説明

乾燥装置

【課題】容易かつ低コストに加熱炉間のダクト接続作業を行う。
【解決手段】本発明の乾燥装置1は、直列に配置される複数の加熱炉10A〜10Cと、各加熱炉の筐体20を貫通して配管されたダクト50,60とを有する。隣接する加熱炉10A,10Bまたは10B,10Cの間の筐体20外部に突出するダクト50,60の端部521同士を対向させた状態で、該端部521,521にゴム状シート部材120を巻付けて接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、連続したフィルム、箔などの長尺の薄いシート(以下、ワークと称する。)を、搬送ローラによって搬送しながらワークの表面に熱風ノズルから吹き出す熱風によって乾燥させる乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、連続したフィルム、箔などの長尺のシート(以下、ワークと称する。)の一方の面に、粘着材、剥離剤、接着材、各種処理剤等の塗工液を塗布した後、複数の加熱炉を順次通過させ、加熱炉内で熱風を吹き付けて塗布された塗工液を乾燥して、塗布膜を形成する乾燥装置(塗工装置)が開示されている。
【0003】
特許文献1では、各加熱炉に空気を送るための給気ダクトを複数の加熱炉で共用している。この給気ダクトは特許文献1の図2に示されているように、加熱炉の筐体外部に配管されているため、乾燥装置の使用者のサイドで大がかりな設備が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−222090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、給気ダクトを個々の加熱炉の筐体を貫通して配管し、隣接する加熱炉間で、筐体外部に突出する給気ダクトの端部同士を対向させた状態で、フランジ接続やフレキシブルダクトを差し込み接続することで、乾燥装置の使用者のサイドでは給気ダクトを準備しなくて良くするようにし、設備を簡素化することも考えられる。
【0006】
しかし、乾燥装置の設置スペース等の関係で、隣接する加熱炉間の隙間が狭い場合、フランジ接続やフレキシブルダクトの差し込み接続の作業が難航する問題がある。
【0007】
また、給気ダクト内を通す風量が多くなる場合には、給気ダクトの断面積を大きくするか、給気ダクトの配管数を増やす必要がある。一般的なフレキシブルダクトの断面は真円のものが多く、その他の断面形状のフレキシブルダクトは入手困難である。
【0008】
加えて、加熱炉の筐体内の配管スペースに制限がある場合は、真円の断面形状のままでは必要風量を流すことの出来る給気ダクトの断面積を確保することが難しい。この場合、楕円など扁平な断面形状を採用するとそれに適合するフレキシブルダクトは特注品となり、コストが上昇する原因となる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、容易かつ低コストに加熱炉間のダクト接続作業を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の乾燥装置は、直列に配置される複数の加熱炉と、各前記加熱炉の筐体を貫通して配管されたダクトとを有する。そして、隣接する前記加熱炉間の前記筐体外部に突出する前記ダクトの端部同士を対向させた状態で、該端部にゴム状シート部材を巻付けて接続する。
【0011】
これによると、従来のようにダクトの端部同士をフランジ接続や差し込み接続ではなく、入手や加工のしやすいゴム状シート部材を巻付けて接続するので、低コストにダクト接続作業を行える。また、手が入るスペースさえ確保できれば良いので、加熱炉間の空間が狭くてもダクト接続作業が容易に行える。
【0012】
ダクトは必要風量を流すことが出来る断面積を確保しつつ配管スペースに収めるため、またゴム状シート部材との密着性を高めるため、ダクトの端部は角のない丸みを帯びた均一な断面(例えば、楕円)で形成されていることが好ましい。このようにダクトの端部の断面形状が真円でなくても、ゴム状シート部材の柔軟性によって接続誤差を吸収する。
【0013】
また、ゴム状シート部材の巻付き代の部分に浮きが発生するのを防ぐため、該部分にホースバンドを取付けて径方向に締め付け、確実に固定することが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、容易かつ低コストに加熱炉間のダクト接続作業を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施形態に係る乾燥装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】給気ダクトの端部の組立状態を説明する斜視図である。
【図3】隣接する加熱炉間で筐体外部に突出する給気ダクトの端部の斜視図であって、端部同士を接続する前の状態を示す図である。
【図4】隣接する加熱炉間で筐体外部に突出する給気ダクトの端部の斜視図であって、端部にゴム状シート部材を巻付ける作業を説明する図である。
【図5】隣接する加熱炉間で筐体外部に突出する給気ダクトの端部の斜視図であって、端部同士を接続した後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、この発明の実施の形態に係る乾燥装置の構成を図面を参照して説明する。
【0017】
図1はこの発明の一実施形態に係る乾燥装置の概略構成を示す模式図である。この実施の形態の乾燥装置1は、連続したフィルム、箔などの長尺のシート(以下、ワークと称する。)の一方の面に、粘着材、剥離剤、接着材、各種処理剤等の塗工液を塗布した後、3つの加熱炉10A、10B,10Cを順次通過させ、加熱炉10A,10B,10C内で熱風を吹き付けて塗布された塗工液を乾燥して、塗布膜を形成するものである。なお、本実施形態の加熱炉の数は一例であり、3つに限定されない。
【0018】
乾燥装置1は3つの加熱炉10A,10B,10CがワークWの搬送方向Xに配列された構成である。各加熱炉10A,10B,10Cは、その筐体20の内部に、複数の搬送ローラ30、熱風ボックス40、給気ダクト50、排気ダクト60、熱風供給路70、熱風回収路80、熱交換器90、風量調整ブロア100およびエアフィルタ110を備える。
【0019】
ワークWは図示しない送り出しローラおよび巻き取りローラに巻付けられ、巻き取りローラを駆動することにより送り出しローラから送り出されることにより搬送される。各搬送ローラ30はワークWをその胴部31の外周に接触させつつ支持するものであって、搬送ローラ30自身は駆動せず、ワークWとの摩擦力によって、シャフト32の回りの胴部31がワークWに従動して回転するガイドローラである。なお、搬送ローラ30を駆動源と回転伝達機構を用いて駆動しても構わない。
【0020】
図1において、複数の搬送ローラ30は搬送方向Xの下流から上流に向かって直列に並べられ、各搬送ローラ30の軸(すなわち、シャフト32)はワークWの搬送方向Xと直交する方向に延びる。ワークWは塗工液が塗布された一方の面が上方を向くように、搬送方向の下流から上流に向かって並べられた複数の搬送ローラ30の上を矢印方向(搬送方向X)に搬送される。
【0021】
熱風ボックス40は複数の搬送ローラ30の上方に配置されており、その下面には、複数の熱風ノズル41が設けられる。熱風ノズル41は下方に向かうに従って幅が狭められたテーパー形状を呈し、その下端が開口する。熱風ノズル41は熱風ボックス40内部の加熱された空気を熱風として、その下端の開口42から、ワークWの上面(塗工液が塗布された面)に向けて噴出させる。熱風ノズル41の開口42はワークWの幅長さおよび搬送ローラ30の軸長さに応じて、搬送ローラ30の軸方向に延びている。
【0022】
給気ダクト50は筐体20をワークWの搬送方向Xに貫通して配管される。図2は給気ダクトの端部の組立状態を説明する斜視図である。図2に示すように、給気ダクト50はダクト本体51および付属ダクト52から構成される。付属ダクト52はダクト本体51の両端(図2では一端のみを示す。)に取付けられる。
【0023】
ダクト本体51は断面形状が扁平な矩形を呈する管部511の両端(図2では一端のみを示す。)にフランジ512が設けられた構成である。管部511のこのような形状は筐体20内に配管スペースが限られている場合に給気ダクト50の断面積を確保する、つまり給気ダクト50を通る空気の風量を十分に確保するのに有利な形状である。
【0024】
付属ダクト52は断面形状が扁平な楕円を呈する接続部521の一端にフランジ522が設けられた構成である。付属ダクト52は給気ダクト50の端部を角のない丸みを帯びた均一な断面に変更する部品であり、後述するように、給気ダクト50の端部同士の接続を容易にするための部品である。付属ダクト52の接続部521の断面形状は上記のように扁平な楕円の断面で形成されており、その長軸方向および短軸方向の内径はダクト本体51の管部511の断面の横幅および縦幅はほぼ等しく設定される。このため、ダクト本体51の断面積が付属ダクト52によって極端に減少することがなく、給気ダクト50を通る空気の風量がほとんど損なわれることがない。
【0025】
図2に示すように、付属ダクト52はダクト本体51の両端にフランジ512,522を用いて取付けられる。ダクト本体51の長さは筐体20の搬送方向Xの寸法L(図1参照。)よりも若干短いが、その両端に取付けられる付属ダクト52の長さも合わせた給気ダクト50の全長は上記寸法Lよりも長くなる。つまり、図3に示すように、給気ダクト50の端部(付属ダクト52の接続部521)は筐体20の搬送方向Xについて対向する壁を突き抜けて突出することになる。なお、図2に示すように、筐体20の壁には、給気ダクト50の端部(付属ダクト52の接続部521)を挿通させるため、接続部521に対応した形状の開口21が設けられている。
【0026】
図3〜図5は隣接する加熱炉間で筐体外部に突出する給気ダクトの端部の斜視図である。これらの図を用いて、給気ダクト50の端部同士を接続する作業を説明する。上述したように、筐体20外部に付属ダクト52の接続部521が突出している。その突出長が図3に記号C1で示されている。C1は例えば50mmである。
【0027】
隣接する加熱炉10A,10Bの間(加熱炉10B,10Cの間も同じ。)で、筐体20外部に突出する2つの付属ダクト52の接続部521,521が対向している。対向する2つの付属ダクト52の接続部521,521の間の距離は図3に記号C2で示されている。C2は例えば40mmである。
【0028】
また、隣接する加熱炉10A,10Bの間の隙間は、図3に記号Cで示されている。C=2C1+C2となるため、例えば140mmである。この程度の隙間ではフランジ接続や差し込み接続などでダクト接続を行うには狭くて困難を伴う。
【0029】
そこで、本発明では、図4に示すように、対向する2つの付属ダクト52の接続部521,521に短冊状のゴム状シート部材120を巻付ける。ゴム状シート部材120は、短冊の平面を象る縦、横寸法に対して厚み寸法が薄く形成されている。ゴム状シート部材はガラス繊維を配合させることで強度が向上されており、強度および耐熱性に優れつつ柔軟性も有し、ダクトなど筒体の外周への巻付けを容易に行うことも出来る。ゴム状シート部材を形成するためのゴム材として、例えばゴム状のシリコーン樹脂を用いることが出来る。ゴム状シリコーン樹脂はシリコンゴム、ケイ素ゴムとも呼ばれる。
【0030】
ゴム状シート部材120の長さ(縦寸法)は付属ダクト52の接続部521の全周を覆うようにその周長より若干長い寸法に設定され、ゴム状シート部材120の幅(横寸法)Dは2つの付属ダクト52の接続部521,521に跨って巻付くように上記C2(図3参照。)よりも長い寸法に設定されているものとする。巻付けられたゴム状シート部材120の端部同士の接合部は接着材(コーキング剤など)にて接着する。付属ダクト52の接続部521は角のない丸みを帯びた均一な断面で形成されているため、ゴム状シート部材120は接続部521の曲面に沿ってぴったりと隙間なく密着し、確実にシールすることが出来る。最後に、図5に示すように、ゴム状シート部材120の巻付き代の部分にホースバンド130を取付けて径方向に締め付ける。これにより、該部分に浮きが発生するのが防止され、さらにシール性が向上する。
【0031】
このような接続作業を加熱炉10B,10C間でも行うことで、3つの加熱炉10A,10B,10Cの給気ダクト50が連通し、3つの加熱炉10A,10B,10Cに空気を送るための一貫した給気ダクトが開通する。
【0032】
本実施の形態では、給気ダクト50の端部同士をフランジ接続や差し込み接続ではなく、入手や加工のしやすいゴム状シート部材120を巻付けて接続するので、低コストにダクト接続作業を行える。また、手が入るスペースさえ確保できれば良いので、加熱炉間の空間が狭くてもダクト接続作業を容易に行える。
【0033】
搬送方向Xの最上流に位置する加熱炉10Aの筐体20から突出する給気ダクト50の上流端には給気メインブロア200が設けられる。
【0034】
再び図1を参照すると、排気ダクト60は給気ダクト50と同様に筐体20をワークWの搬送方向Xに貫通して配管される。排気ダクト60の細かな構成や接続作業は上述した給気ダクト50と同じであるため説明を省略する。
【0035】
搬送方向Xの最上流に位置する加熱炉10Aの筐体20から突出する排気ダクト60の下流端には排気メインブロア300が設けられる。
【0036】
熱風供給路70は給気ダクト50から分岐し、熱風ボックス40に連通接続される。熱風供給路70の途中には熱交換器90、風量調整ブロア100およびエアフィルタ110が配設される。熱風回収路80は、加熱炉10A,10B,10Cの内部に循環された熱風を回収するもので、一端は熱風ボックス40の内部に開放され、他端は排気ダクト60に接続される。
【0037】
再び図1を参照すると、給気メインブロア200から各加熱炉10A,10B,10Cの給気ダクト50に送られた空気は、各々熱風供給路70に分岐され、熱交換器90で加熱された後、風量調整ブロア100、エアフィルタ110を介して、各加熱炉10A,10B,10Cの熱風ボックス40内部に加熱空気として送られる。加熱空気は、熱風ノズル41からワークWに向けて下方に噴出された後、各加熱炉10A,10B,10Cの内部を循環して、熱風回収路80に回収され、排気ダクト60に送られる。排気ダクト60に送られた熱風は排気メインブロア300を介して外部に排出される。なお、外部に排出された熱風を再び給気メインブロア200に送り、給気ダクト50へ循環させるようにしても良い。このように各加熱炉10A,10B,10Cには、熱風が常時供給され、その内部は所定の温度(例えば、100〜120℃)に保たれる。搬送ローラ30によって搬送されるワークWは、各加熱炉10A,10B,10C内部の加熱空気や、熱風ノズル41からの熱風によって加熱される。
【0038】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、この発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0039】
W…ワーク
1…乾燥装置
10A,10B,10C…加熱炉
20…筐体
21…開口
30…搬送ローラ
40…熱風ボックス
50…給気ダクト
51…ダクト本体
511…管部
512…フランジ
52…付属ダクト
521…接続部
522…フランジ
60…排気ダクト
70…熱風供給路
80…熱風回収路
90…熱交換器
100…風量調整ブロア
110…エアフィルタ
120…ゴム状シート部材
130…ホースバンド
200…給気メインブロア
300…排気メインブロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に配置される複数の加熱炉と、各前記加熱炉の筐体を貫通して配管されたダクトと、を有する乾燥装置において、
隣接する前記加熱炉間で、前記筐体外部に突出する前記ダクトの端部同士を対向させ、該端部にゴム状シート部材を巻付けて接続することを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記ダクトの端部は角のない丸みを帯びた均一な断面で形成された、請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記ゴム状シート部材の巻付き代の部分をホースバンドで締め付ける、請求項1または2に記載の乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−44465(P2013−44465A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182089(P2011−182089)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000167200)光洋サーモシステム株式会社 (180)
【Fターム(参考)】