説明

乾燥収縮低減剤

下記式(1):
【化1】


ただし、式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基または−(CHCOOX基を表し、この際、Xは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、有機アミン基または炭化水素基を表し、pは、0〜2の整数であり;およびRは、炭素原子数4〜30の炭化水素基を表す、
で示される少なくとも1種の構成単位(I)を必須成分として含み、セメント上澄み液に重合体を0.2質量%含む溶液における表面張力が25〜50mN/mである重合体を含む乾燥収縮低減剤が提供される。当該乾燥収縮低減剤は、所望の乾燥収縮低減性能が得られる使用量の範囲において、分散性がなく、分散剤と併用することにより、目的に応じた分散性と乾燥収縮低減性を調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥収縮低減剤に関するものである。特に、本発明は、水硬性材料、特にコンクリート部材の乾燥収縮を低減する乾燥収縮低減剤に関するものである。より詳しくは、本発明は、所望の乾燥収縮低減性能が得られる使用量の範囲において、分散性がなく、分散剤と併用することにより、目的に応じた分散性と乾燥収縮低減性を調整できる乾燥収縮低減剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水硬性材料は、強度や耐久性に優れた硬化物を与えることから、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物等として広く用いられており、土木・建築構造物等を構築するために欠かすことのできないものとなっている。このような水硬性材料では、硬化した後に外気温や湿度条件等により、内部に残った未反応水分の散逸が起こり、これに起因すると考えられる乾燥収縮が進行する。そのため、例えば、鉄筋コンクリート構造物では、コンクリートの硬化後、コンクリート硬化物は徐々に乾燥により収縮するが、鉄筋はこのような形状変化を起こさないため、コンクリート硬化物と鉄筋との間に歪が生じ、硬化物表面にひび割れが生じる。このひび割れは、構造物の美観を損なうばかりでなく、長期的に見ると、ひび割れ部分を通して空気(特に炭酸ガス)や雨水(特に酸や塩化物イオン)等が浸入して、コンクリートの中性化を引き起こし、鉄筋を腐食し、耐久性を著しく低下させる。このように土木・建築構造物等の耐久性が低下すると、安全性の低下や修復コストの増大等の重大な問題が生じる。近年、耐久性に優れたコンクリート構造物への要求が高まってきていることから、土木・建築構造物等のコンクリート硬化物の乾燥による収縮を低減し、硬化物表面のひび割れを抑制する重要性が認識され、技術革新が盛んに行なわれている。
【0003】
これに対し、コンクリート等のセメント組成物の乾燥収縮を低減あるいは抑制する方法として、膨脹材を用いて収縮を補填する方法、乾燥収縮低減剤を用いる方法などがあるが、膨脹材を用いる方法においては添加量の調整が困難であり、使用量が少ない場合には充分な収縮低減効果が得られず、また、多い場合には膨脹によりひび割れを促進することがある。また、乾燥収縮低減剤としては、様々な化合物が使用されている。例えば、特開2001−247,346号公報には、アルコキシポリアルキレングリコールにエチレン性不飽和カルボン酸をグラフト重合した重合体が開示されている。
【発明の開示】
【0004】
しかしながら、上記特開2001−247,346号公報に開示される乾燥収縮低減剤は分散性を有するため、所望の乾燥収縮低減性を得ようとしてその使用量を増加すると、分散性が過剰に発現されてしまい、所望の乾燥収縮低減効果を得ることが困難になるという問題がある。
【0005】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、優れた乾燥収縮低減能を有する乾燥収縮低減剤を提供することを目的とする。なお、本明細書において、「乾燥収縮低減剤」とは、乾燥時の水硬性材料の収縮を抑制する添加剤を意味する。
【0006】
本発明の他の目的は、所望の乾燥収縮低減性能が得られる使用量の範囲において、分散性を発揮せず、分散剤と併用することにより、目的に応じた分散性と乾燥収縮低減性を調整できる乾燥収縮低減剤を提供することである。
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく特に水に対する表面張力に注目して鋭意検討を重ねる中で、疎水性基を有する構成単位を必須成分として含みかつ特定の表面張力を発揮する水硬性材料用乾燥収縮低減剤、特に特定構造を有する重合体を含む水硬性材料用乾燥収縮低減剤が、優れた乾燥収縮低減性を有し、かつ使用量を増加しても分散性を発揮せず、分散剤の併用により、目的に応じた分散性と乾燥収縮低減性を容易に調整できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、上記目的は、下記式(1):
【0009】
【化1】

【0010】
ただし、式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基または−(CHCOOX基を表し、この際、Xは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、有機アミン基または炭化水素基を表し、pは、0〜2の整数であり;およびRは、炭素原子数4〜30の炭化水素基を表す、
で示される少なくとも1種の構成単位(I)を必須成分として含み、セメント上澄み液に重合体を0.2質量%含む溶液における表面張力が25〜50mN/mである重合体を含む乾燥収縮低減剤によって達成される。
【0011】
本発明において、上記重合体は、上記式(1)で示される少なくとも1種の構成単位(I);ならびに下記式(2):
【0012】
【化2】

【0013】
ただし、式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し;sは、0〜2の整数であり;ROは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表し;uは、オキシアルキレン基(RO)の平均付加モル数を表し、1〜300の数であり;およびRは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す、
で示される構成単位(II−a)及び下記式(3):
【0014】
【化3】

【0015】
ただし、式中、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し;xは、0〜2の整数であり;R13Oは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表し;yは、オキシアルキレン基(R13O)の平均付加モル数を表し、1〜300の数であり;およびR14は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す、
で示される構成単位(II−b)から選ばれる少なくとも1種の構成単位(II)を必須成分として含有し、さらに下記式(4):
【0016】
【化4】

【0017】
ただし、式中、R15、R16及びR17は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基または−(CHCOOZ’基を表し、この際、Z’は、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、およびqは、0〜2の整数であり;ならびにZは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、有機アミン基を表し、COOZ’及びCOOZが2個以上存在する場合には、これらのうちの2個が無水物を形成していてもよい、
で示される少なくとも1種の構成単位(III)を重合体全体の0〜30質量%含むことが好ましい。
【0018】
上記目的はまた、本発明の少なくとも1種の乾燥収縮低減剤および分散剤を含む収縮低減組成物によっても達成される。
【0019】
本発明の水硬性材料用乾燥収縮低減剤は、上記式(1)で示される少なくとも1種の構成単位(I)を必須成分として含みかつセメント上澄み液に重合体を0.2質量%含む溶液における表面張力が25〜50mN/mである重合体を含むことを特徴とするものであり、このような重合体は、特に水の表面張力を下げることが可能であるため、セメント硬化体の収縮を有効に抑制でき、優れた乾燥収縮低減性を発揮できる。また、本発明の乾燥収縮低減剤は、(イ)上記式(1)で示される少なくとも1種の構成単位(I);(ロ)上記式(2)で示される構成単位(II−a)及び上記式(3)で示される構成単位(II−b)から選ばれる少なくとも1種の構成単位(II)を必須成分として含有し、;さらに(ハ)上記式(4)で示される少なくとも1種の構成単位(III)を重合体全体の0〜30質量%含んでなる、重合体を含むことが好ましいが、このような重合体は、所望の乾燥収縮低減性能が得られる使用量の範囲では、分散性を発揮しない。このため、このような重合体を含む乾燥収縮低減剤は、分散剤と併用されることにより、目的に応じた分散性と乾燥収縮低減性を容易に調整できる。
【0020】
したがって、本発明の乾燥収縮低減剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等の水硬性材料に適用して、優れたひび割れ防止効果を発揮することにより、硬化物の耐久性を向上することができ、土木・建築構造物等の安全性を向上したり、修復コストを抑制したりすることができる、汎用性の高いものである。
【0021】
本発明のさらに他の目的、特徴および特質は、以後の説明に例示される好ましい実施の形態を参酌することによって、明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明の第一は、下記式(1):
【0024】
【化5】

【0025】
で示される少なくとも1種の構成単位(I)(本明細書中では、単に「構成単位(I)」とも称する)を必須成分として含みかつセメント上澄み液に重合体を0.2質量%含む溶液における表面張力(本明細書中では、単に「表面張力」とも称する)が25〜50mN/mである重合体を含む乾燥収縮低減剤を提供するものである。本発明による重合体が乾燥収縮を抑制できる明確な機構は不明であるが、以下のようにして、本発明による重合体が乾燥収縮を抑制するものと考えられる。すなわち、乾燥収縮は、乾燥によりセメント硬化体中の毛細管内を水が移動するときに、毛細管内の水と硬化体との界面に働く水の引張り応力により生じるが、本発明による重合体は、構成単位(I)由来のRの疎水性基の導入によって、硬化体と水との界面張力を下げ、乾燥収縮の原因である水の引張り応力を低減し、その結果乾燥収縮を抑制できると考えられる。また、上記重合体は、上記構成単位(I)に加えて、下記式(2):
【0026】
【化6】

【0027】
で示される構成単位(II−a)(本明細書中では、単に「構成単位(II−a)」とも称する)及び下記式(3):
【0028】
【化7】

【0029】
で示される構成単位(II−b)(本明細書中では、単に「構成単位(II−b)」とも称する)から選ばれる少なくとも1種の構成単位(II)を必須成分として含有し、さらに下記式(4):
【0030】
【化8】

【0031】
で示される少なくとも1種の構成単位(III)(本明細書中では、単に「構成単位(III)」とも称する)を重合体全体の0〜30質量%含むことが好ましい。上記重合体が乾燥収縮を抑制できる明確な機構もまた不明であるが、以下のようにして、本発明による重合体が乾燥収縮を抑制するものと考えられる。すなわち、本発明による重合体における構成単位(I)の作用に加えて、特に分散性を発揮させるよう作用する構成単位(III)を、重合体中に、重合体全体の0〜30質量%と低い割合で存在させることによって、分散性は発揮させることなく、水溶性を発揮させることができ、また、分散剤との併用によって、用途や目的に応じた分散性及び乾燥収縮低減性を容易に調節できる。なお、構成単位(III)が、重合体中に30質量%を超えて多く存在すると、酸が重合体中に過剰に組み込まれることになり、得られる重合体はセメントに吸着して分散性を発揮してしまい、さらに硬化の遅延を引き起こす等の問題が生じてしまう。また、上記構成単位のうち、構成単位(II)は、重合体に水溶性を付与するという作用を有する。したがって、本発明の乾燥収縮低減剤は、普通、早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩等の各種ポルトランドセメント、ビーライト高含有セメント、アルミナセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、各種混合セメント等の水硬セメント、あるいは、石膏などのセメント以外の水硬材料に、乾燥収縮を効果的に低減する目的で好適に使用される。
【0032】
本発明による重合体は、構成単位(I)を必須成分として含みかつセメント上澄み液に重合体を0.2質量%含む溶液における表面張力が25〜50mN/mである重合体を含むことが必須である。この際、表面張力が上記範囲内であれば、工業レベルでの実施可能性が十分満足でき、かつ硬化後のセメントの収縮を有効に抑制できるため、鉄筋などの経時的に形状変化を起さない構造物に使用しても、セメント硬化体との間に歪を生じないので、ひび割れなどの問題が起こらない。これに対して、重合体の表面張力が50mN/mを超えると、十分な収縮抑制効果が得られず、例えば、鉄筋内で使用されると、セメント硬化体が収縮して、鉄筋とセメント硬化体との間に歪が生じて、ひび割れなどの現象を引き起こす。本発明において、表面張力は低ければ低いほど好ましいが、工業レベルでの実施可能性を考慮して、表面張力の下限を25mN/mとしている。本発明において、重合体の、セメント上澄み液に重合体を0.2質量%含む溶液における表面張力は、好ましくは、25〜46mN/m、より好ましくは25〜42mN/m、特に好ましくは25〜38mN/mである。
【0033】
なお、本明細書において、「セメント上澄み液に重合体を0.2質量%含む溶液における表面張力」は、下記条件および手順に従って測定された値を意味する。
【0034】
<測定条件>
測定機器:BYK−Chemie製、Dynometer(商品名)
リング:プラチナφ19.5mm
標準液:純水 72.8mN/m(20℃)
テーブル速度:1.5mm/分
測定温度:20℃
<測定手順>
25℃のイオン交換水200質量部を、長さ39mmのスターラーチップの入った300ml容のガラス製ビーカーに入れ、マグネチックスターラーを用いて攪拌しながら、25℃の雰囲気下で調温した太平洋セメント製普通ポルトランドセメント100質量部を投入する。投入後、回転数を700rpmとし、セメント粒子中の水溶性成分が水に十分に溶出するように30分間攪拌した後、10分間静置する。この上澄み液をろ紙(アドバンテック東洋社製、定量ろ紙5C)を用いて吸引濾過した後、さらにこのろ液を孔径0.45μmの水系フィルター(クロマトディスク25A、クラボウ社製、ジーエルサイエンス販売)でろ過してセメント上澄み水溶液を得る。調整したセメント上澄み液は、容器に入れ、窒素封入後、密栓し保管する。
【0035】
一方、本発明の乾燥収縮低減剤あるいは比較共重合体に25℃のイオン交換水を添加し、固形分濃度が5質量%の水溶液を調製する。この本発明の乾燥収縮低減剤あるいは比較共重合体を含む水溶液5質量部を、上記セメント上澄み液120質量部に添加し、十分混合して0.2質量%の試料水溶液を調製する。試料水溶液は容器に入れ、窒素封入後、密栓し、20℃に調温する。
【0036】
次に、十分に洗浄したプラチナリングをダイノメーター(Dynometer)に取り付け、20℃に調温した標準液(純水)に3mm沈め、この標準液の置かれたテーブルを1.5mm/分の速度で降下させる。この時、ダイノメーターの示す値が最大となる点を水の表面張力として較正する。次に、20℃に調温した試料溶液に十分に洗浄したプラチナリングを3mm沈め、この水溶液の置かれたテーブルを1.5mm/分の速度で降下させ、ダイノメーターの示す値が最も大きくなる点を、本発明の乾燥収縮低減剤あるいは比較共重合体の表面張力とする。
【0037】
上記式(1)において、R、R及びRは、水素原子、メチル基または−(CHCOOX基、好ましくは水素原子またはメチル基を表す。この際、R、R及びRは、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、式:(CHCOOXにおいて、Xは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基(−NH)、有機アミン基または炭化水素基を表す。この際、一価金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。二価金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。なお、Xが二価金属である場合には、2個の−COO−で無水物の形態をとる。有機アミン基としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン及びフェニルアミン等の第一級アミン由来の基;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン及びジフェニルアミン等の第二級アミン由来の基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリベンジルアミン及びトリフェニルアミン等の第三級アミン由来の基;およびエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来の基が挙げられる。これらのうち、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等が好適に挙げられる。炭化水素基は、例えば、好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは炭素原子数1〜20、特に好ましくは1〜12の炭化水素基である。炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、イソオクチル、2,3,5−トリメチルヘキシル、4−エチル−5−メチルオクチル及び2−エチルヘキシル、テトラデシル、オクタデシル、イコシル等の直鎖または分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基;フェニル、ベンジル、フェネチル、o−,m−若しくはp−トリル、2,3−若しくは2,4−キシリル、メシチル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ビフェニリル、ベンズヒドリル、トリチル及びピレニル等のアリール基などが挙げられる。これらのうち、Xは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基であることが好ましく、水素原子、ナトリウムまたはカルシウムであることが特に好ましい。また、上記式(1)において、pは、0〜2の整数、好ましくは0または1、特に0である。また、Rは、炭素原子数4〜30炭化水素基を表す。この際、Rの炭素原子数は、3以下であると、所望の乾燥収縮低減性が得られず、また、31以上となると、重合体の親水性と疎水性のバランスがとりにくくなるため、4〜30が好適である。Rの炭素原子数としては、好ましくは4〜30、より好ましくは4〜18さらに好ましくは4〜12、最も好ましくは5〜12の範囲である。このような炭化水素基としては、例えば、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、イソオクチル、2,3,5−トリメチルヘキシル、4−エチル−5−メチルオクチル及び2−エチルヘキシル、テトラデシル、オクタデシル、イコシル等の直鎖、分岐鎖のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基;フェニル、ベンジル、フェネチル、o−,m−若しくはp−トリル、2,3−若しくは2,4−キシリル、メシチル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ビフェニリル、ベンズヒドリル、トリチル及びピレニル等のアリール基などが挙げられる。これらのうち、セメント硬化体の分散性及び乾燥収縮の低減性を考慮すると、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、イソオクチル、2,3,5−トリメチルヘキシル、4−エチル−5−メチルオクチル及び2−エチルヘキシル等の炭素原子数4〜12のアルキル基が好ましい。
【0038】
本発明で用いられる構成単位(I)を与える単量体(以下、単に「単量体(a)」とも称する)としては、炭素原子数4〜30のモノオール類、即ち、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素原子数4〜30の飽和脂肪族アルコール類、オレイルアルコール等の炭素原子数4〜30の不飽和脂肪族アルコール類、シクロヘキサノール等の炭素原子数4〜30の脂環族アルコール類、フェノール、フェニルメタノール(ベンジルアルコール)、メチルフェノール(クレゾール)、p−エチルフェノール、ジメチルフェノール(キシレノール)、p−t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、フェニルフェノール、ナフトール等の炭素原子数6〜30の芳香族アルコール類と、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸類、あるいは、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸類とのエステル化合物等が挙げられる。なお、R、R及びRが、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基である場合には、以下に詳述する構成単位(II)を与える単量体との共重合性の面から、上記の炭素原子数4〜30のアルコール類と(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル化合物を単量体(a)として用いるのが好ましい。さらに、R、RまたはRの少なくとも一つが−(CHCOOX基を表し、かつXが水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表す式(1)の構成単位(I)を有する単量体(a)としては、不飽和モノカルボン酸系単量体として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。また、不飽和ジカルボン酸系単量体として、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、又はこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が、さらにこれらの無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらのうち、不飽和モノカルボン酸系単量体が好ましく、とりわけ(メタ)アクリル酸及びこれらの塩が好ましい。なお、上記単量体(a)は、単独で使用されてもあるいは2種類以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0039】
このような単量体(a)の具体例としては、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、1−ペンチル(メタ)アクリレート、1−ヘキシル(メタ)アクリレート、1−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の、各種アルキル(メタ)アクリレート類;(ジ)プロピルマレート、(ジ)ブチルマレート、(ジ)2−エチルヘキシルマレート等の、各種アルキルマレート類;(ジ)プロピルフマレート、(ジ)ブチルフマレート、(ジ)2−エチルヘキシルフマレート等の、各種アルキルフマレート類等が挙げられる。この際、これらの単量体(a)または構成単位(I)は、単独で使用されてもあるいは2種類以上併用してもよい。
【0040】
上記式(2)において、R、R及びRは、水素原子またはメチル基を表し、好ましくはR及びRの少なくとも一方は水素原子を表す。この際、R、R及びRは、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。sは、0〜2の整数、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。ROは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。このようなオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシ1−ブテン基、オキシ2−ブテン基、オキシスチレン基等が好ましく挙げられるが、より好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、さらにより好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基である。これらのオキシアルキレン基は、一つの構成単位中に複数個存在する(即ち、式(2)中、nが2以上である)場合には、一つの構成単位中に一種類が存在してもあるいは2種以上の混合物の形態で存在してもよい。オキシアルキレン基が2種以上存在する場合には、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。構成単位(II−a)として1種類の構成単位のみを用いる場合には、親水性と疎水性のバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基を必須成分として含むことが好ましく、さらに50モル%以上はオキシエチレン基であることが好ましい。
【0041】
また、上記式(2)において、uは、オキシアルキレン基(RO)の平均付加モル数を表し、1〜300の数である。uが300を超えると、得られる重合体が分散性を発揮してしまい、これにより任意の量を添加できなくなり、所望の乾燥収縮低減性を得ることが困難になる。さらに、uが300を超えると、空気連行性が高くなり、空気量の調整が困難となり、強度低下や耐凍結融解性の低下の原因となる。この際、uは、1〜150、1〜100、1〜80、1〜50、1〜30の順で好ましい。Rは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、より好ましくは水素原子または炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、特に好ましくは水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。このような炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソオクチル基、2,3,5−トリメチルヘキシル基、4−エチル−5−メチルオクチル基及び2−エチルヘキシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖または分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基;フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o−,m−若しくはp−トリル基、2,3−若しくは2,4−キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基及びピレニル基等のアリール基などが挙げられる。
【0042】
本発明で用いられる構成単位(II−a)を与える単量体(以下、単に「単量体(b)」とも称する)としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸又は脂肪酸の脱水素(酸化)反応物への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの付加物、あるいは、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素原子数1〜30の飽和脂肪族アルコール類、アリルアルコール、メタリルアルコール、クロチルアルコール、オレイルアルコール等の炭素原子数3〜30の不飽和脂肪族アルコール類、シクロヘキサノール等の炭素原子数3〜30の脂環族アルコール類、フェノール、フェニルメタノール(ベンジルアルコール)、メチルフェノール(クレゾール)、p−エチルフェノール、ジメチルフェノール(キシレノール)、p−t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、フェニルフェノール、ナフトール等の炭素原子数6〜30の芳香族アルコール類のいずれかに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸又はクロトン酸とのエステル化合物等が挙げられるが、式(2)において、Rが炭化水素基となる場合に相当する、アルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸又はクロトン酸とのエステル化合物が好ましい。なお、上記単量体(b)は、単独で使用されてもあるいは2種類以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0043】
単量体(b)の具体例としては、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−ブトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ブトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−メチル−1−プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−メチル−2−プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−ペンチルオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−ヘキシルオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−オクチルオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−エチル−1−ヘキシルオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルアルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウリルアルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、セチルアルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアリルアルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェニルメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メチルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、p−エチルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジメチルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、p−t−ブチルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ドデシルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ナフトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドを付加させた(メタ)アリルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、エチレンオキシドを付加させたクロチルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等の各種アルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−プロポキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−プロポキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−ブトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドを付加させた(メタ)アリルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、プロピレンオキシドを付加させたクロチルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等の各種アルコキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;メトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレンポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−プロポキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−プロポキシポリエチレンポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−プロポキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−プロポキシポリエチレンポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−ブトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1−ブトキシポリエチレンポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドとプロピレンオキシド又はエチレンオキシドとブチレンオキシドを付加させた(メタ)アリルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、エチレンオキシドとプロピレンオキシド又はエチレンオキシドとブチレンオキシドを付加させたクロチルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等の2種類以上のアルキレンオキシドを付加させたアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等の各種アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。この際、これらの単量体(b)または構成単位(II−a)は、単独で使用されてあるいは2種類以上併用してもよい。
【0044】
上記式(3)において、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、好ましくはR10及びR11の少なくとも一方は水素原子を表す。この際、R10、R11及びR12は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。xは、0〜2の整数であり、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。R13Oは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。このようなオキシアルキレン基としては、上記式(2)におけるROと同様である。これらのオキシアルキレン基は、一つの構成単位中に複数個存在する(即ち、式(3)中、nが2以上である)場合には、一つの構成単位中に一種類が存在してもあるいは2種以上の混合物の形態で存在してもよい。オキシアルキレン基が2種以上存在する場合には、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれに付加形態であってもよい。構成単位(II−b)として1種類の構成単位のみを用いる場合には、親水性と疎水性のバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基を必須成分として含むことが好ましく、さらに50モル%以上はオキシエチレン基であることが好ましい。また、yは、オキシアルキレン基(R13O)の平均付加モル数を表し、1〜300の数である。yが300を超えると、得られる重合体が分散性を発揮してしまい、これにより任意の量を添加できなくなり、所望の乾燥収縮低減性を得ることが困難になる。さらに、yが300を超えると、空気連行性が高くなり、空気量の調整が困難となり、強度低下や耐凍結融解性の低下の原因となる。yは、1〜150、1〜100、1〜80、1〜50、1〜30の順で好ましい。R14は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、より好ましくは水素原子または炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、特に好ましくは炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。なお、式(3)における置換基「R14」の定義は、式(2)における置換基「R」の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0045】
本発明で用いられる構成単位(II−b)を与える単量体(以下、単に「単量体(c)」とも称する)としては、ビニルアルコールまたはイソプレンアルコール等のアルコール類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの付加物等が挙げられる。なお、上記単量体(c)は、単独で使用されてもあるいは2種類以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0046】
単量体(c)の具体例としては、(ポリ)エチレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)プロピレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル、ポリ)ブチレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール−3−メチル−3−ブテニルエーテル等が挙げられる。この際、これらの単量体(c)または構成単位(II−b)は、単独で使用されてあるいは2種類以上併用してもよい。
【0047】
上記式(4)において、R15、R16及びR17は、水素原子、メチル基または−(CHCOOZ’基を表す。この際、R15、R16及びR17は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。この際、Z’は、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表す。また、qは、0〜2の整数、好ましくは0または1、特に0である。Zは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表す。この際、置換基「Z」及び「Z’」の定義は、炭化水素基を表わさない以外は式(1)における置換基「X」の定義と同様である。なお、COOZ’が2個または3個存在する場合には、これらのCOOZ’は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、COOZ及びCOOZ’が合わせて2個以上存在する場合は、これらのうちの2個が無水物を形成していてもよい。
【0048】
本発明で用いられる構成単位(III)を与える単量体(以下、単に「単量体(d)」とも称する)の具体例としては、不飽和モノカルボン酸系単量体として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。又、不飽和ジカルボン酸系単量体として、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、又はこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が、さらにこれらの無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。中でも、R15、R16及びR17が、それぞれ独立に水素原子又はメチル基の場合に相当する、不飽和モノカルボン酸系単量体が好ましく、とりわけ(メタ)アクリル酸及びこれらの塩が好ましい。この際、これらの単量体(d)または構成単位(III)は、単独で使用されてあるいは2種類以上併用してもよい。
【0049】
本発明による重合体は、構成単位(I)、ならびに構成単位(II−a)および/または構成単位(II−b)を必須の構成単位として含み、構成単位(III)を重合体全体の、0〜30質量%の割合で含むものである。この際、構成単位(I)、(II−a)及び(II−b)、ならびに構成単位(III)は、それぞれ、単一の構成単位であってもあるいは2種以上の構成単位であってもいずれでもよく、また、これらの構成単位(I)、構成単位(II−a)及び構成単位(II−b)、ならびに構成単位(III)は、それぞれ、ブロック状であってもまたはランダム状であってもよい。また、本発明による重合体は、上記構成単位に加えて、他の少なくとも1種の異なる構成単位(以下、単に「構成単位(IV)」とも称する)をさらに有していてもよく、このような場合にも、これらの構成単位はブロック状であってもまたはランダム状であってもよい。
【0050】
このような他の構成単位(IV)を与える単量体(以下、単に「単量体(e)」とも称する)としては、他の単量体成分と共重合可能な単量体があり、このような単量体の具体例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜4のアルコールとのハーフエステル、ジエステル;前記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド;前記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと前記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル;前記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びにそれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート、等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜4のアルコールとのエステル;メチル(メタ)アクリルアミドのように不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、等のビニルエーテル或いはアリルエーテル類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体;2−アクリロイロキシエチルホスフェート、2−メタクリロイロキシエチルホスフェートなどの不飽和リン酸エステル類等を挙げることができる。この際、これらの単量体(e)または上記単量体(e)由来の構成単位(IV)は、単独で使用されてあるいは2種類以上併用してもよい。
【0051】
本発明による重合体を製造する方法は、特に制限されず、公知の重合方法が使用できるが、一般的には、重合開始剤を用いて前記単量体成分を重合させればよい。単量体成分の重合方法は、特に制限されず、公知の重合方法が同様にあるいは修飾されて使用できるが、重合は、例えば、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行なうことができる。溶媒中での重合は回分式でも連続式でも行なうことができ、その際使用される溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール等の低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族あるいは脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物等が挙げられる。原料単量体及び得られる重合体の溶解性並びにこの重合体の使用時の簡便さを考慮すると、水及び炭素原子数1〜4の低級アルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましく、炭素原子数1〜4の低級アルコールがより好ましく、特にメチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール等が有効である。
【0052】
水媒体中で重合を行なう場合に使用される重合開始剤は、特に制限されず、公知の重合開始剤が使用でき、例えば、アンモニウム又はアルカリ金属の過硫酸塩あるいは過酸化水素等の水溶性の重合開始剤が使用される。この際、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩、アスコルビン酸(塩)、ロンガリット等の促進剤を併用することもできる。また、低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物あるいはケトン化合物を溶媒とする重合を行なう場合に使用される重合開始剤もまた、特に制限されず、公知の重合開始剤が使用できるが、具体的には、ベンゾイルパーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が重合開始剤として用いられる。この際アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶剤を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤あるいは重合開始剤と促進剤との組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。重合開始剤の添加量は、特に制限されず、公知の重合方法で使用される量と同様の量が使用できる。また、重合条件も、特に制限されず、公知の重合条件と同様の条件が使用できるが、例えば、重合温度は、用いる溶媒や重合開始剤により適宜定められるが、通常、0〜120℃の範囲内で行なわれる。
【0053】
また、塊状重合の場合においても、その方法、使用される重合開始剤の種類や量、重合条件などは、特に制限されず、公知の方法などが使用できる。例えば、重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が使用できる。また、塊状重合は、例えば、50〜200℃の温度範囲内で行なわれる。
【0054】
また、得られる重合体の分子量を調節することを目的として、次亜リン酸(塩)やチオール系連鎖移動剤を併用することもできる。この際に用いられるチオール系連鎖移動剤は、式:HS−R18−E(ただし、式中、R18は、炭素原子数1〜2のアルキル基を表わし、Eは、−OH、−COOM、−COOR19又はSOM基を表わし、この際、Mは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基又は有機アミン基を表わし、R19は、炭素原子数1〜10のアルキル基を表わし、gは1〜2の整数を表わす。)で表わされ、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げられる。これらの連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。さらに、重合体の分子量調整のためには、単量体(e)として(メタ)アリルスルホン酸(塩)類等の連鎖移動性の高い単量体を用いることも有効である。
【0055】
このようにして得られた重合体は、そのままでも乾燥収縮低減剤に用いられてもよいが、有機溶媒を含まない水溶液の形で取り扱ってもよく、このような場合には、重合体をさらに一価金属及び二価金属の水酸化物、塩化物及び炭素塩等の無機物;アンモニア;有機アミン等(好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の一価金属の水酸化物)のアルカリ性物質で中和して、重合体塩の形態として乾燥収縮低減剤に使用してもよい。
【0056】
本発明による重合体は、構成単位(I)を必須の構成単位として含む。この際、構成単位(I)の比率は、上述したように、構成単位(I)由来のRの疎水性基の導入によって、硬化体と水との界面張力を下げ、乾燥収縮の原因である水の引張り応力を下げる作用を有するため、乾燥収縮の抑制効果の点で特に重要である。このような作用を考慮すると、構成単位(I)の割合は、重合体全体の、7〜99質量%、7〜70質量%、10〜60質量%、15〜60質量%、15〜50質量%の順で好ましい。この際、構成単位(I)の割合が上記下限を下回ると、十分量の疎水性基が重合体中に導入されないため、水の引張り応力を下げる作用が十分発揮できず、重合体が乾燥収縮の抑制効果に劣ってしまう可能性がある。逆に、構成単位(I)の割合が上記上限を超えると、疎水性基が重合体中に過剰に導入されて、水に不溶性になり、水溶液の形態になれずに、硬化体と水との界面張力を下げられず、十分な乾燥収縮抑制効果が得られないおそれがある。
【0057】
また、本発明による重合体は、上記構成単位(I)に加えて、構成単位(II−a)および/または構成単位(II−b)を必須の構成単位として含み、構成単位(III)を重合体全体の、0〜30質量%の割合で含み、さらに必要であれば構成単位(IV)を有することが好ましい。このような場合の、当該重合体における構成単位(I)の比率は上記比率と同様であり、また、他の構成単位(II−a)、(II−b)、(III)及び(IV)の比率は、分散性を発揮せずかつ優れたセメント硬化体の乾燥収縮低減・抑制効果を発揮できるものであれば特に限定されないが、これらの効果などを考慮すると、構成単位(II−a)の割合は、重合体全体の、1〜90質量%、より好ましくは5〜80質量%であり、構成単位(II−b)の割合は、重合体全体の、1〜90質量%、より好ましくは5〜80質量%であり;構成単位(III)の割合は、重合体全体の、0〜30質量%であり;さらに、構成単位(IV)の割合は、重合体全体の、0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%であることが好ましい。上記比率のうち、特に構成単位(III)は、重合体全体の、0〜30質量%の割合で重合体中に存在することが必須である。この際、構成単位(III)の割合が30質量%を超えると、酸が重合体中に過剰に組み込まれることになり、得られる重合体はセメントに吸着して分散性を発揮してしまう。さらに構成単位(III)の添加量に比例して、硬化時間が延長していくため、構成単位(III)は、重合体中になるべく少量で存在することが好ましく、このため、構成単位(III)の比率は、重合体全体の、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜15質量%、さらにより好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜5質量%である。この際、構成単位(I)、(II−a)、(II−b)、(III)及び(IV)の割合の合計は、100質量%である。また、本発明による重合体は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸系単量体と構成単位(I)を与える単量体(例えば、単量体(a))とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体のカルボキシル基の少なくとも1部に対して、アルコキシポリアルキレングリコールを直接エステル化して製造してもよい。
【0058】
また、本発明による重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」と呼ぶ)によるポリスチレン換算で500〜500,000の範囲が適当であるが、500〜300,000の範囲が好ましく、500〜200,000の範囲がより好ましく、500〜100,000の範囲がさらに好ましく、500〜80,000の範囲が特に好ましい。なお、本明細書において、重合体の重量平均分子量は、特記しない限り、下記GPC測定条件によって測定された値である。
【0059】
<GPC分子量測定条件>
使用カラム:東ソー社製、TSK−GEL SUPER HM−H+TSK−GEL SUPER HM−H+TSK−GEL SUPER H2000
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
打込み量:20μL
サンプル濃度:0.2重量%
溶離液流速:0.6mL/sec
カラム温度:40℃
標準物質:ポリスチレン、重量平均分子量(Mw)587000、354000、189000、98900、37200、17100、9830、5870、2500
検出器:東ソー社製、示差屈折検出器
解析ソフト:東ソー社製、GPC8020 model II データ収集 Version 4.20。
【0060】
本発明の乾燥収縮低減剤は、水硬性材料など、広範な用途に適用可能であるが、特に水硬性材料に好適に使用される。
【0061】
本発明の乾燥収縮低減剤は、上記したような重合体1種のみから構成されてもあるいは上記した2種以上の重合体から構成されるものであってもよい。
【0062】
また、本発明の乾燥収縮低減剤及び分散剤を組み合わせることによって、目的に応じた分散性と乾燥収縮低減性を容易に調整することができる。したがって、本発明の第二は、本発明の少なくとも1種の乾燥収縮低減剤および分散剤を含む収縮低減組成物に関するものである。本発明において、乾燥収縮低減剤は、単独で使用されてあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0063】
本発明に使用できる分散剤としては、特に限定はなく、公知の分散剤が使用できる。具体的には、特開昭62−68806号公報に開示されるような、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の特定の不飽和アルコールにエチレンオキシド等を付加したアルケニルエーテル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、およびこれらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体、またはその塩、分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤や、分子中にポリオキシアルキレン鎖とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤等の公知の分散剤が使用できる。スルホン酸系分散剤としては、例えば、リグニンスルホン酸塩;ポリオール誘導体;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリスチレンスルホン酸塩;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系(特開平1−113419号公報参照)等が挙げられる。
【0064】
また、ポリカルボン酸系分散剤としては、上記一般式(2)で表される構成単位(II−a)と構成単位(III)とを必須の構成単位として含むポリカルボン酸系分散剤(A)、上記一般式(3)で表される構成単位(II−b)と構成単位(III)とを必須の構成単位として含むポリカルボン酸系分散剤(B)、特開平7−53645号公報、特開平8−208769号公報、特開平8−208770号公報の如くポリエーテル化合物に不飽和カルボン酸系単量体をグラフト重合した親水性グラフト重合体が好適である。これらの中でも、上記ポリカルボン酸系分散剤(A)又はポリカルボン酸系分散剤(B)を用いるのが好ましい。すなわち上記ポリカルボン酸系分散剤の好ましい形態としては、上記ポリカルボン酸系分散剤(A)、ポリカルボン酸系分散剤(B)である。ポリカルボン酸系分散剤(A)及びポリカルボン酸系分散剤(B)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
上記ポリカルボン酸系分散剤(A)は、上記一般式(2)で表される構成単位(II−a)と構成単位(III)とを必須の構成単位として含む重合体であるが、更にその他の共重合可能な単量体(e)に由来する構成単位を含むものでもよい。ポリカルボン酸系分散剤(A)におけるこれらの構成単位は、それぞれ1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0066】
上記ポリカルボン酸系分散剤(A)における構成単位(II−a)と構成単位(III)との比率(構成単位(II−a)/構成単位(III))(質量%)としては、1〜99/99〜1であることが好ましい。また、ポリカルボン酸系分散剤(A)における構成単位(II−a)と構成単位(III)との合計の比率(質量%)としては、ポリカルボン酸系分散剤(A)全体の50〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましい。
【0067】
上記ポリカルボン酸系分散剤(B)は、上記一般式(3)で表される構成単位(II−b)と構成単位(III)とを必須の構成単位として含む重合体であるが、更にその他の共重合可能な単量体(e)に由来する構成単位を含むものでもよい。ポリカルボン酸系分散剤(B)におけるこれらの構成単位は、それぞれ1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0068】
上記ポリカルボン酸系分散剤(B)において、構成単位(II−b)と構成単位(III)とが各々全構成単位中の1質量%以上を占め、構成単位(II−b)の占める割合が全構成単位中の50モル%以下であることが好ましい。構成単位(II−b)の割合が1質量%未満では、ポリカルボン酸系分散剤(B)に含まれる(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体由来のオキシアルキレン基の含有量が少なすぎ、他方、構成単位(III)の割合が1質量%未満では、ポリカルボン酸系分散剤(B)に含まれる不飽和モノカルボン酸系単量体由来のカルボキシル基の含有量が少なすぎ、分散性が低下傾向となる。また、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体の重合性が低いことから、分散性の高いポリカルボン酸系分散剤(B)を高収率で得るために、構成単位(II−b)の占める割合が全構成単位中の50モル%以下とするのが好ましい。尚、ポリカルボン酸系分散剤(B)における構成単位(II−b)と構成単位(III)との合計の比率(質量%)としては、ポリカルボン酸系分散剤(B)全体の50〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましい。
【0069】
または、市販のセメント分散剤を使用してもよく、具体的には、ポゾリスNo.70(リグニンスルホン酸化合物ポリオール複合体系分散剤、ポゾリス物産製)、FC−900(ポリカルボン酸系分散剤、株式会社日本触媒製)などが挙げられる。なお、上記公知のセメント分散剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0070】
本発明において、乾燥収縮低減剤および分散剤の配合質量比は、所望の乾燥収縮低減効果及び分散性が達成できる割合であれば特に制限されず、使用する乾燥収縮低減剤やセメント分散剤の種類、配合及び試験条件等の違いにより異なるが、好ましくは99.5:0.5〜0.5:99.5、より好ましくは99:1〜10:90、特に好ましくは98:2〜20:80である。この際、乾燥収縮低減剤の配合割合が全体の99.5質量%を超えると、分散剤の配合割合が少なくなり、流動性が低くなりすぎて、充填不良等をきたすので、好ましくない。逆に、乾燥収縮低減剤の配合割合が全体の0.5質量%未満であると、乾燥収縮低減剤の量が少なすぎて、水硬性材料、特にコンクリート部材の乾燥収縮を十分低減できないおそれがある。
【0071】
本発明の乾燥収縮低減剤は、水溶液の形態でそのまま使用してもよいし、又は、カルシウム、マグネシウム等の二価金属の水酸化物で中和して多価金属塩とした後に乾燥させたり、シリカ系微粉末等の無機粉体に担持して乾燥させたりすることにより粉体化して使用してもよい。
【0072】
本発明の乾燥収縮低減剤は、各種水硬性材料、すなわち、セメントや、石膏等のセメント以外の水硬性材料に用いることができる。そして、水硬性材料と水と本発明の乾燥収縮低減剤とを含有し、更に必要に応じて細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)を含む水硬性組成物としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスターが好適である。
【0073】
上記水硬性組成物の中では、水硬性材料としてセメントを使用するセメント組成物が最も一般的であり、そのようなセメント組成物は、本発明の乾燥収縮低減剤、セメント及び水を必須成分として含んでなることになる。このようなセメント組成物もまた、本発明の1つである。
【0074】
本発明のセメント組成物において使用されるセメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)が好適であり、更に、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加してもよい。また、骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が使用可能である。
【0075】
本発明の収縮低減組成物における、その1m3あたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比としては、単位水量100〜185kg/m3、使用セメント量250〜800kg/m3、水/セメント比(質量比)=0.1〜0.7とすることが好ましく、より好ましくは、単位水量120〜175kg/m3、使用セメント量270〜800kg/m3、水/セメント比(質量比)=0.2〜0.65が推奨され、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m3以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
【0076】
本発明の収縮低減組成物における本発明の乾燥収縮低減剤の配合割合としては、例えば、水硬性セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメント質量の0.001〜20質量%とすることが好ましい。0.001質量%未満では収縮低減性能が出ないおそれがあり、逆に20.0質量%を超えると、水硬性材料の硬化遅延が生じやすくなるおそれがある。より好ましくは、0.001〜10質量%であり、更に好ましくは、0.05〜5質量%であり、最も好ましくは、0.01〜3質量%である。
【0077】
本発明の収縮低減組成物はまた、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形コンクリート、振動締め固めコンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり、更に、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmのコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmのコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
【0078】
更に、本発明の収縮低減組成物は、以下の(1)〜(20)に例示するような他の公知のセメント添加剤(材)を含有することができる。
【0079】
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;メチルセルロース、エチルセルローズ、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルローズ、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルローズエーテル類;メチルセルロース、エチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の多糖類のアルキル化若しくはヒドロキシアルキル化誘導体の一部又は全部の水酸基の水素原子が、炭素数8〜40の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基又はそれらの塩を部分構造として含有するイオン性親水性置換基で置換されてなる多糖誘導体;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1.3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状のいずれでも良く、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマー及びその四級化合物等。
【0080】
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
【0081】
(3)遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アピオース、リボース、異性化糖等の単糖類や、二糖、三糖等のオリゴ糖、又はデキストリン等のオリゴ糖、又はデキストラン等の多糖類、これらを含む糖蜜類等の糖類;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
【0082】
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
【0083】
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
【0084】
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
【0085】
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
【0086】
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
【0087】
(9)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール,3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
【0088】
(10)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
【0089】
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
【0090】
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
【0091】
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
【0092】
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
【0093】
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フエニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フエニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
【0094】
(16)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシ基を置換基として有してもよい、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
【0095】
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
【0096】
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
【0097】
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
【0098】
(20)膨張材;エトリンガイト系、石炭系等。
【0099】
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。尚、上記公知のセメント添加剤(材)は、複数の併用も可能である。
【0100】
本発明の収縮低減組成物において、セメント及び水以外の成分についての特に好適な実施形態としては、次の1)〜8)が挙げられる。
【0101】
1)(a)本発明の乾燥収縮低減剤、(b)オキシアルキレン系消泡剤の2成分を必須とする組み合わせ。尚、(b)のオキシアルキレン系消泡剤の配合質量比としては、(a)の乾燥収縮低減剤に対して0.01〜200質量%が好ましい。
【0102】
2)(a)本発明の乾燥収縮低減剤、(b)リグニンスルホン酸塩の2成分を必須とする組み合わせ。尚、(a)の乾燥収縮低減剤と(b)のリグニンスルホン酸塩との配合質量比としては、99.5/0.5〜0.5/99.5が好ましく、98/2〜20/80がより好ましい。
【0103】
3)(a)本発明の乾燥収縮低減剤、(b)ポリカルボン酸系分散剤の2成分を必須とする組み合わせ。尚、(a)の乾燥収縮低減剤と(b)のポリカルボン酸系分散剤との配合質量比としては、99.5/0.5〜0.5/99.5が好ましく、98/2〜20/80がより好ましい。
【0104】
4)(a)本発明の乾燥収縮低減剤、(b)リグニンスルホン酸塩、(c)オキシアルキレン系消泡剤の3成分を必須とする組み合わせ。尚、(a)の乾燥収縮低減剤と(b)のリグニンスルホン酸塩との配合質量比としては、99.5/0.5〜0.5/99.5が好ましく、98/2〜20/80がより好ましい。また(c)オキシアルキレン系消泡剤の配合質量比としては、(a)の乾燥収縮低減剤と(b)のリグニンスルホン酸塩との合計質量に対して0.01〜200質量%が好ましい。
【0105】
5)(a)本発明の乾燥収縮低減剤、(b)ポリカルボン酸系分散剤、(c)オキシアルキレン系消泡剤の3成分を必須とする組み合わせ。尚、(a)の乾燥収縮低減剤と(b)のポリカルボン酸系分散剤との配合質量比としては、99.5/0.5〜0.5/99.5が好ましく、98/2〜20/80がより好ましい。また(c)オキシアルキレン系消泡剤の配合質量比としては、(a)の乾燥収縮低減剤と(b)のポリカルボン酸系分散剤との合計質量に対して0.01〜200質量%が好ましい。
【0106】
6)(a)本発明の乾燥収縮低減剤、(b)材料分離低減剤の2成分を必須とする組み合わせ。材料分離低減剤としては、非イオン性セルローズエーテル類等の各種増粘剤、部分構造として炭素数4〜30の炭化水素鎖からなる疎水性置換基と炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物等が使用可能である。尚、(a)の乾燥収縮低減剤と(b)の材料分離低減剤との配合質量比としては、10/90〜99.99/0.01が好ましく、50/50〜99.9/0.1がより好ましい。この組み合わせからなる収縮低減組成物は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材として好適である。
【0107】
7)(a)本発明の乾燥収縮低減剤、(b)遅延剤の2成分を必須とする組み合わせ。遅延剤としては、グルコン酸(塩)、クエン酸(塩)等のオキシカルボン酸類、グルコース等の糖類、ソルビトール等の糖アルコール類、アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類等が使用可能である。この中でグルコン酸(塩)、クエン酸(塩)等のオキシカルボン酸類が特に好ましい。尚、(a)の乾燥収縮低減剤と(b)の遅延剤との配合質量比としては、50/50〜99.9/0.1が好ましく、70/30〜99/1がより好ましい。
【0108】
8)(a)本発明の乾燥収縮低減剤、(b)促進剤の2成分を必須とする組み合わせ。促進剤としては、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の可溶性カルシウム塩類、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物類、チオ硫酸塩、ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩類等が使用可能である。尚、(a)の乾燥収縮低減剤と(b)の促進剤との配合質量比としては、10/90〜99.9/0.1が好ましく、20/80〜99/1がより好ましい。
【実施例】
【0109】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明する。尚、本明細書中、特に断わりのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を表わすものとする。
【0110】
製造例1
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、2−プロパノール198.91部、2−エチルヘキシルメタクリレート54.51部、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数23個;すなわち、上記式(2)中、R=H、R=H、R=CH、R=C、R=CH、s=0、u=23)67.99部、及び連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.71部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で65℃まで加熱した。次に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.41部と2−プロパノール28.6部とからなる開始剤溶液を5時間で滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、2−プロパノールを留去した後、共重合体濃度が25質量%となるように水を加えて、重量平均分子量13300の共重合体水溶液からなる本発明の重合体(1)を得た。なお、上記重量平均分子量は、上記GPCと同様の条件で測定された値である。
【0111】
製造例2
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、2−プロパノール198.91部、2−エチルヘキシルメタクリレート46.92部、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9個;すなわち、上記式(2)中、R=H、R=H、R=CH、R=C、R=CH、s=0、u=9)75.58部、及び連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.62部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で65℃まで加熱した。次に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.41部と2−プロパノール28.6部とからなる開始剤溶液を5時間で滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、2−プロパノールを留去した後、共重合体濃度が25質量%となるように水を加えて、重量平均分子量13300の共重合体水溶液からなる本発明の重合体(2)を得た。なお、上記重量平均分子量は、上記GPCと同様の条件で測定された値である。
【0112】
製造例3
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、2−プロパノール198.91部、2−エチルヘキシルメタクリレート55.17部、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数23個;すなわち、上記式(2)中、R=H、R=H、R=CH、R=C、R=CH、s=0、u=23)62.53部、メタクリル酸4.80部、及び連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.83部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で65℃まで加熱した。次に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.41部と2−プロパノール28.6部とからなる開始剤溶液を5時間で滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、2−プロパノールを留去した後、共重合体濃度が25質量%となるように水を加えて、30%水酸化ナトリウム水溶液で中和して、重量平均分子量12000の共重合体水溶液からなる本発明の重合体(3)を得た。なお、上記重量平均分子量は、上記GPCと同様の条件で測定された値である。
【0113】
製造例4
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、2−プロパノール198.91部、2−エチルヘキシルメタクリレート47.30部、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9個;すなわち、上記式(2)中、R=H、R=H、R=CH、R=C、R=CH、s=0、u=9)71.09部、メタクリル酸4.11部、及び連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.91部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で65℃まで加熱した。次に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.41部と2−プロパノール28.6部とからなる開始剤溶液を5時間で滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、2−プロパノールを留去した後、共重合体濃度が25質量%となるように水を加えて、30%水酸化ナトリウム水溶液で中和して、重量平均分子量13000の共重合体水溶液からなる本発明の重合体(4)を得た。なお、上記重量平均分子量は、上記GPCと同様の条件で測定された値である。
【0114】
製造例5
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、2−プロパノール199.34部、2−エチルヘキシルアクリレート46.92部、IPN10(上記式(3)中、R10=H、R11=H、R12=CH、R13=C、R14=H、x=2、y=10)75.58部、及び連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.63部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で65℃まで加熱した。次に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.84部と2−プロパノール28.2部とからなる開始剤溶液を5時間で滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、2−プロパノールを留去した後、共重合体濃度が25質量%となるように水を加えて、重量平均分子量6100の共重合体水溶液からなる本発明の重合体(5)を得た。なお、上記重量平均分子量は、上記GPCと同様の条件で測定された値である。
【0115】
製造例6
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、2−プロパノール198.91部、ブチルメタクリレート47.30部、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9個;すなわち、上記式(2)中、R=H、R=H、R=CH、R=C、R=CH、s=0、u=9)71.09部、メタクリル酸4.11部、及び連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.72部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で65℃まで加熱した。次に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.41部と2−プロパノール28.6部とからなる開始剤溶液を5時間で滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、2−プロパノールを留去した後、共重合体濃度が25質量%となるように水を加えて、30%水酸化ナトリウム水溶液で中和して、重量平均分子量15200の共重合体水溶液からなる本発明の重合体(6)を得た。なお、上記重量平均分子量は、上記GPCと同様の条件で測定された値である。
【0116】
製造例7
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、2−プロパノール198.91部、ラウリルメタクリレート47.30部、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9個;すなわち、上記式(2)中、R=H、R=H、R=CH、R=C、R=CH、s=0、u=9)71.09部、メタクリル酸4.11部、及び連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸1.12部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で65℃まで加熱した。次に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.41部と2−プロパノール28.6部とからなる開始剤溶液を5時間で滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、2−プロパノールを留去した後、共重合体濃度が25質量%となるように水を加えて、30%水酸化ナトリウム水溶液で中和して、重量平均分子量12600の共重合体水溶液からなる本発明の重合体(7)を得た。なお、上記重量平均分子量は、上記GPCと同様の条件で測定された値である。
【0117】
製造例8
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、2−プロパノール198.91部、2−エチルヘキシルメタクリレート30.89部、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9個;すなわち、上記式(2)中、R=H、R=H、R=CH、R=C、R=CH、s=0、u=9)87.50部、メタクリル酸4.11部、及び連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.81部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で65℃まで加熱した。次に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.41部と2−プロパノール28.6部とからなる開始剤溶液を5時間で滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、2−プロパノールを留去した後、共重合体濃度が25質量%となるように水を加えて、30%水酸化ナトリウム水溶液で中和して、重量平均分子量13400の共重合体水溶液からなる本発明の重合体(8)を得た。なお、上記重量平均分子量は、上記GPCと同様の条件で測定された値である。
【0118】
製造例9
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、2−プロパノール198.91部、2−エチルヘキシルメタクリレート12.36部、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9個;すなわち、上記式(2)中、R=H、R=H、R=CH、R=C、R=CH、s=0、u=9)106.03部、メタクリル酸4.11部、及び連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.86部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で65℃まで加熱した。次に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.41部と2−プロパノール28.6部とからなる開始剤溶液を5時間で滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、2−プロパノールを留去した後、共重合体濃度が25質量%となるように水を加えて、30%水酸化ナトリウム水溶液で中和して、重量平均分子量12000の共重合体水溶液からなる本発明の重合体(9)を得た。なお、上記重量平均分子量は、上記GPCと同様の条件で測定された値である。
【0119】
比較製造例1
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、2−プロパノール181.3部、イオン交換水6.1部、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数23個)22.7部、ラウリルメタクリレート22.7部、メタクリル酸36.2部、及び連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.28部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で65℃まで加熱した。次に、過硫酸ナトリウム2.1部とイオン交換水27.9部とからなる開始剤溶液を5時間で滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、2−プロパノールを留去した後、共重合体濃度が25質量%となるように水を加えて、30%水酸化ナトリウム水溶液で中和して、重量平均分子量32000の共重合体水溶液からなる比較重合体(1)を得た。なお、比較重合体(1)の重量平均分子量を、以下の方法によって測定した。
【0120】
<GPC分子量測定条件>
使用カラム:東ソー社製、TSK guard column SWXL+TSK ge1 G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、更に30%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0に調整した溶離液を用いる
打込み量:100μL
サンプル濃度:0.5重量%
溶離液流速:0.8mL/sec
カラム温度:35℃
標準物質:ポリエチレングリコール、重量平均分子量(Mw)272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、7100、1470
検出器:日本Waters社製、示差屈折検出器
解析ソフト:日本Waters社製、MILLENNIUM Ver.2.18。
【0121】
比較製造例2
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、メタノール210.0部及びイオン交換水164.4部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で65℃まで加熱した。次に、ラウリルアルコキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数25個;すなわち、上記式(2)中、R=H、R=H、R=CH、R=C、R=C1225、s=0、u=25)150.0部、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数23個)60.0部、メタクリル酸71.7部、イオン交換水60.4部及び連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.74部を混合したモノマー溶液を4時間で滴下し、過硫酸ナトリウム6.9部とイオン交換水93.1部とからなる開始剤溶液をモノマー溶液滴下開始時から5時間で滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、30%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、メタノールを留去して、重量平均分子量53600の共重合体水溶液からなるからなる比較重合体(2)を得た。なお、比較重合体(2)の重量平均分子量を、比較製造例1と同様の方法によって測定した。
【0122】
比較製造例3
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、2−プロパノール63.0部及びイオン交換水99.4部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で65℃まで加熱した。次に、ステアリルアルコキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数25個;すなわち、上記式(2)中、R=H、R=H、R=CH、R=C、R=C1837、s=0、u=25)29.3部、1−ペンチルオキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数25個;すなわち、上記式(2)中、R=H、R=H、R=CH、R=C、R=C11、s=0、u=25)29.3部、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数23個)13.5部、メタクリル酸14.3部、イオン交換水20.9部及び連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.12部を混合したモノマー溶液を4時間で滴下し、過硫酸ナトリウム2.1部とイオン交換水27.9部とからなる開始剤溶液をモノマー溶液滴下開始時から5時間で滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し、重合反応を完結させた後、2−プロパノールを留去して、重量平均分子量60600の共重合体水溶液からなる比較重合体(3)を得た。なお、比較重合体(3)の重量平均分子量を、比較製造例1と同様の方法によって測定した。
【0123】
実施例1〜9、比較例1〜3
製造例1〜9に記載の方法と同様に製造された重合体(1)〜(9)及び比較製造例1〜3に記載の方法と同様に製造された比較重合体(1)〜(3)について、セメント上澄み液に重合体を0.2質量%含む溶液における表面張力、標準添加量及び乾燥収縮低減効果を評価し、その結果を下記表1に示す。なお、標準添加量及び乾燥収縮低減効果は、以下のようにして評価し、セメント上澄み液に重合体を0.2質量%含む溶液における表面張力は上記した方法に従って測定した。
【0124】
1.標準添加量の測定
モルタルの混錬は以下のとおり実施した。所定量の重合体/比較重合体を秤量して水で希釈したもの213.7gと太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメント485.8gおよびセメント強さ試験用標準砂(JIS R 5201−1997附属書2の5.1.3に規定)1350gを、ホバート型モルタルミキサー:型番N−50(商品名、ホバート社製)を用い、JIS R 5201−1997に従いモルタルの混錬を行い、モルタルフロー試験で180±10mm/15打を達成するために必要な添加量を測定した。この際、モルタル空気量が5.0〜10.0vol%となるように、必要に応じて消泡剤を選択使用してモルタル空気量の調整を行なった。なお、表1において、「wt%/C」は、セメントに対する重合体の添加量を示す。
【0125】
2.乾燥収縮低減性
モルタルの混錬は以下のとおり実施した。上記1.で求めた標準添加量(ただし、重合体(1)〜(9)については、添加量を増やしてもモルタルフロー値が上がらないことから、添加量を1.5wt%/Cとした)を添加量として重合体/比較重合体を秤量して水で希釈したもの213.7gと太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメント485.8gおよびセメント強さ試験用標準砂(JIS R 5201−1997附属書2の5.1.3に規定)1350gをホバート型モルタルミキサー:型番N−50(商品名、ホバート社製)を用い、JIS R 5201−1997に従いモルタルの混錬を行った。この際、モルタル空気量が5.0〜10.0vol%となるように、必要に応じて消泡剤を選択使用してモルタル空気量の調整を行なった。なお、この際、比較対照として、重合体の代わりに、ポゾリスNo.70(リグニンスルホン酸化合物ポリオール複合体系分散剤、ポゾリス物産製)を0.25wt%/Cとなるように添加したものを使用した。
【0126】
次に、乾燥収縮低減性評価用のモルタル供試体(4×4×16cm)の作成をJIS R 1129に従い実施した。
【0127】
型枠には予めシリコングリースを塗布して止水すると共に容易に脱型できるようにした。また、供試体の両端にはゲージプラグを装着した。混錬して得られたモルタルを流し込んだ型枠を容器に入れ、密閉し20℃で保管し、初期養生を行なった。2日後に脱型し、供試体に付着したシリコングリースをたわしを用いて水で洗浄し、続いて20℃の静水中で5日間養生(水中養生)した。
【0128】
JIS A 1129に従い、ダイヤルゲージ((株)西日本試験機製)を使用した。静水中で5日間養生した供試体の表面の水を紙タオルでふき取った後、直ちに測長し、この時点の長さを基準とした。その後、温度20℃、湿度60%に設定した恒温恒湿室内に28日間保存し、適時測長した。この際、乾燥収縮低減性は、下記式で示されるように、ポゾリスの収縮量に対して、重合体添加時に収縮を低減できた値とし、値が大きいほど収縮を低減できることを示す。また、10%以下では、低減効果がないものとみなす。
【0129】
【数1】

【0130】
【表1】

【0131】
上記表1から、構成単位(I)を含みかつ表面張力が25〜50mN/mである重合体は、構成単位(I)を含まない重合体(比較重合体2,3)及び構成単位(I)を含むが表面張力が上記範囲を超える重合体(比較重合体1)に比べて、有意に高い乾燥収縮低減性を発揮し、これから、本発明による重合体は、乾燥収縮を効果的に低減できることが示される。また、構成単位(I)及び構成単位(II)を必須の構成単位として含み、ならびに構成単位(III)を重合体全体の、0〜30質量%の割合で含む本発明による重合体(1)〜(9)は、構成単位(I)、構成単位(II)及び構成単位(III)を必須の構成単位として含むが構成単位(III)を重合体全体の30質量%を超える割合で含む比較重合体(1)に比して、有意に高い乾燥収縮低減性を示すことから、重合体に、構成単位(I)に加えて、構成単位(II)及び特定量の構成単位(III)を導入することによって、乾燥収縮低減に優れた重合体となることもまた示される。
【0132】
製造例10
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水1698部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。次に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数25個)1668部、メタクリル酸332部及びイオン交換水500部を混合し、更に連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸16.7部を均一に混合することにより、単量体混合物水溶液を調製した。この単量体混合物水溶液及び10%過硫酸アンモニウム水溶液184部をそれぞれ4時間かけて滴下し、滴下終了後更に10%過硫酸アンモニウム水溶液46部を1時間で滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させた。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重合体水溶液からなるポリカルボン酸系分散剤(A)に相当する共重合体(PC−1)(重量平均分子量 24,000)を得た。なお、共重合体(PC−1)の重量平均分子量を、比較製造例1と同様の方法によって測定した。
【0133】
製造例11
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入菅及び還流冷却器を備えた1リットル容のガラス製反応容器に、脱イオン水3.1部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを 50モル付加してなるポリアルキレングリコールモノアルケニルエーテル単量体(以下、IPN−50と称す)の80%水溶液66.9部および、過酸化水素水の30%水溶液2.8部を仕込み、窒素雰囲気下で58℃まで加熱した。次にIPN−50の80%溶液267.6部、脱イオン水34.7部およびラウリルメルカプタン2.5部の混合液、アクリル酸36.2部および脱イオン水9.0部の混合液を3時間で滴下、同時にL−アスコルビン酸1.1部および脱イオン水19.9部の混合液を3.5時間かけて滴下した。滴下後、引き続き58℃で1.0時間熟成し室温に冷却し、30%の水酸化ナトリウムでpH6.7に調整して、重合体水溶液からなるポリカルボン酸系分散剤(B)に相当する共重合体(PC−2)(重量平均分子量 21,900)の水溶液を得た。なお、共重合体(PC−2)の重量平均分子量を、比較製造例1と同様の方法によって測定した。
【0134】
実施例10〜18、比較例4〜6
製造例2〜7に記載の方法と同様に製造された本発明の重合体(2)〜(7)及び比較製造例1に記載の方法と同様に製造された比較重合体(1)について、以下のようにして、モルタルフロー値及び乾燥収縮低減効果を評価し、その結果を下記表2に示す。
【0135】
3.モルタルフロー値の測定
モルタルフロー値は、JIS R 5201−1997に記載の方法に準拠して、測定した。
【0136】
4.乾燥収縮低減性
モルタルの混錬は以下のとおり実施した。本発明の重合体(2)〜(7)、FC−900(ポリカルボン酸系分散剤、株式会社日本触媒製)、ポゾリスNo.70(リグニンスルホン酸化合物ポリオール複合体系分散剤、ポゾリス物産製)、製造例10に記載の方法と同様に製造された共重合体PC−1、及び製造例11に記載の方法と同様に製造された共重合体PC−2を、それぞれ、下記表2に示されるような量(添加量は、それぞれ、セメントに対する化合物固形分の質量%で表す)となるように、秤量して水で希釈したもの213.7gと太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメント485.8gおよびセメント強さ試験用標準砂(JIS R 5201−1997附属書2の5.1.3に規定)1350gをホバート型モルタルミキサー:型番N−50(商品名、ホバート社製)を用い、JIS R 5201−1997に従いモルタルの混錬を行った。この際、モルタル空気量が5.0〜10.0vol%となるように、必要に応じて消泡剤を選択使用してモルタル空気量の調整を行なった。
【0137】
次に、乾燥収縮低減性評価用のモルタル供試体(4×4×16cm)の作成をJIS R 1129に従い実施した。
【0138】
型枠には予めシリコングリースを塗布して止水すると共に容易に脱型できるようにした。また、供試体の両端にはゲージプラグを装着した。混錬して得られたモルタルを流し込んだ型枠を容器に入れ、密閉し20℃で保管し、初期養生を行なった。2日後に脱型し、供試体に付着したシリコングリースをたわしを用いて水で洗浄し、続いて20℃の静水中で5日間養生(水中養生)した。
【0139】
JIS A 1129に従い、ダイヤルゲージ((株)西日本試験機製)を使用した。静水中で5日間養生した供試体の表面の水を紙タオルでふき取った後、直ちに測長し、この時点の長さを基準とした。その後、温度20℃、湿度60%に設定した恒温恒湿室内に28日間保存し、適時測長した。この際、乾燥収縮低減性は、下記式で示されるように、標品の収縮量に対して、重合体添加時に収縮を低減できた値とし、値が大きいほど収縮を低減できることを示す。また、10%以下では、低減効果がないものとみなす。下記式において、標品の収縮量は、ポゾリスNo.70を0.25wt%/Cとなるように添加したものを使用した(比較例5)の収縮量とした。
【0140】
【数2】

【0141】
【表2】

【0142】
上記表2から、本発明による重合体(2)〜(7)を用いると、FC−900(ポリカルボン酸系分散剤)、ポゾリスNo.70(リグニンスルホン酸化合物ポリオール複合体系分散剤)や共重合体PC−1、PC−2と併用することによって、所望の分散性及び乾燥収縮低減性が達成できることが示される。これに対して、分散剤のみを使用した比較例4〜6では、充分な分散性(モルタルフロー値)は達成できるものの、乾燥収縮低減性が不十分であることが示される。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の乾燥収縮低減剤は、上述のような構成からなり、セメントペースト、モルタル、コンクリート等の水硬性材料に適用して、優れたひび割れ防止効果を発揮することにより、硬化物の強度や耐久性を向上することができ、土木・建築構造物等の安全性を向上したり、修復コストを抑制したりすることができる、汎用性の高いものである。
【0144】
さらに、本出願は、2004年3月16日に出願された日本特許出願番号2004−074017号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

ただし、式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基または−(CHCOOX基を表し、この際、Xは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、有機アミン基または炭化水素基を表し、pは、0〜2の整数であり;およびRは、炭素原子数4〜30の炭化水素基を表す、
で示される少なくとも1種の構成単位(I)を必須成分として含み、セメント上澄み液に重合体を0.2質量%含む溶液における表面張力が25〜50mN/mである重合体を含む乾燥収縮低減剤。
【請求項2】
該重合体は、式(1)で示される少なくとも1種の構成単位(I);ならびに下記式(2):
【化2】

ただし、式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し;sは、0〜2の整数であり;ROは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表し;uは、オキシアルキレン基(RO)の平均付加モル数を表し、1〜300の数であり;およびRは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す、
で示される構成単位(II−a)及び下記式(3):
【化3】

ただし、式中、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し;xは、0〜2の整数であり;R13Oは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表し;yは、オキシアルキレン基(R13O)の平均付加モル数を表し、1〜300の数であり;およびR14は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す、
で示される構成単位(II−b)から選ばれる少なくとも1種の構成単位(II)を必須成分として含有し、さらに下記式(4):
【化4】

ただし、式中、R15、R16及びR17は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基または−(CHCOOZ’基を表し、この際、Z’は、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、およびqは、0〜2の整数であり;ならびにZは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、有機アミン基を表し、COOZ’及びCOOZが2個以上存在する場合には、これらのうちの2個が無水物を形成していてもよい、
で示される少なくとも1種の構成単位(III)を重合体全体の0〜30質量%含んでなる、請求項1に記載の乾燥収縮低減剤。
【請求項3】
該構成単位(I)は、重合体全体の7〜99質量%の割合で存在する、請求項1または2に記載の乾燥収縮低減剤。
【請求項4】
水硬性材料に使用される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の乾燥収縮低減剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の少なくとも1種の乾燥収縮低減剤および分散剤を含む収縮低減組成物。
【請求項6】
該乾燥収縮低減剤および分散剤の配合質量比は、99.5:0.5〜0.5:99.5である、請求項5に記載の収縮低減組成物。

【公表番号】特表2007−529397(P2007−529397A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519435(P2006−519435)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【国際出願番号】PCT/JP2005/005070
【国際公開番号】WO2005/087685
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】