説明

乾燥粉体分散供給装置及びそれを用いた粒度分布測定装置

【課題】 乾燥粉体を分散させながら測定空間に供給するために、安定した気流を発生することができる乾燥粉体分散供給装置を提供する。
【解決手段】 プローブ本体11と、プローブ本体11の上面から下面まで貫通するように配置される吸引管12の一端部とを有する吸引プローブ10と、側壁21と底面22とを有し、内部に被測定粒子群が収納される試料容器20とを備え、吸引管12の他端部が粒度分布測定装置1の測定空間に連結される乾燥粉体分散供給装置2であって、プローブ本体11の上部から下部まで貫通するように形成された貫通孔13とシール部材14とを備え、被測定粒子群を測定空間に供給する際には、シール部材14は、試料容器20の側壁21とプローブ本体11との間に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的手法(例えば、レーザ回折・散乱式等)を用いて被測定物に含まれる被測定粒子群の粒度分布を測定するための乾燥粉体分散供給装置及びそれを用いた粒度分布測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ回折・散乱式の粒度分布測定装置においては、媒体(例えば、水や空気等)中に分散状態の被測定粒子群(例えば、乾燥粉体等)にレーザ光(測定光)を照射することにより、被測定粒子群で回折・散乱されたレーザ光の空間的な光強度分布を複数個の光検出素子で検出して、その光強度分布からフラウンホーファ回折理論やミーの散乱理論に基づく演算を行うことによって、被測定粒子群の粒度分布を算出する。
【0003】
図8は、従来の粒度分布測定装置の概略構成の一例を示す図である。なお、図8中で、光学系の構成を表す模式図と、データサンプリング回路やコンピュータからなる信号処理系の構成を表すブロック図とを併記して示している。
粒度分布測定装置501は、測定空間を配置するための測定空間配置部83と、測定空間に対してレーザ光を照射する照射光学系82と、光強度分布を検出する検出光学系84と、測定空間にエアロゾル(被測定物)Sを供給するサンプル供給装置502と、データサンプリング回路85と、通信制御回路86と、粒度分布測定装置501全体を制御するコンピュータ(制御部)517とを備える(例えば、特許文献1参照)。
ここでは、乾燥粉体(被測定粒子群)Pを空気(媒体)L中に分散させたエアロゾルSを測定することにより、乾燥粉体Pの粒度分布を算出するものとする。
【0004】
測定空間配置部83は、下端部に下側接続口を、上端部に上側接続口を有する。そして、測定空間配置部83の下側接続口は、エアロゾル移送パイプ24fを介してサンプル供給装置502と接続されている。また、上側接続口は、吸引パイプ91を介してポンプ92と接続されている。
このような構成において、ポンプ92が駆動することによって、サンプル供給装置502内のエアロゾルSが、下側接続口から測定空間に流入し、そして、測定空間を下方から上方へ通過し、その後、上側接続口から流出するようになっている。
【0005】
サンプル供給装置502は、鉛直方向となる回転軸521aを有する土台524と、円板状のターンテーブル521と、ターンテーブル521の上方に配置されたホッパ522、充填器523及び移送機構24とによって構成される。
ターンテーブル521は、土台524の回転軸521aを中心として図中矢印で示す向きに回転可能となっている。ターンテーブル521の上面には、回転軸521aを中心とする円環状の溝520が形成されている。
【0006】
ホッパ522は、内部に充填された乾燥粉体Pをターンテーブル521の溝520の内部に向けて落下させて供給するものである。
充填器523は、溝520の内部に供給された乾燥粉体Pに対して振動等を与えることによって、溝520の内部に乾燥粉体Pを均一に充填するものである。
【0007】
移送機構24は、エジェクタ24aと、一端が下向きに開口するとともに他端がエジェクタ24aに接続された吸引パイプ24bと、エジェクタ24aにボンベ24cから高圧の空気を供給する空気供給パイプ24dと、一端がエジェクタ24aに接続されるとともに他端が測定空間に向かって開口する噴出ノズル24eが装着されたエアロゾル移送パイプ24fとによって構成される。
このような移送機構24によれば、吸引パイプ24bにより吸引された乾燥粉体Pは、エジェクタ24a内で高圧空気中に混入され、エアロゾル移送パイプ24fを通って移送され、エアロゾル移送パイプ24fの先端に装着された噴出ノズル24eからエアロゾルSとなって測定空間に噴出されるようになっている。
【0008】
粒度分布測定装置501の左側部には、照射光学系82が設置され、具体的にはレーザ光源81と集光レンズ82aと空間フィルタ82bとコリメータ82cとが左からこの順に配置されている。
このような照射光学系82の構成において、レーザ光源81で発生されたレーザ光は、集光レンズ82a、空間フィルタ82b、コリメータ82cを通過して平行光とされ、前方向(図の左から右へ)に向かうように測定空間に照射される。
これにより、測定空間をエアロゾルSが通過していれば、レーザ光は、測定空間の乾燥粉体Pで回折・散乱して、空間的に回折・散乱光の光強度分布パターンが生ずることになる。
【0009】
粒度分布測定装置501の右側部には、検出光学系84が設置され、具体的には集光レンズ84aとリングディテクタ84bとが左からこの順に配置されている。
リングディテクタ84bは、互いに異なる半径を持つリング状ないしは半リング状の受光面を持つ64個の光検出素子を、集光レンズ84aの光軸を中心とするように同心円状に配置してあり、各光検出素子には、それぞれの位置に応じた回折・散乱角度を持つ光が入射するようにしてある。したがって、各光検出素子の出力信号は、各回折・散乱角度ごとの光の強度を表すことになる。
【0010】
このような検出光学系84の構成において、前方向に対して60°以内の回折・散乱光は、集光レンズ84aを介してリングディテクタ84bの受光面上に集光されて、リング状の回折・散乱像を結ぶようになる。
リングディテクタ84bの64個の各光検出素子の出力信号は、アンプ、マルチプレクサ及びA−D変換器からなるデータサンプリング回路85によって順次デジタル化され、回折・散乱光の光強度分布データとして汎用のコンピュータ517に送信される。
【0011】
コンピュータ517は、CPU540とメモリ60とを備え、モニタ画面を有する表示装置52と、キーボード51aやマウス51bを有する入力装置51とが連結されている。
CPU540が処理する機能をブロック化して説明すると、光強度分布データを取得する光強度分布取得部41と、乾燥粉体Pの粒度分布を算出する粒度分布算出部43と、サンプル供給装置502を制御するサンプル供給制御部542とを有する。
なお、メモリ60は、光強度分布データを記憶するための光強度分布記憶領域と、粉体粒子P及び空気(媒体)Lの屈折率や、フラウンホーファ回折理論やミーの散乱理論に基づいた公知の演算式等を記憶するデータ記憶領域とを有する。
【0012】
サンプル供給制御部542は、測定者によって、エアロゾルSを測定するように入力装置51で入力されると、サンプル供給機構502から測定空間にエアロゾルSを供給する制御を行う。
具体的には、乾燥粉体Pを測定空間に供給するために、ホッパ522は、乾燥粉体Pをターンテーブル521の溝520の内部に向けて落下させ、充填器523は、溝520の内部に供給された乾燥粉体Pに対して振動等を与えることによって、溝520の内部に乾燥粉体Pを均一に充填する。そして、吸引パイプ24bに対し真空が加えられたとき、乾燥粉体Pを吸引パイプ24bの内部にフィードする。吸引パイプ24bにより吸引された乾燥粉体Pは、エジェクタ24a内で高圧空気中に混入され、エアロゾル移送パイプ24fを通って移送され、エアロゾル移送パイプ24fの先端に装着された噴出ノズル24eからエアロゾルSとなって測定空間に噴出されるようになっている。
【0013】
光強度分布取得部41は、エアロゾルSが測定空間を通過していると判定すると、測定空間に照射光学系82からのレーザ光を照射するとともに、リングディテクタ84bの64個の各光検出素子で検出される光強度をそれぞれ積算するように検出していき、エアロゾルSが測定空間を通過していないと判定すると、64個の各光検出素子で検出される各光強度の積算を終了することで、光強度分布データを取得してメモリ60に記憶させる制御を行う。
粒度分布算出部43は、光強度分布取得部41で得られた光強度分布データと、粉体粒子P及び空気Lの屈折率とを用いて、フラウンホーファ回折理論やミーの散乱理論に基づいた公知の演算を行うことによって、エアロゾルSに含まれる乾燥粉体Pの粒度分布を算出する制御を行う。
【0014】
ところで、乾燥粉体Pを測定空間に供給するためのサンプル供給装置502は複雑で高価であり、さらに溝520の内部に乾燥粉体Pを均一に充填したり、ターンテーブル521を回転させたりする手間がかかるという問題点があった。
そこで、吸引プローブとサンプルホルダ(試料容器)とを用いる非加圧乾燥粉体分散装置が開発されている(例えば、特許文献2参照)。図9(a)は、非加圧乾燥粉体分散装置602の一例を示す垂直方向の断面図であり、図9(b)は、非加圧乾燥粉体分散装置602の一例を示す水平方向の断面図(図9(a)に示すD−D線断面図)である。
【0015】
吸引プローブ610は、略円柱状の外部壁611と、外部壁611の上面の中央部から下面の中央部まで貫通するように配置される円管状の内部吸引チャネル612とから構成されている。内部吸引チャネル612は、底(下端部)にオリフィスを有し、外部壁611の上面を通って上方に延びている。
【0016】
サンプルホルダ620は、円筒状の長手方向壁621と、長手方向壁621の下部に形成された半球状の底622とを有する。サンプルホルダ620の内部には、乾燥粉体Pが収容されるようになっている。
そして、吸引プローブ610の外部壁611の水平方向における断面は円形状であり、サンプルホルダ620の長手方向壁621の水平方向における断面は円環形状であり、吸引プローブ610の外部壁611の水平方向における断面の直径L10は、サンプルホルダ620の長手方向壁621の水平方向における断面の内径Lよりも少し小さくなっている。
【0017】
このような非加圧乾燥粉体分散装置602によれば、乾燥粉体Pを測定空間に供給するために、吸引プローブ610が、サンプルホルダ620の内部で乾燥粉体Pの表面より少し上に配置される。そして、内部吸引チャネル612に対し真空が加えられたとき、空気が吸引プローブ610の外部壁611の外周面とサンプルホルダ620の長手方向壁621の内周面との間のスペースに入り、サンプルホルダ620の長手方向壁621に沿って高速下向き空気流を形成し、下向き空気流が吸引プローブ610のオリフィスにおいて方向を変え、乾燥粉体Pの表面より上で高せん断力を生成し、高せん断力が乾燥粉体Pを分散させ、分散された乾燥粉体Pを内部吸引チャネル612の内部にフィードする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2008−157631号公報
【特許文献2】特許第4037710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、非加圧乾燥粉体分散装置602では、吸引プローブ610の外部壁611の外周面とサンプルホルダ620の長手方向壁621の内周面との間の距離を、全円周において一定となるように、吸引プローブ610をサンプルホルダ620の内部で位置決めして配置する必要があり、非常に手間がかかっていた。仮に吸引プローブ610の外部壁611の外周面とサンプルホルダ620の長手方向壁621の内周面との間の距離が、全円周において一定になっていないと、例えば、吸引プローブ610の外部壁611の外周面とサンプルホルダ620の長手方向壁621の内周面との間の距離が長い箇所と短い箇所とができ、その結果、乾燥粉体Pを分散させるための気流が安定しなかった。
そこで、本発明は、乾燥粉体を分散させながら測定空間に供給するために、安定した気流を発生することができる乾燥粉体分散供給装置及びそれを用いた粒度分布測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するためになされた本発明の乾燥粉体分散供給装置は、プローブ本体と、当該プローブ本体の上面から下面まで貫通するように配置される吸引管の一端部とを有する吸引プローブと、側壁と底面とを有し、内部に被測定粒子群が収納される試料容器とを備え、前記吸引管の他端部が粒度分布測定装置の測定空間に連結される乾燥粉体分散供給装置であって、前記プローブ本体の上部から下部まで貫通するように形成された貫通孔と、シール部材とを備え、前記被測定粒子群を測定空間に供給する際には、前記シール部材は、前記プローブ本体と試料容器の側壁の内周面との間を気体が通過しないように、前記試料容器の側壁と吸引プローブとの間に配置されるようにしている。
【0021】
本発明の乾燥粉体分散供給装置によれば、吸引プローブが、試料容器の内部で被測定粒子群の表面より少し上に配置される。このとき、シール部材が、試料容器の側壁と吸引プローブとの間に配置される。つまり、プローブ本体と試料容器の側壁の内周面との間を空気は通過することがない。
よって、吸引管に対し真空が加えられたときには、空気は予め決められた大きさを有する貫通孔に入り、試料容器の貫通孔に沿って高速下向き空気流を形成し、下向き空気流が吸引管の一端部において方向を変え、被測定粒子群の表面より上で高せん断力を生成し、高せん断力が被測定粒子群を分散させ、分散された被測定粒子群を吸引管内にフィードすることになる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の乾燥粉体分散供給装置によれば、乾燥粉体を分散させながら測定空間に供給するために、空気は予め決められた大きさを有する貫通孔に入るので、安定した気流を発生させることができる。
【0023】
(その他の課題を解決するための手段および効果)
また、本発明の乾燥粉体分散供給装置は、前記シール部材は、前記吸引プローブ又は試料容器に一体化されているようにしてもよい。
また、本発明の乾燥粉体分散供給装置は、前記試料容器は、前記プローブ本体に対して上下方向に移動可能であるか、或いは、前記プローブ本体は、前記試料容器に対して上下方向に移動可能であるようにしてもよい。
このような乾燥粉体分散供給装置によれば、試料容器内における乾燥粉体の残量が少なくなっても、試料容器を徐々に上方向に移動させたり、プローブ本体を徐々に下方向に移動させたりすることで、乾燥粉体を分散させながら測定空間に供給することができる。
【0024】
また、本発明の乾燥粉体分散供給装置は、前記プローブ本体は、円柱体であり、前記試料容器の側壁は、円筒形状であり、前記試料容器は、前記プローブ本体に対して回転可能であるか、或いは、前記プローブ本体は、前記試料容器に対して回転可能であるようにしてもよい。
このような乾燥粉体分散供給装置によれば、試料容器に対する貫通孔の位置を変化させることで、乾燥粉体をより均一に分散させながら測定空間に供給することができる。
また、本発明の乾燥粉体分散供給装置は、前記シール部材は、前記プローブ本体の外周面に形成され、前記被測定粒子群を測定空間に供給する際には、前記シール部材は、前記試料容器の側壁の内周面と当接するように配置され、かつ、前記貫通孔の上部と下部との間に配置されるようにしてもよい。
また、本発明の乾燥粉体分散供給装置は、前記吸引プローブは、カバー部材を有し、前記シール部材は、前記カバー部材の内周面に形成され、前記被測定粒子群を測定空間に供給する際には、前記シール部材は、前記試料容器の側壁の外周面と当接するように配置されるようにしてもよい。
このような乾燥粉体分散供給装置によれば、試料容器の側壁の外周面にシール部材を配置するので、被測定粒子群の付着によるシール部材の摩滅を防ぎ、その結果、シール部材の寿命を長くできる。
【0025】
また、本発明の乾燥粉体分散供給装置は、前記シール部材は、前記吸引プローブ又は試料容器と別体であるようにしてもよい。
また、本発明の乾燥粉体分散供給装置は、前記シール部材は、前記試料容器の側壁の上面と吸引プローブの側面とに当接するように配置され、前記試料容器の側壁の上面と吸引プローブの側面とに当接しながら、前記吸引プローブに対して上下方向に移動可能であるようにしてもよい。
このような乾燥粉体分散供給装置によれば、試料容器の側壁の上面でシールするので、試料容器の側壁の上面のどこかに接触していればよく、試料容器の側壁の内周面や外周面でシールするものと比較して、吸引プローブと試料容器とにおける水平方向に位置誤差があっても、シールを機能させることができる。すなわち、部品の寸法誤差や取り付け誤差を大きくとることができるので、製造コストや組み立てコストを削減することができる。
【0026】
また、本発明の乾燥粉体分散供給装置は、前記試料容器は、前記プローブ本体に対して上下方向に移動可能であるか、或いは、前記プローブ本体は、前記試料容器に対して上下方向に移動可能であるようにしてもよい。
このような乾燥粉体分散供給装置によれば、試料容器内における乾燥粉体の残量が少なくなっても、試料容器を徐々に上方向に移動させたり、プローブ本体を徐々に下方向に移動させたりすることで、乾燥粉体を分散させながら測定空間に供給することができる。また、上下動速度を変えることで、単位時間当たりの粒子供給量を変化させることができる。
【0027】
また、本発明の乾燥粉体分散供給装置は、前記プローブ本体は、円柱体であり、前記試料容器の側壁は、円筒形状であり、前記試料容器は、前記プローブ本体に対して回転可能であるか、或いは、前記プローブ本体は、前記試料容器に対して回転可能であるようにしてもよい。
このような乾燥粉体分散供給装置によれば、試料容器に対する貫通孔の位置を変化させることで、乾燥粉体をより均一に分散させながら測定空間に供給することができる。
【0028】
また、本発明の乾燥粉体分散供給装置は、前記プローブ本体の下面は、当該下面の周縁部から下面の中央部に向かって徐々に突出するテーパ形状となっているようにしてもよい。
このような乾燥粉体分散供給装置によれば、試料容器の隅に存在する乾燥粉体も測定空間に供給することができる。
【0029】
また、本発明の乾燥粉体分散供給装置は、前記シール部材は、ゴム製の円環形状の板状体を有するようにしてもよい。
このような乾燥粉体分散供給装置によれば、シール部材の変形量を多くとることができるので、吸引プローブと試料容器とにおける水平方向に位置誤差があっても、シールを機能させることができる。
【0030】
そして、本発明の粒度分布測定装置は、上述したような乾燥粉体分散供給装置と、測定光を出射する光源と、光強度分布を検出する検出器と、空気と被測定粒子群とを含む前記乾燥粉体分散供給装置から供給される被測定物を通過させる測定空間を光源と検出器との間に配置する測定空間配置部と、前記光源からの測定光を被測定物に照射することにより発生する光強度分布を検出器で検出して取得する光強度分布取得部と、前記光強度分布取得部で取得された光強度分布を用いて、前記被測定物に含まれる被測定粒子群の粒度分布を算出する粒度分布算出部とを備えるようにしている。
【0031】
ここで、「測定光」としては、レーザ光が好ましいが、これに限らず、LEDによる光、分光器で分光された光、干渉フィルタやバンドパスフィルタ等で波長範囲が制限された光を用いてもよい。
また、「光強度」とは、光検出素子で検出される数値そのものではなくてもよく、被測定物を測定する前に既に検出されている初期余剰光の光強度が存在する場合もあるので、光検出素子で検出される数値と初期余剰光の数値との差分であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第一実施形態である粒度分布測定装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。
【図2】図1に示す乾燥粉体分散供給装置の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の第二実施形態である粒度分布測定装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。
【図4】図3に示す乾燥粉体分散供給装置の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の第三実施形態である粒度分布測定装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。
【図6】乾燥粉体分散供給装置の他の一例を示す断面図である。
【図7】乾燥粉体分散供給装置のさらに他の一例を示す断面図である。
【図8】従来の粒度分布測定装置の概略構成の一例を示す図である。
【図9】非加圧乾燥粉体分散装置の一例を示す断面図である。
【図10】本発明の第四実施形態である粒度分布測定装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。
【図11】本発明の第五実施形態である粒度分布測定装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。
【図12】図11に示す乾燥粉体分散供給装置の一例を示す断面図である。
【図13】図12に示す乾燥粉体分散供給装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれる。
【0034】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態である粒度分布測定装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。図2(a)は、図1に示す乾燥粉体分散供給装置の一例を示す垂直方向の断面図であり、図2(b)は、図1に示す乾燥粉体分散供給装置の一例を示す水平方向の断面図(図2(a)に示すA−A線断面図)である。なお、粒度分布測定装置501と同様のものについては、同じ符号を付している。
【0035】
粒度分布測定装置1は、測定空間を配置する測定空間配置部83と、測定空間に対してレーザ光を照射する照射光学系82と、光強度分布を検出する検出光学系84と、測定空間にエアロゾル(被測定物)Sを供給する乾燥粉体分散供給装置2と、データサンプリング回路85と、通信制御回路86と、粒度分布測定装置1全体を制御するコンピュータ(制御部)17とを備える。
本実施形態は、乾燥粉体(被測定粒子群)Pを空気(媒体)L中に分散させたエアロゾルSを測定することにより、乾燥粉体Pの粒度分布を算出するものである。
【0036】
乾燥粉体分散供給装置2は、吸引プローブ10と試料容器20と移送機構24とを備える。
吸引プローブ10は、略円柱状の金属製のプローブ本体11と、プローブ本体11の上面の中央部から下面の中央部まで貫通するように配置される円管状の吸引管12と、プローブ本体11の上面の周縁部から下面の周縁部まで貫通するように形成された4個の円管状の気流発生口(貫通孔)13と、円環状のOリング(シール部材)14とを有する。
【0037】
吸引管12は、プローブ本体11の上面を通って上方に延びている。また、プローブ本体11の下部の外周面には、凹部が形成されており、Oリング14がはめ込まれている。すなわち、プローブ本体11にOリング14が一体的に形成されている。
4個の気流発生口13は、プローブ本体11の先端部を軸方向から視ると、図2(b)に示す通り、プローブ本体11の周縁部に等間隔をあけて円形状に並ぶように配置されている。なお、複数個の気流発生口13の水平方向における断面の面積の合計値は、吸引管12の水平方向における断面の面積と同じであることが好ましい。よって、4個の気流発生口13の水平方向における断面の面積は、吸引管12の水平方向における断面の面積の1/4であることが好ましい。また、気流発生口13の個数は、何個でもよく、1個以上であることが好ましい。
【0038】
試料容器20は、円筒状のガラス製又は金属製の側壁21と、側壁21の下部に形成された円板状のガラス製又は金属製の底面22とを有する。そして、試料容器20の内部には、乾燥粉体Pが収容されるようになっている。このとき、乾燥粉体Pは、底面22から高さ5cm程度で収容される。
そして、プローブ本体11の水平方向における断面は円形状であり、試料容器20の側壁21の水平方向における断面は円環形状であり、プローブ本体11の水平方向における断面の直径Lは、試料容器20の側壁21の水平方向における断面の内径Lよりも小さくなっている。また、Oリング14の水平方向における断面は円環形状であり、試料容器20の側壁21の内周面とプローブ本体11の外周面との間に配置されている。これにより、空気が試料容器20の側壁21の内周面とプローブ本体11の外周面との間を通過することがなくなる。
【0039】
コンピュータ17は、CPU40とメモリ60とを備え、モニタ画面を有する表示装置52と、キーボード51aやマウス51bを有する入力装置51とが連結されている。
CPU40が処理する機能をブロック化して説明すると、光強度分布データを取得する光強度分布取得部41と、被測定粒子群Pの粒度分布を算出する粒度分布算出部43と、乾燥粉体分散供給装置2を制御するサンプル供給制御部42とを有する。
【0040】
サンプル供給制御部42は、測定者によって、エアロゾルSを測定するように入力装置51で入力されると、乾燥粉体分散供給装置2から測定空間にエアロゾルSを供給する制御を行う。
具体的には、乾燥粉体Pを測定空間に供給するために、吸引プローブ10が、試料容器20の内部で乾燥粉体Pの表面より少し上に配置される。そして、吸引管12に対し真空が加えられたとき、空気が予め決まった直径を有する4個の気流発生口13に入り、試料容器20の気流発生口13に沿って高速下向き空気流を形成し、下向き空気流が吸引プローブ10の下端部において方向を変え、乾燥粉体Pの表面より上で高せん断力を生成し、高せん断力が乾燥粉体Pを分散させ、分散された乾燥粉体Pを吸引管12の内部にフィードする。
【0041】
以上のように、粒度分布測定装置1によれば、乾燥粉体Pを分散させながら測定空間に供給するために、空気は予め決められた直径を有する4個の気流発生口13に入るので、安定した気流を発生させることができる。
【0042】
<第二実施形態>
図3は、本発明の第二実施形態である粒度分布測定装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。図4(a)は、図3に示す乾燥粉体分散供給装置の一例を示す垂直方向の断面図であり、図4(b)は、図3に示す乾燥粉体分散供給装置の一例を示す水平方向の断面図(図4(a)に示すB−B線断面図)である。なお、粒度分布測定装置1と同様のものについては、同じ符号を付している。
【0043】
粒度分布測定装置101は、測定空間を配置する測定空間配置部83と、測定空間に対してレーザ光を照射する照射光学系82と、光強度分布を検出する検出光学系84と、測定空間にエアロゾル(被測定物)Sを供給する乾燥粉体分散供給装置102と、データサンプリング回路85と、通信制御回路86と、粒度分布測定装置101全体を制御するコンピュータ(制御部)17とを備える。
【0044】
乾燥粉体分散供給装置102は、吸引プローブ110と試料容器120と円環状のOリング(シール部材)114と移送機構24とを備える。
吸引プローブ110は、略円柱状の金属製のプローブ本体111と、プローブ本体111の上面の中央部から下面の中央部まで貫通するように配置される円管状の吸引管112と、プローブ本体111の上面の周縁部から下面の周縁部まで貫通するように形成された4個の円管状の気流発生口(貫通孔)113とを有する。
【0045】
試料容器120は、円筒状のガラス製又は金属製の側壁121と、側壁121の下部に形成された円板状のガラス製又は金属製の底面122とを有する。また、側壁121の上部の内周面には、凹部が形成されており、Oリング114がはめ込まれている。なお、Oリング114は凹部に取り付けたり凹部から取り外したりすることが可能となっている。そして、試料容器120の内部には、乾燥粉体Pが収容されるようになっている。このとき、乾燥粉体Pは、底面122から高さ5cm程度で収容される。
そして、プローブ本体111の水平方向における断面は円形状であり、試料容器120の側壁121の水平方向における断面は円環形状であり、プローブ本体111の水平方向における断面の直径Lは、試料容器120の側壁121の水平方向における断面の内径Lよりも小さくなっている。また、Oリング114の水平方向における断面は円環形状であり、試料容器120の側壁121の内周面とプローブ本体111の外周面との間に配置されるようになっている。これにより、空気が試料容器120の側壁121の内周面とプローブ本体111の外周面との間を通過することがなくなる。
【0046】
以上のように、粒度分布測定装置101によれば、乾燥粉体Pを分散させながら測定空間に供給するために、空気は予め決められた直径を有する4個の気流発生口113に入るので、安定した気流を発生させることができる。
【0047】
<第三実施形態>
図5は、本発明の第三実施形態である粒度分布測定装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。なお、粒度分布測定装置101と同様のものについては、同じ符号を付している。
粒度分布測定装置201は、測定空間を配置する測定空間配置部83と、測定空間に対してレーザ光を照射する照射光学系82と、光強度分布を検出する検出光学系84と、測定空間にエアロゾル(被測定物)Sを供給する乾燥粉体分散供給装置202と、データサンプリング回路85と、通信制御回路86と、粒度分布測定装置201全体を制御するコンピュータ(制御部)217とを備える。
【0048】
乾燥粉体分散供給装置202は、吸引プローブ110と試料容器120と円環状のOリング(シール部材)114と移送機構24と試料容器保持機構270とを備える。
試料容器保持機構270は、リフトテーブル271と、リフトテーブル271により回転可能に支持されたサンプルホルダベース272と、リフトテーブル271を上下方向に移動させたりサンプルホルダベース272を回転させたりするための駆動手段(図示せず)とを備える。
【0049】
サンプルホルダベース272は、上面に試料容器120が載置されるようになっているとともに、後述するサンプル供給制御部242によって、リフトテーブル271に対して軸271aを回転軸として回転させられるようになっており、その結果、試料容器120は、吸引プローブ110に対して回転させられることになる。
リフトテーブル271は、後述するサンプル供給制御部242によって、吸引プローブ110に対して上下方向に移動させられるようになっており、その結果、試料容器120は、吸引プローブ110に対して上下方向に移動させられることになる。
なお、試料容器120が移動しやすいように、Oリング114は回転用Oリングであることが好ましい。
【0050】
コンピュータ217は、CPU240とメモリ60とを備え、モニタ画面を有する表示装置52と、キーボード51aやマウス51bを有する入力装置51とが連結されている。
CPU240が処理する機能をブロック化して説明すると、光強度分布データを取得する光強度分布取得部41と、被測定粒子群Pの粒度分布を算出する粒度分布算出部43と、乾燥粉体分散供給装置202を制御するサンプル供給制御部242とを有する。
【0051】
サンプル供給制御部242は、測定者によって、エアロゾルSを測定するように入力装置51で入力されると、乾燥粉体分散供給装置202から測定空間にエアロゾルSを供給する制御を行う。
具体的には、乾燥粉体Pを測定空間に供給するために、吸引プローブ110が、試料容器120の内部で乾燥粉体Pの表面より少し上に配置される。そして、吸引管112に対し真空が加えられたとき、空気が予め決まった直径を有する4個の気流発生口113に入り、試料容器120の気流発生口113に沿って高速下向き空気流を形成し、下向き空気流が吸引プローブ110の下端部において方向を変え、乾燥粉体Pの表面より上で高せん断力を生成し、高せん断力が乾燥粉体Pを分散させ、分散された乾燥粉体Pを吸引管112の内部にフィードする(図4(a)参照)。
さらに、サンプル供給制御部242は、エアロゾルSを測定するように入力装置51で入力されるとともに、入力装置51で「上昇速度」と「回転速度」とが入力されると、リフトテーブル271を吸引プローブ110に対して上方向に「上昇速度」で移動させるとともに、サンプルホルダベース272をリフトテーブル271に対して軸271aを回転軸として「回転速度」で回転させる。なお、「上昇速度」と「回転速度」は、測定者によって任意の数値に設定されるようになっている。
【0052】
以上のように、粒度分布測定装置201によれば、乾燥粉体Pを分散させながら測定空間に供給するために、空気は予め決められた直径を有する4個の気流発生口113に入るので、安定した気流を発生させることができる。さらに、試料容器120に対する気流発生口113の位置を変化させることで、乾燥粉体Pをより均一に分散させながら測定空間に供給することができる。
【0053】
<第四実施形態>
図10は、本発明の第四実施形態である粒度分布測定装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。なお、粒度分布測定装置1と同様のものについては、同じ符号を付している。
粒度分布測定装置801は、測定空間を配置する測定空間配置部83と、測定空間に対してレーザ光を照射する照射光学系82と、光強度分布を検出する検出光学系84と、測定空間にエアロゾル(被測定物)Sを供給する乾燥粉体分散供給装置802と、データサンプリング回路85と、通信制御回路86と、粒度分布測定装置801全体を制御するコンピュータ(制御部)17とを備える。
【0054】
乾燥粉体分散供給装置802は、吸引プローブ810と試料容器20と移送機構24とを備える。
吸引プローブ810は、略円柱状の金属製のプローブ本体811と、円環形状のゴム製のシール部材814とを備え、プローブ本体811はプローブ本体上部811aと、プローブ本体上部811aの直径L18よりも大きくなる直径L19を有するプローブ本体下部811bとで構成される。
【0055】
吸引管812は、プローブ本体上部811aの上面の中央部からプローブ本体下部811bの下面の中央部まで貫通するように配置される円管状であり、プローブ本体上部811aの上面を通って上方に延びている。
気流発生口(貫通孔)813は、プローブ本体下部811bの上面から下面まで貫通するように形成された4個の円管状であり、プローブ本体811の先端部を軸方向から視ると、プローブ本体811の周縁部に等間隔をあけて円形状に並ぶように配置されている。このとき、プローブ本体下部811bの高さは、例えば5mm〜20mmと低くなっており、気流発生口813がプローブ本体下部811bを貫通するように気流発生口813を容易に形成できるようになっている。
【0056】
また、プローブ本体下部811bの下面は、下面の周縁部から下面の中央部(吸引管812)に向かって徐々に突出するテーパ形状となっている。このようなプローブ本体下部811bの下面によれば、試料容器20の隅に存在する乾燥粉体Pも吸引管812に供給することができるようになっている。
【0057】
そして、プローブ本体下部811bの外周面には、凹部が形成されており、シール部材814がはめ込まれている。すなわち、プローブ本体811にシール部材814が一体的に形成されている。なお、シール部材814は、例えば厚さ0.3mm〜2mmの板状体であり、例えば、ゴム製の板状体をドーナツ状(円環形状)に打ち抜いたものとなっている。
そして、プローブ本体下部811bの水平方向における断面は円形状であり、試料容器20の側壁21の水平方向における断面は円環形状であり、プローブ本体下部811bの水平方向における断面の直径L19は、試料容器20の側壁21の水平方向における断面の内径Lよりも小さくなっている。また、シール部材814の水平方向における断面は円環形状であり、試料容器20の側壁21の内周面とプローブ本体下部811bの外周面との間に配置されている。これにより、空気が試料容器20の側壁21の内周面とプローブ本体下部811bの外周面との間を通過することがなくなる。このとき、シール部材814を用いることにより、シール部材814の変形量を多くとることができるので、プローブ本体下部811bと試料容器20の側壁21とにおける水平方向に位置誤差があっても、シールを機能させることができるようになっている。
【0058】
以上のように、粒度分布測定装置801によれば、乾燥粉体Pを分散させながら測定空間に供給するために、空気は予め決められた直径を有する4個の気流発生口813に入るので、安定した気流を発生させることができる。また、プローブ本体下部811bの下面はテーパ形状となっているので、試料容器20の隅に存在する乾燥粉体Pも測定空間に供給することができる。さらに、シール部材814の変形量を多くとることができるので、プローブ本体下部811bと試料容器20の側壁21とにおける水平方向に位置誤差があっても、シールを機能させることができる。
【0059】
<第五実施形態>
図11は、本発明の第五実施形態である粒度分布測定装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。図12(a)及び(b)は、図11に示す乾燥粉体分散供給装置の一例を示す垂直方向の断面図であり、図13(a)は、図12に示す乾燥粉体分散供給装置の一例を示す水平方向の断面図(図12(a)に示すE−E線断面図)であり、図13(b)は、図12に示す乾燥粉体分散供給装置の一例を示す水平方向の断面図(図12(a)に示すF−F線断面図)である。なお、粒度分布測定装置201と同様のものについては、同じ符号を付している。
【0060】
粒度分布測定装置701は、測定空間を配置する測定空間配置部83と、測定空間に対してレーザ光を照射する照射光学系82と、光強度分布を検出する検出光学系84と、測定空間にエアロゾル(被測定物)Sを供給する乾燥粉体分散供給装置702と、データサンプリング回路85と、通信制御回路86と、粒度分布測定装置701全体を制御するコンピュータ(制御部)217とを備える。
【0061】
乾燥粉体分散供給装置702は、吸引プローブ710と試料容器720と円環状のシール部材714とスプリング716と移送機構24と試料容器保持機構270とを備える。
吸引プローブ710は、略円柱状の金属製のプローブ本体711と、プローブ本体711の上面の中央部から下面の中央部まで貫通するように配置される円管状の吸引管712と、プローブ本体711の上面の周縁部から下面の周縁部まで貫通するように形成された4個の円管状の気流発生口(貫通孔)713とを有する。
【0062】
試料容器720は、円筒状のガラス製又は金属製の側壁721と、側壁721の下部に形成された円板状のガラス製又は金属製の底面722とを有する。なお、第五実施形態では、説明は後述するが、側壁721の水平方向における断面の内径L12と外径L17との差は大きい方が好ましい。そして、試料容器720の内部には、乾燥粉体Pが収容されるようになっている。このとき、乾燥粉体Pは、底面722から高さ5cm程度で収容される。
そして、プローブ本体711の水平方向における断面は円形状であり、試料容器720の側壁721の水平方向における断面は円環形状であり、プローブ本体711の水平方向における断面の最大直径L11は、試料容器720の側壁721の水平方向における断面の内径L12よりも小さくなっている。
【0063】
シール部材714は、円環状であり、シール部材714の水平方向における断面の外径L13は、試料容器720の側壁721の水平方向における断面の内径L12よりも大きくなっている。また、シール部材714の水平方向における断面の内径L15は、プローブ本体711の水平方向における断面の外径L16よりも大きくなっている。
【0064】
そして、シール部材714の内周面には、凹部が形成されており、円環状のOリング714aがはめ込まれている。また、シール部材714の下面には、凹部が形成されており、円環状のOリング714bがはめ込まれている。すなわち、シール部材714に2個のOリング714a、714bが一体的に形成されている。
これにより、Oリング714aの水平方向における断面は円環形状であり、プローブ本体711の外周面とシール部材714の内周面との間に配置されるようになっている。また、Oリング714bの水平方向における断面は円環形状であり、試料容器720の側壁721の上面とシール部材714の下面との間に配置されるようになっている。よって、空気が試料容器720の側壁721の内周面とプローブ本体711の外周面との間を通過することがなくなる。このとき、Oリング714bは、試料容器720の側壁721の上面のどこかに接触していればよく、試料容器720の側壁721の内周面や外周面でシールするものと比較して、プローブ本体711と試料容器720とにおける水平方向に位置誤差が多少あっても、シールを機能させることができる。すなわち、部品の寸法誤差や取り付け誤差を大きくとることができるので、製造コストや組み立てコストを削減することができる。
【0065】
また、スプリング716は、プローブ本体711の上部の外周面と、シール部材714の上面との間を連結するように設けられている。これにより、シール部材714はプローブ本体711の外周面と当接しながらプローブ本体711に対して上下方向に移動可能となっている。なお、シール部材714が移動しやすいように、Oリング714aは回転用Oリングであることが好ましい。
また、プローブ本体711の下部の最大直径L11は、シール部材714の内径L15より大きくなっており、シール部材714を上方に押す力が働かなければ、図11(b)に示すように、シール部材714はプローブ本体711の下部の上面に押し付けられるようになっている。そして、シール部材714を上方に押す力が働いたときには、図11(a)に示すように、シール部材714はプローブ本体711の下部から離れてプローブ本体711に対して上方向に移動するようになっている。
【0066】
サンプル供給制御部242は、測定者によって、エアロゾルSを測定するように入力装置51で入力されると、乾燥粉体分散供給装置702から測定空間にエアロゾルSを供給する制御を行う。
具体的には、乾燥粉体Pを測定空間に供給するために、吸引プローブ710が、試料容器720の少し上に配置される。このとき、シール部材714は、試料容器720の側壁721の上面とプローブ本体711の外周面とに当接するように配置される。また、プローブ本体711と試料容器720とにおける水平方向に位置誤差が多少あっても、側壁721の水平方向における断面の内径L12と外径L17との差を充分にとっていれば、シールすることができる。よって、空気が試料容器720の側壁721の内周面とプローブ本体711の外周面との間を通過することがなくなる。
そして、吸引管712に対し真空が加えられたとき、空気が予め決まった直径を有する4個の気流発生口713に入り、気流発生口713に沿って高速下向き空気流を形成し、下向き空気流が吸引プローブ710の下方において方向を変え、乾燥粉体Pの表面より上で高せん断力を生成し、高せん断力が乾燥粉体Pを分散させ、さらに乾燥粉体P間や乾燥粉体Pと側壁721との間の衝突で分散され、分散された乾燥粉体Pを吸引管712の内部にフィードする。
【0067】
さらに、サンプル供給制御部242は、エアロゾルSを測定するように入力装置51で入力されるとともに、入力装置51で「上昇速度」と「回転速度」とが入力されると、リフトテーブル271を吸引プローブ710に対して上方向に「上昇速度」で移動させるとともに、サンプルホルダベース272をリフトテーブル271に対して軸271aを回転軸として「回転速度」で回転させる。
このようにしてリフトテーブル271を吸引プローブ710に対して上方向に「上昇速度」で移動させると、吸引プローブ710が、スプリング716を圧縮しながら試料容器720の内部に挿入される。このとき、図11(a)に示すように、シール部材714はプローブ本体711の下部から離れてプローブ本体711に対して上方向に移動する。シール部材714は、試料容器720の側壁721の上面とプローブ本体711の外周面とに当接しているので、空気が試料容器720の側壁721の内周面とプローブ本体711の外周面との間を通過することはない。
そして、吸引管712に対し真空が加えられていれば、空気が予め決まった直径を有する4個の気流発生口713に入り、気流発生口713に沿って高速下向き空気流を形成し、下向き空気流が吸引プローブ710の下方において方向を変え、少なくなった乾燥粉体Pの表面より少し上で高せん断力を生成し、高せん断力が乾燥粉体Pを分散させ、さらに乾燥粉体P間や乾燥粉体Pと側壁721との間の衝突で分散され、分散された乾燥粉体Pを吸引管712の内部にフィードすることになる。
【0068】
以上のように、粒度分布測定装置701によれば、乾燥粉体Pを分散させながら測定空間に供給するために、空気は予め決められた直径を有する4個の気流発生口713に入るので、安定した気流を発生させることができる。さらに、試料容器720に対する気流発生口713の位置を変化させることで、乾燥粉体Pをより均一に分散させながら測定空間に供給することができる。
また、試料容器720の側壁721の上面でシールするので、試料容器720の側壁721の上面のどこかに接触していればよく、試料容器720の側壁721の内周面や外周面でシールするものと比較して、吸引プローブ710と試料容器720とにおける水平方向に位置誤差があっても、シールを機能させることができる。すなわち、部品の寸法誤差や取り付け誤差を大きくとることができるので、製造コストや組み立てコストを削減することができる。
【0069】
<他の実施形態>
(1)上述した乾燥粉体分散供給装置2において、Oリング14が、試料容器20の側壁21の内周面とプローブ本体11の外周面との間に配置されるような構成を示したが、試料容器20の側壁21の外周面と吸引プローブ310との間に配置されるような構成としてもよい。
図6(a)は、乾燥粉体分散供給装置の他の一例を示す垂直方向の断面図であり、図6(b)は、乾燥粉体分散供給装置の他の一例を示す水平方向の断面図(図6(a)に示すC−C線断面図)である。
吸引プローブ310は、略円柱状のプローブ本体311と、プローブ本体311の上面の中央部から下面の中央部まで貫通するように配置される円管状の吸引管312と、プローブ本体311の上面の周縁部から下面の周縁部まで貫通するように形成された4個の円管状の気流発生口(貫通孔)313と、プローブ本体311の外周に形成されプローブ本体311の上面に取り付けられた略円筒形状のカバー部材315と、円環状のOリング(シール部材)314とを有する。また、カバー部材315の下部の内周面には、凹部が形成されており、Oリング314がはめ込まれている。すなわち、吸引プローブ310にOリング314が一体的に形成されている。
【0070】
そして、プローブ本体311の水平方向における断面は円形状であり、試料容器20の側壁21の水平方向における断面は円環形状であり、プローブ本体311の水平方向における断面の直径Lは、試料容器20の側壁21の水平方向における断面の内径Lよりも小さくなっている。また、カバー部材315の水平方向における断面は円環形状であり、カバー部材315の水平方向における断面の内径Lは、試料容器20の側壁21の水平方向における断面の外径Lよりも大きくなっている。さらに、Oリング314の水平方向における断面は円環形状であり、試料容器20の側壁21の外周面とカバー部材315の内周面との間に配置されている。
このような乾燥粉体分散供給装置によれば、試料容器20の外側にOリング314が配置されるので、乾燥粉体Pの付着によるOリング314の摩滅を防ぎ、その結果、Oリング314の寿命を長くできる。
【0071】
(2)上述した乾燥粉体分散供給装置102において、プローブ本体111には、上下方向に一直線に貫通する円管状の気流発生口113が形成されているような構成を示したが、気流発生口は、一直線となっていなくてもよく、例えば、下部の方では、外側に向かって斜めになっているような構成としてもよい。
図7は、乾燥粉体分散供給装置のさらに他の一例を示す垂直方向の断面図である。
吸引プローブ410は、略円柱状の金属製のプローブ本体411と、プローブ本体411の上面の中央部から下面の中央部まで貫通するように配置される円管状の吸引管412と、プローブ本体411の上面の周縁部から下部(側面下部)まで貫通するように形成された4個の円管状の気流発生口(貫通孔)413とを有する。
【0072】
4個の気流発生口413は、上部から中部までは上下方向に一直線に貫通し、下部の方では、外側に向かって斜めになっている。
このような乾燥粉体分散供給装置によれば、試料容器120内の側壁121に付着した乾燥粉体Pも巻き上げやすくなるという効果がある。
【0073】
(3)上述した乾燥粉体分散供給装置2において、プローブ本体は、試料容器に対して上下方向に移動可能とするプローブ本体駆動機構を備えるような構成としてもよい。
このような乾燥粉体分散供給装置によれば、試料容器内における乾燥粉体Pの残量が少なくなっても、プローブ本体を徐々に下方向に移動させることで、乾燥粉体Pを分散させながら測定空間に供給することができる。
【0074】
(4)上述した乾燥粉体分散供給装置2において、プローブ本体は、試料容器に対して、上下方向を軸として回転可能とするプローブ本体駆動機構を備えるような構成としてもよい。
このような乾燥粉体分散供給装置によれば、試料容器に対する気流発生口の位置を変化させることで、乾燥粉体Pをより均一に分散させながら測定空間に供給することができる。
【0075】
(5)上述した乾燥粉体分散供給装置2において、プローブ本体の上面には、プローブ本体に対して、上下方向を軸として回転可能となる蓋を備えるような構成としてもよい。このような蓋の一部分には、上下方向に貫通する開口部が形成されている。
このような乾燥粉体分散供給装置によれば、4個の気流発生口を順番に空気を入れることで、乾燥粉体Pをより均一に分散させながら測定空間に供給することができる。
【0076】
(6)上述した乾燥粉体分散供給装置702において、移送機構24を用いるような構成を示したが、気流発生口(貫通孔)413を加圧するような構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、光学的手法を用いて被測定物に含まれる被測定粒子群の粒度分布を測定する粒度分布測定装置等に使用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 粒度分布測定装置
2 乾燥粉体分散供給装置
10 吸引プローブ
11 プローブ本体
12 吸引管
13 気流発生口(貫通孔)
14 シール部材
20 試料容器
21 側壁
22 底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ本体と、当該プローブ本体の上面から下面まで貫通するように配置される吸引管の一端部とを有する吸引プローブと、
側壁と底面とを有し、内部に被測定粒子群が収納される試料容器とを備え、
前記吸引管の他端部が粒度分布測定装置の測定空間に連結される乾燥粉体分散供給装置であって、
前記プローブ本体の上部から下部まで貫通するように形成された貫通孔と、
シール部材とを備え、
前記被測定粒子群を測定空間に供給する際には、前記シール部材は、前記プローブ本体と試料容器の側壁の内周面との間を気体が通過しないように、前記試料容器の側壁と吸引プローブとの間に配置されることを特徴とする乾燥粉体分散供給装置。
【請求項2】
前記シール部材は、前記吸引プローブ又は試料容器に一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の乾燥粉体分散供給装置。
【請求項3】
前記試料容器は、前記プローブ本体に対して上下方向に移動可能であるか、或いは、前記プローブ本体は、前記試料容器に対して上下方向に移動可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乾燥粉体分散供給装置。
【請求項4】
前記プローブ本体は、円柱体であり、
前記試料容器の側壁は、円筒形状であり、
前記試料容器は、前記プローブ本体に対して回転可能であるか、或いは、前記プローブ本体は、前記試料容器に対して回転可能であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の乾燥粉体分散供給装置。
【請求項5】
前記シール部材は、前記プローブ本体の外周面に形成され、
前記被測定粒子群を測定空間に供給する際には、前記シール部材は、前記試料容器の側壁の内周面と当接するように配置され、かつ、前記貫通孔の上部と下部との間に配置されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の乾燥粉体分散供給装置。
【請求項6】
前記吸引プローブは、カバー部材を有し、
前記シール部材は、前記カバー部材の内周面に形成され、
前記被測定粒子群を測定空間に供給する際には、前記シール部材は、前記試料容器の側壁の外周面と当接するように配置されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の乾燥粉体分散供給装置。
【請求項7】
前記シール部材は、前記吸引プローブ又は試料容器と別体であることを特徴とする請求項1に記載の乾燥粉体分散供給装置。
【請求項8】
前記シール部材は、前記試料容器の側壁の上面と吸引プローブの側面とに当接するように配置され、前記試料容器の側壁の上面と吸引プローブの側面とに当接しながら、前記吸引プローブに対して上下方向に移動可能であることを特徴とする請求項7に記載の乾燥粉体分散供給装置。
【請求項9】
前記試料容器は、前記プローブ本体に対して上下方向に移動可能であるか、或いは、前記プローブ本体は、前記試料容器に対して上下方向に移動可能であることを特徴とする請求項8に記載の乾燥粉体分散供給装置。
【請求項10】
前記プローブ本体は、円柱体であり、
前記試料容器の側壁は、円筒形状であり、
前記試料容器は、前記プローブ本体に対して回転可能であるか、或いは、前記プローブ本体は、前記試料容器に対して回転可能であることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれかに記載の乾燥粉体分散供給装置。
【請求項11】
前記プローブ本体の下面は、当該下面の周縁部から下面の中央部に向かって徐々に突出するテーパ形状となっていることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の乾燥粉体分散供給装置。
【請求項12】
前記シール部材は、ゴム製の円環形状の板状体を有することを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれかに記載の乾燥粉体分散供給装置。
【請求項13】
請求項1〜請求項12のいずれかに記載の乾燥粉体分散供給装置と、
測定光を出射する光源と、
光強度分布を検出する検出器と、
空気と被測定粒子群とを含む前記乾燥粉体分散供給装置から供給される被測定物を通過させる測定空間を光源と検出器との間に配置する測定空間配置部と、
前記光源からの測定光を被測定物に照射することにより発生する光強度分布を検出器で検出して取得する光強度分布取得部と、
前記光強度分布取得部で取得された光強度分布を用いて、前記被測定物に含まれる被測定粒子群の粒度分布を算出する粒度分布算出部とを備えることを特徴とする粒度分布測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−118042(P2012−118042A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105542(P2011−105542)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】