説明

乾燥試薬装置における液体透過性組成物

流体試料中の分析対象物を検出するための多層装置(16)であって、第一の層(10)からの試料の一部を受け、吸収するための第一の吸収性層(12)と、第一の吸収性層(10)と第二の吸収性層との間に配置された、両層をいっしょに保持するための接着剤として作用する液体透過性層(14)とを含む多層装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年6月12日出願の米国特許出願第10/459,825号の優先権を主張し、この出願は、2003年1月13日出願のPCT出願PCT/IB03/00055の優先権を主張し、この出願は、2002年1月15日出願の米国特許仮出願第60/348,253号の優先権を主張する。
【0002】
発明の背景
診断用乾燥試薬分析装置は、尿分析及び血液試験、特にグルコースモニタリングの臨床状況で使用される一般的な製品である。結果は、しきい値及び定量的出力として計器的又は目視的に得られる。乾燥試薬分析装置は通常、装置に適用される流体試料中の分析対象物(検出される成分)と反応して検出可能な応答を発する分散試薬系を含有する吸収性パッドを含む。これらの試薬は、指示色素、金属、酵素、ポリマー、抗体及びキャリヤ上に乾燥付着させた他の様々な化学物質を含有する。よく使用されるキャリヤは、多様な試料吸収性及び輸送性を有する紙、膜又はポリマーである。
【0003】
一部の試薬ストリップは、分析対象物に対する色応答を発するために必要なすべての化学物質を含有するために一つの試薬区域しか使用しない。場合によっては、最高で5種類の競合性で同期的な化学反応が一つの試薬層内で起こる。尿中の血液を検出する方法であるHemastix(登録商標)試薬ストリップ(Bayer)は、一つの試薬で起こる多数の化学反応の一例である。分析対象物の検出反応は、ジイソプロピルベンゼンジヒドロペルオキシドによる指示薬3,3′,5,5′−テトラメチル−ベンジジンの酸化を触媒するヘモグロビンのペルオキシダーゼ様活性に基づく。同じパッドで、ジイソプロピルベンゼンジヒドロペルオキシドによるアスコルビン酸の酸化を触媒する第二鉄−HETDA錯体の触媒活性に基づく、アスコルビン酸干渉を排除するための第二の反応が起こる。
【0004】
乾燥試薬ストリップ中で起こる典型的な化学反応は、色素結合反応、酵素的反応、免疫学的反応及び酸化還元触媒反応として分類することができる。アルブミンのような分析対象物への色素結合は、マイクロモルレベルで色の変化をもたらす。指示色素は、分析対象物と共有結合することもできるし(ビリルビンと結合するジアゾニウム化合物)、分析対象物と強固に会合することもできる(ナトリウム感知性指示薬)。酵素的反応は、色形成性基質との反応を通じてマイクロモルレベルでの酵素の検出に使用することができる。酵素的反応はまた、酵素との反応を通じて色付き最終生成物を生じさせることによる、グルコースのような分子の検出に使用することもできる。粒子標識抗体が、クロマトグラフィーに基づく免疫学的ストリップの検出可能な応答を提供する主要な試薬である。酸化還元触媒反応は、ヘモグロビンのような特定の分析対象物の存在下で指示薬を酸化又は還元するために金属キレート化合物の使用を含み、ナノモルレベルまでの分子を検出することができる。これらの装置の特定のものは、酸化還元色素の検出可能な変色を生じさせるための、ペルオキシダーゼ及びヒドロペルオキシドの存在下における分析対象物との酵素的反応を含み、通常、吸収性パッドとしてのろ紙の使用に基づく。
【0005】
乾燥試薬装置は、多くの場合、一つの分析対象物を計測するために多数の試薬層を含む。この変形は、化学試薬系を別個の試薬層に配置することを可能にし、反応分離工程、たとえばクロマトグラフィー及びろ過を考慮したものである。免疫クロマトグラフィーストリップは、化学反応が試薬の別個の層で起こるように構築されている。ヒト絨毛性ゴナドトロピンのためのCLINITEST(登録商標)hCGストリップ試験(Bayer)が、四つの試薬層を有する乾燥試薬ストリップ試験の一例である。ストリップの先端にある第一の層は、試料適用のための層であり、次の試薬層とオーバーラップして、第一の試薬区域への患者試料(尿)の移行を提供する。そして、処理された試料は、発色のための反応体が固定化されている第三の層の中を移動する。この移動は、過剰な試料を吸収する第四のパッドによって駆動される。クロマトグラフィー反応は、試験又は捕捉ゾーンと呼ばれる、典型的にはニトロセルロース膜である第三の層で起こる。第一及び第二の層で、分析対象物の特異的抗体が試料中の分析対象物と反応し、クロマトグラフィーによってニトロセルロース膜に移される。抗体は、標識としての色付きラテックス粒子と結合している。試料が分析対象物を含有するならば、分析対象物は標識抗体と反応する。捕捉ゾーンでは、第二の抗体がバンドに固定化され、分析対象物が存在する場合に粒子を捕捉する。色付きの試験ラインが形成する。また、第二の試薬バンドが捕捉ゾーンに固定化されて、対照ラインが粒子と反応して色を形成することを可能にする。試験システムが正しく作用している場合、患者試料中にhCGが存在しない場合でも、対照ラインの色は常に形成する。
【0006】
全血グルコースストリップは、多くの場合、多数の試薬を使用して、色生成層を干渉する無傷の赤血球を捕らえる。一例は、色生成層の真上に配置された捕捉層を使用するGLUCOMETER Encore(登録商標)(Bayer)である。色は、ストリップの底部から透明な窓越しに読み取られる。他の設計は、試料が、捕捉層とは別の色生成層に移動することを可能にし、色はストリップの一番上から読み取られる。全血試験ストリップは、多くの場合、プラスチックカセットを使用して反応層を所定位置に保持する。また、多数の試薬層がフィルムスライド、たとえば、Eastman Kodak社によって開発されたEktachem分析装置(Vitros)とで使用される試薬系に適用されていた(1980)。スライドは、多数の分離層、展開及び色形成層を使用して色を増強することができるものであった。
【0007】
これらの乾燥試薬装置は廉価で使いやすいが、いくつかの制限をかかえている。たとえば、イムノアッセイは、機能するために成分の分離を要し、それは多くの場合、タンパク質結合によって達成される。試薬及び分析対象物の移動が、しばしば問題を提示し、不正確な結果をもたらす。層間の接続は、正確な結果を得るためには決定的に重要であり、多くの場合、これらの層の間の流体移行は制御しにくい。Greenquistの米国特許第4,806,311号によって記載されているような乾燥試薬フォーマットでは、分析対象物は、標識試薬と結合したのち、検出ゾーンに通され、そこで、標識試薬の量によって分析対象物の量が計測される。未反応の標識試薬は、試薬ゾーンの固定化された分析対象物によって固定化される。検出ゾーンに通される標識試薬−分析対象物は、検出ゾーンに固定化されることにより、逆方向に移動することはできない。
【0008】
多層装置の組み立て及び製造は、完全に成功しているともいえない。たとえばEP0226465A2及び米国特許第3,992,159号では、試薬の層同士を分けるためにフィルムが使用されている。しかし、これらの装置は、フィルムの孔径、形状及び厚さの綿密な制御を要する。このような設計の一つの結果として、試薬をろ紙に配置することはできない。理由は、このようなろ紙は、明確に画定されたフィルムの孔構造又は均一な厚さに必要な均一な表面を有しないからである。しかし、ろ紙は、その不活性な性質及び高い吸水性のために多くの試薬の使用に大変適しているため、多層装置には望ましい。したがって、ろ紙がナイロンメッシュカバーとともに使用されてきた。このような装置は、試薬層間の表面接触に頼り、それが試薬を表面上で一つの層に混入させる。本発明は、この結果を回避し、試薬をそれらの所期の位置に維持する。
【0009】
乾燥試薬系では非適合性の化学物質の数多くの例がある。たとえば、白血球試薬中の塩基は、プロテアーゼ基質の早期加水分解を生じさせる。潜血試薬中の鉄は、酸化還元色素指示薬の、色付き形態への早期酸化を生じさせるが、それはグルコース試薬中のヨウ素酸塩の存在の結果でもある。クレアチニンのための銅ベースの試験の場合、銅は、クレアチニンの非存在下ででも、テトラメチルベンジジンのような酸化還元指示薬を色付き形態に酸化させることができる。尿中の潜血の試験は、還元剤として作用して偽陰性結果を生じさせる、尿試料中のアスコルベートの存在によってゆがめられるおそれがあり、尿タンパク試験は、試験される尿試料中の緩衝剤の存在によって不正確になるおそれがある。尿中の白血球を測定するための乾燥試験装置は、尿試料中のタンパク質による干渉を受けることがあり、全血試験、たとえば血中グルコース及び血中CKMBは、赤血球によって生じる干渉をこうむる。一つの実施態様では、本発明は、乾燥試薬装置の、少なくとも一方が分析対象物の検出のための試薬を含有する二つの層を、水性ポリマー分散系と水溶性ポリマーとを含む、接着性を有する層を形成するためにキャスティングし、乾燥されたブレンドを含む試験流体透過性組成物で分けることにより、これらの問題を軽減するための手段を提供する。
【0010】
これらの問題を扱うための以前の方法は、試薬を別個の重ねた層に分けることを含むものであった。しかし、別個の重ねた層の構造の使用に伴う問題がある。たとえば、一番上の層は、特定の干渉性化学物質及び/又は生化学物質を分別し続けながらも試料がその下の層に通過することを許すものでなければならない。たとえば、銅又は鉄のような金属は酸化還元指示薬から分別されるべきであり、塩基はプロテアーゼ基質から分別されるべきである。ヨウ素酸塩のような酸化剤及びアスコルベートのような反応体は、テトラメチルベンジジンのような酸化還元指示薬から分別されなければならない。
【0011】
これらの問題は、装置の第一の層を通過し、本発明の透過性組成物を通過し、装置の第二の層に流れ込むときに干渉性物質を除去するように働く要素で、本発明の透過性組成物を誘導体化することによって効果的に扱われる。この多層フォーマットは、試薬層をいっしょに保持するために透過性の接着剤を要する。
【0012】
しかし、従来技術では、層間の接触は、反応体が、望むときに一つの層から隣接する層まで通過するのに不十分であったか、望まれないときに一つの層から別の層まで移動してしまうようなものであった。
【0013】
一体化した多層試薬装置中で二つの層を固着させるために使用することができる様々な拡散性接着剤組成物がある。Verbeckは、米国特許第3,993,451号で、接着剤を使用して試薬含有粒子を基材層に固着している。粒子は多孔質層で覆われていてもよく、試料に含まれる成分がその層を通過して試薬含有粒子に達してもよい。Verbeckによって発案された装置では、接着剤は、試薬層を検出層から分ける層としては使用されていない。さらには、固体粒子は、検出のために分析対象物との反応生成物の隣接層への動きに頼らない別個の検出ユニットを形成している。
【0014】
特開平05−18959は、試薬層を固着するための接着剤としての、水中で膨潤しない疎水性ポリマーの使用を開示しており、特開平05−26875は、試薬層を固着するための接着剤としての、フッ素含有ポリマーを含む多孔質層の使用を開示している。これらの日本の系で使用されているポリマーは疎水性であり、したがって、層を通過する試料流体の速やかな移動を妨げる。速やかな試験のためには、試料流体が1秒未満で装置の層を通過すべきである。水溶性接着剤は、試料流体の速やかな移動を可能にするが、接着剤が溶解し始めると、層を分離させるであろう。
【0015】
EP0226465A2では、液体が通過することができる開口を形成するために配置された接着剤によっていくつかの多孔質シートが接合されている多層分析装置が記載されている。接着剤そのものは液体を通すことはできず、そのため、代わりに開口が設けられたものである。その結果、利用可能なすべての面が有用とはならず、層間の接触は均一ではない。
【0016】
また、上述したGreenquistの311号特許が、医療試験のための多層装置を開示している。概念は貴重であるが、実際には、多層装置は望まれるほど満足とはいえない。層は、隣接層の機能を干渉することなく所期の機能を奏しなければならない。同時に、試料流体は、結果を速やかに判定することができるよう、層を速やかに通過しなければならない。したがって、層は、試料流体の移動を制限することなく、独立して作用しなければならない。本発明者らは、以下、多層装置及びマイクロ流体装置で記載するようなこれらの問題を解決する。
【0017】
米国特許第4,824,640号には、水溶性又は水膨潤性成分及び本質的に不溶性のフィルム形成成分からなる、分析試薬を含有するのに有用である透明な層が開示されている。米国特許第6,187,268号では、乾燥試薬層の上のオーバコートとして同様な層が使用されている。
【0018】
上記の種類の乾燥試薬ストリップが患者の近くで使用される唯一の試験方法ではない。多層乾燥試薬ストリップを上回る利点を有するマイクロ流体装置が開発されている。本発明者らにとって興味深い特定のマイクロ流体装置の一般原理が米国特許出願第10/082,415号に見られる。マイクロ流体装置は、小さな液体試料、たとえば血液及び尿を受けたのち、それらを、毛管通路によって相互接続されたチャンバに通して処理するように設計されている。チャンバは、所期の分析の必要に応じて試料中の成分と反応する試薬を含有することができる。多層試験ストリップに固有の難題を避けることができる。必要な反応は、試料又は試料の部分が、典型的には毛管力又は遠心力によって、一つのチャンバから別のチャンバに移されるにつれ、順次に起こることができる。したがって、以下にさらに詳細に記載するように、本発明は、多層乾燥試験ストリップに加え、マイクロ流体装置にも適用することができる。
【0019】
発明の概要
本発明は、吸収性層又は非吸収性層の間に配置された接着剤として作用することができる液体透過性層を含み、三つの層の少なくとも一つが試薬を含有する、液体試料中の分析対象物を検出する方法及び装置を含む。液体透過性の接着剤層は、流体試料の成分にとって透過性であり、接着剤として作用することができる層を形成するために、キャスティングし、乾燥させた、水性ポリマー分散系と水溶性ポリマーとのブレンドを含む。一つの実施態様では、液体透過性の接着剤層は、マイクロ流体、ストリップ又はカセット装置の試薬溜め中、少なくとも第一の吸収性層と第二の吸収性層との間に配置されている。層の少なくとも一つが分析対象物の検出のための試薬系を含有する。もう一つの実施態様では、液体透過性の接着剤層は、マイクロ流体チップ又はカセット装置の試薬溜め中、二つの非吸収性層の間に配置されている。さらに別の実施態様では、液体透過性層は、マイクロ流体チップ又はカセット装置の試薬溜め中、交互に重なる複数の吸収性層又は非吸収性層の間に配置されている。すべての実施態様で、吸収性層及び接着剤層は、試薬を含有することもできるし、含有しないこともできる。
【0020】
水分散性ポリマーは、水溶性ポリマー、好ましくはポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン又はポリビニルアルコールと組み合わせた、アニオン性又はカチオン性のポリウレタン分散系、好ましくはアニオン性ポリウレタンであることができる。
【0021】
本発明で使用される液体透過性組成物は、二つの吸収性又は非吸収性層の間に液透過性組成物を含むいくつかのタイプの多層装置を構築するために使用することができる。接着性を有する液体透過性組成物が別個の層をいっしょに保持する。装置を使用する人が試料流体との直接接触を避けることができるよう、一つの層は、プラスチック支持体のベース又はカバー、たとえばストリップのハンドル、カセット上部もしくは下部又はマイクロ流体装置カバーもしくはベースであることができる。接着剤組成物は透過性であるため、試薬及び流体試料の成分が一つの層から別の層まで流れることができる。
【0022】
多層装置は、流体試料が第一の吸収性層に配置されると、それが、試料の成分と相互作用することなく、層の表面上で展開するように製造することができる。あるいはまた、第一の吸収性層が試料の干渉成分と反応して、計測される成分(分析対象物)が液体透過性層を通過して第二の吸収性層に達するようにすることもできる。あるいは、第一の吸収性層を分析対象物と反応させ、所定の場所で計測することもできるし、反応生成物が液体透過性層を通過して第二の吸収性層に達し、そこで検出されることもできる。第二の吸収性層は、接着剤層を通過した流体試料の成分を吸収し、保持することもできるし、第一の吸収性層から受けた分析対象物又は分析対象物の反応生成物と反応する試薬を含有することもできる。液体透過性層は、物理的分離による試料の成分の通過を防ぐように製造することができる。たとえば、分析対象物を通しながらも他の成分が第二の吸収性層に達することを防ぐことによって、分析対象物を濃縮するように作用することもできる。あるいはまた、液体透過性層は、試料成分の特定の成分と化学的に反応する試薬を含有することもできる。一つの実施態様では、液体透過性層は、試料の特定成分を通過させ、より濃縮された分析対象物を第一の吸収性層に残す。
【0023】
好ましい実施態様では、透過性接着剤層は、試料から緩衝及びアスコルベート干渉を排除するため、交換樹脂及びアスコルベートスカベンジャを含有することができる。カチオン交換樹脂としては、酸化性アニオン、たとえば臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸及びクロム酸イオンを有するもの又はポリスルホン酸、ポリカルボン酸もしくはポリホスホン酸を遷移金属酸化剤、たとえば鉄、コバルトもしくは銅とともに含有するものがある。透過性の接着剤層はまた、干渉性タンパク質又は抗体を試料から分別するためのタンパク質結合ポリマー及び試薬装置の不透明度又は反射挙動を調節するための充填材、たとえばTiO2又はBaSO4を含有することができる。適切なタンパク質結合ポリマーとしては、たとえば、正電荷を帯びたポリマー、たとえばポリアミン及びポリアミドならびに負の電荷を帯びたポリマー、たとえばポリスルホン酸、ポリカルボン酸及びポリホスホン酸がある。これらのポリマーは、接着剤配合に混入し、試薬層にコーティングすることにより、透過性層に組み込むことができる。
【0024】
マイクロ流体装置では、液体透過性組成物は、液体試料又はその成分だけ通過させるため、装置の溜めの中に配置することができる。一部の実施態様では、上記の多層装置は、マイクロ流体装置の試料溜めの中で機能するように適合させることもできる。他の実施態様では、液体透過性組成物は、試料溜めの入口又は出口に配置することもできるし、溜を満たすこともできる。そのような用途では、液体透過性組成物は、上記の多層ストリップにおけるように、さらなる反応に備えて試料を準備するため、試料中の成分と反応するための添加剤を含有することもできる。
【0025】
発明の詳細な説明
層材料
生物学的液体試料、特に血液及び尿の分析のための積層乾燥試薬ストリップ又はマイクロ流体チップでは、3種の一般的な材料が使用される。これら3種の材料は、実施される分析の要件に依存して、多くの設計に配することができる。これらの材料を概して吸収性材料、非吸収性材料及び透過性材料と呼ぶ。
【0026】
生物学的試料は一般に水性であり、そのため、吸収性層は、水性物質を吸収する能力を有する。したがって、吸収性層は一般に親水性と分類することができる。吸収性層に有用な材料としては、セルロース、ニトロセルロース、ナイロン、ガラス、多孔質ポリエチレン及びポリエステルがある。生物学的試料が吸収性層に配置されると、液体試料は、試料の量及び吸収性層に配置された試薬と試料との反応によって制限されながら、層の至る所に移動する。1種の試薬しか吸収性層に適用されていないならば、一貫した応答が得られるよう、試料を均一に分散させることが重要である。2種以上の試薬が吸収性層に適用されているならば、試料は、同時又は必要ならば順次に各試薬と接触しなければならない。試料の一部又は全部は、試料が配置された側とは反対の側に移動し、それにより、反対側の面で、元の液体試料の成分及び可動性の反応生成物を提供する。
【0027】
非吸収性層は、当然ながら、生物学的試料を吸収せず、往々にして疎水性であるが、たとえば非孔質プラスチックフィルムは、親水性かつ非吸収性であってもよい。通常、非吸収性層の表面に配置された試料は、試料と非吸収性層との間の界面エネルギーの差が許す程度に移動する。往々にして表面は疎水性であり、そのため、液体試料を層上の所定の領域に閉じ込めることができる。たとえば、試薬は、配置された非吸収性層上の区域に、試料の一部がそのような区域の間で移動することのないように適用することができる。
【0028】
透過性層は、液体を一つの層から別の層に伝達する能力を有するが、上記の吸収性層とは異なるやり方で伝達する。透過性層は多孔質ではなく、その組成は、液体が、実施される分析に依存する異なる速度で、通過して移動することができるように調節することができる。透過性層は、多くの用途では、隣接する吸収性又は非吸収性の層と密接し、そのため、液体試料又はその一部を、透過性層をはさんで別の隣接面に効率的に移すことができる。隣接層とのそのような密接性は、層間の接着を提供することができ、それは多層試験ストリップが組み立てられるとき又は透過性材料がマイクロ流体チップで使用されるとき、試薬含有層を所望の位置に固定するのに有利である。
【0029】
多層装置
図1に示す一つの簡単な例では、流体試料中の分析対象物(すなわち、検出される物質)を検出するための多層装置は、流体試料を受けるための第一の吸収性層10、第一の吸収性層から試料の一部を受け、吸収するための第二の吸収性層12及び二つの吸収性層の間に配置され、それらの吸収性層をいっしょに保持するための接着剤として作用する液体透過性層14を含む。液体透過性層は、吸収性層をいっしょに結び付けるだけでなく、流体試料の成分と反応してそれらの通過を防ぐか、又は流体試料の成分の通過を物理的に阻止することができる。三つの層はハンドル16に取り付けられている。当業者には自明であるように、特定の分析を実施するために、必要に応じてさらなる吸収性層及び液体透過性層を加えてもよい。
【0030】
第一の吸収性層は可能性のある機能をいくつか有する。単に流体試料を吸収し、それを液体透過性層及び接着剤層の表面で展開することもできる。あるいはまた、試料の干渉成分と反応し、分析対象物を、第二の吸収性層へと液体透過性層を通過させることもできる。もう一つの代替として、第一の吸収性層が分析対象物と反応したのち、分析対象物を所定位置で計測するか、あるいは、反応生成物を、検出のために第二の吸収成層へと液体透過性層を通過させる。
【0031】
第二の吸収性層もまた、可能性のある機能をいくつか有する。液体透過性層を通過した試料の一部を吸収し、それにより、第一の吸収性層中の分析対象物を濃縮することができる。あるいはまた、分析対象物を含む試料の一部を受けたのち、分析対象物と反応して、計測される生成物を提供することもできる。もう一つの代替として、第二の吸収性層は、第一の吸収性層中で生成され、液体透過性層の通過によって濃縮された反応生成物を受けることもできる。
【0032】
液体透過性層は、分析対象物を第二の吸収性層へと通過させ、他の成分を第二の吸収性層へと通過させないことにより、又は干渉成分を通過させて分析対象物を濃縮することにより、流体試料を物理的に分別することができる。他の用途では、液体透過性層は、試料の特定の成分と反応し、それによってそれらの成分を液体透過性層中にトラップすることもできる。あるいは、特定の成分と反応し、それによってそれらの成分の液体透過性層の通過を阻止することができる添加剤を含有することもできる。
【0033】
当業者は、本発明の多層装置の機能についての、この幅広い記載が多くの具体的な代替用途にも当てはまり、それらの用途のいくつかは以下に論じるが、言及されない他の用途もまた、本発明の幅広い記載を逸することなく、潜在的に有用な分析法であるということを理解するであろう。
【0034】
さらには、適宜、非吸収性層を多層装置に含めて対象の分析手法を実施してもよい。図2は一つの可能な設計を示す。第一の非吸収性層20が、第二の非吸収性層24との間で流体の流れを液体透過性層22に送るために使用され、液体透過性層が逆に、層20と24との間で液体接触を提供する。
【0035】
マイクロ流体装置
本発明のもう一つの実施態様では、マイクロ流体装置が液体透過性組成物を乾燥試薬とともに使用する。マイクロ流体分析装置は「チップ」と呼ぶこともできる。これらは一般に小さく平坦であり、典型的には約1〜2インチ四方(25〜50mm四方)であるか、同様なサイズ(たとえば半径25〜120mm)のディスクである。マイクロ流体装置に供給される試料の量は小さい。たとえば、約0.3〜1.5μLしか含まない。試料液体を受ける溜めは、試料を容易に見ることができ、適切な器具によって計測することができるよう、比較的幅広く、浅い。溜めを相互接続する毛管通路は、幅が10〜500μm、好ましくは20〜100μmの範囲であり、その形状は、通路を形成するために使用される方法によって決まる。通路の最小の許容深さは、試料の性質によって決めることができる。深さは、少なくとも5μmであるべきであるが、全血が試料である場合、少なくとも20μmであるべきである。毛管のセグメントを使用して試料の所定量を画定するならば、毛管は、試薬溜めの間の通路よりも大きくてもよい。
【0036】
毛管及び試料溜めを形成することができるいくつかの方法、たとえば射出成形、レーザ切除、ダイヤモンド練磨又はエンボス加工があるが、チップのコストを下げるために射出成形を使用することが好ましい。一般に、チップのベース部をカットして試料溜め及び毛管の所望のネットワークを形成したのち、ベースの上にトップ部を取り付けてチップを完成させる。
【0037】
チップは、1回の使用ののち廃棄処分されることを意図している。したがって、可能な限り廉価であると同時に試薬及び分析される試料と適合性である材料で製造される。大部分の場合、チップは、プラスチック、たとえばポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリレート又はポリウレタンで製造されるが、代替的に、ケイ酸塩、ガラス、ロウ又は金属から製造することもできる。
【0038】
所与の通路について、液体と通路表面との相互作用が液体の移動に対して有意な影響を及ぼすこともあるし、及ぼさないこともある。通路の表面対容積比が大きい、すなわち断面積が小さい場合、液体と通路の壁との相互作用が非常に顕著になる。これは、約200μm未満の名目直径の通路に関して、液体試料及び壁の界面エネルギーに対して毛管力が優勢である場合に特に当てはまる。壁が液体で濡れている場合、液体は、外力を受けることなく通路中を移動する。逆に、壁が液体で濡れていない場合、液体は通路から抜けようとする。これらの一般的な傾向を利用すると、液体を通路中で移動させたり、異なる断面積を有する別の通路との接合部で移動を止めたりすることができる。液体が静止しているならば、力、たとえば遠心力を加えることによって動かすことができる。あるいはまた、異なる断面積又は界面エネルギーを有する通路同士の接合部で、必要な圧力差を誘発することができる、空気圧、真空、電気浸透、吸収材、さらなる毛管作用などをはじめとする他の手段を使用してもよい。通路が非常に小さい場合、毛管作用による力は、毛管ストッパに打ち勝たなければならない短い期間を除いて、外力を要することなく、毛管作用による力だけで液体を移動させることを可能にする。しかし、より小さな通路は本来、生物学的試料又は試薬の中の粒子による閉塞を受ける可能性がより高い。その結果、通路壁の界面エネルギーは、試験される試料流体、たとえば血液、尿などとの使用に関する要求に応じて調節される。これは、より融通の利く分析装置設計を可能にする。
【0039】
毛管通路は、液体試料又は試薬によって固体面に形成される接触角に関して定義される疎水性又は親水性のいずれかに調節することができる。通常、表面は、接触角が90°未満であるならば親水性とみなされ、接触角が90°よりも大きいならば疎水性とみなされる。好ましくは、プラズマ重合が通路表面で実施される。本発明の分析装置はまた、毛管壁の界面エネルギーを制御するために使用される他の方法、たとえば親水性又は疎水性材料のコーティング、グラフト又はコロナ処理によって製造することもできる。所期の試料流体との使用に備えて毛管壁の界面エネルギー、すなわち親水性又は疎水性の程度を調節することが好ましい。たとえば、疎水性通路の壁への沈着物を防ぐため、又は液体が通路中に残らないことを保証するためにである。
【0040】
毛管路を通過する液体の移動は、その名が示すように液体が毛管路を通過して流れることを防ぐ毛管ストッパによって阻止することができる。毛管通路が親水性であり、液体の流れを促進するならば、疎水性の毛管ストッパ、すなわち、疎水性の壁を有する小さめの通路を使用することができる。小さなサイズと非湿潤性の壁との組み合わせが液体の浸入に対抗する表面張力を生じさせるため、液体は疎水性ストッパを通過することができない。あるいはまた、毛管が疎水性であるならば、試料溜めと毛管との間にストッパは必要ない。試料溜め中の液体は、液体によって対抗する表面張力に打ち勝ち、液体を疎水性通路に通過させるのに十分な力、たとえば遠心力が加えられるまでは、毛管に入ることを阻止される。液体の流れを開始させるには遠心力があればよい。ひとたび疎水性通路の壁が液体と完全に接触すると、液体の存在が疎水性面に関連するエネルギー障壁を下げるため、対抗力は減少する。その結果、液体は、流れるためにもはや遠心力を要しない。必要ではないが、場合によっては、速やかな分析を促進するため、液体が毛管通路を通って流れる間、遠心力を加え続けることが好都合であるかもしれない。
【0041】
毛管通路が親水性であるとき、試料流体(水性であると仮定する)は当然、さらなる力を要することなく、毛管を通って流れる。毛管ストッパが必要である場合、一つの代替方法は、上記のようにストッパとして働くことができる狭めの疎水性区分を使用することである。毛管が親水性であるとしても親水性ストッパを使用することもできる。このようなストッパの一つは毛管よりも幅広く、したがって、液体の表面張力が、液体の流れを促進する低めの力を生成する。毛管と幅広のストッパとの間の幅の差が十分であるならば、液体は、毛管ストッパへの入口で停止する。液体は、最終的にはストッパの親水性壁に沿って浸入するが、適切な形状設計により、壁が親水性であるとしてもストッパが効果的になるようこの動きを十分に遅らせることができることがわかった。あるいはまた、親水性ストッパは、通路を突然狭くして、液体が、適切な力、たとえば遠心力が加えられるまで、その狭い通路を流れないようにする結果であることもできる。
【0042】
マイクロ流体装置は、上記の多層ストリップを用いて、現在実施されている種の分析を実施するために、多くの方法で設計することができる。あるいはまた、試料溜めがマイクロ流体装置中で分けられているため、液体試料中の成分又は分析を実施するために使用される試薬の間の望ましくない相互作用を最小限にすることが可能である。場合によっては、溜めは、分析法の1工程を実施するための1種の試薬を含有する。しかし、本発明では、液体透過性組成物を、多様な方法で使用することができ、そのいくつかは多層のアプリケーションの場合と類似している。たとえば、図3に示すように、液体透過性組成物32は、一つの溜めの中で二つの乾燥試薬30及び34の間に配置してもよい。液体試料が傾斜路36を駆け上がって流れ、3層試薬と接触し、同時に試薬溜め中の空気が通気孔38からパージされる。あるいはまた、液体透過性組成物を試料溜めの入口又は出口に配置して、ろ過機能を実行する、すなわち、試料が試薬に達する前に試料の一部の成分を除去することもできる。さらには、望むならば、試料溜め全体を液体透過性組成物で満たしてもよい。他の可能なアプリケーションとしては、毛管に液体透過性組成物を充填するアプリケーションならびに装置の内側に接着するための接着剤のための吸収性及び/又は非吸収性材料のさらなる層を加えるアプリケーションがある。たとえば、溜めは、非常に薄い10枚の層を各層の間に透過性接着剤をはさみながら含むことができる。試料の流れは、吸収性材料及び非吸収性材料の配置によって各層の所定の区域に向けることができる。接着性は、組成物が所定位置にとどまることを保証して、試料がそれをバイパスするようにしうる動きを回避するのに有用である。
【0043】
液体透過性接着剤組成物
本発明に有用な液体透過性組成物の基本要素は、水性ポリマー分散系及び水溶性ポリマーを含む。組成物の透過性は、ポリマー分散系と水溶性成分との比率を変えることによって調節することができる。通常、この比率は重量ベースで50:1〜1:1であり、10:1〜5:1でフィルム形成ポリマー分散系が過剰な比率が好ましい。水分散性ポリマーの増大は膜の透過性を高め、それは、より高速の流れが望まれる場合に望ましい。逆に、より大きな接触、ひいては試薬のより多くの混合が望まれる場合、水溶性ポリマーの濃度を高めると、膜の透過性が低下する。診断用乾燥試薬試験装置では、流体試料中に存在する成分を、装置の試薬層をいっしょに結び付ける透過性層に浸透させる。マイクロ流体装置では、液体透過性組成物は、同様な機能を有するが、乾燥試薬と常には接触しないかもしれない。
【0044】
ポリウレタン分散系が、その接着性、可撓性及び多様な構造のために、分散性ポリマーとしての使用に好ましい。ジイソシアネートと等量の二官能性アルコールとの反応が簡単な直鎖状ポリウレタンを提供する。これらの生成物は、コーティング、塗料及びエラストマーの製造で使用するのには適さない。しかし、まず簡単なグリコール類をジカルボン酸と重縮合反応で反応させて長鎖ポリエステル−ジオール類を形成し、続いて、一般に300〜2000の平均分子量を有するこれらの生成物をジイソシアネート類と反応させて、その結果、高分子量ポリエステルウレタンが形成する。ポリウレタン分散系は、1972年以来、商業的に重要である。ポリウレタンイオノマーは、水性二相系の調製に構造的に適している。主として疎水性の鎖セグメントの間に親水性イオン部位を有するこれらのポリマーは、自己分散性であり、好ましい条件の下では、分散剤の非存在下でも、剪断力の影響を受けることなく、水中で安定な分散系を形成する。本発明で使用するのに好ましいアニオン性ポリウレタン、たとえばBayhdrol DLNを得るためには、カルボン酸又はスルホネート基を有するジオール類を導入したのち、酸基をたとえば第三級アミン類で中和する。これらの化合物は水溶性であるため、スルホネート基は普通、ジアミノアルカンスルホネートを介して構築される。得られるポリウレタン樹脂は、機械的及び化学的安定性ならびに良好なフィルム形成接着性を提供するイオン性基を構築している。
【0045】
カチオン性ポリウレタン分散系、たとえばStockhausen Chemical社のPraestol E 150もまた、液体透過性組成物を形成するのに使用することができる。カチオン性ポリウレタンを調製する方法の一つは、ジブロミドとジアミンとの反応による方法である。これらの成分の一つが長鎖ポリエステルセグメントを含有する場合、イオノマーが得られる。あるいはまた、まず第三級窒素含有ポリウレタンを調製し、次いで第二工程で窒素原子を第四級化することにより、ポリアンモニウムポリウレタンを調製することもできる。ポリエーテルベースのNCOプレポリマーから出発して、セグメント化第四級ポリウレタンが得られる。
【0046】
ポリウレタンイオノマーのもっとも重要な性質は、特定の条件の下、水中で自然に安定な分散液を形成して、不連続ポリウレタン層が連続した水相中に分散している、二成分コロイド系を提供する能力である。分散ポリウレタン粒子の直径は、約10〜5000nmで変化することができる。イオン性であり、イオン基がスルホネート、カルボキシレート又はアンモニウム基であるポリウレタン分散系が特に適当である。
【0047】
本発明で使用するのに同じく適しているものは、他のフィルム形成ポリマー分散系、たとえば、ポリビニル又はポリアクリル化合物、たとえばポリビニルアセテート又はポリアクリレートによって形成されるもの、ビニルコポリマー、ポリスチレンスルホン酸、ポリアミド及びそれらの混合物である。ポリマー分散系を水溶性ポリマーと合わせることにより、膨潤性のネットワーク状ウェブを生成するマトリックスが形成される。ウェブが密になるほど細孔は小さくなり、マトリックス中の試験流体の流れは遅くなる。
【0048】
水溶性ポリマーとしては、公知のポリマー、たとえばポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、セルロースエーテル類、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ビニルアルコールと酢酸ビニルとのコポリマー、ゼラチン、アガロース、アルギネート及びポリビニルピロリドンが適切である。この第二のポリマー成分は、水を吸収することによって膨潤する性質のため、膨潤成分と呼ばれることもある。ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールが好ましい。これらのポリマーは、水溶性であり、水性ポリマー分散液と混和性である限り、分子量が大きく異なることができる。分子量300,000〜900,000g/molのポリエチレンオキシド及び分子量30,000〜60,000g/molのポリビニルピロリドンが特に適切である。ポリマー分散系と混和性であり、試験に特定の試薬、たとえば緩衝剤、指示薬、酵素及び抗体の配合を可能にする限り、水溶性ポリマーの分子量は決定的に重要ではない。完成したフィルムは、試験流体にとって透過性であるよう、膨潤性であるべきである。
【0049】
ポリマーは、以下の実施例におけるように、ディスペンサの使用によって乾燥試薬装置又はマイクロ流体チップに適用するのに備えて溶媒(好ましくは水性)に分散/溶解させる。好ましい水性キャスティング溶液では、水性ポリマー分散系を第二のポリマーの水溶液と混合する。たとえば、ポリ酢酸ビニル分散系をセルロースエーテル類と、ポリウレタン分散系をポリビニルアルコールと、ポリウレタン分散系をゼラチンと、又はポリウレタン分散系をポリビニルピロリドンと混合する。通常、界面活性剤を配合に加えて、その延展性を高め、増粘剤、たとえばシリカゲルを加えて、配合物を、表面に展開させやすくする粘稠度まで増粘させる。そして、Myerロッドアプリケータ又は拭き取りフィルムスプレッダによって配合物を乾燥試薬装置又はマイクロ流体チップの表面に適用し、乾燥させて溶媒を除去する。透過性膜の典型的な乾燥厚さは1〜100ミル(0.0254〜2.54mm)の範囲である。
【0050】
液体透過性組成物の使用
尿中の白血球の試験におけるタンパク質の干渉は、タンパク質が液体透過性組成物に付着し、試薬を通過しないことによって軽減される。尿タンパク質の試験における緩衝剤の干渉は、液体透過性組成物に付着する(イオン対合)か、中和される(プロトン交換)ことによって減らされ、その結果、緩衝剤が試薬と接触しないか、試薬のpHに適合する非干渉形態に変えられる。装置は、二つの別個の試薬層を、一つは銅とともに、他方は酸化還元指示薬とともに保持するように製造することができるため、非適合性の化学物質の存在による、尿クレアチニンを試験するための試薬の不安定性は、液体透過性組成物によって軽減される。銅は、それが流体試料と接触するまで、酸化還元指示薬から分離した状態に維持される。試料がクレアチンを供給して銅と結合させ、銅が上層から解放され、酸化還元指示薬と混合する。
【0051】
尿潜血試験に対するアスコルベート干渉は、アスコルベートスカベンジャ、たとえばポリマーに結合したアスコルベートを酸化させることができる金属を液体透過性組成物に配合することにより、軽減することができる。ポリマー結合金属アスコルベートスカベンジャは、米国特許第5,079,140号に記載されている。他の酸化剤、たとえばヨウ素酸塩及び過硫酸塩を透過性組成物の中に固定化して、アスコルベートスカベンジャとして働かせることもできる。
【0052】
液体透過性組成物は、免疫フォーマットとともに有利に使用して、様々な分析対象物の高感度試験を提供することができる。たとえば、多層装置で使用するための透明膜は、その中に含まれる固定化抗結合標識抗体とで調製することができる。典型的には、この抗体は、ポリマーブレンドを試薬装置上にキャスティングする前に、それをより大きな実体、たとえば、膜を形成するポリマーブレンドに配合されるラテックス粒子に付着させることにより、膜の中で固定化される。したがって、抗分析対象物の抗体上の結合標識が、フルオレセイン構造を有する場合(たとえばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)の場合)、抗FITCを透過性膜中に散在させて、FITCで標識された抗分析対象物抗体を捕捉することができる。加えて、ペルオキシダーゼで標識した抗分析対象物抗体を膜に配合して、試験流体が膜の中を流れるとき、そこに含まれる分析対象物が、結合した抗分析対象物抗体及びペルオキシダーゼ標識抗分析対象物抗体と結合して、膜に付着したサンドイッチを形成し、それにより、ペルオキシダーゼが、過酸化物及び酸化還元色素を含有する試薬層に達し、色応答を提供してしまうことを防ぐ。この実施態様では、分析対象物、ペルオキシダーゼ、過酸化物及び酸化還元色素の相互作用によって生じる応答は、流体試料中の分析対象物の濃度に反比例する。
【0053】
より一般的に、本発明の多層又はマイクロ流体装置での使用を見いだすことができる試薬の非限定的な例は以下を含む。
【0054】
・流体試料を受ける第一の吸収性層中の分析対象物との反応のための試薬としては、臨床試験で一般に使用される酵素、たとえばオキシダーゼ、レダクターゼ及びプロテアーゼ、分析対象物が切り離し可能な化学物質に転換される結合試験及び反応で使用されるような親和性結合剤、たとえば抗体、核酸、抗原及びタンパク質がある。
【0055】
・流体試料の干渉成分との反応のための試薬としては、干渉物質を代謝するための酵素、干渉物質を非反応性形態に転換するための反応体及び干渉物質を捕らえるための結合剤がある。
【0056】
・第二の吸収性層中の分析対象物との反応のための試薬としては、分析対象物に応答してシグナルを発する指示薬及びシグナル増幅のための酵素又は反応体がある。
【0057】
・第一の吸収性層で反応し、接着剤層を通過してきた、第二の吸収性層中の分析対象物との反応のための試薬としては、臨床試験で使用される酵素ならびに分析対象物の一部が切り離される結合試験及び反応で使用される親和性結合剤がある。
【0058】
・前記試料の成分と反応することができる液体透過性組成物への添加剤としては、干渉物質を除去する、又はシグナルを発するための親和性結合剤又は酵素がある。
【0059】
以下、本発明の代替態様を例示する五つの実施例を提供するが、本発明をこれらの実施例に限定する意図はない。一つの実施例では、ろ紙の層を、検出される分析対象物のための試薬溶液で処理する。そして、処理したろ紙を、本発明の接着剤層でコーティングし、未処理のろ紙の第二の層を足し、分析対象物と反応し、接着剤層の中を移動して未処理のろ紙に入る試薬を濃縮するように作用することができる。第二の実施例では、接着剤層は、干渉化合物が接着剤層を通過して試薬層へと移動することを防ぐ物質を含む。第三の実施例は、分析対象物のための試薬を含む上層を含む。分析対象物と試薬との反応の生成物は、接着剤層を通過し、下層で検出される。
【0060】
実施例I
拡散性接着剤は以下のようにして調製した。
(1)50mM一塩基性リン酸緩衝剤(Fisher、pH7.0)75g及びPluronic P75界面活性剤(BASF)0.5gを250mlのスチールビーカーに加えた。次いで、ゆっくり攪拌しながら、オクタノール0.3g、続いてAerosil 200シリカゲル(DeGussa社)5.0gをビーカーに加えた。攪拌速度を数分間、約2000rpmに高めて、ビーカーの中身について完全な分散を達成した。
【0061】
(2)攪拌を約15分継続する間、Bayhydrol D-762(Bayer社のポリエステルポリウレタン樹脂)の40%水溶液40.25gを加え、続いてm.w.900,000のポリエチレンオキシド0.2gを加えた。
【0062】
(3)コーティング溶液を、弱い真空下、数分間攪拌して溶液を脱気して、試薬層にキャスティングする準備が完了した。アルブミン試薬層は以下によって調製した。
【0063】
(1)ろ紙ベースに順次に塗布するための二つの溶液を調製する。組成を以下の表に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
(2)ろ紙(WhatmanのGF/30cm)を二つの溶液で順に処理して紙に含浸させたのち、処理したろ紙を90℃で15分間乾燥させて上層試薬を製造した。
【0066】
接着剤コーティング溶液をアルブミン試薬層上に約250μmの厚さ(ウェット)までキャスティングしたのち、ろ紙上の接着剤コーティングしたアルブミン試薬を約90℃で5分間乾燥させると、コーティングがアルブミン試薬層に接着し、硬化した上面が露出した。
【0067】
ガラスろ紙(WhatmanのGF/30cm)の層が、接着剤層のアルブミン試薬層とは反対の側に配置された完全なフォーマットを組み立てた。すなわち、試験装置は三つの層、すなわちアルブミン試薬層、アルブミン試薬層に接着した拡散性接着剤層及び拡散性層の硬化した露出面に接着しなかったガラスろ紙の層を含むものであった。これは、膜が完全に硬化すると、それがさらなる層に結合しないことを実証した。この試験装置を、上記のように製造したが、拡散性接着剤層をコーティングしなかったアルブミン試薬層と比較した。
【0068】
第一の試験では、アルブミン500mg/Lを含有する試料を接着剤コーティングなしのアルブミン試薬層に適用し、その結果を、複合装置のガラスろ紙上に配置された別の500mg/L試料と比較した。後者の場合、アルブミンは、それが検出される試薬層に達するためには、ろ紙及び接着剤層を通過しなければならなかった。比較用試料では、試薬層は、速やかな応答を出すものであった。存在するアルブミンの量を、CLINITEK 200計器を使用する反射率計測によって測定した。アルブミン試薬層に試料を加えなかった場合、反射率は、分析の開始から1分の時点で、610nmの波長で93.6%であった。しかし、接着剤層なしで試料を直接試薬層に加えた場合、反射率は12.8%であることがわかった。試料をガラスろ紙に適用し、試料がろ紙及び接着剤を通過することによって試薬層に達した場合、反射率は13.0%であることがわかった。ろ紙及び接着剤は、それらを通過し、試薬層に達する試料の組成に対して実質的に影響を及ぼさないと結論づけることができる。
【0069】
第二の試験では、ずっと低い濃度、1mg/Lのアルブミンを使用した。この場合、接着剤コーティングなしのアルブミン試薬は、試料中のアルブミンのより低い濃度を示す52.4%の反射率を示した。しかし、試料を複合装置中のアルブミン試薬層に直接配置した場合、反射率は25.4%であると計測され、同じ濃度のアルブミンに対し、より高い応答を示した。試料中の液体の一部が接着剤を通過してろ紙層に入り込み、それによって試薬層上のアルブミンの有効濃度を高めたものと結論づけることができる。
【0070】
実施例II
この実施例では、競合又は干渉成分を除去して、それによって分析対象物が検出試薬層に達するようにするため、結合試薬層を拡散性接着剤層に加えた。実施例Iに記載した接着剤組成物と同様な方法で、タンパク質をブロックした拡散性接着組成物を以下のようにして製造した。
【0071】
(1)pH5.5の0.1Mクエン酸ナトリウム緩衝剤150g及びPluronic L64界面活性剤1.0gを250mlのスチールビーカーに加えた。ゆっくり攪拌しながら、オクタノール0.6gを加えたのち、Aerosil 200を12.0g加え、約2000rpmで数分間、攪拌を継続して成分の分散を完了した。
【0072】
(2)攪拌を継続しながら、Bayhydrol DLNの40%水溶液110gを加えたのち、PEO 900,000を0.4g加えた。混合を約15分間継続した。
【0073】
(3)工程(2)で完成したコーティング溶液1gごとに、カゼインブロッキング溶液100μLを加えた。混合物をうず回転させて均一なコーティング溶液を製造した。接着剤コーティング溶液を100μm層としてペルオキシダーゼ試薬層の上にキャステイングした。
【0074】
ペルオキシダーゼ試薬層は、
(a)3,3′,5,5′−テトラエチルベンジジンの10mg/ml溶液を調製し、
(b)Whatmanの3mmろ紙を溶液に浸漬し、
(c)含浸した紙を40℃で15分間乾燥させ、
(d)工程(c)で乾燥させた紙を原料グルコースオキシダーゼ1400U/mlの溶液に浸漬し、
(e)工程(d)の含浸した紙を40℃で20分間乾燥させる
ことによって調製した。
【0075】
(4)接着剤−ペルオキシダーゼ試薬層の組み合わせを、ローララミネータを100ft/min及び100psiの力で用いて、熱を加えずに結合試薬層の上に押し付け、40℃で30分間乾燥させた。
【0076】
結合試薬層は、
(a)以下の成分
Dralon L(ポリアクリロニトリル)17.3g
Ultrason E(ポリエーテルポリスルホン)69.1g
Aerosil 200(シリカ)25.9g
Pluriol P600(プロピレンオキシド系界面活性剤)7.78g
からポリマー膜を製造し、
(b)膜を、0.1Mクエン酸ナトリウム(pH4.5緩衝剤)中4mg/ml抗FITC(抗フルオレセインイソチオシアネート)の溶液に浸漬し、
(c)含浸したろ紙を40℃で30分間乾燥させる
ことによって調製した。
【0077】
(5)合わせた層を室温で1〜2時間乾燥させて、分析装置の調製を完了した。
【0078】
試験では、試料は、BSA−FITC(ウシ血清アルブミン−抗フルオレセインイソチオシアネート)及びHRP−FITC(セイヨウワサビペルオキシダーゼ−抗フルオレセインイソチオシアネート)の両方を含有し、後者がBSA−FITCと競合するものであった。試料が接着剤層を通過するにつれ、BSA−FITCがHRP−FITCから分離した。HRP−FITCがペルオキシダーゼ試薬に達し、発色が起こってその存在を示し、CLINITEK(登録商標)50分析装置によって反射率を計測した。HRP−FITCだけが存在する場合、反射率は62.6%であることがわかったが、BSA−FITCが存在する場合、反射率は45.7%であり、過剰なFITCが達成されるときHRP−FITCが膜を透過することができることを示した。
【0079】
結合層及びペルオキシダーゼ試薬層を中間の接着剤層なしで互いに接触させて配置する比較試験を実施した。この場合、二つの試料の間で違いは認められなかった。すなわち、BSA−FITC及びHRP−FITCの両方を含有する試料の分離はなかった。過剰なFITCが結合層中に存在するとしても、接着剤なしでは、競合する分析対象物を分けておくことは不可能であると結論づけることができる。
【0080】
実施例III
この実施例では、ジゴキシンを計測するための、実施例IIの装置に類似した多層装置の使用を例示する。実施例IIに記載のようにして、ペルオキシダーゼを検出することができる基質を含有する試薬及びタンパク質結合層を調製した。そして、それらの層を前記のように拡散性接着剤層と合わせて3層装置を製造した。乾燥後、合わせた層をストリップに裁断し、各ストリップを、試料溜めとして働く四角い開口を有するポリスチレンストリップで覆った。ジゴキシン0、25、50及び100μg/mlならびにジゴキシン−BSA−HRP(ジゴキシン−ウシ血清アルブミン−セイヨウワサビペルオキシダーゼ)の50mg/ml溶液50mlならびに抗ジゴキシン標識FITCの100μg/ml溶液50mgを含有する試料を調製した。各試料混合物45μlをストリップ上の試料溜めに加えて、試料をタンパク質結合層と接触させた。試料は上層及び接着剤層を通過して試薬層に入り、そこで色応答が発された。CLINITEK(登録商標)50反射分光計によって実施した計測は、以下の表に示すように、ジゴキシンが試料中のその濃度に比例しながら試薬層に達することを示した。
【0081】
【表2】

【0082】
接着剤層を含めなかった比較試験では、試薬層からの応答の違いは見られず、接着剤層なしでは競合が起こらないことを示した。
【0083】
実施例IV及びVは、試薬のホルダーとしてマイクロ流体チップを用いて、グルコースを計測するための、実施例IIの装置に類似した多層装置の使用を例示する。
【0084】
実施例IV
マイクロ流体装置中で透過性接着剤を使用する一つの例は、血中のグルコース含量を計測することである。Bellの米国特許第5,360,595号に記載されているグルコース試薬を吸収性層、たとえばPall社のBiodynのようなナイロン膜上に準備した。そして、実施例1で記載したような透過性接着剤配合物をグルコース試薬上にコーティングした。試薬の区域をマイクロ流体試薬溜めの中で透過性接着剤が上又は下を向く状態で配置した。下向きに配置した場合、接着剤はマイクロ流体ベースと結合し、上向きに配置した場合、接着剤は、チャンバを覆う非吸収性プラスチックのふたと結合した。また、吸収性又は非吸収性材料の他の層を層として適用することもできる。
【0085】
入口を使用して、ある濃度のグルコースを含有する血液の試料を試薬チャンバに導入した。全血試料が試薬と反応して色を発すると、それを、白黒基準に照らして修正した状態で、分光計によって680nmで読み取った。
【0086】
実施例V
Bellの米国特許第5,360,595号に記載されているグルコース試薬を、PES及びPETのようなプラスチックの吸収性基材に試薬をコーティングすることによって準備した。試薬でコーティングされたPETを使用した場合、500〜950nm反射率計を使用して試料との反応を読み取った。透過性接着剤の通って流れるため、透過性接着剤をグルコース試薬の上にコーティングした。入口から試薬までの試料の流れが非吸収材料によって遮られない限り、接着剤は、マイクロ流体ベース、チャンバを覆う非吸収性プラスチックのふた又は他の吸収性もしくは非吸収性材料の層に結合した。入口を使用して、ある濃度のグルコースを含有する血液の試料を試薬チャンバに導入した。全血試料が試薬と反応して色を発した。プラスチックフィルムは透明であるため、500〜950nm反射率計を使用して、試料との反応を、白黒基準に照らして修正した状態で読み取った。
【0087】
実施例VI
フィルム厚さ及び硬化温度の影響を検査し、結果を以下の表にまとめた。実施例Iと類似した組成を有する透過性接着剤の層をろ紙の層に付着させ、ろ紙又はPETの上層を適用した。圧力を加えた場合と加えない場合とで三つの層を90℃又は40℃で硬化させた。
【0088】
透過性接着剤をろ紙層の一つの上に加え、40℃で20分間又は90℃で5分間、オーブン中で初期硬化させた。次に、ローラーラミネータを100ft/minで使用し、0又は40〜100psiの力を用いて、熱を加えずに、もう一つのろ紙層を膜接着剤に積層した。合わせた三つの層を実質的に周囲温度(30℃)で2時間硬化させて、硬化を完了した。ケース8は、実施例II〜Vで使用した方法と同様であった。
【0089】
【表3】

【0090】
上記表は、硬化後の三つの層の状態を以下の規準を使用して報告する。
【0091】
テアシールとは、外側層が引き離されるとき、接着剤中間層ではなく外側層の一部が破損したかどうかをいう。
【0092】
バブルとは、外側層の一方に水を加えて、接着剤が外側層に接着していない区域を検出することによって判定される、接着剤が接着していない区域の形成をいう。
【0093】
透過性は、外側層の一方に水を加え、水が他方の層に達するのに要した時間を計測することによって決定した。
【0094】
離層とは、三つの層を市販の装置で裁断し、打ち抜きし、プレスする際の層間の分離の評価をいう。
【0095】
両面接着は、テアシール評価に関連する。テアシールが二つの外側層の一方又は両方に見られる、すなわち、接着剤層ではなく外側層が破損する場合、両面接着が達成されていないと記載される。
【0096】
表の結果を検討すると、積層圧を加えないと、両面接着は達成されないと結論づけることができる。積層圧を加えると、厚さが最初の適用温度に適合する場合、両面接着が生じた。たとえば、厚さ10ミルの層は、90℃で初期硬化したときは両面接着ではなかったが、40℃で初期硬化したときは両面接着であった。膜接着剤が完全な乾燥に達する、すなわち硬化するならば、両面接着剤としては作用しないであろう。積層圧の使用は、予想外にも、バブル及び離層及び透過性に関する問題を解消した。たとえば、ケース3における100ミルのような厚い膜は、バブルを含み、加圧されなければ透過性が劣り、使えないものであった。典型的には、高温及び厚さは透過性を低下させ、低めの温度は離層を生じさせた。10〜100ミルの厚さ範囲で圧力がこれらの問題を解消したことは驚くべきことであった。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】三つの層、すなわち吸収性上層、液体透過性接着剤層及び吸収性下層を有する乾燥試薬装置の断面図である。
【図2】三つの層、すなわち非吸収性上層、液体透過性接着剤層及び非吸収性下層を有する乾燥試薬装置の断面図である。
【図3】積層した試薬を含有する、マイクロ流体チップ中の試薬溜めの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料中の分析対象物を検出するための装置であって、前記液体試料の一部を移行させるための、接着が可能である液体透過性層を含み、前記液体透過性層が、前記液体透過性層を形成するために乾燥させた、水性ポリマー分散系と水溶性ポリマーとのブレンドを含み、前記液体透過性層が、吸収性層又は非吸収性層の間にコーティングとして適用されており、合わさったコーティングと吸収性及び非吸収性層が、液体透過性層が隣接層又は非吸収性層に接着しながらも液体透過性を保持するような温度で押し合わされ、乾燥させたものである、装置。
【請求項2】
前記液体試料中の成分と化学的に反応する添加剤を前記液体透過性層中にさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記液体透過性層中の前記添加剤が、検出可能な応答を発するための指示色素又は粒子を含む、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記添加剤が、緩衝成分を除去するための交換樹脂及びアスコルベート干渉を排除するためのアスコルベートスカベンジャを含む、請求項2記載の装置。
【請求項5】
前記添加剤が、検出可能な応答を発する、又は干渉成分を除去するための粒子及びポリマーを含む、請求項2記載の装置。
【請求項6】
前記添加剤が、検出可能な応答を発する、又は干渉成分を除去するための金属及びキレート化合物を含む、請求項2記載の装置。
【請求項7】
前記添加剤が、検出可能な応答を発する、又は干渉成分を除去するための酵素を含む、請求項2記載の装置。
【請求項8】
前記添加剤が、検出可能な応答を発する、又は干渉成分を分別するための抗体又は他の親和性分子を含む、請求項2記載の装置。
【請求項9】
前記添加剤が、不透明度又は反射率を調節するためのフィラーを含む、請求項2記載の装置。
【請求項10】
前記添加剤が、流体の流れを増すための界面活性物質を含む、請求項2記載の装置。
【請求項11】
前記液体透過性層の液体透過性が、前記水性ポリマー分散系と前記水溶性ポリマーとの比率を変化させることによって調節される、請求項1記載の装置。
【請求項12】
前記水性ポリマー分散系が、ポリウレタン分散系であり、前記水溶性ポリマーが、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールからなる群の少なくとも一つの要素である、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記水性ポリマー分散系と前記水溶性ポリマーとの比率が重量ベースで50:1〜1:1である、請求項12記載の装置。
【請求項14】
液体試料を、前記試料中の分析対象物と反応して検出可能な応答を発する、層中の乾燥試薬と接触させる、液体試料を分析する方法であって、前記液体試料の一部を前記層の間で移行させ、前記層に接着するための、水性ポリマー分散系と水溶性ポリマーとのブレンドを含む液体透過性層を含み、前記液体透過性層が、液状コーティングとして適用され、液体透過性層が前記層に接着しながらも液体透過性を保持するような温度で、前記層の間の所定位置で押し合わされ、乾燥させたものである、方法。
【請求項15】
前記液体透過性層が、前記試料中の液体を前記層に通すことによって前記試料を濃縮する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記液体透過性層が、前記液体試料中の成分と化学的に反応する添加剤を含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記添加剤が、検出可能な応答を発するための指示色素又は粒子を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記添加剤が、緩衝成分を除去するための交換樹脂及びアスコルベート干渉を排除するためのアスコルベートスカベンジャを含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記添加剤が、検出可能な応答を発する、又は干渉成分を除去するための粒子及びポリマーを含む、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記添加剤が、検出可能な応答を発する、又は干渉成分を除去するための金属及びキレート化合物を含む、請求項16記載の方法。
【請求項21】
前記添加剤が、検出可能な応答を発する、又は干渉成分を除去するための酵素を含む、請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記添加剤が、検出可能な応答を発する、又は干渉成分を分別するための抗体又は他の親和性分子を含む、請求項16記載の方法。
【請求項23】
前記添加剤が、不透明度又は反射率を調節するためのフィラーを含む、請求項16記載の方法。
【請求項24】
前記添加剤が、流体の流れを増すための界面活性物質を含む、請求項16記載の方法。
【請求項25】
前記液体透過性層の液体透過性が、前記水性ポリマー分散系と前記水溶性ポリマーとの比率を変化させることによって調節される、請求項14記載の方法。
【請求項26】
前記水性ポリマー分散系が、ポリウレタン分散系であり、前記水溶性ポリマーが、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールからなる群の少なくとも一つの要素である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記水性ポリマー分散系と前記水溶性ポリマーとの比率が重量ベースで50:1〜1:1である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
流体試料中の分析対象物を検出するための多層装置であって、
(a)前記流体試料を受けるための少なくとも第一の吸収性又は非吸収性層、
(b)前記第一の層から前記試料の一部を受けるための少なくとも第二の吸収性又は非吸収性層、及び
(c)前記少なくとも第一及び第二の層の間に配置された液体透過性接着剤層
を含み、
前記接着剤が、流体中に拡散可能であり、液状コーティングとしてキャスティングされ、前記接着剤層が前記第一及び第二の層に接着しながらも液体透過性を保持するような温度で、前記第一及び第二の層の間の所定位置で押し合わされ、乾燥させた、水性ポリマー分散系と水溶性ポリマーとのブレンドを含むものである装置。
【請求項29】
前記第一の層が、前記流体試料を吸収し、前記装置上に展開する吸収性層である、請求項28記載の装置。
【請求項30】
前記第一の層が、前記試料中の分析対象物と反応するための試薬を含む吸収性層である、請求項28記載の装置。
【請求項31】
前記第一の層が、前記試料の干渉成分と反応するための試薬を含む吸収性層である、請求項28記載の装置。
【請求項32】
前記第二の層が、前記試料からの成分を吸収し、保持する吸収性層である、請求項28記載の装置。
【請求項33】
前記第二の層が、前記試料中の分析対象物と反応するための試薬を含む吸収性層である、請求項28記載の装置。
【請求項34】
前記試料からの前記成分が、前記第一の吸収性層中の分析対象物の反応の生成物である、請求項31記載の装置。
【請求項35】
前記液体透過性接着剤層が、前記流体試料の物理的分離を実施することができる、請求項28記載の装置。
【請求項36】
前記液体透過性接着剤層が、前記試料の成分と反応し、それによって成分を前記接着剤層中に捕らえることができる、請求項28記載の装置。
【請求項37】
前記液体透過性接着剤層が、前記試料の成分と反応し、それによって成分が前記接着剤層を通過することを防ぐことができる添加剤を含有する、請求項28記載の装置。
【請求項38】
前記水分散性ポリマーが、水溶性ポリマーと組み合わせたアニオン性ポリウレタン分散系である、請求項28記載の装置。
【請求項39】
前記水分散性ポリマーが、水溶性ポリマーとしてのカチオン性アクリル分散系と組み合わせたアニオン性ポリウレタン分散系である、請求項28記載の装置。
【請求項40】
前記水分散性ポリマーが、水溶性ポリマーと組み合わせたカチオン性ポリウレタン分散系である、請求項28記載の装置。
【請求項41】
前記水溶性ポリマーが、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールからなる群の少なくとも一つの要素である、請求項38又は40記載の装置。
【請求項42】
前記第一の吸収性層がろ紙である、請求項29記載の装置。
【請求項43】
前記第一の吸収性層中の分析対象物との反応のための前記試薬が、臨床試験で使用されるオキシダーゼ、レダクターゼ及びプロテアーゼならびに結合試験で使用される抗体、核酸、抗原及びタンパク質からなる群の要素である、請求項30記載の装置。
【請求項44】
前記試料の干渉成分との反応のための前記試薬が、干渉物質を代謝するための酵素、干渉物質を非反応性形態に転換するための反応体及び干渉物質を捕らえるための結合剤からなる群の要素である、請求項31記載の装置。
【請求項45】
前記第二の吸収性層がろ紙である、請求項32記載の装置。
【請求項46】
前記第二の吸収性層中の分析対象物と反応するための前記試薬が、分析対象物に応答してシグナルを発する指示薬及びシグナル増幅のための酵素又は反応体からなる群の要素である、請求項28記載の装置。
【請求項47】
前記第一の層中の分析対象物の反応の前記生成物が、臨床試験で使用される酵素ならびに結合試験及び分析対象物の一部が切り離される反応で使用される親和性結合剤からなる群の要素によって検出される、請求項34記載の装置。
【請求項48】
前記試料の成分と反応することができる前記接着剤層への添加剤が、干渉物質を除去する、又はシグナルを発するための親和性結合剤又は酵素からなる群の要素である、請求項37記載の装置。
【請求項49】
前記第一及び第二の吸収性層の間に配置されたさらなる吸収性層をさらに含み、前記さらなる吸収性層それぞれが、もっとも隣接する吸収性層からさらなる接着剤層によって分けられており、前記接着剤層が、前記流体中に拡散可能であり、前記接着剤層を形成するためにキャスティングし、乾燥させた、水性ポリマー分散系と水溶性ポリマーとのブレンドを含む、請求項28記載の装置。
【請求項50】
流体試料中の分析対象物を検出する方法であって、前記試料を請求項28記載の多層装置に適用し、前記試料中に存在する分析対象物の量を計測することを含む方法。
【請求項51】
液体試料中の分析対象物を検出するための、
(a)前記試料を受けるための少なくとも一つの溜めと、
(b)前記試料の少なくとも一部を受け、前記分析対象物と反応するための乾燥試薬を含む少なくとも一つの溜めと、
(c)(a)及び(b)の前記溜めと液が行き来できる毛管通路と
を含むマイクロ流体装置であって、
液体透過性組成物を形成するために乾燥させた、水性ポリマー分散系と水溶性ポリマーとのブレンドを含む液体透過性組成物を含み、前記組成物が、前記溜めの少なくとも一つの中に配置されて、前記液体試料の成分を除去する、又は前記液体試料の成分と反応するものであるマイクロ流体装置。
【請求項52】
前記液体透過性組成物が、前記溜めの一つの中に配置された多層構造中の乾燥試薬又は吸収性層を分ける接着剤層である、請求項51記載のマイクロ流体装置。
【請求項53】
前記液体透過性組成物が、前記溜めの少なくとも一つへの前記毛管通路の入口に配置されている、請求項51記載のマイクロ流体装置。
【請求項54】
前記液体透過性組成物が、前記溜めの少なくとも一つへの毛管通路の出口に配置されている、請求項51記載のマイクロ流体装置。
【請求項55】
前記液体透過性組成物が、前記液体試料中の成分と化学的に反応する添加剤を含む、請求項51記載のマイクロ流体装置。
【請求項56】
前記添加剤が、検出可能な応答を発するための指示色素又は粒子を含む、請求項55記載のマイクロ流体装置。
【請求項57】
前記添加剤が、緩衝成分を除去するための交換樹脂及びアスコルベート干渉を排除するためのアスコルベートスカベンジャを含む、請求項56記載のマイクロ流体装置。
【請求項58】
前記添加剤が、検出可能な応答を発する、又は干渉成分を除去するための粒子及びポリマーを含む、請求項56記載のマイクロ流体装置。
【請求項59】
前記添加剤が、検出可能な応答を発する、又は干渉成分を除去するための金属及びキレート化合物を含む、請求項56記載のマイクロ流体装置。
【請求項60】
前記添加剤が、検出可能な応答を発する、又は干渉成分を除去するための酵素を含む、請求項56記載のマイクロ流体装置。
【請求項61】
前記添加剤が、検出可能な応答を発する、又は干渉成分を分別するための抗体又は他の親和性分子を含む、請求項56記載のマイクロ流体装置。
【請求項62】
前記添加剤が、不透明度又は反射率を調節するためのフィラーを含む、請求項56記載のマイクロ流体装置。
【請求項63】
前記添加剤が、流体の流れを増すための界面活性物質を含む、請求項56記載のマイクロ流体装置。
【請求項64】
前記液体透過性組成物の液体透過性が、前記水性ポリマー分散系と前記水溶性ポリマーとの比率を変化させることによって調節される、請求項51記載のマイクロ流体装置。
【請求項65】
前記水性ポリマー分散系が、ポリウレタン分散系であり、前記水溶性ポリマーが、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールからなる群の少なくとも一つの要素である、請求項51記載のマイクロ流体装置。
【請求項66】
前記水性ポリマー分散系と前記水溶性ポリマーとの比率が重量ベースで50:1〜1:1である、請求項51記載のマイクロ流体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−500363(P2007−500363A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533591(P2006−533591)
【出願日】平成16年6月8日(2004.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/018070
【国際公開番号】WO2004/111638
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)