説明

予備活性化ペーストの形態にある流動学的添加剤

【課題】予備活性化ペーストの形態にある流動学的(レオロジー)添加剤、該添加剤の製造方法、該添加剤を含有する組成物、該組成物の製造方法および使用、ならびに、該添加剤から得られる被覆剤を提供する。
【解決手段】本発明の流動学的添加剤は、(A)粉末形態で導入される少なくとも1つの脂肪酸ジアミド:該粉末は該ジアミドに加えて水素化ヒマシ油を所望により含有することができる;(B)室温で液体である少なくとも1つの有機可塑剤;を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予備活性化ペーストの形態にある流動学的(レオロジー)添加剤、該添加剤を製造するための特定の方法、該添加剤を含有する特定の組成物、該組成物を製造するための特定の方法、特定の使用、ならびに、該添加剤から得られる特定の被覆剤に関する。本発明の特定の添加剤は、シーラント組成物、グルー組成物、接着剤組成物、被覆組成物(例えば、ペイント、ワニス、ゲルコートまたはインク)、または成形組成物の粘度の修飾を可能にする。
【背景技術】
【0002】
当分野において、組成物の粘度を調節するために非反応性ポリアミド型の添加剤を含有するポリウレタンに基づくシーラント組成物、接着剤組成物または被覆組成物が知られている。具体的には、特許文献1は、少なくとも1つのポリカルボン酸(セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸および脂肪酸ダイマーまたはトリマーから選ばれる)と、-NH2または-NH基を含む少なくとも1つの成分[天然または合成の飽和または不飽和(エチレン性またはアセチレン性不飽和のどちらか)の第一または第二モノアミンから選ばれる]から得られるポリアミドを記載している。得られるポリアミド流動学的添加剤は、粉末として、あるいは、溶媒または可塑剤と組合せて(該ポリアミドを予めその中に希釈する)、液体またはペーストとして製造することができる。
【0003】
特許文献2は、顆粒状粒子を含まないペースト形態にあるチキソトロープ添加剤を開示している。このペーストは、ジアミド成分と、合成工程の終了時に添加されるエポキシ樹脂の間の反応生成物であり、該ジアミド成分は、該エポキシ樹脂と反応しうるように化学的に修飾されている。
【0004】
さらに、特許文献3は、エステルおよび環式脂肪族型の化合物の脂肪酸ジアミドのブレンド(アルコールをベースとする溶媒中に分散された)から得られるペースト形態の流動学的添加剤の製造を開示している。次いで、得られた分散物を熱処理にかける。最終ペーストはどのような可塑剤をも含有しない。これは、次いで不飽和ポリエステル樹脂におけるチキソトロープ剤として使用される。
【0005】
特許文献4は、水素化ヒマシ油脂肪酸および飽和C14〜C18脂肪酸とエチレンジアミンまたは1,4-ジアミノブタンとの混合物を開示している。この混合物は、チキソトロープ剤を形成し、1成分ポリウレタンシーラント組成物において使用することができる。しかし、このチキソトロープ剤は、予備活性化なしで使用しうる予備活性化ペーストの形態では供されない。
【0006】
他の流動学的添加剤を使用して、溶媒ベースまたは溶媒不含のシーラントまたは接着剤系の粘度を高めることができる。これらの中で、ポリアミド粉末、水素化ヒマシ油誘導体に基づく粉末、熱分解法シリカ、沈降または粉砕炭酸カルシウムを挙げることができる。熱分解法シリカおよび炭酸カルシウムは鉱物(無機物)であり、混合物の超高速分散を必要とする。しかし、これらの無機充填剤は、経時的な沈降および安定性の問題を提示し、最終の系の機械的特性に負の作用を与える結果を伴う。ポリアミド粉末および水素化ヒマシ油の誘導体から形成された粉末の別の具体的な欠点は、末端使用者(配合者)が最終用途組成物の製造中に系(粉末)を活性化することが必要であることである。この活性化は、最適の最終流動学的特性を得るために、高速剪断、および約120℃までにわたる温度への加熱(生成物に依存する)、さらに必要な最少滞留時間(期間)[温度条件および系(極性)に依存する(それらにより決定される)]を必要とする。
【0007】
これらの添加剤は、それらが導入された組成物に、有意の剪断減少、即ち、剪断が増大したときの粘度の低下とその後の時間依存性の粘度回復(ヒステリシス作用と等価)によって特徴付けられるチキソトロープ挙動を与える。この種の添加剤は、最終組成物に優れた適用特性を与える。これらの特性は、静止時の高粘度、貯蔵時の高粘度の良好な安定性、沈降に対する良好な耐性、適用および押出の容易性ならびに適用時の良好な垂れ下がり耐性によって特徴付けられる。この種の添加剤が最終組成物に良好な特性を与えるという事実にもかかわらず、これらは、活性化工程を必要とするという大きな欠点を示す。この活性化工程は、末端使用者による制御または再現がときには困難であり、時間およびエネルギーの両方の点でコスト高になる。
【0008】
【特許文献1】欧州特許第467533号明細書
【特許文献2】特開2004−107543号公報
【特許文献3】特開2002−146336号公報
【特許文献4】特開昭63−15876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、上に挙げた先行技術に対する本発明の技術的課題は、ポリアミド粉末および水素化ヒマシ油誘導体によって示される特性と同等の特性を示すが、末端使用者による活性化段階を必要とせず、従って末端使用者による使用がより容易かつより迅速であり、さらにこの一般的課題の解決に関連した特定の利点を有する改良された生成物(添加剤)を開発することからなる。用語「予備活性化ペーストの形態にある」とは、添加剤が、最終用途配合物への単純な混合によって、該配合物におけるどのような特別の現場活性化(温度、剪断および期間の特別の条件を考慮することが必要になる)をも必要とせず、末端使用者[シーラント、グルー、接着剤または被覆剤(例えば、ペイントまたはワニスまたはゲルコートまたはインク)、あるいは成形組成物の配合者]により即時使用されることを意味すると考えるべきである。
【0010】
より具体的には、先行技術に対する一般的な技術的課題の解決に関連した利点は、次の通りである:
- 低い揮発性有機化合物(VOC)の放出および低い燃焼または爆発の危険性、
- 末端使用者が粉砕(ミクロ化)粉末を取扱うこと、即ち、最終組成物の製造場所および雰囲気においてほこりを防止することがないこと、従って、ほこり吸入の危険性のゆえの換気の必要性がないこと、
- 最終配合物における溶媒の不存在下での取扱いが可能であること、即ち、添加剤を溶媒ベースの適用組成物および溶媒不含の組成物の両方において使用しうること、
- 使用および取扱いの柔軟性、即ち、予備活性化ペーストは、組成物中に、製造の開始時に充填剤として同時に、または加工の最後に分散させるのが容易であるが、先行技術に従ってヒマシ油またはポリアミドもしくはジアミド型の粉末から得られる流動学的特性と少なくとも等価の流動学的特性を保持していること、
- 最後に特に、活性化段階を必要としないこと、即ち、本発明の添加剤の加工は、加熱、高剪断、活性化時間のいずれをも必要としないこと、これは、以下の点での節約を可能にする:
・製造時間の点、これは、最終組成物の製造中に加熱段階がないこと、および冷却段階が短縮されること、さらには避けられることによる、
・エネルギーの点、これは、加熱および冷却段階がないことによる、
・末端使用者の生産性の点、
・最終末端使用性能の再現性および信頼性の点。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明の第1の対象は、
(A)粉末形態で導入される少なくとも1つの脂肪酸ジアミド:該粉末は該ジアミドに加えて水素化ヒマシ油を所望により含有することができる;
(B)室温で液体である少なくとも1つの有機可塑剤;
を含有する予備活性化ペーストの形態にある流動学的添加剤である。
【0012】
本発明の第2の対象は、制御された加熱下での分散および活性化による該流動学的添加剤の製造方法である。
【0013】
また本発明は、本発明の流動学的添加剤を含有する有機バインダー組成物または顔料濃厚組成物または充填剤組成物、ならびに、これら組成物の製造方法に関する。
【0014】
本発明の別の対象は、本発明の流動学的添加剤または組成物の使用であって、被覆用途における、ペイント、ワニス、インク、ゲルコートまたはプラスチゾル(PVCに基づく)のための、あるいは、シーラント、グルー、接着剤、目止剤または成形組成物の用途のための、あるいは、化粧品用途のための使用である。
【0015】
最後に、本発明の最後の対象は、本発明の添加剤または組成物から得られる完成品、例えば、被覆剤、シール、成形品もしくは成形複合体、または化粧品に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
即ち、本発明の第1の対象は、
(A)粉末形態で導入される少なくとも1つの脂肪酸ジアミド:該粉末は該ジアミドに加えて水素化ヒマシ油を所望により含有することができる;
(B)室温で液体である少なくとも1つの有機可塑剤;
を含有する予備活性化ペーストの形態にある流動学的添加剤である。
【0017】
予備活性化ペーストの形態にある流動学的添加剤は、好ましくは、混合物(A)+(B)で測定して、温度23℃および周波数1Hzにおいて、104Pa以上、好ましくは8×104Pa以上、より好ましくは5×105Pa以上の動的弾性率G'を示す。この特徴は、予備活性化された添加剤の有効な活性化を有意に示すものである。
【0018】
好ましくは、可塑剤は、少なくとも1つの極性基、好ましくはエーテル基および/またはエステル基および/またはエポキシ基を保持する極性有機可塑剤である。
【0019】
これらの可塑剤は、第1に少なくとも1つのエーテル基を保持することができ、この場合にそれは、ポリエーテル(例えば、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドのホモポリマーおよび/またはコポリマー)および/または該ポリエーテル(ホモポリマーおよび/またはコポリマー)のブレンドおよび/またはこれらの誘導体から選択することができ、該誘導体は、特に、C1(メトキシ)〜C4(ブトキシ)アルコキシ基またはC2(酢酸)〜C4(酪酸)エステル基によって鎖末端がブロックされたポリエーテルからなり、該ポリエーテルは、150〜6000、好ましくは1000〜3000の範囲内の重量平均分子量Mwを有する。用語「コポリマー」は、ランダムおよびブロックの両コポリマーを含むものと解すべきである。
【0020】
さらに可塑剤は、少なくとも1つのエステル基を保持することができ、それは、所望によりアルコキシル化された、例えばオキシエチレン(OE)および/またはオキシプロピレン(OP)単位から選択される1〜10個のアルコキシ単位を含む、C4〜C21アルコール、ならびに
- C6〜C10の範囲内の鎖長(-COOH官能基を含まない)を有する芳香族酸および/またはC4〜C18の範囲内の鎖長(-COOH官能基を考慮しない)を有する脂肪族酸から選択される有機酸、あるいは
- 無機酸、
から選択される1〜4の範囲内の官能価を有する一酸または多酸、
から得られるモノエステルおよび/またはポリエステル(複数官能性または多官能性エステル)から選択することができる。
【0021】
芳香族酸のエステルは、フタル酸エステル(フタレート)およびトリメリット酸またはトリメリテートエステル(ベンゼン 1,2,4-トリカルボキシレート)およびこれらのトリメシテート(trimesitate)またはトリメセート(trimesate)異性体(ベンゼン 1,3,5-トリカルボキシレート)から選択することができる。脂肪族酸のエステルは、アジピン酸エステル(アジペート)、クエン酸エステル(シトレート)、セバシン酸エステル(セバケート)およびアゼライン酸エステル(アゼレート)から選択することができる。無機酸のエステルは、スルホン酸エステル(スルホネート)、特にC10〜C21アルキルスルホネート、硫酸エステル(スルフェート)、スルフィン酸エステル(スルフィネート)、リン酸エステル(ホスフェート)、ホスホン酸エステル(ホスホネート)およびホスフィン酸エステル(ホスフィネート)から選択することができる。
【0022】
最後に、可塑剤は少なくとも1つのエポキシ基を保持することができ、鎖長がC16〜C18の範囲内であってよい脂肪酸に基づくエポキシ化油(例えばエポキシ化ダイズ油)から選択することができる。
【0023】
好ましくは、流動学的添加剤において、分子量Mw<150を有するアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたはベンジルアルコール)から、あるいは、極性の非プロトン性溶媒(例えば、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ブチルピロリドン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N,N',N'-テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホルトリアミドまたはプロピレンカーボネート)から選択される他のいずれの化合物も存在しない。
【0024】
好ましい可塑剤として、少なくとも1つのC6〜C10芳香族酸エステル基を含む可塑剤、特に、モノアルキルおよび/またはジアルキルフタレート、より好ましくはジアルキルフタレートから選択される可塑剤を挙げることができる(ここで、該アルキルは、同一または異なることができ、C7〜C18アルキル、好ましくはC10〜C12アルキルから選択することができる)。
【0025】
この群の可塑剤(ジアルキルフタレート)の中で最も好ましいのは、ジイソウンデシルフタレートである。ポリエーテルの群において最も好ましいのは、1000〜3000の範囲内の重量平均分子量Mwを有するプロピレンオキシドのホモポリマー(ポリプロピレングリコール)、より具体的にはMw=2000を有するポリプロピレングリコール(PPG)であるポリエーテル、および/または、これらの誘導体(モノエステル、好ましくはC2〜C4モノエステル、またはC1〜C4モノエーテル、例えばモノメトキシまたはモノエトキシ誘導体から選択される)である。
【0026】
これらの可塑剤は、200℃より高い沸点、好ましくは250℃より高い沸点を有することができる(大気圧において)。可塑剤中にジアミドが分散しうるために、該可塑剤は室温で液体でなければならない。
【0027】
本発明の流動学的添加剤は、標準規格ASTM D217に従って測定して、好ましくは15mm未満、より好ましくは10mm未満、さらに好ましくは5mm未満の最大押込値または稠度を示す。
【0028】
粉末形態で導入される脂肪酸ジアミドは、100μm未満、好ましくは50μm未満の粒度を有し、より好ましくは該ジアミドの少なくとも90%は、20μm未満、好ましくは15μm未満の粒度を有する。
【0029】
脂肪酸ジアミドの重量比は、混合物(A)+(B)に対して、10〜40%、好ましくは15〜30%で変化することができる。
【0030】
本発明に適する脂肪酸ジアミドは、少なくとも1つのC2〜C12第一ジアミンと少なくとも1つのC3〜C22鎖長のモノカルボン酸の間の重縮合によって得ることができ、この反応生成物を所望により水素化ヒマシ油で希釈することができ、この場合、ジアミド+水素化ヒマシ油の合計に対して、10〜100重量%の重量比まで、好ましくは20〜100重量%の重量比まで希釈する。水素化ヒマシ油を用いて、最終混合物(ジアミド+水素化ヒマシ油)の親和性を、最終用途配合物の組成物に対して調節することができる。
【0031】
ジアミドを水素化ヒマシ油で希釈する場合、添加を140〜220℃の温度で行う。添加の終了時に、固体塊が得られ、これをミル処理する(ミクロ化する)。
【0032】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の流動学的添加剤は、例えば以下に記載するような特定の方法によって得られる。
本発明の第2の対象である流動学的添加剤の特定の製造方法は、以下の工程を含んでなる:
(i)温度調節により制御した室温において、均一分散物が得られるまで、粉末形態のジアミドを可塑剤中に徐々に分散させ(ここで、該ジアミドおよび該可塑剤は上記の通りである)、
(ii)工程(i)で得られた均一分散物を、1〜100時間、好ましくは6〜80時間、より好ましくは15〜40時間にわたり、50〜120℃、好ましくは60〜100℃の範囲内の対応温度を有する少なくとも1つの等温で維持する。
【0033】
工程(ii)の温度および期間の選択は、可塑剤の極性および可塑剤の脂肪酸ジアミドとの化学的親和性に依存する。
【0034】
分散物の均一性は、該分散物の皮膜を2つのガラスシートの間に適用したときに、顆粒状粒子(小片)が存在しないことによって特徴付けられる(ガラスシート試験)。この均一性を得るために、1L(リットル)を超えない容量の実験室スケールでの製造のためには、ジアミドを可塑剤中に、好ましくは2〜6m/sの剪断速度で分散させる。
【0035】
「活性化または成熟化工程」としても知られる工程(ii)の終了は、標準規格ASTM D217に従って測定して、15mm未満、好ましくは10mm未満、より好ましくは5mm未満の生成ペーストの最大押込値または稠度によって特徴付けられる。この最大押込値を、予備活性化ペーストの参考の製造方法と関連させるべきである(これは、1Lを超えない容量の実験室スケールでの製造に対応し、従って試料が完全に均一である)。予備活性化ペーストの製造方法を、後記の本発明に係る実施例に記載する。
【0036】
本発明の第3の対象は、本発明に従って規定されるか、または本発明に従って規定される方法に従って得られる少なくとも1つの流動学的添加剤を含有する、有機バインダーまたは顔料濃厚物または充填剤から形成される組成物に関する。このバインダー組成物は、種々の基材の保護および/または装飾および/または表面処理のための被覆組成物であることができ、該被覆組成物は、ペイント、ワニス、着色もしくは透明ゲルコート、インクまたはプラスチゾル(PVCに基づく)から選択することができる。また、このバインダー組成物は、シーラント、グルー、接着剤または目止剤組成物であることもでき、さらには成形複合体または成形品(部品または物品)、SMCまたはBMCまたはラミネート型、ボート船体または複合体パネル型、または注型によって成形される成形品のための成形組成物(ブラシもしくはローラーで、またはスプレーガンによる噴霧によって組成物を適用する)であることもでき、最後に化粧品組成物であることもできる。
【0037】
上記の本発明の流動学的添加剤は、組成物中に、組成物の全重量に対して1〜40%、好ましくは15〜30%、より好ましくは10〜20%に変化する重量比で存在することができ、ジアミドは、乾燥活性物質として、組成物の全重量に対して0.1〜16%、好ましくは0.2〜8%、より好ましくは1〜6%に変化する重量比で存在することができる。
【0038】
本発明の組成物は、他の成分、例えば、充填剤、可塑剤、湿潤剤、さらには顔料などを含有することができる。
【0039】
より具体的な態様によれば、本発明の有機バインダー組成物は、熱的にまたは放射線照射によって、例えばUV放射(少なくとも1つの光開始剤の存在下)および/またはEB放射(電子ビーム、開始剤なし)によって架橋性(室温における自己架橋性を含む)であるか、あるいは非架橋性であることができる。有機バインダー組成物は、1成分架橋性組成物(1つの反応性成分)または2成分架橋性組成物(使用時の混合によって互いに反応する2つの成分に基づくバインダー)であることができる。
【0040】
有機バインダーは、少なくとも1つのエポキシ/アミン(架橋性、2成分)反応系、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ化樹脂、反応性シリコーン樹脂、ポリエステルもしくはポリアミドによってグラフト化されたアルキドまたはジ尿素/ジウレタンによって修飾されたアルキドまたは非グラフト化アルキド、ポリウレタンまたはシリコーン、架橋性2成分ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリスルフィドポリマー、反応性アクリルポリマー、(メタ)アクリレート多官能性オリゴマーまたはアクリル化アクリルオリゴマーまたはアリル多官能性オリゴマー、ブチルゴム、ポリクロロプレンまたはSBR型エラストマー、またはシリル化プレポリマーもしくはポリマー、好ましくはシリル化ポリエーテルまたはシリル化ポリウレタン、または-OHもしくは-COOH官能基を含むシリル化ポリエーテル-ウレタンから選択することができる。
【0041】
より具体的には、有機バインダーを、以下の架橋性2成分反応系から選択することができる:エポキシ/アミンまたはエポキシ/ポリアミド系(少なくとも2つのエポキシ基を含む少なくとも1つのエポキシ樹脂および少なくとも2つのアミン基を含む少なくとも1つのアミノまたはポリアミド化合物を含有する)、ポリウレタン系(少なくとも1つのポリイソシアネートおよび少なくとも1つのポリオールを含有する)、ポリオール/メラミン系、ならびに、ポリエステル系(少なくとも1つの酸もしくは対応する無水物と反応する1つのポリオールまたは少なくとも1つのエポキシに基づく)。
【0042】
他の具体的な場合によれば、有機バインダーは、架橋性2成分ポリウレタン系または架橋性2成分ポリエステル系であってよい。これらは、エポキシ/カルボン酸もしくは無水物反応系、またはポリオール/カルボン酸もしくは無水物系、またはポリオール/メラミン反応系に由来するものであってよく、ここで、該ポリオールは、ヒドロキシル化アクリル樹脂、またはポリエステル、またはポリエーテルポリオールである。
【0043】
別の形態によれば、本発明の有機バインダー組成物は、自己架橋性であってポリエーテル-シランまたはポリウレタン-シランに基づくシーラント、グルー、接着剤または目止剤組成物である。
【0044】
より具体的には、本発明の有機バインダー組成物は、シリル化プレポリマーまたはポリマー、好ましくはシリル化ポリエーテルまたはシリル化ポリウレタン(シリル化ポリエーテル-ウレタン)、例えば、Kaneka MS PolymerTMおよびKaneka SilylTMに基づく1成分シーラント組成物であってよい。MS PolymersTMは、以下において使用することができる:
- 建設および建築工業、伸縮継手、板ガラスの嵌込み、木工継手、石工継手、プレハブ材料(例えば、保冷車用のサンドイッチパネル)または寄木張りのため、
- 船舶工業、自動車工業(工業用車体、フロントガラス輪郭ゴム)、
- 大量市場(日曜大工:DIY市場)、シーラントおよび接着剤(溶剤含有または不含)のため、
- 土木工学。
【0045】
他の成分を、シリル化プレポリマーまたはポリマーに基づく1成分シーラント組成物に添加するか、または該組成物において置換することができる。これらは、例えば、他の種類のバインダー、着色顔料、種々の可塑剤、沈降または粉砕炭酸カルシウム型の充填剤、グリセリド誘導体、シリカ、例えば熱分解法シリカ、他の添加剤、例えばUV-A吸収剤(UV酸化防止剤)、例えば2,4-ジ(tert-ブチル)-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール(Tinuvin 327、Cibaから)、立体障害アミンに基づく光安定剤、例えばHALS(障害アミン光安定剤)、例えばビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(Tinuvin 770、Cibaから)、ワックスおよび他の種類の触媒、例えばスズ塩である。
【0046】
また本発明は、本発明の組成物の製造方法であって、以下の工程を含んでなる方法をも包含する:
(i)本発明の添加剤を該組成物に添加し、
(ii)この混合物を、この段階でいずれの活性化処理の適用をも必要とすることなく、撹拌機および/または遊星形ミキサーおよび/または高速分散機で均一化する。
【0047】
また本発明の有機バインダー組成物の製造方法は、添加剤を製造する予備工程をも包含することができ、この方法は以下の工程に従う:
(i)上記した本発明の添加剤の製造方法に従って本発明の添加剤を製造し、
(ii)工程(i)で得られた添加剤を、上記した組成物に添加し、
(iii)この混合物を、この段階でいずれの活性化処理の適用をも必要とすることなく、撹拌機および/または遊星形ミキサーおよび/または高速分散機で均一化する。
用語「高速」は、2〜15m/sの範囲内の接線速度を意味する。
【0048】
本発明の別の対象は、本発明の少なくとも1つの流動学的添加剤または組成物の使用であって、現場活性化を必要としない、最終配合物への単純な添加および該配合物中での単純な均一化による使用に関する。より具体的には、これらの流動学的添加剤および組成物を、被覆用途において、例えば、ペイント、ワニス、インク、顔料含有もしくは顔料不含ゲルコートまたはプラスチゾル(PVCに基づく)の被覆剤において、あるいは、シーラント、グルー、接着剤または目止剤の用途において、複合体、成形品またはSMC/BMCラミネートのための成形組成物用途において、あるいは、化粧品用途において、例えば爪ワニスにおいて使用することができる。
【0049】
最後に、本発明の最後の対象は、本発明の少なくとも1つの流動学的添加剤の使用または本発明の組成物の使用またはそれぞれの製造方法の使用によって得られる完成品、例えば、ペイント、またはワニス、またはインク、または着色もしくは透明(非着色)ゲルコート、またはプラスチゾル(PVCに基づく)、またはシーラント、またはグルー、または接着剤、または目止剤(シール)、または複合体、または成形品、またはSMC/BMCラミネート(成形組成物から得られる)、または化粧品製品、例えば爪ワニスから選択される被覆剤に関する。
【実施例】
【0050】
本発明の説明の目的で、以下に限定のためのものではない実施例を挙げて、本発明の流動学的添加剤の効果を説明する。
【0051】
I.使用した出発原料
【表1】

【0052】
II.流動学的添加剤の製造および特性化:脂肪酸ジアミドおよび予備活性化ペースト
脂肪酸ジアミドの製造
12-ヒドロキシステアリン酸(450g)およびカプリン酸(430g)を80℃まで加熱した。次いで、エチレンジアミン(120g)を導入した。直ちに、アミンが酸と反応して、対応するアミドを生成した。これは発熱反応であり、反応器中の温度を80℃から130℃まで上昇させた。次いでこの反応器を、バッチ温度が200℃に到達するまで迅速に加熱した。次いで反応器をこの温度で、酸およびアミン価が6mg KOH/g未満になるまで維持した。次いで反応器の内容物を取り出し、冷却し、次いで微細にミル処理した(ミクロ化した)。
【0053】
ペーストの製造
参考例(予備活性化しない組成物)
(a)可塑剤:DIUP
予めミル処理した脂肪酸ジアミド(100g)およびジイソウンデシルフタレート(DIUP)(300g)を、直径4cmのディスクを装備したDispermat CV 溶解機を用いて、冷水の循環による温度調節により20℃を超えない温度において、2000回転/分(またはrpm)の速度で1時間分散させた。
【0054】
(b)可塑剤:PPG2000
予めミル処理した脂肪酸ジアミド(100g)および分子量2000のポリプロピレングリコール(PPG2000)(300g)を、直径4cmのディスクを装備したDispermat CV 溶解機を用いて、冷水の循環による温度調節により20℃を超えない温度において、2000回転/分(またはrpm)の速度で1時間分散させた。
【0055】
本発明の例(予備活性化ペースト)
(a)可塑剤:DIUP
予備活性化していない組成物を、予め80℃に加熱したオーブン中に24時間導入することからなる追加の熟成段階を伴って、参考例と同じ操作を行った。
【0056】
(b)可塑剤:PPG2000
予備活性化していない組成物を、予め80℃に加熱したオーブン中に24時間導入することからなる追加の熟成段階を伴って、参考例と同じ操作を行った。
【0057】
ペーストの流動学的特性化
ペーストのレオロジーを、直径25mmおよび空隙0.5mmのプレート/研磨したプレートの配置を装備したMCR301(Anton Paar)応力制御レオメーターを用いて、23℃において制御した。
【0058】
(1)活性化のモニタリング
ペーストの活性化を、ペーストの弾性係数(G')および粘性係数(G'')を熟成時間の関数として動的モードでモニタリングすることによって評価した。これらの係数を、異なる熟成時間の試料において測定した(オーブンから取り出して10分後、即ち、試料温度が23℃に低下する時間に測定を行った)。
応力τを、直線領域内にあるように(低歪において)選択した。使用した周波数は1Hzである。
対応する曲線を図1および図2に示す。
【0059】
(2)周波数機械的スペクトル
ペーストの周波数機械的スペクトルを23℃で記録した。
弾性係数(G')および粘性係数(G'')の変化を、周波数の関数として、動的モードでモニタリングした。
対応する曲線を図3および図4に示す。
【0060】
III.シーラント製造のための流動学的添加剤の製造および使用
予備活性化ペーストの製造
(a)可塑剤:DIUP
予めミル処理した脂肪酸ジアミド(250g)およびジイソウンデシルフタレート(DIUP)(750g)を、室温において1L容器(高さ:13cm、直径:11cm)に入れた。これら2つの生成物を、直径4cmのディスクを装備したDispermat CV 溶解機を用いて、冷水を循環させることによる温度調節により20℃を超えない温度において、1500回転/分で15分間混合した。次いで、容器を注意深く閉じ、予め70℃に加熱したオーブン中に24時間導入した。
最終生成物は柔らかい白色ペーストであり、25%の乾燥活性物質含量および標準規格ASTM D217に従って測定して2.0mmの押込抵抗によって特徴付けられた。
【0061】
(b)可塑剤:PPG2000
予めミル処理した脂肪酸ジアミド(250g)および分子量2000のポリプロピレングリコール(PPG2000)(750g)を、室温において1L容器(高さ:13cm、直径:11cm)に入れた。これら2つの生成物を、直径4cmのディスクを装備したDispermat CV 溶解機を用いて、冷水を循環させることによる温度調節により20℃を超えない温度において、1500回転/分で15分間混合した。次いで、容器を注意深く閉じ、予め70℃に加熱したオーブン中に24時間導入した。
最終生成物は柔らかい白色ペーストであり、25%の乾燥活性物質含量および標準規格ASTM D217に従って測定して3.11mmの押込抵抗によって特徴付けられた。
【0062】
予備活性化ペーストの形態にある流動学的添加剤を、MS PolymerTM型のシーラントの製造に使用した。
流動学的添加剤を、水および湿気の不存在下に保存して、架橋による重合の開始を妨げた。架橋反応(自己架橋)は、使用時に、室内湿気の存在下、相対湿度(RH)>50%において起こった。
【0063】
シーラントの製造
シーラントを、Molteni Labmax 分散機 D2(シリーズ2000)型の装置を用いて、実験室において製造した。この装置は、小スケール(パイロットスケール)において工業用条件を再現することを可能にする。これは、直径65mmの遊星形分散機、スクレーパ、および真空ポンプ(製造中に湿気が入るのを妨げる)を装備している。この装置は、1500gの生成物(これは3つのカートリッジに等価である)の製造を可能にする。使用したカートリッジは、Fischbach E310 HPDE(310ml)カートリッジ-付属品 KO1-DO1A0である。
【0064】
MSポリマーおよびDIUP可塑剤を、1000回転/分、接線速度3.5m/sで5分間混合した。次いで、流動学的添加剤を添加し、2600回転/分(8.8m/s)で分散させ、混合物を、水の循環により30℃の温度に維持した。
【0065】
光およびUV安定剤、二酸化チタン、さらに炭酸カルシウム(90℃で12時間の予備乾燥を行った)を導入し、次いで真空下に2600回転/分で分散させた。充填剤は、約1時間後に完全に分散した。
【0066】
IV.特性化の方法
本発明の少なくとも1つの添加剤を含有する組成物の流動学的挙動を、以下の試験に従って特性化した:
(1)押出性または秤量
(1-1)原理
この方法は、1成分シーラントが装填されたカートリッジからの該シーラントの押出性を測定するのに特に指向しており、該1成分シーラントが圧縮空気圧下に押出される。
押出性を、規定の時間中に押出された重量で表す(g/分)。
【0067】
(1-2)装置
使用した装置は、以下の通りである:
- 建設現場でシーラントを適用するためのエアガン、
- 圧縮空気供給を250±10KPa(即ち、2.5±0.1バール)に維持するためのバルブおよび圧力ゲージを備えた空気圧縮機、
- 容量500mlのプラスチックシリンダー、
- 秒目盛のストップウォッチ、
- 直径5±0.3mmのオリフィスを有する押出ノズル、
- 押出中の試料を重量測定するための精密天秤。
【0068】
(1-3)生成物のコンディショニング
試験する生成物を、試験開始前に23℃および50%RHの気候制御実験室において24時間コンディショニングした。
【0069】
(1-4)生成物の準備
カートリッジ[Fischbach E310:HPDE(310ml)カートリッジ-付属品 KO1-DO1A0]のねじ込みブッシュの末端を切断して、直径が少なくとも6mmの最も広い可能なオリフィスを形成した。次いで、押出ノズルをカートリッジにねじ込んだ。
【0070】
(1-5)流動学的特性化の操作
試験を、気候制御実験室(23℃および50%RH)の温度で行った。3つの試験を同じカートリッジで行った。
上記のように準備したカートリッジをエアガンに配置し、次いで、圧縮空気供給を250KPaまで増大させた。
シーラントをカートリッジからノズル中に押出して、それを完全に満たし、こうして容器中に封入されている可能性がある空気の全てを放出させた。次いで、エアガンをシリンダー上に垂直に配置し、それ自体を天秤上に配置した。
【0071】
押出およびストップウォッチを同時に開始させた。
約100gのシーラントが押出された。
押出およびストップウォッチを再び同時に停止させた。
この試験を2回繰り返した。各試験について、押出の流速を、押出されたシーラントの重量から、押出時間の関数としてg/分で算出した。
【0072】
(2)粘度
ブルックフィールド粘度の評価を、標準規格EN ISO 2555に従ってHelipathTMシステムを有するブルックフィールド粘度計において、23℃および50%RHで、No.95 T形スピンドルを用いて、3つの異なる速度で、即ち、1、5および10回転/分(またはrpm)で行った。このブルックフィールド粘度をmPa.sで表す。結果は6つの値の平均を表す。
【0073】
(3)チキソトロープ指数
チキソトロープ指数(V1/V10)を算出した。この指数は、1回転/分で得たブルックフィールド粘度/10回転/分で得たブルックフィールド粘度の比に等しい。
チキソトロープ挙動を示すこの相対値は、工業分野において普通に使用されている。
【0074】
(4)稠度
ペーストの稠度を、標準規格ASTM D217に従って、テクスチャリング装置を用いて測定した。この標準規格は、標準化した手動測定装置を指し、Thermorheoによって製造されたTA-XT2iテクスチャー分析機(供給元:Swantech)により再現される。この標準規格の原理は、Stable Micro SystemsのTA-XT2iにおいて自動化される。
【0075】
(4-1)原理
標準規格ASTM D217に記載される適当な円錐を、所与の力と共に用いて、ペースト中への押込の値を得た。この押込測定値を、ミリメートル(mm)で表した。
押込抵抗は稠度につれて増大し、押込値は稠度につれて減少する。
【0076】
(4-2)装置
使用した装置は、以下の通りである:
- 自動テクスチャー分析機:TA-XT2i、
- 円錐:適用した力はその重量47.5gに等しく、30°の角度を形成するニードルを有する。
【0077】
(4-3)生成物のコンディショニング
試験する生成物は、気候制御実験室において、23±1℃および50±5%RHの温度および湿度の条件下、少なくとも試験開始前の24時間にわたってコンディショニングしなければならない。
【0078】
(4-4)生成物の準備
生成物を、その合成後に1L容器(高さ:13cm、直径:11cm)に詰めた。
テクスチャー測定を、熟成段階後および試料の使用前に行った。
【0079】
(4-5)操作
試験を、気候制御実験室の温度において行った。各容器において3回の試験を行った。
試料を円錐の下に置き、ニードルの先端をペースト表面に配置した。
次いで、TA-XT2iのプログラムを開始させ、押込を開始させた。
次いで、ペースト中へのニードルの変位の値を記録した。
結果をミリメートル(mm)で表した。
【0080】
V.実施例
(1)DIUP中、予備活性化していない組成物の形態にある添加剤(参考例)を用いて、および予備活性化ペーストの形態にある添加剤(本発明の例)を用いて配合したシーラントの例
DIUP中の参考添加剤(予備活性化していない組成物)および本発明の添加剤(予備活性化ペースト)を、以下のシーラント配合物において評価した:
【0081】
【表2】

【0082】
結果
【表3】

【0083】
(2)異なる添加剤を用いたシーラントの例
4種類の異なるシーラント配合物を製造した:
- 例1:添加剤を含まないシーラント、
- 例2:Crayvallac SL 粉末添加剤を用いたシーラント、
- 例3:DIUP中の予備活性化ペーストを用いたシーラント、
- 例4:PPG2000中の予備活性化ペーストを用いたシーラント。
【0084】
これら4種類の例を、以下の表4に示した配合に従って製造した:
【表4】

【0085】
例1(比較):流動学的添加剤を含まないシーラント
周囲条件下で断熱的に、2600回転/分(8.8m/s)で1時間の分散を行った。
【0086】
例2(比較):Crayvallac SL 粉末添加剤を含むシーラント
分散物を、2600回転/分、80℃で2時間加熱して、最大粒度15μmの粉末添加剤を活性化した。
2時間後の活性化の終了時に、Molteniの速度を1500回転/分(5.1m/s)に低下させ、混合物を、冷水の循環によって冷却して、50℃未満の温度にした。
【0087】
例3および4(本発明):それぞれDIUP中およびPPG2000中の予備活性化ペースト[上記III-(a)および(b)に記載の予備活性化ペースト]を含むシーラント
加熱することなく2600回転/分で1時間の分散を行った。
[N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル]トリメトキシシラン(Dynasylan DAMO)およびビニルトリメトキシシラン(Dynasylan VTMO)の添加を、50℃未満の温度で行って、これらの蒸発を防止した。温度が50℃未満であるときに、接着プロモーターDynasylan DAMOおよび脱水剤Dynasylan VTMOを添加し、真空下に1000回転/分で穏やかに撹拌しながら15分間混合した。
次いで、触媒を添加し、真空下に1000回転/分で10分間混合した。
次いで、このシーラントをカートリッジ中に入れ、気候制御室中、23℃で少なくとも24時間そのまま放置した。
【0088】
結果
【表5】

【0089】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】DIUP中の参考例(予備活性化していない組成物)および本発明の例(予備活性化ペースト)の弾性および粘性係数の変化を、熟成時間の関数として示すグラフである。
【図2】PPG2000中の参考例(予備活性化していない組成物)および本発明の例(予備活性化ペースト)の弾性および粘性係数の変化を、熟成時間の関数として示すグラフである。
【図3】DIUP中の参考例(予備活性化していない組成物)および本発明の例(予備活性化ペースト)の動的弾性および粘性係数の変化を、周波数の関数として示すグラフである。
【図4】PPG2000中の参考例(予備活性化していない組成物)および本発明の例(予備活性化ペースト)の動的弾性および粘性係数の変化を、周波数の関数として示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)粉末形態で導入される少なくとも1つの脂肪酸ジアミド:該粉末は該ジアミドに加えて水素化ヒマシ油を所望により含有することができる;
(B)室温で液体である少なくとも1つの有機可塑剤;
を含有する予備活性化ペーストの形態にある流動学的添加剤。
【請求項2】
予備活性化ペーストの形態にある流動学的添加剤の動的弾性率G'が、混合物(A)+(B)で測定して、温度23℃および周波数1Hzにおいて、104Pa以上、好ましくは8×104Pa以上、より好ましくは5×105Pa以上である請求項1に記載の添加剤。
【請求項3】
可塑剤が、少なくとも1つのエーテル基および/または1つのエステル基および/または1つのエポキシ基を保持する極性有機可塑剤である請求項1または2に記載の添加剤。
【請求項4】
可塑剤が少なくとも1つのエーテル基を保持し、それが、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドのホモポリマーおよび/またはコポリマーであるポリエーテルおよび/または該ポリエーテルのブレンドおよび/またはこれらの誘導体から選択され、該誘導体が、特に、C1〜C4アルコキシ基またはC2〜C4エステル基によって鎖末端がブロックされたポリエーテルからなり、該ポリエーテルが、150〜6000の範囲内の重量平均分子量Mwを有する請求項3に記載の添加剤。
【請求項5】
可塑剤が少なくとも1つのエステル基を保持し、それが、所望によりアルコキシル化されたC4〜C21アルコール、ならびに
- C6〜C10の範囲内の鎖長を有する芳香族酸および/またはC4〜C18の範囲内の鎖長を有する脂肪族酸から選択される有機酸、あるいは
- 無機酸、
から選択される1〜4の範囲内の官能価を有する一酸または多酸、
から得られるモノエステルおよび/またはポリエステルから選択される請求項3に記載の添加剤。
【請求項6】
モノエステルおよび/またはポリエステルが、
- フタル酸およびトリメリット酸のエステルおよびこれらのそれぞれの異性体から選択される芳香族酸のエステル、
- アジピン酸、クエン酸、セバシン酸およびアゼライン酸のエステルから選択される脂肪族酸のエステル、ならびに
- スルホン酸、硫酸、スルフィン酸、リン酸、ホスホン酸およびホスフィン酸のエステルから選択される無機酸のエステル、
である請求項5に記載の添加剤。
【請求項7】
可塑剤が少なくとも1つのエポキシ基を保持し、脂肪酸に基づくエポキシ化油から選択される請求項3に記載の添加剤。
【請求項8】
可塑剤が、分子量Mw<150を有するアルコールから、あるいは、極性非プロトン性溶媒:N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ブチルピロリドン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N,N',N'-テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホルトリアミドまたはプロピレンカーボネートから選択される他の化合物の不存在下に存在する請求項1〜7のいずれかに記載の添加剤。
【請求項9】
可塑剤が、1000〜3000の範囲内の重量平均分子量Mwを有するプロピレンオキシドのホモポリマーであるポリエーテル、および/またはこれらの誘導体から選択される請求項4に記載の添加剤。
【請求項10】
可塑剤が、少なくとも1つのC6〜C10芳香族酸エステル基を保持し、モノアルキルおよび/またはジアルキルフタレートから選択される請求項6に記載の添加剤。
【請求項11】
可塑剤が、少なくとも1つのジアルキルフタレートであり、該ジアルキルのアルキルが同一または異なり、C7〜C18アルキルから選択される請求項10に記載の添加剤。
【請求項12】
可塑剤がジイソウンデシルフタレートである請求項11に記載の添加剤。
【請求項13】
可塑剤が、C10〜C21アルキルスルホネートから選択されるスルホン酸エステルである請求項6に記載の添加剤。
【請求項14】
最終予備活性化ペーストの最大押込値が、標準規格ASTM D217に従って測定して15mm未満である請求項1〜13のいずれかに記載の添加剤。
【請求項15】
押込値が10mm未満である請求項14に記載の添加剤。
【請求項16】
押込値が5mm未満である請求項14または15に記載の添加剤。
【請求項17】
脂肪酸ジアミドの重量比が、混合物(A)+(B)に対して、10〜40%で変化する請求項1〜16のいずれかに記載の添加剤。
【請求項18】
脂肪酸ジアミドが、少なくとも1つのC2〜C12第一ジアミンと少なくとも1つのC3〜C22鎖長のモノカルボン酸の間の重縮合によって得られ、この反応生成物を所望により水素化ヒマシ油で希釈することができ、この場合、ジアミド+水素化ヒマシ油の合計に対して10〜100重量%のレベルまで希釈する請求項1〜17のいずれかに記載の添加剤。
【請求項19】
以下の工程を含んでなる方法によって得られる請求項1に記載の添加剤:
(i)温度調節により制御した室温において、均一分散物が得られるまで、粉末形態のジアミドを可塑剤中に徐々に分散させ、
(ii)工程(i)で得られた均一分散物を、1〜100時間にわたり、50〜120℃の範囲内の対応温度を有する少なくとも1つの等温で維持する。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載の添加剤の製造方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(i)温度調節により制御した室温において、均一分散物が得られるまで、粉末形態のジアミドを可塑剤中に徐々に分散させ、ここで、該ジアミドおよび該可塑剤は請求項1〜19のいずれかに規定した通りであり、
(ii)工程(i)で得られた均一分散物を、1〜100時間にわたり、50〜120℃の範囲内の対応温度を有する少なくとも1つの等温で維持する。
【請求項21】
工程(ii)の終了時に、得られたペーストの最大押込値が、標準規格ASTM D217に従って測定して15mm未満である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
バインダー、顔料または充填剤に加えて、請求項1〜19のいずれかに規定されるか、あるいは請求項20または21に記載の方法によって得られる少なくとも1つの添加剤を含有する有機バインダー組成物または顔料濃厚組成物または充填剤組成物。
【請求項23】
添加剤が、組成物の全重量に対して、1〜40%に変化する重量比で存在する請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
添加剤が、組成物の全重量に対して、15〜30%に変化する重量比で存在する請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
添加剤が、組成物の全重量に対して、10〜20%に変化する重量比で存在する請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
ジアミドが、組成物の全重量に対して0.1〜16%に変化する重量比で、乾燥活性物質として存在する請求項22〜25のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
被覆、シーラント、グルー、接着剤、目止剤、成形または化粧品組成物である請求項22〜26のいずれかに記載の有機バインダー組成物。
【請求項28】
室温で自己架橋性の組成物を含む架橋性組成物、または非架橋性組成物である請求項27に記載の有機バインダー組成物。
【請求項29】
1成分または2成分の架橋性組成物である請求項28に記載の有機バインダー組成物。
【請求項30】
有機バインダーが、少なくとも1つのエポキシ/アミン反応系、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ化樹脂、反応性シリコーン樹脂、ポリエステルもしくはポリアミドによってグラフト化されたアルキドまたはジ尿素/ジウレタンによって修飾されたアルキドまたは非グラフト化アルキド、ポリウレタンまたはシリコーン、架橋性2成分ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリスルフィドポリマー、反応性アクリルポリマー、(メタ)アクリレート多官能性オリゴマーまたはアクリル化アクリルオリゴマーまたはアリル多官能性オリゴマー、ブチルゴム、ポリクロロプレンまたはSBR型エラストマー、またはシリル化プレポリマーもしくはポリマー、好ましくはシリル化ポリエーテルまたはシリル化ポリウレタン、または-OHもしくは-COOH官能基を含むシリル化ポリエーテル-ウレタンから選択される請求項22〜29のいずれかに記載の有機バインダー組成物。
【請求項31】
ポリエーテル-シランまたはポリウレタン-シラン組成物に基づき、自己架橋性であるシーラント、グルー、接着剤または目止剤組成物である請求項27〜30のいずれかに記載の有機バインダー組成物。
【請求項32】
種々の基材の保護および/または装飾および/または表面処理のための被覆組成物である請求項27〜30のいずれかに記載の有機バインダー組成物。
【請求項33】
被覆組成物が、ペイント、ワニス、ゲルコート、インクまたはプラスチゾル(PVCに基づく)の組成物である請求項32に記載の有機バインダー組成物。
【請求項34】
請求項22〜33のいずれかに記載の組成物の製造方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(i)請求項1〜19のいずれかに規定されるか、あるいは請求項20または21に規定される方法によって得られる添加剤を、請求項22〜33のいずれかに規定される組成物に添加し、
(ii)この混合物を、この段階でいずれの活性化処理の適用をも必要とすることなく、撹拌機および/または遊星形ミキサーおよび/または高速分散機で均一化する。
【請求項35】
請求項34に記載の組成物の製造方法であって、以下の予備工程を含んでなる方法:
(i)請求項1〜19のいずれかに規定される添加剤を、請求項20または21のいずれかに規定される製造方法に従って製造し、
(ii)工程(i)で得られた添加剤を、請求項22〜33のいずれかに規定される組成物に添加し、
(iii)この混合物を、この段階でいずれの活性化処理の適用をも必要とすることなく、撹拌機および/または遊星形ミキサーおよび/または高速分散機で均一化する。
【請求項36】
請求項1〜19のいずれかに規定されるか、あるいは請求項20または21に規定される方法によって得られる少なくとも1つの添加剤、あるいは、請求項22〜33のいずれかに規定されるか、あるいは請求項34または35に規定される方法によって得られる組成物の使用であって、現場活性化を必要としない、最終配合物への単純な添加および該配合物中での単純な均一化による使用。
【請求項37】
請求項1〜19のいずれかに規定されるか、あるいは請求項20または21に規定される方法によって得られる少なくとも1つの添加剤、あるいは、請求項22〜33のいずれかに規定されるか、あるいは請求項34または35に規定される方法によって得られる組成物の使用であって、被覆用途またはシーラント、グルー、接着剤、目止剤もしくは成形用途における、あるいは、化粧品用途における使用。
【請求項38】
請求項1または2に規定される少なくとも1つの添加剤から得られるか、あるいは、請求項15または16に規定される方法によって得られる添加剤から得られるか、あるいは、請求項17に規定される組成物または請求項24に規定される方法によって得られる組成物から得られる、ペイント、またはワニス、またはインク、またはゲルコート、またはプラスチゾル(PVCに基づく)、またはシーラント、またはグルー、または接着剤、または目止剤、または複合体、または成形品、またはSMC/BMCラミネート、または化粧品製品から選択される被覆剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−174743(P2008−174743A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−330382(P2007−330382)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(596017255)クレ、バレ、ソシエテ、アノニム (1)
【氏名又は名称原語表記】CRAY VALLEY S.A.
【Fターム(参考)】