説明

予備精製された合成原油の製造用の切替可能な反応器を使用する、塔頂その他の原油を固定床水素化転化させるための方法

【課題】サイクルタイムを相当長くし、一般的には少なくとも12月には達するように延長させると共に、高い水素化脱硫および水素化分解性能を有しつつも、製品の安定性を保持すること。
【解決手段】本発明は、予備精製された合成原油の製造のために、少なくとも0.5重量%のアスファルテンおよび10重量ppm超の金属(ニッケルおよび/またはバナジウム)を含む重質炭化水素原油の予備精製および水素化転化を行う方法であって、前記供給原料は、少なくとも2つの切替可能な反応帯域を含む水素化脱金属セクション中を通過し、次いで、脱金属された流出物の少なくとも一部は、水素化分解セクションにおいて水素化分解され、次いで、水素化分解された流出物の少なくとも一部は、水素化脱硫され、水素化脱金属セクションおよび水素化脱硫セクションは、特定の触媒系を用いる、方法に存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予備精製された合成原油の製造を目的とする、全体または塔頂の重質原油、特に、硫黄含有不純物、窒素含有不純物および金属性不純物を含むものの固定床精製および転化に関する。
【背景技術】
【0002】
この40年の間に、石油製品に対する市場の要求において、ガソリンおよびLPGのような軽質生成物、ならびに灯油および軽油のような中間生成物を指向する傾向がますます強くなっている。それと同時に、1970年代以降においては、重質燃料およびビチューメンのような重質生成物のマーケットシェアが、じりじりと低下している。この理由のために、精製業者は、重質原油フラクション(一般的には、343℃+または350℃+フラクションと呼ばれている)を転化させることが可能な転化方法の設備を自社に設置するか、あるいは、重質留分含量のより低い、より軽質な原油の供給元を見出すかのいずれかをしなければならなかった。第三の選択肢は、重質原油を予備精製して合成原油としてから、それを精製設備へ送って規格値に合った最終製品を生産することからなる。
【0003】
重質原油を予備精製および水素化転化させることの目的は、精製すること、すなわちそれらの金属、硫黄、窒素およびその他の不純物の含量を大幅に低下させること、ならびに水素/炭素比(H/C)を改良することの両方であり、それにより、その最も重質なフラクションが転化させられ、すなわち、そのものの成分が多かれ少なかれ、より軽質な留分へと転換させられて、得られる合成原油中の軽質留分および中間留分の量が増大する。実際のところ、そのようにして得られた合成原油は、重質留分(真空蒸留物および真空残渣)の量並びに質が大幅に改善されるならば、最初の重質原油を直接的に処理することができる転化装置を有していない精油業者において直接的に処理され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
重質原油を予備精製および水素化転化させるときの問題は二つある:第一には、そのような重質原油の中に含まれる金属系不純物、硫黄含有不純物、および窒素含有不純物が、その方法に特有の水素化分解触媒および水素化脱硫触媒の触媒活性を著しく阻害すること;第二には、そのような供給原料中に含まれるアスファルテンおよび金属が、コークスおよび金属スルフィドの形態で少しずつその触媒の上に沈着して、その触媒系の活性を低下させたり、急速に閉塞させたりする傾向があり、そのため、それを交換するために停止をさせる必要が生じることである。
【0005】
したがって、原油の予備精製および水素化転化を行うための方法は、その装置を停止させることなく可能な限り長い運転サイクルが可能となるように設計されなければならず、最低でも12月の運転サイクルに到達することが目標である。
【0006】
本発明の目的の一つは、サイクルタイムを相当長くし、一般的には少なくとも12月には達するように延長させると共に、高い水素化脱硫および水素化分解性能を有しつつも、製品の安定性を保持することである。
【0007】
従来技術では、アスファルテン含量、コンラドソン炭素および/または金属含量が高い重質原油を固定床予備精製しようとすると、サイクルタイムが短くなるか、あるいは、たとえば、低い毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)と極めて高い水素分圧とを独立しておよび/または累積的に使用する結果となるだろう。操作条件および/または方法の設計に対するそのような改変は、工業的な方法にとって経済的であるサイクルタイムを有するために投下資本およびランニングコストに大きな影響を有するだろう。したがって、本発明は、操作条件(HSVおよび/または操作圧力、さらには温度)において変化なしで済ます一方で、重質原油の予備精製および水素化転化方法にとって経済的なサイクルタイムを提供することを提案する。
【0008】
したがって、本発明の目的は、硫黄含有不純物、窒素含有不純物、および金属不純物またはそれらの不純物の混合物を極めて大量に含む原油を直接処理することを可能とする一方で、経済性のあるサイクルタイムを維持する方法を提案することである。本発明に従って処理され得る供給原料は、通常、少なくとも0.5重量%のアスファルテンおよび/または10重量ppm超の金属(ニッケルおよびバナジウム)を含む。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の方法は、予備精製された合成原油の製造のために、少なくとも0.5重量%のアスファルテンおよび10重量ppm超の金属(ニッケルおよび/またはバナジウム)を含む重質炭化水素原油供給原料の予備精製および水素化転化を行う固定床方法であって、
・ 前記供給原料は、水素化脱金属(HDM)セクションにおいて水素化脱金属処理を経、該水素化脱金属(HDM)セクションは、少なくとも2つの切替可能な反応帯域を含み、該切替可能な反応帯域は、それぞれ、少なくとも1種の水素化脱金属触媒を含み;
・ 次いで、少なくとも部分的に脱金属された流出物の少なくとも一部が、水素化分解(HCK)セクションにおいて水素化分解され、該水素化分解(HCK)セクションは、少なくとも1種の固定床水素化分解触媒を含み;
・ 次いで、少なくとも部分的に水素化分解された流出物の少なくとも一部が、水素化脱硫セクションにおいて水素化脱硫され、該水素化脱硫セクションは、少なくとも1種の水素化脱硫触媒を含み;
HDMセクションおよびHDSセクションは、一方はHDM用であり他方はHDS用である少なくとも2種の触媒を含む触媒系の存在下に操作し、HCK工程は、HDM工程およびHDS工程の間に行われ、前記HDM触媒およびHDS触媒は、多孔質耐火性酸化物によって構成される少なくとも1種の担体と、第VIB族からの少なくとも1種の金属と、第VIII族からの少なくとも2種の金属とを含み、該第VIII族からの少なくとも2種の金属の内の1種は、VIII-1と称される主要プロモータであり、他方(単数または複数)は、共プロモータVIII-i(iは2〜5の範囲である)と称され、前記触媒において、第VIII族からの元素は、原子比[VIII-1/(VIII-1+・・・+VIII-i)]によって規定される割合0.5〜0.85で存在する、方法である。
【0010】
好ましくは、上記方法において、前記切替可能な反応帯域は、以下に規定される工程b)およびc)の連続的繰り返しからなる循環方式での使用のために直列に配置される:
a) 切替可能な反応帯域が、それらの内の1つの不活性化時間および/または閉塞時間に少なくとも等しい期間にわたって全て一緒に用いられる工程;
b) 切替可能な反応帯域の少なくとも1つがバイパスされ、それが含む触媒が再生されおよび/または新鮮な触媒または再生された触媒と置換される工程;
c) 切替可能な反応帯域が全て一緒に用いられる工程であって、先行工程中に触媒が再生されおよび/または置換された切替可能な反応帯域は、それらの最初の位置または切替可能な帯域の内の別の位置に再接続され、前記工程は、切替可能な帯域の1つの不活性化時間および/または閉塞時間に少なくとも等しい期間にわたって続けられる。
【0011】
好ましくは、工程b)中に触媒が再生された切替可能な反応帯域が、工程c)の間に、切替可能な反応帯域の内の別の位置に再接続される。
【0012】
好ましくは、水素化脱金属セクションは、少なくとも1つのバイパス反応帯域も含む。
【0013】
好ましくは、水素化分解セクションおよび/または水素化脱硫セクションは、少なくとも1つのバイパス反応帯域を含む。
【0014】
好ましくは、上記方法において、少なくとも2つの切替可能な反応帯域を含む水素化脱金属セクションは、工程b)およびc)の連続的な繰り返しからなる循環方式での使用のために、少なくとも1種の水素化脱金属触媒を含む少なくとも1つのバイパス水素化脱金属反応器によって構成される少なくとも1つの反応帯域をも、直列に配置されて含み、続く水素化分解セクションおよび強い水素化脱硫セクションは、下記の工程d)およびe)により好ましくは別々にまたは他の方法でバイパス可能である1つ以上の反応帯域からなる:
a) 反応帯域が全て一緒に使用される工程;
b) 切替可能な反応帯域の少なくとも1つがバイパスされ、それが含む触媒は、再生されおよび/または新鮮な触媒または再生された触媒と置換される工程;
c) 反応帯域は全て一緒に使用される工程であって、先行する工程中に触媒が再生されおよび/または置換された切替可能な反応帯域は、それらの最初の位置または切替可能な帯域の内の別の位置に再接続される工程;
d) 水素化脱金属セクションおよび/または水素化分解セクションおよび/または水素化脱硫セクションの反応帯域の少なくとも1つは、触媒が不活性化されたおよび/または閉塞した場合にサイクル中にバイパスされ得、それが含む触媒は、再生されおよび/または新鮮な触媒または再生された触媒と置換される、工程;
e)先行工程中に触媒が再生されおよび/または置換された反応帯域が、それらの最初の位置に再接続される、工程。
【0015】
好ましくは、水素化脱金属セクションは、2つの切替可能な反応帯域を含み、バイパス水素化脱金属反応器によって構成される1つの反応帯域も含み、続く水素化分解セクションおよび水素化脱硫セクションは、バイパス反応帯域からなる。
【0016】
好ましくは、工程b)中に触媒が置換された切替可能な反応帯域は、工程c)の間に、切替反応帯域の内の別の位置に再接続される。
【0017】
好ましくは、前記水素化転化触媒は、単独でまたは混合物として利用される第VIII族および第VIB族からの金属によって形成される群から選択される少なくとも1種の金属と、1種の担体とを含み、該担体は、10〜90重量%の鉄含有ゼオライトと、90〜10重量%の無機酸化物とを含む。
【0018】
好ましくは、前記HDM触媒およびHDS触媒は、アルミナによって構成される担体と、第VIB族からの元素としてのモリブデンと、第VIII族からの元素としてのニッケルおよびコバルトとを含み、該第VIII族からの元素うちの一方は、VIII-1と称される主要プロモータであり、他方は、共プロモータVIII-iと称され、iは2に等しく、これらの触媒において、第VIII族からの元素は、原子比[VIII-1/(VIII-1+VIII-2)]によって規定される割合0.5〜0.85で存在する。
【0019】
好ましくは、前記触媒系は、HDMセクションへの入口にある第1の切替可能な反応帯域(単数または複数)において、および、HDSセクションへの入口にある第1の反応帯域(単数または複数)上で用いられ、前記HDMセクションおよびHDSセクションは、HCKセクションによって分離されている。
【0020】
好ましくは、前記水素化脱硫された流出物の少なくとも一部は、次いで、常圧蒸留によって蒸留され、少なくとも1種の常圧蒸留物留分と常圧残渣とが得られる。
【0021】
重質原油は、現在、固定床方法において処理されている。そのような固定床方法において、供給原料は、1つ以上の反応器の中に直列に配置された複数の触媒床を通過して移動するが、最初の触媒床(単数または複数)は、主にその中の供給原料の水素化脱金属(hydrodemetallization:HDM)並びに部分的に水素化精製を行うために用いられ、それに続く触媒床(単数または複数)は、その中の原油の水素化分解を行うために用いられ、その後に、最後の触媒床(単数または複数)において供給原料の激しい精製、特に、水素化脱硫(hydrodesulphurization:HDS)およびコンラドソン炭素の低減(HDCCR)が行われる。最後の触媒床の後に抽出される流出物は、適切であるならば、トッピング(topping)の際に回収された原油の軽質分と再混合されて、予備精製された合成原油を再構成する。
【0022】
そのような方法では、通常、それぞれのセクションに合わされた特定の触媒が、中程度の操作条件、すなわち、一般的に2〜30MPaの範囲、好ましくは8〜20MPaの範囲の圧力と、一般的に330〜440℃の範囲の温度の下で使用される。
【0023】
固定床方法の利点は、固定床の高い触媒効率によって高い性能が得られることにある。対照的に、従来の予備精製および水素化転化方法では、最良の触媒系が用いられたとしても供給原料中に所定量(例えば、50重量ppm)を超える金属および供給原料中に所定のアスファルテン含量(例えば1.5重量%)が観察され、性能、特に、そのような方法のための操作時間は不十分になり:触媒(特にHDM触媒)は、急速に、金属を装着させられ、それ故に、不活性化する。このことによって、脱金属および脱アスファルテン化性能が低下し、その結果、水素化分解触媒および水素化脱硫触媒の性能低下が加速させられることになる。実際、不純物(主として金属およびアスファルテン)が水素化分解触媒および水素化脱硫触媒の上を高濃度で通過して、それらを迅速に不活性にする。この不活性化を補うために、温度が、場合によっては、活性の喪失を補うように上昇させられるが、これにより、コークスの形成と圧力低下の増大が促され;さらに、供給原料中に含まれるアスファルテン、金属および沈殿物のため、最初の触媒床が極めて急速に閉塞状態になり、次いで、操作トラブルを引き起こしやすくなることが知られている。
【0024】
最良の触媒系が使用されたとしても、0.5重量%超のアスファルテンおよび10重量ppm超の金属を含む供給原料の使用の間に操作期間が大幅に短縮されることが観察された。したがって、その後に、活性喪失のために、最低2〜6月毎に不活性化されたまたは閉塞状態の触媒床を置き換えるために予備精製および水素化転化装置は停止させられなければならない;この操作は、1月超続く場合があり、これは、装置の操作要因をさらに低減させる。
【0025】
さらなる代替は、重質原油を沸騰床水素化転化装置に送ることからなる。実際に、当該タイプの方法は、装置の操作を維持しながら装置中にある触媒の一部を置き換えることができる。対照的に、沸騰床装置は、触媒を流動化された状態に維持するために高い液体生成物再利用で機能して、使用済み触媒が抜き出されることが可能にされる。この理由のため、沸騰床方法の流体力学は、完全攪拌型の開放反応器の流体力学に急速に接近する。これにより、床の効率が大きく降下することになり、これは、より高い温度が用いられなければならず、生じる合成原油の安定性の問題を急速にもたらすことを意味している。固定床方法の利点は、固定床の触媒効率が高いために高い性能が得られるということであり、このことは、より穏やかな条件が採用され得、かつ、生じる合成原油の安定性の問題が回避され得ることを意味している。
【0026】
したがって、本願出願人は、各種の方法における固定床の配列の不利益な点を克服することを検討してきた。
【0027】
本発明の方法は、従来技術の固定床原油の予備精製および水素化転化方法の改良であり、サイクルタイムを相当延長し、これにより、一般的に、少なくとも12月に達し、水素化脱硫および水素化分解における高い性能を有する一方で、生成物の安定性を維持する方法を提案する。
【0028】
本発明の方法は、水素化脱金属(hydrodemetallization:HDM)と呼ばれるセクションと、水素化分解(hydrocracking:HCK)と呼ばれるセクションと、水素化脱硫セクション(hydrodesulphurization:HDS)とからなり、水素化脱金属セクションと呼ばれるセクションは、少なくとも2つの切替可能な反応帯域を含んでいる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、予備精製された合成原油の製造のために、少なくとも0.5重量%のアスファルテンおよび10重量ppm超の金属(ニッケルおよび/またはバナジウム)を含む重質炭化水素原油の予備精製および水素化転化を行う方法であって、前記供給原料は、少なくとも2つの切替可能な反応帯域を含む水素化脱金属セクション中を通過し、次いで、脱金属された流出物の少なくとも一部は、水素化分解セクションにおいて水素化分解され、次いで、水素化分解された流出物の少なくとも一部は、水素化脱硫され、水素化脱金属セクションおよび水素化脱硫セクションは、特定の触媒系を用いる、方法に存し、本発明の利点の一つは、サイクルタイムを相当延長し、それ故に、一般的に、少なくとも12月に達し、水素化脱硫および水素化分解における性能が高い一方で、本発明の方法の水素化脱金属セクションと呼ばれるセクションにおいて少なくとも2つの切替可能な反応帯域を生じさせることにより生成物の安定性を維持することである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の水素化転化方法を説明するフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
より正確には、本発明は、予備精製された合成原油を生産するために、少なくとも0.5重量%のアスファルテンおよび/または10重量ppm超の金属(ニッケルおよび/またはバナジウム)を含む重質炭化水素原油原料の予備精製および水素化転化を行う固定床方法からなり、
・ 前記供給原料は、水素化脱金属セクション(HDM)において水素化脱金属処理を経、該水素化脱金属セクション(HDM)は、少なくとも2つの切替可能な反応帯域を含み、それぞれは、少なくとも1種の水素化脱金属触媒を含み、場合によっては、水素化精製触媒を含み;
・ 次いで、少なくとも一部脱金属され、場合によっては、一部水素化精製された流出物の少なくとも一部が、水素化分解セクション(HCK)において水素化分解され、該水素化分解セクション(HCK)は、少なくとも1種の固定床水素化分解触媒を含み;
・ 次いで、少なくとも部分的に水素化分解された流出物の少なくとも一部が、水素化脱硫セクション(HDS)において水素化脱硫され、該水素化脱硫セクション(HDS)は、少なくとも1種の水素化脱硫触媒を含み;
HDMセクションおよびHDSセクションは、一方はHDM用であり他方はHDS用である少なくとも2種の触媒を含む触媒系の存在下に操作し、HCK工程は、HDMおよびHDS工程の合間に行われ、前記HDMおよびHDS触媒は、多孔性耐火酸化物、好ましくはアルミナによって構成される少なくとも1種の担体と、第VIB族からの少なくとも1種の金属、好ましくはモリブデンと、第VIII族からの少なくとも2種の金属、好ましくはニッケル、コバルトから選択される金属とを含み、その一方は、VIII-1と呼ばれる主要プロモータであり、単数または複数の他方は、共プロモータVIII-iと呼ばれ、ここで、iは2〜5の範囲、好ましくは2であり、前記触媒において、第VIII族からの元素は、原子比[VIII-1/(VIII-1+...+VIII-i)]によって規定される割合0.55〜0.85、より好ましくは0.6〜0.85、一層より好ましくは0.65〜0.85で存在する。
【0032】
「反応帯域」という用語は、1つ以上の反応器、または同一の反応器の中に位置する1つ以上の触媒床を意味している。本明細書において、「バイパス反応帯域」という用語は、切替不能なバイパス帯域を表すために使用されることになる。
【0033】
明らかに、バイパス反応帯域は他の反応帯域から切り離され得、それに含まれる触媒は、再生されるか、および/または新鮮な触媒または再生された触媒と置き換えられてもよい。次いでバイパス反応帯域は、その最初の位置に再結合される。
【0034】
対照的に、切替可能な反応帯域は、触媒の置換後に、それの最初の位置、または別の位置すなわち逆の位置(inverted position)のいずれかに再結合されてもよい。
【0035】
本発明の方法において使用される供給原料は、重質の炭化水素原油、好ましくは全体的に、少なくとも0.5重量%のアスファルテン、好ましくは少なくとも1重量%のアスファルテン、ならびに10重量ppm超の金属、好ましくは50重量ppm超の金属(ニッケルおよび/またはバナジウム)を含むものである。
【0036】
好ましくは、本発明の方法において使用される供給原料は好ましくは塔頂(topped)の重質原油、すなわち、0〜300℃の範囲、好ましくは0〜200℃の範囲に位置する初留点を有する塔頂原油を得るために100〜300℃の範囲、好ましくは100〜200℃の終点を有する軽質のフラクション原油が、例えば、分離ドラム、蒸留カラムまたは別の分離装置において除かれた原油である。
【0037】
本発明によると、水素化脱金属セクションは、少なくとも2つの切替可能な反応帯域を含み、そのそれぞれは、少なくとも1種の水素化脱金属触媒および場合によっては1種の水素化精製触媒を含む。
【0038】
前記切替可能な反応帯域は、有利には、循環方式での使用のために直列に配置され、この循環方式は、以下に規定される工程b)およびc)を連続的に繰り返すことからなる:
a) 切替可能な反応帯域がすべて、それらの内の1つの不活性化の時間および閉塞の時間に少なくとも等しい期間にわたって一緒に使用される、工程;
b) 切替可能な反応帯域の少なくとも1つがバイパスされ、それに含まれる触媒が、再生されおよび/または新鮮な触媒または再生された触媒と置換される、工程;
c) 切替可能な反応帯域がすべて一緒に用いられ、先行工程の間に触媒が再生されかつ/または置換された切替可能な反応帯域が、それらの最初の位置または切替可能な帯域のうちの別の位置に再接続され、前記工程は、切替可能な反応帯域の1つの不活性化の時間および/または閉塞時間に少なくとも等しい期間にわたって継続される、工程。
【0039】
好ましくは、工程b)中に触媒が再生された切替可能な反応帯域は、工程c)の間に、切替可能な反応帯域の内の別の位置に再接続され、すなわち、その結果、その接続は、工程b)の間にバイパスされる前における接続と比較して異なっている。
【0040】
本発明の方法のバリエーションにおいて、水素化脱金属セクションが、少なくとも2つの切替可能な反応帯域に加えて少なくとも1つのバイパス反応帯域も含むことも有利である。
【0041】
好ましくは、水素化分解セクションおよび/または水素化脱硫セクションにおいて少なくとも1つのバイパス反応帯域を使用するのも有利である。したがって、沈殿物、金属またはコークスによって触媒が不活性化させられおよび閉塞された場合にこれらの反応帯域の1以上をバイパスして、再生しおよび/または新鮮な触媒または再生された触媒と置換することも有利には可能である。
【0042】
好ましくは、水素化脱金属セクションおよび/または水素化分解セクションおよび/または水素化脱硫セクションの1以上の反応帯域は、例えば、6月毎に短絡させられて、不活性化したまたは閉塞した触媒床は置換させられ、この操作は、装置の操作因子および方法のサイクルタイムを改善する。
【0043】
このバリエーションの好ましい実施態様によると、少なくとも2つの切替可能な反応帯域を含む水素化脱金属セクションはまた、少なくとも1つのバイパス水素化脱金属反応器によって構成される少なくとも1つの反応帯域を含み、このバイパス水素化脱金属反応器は、少なくとも1種の水素化脱金属触媒および場合による水素化脱硫触媒を、循環方式で使用するように直列に配置されて含み、この循環方式は、工程b)およびc)を連続的に繰り返すことからなり、続く水素化分解および水素化脱硫セクションは、1以上の反応帯域からなり、この反応帯域は、好ましくは、以下の工程d)およびe)により別個にかまたは別個でなくバイパス可能である。
【0044】
a) 切替可能な反応帯域がすべて共に使用される、工程;
b) 切替可能な反応帯域の内の少なくとも1つがバイパスされ、その中に含まれる触媒が再生されるか、および/または新鮮な触媒または再生された触媒と置換される、工程;
c) 切替可能な反応帯域がすべて共に使用される工程であって、先行工程の間に触媒が再生されおよび/または置換された切替可能な反応帯域が、それらの最初の位置または切替可能な帯域の内の別の位置に再接続される、工程;
d) 水素化脱金属セクションおよび/または水素化分解セクションおよび/または水素化脱硫セクションの反応帯域の少なくとも1つが、触媒が不活性化させられおよび/または閉塞された場合に、1サイクルの間にバイパスされ得、それに含まれる触媒が、再生されおよび/または新鮮な触媒または再生された触媒と置換される、工程;
e) 先行工程の間に触媒が再生されおよび/または置換された反応帯域が、それらの最初の位置に再接続される工程。
【0045】
このバリエーションの極めて好ましい実施態様によると、水素化脱金属セクションは、2つの切替可能な反応帯域を含み、さらに、バイパス水素化脱金属反応器によって構成される反応帯域を含み、続く水素化分解および水素化脱硫セクションは、バイパス反応帯域からなっている。
【0046】
このバリエーションの極めて好ましい実施態様によると、工程b)中に触媒が再生された切替可能な反応帯域は、工程c)の間に、最初の位置に再接続され、すなわち、それの接続は、工程b)中にそれがバイパスされる前にそれが有していた接続に対して同一であるようにされる。
【0047】
このバリエーションのより好ましい実施態様によると、工程b)中に触媒が再生された切替可能な反応帯域は、工程c)の間に、切替可能な帯域の内の別の位置に再接続される、すなわち、その接続は、工程b)中にそれがバイパスされていた前にそれが有していた接続に対して異なるようにされる。
【0048】
有利には、供給原料の全体的な移動方向においてさらに上流にある水素化脱金属セクションの反応帯域は、徐々に、金属、コークス、沈殿物および他の種々の不純物を装着され、必要となれば速やかに、および好ましくは、それが含む触媒が金属および種々の不純物により実質的に飽和された場合に切り離される。
【0049】
本発明の方法の別のバリエーションによると、以下の代替の1つを使用して操作するのも有利である:
・ 水素化分解および水素化脱硫セクションの両方が切替可能な反応帯域を含む;
・ セクションの全てが、少なくとも1つの切替可能な帯域および少なくとも1つのバイパス反応帯域を含む;
・ 水素化脱金属セクションが、切替可能な反応帯域、好ましくは2つの切替可能な反応帯域と、再度好ましくは、少なくとも1つのバイパス反応帯域とを含み、HCKおよびHDSセクションは、バイパス反応帯域により構成され;HCKセクション中およびHDSセクション中の前記帯域の少なくとも1つが、バイパス不能である;
・ 水素化脱金属セクションが、切替可能な反応セクションのみ、好ましくは2つの切替可能な反応セクションを含み、水素化分解および水素化脱硫セクションは、バイパスされ得ない単一の反応帯域を含む。
【0050】
種々の反応帯域の切断およびそれらの最初の位置または逆の位置への再接続のためのこの系は、有利には、前記反応帯域の操作中切替えを可能にする特定のコンディショニングセクションによって保証される、すなわち、装置の操作を停止させることがない。特に、中程度の圧力、好ましくは1〜5MPaの範囲、より好ましくは1.5〜2.5MPaの範囲の圧力で操作するシステムは、反応器または切断された反応帯域に対して、洗浄、ストリッピングおよび冷却の操作を提供し得、その後に、使用済み触媒は排出され、次いで、新鮮な触媒または再生された触媒を充填した後に、加熱され、硫化される。適切な技術の加圧/脱圧用の、コック/バルブを有する別のシステムは、有利には、装置を停止させることなく反応帯域が切り替えられることを可能にし得る、すなわち、操作因子に影響を与えることがない。洗浄、ストリッピング、使用済み触媒の排出、新鮮な触媒または再生された触媒による再充填、加熱、硫化の操作の全てが切断された反応器または反応帯域上で行われるからである。
【0051】
好ましい実施態様において、装置は、コンディショニングセクション(図示しない)を含み、このコンディショニングセクションは、循環手段と、加熱手段と、冷却手段と、適切な分離手段とを備えており、これらは、反応セクションとは独立して機能する。このことは、ラインおよびバルブが使用されて、操作中の接続の直前に反応器および/またはバイパスされた反応器中に含まれる新鮮な触媒または再生された触媒を調製する操作、すなわち、切替またはバイパスの間に反応器を予備加熱すること、含まれる触媒を硫化すること、要求される圧力および温度条件下にそれを置くことが行われ得ることを意味している。この反応器の切替またはバイパス操作が、適切なバルブのセットを用いて行われた場合、この同一のセクションはまた、反応セクションの切断の直後に反応器中に含まれる使用済み触媒をコンディショニングする操作、すなわち、要求される条件下に使用済み触媒を洗浄およびストリッピングすること、次いで、この使用済み触媒の排出の操作を行う前に冷却すること、次いで、それを新鮮な触媒または再生された触媒と置換することが行われることを可能にする。
【0052】
(水素化脱金属(HDM)セクション)
好ましくは、供給原料は、好ましくは300〜450℃の範囲、より好ましくは360〜420℃の範囲の温度、5〜30MPaの範囲、好ましくは8〜18MPaの範囲の全圧、200〜2000Nm/mの範囲、好ましくは500〜1500Nm3/の範囲の水素/炭化水素比で水素化脱金属処理を経る。種々のHDM反応帯域のための操作条件は、有利には、異なっているかまたは同一であってよい。
【0053】
水素化脱金属を実施するために、理想的な触媒は、供給原料中のアスファルテンを処理することができると同時に、高い金属保持容量に伴う高い脱金属能力と、コーキングに対する高い抵抗性とを有していなければならない。従来技術において通常使用される触媒は、第VIII族および第VIB族からの金属を、無定形担体、通常はアルミナ上に沈着させられて含み、処理されるべき供給原料中の不純物(アスファルテン、金属など)の量に応じたマクロ孔容積を有している:そのような触媒は当業者に公知である。本願出願人は、特許EP-B-0 098764、EP-B-0-113297およびEP-B-0-113 284、EP-1 579 909において、このような触媒を特定のマクロ孔担体上で開発し、それらは、これらの転換を行うためにまさに所望の量を与えられた。
【0054】
・ 脱金属度:少なくとも10%〜95%;
・ マクロ孔容積(>25nmの径を有する細孔):全細孔容積の5%超;
・ 金属保持容量:一般的には新しい触媒の重量に対して10%超(これは、より長い操作サイクルが生じさせられ得ることを意味している);
・ 390℃超の温度においてさえも高いコーキング抵抗性(これは、コークス生成に起因する圧力降下および活性喪失の増加によって制限されることが多いサイクルタイムを延長することに寄与する)。
【0055】
本発明によると、HDMセクションは、少なくとも2つの切替可能な反応帯域を含み、そのそれぞれは、少なくとも1種の水素化脱金属触媒を含む。
【0056】
特に有利には、水素化脱金属セクションは、平均径が供給原料の流れの方向において減少する連続する2種以上のHDM触媒を含む。言い換えると、最も高い平均径を有する触媒が供給原料を受け、それは、平均径が次第に小さくなる触媒の上を通過する。
【0057】
有利には、HDMセクションは、供給原料の流れの方向に活性が大きくなる連続する少なくとも2種の水素化脱金属触媒で操作する。言い換えると、最も低い活性を有する触媒が、供給原料を受け、それは、活性が次第に高くなる触媒の上を通過する。
【0058】
有利には、HDMセクションにおける種々の触媒の活性は、マトリクス(バリエーションにおいて、とりわけ、用いられた担体、多孔度、比表面積)および/または触媒の配合(バリエーションにおいて、とりわけ、活性金属、活性金属の量、ドーパントのタイプ、ドーパントの量)に応じて変わる。
【0059】
特に有利には、本発明は、HDM反応帯域およびHDS反応帯域のために特定の触媒系(以下においては「グレーディング(grading)」と称する)を使用することを提案するが、それについては以下において、水素化脱硫セクションに関して記載されることになる。
【0060】
(水素化分解(HCK)セクション)
本発明によると、少なくとも部分的に脱金属され、場合によっては部分的に水素化精製された流出物の少なくとも一部、好ましくは全部が、少なくとも1種の固定床水素化転化触媒を含む水素化分解セクションにおいて、好ましく300〜450℃の範囲、より好ましくは380〜420℃の範囲の温度、好ましくは5〜30MPaの範囲、より好ましくは8〜18MPaの範囲の全圧、200〜2000Nm/mの範囲、好ましくは500〜1500Nm/mの範囲の水素/炭化水素比で水素化分解される。
【0061】
水素化分解反応を適切に活性化させるために、前記触媒は、有利には、二機能性触媒でなければならず、それは、芳香族化合物を水素化させることを可能とし、飽和化合物と対応するオレフィンとの間に平衡を引き出すための水素化相、ならびに水素化異性化および水素化分解反応を促進することが可能な酸相とが含まれる。酸機能は、有利には、表面酸性度を有する大きい比表面積(一般的には100〜800m/g)を有する担体、例えば、ハロゲン化アルミナ(特に塩素化またはフッ素化アルミナ)およびホウ素とアルミニウムの酸化物の組合せ、無定形シリカアルミナおよびゼオライトによって提供される。水素化機能は、有利には、元素周期律表の第VIII族からの1種以上の金属、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよび白金によって、または、元素周期律表の第VIB族からの少なくとも1種の金属、例えば、モリブデンまたはタングステンと第VIII族からの少なくとも1種の金属との関連によって供給される。水素化分解触媒は、有利には、重質原油が供給原料として使用されるという事実のため不純物およびアスファルテンに対して高い抵抗性を有しているべきである。
【0062】
好ましくは、用いられる水素化分解触媒は、第VIII族および第VIB族からの金属によって形成される群から選択される少なくとも1種の金属(単独でまたは混合物として用いられる)と、1種の担体とを含み、この担体は、10〜90重量%の鉄含有ゼオライトと、90〜10重量%の無機酸化物とを含む。使用される第VIB族金属は、好ましくは、タングステンおよびモリブデンから選択され、第VIII族金属は、好ましくは、ニッケルおよびコバルトから選択される。水素化分解触媒は、好ましくは、日本特許出願JP-2-289419(IKC)に記載された調製方法を用いて調製される。
【0063】
このタイプの触媒の例は以下の特許に記載されている:JP 2966985、JP 2908959、JP 01 049399およびJP 61 028717、US-4 446 008、US-A-4 622 127、US-6 342 152、EP-A-0 537 500、EP-0 622 118。
【0064】
(水素化脱硫(HDS)セクション)
本発明によると、少なくとも部分的に水素化分解された流出物の少なくとも一部、好ましくは全部が、少なくとも1種の水素化脱硫触媒を含む水素化脱硫セクションにおいて、好ましくは300〜450℃の範囲、より好ましくは360〜420℃の範囲の温度、好ましくは5〜30MPaの範囲、好ましくは8〜18MPaの範囲の全圧、そして好ましくは200〜2000Nm/mの範囲、好ましくは500〜1500Nm/mの範囲の水素/炭化水素比で脱硫される。
【0065】
水素化脱硫およびコンラドソン炭素の低下を促進するために、理想的な触媒は、生成物の強い精製:脱硫、脱窒(場合によっては脱金属が続けられる)およびアスファルテン含量の低下が行われるように強い水素化能力を有していなければならない。
【0066】
マトリクスは、有利には、アルミナ、ハロゲン化アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、クレー(たとえば、天然クレーたとえばカオリンまたはベントナイトから選択される)、マグネシア、酸化チタン、酸化ホウ素、ジルコニア、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、炭(coal)、アルミン酸塩等の単独または混合物として用いられる化合物によって構成される。好ましくは、マトリクスは、当業者に知られている形態のいずれかのアルミナを含む;より好ましくは、マトリクスは、ガンマアルミナである。
【0067】
水素化脱水素(hydrodehydrogenating)元素は、有利には、元素周期律表の第VIB族および第VIII族非貴金属からの元素によって形成される群から選択される。好ましくは、水素化脱水素元素は、モリブデン、タングステン、ニッケル、およびコバルトによって形成される群から選択される。より好ましくは、水素化脱水素元素は、第VIB族からの少なくとも1種の元素と、少なくとも1種の第VIII族非貴金属元素とを含む。この水素化脱水素元素は、例えば、第VIII族からの少なくとも1種の元素(Ni、Co)と、第VIB族からの少なくとも1種の元素(Mo、W)との組合せを含んでもよい。
【0068】
水素化脱硫触媒はまた、第VIIA族からの少なくとも1種の元素(好ましくは塩素、フッ素)および/または第VIIB族からの少なくとも1種の元素(好ましくはマンガン)、場合によっては少なくとも1種の第VB族元素(好ましくはニオブ)を含んでもよい。
【0069】
HDSセクションは、一連の2種以上の水素化脱硫触媒で操作し、その触媒の活性は、供給原料の流れの方向に大きくなる。言い換えると、活性が最も低い触媒が供給原料を受け止め、その供給原料は常に活性が増加していく触媒の上を通過する。
【0070】
有利には、HDSセクションは、一連の2種以上の水素化脱硫触媒で操作し、その触媒の平均径は、供給原料の流れの方向に小さくなる。言い換えると、平均径が最も大きい触媒が供給原料を受け止め、その供給原料は、直径が次第に小さくなっていく触媒の上を通過する。
【0071】
本発明によると、HDMセクションおよびHDSセクションは、一方はHDM用であり他方はHDS用である少なくとも2種の触媒を含む特定の触媒系(本明細書では「グレーディング」と称する)の存在下に操作し、HCK工程は、本発明のHDMおよびHDS工程の間で行われる:
・ 前記HDM触媒およびHDS触媒は、多孔質耐火性酸化物、好ましくはアルミナにより構成される少なくとも1種の担体と、第VIB族からの少なくとも1種の金属、好ましくはモリブデンと、第VIII族からの少なくとも2種の金属、好ましくはニッケルおよびコバルトから選択される金属とを含み、前記第VIII族からの少なくとも2種の金属の一方は、VIII-1と称される主要プロモータであり、他方(単数または複数)は、共プロモータVIII-i(iは、2〜5の範囲であり、好ましくは2に等しい)と称され、前記触媒において、第VIII族からの元素は、原子比[VIII-1/(VIII-1+・・・+VIII-i)]に対して規定される割合0.5〜0.85、好ましくは0.55〜0.85、非常に好ましくは0.6〜0.85、一層より好ましくは0.65〜0.85で存在する。
【0072】
多孔質耐火性酸化物によって構成される担体は、有利には、アルミナ、ハロゲン化アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、クレー(例えば、天然のクレー例えばカオリンまたはベントナイトから選択される)、マグネシア、酸化チタン、酸化ホウ素、ジルコニア、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、炭(coal)、アルミン酸塩等の単独でまたは混合物として用いられる化合物によって構成される。好ましくは、マトリクスは、当業者に知られているいずれかの形態のアルミナを含む;より好ましくは、マトリクスはガンマアルミナである。
【0073】
好ましくは、前記HDM触媒およびHDS触媒は、アルミナによって構成された担体と、第VIB族からの元素としてのモリブデンと、第VIII族からの元素としてのニッケルおよびコバルトとを含み、ニッケルおよびコバルトの一方が、VIII-1と称される主要プロモータであり、他方は共プロモータVIII-iと称され(iは2に等しい)、これらの触媒において、第VIII族からの元素は、原子比[VIII-1/(VIII-1+VIII-2)]によって規定される割合0.5〜0.85で存在する。
【0074】
好ましくは、HDM触媒およびHDS触媒は、この場合にも有利には、リン、ホウ素およびケイ素によって形成される群から選択される少なくとも1種のドーピング元素を前記触媒上に含む。
【0075】
好ましくは、HDM触媒(単数または複数)は、第VIB族金属(単数または複数)を、触媒の総質量に対する第VIB族からの金属(単数または複数)の三酸化物の重量で2〜9%の範囲、好ましくは、3〜7重量%の範囲の含量で有し、第VIII族からの金属の量の合計は、有利には、触媒の総質量に対する第VIII族からの金属の酸化物の重量で0.3〜2%の範囲、好ましくは0.5〜1.5重量%の範囲、より好ましくは0.6〜1.5重量%の範囲である。
【0076】
好ましくは、前記HDM触媒(単数または複数)中の主要プロモータ(VIII-1)の量、好ましくはコバルトの量は、総触媒質量に対する第VIII族からの金属の酸化物の重量で0.25〜1.7%の範囲であり、共プロモータ(VIII-2)の量、好ましくは、ニッケルの量は、有利には、総触媒質量に対する第VIII族金属の酸化物の重量で0.05〜1%である。
【0077】
好ましくは、HDM触媒(単数または複数)はまた、有利には、リンおよびホウ素から選択されるドーピング元素を、総触媒質量に対する三酸化ホウ素および五酸化リンの重量で0.1〜2.5%の範囲、好ましくは0.5〜2重量%の範囲の量で含む。非常に好ましくは、ドーピング元素はリンである。
【0078】
好ましくは、前記HDM触媒の全細孔容積は、有利には少なくとも0.5mL/g、好ましくは少なくとも0.6mL/g、極めて好ましくは少なくとも0.65mL/gであり、前記HDM触媒のマクロ孔容積は、有利には、全細孔容積(total pore volume:TPV)の5%超、好ましくは10%超、一層より好ましくは20%超であり、メソ細孔径は、有利には、10〜36nmの範囲、より好ましくは10〜20nmの範囲である。
【0079】
好ましくは、HDS触媒(単数または複数)は、第VIB族金属(単数または複数)を、総触媒質量に対する第VIB族からの金属(単数または複数)の三酸化物の重量で厳密に9%超かつ17%未満、好ましくは10〜16重量%の範囲、より好ましくは12〜16重量%の範囲の含量で有し、第VIII族金属の合計含量は、有利には、金属の総質量に対する第VIII族金属の酸化物の重量で厳密に2%超かつ5%未満、好ましくは厳密に2%超かつ4%未満、好ましくは2.5〜4重量%の範囲である。
【0080】
好ましくは、前記HDS触媒(単数または複数)の主要プロモータ(VIII-1)の量、好ましくは、コバルトの量は、触媒の総質量に対する第VIII族金属の酸化物の重量で1〜4.5%の範囲であり、共プロモータ(VIII-2)の量、好ましくは、ニッケルの量は、有利には、総触媒質量に対する第VIII族金属の酸化物の重量で0.15〜2.5%の範囲である。
【0081】
水素化脱硫触媒は、有利には、リンを含み得る。この化合物は、とりわけ、HDS触媒に2つの主要な利点を提供し、第1の利点は、前記触媒の調製、特に、例えばニッケルおよびモリブデンをベースとする溶液からの水素化脱水素元素の含浸の間の触媒の調製がより容易になることである。この化合物による第2の利点は、触媒の水素化活性が向上する点にある。
【0082】
好ましくは、前記HDS触媒(単数または複数)はまた、有利には、リンおよびホウ素から選択されるドーピング元素を、総触媒質量に対する三酸化ホウ素および五酸化リンの重量で0.5〜6%の範囲、好ましくは1.5〜5重量%の範囲の量で含む。非常に好ましくは、ドーピング元素はリンである。
【0083】
水素化脱硫触媒はまた、第VIIA族からの少なくとも1種の元素(好ましくは塩素、フッ素)および/または第VIIB族からの少なくとも1種の元素(好ましくはマンガン)、場合によっては、少なくとも1種の第VB族元素(好ましくはニオブ)を含み得る。
【0084】
好ましくは、前記HDS触媒の全細孔容積は、有利には少なくとも0.3mL/g、好ましくは少なくとも0.4mL/gであり、そのマクロ孔容積は、全細孔容積(TPV)の有利には10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満であり、メソ細孔径は、有利には5〜20nmの範囲、好ましくは6〜15nmの範囲である。
【0085】
有利な実施態様によると、前記触媒系は、HDMセクションへの入口のための第1の切替可能な反応帯域(単数または複数)上およびHDSセクションへの入口のための第1の反応帯域(単数または複数)上で用いられ、前記HDMセクションおよびHDSセクションは、本発明の方法に従って、HCKセクションによって分離される。
【0086】
上述の触媒系を構成する触媒は、有利には、当業者に知られているあらゆる方法を用いて得られてよい。使用される担体は、一般的には0.5〜10mmの範囲、好ましくは0.8〜3.2mmの範囲の径を有する押出物によって構成される。これらの押出物に対して、または押出成形の前に、好ましくは、含浸または共混練によって、最終触媒の触媒金属または触媒金属の化合物の全部または一部は、場合によっては、あらゆる既知方法を用いて、調製のあらゆる段階で導入され得る。行われる従来の含浸は、当業者に周知である「乾式」含浸と称されるものである。それは、単一工程において、最終触媒の構成要素の全部を含有する溶液、すなわち、少なくとも1種のリンまたはホウ素化合物と、元素周期律表の第VIII族からの少なくとも2種の金属の少なくとも2種の化合物と、第VIB族からの少なくとも1種の金属の少なくとも1種の化合物とを含有する溶液を用いて行われ得る。
【0087】
第VIII族元素源として溶液に導入されてもよい有利な前駆体は、クエン酸塩、シュウ酸塩、炭酸塩、ヒドロキシ炭酸塩、水酸化物、リン酸塩、硫酸塩、アルミン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、酸化物、硝酸塩、ハロゲン化物たとえば塩化物、フッ化物、臭化物、酢酸塩、またはここに記載された前駆体の任意の混合物である。当業者に周知である第VI族元素源に関して、有利な例は、モリブデンおよびタングステンについてのもの:酸化物、水酸化物、モリブデン酸およびタングステン酸およびそれらの塩、特にアンモニウム塩、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸アンモニウム、リンモリブデン酸、リンタングステン酸およびそれらの塩である。好ましくは、酸化物またはアンモニウム塩が用いられ、例えば、モリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウムまたはタングステン酸アンモニウムである。好ましいリン源は、オルトリン酸であるが、塩およびエステル、例えば、リン酸アルカリ、リン酸アンモニウム、リン酸ガリウム、またはリン酸アルキルも適している。亜リン酸、例えば次亜リン酸、リンモリブデン酸およびその塩、リンタングステン酸およびその塩も有利には使用され得る。
【0088】
ホウ素源は、ホウ酸、好ましくはオルトホウ酸(HBO)、二ホウ酸アンモニウムもしくは五ホウ酸アンモニウム、酸化ホウ素、またはホウ酸エステルであってよい。
【0089】
担体は、一般的には、成形され、焼成され、その後に含浸が行われる。成形は、有利には、押出、ペレット化、油滴法、回転板造粒によってまたは当業者に周知である任意の他の方法を用いて行われる。焼成処理は、有利には、乾燥空気または湿潤空気中500〜1000℃で行われ得る。
【0090】
当業者が必要であると判断したならば、有機的性質を有するキレート化剤が、有利には、溶液に導入され得る。生成物は、その後、一般的には、熟成させられ、乾燥させられ、酸化雰囲気中、例えば、空気中、通常約300〜600℃、好ましくは350〜550℃の温度で焼成される。
【0091】
含浸はまた、有利には、少なくとも2工程において行われ得る。したがって、種々の要素が、有利には、連続的に含浸させられ得るか、または、要素の一つが、複数の順序において含浸させられ得る。行われる含浸の一つは、特に、最終触媒の構成要素に加えて当業者が導入することを望むかもしれない有機化合物を使用するように作用し得る。
【0092】
最終的な触媒の構成要素の溶液は、有利には、水性溶媒中で調製され得るが、水−有機溶媒混合物中または高純度の有機溶媒中であってもよい。エタノールまたはトルエンが非水性溶媒の例として挙げられ得る。この溶液のpHは、随意に酸を加えることによって改変され得る。
【0093】
本発明は、触媒の1種以上が焼成されていないような場合において適用することができる。この場合、含浸の後、触媒は、単純にかつ有利には乾燥させられる。
【0094】
本発明の方法からの水素化脱硫された流出物の少なくとも一部は、次いで、常圧蒸留によって蒸留され、少なくとも1種の常圧蒸留物留分と常圧残渣とが得られる。
【0095】
好ましくは、常圧残渣の少なくとも一部は、本方法の反応帯域の1つへの入口、好ましくは、操作しているHDMセクションの第1の切替可能な反応帯域への入口にリサイクルされ、出発原油の重質フラクションの転化率が向上させられる。
【0096】
別の有利な実施態様によると、常圧蒸留帯域からの常圧残渣の少なくとも一部は、減圧蒸留帯域に送られ、そこから、真空蒸留物および真空残渣が回収される。真空残渣の少なくとも一部は、次いで、有利には、本発明の方法の反応帯域の1つへの入口、好ましくは操作しているHDMセクションの第1の切替可能な反応帯域への入口にリサイクルされる。これはまた、出発原油の重質フラクションの転化率を増加させることができる。
【0097】
本発明の方法の別のバリエーションによると、常圧蒸留物の少なくとも一部は、本方法の反応帯域の1つへの入口に、好ましくは、操作しているHDMセクションの第1の切替可能な反応帯域への入口にリサイクルされる。
【0098】
本発明の方法の別のバリエーションによると、本方法の反応帯域の1つの入口に、外部の炭化水素含有流出物、好ましくは別の精製装置に由来するもの、例えば、残渣(例えば常圧残渣または真空残渣のいずれか)の一部、直留蒸留に由来するもの、原油の初期の分留に由来するもの、または、別の精製装置からの残渣を注入することも可能である。
【0099】
本方法の反応帯域の1つへの入口に送られる常圧蒸留物および/または真空蒸留物および/または常圧残渣および/または真空残渣の量は、好ましくは、最終の供給原料に対する重量で1〜80%、好ましくは5〜45%、より好ましくは約10〜30%を示す。
【0100】
図1は、図示により本発明を説明する。
【0101】
この図において、本発明の方法は、3つのセクション(HDMセクション、HCKセクション、およびHDSセクション)で実施され、それぞれのセクション自体は、5つの反応帯域からなっている。先に説明されたように、これらの反応帯域は、1つ以上の異なる反応器か、または同一の反応器の中に位置する1つ以上の触媒床からなっていてよい。
【0102】
HDMセクション(M1〜M5)は、2つの切替可能な反応帯域(M1、M2)と、それに続く3つのバイパス反応帯域(M3、M4、M5)とからなっている。図面の記載を簡単にするために、3つのセクションは、同一の方式でまとめられている。
【0103】
図1において、図を必要以上に複雑にしないために、種々の反応帯域並びに内部または外部のリサイクルのための入口を分離する、バイパスするまたは順序を入れ替えることができるバルブも示されていない。同様に、触媒のコンディショニングセクションは、反応帯域とは独立して機能する循環手段、加熱手段、冷却手段および適切な分離手段を備えており、このコンディショニングセクションは、接続される直前にバイパスされた反応帯域中に含まれる新鮮な触媒または再生された触媒を調製する操作を行うためにラインおよびバルブが装置の操作と共に用いられ得ることを意味するが、これも示されていない。1つ以上の反応帯域の上流に石油留分をリサイクルするまたは外部の石油留分を注入することができるラインも示されていない。
【0104】
開始構成において、供給原料はライン(2)を介してHDMセクションの中に到達し、そこでライン(1)からの水素と混合される。この混合物は、反応ゾーンM1に入り、流出物は、ライン(3)を介してこの反応帯域を出て、このライン(3)はそれを反応帯域M2に搬送する。反応帯域M2から、炭化水素および水素が、ライン(4)を介して通過して反応帯域M3に入り、次いでライン(5)を介して通過して反応帯域M4に入り、そしてライン(6)を介して通過して反応帯域M5に入る。次いで混合物は、ライン(7)を介してこの反応帯域M5を出る。この流出物の少なくとも一部(一般的には全部)が、ライン(8)を介してHCKセクションへ送られるが、ある程度の残留流出物はライン(9)を介して排出される。
【0105】
依然としてこの構成において、反応混合物は、ライン(22)を介してHCKセクションに入り、反応帯域K1に供給する。この反応帯域K1からの流出物は、ライン(23)を介して通過し反応帯域K2に入る。反応帯域K2から、炭化水素および水素の混合物が、ライン(24)を介して通過して反応帯域K3に入り、次いでライン(25)を介して通過して反応帯域K4に入り、そしてライン(26)を介して通過して反応帯域K5に入る。次いで混合物は、ライン(27)を介してこの反応帯域K5を出る。この流出物の少なくとも一部(一般的には、全部)は、ライン(28)を介してHDSセクションに送られるが、ある程度の残留流出物は、ライン(29)を介して排出される。
【0106】
次に、反応混合物は、ライン(42)を介してHDSセクションに入り、ライン(42)は反応帯域S1に供給する。この反応帯域S1からの流出物は、ライン(43)を介して通過して反応帯域S2に入る。反応帯域S2から、炭化水素および水素の混合物は、ライン(44)を介して通過して反応ゾーンS3に入り、次いでライン(45)を介して通過して反応帯域S4に入り、そしてライン(46)を介して通過して反応ゾーンS5に入る。次いで混合物は、ライン(47)を介してこの反応帯域S5を出る。合成原油は、ライン(48)を介して回収される。
【0107】
図1の構成では、各セクション(HDMセクション、HCKセクション、およびHDSセクション)において2つの切替可能な反応帯域(M1、M2またはK1、K2またはS1、S2)および3つのバイパス反応帯域(M3〜M5、またはK3〜K5、またはS3〜S5)を用い、少なくとも1種の触媒をそれぞれ含む2つの切替可能な反応帯域は、以下に規定される工程b)およびc)の連続的な繰り返しからなる循環方式での使用のために直列に配置され、別々にバイパスされてもされなくてもよい1つ以上の反応帯域は、下記に定義される工程d)およびe)に従う。HDMセクションについて、図1に示された本発明の水素化転化方法の操作態様は、以下の工程を含む:
・ HDMセクションの反応帯域M1〜M5が全て一緒に、それらの内の1つの不活性化の時間および/または閉塞時間に少なくとも等しい期間にわたって使用される工程:流体の流れは、開始構成であるとして上記に記載された通りである;
・ 第1の切替可能な反応帯域M1がバイパスされ、それに含まれる触媒が再生されるかおよび/または新鮮な触媒または再生された触媒と置換される工程であって、その間、反応混合物はライン(11)を介して通過して切替可能な反応帯域M2に入り、ライン(4)を介して反応帯域M3の方に出て、ライン(5)を介して通過して反応帯域M4に入り、ライン(6)を介して通過して反応帯域M5に入り、その後、ライン(7)を介してHDMセクションを出る、工程;
・ HDMセクションの反応帯域が一緒に使用される工程であって、先行工程中に触媒が再生され、および/または置換された反応帯域M1が、反応帯域M2の後ろにライン(12)を介して再接続され(逆位置の再接続)、この帯域からの流出物は、ライン(13)を介して反応帯域M3に送られ、前記工程は、反応帯域の1つの不活性化時間および/または閉塞時間に長くとも等しい期間にわたって続けられる、工程;
・ 触媒が不活性化したおよび/または閉塞した場合にHDMセクションのバイパス反応帯域M3、M4およびM5の少なくとも1つがそれぞれライン(14)、(15)および/または(16)を介してバイパスされ、含まれる触媒が再生されおよび/または新鮮な触媒または再生された触媒と置換される;例えば、触媒M3がバイパスされ;次いで、機能する時の最後の切替可能な反応帯域からの流出物が、ライン(14)を介して通過して直接的に帯域M4に入り、帯域M3からの触媒は、再生されおよび/または新鮮な触媒または再生された触媒と置換される、工程;
・ 先行する工程の間に触媒が再生されおよび/または置換された反応帯域が、それらの最初の位置に再接続される工程;例えば、帯域M3からの触媒が再生されたならば、帯域M3が再接続され、操作中の最後の切替可能な帯域からの流出物は、ライン(4)を介して通過して帯域M3に入り、ライン(14)が閉じられる。
【0108】
HCKセクションおよびHDSセクションにおいても、切替可能な反応帯域およびバイパス反応帯域の操作態様は同じである。したがって、説明は完全に類似するので、繰り返さない。本発明者らは、図1を参照しながら関連する部分のみを列挙することにする。
【0109】
・ HCKセクション:切替ライン:(31)、(32)、(33);バイパスライン:(34)、(35)、(36);
・ HDSセクション:切替ライン:(51)、(52)、(53);バイパスライン;(54)、(55)、(56)。
【0110】
切替可能な反応帯域またはバイパス反応帯域の機能は、図1の記載から容易に理解されるであろう。図1は、例証の目的で、セクションにおけるこれらの帯域の特定の配列を示す。すべての組合せが可能である。先に示されたように、好ましい態様は、HDMセクションのための2つの切替可能な反応帯域と、HCKセクションのための1つまたは2つのバイパス反応帯域と、HDSセクションのための1つまたは2つのバイパス反応帯域とを含む(または、それらからなる)。
【符号の説明】
【0111】
1〜9、11〜16、22〜29、31〜36、42〜49、52〜56 ライン
M1、M2 HDMセクションの切替可能な反応帯域
M3〜M5 HDMセクションのバイパス反応帯域
K1、K2 HCKセクションの切替可能な反応帯域
K3〜K5 HDMセクションのバイパス反応帯域
S1、S2 HDSセクションの切替可能な反応帯域
S3〜S5 HDSセクションのバイパス反応帯域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備精製された合成原油の製造のために、少なくとも0.5重量%のアスファルテンおよび10重量ppm超の金属(ニッケルおよび/またはバナジウム)を含む重質炭化水素原油供給原料の予備精製および水素化転化を行う固定床方法であって、
・ 前記供給原料は、水素化脱金属(HDM)セクションにおいて水素化脱金属処理を経、該水素化脱金属(HDM)セクションは、少なくとも2つの切替可能な反応帯域を含み、該切替可能な反応帯域は、それぞれ、少なくとも1種の水素化脱金属触媒を含み;
・ 次いで、少なくとも部分的に脱金属された流出物の少なくとも一部が、水素化分解(HCK)セクションにおいて水素化分解され、該水素化分解(HCK)セクションは、少なくとも1種の固定床水素化分解触媒を含み;
・ 次いで、少なくとも部分的に水素化分解された流出物の少なくとも一部が、水素化脱硫セクションにおいて水素化脱硫され、該水素化脱硫セクションは、少なくとも1種の水素化脱硫触媒を含み;
HDMセクションおよびHDSセクションは、一方はHDM用であり他方はHDS用である少なくとも2種の触媒を含む触媒系の存在下に操作し、HCK工程は、HDM工程およびHDS工程の間に行われ、前記HDM触媒およびHDS触媒は、多孔質耐火性酸化物によって構成される少なくとも1種の担体と、第VIB族からの少なくとも1種の金属と、第VIII族からの少なくとも2種の金属とを含み、該第VIII族からの少なくとも2種の金属の内の1種は、VIII-1と称される主要プロモータであり、他方(単数または複数)は、共プロモータVIII-i(iは2〜5の範囲である)と称され、前記触媒において、第VIII族からの元素は、原子比[VIII-1/(VIII-1+・・・+VIII-i)]によって規定される割合0.5〜0.85で存在する、方法。
【請求項2】
前記切替可能な反応帯域は、以下に規定される工程b)およびc)の連続的繰り返しからなる循環方式での使用のために直列に配置される、請求項1に記載の方法:
a) 切替可能な反応帯域が、それらの内の1つの不活性化時間および/または閉塞時間に少なくとも等しい期間にわたって全て一緒に用いられる工程;
b) 切替可能な反応帯域の少なくとも1つがバイパスされ、それが含む触媒が再生されおよび/または新鮮な触媒または再生された触媒と置換される工程;
c) 切替可能な反応帯域が全て一緒に用いられる工程であって、先行工程中に触媒が再生されおよび/または置換された切替可能な反応帯域は、それらの最初の位置または切替可能な帯域の内の別の位置に再接続され、前記工程は、切替可能な帯域の1つの不活性化時間および/または閉塞時間に少なくとも等しい期間にわたって続けられる。
【請求項3】
工程b)中に触媒が再生された切替可能な反応帯域が、工程c)の間に、切替可能な反応帯域の内の別の位置に再接続される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水素化脱金属セクションは、少なくとも1つのバイパス反応帯域も含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
水素化分解セクションおよび/または水素化脱硫セクションは、少なくとも1つのバイパス反応帯域を含む、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法であって、少なくとも2つの切替可能な反応帯域を含む水素化脱金属セクションは、工程b)およびc)の連続的な繰り返しからなる循環方式での使用のために、少なくとも1種の水素化脱金属触媒を含む少なくとも1つのバイパス水素化脱金属反応器によって構成される少なくとも1つの反応帯域をも、直列に配置されて含み、続く水素化分解セクションおよび強い水素化脱硫セクションは、下記の工程d)およびe)により好ましくは別々にまたは他の方法でバイパス可能である1つ以上の反応帯域からなる、方法:
a) 反応帯域が全て一緒に使用される工程;
b) 切替可能な反応帯域の少なくとも1つがバイパスされ、それが含む触媒は、再生されおよび/または新鮮な触媒または再生された触媒と置換される工程;
c) 反応帯域は全て一緒に使用される工程であって、先行する工程中に触媒が再生されおよび/または置換された切替可能な反応帯域は、それらの最初の位置または切替可能な帯域の内の別の位置に再接続される工程;
d) 水素化脱金属セクションおよび/または水素化分解セクションおよび/または水素化脱硫セクションの反応帯域の少なくとも1つは、触媒が不活性化されたおよび/または閉塞した場合にサイクル中にバイパスされ得、それが含む触媒は、再生されおよび/または新鮮な触媒または再生された触媒と置換される、工程;
e)先行工程中に触媒が再生されおよび/または置換された反応帯域が、それらの最初の位置に再接続される、工程。
【請求項7】
水素化脱金属セクションは、2つの切替可能な反応帯域を含み、バイパス水素化脱金属反応器によって構成される1つの反応帯域も含み、続く水素化分解セクションおよび水素化脱硫セクションは、バイパス反応帯域からなる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程b)中に触媒が置換された切替可能な反応帯域は、工程c)の間に、切替反応帯域の内の別の位置に再接続される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記水素化転化触媒は、単独でまたは混合物として利用される第VIII族および第VIB族からの金属によって形成される群から選択される少なくとも1種の金属と、1種の担体とを含み、該担体は、10〜90重量%の鉄含有ゼオライトと、90〜10重量%の無機酸化物とを含む、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記HDM触媒およびHDS触媒は、アルミナによって構成される担体と、第VIB族からの元素としてのモリブデンと、第VIII族からの元素としてのニッケルおよびコバルトとを含み、該第VIII族からの元素うちの一方は、VIII-1と称される主要プロモータであり、他方は、共プロモータVIII-iと称され、iは2に等しく、これらの触媒において、第VIII族からの元素は、原子比[VIII-1/(VIII-1+VIII-2)]によって規定される割合0.5〜0.85で存在する、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記触媒系は、HDMセクションへの入口にある第1の切替可能な反応帯域(単数または複数)において、および、HDSセクションへの入口にある第1の反応帯域(単数または複数)上で用いられ、前記HDMセクションおよびHDSセクションは、HCKセクションによって分離されている、請求項1または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水素化脱硫された流出物の少なくとも一部は、次いで、常圧蒸留によって蒸留され、少なくとも1種の常圧蒸留物留分と常圧残渣とが得られる、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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