予備還元塊成化物の製造方法

【課題】還元ガスを安定的かつ効率的に製造することにより、予備還元物の金属化率を向上でき、得られる予備還元塊成化物を高炉原料として用いた際にコークス比を大幅に低減できる予備還元塊成化物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ランス34を有する竪型のガス化炉33を用い、この炉下部に固体状炭素物質31からなる充填層を形成し、ランス34から充填層の上端面に向けて酸素を70体積%以上含有するガス35を吹き込んで還元ガス36を製造し、還元ガス36とともに鉄鉱石類45を予備還元炉44に供給し、予備還元炉44内の最高温度を973K以上に加熱して鉄鉱石類45を予備還元し、金属化率が0.4以上0.8以下である予備還元物46とし、予備還元物46を粗粒と微粒とに分級し、微粒状予備還元物49を塊成化して塊成化物51とし、該塊成化物を分級して粗粒の塊成化物52からなる予備還元塊成化物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化炉を用いて固体状炭素物質から還元ガスを製造し、該還元ガスにより鉄鉱石類に含まれる酸化鉄を予備還元して予備還元物とし、該予備還元物から予備還元塊成化物を製造する方法に関する。更に詳しくは、還元ガスを安定的かつ効率的に製造することにより、予備還元物の金属化率を向上でき、得られる予備還元塊成化物を高炉原料として用いた際にコークス比を大幅に低減できる予備還元塊成化物の製造方法に関する。
【0002】
なお、別に記載がない限り、本明細書における用語の定義は次のとおりである。
「固体状炭素物質」:例えば、バイオマスや廃棄物、プラスチック廃棄物(廃プラプラスチック)、自動車や家電製品のシュレッターダスト、廃木材、石炭(特に非粘結炭)、RDF、RPFといった固体状の炭化水素含有物質を、少なくとも1種類以上を含む物質である。但し、「RDF」は、「Refuse Derived Fuel」の略であり、廃棄物に由来する燃料を意味し、「RPF」は、「Refuse Plastic and Paper Fuel」の略であり、廃棄物のうちで古紙および廃プラスチック類を主原料とした燃料を意味する。
「鉄鉱石類」:鉄分の総含有率が50質量%以上の鉱石であり、微粒状の鉄鉱石や製鉄ダストから製造され、鉄分の総含有率が50質量%以上である焼結鉱や塊鉱石、ペレットを含む。
【背景技術】
【0003】
[高炉法の問題]
現在、鉄の多くは、高炉法により生産されている。高炉法では、鉄原料であり酸化物である鉄鉱石が還元材により還元し、かつ溶融することによって溶銑を製造している。高炉に投入する鉄原料および還元材には、一定レベル以上の強度を保つとともに、炉内通気性を確保できる粒度(粒径)を有することが要求される。そのため、還元材として使用する炭材は、強粘結炭を多く配合して乾留したコークスに依存し、鉄原料は、塊状化された焼結鉱に多くを依存している。
【0004】
即ち、高炉法による溶銑の生産は、原料には高い品質が要求されるので原料コストが高い。また、コークス製造設備、焼結設備等の高炉以外の付帯設備を設置する必要があり、設備コストも高い。更に、高炉の内部では、酸化物である鉄鉱石を還元するために、膨大なエネルギーおよび炭材を消費しており、結果的に、日本における炭酸ガス排出量の15〜20%を鉄鋼業が占めている。
【0005】
また、高炉法による溶銑の生産では、近年、鉄原料や還元材といった製鉄用原燃料の品質低下や価格高騰が問題となっている。炭酸ガス排出量を低減しつつ、製鉄用原燃料の品質低下や価格高騰に対応するため、バイオマスといった固体状の炭化水素含有物質を有効活用することは重要である。しかし、炭化水素含有物質を含む固体状炭素物質を加熱処理すると、573〜973Kの温度域で炭化水素系ガスが大量発生し、その冷却過程で液状化して炉の配管に付着する等の問題があり、十分に活用されていない。
【0006】
一方、高炉法による溶銑の生産では、比較的安価な微粒状の鉄鉱石や製鉄ダストを原料とする鉄鉱石類から、該鉄鉱石類に含まれる酸化鉄の一部を予備還元炉で予備還元して金属鉄とすることにより、予備還元物を製造し、高炉の鉄原料として利用することが検討されている。予備還元物に含まれる金属鉄は高炉内での還元を必要としないので、大幅にコークス比を低減でき、これにより炭酸ガス排出量の低減とともに、生産性の向上が期待できる。予備還元物の製造は、プラントが安価であるとともに運転が容易であり、更に小規模でも立地が可能という特徴を背景に拡大を続けている。しかし、予備還元物の製造においては、予備還元炉で鉄鉱石類を予備還元するために還元ガスが必要である。
【0007】
従来の還元ガスの製造方法には、天然ガスから製造する方式と、炭化水素含有物質から製造する方式とがあり、それぞれの方式による還元ガスの製造方法とその問題点を以下に説明する。
【0008】
[天然ガスから製造する方式]
非特許文献1には、代表的な天然ガスから還元ガスを製造する方式のプロセスが示されている。この方法では、還元ガスを製造するため、天然ガス(主成分はメタン)を水蒸気または炭酸ガスと接触させることにより、1073〜1173K程度で下記反応式(1)および(2)に示す天然ガスの改質反応を生起させ、COおよび水素を生成する。
CH4+H2O→CO+3H2−205kJ/mol ・・・(1)
CH4+CO2→2CO+2H2−247kJ/mol ・・・(2)
【0009】
天然ガスの改質反応によって生成した水素リッチガスを鉄鉱石類の還元ガスとして使用し、得られた予備還元物を高炉の鉄原料として用いれば、高炉での鉄生産におけるコークス使用量および炭酸ガス排出量は大幅に低減できる。しかし、上記反応式(1)および(2)に示す天然ガスの改質反応は吸熱反応である。そのため、外部からの熱補償が必要である。また、天然ガスから還元ガスを製造する方式では、改質反応を促進させるため、高価なニッケル系触媒が使用されている。しかし、ニッケル系触媒は、天然ガスに含まれる硫黄による被毒、触媒上へのカーボン析出、触媒の焼結化等が原因となり、劣化する問題がある。
【0010】
天然ガスの改質反応によって製造される還元ガスと同種のガスは、石炭のガス化によっても製造可能である。特許文献1には、石炭をガス化して還元ガスを製造し、該還元ガスを利用して鉄鉱石から還元鉄を製造する方法が示されている。しかし、特許文献1に示される還元ガスの製造方法は、石炭を使用することから、製造された還元ガスを使用して鉄鉱石類を予備還元物としても、炭酸ガス排出量の低減には繋がらない。
【0011】
[炭化水素含有物質から製造する方式]
特許文献2では、炭化水素含有物質であるバイオマス、廃プラスチックが還元ガスの原料として利用される。特許文献2は、石炭に加えてバイオマスと廃プラスチックの一方もしくは両方を含む原料、または、石炭を、ガス化炉内で酸素により部分燃焼および熱分解してガス化させて還元ガスを製造する方法を示す。製造された還元ガスは冷却された後、鉄鉱石が充填されているシャフト炉に送り込まれ、該還元ガスがシャフト炉内を上昇する過程で、鉄鉱石を予備還元する。
【0012】
バイオマスから発生した炭酸ガスは炭酸ガス排出量にカウントされないので、高炉法により溶銑を生産する際にバイオマスを由来とする還元ガスを使用できれば、炭酸ガス排出量を大幅に低減できる。また、バイオマスや廃プラスチックのように高炉に直接投入することが困難な劣質原料を、燃料のみならず還元材として使用できるというメリットもある。
【0013】
しかし、特許文献2に示される還元ガスの製造方法には以下の問題がある。特許文献2に示される還元ガスの製造方法において使用される原料は、ガス化バーナーから酸素とともにガス化炉に吹き込まれる。そのため、原料に用いる石炭は、粉砕した微粉炭に限定されている。即ち、粉砕にかかるエネルギーおよびコストを考慮しなければならない。
【0014】
また、特許文献2に示される還元ガスの製造方法は、微粉炭に加えてバイオマスと廃プラスチックの一方もしくは両方を含ませることが可能とあるが、バイオマスおよび廃プラスチックは粉状にしてからの使用となる。そのため、原料に加えるバイオマスは、粉砕が容易で、気流輸送が容易な木質系および農業系バイオマスに限定されてしまう。しかし、高炉法による溶銑の生産で必要とされる還元ガスの量は膨大である。従って、少しでも多種類のバイオマスを使用することが望ましいと考えられ、使用可能なバイオマスの種類が、粉砕が容易で、気流輸送が容易な木質系および農業系バイオマスに限定されることは不利である。
【0015】
特許文献2に示される還元ガスの製造方法では、石炭やバイオマスといった原料はガス化バーナーで燃焼される。この場合は、原料がバーナー火点で急速に加熱され、部分燃焼および熱分解してガス化することにより、COおよびH2が生成する。しかし、原料が火点付近に保持される時間は極めて短く、原料が十分に部分燃焼または熱分解してガス化することなく火点の外に出てしまうことが考えられる。このため、特許文献2に示される還元ガスの製造方法では、原料に含まれる炭素の多くが、火点を通過した後も固体物のままで存在することとなり、石炭やバイオマスに含まれる可燃物の還元ガス(CO、H2)への収率が低下する。
【0016】
還元ガスの製造効率を向上させる観点から、石炭やバイオマスといった原料はガス化バーナーで燃焼させるよりも、原料によって充填層をガス化炉内に形成し、該充填層の内部に酸素を吹き込むタイプのガス化炉を用いることが好ましい。充填層を形成させるタイプのガス化炉であれば、原料を粉砕する必要がなくなるとともに、使用できるバイオマスの種類が増加するというメリットもある。
【0017】
また、バイオマスや石炭といった原料に含まれる不燃分は、完全無害化、更にはリサイクル利用すべきである。そのための手段として、不燃分を溶融してスラグ化することが望ましい。前記特許文献2に示される還元ガスの製造方法でも、原料に含まれる不燃分は溶融して、ガス化炉下部から落下し水槽で固化スラグとすると記載されている。しかし、前記特許文献2には、具体的な溶融スラグの回収方法については記載されていない。
【0018】
ガス化炉内で生成した溶融スラグは、安定的に炉外に排出させることが重要である。溶融スラグが安定排出せず、ガス化炉内に残留した場合、様々なトラブルが発生する。例えば、ガス化炉内の溶融スラグの湯面レベルが上昇し、酸素や微粉炭等を吹き込むための供給口よりも高いレベルに上昇した場合、供給口が閉塞され、酸素や微粉炭の吹き込みが不安定化する。更には、供給口の高さレベルに溜まった溶融スラグが、供給酸素の突出圧によって、ガス化炉上部に接続されているダクトまでスプラッシュし、ダクトが閉塞される危険も考えられる。
【0019】
また、溶融スラグを、安定的に炉外に排出させるためには、炉外に排出されるまでの溶融スラグの温度は1623K以上に維持する必要がある。そのためのガス化炉のタイプとしては、前記特許文献2のように石炭やバイオマスといった原料をガス化バーナーで燃焼させるよりも、原料によって充填層を形成し、その内部に酸素を吹き込む方が、原料に含まれる可燃物の燃焼によって発生した高温ガスと固体物(不燃物)の熱交換が高効率化し、固体物への着熱効率が向上して高温の溶融スラグを生成しやすい。
【0020】
充填層を形成するタイプのガス化炉を用いる還元ガスの製造方法であって、充填層が廃プラスチックやバイオマスを含む固体状炭素物質からなる還元ガスの製造方法に関する提案として、特許文献3〜7がある。
【0021】
例えば、特許文献3には、プラスチックを含む可燃性廃棄物を鉄酸化物とともに竪型のシャフト炉(ガス化炉)に投入し、還元鉄とともに水素を主とする熱分解ガスを得る方法が示されている。このシャフト炉(ガス化炉)内には、可燃性廃棄物および鉄酸化物からなる充填層が形成され、炉の下部に羽口が設置される。特許文献3に示される還元ガスの製造方法では、充填層の上部温度は573K程度に維持され、充填層上部に投入された可燃性廃棄物は、充填層内を降下するのに伴って徐々に昇温され、熱分解ガス化が進行し、水素、メタンおよびエチレン等の熱分解ガスを生成する。また、熱分解によりタールが副生するが、これを前記鉄酸化物に付着させ、炉内の高温雰囲気下で還元材および熱源の一部として利用することが可能としている。
【0022】
特許文献3に示される方法によれば、可燃性廃棄物の熱分解によって副生したタールや煤が鉄酸化物に付着して捕集されるため、タールや煤の少ないクリーンな熱分解ガス(還元ガス)を製造できる。
【0023】
しかし、プラスチックといった可燃性廃棄物を始めとする炭化水素含有物質をゆっくり昇温した場合、その昇温途中で、原料の一部が半溶融化した状態となる。これにより、充填層の下部から上昇するガスの通気が阻害されたり、半溶融化した原料が炉壁に付着する等して充填層内での原料の荷下がりを悪化させたりする。このため、ガス化炉として用いられるシャフト炉の操業が不安定となる。
【0024】
また、ゆっくり昇温される過程で副生したタールは、ガス化炉の後段に配置されるガス配管やガス処理設備に付着する等してトラブル発生の原因となる。また、可燃性廃棄物がタール化する分、可燃性廃棄物の還元ガスへの収率は低下する。
【0025】
特許文献4〜7でも、特許文献3と同様に、バイオマスやシュレッダーダスト等の固体状炭素物質を徐々に昇温する過程で半溶融化した原料および副生するタールによりガス化炉の操業が不安定となることが予想される。
【0026】
ガス化炉で還元ガスを製造し、該還元ガスによって予備還元炉で還元された予備還元物から高炉の原料を得る場合、ガス化炉でトラブルが発生すると、後段の予備還元炉への還元ガスの供給は停止される。したがって、ガス化炉でトラブルが発生した場合は、当然、予備還元炉で鉄鉱石類の予備還元を実施することができない。そのため、ガス化炉でトラブルが頻繁に発生すると、効率的な予備還元物の製造が困難となる。
【0027】
ガス化炉と予備還元炉の間に、還元ガスを貯留する還元ガス貯蔵タンクを設置すれば、ガス化炉でトラブルが発生した場合でも還元ガスを予備還元炉に供給することは可能である。しかし、ガス化炉でのトラブルが頻繁に発生する場合は、ガス貯蔵タンクに還元ガスを貯めることもできない。その場合は、予備還元炉への還元ガス供給は停止せざるを得ない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】R&D 神戸製鋼技報、vol.50、No.3(2000),稲田裕著,p.86〜89
【非特許文献2】まてりあ、vol.43、No.1(2004),山本高郁、佐藤弘孝、松倉良徳著,p.55、図1
【非特許文献3】燃料協会誌、vol.66、No.9(1987),松岡隆著,p763
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開2002−146420号公報
【特許文献2】特許第4250472号
【特許文献3】特開2003−147419号公報
【特許文献4】特開2001−311084号公報
【特許文献5】特開2004−160397号公報
【特許文献6】特開2005−330452号公報
【特許文献7】特開2005−325322号公報
【特許文献8】特許第3558039号
【特許文献9】特許第4007389号
【特許文献10】特開2011−63835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
前述の通り、高炉法による溶銑の生産では、鉄鉱石類を予備還元した予備還元物を高炉の原料として利用し、コークス比を大幅に低減することにより、炭酸ガス排出量を低減することが検討されている。この予備還元には還元ガスが必要であり、従来の還元ガスの製造方法には、天然ガスから製造する方式と、炭化水素含有物質から製造する方式とがある。
【0031】
前記非特許文献1に示される天然ガスから製造する方式では、天然ガスの改質反応は吸熱反応であることから熱補償が必要となったり、反応に使用する触媒が劣化したりして問題となる。また、前記特許文献2に示される石炭をガス化して還元ガスを製造する方法により、天然ガスの改質反応により得られる還元ガスと同種のガスを得ることができるが、この場合は炭酸ガス排出量の低減には繋がらない。
【0032】
一方、炭化水素含有物質から製造する方式として、前記特許文献2に示される還元ガスの製造方法があり、石炭にバイオマスや廃プラスチックを加えた原料を、酸素とともにガス化バーナーでガス化炉に吹き込み、部分燃焼および熱分解させてガス化させることにより還元ガスを製造する。この方法では、ガス化バーナーから酸素とともに原料を吹き込むために原料を粉砕する必要があることから、粉砕にエネルギーおよびコストを要するとともに、使用できるバイオマスが限定されて問題となる。
【0033】
また、炭化水素含有物質から製造する方式として、炭化水素含有物質を含む固体状炭素物質からなる充填層をガス化炉内に形成する還元ガスの製造方法が前記特許文献3〜7に示されている。しかし、炭化水素含有物質をゆっくり昇温すると、原料が半溶融化して充填層の通気性を阻害したり、炉壁に付着して原料の荷下がりを悪化させたりし、ガス化炉の操業が不安定となる。また、昇温する過程で熱分解により副生したタールが、ガス化炉の後段に配置されるガス配管や各設備に付着してトラブル発生の原因となったり、固体状炭素物質の還元ガスへの収率を低下させたりする。
【0034】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、還元ガスを安定的かつ効率的に製造することにより、予備還元物の金属化率を向上でき、得られる予備還元塊成化物を高炉原料として用いた際にコークス比を大幅に低減することを目的とした予備還元塊成化物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明者らは、上記課題を解決するため、種々の試験を行い、鋭意検討を重ねた結果、ランスを有する竪型のガス化炉を用い、この炉下部に固体状炭素物質からなる充填層を形成し、その充填層の上端面に向けて酸素を70体積%以上含有するガスを吹き込んで還元ガスを製造することにより、還元ガスを安定的かつ効率的に製造できることを知見した。このように製造された還元ガスを用いて鉄鉱石類を予備還元することにより、予備還元された予備還元物の金属化率を向上できるとともに、予備還元物から得られる予備還元塊成化物を高炉原料として用いた際にコークス比を大幅に低減できることを知見した。
【0036】
また、還元ガスを製造する際にガス化炉の下部で充填層を形成する固体状炭素物質として、1kg当りの湿ベース真発熱量が13.5MJ以上44.1MJ以下である固体状炭素物質を用いることにより、製造される還元ガスの還元ポテンシャルを確保できることを明らかにした。更に、還元ガスを製造する際に充填層の上端面よりも高い位置から気体燃料をガス化炉の内部に吹き込むことにより、製造される還元ガスの還元ポテンシャルを高めることができ、予備還元物の金属化率をより向上できることを明らかにした。
【0037】
ここでいう還元ポテンシャルは、製造された還元ガスに含まれる乾ベースでのCOガス濃度と水素ガス濃度との和を意味し、COガス濃度または水素ガス濃度は(COまたは水素ガス体積)/(還元ガス体積)で示される体積比である。
【0038】
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、下記(1)〜(4)の予備還元塊成化物の製造方法を要旨としている。
【0039】
(1)ランスを有する竪型のガス化炉を用い、この炉下部に固体状炭素物質からなる充填層を形成し、前記ランスから前記充填層の上端面に向けて酸素を70体積%以上含有するガスを吹き込んで還元ガスを製造する工程と、該還元ガスとともに鉄鉱石類を予備還元炉に供給し、該予備還元炉内の最高温度を973K以上に加熱して前記鉄鉱石類を予備還元し、金属化率が0.4以上0.8以下である予備還元物を製造する工程と、該予備還元物を粗粒と微粒とに分級して、粗粒の予備還元物を製造する工程と、分級された微粒状予備還元物と粗粒状予備還元物のうちの微粒状予備還元物を塊成化して塊成化物を製造し、該塊成化物を粗粒と微粒とに分級して、粗粒の塊成化物からなる予備還元塊成化物を製造する工程と、を含むことを特徴とする予備還元塊成化物の製造方法。
【0040】
(2)さらに、前記粗粒の塊成化物からなる予備還元塊成化物および前記粗粒状予備還元物を混合して予備還元塊成化物を製造する工程を含むことを特徴とする上記(1)に記載の予備還元塊成化物の製造方法。
【0041】
(3)前記固体状炭素物質として、1kg当りの湿ベース真発熱量が13.5MJ以上44.1MJ以下である固体状炭素物質を用いることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の予備還元塊成化物の製造方法。
【0042】
(4)前記充填層の上端面よりも高い位置から、1Nm3当りの乾ベース真発熱量が10MJ以上45MJ以下である気体燃料を、前記ガス化炉内に吹き込むことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の予備還元塊成化物の製造方法。
【発明の効果】
【0043】
本発明の予備還元塊成化物の製造方法は、還元ガスを安定的かつ効率的に製造することにより、還元ガスにより鉄鉱石類から予備還元される予備還元物の金属化率を向上でき、予備還元物から得られる予備還元塊成化物を高炉原料として用いた際にコークス比を大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】竪型のガス化炉であって、炉下部に充填層が形成され、その上端面に向けて支燃性ガスを吹き込むランスを有するガス化炉の構成例を示す模式図である。
【図2】本発明の予備還元塊成化物の製造方法のプロセスフロー例を示す図である。
【図3】固体状炭素物質の真発熱量と製造された還元ガスの還元ポテンシャルとの関係を示す図である。
【図4】気体燃料の乾ベース真発熱量と製造された還元ガスの還元ポテンシャルとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
前述の通り、本発明の予備還元塊成化物の製造方法は、ランスを有する竪型のガス化炉を用い、この炉下部に固体状炭素物質からなる充填層を形成し、ランスから充填層の上端面に向けて酸素を70体積%以上含有するガスを吹き込んで還元ガスを製造する工程と、該還元ガスとともに鉄鉱石類を予備還元炉に供給し、該予備還元炉内の最高温度を973K以上に加熱して鉄鉱石類を予備還元し、金属化率が0.4以上0.8以下である予備還元物を製造する工程と、該予備還元物を粗粒と微粒とに分級して、粗粒の予備還元物を製造する工程と、分級された微粒状予備還元物と粗粒状予備還元物のうちの微粒状予備還元物を塊成化して塊成化物を製造し、該塊成化物を粗粒と微粒とに分級して、粗粒の塊成化物からなる予備還元塊成化物を製造する工程と、を含むことを特徴とする。本発明の予備還元塊成化物の製造方法における還元ガスの製造、プロセスフロー例、予備還元および予備還元物の塊成化について以下に詳述する。
【0046】
[還元ガスの製造]
還元ガスを製造する際に固体状炭素物質を加熱してゆっくり昇温させた場合、573K以上の温度で還元ガスの生成が始まるが、573〜973K程度の温度範囲では、固体状炭素物質の半溶融化やタール発生が起こり、操業トラブルの原因となる。このようなトラブルを抑制する手段としては、固体状炭素物質を1273K程度まで急速加熱することが有効である。
【0047】
このため、本発明の予備還元塊成化物の製造方法は、還元ガスを製造する際に固体状炭素物質を急速加熱するために、特許文献8や特許文献9に示すような、ランスを有する竪型のガス化炉を用い、この炉下部に固体状炭素物質からなる充填層を形成し、その充填層の上端面に向けて支燃性ガスを吹き込んで還元ガスを製造する。ランスから充填層の上端面に向けて吹き込む支燃性ガスとしては、酸素を70体積%以上含有する高濃度酸素ガスを用いる。高濃度酸素ガスを充填層の上端面に向けて吹き込むことにより、還元ポテンシャルの高いガスを生成できるからである。
【0048】
図1は、竪型のガス化炉であって、炉下部に充填層が形成され、その上端面に向けて支燃性ガスを吹き込むランスを有するガス化炉の構成例を示す模式図である。同図に示すガス化炉19の下部には、固体状炭素物質からなる充填層が形成され、この充填層の上端面9の位置を二点鎖線で示す。充填層上端面9に向けて炉中心20に配置された炉中心ランス1から支燃性ガス5が送風されて吹き込まれる。充填層上端面9の温度は、炉中心ランス1から吹き込まれる支燃性ガス5による固体状炭素物質8の部分燃焼により約1273Kに保持される。
【0049】
原料投入口7から投入された固体状炭素物質8は充填層上端面9に落下する。そこで、固体状炭素物質8は急速加熱され、熱分解によりCO、H2、CH4が生成する。生成ガスには、CH4等の炭化水素類も含まれるが、これらは炉中心ランス1から送風される支燃性ガス5によって、COおよびH2に改質される。更に、充填層上端面9よりも高い位置に複数配置された上部羽口3から支燃性ガス5が吹き込まれ、これにより生成したCOまたはH2が部分燃焼し、ガス化炉上壁に設けられたガス排出口10により排出される還元ガス11を1373K以上の高温に容易に維持できる。
【0050】
このように同図に示すガス化炉では、固体状炭素物質8を急速加熱するとともに、炉上部温度を高温に維持することにより、炭化水素類は完全分解される。特に、炉中心ランス1から送風される支燃性ガスは、下部から上昇する炭化水素類に対し、上方から吹き付けるため、支燃性ガスと炭化水素類の混合が促進され、炭化水素類をより効率的に分解できる。このようにランスを有する竪型のガス化炉を用いることにより、還元ガスを効率的に製造できる。
【0051】
充填層上端面9の温度は、炉壁部に設置された温度測定センサー16−2の値を基に管理することができる。充填層上端面9の温度制御は、炉中心ランス1から送風される支燃性ガス5の量および炉中心ランス1の高さレベル(炉中心ランス1の先端から充填層上端面9までの距離)を調整することにより可能である。また、還元ガス11の温度は、温度測定センサー16−1をガス化炉上部に設置することにより測定可能で、上部羽口3から送風される支燃性ガス5の量によって制御できる。
【0052】
また、充填層上端面9より下方では、炉中心ランス1から吹き込まれる支燃性ガス5により、充填層上端面9で急速加熱された固体状炭素物質8の残渣中に含まれるカーボン(固定カーボン)を燃焼する。更に、充填層上端面9よりも低い位置に複数配置された下部羽口2から炉中心20に向けて支燃性ガス5を吹き込む。このようにランス1と下部羽口2からの支燃性ガス送風を組み合わせることにより、これらの火点の交点となる炉中心部に火点が集中する。火点が集中した高温の炉中心部に、固体状炭素物質8の残渣中に含まれる不燃分(灰分および金属類)の溶解域を集中させることにより、高温の溶融スラグ12および溶融金属13が生成して炉中心ランス1を設置しない場合と比べ、より安定的に溶融スラグ12および溶融金属13を排出することができる。
【0053】
このように充填層9で生成した溶融金属13および溶融スラグ12は、ガス化炉の下部側壁に設けられた溶湯排出口18から排出できる。溶融スラグの塩基度(CaO/SiO2質量比)は、溶融スラグの流動性を維持する観点から0.8以上1.2以下に制御するのが好ましい。
【0054】
また、ガス化炉下部の形状として、非特許文献2に示すように、溶融スラグ12および溶融金属13が、充填層の下部から湧き出し、炉外に連続的に排出される形状としてもよい。例えば、前記図1に示すガス化炉19を用いる場合、ガス化炉の底面を傾斜させ、その底面の高さが溶湯排出口18に近づくに伴い低くなる形状にするとともに、溶湯排出口18から排出される溶融スラグ12および溶融金属13が投入される水槽、および、溶湯排出口18から排出される溶融スラグ12および溶融金属13を水槽に供給する経路上にスプレーノズルを設ける。
【0055】
ガス化炉の底面を溶湯排出口18に近づくに伴い低くなる形状にすることにより、充填層の下部で生成した溶融スラグ12および溶融金属13は連続的に溶湯排出口18から炉外に排出される。排出された溶融スラグ12および溶融金属13は、スプレーノズルから噴射される水により、粉砕および冷却された後、水槽に落下する。従って、ガス化炉の底面を溶湯排出口18に近づくに伴い低くなる形状にするとともに、水槽およびスプレーノズルを設けることにより、ガス化炉内で生成した溶融スラグ12および溶融金属13をより安定的に炉外に排出して回収することができる。
【0056】
このようにランス1を有する竪型のガス化炉19を用い、この炉下部に固体状炭素物質からなる充填層を形成し、ランス1から充填層上端面9に向けて酸素を70体積%以上含有するガスを吹き込むことにより、充填層上端面9で固体状炭素物質を急速加熱することができる。充填層上端面9で固体状炭素物質を急速加熱することにより、固体状炭素物質を昇温する過程でタールが副生するのを抑制でき、その結果、副生したタールが付着することによるトラブルの発生を防ぐとともに、タールの副生による固体状炭素物質から還元ガスへの収率低下を抑えることができる。
【0057】
また、ランス1と下部羽口2からの支燃性ガス送風を組み合わせることにより、これらの火点の交点となる炉中心部に火点が集中する。火点が集中した高温の炉中心部に、固体状炭素物質8の残渣中に含まれる不燃分(灰分および金属類)の溶解域を集中させることにより、高温の溶融スラグ12および溶融金属13が生成して炉中心ランス1を設置しない場合と比べ、より安定的に溶融スラグ12および溶融金属13を排出することができ、溶融スラグがガス化炉に残留して引き起こすトラブルを防止できる。このようにランス1を有する竪型のガス化炉を用いることにより、還元ガスを安定的に製造できる。
【0058】
ガス化炉で製造されたガスを還元ガスとして使用するためには、還元ガスの還元ポテンシャル(COガス濃度と水素ガス濃度との和)を高くする必要があり、鉄鉱石類の予備還元を効率的に進めるためには、還元ポテンシャルは0.8以上にする必要がある。そのために、本発明の予備還元塊成化物の製造方法は、ガス化炉に投入される固体状炭素物質8の1kg当りの湿ベースでの真発熱量を13.5MJ以上とするのが好ましい。
【0059】
固体状炭素物質8の1kg当りの湿ベースでの真発熱量を13.5MJ以上とすることにより、熱分解によるCO、H2の生成が促進されることから、製造される還元ガスの還元ポテンシャルを確保して0.8以上にできる。後述する実施例で示すように、固体状炭素物質8の湿ベースでの真発熱量は高いほど、製造される還元ガスの還元ポテンシャルを高めることができる。
【0060】
この理由としては、COガスおよび水素ガスの原料となる炭素および水素は、固体状炭素物質の真発熱量が高い程、高い濃度で含まれることが挙げられる。固体状炭素物質に高い濃度で炭素および水素が含まれた場合、当然、発生するCOガスおよび水素ガス量は増加する。また、ガス化炉内では、発生したCOガスおよび水素ガスの一部を2次燃焼(反応式:CO+1/2O2→CO2、または反応式:H2+1/2O2→H2O)させることにより、炉の上部を高い温度に維持し、タール等の発生を抑制しているが、真発熱量の高い固体状炭素物質を使用した場合は低い2次燃焼率でも高温を維持することが可能となる。
【0061】
固体状炭素物質8の湿ベースでの真発熱量を高くする観点から、固体状炭素物質8において水分の含有率を低くするのが好ましく、そのために固体状炭素物質8をガス化炉に投入する前に乾燥させることが有効である。乾燥処理としては、乾燥機に投入して熱風を吹き込みながら固体状炭素物質8を乾燥させる方法や、天日乾燥、屋根のあるヤードでの自然乾燥を採用することができる。
【0062】
真発熱量が低い炭化水素含有物質を活用する観点から、固体状炭素物質8にコークス等の固体燃料を補助的に添加することもできる。固体燃料と炭化水素含有物質とを混合して固体状炭素物質8とすることにより、固体状炭素物質8の湿ベースでの真発熱量を維持できれば、真発熱量が低い炭化水素含有物質も活用できる。
【0063】
一方、固体状炭素物質8の湿ベースでの真発熱量が44.1MJを超えると、固体状炭素物質に乾燥処理を施す際に発火および火災の懸念が生じ、固体状炭素物質の取り扱いに注意を要する。このため、本発明の予備還元塊成化物の製造方法は、固体状炭素物質8の湿ベースでの真発熱量を44.1MJ以下とするのが好ましい。
【0064】
ここで、ガス化炉に投入される固体状炭素物質を湿ベース真発熱量で規定する理由は以下のとおりである。一般的に、所定温度とした単位量の燃料を、必要十分な乾燥空気で完全燃焼させ、その燃焼ガスを所定温度まで冷却した時に計測される熱量が発熱量と呼ばれる。発熱量を測定する熱量計においては燃焼ガス中の水蒸気は凝縮して水となっており、測定された発熱量には水蒸気の凝縮潜熱が含まれる。この水蒸気の凝縮潜熱を含む発熱量は総発熱量と呼ばれ、この総発熱量から水蒸気の凝縮潜熱を差し引いた発熱量は真発熱量と呼ばれる。ガス化炉の内部では、固体状炭素物質の燃焼によって発生した水蒸気は、凝縮することなく炉外へ排出される。従って、ガス化炉に投入する固体状炭素物質については、発生した水蒸気の凝縮潜熱を考慮しない真発熱量で議論すべきである。
【0065】
真発熱量(kJ)は、下記(3)式によって表され、JIS M8814に基づき測定された総発熱量(kJ)から水蒸気の凝縮潜熱(=2500×(9×h+w))を差引いた熱量である。係数の2500は、水蒸気1kg当りの凝縮潜熱(kJ/kg)を意味する。hは固体状炭素物質1kgに含まれる水素の質量(kg)で、wは固体状炭素物質1kgに含まれる水分の質量(kg)を示している。
真発熱量=総発熱量−2500×(9×h+w) ・・・(3)
【0066】
また、乾ベースでの真発熱量が高い固体状炭素物質であっても、水分の含有率が高い原料では、高い還元ポテンシャルを有する還元ガスを得ることはできない。これは、水分の蒸発による吸熱を考慮する必要があるからである。水分の蒸発による吸熱反応が大きくなった場合、ガス化炉内の温度を維持するために投入熱量を大きくする必要がある。そのためには、部分燃焼によって発生したCOガスの一部を2次燃焼(反応式:CO+1/2O2→CO2)、または水素ガスの一部を燃焼(反応式:H2+1/2O2→H2O)させる必要があり、結果的に生成するガスの還元ポテンシャルは低下する。従って、ガス化炉に投入する固体状炭素物質で重要となるのは、乾ベースでの真発熱量ではなく、水分を含んだ固体状炭素物質の単位重量当りの真発熱量、即ち、湿ベースでの真発熱量である。
【0067】
本発明の予備還元塊成化物の製造方法は、充填層の上端面よりも高い位置から、1Nm3当りの乾ベース真発熱量が10MJ以上45MJ以下である気体燃料を、ガス化炉内に吹き込むのが好ましい。これにより、製造される還元ガスの還元ポテンシャルを高めることができる。充填層上端面よりも高い位置から吹き込む気体燃料としては、LNGやコークス炉ガス等が上げられる。
【0068】
気体燃料の1Nm3当りの乾ベース真発熱量が10MJ未満であると、還元ガスの還元ポテンシャルが低下する。気体燃料の真発熱量は、高くすることにより、還元ガスの還元ポテンシャルを高くできるが、45MJを超えると、真発熱量を高くすることにより還元ポテンシャルが高くなる量が僅かとなる。ここで、真発熱量が高い分、気体燃料が高価になることを考慮すると、気体燃料の真発熱量は45MJ以下とするのが好ましい。
【0069】
気体燃料を吹き込む場合は、ガス化炉の下部に形成された充填層上端面9よりも高い位置に気体燃料を吹き込む。充填層上端面9より低い位置から吹き込んだ場合、充填層内を上昇するガスの流速が増大し、充填層を形成する固体状炭素物質が流動化し、更には飛散して、還元ガスとともにダストとしてガス化炉から排出されてしまう。その場合、固体状炭素物質に含まれる炭素および水素の還元ガスへの収率が低下し、製造された還元ガスの還元ポテンシャルも低下する。
【0070】
前記図1に示すガス化炉において、充填層上端面9よりも低い位置に設置された下部羽口2から、固体状炭素物質8に含まれる不燃分を溶融スラグ12または溶融金属13としてより安定的に排出させる目的で、LNGやLPG等の気体燃料を吹き込むことが可能である。しかし、必要以上に吹き込むことは、操業を不安定化させる。例えば、LNGやLPGは、炭化水素であるが、熱分解による吸熱反応によって、ガス化炉下部の温度低下を引き起こし、溶融スラグおよび溶融金属の安定排出を阻害するおそれもある。
【0071】
充填層上端面9より高い位置から気体燃料を吹き込んだ場合、ガス化炉内の雰囲気との熱交換により急速加熱されて気体燃料が高温となる。この気体燃料に含まれる炭化水素類とガス化炉の雰囲気に含まれる炭酸ガスや水蒸気とにより前記反応式(1)および(2)に示すメタンガス等の炭化水素類の改質反応が生起し、COおよび水素を生成する。または、気体燃料に含まれる炭化水素類が、吹き込まれる支燃性ガスに含まれる酸素により部分燃焼し、COおよび水素を生成する。このように充填層上端面9より高い位置から気体燃料を吹き込むことにより、製造された還元ガスの還元ポテンシャルを高めることができる。
【0072】
充填層上端面9より高い位置から気体燃料を吹き込む場合、ノズル(羽口)出口における流速は1Nm/秒以上150Nm/秒以下とする。ノズル出口における流速が1Nm/秒未満であると、吹き込まれた気体燃料は、ガス化炉の炉壁近傍を上昇し、還元ガス製造に寄与しないままに排出されてしまう。一方、流速が150Nm/秒を超えると、ノズル内での圧力損失が大きくなるため、安定した吹込みが難しくなる。
【0073】
気体燃料と同様に、液体燃料(液体状の炭化水素類)を充填層上端面9よりも高い位置から吹き込むことも還元ガスの還元ポテンシャルを増加させる観点から有効である。
【0074】
[プロセスフロー例]
図2は、本発明の予備還元塊成化物の製造方法のプロセスフロー例を示す図である。同図に示すプロセスフローでは、還元ガスの原料となる固体状炭素物質31と、固体状炭素物質を乾燥させる乾燥設備32と、還元ガスを製造するガス化炉33とを示す。また、製造された還元ガスを処理するため、還元ガスを冷却するガス冷却装置37と、冷却された還元ガスを除塵する除塵設備38と、除塵した還元ガスを脱硫する脱硫装置40と、脱硫された還元ガスから水分を除去する水分除去装置41と、水分が除去された還元ガスを貯留する還元ガス貯蔵タンク43とを示す。更に、還元ガスにより鉄鉱石類45を予備還元物とする予備還元炉44と、予備還元物46および塊成化物51を粗粒と微粒とに分級する篩い分級装置48と、微粒状予備還元物49を塊成化するブリケット化装置50と、予備還元塊成化物(粗粒状予備還元物47、粗粒状ブリケット(塊成化物)52)や鉄鉱石類から溶銑54を得る高炉53とを示す。
【0075】
同図に示すプロセスフローでは、炉中心ランス34を有する竪型のガス化炉33にバイオマスや廃棄物等を含む固体状炭素物質31を投入し、還元ガス36を製造する。この際、ガス化炉33では、炉下部に固体状炭素物質からなる充填層を形成し、炉中心ランス34から充填層の上端面に向けて酸素を70体積%以上含有するガス35を吹き込む。固体状炭素物質31は、同図に示すように、乾燥設備32で事前に水分を除去してからガス化炉33に投入することも可能である。
【0076】
製造した還元ガス36は、除塵設備38で除塵した後、高温のまま、予備還元炉44に供給することもできる。しかしながら、還元ガス36には、鉄鉱石類の還元反応を阻害する水分が含まれている。そのため、還元ガス36は、一旦、冷却して水分を分離除去してから予備還元炉44に供給するのが好ましい。
【0077】
還元ガス36をガス冷却装置37で冷却する際、固体状炭素物質31に塩素等のハロゲン類が含まれ、冷却途中で、ダイオキシン類が再合成し、排出される懸念がある場合は、特許文献8や特許文献9に記載するように、ガス化炉で発生した高温の還元ガス36を急冷することが必要となる。
【0078】
一方、ダイオキシン類が再合成する懸念がない場合は、高温の還元ガス36の顕熱を利用することも可能である。例えば、ガス化炉33から排出される還元ガス36には、炭酸ガスや水蒸気も含まれるので、これらのガスを天然ガス58と接触させて、前述した反応式(1)および(2)に示す改質反応を生起させ、還元ガス中のCOガスおよび水素ガスの濃度をより高めることができる。反応式(1)および(2)は、吸熱反応であることから、反応の進行にともない還元ガス36は冷却される。
【0079】
また、高温の還元ガス36を炭材57と接触させ、還元ガスに含まれるCO2およびH2Oを下記反応式(4)および(5)により、COガスおよび水素ガスに転換することも可能である。
C+H2O→CO+H2 ・・・(4)
C+CO2→2CO ・・・(5)
【0080】
冷却後の還元ガス36は、除塵設備38でダスト39を分離除去し、更に水分除去装置41で水分42を除去する。また、還元ガス36に硫化水素等の硫黄分が含まれ、後段の設備の腐食が懸念される場合は、脱硫装置40により脱硫する。水分除去後の還元ガス36は、還元ガス貯蔵タンク43に、一旦、保管してから予備還元炉44に供給する。
【0081】
予備還元炉44の内部には、還元ガス36とともに鉄鉱石類45が供給され、還元ガス36と鉄鉱石類45とを接触させることにより、予備還元物46が製造される。製造された予備還元物46を、篩分級装置48により篩上の粗粒状予備還元物47と篩下の微粒状予備還元物49とに分級する。篩下の微粒状予備還元物49は、ブリケット化装置50により塊成化してブリケット(塊成化物)51とした後、再度、篩分級装置48により分級する。
【0082】
篩上の粗粒状ブリケット(塊成化物)52および粗粒状予備還元物47は高炉53に投入される。本発明の予備還元塊成化物の製造方法においては、図2に示すようにブリケット(塊成化物)51を予備還元物46とともに一台の篩い分級装置48に供給して分級することもできるが、ブリケット(塊成化物)51を予備還元物46が供給される篩い分級装置と異なる篩い分級装置に供給して分級することもできる。後者の場合、各々の篩い分級装置で分級された篩上品(粗粒状予備還元鉄47、粗粒状ブリケット52)は高炉53に投入される。一方、篩下の微粒は、微粒状予備還元物49としてブリケット化装置50により塊成化される。
【0083】
[予備還元]
ガス化炉で製造された還元ガス36の使用先としては、高炉への吹き込みも考えられる。しかし、炉径が大きく充填層を形成している高炉に還元ガス36を吹き込んだとしても、高炉の中心部まで還元ガス36を到達させることは困難である。吹き込まれた還元ガス36の大部分は、通気抵抗が少ない壁際を通過し、鉄鉱石と十分に接触されないまま排出されてしまうことが考えられる。このため、本発明では、シャフト炉といった予備還元炉44に吹き込む方法を採用した。
【0084】
予備還元炉44としては、安価な炭材や還元ガス等で還元を行うロータリキルン炉や回転炉床炉を使用することもできるが、代表的な予備還元炉であり、前記非特許文献1に示されるシャフト炉を使用するのが好ましい。前記非特許文献1に記載される方法では、天然ガスを改質して、COガスおよび水素ガスを生成し、これを鉄鉱石が充填されている縦に細長いシャフト炉の中段に吹き込み、還元鉄を製造する。このシャフト炉は、高炉と比べ、炉径が小さいため、吹き込まれた還元ガス36は、炉心部まで到達し、高い効率で鉄鉱石類45と接触し、予備還元を進行させることができる。また、シャフト炉は、鉄鉱石類からなる充填層に還元ガスを吹き込むことから、ロータリキルン炉や回転炉床炉と比べても鉄鉱石類と還元ガスとの接触効率がよい。
【0085】
また、予備還元炉44から排出される排ガスには、多量の還元性ガス(CO、水素)が残存しており、これらは、再度、還元ガスとして使用するのが好ましい。但し、排ガスにはCO2やH2Oも含まれることから、これらは分離除去するか、COあるいは水素ガスにしてから、予備還元炉44に供給する。
【0086】
COまたは水素ガスに転換する手段としては、予備還元炉44の排ガスを天然ガスと接触させて前記反応式(1)および(2)に示す改質反応を生起させる方式や、排ガスを炭材と接触させて前記反応式(4)および(5)に示す反応を生起させる方式により、排ガス中のCOガスおよび水素ガスの濃度を高めて還元ガスとすることができる。例えば、前記図2に示すプロセスフローでは、予備還元炉の排ガス55を、ガス冷却装置37に供給して天然ガスあるいは炭材と接触させることにより、排ガスを還元ガスとして再度使用できる。
【0087】
本発明の予備還元塊成化物の製造方法は、予備還元炉44から排出される予備還元物46の金属化率を0.4以上0.8以下とする。予備還元物46の金属化率が0.8を超えると、予備還元炉44で極めて長い滞留時間を確保する必要がり、生産効率が低下する。予備還元物46の還元率(金属化率)の増加とともに必要な平均滞留時間は飛躍的に増加し、金属化率を1.0とするには、理論上、無限大の時間を要する。しかし、予備還元物46を予備還元塊成化物として高炉原料に使用するのであれば、予備還元物に含まれる酸化鉄が完全に金属化している必要は無い。高炉は酸化鉄を還元するための装置だからである。
【0088】
一方、予備還元炉44で生成する予備還元物46の金属化率が0.4未満であると、得られる予備還元塊成化物を高炉で鉄原料として使用する際に、コークス比を低減させる効果が小さくなる。そのため、高炉のみで鉄鉱石の還元を行う従来の方法と比べ、溶銑54を製造するためのトータルエネルギーを減少させることが困難となってしまう。また、微粒状予備還元物49を塊成化して、高い強度を有する塊成化物を得る観点からも、予備還元物46の金属化率は0.4以上とすべきである。金属鉄には延性があることから、加圧成型により塊成化した際、金属鉄粒子表面の凹凸が相互の摩擦や押し合いによって噛み合い、粒子間に強い接合状態が形成され、強度の高い塊成化物となる。このように、塊成化には金属鉄の存在が寄与している。従って、予備還元物46に含まれる金属化率が低くなると強度の高い塊成化物を製造することは困難となる。
【0089】
本発明の予備還元塊成化物の製造方法は、還元ガスとともに鉄鉱石類を予備還元炉に供給し、予備還元炉内の最高温度を973K以上にして加熱する。予備還元炉内の最高温度を973K以上と規定する理由は後述するが、これにより、予備還元炉内で鉄鉱石類が予備還元される際に粉化するのを抑制できる。
【0090】
本発明の予備還元塊成化物の製造方法では、充填層の上端面に向けて酸素を70体積%以上含有するガスを吹き込むことにより、ガス化炉の安定操業を実現し、ガス化炉の停機によって予備還元炉への還元ガス供給が停止するのを防止する。その結果、鉄鉱石類を安定的かつ効率的に予備還元することが可能となり、予備還元物の金属化率を向上することができる。
【0091】
[予備還元物の塊成化]
微粒状予備還元物49の塊成化については、微粒状予備還元物を熱間成型する方法と、常温で冷間成型する方法が知られている。この両者を比べた場合、高密度に圧縮成型して高強度のブリケットを製造する観点から、金属鉄の熱可塑性を利用できる熱間成型が有利で、適用例も多くある。しかし、熱間成型の場合、ブリケット化装置の冷却や膨大な設置スペースが必要となる等、コスト増加の一因となる。従って、本発明の予備還元塊成化物の製造方法においては、微粒状予備還元物49を冷間で成型して塊成化するのが好ましい。
【0092】
冷間での成型は、熱間成型と比べ製造されるブリケットの強度が低く、高炉53での使用が困難なことが懸念される。冷間で成型する場合は、特許文献10に示すように、冷間で成型したブリケットを水浸・静置処理するのが好ましく、強度を大幅に増加させることが可能であり、上記懸念を払拭することができる。
【0093】
水浸・静置処理を採用する場合、例えば、水を張ったプールにカゴを入れておき、そこにブリケット化装置から排出されたブリケットを、直接、プール内のカゴに落下させて水浸した後、カゴごと引き上げることにより水からブリケットを取り出し、カゴにブリケットが収容された状態で静置して乾燥させることもできる。これにより、搬送過程でブリケットに衝撃が付与されてブリケットが崩壊するのを抑制しつつ、ブリケットの強度を高めることもできる。
【0094】
水浸処理に使用する水としては、水道水、工業用水等があげられる。また、水浸・静置処理によって、ブリケットに含まれる金属鉄の一部が再酸化することによって強度発現する。このため、ブリケットの強度が不足する場合は、設備腐食等の問題とならない程度の塩素を含む工業廃水や海水を使用することができ、強度発現促進に有効である。
【0095】
このように微粒状予備還元物をブリケット化(塊成化)して予備還元物からなるブリケット(塊成化物)51とし、ブリケット(塊成化物)51の粗粒を予備還元塊成化物とする。このようにして得られる粗粒の塊成化物からなる予備還元塊成化物および粗粒状予備還元物は高炉に直接投入可能な粒径および強度を有するとともに金属化率が高い。このため、粗粒の塊成化物からなる予備還元塊成化物および粗粒状予備還元物を高炉原料として使用すれば、高炉におけるコークスの還元材作用と通気スペース作用とを担保しつつ、大幅なコークス比の低減を達成し、炭酸ガス排出量の抑制を推進でき、優れた高炉法システムを構築することができる。
【0096】
本発明の予備還元塊成化物の製造方法において、塊成化物または予備還元物を粗粒と微粒に分級する際は、分級した粗粒を高炉に直接投入した際に通気性が確保できるように行えばよい。例えば、粗粒を粒径5〜40mm、微粒を粒径5mm以下に分級することができる。
【0097】
本発明の予備還元塊成化物の製造方法においては、予備還元炉44で予備還元されて予備還元物となる鉄鉱石類45として、高炉内で還元粉化しやすい焼結鉱を用いるのが好ましい。焼結鉱を事前に予備還元することにより、高炉内での還元粉化を抑制できるからである。その作用を以下に説明する。
【0098】
焼結鉱は、823K付近で含有するFe23がFe34に還元される時に膨張して、激しく粉化することが知られているが、予備還元された焼結鉱はFe23をほとんど含有しないため還元粉化は発生しない。このため、焼結鉱を鉄鉱石類とした予備還元物を高炉で使用すると、還元粉化による通気性悪化を引き起こすことがなく、高炉内での通気を改善できるという利点を有する。この利点により、コークス比の低減にともなう高炉内での通気性悪化を相殺できる。従って、本発明の予備還元塊成化物の製造方法により、焼結鉱から製造された予備還元物46を高炉原料として用いれば、高炉において、コークスの還元材作用と、通気スペース作用を担保しつつ、大幅なコークス比の低減を達成し、炭酸ガスの排出量を抑制できる。
【0099】
当然、予備還元炉44で還元される過程で、焼結鉱が還元粉化することも考えられる。しかし、予備還元炉44内における焼結鉱の温度を還元粉化が起こりにくい温度域で、予備還元すれば、還元粉化は抑制することが可能である。前述の通り、焼結鉱は823K付近で激しく還元粉化することが知られている。この温度よりも高い温度で予備還元を進行させることにより、予備還元炉44内での還元粉化を抑制できる。このため、本発明の予備還元塊成化物の製造方法は、予備還元炉内の最高温度を823Kよりも高い973K以上とする。一方、予備還元炉の耐熱性やエネルギーコストの観点から予備還元炉内の最高温度は1573K以下とするのが好ましい。
【0100】
また、焼結鉱を予備還元炉で常温から加熱して最高温度を973K以上とすると、823K付近で還元粉化する懸念がある。この懸念は、還元反応を最初から高温で行うことにより、払拭できる。その手段として、焼結機から排出された焼結鉱を、常温まで冷却することなく、高温状態のままで予備還元炉44に供給する方式を採用できる。
【実施例】
【0101】
本発明の予備還元塊成化物の製造方法による効果を検証するため、「鉄鉱石類の予備還元」、「固体状炭素物質の真発熱量」、「気体燃料吹き込みの効果」および「微粒状予備還元物のブリケット化」に関する試験を行った。
【0102】
1.鉄鉱石類の予備還元
[試験方法]
前記図1に示すガス化炉を用いて還元ガスの製造試験を行い、更に、ガス化炉で製造された還元ガスを模擬した組成の混合ガスによる鉄鉱石類の予備還元試験を行った。予備還元試験では、JIS−RI試験用反応管(内径Φ75mm)の内部に、粒径15−19mmの焼結鉱(鉄鉱石類)を500g充填し、窒素ガス流通下で試験温度(1173K)まで昇温した後、還元ガスを模擬した混合ガスを900NL/hの流量で供給した。
【0103】
予備還元試験で混合ガスを供給する時間は1時間とした。但し、ガス化炉操業がトラブル等で停機した場合は予備還元炉への還元ガスの供給を行うことはできない。そこで、ガス化炉で停機が発生した場合、その停機時間に相当する時間は、予備還元試験装置への混合ガスの供給を停止した。予備還元後の焼結鉱(予備還元物)の金属化率を調査した。
【0104】
還元ガスの製造試験では、固体状炭素物質として、自動車廃材とプラスチック廃棄物が混合された産業廃棄物を使用した。この固体状炭素物質の成分分析値は表1に示すとおりであり、湿ベースでの真発熱量は19.2MJ/wet−kgであった。予備還元試験で使用した焼結鉱の成分分析値は表2に示すとおりである。ここで、「T.Fe」とは全鉄分を意味し、「M.Fe」とは金属鉄を意味する。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
前記図1に示すガス化炉を用いた還元ガスの製造試験では、固体状炭素物質8を投入口7から投入し、炉下部に形成される充填層上端面9に落下させた。充填層上端面9の温度は、温度測定装置16−2に示される値により管理し、炉中心ランス1から吹き込まれる支燃性ガス(高濃度酸素ガス)5の送風量、および炉中心ランス1の高さ位置を調整することにより、約1273Kとなるようにした。更に、ガス化炉の上部の雰囲気温度は、上部羽口3から送風される支燃性ガス(高濃度酸素ガス)5の送風量を調整することにより、温度測定装置16−1の値が約1453Kとなるように制御した。
【0108】
一方、充填層上端面9の下方では、炉中心ランス1および下部羽口2から支燃性ガス5を吹き込むことによって、固体状炭素物質8に含まれる熱分解残渣カーボン(固定炭素)を燃焼し、その燃焼熱によって不燃分を溶融し、高温の溶融金属13および溶融スラグ12としてガス化炉外に排出した。溶融スラグの塩基度(CaO/SiO2質量比)は、石灰の投入により0.8以上1.2以下に調整し、その流動性を維持した。また、下部羽口2は二重管構造とし、内管からはLNGを補助的に供給し、外管から支燃性ガスを送風した。
【0109】
本発明例1−1では支燃性ガスとして酸素を100体積%含有するガスを用い、本発明例1−2では支燃性ガスとして酸素を70体積%含有するガスを用いた。比較例1では、炉中心ランス1をガス化炉の炉外待機位置まで上昇させ、炉中心ランスから支燃性ガスを吹き込むことなく、上部羽口3および下部羽口2から酸素を100体積%含有する支燃性ガスを吹き込んだ。
【0110】
表3に、本発明例および比較例における試験条件および試験結果として、定常状態で操業時の固体状炭素物質の投入速度(ton/日、湿ベース)、支燃性ガスの酸素濃度(体積%)、炉中心ランス、上部羽口および下部羽口からの支燃性ガスの送風量(Nm3/h)、下部羽口からのLNGの送風量(Nm3/h)、パージ処理のN2ガス送風量(Nm3/h)、ガス化炉上部の雰囲気温度(K)、充填層上端面の温度(K)、製造された還元ガス(混合ガス)の組成および還元ポテンシャル(COガス濃度と水素ガス濃度との和)、ガス化炉の定常状態での操業時間(時間)、予備還元装置へ混合ガスを供給した時間(分)、予備還元の試験温度(K)並びに予備還元物の金属化率(M.Fe/T.Fe)を示す。ここで、パージ処理のN2ガス送風量(Nm3/h)は、ガス化炉内に設置された炉内監視窓の冷却や充填層上端面レベル測定装置15等の設備保護の目的でN2ガスを送風する量である。また、還元ガスの組成は、(成分ガス体積)/(還元ガス体積)で示される乾ベースでの濃度(体積比)である。
【0111】
【表3】

【0112】
[試験結果]
比較例1では、炉中心ランスから支燃性ガスを吹き込むことなく還元ガスを製造した。充填層上端面の温度は約873Kと低かった。また、比較例1では、ガス化炉の操業中、固体状炭素物質に含まれる炭化水素類が半溶融化して炉壁に付着し、その剥離および落下(棚落ち)を原因とする急激なガス発生が頻発し、炉内圧力がガス化炉の設計値を超える値まで上昇する等のトラブルが多発した。このため、ガス化炉を定常状態で操業できたのは、24時間のうち、19時間であった。即ち、稼働率(=定常操業を行った時間/試験実施時間)は0.8であった。従って、60分間の予備還元を行うとしても、実際に還元ガスを供給できるのは48分間と考えるべきである。このため、予備還元試験では、48分間の予備還元を行い、得られた予備還元物の金属化率は0.35にとどまった。
【0113】
一方、本発明例1−1では、炉中心ランスから酸素を100体積%含有する支燃性ガスを吹き込んだ。ガス化炉の操業は極めて安定し、トラブルによる停止はなく、COおよび水素を主とする還元ガスを24時間にわたって安定的に製造することができた。このため、予備還元試験では、混合ガスの供給を止めることなく、60分間の予備還元を行い、得られた予備還元物の金属化率は0.5に到達した。なお、本発明例1−1により得られた予備還元物について更に予備還元を継続したところ、30分間後(合計で90分間の予備還元後)の金属化率は0.79に到達した。
【0114】
また、本発明例1−2では、炉中心ランスから酸素を70体積%含有する支燃性ガスの吹き込みを行った。ガス化炉の操業は安定し、24時間にわたって還元ガスを製造することができた。但し、本発明例1−2では、製造された還元ガスのCOおよび水素の比率が低くなったため、焼結鉱の還元速度は、本発明例1−1と比べ低く、1時間経過後の焼結鉱金属化率は0.4にとどまった。
【0115】
ここで、本発明例1−2では、炉中心ランス、上部羽口および下部羽口ともに酸素を70体積%含有する支燃性ガスを送風したが、上部羽口および下部羽口から吹き込む支燃性ガスの酸素濃度を高くすれば、炉中心ランスから充填層上端面に向けて吹き込む支燃性ガスの酸素濃度を70体積%未満に低下させることは可能である。但し、その場合は異なる酸素濃度の支燃性ガスを製造することとなる。即ち、2種類の酸素製造設備を準備しないとならない。
【0116】
一方、還元ガス製造の観点からは、酸素濃度の高い支燃性ガスの使用が有利である。こうした中で、酸素濃度の低い支燃性ガスの使用を検討する理由は、多少、酸素濃度を落すことによって酸素の製造効率を上げるためである。ここで、非特許文献3によると、製造方法による違いはあるが、酸素濃度70〜93体積%の範囲に製造効率が高くなる条件が存在していると考えられる。つまり、酸素濃度は、低い程、製造効率が向上する訳ではない。従って、炉中心ランスから吹き込む支燃性ガスの酸素濃度を70体積%未満にするということは、支燃性ガスの製造効率を悪化させることになる。
【0117】
また、炉中心ランスから吹き込む支燃性ガスの酸素濃度を低下させる場合、上部羽口および下部羽口からの支燃性ガスの酸素濃度は高くする必要がある。この場合、仮に上部羽口および下部羽口から酸素濃度が100体積%に近い支燃性ガスを吹き込むとなると、支燃性ガスの製造効率は大幅に低下する。即ち、上部羽口および下部羽口から吹き込む支燃性ガスの酸素濃度を高くして、炉中心ランスからの純度を70体積%未満にすることは不利な方法である。
【0118】
2.固体状炭素物質の真発熱量
前記表3に示すように、本発明例1−2により製造された還元ガスにおいて、COガス濃度と水素ガス濃度との和(還元ポテンシャル)は0.8であるが、鉄鉱石類を効率的に還元する観点から、還元ポテンシャルは、この値以上にすることが必要である。そのためには、投入する固体状炭素物質の真発熱量を管理することが重要である。
【0119】
[試験条件]
本試験では、湿ベース真発熱量が異なる複数の固体状炭素物質を用いて還元ガスを製造する試験を行った。固体状炭素物質の湿ベース真発熱量以外の条件は、前述した「1.鉄鉱石類の予備還元」の還元ガスの製造試験における本発明例1−1と同じ条件で還元ガスを製造した。表4に、本試験で用いた固体状炭素物質を構成する物質および湿ベース真発熱量(MJ/wet−kg)、並びに、製造された還元ガスの還元ポテンシャルを示す。
【0120】
【表4】

【0121】
本発明例2−1および本発明例2−2では、固体状炭素物質として自動車廃材とプラスチック廃棄物が混合された産業廃棄物を使用した。本発明例2−1と本発明例2−2とでは、自動車廃材とプラスチック廃棄物の混合比率が異なるため、固体状炭素物質の真発熱量が異なっている。本発明例2−3では、一般廃棄物を使用した。この一般廃棄物には、食品、紙類、植物等、動物や植物由来の廃棄物が含まれていた。
【0122】
[試験結果]
図3は、固体状炭素物質の真発熱量と製造された還元ガスの還元ポテンシャルとの関係を示す図である。同図は、本発明例2−1〜2−3の試験結果を示す。同図から、固体状炭素物質の真発熱量の増加にともない、ガス化炉で製造された還元ガスの還元ポテンシャルも増加することが確認できた。また、ガス化炉に投入する固体状炭素物質1kg当りの湿ベース真発熱量は13.5MJ以上にすることにより、製造された還元ガスの還元ポテンシャルを0.8以上にできることが明らかになった。
【0123】
ここで、ガス化炉に投入する固体状炭素物質の真発熱量を高くするためには、原料の事前乾燥が有効な手段であり、乾燥により固体状炭素物質1kg当りの湿ベース真発熱量を13.5MJ以上とすることも可能である。但し、固体状炭素物質を乾燥する場合、次の点に注意が必要である。
【0124】
一般的な乾燥方法として、乾燥機が有するドラム内に固体状炭素物質を投入し、ドラムの回転に伴って固体状炭素物質を攪拌しつつ熱風を吹き込んで乾燥させる方法がある。しかし、固体状炭素物質には、可燃分が含まれるため、乾燥中の発火および火災が懸念される。発火や火災の原因としては、固体状炭素物質の過乾燥が上げられる。水分を5質量%未満まで乾燥させた場合、火災などのトラブル発生の懸念が増大する。表5に、主な固体状炭素物質の乾ベースでの真発熱量を示す。
【0125】
【表5】

【0126】
固体状炭素物質の中で、真発熱量が高い物質としてポリプロピレンがあげられる。ポリプロピレン1kg当りの乾ベース真発熱量は46.5MJ/dry−kgである。これを水分5質量%での湿ベース真発熱量に換算すると44.1MJ/wet−kgとなる。従って、乾燥機から排出される固体状炭素物質の真発熱量は湿ベースで44.1MJ/wet−kg以下とすべきである。これよりも真発熱量が高い場合、乾燥設備でのトラブル発生の可能性があることから、固体状炭素物質の取り扱いに注意を要する。
【0127】
3.気体燃料吹き込みの効果
[試験条件]
ガス化炉内に気体燃料を吹き込むことによっても還元ガスの還元ポテンシャルを高めることができる。この効果を確認するため、本試験では、熱物質収支に基づき、気体燃料を吹き込んだ時の還元ポテンシャルの変化を計算した。上記計算では、上部羽口から気体燃料を吹き込むことを想定し、これら以外の条件は前述した「1.鉄鉱石類の予備還元」の還元ガスの製造試験における本発明例1−1と同じ条件とした。上部羽口は二重管構造とし、内管より気体燃料を吹き込み、外管からは支燃性ガスを吹き込むことができる。
【0128】
本試験で対象とした気体燃料は、LNG、LPG、コークス炉ガス、高炉ガスおよび転炉ガスで、これらの成分組成を表6に示す。また、本試験に用いた固体状炭素物質の成分分析値は表7に示すとおりで、湿ベースでの真発熱量は13.4MJ/wet−kgである。
【0129】
【表6】

【0130】
【表7】

【0131】
[試験結果]
表8に、固体状炭素物質の投入速度(ton/日、湿ベース)、固体状炭素物質の湿ベース真発熱量(MJ/wet−kg)、吹き込んだ気体燃料の種類、乾ベース真発熱量(MJ/dry−kg)および送風量(Nm3/h)、並びに、製造された還元ガスの還元ポテンシャルを示す。
【0132】
【表8】

【0133】
比較例3−1では、気体燃料を吹き込むことなく、製造された還元ガスの還元ポテンシャルは0.79であった。また、比較例3−2または比較例3−3では、乾ベース真発熱量が低い高炉ガスまたは転炉ガスを吹き込み、比較例3−1と比べて還元ポテンシャルが低下した。本発明例3−1では、乾ベース真発熱量が高いLNGを吹き込み、還元ポテンシャルは、比較例3−1と比べて0.85に増加した。また、本発明例3−2では、乾ベース真発熱量が高いコークス炉ガスを吹き込み、参考例では、乾ベース真発熱量が高いLPGを吹き込み、本発明例3−2および参考例ともに、比較例3−1と比べて還元ポテンシャルは増加した。
【0134】
図4は、気体燃料の乾ベース真発熱量と製造された還元ガスの還元ポテンシャルとの関係を示す図である。同図では比較例3−2および3−3、本発明例3−1および3−2並びに参考例の試験結果を示し、気体燃料を吹き込まなかった比較例3−1の還元ポテンシャルを破線で示す。同図から、1Nm3当りの乾ベース真発熱量が10MJ以上である気体燃料を吹き込むことにより、製造された還元ガスの還元ポテンシャルを増加可能であることが確認できた。また、真発熱量が45MJを超えると、気体燃料の真発熱量の増加に対する還元ポテンシャルの増加量は僅かであった。ここで、真発熱量が高い分、気体燃料が高価となることを考慮すると、1Nm3当りの乾ベース真発熱量45MJ以下とするのが好ましいことが確認できた。
【0135】
4.微粒状予備還元物のブリケット化
[試験条件]
鉄鉱石類を予備還元した予備還元物の中で、塊状の粗粒状予備還元物は、直接、高炉で使用することができるが、微粒状予備還元物は、直接、高炉に投入することはできない。
【0136】
微粒状予備還元物はブリケット等に塊成化してから高炉に投入すべきである。そこで、ブリケット化の可能性を試験した。ブリケット化試験では、焼結鉱を予備還元した予備還元物を、粉砕して粒径5mm以下にした焼結鉱由来の微粒状予備還元物を用いた。微粒状予備還元物の成分分析値は表9に示すとおりで、金属化率が0.50および0.79の2種類の微粒状予備還元物を使用した。この微粒状予備還元物の一部を採取し、篩目が4mm、2.8mm、2.0mm、1.0mm、0.5mm、0.25mmおよび0.125mmの順で分級しての粒度分布を調査した。粒度分布の調査結果は、表10に示すとおりである。
【0137】
【表9】

【0138】
【表10】

【0139】
微粒状予備還元物はダブルロール型のブリケット化装置に供給した。ブリケット化装置のロール表面には、ブリケットの型枠となるアーモンド型のモールドが幅方向に1列設置されている。モールドは、寸法が縦28mm×横18mm×深さ4mmであり、製造されるブリケットの体積が3cm3程度となるように設計されている。ブリケット化する際、ロールにかかる圧縮圧力は55kN/cm(=ロールにかかる全荷重/ロール有効幅)とした。
【0140】
試験では、冷間でブリケット化した後に、ブリケットを水中に1分間沈め(水浸処理)、その後、ブリケットを大気中で、5日間、静置した(静置処理)。このようにして得られたブリケットの圧壊強度を測定した。ここでいう圧壊強度とは、ブリケットに、上方から荷重をかけ、破壊した時の荷重である。
【0141】
表11に、微粒状予備還元物の種類、ブリケット化条件、ブリケット化処理の処理速度、製品歩留りおよびブリケット圧壊強度を示す。ここで、製品歩留りとは、得られたブリケット(塊成化物)を分級し、粒径が10mm以上であるブリケット(塊成化物)の粗粒の質量(kg)をブリケット化装置に供給した予備還元物粉の質量(kg)で除したものである。
【0142】
【表11】

【0143】
[試験結果]
本発明例4−1では、金属化率が0.5である微粒状予備還元物(焼結鉱由来A)を使用し、静置処理後のブリケット圧壊強度は2076N/塊に達した。一方、本発明例4−2では、金属化率が0.79である微粒状予備還元物(焼結鉱由来B)を使用し、ブリケット圧壊強度は3520N/塊に達した。いずれも高炉使用する上で問題ない強度である。これらから、微粒状予備還元物を冷間で塊成(ブリケット)化し、ブリケットに水浸・静置処理を施すことにより、高炉に直接投入可能な強度にできることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の予備還元塊成化物の製造方法は、固体状炭素物質から還元ガスを安定的かつ効率的に製造する。更に製造された還元ガスを使用して、鉄鉱石類から金属化率の高い予備還元物を得る。この予備還元物から得られる予備還元塊成化物を高炉原料として用いることにより、高炉でのコークス比を大幅に低減できる。
【0145】
従って、本発明の予備還元塊成化物の製造方法を、高炉法による溶銑の生産に適用すれば、炭酸ガス排出量を低減することができる。特に固体状炭素物質としてバイオマスを用いれば炭酸ガス排出量の低減に大きく寄与することができる。
【符号の説明】
【0146】
1:ランス、 2:下部羽口、 3:上部羽口、
5:支燃性ガス(高濃度酸素ガス)、 6:補助燃料、 7:原料投入口、
8:固体状炭素物質、 9:充填層上端面、 10:ガス排出口、
11:還元ガス、 12:溶融スラグ、 13:溶融金属、 14:炉壁、
15:充填層上端面レベル測定装置、 16−1:温度測定センサー(炉上部)、
16−2:温度測定センサー(充填層上端面)、 18:溶湯排出口、
19:ガス化炉、 20:炉中心、
31:固体状炭素物質、 32:乾燥設備、 33:ガス化炉、
34:ランス、 35:支燃性ガス(高濃度酸素ガス)、 36:還元ガス、
37:ガス冷却装置、 38:除塵設備、 39:ダスト、 40:脱硫装置、
41:水分除去装置、 42:水、 43:還元ガス貯蔵タンク、
44:予備還元炉、 45:鉄鉱石類、 46:予備還元物、
47:粗粒状予備還元物、 48:篩い分級装置、 49:微粒状予備還元物、
50:ブリケット化装置、 51:ブリケット(塊成化物)、
52:粗粒状ブリケット(塊成化物) 53:高炉、 54:溶銑、
55:予備還元炉排ガス、 57:炭材、 58:天然ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランスを有する竪型のガス化炉を用い、この炉下部に固体状炭素物質からなる充填層を形成し、前記ランスから前記充填層の上端面に向けて酸素を70体積%以上含有するガスを吹き込んで還元ガスを製造する工程と、
該還元ガスとともに鉄鉱石類を予備還元炉に供給し、該予備還元炉内の最高温度を973K以上に加熱して前記鉄鉱石類を予備還元し、金属化率が0.4以上0.8以下である予備還元物を製造する工程と、
該予備還元物を粗粒と微粒とに分級して、粗粒の予備還元物を製造する工程と、
分級された微粒状予備還元物と粗粒状予備還元物のうちの微粒状予備還元物を塊成化して塊成化物を製造し、該塊成化物を粗粒と微粒とに分級して、粗粒の塊成化物からなる予備還元塊成化物を製造する工程と、を含むことを特徴とする予備還元塊成化物の製造方法。
【請求項2】
さらに、前記粗粒の塊成化物からなる予備還元塊成化物および前記粗粒状予備還元物を混合して予備還元塊成化物を製造する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の予備還元塊成化物の製造方法。
【請求項3】
前記固体状炭素物質として、1kg当りの湿ベース真発熱量が13.5MJ以上44.1MJ以下である固体状炭素物質を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の予備還元塊成化物の製造方法。
【請求項4】
前記充填層の上端面よりも高い位置から、1Nm3当りの乾ベース真発熱量が10MJ以上45MJ以下である気体燃料を、前記ガス化炉内に吹き込むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の予備還元塊成化物の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−251186(P2012−251186A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123043(P2011−123043)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】