説明

乾燥装置

【課題】 粉体に含まれる液体を効率よく取り除くことのできる小型の粉体の乾燥装置を提供する。
【解決手段】 ホッパー13内に、減圧手段と接続された耐熱濾過体14と、攪拌部材15a〜15dを備える加熱部10において加熱装置18により加熱した粉体を、減圧手段と接続された耐熱濾過体24と、スクリュー25を備える搬送部を通過させる。当該耐熱濾過体14と24は、粉体より微細な耐熱金属繊維の焼結された構造、或いは、突起部を備える平板部材の積層構造を有してなり、加熱された粉体から放出される蒸気を、濾過体14、24を介して、外部に飛散させることなく脱気可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の乾燥装置に関し、詳しくは、液体成分を含む粉体を減圧乾燥により乾燥処理を行う装置において、小型化することができ且つ処理効率を高めることができる粉体の乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体の乾燥処理には、加熱系乾燥プロセスとして加熱した気体の対流による対流伝熱乾燥、赤外線の照射による輻射伝熱乾燥、熱板などの接触による伝導伝熱乾燥、マイクロ波の照射による内部発熱乾燥があり、非加熱系乾燥プロセスとしては、材料を真空または減圧下に置くことで液体の沸点を上昇させる真空乾燥、遠心力による遠心乾燥などが存在する。かかる処理は、食品原料などの低湿度貯蔵や電子部品などの精密洗浄後の溶媒除去、或いは、廃棄物の減量化などのために行なわれている。
【0003】
従来の粉体の対流伝熱乾燥装置としては、例えば、特許文献1に記載の気流乾燥装置が知られている。かかる装置は、当該装置内に高温に加熱した乾燥空気を投入し、粉体から発生した蒸気を含む空気を、捕集器内に設けられた濾布等を通じて除去する構造である。
【0004】
従来の粉体の伝導伝熱乾燥装置としては、例えば、特許文献2に記載の乾燥装置が知られている。かかる装置は、粉体の投入口と排出口をもつケーシングと攪拌用パドルを持つ搬送路に粉体を充填し、熱した油などの熱媒体をケーシング内に循環させる構造になされている。
【0005】
また、真空乾燥装置としては、例えば、特許文献3に記載の構成が、マイクロ波乾燥装置として、例えば、特許文献4に記載の構成が知られている。特許文献4に記載のマイクロ波乾燥装置は、減圧可能なオーブンと、当該オーブン内の樹脂ペレットを加熱するマイクロ波加熱機構と、冷風供給機構を備え、樹脂ペレットの局部的な加熱を抑えながら短時間で乾燥処理を行う構成である。
【0006】
一方、従来の粉体の脱気装置として、一部の本願発明者らにより発明された、特許文献5に記載の粉体の脱気装置が知られている。かかる装置は、一端に粉体の入口を有し且つ他端に粉体の出口を有するケーシングと、円筒状に形成され且つ前記入口側から前記出口側へ向けて前記ケーシング内に配置された濾過体と、当該濾過体の外周面に沿って配置された螺旋状のスクリューとを備え、当該濾過体はその内部を減圧可能に構成され、スクリューと濾過体とは相対的に回転可能に構成されている。
【0007】
同様に、一部の本願発明者らにより発明された、粉体の脱気装置の構成として、特許文献6、或いは特許文献7に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−41652号公報
【特許文献2】特開2008−275253号公報
【特許文献3】特開2006−105447号公報
【特許文献4】特開2007−120934号公報
【特許文献5】特許第3370764号明細書
【特許文献6】特許第3814090号明細書
【特許文献7】特許第4531743号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来の対流伝熱乾燥装置では、乾燥後の蒸気を含む気流が濾布を通過する際に粉体も外部へ流出するため、収量が低下するだけでなく、粉体を外部環境に流さないための多段式濾過や集塵装置を配置しなければならないという問題がある。更に、濾布の耐熱温度までしか気流の温度を上げられないため、粉体の種類や供給量によっては、気流の流量を増やす必要があり、装置が大型化するという問題もある。
【0010】
また、従来の伝導伝熱乾燥装置では、粉体から発生する水蒸気を流路内で除去できないため、含水率の高い粉体には適用できないという問題があるほか、熱媒を加熱するための装置が別に必要となるため、処理能力に比べ装置が大型化するという問題もある。
【0011】
また、従来の真空乾燥装置は、上記の方法に比して低い含水率を達成できるが、連続した処理ができないほか、粉体の濾過部の通過を抑えるために脱気速度が限定されるため、処理能力を高めることが難しいという問題がある。
【0012】
一方、従来の粉体の脱気装置では、除去できる液体の量が濾過体付近を移動する際の蒸発量に限られるため、乾燥装置として用いる場合は、濾過体部分を長くとる必要があり装置が大型化するという問題がある。また、減圧による温度低下により低下した飽和蒸気圧下では、表面に付着した水などを効率的に除去できず、期待する乾燥効果を得るために時間を要するという問題もある。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、粉体に含まれる液体を減圧により乾燥処理を行う装置であって、小型化することができ、且つ処理効率を高めることができる改良された粉体の乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明に係る乾燥装置は、粉体に含まれる液体を減圧により乾燥処理を行う乾燥装置であって、
上端に粉体の入口を有し且つ下端に粉体の出口を有するホッパー、前記ホッパー内部の気体を排出可能で耐熱性を有する第1の濾過体、前記ホッパー内部の粉体を加熱する加熱装置、及び、攪拌部材からなる加熱部と、
一端に粉体の入口を有し且つ他端に粉体の出口を有するケーシング、前記ケーシング内に配置され、前記ケーシング内の気体を排出可能で耐熱性を有する円筒状の第2の濾過体、及び、前記第2の濾過体の内周面に沿って配置された螺旋状のスクリューからなる搬送部と、
前記ホッパーの前記出口と前記ケーシングの前記入口の間に設けられた耐熱バルブと、を備え、
前記攪拌部材と前記第1の濾過体とは相対的に回転可能に構成され、前記スクリューと前記第2の濾過体とは相対的に回転可能に構成されていることを第1の特徴とする。
【0015】
上記第1の特徴の本発明に係る乾燥装置は、更に、前記第1の濾過体が、前記ホッパー側面に配置されてなるか、或いは円筒状であって前記ホッパーの中心部に配置されてなることが好ましい。
【0016】
上記第1の特徴の本発明に係る乾燥装置は、更に、前記第1の濾過体および前記第2の濾過体の少なくとも何れか一方が、複数の平板部材の積層体にて構成され、当該各平板部材の間には、前記積層体の一方の表面から他方の表面に導通する気体の通過間隙が形成されていることが好ましい。
【0017】
上記第1の特徴の本発明に係る乾燥装置は、更に、前記通過間隙が前記平板部材の間に突起を介在させることにより形成されていることが好ましい。
【0018】
上記第1の特徴の本発明に係る乾燥装置は、更に、前記第1の濾過体および前記第2の濾過体の少なくとも何れか一方が、粉体より微細な耐熱性金属繊維の焼結された構造を有してなることが好ましい。
【0019】
上記第1の特徴の本発明に係る乾燥装置は、更に、
前記搬送部は、粉体の排出を制御する粉体排出制御装置を備え、
前記粉体排出制御装置は、
前記ケーシング内の気体を前記第2の濾過体を介して吸引し、前記ケーシング内部の粉体を前記第2の濾過体の接触面に吸い寄せるとともに、前記スクリューの作動を停止することにより、前記粉体の排出を止める制御を行うことが好ましい。
【0020】
上記第1の特徴の本発明に係る乾燥装置は、更に、前記搬送部は、前記ケーシング内に、不活性ガスを吸入する不活性ガス供給口を備えることが好ましい。
【0021】
上記目的を達成するための本発明に係る乾燥装置は、粉体に含まれる液体を減圧により乾燥処理を行う乾燥装置であって、
上端に粉体の入口を有し且つ下端に粉体の出口を有するホッパー、前記ホッパー内部の気体を排出可能で耐熱性を有する第1の濾過体、前記ホッパー内部の粉体を加熱する加熱装置、及び、攪拌部材からなる加熱部を備え、
前記攪拌部材と前記第1の濾過体とは相対的に回転可能に構成されていることを第2の特徴とする。
【0022】
上記第1又は第2の何れかの特徴の本発明に係る乾燥装置は、更に、前記加熱部は、前記ホッパー内に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給口を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に依れば、ホッパーを加熱可能であることにより、ホッパー入口から供給された粉体は加熱され蒸気を放出する。このとき、第1の濾過体は、ホッパー内部を減圧可能で耐熱性を有しているため、粉体をその内周面に吸着するとともに、粉体中から放出される蒸気を脱気する。また、攪拌部材が、第1の濾過体と相対的に回転可能に構成されているため、吸着された粉体を逐次掻き取ってホッパー内を円滑に撹拌させる。十分加熱した粉体は、耐熱バルブを開放することで、ホッパー出口から排出され搬送部のケーシング入口に充填される。
【0024】
ケーシング内においても、第2の濾過体が、ケーシング内部を減圧可能で耐熱性を有しているため、ケーシング入口から供給された加熱された粉体をその内周面に吸着するとともに、粉体中から放出される蒸気を脱気する。また、スクリューが、第2の濾過体と相対的に回転可能に構成されているため、吸着された粉体を逐次掻き取って濾過体内を円滑に移動させる。そして、乾燥された粉体を出口から排出する。
【0025】
従って、本発明の乾燥装置によれば、粉体を加熱した状態で脱気することにより、装置を小型化することができるとともに、高い乾燥状態を得ることができる。また、粉体を外部に飛散させることなく放出される蒸気を排気でき、収率を高めることが可能な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る乾燥装置の一実施形態における構成を模式的に示す断面図
【図2】本発明に係る乾燥装置の加熱部における構成を模式的に示す断面図
【図3】本発明に係る乾燥装置の搬送部における構成を模式的に示す断面図
【図4】第1の濾過体の構成例を示す断面図
【図5】第2の濾過体の構成例を示す断面図
【図6】第1の濾過体の外観を示す写真
【図7】第2の濾過体を構成する平板部材の構造を示す断面図
【図8】平板部材が積層されてなる濾過体の構造を示す断面図
【図9】第2の濾過体の外観を示す写真
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係る粉体の乾燥装置の実施の形態につき、図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る乾燥装置1の一例を示す断面図である。うち加熱部10の構成の一例を図2に、搬送部20の構成の一例を図3に示す。
【0028】
乾燥装置1は、図1に示すように、上端に粉体の入口11を有し且つ下端に粉体の出口12を有するホッパー13、ホッパー13内部の気体を排出可能で耐熱性を有する第1の濾過体14、ホッパー13内部の粉体を加熱する加熱装置18、及び、攪拌部材15a〜15dからなる加熱部10と、一端に粉体の入口21を有し且つ他端に粉体の出口22を有するケーシング23、ケーシング23内に配置され、ケーシング23内の気体を排出可能で耐熱性を有する円筒状の第2の濾過体24、及び、前記第2の濾過体の内周面に沿って配置された螺旋状のスクリュー25からなる搬送部20と、ホッパー13の出口12とケーシング23の入口21の間に設けられた耐熱バルブ30とを備え、攪拌部材15aと第1の濾過体14とは相対的に回転可能に構成され、スクリュー25と第2の濾過体24とは相対的に回転可能に構成されている。
【0029】
上記のうち加熱部10は、図2に示すように、ホッパー13は各種形状に構成しうるが、比較的小型の装置構成とするため、例えば逆円錐形に形成される。かかるホッパー13は、蓋体41にて上端を封止され、粉体の入口11を形成する粉体投入口42が蓋体41の一部に設けられている。ホッパー13上部は、当該入口11から供給される粉体の脱気処理を行う処理空間51とされ、下方に位置する逆円錐部は、粉体を適宜に収容し、加熱するための貯留空間52となる。
【0030】
第1の濾過体14は、本実施形態において、ホッパー13の内側壁面に沿った曲面形状を有する複数の各種フィルターにて構成され、ホッパー13の側壁面に沿って、放射状に配置されている。もっとも、第1の濾過体14は、ホッパー13の側壁面の全周を覆うように、円筒状に構成しても構わない。第1の濾過体14の外側面は、後述する排気管17に接続される。
【0031】
攪拌部材15a〜15dは、ホッパー13内に投入された粉体を攪拌する役割を有し、ホッパー13の中心と同軸に配置されたスピンドル16に取り付けられ、ホッパー13内周および第1の濾過体14を巻回する状態で配置される。うち攪拌部材15a〜15cは、平板状(へら状)に構成され、水平面に対して45度程度傾けて配置されている。これに対し、攪拌部材15dは、螺旋状のスクリューで構成されている。各攪拌部材15a〜15dとホッパー13内周および第1の濾過体14の内周面との間には、通常、1〜5mm程度の空隙が設けられる。本実施形態において、攪拌部材15aは、第1の濾過体14に対して独立に回転することで、第1の濾過体14の内周面に吸着した粉体をそぎ落とす役割を有している。
【0032】
排気管17は、図示しないが、真空ポンプ等の減圧手段に接続される。これにより、第1の濾過体14を介して、ホッパー13内部の気体を排出可能であり、ホッパー13内部を減圧可能に構成されている。尚、当該減圧手段には放出される蒸気が流入するため、コールドトラップなどの液体回収装置を付けることが望ましい。
【0033】
スピンドル16は、蓋体41の中央に設けられた筒状のスタンド43に挿通され、ギヤードモーター44の変速機45の回転体に取り付けられている。また、スタンド43の内部において、スピンドル16は、ブッシュ等の軸受により適宜に振れ止めが施されている。また、スピンドル16は、加熱された粉体が投入されることにより熱延伸するため、ギヤードモーター44と変速機45の回転体とはチェーン49を介して接続されている。
【0034】
蓋体41には、バルブ30の開放時の落下を円滑にするための給気口48が設けられている。当該給気口を介して、空気中の水蒸気による吸湿を防ぐために、ボンベなどより供給される乾燥ガスを導入することが望ましい。
【0035】
ホッパー13の周囲に、加熱装置18が設けられている。当該加熱装置18は、粉体の乾燥に必要とされる温度まで、ホッパー13を伝導伝熱にて加熱し、以て粉体を加熱できる装置であれば何でもよいが、比較的小型の装置構成とするため、例えば薄型で電気制御できるリボンヒーターなどを用いることができる。加熱効率を高めるため、加熱装置18および蓋体41の周囲は、断熱材にて保護されている。
【0036】
また、ホッパー13の下部には、加熱された粉体の温度を測定するための熱電対を挿入するための管19が設けられている。
【0037】
加熱部10により加熱乾燥処理された粉体は、ホッパー13の出口12から、耐熱バルブ30を通じてケーシング23の入口21へと、重力により投入されるように構成されている。尚、耐熱バルブ31は、手動式でも電磁弁による制御であっても構わない。
【0038】
次に、搬送部20は、図3に示すように、ケーシング23は各種形状に構成しうるが、圧力を均等にするため、例えば円筒状に形成される。かかるケーシング23は、入口21を介して耐熱バルブ30と接続される。
【0039】
第2の濾過体24は、円筒状の各種フィルターにて構成され、且つ、ケーシング23の一部として構成されている。第2の濾過体24の外周部は、後述する排気管27に接続される。一方、スクリュー25は、ケーシング23および第2の濾過体24の中心と同軸に配置されたスピンドル26に取り付けられて、ケーシング23内周および第2の濾過体24を巻回する状態で配置される。スクリュー25とケーシング23内周および第2の濾過体24の内周面との間には、通常、1〜5mm程度の空隙が設けられる。これにより、スクリュー25は、第2の濾過体24から独立して回転するように構成されている。
【0040】
排気管27は、図示しないが、真空ポンプ等の減圧手段に接続される。これにより、第2の濾過体24を介して、ケーシング23内部の気体を排出可能であり、ケーシング23内部を減圧可能に構成されている。尚、当該減圧手段には放出される蒸気が流入するため、コールドトラップなどの液体回収装置を付けることが望ましい。
【0041】
スピンドル26は、両端をブッシュ等の軸受に挿通され、適宜に振れ止めが施されたうえで、ギヤードモーターの変速機の回転体(図示せず)に取り付けられている。尚、スピンドル16は、加熱された粉体が投入されることにより熱延伸するため、ギヤードモーターと変速機の回転体とはチェーンを介して接続される。
【0042】
更に、本実施形態では、ケーシング23の周囲に、ホッパー13から加熱された状態で搬送される粉体を保温するための加熱装置28が設けられている。加熱装置28は、ホッパー13から投入された粉体の温度まで、ケーシングを伝導伝熱にて加熱できる装置であれば何でもよいが、比較的小型の装置構成とするため、例えば薄型で電気制御できるリボンヒーターなどを用いる。加熱効率を高めるため、加熱装置28の周囲は、断熱材にて保護されている。
【0043】
ケーシング23の出口22の下部には、粉体の温度を測定するための熱電対を挿入するための管29が設けられている。
【0044】
搬送部20により乾燥処理された粉体は、ケーシング23の出口22から逐次、排出されるように構成される。当該出口22には、作業状況に応じて、乾燥ガスを導入したホッパーや、封入装置などが接続され、粉体の乾燥状態が維持された状態で次工程に引き渡されることが望ましい。
【0045】
上記の通り構成された本発明の乾燥装置1により、水分などの液体を含んだ粉体を処理する場合、先ず、ホッパー13の給気口48から乾燥ガスを導入し、排気管17に通じる減圧手段を作動させ、第1の濾過体14を介してホッパー13内の蒸気が排気管17から除去される流れを作る。同時に、ギヤードモーター44を作動させて攪拌部材15a〜15dを回転させる。そして、粉体を、投入口42を通じてホッパー13内の処理空間51に供給する。
【0046】
ホッパー13内に供給された粉体は、攪拌部材15a〜15dの回転によって適当に攪拌されながらホッパー13の貯留空間52に落下する。しかる後に、加熱装置18にてホッパー13内部を加熱することで、第1の濾過体14は、加熱された粉体をその内周面に吸着すると共に、粉体中から蒸発する液体を排気する。一方、拡散部材15aは、第1の濾過体14と独立して回転しているため、第1の濾過体14の外周面に吸着された粉体を逐次掻き取って処理空間51内を円滑に移動させる。
【0047】
粉体が十分加熱されたら、耐熱バルブ30を開放して、ホッパー出口12からケーシング23の入口21へと重力にて粉体を投入する。このとき、予め加熱装置28にてケーシング23内部を加熱しておくことで、投入および搬入された粉体が冷えることを防ぐことができる。また、排気管27に通じる減圧手段を作動させ、第2の濾過体24を通じてケーシング23内の蒸気が排出されるようにする。
【0048】
ケーシング23内に供給された粉体は、スクリュー25の回転により、第2の濾過体24まで搬送される。第2の濾過体24は、加熱された粉体をその内周面に吸着すると共に、粉体中から蒸発する液体を排気する。一方、スクリュー25は、第2の濾過体24と独立して回転しているため、第2の濾過体24の内周面に吸着された粉体を逐次掻き取ってケーシング23内を円滑に移動させ、乾燥された粉体をケーシングの出口22から排出する。
【0049】
このとき、粉体の排出にあたってスクリュー25を回転させるが、排出を一旦止めるときは、スクリュー25の回転を停止するとともに、ケーシング23内の気体を第2の濾過体24を介して吸引し、ケーシング23内部の粉体を第2の濾過体24の内周面に吸い寄せる制御を行う。このようにすることで、吸い寄せられた粉体が粉体の流れを止める弁の役割をして、粉体の排出を瞬時に、且つ、確実に止めることができる。
【0050】
以上、本発明の加熱装置1では、粉体を加熱部10のホッパー13内、及び、搬送部20のケーシング23内のみで加熱するため、薄型で小型のリボンヒーターを用いることができ、加熱した気流を用いる場合や、熱媒を内部に流したり、マイクロ波を照射したりする場合と比べて、装置を小型化することができる。
【0051】
且つ、ケーシング23内では、粉体が十分に加熱されている状態で減圧されるため、単純に脱気するよりも高い乾燥状態を得ることが可能となる。
【0052】
尚、特許文献5〜7に記載されているような従来の脱気装置では、減容を目的としているため、減圧が必須であり搬出処理と一体になっているが、本発明では乾燥ガスの導入により大気圧での処理が可能であり、搬出も重力を用いることも可能である。
【0053】
また、従来の脱気装置は加熱を想定していないため、濾過体14、24やホッパー13、及び、ケーシング23等に耐熱素材を使う必要がないが、本発明では加熱温度に応じた耐熱性が必要となる。
【0054】
次に、本発明の乾燥装置1において使用される第1の濾過体14、及び、第2の濾過体の構成について説明する。図4は、加熱部10において使用される第1の濾過体14の一例を示す断面図である。図5は、搬送部20において使用される濾過体24の一例を示す断面図である。
【0055】
第1の濾過体14は、本実施形態では円筒状ではなく円弧状の曲面形状を有することを除いて特許文献6の図6に示す構造とほぼ同様であり、円弧状の曲版の多層構造からなり、粉体と接触する内側から内多孔板61、内金網(図示せず)、フィルター62、及び外金網(図示せず)が、層状に重ねられて、最も外側に外多孔板63が設けられている。内多孔板61は内金網を介してフィルター62の変形を防止し、外多孔板63は外金網を介してフィルター62の変形を防止しており、夫々、多数の孔が形成されてなる。図4では、うち内多孔板61の孔64が示されている。孔64を介して空気が通過するため、内多孔板と外多孔板の各孔は互いに一致する位置に配置される。各孔の各多孔板表面に対する占有面積は、約1/2程度である。
【0056】
フィルター62は、各種構造のものを使用し得るが、例えば、粉体より微細な耐熱性金属繊維を成形焼結した焼結型濾過材を用いることができる。また、内金網と外金網は、フィルター62を補強し且つその表面の目詰まりを防止する保護層となっている。
【0057】
図6は第1の濾過体14を外多孔板63側から見た外観を示す写真である。外多孔板63は穴が空いた鉄板であり、外多孔板63の上に更にメッシュを貼り付けてから、周囲を耐熱性の保護材で覆っている。そして、第1の濾過体14は、ネジ止めによりホッパー13の内側壁に固定されている。
【0058】
一方、第2の濾過体24は、特許文献5に記載されているように、複数のリング状の平板部材の積層体にて構成されている。そして、各平板部材の間には、積層体の一方の表面から他方の表面に導通する気体の通過間隙が形成される。かかる構成により、吸着した粉体をスクリュー25によって掻き取った際の濾過体24における目詰まりを防止することができ、且つ、粉体が透過しない状態を維持させることができる。
【0059】
当該平板部材の断面構造を図7に示す。また、当該平板部材が積層されて構成される濾過体24の断面構造を図8に示す。平板部材71は、濾過体の構成要素であり、粉体の加熱要求温度以内であれば、アルミニウム、銅、ステンレス等の金属、セラミック又は各種の樹脂材料にて製造することができる。平板部材71の形状は、ケーシング23の直径を勘案して適宜に設定される。
【0060】
平板部材71は、その表面に微細な突起73を有しており、これにより、平板部材71が積層されることで、突起73を介した気体の通過間隙72が形成される。尚、当該突起73は、通常、各開口平板部材71の少なくとも一方の盤面74に略均等に分散配置される。突起73は、平面形状が円形の偏平な微小突起であり、平板部材71の盤面74にエッチング加工にて形成することにより、製作精度を向上させて間隙72の精度を高めることが出来る。しかも、突起73を盤面74上に一体的に形成した場合は、突起73の脱落がなく優れた耐久性を発揮し得る。
【0061】
突起73の直径は、例えば、0.5〜5.0mm程度、通常は1.0〜3.0mm程度である。また、図7に示すように、盤面74に対する突起73の突出高さtは、捕捉すべき粉体の粒径に応じ、例えば、0.5〜100μm、通常は1.0〜50μm程度とされる。そして、その数は、盤面74に対する突起73の総占有面積が約5〜90%、好ましくは10〜70%となるような数に設定される。
【0062】
更に、平板部材71は、多数の孔を有する外板75に溶接により固定され、第2の濾過体24が構成される。また、平板部材71は、同様に多数の孔を有する内多孔筒76に保持され、第2の濾過体24が構成される。平板部材71の積層枚数は、例えば50〜5000枚程度であり、第2の濾過体24を構成する円筒の高さに応じて適宜に設定される。外板75、及び内多孔筒76における孔の直径は、約1〜10mm程度である。
【0063】
図9は第2の濾過体14を外板75側から見た外観を示す写真である。平板部材71と外板75の溶接部分は、耐熱性の保護剤にて覆われている。
【0064】
上記構成の第2の濾過体24では、所定粒径以上の粉体粒子は、積層体の内周面において内多孔筒76に形成された孔、すなわち、図8に示される間隙72の入口77にて捕捉され、そして、主に気体だけが間隙72を通過し、外板75に開設された孔78を通じて排気管から除去される。その際、各平板部材71の間に形成された均一な間隙72の入口77にて粉体粒子を捕捉するため、間隙72に進入した所定粒径以下の粉体粒子が間隙中に引っ掛かることがなく、目詰まりの発生が極めて少ない。
【0065】
更に、上記構成の第1の濾過体14、及び第2の濾過体24の何れにおいても、濾過体に吸着された粉体による二次フィルター層が形成される。当該二次フィルター層は、内多孔板61の孔61と攪拌部材15aとの隙間、あるいは内多孔筒76の孔77とスクリュー25との隙間に形成される粉体の固定層(図4、図5の固定層65)であり、減圧手段による気体の吸引量により層の厚さを調節する事が可能である。このとき、第1及び第2の濾過体は、二次フィルター層の形成により粉体と直接接触せず、また、二次フィルター層は通気が持続されている限り、目詰まりが生じない。従って、2次フィルター層はフィルター層の目詰まりで形成された層ではなく、むしろ、濾過体の目詰まりを防止して、水分を含むエアーの吸引効率を高めることができる構成となっている。
【0066】
粉体の例として、鈴木油脂工業製のゴッドボールE−16Cを5L、ホッパー13を220度に加熱後、30分間脱気運転し、150度で保温した搬送部から体積により計量して取り出した結果、加熱せず取り出した状態に比べ重量が93.7%となった(加熱せずに取り出した粉体が203.8gに対し、加熱後の粉体が190.8g、重量は5回の実験による平均値)。粉体の含水量が5〜7%であるため、含水率を1%以下になるまで乾燥できた。また、減圧装置には一切粉体が出ていないことを確認した。
【0067】
以上、本発明の乾燥装置1は、粉体を加熱した状態で脱気することにより、装置を小型化することができるとともに、高い乾燥状態を得ることができる。また、粉体を外部に飛散させることなく放出される蒸気を排気できるため、処理効率を高めることができる。
【0068】
以下に、本発明に係る乾燥装置の別実施形態につき説明する。
【0069】
〈1〉上記実施形態では、加熱部10と搬送部20により構成された乾燥装置1について説明したが、本発明の乾燥装置においては、加熱部10のみでも従来の対流伝熱乾燥装置や伝導伝熱乾燥装置と同程度の乾燥装置として成立させることも可能である。その場合、真空乾燥と同等の乾燥度は得られないが、さらなる小型化が可能である。
【0070】
〈2〉上記実施形態では、第1の濾過体14として、微細な耐熱性金属繊維の焼結された構造を有してなるもの、及び、第2の濾過体24の構成として、平板部材の積層構造からなるものを例示したが、本発明はこれに限られるものではなく、第1の濾過体14の構成として平板部材の積層構造を採用してもよいし、逆に、第2の濾過体24の構成として微細な耐熱性金属繊維の焼結された構造を採用しても構わない。
【0071】
〈3〉上記実施形態では、設置スペース上の都合により、ケーシング23、及び、第2の濾過体24を水平方向に延伸させているが、設置スペースの高さに余裕がある場合には、ケーシング23、及び、第2の濾過体24を、ホッパー13内のスピンドル16と平行に、鉛直方向に延伸させるようにしても構わない。
【0072】
〈4〉また、上記実施形態では、ホッパー13、及びケーシング23の内周に第1及び第2の濾過体を配置しているが、特許文献5に記載の構成のように、ホッパー13、及びケーシング23の中心部に、スピンドルの回転軸に沿って配置する構成も可能である。即ち、円筒状の第1の濾過体14が、ホッパー13の中心部に、攪拌部材15a〜15dの回転軸に沿って配置される構成としてもよい。
【0073】
〈5〉更に、上記実施形態では、給気口48を介して乾燥ガスを導入するとしたが、特に、粉体が酸化しやすい物質である場合には、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスを導入することが好ましい。ここで、不活性ガスとは、処理対象の粉体との間で化学反応を起こしにくい気体のみならず、粉体の生化学的変化(例えば、発酵や腐敗)を抑制する気体を含む。即ち、処理対象の粉体の保存に適した気体を適宜、不活性ガスとして選択し使用することができる。
【0074】
同様に、ケーシング23内部にも、当該不活性ガスを供給するための供給口を備えていることが好ましい。このとき、特許文献7に記載されているように、ケーシング23内が、脱気乾燥用の気室、不活性ガス充填用の気室を含む複数の気室に区画された構成とすることができる。
【0075】
〈6〉また、搬送部20での第2の濾過体24を介した減圧方法を、発明者により出願済みの特許文献6に記載の粉体の脱気装置と同様に、例えば、ノズル式パッカースケールの供給部、開放袋用計量供給機における小出し供給機として使用する等、各種の減容手段として有効に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、粉体の乾燥処理に利用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1: 本発明に係る乾燥装置
10: 加熱部
11: 粉体の入口
12: 粉体の出口
13: ホッパー
14: 第1の濾過体
15: 攪拌部材
15a〜15c: 攪拌版
15d: スクリュー
16: スピンドル
17: 排気管
18: 加熱装置
19: 熱電対挿入用の管
20: 搬送部
21: 粉体の入口
22: 粉体の出口
23: ケーシング
24: 第2の濾過体
25: スクリュー
26: スピンドル
27: 排気管
28: 加熱装置
29: 熱電対挿入用の管
30: 耐熱バルブ
41: 蓋体
42: 粉体投入口
43: スタンド
44: ギヤードモーター
45: 回転体
48: 給気口
49: チェーン
51: 処理空間
52: 貯留空間
61: 内多孔板
62: フィルター
63: 外多孔版
64: 孔
65: 固定層(二次フィルター層)
71: 平板部材
72: 気体の通過間隙
73: 突起
74: 盤面
75: 外板
76: 内多孔筒
77: 内多孔筒に形成された孔(気体の通過入口)
78: 外板に形成された孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体に含まれる液体を減圧により乾燥処理を行う乾燥装置であって、
上端に粉体の入口を有し且つ下端に粉体の出口を有するホッパー、前記ホッパー内部の気体を排出可能で耐熱性を有する第1の濾過体、前記ホッパー内部の粉体を加熱する加熱装置、及び、攪拌部材からなる加熱部と、
一端に粉体の入口を有し且つ他端に粉体の出口を有するケーシング、前記ケーシング内に配置され、前記ケーシング内の気体を排出可能で耐熱性を有する円筒状の第2の濾過体、及び、前記第2の濾過体の内周面に沿って配置された螺旋状のスクリューからなる搬送部と、
前記ホッパーの前記出口と前記ケーシングの前記入口の間に設けられた耐熱バルブと、を備え、
前記攪拌部材と前記第1の濾過体とは相対的に回転可能に構成され、
前記スクリューと前記第2の濾過体とは相対的に回転可能に構成されていることを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記第1の濾過体が、前記ホッパー側面に配置されてなるか、或いは円筒状であって前記ホッパーの中心部に配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記第1の濾過体および前記第2の濾過体の少なくとも何れか一方が、複数の平板部材の積層体にて構成され、当該各平板部材の間には、前記積層体の一方の表面から他方の表面に導通する気体の通過間隙が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記通過間隙が前記平板部材の間に突起を介在させることにより形成されていることを特徴とする請求項3に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記第1の濾過体および前記第2の濾過体の少なくとも何れか一方が、粉体より微細な耐熱性金属繊維の焼結された構造を有してなることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記搬送部は、粉体の排出を制御する粉体排出制御装置を備え、
前記粉体排出制御装置は、
前記ケーシング内の気体を前記第2の濾過体を介して吸引し、前記ケーシング内部の粉体を前記第2の濾過体の接触面に吸い寄せるとともに、前記スクリューの作動を停止することにより、前記粉体の排出を止める制御を行うことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記搬送部は、
前記ケーシング内に、不活性ガスを吸入する不活性ガス供給口を備えることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の乾燥装置。
【請求項8】
粉体に含まれる液体を減圧により乾燥処理を行う乾燥装置であって、
上端に粉体の入口を有し且つ下端に粉体の出口を有するホッパー、前記ホッパー内部の気体を排出可能で耐熱性を有する第1の濾過体、前記ホッパー内部の粉体を加熱する加熱装置、及び、攪拌部材からなる加熱部を備え、
前記攪拌部材と前記第1の濾過体とは相対的に回転可能に構成されていることを特徴とする乾燥装置。
【請求項9】
前記加熱部は、前記ホッパー内に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給口を備えることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の乾燥装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図6】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−220041(P2012−220041A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83019(P2011−83019)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(304057472)株式会社ルネッサンス・エナジー・インベストメント (12)
【出願人】(000176763)三菱化学エンジニアリング株式会社 (85)
【Fターム(参考)】