説明

乾燥製品

乾燥または保存製品を提供する。この製品は、糖、荷電物質、および感受性の生物学的成分を含む。糖はアモルファス固体マトリックスを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、乾燥または保存製品、より詳細には、生物学的成分を含む乾燥製品に関する。本発明はまた、生物学的成分の保存方法、ならびに生物学的成分の保存のための、糖を含む混合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
多種の化合物(生物学的に活性な分子(例えばウイルス粒子)が含まれる)の乾燥変化および熱変化への不耐性は詳しく立証されており、例えばアデノウイルスの溶液を56℃で30分加熱することは、感染性ウイルスを死滅されるのに十分である。一方で、使用する化合物の機能を維持する乾燥製剤、例えばウイルス感染力およびワクチン効力を維持する乾燥製剤は、多くの場合に望ましい。ウイルス粒子に乾燥耐性および熱安定性を付与することは、多くの潜在的用途(世界中での輸送のしやすさ、貯蔵しやすさ、および保存期間の延長が含まれる)を有する。
【0003】
バイオミミクリー(biomimicry)は、天然の機構から新規な用途を得るために、多くの事例において応用され成功している。乾燥耐性は、植物種子成熟以外のいくつかの生物学的環境において観察されている。いわゆる「復活植物」(イワヒバ属(Selaginella)およびミロタムヌス属(Myrothamnus))、クマムシ(エキニスコイデス・シギスムンデ(Echiniscoides sigimunde))、およびブラインシュリンプ(アルテミア属(Artemia))はいずれも、長期間の無水生命状態(anhydrobiosis)に耐えることができる。こうした事例では糖であるトレハロースが水置換分子として振る舞い乾燥耐性を担うと提唱されている(Clegg 1986; Croweら 1987, 1992)のに対して、高等植物種子中では最も豊富な糖であるのはスクロースであり、それがこの環境中で同じ機能を果たすと主張されている。
【0004】
種子中に存在する乾燥保護糖類の相対的比率は変化し、このとき非還元二糖、例えばスクロース、およびオリゴ糖、例えばラフィノース、スタキオース、ベルバスコース、メレジトースは、種子の総乾燥重量の種々の部分を形成する。成熟種子中では多くの化合物が産生されて貯蔵され、それらは種子の乾燥耐性において役割を果たす(こうした化合物には、ガラクトシルシクリトールおよび後期胚発生豊富タンパク質(late embryogenesis abundant protein, LEA)が含まれる)。こうしたさらなる化合物の相対濃度は、種々の起源の種子の間でも異なる。
【0005】
発達中の種子において蓄積されることが頻繁に観察される化合物としては、スクロースやトレハロースのような二糖、ウンベリフェロースのような三糖、また、ラフィノース、スタキオース、ベルバスコースまたはメレジトースのようなオリゴ糖、ならびにガラクトシルシクリトールが挙げられる。さらに、濃い(robust)親水性タンパク質の複合セットを含むLEA (Galauら 1986)が種子成熟の後期に蓄積し、これらはオーソドックス種子の成熟乾燥の前の乾燥耐性の獲得に関わっている(Bewley and Oliver 1992; Kermode 1997)。
【0006】
非還元糖の蓄積、特にラフィノース系列(Koster and Leopold 1988; Leprinceら 1990; Blackmanら1992)および/またはガラクトシルシクリトール(Horbowicz and Obendorf 1994; Obendorf 1997)の蓄積は、乾燥耐性に関わっている。
【0007】
種子成熟の過程において、オリゴ糖の存在下ではスクロースは結晶化することができず、いくつかの種子および花粉の乾燥耐性において役割を担う(例えばLeopold and Vertucci 1986; Croweら 1987, 1992; Hoekstra and van Roekel 1988; Hoekstraら 1991)。
【0008】
こうした種々の化合物により得られる保護効果について2つの説明が提唱されている。最初の、いわゆる「水置換仮説」(Clegg 1986; Croweら 1992)では、化合物が、水を、とりわけ膜表面から押しのけ、それ故に脂質二重層が維持される、と提唱されている。
【0009】
第2の説明は、「ガラス状態」と一般に呼ばれるものを生じる、水相ガラス化に関する(Koster and Leopold 1988; Williams and Leopold 1989; Koster 1991; Leopoldら 1994; Obendorf 1997)。この機構は、水の喪失に際して、スクロースおよび会合するオリゴ糖(またはガラクトシルシクリトール)が高粘度の、アモルファス状の過飽和溶液を形成するという観察に基づく。ガラス相は、極低温においてさえも凍結せず、簡便に水の添加により細胞損傷を伴うことなく液相へと融解させることができる(Bruni 1989)。ガラスの粘度の高さ故に、ガラス内に閉じこめられた化合物は「静止」状態で保たれ、その状態では化学反応および分解過程は無視してよい速度でしか進行しない(Koster 1994)。種子内においては、ガラスそのものは、それ自体乾燥耐性を付与するわけではないが、乾燥状態にある種子成分の安定性に寄与する、と提唱されている(Leopoldら 1994)。ガラス形成は、乾燥耐性組織に共通する特徴である。
【0010】
他の化合物も乾燥耐性(および熱変化に対する耐性)に関わっている。重要な化合物群である後期胚発生豊富タンパク質(LEA)は、成熟種子において高レベルで発現され、発芽後間もなく消失し(Galauら 1991)、このことから乾燥耐性におけるその重要な役割が示唆される(Wolkersら 1995)。こうしたタンパク質の多くが単離されており、その多くは親水性であり高度に帯電している。
【0011】
こうした観察にもかかわらず、生物学的成分を保存するための従来技術の方法は、依然として、生物学的成分を、より高い温度(例えば4℃より高温)で長期間に渡り生物学的に活性な形態で保存することができないという問題を抱えている。このことは、例えば、冷凍が利用できない状況における生ワクチンなどの輸送において特に問題となる。
【0012】
例えばWO01/37656は、ウシRS(呼吸器合胞体)ウイルスの2:1 スクロース: メチルα-d-グルコピラノシド溶液中での保存を開示するが、得られる製品は4℃で真空下で貯蔵される。
【0013】
WO2005/040398はウイルスには関連してはいないものの、該文献は哺乳動物有核細胞に二糖を充填することを開示しており、ただし乾燥後には細胞を好ましくは4℃で(すなわち冷蔵下で)かつ真空下で保存することを指示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記1以上の問題を緩和しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明においては、乾燥損傷および熱損傷に耐えるための種子成熟中に観察される方法を応用して、乾燥(例えば凍結乾燥)の前に、種子の完全性の保護に関わる糖および他の化合物(またはその機能的等価物、例えばヒストンタンパク質)を特定の生物学的化合物と混合することにより、感受性の(敏感な)生物学的分子を同じように保護する。得られる製品は高度に安定な乾燥固体である。
【0016】
熱または乾燥に感受性の分子、特に生物学的成分(例えばウイルス粒子)を、貯蔵条件が変化する間に保存するために、乾燥期間中に種子および花粉に付与される保護機構を応用することができることが今回、見出された。
【0017】
発明の概要
本発明は、所定の目的に適した水溶性ガラス質(ガラス様)マトリックスを形成する組成物を用いて、通常は乾燥または熱に敏感な物質に乾燥耐性および熱耐性を付与することに関する。
【0018】
本発明は、あるいは乾燥や熱に敏感な生物学的分子、例えばウイルス粒子および他の化合物に対して、植物界において種子および花粉の乾燥安定性および熱安定性に用いられる保護方法を応用するためにバイオミミクリー(biomimicry)を用いる。このことは、例えばウイルス粒子、ウイルスワクチンおよびウイルスベクターを用いる方法について、貯蔵、輸送、製造および投与を容易にすることを可能にする。
【0019】
本発明の一の態様は、種子における乾燥耐性を助ける特定の糖(例えばスクロース、トレハロース、ウンベリフェロース、ラフィノース、スタキオース、ベルバスコース、メレジトース)と、LEAまたは他の供給源(例えば哺乳動物細胞もしくは合成)から単離された類似の物理的特性(例えば親水性もしくは電荷)を有するタンパク質もしくはペプチドのような他の化合物と、乾燥感受性または熱感受性物質とを混合し、そのことにより当技術分野で既知の方法(凍結乾燥も含まれる)により乾燥されたときに結晶化が予防され、それまで感受性であった物質に乾燥耐性または熱耐性が付与されるようにすることを必要とする。
【0020】
本発明の一の実施形態においては、糖の高度に濃縮されたまたは飽和した溶液を生物学的化合物と混合することにより、既知の方法(例えば凍結乾燥)による最終的乾燥の前に、保護すべき化合物の浸透(osmosis)による微視的乾燥を引き起こすことができる。
【0021】
乾燥保護媒体と混合した後、サンプルは、種々の残存含水率、例えば0.1g H2O g-1 乾燥重量へと乾燥させることにより、冷凍温度よりも高い温度、例えば約4℃〜約45℃またはそれ以上において長期安定性を付与することができる。
【0022】
種子における乾燥耐性に必要であることが示された化合物(例えばLEA)、または同じ様な物理的特性(例えば電荷または親水性)を有する天然の供給源(例えば植物または哺乳動物起源)由来のタンパク質もしくはペプチド(例えばヒストン)、または合成されたタンパク質もしくはペプチドの添加は、保存すべき生物学的化合物の乾燥耐性をさらに強化する。
【0023】
本発明の一の態様においては、糖および生物学的成分を含む乾燥または保存製品を提供する。
【0024】
本発明の別の態様においては、生物学的成分の保存のための糖の使用を提供する。
【0025】
本発明のさらなる態様においては、生物学的成分を糖と混合することを含む、生物学的成分の保存方法を提供する。
【0026】
好ましくは、タンパク質のような荷電物質も用意し、それを糖および生物学的成分と混合する。物質が正に帯電していることが特に好ましいが、いくつかの別の実施形態においては物質は負に帯電していてもよく、または無電荷でありうる。
【0027】
糖がアモルファス固体マトリックスを形成することは好ましい。
【0028】
好ましくは、荷電物質は、7より高いpI値と少なくとも0の正電荷を有する。いくつかの実施形態において、荷電物質は、0〜5の正電荷を有する。
【0029】
都合よく、荷電物質は10より高いpI値と少なくとも+5の正電荷を有する。
【0030】
好ましくは、糖は二糖、三糖、オリゴ糖またはその混合物である。
【0031】
有利に、糖は、スクロース、トレハロース、ウンベリフェロース、ラフィノース、スタキオース、ベルバスコース、メレジトース、またはその混合物を含む。
【0032】
都合よく、糖はスクロースおよびラフィノースを含む。
【0033】
あるいは、糖はトレハロースおよびラフィノースを含む。
【0034】
あるいは、糖はトレハロースおよびスタキオースを含む。
【0035】
あるいは、糖はスクロースおよびスタキオースを含む。
【0036】
好ましくは、糖は80%〜90%スクロースおよび10%〜20%ラフィノース、より好ましくは85%スクロースおよび15%ラフィノースを含む。
【0037】
あるいは、糖は80%〜90%トレハロースおよび10%〜20%ラフィノース、より好ましくは85%トレハロースおよび15%ラフィノースを含む。
【0038】
あるいは、糖は70容量%〜80容量%スクロースおよび20容量%〜30容量%スタキオース、好ましくは75容量%スクロースおよび25容量%のスタキオースを含む。
【0039】
あるいは、糖は70容量%〜80容量%トレハロースおよび20容量%〜30容量%スタキオース、好ましくは75容量%トレハロースおよび25容量%のスタキオースを含む。
【0040】
有利に、糖は二糖と三糖または四糖との混合物を含む。
【0041】
都合よく、植物種子またはその類似物の抽出物も提供され、該抽出物は生物学的成分の乾燥耐性に影響を及ぼすことができるものである。
【0042】
好ましくは、正電荷物質は、後期胚発生豊富タンパク質(late embryogenesis abundant protein)、ヒストンタンパク質または高移動度群タンパク質(high mobility group protein)を含む。
【0043】
有利に、ヒストンタンパク質はヒストン2Aである。
【0044】
都合よく、糖は、オリゴ糖およびスクロースおよび/またはウンベリフェロースおよび/またはトレハロースを含む。
【0045】
好ましくは、スクロースまたはウンベリフェロースまたはトレハロース対オリゴ糖の比は0.9〜1.1、好ましくは1.0である。
【0046】
有利に、スクロースまたはウンベリフェロースまたはトレハロース対オリゴ糖の比は1.0未満である。
【0047】
都合よく、生物学的成分は、酵素、細胞増殖サプリメント、ワクチン製剤 細胞、血小板、ウイルス、抗体もしくは抗体フラグメント、医薬、抗生物質、ペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、ヌクレオシドまたはポリ核酸を含む。
【0048】
生物学的成分がウイルス、酵素またはタンパク質を含むことは特に好ましい。
【0049】
有利に、ウイルスはバクテリオファージである。
【0050】
あるいは、ウイルスはDNAウイルスまたはRNAウイルスである。
【0051】
都合よく、ウイルスは、麻疹ウイルス、ポリオウイルス、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルス、RSウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、デングウイルス、肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、水痘ウイルス、ジフテリアウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、または日本脳炎ウイルスである。
【0052】
好ましくは、生物学的成分は単離された生物学的成分である。
【0053】
有利に、生物学的成分は、血液、乳汁、尿、または細胞培養培地から単離されたものである。
【0054】
あるいは、生物学的成分はウイルス、原核細胞、真核細胞、植物または菌類の供給源から単離されたものである。
【0055】
いくつかの実施形態において、生物学的成分は細胞ではないまたは血小板ではない。
【0056】
本発明のさらなる態様において、医薬用途の本発明の乾燥または保存製品を提供する。
【0057】
生物学的成分の保存方法は、(i)生物学的成分を糖および正電荷タンパク質と混合すること、および(ii)糖をアモルファス固体マトリックスに変換すること、の各工程を含むことが好ましい。しかしながら、これは本発明に必須ではない。
【0058】
都合よく、上記方法は、混合物を乾燥させる工程、好ましくは凍結乾燥により乾燥させる工程を含む。
【0059】
有利に、上記方法は、混合物を真空に供することをさらに含む。
【0060】
都合よく、真空は、200mbar以下、好ましくは100mbar以下の圧力で適用する。
【0061】
有利に、真空は、少なくとも10時間、好ましくは16時間以上の期間に渡り適用する。
【0062】
都合よく、上記方法の工程(ii)は、混合物を凍結させること、好ましくは瞬間凍結(snap freezing)により凍結させることを含む。
【0063】
好ましくは、上記方法は、-30℃以下、好ましくは-78℃以下、より好ましくは-196℃以下の温度で混合物を凍結させる工程を含む。
【0064】
好ましくは、上記方法は、乾燥混合物を媒体中に溶解させることにより生物学的成分を回収する工程をさらに含む。
【0065】
都合よく、上記方法は、混合物を、乾燥粉末注射として投与するのに適した製剤へと加工する工程をさらに含む。
【0066】
有利に、上記方法は、混合物を、液体注射として投与するのに適した製剤へと加工する工程をさらに含む。
【0067】
好ましくは、上記方法は、混合物を、摂取によるまたは肺経路による投与に適した製剤に加工する工程をさらに含む。
【0068】
都合よく、乾燥工程は浸透(osmosis)により行う。
【0069】
あるいは、乾燥工程は浸透およびそれに続く凍結乾燥を含む。
【0070】
あるいは、乾燥工程は浸透およびそれに続く真空乾燥を含む。
【0071】
有利に、上記方法は、少なくとも0℃、好ましくは少なくとも4℃、より好ましくは少なくとも10℃、より好ましくは少なくとも20℃およびより好ましくは少なくとも25℃の温度で、少なくとも24時間、好ましくは少なくとも7日間に渡り混合物を貯蔵する工程をさらに含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、生物学的成分は、生物学的成分の混合物を含む。
【0073】
生物学的成分が細胞を含む実施形態においては、上記方法は細胞を再水和させる工程および細胞を増殖させる工程をさらに含むことが好ましい。
【0074】
有利に、糖を生物学的成分と混合することは、水溶性ガラス質マトリックスを生じる。
【0075】
本発明のさらに別の態様においては、本発明の乾燥または保存製品、および製薬上許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0076】
本明細書において、「生物学的成分」という用語は、生きている供給源から得られうる、またはそれ自身生きている、あらゆる分子、化合物または構造体(例えばウイルス、細胞および組織が含まれる)を意味する。
【0077】
本明細書において、「ウイルス」という用語には、「野生型ウイルス」および突然変異ウイルス(例えば一部のワクチンを形成する弱毒ウイルスなど)の両方が含まれる。
【0078】
本明細書において、「ガラス質の」または「ガラス質-ガラス」という用語は、一般的意味で使用され、何らかのガラス化工程を示唆するまたは含むのではなく、アモルファス非晶質固体(または半固体)を意味する。対照的に、ガラス化は高温での乾燥およびその後の冷却を含み、これはWO99/27071に概説されているとおりである。
【0079】
さらに、「アモルファス」という用語は、構造化されておらずかつ観察可能な規則的なまたは反復される分子配置を有しないこと(すなわち非晶質)を意味する。
【0080】
本明細書において、「瞬間凍結(snap freezing)」という用語は、溶液が固体となるまで-196℃で液体窒素中に浸すことを含む。
【0081】
理論に拘束されることを望まないが、本発明は、荷電物質(複数種も含まれる)、保護すべき生物学的成分およびアモルファス非晶質固体支持体の間の相互作用の結果として機能すると考えられる。より詳細には、荷電物質が生物学的成分と流体静力学的に相互作用し、水和物水を置換する。乾燥に際して、この荷電物質と生物学的成分との親密な相互作用は、糖分子により生じる固化性(solidifying)支持構造の補助により維持される。固化された糖の主な役割は、感受性の生物学的成分(例えばウイルス)と協調して、安定性の大部分を担う荷電物質(例えばヒストン2a)のための支持マトリックスを提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0082】
詳細な説明
本発明のいくつかの実施形態においては、植物種子に存在する糖および他の化合物(またはその物理的特性を共有する物質、例えばヒストンタンパク質)であって、水和物水の除去によりガラス質ガラス(言い換えると、アモルファスの、すなわち非晶質の、マトリックス)に還元されうる、また、温度が上昇したときに糖-ガラスまたはタンパク質-糖-ガラスの形態のいずれかにより、感受性生物学的化合物(例えばウイルス粒子)に乾燥保護および熱保護を付与する、前記糖および他の化合物を提供する。
【0083】
本発明の一の実施形態において、成熟種子に一般に存在する糖および他の化合物(または物理的に相同な物質、例えばヒストン2A (Kossel, A. (1928) The Protamines and Histones))は、ガラス質ガラスの形態として、当技術分野で既知の方法(例えば凍結乾燥)を用いる乾燥の前に、保護すべき物質と一緒にして混合する。
【0084】
本発明の別の実施形態において、種子の乾燥耐性に寄与する追加の成分、例えばLEAまたは他の供給源由来の類似化合物(例えば哺乳動物起源のヒストンタンパク質など)は、保護すべき生物学的化合物の乾燥耐性または熱耐性を強化するために、乾燥前に、ガラス質タンパク質-糖ガラスの形態で含まれる。ヒストンタンパク質は、LEAと似た複数の物理的特性を有する、一般的な哺乳動物タンパク質である。
【0085】
正電荷を有する適当なタンパク質の他の例としては、ヒストン2B、ヒストン3、ヒストン4 および他のDNA結合タンパク質が挙げられる。他の実施形態において、正電荷を有するタンパク質は、高移動度群タンパク質(high mobility group protein)、すなわちクロマチン構造または遺伝子調節に関わる非ヒストンタンパク質である。
【0086】
いくつかの実施形態において、乾燥耐性または熱耐性が付与されるべき物質は、天然の供給源(これにはウイルス、原核細胞、真核細胞、植物または菌類が含まれる)から単離される。
【0087】
あるいはまた、いくつかの実施形態において、保護すべき物質は、医薬のような合成化合物、例えば抗生物質、あるいはペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、ヌクレオシドまたはポリ核酸である。
【0088】
いくつかの実施形態においては、複数の化合物を、保存するマトリクス中で加工する前または後に混合して、一緒に保存する。
【0089】
好ましい実施形態において、製品は、瞬間凍結させることおよびその後製品を乾燥させることを含む方法により保存される。瞬間凍結は、例えば、製品を液体窒素またはドライアイス中に浸すことにより達成される。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態においては、産物を、例えば凍結後に乾燥させる。特定の実施形態では、乾燥は10 Torr付近にて真空乾燥を用いて行われる。しかしながら、真空乾燥は本発明に必須ではなく、また、他の実施形態においては、産物を、回転(すなわちロータリー乾燥)凍結乾燥(これは下でさらに詳述する)または沸騰させる。
【0091】
化合物は、種々の容器(アンプルやバイアルが挙げられる)内で、またはその後使用するための再水和のためにプラスチック上で直接、凍結乾燥させることができる。
【0092】
本発明の別の実施形態において、生存細胞は、再水和後の増殖および適当な培地中での増殖のために、乾燥耐性を付与される。
【0093】
組成物は、当技術分野で既知のあらゆる種類の方法を用いる乾燥により形成することができるが、好ましくは凍結乾燥により形成する。
【0094】
形成された組成物はさらに加工することができる。例えば該組成物は、粉砕して肺投与もしくは粉末注射に適した微粉末を形成してもよく、または注射に適した媒体中で用時調製してもよい。
【0095】
いくつかの実施形態において、本発明の製品は、治療方法または予防方法において個体に投与される。いくつかの実施形態において、本発明の製品は医薬組成物の一部を構成し、該医薬組成物は製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤も含む(Remington’s Pharmaceutical Sciences in US Pharmacopoeia, 1984, Mack Publishing Company, Easton, PA, USAを参照のこと)。患者が必要とする用量は、当技術分野で既知の方法、例えば用量応答実験を用いて決定することができる。治療方法または予防方法において本発明を使用することのできる特定の例は、ワクチン接種を必要とする患者への生ワクチンの投与においてである。本発明の製品は、種々の経路により、例えば経口または非経口経路により、投与することができる。
【実施例】
【0096】
実施例1
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の85% w/vスクロースおよび15% w/v ラフィノースの溶液を、等容量の精製組換えアデノウイルス(6.8x1012pfu/ml)(該ウイルスはレポーター遺伝子のβ-ガラクトシダーゼを発現する)および10% w/v ウシ血清アルブミン(BSA)と混合した。混合物を100μlのアリコートに小分けし、まず液体N2中で凍結し、次いで100mbarの真空に16時間供することにより凍結乾燥させた。次いでサンプルを、必要となるまで直ちに-70℃に置くかまたは、65℃で7日もしくは14日加熱した。結果を表1に示す。
【表1】

【0097】
実施例2
実施例1に記載の方法にしたがい、保存ウイルスのさらなるサンプルを調製し、凍結乾燥後に、サンプルを直ちに凍結させるかまたは95℃にて3日もしくは7日間に渡り加熱した。結果を表2に示す。
【表2】

【0098】
実施例3
293細胞の単層にレポーター遺伝子εGFPを発現する組換えアデノウイルスを接種した。完全な細胞変性効果が明らかな場合には、細胞を掻き取ることにより回収し、超音波処理により溶解させた。次に溶解細胞を細胞上清と混合し、ウイルスストックを作製した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の85%w/vスクロースおよび15%w/vラフィノースの溶液を、等容量の組換えアデノウイルス(5x106pfu/ml)および10%w/vウシ血清アルブミン(BSA)と混合した。混合物を100μlのアリコートに小分けし、その後まず液体N2中で凍結させ次いで100mbarの真空に16時間供することにより凍結乾燥させた。次にサンプルは、必要となるまで直ちに-70℃に置くか、または、65℃にて7日もしくは14日加熱した。結果を表3に示す。
【表3】

【0099】
実施例4
3容量の1g/mlスクロース(リン酸緩衝生理食塩水中)、1容量の1g/mlスタキオース(リン酸緩衝生理食塩水中)、および1容量の1mg/ml ヒストン2A (Boehringer Mannheim)(リン酸緩衝生理食塩水中)を含む溶液を調製した。溶液を250 μl容量に小分けし、次いで50μlの組換えアデノウイルス (5x106pfu/ml)を添加した。混合した後に、サンプルを必要となるまで-70℃で貯蔵するか、またはまず液体N2 中で凍結させその後100mbarの真空に16時間供することにより凍結乾燥させた。凍結乾燥後に、サンプルは、必要となるまで-70℃に置くか、または、65℃で7日間加熱した。結果を表4に示す。
【表4】

【0100】
実施例5
3容量の1g/mlスクロース(リン酸緩衝生理食塩水中)、1容量の1g/mlスタキオース(リン酸緩衝生理食塩水中)、および1容量の1mg/mlヒストン2A(Boehringer Mannheim)(リン酸緩衝生理食塩水中)を含む溶液を調製した。溶液を50 μl容量に小分けし、次いで5μlの1mg/ml β-ガラクトシダーゼを添加した。混合後、サンプルは必要となるまで-70℃で貯蔵するか、またはまず液体N2 中で凍結させその後100mbarの真空に16時間供することにより凍結乾燥させた。凍結乾燥後に、サンプルは、必要となるまで-70℃に置くか、または45℃にて示した種々の時間に渡り加熱した。結果を表5に示す。
【表5】

【0101】
実施例6
3容量の1g/mlスクロース(リン酸緩衝生理食塩水中)、1容量の1g/ml スタキオース (リン酸緩衝生理食塩水中)、および1容量の1mg/ml ヒストン2A (Boehringer Mannheim) (リン酸緩衝生理食塩水中)を含む溶液を調製した。溶液を50 μl容量に小分けし、その後5μlの1mg/mlフォティナス・ピラリス(Photinus Pyralis)ルシフェラーゼを添加した。混合後、サンプルは、必要となるまで-70℃で貯蔵するか、またはまず液体N2 中で凍結させその後100mbarの真空に16時間供することにより凍結乾燥させた。凍結乾燥後に、サンプルは必要となるまで-70℃に置くか、または65℃にて示した種々の時間に渡り加熱した。結果を表6に示す。
【表6】

【0102】
実施例7-ポリオウイルス
ポリオウイルス: セービン株ポリオウイルス1型(力価log 10 CCID50 = 8.0)を、賦形剤 (PBSA中に、スクロース(100% w/v); スタキオース (100% w/v); ヒストンH2A (1mg/ml)をそれぞれ3:1:1 v/vの比率で含む)と混合(1:5v/v)した。混合物を、-30℃の温度にて2日間の凍結乾燥により乾燥させた。この時間の後に、サンプルは、使用するまで-70℃にて貯蔵するかまたは直ちに使用した。Hep 2C細胞においてCCID50手法を使用して、ポリオウイルスをアッセイした。結果を表7に示す。
【表7】

【0103】
実施例8-麻疹ウイルス
5.45 log10 pfu/mlの力価の麻疹ウイルスSchwarz株を、賦形剤(PBSA中に、スクロース(100% w/v); スタキオース(100% w/v); ヒストンH2A (1mg/ml)をそれぞれ3:1:1 v/vの比率で含む)と混合(1:5v/v)した。混合物を-30℃にて2日間の凍結乾燥により乾燥させた。この時間の後に、サンプルは、使用するまで-70℃にて貯蔵するかまたは直ちに使用した。VERO細胞にプラークアッセイを用いて麻疹をアッセイした。結果を表8に示す。
【表8】

【0104】
実施例9
5.45 log10 pfu/mlの力価の麻疹ウイルスSchwarz株を、賦形剤(PBSA中に、スクロース(100% w/v); スタキオース (100% w/v); ヒストンH2A (1mg/ml)をそれぞれ3:1:1 v/vの比率で含む)と混合(1:5v/v)した。サンプルを室温で17時間乾燥させることにより、混合物を真空乾燥により乾燥させた。この時間の後に、サンプルは、使用するまで-70℃にて貯蔵するかまたは直ちに使用した。VERO細胞に対してプラークアッセイを用いて麻疹をアッセイした。結果を表9に示す。
【表9】

【0105】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖、荷電物質および生物学的成分を含む乾燥または保存製品であって、糖がアモルファス固体マトリックスを形成している、前記乾燥または保存製品。
【請求項2】
荷電物質がタンパク質である、請求項1に記載の乾燥または保存製品。
【請求項3】
荷電物質が7より高いpI値と少なくとも0の正電荷を有する、請求項1または2に記載の乾燥または保存製品。
【請求項4】
荷電物質が10より高いpI値と少なくとも+5の正電荷を有する、請求項3に記載の乾燥または保存製品。
【請求項5】
糖が二糖、三糖、オリゴ糖、またはその混合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の乾燥または保存製品。
【請求項6】
糖が、スクロース、トレハロース、ウンベリフェロース、ラフィノース、スタキオース、ベルバスコース、メレジトース、またはその混合物を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の乾燥または保存製品。
【請求項7】
糖がスクロースを含む、請求項6に記載の乾燥または保存製品。
【請求項8】
糖がトレハロースを含む、請求項6に記載の乾燥または保存製品。
【請求項9】
糖がスクロースおよびラフィノースを含む、請求項7に記載の乾燥または保存製品。
【請求項10】
糖がトレハロースおよびラフィノースを含む、請求項7に記載の乾燥または保存製品。
【請求項11】
糖がトレハロースおよびスタキオースを含む、請求項7に記載の乾燥または保存製品。
【請求項12】
糖がスクロースおよびスタキオースを含む、請求項7に記載の乾燥または保存製品。
【請求項13】
糖が、80%〜90%のスクロースおよび10%〜20%のラフィノース、好ましくは85%のスクロースおよび15%のラフィノースを含む、請求項9に記載の乾燥または保存製品。
【請求項14】
糖が80%〜90%のトレハロースおよび10%〜20%のラフィノース、好ましくは85%のトレハロースと15%のラフィノースを含む、請求項10に記載の乾燥または保存製品。
【請求項15】
糖が、70容量%〜80容量%のスクロースおよび20容量%〜30容量%のスタキオース、好ましくは75容量%のスクロースおよび25容量%のスタキオースを含む、請求項12に記載の乾燥または保存製品。
【請求項16】
糖が、70容量%〜80容量%のトレハロースおよび20容量%〜30容量%のスタキオース、好ましくは75容量%のトレハロースおよび25容量%のスタキオースを含む、請求項10に記載の乾燥または保存製品。
【請求項17】
糖が二糖と、三糖または四糖との混合物を含む、請求項5に記載の乾燥または保存製品。
【請求項18】
植物種子またはその類似物の抽出物をさらに含み、該抽出物が生物学的成分の乾燥耐性に影響を及ぼすことのできる、請求項1〜17のいずれか1項に記載の乾燥または保存製品。
【請求項19】
荷電物質が、後期胚発生豊富タンパク質、ヒストンタンパク質または高移動度群タンパク質を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の乾燥または保存製品。
【請求項20】
ヒストンタンパク質がヒストン2Aである、請求項19に記載の乾燥または保存製品。
【請求項21】
糖が、オリゴ糖およびスクロースおよび/またはウンベリフェロースおよび/またはトレハロースを含む、請求項1〜20のいずれか1項に記載の乾燥または保存製品。
【請求項22】
スクロースまたはウンベリフェロースまたはトレハロース対オリゴ糖の比が0.9〜1.1、好ましくは1.0である、請求項21に記載の乾燥または保存製品。
【請求項23】
スクロースまたはウンベリフェロースまたはトレハロース対オリゴ糖の比が、1.0未満である、請求項21に記載の乾燥または保存製品。
【請求項24】
生物学的成分が、酵素、細胞増殖サプリメント、ワクチン製剤、細胞、血小板、ウイルス、抗体または抗体フラグメント、医薬、抗生物質、ペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、ヌクレオシドまたはポリ核酸を含む、請求項1〜23のいずれか1項に記載の乾燥または保存製品。
【請求項25】
生物学的成分がウイルス、酵素またはタンパク質を含む、請求項24に記載の乾燥または保存製品。
【請求項26】
ウイルスが、バクテリオファージである、請求項25に記載の乾燥または保存製品。
【請求項27】
ウイルスがDNAウイルスまたはRNAウイルスである、請求項25に記載の乾燥または保存製品。
【請求項28】
ウイルスが、麻疹ウイルス、ポリオウイルス、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルス、RS(呼吸器合胞体)ウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、デングウイルス、肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、水痘ウイルス、ジフテリアウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、または日本脳炎ウイルスである、請求項26に記載の乾燥または保存製品。
【請求項29】
生物学的成分が単離された生物学的成分である、請求項1〜28のいずれか1項に記載の乾燥または保存製品。
【請求項30】
生物学的成分が血液、乳汁、尿、または細胞培養培地から単離されたものである、請求項29に記載の乾燥または保存製品。
【請求項31】
生物学的成分が、ウイルス、原核細胞、真核細胞、植物または菌類の供給源から単離されたものである、請求項29に記載の乾燥または保存製品。
【請求項32】
生物学的成分が細胞ではないまたは血小板ではない、請求項1〜31のいずれか1項に記載の乾燥または保存製品。
【請求項33】
医薬用である、請求項1〜32のいずれか1項に記載の乾燥または保存製品。
【請求項34】
生物学的成分の保存のための糖および荷電物質の使用であって、糖がアモルファス固体マトリックスの形態である前記使用。
【請求項35】
荷電物質がタンパク質である、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
荷電物質が7より高いpI値と少なくとも0の正電荷を有する、請求項34または35に記載の使用。
【請求項37】
荷電物質が10より高いpI値と少なくとも+5の正電荷を有する、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
(i)生物学的成分を、糖および正電荷物質と混合すること、および(ii)糖をアモルファス固体マトリックスに変換すること、の各工程を含む生物学的成分の保存方法。
【請求項39】
荷電物質がタンパク質である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
荷電物質が7より高いpI値と少なくとも0の正電荷を有する、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
荷電物質が10より高いpI値と少なくとも+5の正電荷を有する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
工程(ii)が混合物を乾燥させることを含む、請求項38〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
乾燥工程が、混合物を真空に供することをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
真空を、200mbar以下、好ましくは100mbar以下の圧力で適用する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
真空を、少なくとも10時間、好ましくは16時間以上の期間に渡り適用する、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
工程(ii)が、好ましくは乾燥前に、混合物を凍結させることを含む、請求項38〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
凍結が瞬間凍結を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
工程(ii)が、混合物を-30℃以下、好ましくは -78℃以下、より好ましくは-196℃以下の温度で凍結することを含む、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
乾燥混合物を媒体中に溶解することにより生物学的成分を回収する工程をさらに含む、請求項38〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
混合物を、乾燥粉末注射として投与するために適した製剤に加工する工程をさらに含む、請求項38〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
混合物を、液体注射として投与するために適した製剤に加工する工程をさらに含む、請求項38〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
混合物を、摂取によるまたは肺経路による投与に適した製剤に加工する工程をさらに含む、請求項38〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
乾燥工程を浸透により行う、請求項42または請求項42に従属するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項54】
乾燥工程が、浸透およびそれに続く凍結乾燥を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
乾燥工程が、浸透およびそれに続く真空乾燥を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
混合物を、少なくとも0℃、好ましくは少なくとも4℃、より好ましくは少なくとも10℃、より好ましくは少なくとも20℃、およびより好ましくは少なくとも25℃の温度で、少なくとも24時間、好ましくは少なくとも7日の期間に渡り貯蔵する工程をさらに含む、請求項38〜55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
糖が二糖、三糖、オリゴ糖またはその混合物である、請求項38〜56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
糖が、スクロース、ウンベリフェロース、ラフィノース、スタキオース、ベルバスコース、メレジトース、またはその混合物を含む、請求項38〜57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
糖がスクロースを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
糖が、スクロースおよびラフィノースを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
糖が、80%〜90%スクロースおよび10%〜20%ラフィノース、好ましくは85%スクロースおよび15%ラフィノースを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
糖が、スクロースおよびスタキオースを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
糖が70容量%〜80容量%のスクロースおよび20容量%〜30容量% のスタキオース、好ましくは75容量%のスクロースおよび25%のスタキオースを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
生物学的成分を植物種子またはその類似物の抽出物と混合することをさらに含み、該抽出物が生物学的成分の乾燥耐性に影響を及ぼすことができる、請求項38〜63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
正電荷タンパク質が後期胚発生豊富タンパク質またはヒストンタンパク質である、請求項38〜64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
ヒストンタンパク質がヒストン2Aである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
糖が、オリゴ糖およびスクロースおよび/またはウンベリフェロースおよび/またはトレハロースを含む、請求項38〜66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
スクロースまたはウンベリフェロースまたはトレハロース対オリゴ糖の比が0.9〜1.0である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
スクロースまたはウンベリフェロースまたはトレハロース対オリゴ糖の比が1.0未満である、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
生物学的成分が、酵素、細胞増殖サプリメント、ワクチン製剤、細胞、血小板、ウイルス、抗体もしくは抗体フラグメント、医薬、抗生物質、ペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、ヌクレオシドまたはポリ核酸を含む、請求項38〜69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
生物学的成分がウイルス、酵素またはタンパク質を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
ウイルスがバクテリオファージである、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
ウイルスがDNAウイルスまたはRNAウイルスである、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
ウイルスが麻疹ウイルス、ポリオウイルス、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルス、RSウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、デングウイルス、肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、水痘ウイルス、ジフテリアウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、または日本脳炎ウイルスである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
生物学的成分が、単離された生物学的成分である、請求項38〜74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
生物学的成分が血液、乳汁、尿、または細胞培養培地から単離されたものである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
生物学的成分が、ウイルス、原核細胞、真核細胞、植物または菌類の供給源から単離されたものである、請求項75または76に記載の方法。
【請求項78】
前記生物学的成分が、生物学的成分の混合物を含む、請求項38〜77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
生物学的成分が細胞を含み、かつ方法が細胞を再水和させる工程および細胞を増殖させる工程をさらに含む、請求項70に記載の方法。
【請求項80】
生物学的成分が細胞ではないまたは血小板ではない、請求項38〜78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
糖を生物学的成分と混合することが、水溶性ガラス質マトリックスを生じる、請求項38〜80のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−530066(P2008−530066A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554636(P2007−554636)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000458
【国際公開番号】WO2006/085082
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507268433)スタビリテック リミテッド (1)
【Fターム(参考)】