説明

予測を伴うハイブリッド衛星測位

【課題】衛星測位を使用して2つのポジションフィックスを計算する。
【解決手段】RFフロントエンドを使用して、衛星測位信号を受信するステップと、アナログ・デジタル変換器を使用して、受信信号をサンプリングして信号サンプルを発生させるステップと、第1のポジションフィックスを計算するために、プロセッサを使用して、サンプルの第1の組が発生されるときにサンプルの第1の組を処理するステップと、計算と関連付けられる情報をメモリに記憶するステップと、第2のポジションフィックスを計算するためのその後の処理のために、サンプルの第2の組、または、サンプルの第2の組から得られる距離測定値をメモリに記憶するステップと、その後、第2のポジションフィックスを計算するためにサンプルの第2の組を処理し、第2のポジションフィックスの計算が第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報によって支援されるステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グローバル・ナビゲーション・サテライト・システム(GNSS)のための受信器、および、そのような受信器によって受信された衛星信号を処理する方法に関する。特に、本発明はグローバル・ポジショニング・システム(GPS)に関する。
【背景技術】
【0002】
GPSは、6つの異なる軌道面内にある最大で32個の周回軌道衛星(宇宙ビークル「SV」と呼ばれる)のネットワークから成る衛星に基づくナビゲーションシステムである。システム設計によって24個の衛星が必要だが、それよりも多い衛星があればカバレッジが向上する。衛星は絶えず動いており、24時間もしないうちに地球の周りで2つの完全な軌道を描く。
【0003】
衛星によって送信されるGPS信号は、規則的態様で連続的に繰り返される疑似ランダムコードを使用する直接シーケンススペクトル拡散として一般に知られる形態を成す。衛星は、公衆が自由に利用できる粗精度/捕捉コードすなわちC/Aコードと、通常は軍事用途のために確保される制限された精密コードすなわちPコードとを含む異なる拡散コードを伴う幾つかの信号を送信する。C/Aコードは、1000分の1秒ごとに繰り返す1.023MHzのチップレートで送信される1,023ビットの長さの疑似ランダムコードである。それぞれの衛星は別個のC/Aコードを送信し、それにより、衛星を一意的に特定できる。
【0004】
データメッセージは、各衛星によりC/Aコード上で変調され、送信衛星の詳細な軌道パラメータ(エフェメリス(ephemeris)と呼ばれる)などの重要な情報、衛星のクロックにおけるエラーに関する情報、衛星の状態(正常(healthy)または不正常(unhealthy))、現在の日付け、および、時間を含む。この情報は、正確なポジションを決定するためにGPS受信器に欠かせない。それぞれの衛星は、エフェメリスおよびそれ自身における詳細なクロック補正パラメータのみを送信し、したがって、支援されないGPS受信器は、ポジション計算においてそれが使用したい各衛星のデータメッセージの適切な部分を処理しなければならない。
【0005】
データメッセージはいわゆるアルマナックも含み、アルマナックは、他の全ての衛星に関するあまり正確でない情報を含み、かつ、あまり頻繁には更新されない。アルマナックデータにより、GPS受信器は各GPS衛星が一日中いるべき場所を常に推定でき、それにより、受信器は、いずれの衛星を探すべきかを更に効率的に選択できる。各衛星は、システム内の全ての衛星に関する軌道情報を示すアルマナックデータを送信する。
【0006】
従来のリアルタイムGPS受信器は、送信されたデータメッセージを読み出して、エフェメリス、アルマナック、および、連続使用のための他のデータを保存する。
【0007】
ポジションを決定するため、GPS受信器は、衛星によって信号が送信された時間と、その信号がGPS受信器によって受信された時間とを比較する。受信器は、時間差により、その特定の衛星がどの程度離れているのかが分かる。その衛星におけるエフェメリスにより、GPS受信器は衛星のポジションを正確に決定できる。複数の衛星からの距離測定値とそれらのポジションの知見とを組み合わせることにより、三辺測量によってポジションを得ることができる。最小限の3つの衛星を用いて、GPS受信器は、緯度/経度ポジション(2Dポジションフィックス)を決定できる。4個またはそれ以上の衛星を用いて、GPS受信器は、緯度、経度、および、高度を含む3Dポジションを決定できる。衛星から受信される情報は、GPS受信器内のリアルタイムクロック(RTC)をセットする(または補正する)ために使用することもできる。
【0008】
衛星からの信号の見掛けのドップラー偏移を処理することにより、GPS受信器は、移動の速度および方向(「対地速度」および「対地軌道」とそれぞれ称される)を正確に与えることもできる。
【0009】
衛星からの完全なデータ信号は37,500ビットナビゲーションメッセージから成り、これは、50bpsで送信するのに12.5分かかる。データ信号は25個の30秒フレームへ分けられ、各フレームが1500ビットを有し、これらは5個の6秒サブフレームへと分けられる。それぞれの6秒サブフレームは10個の30ビットワードへ分けられる。ポジションフィックス(エフェメリスなど)のために必要な全ての情報が各フレーム内に含まれ、そのため、GPS受信器は、一般に、いわゆるコールドスタートからポジションフィックスを生成するために約30秒を要する。これは、しばしば、「タイム・トゥ・ファースト・フィックス」(TTFF)と呼ばれる。
【0010】
第1のサブフレームはクロック補正データを与え、第2および第3のサブフレームはエフェメリスデータを与え、また、アルマナックデータは第4および第5のサブフレーム内にある。
【0011】
SVの全てが同じ周波数で送信する。特定の衛星からの信号を区別するため、受信器は、その衛星によって使用中であることが分かっているC/Aコードのレプリカを発生させて、このレプリカが入力信号と同期されるようにこのレプリカを合わせる必要がある。前記入力信号は、衛星から受信器へ移動する信号の飛行時間(一般的には約0.07秒)に主に起因して未知の量だけ遅延される。一般に、レプリカを入力信号と同期させるために必要なアライメントを受信器が正確に予測することは不可能であり、そのため、何らかの形態の検索が必要とされる。この場合、多くのアライメントが順々に試みられ、最良の適合が選択される。多くの候補アライメントを評価するこのプロセスは相関と称される。というのは、通常、受信信号が特定のSVからのC/Aコードを有する成分を含むかどうかを決定するために、受信器が各衛星ごとに順々に受信信号と既知のC/Aコードとの間で相関関数を実施するためである。相関関数は、複数の相対的なタイミングごとに計算されなければならず、また、相関ピークが見出されるときには、この相関は特定のタイミングおよび特定のSVに対応する。順々に発見されるタイミングは、SVからの特定の距離に対応する。
【0012】
それぞれの衛星のC/Aコードの検索は、受信器によって観察される衛星信号の見掛けの周波数が変化するという事実によって複雑化される。変化の主な根源は、衛星の動きに起因するドップラー効果;受信器の動きに起因するドップラー効果;ならびに、受信器の周波数合成器内の局部発振器(LO)のドリフトおよびオフセットである。そのため、C/Aコードの徹底的な検索は、一連の周波数シフトごとに一連の位相(時間的)シフトで相関関数の評価を必要とする。
【0013】
相関プロセスは時として「逆拡散」と称される。これは、このプロセスが信号からの拡散コードを除去するからである。決定されたコード位相−すなわち、相関関数のピークのタイミングは、距離計算で用いる正確なタイミング情報を明らかにする。しかしながら、コードが1000分の1秒ごとに繰り返されると、粗いタイミングも決定される必要がある。一般に、あまり頻繁に繰り返さないデータ成分は、50bpsデータメッセージやその特定の部分、例えばサブフレームプリアンブルまたはサブフレーム・ハンドオーバー・ワードの個々のビットなど、更に粗いタイミング評価のため(すなわち、GPS時間を得ることができるようにするため)に使用される。
【0014】
コード位相および粗いタイミング情報は、共に、「疑似距離(pseudo-range)」を含む。これは、それらの情報が衛星からのメッセージの飛行時間を特定するからである。この飛行時間は、光の速度cにより移動される距離に関連付けられる。これは、衛星のクロックと受信器のRTCとの間の相対的なオフセットが知られていないため、「疑似」距離または相対距離(真の距離ではない)である。しかしながら、このオフセットは全ての衛星に対して同じであり(それらのクロックが同期されるからである)、そのため、様々な衛星の組における疑似距離は、三辺測量計算により固有のポジションフィックスを決定するのに十分な情報を与える。
【0015】
GPS受信器の大部分は、衛星からの信号が受信されると、これらの信号を「リアルタイムで」処理することにより機能し、それにより、現在の時間における装置のポジションが報告される。そのような「従来の」GPS受信器は、常に、
− GPS信号を受信するのに適したアンテナと、
− 所望の信号を増幅し、フィルタリングし、中間周波数(IF)まで混合し、それにより、それらの信号が通常は数MHz程度のサンプリングレートで適したアナログ・デジタル(A/D)変換器を通過できるようにするアナログRF回路(しばしば、GPSフロントエンドと呼ばれる)と、
− 通常は何らかの形態のマイクロコントローラと組み合わされるA/D変換器により発生されるIFデータサンプルに関して相関プロセスを行なうデジタル信号処理(DSP)ハードウェアであって、前記マイクロコントローラが、前記信号処理ハードウェアを制御して所望のポジションフィックスを計算するために必要な「高レベル」処理を行なう、デジタル信号処理(DSP)ハードウェアと、
を備える。
【0016】
「ストア・アンド・プロセス・レイター」(「キャプチャ・アンド・プロセス」としても知られており、以下ではそのように称する)というあまり知られていない概念も詳しく調べられてきた。これは、従来のアンテナおよびアナログRF回路により収集されるIFデータサンプルを、該サンプルをその後のある時(秒、分、時間、または更には、数日)に、何らかの場所で処理する前に、何らかの形態のメモリに記憶することを伴う。このような場所は、処理リソースが大きく、かつ、受信器がバッテリによって給電されないことが多い。
【0017】
このことは、キャプチャ・アンド・プロセス受信器がリアルタイム受信器よりもかなり簡単であることを意味する。サンプルの短いセグメントだけ−例えば、データに値する100〜200msを記憶する必要がある。各SVからの(非常に遅い)データメッセージをデコードする必要はもはやなく、相関を行なって疑似距離を決定する必要もなく、また、三辺測量計算を実行してポジションフィックスを得る必要ももはやない。したがって、従来の受信器のデジタル信号処理ハードウェアの大半を排除でき、それにより、複雑さおよびコストが低減される。電力消費量もかなり低減され、それにより、バッテリ寿命が長くなる。
【0018】
ポジションフィックスを計算するために必要なDSPハードウェアを含む他のキャプチャ・アンド・プロセス受信器も提案されてきた。1つのモードにおいて、そのような装置は、GPS信号を受信し、サンプリングして、メモリに記憶するが、それらを処理しない。装置は、別個のモードへ切り換えられると、信号の受信を中止して、代わりに、予め記憶されたサンプルを処理し始める。この種の装置は、例えばユーザが旅行から戻った後に回顧的なトラックログまたは動作の履歴を発生させるのに適している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様によれば、
衛星測位信号を受信するためのRFフロントエンドと、
受信された信号をサンプリングして信号サンプルを発生させるためのアナログ・デジタル変換器と、
メモリと、
信号サンプルを処理し、距離測定値を得るとともにポジションフィックスを計算するためのプロセッサと、
を備える衛星測位受信器であって、
受信器は第1のモードを有し、この第1のモードでは、プロセッサが、
第1のポジションフィックスを計算するために、サンプルの第1の組が発生されると、このサンプルの第1の組を処理し、
この計算と関連付けられる情報を前記メモリに記憶するようになっており、
受信器は第2のモードを有し、この第2のモードでは、プロセッサが、第2のポジションフィックスを計算するための後の処理のために、サンプルの第2の組、または、サンプルの第2の組から得られる距離測定値をメモリに記憶するようになっており、
受信器は第3のモードを有し、この第3のモードでは、プロセッサが、
記憶されたサンプルの第2の組、または、距離測定値をメモリから読み出し、
それらを処理して第2のポジションフィックスを計算するようになっており、
前記処理は、第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報によって支援される、
衛星測位受信器が提供される。
【0020】
この衛星測位受信器は、リアルタイム受信器の利点と、キャプチャ・アンドオ・プロセス受信器の利点とを組み合わせるハイブリッド受信器である。既知の受信器と異なり、この衛星測位受信器は、リアルタイムナビゲーションもサポート可能な能力と組み合わされた、キャプチャ・アンド・プロセス技術の利点を提供する。本発明者等は、従来の見識に反して、単一の受信器が、状況に応じて、キャプチャ・アンド・プロセス受信器およびリアルタイム受信器のいずれかとして振る舞うことが有利である、特定の用途が存在することを認識した。例えば、時として野外レクリエーションで使用されるタイプのキャプチャ・アンド・プロセストラックログ装置では、緊急時に「目下の」ポジションフィックスを計算することが非常に有益となる場合がある。逆に、リアルタイム受信器においては、−例えば、リアルタイム測位機能が開始される前、かつ、起動直後の期間に−一時的にキャプチャ・アンド・プロセスモード技術で機能することが有益な場合がある。
【0021】
本発明の第1の態様に係る受信器は、第2のポジションフィックスを計算するための優れた方法を提供する。第1のポジションフィックスに関する既に利用できる情報を利用することにより、第2のポジションフィックスの計算をより効果的にまたは効率的にすることができる。すなわち、リアルタイムで計算される(第1の)ポジションフィックスに関する情報は、オフラインで計算される他の(第2の)ポジションフィックスの処理を容易にするために使用される。例えば、第2のポジションフィックスは、より迅速に、または、少ない計算労力で計算されてもよい。逆に、計算負担の増大を伴うことなく、第2のポジションフィックスにおける更に正確なまたは信頼できる結果が与えられてもよい。
【0022】
第1のモードでは、一般に、サンプルおよび距離測定値(コード位相または疑似距離)のいずれもメモリに記憶されない。すなわち、サンプルは、メモリに記憶されることなく、ポジションフィックスを速やかに計算するべく処理される。
【0023】
第1のモードにおける作業は、第2のモードにおける作業の前または後に行なわれてもよい。特に、サンプルの第1の組は、サンプルの第2の組の前または後に受信されてもよい(すなわち、この文脈における「第1」および「第2」という用語は、任意の順序または優先順位を意味するように理解されるべきではない)。しかしながら、第1のポジションフィックスと第2のポジションフィックスとの間の因果関係により(第2のポジションフィックスの計算を支援するためには、第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報を利用できなければならないため)、第2のポジションフィックスの計算が必然的に第1のポジションフィックスの計算後に行なわれることに留意されたい。
【0024】
距離測定値は、例えば、コード位相、キャリア位相、または、疑似距離測定値を備えてもよい。一般に、距離測定値は、衛星測位受信器から一群の測位衛星の中の1つの衛星までの距離に関する何らかの情報を(暗示的にまたは明示的に)与える値である。距離測定値は、距離によって、または、信号の飛行時間もしくは到達時間によって表わされてもよい。多くのタイプの距離測定値は、絶対的なまたは固有の測定値ではない−それらの測定値は一般にある程度の相対性または曖昧さを組み入れる。例えば、コード位相測定は、それ自身により、単一のビット周期のみを参照し(すなわち、拡散コードの1つの完全な繰り返しの範囲内で)、(相対的な)到達時間を特定する。衛星データメッセージのいずれのビット周期が観察されているかに関しては曖昧なままである。したがって、用語「距離測定値」は、ある程度の曖昧さを含む測定値ならびに絶対および/または固有距離測定値の両方を含むように理解されるべきである。
【0025】
第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報は、第1のポジションフィックスを計算するプロセスで得られた情報(すなわち、出力結果または中間結果)、または、第1のポジションフィックスを計算する過程で使用された情報(例えば、中間結果以外の入力データ;または、外部参照データ)であってもよい。
【0026】
第1のモードは、外部電源に対する受信器の接続に応じて選択されてもよい。これは、外部電源(カーバッテリなど)に接続されるときにはポジションフィックスをリアルタイムで生成するが、内部バッテリ電力で作動するときにはサンプル(または距離測定値)を記憶するハイブリッド受信器を提供する。記憶されたサンプルまたは中間測定値は、もし望ましいときにはポジションフィックスの遡及的計算に適している。これにより、装置は、豊富なエネルギ供給源に接続されるときには第1の高出力のリアルタイムナビゲーションモードで機能できるが、それ自身のバッテリで駆動するときには第2の低出力のオフライントラックログモードで作動できる。実際には、第2のモードは、待機状態−すなわちリアルタイムナビゲーション機能が必要とされず、装置が最小電力を消費するようになっているときに、対応してもよい。バッテリ寿命は、モード間の自動切り換えによって延ばされ得る。
【0027】
第2のポジションフィックスの計算を支援するために使用される第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報は、第1のポジション;第1のポジションと関連付けられる速度;サンプルの第1の組が受信された時間;サンプルの第1の組を受信する時間とサンプルの第2の組を受信する時間との間の時間差;その信号がサンプルの第1の組で検出された1つ以上の衛星のリスト;そのような衛星の検出されたキャリア周波数;そのようなキャリア周波数の検出されたドップラー偏移;サンプルの第1の組から得られる距離測定値;そのような距離測定値に適用される差分補正;第1のポジションフィックスの計算で使用されるエフェメリスデータ;衛星によって伝えられるデータメッセージの一部;衛星状態情報;衛星クロック補正データ;以上のいずれかと関連付けられる不確定性パラメータのうちの1つ以上の知見を備えてもよい。
【0028】
プロセッサは、データのこれらの断片のうちの1つ以上をメモリに記憶するようになっていることが好ましい。不確定性パラメータは、それが関連付けられる情報における確かさまたは不確定性の度合いを表わす。そのような不確定性は、例えば、数値誤差(ポジションパラメータに関しては「±25m」など)の期待値として、または、確率推定値として表わすことができる。
【0029】
受信器(または、受信器の一部−例えばプロセッサ)は、サンプルの第1の組、サンプルの第2の組、または、これらの両方の受信と関連付けられるタイムスタンプをメモリに記憶するようになっていることが好ましい。
【0030】
これは、第1のポジション計算から第2のポジション計算までの様々なパラメータの外挿(予測)を、これらのパラメータが経時的にどのように変化したかについての知見に基づいて容易にする。
【0031】
プロセッサは、サンプルの第1の組の受信とサンプルの第2の組の受信との間の経過時間を測定するようになっていることが好ましい。
【0032】
すなわち、サンプルの第1の組を生じさせる衛星信号の到達時間とサンプルの第2の組を生じさせる衛星信号の到達時間との間の差に関する記録が維持される。それぞれのタイムスタンプを差し引くことによって差を計算する場合よりも正確にこの差を測定することができてもよい。例えば、差は、高品質な高周波発振器信号などの受信器で発生される発振器信号の周期をカウントすることによって、または、衛星信号におけるキャリアの周期をカウントすることによって測定されてもよい。これは、精度を高めるために、周期信号の立ち上がりおよび/または立ち下りの数を観察してカウントすることによって行なわれてもよい。好ましくは、このカウント技術は、アナログ・デジタル変換およびその後のデジタル処理のために高周波クロック信号を発生させる周波数合成器によって生成される発振器信号に適用される。これにより、経過時間の測定は、高周波発振器の精度の利益を享受できる。
【0033】
第2のポジションフィックスの計算は、第1のポジションフィックスを計算するために使用されるエフェメリスデータに基づいて第2のポジションフィックスを計算するのに適するエフェメリスデータを予測するステップ、および、第1のポジションフィックスを計算するプロセスで決定された少なくとも1つのコード位相に基づいて、信号サンプルの第2の組において1つ以上の衛星のための拡散コードのコード位相を予測するステップ、のうちの一方または両方によって支援されてもよい。
【0034】
プロセッサは、更に、第3のポジションフィックスを計算するために、サンプルの第3の組が発生されるときにサンプルの第3の組を処理するとともに、第3のポジションフィックスをメモリに記憶するようになっており、第3のモードでは、読み出されたサンプルの第2の組を処理して第2のポジションフィックスを計算するときに、処理が、第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報と、第3のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報とによって支援される前記請求項のうちのいずれか一項の受信器。
【0035】
第2のポジションフィックスの計算は、第1および第3のポジションと関連付けられるパラメータの値に基づいて、少なくとも1つのパラメータの値の線形または非線形予測によって支援されてもよい。
【0036】
サンプルの第1の組がサンプルの第2の組の前に発生されかつサンプルの第3の組がサンプルの第2の組の後に発生された場合、これは、第1および第3のポジションフィックスと関連付けられる情報の間を補間すること(線形または非線形態様で)含んでもよい。
【0037】
予測されるべき少なくとも1つのパラメータは、例えば、位置座標、時間(衛星クロック時間の推定値など)、受信器のクロックエラーもしくはそのようなクロックエラーのドリフト率、距離測定値、または、キャリア周波数のドップラー偏移であってもよい。
【0038】
受信器は、第1のモードへ周期的に入り、そのモードで、サンプルの組が発生されるときにこのサンプルの組を処理し、ポジションフィックスを計算し、この計算と関連付けられる情報をメモリに記憶するように更になっていることが好ましい。
【0039】
このようにして、受信器は、意図的に第1のモードへ入って、時として、第2のモードでのその後の(オフライン)処理を支援するために情報を利用できるようにする。例えば、この手法は、新しいエフェメリスが規則正しい間隔でダウンロードされるようにするために使用できる。
【0040】
これに代えてまたはこれに加えて、第1または第2の動作モードの選択は、ユーザにより起動される機能に依存してもよい。例えば、リアルタイムナビゲーション機能の使用は、装置が第1のモードで動作することを必要とする。
【0041】
本発明の第2の態様によれば、
衛星測位信号を受信するためのRFフロントエンドと、
受信信号をサンプリングして信号サンプルを発生させるためのアナログ・デジタル変換器と、
メモリと、
信号サンプルを処理して距離測定値を得るとともにポジションフィックスを計算するためのプロセッサと、
を備える衛星測位受信器であって、
受信器が第1のモードを有し、この第1のモードでは、プロセッサが、
第1のポジションフィックスを計算するために、サンプルの第1の組が発生されるときにサンプルの第1の組を処理するとともに、
この計算と関連付けられる情報をメモリに記憶するようになっており、
受信器が第2のモードを有し、この第2のモードでは、プロセッサが、第2のポジションフィックスを計算するためのその後の処理のために、サンプルの第2の組、または、サンプルの第2の組から得られる距離測定値をメモリに記憶するようになっており、
受信器は、メモリに記憶される情報およびサンプルの第2の組または距離測定値を外部装置へアップロードするようになっており、外部装置により、サンプルの第2の組または距離測定値を処理して第2のポジションフィックスを計算することができ、前記処理が第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報によって支援される、衛星測位受信器が提供される。
【0042】
第2のモードにおいて、プロセッサは、サンプルの第2の組をメモリに記憶するようになっていてもよい。あるいは、幾つかの実施形態では、(例えば、A/D変換器によって)サンプルがメモリに直接に記憶され、それにより、プロセッサを迂回してもよい。
【0043】
本発明のこの態様に係る受信器は、前述した第1の態様に類似しており、同様の利点を与える。この態様に係る受信器は、第2のポジションフィックスが受信器自身によって計算されない−代わりに、第2のポジションフィックスを計算するために使用されるべきデータが外部装置へアップロードされるという点において第1の態様の受信器と異なる。
【0044】
外部装置は、例えば、汎用パーソナルコンピュータ、もしくは、サーバコンピュータ、または、他の電子機器であってもよい。
【0045】
プロセッサは、サンプルの第1の組、サンプルの第2の組、または、これらの両方の受信と関連付けられるタイムスタンプをメモリに記憶するとともに、前記タイムスタンプまたは複数のタイムスタンプを外部装置へアップロードするようになっていてもよい。
【0046】
受信器/プロセッサ/クロックは、サンプルの第1の組の受信とサンプルの第2の組の受信との間の経過時間を測定するようになっていてもよい。
【0047】
本発明の第3の態様によれば、
予め記憶された衛星信号サンプルからポジションフィックスを計算する方法であって、
衛星測位受信器から、
衛星信号サンプルの第1の組から受信器によって計算される第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報を受けるとともに、
衛星信号サンプルの第2の組または衛星信号サンプルの第2の組から得られる距離測定値を受ける、
ステップと、
第2のポジションフィックスを計算するためにサンプルの第2の組または距離測定値を処理するステップと、
を備え、
前記処理が第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報によって支援される、方法が提供される。
【0048】
本発明の第3の態様に係る方法は、前述した第2の態様に係る装置よってアプロードされるデータを処理するのに適している。すなわち、この方法は、受信器からデータを受信する外部装置によって実行されるのに適している。
【0049】
第2のポジションフィックスの計算を支援するために使用される第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報は、先に挙げられた項目のうちの1つ以上の知見を備えてもよい。
【0050】
方法は、データのこれらの断片のうちの1つ(または、複数のデータ断片から成る任意の組み合わせ)を衛星測位受信器から受信するステップを更に含んでもよい。
【0051】
方法は、サンプルの第1の組、サンプルの第2の組、または、これらの両方の受信と関連付けられるタイムスタンプを衛星測位受信器から受信するステップを更に含んでもよい。
【0052】
方法は、受信器がサンプルの第1の組を受信した時間と受信器がサンプルの第2の組を受信した時間との間の経過時間の測定値を衛星測位受信器から受信するステップを更に含んでもよい。
【0053】
支援される処理は、第1のポジションフィックスを計算するために使用されるエフェメリスデータに基づいて第2のポジションフィックスを計算するのに適するエフェメリスデータを予測することを含んでもよい。
【0054】
第2のポジションフィックスの計算は、第1のポジションフィックスの計算中に決定された少なくとも1つのコード位相に基づいて信号サンプルの第2の組において1つ以上の衛星のための拡散コードのコード位相を予測することによって支援されてもよい。方法は、第1のポジションフィックスの計算で決定される少なくとも1つのコード位相を衛星測位受信器から受信することを更に含んでもよい。
【0055】
本発明の第4の態様によれば、衛星測位を使用して2つのポジションフィックスを計算する方法であって、
RFフロントエンドを使用して、衛星測位信号を受信するステップと、
アナログ・デジタル変換器を使用して、受信信号をサンプリングして信号サンプルを発生させるステップと、
第1のポジションフィックスを計算するために、プロセッサを使用して、サンプルの第1の組が発生されるときにサンプルの第1の組を処理するステップと、
計算と関連付けられる情報をメモリに記憶するステップと、
第2のポジションフィックスを計算するためのその後の処理のために、サンプルの第2の組、または、サンプルの第2の組から得られる距離測定値をメモリに記憶するステップと、
その後、第2のポジションフィックスを計算するためにサンプルの第2の組を処理し、第2のポジションフィックスの計算が第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報によって支援されるステップと、
を備える方法が提供される。
【0056】
この方法は、本発明の第1の態様に係る受信器によって全てが行なわれてもよい。あるいは、この方法は、前述したように外部装置と協働して作動する本発明の第2の態様に係る受信器などの別個の分散型装置によって行なわれてもよい。
【0057】
また、それがコンピュータ上で実行されるときに請求項11から請求項13のいずれか一項のステップの全てを行なうようになっているコンピュータプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラム、および、コンピュータ可読媒体で具現化されるそのようなコンピュータプログラムも提供される。
【0058】
ここで、添付図面を参照して、本発明を一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係るGPS受信器を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るGPS受信器のための方法のフローチャートである。
【図3】第2の実施形態に係るGPS受信器のための方法のフローチャートである。
【図4】第2の実施形態に係るGPS受信器の外部の装置によって実行される方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1は、本発明の実施形態にしたがって動作するのに適するGPS受信器を示している。GPS受信器5は、RFフロントエンド12に結合されるアンテナ10を備える。RFフロントエンド12は、アンテナ10を介して受信されるGPS信号を増幅するための回路を含む。また、RFフロントエンドは、帯域外干渉を軽減するためのフィルタリング回路、さらに、ミキサも含む。ミキサは、受信信号と周波数合成器14により生成される局部発振器(LO)信号とを乗じて、和周波数および差周波数の信号を発生させる。周波数合成器14は、基準発振器16により生成される高周波出力OSC1により駆動される。本実施形態において、基準発振器16の高周波出力OSC1は26MHzの周波数で動作する。更なる適切なフィルタリングの後、RFフロントエンド12におけるミキシング動作により、アナログ・デジタル(A/D)変換器18に入力される中間周波数(IF)信号が生成される。A/D変換器18により発生される信号サンプルは、処理のためにプロセッサ20へ出力される。A/D変換器18およびプロセッサ20はいずれも、周波数合成器14によって発生される高速クロック出力CLKによってクロックされる。なお、RFフロントエンド12およびA/D変換器18のアナログ回路は当業者に良く知られるような従来型であってもよい。
【0061】
プロセッサ20は、A/D変換器18から受信される信号サンプルを処理するための2つのモードを与える。第1のモードにおいて、プロセッサは、信号が受信されてサンプリングされると直ぐにサンプルを処理するように動作する。この処理は、疑似距離を得ること、および、ポジションフィックスを計算することを含む。したがって、このモードは、目下のポジションフィックスが与えられるため、リアルタイムナビゲーションに適している。第2のモードにおいては、その代わりに、プロセッサは処理を完了することなくデータをメモリ22に記憶するように動作可能である。ここに記載される実施形態において、メモリ22に記憶されるデータは、A/D変換器18によって与えられるIF信号の未加工サンプルを備える。しかしながら、他の実施形態において、メモリ22に記憶されるデータは、疑似距離または他の距離測定値などの部分的に処理されたデータを備えてもよい。
【0062】
現在の時間の経過を追うためにリアルタイムクロック(RTC)24も設けられ、該リアルタイムクロックは、メモリ22に記憶されるデータと関連付けられるタイムスタンプを生成するために使用できる。これにより、データが記憶されたおおよその時間を、その後に決定できる。RTC24は、基準発振器16により生成される第2の出力OSC2によって駆動される。しかしながら、RTC24は周波数合成器14に必要とされる速度よりも遅い速度で動作するため、低周波出力OSC2を与えるために基準発振器16内で分周器が使用される。このようにして、基準発振器16は、単一の水晶からマスタークロック信号を発生させるマスター発振器として作用し、周波数合成器14およびRTC24の両方がマスタークロック信号に同期される。本実施形態において、基準発振器16の低周波出力OSC2は、約1000の分周器比率を示す約26kHzの周波数で動作する。
【0063】
なお、プロセッサ20は、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)などのカスタムメイドのハードウェア装置として実施されてもよい。あるいは、プロセッサ20は、適切にプログラムされた1つ以上の汎用処理ユニットまたはデジタル信号プロセッサ(DSP)を備えてもよい。いずれかの代替手段の実施は、当業者の能力の範囲内に十分ある。
【0064】
GPS受信器5は、通信リンクを介してパーソナルコンピュータ30に接続できる。このリンクは、有線(例えばUSB)であってもよくまたは無線(例えばブルートゥースまたはWLAN)であってもよい。幾つかの実施形態では、衛星信号の処理の一部がパーソナルコンピュータで行なわれてもよい。これについては、以下の実施例で更に詳しく説明する。
【0065】
ここで、図2を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0066】
ステップ100では、GPS受信器5がGPS信号を受信する。これらの信号は、GPS信号サンプルを発生させるために、A/D変換器18によりリアルタイムにデジタル化される(110)。第1のモードで動作するプロセッサは、ポジションフィックスを計算するために、サンプルの第1の組をリアルタイムで処理する(120)。この計算に関する情報はメモリ22に記憶される(130)。
【0067】
受信器5は、その後のある時点で、第2のモードに切り換わる。このモードでは、その後のオフライン処理のために、サンプルの第2の組がメモリ22に記憶される(140)。
【0068】
第1の実施形態によれば、その第1および第2のモードに加えて、プロセッサ20が第3のモードを有する。このモードにおいて、プロセッサ20は記憶されたサンプルの第2の組をメモリ22から読み出すようになっている。また、プロセッサは、第1のポジションフィックスの計算に関する記憶された情報をメモリ22から読み出す。プロセッサ20は、第2のポジションフィックスを計算するために、読み出されたサンプルの組を処理する(150)。この処理150は、同様にメモリから読み出されている第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報によって支援される。以下、支援される処理および該処理をサポートする情報について更に詳しく説明する。
【0069】
図2の例では、プロセッサが第2のモード後のある時に第3のモードに入る。したがって、第2のモードにおいてサンプルを記憶するステップ140と、第3のモードにおいてこれらのサンプルを処理するステップ150との間に、ディレイが存在する。
【0070】
ここで、図3を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。この実施形態は第1の実施形態に類似しており、最初のステップは同じである。第2の実施形態は、処理ステップ150を行なう代わりに、受信器が、記憶されたサンプルの第2の組と第1のポジションフィックスの計算に関連する記憶された情報とを、外部コンピュータ装置30へアップロードする(145)、という点が異なる。その後、第2のポジションフィックスを計算するためのサンプルの第2の組の処理が、外部装置30によって行なわれる。
【0071】
外部装置30によって実行される方法が図4に示されている。ステップ200において、装置30は、第1のポジションフィックスの計算に関連する情報をGPS受信器5から受信する。次に、装置30は、以前に受信器5により記憶されたGPS信号サンプルの(第2の)組を受信する(210)。最後に、ステップ150aにおいて、第2のポジションフィックスを計算するために、外部装置30は、アップロードされたGPS信号サンプルの組を処理する。この処理150aは、第2のポジションフィックスの計算を支援するために第1のポジションフィックスに関する情報を利用する。
【0072】
いずれの実施形態でも、第2のポジションフィックスの計算で使用される、第1のポジションフィックスに関する情報は、種々のタイプであってもよい。同様に、この情報が処理を支援する方法が様々であってもよい。ここで、幾つかの実施例について説明する。
【0073】
実施例1
この実施例において、第1のポジションフィックスに関する情報は、第1のポジション自身の知見−すなわち、リアルタイムに計算される第1のポジションの座標を備える。このポジションは、第2のポジションを推定するために使用できる。ポジションの最初の推定を行なうことにより、考え得る可視衛星(「宇宙ビークル」SV(Service Vehicles)として知られる)を予測できる。その結果、非拡散プロセスでは、更に効率的に検索を行なうことができる。例えば、SVの同じ組が可視である(すなわち、信号サンプルの第2の組で検出できる)と想定され得る。したがって、相関演算は、これらのSVのためのPNコードを優先させることができる。
【0074】
第1のフィックスのポジションが利用できる場合には、衛星軌道データ(エフェメリスなど)を使用して、信号サンプルの第1の組が発生されたときに第1のポジションから見えたであろう衛星を決定できる。したがって、第1のポジションフィックスの時間も知られ(または、推定され)なければならない。
【0075】
あるいは、信号サンプルの第1の組で検出される衛星のリストを明示的に記憶することによって、同様の結果を得ることができる。このようにすると、第1のポジションフィックスの時間を知らない場合であっても、相関検索を導くためにリストを使用できる。
【0076】
実施例2
この実施例において、第1のポジションフィックスに関する情報は、第1のポジションフィックスのタイムスタンプ−すなわち、信号サンプルの第1の組が発生された時間の記録を備える。これは、サンプルの第2の組のタイムスタンプと共に、または、サンプルの第1および第2の組の捕捉間で測定される経過時間(時間差)と共に使用されてもよい。
【0077】
これは、絶対的な、または、サンプルの第1の組の捕捉時間に対する、信号サンプルの第2の組の捕捉に対応する時間の推定を可能にする。
【0078】
第1のポジションフィックスを計算するプロセスでは、第1のポジションに対応する正確な(サテライトクロック)時間が決定される。決定されると、この情報をメモリ22に記憶することは、あまり付加的な負担ではない。信号サンプルの第2の組の捕捉時間も記録される場合には、時間差を計算できる。あるいは、サンプルの第2の組が捕捉されるときに、第1のポジションフィックス以降の経過時間の長さを直接に測定できる。
【0079】
国際公開第2009/000842号パンフレットは、全ての組を一緒に処理する際に効率を高めるために、IFデータサンプルの別個に捕捉された組の相対的なタイミングをどのように使用できるかを既に開示している。また、これは、第1の(リアルタイムな)ポジションフィックスとサンプルの第2の(記憶された)組との相対的なタイミングに対して適用することもできる。
【0080】
第1のポジションフィックスの既知の時間およびポジションを基準として使用して、サンプルの第2の組のサテライトクロック時間(協定世界時、UTC)を予測できる。また、これにより、第2のポジションフィックスの計算に役立つ様々なパラメータを予測できる。
【0081】
・可視衛星の組を予測できる。
【0082】
・衛星データメッセージにおけるビット位置を予測できる。これはコード位相測定の曖昧さを排除し、それにより、コード位相測定から固有の疑似距離を直ちに推測できる。この場合、サンプルの第1の組におけるビット位置に関する情報は、第1のポジションフィックスが計算されるときに、メモリに記憶されるのが好ましい。この情報は、サンプルの第2の組におけるビットアライメントを予測するために、時間差と共に使用される。
【0083】
・サンプルの第2の組とリアルタイムなフィックスとが互いに適度に近い(受信器のリアルタイムクロック24および/または基準発振器16の質にも依存するが、一般的には、数分以内)場合には、時間情報がコード位相予測を可能にするのに十分に正確となり得る。したがって、検索労力が減少され、感度が高まる。この場合、サンプルの第1の組のコード位相に関する情報がメモリに記憶されるべきである。この情報は、サンプルの第2の組のコード位相を予測するために、時間差と共に使用される。これは、それぞれの衛星ごとに個別に行なわれてもよい。
【0084】
・また、ドップラー偏移(または、観察されるキャリア周波数も同様)の大きさなどのパラメータは、経時的にゆっくりと変化しやすく、したがって、一般的には適度に短い時間間隔にわたって捕捉されるサンプルの組の間で関連付けられる(なお、ドップラー偏移は、一般に、衛星の動きと受信器LOオフセットとによって支配され、これらの両方がゆっくりと変化している)。この見識は、位相シフトと同様に周波数の大きさにおいて、相関検索方法をより良く優先させるために使用できる。この場合には、サンプルの第1の組で観察されるキャリア周波数および/またはドップラー偏移がメモリ22に記憶されるべきである。この情報は、サンプルの第2の組のキャリア周波数(またはそれぞれ、ドップラー偏移)を予測するために、時間差情報と共に使用される。先と同様に、これは、それぞれの衛星信号ごとに別個に行なわれてもよい。
【0085】
サンプルの第2の組は、完全な日/時ではなく単純な経過時間カウンタを用いて、注釈付けることができる。これは、絶対UTC日/時を第1のリアルタイムなフィックスから推定できるからである。より正確な時間オフセット測定のため、受信器は、サンプルの第1の組と第2の組との間の1つ以上の衛星から、搬送波の周期をカウントできる。これと同様の手法が、当業者に知られるキャリア位相ナビゲーションで使用される。更に高い精度は、半周期をカウントすることにより−例えば立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジの両方をカウントすることにより可能となり得る。
【0086】
実施例3
この実施例では、第1のポジションフィックスと関連付けられる情報が、衛星軌道データを備える。第1のポジションフィックスを計算するため、受信器5は衛星エフェメリスデータにアクセスしなければならない。これは衛星データメッセージからデコードされてもよく、または、支援GPS(A−GPS)システムと同様に他の情報源からダウンロードされてもよい。2度エフェメリス情報を得るのではなく、リアルタイム演算により得られるエフェメリスを再使用できる。エフェメリスがそれらの通常の有効期間内にある場合には、エフェメリスは直接に使用されてもよい。エフェメリスがそれらの通常の有効期間外にある場合には、軌道予測技術を使用して、過去または未来へのSV動作を外挿することができる。そのような技術は、衛星のダイナミクスを予測するために、天体力学モデルを使用する。
【0087】
これらの異なる実施例で使用される異なるタイプの情報を、有益に組み合わせて使用できる。例えば、(第1の実施例の場合のような)ポジションの使用を(第2の実施例の場合のような)時間の使用と組み合わせて、より良い支援を行なえることが有益である。第1のポジションおよび経過時間に基づいて、装置の想定し得るポジションの軌跡を推定できる。移動の速度および方向の知見を使用して、サンプルの第2の組が発生されたときのポジションを推定できる。あるいは、移動速度を測定できない場合には、GPS受信器が対象としている用途の知見に基づいて、速度を仮定することができる。例えば、GPS受信器が自転車のアクセサリとして設計される場合には、一組の仮定をすることができる。一方、GPS受信器が車内ナビゲーション装置として設計される(または、車のシガレットライターソケットにより給電される携帯用ナビゲーション装置である)場合には、より高い速度が想定されてもよい。時間およびポジションのおおよその推定が良好であればあるほど、サンプルの第2の組の処理時に更に見込みのある高い効率向上が得られる。例えば、更に正確にコード位相検索を行なうための開始点および検索範囲を選択するべく、情報を使用できる。
【0088】
いかなる場合でも、第2のポジションの計算処理が後に起こるため、支援が時間的に前(前のリアルタイムなポジションフィックスを使用する)になることも、時間的に後(後のリアルタイムなポジションフィックスを使用する)になることもあり得ることに留意することが重要である。また、多くの場合、支援は、単一の観察から単に外挿するのではなく、対象の記憶されたサンプルの両側のリアルタイムデータの間を補間することによって、更に正確にかつ効果的に達成され得る。
【0089】
ここで、補間は、第3のポジションフィックスをリアルタイムで計算するために、サンプルの第3の組が発生されて処理されたことを意味する。したがって、サンプルの第1の組をリアルタイム処理することによってもたらされる第1のポジションフィックスと、サンプルの第3の組のをアルタイム処理することによってもたらされる第3のポジションフィックスとを利用できる。これらは、サンプルの第2の組から第2のポジションフィックスの計算を支援するために使用される。第1および第3のフィックスのうちの一方がサンプルの第2の組よりも時間的に早く、第1および第3のフィックスのうちの他方が時間的に遅いのが好ましい。しかしながら、両方のフィックスがサンプルの第2の組よりも時間的に早い場合、または、両方のフィックスが時間的に遅い場合には、2つのポジションフィックスからの予測も有用である。それにもかかわらず、以下の実施例では簡略化のため、サンプルの第2の組の(時間軸上の)それぞれの側に1つのリアルタイムフィックスがあるという意味で、「補間」に言及する。
【0090】
このとき、両方のリアルタイムフィックスからの様々なパラメータを使用して、サンプルの第2の組の処理を支援することができる。これらは以下を含む(しかし、以下に限定されない)。
【0091】
・受信器のポジション(すなわち、第1および第3のポジションフィックス)。これは、好ましくは、何らかの基準座標系のx、y、zデカルト座標として表わされてもよいが、緯度、経度、高度として表わすこともできる。
・クロックエラー(受信器のリアルタイムクロック24により測定される時間と、同期衛星クロックにより決定されるGPS時間との間の明らかな相違)。
【0092】
予測のために単一のリアルタイムフィックスだけが使用される場合、これらのパラメータが任意の方向に移動し得る。リアルタイムフィックスとサンプルの第2の組の発生との間の時間差が長ければ長いほど、成されなければならない許容量(ポジションの偏差のために何らかの上限まで−例えば、地球のサイズ)が大きくなる。
【0093】
(例えば)サンプルの第2の組におけるクロックエラーの限界は、以下のように表わすことができる。
ClkErrR+/−(MaxClkErrRate*(TC−TR))
(ここで、ClkErrRは、時間TRにおいてリアルタイムフィックスで測定されたクロックエラーであり、捕捉が時間TCで記録されている。また、MaxClkErrRateは、クロックエラーの最大変化率−通常は受信器の基準発振器16で使用される水晶発振器部分の仕様により規定され、100万分の1で測定される−である)
サンプルの第2の組の両側でリアルタイムフィックスが利用できる場合には、以下の幾つかの想定し得る改良が存在する。
【0094】
1)対象のパラメータにおける限界は、リアルタイムな測定の両方によって抑制される。したがって、例えば、最大クロックエラーは、
ClkErrR1+(MaxClkErrRate*(TC−TR1))、および、
ClkErrR2+(MaxClkErrRate*(TR2−TC))
のうちの最小である。
最小クロックエラーは、
ClkErrR1−(MaxClkErrRate*(TC−TR1))、および、
ClkErrR2−(MaxClkErrRate*(TR2−TC))
(TR1がTCの前に来て、TR2が後の場合)
のうちの最大である。
2)相関検索をClkErrR1とClkErrR2との間の線形補間(TR1、TC、および、TR2に比例する)に集中することができる。
3)2つのリアルタイムな値が互いにかなり近い場合(これが一般的)には、MaxClkErrRateの値を更に減らすことができる。これは、クロックエラーが前の値に戻る前に大きく偏位することはほとんどないからである。
【0095】
これらの改良のそれぞれの効果は、非拡散中にコード位相における検索範囲を(多くの場合にはかなり)減少させること、および、より良好な中心値(すなわち、初期推定値)を与えることである。これは、成功率を高めやすく、また、計算コストを低減する。
【0096】
補間は、測定誤差のための項を含んでもよい−例えば、前述した測定クロックエラーClkErrR1およびClkErrR2が不確定であってもよい。不確定性が大きくなる速度は、より洗練された(例えば、非線形)態様でモデリングされてもよい。受信器速度およびクロックドリフト(すなわち、クロックエラーの変化率)の(リアルタイムフィックスからの)知見を組み入れることが望ましい場合もある。
【0097】
前述した実施形態は、ある時には第1のモード(リアルタイムな測位)にあるGPS受信器5に依存し、他の時には第2のモード(キャプチャ・アンド・プロセス)にあるGPS受信器5に依存する。これは装置の使用法に依存してもよい。すなわち、例えば、ユーザがリアルタイムナビゲーション機能を使用する必要があるときに、リアルタイムな行動がユーザによって始められてもよい。あるいは、介在する記憶された信号サンプルの組のその後のオフライン処理を意図的に支援する目的で、受信器4が周期的に第1のモードに入るとともに、少なくとも1つのリアルタイムなポジションフィックスを実行することが有益な場合がある。これにより、例えば、何らかのエフェメリスが数時間ごと(または、有効期間を延ばすために軌道予測を使用する場合には、数日ごと)にダウンロードされるようにすること、または、ポジションフィックスが時々試みられるようにすることが可能となる。
【0098】
前述した実施形態において、サンプルの第2の組は、「未加工」形態で−特に、サンプルされた中間周波数(IF)信号として記憶される。すなわち、サンプルは、更なる処理を伴うことなく、デジタル化の直後に記憶される。本発明の他の実施形態では、距離測定値などの中間データを得るためにサンプルの第2の組がリアルタイムで処理されてもよい。その後、これらの距離測定値が記憶されてもよい。これの1つの利点は、記憶されるデータ量が一般に少ないという点である。しかしながら、第2のモードでは、更に多くの計算労力(したがって、電力消費量)を必要とする。
【0099】
距離測定値が記憶される場合には、本発明の実施形態を依然として使用し、距離測定値からポジションフィックスの計算を支援できる。この場合、一般に、前述したように、第2のポジションフィックスの計算を支援するために使用される第1の(リアルタイムな)ポジションフィックスと関連付けられる情報は、タイムスタンプまたは時間差を伴うエフェメリスなどの衛星軌道データである。例えば、記憶された距離測定値が疑似距離を含む場合には、第1のポジションフィックスに関連する記憶された衛星軌道情報を(相対時間の知見と共に)使用して、ポジションフィックスを計算できる。
【0100】
軌道データに加えて、衛星状態および/またはクロック補正に関する情報が第2のポジションの計算を支援できる。記憶された距離測定値が(全疑似距離ではなく)コード位相だけを含む場合には、更なる情報が役立つ場合がある。特に、サンプルの第2の組の時間付近で、各SVによって、データビットパターンのコピーが伝えられるのが有益である。そのような情報が利用できる場合には、記憶された一連の信号サンプルを既知のビットシーケンスと比較することでデータメッセージにおけるポジションを確立でき、それ故に、コード位相における曖昧さを解消できる。しかしながら、異なる時間のためのデータメッセージのそのようなコピーは、通常、第1のポジションフィックスの計算から得られないこと−すなわち、コピーを他の手段によって得なければならないことに留意されたい。国際公開第2009/000842号パンフレットは、全ての衛星によって伝えられるデータメッセージの完全なコピーを使用し、想定し得るよりも短い継続時間の捕捉(サンプルの組)から、どのようにして疑似距離およびポジションフィックスを計算できるようにするのか、を開示する。
【0101】
更なる例として、差動GPS(D−GPS)システムが当該技術分野において知られており、このシステムでは、測位の精度を高めるために補正が適用される。補正を適用する1つの一般的な方法は、受信されたGPS信号から形成される距離測定値を補正することである。これは、測位エラーの大きな出所が電離圏および対流圏の歪みに起因するからである。これらの歪みは電磁波の飛行時間と移動距離との間の関係を歪めるため、距離測定値にエラーをもたらす。これらのエラーは、適度な時間および距離にわたって比較的安定している。したがって、受信器5がそのリアルタイムなポジション計算においてDGPS補正を使用する場合には、補正がメモリ22に記憶されるのが有利な場合がある。その後、第2のポジションフィックスを計算するために信号サンプルの第2の組(または、サンプルから得られる距離測定値)を処理するときに、同じ補正を適用できる。補正は、受信器がほぼ同じ領域内にあり、かつ、大気伝搬状態が大きく変わらない限りにおいて、有益である。
【0102】
本発明を図面に図示して前述した説明で詳しく記載してきたが、そのような図示および説明は、例示的または典型例であると見なされるべきであり、限定的に見なされるべきではない。つまり、本発明は開示された実施形態に限定されない。
【0103】
とりわけ、幾つかの実施形態では、全疑似距離を測定して記憶する代わりに、受信器がコード位相を記憶する。これは、粗いタイミング(データメッセージにおけるポジション)を確立するために必要とされる更なる処理を避ける。しかしながら、この場合には、粗いタイミングの曖昧さを解決できるようにするため、コード位相がその後に処理されるときに補足的な情報が必要とされるであろう。したがって、一般に、何らかの他の情報をコード位相と共に記憶するか、別個に得る必要がある。
【0104】
粗いタイミングは多種多様な方法で決定することができ、そのため、コード位相を増やすために記憶されるべきデータのタイプも幅広く変化し得る。最終的に、必要なのは、コード位相測定値が対応する時刻のおおよその推定値であり、また、この推定値を衛星クロックに関連付けるための何らかの方法である。その場合、これにより、データメッセージにおけるポジションを決定できる。おおよその時間は受信器の内部リアルタイムクロックから決定することができる。ただし、曖昧さを解決できるように十分に正確にこのリアルタイムクロックと衛星クロックとの間の関係を確立できる場合に限る。したがって、1つの実施例では、測定されたコード位相を補足するために、内部リアルタイムクロックによって発生されるタイムスタンプを記憶することができる。衛星クロックとの関係は、衛星クロック情報を(局所的なタイムスタンプと共に)引き出すのに十分長い信号サンプルのブロックを、間欠的に記憶することによって、確立できる。粗いタイミングを決定するための別の方法は当業者に明らかである。例えば、粗いタイミングを外挿するために(コード位相が測定された時間における)ポジションの粗い推定値を使用することができる(タイミングは、全ての時刻に受信器に対する衛星の相対的なポジションに一意的に関連付けられるからである)。粗いポジション推定値は、何らかの外部ソースから入手でき、または、例えば、衛星群の観察されたドップラー偏移から計算できる。このように、見掛けの(観察された)衛星放送周波数を記憶することは、記憶されたコード位相のための補足にも適し得る。
【0105】
国際公開第2006/018803号パンフレットは、信号サンプルと共にタイムスタンプを記憶する、1つの効率的で効果的な方法について記載する。すなわち、GPS信号サンプルのごく一部をタイムスタンプビットによってメモリに簡単に上書きする(置き換えする)ことができる。これは、タイムスタンプの別個の記録の必要性を回避するだけでなく、受信されたサンプルに対するタイムスタンプの正確な同期化を確保する。サンプルの捕捉された組の僅かな欠けた部分は、通常、その後の処理ステップを悪化させない。
【0106】
受信器5は、支援サーバからアルマナック、エフェメリス、または、場合により全衛星データメッセージ記録を得ることができる、支援(assisted)GPS(A−GPS)受信器であってもよい。サーバは、固定GPS受信器または世界中に分散される受信器のネットワークから、この情報を収集してもよい。これらの基準受信器のそれぞれは、デコードされた衛星データメッセージを中央データベースへ報告する。あるいは、モバイルGPS受信器のネットワークから支援データを動的に収集できる。すなわち、それぞれのGPS受信器は、衛星データメッセージのそれ自身の断片的な観察結果を中央サーバと共有する。サーバは、これらの観察結果を集めて完全な記録を形成し、その後、全ての受信器がこの記録にアクセスできる。上述したように、データ支援サーバとの通信は、任意の都合の良い手段によって行なうことができるが、通常はある種の無線データ接続を介してなされる。
【0107】
公称的に古い衛星軌道データは、衛星の軌道を外挿するより先進的な技術を使用することによって、改善されてもよい。例えば、衛星軌道のより良い推定値をもたらすために、(地球、太陽、および、月のような)天体の動き、相互作用、および、重力的影響のモデルが使用されてもよい。これにより、通常の有効期間をかなり(前後のいずれかで)外れても、エフェメリスおよびアルマナック情報を使用できる。
【0108】
受信器5が動作するモードは、有効な衛星軌道データ(例えばエフェメリス)の利用可能性に基づいて選択されてもよい。他の実施形態では、動作モードの選択は、他の指標に基づいてもよい。例えば、装置が外部電源と接続されている場合、受信器5はリアルタイムにサンプルを処理してもよい(第1のモード)。このことは、外部電源が存在するときは、生の(live)位置計算に必要とされるエネルギ集中(energy-intensive)処理が行われるだけであることを意味する。装置が内部電源で動作している場合、バッテリ寿命をのばすために装置は第2のモード(ポジションフィックスを計算することなく、サンプルまたは擬似距離を記憶する)で動作する。
【0109】
加えて、あるいは、代案として、外部電源の検出が、(装置が第2のモードで動作している間に)メモリに記憶されたデータの処理を引き起こすために使われてもよい。つまり、外部電源への接続に応答して、受信器は第3のモードに入ってもよい。第3のモードの処理機能は、第1および第2のモードの処理機能と並行して行われてもよい。すなわち、第1のモードと第3のモード、および、第2のモードと第2のモードは、相互に排他的であるわけではない。
【0110】
なお、前述した実施形態は、RF信号が中間周波数までミックスダウンされるスーパーヘテロダイン受信器構造に関連して説明されてきた。無論、当業者であれば容易に分かるように、同一の原理が直接変換受信器に適用される。実際、そのような受信器は、単にゼロの中間周波数を有すると見なすことができる。
【0111】
同様に、図1の実施形態は受信器を示しており、この受信器は、リアルタイムクロック(RTC)24および周波数合成器14の両方が、同じソース、すなわち、単一の水晶から動作するマスター基準発振器16から、クロック信号を得る。無論、本発明の適用可能性はこの構造に限定されない。他の実施形態において、RTC24は、自身の水晶(例えば32.768kHz RTC水晶)を使用する別個の更に遅く作動するRTC発振器によって駆動されてもよい。したがって、RTCを駆動させるクロック信号は、周波数合成器14を駆動させるクロック信号から独立し得る。
【0112】
容易に分かるように、本発明はポジション推定値の計算に限定されない。無論、速度などの他のパラメータが更に計算されてもよい。例えば、受信器のポジションが分かると、衛星測位信号のドップラー偏移から速度を計算することが良く知られている。
【0113】
幾つかの実施形態では、RFフロントエンドにおける従来のフィルタリングに加えて、信号がサンプリングされた後に、受信されたGPS信号の更なるフィルタリングが行なわれてもよい。例えば、米国特許出願公開第2008/0240315号明細書は、干渉抑制のための方法および回路について記載する。フィルタリングは、RFフロントエンドの一部であってもよく、または、ベースバンド処理の一部であってもよい。この種のデジタルフィルタリングが適応できてもよい。すなわち、サンプリングされた信号は、干渉が存在するかどうかを決定するために解析されてもよく、干渉が存在する場合には、干渉の特性(例えば、周波数または電力)が測定される。この場合、デジタルフィルタリングは、干渉を最適に打ち消すまたは減衰させるように自動的に適合され得る。フィルタリングをより高いサンプルレートで行なった後(デジタル・アナログ変換器による出力として)、フィルタリングされた信号サンプルを、記憶または処理する前に、更に低いレートまで間引くことが特に有益な場合がある。間引きに代えてまたは抜き取りに加えて、それぞれのサンプルのビット幅(すなわち、ビット解像度)がそのような処理後に減少されてもよい。サンプルが記憶されるようになっている場合には、記憶量およびメモリインタフェースにおけるスループット要求の両方が減少される。サンプルが直ちに処理されるようになっている場合、抜き取りおよび/またはビット解像度低減は、処理ハードウェアの電力消費量および/または複雑さを減少させることができる。しかしながら、事前にフィルタリングすることにより、結果として生じる解像度低減信号の質が高まりやすい。
【0114】
したがって、本明細書中において、受信信号を「サンプリングする」、および、それに伴う信号サンプルを「記憶する」という言及は、サンプリングステップ(アナログ・デジタル変換)とサンプルを記憶するステップとの間に更なるフィルタリングの可能性を含むように解釈されるべきである。
【0115】
開示された実施形態の他のバリエーションは、図面、開示内容、および、添付の特許請求の範囲を検討することにより、特許請求の範囲に記載される発明を実施する際に当業者により理解されて行なわれ得る。特許請求の範囲における用語「備える(comprising)」は他の要素またはステップを排除せず、また、不定冠詞「1つの(a、an)」は複数を排除しない。単一のプロセッサまたは他のユニットが特許請求の範囲に列挙される幾つかの項目の機能を満たしてもよい。互いに異なる従属請求項に特定の測定が列挙されているという事実だけで、測定されたこれらの組み合わせを有利に使用できないということを示唆するものではない。コンピュータプログラムは、光学記憶媒体または他のハードウェアの一部と共にもしくは一部として供給される固体記憶媒体などの適した媒体に記憶され/分配されてもよいが、インターネットまたは他の有線もしくは無線通信システムなどによって他の形式で分配されてもよい。特許請求の範囲における任意の参照符号は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0116】
前述した実施形態は、GPSを使用する衛星測位に集中してきた。しかしながら、当業者であれば分かるように、本発明の範囲はGPSの使用に限定されない。同じ原理が同様に他の衛星測位システムにも適用できる。これらは一般に「グローバル・ナビゲーション・サテライト・システム」(GNSS)として知られる。GNSSの他の例としては、ロシアの「グローバル・ナビゲーション・サテライト・システム」(GLONASS)や欧州のプロジェクト「ガリレオ」が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
本発明は衛星測位システムに関連するが、当業者であれば分かるように、同じまたは同様の技術を、基準ビーコンが宇宙ビークルでない測位システムに適用することもできる。例えば、「スードライト(pseudolites)」による測位が衛星測位に代わるものとして提案されてきた。スードライトは、一般に、GPS衛星によって送信される信号に類似する(または同一の)信号を送信する地上送信器である。したがって、スードライトは、GPS衛星によって使用される同じL1周波数、および、同様のスペクトル拡散変調方式を使用してもよい。スードライト信号を衛星測位信号と同じ方法で処理できる限りにおいて、本明細書は、第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる基準情報によって支援される、スードライト信号から第2のポジションフィックスを計算する等価な技術を開示していると解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星測位信号を受信するためのRFフロントエンド(12)と、
前記受信された信号をサンプリングして信号サンプルを発生させるためのアナログ・デジタル変換器(18)と、
メモリ(22)と、
前記信号サンプルを処理し、距離測定値を得るとともにポジションフィックスを計算するためのプロセッサ(20)と、
を備える衛星測位受信器(5)であって、
当該受信器(5)は第1のモードを有し、この第1のモードでは、プロセッサ(20)が、
サンプルの第1の組が生成されると、第1のポジションフィックスを計算するために、このサンプルの第1の組を処理し、
この計算と関連付けられる情報を前記メモリ(22)に記憶するように動作可能であり、
当該受信器(5)は第2のモードを有し、この第2のモードでは、プロセッサが、
第2のポジションフィックスを計算するための後の処理のために、サンプルの第2の組を、または、前記サンプルの第2の組から得られる距離測定値を、メモリ(22)に記憶するように動作可能であり、
当該受信器は第3のモードを有し、この第3のモードでは、プロセッサ(20)が、
記憶された前記サンプルの第2の組、または、前記距離測定値をメモリから読み出し、
それらを処理して前記第2のポジションフィックスを計算するように動作可能であり、
前記処理は、前記第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報によって支援される、
衛星測位受信器(5)。
【請求項2】
前記第2のポジションフィックスの計算を支援するために使用される、第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報は、
第1のポジション;
前記第1のポジションと関連付けられる速度;
サンプルの第1の組が受信された時間;
1つ以上の衛星のリストであって、前記1つ以上の衛星の信号は前記サンプルの第1の組で検出された、リスト;
そのような衛星の検出されたキャリア周波数;
そのようなキャリア周波数の検出されたドップラー偏移;
前記サンプルの第1の組から得られる距離測定値;
そのような距離測定値に適用される差分補正;
前記第1のポジションフィックスの計算で使用されるエフェメリスデータ;
衛星によって伝えられるデータメッセージの一部;
衛星状態情報;
衛星クロック補正データ;および
以上のいずれかと関連付けられる不確定性パラメータ
のうちの1つ以上を含む請求項1に記載の受信器。
【請求項3】
前記サンプルの第1の組、前記サンプルの第2の組、または、これらの両方の受信と関連付けられるタイムスタンプをメモリ(22)に記憶するように構成される、請求項1または請求項2に記載の受信器。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記サンプルの第1の組の受信と、前記サンプルの第2の組の受信と、の間の経過時間を測定するように構成される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の受信器(5)。
【請求項5】
前記第2のポジションフィックスの計算は、
前記第1のポジションフィックスを計算するために使用されるエフェメリスデータに基づいて、前記第2のポジションフィックスを計算するのに適したエフェメリスデータを予測すること、および、
前記第1のポジションフィックスを計算するプロセスで決定された少なくとも1つのコード位相に基づいて、前記信号サンプルの第2の組において1つ以上の衛星のための拡散コードのコード位相を予測すること、
のうちの一方または両方によって支援される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の受信器。
【請求項6】
プロセッサ(20)は、更に、
サンプルの第3の組が生成されると、第3のポジションフィックスを計算するために、このサンプルの第3の組を処理し、
この計算と関連付けられる情報を前記メモリに記憶するように動作可能であり、
前記第3のモードでは、読み出された前記サンプルの第2の組を処理して前記第2のポジションフィックスを計算するときに、前記処理が、前記第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報と、前記第3のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報と、によって支援される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の受信器。
【請求項7】
第2のポジションフィックスの計算は、前記第1および第3のポジションと関連付けられるパラメータの値に基づいて、少なくとも1つのパラメータの値の線形または非線形予測によって支援される請求項6に記載の受信器。
【請求項8】
第1のモードへ周期的に入り、そのモードにてサンプルの組が発生されると、このサンプルの組を処理し、ポジションフィックスを計算し、この計算と関連付けられる情報を前記メモリに記憶するように更に構成される、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の受信器。
【請求項9】
衛星測位信号を受信するためのRFフロントエンド(12)と、
前記受信された信号をサンプリングして信号サンプルを発生させるためのアナログ・デジタル変換器(18)と、
メモリ(22)と、
前記信号サンプルを処理し、距離測定値を得るとともにポジションフィックスを計算するためのプロセッサ(20)と、
を備える衛星測位受信器(5)であって、
当該受信器(5)は第1のモードを有し、この第1のモードでは、プロセッサ(20)が、
サンプルの第1の組が生成されると、第1のポジションフィックスを計算するために、このサンプルの第1の組を処理し、
この計算と関連付けられる情報を前記メモリ(22)に記憶するように動作可能であり、
当該受信器(5)は第2のモードを有し、この第2のモードでは、プロセッサが、
第2のポジションフィックスを計算するための後の処理のために、サンプルの第2の組を、または、前記サンプルの第2の組から得られる距離測定値を、メモリに記憶するように動作可能であり、
当該受信器は、メモリ(22)に記憶された情報、および、前記サンプルの第2の組または距離測定値を外部装置(30)へアップロードするように構成されており、
前記外部装置(30)により前記サンプルの第2の組または前記距離測定値が処理されて前記第2のポジションフィックスを計算することができ、
前記処理は、前記第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報によって支援される、
衛星測位受信器(5)。
【請求項10】
前記サンプルの第1の組、前記サンプルの第2の組、または、これらの両方の受信と関連付けられるタイムスタンプを前記メモリに記憶するとともに、
前記タイムスタンプを前記外部装置へアップロードするように構成される、請求項9に記載の受信器。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記サンプルの第1の組の受信と、前記サンプルの第2の組の受信と、の間の経過時間を測定するように構成される、請求項9または請求項10に記載の受信器。
【請求項12】
予め記憶された衛星信号サンプルからポジションフィックスを計算する方法であって、
衛星測位受信器から、
衛星信号サンプルの第1の組から前記受信器によって計算される第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報(200)と、
衛星信号サンプルの第2の組、または、衛星信号サンプルの第2の組から得られる距離測定値と(210)、
を受信するステップ(200,210)と、
第2のポジションフィックスを計算するために、前記サンプルの第2の組を、または前記距離測定値を、処理するステップ(150a)と、
を備え、
前記処理は、前記第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報によって支援される、方法。
【請求項13】
前記第2のポジションフィックスの計算を支援するために使用される第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報は、
第1のポジション;
前記第1のポジションと関連付けられる速度;
サンプルの第1の組が受信される時間;
1つ以上の衛星のリストであって、前記1つ以上の衛星の信号はサンプルの第1の組で検出された、リスト;
そのような衛星の検出されたキャリア周波数;
そのようなキャリア周波数の検出されたドップラー偏移;
前記サンプルの第1の組から得られる距離測定値;
そのような距離測定値に適用される差分補正;
前記第1のポジションフィックスの計算で使用されるエフェメリスデータ;
衛星によって伝えられるデータメッセージの一部;
衛星状態情報;および
衛星クロック補正データ
のうちの1つ以上の知見を含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
衛星測位を使用して2つのポジションフィックスを計算する方法であって、
RFフロントエンドを使用し、衛星測位信号を受信するステップ(100)と、
アナログ・デジタル変換器を使用し、前記受信された信号をサンプリングして信号サンプルを発生させるステップ(110)と、
プロセッサを使用し、サンプルの第1の組が生成されると、第1のポジションフィックスを計算するために、このサンプルの第1の組を処理するステップ(120)と、
前記計算と関連付けられる情報をメモリに記憶するステップ(130)と、
第2のポジションフィックスを計算するための後の処理のために、サンプルの第2の組を、または、前記サンプルの第2の組から得られる距離測定値を、メモリに記憶するステップ(140)と、
その後、前記第2のポジションフィックスを計算するために前記サンプルの第2の組を処理するステップ(150、150a)と、を備え、
前記第2のポジションフィックスの計算が第1のポジションフィックスの計算と関連付けられる情報によって支援される、方法。
【請求項15】
コンピュータ上で実行されるときに請求項12から請求項14のいずれか一項に記載のステップの全てを行なうように構成されるコンピュータプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−255778(P2012−255778A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−124109(P2012−124109)
【出願日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【出願人】(510112671)ユー‐ブロックス、アクチエンゲゼルシャフト (15)
【氏名又は名称原語表記】U−BLOX A.G.
【Fターム(参考)】