説明

乾留ガス化焼却処理装置

【課題】廃棄物を乾留、燃焼処理するときに、一酸化炭素の排出を確実に阻止できる装置を提供する。
【解決手段】廃棄物Aを乾留して可燃性ガスを生成する乾留炉1と、可燃性ガスを燃焼させる燃焼炉2と、可燃性ガスの燃焼温度を検知する燃焼温度検知手段3と、該可燃性ガスの燃焼温度を略一定に調整しつつ乾留炉1に酸素を供給する酸素供給手段4とを備える。前記可燃性ガスの発生量に応じて燃焼炉出口12aの開口面積を調整する開口面積調整手段25a,25b,25c,25d,26を備え、前記可燃性ガスが助燃手段17により燃焼を補助されるときに燃焼炉出口12aの開口面積を助燃手段17の火力に応じて所定の範囲に制限する。開口面積調整手段25a,25b,25c,25d,26は、前記可燃性ガスの自然燃焼開始後に、該可燃性ガスの燃焼温度が増加するほど前記燃焼炉出口12aの開口面積を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を乾留して、該乾留により生成する可燃性ガスを完全燃焼させることにより処理する乾留ガス化焼却処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、廃タイヤ等の廃棄物を焼却処理する装置として、例えば、該廃棄物を収納すると共に、該廃棄物の一部を燃焼させつつ、その燃焼熱により該廃棄物の残部を乾留して可燃性ガスを生ぜしめる乾留炉と、該可燃性ガスを該乾留炉から導入して完全燃焼させる燃焼炉とを備える乾留ガス化焼却処理装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
前記乾留ガス化焼却処理装置では、まず、前記乾留炉に収納された前記廃棄物に点火することにより、該廃棄物の一部の燃焼を開始する。この結果、前記廃棄物の一部の燃焼熱により該廃棄物の残部が乾留され、前記可燃性ガスの発生が始まる。
【0004】
前記可燃性ガスは、前記乾留炉から前記燃焼炉に導入されて燃焼されるが、前記乾留炉における前記可燃性ガスの発生は初めは不安定であり、該可燃性ガスの発生が不安定な間は助燃バーナ等により燃焼を補助する必要がある。しかし、前記可燃性ガスは、前記乾留が安定するに伴って定量的に発生するようになり、該可燃性ガス自体の燃焼熱により自然に燃焼を継続できるようになる。
【0005】
そこで、前記乾留ガス化焼却処理装置では、前記可燃性ガスが自然燃焼するようになったならば、前記燃焼炉における該可燃性ガスの燃焼温度を検知し、該燃焼温度に応じて前記乾留炉への酸素供給量を調整することにより、該可燃性ガスの燃焼温度が予め設定された設定温度に略一定に維持されるようにして該可燃性ガスの燃焼を行うことができる。前記乾留炉への酸素供給量の調整は、具体的には、前記燃焼炉における前記可燃性ガスの燃焼温度が前記設定温度よりも高くなったならば、該乾留炉への酸素供給量を低減して前記可燃性ガスの発生を抑制する。また、前記燃焼炉における前記可燃性ガスの燃焼温度が前記設定温度よりも低くなったならば、該乾留炉への酸素供給量を増大させて前記可燃性ガスの発生を促進する。
【0006】
また、前記乾留ガス化焼却処理装置では、前記乾留炉に収容された前記廃棄物に前記乾留される部分が少なくなってくると、該乾留炉への酸素供給量を増大させても、前記燃焼炉における前記可燃性ガスの燃焼温度を前記設定温度に維持することができなくなる。そこで、前記燃焼炉における前記可燃性ガスの燃焼温度を前記設定温度に維持することができなくなったならば、該燃焼炉では再び助燃バーナにより該可燃性ガスの燃焼を補助する一方、前記乾留炉では前記廃棄物を直火燃焼させて灰化することにより、焼却処理を終了する。
【0007】
前記乾留ガス化焼却処理装置では、前述の手順により前記廃棄物の焼却処理を効率よく行うことができる。
【0008】
しかしながら、前記乾留の初期と終期とにおいて前記可燃性ガスの燃焼を前記助燃バーナ等により補助する必要がある段階では、前記可燃性ガスの燃焼により生じた燃焼排気の一酸化炭素濃度が高くなり、該燃焼排気がそのまま排出されると環境に悪影響を及ぼすことが懸念される。
【特許文献1】特開平2−135280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑み、廃棄物を乾留し、該乾留により発生する可燃性ガスを燃焼させて処理するときに、一酸化炭素の排出を確実に阻止することができる乾留ガス化焼却処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、本発明は、廃棄物を収納すると共に、該廃棄物の一部を燃焼させつつ該燃焼熱により該廃棄物の残部を乾留して可燃性ガスを生ぜしめる乾留炉と、該乾留炉から導入される可燃性ガスを燃焼させる燃焼炉と、該燃焼炉における該可燃性ガスの燃焼温度を検知する燃焼温度検知手段と、該燃焼炉における該可燃性ガスの自然燃焼が開始された後に該燃焼温度検知手段により検知される該可燃性ガスの燃焼温度を予め設定された設定温度に略一定に維持するように該乾留炉への酸素供給量を調整しつつ該廃棄物の一部の燃焼に必要な酸素を該乾留炉に供給する酸素供給手段とを備えた乾留ガス化焼却処理装置において、前記可燃性ガスの発生量に応じて前記燃焼炉出口の開口面積を調整する開口面積調整手段を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の乾留ガス化焼却処理装置では、前記乾留炉に収納された前記廃棄物の一部を燃焼させ、その燃焼熱により該廃棄物の残部が乾留することにより発生する前記可燃性ガスを前記燃焼炉に導入して燃焼させる。そして、前記可燃性ガスが自然燃焼するようになった後、前記燃焼炉における該可燃性ガスの燃焼温度を検知し、該燃焼温度に応じて前記乾留炉への酸素供給量を調整することにより、該可燃性ガスの燃焼温度が予め設定された設定温度に略一定に維持されるようにして該可燃性ガスの燃焼を行う。
【0012】
ここで、前記可燃性ガスを前記燃焼炉に導入して燃焼させるときに、本発明の乾留ガス化焼却処理装置では、前記開口面積調整手段により、前記可燃性ガスの発生量に応じて前記燃焼炉出口の開口面積を調整する。前記開口面積の調整は、具体的には、前記燃焼炉が、前記廃棄物の乾留が開始された後、前記可燃性ガスの燃焼温度が前記自然燃焼可能な温度未満のときに、該可燃性ガスの燃焼を補助する助燃手段を備え、前記開口面積調整手段は、前記可燃性ガスが前記助燃手段により燃焼を補助されるときに、前記燃焼炉出口の開口面積を該助燃手段の火力に応じて予め定められた範囲に制限することにより行う。
【0013】
本発明の乾留ガス化焼却処理装置は、前記廃棄物の乾留中、前記可燃性ガスの燃焼温度が前記自然燃焼可能な温度より低いとき、具体的には前記乾留の初期または終期で該可燃性ガスの生成が十分でないときに、前記助燃手段により該可燃性ガスの燃焼を補助する。しかしこの場合には、前記可燃性ガスの燃焼温度が低いために、該可燃性ガスの燃焼により生じた燃焼排気中の一酸化炭素濃度が高くなる。
【0014】
そこで、本発明の乾留ガス化焼却処理装置では、前記可燃性ガスが前記助燃手段により燃焼を補助されたときに、前記開口面積調整手段により前記燃焼炉出口の開口面積を制限し、狭くする。このようにすると、前記可燃性ガスの燃焼により発生した燃焼排気は外部に排出されにくくなり、該燃焼炉内で混合されるので、この間に一酸化炭素が十分に燃焼せしめられることになり、一酸化炭素が外部に排出されることを実質的に阻止することができる。
【0015】
一方、前記可燃性ガスの自然燃焼が行われる時期には、該可燃性ガスの発生量も十分に多くなっており、前記のように前記開口面積調整手段により前記燃焼炉出口の開口面積を制限していると、該燃焼炉内の圧力が増大する。そこで、本発明の本発明の乾留ガス化焼却処理装置では、前記開口面積調整手段は、前記可燃性ガスの自然燃焼が開始された後には、該可燃性ガスの燃焼温度が増加するほど前記燃焼炉出口の開口面積を大きくすることにより、該燃焼炉内の圧力の増加を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態の乾留ガス化焼却処理装置のシステム構成図であり、図2は図1に示す開口面積調整手段の構成を示す平面図、図3は図1に示す燃焼炉における可燃性ガスの燃焼温度の経時変化を示すグラフである。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の乾留ガス化焼却処理装置は、廃タイヤ等の廃棄物Aを収納し、その乾留・ガス化並びに燃焼・灰化を行う乾留炉1、乾留炉1で廃棄物Aの乾留により生じる可燃性ガスを燃焼させる燃焼炉2、燃焼炉2における可燃性ガスの燃焼温度Tを検知する温度センサ3、乾留炉1に燃焼用酸素として空気を供給する酸素供給手段4、燃焼炉2に燃焼用酸素として空気を供給する酸素供給手段5を備えている。
【0018】
乾留炉1の上面部には、開閉自在な投入扉6を有する投入口7が形成され、該投入口7から前記廃棄物Aが乾留炉1内に投入できるようにされている。乾留炉1は、投入扉6を閉じた状態では、その内部が実質的に外気と遮断される。また、乾留炉1の底部は空室となっており、該空室に燃焼用酸素としての空気を供給する酸素供給手段4が接続されている。酸素供給手段4から前記空室に供給される空気は、乾留炉1の底部の炉壁を貫通して設けられた給気ノズル8を介して乾留炉1の内部に導入される。
【0019】
乾留炉1の下部の側部には、点火バーナ等により構成される着火装置9が取付けられている。着火装置9は、図示しない燃料供給装置から供給される助燃油等の燃料を燃焼させることにより、乾留炉1の内部に向かって燃焼炎を生ぜしめ、この燃焼炎により乾留炉1内の前記廃棄物Aに着火する。また、乾留炉1の外周部及び底部には、その冷却構造として該乾留炉1の内部と隔離されたウォータジャケット10が形成されている。ウォータジャケット10内の水は乾留炉1の外部に設けられた図示しない給水装置から給水される。
【0020】
前記燃焼炉2は、前記温度センサ3を備えるバーナ炉11と、バーナ炉11の出口に連通し、上部に開口する燃焼炉本体12と、燃焼炉本体12の上部開口部12aに連通し、排気ダクト13が接続される冷却塔14とを備えている。バーナ炉11は、その基部に乾留炉1の上部に設けられた接続部15から導出されたガス通路16が接続され、乾留炉1で前記廃棄物Aの乾留により生じる可燃性ガスが導入されるようになっている。バーナ炉11の後端部には着火装置17が取付けられ、前記ガス通路16から導入される可燃性ガスに着火する。着火装置17は、前記着火装置9と同様に点火バーナ等により構成され、図示しない燃料供給装置から供給される助燃油等の燃料を燃焼させることにより、バーナ炉11の内部に向かって燃焼炎を生ぜしめる。
【0021】
燃焼炉2の外周部は空室となっており、該空室に燃焼用酸素としての空気を供給する酸素供給手段5が接続されている。酸素供給手段5から前記空室に供給される空気は、燃焼炉2の外周壁に設けられた複数のノズル孔18を介して燃焼炉2の内部に供給される。
【0022】
乾留炉1に空気を供給する前記酸素供給手段4は、乾留炉1の外部に設けられた押込ファン等の酸素供給源19と、該酸素供給源19から導出された主酸素供給管20と、該主酸素供給管20から分岐されて乾留炉1の底部に設けられた前記空室に接続された副酸素供給管21とからなる。副酸素供給管21には温度センサ3から入力される検知信号に従って開度が調整される調整弁22が設けられている。
【0023】
また、燃焼炉2に空気を供給する前記酸素供給手段5は、前記酸素供給源19と、該酸素供給源19から導出された主酸素供給管20と、該主酸素供給管20から分岐されて燃焼炉2の外周部に設けられた前記空室に接続された副酸素供給管23とからなる。副酸素供給管23には温度センサ3から入力される検知信号に従って開度が調整される調整弁24が設けられている。
【0024】
そして、燃焼炉2の燃焼炉本体12と冷却塔14との間には、燃焼炉本体12の上部開口部12aに沿って進退自在に備えられた開口面積調整板25a,25b,25c,25dが備えられている。図2に示すように、開口面積調整板25aは開口面積調整板25bと、開口面積調整板25cは開口面積調整板25dと、それぞれ対向して設けられ、開口面積調整板25a,25bと、は開口面積調整板25c,25dとは互いに直交する方向に設けられている。開口面積調整板25aは、温度センサ3からの検知信号または着火装置17からの信号に従って駆動されるシリンダ等の駆動装置26によって進退せしめられ、他の開口面積調整板25b,25c,25dは、カム等の機械的機構により開口面積調整板25aに連動して進退せしめられるようになっている。図1に示す本実施形態の乾留ガス化焼却処理装置では、このように、開口面積調整板25a,25b,25c,25dを進退せしめることにより、燃焼炉本体12の上部開口部12aの開口面積を調整するようになっている。
【0025】
次に、図1に示す本実施形態の乾留ガス化焼却処理装置の作動について、説明する。
【0026】
本実施形態の乾留ガス化焼却処理装置では、まず、乾留炉1の投入扉6が開かれて、廃棄物Aが投入口7から該乾留炉1内に投入される。次いで、投入扉6を閉じた後に、着火装置9が所定時間作動されることにより、乾留炉1内の廃棄物Aに着火され、該廃棄物Aの部分的燃焼が開始される。
【0027】
前記廃棄物Aの部分的燃焼の開始に際して、乾留炉1に接続された副酸素供給管21の調整弁22は、わずかな開度で開かれており、酸素供給源19から乾留炉1内に比較的少量の酸素(空気)が供給される。このため、廃棄物Aの部分的燃焼は、乾留炉1内に存在していた酸素と、酸素供給源19から供給される比較的少量の酸素とを用いて開始される。
【0028】
このように乾留炉1内の廃棄物Aの下層部における部分的燃焼が開始されると、その燃焼熱により廃棄物Aの上層部の乾留が開始され、該乾留により可燃性ガスの生成が始まる。そして、乾留炉1内で生成した可燃性ガスは、ガス通路16を介して燃焼炉2のバーナ炉11に導入され、着火装置17により着火されて燃焼を開始する。
【0029】
バーナ炉11における可燃性ガスの燃焼により生じた燃焼排気(排ガス)は、燃焼炉本体12を経て冷却塔14で冷却されたのち、図示しない急冷塔、バグフィルタ等を介して、図示しない煙突から大気中に排出される。
【0030】
前記廃棄物Aの部分的燃焼を行うときに、乾留炉1では、副酸素供給管21の調整弁22の開度を、乾留炉1への酸素供給量が廃棄物Aの下層部における継続的な部分的燃焼に必要な程度になるように制限しつつ、段階的に徐々に増大させる。このようにすると、乾留炉1における廃棄物Aの部分的燃焼は、酸素供給源19から供給される少量の酸素を消費しつつ徐々に安定化する一方、その燃焼範囲が酸素供給源19から供給される酸素量に応じて、廃棄物Aの下層部において徐々に拡大していく。そして、廃棄物Aの下層部における燃焼の安定化に伴って、その燃焼熱による廃棄物Aの上層部の乾留も徐々に活発化して安定に進行するようになり、該乾留により生成する可燃性ガスの量も徐々に増大していく。
【0031】
この結果、図3に示すように、温度センサ3により検知される燃焼炉2における可燃性ガスの燃焼温度Tも上昇していく。尚、乾留炉1の着火装置9は、廃棄物Aの下層部における燃焼が安定化したことが確認された時点で停止される。
【0032】
次いで、温度センサ3により検知される可燃性ガスの燃焼温度Tがさらに上昇し、該可燃性ガスが自然燃焼し得る温度として予め設定された設定温度T1よりも僅かに低い温度T2に達すると、調整弁22は燃焼温度Tが設定温度T1に略一定に維持されるように自動的にフィードバック制御される。
【0033】
具体的には、温度センサ3により検知される可燃性ガスの燃焼温度Tが設定温度T1より低くなると、調整弁22の開度を大きくして乾留炉1への酸素供給量を増加させ、可燃性ガスの生成を促進する。逆に、温度センサ3により検知される可燃性ガスの燃焼温度Tが設定温度T1より高くなると、調整弁22の開度を小さくして乾留炉1への酸素供給量を低減させ、可燃性ガスの生成を抑制する。このように、調整弁22の開度をフィードバック制御することにより、図3に示すように、燃焼炉2における可燃性ガスの燃焼温度Tが略一定の設定温度T1に維持され、乾留炉1内の廃棄物Aの下層部の燃焼と、上層部の乾留とが安定に進行する。
【0034】
前記乾留炉1内の廃棄物Aに着火されてから、燃焼炉2における可燃性ガスの燃焼温度Tが略一定の設定温度T1に維持されるようになるまでの過程を図3に「立ち上げ段階」として示す。前記立ち上げ段階では、乾留炉1における可燃性ガスの生成量が十分ではなく、該可燃性ガスの燃焼温度Tが低いため、前記燃焼排気中の一酸化炭素濃度が高く、該燃焼排気がこのまま大気中に排出されると、環境を汚染する虞がある。
【0035】
そこで、本実施形態の乾留ガス化焼却処理装置では、前記立ち上げ段階で着火装置17が作動している間、着火装置17から駆動装置26に信号が送られ、駆動装置26は該信号に応じて開口面積調整板25a,25b,25c,25dを駆動して燃焼炉本体12の上部開口部12aの開口面積を狭めるようになっている。この結果、前記燃焼排気は、燃焼炉本体12内で混合され、該混合の間に十分に一酸化炭素が燃焼せしめられるので、一酸化炭素の排出を実質的に阻止することができる。
【0036】
尚、開口面積調整板25a,25b,25c,25dによる燃焼炉本体12の上部開口部の開口面積12aは、着火装置17の火力に応じて予め設定された範囲になるようにされている。
【0037】
次に、燃焼炉2における可燃性ガスの燃焼温度Tが略一定の設定温度T1に維持されるようになると、バーナ炉11の着火装置17が停止され、該可燃性ガスは継続的に自然燃焼することとなる。尚、燃焼炉2における可燃性ガスの燃焼に際しては、温度センサ3により検知される可燃性ガスの燃焼温度Tに対応して、燃焼炉2に接続された副酸素供給管23の調整弁24の開度が自動的に調節され、該可燃性ガスの完全燃焼に必要とされる量の酸素が燃焼炉2内に供給される。
【0038】
前記可燃性ガスが継続的に自然燃焼する過程を図3に「自然燃焼段階」として示す。前記自然燃焼段階では、可燃性ガスの燃焼温度Tを略一定の設定温度T1に維持することができる。この段階では、乾留炉1における可燃性ガスの生成量が多いので、前述のように開口面積調整板25a,25b,25c,25dにより燃焼炉本体12の上部開口部12aの開口面積が狭められていると、前記燃焼排気により燃焼炉本体12内の圧力が増大する。
【0039】
そこで、前記自然燃焼段階では、駆動装置26は温度センサ3の検知信号に応じて開口面積調整板25a,25b,25c,25dを駆動し、前記可燃性ガスの燃焼温度Tが増加するほど、燃焼炉本体12の上部開口部12aの開口面積が大きくなるようにする。この結果、前記自然燃焼段階で、前記燃焼排気により燃焼炉本体12内の圧力が増大することを防止することができる。
【0040】
次に、前記可燃性ガスの自然燃焼を続けると、やがて乾留炉1内の廃棄物Aのうち乾留できる部分が少なくなり、乾留炉1に接続された副酸素供給管21の調整弁22の開度を大きくしても、十分な量の該可燃性ガスが生成しなくなる。このようになると、前記可燃性ガスの燃焼温度Tをその自然燃焼によっては略一定の設定温度T1に維持することができなくなるので、再びバーナ炉11の着火装置17に着火して、該可燃性ガスの燃焼を補助する。このとき、廃棄物Aの乾留できる部分が少なくなるにつれて前記可燃性ガスの燃焼温度Tは次第に低下していく。
【0041】
一方、乾留炉1では、廃棄物Aに乾留できる部分が全くなくなると、廃棄物Aの直火燃焼が始まり、ついには廃棄物Aが完全に灰化される。また、バーナ炉11の着火装置17は、廃棄物Aの灰化が確認されると停止される。
【0042】
前記可燃性ガスの燃焼温度Tが略一定の設定温度T1から次第に低下する過程を図3に「灰化段階」として示す。前記灰化段階では、前記立ち上げ段階と同様に、乾留炉1における可燃性ガスの生成量が十分ではなく、該可燃性ガスの燃焼温度Tが低いため、前記燃焼排気中の一酸化炭素濃度が高い。
【0043】
そこで、本実施形態の乾留ガス化焼却処理装置では、前記灰化段階で着火装置17が作動している間、着火装置17から駆動装置26に信号が送られ、駆動装置26は該信号に応じて開口面積調整板25a,25b,25c,25dを駆動して燃焼炉本体12の上部開口部12aの開口面積を狭めるようになっている。この結果、前記燃焼排気は、燃焼炉本体12内で混合され、該混合の間に十分に一酸化炭素が燃焼せしめられるので、一酸化炭素の排出を実質的に阻止することができる。
【0044】
尚、開口面積調整板25a,25b,25c,25dによる燃焼炉本体12の上部開口部12aの開口面積は、前記立ち上げ段階と同様に、着火装置17の火力に応じて予め設定された範囲になるようにされている。
【0045】
この結果、本実施形態の乾留ガス化焼却処理装置によれば、乾留炉1における廃棄物Aの乾留の初期(立ち上げ段階)または終期(灰化段階)であって、前記可燃性ガスの発生量が少なく該可燃性ガスの燃焼温度Tが低いときにも、一酸化炭素の排出を阻止することができる。
【0046】
尚、本実施形態では、駆動装置26により開口面積調整板25a,25b,25c,25dを燃焼炉本体12の上部開口部12aに沿って進退させることにより、上部開口部12aの開口面積を調整している。しかし、これに代えて燃焼炉本体12の上部開口部12aに回転自在の回転板と、該回転板を回転駆動する駆動装置とを設け、温度センサ3からの検知信号または着火装置17からの信号に従って該駆動装置により該回転板を回転駆動することにより、上部開口部12aの開口面積を調整するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の乾留ガス化焼却処理装置の一構成例を示すシステム構成図。
【図2】図1に示す開口面積調整手段の構成を示す平面図。
【図3】図1に示す燃焼炉における可燃性ガスの燃焼温度の経時変化を示すグラフ。
【符号の説明】
【0048】
1…乾留炉、 2…燃焼炉、 3…燃焼温度検知手段、 4…酸素供給手段、 12a…燃焼炉出口、 17…助燃手段、 25a,25b,25c,25d,26…開口面積調整手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を収納すると共に、該廃棄物の一部を燃焼させつつ該燃焼熱により該廃棄物の残部を乾留して可燃性ガスを生ぜしめる乾留炉と、該乾留炉から導入される可燃性ガスを燃焼させる燃焼炉と、該燃焼炉における該可燃性ガスの燃焼温度を検知する燃焼温度検知手段と、該燃焼炉における該可燃性ガスの自然燃焼が開始された後に該燃焼温度検知手段により検知される該可燃性ガスの燃焼温度を予め設定された設定温度に略一定に維持するように該乾留炉への酸素供給量を調整しつつ該廃棄物の一部の燃焼に必要な酸素を該乾留炉に供給する酸素供給手段とを備えた乾留ガス化焼却処理装置において、
前記可燃性ガスの発生量に応じて前記燃焼炉出口の開口面積を調整する開口面積調整手段を備えることを特徴とする乾留ガス化焼却処理装置。
【請求項2】
前記燃焼炉は、前記廃棄物の乾留が開始された後、前記可燃性ガスの燃焼温度が前記自然燃焼可能な温度未満のときに、該可燃性ガスの燃焼を補助する助燃手段を備え、
前記開口面積調整手段は、前記可燃性ガスが前記助燃手段により燃焼を補助されるときに、前記燃焼炉出口の開口面積を該助燃手段の火力に応じて予め定められた範囲に制限することを特徴とする請求項1記載の乾留ガス化焼却処理装置。
【請求項3】
前記開口面積調整手段は、前記可燃性ガスの自然燃焼が開始された後に、該可燃性ガスの燃焼温度が増加するほど前記燃焼炉出口の開口面積を大きくすることを特徴とする請求項1または請求項2記載の乾留ガス化焼却処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−10143(P2006−10143A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185823(P2004−185823)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(391060281)株式会社キンセイ産業 (17)
【Fターム(参考)】