説明

予備硬化物、粗化予備硬化物及び積層体

【課題】粗化予備硬化物の粗化処理された表面の表面粗さを小さくすることができ、かつ硬化物と金属層との接着強度を高めることができる予備硬化物を提供する。
【解決手段】本発明に係る予備硬化物1は、エポキシ樹脂材料の硬化を進行させることにより得られる。予備硬化物1は、粗化処理される第1の主面1aと第2の主面1bとを有する。上記エポキシ樹脂材料は、エポキシ樹脂と硬化剤とシリカ2とを含む。シリカ2は、粒子径が0.01μm以上、0.5μm未満である第1の小粒径シリカ2Aと、粒子径が0.5μm以上、20μm以下である第2の大粒径シリカ2Bとを含む。予備硬化物1中で、第1の小粒径シリカ2Aと第2の大粒径シリカ2Bとはそれぞれ偏在している。予備硬化物1は、第1の小粒径シリカ2Aと第2の大粒径シリカ2Bとの存在量が異なる第1の領域R1と第2の領域R2を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂と硬化剤とシリカとを含むエポキシ樹脂材料を用いて、該エポキシ樹脂材料の硬化を進行させることにより得られた予備硬化物、並びに該予備硬化物を用いた粗化予備硬化物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層板及びプリント配線板等の電子部品を得るために、様々な樹脂組成物が用いられている。例えば、多層プリント配線板では、内部の層間を絶縁するための絶縁層を形成したり、表層部分に位置する絶縁層を形成したりするために、樹脂組成物が用いられている。
【0003】
上記樹脂組成物の一例として、下記の特許文献1には、エポキシ樹脂と、硬化剤と、フェノキシ樹脂と、平均粒子径が0.01〜2μmである無機充填剤とを含む樹脂組成物が開示されている。さらに、特許文献1には、エポキシ樹脂と、硬化剤と、平均粒子径が0.1〜10μmである無機充填剤とを含む樹脂組成物も開示されている。
【0004】
特許文献1では、2層の積層構造を有する多層フィルムの各層が、上述の異なる2種類の樹脂組成物を用いて形成されている。この多層フィルムは、基板に設けられた隙間などに良好に埋め込まれることが記載されている。
【0005】
下記の特許文献2には、エポキシ樹脂と、硬化剤と、フェノキシ樹脂及びポリビニルアセタール樹脂の内の少なくとも1種と、リン含有ベンゾオキサジン化合物とを含む樹脂組成物が開示されている。特許文献2では、樹脂組成物を硬化させた硬化物を粗化処理すると、粗化面の粗度が比較的小さいにもかかわらず、該粗化面がめっき導体に対して高い密着力を示し、かつ難燃性に優れた絶縁層が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−302677号公報
【特許文献2】WO2009/038166A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、2種類の樹脂組成物を用意し、多層フィルムを作製しているため、多層フィルムの作製に手間がかかり、コストが高くつくという問題がある。
【0008】
特許文献2には、樹脂組成物が上記組成を有することにより粗度が小さくなることが記載されているものの、粗化面の粗度が十分に小さくならないことがある。
【0009】
また、特許文献1に記載の多層フィルム及び特許文献2に記載の樹脂組成物では、これらを硬化させた硬化物の表面に、めっき処理により金属層を形成したときに、硬化物と金属層との接着強度を充分に高くすることが困難なことがある。
【0010】
本発明の目的は、粗化予備硬化物の粗化処理された表面の表面粗さを小さくすることができ、かつ粗化予備硬化物を硬化させた硬化物と金属層との接着強度を高くすることができる予備硬化物、並びに該予備硬化物を用いた粗化予備硬化物及び積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広い局面によれば、エポキシ樹脂材料の硬化を進行させることにより得られた予備硬化物であって、第1の主面と第2の主面とを有し、該第1の主面が粗化処理される面であり、上記エポキシ樹脂材料が、エポキシ樹脂と硬化剤とシリカとを含み、エポキシ樹脂材料100体積%中の全ての上記シリカの含有量は40体積%以上であり、上記シリカが、粒子径が0.01μm以上、0.5μm未満である第1の小粒径シリカと、粒子径が0.5μm以上、20μm以下である第2の大粒径シリカとを含有し、予備硬化物中で、上記第1の小粒径シリカと上記第2の大粒径シリカとがそれぞれ偏在しており、粗化処理される面である上記第1の主面側の表面部分の厚み0.3μmの領域に含まれる全てのシリカ100体積%のうち、上記第2の大粒径シリカの含有量は5体積%以下であり、上記第1の領域に連なる厚み1μmの第2の領域において、該第2の領域の100体積%中、全ての上記シリカの含有量は20体積%以下である、予備硬化物が提供される。
【0012】
本発明に係る予備硬化物の別の特定の局面では、60〜120℃の温度領域における予備硬化前のエポキシ樹脂材料の最低溶融粘度が50Pa・s以下である。
【0013】
本発明に係る予備硬化物の他の特定の局面では、上記エポキシ樹脂材料は、上記硬化剤としてシアネートエステル樹脂を含む。
【0014】
本発明に係る粗化予備硬化物は、本発明に従って構成された予備硬化物の上記第1の主面を粗化処理することにより得られた粗化予備硬化物である。
【0015】
本発明に係る粗化予備硬化物のある特定の局面では、粗化処理される前に、上記予備硬化物が膨潤処理されている。
【0016】
本発明に係る積層体は、本発明に従って構成された予備硬化物の上記第1の主面を粗化処理することにより得られた粗化予備硬化物を硬化させた硬化物と、該硬化物の粗化処理された表面に積層された金属層とを有する。該硬化物と該金属層との接着強度は0.39N/mm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る予備硬化物は、エポキシ樹脂と硬化剤とシリカとを含むエポキシ樹脂材料の硬化を進行させることにより得られた予備硬化物であり、エポキシ樹脂材料100体積%中の全ての上記シリカの含有量は40体積%以上であり、上記シリカが、粒子径が0.01μm以上、0.5μm未満である第1の小粒径シリカと、粒子径が0.5μm以上、20μm以下である第2の大粒径シリカとを含有し、予備硬化物中で、上記第1の小粒径シリカと上記第2の大粒径シリカとがそれぞれ偏在しており、更に粗化処理される面である上記第1の主面側の表面部分の厚み0.3μmの第1の領域に含まれる全てのシリカ100体積%のうち、上記第2の大粒径シリカの含有量は5体積%以下であり、上記第1の領域に連なる厚み1μmの第2の領域において、該第2の領域の100体積%中、全ての上記シリカの含有量は20体積%以下であるので、予備硬化物の第1の主面を粗化処理したときに、粗化予備硬化物の粗化処理された表面の表面粗さを小さくすることができる。さらに、粗化予備硬化物を硬化させた硬化物の表面に金属層が形成された場合に、硬化物と金属層との接着強度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る予備硬化物を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る予備硬化物を用いた積層体を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより本発明を明らかにする。
【0020】
本発明に係る予備硬化物は、エポキシ樹脂材料の硬化を進行させることにより得られた予備硬化物である。図1に、本発明の一実施形態に係る予備硬化物を模式的に正面断面図で示す。
【0021】
予備硬化物1では、熱による膨張率を低くするために、エポキシ樹脂材料100体積%中の全ての上記シリカの含有量は40体積%以上であるエポキシ樹脂材料が用いられている。
【0022】
図1に示す予備硬化物1は、積層対象部材6の上面6aに積層されている。予備硬化物1は、第1の主面1aと第2の主面1bとを有する。第1の主面1aは粗化処理される面である。第2の主面1bは、積層対象部材6の上面6aと接している。予備硬化物1を得るための上記エポキシ樹脂材料は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、シリカ2とを含む。
【0023】
シリカ2は、粒子径が0.01μm以上、0.5μm未満である第1の小粒径シリカ2Aと、粒子径が0.5μm以上、20μm以下である第2の大粒径シリカ2Bとを含有する。
【0024】
予備硬化物1中で、第1の小粒径シリカ2Aと第2の大粒径シリカ2Bとはそれぞれ偏在している。予備硬化物1中で、第1の小粒径シリカ2Aは、粗化処理される面である第1の主面1a側に多く存在するように偏在している。予備硬化物1中で、第2の大粒径シリカ2Bは、第2の主面1b側に多く存在するように偏在している。
【0025】
予備硬化物1では、粗化処理される面である第1の主面1a側の表面部分の厚み0.3μmの第1の領域R1(図1における上側の破線よりも上方の領域)に含まれる全てのシリカ100体積%のうち、第2の大粒径シリカ2Bの含有量は5体積%以下である。第1の領域R1に存在するシリカの全てが、第1の小粒径シリカ2Aであってもよい。
【0026】
第1の領域R1における第2の大粒径シリカ2Bの存在量は少ないほどよい。第1の領域R1における第2の大粒径シリカ2Bの存在量が少ないほど、第1の主面1aを粗化処理したときに、第1の主面1aに微細な孔を形成でき、粗化処理された表面の表面粗さをより一層小さくすることができる。この結果、硬化物と金属層との接着強度も高くなる。
【0027】
上記第1の領域に連なる厚み1μmの第2の領域において、該第2の領域の100体積%中、全てのシリカの含有量は20体積%以下である。上記第2の領域の100体積%中、全てのシリカの含有量は5体積%以下であることが好ましく、4体積%以下であることがより好ましく、3体積%以下であることが更に好ましく、0体積%であることが特に好ましい。
【0028】
第1の領域R1と第2の領域R2とは接している。第2の領域R2に連なる第2の主面1b側の第3の領域R3(図1における下側の破線よりも下方の領域)に、第2の大粒径シリカ2Bの全量100体積%中の80体積%以上、100体積%以下が存在することが好ましい。第3の領域R3に、第2の大粒径シリカ2Bの全量が存在していてもよい。第3の領域R3に第2の大粒径シリカ2Bの全量100体積%中の85体積%以上が存在することが好ましく、90体積%以上が存在することがより好ましい。なお、第2の領域R2と第2の領域R3とは接している。第3の領域R3は、第1の領域R1と第2の領域R2とを除く残りの領域である。
【0029】
第3の領域R3に、第1の小粒径シリカ2Aは存在しないか、又は第3の領域中に存在するシリカ全量のうち第1の小粒径シリカ2Aは70体積%以下で存在することが好ましく、50体積%以下で存在することが更に好ましい。この場合には、第1の領域R1における第1の小粒径シリカ2Aの存在量を多くすることができる。よって、第1の主面1aを粗化処理したときに、第1の主面1aに微細な孔を形成でき、粗化処理された表面の表面粗さをより一層小さくすることができる。この結果、硬化物と金属層との接着強度も高くなる。
【0030】
予備硬化物1中で、第1の小粒径シリカ2Aと第2の大粒径シリカ2Bとが上記のように偏在していることで、第1の主面1aを粗化処理したときに、第1の主面1aにおいて、第1の小粒径シリカ2Aが脱離した微細な孔が形成される。この結果、粗化処理された表面の表面粗さを小さくすることができる。さらに、粗化処理された粗化予備硬化物を硬化させた硬化物の表面に金属層が形成された場合に、硬化物と金属層との接着強度を高くすることができる。また、シリカの存在が明らかに少ない樹脂層を形成することで樹脂層の上下をまたぐ領域の電気絶縁性を向上させることができる。
【0031】
なお、予備硬化物1の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは12μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。
【0032】
60〜120℃の温度領域における予備硬化前のエポキシ樹脂材料の最低溶融粘度は、70Pa・s以下であることが好ましい。該溶融粘度は、好ましくは1Pa・s以上、より好ましくは50Pa・s以下、更に好ましくは50Pa・s未満、特に好ましくは30Pa・s以下である。上記エポキシ樹脂材料の溶融粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、後述するラミネート工程及びプレス成形時に良好な層構成を有する予備硬化物が得やすくなる。
【0033】
上記「溶融粘度」は、レオメーターを用いて、予備硬化前の上記エポキシ樹脂材料を50℃から150℃まで加熱する条件で測定された値である。上記レオメーターとしては、TAインスツルメント社製「AR−2000」等が挙げられる。
【0034】
なお、第1の小粒径シリカ2A及び第2の大粒径シリカ2Bを単に併用しただけでは、第1の小粒径シリカ2A及び第2の大粒径シリカ2Bが上記のように偏在しないことがある。予備硬化体1中で、第1の小粒径シリカ2A及び第2の大粒径シリカ2Bを上記のように偏在させる方法としては、具体的には、後述するラミネート温度を高くし、圧力を小さくする方法、半硬化させるときの温度を高くする方法及び溶融粘度が小さくなるよう樹脂を配合する方法等が挙げられる。
【0035】
以下、上記エポキシ樹脂材料に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0036】
(エポキシ樹脂材料)
[エポキシ樹脂]
上記エポキシ樹脂材料に含まれているエポキシ樹脂は特に限定されない。該エポキシ樹脂として、従来公知のエポキシ樹脂を使用可能である。該エポキシ樹脂は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。エポキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0038】
粗化予備硬化物の粗化処理された表面の表面粗さをより一層小さくし、かつ硬化物と金属層との接着強度をより一層高くする観点からは、上記エポキシ樹脂は、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂又はジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0039】
上記エポキシ樹脂は、2官能以上のエポキシ樹脂であることが好ましく、多官能のエポキシ樹脂であることがより好ましい。多官能のエポキシ樹脂としては、例えば、3官能脂環式エポキシモノマー(ユニオン・カーバイド社製「エポリードGT301」)、トリアジン核を骨格に有する3価のエポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製「デナコールEX−301」、日産化学工業社製「TEPIC−S」)、多官能エポキシ樹脂としてビフェニルノボラック型型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000H」)、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製「HP−7200」)、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(三菱化学「157−S70」)等が挙げられる。
【0040】
上記エポキシ樹脂の融点又は軟化点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは65℃以上、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下である。エポキシ樹脂の融点又は軟化点が上記下限以上及び上記上限以下であることによって、積層対象部材上でエポキシ樹脂材料を予備硬化させた予備硬化物において、第1の小粒径シリカ及び第2の大粒径シリカが上述した好ましい偏在状態で存在するようになる。このため、予備硬化物の表面を粗化処理したときに、粗化予備硬化物の粗化処理された表面の表面粗さがより一層小さくなる。さらに、エポキシ樹脂の融点又は軟化点が上記下限以上及び上記上限以下であると、粗化予備硬化物を硬化させた硬化物と金属層との接着強度も高くなる。
【0041】
粗化予備硬化物の粗化処理された表面の表面粗さをより一層小さくし、かつ硬化物と金属層との接着強度をより一層高くする観点からは、上記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは90以上、より好ましくは100以上、好ましくは1000以下、より好ましくは800以下である。
【0042】
上記エポキシ樹脂の重量平均分子量は1000以下であることが好ましい。この場合には、エポキシ樹脂材料におけるシリカの含有量を多くすることができる。さらに、シリカの含有量が多くても、流動性が高いエポキシ樹脂材料である樹脂組成物を得ることができる。一方で、重量平均分子量が1000以下であるエポキシ樹脂と、フェノキシ樹脂との併用により、エポキシ樹脂材料であるBステージフィルムの溶融粘度の低下を抑制できる。このため、Bステージフィルムを基板上にラミネートした場合に、シリカの偏在状態を良好にすることができる。
【0043】
[硬化剤]
上記エポキシ樹脂材料に含まれている硬化剤は特に限定されない。該硬化剤として、従来公知の硬化剤を使用可能である。硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
上記硬化剤としては、シアネートエステル樹脂(シアネートエステル硬化剤)、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、アミン化合物(アミン硬化剤)、チオール化合物(チオール硬化剤)、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、酸無水物、活性エステル化合物及びジシアンジアミド等が挙げられる。なかでも、熱による寸法変化がより一層小さい硬化物を得る観点からは、上記硬化剤は、シアネートエステル樹脂又はフェノール化合物であることが好ましい。上記硬化剤は、シアネートエステル樹脂であることが好ましく、フェノール化合物であることも好ましい。上記硬化剤は、上記エポキシ樹脂のエポキシ基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
【0045】
粗化予備硬化物の粗化処理された表面の表面粗さをより一層小さくし、かつ硬化物と金属層との接着強度をより一層高くする観点からは、上記硬化剤は、シアネートエステル樹脂、フェノール化合物又は活性エステル化合物であることが好ましい。さらに、硬化剤によって良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記硬化剤は、シアネートエステル樹脂であることがより好ましい。
【0046】
上記シアネート樹脂の使用により、シリカの含有量が多いBステージフィルムのハンドリング性を良好にすることができ、硬化物のガラス転移温度をより一層高くすることができる。上記シアネートエステル樹脂は特に限定されない。該シアネートエステル樹脂として、従来公知のシアネートエステル樹脂を用いることができる。上記シアネートエステル樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0047】
上記シアネートエステル樹脂としては、ノボラック型シアネート樹脂及びビスフェノール型シアネート樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネート樹脂としては、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等が挙げられる。
【0048】
上記シアネートエステル樹脂の市販品としては、フェノールノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製「PT−30」及び「PT−60」)、並びにビスフェノールAジシアネートがトリアジン化され、三量体とされたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA230」、「BA200」及び「BA3000」)等が挙げられる。
【0049】
上記フェノール化合物の使用により、硬化物と金属層との接着強度をより一層高めることができる。また、上記フェノール化合物の使用により、例えば、硬化物の表面上に設けられた銅の表面を黒化処理又はCz処理することにより、硬化物と銅との密着性をより一層高めることができる。
【0050】
上記フェノール化合物は特に限定されない。該フェノール化合物として、従来公知のフェノール化合物を使用可能である。上記フェノール化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
【0052】
上記フェノール化合物の市販品としては、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD−2091」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEH−7851」)及びアラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH−7800」)等が挙げられる。
【0053】
粗化予備硬化物の粗化処理された表面の表面粗さをより一層小さくし、かつ硬化物と金属層との接着強度をより一層高くする観点からは、上記フェノール化合物は、ビフェニルノボラック型フェノール、又はアラルキル型フェノール化合物であることが好ましい。
【0054】
上記活性エステル化合物は特に限定されない。上記活性エステル化合物の市販品としては、DIC社製「EXB−9460S−65T」等が挙げられる。
【0055】
粗化予備硬化物の粗化処理された表面の表面粗さをより一層小さくし、かつ硬化物と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ硬化剤により良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記硬化剤は、当量が250以下である硬化剤を含むことが好ましい。上記硬化剤の当量は、例えば、硬化剤がシアネートエステル樹脂である場合にはシアネートエステル基当量を示し、硬化剤がフェノール化合物である場合にはフェノール性水酸基当量を示し、硬化剤が活性エステル化合物である場合には活性エステル基当量を示す。
【0056】
上記硬化剤の重量平均分子量は1000以下であることが好ましい。この場合には、エポキシ樹脂材料におけるシリカの含有量を多くすることができ、シリカの含有量が多くても、流動性が高いエポキシ樹脂材料である樹脂組成物を得ることができる。一方で、重量平均分子量が1000以下である硬化剤と、フェノキシ樹脂との併用により、エポキシ樹脂材料であるBステージフィルムの溶融粘度の低下を抑制できる。このため、Bステージフィルムを基板上にラミネートした場合に、シリカの偏在状態を良好にすることができる。
【0057】
上記エポキシ樹脂材料に含まれている上記シリカを除く全固形分(以下、全固形分Bと略記することがある)100重量%中、上記エポキシ樹脂と上記硬化剤との合計の含有量は、好ましくは75重量%以上、より好ましくは80重量%以上、100重量%以下、好ましくは99重量%以下、より好ましくは97重量%以下である。
【0058】
上記エポキシ樹脂と上記硬化剤との合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層良好な硬化物が得られ、溶融粘度を調整することができるためにシリカの存在状態を良好にすることができ、かつ硬化過程で、意図しない領域にBステージフィルムが濡れ拡がることを防止できる。さらに、硬化物の熱による寸法変化をより一層抑制できる。また、上記エポキシ樹脂と上記硬化剤との合計の含有量が上記下限未満であると、樹脂組成物又はBステージフィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込みが困難になり、さらにシリカの偏在状態が悪くなる傾向がある。また、上記エポキシ樹脂と上記硬化剤との合計の含有量が上記上限を超えると、溶融粘度が低くなりすぎて硬化過程で、意図しない領域にBステージフィルムが濡れ拡がりやすくなる傾向がある。「全固形分B」とは、エポキシ樹脂と硬化剤と必要に応じて配合される他の固形分との総和をいう。全固形分Bには、シリカは含まれない。「固形分」とは、不揮発成分であり、成形又は加熱時に揮発しない成分をいう。
【0059】
エポキシ樹脂と硬化剤との配合比は特に限定されない。エポキシ樹脂と硬化剤との配合比は、エポキシ樹脂と硬化剤との種類などにより適宜決定される。
【0060】
[充填剤]
上記エポキシ樹脂材料はシリカを含む。
【0061】
上記エポキシ樹脂材料に含まれている全シリカの平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、好ましくは0.8μm以下である。
【0062】
上記シリカの平均粒子径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒子径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定できる。
【0063】
上記エポキシ樹脂材料に含まれているシリカは、粒子径が0.01μm以上、0.5μm以下である第1の小粒径シリカと、粒子径が0.5μm以上、20μm以下である第2の大粒径シリカとを含有する。上記第1の小粒径シリカは、上記エポキシ樹脂材料に含まれている全シリカのうち、粒子径が0.01μm以上、0.5μm以下であるシリカである。上記第2の大粒径シリカは、上記エポキシ樹脂材料に含まれている全シリカのうち、粒子径が0.5μm以上、20μm以下であるシリカである。
【0064】
なお、第1の小粒径シリカと第2の大粒径シリカにおける粒子径とは、該シリカが真球状である場合には直径を意味し、真球状以外である場合には最大径を意味する。
【0065】
粒子径が比較的小さい特定の上記第1の小粒径シリカと、粒子径が比較的大きい特定の上記第2の大粒径シリカとを組み合わせて、上記エポキシ樹脂と上記硬化剤とともに用いることにより、上記エポキシ樹脂材料を予備硬化させた粗化処理前の予備硬化物において、シリカが良好に存在するようになる。この結果、予備硬化物の表面を粗化処理したときに、粗化予備硬化物の粗化処理された表面の表面粗さを小さくすることができ、更に粗化予備硬化物を硬化させた硬化物と金属層との接着強度を高くすることができる。
【0066】
上記シリカは、溶融シリカであることがより好ましい。溶融シリカの使用により、粗化予備硬化物の粗化処理された表面の表面粗さを効果的に小さくすることができる。シリカの形状は略球状であることが好ましい。
【0067】
上記エポキシ樹脂材料に含まれているシリカ、上記第1の小粒径シリカ、及び上記第2の大粒径シリカはそれぞれ、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤により表面処理されていることがより好ましい。これにより、粗化予備硬化物の粗化処理された表面の表面粗さがより一層小さくなり、かつ硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を付与することができる。
【0068】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記表面処理に用いるカップリング剤は、エポキシシラン、アミノシラン、ビニルシラン、メルカプトシラン、サルファーシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルシラン、(メタ)アクリル酸シラン、イソシアネートシラン又はウレイドシラン等であることが好ましい。
【0069】
上記エポキシ樹脂材料は、上記第1の小粒径シリカと上記第2の大粒径シリカとを重量比で、5:95〜50:50で含むことが好ましく、10:90〜30:70で含むことがより好ましい。上記エポキシ樹脂材料が上記第1の小粒径シリカと上記第2の大粒径シリカとを上記重量比で含むことにより、粗化予備硬化物の粗化処理された表面の表面粗さがより一層小さくなり、かつ硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
【0070】
エポキシ樹脂材料100体積%中の全ての上記シリカの含有量は40体積%以上である。エポキシ樹脂材料100体積%中の全ての上記シリカの含有量は、好ましくは95体積%以下、より好ましくは90体積%以下、更に好ましくは85体積%以下である。また、上記エポキシ樹脂材料に含まれている全固形分(以下、全固形分Aと略記することがある)100重量%中、全ての上記シリカ(第1の小粒径シリカと第2の大粒径シリカとを含む)の含有量は好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、好ましくは85重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。上記シリカの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂の線熱膨張率が抑えられ銅やシリコンとの膨張率の違いが緩和され、熱衝撃信頼性が向上し、反り抑制効果が向上し、加工精度が向上するとともに、粗化処理によりシリカを脱落させて、粗化穴の形成により硬化物と金属層との接着強度が高くなる。「全固形分A」とは、エポキシ樹脂と硬化剤とシリカと必要に応じて配合される固形分との総和をいう。「固形分」とは、不揮発成分であり、成形又は加熱時に揮発しない成分をいう。
【0071】
全ての上記シリカの含有量100重量%中、上記第1の小粒径シリカと上記第2の大粒径シリカとの合計の含有量は、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。全ての上記シリカが、上記第1の小粒径シリカと上記第2の大粒径シリカとであってもよい。
【0072】
[他の成分及び樹脂組成物及びエポキシ樹脂材料の詳細]
上記エポキシ樹脂材料は、必要に応じて硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤の使用により、硬化速度をより一層速くすることができる。エポキシ樹脂材料を速やかに硬化させることで、硬化物の架橋構造を均一にすることができると共に、未反応の官能基数を減らすことができ、結果的に架橋密度を高くすることができる。該硬化促進剤は特に限定されない。該硬化促進剤として、従来公知の硬化促進剤を使用可能である。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0073】
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、リン化合物、アミン化合物及び有機金属化合物等が挙げられる。
【0074】
上記イミダゾール化合物としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0075】
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0076】
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン及び4,4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0077】
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
【0078】
硬化物の絶縁信頼性を高くする観点からは、上記硬化促進剤は、イミダゾール化合物であることが特に好ましい。
【0079】
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されない。エポキシ樹脂材料を効率的に硬化させる観点からは、上記全固形分B100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は好ましくは0.01重量%以上、好ましくは3重量%以下である。なお、上記全固形分Bには、上記硬化促進剤が含まれる。
【0080】
上記エポキシ樹脂材料は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂の使用により、エポキシ樹脂材料の回路の凹凸への追従性が高くなり、粗化予備硬化物の粗化処理された表面の表面粗さがより一層小さくなり、更に粗化処理された表面の粗度をより一層均一にすることができる。
【0081】
上記熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂及びポリビニルアセタール樹脂等が挙げられる。
【0082】
上記熱可塑性樹脂の含有量は特に限定されない。上記全固形分B100重量%中、上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下、特に好ましくは15重量%以下である。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の熱による寸法変化がより一層小さくなる。また、上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、エポキシ樹脂材料の回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。なお、上記全固形分Bには、上記熱可塑性樹脂が含まれる。
【0083】
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、エポキシ樹脂材料には、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、揺変性付与剤及び上述した樹脂以外の他の樹脂等を添加してもよい。
【0084】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン、フェニルアミノシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0085】
上記カップリング剤の含有量は特に限定されない。上記全固形分B100重量%中、上記カップリング剤の含有量は0.01重量%以上、5重量%以下であることが好ましい。
【0086】
上記他の樹脂としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、ジビニルベンジルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂、ビスマレイミド樹脂及びアクリレート樹脂等が挙げられる。なお、上記全固形分Bには、上記カップリング剤が含まれる。
【0087】
上記エポキシ樹脂材料は、溶剤を含んでいてもよい。上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N−メチル−ピロリドン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。上記溶剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0088】
溶剤を含む樹脂組成物はワニスとして用いることができる。用途に応じて溶剤の含有量を調整することにより、ワニスの粘度を調整可能である。上記エポキシ樹脂材料では、上記全固形分A100重量部に対して、上記溶剤の含有量は好ましくは10重量部以上、好ましくは1000重量部以下である。
【0089】
(Bステージフィルム、積層フィルム、予備硬化物、粗化予備硬化物及び積層体の詳細)
上記エポキシ樹脂材料は、樹脂組成物であってもよく、該樹脂組成物がフィルム状に成形されたBステージフィルムであってもよい。上記樹脂組成物をフィルム状に成形することにより、Bステージフィルムを得ることができる。
【0090】
上記樹脂組成物をフィルム状に成形する方法としては、例えば、押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法、樹脂組成物を有機溶剤等の溶剤に溶解又は分散させた後、キャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法、並びに従来公知のその他のフィルム成形法等が挙げられる。なかでも、薄型化を進めることができるので、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
【0091】
上記樹脂組成物をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば90〜200℃で10〜180分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムを得ることができる。
【0092】
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。
【0093】
上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある半硬化物である。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
【0094】
上記樹脂組成物は、基材と、該基材の一方の表面に積層されたBステージフィルムとを備える積層フィルムを形成するために好適に用いられる。積層フィルムのBステージフィルムが、上記樹脂組成物により形成される。
【0095】
上記積層フィルムの上記基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルムなどのオレフィン樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、銅箔及びアルミニウム箔などの金属箔等が挙げられる。上記基材の表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
【0096】
上記エポキシ樹脂材料を回路の絶縁層として用いる場合、エポキシ樹脂材料により形成された層の厚さは、回路を形成する導体層の厚さ以上であることが好ましい。上記エポキシ樹脂材料により形成された層の厚さは、好ましくは5μm以上、好ましくは200μm以下である。
【0097】
上記エポキシ樹脂材料はBステージフィルムであり、上記積層対象部材上に、上記Bステージフィルムをラミネートすることにより積層した後、上記Bステージフィルムの硬化を進行させて予備硬化物を得ることが好ましい。ラミネート温度は好ましくは55℃以上、より好ましくは65℃以上、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下である。ラミネート圧力は好ましくは0.5MPa以上、より好ましくは0.8MPa以上、好ましくは1.5MPa以下、より好ましくは1.2MPa以下である。このような適正化された条件でエポキシ樹脂材料であるBステージフィルムを積層することにより、予備硬化物において、第1の小粒径シリカ及び第2の大粒径シリカの偏在状態がより一層良好になる。これまで述べたようなエポキシ樹脂材料で構成されたBステージフィルムでは、ラミネート温度付近での溶融粘度が低くなる。特に、液状エポキシ樹脂、シアネートエステル硬化剤を中心に構成したBステージフィルムの溶融粘度が50Pa・s以下となり、樹脂成分の流動性が高くなる。この状態でラミネート処理をすることで、樹脂が溶融する時点で第1の小粒径シリカが選択的に移動可能となり、ラミネート時に平坦になるように、Bステージフィルムの最表面で樹脂と共に第1の小粒径シリカが移動する。この移動によって、粗化処理される第1の表面側に、第1の小粒径シリカが多く偏在するようになる。また、溶融粘度の低い樹脂が多く含まれている場合には、ラミネート時に樹脂の移動量が多くなりシリカの含有量が少ない層が形成される。予備硬化物の上層部分に粒子径が比較的小さい第1の小粒径シリカが多く存在し、かつ下層部分に粒子径が比較的大きい第2の大粒径シリカが多く存在するようになる。この結果、予備硬化物の表面を粗化処理したときに、粗化予備硬化物の粗化処理された表面の表面粗さが小さくなる。さらに、硬化物と金属層との接着強度も高くなる。また、樹脂の溶融粘度を低くすることで、上層と下層の間に、シリカの含有量が明らかに低い樹脂層を形成でき、粗化予備硬化物の上層と下層の絶縁性を高くできる。また、相対的に第3の領域のシリカ量が増え、層と平行方向の線熱膨脹率(CTE)を低く抑え、この粗化予備硬化物を使用する絶縁基板のソリを低減する硬化も得られる。
【0098】
上記Bステージフィルムをラミネートすることにより積層する方法は、公知の方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、回路基板上に、上記Bステージフィルムを積層し、好ましくは上記積層フィルムをBステージフィルム側から積層し、加圧式ラミネーターを用いて加圧する。このとき、加熱してもよく、加熱しなくてよい。次に、平行平板プレス式加熱プレス機を用いて、積層対象部材とBステージフィルム又は積層フィルムとを加熱及び加圧する。加熱及び加圧により、Bステージフィルムを予備硬化させて、予備硬化物を形成してもよい。上記加熱の温度及び上記加圧の圧力は適宜変更することができ、特に限定されない。
【0099】
より具体的な積層方法としては、例えば、ロールラミネーターを用いて、ロール径60mm及びロール周速0.1〜10m/分の速度の条件で、ロール温度を20〜120℃とし、1〜6MPaの圧力で加圧しながら、上記Bステージフィルムを回路基板に積層するか、又は上記積層フィルムをBステージフィルム側から積層対象部材上に積層する。
【0100】
上記Bステージフィルム又は上記積層フィルムを積層対象部材上に積層した後、160〜200℃で20分〜180分間加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理により、Bステージフィルムを予備硬化させて、予備硬化物を得ることができる。積層フィルムの基材は、予備硬化物を形成する前に除去してもよく、予備硬化物を形成した後に除去してもよい。このような条件で積層した後に、粗化処理を行うことで、粗化予備硬化物の表面に微細な凹凸を形成できる。予備硬化物は、最終硬化物のガラス転移温度よりも10〜60℃低い温度に硬化されることが好ましい。
【0101】
必要に応じて、ロールラミネート後に平行平板加熱プレス機を行い、予備硬化物の表面の平滑性を高めてもよい。例えば、平行平板加熱プレス機を用いて、厚さ1mmのステンレス板で、回路基板とBステージフィルム又は積層フィルムとの積層物を加熱及び加圧してもよい。
【0102】
なお、加熱加圧式ロールラミネーターなどの加圧式ラミネーター、及び平行平板加熱プレス機などのプレス機として、市販の装置を使用できる。ロールラミネーターによる積層は、真空状態で行うことが好ましい。ロールラミネーターのロールの材質は、表面が軟質なゴムロール、及び表面が硬質な金属ロールなどから適宜選択できる。平行平板加熱プレス機の平板の材質は、硬質な金属である。
【0103】
ロールラミネーターのロールと上記積層対象部材、Bステージフィルム又は積層フィルムとの間、又は平行平板加熱プレス機の平板と上記積層対象部材、Bステージフィルム又は積層フィルムとの間には、離型機能を有するフィルム、例えばアルミ箔、銅箔、ポリエステル樹脂フィルム、フッ素樹脂系フィルムなどを用いてもよい。
【0104】
回路基板とBステージフィルム又は積層フィルムとの密着性を高める目的で、ゴムシートなどの柔軟性を有する材料を用いてもよい。
【0105】
予備硬化物を形成する工程は、回路基板上に、上記積層フィルムを上記Bステージフィルム側から積層し、ロールラミネーターを用いて加圧した後、平行平板プレス式加熱プレス機を用いて加熱及び加圧し、予備硬化物を形成する工程であることが好ましい。また、予備硬化物を形成する工程は、積層対象部材上に、上記積層フィルムを上記Bステージフィルム側から積層し、ロールラミネーターを用いて加圧した後、平行平板プレス式加熱プレス機を用いて加熱及び加圧し、予備硬化物を形成する工程であり、ロールラミネーターを用いて加圧した後、かつ平行平板プレス式加熱プレス機を用いて加熱及び加圧する前に、又はロールラミネーターを用いて加圧した後、かつ平行平板プレス式加熱プレス機を用いて加熱及び加圧した後に、上記基材を除去することが好ましい。
【0106】
本発明に係る粗化予備硬化物は、上記予備硬化物の上記第1の主面を粗化処理することにより得られる。上記予備硬化物の表面に微細な凹凸を形成するために、上記粗化予備硬化物では、粗化処理される前に、上記予備硬化物が膨潤処理されていることが好ましい。上記粗化予備硬化物では、予備硬化の後かつ粗化処理される前に、膨潤処理されていることが好ましい。ただし、予備硬化物は、必ずしも膨潤処理されなくてもよい。
【0107】
本発明に係る積層体は、上記予備硬化物の上記第1の主面を粗化処理することにより得られた粗化予備硬化物を硬化させた硬化物と、該硬化物の粗化処理された表面に積層された金属層とを有する。該硬化物と該金属層との接着強度は、0.39N/mm以上であることが好ましい。上記金属層は、銅層であることが好ましく、銅めっき層であることがより好ましい。
【0108】
(プリント配線板)
上記エポキシ樹脂材料は、プリント配線板において絶縁層を形成するために好適に用いられる。
【0109】
上記プリント配線板は、例えば、上記樹脂組成物により形成されたBステージフィルムを用いて、該Bステージフィルムを加熱加圧成形することにより得られる。
【0110】
上記Bステージフィルムに対して、片面又は両面に金属箔を積層できる。上記Bステージフィルムと金属箔とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、平行平板プレス機又はロールラミネーター等の装置を用いて、加熱しながら又は加熱せずに加圧しながら、上記Bステージフィルムを金属箔に積層できる。
【0111】
(銅張り積層板及び多層基板)
上記エポキシ樹脂材料は、銅張り積層板を得るために好適に用いられる。上記銅張り積層板の一例として、銅箔と、該銅箔の一方の表面に積層されたBステージフィルムとを備える銅張り積層板が挙げられる。この銅張り積層板のBステージフィルムが、上記エポキシ樹脂材料により形成される。該Bステージフィルムを予備硬化させることにより、予備硬化物を有する銅張り積層板を得ることができる。
【0112】
上記銅張り積層板の上記銅箔の厚さは特に限定されない。上記銅箔の厚さは、1〜50μmの範囲内であることが好ましい。また、エポキシ樹脂材料を硬化させた硬化物と銅箔との接着強度を高めるために、上記銅箔は微細な凹凸を表面に有することが好ましい。凹凸の形成方法は特に限定されない。上記凹凸の形成方法としては、公知の薬液を用いた処理による形成方法等が挙げられる。
【0113】
また、上記予備硬化物は、多層基板を得るために好適に用いられる。上記多層基板の一例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された硬化物層とを備える回路基板が挙げられる。この多層基板の硬化物層が、上記予備硬化物を粗化処理し、次に粗化予備硬化物を硬化させることにより形成される。上記硬化物層は、回路基板の回路が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記硬化物層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。
【0114】
上記多層基板では、上記硬化物層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理されていることがより好ましい。粗化処理方法は、従来公知の粗化処理方法を用いることができ特に限定されない。上記硬化物層の表面は、粗化処理の前に膨潤処理されていてもよい。
【0115】
また、上記多層基板は、上記硬化物層の粗化処理された表面に積層された銅めっき層をさらに備えることが好ましい。
【0116】
また、上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された硬化物層と、該硬化物層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面に積層された銅箔とを備える回路基板が挙げられる。上記硬化物層及び上記銅箔が、銅箔と該銅箔の一方の表面に積層されたBステージフィルムとを備える銅張り積層板を用いて、上記Bステージフィルムを予備硬化、粗化処理及び硬化処理することにより形成されていることが好ましい。さらに、上記銅箔はエッチング処理されており、銅回路であることが好ましい。
【0117】
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された複数の硬化物層とを備える回路基板が挙げられる。上記複数層の硬化物層の内の少なくとも1層がが、上記予備硬化物により形成される。上記多層基板は、上記エポキシ樹脂材料を硬化させることにより形成されている上記硬化物層の少なくとも一方の表面に積層されている回路をさらに備えることが好ましい。
【0118】
図2に、本発明の一実施形態に係る予備硬化物を用いた積層体を模式的に部分切欠正面断面図で示す。
【0119】
図2に示す積層体11では、回路基板12の上面12aに、複数層の硬化物層13〜16が積層されている。硬化物層13〜16は、絶縁層である。回路基板12の上面12aの一部の領域には、金属層17が形成されている。複数層の硬化物層13〜16のうち、回路基板12側とは反対の外側の表面に位置する硬化物層16以外の硬化物層13〜15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。金属層17は回路である。回路基板12と硬化物層13の間、及び積層された硬化物層13〜16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
【0120】
積層体11では、硬化物層13〜16が、本発明に係るエポキシ樹脂材料を硬化させることにより形成されている。なお、図2では、図示の便宜上、硬化物層13〜16におけるシリカ及びシリカが脱離した孔の図示は省略されている。本実施形態では、硬化物層13〜16の表面が粗化処理されているので、硬化物層13〜16の表面に図示しない微細な孔が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。また、積層体11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。また、積層体11では、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続で接続されていない上方の金属層と下方の金属層との間に、良好な絶縁信頼性が付与されている。
【0121】
(膨潤処理及び粗化処理)
上記膨潤処理の方法としては、例えば、エチレングリコールなどを主成分とする化合物の水溶液又は有機溶媒分散溶液などにより、予備硬化物を処理する方法が用いられる。膨潤処理に用いる膨潤液は、一般にpH調整剤などとして、アルカリを含む。膨潤液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。具体的には、例えば、上記膨潤処理は、40重量%エチレングリコール水溶液等を用いて、処理温度30〜85℃で1〜30分間、予備硬化物を処理することにより行なわれる。上記膨潤処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。上記膨潤処理の温度が低すぎると、膨潤処理に長時間を要し、更に硬化物と金属層との粗化接着強度が低くなる傾向がある。
【0122】
上記粗化処理には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。粗化処理に用いられる粗化液は、一般にpH調整剤などとしてアルカリを含む。粗化液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
【0123】
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム及び過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム及び無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0124】
上記粗化処理の方法は特に限定されない。上記粗化処理の方法として、例えば、30〜90g/L過マンガン酸又は過マンガン酸塩溶液及び30〜90g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度30〜85℃及び1〜30分間の条件で、1回又は2回、予備硬化物を処理する方法が好適である。上記粗化処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。
【0125】
粗化予備硬化物の粗化処理された表面の算術平均粗さRaは、好ましくは50nm以上、より好ましくは350nm以下、更に好ましくは300nm以下である。この場合には、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くすることができ、更に硬化物層の表面により一層微細な配線を形成することができる。
【0126】
(デスミア処理)
また、上記予備硬化物又は上記硬化物に、貫通孔が形成されることがある。上記多層基板などでは、貫通孔として、ビア又はスルーホール等が形成される。例えば、ビアは、COレーザー等のレーザーの照射により形成できる。ビアの直径は特に限定されないが、60〜80μm程度である。上記貫通孔の形成により、ビア内の底部には、硬化物層に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアが形成されることが多い。
【0127】
上記スミアを除去するために、上記予備硬化物の表面は、デスミア処理されることが好ましい。デスミア処理が粗化処理を兼ねることもある。デスミア処理は粗化処理と呼ばれることもある。
【0128】
上記デスミア処理には、上記粗化処理と同様に、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。デスミア処理に用いられるデスミア処理液は、一般にアルカリを含む。デスミア処理液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
【0129】
上記デスミア処理の方法は特に限定されない。上記デスミア処理の方法として、例えば、30〜90g/L過マンガン酸又は過マンガン酸塩溶液及び30〜90g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度30〜85℃及び1〜30分間の条件で、1回又は2回、予備硬化物又は硬化物を処理する方法が好適である。上記デスミア処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。
【0130】
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0131】
実施例及び比較例では、以下に示す材料を用いた。
【0132】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂1(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、三菱化学製「828US」)
エポキシ樹脂2(ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬社製「NC3000H」、軟化点70℃)
エポキシ樹脂3(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、DIC製「HP−7200」、軟化点61℃)
【0133】
(硬化剤)
活性エステル化合物溶液(DIC社製「EXB−9460S−65T」、活性エステル当量223、活性エステル化合物(固形分)65重量%とトルエン35重量%とを含む)
シアネートエステル樹脂溶液(シアネートエステル硬化剤、ビスフェノールAジシアネートがトリアジン化され、三量体とされたプレポリマー、ロンザジャパン社製「BA230S−75」、シアネート当量230、シアネートエステル樹脂(固形分)75重量%とメチルエチルケトン25重量%とを含む)
フェノール化合物(フェノール硬化剤、明和化成社製「MEH7851−4H」、フェノール性水酸基当量242)
フェノール化合物溶液(アミノトリアジン骨格を有するフェノール硬化剤、DIC社製「LA3018−50P」、フェノール性水酸基当量151、フェノール化合物(固形分)50重量%とプロピレングリコールモノメチルエーテル50重量%とを含む)
【0134】
(硬化促進剤)
イミダゾール化合物1(2−エチル−4−メチルイミダゾール、四国化成社製「2E4MZ」)
イミダゾール化合物2(2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、四国化成社製「2P4MHZ−PW」)
【0135】
(シリカ成分)
第1の小粒径シリカ含有スラリーA:
第1の小粒径シリカa(シリカ(アドマテックス社製「YA050C−MMK」、平均粒子径0.05μm)が、フェニルシラン(フェニルトリメトキシシラン、信越化学工業社製「KBM−103」)により、表面処理されたもの)65重量%と、メチルエチルケトン35重量%とを含む第1の小粒径シリカ含有スラリー
第1の小粒径シリカ含有スラリーB:
第1の小粒径シリカb(シリカ(電気化学工業社製「UFP−30」、平均粒子径0.1μm)が、イミダゾールシラン(日鉱金属社製「IM−1000」)により表面処理されたもの)を30重量%と、N,N−ジメチルホルムアミドを70重量%とを含む第1の小粒径シリカ含有スラリー
第1の小粒径シリカと第2の大粒径シリカとの双方を含有するスラリーX:
第1の小粒径シリカと第2の大粒径シリカx(シリカ(アドマテックス社製「SO−C2」、平均粒子径0.5μm)とが、エポキシシラン(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製「KBM−403」)により表面処理されたもの)70重量%と、メチルエチルケトン30重量%とを含む第1の小粒径シリカと第2の大粒径シリカとの双方を含有するスラリー
【0136】
スラリーXは広い粒度分布を持ち、粒子径0.01μmから粒子径20μmまでのシリカを含む。スラリーXでは、第1の小粒径シリカと第2の大粒径シリカとの合計100体積%中、第1の小粒径シリカの含有量は50体積%、第2の大粒径シリカxの含有量は50体積%である。
【0137】
第2の大粒径シリカ含有スラリーY:
第2の大粒径シリカy(シリカ(トクヤマ製「UF−320」、平均粒子径3.5μm、粗粒カットポイント20μm)が、イミダゾールシラン(日鉱金属社製「IM−1000」)により表面処理されたもの)50重量%と、N,N−ジメチルホルムアミド50重量%とを含む第2の大粒径シリカ含有スラリー
【0138】
(熱可塑性樹脂)
ブチラール樹脂(積水化学工業製「KS−1」)
【0139】
(実施例1)
(1)樹脂組成物及び積層フィルムの作製
第1の小粒径シリカ含有スラリーAを固形分で5重量部と、第2の大粒径シリカ含有スラリーYを固形分で55重量部と、エポキシ樹脂1(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学製「828US」)10重量部と、エポキシ樹脂2(ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬社製「NC3000H」)20重量部と、シアネートエステル樹脂溶液(シアネートエステル硬化剤、ロンザジャパン社製「BA230S−75」)を固形分で10重量部と、イミダゾール化合物1(四国化成社製「2E4MZ」)0.5重量部と、ブチラール樹脂(積水化学工業製「KS−1」)0.3重量部とを配合し、撹拌機を用いて1200rpmで1時間撹拌し、樹脂組成物を得た。
【0140】
離型処理された透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製「PET5011 550」、厚み50μm)を用意した。このPETフィルムの離型処理面上にアプリケーターを用いて、乾燥後の厚みが50μmとなるように、得られた樹脂組成物を塗工した。次に、100℃のギアオーブン内で2分間乾燥して、縦200mm×横200mm×厚み50μmの樹脂シートの未硬化物(Bステージフィルム)とポリエチレンテレフタレートフィルムとの積層フィルムを作製した。次に、積層フィルムからポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、樹脂シートの未硬化物を180℃のギアオーブン内で80分間加熱して、樹脂シートの予備硬化物を作製した。
【0141】
(2)予備硬化物を有する積層体の作製
得られた積層フィルムを、Bステージフィルムが、ガラスエポキシ基板(FR−4、品番「CS−3665」、利昌工業社製)側となるようにセットした。積層フィルムとガラスエポキシ基板とを、100℃に加熱した平行平板プレス機を用いて、減圧下で0.5MPaで60分間加圧加熱し、樹脂シートの予備硬化物を含む積層体を得た。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、ガラスエポキシ基板と予備硬化物との積層体Aを得た。得られた予備硬化物は、ガラスエポキシ基板側に第2の主面を有し、ガラスエポキシ基板とは反対側に粗化処理される面である第1の主面を有する。
【0142】
(実施例2〜8及び比較例1〜2)
使用した材料の種類及び配合量を下記の表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物、PETフィルムとBステージフィルムとの積層フィルム並びにガラスエポキシ基板と予備硬化物との積層体を得た。
【0143】
(評価)
(1)エポキシ樹脂材料の最低溶融粘度
Rheometer装置(TAインスツルメント社製「AR−2000」)を用いて、歪み21.6%及び周波数1Hzの条件で、得られた樹脂シートの未硬化物(Bステージフィルム)の50〜150℃の温度領域での粘度を測定し、粘度が最も低くなる値を最低溶融粘度とした。
【0144】
(2)シリカの存在状態1
実施例及び比較例で得られた積層体Aにおける予備硬化物の断面観察を行った。予備硬化体中のシリカの存在状態1を下記の判定基準で判定した。
【0145】
[シリカの存在状態1の判定基準]
○:予備硬化体中で第1の主面側の表面部分の厚み0.3μmの第1の領域に含まれる全てのシリカ100体積%のうち、上記第2の大粒径シリカの含有量は5体積%以下であり、上記第1の領域に連なる厚み1μmの第2の領域において、該第2の領域の100体積%中、全てのシリカの含有量は20体積%以下である
×:予備硬化体中で第1の主面側の表面部分の厚み0.3μmの第1の領域に含まれる全てのシリカ100体積%のうち、上記第2の大粒径シリカの含有量は5体積%を超えるか、又は上記第1の領域に連なる厚み1μmの第2の領域において、該第2の領域の100体積%中、全てのシリカの含有量が20体積%を超える
××:予備硬化体中で第1の主面側の表面部分の厚み0.3μmの第1の領域に含まれる全てのシリカ100体積%のうち、上記第2の大粒径シリカの含有量は5体積%を超え、かつ上記第1の領域に連なる厚み1μmの第2の領域において、該第2の領域の100体積%中、全てのシリカの含有量が20体積%を超える
【0146】
(3)シリカの存在状態2
上記シリカの存在状態1の判定結果が「○」である場合に、粗化処理される面である上記第1の主面側の表面部分第1の領域のうち、表面から厚み0.3μmに含まれる全てのシリカ100重量%のうちの第2の大粒径シリカの含有量の割合(体積%)を評価した。
【0147】
(4)接着強度(ピール強度)及び算術平均粗さRa
[硬化物Bの作製]
上記積層体Aにおける予備硬化物を、下記の(a)膨潤処理をした後、下記の(b)過マンガン酸塩処理すなわち粗化処理をし、さらに下記の(c)銅めっき処理をした。
【0148】
(a)膨潤処理:
60℃の膨潤液(スウェリングディップセキュリガントP、アトテックジャパン社製)に、上記積層体Aを入れて、20分間揺動させた。その後、純水で洗浄した。
【0149】
(b)過マンガン酸塩処理:
75℃の過マンガン酸カリウム(コンセントレートコンパクトCP、アトテックジャパン社製)粗化水溶液に、上記積層体を入れて、20分間揺動させ、ガラスエポキシ基板上に粗化処理された粗化予備硬化物を得た。得られた粗化予備硬化物を、23℃の洗浄液(リダクションセキュリガントP、アトテックジャパン社製)により2分間洗浄した後、純水でさらに洗浄した。
【0150】
120℃のギアオーブン中で2時間乾燥し、冷却した後、JIS B0601−1994に準拠して、粗化予備硬化物の粗化処理された表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0151】
(c)銅めっき処理:
次に、ガラスエポキシ基板上の粗化処理された粗化予備硬化物に、無電解銅めっき及び電解銅めっき処理を以下の手順で行った。
【0152】
上記粗化予備硬化物の表面を、55℃のアルカリクリーナ(クリーナーセキュリガント902)で5分間処理し、脱脂洗浄した。洗浄後、上記粗化予備硬化物を23℃のプリディップ液(プリディップネオガントB)で2分間処理した。その後、上記粗化予備硬化物を40℃のアクチベーター液(アクチベーターネオガント834)で5分間処理し、パラジウム触媒を付けた。次に、30℃の還元液(リデューサーネオガントWA)により、粗化予備硬化物を5分間処理した。
【0153】
次に、上記粗化予備硬化物を化学銅液(ベーシックプリントガントMSK−DK、カッパープリントガントMSK、スタビライザープリントガントMSK)に入れ、無電解めっきをめっき厚さが0.5μm程度になるまで実施した。無電解めっき後に、残留している水素ガスを除去するため、120℃の温度で30分間アニールをかけた。無電解めっきの工程までのすべての工程は、ビーカースケールで処理液を1Lとし、硬化物を揺動させながら実施した。
【0154】
次に、無電解めっき処理された粗化予備硬化物に、電解めっきをめっき厚さが25μmとなるまで実施した。電気銅めっきとして硫酸銅(リデューサーCu)を用いて、0.6A/cm2の電流を流した。銅めっき処理後、粗化予備硬化物を190℃で1時間加熱し、硬化させ、銅めっき層が形成された硬化物Bを得た。このとき、基板とめっき層との間で膨れが生じた場合は、「めっき膨れ」と評価した。
【0155】
[接着強度の測定方法]
上記銅めっき層が形成された硬化物Bの銅めっき層の表面に10mm幅に切り欠きを入れた。その後、引張試験機(商品名「オートグラフ」、島津製作所社製)を用いて、クロスヘッド速度5mm/分の条件で、銅めっき層と硬化物との接着強度(ピール強度)を測定した。
【0156】
[絶縁試験方法]
接着強度試験とは別に、無電解メッキ処理完了後に、DFR亜hr居着け、露光、DFR剥離、銅エッチング処理を行い、これを電解メッキ処理し、電極パターンを形成し、層間絶縁試験用基板を得た。この層間絶縁試験用基板を130℃、85%、5Vの不飽和絶縁試験装置により100時間後の漏れ電流を測定し評価を行った。
【0157】
結果を下記の表1に示す。なお、エポキシ樹脂材料である樹脂組成物に含まれている全てのシリカの平均粒子径を下記の表1に示した。また、下記の表1において、「全固形分A」は、上記エポキシ樹脂材料に含まれている全固形分を示し、「−」は評価していないことを示す。
【0158】
【表1】

【符号の説明】
【0159】
1…予備硬化物
1a…第1の主面
1b…第2の主面
2…シリカ
2A…第1の小粒径シリカ
2B…第2の大粒径シリカ
6…積層対象部材
6a…上面
11…積層体
12…回路基板
12a…上面
13〜16…硬化物層
17…金属層
R1…第1の領域
R2…第2の領域
R3…第3の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂材料の硬化を進行させることにより得られた予備硬化物であって、
第1の主面と第2の主面とを有し、前記第1の主面が粗化処理される面であり、
前記エポキシ樹脂材料が、エポキシ樹脂と硬化剤とシリカとを含み、
エポキシ樹脂材料100体積%中の全ての前記シリカの含有量は40体積%以上であり、
前記シリカが、粒子径が0.01μm以上、0.5μm未満である第1の小粒径シリカと、粒子径が0.5μm以上、20μm以下である第2の大粒径シリカとを含有し、
予備硬化物中で、前記第1の小粒径シリカと前記第2の大粒径シリカとがそれぞれ偏在しており、
粗化処理される面である前記第1の主面側の表面部分の厚み0.3μmの第1の領域に含まれる全てのシリカ100体積%のうち、前記第2の大粒径シリカの含有量は5体積%以下であり、
前記第1の領域に連なる厚み1μmの第2の領域において、該第2の領域の100体積%中、全ての前記シリカの含有量は20体積%以下である、予備硬化物。
【請求項2】
60〜120℃の温度領域における予備硬化前のエポキシ樹脂材料の最低溶融粘度が50Pa・s以下である、請求項1に記載の予備硬化物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂材料が、前記硬化剤としてシアネートエステル樹脂を含む、請求項1又は2に記載の予備硬化物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の予備硬化物の前記第1の主面を粗化処理することにより得られた粗化予備硬化物。
【請求項5】
粗化処理される前に、前記予備硬化物が膨潤処理されている、請求項4に記載の粗化予備硬化物。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の予備硬化物の前記第1の主面を粗化処理することにより得られた粗化予備硬化物を硬化させた硬化物と、該硬化物の粗化処理された表面に積層された金属層とを有する、積層体。
【請求項7】
前記硬化物と前記金属層との接着強度が0.39N/mm以上である、請求項6に記載の積層体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−211269(P2012−211269A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77925(P2011−77925)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】