、セルロースアセテートブチレート混合エーテル、エチレンと酢酸ビニルのコポリマー、スチレンとブチルアクリレートのコポリマー、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート若しくはポリオキシエチレンソルビタンステアレート並びにポリプロピレン及び/又はエチレンオキシドのブロックコポリマーが使用されることができる。
【0084】
有機溶媒として、例えば、直鎖状脂肪族炭化水素、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、分岐状脂肪族炭化水素(イソパラフィン)、脂環式炭化水素、例えばシクロヘキサン及びデカリン、並びに芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン及びキシレンが用いられる。そのうえまた、アルコール、ケトン、カルボン酸エステル、ニトロ化合物、ハロゲン化炭化水素、エーテル及び他の多くの有機溶剤が適している。有利なのは、水と共沸混合物を形成する有機溶媒であり、とりわけ有利なのは、その際、共沸混合物中で可能な限り高い水割合を有するものである。
【0085】
水膨潤可能なコポリマーは、まず膨潤した形態で、有機懸濁媒体中で微細な水性液滴として発生し、かつ、好ましくは水の除去によって、有機懸濁媒体中で球状の固体粒子として分離される。懸濁媒体の分離除去及び乾燥後に、粉末状の固体が残留する。逆懸濁重合は、公知の通り、重合条件の変更によって粉末の粒径分布を制御することができ、それにより付加的な粒径分布を調整するための処理工程(粉砕プロセス)をたいてい場合に回避することができるという利点を有する。
【0086】
有利なのは、edana 420.2−02の規格に則って測定された粒径分布が、その98%を超えてメッシュサイズ200μmの篩を通過し、とりわけ有利には98質量%を超えてメッシュサイズ100μmの篩を通過するように整えられているアニオン性の超吸収性コポリマー及びカチオン性の超吸収性コポリマーである。極めて有利には、98質量%を超えてメッシュサイズ63μmの篩を通過する。
【0087】
粒径分布の調整は、コポリマーの乾燥に得られた生成物の粉砕によって行われることができる。大きな粒子は、水性建材混合物中で、既にもう視覚的に確かめられる不均一な領域を引き起こし、そこでは超吸収体の膨潤から生じたヒドロゲルのみが存在する。また、ヒドロゲルの分解のリスクが強まって存在することになり、更なる重要な特性、例えば強度発生に悪い影響を及ぼす可能性がある。ユーザーから望まれていない後で増粘する可能性も、大きな粒子の場合にはより高まる。例えば建材混合物を、タイル接着剤等を混合するために通常用いられるボール盤又は似たような混合機により攪拌させた場合に生じる強い剪断力は、大きい粒径分布の場合には、より強い作用を及ぼし、かつ、ヒドロゲルの微粉砕、ひいては増粘効果の要因である可溶性部分、若しくは抽出可能な部分の増大をもたらす(後増粘効果)可能性がある。建材混合物の適切なコンシステンシーを調整することは、ユーザーにとって非常に難しい。剪断安定性に関する試験法とは、例えば、本発明によるタイル接着剤を水と攪拌し、次いでボール盤でなおさらに30秒間攪拌することにある。その後、有利には、スランプ(請求項1に記載したように算出)は、0.5cm分より超えて変化しない。
【0088】
好ましい超吸収性コポリマーは、急激にその完全な吸水容量を水系で発揮する。同様に、緩慢な吸水により、建材混合物から水がゆっくりと取り出されることによって、所望されていない事後の増粘が生じる可能性がある。事後の増粘が存在しているか否かを調べるために、建材混合物に、例えばタイル接着剤、水を添加し、これを攪拌する。水の添加後、有利には、3分目〜10分目の時間間隔においてスランプは0.5cm分より小さく変化するべきである。
【0089】
アニオン性のみならずカチオン性の超吸収性コポリマーの有利な特性は、水系にそれが不溶性であるか、若しくは、抽出可能な少ない割合のみを有するということである。抽出可能な割合は、超吸収性ポリマーが、周りを取り囲む水性媒体中に拡散し得る割合である。抽出可能な割合を測定するための方法は、以下に記載している。
【0090】
本発明による超吸収体の吸収容量の測定は、衛生業界において生まれたedana 440.2−02の規格に則って、規則に変化を加えながら、すなわち、そこで試験液として示される0.9パーセントの塩化ナトリウム溶液の代わりに1パーセントのギ酸カルシウム溶液を用いて行われる。"ティーバッグ試験"とも呼ばれるこの方法は、定義された量(約200mg)の超吸収性ポリマーをティーバッグ内に密閉し、かつ、30分のあいだ1パーセントのギ酸溶液に浸漬させることにより行われる。引き続き、ティーバッグを5分にわたって滴切りし、その重さを量る。超吸収性ポリマーを含まないティーバッグを、空試験値として一緒に試験する。吸収容量の算出のために、以下の式を用いる:
吸収容量=(最終重量−空試験値−正味重量)/最終重量(g/g)
【0091】
超吸収性コポリマー抽出可能な割合の測定
抽出可能な成分は、0.9パーセントの塩化ナトリウム溶液中での超吸収性コポリマーの抽出と、引き続く全有機物含有量(TOC測定)の測定によって決める。そのために、超吸収性ポリマー1.0gを、0.9パーセントの塩化ナトリウム溶液1リットル中で6時間放置し、引き続き濾過分離する。濾液のTOC含有量の測定後、超吸収性ポリマーの公知の炭素含有量により抽出可能な割合を算出する。
【0092】
抽出可能な割合は、そのつど超吸収体の質量を基準として、有利には10質量%より小さく、とりわけ有利には9質量%より小さく、特に有利には8質量%より小さい。
【0093】
水性塩溶液中及び、特に、カルシウムイオンを含有する溶液中でのアニオン性のみならずカチオン性の超吸収体の吸収容量は、なかでも経済的な理由から可能な限り大きいことが有利である。ゲル重合の方法に従って製造されている生成物の場合、吸収容量は、有利には10g/gより大きく、とりわけ有利には15g/gより大きく、特に有利には、該吸収容量は20g/gより大きい。逆懸濁重合の方法に従って製造されている生成物の場合、同じ方法に従って突き止められる吸収ようようは、有利には5g/gより大きく、とりわけ有利には10g/gより大きく、特に15g/gより大きい。アニオン性のみならずカチオン性の超吸収性コポリマーも、乾燥混合物中に0.02〜2.0質量%で、有利には0.1〜1.5質量%で、とりわけ有利には0.2〜1.0質量%で含まれている。カチオン性の超吸収性コポリマーに比べて、アニオン性の超吸収性コポリマーが有利である。
【0094】
一般的に、超吸収性特性を有する化合物、つまり、本発明に従った成分(b)が、モノマー成分の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸("AMPS")の割合を含有する少なくとも1つの化合物であることが守られる。このモノマー成分の割合は、50モル%までであるべきであり、かつ、好ましくは5%〜30モル%である。
【0095】
特許請求される乾燥モルタル混合物の有利な変形例において、成分(b)は、アニオン特性及び/カチオン特性を有する超吸収性ポリマー(SAP)である。
【0096】
成分(b)に関して、特に強調される点は、それぞれ挙げた代表例が、会合性増粘特性を有さないことである。
【0097】
f)乾燥モルタル混合物自体に加えて、本発明は、なお該混合物の使用を特許請求する。この場合、特にタイル接着剤、補修用モルタル、目地モルタル及び下塗りが大変重要である。しかしながら、乾燥モルタル混合物を下塗りの構成成分として使用することも可能である。そのうえ、複合断熱システム("WDVS")用の接着モルタル及び/又は補強用モルタルとしての使用が考慮に入れられる。
【0098】
本発明による建材混合物の使用は、有利には、DIN EN 12004に従ったタイル接着剤として、EN 13888に従ったシールスラリー、目地材として、EN 1504に従った補強用モルタルとして、EN 998−1に従ったサーフェーサー、下塗りとして、及びEN 13499及びEN 13500に従った複合断熱システム("WDVS")用の接着モルタル及び/又は補強用モルタルとして行われる。補強用モルタルとは、例えば、損傷したコンクリートを補修又は代用するためのモルタルと理解される。サーフェーサーは、例えば、下地の加工を最終的に行って、平らな面(壁又は天井)を得るために用いられる。複合断熱システムは、工場において製造された断熱材を用いて現場で使用される絶縁システムでえある。固定するために接着モルタルを使用する;機械的な固定(補強)が成されるべきで場合、補強用モルタルとの用語が用いられる。
【0099】
全体として、調製された、しかし、まだ完全に硬化されていない状態で、ある一定の安定性の要求が乾燥モルタル混合物に課せられている適用分野が適している。
【0100】
本発明の更なる観点は、補修用モルタル、目地モルタル、下塗り又は複合断熱システムとの関連における適用に際して、乾燥モルタル混合物が、成分(a)+(b)+(c)の組合せを物を含有することにある。タイル接着としての適用の場合、乾燥モルタル混合物は、成分(a)+(b)の組合せを含有しているべきである。疎水化剤は、この場合に必ずしも必要ではないが、しかし、必要とあれば当然の事ながら添加してよい。
【0101】
原則的に、特許請求され記載された乾燥モルタル混合物は、特に屋外領域での適用に適している。
【0102】
特許請求された乾燥モルタル混合物の製造は、いかなる制限も受けない:
本発明による乾燥モルタル混合物を水と混合することによって、使用準備が出来た建材混合物が得られる。ユーザーは、分散剤成分a)と超吸収性コポリマーb)との本発明による組合せに基づき、望み通りに、水の要求される量を調整することができる。そうでなければ、建材系の水の要求量は、乾燥混合物成分の種類及び量並びにそのつどの使用の要求に応じて決定される。
【0103】
以下の例は、本発明の利点を具体的に説明するものである。
【0104】
第1の例 安定したタイル接着剤の例:
安定したタイル接着剤(ポルトランドセメント37質量%)
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
【表3】

【0107】
【表4】

【0108】
成分b)を、以下に従って製造した:
アニオン性の超吸収性コポリマー:
攪拌機及び温度計を備えた2lの三口フラスコ中に、水160gを装入し、引き続き連続して2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩(水中で50質量%の溶液)352.50g(0.74ミリモル、28モル%)、アクリルアミド(水中で50質量%の溶液)286.40g(2.0モル、0.08モル%)及びメチレンビスアクリルアミド0.3g(0.0021モル、0.08モル%)を添加した。20%の水酸化ナトリウム溶液でpH7に調整し、そして窒素で3分間フラッシングした後に、約5℃に冷却する。この溶液を、(b・t・h)15cm・10cm・20cmの寸法を有するプラスチック容器中に移し替え、引き続き連続して1パーセントの2,2'−アゾビス−(2−アミジノプロパン)−ジヒドロクロリド溶液16g、1パーセントのペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液20g、1パーセントのRongalit Cの溶液0.7g、0.1パーセントのt−ブチルヒドロペルオキシドの溶液16.2g及び0.1パーセントの硫酸鉄(II)−七水和物溶液2.5gを添加した。共重合を、UV光を照射することによって(2つのフィリップスチューブ;Cleo Performance 40W)開始した。約2時間後、硬くなったゲルをプラスチック容器から取り出し、そして約5cmのエッジ長さの立方体にはさみで切断する。この立方体のゲルを慣用のミートチョッパーで細砕する前に、剥離剤Sitren 595(ポリジメチルシロキサンエマルジョン;Goldschmidt社)を塗る。剥離剤は、1対20の比において水で希釈したポリジメチルシロキサンエマルジョンである。
【0109】
得られたコポリマーのゲル粒質物を、均一に乾燥格子上に分配し、かつ、循環空気乾燥庫内で約120〜140℃にて恒量になるまで乾燥した。約375gの白色の硬質の粒質物を得て、これを遠心粉砕機によって粉末の状態に変えた。このポリマー粉末の平均粒径は30μm〜50μmであり、メッシュサイズ63μmの篩を通過しない粒子の割合は2質量%より小さかった。
【0110】
【表5】

【0111】
要約:
超吸収体と流動化剤の本発明による混合物1.3を用いて、コンクリート下地上での接着引張強度を顕著に改善することができる。それ以外に、より良好な吸収挙動、より良好な、かつ、延長された修正可能性、及びオープン時間を観察することができた。粘度は減少し、それによって快適な加工特性が達成され、かつ、ツールへの粘着性を軽減させることができる。
【0112】
第2の例 接着剤及び補強用モルタル:
接着モルタル及び補強用モルタル(ポルトランドセメント20質量%)
【表6】

【0113】
【表7】

【0114】
【表8】

【0115】
【表9】

【0116】
【表10】

【0117】
【表11】

【0118】
【表12】

【0119】
試験結果:
【表13】

【0120】
要約:
超吸収体と分散剤の組合せを有する本発明による混合物2.3及び2.6において、一方では、分散粉末の量は半分にしていたにも関わらず、疎水性下地、例えばEPSへの付着が一定に保たれるか、若しくは僅かに改善されることができた。このことは、乾燥モルタル製造元に費用の利点をもたらす。他方では、分散剤と超吸収体の組合せによって、水がモルタルマトリックスに吸収される傾向が減少したことを確認することができる。これは、凍結融解の負荷が掛かっても高められた持続性を可能にし、並びに疎水化剤の割合を減らすことができるようになる。
【0121】
他の補う形の添加剤を添加せずに、分散粉末の添加量を単に減らしただけでは、乾燥モルタルの特性の明らかな悪化につながる。この作用は、DE102007027470及び該文献中の比較例3及び4(タイル接着剤用)並びに6及び7(複合断熱システム用)から読み取られる。DE102007027470は、引き合いに出した比較例の開示内容に関して、本発明に必須の構成の一部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調製された、かつ、まだ完全に硬化されていない状態で安定した特性(DIN EN 1308に従って測定した安定した特性、DIN EN 1015−3に従って測定した18cm未満のHaengermannスランプを伴う)を有する少なくとも1つの水硬性バインダー及び/又は潜在水硬性バインダーをベースとする乾燥モルタル混合物において、該乾燥モルタル混合物が、該乾燥モルタル混合物の全組成を基準として0.01〜5.0質量%の量で分散剤(a)の少なくとも1つの代表物質、及び超吸収特性を有する少なくとも1つの化合物(b)を含有することを特徴とする、乾燥モルタル混合物。
【請求項2】
更なる成分(c)として疎水化剤を含有することを特徴とする、請求項1記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項3】
水硬性バインダーとして、セメント、特に、CEM、I、II、III、IV及びVの群から選択された少なくとも1つのポルトランドセメント、白色セメント、生石灰並びにアルミナセメントの群から選択された少なくとも1つの代表物質を、前記乾燥モルタル混合物の全組成を基準として、好ましくは3質量%〜50質量%の割合で含有することを特徴とする、請求項1又は2記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項4】
潜在水硬性バインダーとして、フライアッシュ、高炉スラグ、メタカオリン、マイクロシリカ、トラス粉、アルミノケイ酸塩、凝灰岩、フォノライト、ケイ藻土及びオイルシェールの群から選択された少なくとも1つの代表物質を、前記乾燥モルタル混合物の全組成を基準として、好ましくは5質量%〜50質量%の割合で含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項5】
アグリゲートとして、平均粒径5mmまで、好ましくは0.5〜3mm、とりわけ有利には1.0〜2.0mmを有する骨材を、前記乾燥モルタル混合物の全組成を基準として、特に5質量%〜85質量%の割合で含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項6】
前記アグリゲートが、ケイ酸塩砂、ケイ酸塩粉、石灰石粉、石灰石砕砂、白亜、苦灰石、菱苦土石の形態の炭酸塩及びそれらより成る混合物であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項7】
前記疎水化剤を、前記乾燥モルタル混合物の全組成を基準として、0.1〜0.6質量%の量で、好ましくは0.2〜0.4質量%の量で、特に0.2〜0.3質量%の量で含有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項8】
前記(a)+(b)の組合せ物における量比(a):(b)が、1:0.5〜5であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項9】
前記(a)+(b)+(c)の組合せ物における量比(a):(b):(c)が、1:0.5〜5:2〜6であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項10】
前記(a)+(c)の組合せ物を、それぞれ前記乾燥モルタル混合物の全組成を基準として、0.20〜0.8質量%の割合で、有利には0.25〜0.45質量%の割合で、とりわけ有利には0.25〜0.35質量%の割合で含有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項11】
前記(b)+(c)の組合せ物を、それぞれ前記乾燥モルタル混合物の全組成を基準として、0.3〜1.0質量%の割合で、有利には0.3〜0.8質量%の割合で、とりわけ有利には0.35〜0.6質量%の割合で含有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項12】
前記(a)+(b)+(c)の組合せ物を、それぞれ前記乾燥モルタル混合物の全組成を基準として、0.4〜1.0質量%の割合で、有利には0.4〜0.8質量%の割合で、とりわけ有利には0.5〜0.7質量%の割合で含有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項13】
分散剤(a)として、ポリエーテル側鎖を有する分岐状の櫛形ポリマーを含有する一連の化合物、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物系("BNS")及びメラミンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物系("MFS")を含有することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項14】
分散剤(a)として、
(I)芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物及びポリエーテル側鎖を有する少なくとも1つの構造単位及び
(II)芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物を有する少なくとも1つのリン酸塩処理された構造単位及び
(III)芳香族化合又はヘテロ芳香族化合物を有する少なくとも1つの構造単位
を含有する重縮合生成物を含有することを特徴とし、その際、該構造単位(II)と該構造単位(III)は、該構造単位(II)のOP(OH)2基が該構造単位(III)中でHに置き換えられていること、かつ、構造単位(III)が構造単位(I)と同じではということによってもっぱら異なる、請求項1から13までのいずれか1項記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項15】
前記分散剤代表物質の混合物を含有することを特徴とする、請求項13又は14記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項16】
成分(b)として、0〜50モル%、有利には5〜30モル%のモノマー成分の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸("AMPS")の割合を有する少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項17】
前記成分(b)が、アニオン特性及び/又はカチオン特性を有する超吸収性ポリマー("SAP")であることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項18】
前記成分(b)が、アニオン性モノマーとして、エチレン性不飽和の、水不溶性のカルボキシル酸及びその誘導体及び/又はエチレン性不飽和スルホン酸モノマーの群から選択された少なくとも1つの代表物質を含有することを特徴とする、請求項17記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項19】
前記エチレン性不飽和カルボン酸又は前記無水カルボン酸モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、α−クロロアクリル酸、α−シアノアクリル酸、β−メチルアクリル酸(クロトン酸)、α−フェニルアクリル酸、β−アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、α−クロロソルビン酸、2'−メチルイソクロトン酸、ケイ皮酸、p−クロロケイ皮酸、β−ステアリン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、トリカルボキシエチレン及び無水マレイン酸であり、かつ、前記エチレン性不飽和スルホン酸モノマーが、脂肪族又は芳香族のビニルスルホン酸又はアクリルスルホン酸若しくはメタクリルスルホン酸であり、好ましくはビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸又はスチレンスルホン酸であることを特徴とする、請求項18記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項20】
前記カチオン性モノマーが、永久カチオン電荷を有するモノマーであり、特に、[3−(アクリロイルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウム塩及び/又は[3−(メタクリロイルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウム塩であり、有利にはそのハロゲン化物、硫酸塩又はメトサルフェートであることを特徴とする、請求項16から19までのいずれか1項記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項21】
疎水化剤(c)として、脂肪酸誘導体の少なくとも1つの代表物質、特に、ラウリン酸及び/又はオレイン酸のC1-14−アルキルエステル及びC1-14−アルキルアリールエステル、ラウリン酸及び/又はオレイン酸のモノグリコールエステル及び/又はジグリコールエステル、グリセリンとラウリン酸及び/又はオレイン酸とのモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステル及びトリ脂肪酸エステル、脂肪酸の金属塩、及びとりわけ有利にはステアリン酸亜鉛及び/又はオレイン酸ナトリウムを含有することを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項記載の乾燥モルタル混合物。
【請求項22】
タイル接着剤、補修用モルタル、目地モルタル、下塗り又はその構成成分として、複合断熱システム("WDVS")用の接着モルタル及び/又は補強用モルタルとしての、請求項1から21までのいずれか1項記載の乾燥モルタル混合物の使用。
【請求項23】
補修用モルタル、目地モルタル、下塗り又は複合断熱システムとの関連における適用に際して、前記乾燥モルタル混合物が、成分(a)+(b)+(c)の組合せ物を含有することを特徴とする、請求項22記載の使用。
【請求項24】
タイル接着としての適用に際して、前記乾燥モルタル混合物が、成分(a)+(b)の組合せ物を含有することを特徴とする、請求項22記載の使用。
【請求項25】
屋外領域での請求項22から24までのいずれか1項記載の使用。

【公表番号】特表2013−510786(P2013−510786A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538268(P2012−538268)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066393
【国際公開番号】WO2011/057898
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(500487262)ビーエーエスエフ コンストラクション ポリマース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (6)
【氏名又は名称原語表記】BASF Construction Polymers GmbH
【Fターム(参考)】