説明

亀裂コンクリートをシールおよび強化するためのエポキシシール材/修復材

亀裂コンクリートをシールおよび強化するためのエポキシシール材/修復材配合物。本シール材/修復材は、ヒューム発生が低減されており、発熱量がより低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亀裂コンクリートをシールおよび強化するためのエポキシシール材/修復材に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、橋梁、道路、トンネル、滑走路、パーキングランプおよびデッキ、パラペット壁、プレキャストビーム、支柱、縁石、擁壁、およびペーバが含まれる多数の構造物を作製するために使用される。これらの構造物には、通常、環境および人工的な諸活動にさらされることによって亀裂が発達する。従って、亀裂コンクリート構造物をシールおよび修復するための組成物に対する広範な必要性が存在する。
【0003】
亀裂コンクリートをシールするための多くの組成物が知られている。一例は、メタクリレート系配合物である。しかし、これらの組成物には、もろく、湿潤条件下では使用不可能であり、一般に硬化が遅いという不利点がある。別の例は、ポリシロキサン系樹脂配合物である。これらは、目に見える亀裂をシールするのには使用不可能であり、むしろ浸透剤として使用される。
【0004】
コンクリートの亀裂をシールするためのエポキシ系組成物も知られている。Denepox 40と呼ばれる商業的に入手可能な製品が、DeNeef America Inc.から販売されている。Denepox 40は、圧力注入または重力供給方式によってコンクリート亀裂に適用することができる低粘度の2成分形エポキシ樹脂系であるといわれていた。Denepox 40は、水の存在に鈍感であり、湿潤コンクリート表面への用途に有用であるといわれていた固体100%の樹脂である。Denepox 40は、可使時間が77°Fで80分、この温度での混合時粘度が40センチポアズであると宣伝された。
【0005】
Versafill 60A/60Bは、Henkel Corporationによって製造された製品であり、コンクリート構造物の亀裂に浸透し、結合するように設計された2成分形エポキシ系であった。この材料は、注入するか、重力供給方式によって適用するかいずれかが可能であった。Versafill 60A/60Bは、亀裂(幅4/1000インチという狭いものまで)中の深部まで浸透し、臭気がほとんどなく、無溶媒であるといわれていた。混合した2成分形エポキシ系は、粘度が300〜500センチポアズであり、ゲル化時間が約60分であると宣伝された。
【0006】
Dural 335 は、Tamms Industriesによって販売され、コンクリートの亀裂および表面をシールするための100%固体の低粘度2成分形エポキシ樹脂であることが特徴であった。Dural 335 は、亀裂内に容易に流入して深部まで浸透し、混合された配合物は、粘度が75°Fで83センチポアズであり、可使時間が40〜50分であるといわれていた。硬化配合物は、水分に鈍感であるといわれていたが、最大の浸透および十分な結合強度を得るためには、Dural 335を適用する前に表面および亀裂を完全に乾燥しなければならない。
【0007】
亀裂コンクリートをシールするためのエポキシ系配合物は公知であるが、これらには、いくつかの不利点がある。エポキシ系配合物は、通常、粘度が高く、このことによって、亀裂への不十分な浸透がもたらされていた。エポキシ系配合物は、タックフリータイムが長い傾向もあり、一部のものは、水分が存在するとコンクリートに結合することができず、かつ/あるいは硬化することができない。
【0008】
本出願の譲受人に譲渡されたHartmannらの米国特許第6,068,885号には、重力供給方式と注入の双方によって亀裂コンクリートをシールおよび結合するためのエポキシシール材/修復材が記載されている。これらのシール材/修復材は、粘度が小さく、十分にかつ深部まで亀裂コンクリートに浸透する。また、このシール材/修復材は、亀裂コンクリートに適用した場合、構造修復特性があり、湿潤条件下で亀裂コンクリートに結合する。加えて、このエポキシシール材/修復材は、改良されたタックフリータイム、および大部分の実用的な用途での使用に適した可使時間を有する。
【0009】
Sikaによって、特許'885による特に低粘度のシール材/修復材が商標名「Sikadur 55 SLV」の下で販売されている。この製品は、優れたシール材/修復材特性を備えていることが見出された。この「Sikadur」製品は、2成分形配合物である。パートAと呼ばれる第1の成分は、約48重量%のビスフェノールA-エピクロロヒドリン樹脂〔Huntsman Advanced Materialsから商標名Araldite 6005の下で販売されているもの(これは、約4%のパラ-第三級ブチルフェニルグリシジルエーテルを含有する)〕と、約41重量%のネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(ジエポキシド反応性希釈剤)と、約7.5重量%のネオデカン酸グリシジルエーテル(モノエポキシド反応性希釈剤)と、約3.5重量%のフルフリルアルコール(ヒドロキシル化芳香族希釈剤)とを含む。パートBと呼ばれる第2の成分は、約69.5重量%のアミン硬化剤であるイソホロンジアミンと、約10.5重量%の脂肪族アミン〔フェノール、ジエチレントリアミンとエチレンオキシドとの1:1付加物、およびジエチレントリアミンの反応生成物である、商標名Ancamine ADの下でAir Products and Chemical Co.から販売されているもの〕と、約12重量%の2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール(第三級アミン)と、約4.75重量%のベンジルアルコールと、3.25重量%のサリチル酸とを含む。
【0010】
Sikadurシール材/修復材は、亀裂コンクリートをシールおよび結合するための優れた製品であった。より詳細には、この製品は、亀裂コンクリートへの十分でかつ深い浸透を可能にする低粘度、無亀裂コンクリートと同じ強度条件にコンクリートを効果的に戻すための構造修復特性、およびこの製品にほとんどの実用的な用途での使用に適した可使時間を与える優れた取扱特性を備える。さらに、このSikadurシール材/修復材は、湿潤条件において効果的に結合し得るので有利であることが分かった。
【0011】
残念なことに、Sikadur製品は、不利点もあることが分かった。詳細には、この製品は、非常に高い発熱曲線を有し、過度のヒューム発生があり、沸騰してこぼれる高い可能性があることが見いだされた。また、Ancamine ADと配合してジアルキレントリアミン-アルキレンオキサイド付加物を供給する場合に、この製品が、物質、フェノールを、いくつかの国で禁止されている量で含有するため、世界中へ販売が制限された。従って、これらの望ましくない特徴を解決する必要性が存在した。
【特許文献1】米国特許第6,068,885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の総括的な目的は、重力供給方式と注入の双方によって亀裂コンクリートを有効にシールおよび結合するための改良されたエポキシ組成物を提供することである。
【0013】
本発明のより具体的な目的は、十分にかつ深部まで亀裂コンクリートに浸透し、かつ、従来技術の上述した不利点を解決する低粘度エポキシシール材/修復材を提供することである。好ましくは、本発明は、亀裂コンクリートに適用した場合、構造修復特性を備え、湿潤条件下で亀裂コンクリートに結合するエポキシシール材/修復材を提供する。この点では、本発明の目的は、より低い発熱曲線を示し、ヒューム発生がより少ない、沸騰してふきこぼれる可能性が小さく、世界中への販売が制限されることになる物質を全く含有しない、エポキシシール材/修復材を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、亀裂コンクリート上で使用するための、適切なタックフリータイムを有するエポキシシール材/修復材を提供することである。好ましくは、亀裂コンクリートのためのエポキシシール材/修復材は、ほとんどの実用的な用途での使用に適した可使時間を有する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、一態様では、本発明は、エポキシ樹脂とアミンとを含むが、ジアルキレントリアミン-アルキレンオキサイド付加物を必要としない、亀裂コンクリートをシールおよび強化するためのエポキシシール材/修復材であって、1クォートの体積を1/2ガロン塗料缶〔直径約5.3インチ(13.5cm)、深さ5.7インチ(14.5cm)〕において試験する点以外はASTM D 2471に準拠して測定した場合に、その配合物が480°F(250℃)以下、好ましくは455°F(235℃)以下のピークを有する発熱曲線を示すエポキシシール材/修復材を提供する。本発明はまた、少なくとも無亀裂コンクリートの弾性率および/または圧縮強度並みの弾性率および/または圧縮強度をもたらす一方、重力供給方式で適用すると、幅0.5mmの亀裂に対して少なくとも10 mm/分の速度でコンクリート亀裂に有効に浸透する。好ましくは、本発明によるシール材/修復材は、幅0.1mmの、より好ましくは幅0.05mmの、あるいはさらに小さい亀裂に十分浸透し得る。
【0016】
他の態様では、本発明は、濡れた表面に結合し、コンクリート亀裂に自己浸透する、エポキシ樹脂とアミンとの配合物を含み、この配合物の73°Fにおけるタックフリータイムが12時間以下である、亀裂コンクリートをシールおよび強化するためのエポキシシール材/修復材を提供する。
【0017】
さらなる他の態様では、本発明は、エポキシ樹脂とアミンとを含むが、ジアルキレントリアミン-アルキレンオキサイド付加物は必要とせず、該配合物の73°F(23℃)におけるタックフリータイムが6時間以下であり、粘度が、73°F(23℃)において約140センチポアズ(cps)以下、好ましくは約125cps以下、さらにより好ましくは約110cps以下である、亀裂した湿潤コンクリートをシールおよび強化するための自己浸透性エポキシシール材/修復材を提供する。
【0018】
さらなる他の態様では、本発明は、エポキシシール材/修復材であって、エポキシ樹脂とアミンとを含むが、ジアルキレントリアミン-アルキレンオキサイド付加物は必要とせず、1クォートの体積を1/2ガロン塗料缶〔直径約5.3インチ(13.5cm)、深さ5.7インチ(14.5cm)〕において試験する点以外はASTM D 2471に準拠して測定した場合に、その配合物が480°F(250℃)以下、好ましくは455°F(235℃)以下のピークを有する発熱曲線を示し、かつ、少なくとも無亀裂コンクリートの弾性率および/または圧縮強度並みの弾性率および/または圧縮強度をもたらす一方、重力供給方式で適用すると、幅0.5mmの亀裂に対して少なくとも10 mm/分の速度でコンクリート亀裂に有効に浸透する、エポキシシール材/修復材を、亀裂コンクリート表面に適用する工程を含む、亀裂コンクリートをシールし、亀裂コンクリートの強度を回復する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
上記したように、本発明は、亀裂コンクリートをシールおよび強化するためのエポキシシール材/修復材に関する。このエポキシシール材/修復材は、パートAおよびパートBと呼ばれる2つの成分(パート)の混合物であることを特徴とする。パートAは、エポキシ樹脂を含む。パートBは、アミン硬化剤を含む。通常、パートAおよびパートBはそれぞれ、1種または複数種の希釈剤をさらに含む。典型的には、パートBは促進剤を含有する。パートAも促進剤を含有することができる。
【0020】
本明細書においてシール材/修復材は、コンクリートの亀裂を充填し、シールし、それによって、水または他の異物がコンクリートに入ることを防止する組成物を意味する。加えて、このシール材/修復材は、亀裂の内表面に結合することによって、コンクリートを修復する、すなわち、亀裂コンクリートの弾性率および/または圧縮強度を増加させる。本発明の有利な点は、硬化したエポキシシール材/修復材が、少なくとも無亀裂コンクリートの弾性率および/または圧縮強度まで亀裂コンクリートの弾性率および/または圧縮強度を増加させ得ることである。
【0021】
パートAに含有されるエポキシ樹脂は、好ましくは、ビスフェノールA-エピクロロヒドリン樹脂〔例えば、Araldite 6010(Huntsman Advanced Materials社によって販売されている)など〕である。しかし、ビスフェノールF-エピクロロヒドリン樹脂〔例えば、Epalloy 8230(CVC Specialty Chemicals, Inc.によって販売されている)など〕、臭素化エポキシ樹脂、および多官能性樹脂(例えば、フェノール性エピクロロヒドリン樹脂など)を含む他のエポキシ樹脂も使用することができる。パートAは、典型的には、約40から約75重量%、好ましくは約50から65重量%のエポキシ樹脂を含有する。
【0022】
特に好ましい実施形態では、ビスフェノールA-エピクロロヒドリン樹脂とビスフェノールF-エピクロロヒドリン樹脂との組合せが用いられる。この実施形態では、約30から約50重量%、好ましくは約35から約45重量%、最も好ましくは約40重量%のビスフェノールA樹脂が使用され、約15から約25重量%、好ましくは約17から約23重量%、最も好ましくは約21重量%のビスフェノールF-エピクロロヒドリン樹脂が使用される。
【0023】
理論に拘束される意図はないが、このビスフェノールAとビスフェノールFとの混合物に関しては、ビスフェノールA成分が、硬化のための主要樹脂として機能する一方、ビスフェノールF成分が、所望の機能性を保持すると考えられる、つまり、ビスフェノールF成分は、存在するおそれのある一官能性希釈剤由来の鎖短縮化が特性に及ぼす作用を最小化すると考えられる。ビスフェノールF樹脂はまた、パートAが結晶化しようとするいかなる傾向をも低減すると考えられる。
【0024】
パートAは、粘度を低減するために希釈剤も含有する。パートAは、典型的には、約30から約50重量%の範囲の量で希釈剤を含有する。希釈剤は一成分でもよいが、複数成分の混合物である場合が多い。反応性希釈剤は、架橋ポリマーの一部になり、非反応性タイプよりも好ましい。これは、反応性希釈剤が、わずかかもしれないがエポキシ系の特性に影響を与えると考えられるからである。反応性希釈剤は、多様な種類の反応性官能基を含有し得る。好ましい反応性希釈剤として、二官能性エポキシドおよび一官能性エポキシドが挙げられる。
【0025】
本発明者らは、二官能性エポキシド希釈剤の過度の量が、譲受人の先行Sikadur製品で見られる大量のヒューム発生および高い発熱曲線の原因であることを発見した。しかし、二官能性エポキシド成分の存在が非常によく機能することによって、所望の強度特性に悪影響を及ぼすことなく粘度が低下していた。従って、必要とする亀裂浸透を実現するための満足すべき粘度をもたらす成分を依然として利用しつつ、ヒューム発生を最小化し、発熱曲線を低下させる配合物を提供することが本発明の重要な態様である。また、本組成物を、最終の強度特性に悪影響を与えるように配合することはできない。
【0026】
従って、1つの好ましい実施形態では、二官能性エポキシド希釈剤と一官能性エポキシド希釈剤の双方が使用される。これらの希釈剤の量および組合せは、強度特性に悪い影響を及ぼさず、許容できないほど高い発熱曲線または過剰なヒューム発生を引き起こさずに、必要とする粘度特性が提供されるように選択する。好ましくは、最終製品の発熱曲線のピークは、1クォートの体積を1/2ガロン塗料缶〔直径約5.3インチ(13.5cm)、深さ5.7インチ(14.5cm)〕において試験する点以外はASTM D 2471に準拠して測定した場合に、480°F(250℃)以下、好ましくは455°F(235℃)以下であるべきである。本発明の組成物は、1/2ガロンの体積を1ガロンの金属缶で測定し、試料に外部から全く熱を加えないように改変したASTM E 662で測定した場合に、100 Dsを超える煙密度を生成するようなヒュームを発生すべきでなく、好ましくは、約75 Dsを超えるヒュームを発生すべきでなく、最も好ましくは約50 Ds未満のヒュームを発生すべきである。
【0027】
ASTM E 662の煙密度試験は、試験する供試体について光減衰を時間に対してプロットすることによって煙の定量的な測定結果を提供する。煙の最大蓄積量ならびに煙生成速度が得られる。煙測定の結果は、比光学密度として報告される。
【0028】
好ましいこの実施形態では、反応性エポキシド希釈剤の混合物を利用する場合、二官能性反応性エポキシド希釈剤の量は、約18重量%を超えるべきでない。好ましくは、二官能性反応性希釈剤は、約15から16重量%の量で存在する。他方、二官能性反応性希釈剤は、少なくとも約10重量%の量で存在すべきである。
【0029】
二官能性エポキシドとともに、パートAは、粘度を低下を助けるが、過剰なヒュームの発生を引き起こさないかまたは発熱曲線を許容不可能な水準まで上昇させない一官能性希釈剤を含有すべきである。しかし、一官能性希釈剤は、最終強度特性に悪い影響を与える場合がある鎖停止作用を示す。従って、一官能性希釈剤の量は、制限すべきである。好ましくは、パートAは、少なくとも約15重量%であるが約25重量%以下の一官能性反応性エポキシド希釈剤を含有する。より好ましくは、パートAは、約20から約25重量%の一官能性反応性希釈剤を含有する。
【0030】
本発明による可能な希釈剤成分として、例えば、ジエポキシド(例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、およびビニルシクロヘキセンジオキシドなど)が挙げられ、その中でネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルが好ましい。モノエポキシド希釈剤として、例えば、ネオデカン酸グリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル(例えば、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、 ブチルグリシジルエーテルなど)、クレシルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、フェニルグリシジルエーテル、およびオレフィンオキシドなどが挙げられ、その中でネオデカン酸グリシジルエーテルが好ましい。
【0031】
特に好ましい実施形態では、パートAは、希釈剤として、約10から約18重量%、好ましくは約15から約16重量%のネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(二官能性)、約0から約20重量%、好ましくは約5重量%のネオデカン酸グリシジルエーテル(一官能性)、および約10から約20重量%、好ましくは約19重量%の2-エチルヘキシルグリシジルエーテル(一官能性)の組合せを含有する。
【0032】
本発明により使用し得る別の種類の希釈剤は、粘度を低減するだけでなく、硬化反応に対する促進剤としても作用する化合物を含有する。こうした希釈剤の例として、ヒドロキシル官能基を有する芳香族化合物(例えば、ノニルフェノールなど)が挙げられる。ヒドロキシル化アルキル側鎖を有する芳香族化合物(例えば、ベンジルアルコールおよびフルフリルアルコールなど)は、特に有用である。含有させる場合には、ヒドロキシル化芳香族希釈剤は、パートAの約2重量%から約10重量%の量で添加することができる。
【0033】
2成分形エポキシシール材/修復材のパートBは、1種または複数種のアミン硬化剤を含有する。アミン硬化剤の例として、脂肪族第一級、第二級および第三級アミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環式アミン、アミドアミン、およびポリエーテルアミンが挙げられる。好ましいアミンとして、イソホロンジアミンおよびアミノエチルピペラジンが挙げられる。イソホロンジアミンとアミノエチルピペラジンの組合せが最も好ましい。
【0034】
硬化剤は、約5から約15、好ましくは約8から約12重量%の、促進剤として作用するアミン、例えば、第三級アミンとヒドロキシル官能基との双方を有する化合物が含まれる。好ましいアミン促進剤は、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールである。
【0035】
硬化剤(複数可)の総量の範囲は、約50から約70重量%、好ましくは約60から約65重量%でよい。
【0036】
エポキシシール材/修復材のパートBは、アミン/促進剤に加えて、またはアミン/促進剤の代わりに、1種または複数種の促進剤を含むこともできる。好ましくは、パートBは、約15から約25重量%、より好ましくは約18から約22重量%の非アミン促進剤(複数可)を含有する。好ましいこうした促進剤は、ヒドロキシル官能基を含有する任意の促進剤である。好ましい促進剤は、スチレン化フェノール〔例えば、Novares LS-500(Rutgers Chemicals AGから販売されている)など〕、およびサリチル酸である。フェノールおよびノニルフェノールを使用することができるが、いくつかの国でその使用が禁止されているので避けるべきである。スチレン化フェノールとサリチル酸との組合せが好ましい。
【0037】
本発明の1つの利点は、パートBが、ジアルキレントリアミン(例えば、ジエチレントリアミンなど)と、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドなど)との付加物を必要としないこと、および該付加物を含まなくてもよいことである。
【0038】
パートBは、約15から約25重量%、好ましくは約15から約20重量%の希釈剤(複数可)を含有してもよい。ベンジルアルコールなどのヒドロキシル化芳香族希釈剤が好ましく、促進剤としても使用し得る。
【0039】
パートBは、パートBと混合されるパートA中のエポキシ樹脂量に対してほぼ化学両論量のアミン硬化剤を含有する。パートBは、一般に、約53重量%のアミンと、約10重量%のアミン促進剤と、約20重量%の促進剤と、約17重量%の希釈剤、好ましくは、ヒドロキシル化芳香族希釈剤とを含有する。
【0040】
使用の際に、本発明による2成分形(two-part)エポキシシール材/修復材のパートAおよびパートBは、エポキシ樹脂とアミン硬化剤がほぼ化学量論比で存在するように混合する。従って、パートAとパートBを混合する際の重量比は、10:1から1:1の範囲であり得る。好ましい実施形態では、パートAおよびパートBは、重量比2:1から3.5:1で混合する。最も好ましい実施形態では、パートAおよびパートBは、整数の体積比、すなわち2:1で混合され得る。これは、少量しか必要としない場合、包装単位全体に満たない量で容易に調製することができるという点で、実用的な利点を提供する。全包装単位に満たない量での混合によって、発熱曲線の問題が発生する可能性が低減する。
【0041】
本発明によるエポキシシール材/修復材の利点は、それが重力供給方式によって適用し得ることである。例えば、エポキシシール材は、亀裂コンクリート表面上に直接注ぐことができ、必要であれば、ローラー、ほうき、スキージまたは他の適用可能な用具を使用して広げることができる。亀裂の全てが充填されるように十分なエポキシシール材/修復材を適用すべきである。エポキシシール材/修復材を適用する前に、大きい亀裂を最初に砂または他の適切なフィラーによって充填してもよい。
【0042】
通常は必要でないが、エポキシシール材/修復材は、圧入によって適用することもできる。エポキシシール材/修復材を低圧で注入できることは、大きな利点である。これは、必ずしも全ての亀裂が重力を用いて充填できるわけではないからである。さらに、トンネルや橋頭などの複雑な構造物では、亀裂は分岐しているので、低圧注入を用いると、かなり効果があるであろう。低コストで装備および維持が容易であるため、低圧注入は好ましい。低圧注入は、一般に、最高で約20psiまで、好ましくは約10から約12psiの圧力で行う。本発明のエポキシシール材/修復材の粘度が低いことと、硬化された材料の靭性とが組み合わされて、構造亀裂の結合を必要とする亀裂コンクリートのダムおよび他の構造物における修復材料としての使用が可能になる。エポキシシール材/修復材は、これらの用途において注入することができる。
【0043】
粘度の制御により、重力供給方式で供給可能なエポキシシール材/修復材の提供が支援される。例えば、エポキシシール材/修復材が、コンクリート表面の亀裂全てに浸透し、コンクリート表面の亀裂全てを充填し得るように、73°Fの粘度は140cps以下であるべきである。希釈剤を使用することができ、この希釈剤は、パートAおよびパートBそれぞれに存在する特定のエポキシ樹脂およびアミン硬化剤の粘度を相殺する。さらに、強度および弾性率などの硬化樹脂の特性を大きく劣化させない希釈剤を使用する。本明細書で記載されている希釈剤使用の利点は、表面張力低減剤の添加が、要求される亀裂浸透を実現するために必要ではないことである。
【0044】
一般に、本発明のエポキシシール材/修復材は、重力供給方式によって適用する場合、幅0.5 mmの亀裂に対して少なくとも10 mm/分の速度でコンクリート亀裂に浸透する。好ましくは、重力供給方式の浸透速度は、幅0.1 mmの亀裂に対して少なくとも10 mm/分、より好ましくは、幅0.1 mmの亀裂に対して少なくとも75 mm/分である。
【0045】
本発明によるエポキシシール材/修復材配合物の別の有利な特徴は、そのタックフリータイムである。タックフリータイムとは、パートAとパートBとの混合物が指触に対して乾燥状態になるまでに要する時間をいう。一般に、73°F(23℃)におけるタックフリータイムは、12時間以下、通常、8時間以下と見込まれる。本発明は、6時間以下のタックフリータイムでさえも提供し得る。
【0046】
タックフリータイムは、シール材/修復材中のエポキシ樹脂およびアミンの関数であるだけでなく、添加した希釈剤の量および種類、ならびに促進剤にも依存する。2種以上の促進剤を添加することによって、2つ以上の機構による触媒作用が生じる。これにより最速のタックフリータイムがもたらされる。例えば、アミン付加反応は、ヒドロキシル基または他の水素供与体(例えば、フェノール、サリチル酸、またはベンジルアルコールなど)の存在によって大幅に加速される。ヒドロキシル基は、エポキシの酸素と水素結合し、それによってヒドロキシル−エポキシ−アミンの3物質の遷移状態の形成が促進され、続いてアミン-エポキシ付加生成物およびヒドロキシル基が生じると考えられる。それによって触媒作用が生じる追加の機構は、ルイス塩基として作用する第三級アミン(例えば、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールなど)の使用を介する機構である。第三級アミンは、樹脂のエポキシ基の炭素原子の1つに一時的に結合することによって触媒作用をもたらし、それによって、エポキシの酸素とヒドロキシル化合物との相互作用を容易にし、続いてアルコキシドイオンが生成すると考えられる。次いで、このアルコキシドイオンが、利用できるエポキシ基と直接反応することによって新たなアルコキシドイオンの生成が可能になる。
【0047】
本発明によるエポキシシール材/修復材配合物の別の有利な特徴は、これらの配合物の使用に適した可使時間である。本発明によるエポキシシール材/修復材組成物の可使時間とは、パートAおよびパートBを混合した後混合物のゲル化が起こる前までの、エポキシシール材/修復材がコンクリートに適用可能である時間をいう。本発明によるエポキシシール材/修復材は、73°F(23℃)で少なくとも15分、好ましくは20分以上の可使時間を有し得る。
【0048】
本エポキシシール材/修復材は、コンクリート亀裂を無亀裂コンクリートの強度と同じ大きさの強度に修復し得る。硬化したシール材/修復材は、少なくとも250,000psiの圧縮弾性率および少なくとも11,000psiの圧縮強度を実現し得る。
【0049】
本エポキシシール材/修復材にフィラーを添加することは、必要でない。フィラーは、エポキシシール材/修復材の粘度を増加させることになるので、一般に、フィラーを添加することは避けるべきである。
【0050】
以下の実施例によって、本発明が例示される。しかし、この実施例は、いかなる面においても本発明を限定するものと解されるべきではない。
【実施例1】
【0051】
本発明による2成分形エポキシシール材/修復材を調製した。パートAおよびパートBを以下のように配合した。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【実施例2】
【0054】
実施例1の製品を多様な特性について試験した。次いで、これらの特性をSikadur 55 SLVの特性と比較した。特性の比較を以下に示す。
【0055】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のエポキシ樹脂と、少なくとも1種のアミン硬化剤とを含む、亀裂コンクリートをシールおよび強化するためのエポキシシール材/修復材配合物であって、
前記配合物が、少なくとも無亀裂コンクリートの弾性率および/または圧縮強度並みの弾性率および/または圧縮強度をもたらし、
重力供給方式で適用すると、幅0.5mmの亀裂に対して少なくとも10 mm/分の速度でコンクリート亀裂に有効に浸透し、
前記エポキシ樹脂およびアミン硬化剤の混合時の前記配合物のヒューム発生が約100 Dsを超えず、混合された前記配合物についての発熱曲線が約480°F(250℃)を超えない、エポキシシール材/修復材配合物。
【請求項2】
前記配合物が、少なくとも1種の一官能性エポキシド希釈剤と、少なくとも1種の二官能性エポキシド希釈剤とを含み、前記エポキシ樹脂およびアミン硬化剤の混合時の前記配合物のヒューム発生が約75 Dsを超えず、混合された前記配合物についての発熱曲線が約455°F(235℃)を超えない、請求項1に記載のエポキシシール材/修復材配合物。
【請求項3】
前記配合物が、ジアルキレントリアミン-アルキレンオキサイド付加物を含まない、請求項2に記載のエポキシシール材/修復材配合物。
【請求項4】
ビスフェノールA-エピクロロヒドリン樹脂と、ビスフェノールF-エピクロロヒドリン樹脂とを含む、請求項2に記載のエポキシシール材/修復材配合物。
【請求項5】
イソホロンジアミンと、アミノエチルピペラジンとを含む、請求項2に記載のエポキシシール材/修復材配合物。
【請求項6】
73°F(23℃)においてタックフリータイムが約6時間以下である、請求項1に記載のエポキシシール材/修復材配合物。
【請求項7】
73°F(23℃)において混合粘度が約130cps以下である、請求項1に記載のエポキシシール材/修復材配合物。
【請求項8】
73°F(23℃)において100グラムに対する可使時間が約20分以上である、請求項1に記載のエポキシシール材/修復材配合物。
【請求項9】
パートAと、パートBとを含む、亀裂コンクリートをシールおよび強化するためのエポキシシール材/修復材配合物であって、
パートAが、約30から約50重量%までのビスフェノールA-エピクロロヒドリン樹脂と、約15から約25重量%までのビスフェノールF-エピクロロヒドリン樹脂と、約25から約43重量%までの反応性希釈剤とを含み(但し、パートAが、約10から約18重量%以下までの二官能性反応性希釈剤と、約15から約25重量%以下までの一官能性反応性希釈剤とを含有することを条件とする)、
パートBが、約50から約70重量%までの1種または複数種のアミン硬化剤を含み(但し、パートBが、促進剤として作用する約8から約12重量%までのアミン硬化剤と、約15から約25重量%までの非アミン促進剤(複数可)と、約15から約25重量%までの希釈剤とを含有することを条件とする)、
パートAおよびパートBの混合された配合物についての発熱曲線が、約480°F(250℃)を超えない、エポキシシール材/修復材配合物。
【請求項10】
前記配合物が、少なくとも無亀裂コンクリートの弾性率および/または圧縮強度並みの弾性率および/または圧縮強度をもたらし、重力供給方式で適用すると、幅0.5mmの亀裂に対して少なくとも10 mm/分の速度でコンクリート亀裂に有効に浸透する、請求項9に記載の、亀裂コンクリートをシールおよび強化するためのエポキシシール材/修復材配合物。
【請求項11】
パートAが、約35から約45重量%までのビスフェノールA-エピクロロヒドリン樹脂と、約17から約23重量%までのビスフェノールF-エピクロロヒドリン樹脂と、約15から約16重量%までの二官能性反応性希釈剤と、約20から約25重量%までの一官能性反応性希釈剤とを含み、
パートBが、約60から約65重量%までの1種または複数種のアミン硬化剤を含む(但し、パートBは、ヒドロキシル官能基を有する約8から約12重量%までの第三級アミン硬化剤と、約18から約22重量%までの非アミン促進剤(複数可)と、約15から約20重量%までのヒドロキシル化芳香族希釈剤とを含有することを条件とする)、請求項10に記載の、亀裂コンクリートをシールおよび強化するためのエポキシシール材/修復材配合物。
【請求項12】
パートBにフェノールまたはノニルフェノールが配合されていない、請求項9に記載の、亀裂コンクリートをシールおよび強化するためのエポキシシール材/修復材配合物。
【請求項13】
パートBが、ジアルキレントリアミン-アルキレンオキシド付加物を実質的に含まない、請求項9に記載の、亀裂コンクリートをシールおよび強化するためのエポキシシール材/修復材配合物。
【請求項14】
パートAと、パートBとを含む、亀裂コンクリートをシールおよび強化するためのエポキシシール材/修復材配合物であって、パートAが、エポキシ樹脂と、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルと、ネオデカン酸グリシジルエーテルと、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルとを含み、パートBが、アミン硬化剤を含む、エポキシシール材/修復材配合物。
【請求項15】
パートBが、イソホロンジアミンと、アミノエチルピペラジンと、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールと、スチレン化フェノールと、サリチル酸と、ベンジルアルコールとを含む、請求項14に記載の、亀裂コンクリートをシールおよび強化するためのエポキシシール材/修復材配合物。
【請求項16】
パートAと、パートBとを含む、亀裂コンクリートをシールおよび強化するためのエポキシシール材/修復材配合物であって、パートAが、約40重量%のビスフェノールA-エピクロロヒドリン樹脂と、約21重量%のビスフェノールF-エピクロロヒドリン樹脂と、約15重量%のネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルと、約5重量%のネオデカン酸グリシジルエーテルと、約19重量%の2-エチルヘキシルグリシジルエーテルとを含み、パートBが、アミン硬化剤を含む、エポキシシール材/修復材配合物。
【請求項17】
パートBが、約42重量%のイソホロンジアミンと、約11重量%のアミノエチルピペラジンと、約10重量%の2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールと、約17重量%のスチレン化フェノールと、約3重量%のサリチル酸と、約17重量%のベンジルアルコールとを含む、請求項16に記載の、亀裂コンクリートをシールおよび強化するためのエポキシシール材/修復材配合物。

【公表番号】特表2009−508992(P2009−508992A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531258(P2008−531258)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/035573
【国際公開番号】WO2007/033213
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(503241216)シーカ・シュヴァイツ・アーゲー (5)
【Fターム(参考)】