予防又は治療目的のためのMHCクラスI拘束性エピトープに対する免疫応答を誘発し、増強し、維持する方法
実施の形態は、好ましくはMHCクラスI拘束性エピトープに対する免疫応答を誘発し、増強し、持続するための方法及び組成物に関する。この方法及び組成物は、予防又は治療目的のために用いられ得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示される本発明は、MHCクラスI拘束性免疫応答を誘導して、応答の性質及び大きさを制御し、病原性過程における有効な免疫学的介入を促進するための方法及び組成物に関する。特に本発明は、免疫原性組成物、それらの性質、並びにそれらが有効に用いられる投与の順序、時機及び経路に関する。
【背景技術】
【0002】
[関連技術分野の説明]
主要組織適合性複合体及びT細胞標的認識
リンパ球(T細胞)は、特定の抗原シグナルに対する応答において機能する抗原特異的免疫細胞である。Bリンパ球及びそれらが産生する抗体も、抗原特異的存在物である。しかしながらBリンパ球とは違って、T細胞は、遊離又は可溶性形態で抗原に応答しない。T細胞が抗原に応答するには、主要組織適合性複合体(MHC)として既知の提示複合体に結合される抗原を必要とする。
【0003】
MHCタンパク質は、T細胞がネイティブ又は「自己」細胞を外来細胞から区別する手段を提供する。MHC分子は、T細胞によりその後監視される潜在的ペプチドエピトープを提示する免疫受容体の一部類である。2種類のMHC、即ちクラスI MHC及びクラスII MHCが存在する。CD4+T細胞は、クラスII MHCタンパク質と相互作用し、主にヘルパー表現型を有し、一方、CD8+T細胞は、クラスI MHCタンパク質と相互作用し、主に細胞溶解性表現型を有するが、それらは各々、調節機能、特に抑制機能も示し得る。両MHCは、細胞の外表面にそれらの構造の大部分を有する膜貫通型タンパク質である。さらに両クラスのMHCは、それらの外側部分にペプチド結合溝を有する。ネイティブ又は外来のタンパク質の小断片、が結合され、細胞外環境に提示されるのは、この溝においてである。
【0004】
抗原提示細胞(APC)と呼ばれる細胞は、MHCを用いてT細胞に抗原を表示する。T細胞は、それがMHC上に提示される場合、抗原を認識する。この要件は、MHC拘束と呼ばれる。抗原が認識可能MHCにより表示されない場合、T細胞は認識せず、抗原シグナルに作用しない。認識可能MHCに結合されたペプチドに特異的な細胞は、これらのMHC−ペプチド複合体と結合して、免疫応答の次の段階に進行する。
【0005】
公称MHCクラスI又はII拘束性エピトープに対応するペプチドは、T細胞応答を誘導し、増幅し、あるいは操作する目的のために送達され得る最も簡単な形態の抗原のうちの1つである。ペプチドエピトープはin vivo初回抗原刺激T細胞株、クローン又はT細胞ハイブリドーマをin vitroで再刺激するに際して有効であることが示されている、という事実にもかかわらず、それらのin vivo効力は非常に制限されている。これは、以下の2つの主要要因のためである:
(1)急速な腎クリアランス及び/又はin vivo分解により引き起こされて、APCへの接近制限を生じるペプチドの不十分な薬物動態(PK)プロフィール;
(2)強力且つ持続的免疫応答、特にTc1又はTh1細胞(IFN−γ及びTNF−アルファを産生)から成る応答を誘導するか又は増幅するための抗原誘導性T細胞受容体(TCR)依存性シグナル伝達単独(シグナル1)の不足。さらに、ペプチドに関連した限定PKを回避するための、大用量のペプチド又はデポー助剤の使用は、ある種の免疫増強又は変調アジュバントが一緒に用いられない限り、種々の程度の非応答性又は「免疫偏向」を誘発し得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
[発明の概要]
本発明の実施の形態は、MHCクラスI拘束性エピトープに対する免疫応答を操作するための、特に誘導し、惹起し、及び/又は増幅するための方法及び組成物を包含する。
【0007】
いくつかの実施の形態は、免疫感作方法に関する。この方法は、例えば、第一の抗原の少なくとも一部分を含むか又はコードする免疫原を含む第一の組成物を哺乳類に送達する工程、及び増幅ペプチドを含む第二の組成物を哺乳類のリンパ系に直接投与する工程を包含し得、ペプチドは第一の抗原のエピトープに対応し、第一の組成物及び第二の組成物は同一でない。本方法は、エフェクターT細胞応答を得て、それに関して検定し、又は検出する工程をさらに包含し得る。
【0008】
第一の組成物は抗原又はその免疫原性断片をコードする核酸を含み得る。第一の組成物はpAPC中のエピトープを発現し得る核酸を含み得る。核酸は原生動物、細菌、ウイルス又はウイルスベクターの一構成成分として送達され得る。第一の組成物は、例えば免疫原性ポリペプチド及び免疫増強剤を含み得る。免疫増強剤はサイトカイン、トール様受容体リガンド等であり得る。アジュバントは免疫刺激配列、RNA等を含み得る。
【0009】
免疫原性ポリペプチドは増幅ペプチドであり得る。免疫原性ポリペプチドは第一の抗原であり得る。免疫原性ポリペプチドは原生動物、細菌、ウイルス、ウイルスベクター又はウイルス様粒子等の一構成成分として送達され得る。アジュバントは原生動物、細菌、ウイルス、ウイルスベクター又はウイルス様粒子等の一構成成分として送達され得る。第二の組成物はアジュバント及び免疫増強剤を含まないものであり得る。送達する工程は哺乳類のリンパ系への直接投与を包含し得る。哺乳類のリンパ系への直接投与はリンパ節又はリンパ管への直接投与を包含し得る。直接投与は2又はそれ以上のリンパ節又はリンパ管に対してであり得る。リンパ節が、例えば、鼠径部、腋窩、頚部及び扁桃リンパ節であり得る。エフェクターT細胞応答は細胞傷害性応答であり得る。エフェクターT細胞応答は前炎症性サイトカインの産生を包含し得、サイトカインは、例えばγ−IFN又はTNFαであり得る。エフェクターT細胞応答はT細胞ケモカインの産生を包含し得、ケモカインは、例えばRANTES又はMIP−1αである。
【0010】
エピトープは、例えば、ハウスキーピングエピトープ又は免疫エピトープであり得る。送達する工程又は投与する工程は、例えば、1回ボーラス注射、反復ボーラス注射を包含し得る。送達する工程又は投与する工程が連続注入を包含し得、注入は、例えば、約8〜約7日間の持続期間を有し得る。この方法は、送達する工程の終了と投与する工程の開始の間の間隔を包含し得、間隔は少なくとも約7日間であり得る。間隔はまた、約7〜約14日間、約17日間、約20日間、約25日間、約30日間、約40日間、約50日間、約60日間であり得る。間隔は約75日、約80日、約90日、約100日を上回ることができる。
【0011】
第一の抗原は疾患関連抗原であり得、疾患関連抗原は、腫瘍関連抗原、病原体関連抗原であり得る。実施の形態は、上述した免疫感作方法を利用して疾患を治療する方法を包含する。第一の抗原は標的関連抗原であり得る。標的は新生細胞、病原体感染細胞等であり得る。例えば、いかなる疾患を治療する方法も標的となり得る。病原体感染細胞は、例えばウイルス、細菌、原生動物、真菌、又は、例えば、プリオンにより感染される細胞を包含し得る。
【0012】
エフェクターT細胞応答は、例えばサイトカイン検定、エリスポット検定、細胞傷害性
検定、四量体検定、DTH応答、臨床応答、腫瘍縮小、腫瘍クリアランス、腫瘍進行の抑制、病原体力価減少、病原体クリアランス及び疾患症候の寛解から成る群から選択される少なくとも1つの指標により検出され得る。本方法は、エフェクターT細胞応答を得て、それに関して検出し、又は検定する過程をさらに包含し得る。
【0013】
別の実施の形態は、第一の抗原又はその免疫原性断片をコードする核酸を含む第一の組成物を哺乳類に送達すること、及びペプチドを含む第二の組成物を哺乳類のリンパ系に直接投与することであって、ペプチドは第一の抗原のエピトープに対応する、直接投与すること、を包含する免疫感作方法に関する。本方法は、抗原に対するエフェクターT細胞応答を得て、それに関して検出し、又は検定することをさらに包含し得る。
【0014】
また、実施の形態は、存在する抗原特異的免疫応答の増大方法に関する。本方法は、ペプチドを含む第二の組成物を哺乳類のリンパ系に直接投与することであって、ペプチドは抗原のエピトープに対応し、組成物は免疫応答を誘導するために用いられていない、直接投与することを包含し得る。本方法は抗原特異的免疫応答の増大を得て、それに関して検出し、又は検定することをさらに包含し得る。この増大は応答を長時間持続すること、静止T細胞を再活性化すること、抗原特異的T細胞の集団を拡大すること等を包含し得る。いくつかの態様では、この組成物は免疫増強剤を含まなくてもよい。
【0015】
他の実施の形態は、第一の抗原の少なくとも一部分及び第二の抗原の少なくとも一部分を含むか又はコードする免疫原を含む第一の組成物を哺乳類に送達すること、及び、第一のペプチドを含む第二の組成物、及び第二のペプチドを含む第三の組成物を哺乳類のリンパ系に直接投与することであって、第一のペプチドは第一の抗原のエピトープに対応し、第二のペプチドは第二の抗原のエピトープに対応する、直接投与することを包含する免疫感作方法に関する。ここで、第一の組成物は第二の又は第三の組成物と同一でない。本方法は、第一の及び第二の抗原に対するエフェクターT細胞応答を得て、それに関して検出し、又は検定することをさらに包含し得る。第二の及び第三の組成物はそれぞれ第一の及び第二のペプチドを含み得る。
【0016】
さらに別の実施の形態は、抗原特異的寛容原性又は調節性免疫応答を発生させる方法に関する。本方法は、アジュバントを含まないペプチドを哺乳類のリンパ系に直接、定期的に投与する工程であって、ペプチドは抗原のエピトープに対応し、哺乳類はエピトープにナイーブである工程、を包含し得る。本方法は、寛容原性又は調節性T細胞免疫応答を得て、それに関して検出し、又は検定することをさらに包含する。免疫応答は、例えば、炎症性障害の治療を補助し得る。炎症性障害は、例えば、クラスII MHC拘束性免疫応答であり得る。免疫応答は免疫抑制性サイトカインの産生を包含し得、サイトカインは、例えば、IL−5、IL−10又はTGB−βである。
【0017】
実施の形態は、免疫原性用量系列を哺乳類のリンパ系に直接投与することを包含し、系列は少なくとも1惹起用量及び少なくとも1増幅用量を含み、惹起用量は免疫原をコードする核酸を含み得、増幅用量は任意のウイルス、ウイルスベクター又は複製−コンピテントベクターを含有しない、免疫感作方法に関する。本方法は、抗原特異的免疫応答を得ることをさらに包含し得る。本方法は、例えば、1〜6惹起用量を含み得る。本方法は、複数惹起用量を投与することを包含し得、用量は1〜約7日間の期間に亘って投与される。惹起用量、増幅用量、又は惹起及び増幅用量は多数対の注射で投与され得、対の第一成員は、対の第二成員の約4日以内に投与され得、異なる対の第一成員間の間隔は少なくとも約14日であり得る。最終惹起用量投与及び一次増幅用量投与間の間隔は、例えば約7〜約100日であり得る。
【0018】
その他の実施の形態は、1〜6惹起用量及び少なくとも1増幅用量を含む哺乳類におけ
る免疫応答を誘導するための免疫原性組成物セットに関し、惹起用量は免疫原をコードする核酸を含み得、増幅用量はペプチドエピトープを含み得、エピトープは核酸を発現するpAPCにより提示され得る。1用量はアジュバント、たとえばRNA、をさらに含み得る。惹起及び増幅用量は、リンパ系、リンパ節等への直接投与に適した担体中に存在し得る。核酸はプラスミドであり得る。エピトープは、例えば、表1〜4に列挙されるクラスI HLAエピトープであり得る。HLAは好ましくはHLA−A2であり得る。免疫原はエピトープアレイを含み得、エピトープアレイは遊離配列を含み得る。免疫原は本質的に標的関連抗原から成り得る。標的関連抗原は腫瘍関連抗原、微生物抗原、他のいかなる抗原等であり得る。免疫原はエピトープクラスターを含むことができる標的関連抗原の断片を含み得る。
【0019】
別の実施の形態は、1〜6惹起用量及び少なくとも1増幅用量を含む、哺乳類におけるクラスI MHC拘束性免疫応答を誘導するための免疫原性組成物セットを含み得、惹起用量は免疫原又は免疫原をコードする核酸及び免疫増強剤を含み得、増幅用量はペプチドエピトープを含み得、エピトープはpAPCにより提示され得る。免疫原をコードする核酸は、免疫増強剤として機能する免疫刺激配列をさらに含み得る。免疫原は、ウイルス、又は免疫増強剤を含むか又は誘導する複製コンピテントベクターであり得る。免疫原は細菌、細菌溶解物又は精製細胞壁構成成分であり得る。細菌細胞壁構成成分はまた、免疫増強剤として機能し得る。免疫増強剤は、例えば、TLRリガンド、免疫刺激配列、CpG含有DNA、dsDNA、飲食作用パターン認識受容体(PRR)リガンド、LPS、キラヤサポニン、ツカレソール及び前炎症性サイトカインであり得る。
【0020】
その他の実施の形態は、種々のサイトカインプロフィールの生成方法に関する。本発明のいくつかの実施の形態では、ペプチドの節内投与はプラスミドDNAワクチンを用いて初期誘導された応答を増幅するのに有効であり得る。さらにサイトカインプロフィールは異なり、プラスミドDNA誘導/ペプチド増幅に関して、一般にDNA/DNA又はペプチド/ペプチドプロトコールより大きいケモカイン(化学誘引物質ケモカイン)並びにより少ない免疫抑制サイトカイン産生を生じることができる。
【0021】
さらに別の実施の形態は、惹起及び増幅免疫プロトコールにおける使用のためのアジュバントを含まない薬剤の製造におけるペプチドの使用に関する。組成物、キット、免疫原及び化合物は、種々の疾患の治療のために薬剤中に用いられて、本明細書中記載されているように免疫応答を増幅し、特定のサイトカインプロフィール等を生成し得る。実施の形態は、免疫応答を増幅する方法におけるアジュバントを含まないペプチドの使用に関する。
【0022】
実施の形態は、MHC、例えば表1〜4に列挙されたものに対する特異性を有するエピトープに関連した方法、使用、療法及び組成物に向けられる。その他の実施の形態は、表1〜4に列挙された1つ又は複数のMHC並びにそれらの組合せを包含するが、一方、その他の実施の形態は任意の1つ又は複数のMHC又はそれらの組合せを特定的に除外する。表3〜4は、列挙されたHLA抗原に関する頻度を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[好ましい実施形態の詳細な説明]
本出願は、米国特許仮出願第60/479,393号(2003年6月17日提出、表題:MHCクラスI拘束性免疫応答の制御方法)の全ての方法、図面及び組成物を含む開示内容に対して35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張する。
【0024】
本発明の実施形態は、例えば標的細胞に特異的な免疫細胞を生成するための、標的細胞に対する有効免疫応答を指図するための、又は炎症性障害に作用し/治療するための方法
及び組成物を提供する。この方法及び組成物は、例えば免疫原性組成物、例えばワクチン及び治療薬、並びに予防的及び治療的方法を包含し得る。本明細書中で開示されるのは、抗原の形態、配列、並びにそれが投与される時機を選択し、第二のリンパ系器官に直接抗原を送達することにより、免疫応答の大きさだけでなく、質的性質が管理され得る、新規の、予期せぬ発見である。
【0025】
いくつかの好ましい実施形態は、T細胞応答を惹起し、増幅するための組成物及び方法に関する。例えばこのような方法は、核酸コード免疫原を含む組成物が動物に送達される惹起工程を包含し得る。組成物は、動物の種々の位置に送達され得るが、好ましくはリンパ系、例えばリンパ節に送達される。惹起工程は、例えば一定期間に亘るか又は一定期間にわたる連続方式での組成物の1又は複数回の送達を包含し得る。好ましくは本方法は、ペプチド免疫原を含む組成物を投与することを包含する増幅工程をさらに含み得る。増幅工程は、例えば一定期間に亘る間隔で、1回大量投与で、又は一定期間に亘って連続的に、1又は複数回実施され得る。全ての実施形態で必要であるというわけではないが、いくつかの実施形態は、免疫増強剤又はアジュバントを含む組成物の使用を包含し得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、免疫原の性質並びにそれが遭遇する状況によって、誘発される免疫応答はその特定の活性及び構成が異なり得る。特に、ペプチドを用いた免疫感作は細胞傷害性/細胞溶解性T細胞(CTL)応答を発生させ得るが、さらなる注射によりこの応答をさらに増幅する試みは、その代わりに調節性T細胞集団の拡大及び観察可能なCTL活性の減少をもたらし得る。したがって付加的免疫増強活性を伴わずにリンパ節内の細胞表面に高MHC/ペプチド濃度を付与する組成物は、調節性又は寛容原性応答を意図を持って促進するために用いられ得る。これに対比して、豊富な免疫増強シグナルを提供する免疫原性組成物(例えばトール様受容体リガンド(又はそれらが誘導するサイトカイン/自己分泌因子))は、限定抗原のみを提供する場合でさえ、豊富な抗原(例えば注入ペプチド)とのその後の遭遇が観察された活性の性質を変えることなく応答を増幅するよう、応答を誘導するだけでなく、同様にそれを惹起する。したがっていくつかの実施形態は、免疫応答プロフィール、例えば、得られた応答の種類並びに産生されたサイトカインの種類の制御に関する。いくつかの実施形態は、CTLの拡大又はさらなる拡大を促進するための方法及び組成物に関し、例えばCTLよりも調節細胞の拡大を促進するための方法及び組成物に関する実施形態が存在する。
【0027】
開示された方法は、ペプチドのみを用いる、又は惹起−及び増幅方法に従わない多数のプロトコールに対して有益である。上記のように、多数のペプチドベースの免疫感作プロトコール及びベクターベースのプロトコールは、欠点を有する。しかしながら、うまくいった場合、ペプチドベースの免疫感作又は免疫増幅戦略は、他の方法、例えば特に微生物ベクターと比べて有利である。これは、より多くの複合ベクター、例えば生弱毒化ウイルス又は細菌ベクターは、有害副作用、例えばin vivo複製又は組換えを誘導し得る;又はベクターそれ自体に対する中和抗体の生成のために反復投与時に無力になる、という事実のためである。さらに、強力な免疫原に成るためにこのようにして利用される場合、ペプチドは、プロテアソーム媒介性プロセシングの必要性を回避する(タンパク質又はより複雑な抗原を用いる場合と同様に、「交差プロセシング」又はその後の細胞感染の状況において)。それは、MHCクラスI拘束性提示のための細胞性抗原プロセシングは、妥当な標的に対応するエピトープの免疫原性を潜在的に妨害する亜優勢エピトープを上回る優勢(好ましい)エピトープを固有に選択する現象であるためである。最後に、有効なペプチドベースの免疫感作は、免疫療法の開発の過程を簡単にし、短縮する。
【0028】
したがって有効なペプチドベースの免疫増幅方法、特に例えば本明細書中に記載された方法は、免疫療法(例えば癌及び慢性感染のための)又は予防的ワクチン接種(ある種の感染性疾患に対する)に対しかなりの利益を有し得る。付加的利益は、特に厄介な、安全
でない又は複雑なアジュバント技法の同時使用の場合、回避することにより達成され得るが、このような技法は本明細書中に記載された種々の実施形態に利用され得る。
【0029】
定義:
本明細書中の用語の使用の状況から明らかである場合を除いて、以下の列挙された用語は一般に、この記載の目的のために指示された意味を有するであろう。
【0030】
プロフェッショナル抗原提示細胞(pAPC) − T細胞同時刺激分子を保有し、T細胞応答を誘導し得る細胞。十分に特性化されたpAPCとしては、樹状細胞、B細胞及びマクロファージが挙げられる。
【0031】
末梢細胞 − pAPCでない細胞。
【0032】
ハウスキーピングプロテアソーム − 普通は末梢細胞中で活性であり、そして一般的にはpAPC中に存在しないか又は活性が強くないプロテアソーム。
【0033】
免疫プロテアソーム − pAPCにおいて一般に活性であるプロテアソーム。免疫プロテアソームは感染組織中の、又はインターフェロンへの曝露後のいくつかの末梢細胞中でも活性である。
【0034】
エピトープ − 免疫応答を刺激し得る分子又は物質。好ましい実施形態では、本定義によるエピトープとしては、ポリペプチド及びポリペプチドをコードする核酸が挙げられ、この場合、ポリペプチドは免疫応答を刺激し得るが、必ずしもこれらに限定されない。その他の好ましい実施形態では、この定義によるエピトープとしては、細胞の表面上に提示されるペプチドが挙げられ、ペプチドは、T細胞受容体(TCR)と相互作用し得るよう、クラスI MHCの結合溝に非共有結合的に結合されるが、必ずしもこれに限定されない。クラスI MHCにより提示されるエピトープは、未熟又は成熟形態であり得る。「成熟」とは、ハウスキーピングエピトープを含むか又は本質的にそれらからなり得るが、プロセシング、例えば単独で又は組合せて、プロテアソーム消化、N末端トリミング又は外因性酵素活性の作用(これらに限定されない)により除去される一次翻訳産物中の他の配列も含む任意の前駆体(「未熟」)と区別してMHCエピトープを指す。したがって成熟エピトープは、やや長いポリペプチド中に埋め込まれて提供され得、その免疫学的可能性は、少なくとも一部は、埋込みペプチドによるものである;同様に、成熟エピトープは、TCRにより認識されるMHC結合溝中で結合され得るその最終形態で提供され得る。
【0035】
MHCエピトープ − 哺乳類クラスI又はクラスII主要組織適合性複合体(MHC)分子に対する既知の又は予測結合親和性を有するポリペプチド。いくつかの特に十分に特性化されたクラスI MHC分子は、表1〜4に示されている。
【0036】
ハウスキーピングエピトープ − 好ましい実施形態では、ハウスキーピングエピトープは、MHCエピトープであり、そしてハウスキーピングプロテアソームが優勢に活性である細胞上に提示されるポリペプチド断片と定義される。別の好ましい実施形態では、ハウスキーピングエピトープは、1〜数個のさらなるアミノ酸が隣接した、上記の定義によるハウスキーピングエピトープを含有するポリペプチドと定義される。別の好ましい実施形態では、ハウスキーピングエピトープは、上記の定義によるハウスキーピングエピトープをコードする核酸と定義される。例示的ハウスキーピングエピトープは、米国特許出願第10/117,937号(公開番号20030220239A1)(2002年4月4日提出)及び10/657,022に、並びにPCT出願PCT/US2003/027706(公開番号WO04022709A2)(2003年9月5日提出);並びに米国
特許仮出願第60/282,211号(2001年4月6日提出);60/337,017(2001年11月7日提出);60/363210(2002年3月7日提出)及び60/409,123(2002年9月5日提出)に提示されている。列挙された出願は各々、エピトープ配列(EPITOPE SEQUENCES)と表題を付けられている。
【0037】
免疫エピトープ − 好ましい実施形態では、免疫エピトープは、MHCエピトープであり、そして免疫プロテアソームが優勢に活性である細胞上に提示されるポリペプチド断片と定義される.別の好ましい実施形態では、免疫エピトープは、即ち1〜数個のさらなるアミノ酸により隣接される、上記の定義による免疫エピトープを含有するポリペプチドと定義される。別の好ましい実施形態では、免疫エピトープは、クラスI MHCに対する既知又は予測親和性を有する少なくとも2つのポリペプチド配列を有するエピトープクラスター配列を含むポリペプチドと定義される。さらに別の好ましい実施形態では、免疫エピトープは、上記の定義のいずれかによる免疫エピトープをコードする核酸と定義される。
【0038】
標的細胞 − 好ましい実施形態では、標的細胞は、例えばウイルス又はその他の細胞内寄生生物に感染した細胞、又は新生細胞といった、免疫系の構成成分により作用され得る病原状態に関連した細胞である。別の実施形態では、標的細胞は本発明のワクチン及び方法により標的化される細胞である。この定義による標的細胞の例としては、新生細胞及び細胞内寄生生物、例えばウイルス、細菌又は原生動物が寄生する細胞が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。標的細胞としては、適正なエピトープ遊離並びに免疫プロテアソームを発現する細胞によるプロセシングを確定するか又は確証するための、所望のエピトープに対するT細胞特異性又は免疫原性を確定するための検定の一部としてのCTLにより標的化される細胞も挙げられる。このような細胞は遊離配列を発現するよう形質転換され得るし、或いは細胞は単にペプチド/エピトープでパルス標識され得る。
【0039】
標的関連抗原(TAA) − 標的細胞中に存在するタンパク質又はポリペプチド。
【0040】
腫瘍関連抗原(TuAA) − 標的細胞が新生細胞であるTAA。
【0041】
HLAエピトープ − ヒトクラスI又はクラスII HLA複合体分子に対する既知又は予測結合親和性を有するポリペプチド。特に十分に特性化されたクラスI HLAは、表1〜4に示されている。
【0042】
抗体 − 生化学的に得られるか、又は組換えDNAの使用によるか又は任意のその他の手段によるものであれ、全部又は一部のIg結合ドメインから成る天然免疫グロブリン(Ig)、ポリ又はモノクローナル、或いは任意の分子。例としては、とりわけ、F(ab)、一本鎖Fv、及びIg可変部−ファージ被覆タンパク質融合物が挙げられる。
【0043】
実質的類似性 − この用語は、配列の検査により判定した場合に、重要でない様式で参照配列と異なる配列を指すために用いられる。同一アミノ酸配列をコードする核酸配列は、縮重位置の違い又は任意の非コード領域の長さ又は組成の小差にかかわらず、実質的に類似する。保存的置換又はわずかな長さ変動のみが異なるアミノ酸配列は、実質的に類似している。さらに、N末端フランキング残基の数が異なるハウスキーピングエピトープ、或いはいずれかの末端のフランキング残基の数が異なる免疫エピトープ及びエピトープクラスターを含むアミノ酸配列は、実質的に類似する。実質的に類似のアミノ酸配列をコードする核酸は、それ自体も実質的に類似する。
【0044】
機能的類似性 − この用語は、生物学的又は生化学的特性試験により判定した場合に、重要でない様式で参照配列と異なる配列を指すために用いられるが、配列は実質的に類
似しない場合がある。例えば2つの核酸は、同一配列のためのハイブリダイゼーションプローブとして有用であり得るが、異なるアミノ酸配列をコードする。交差反応性CTL応答を誘導する2つのペプチドは、それらが非保存的アミノ酸置換により異なる場合でさえ、機能的に類似する(したがって、実質的類似性定義内であり得ない)。同一エピトープを認識する抗体対又はTCRは、どんな構造的差異が存在しようと、互いに機能的に類似であり得る。免疫原性の機能的類似性に関する試験は、「変性」抗原で免疫感作し、標的抗原を認識する誘発応答、例えば抗原応答、CTL応答、サイトカイン産生等(これらに限定されない)の能力を試験することにより実行され得る。したがって2つの配列は、同一機能を保持しながら、ある点で異なるよう設計され得る。開示された又は特許請求された配列のこのような設計配列変異体は、本発明の実施形態の1つである。
【0045】
発現カセット − プロモーター並びにその他の転写及び翻訳制御要素、例えばエンハンサー、終了コドン、内部リボソーム進入部位及びポリアデニル化部位(これらに限定されない)に操作可能的に連結されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列。カセットは、一宿主分子から別の分子にそれを動かすのを促す配列も包含し得る。
【0046】
埋込みエピトープ − いくつかの実施形態では、埋込みエピトープは、長いポリペプチド内に全体的に含入されるエピトープである;他の実施形態では、この用語は、エピトープが長いポリペプチドに関して、内部位置に全体的に存在しないよう、N末端又はC末端のみが埋め込まれるエピトープも包含し得る。
【0047】
成熟エピトープ − エピトープがMHCペプチド結合溝中に結合される場合に存在する以上の付加的配列を有さないペプチド。
【0048】
エピトープクラスター − 共有MHC拘束性因子に対する結合親和性を有する2又はそれ以上の既知の又は予測エピトープを含むタンパク質配列、例えばネイティブタンパク質配列の一セグメントであるポリペプチド又はそれをコードする核酸配列。好ましい実施形態では、クラスター内のエピトープの密度は、完全タンパク質配列内の共有MHC拘束性因子に対する結合親和性を有する全ての既知又は予測エピトープの密度より大きい。エピトープクラスターは、米国特許出願第09/561,571号(表題:エピトープクラスター(EPITOPE CLUSTERS))に開示され、より詳細に定義されている。
【0049】
遊離配列 − 例えば免疫プロテアソーム活性、N末端トリミング及び/又はその他の過程又は活性を含めた、単独での又は任意の組合せでの、プロセシング活性によりハウスキーピングエピトープを遊離させる状況を提供する大型配列中に埋め込まれたハウスキーピングエピトープを含むか又はそれをコードする、設計又は遺伝子工学処理配列。
【0050】
CTLp − CTL前駆体は、細胞溶解活性を示すために誘導され得るT細胞である。それによりCTLpが一般的に観察される、二次in vitro溶解活性は、ナイーブ、エフェクター及びメモリーCTLのin vivoでの任意の組合せから生じ得る。
【0051】
メモリーT細胞 − 抗原により予め活性化されたT細胞は、身体中のその位置とは関係なく、静止中の生理学的状態にあり、エフェクター機能を獲得するために抗原への再曝露を要する。表現型的には、それらは一般にCD62L−CD44hiCD107α−IGN−γ−LTβ−TNF−α−であり、そして細胞周期のG0にある。
【0052】
エフェクターT細胞 − 抗原との遭遇時に、エフェクター機能を容易に示すT細胞。エフェクターT細胞は一般に、リンパ系を出て、免疫学的末梢に進入し得る。表現型的には、それらは一般にCD62L−CD44hiCD107α+IGN−γ+LTβ+TNF−α+であり、そして活発に循環する。
【0053】
エフェクター機能 − 一般に、細胞溶解性活性の獲得及び/又はサイトカイン分泌を一般に含むT細胞活性化。
【0054】
T細胞応答の誘導 − 多数の実施形態においては、ナイーブ細胞、又はいくつかの状況では静止中細胞からT細胞応答を発生させて、T細胞を活性化する工程を包含する。
【0055】
T細胞応答の増幅 − 多数の実施形態においては、細胞の数、活性化細胞の数、活性のレベル、増殖の速度、又は特定の応答に関与するT細胞の類似のパラメーターを増大する工程を包含する。
【0056】
惹起 − 多数の実施形態においては、T細胞の誘導性関連の免疫プロフィールに特定の安定性を付与する誘導を包含する。
【0057】
トール様受容体(TLR) − トール様受容体(TLR)は、微生物の特定の構成成分及びある種の宿主分子により活性化されるパターン認識受容体の一ファミリーである。生得の免疫系の一部として、それらは多数の病原体に対する最前線の防御に寄与するだけでなく適応免疫においても一役を演じる。
【0058】
トール様受容体(TLR)リガンド − トール様受容体を結合し、活性化し得る任意の分子。例としては:インターフェロンを誘導することに関して既知のポリIC A合成二本鎖RNAが挙げられるが、これに限定されない。ポリマーは、ポリイノシン酸及びポリシチジル酸の各々の一鎖、二本鎖RNA、非メチル化CpGオリゴデオキシリボヌクレオチド又はその他の免疫刺激配列(ISS)、リポ多糖(LPS)、β−グルカン及びイミダゾキノリン、並びにその誘導体及び類似体から作られる。
【0059】
免疫増強アジュバント − pAPC又はT細胞を活性化するアジュバント、例えば:TLRリガンド、飲食作用パターン認識受容体(PRR)リガンド、キラヤサポニン、ツカレソール、サイトカイン等。いくつかの好ましいアジュバントは、Marciani, D.J. Drug Discovery Today 8: 934-943, 2003に開示されている。
【0060】
免疫刺激配列(ISS) − 一般に非メチル化CpG配列を含有するオリゴデオキシリボヌクレオチド。CpGは、細菌生産性DNA、特にプラスミド中にも埋め込まれ得る。さらなる実施形態は、種々の類似体を包含する:好ましい実施形態の1つは、1つ又は複数のホスホロチオエート結合又は非生理学的塩基を有する分子である。
【0061】
ワクチン − 好ましい実施形態では、ワクチンは、疾患の予防を提供するか又は補助する免疫原性組成物であり得る。他の実施形態では、ワクチンは、疾患の治癒を提供するか又は補助し得る。他の実施形態では、ワクチン組成物は、疾患の改善を提供するか又は補助し得る。ワクチン免疫原性組成物のさらなる実施形態は、治療薬及び/又は予防薬として用いられ得る。
【0062】
免疫感作 − 疾患に対する部分的又は完全防御を誘導するための方法。代替的には抗原に対する免疫系応答を誘導するか又は増幅するための方法。第二の定義では、この方法は、防御的免疫応答、特に前炎症性又は能動免疫を意味し得るが、調節的応答も含み得る。したがっていくつかの実施形態では、免疫感作は寛容化(免疫系が前炎症性又は能動免疫の産生を回避する方法)とは区別され、一方、他の実施形態では、この用語は寛容化を包含する。
【0063】
【表1】
【0064】
【表1−2】
【0065】
【表1−3】
【0066】
【表1−4】
【0067】
【表2−1】
【0068】
【表2−2】
【0069】
【表2−3】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表4−2】
【0073】
【表5】
【0074】
【表5−2】
【0075】
【表5−3】
【0076】
以下の考察は、本発明の実施についての本発明人らの理解を記述する。しかしながらこの考察は、特許請求の範囲に記述されていない実施についてのいかなる特定の理論にも本
特許を限定するものではない。
【0077】
腫瘍過程又は微生物感染の有効な免疫媒介性制御は一般に、移動、エフェクター機能及びメモリー細胞への分化といったような多数の能力を付与された抗原特異的T細胞の誘導及び拡大を包含する。免疫応答の誘導は、種々の方法により試みられ、そして異なる形態の抗原の投与を包含し、免疫応答の大きさ及び質に種々の作用を及ぼす。免疫応答の制御を達成する場合の一限定因子は、プロセシングし、その結果生じるエピトープを特定T細胞に有効に提示し得るpAPCを標的化することである。
【0078】
この問題の解決は、第二のリンパ系器官、pAPCに富む微小環境及びT細胞への直接抗原送達である。抗原は、例えばポリペプチドとして、又は発現抗原として、任意の種々のベクターにより送達され得る。免疫の大きさ及び質に関する結果は、例えばベクターの投与量、処方、性質、並びに分子環境を含めた因子により制御され得る。本発明の実施形態は、免疫応答の制御を増強し得る。免疫応答の制御は、例えば調節的応答から前炎症性応答まで、必要に応じて異なる種類の免疫応答を誘導する能力を包含する。好ましい実施形態は、能動免疫療法のための大きな関心事であるMHCクラスI拘束性エピトープに対する応答の大きさ及び質の制御増強を提供する。
【0079】
従来の免疫感作方法は、一定の重要な制限を示した:第一に、非常にしばしば、ワクチンの力価に関する結論は、超高感度読み出し検定のうちの1つから、又は非常に限定されたパネルから生成された免疫原性データから推定された。しばしば、予防接種療法の推測力価にもかかわらず、臨床応答は有意でないか又は最適状態であった。第二に、免疫感作後、T調節細胞は、より慣用的なTエフェクター細胞とともに、生成され及び/又は拡大され、このような細胞は所望の免疫応答の機能を妨害し得る。能動免疫療法におけるこのようなメカニズムの重要性は、近年やっと認識されてきたに過ぎない。
【0080】
免疫原の節内投与は、免疫応答の大きさ及びプロフィールの制御のための基礎を提供する。このような投与の結果として成し遂げられるpAPCの有効in vivo負荷は、その最も簡単な形態で、即ちペプチドエピトープで、あるいは一般に不十分な薬物動態に関連した抗原を用いることによってさえ、免疫の実質的大きさを与えることを可能とする。応答の質は、免疫原の性質、ベクター及び免疫感作のプロトコールにより、さらに制御され得る。このようなプロトコールは、慢性感染又は腫瘍過程における応答を増強し/変更するために適用され得る。
【0081】
免疫感作は在来、免疫応答の大きさを増大するために抗原の反復投与によってきた。DNAワクチンの使用は、高い質の応答を生じたが、反復追加免疫用量を用いた場合でさえ、このようなワクチンを用いて高度の大きさの応答を得ることは困難であった。応答の両特質、即ち高い質及び低い大きさは、これらのベクターを用いて達成されるMHC上の相対的に低レベルのエピトープ負荷によるものと思われる。その代わりに、臨床的有用性に必要とされる応答の高度の大きさを達成するために、生ウイルスベクター中にコードされた抗原を用いてこのようなワクチンを追加免疫することは、より一般的になってきた。しかしながら生ベクターの使用は、例えば潜在的安全性問題、前の投与により誘導されたベクターに対する体液性応答のための後期追加免疫の有効性低減、並びに作製及び製造の経費を含めたいくつかの欠点を伴い得る。したがって生ベクター又はDNA単独の使用は、高い質の応答を引き出すが、限定的大きさ又は応答の継続性を生じ得る。
【0082】
本明細書中に開示されるのは、ペプチドに適用される場合、それらを免疫療法ツールとして有効にさせるプロトコールに並びに方法に関する実施形態である。このような方法は、ペプチドの貧PKを回避し、特定の、そしてしばしばより複雑な療法の状況で適用される場合、免疫応答の強い増幅及び/又は制御を生じる。好ましい実施形態では、リンパ系
器官へのペプチドの直接投与は、Tcl細胞から成る強力、中等度又は軽度(慣用的技法による検出のレベル又はそれより低いレベル)でありさえする免疫応答を誘導する初回刺激剤後に、免疫応答の予期せぬ強力な増幅を生じる。本発明の好ましい実施形態は免疫感作の全ての段階で抗原のリンパ内投与を用い得るが、アジュバントを含まないペプチドのリンパ内投与が最も好ましい。リンパ内投与を利用するペプチド増幅は、予め誘導された現存免疫応答に適用され得る。先の誘導は、抗原への自然曝露により、又は一般的に用いられる投与経路、例えば皮下、皮内、腹腔内、筋肉内及び粘膜投与(これらに限定されない)により生じ得る。
【0083】
本明細書中にも示されているように、特異的T細胞のその後の拡大を生じる最適開始は、富同時刺激状況(例えばリンパ節中)で、限定量の抗原(プラスミドコード抗原の限定されたたびたびの発現に起因し得るような)にナイーブT細胞を曝露することにより良好に達成され得る。それは、抗原提示細胞上のMHC−ペプチド複合体を高親和性で認識するT細胞受容体を保有するT細胞の活性化を生じ得るし、その後の刺激に対してより反応性であるメモリー細胞の生成を生じ得る。有益な同時刺激環境は、免疫増強剤の使用により増大されるか又は確実にされ、このようにしてリンパ内投与は有益であるが、全ての実施形態において免疫応答の開始のために必要とされるわけではない。
【0084】
遊離ペプチドの不十分な薬物動態はほとんどの投与経路においてそれらの使用を妨げたが、2次リンパ系器官、特にリンパ節への直接投与は、連続注入又は高頻度(例えば毎日)注射により多少継続的に抗原のレベルが保持される場合、有効であることが立証された。CTLの生成のためのこのような節内投与は、米国特許出願第09/380,534号及び09/776,232(公開番号20020007173)に、並びにPCT出願PCT/US98/14289(公開番号WO9902183A2)(各々、表題:CTL応答の誘導方法(A METHOD OF INDUCING A CTL RESPONSE))に教示されている。本発明のいくつかの実施形態では、ペプチドの節内投与は、プラスミドDNAワクチンで最初に誘導された応答を増幅するのに有効であった。さらにサイトカインプロフィールは異なり、プラスミドDNA誘導/ペプチド増幅に関しては、一般にDNA/DNA又はペプチド/ペプチドプロトコールよりも大きいケモカイン(化学誘引物質サイトカイン)及びより低い免疫抑制性サイトカイン産生を生じた。
【0085】
したがってこのようなDNA誘導/ペプチド増幅プロトコールは、癌及び慢性感染のための治療用ワクチンを含めた組成物の有効性を改善し得る。このような免疫療法のための有益なエピトープ選択原理は、米国特許出願第09/560,465号、10/026,066(公開番号20030215425A1)及び10/005,905(全て表題:抗原提示細胞におけるエピトープ惹起(EPITOPE SYNCHRONIZATION IN ANTIGEN PRESENTING CELLS));09/561,074(表題:エピトープ発見方法(METHOD OF EPITOPE DISCOVERY));09/561,571(表題:エピトープクラスター(EPITOPE CLUSTERS));10/094,699(公開番号20030046714A1)(表題:癌のための抗新脈管調製物(ANTI-NEOVASCULATURE PREPARATIONS FOR CANCER));及び10/117,937(公開番号20030220239A1)及び10/657,022、並びにPCT出願PCT/US2003/027706(公開番号WO04022709A2)(ともに表題:エピトープ配列(EPITOPE SEQUENCES))に開示されている。ワクチンプラスミドの全体的設計の態様は、米国特許出願第09/561,572号(表題:標的関連抗原のエピトープをコードする発現ベクター(EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS))及び10/292,413号(公開番号20030228634A1)(表題:標的関連抗原のエピトープをコードする発現ベクター及びそれらの設計方法(EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS AND METHODS FOR THEIR DESIGN));10/225,568号(公開番号20030138808)、PCT出願PCT/US2003/026231(公開番号WO20
04/018666)及び米国特許第6,709,844号(表題:プラスミド増殖における望ましくない複製中間体の回避(AVOIDANCE OF UNDESIRABLE REPLICATION INTERMEDIATES IN PLASMIND PROPAGATION))に開示されている。特定の癌に対して免疫応答を向ける場合の特定の利点のある特異抗原組合せは、米国特許仮出願第60/479,554号及び米国特許出願第______/______号(代理人ドケット番号:MANNK.035A)及びPCT特許出願(公開番号______)(ともに表題:(種々の種類の癌のためのワクチン中の腫瘍関連抗原の組合せ(COMBINATIONS OF TUMOR-ASSOCIATED ANTIGENS IN VACCINES FOR VARIOUS TYPES OF CANCERS))(それぞれ2003年6月17日提出)に開示されている。
【0086】
意外にも、在来の初回抗原刺激−追加免疫スケジュールによるペプチドの反復節内注射は、初回投与単独後に観察された応答と比較して、細胞溶解性応答の大きさ低減を生じた。免疫応答プロフィールの試験は、これが、非応答性というよりむしろ免疫調節(抑制)の誘導の結果であることを示す。これは、DNAコード化免疫原、典型的にはプラスミドを包含する誘導及び増幅プロトコールと対照を成す。抗原の節内注射によるpAPCの直接負荷は一般に、他の非経口経路を介して送達される抗原の薬物動態を矯正するために一般的に用いられるアジュバントに対する必要性を減少するか又は不要にする。したがって一般に前炎症性であるこのようなアジュバントがなければ、ペプチド免疫感作を用いて従来観察されているものと異なる(即ち調節性又は寛容原性)免疫応答プロフィールの誘導を促し得る。応答は、以下の実施例に示されるように、初回注射部位から離れた第二のリンパ系器官で測定されるため、このような結果は、進行中の炎症反応を緩和する(抑制する)ための本発明の実施形態による方法及び組成物の使用を支持する。このアプローチは、同一抗原又は炎症の部位に関連した任意の適切な抗原を標的化し、免疫抑制性サイトカインにより媒介される第三者作用に頼ることにより、クラスII MHC拘束性病因を有する炎症性障害に関する場合でさえ、有用であり得る。
【0087】
反復ペプチド投与が細胞溶解性免疫応答の漸減を生じる、という事実にもかかわらず、非複製組換えDNA(プラスミド)のような作因による誘導はその後の投与に実質的影響を及ぼし、組換えDNA及びペプチドにより発現されるエピトープに対する免疫の強い増幅を可能にし、その細胞溶解性を惹起させる。実際、組換えDNAベクター又はペプチドの1回又は多数回投与がそれぞれ免疫応答を達成しないか又は適度の免疫応答を達成した場合、DNAによる誘導及びペプチドによる増幅は、応答体の比率として、並びに応答の大きさとして、実質的により高い応答を達成した。示された例では、組換えDNA誘導/ペプチド増幅プロトコールを用いることにより、応答速度は少なくとも二倍であり、そして応答の大きさ(平均及び中央値)は少なくとも三倍であった。したがって好ましいプロトコールは、リンパ系及び非リンパ系器官内で、in vivoで抗原細胞を取扱い得る免疫(Tcl免疫)の誘導を生じる。ほとんどの癌免疫療法における一限定要因は、おそらくはMHC/ペプチド提示低減による、免疫媒介性攻撃に対する腫瘍細胞の限定感受性である。好ましい実施形態では、免疫の強い拡大は、DNA誘導/ペプチド増幅により達成され、毒性微生物による感染後に一般に観察されるのと一般に等しいか又はそれ以上の免疫応答の大きさを伴う。この大きさ増大は、不十分なMHC/ペプチド提示を補うのに役立ち得るし、例えばHLAトランスジェニックマウスのような特殊化前臨床モデルにおいて示されるようなヒト腫瘍細胞のクリアランスを生じる。
【0088】
組換えDNA惹起投与の特定の配列とその後のリンパ系器官に投与されたペプチド追加免疫を包含するこのような誘導及び増幅プロトコールは、したがって、例えば、感染性又は新生物性疾患の予防又は治療のための、強力なT細胞応答の誘導、増幅及び維持の目的のために有用である。このような疾患は、癌腫(例えば腎臓、卵巣、乳房、肺、結腸直腸、前立腺、頭部及び頚部、膀胱、子宮、皮膚)、黒色腫、種々の起源の腫瘍、並びに概して、定義された又は定義可能な腫瘍関連抗原、例えば腫瘍胎児性(例えばCEA、CA19−9、CA125、CRD−BP、Das−1、5T4、TAG−72等)、組織分化
(例えばメランA、チロシナーゼ、gp100、PSA、PSMA等)又は癌−精巣抗原(例えばPRAME、MAGE、LAGE、SSX2、NY−ESO−1等;表5参照)であり得る。癌−精巣遺伝子及びがん治療に関するそれらの関連性は、Scanlon et al., Cancer Immunity 4: 1-15, 2004で検討されている。腫瘍新脈管系に関連する抗原(例えばPSMA、VEGFR2、Tie−2)も、米国特許出願第10/094,699号(公開番号20030046714A1)(表題:癌のための抗新脈管系調製物(ANTI-NEOVASCULATURE PREPARATIONS FOR CANCER))に開示されているように、癌性疾患との結びつきにおいて有用である。この方法及び組成物は、種々の生物体及び疾患状態を標的化するために用いられ得る。例えば標的生物体としては、細菌、ウイルス、原生動物、真菌等が挙げられ得る。標的疾患は、例えばプリオンにより引き起こされるものを包含し得る。例示的疾患、生物体及び抗原、並びに標的生物体、細胞及び疾患に関連したエピトープは、米国特許出願第09/776,232号(公開番号20020007173A1)に記載されている。検討され得る感染性疾患の中には、慢性感染(HIV、単純ヘルペスウイルス、CMV、B及びC型肝炎ウイルス、パピローマウイルス等)を確立する傾向がある作因により引き起こされるもの、及び/又は急性感染(例えばインフルエンザウイルス、麻疹、RSV、エボラウイルス)と結び付けられるものがある。興味深いのは、発癌能力(予防又は治療の見地から)を有するウイルス、例えばパピローマウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス及びHTLV−1である。これらの感染性作因は全て、ペプチドエピトープのような組成物を設計するための基礎として用いられ得る定義された又は定義可能な抗原を有する。
【0089】
このような方法の好ましい用途(例えば図19参照)としては、好ましくは免疫学的不活性ビヒクル又は処方物中(用量範囲1ng/kg〜10mg/kg、好ましくは0.005〜5mg/kg)の、組換えDNA(用量範囲0.001〜10mg/kg、好ましくは0.005〜5mg/kg)の多数回(例えば1〜10又はそれ以上、2〜8、3〜6、好ましくは約4又は5)投与と、その後のペプチドの1又は複数回(好ましくは約2)の投与、が挙げられる。用量は必ずしも被験体のサイズに伴って直線状に決められるわけではなく、ヒトに関する用量はより低いほうに向かう傾向があり、マウスに関する用量は高いほうに向かう可能性があって、これらの部分は多岐に亘る。注射時のプラスミド及びペプチドの好ましい濃度は、一般に約0.1μg/ml〜10mg/mlであり、最も好ましい濃度は約1mg/mlであり、一般に被験体のサイズ又は種とは関係ない。しかしながら特に強力なペプチドは、この範囲の低末端方向に、例えば1〜100μg/mlに最適濃度を有する。寛容を促進するためにペプチドのみのプロトコールが用いられる場合、これらの範囲の高いほうの末端に向かう用量が一般に好ましい(例えば0.5〜10mg/ml)。この配列は、in vivoでの強力な免疫応答を維持する必要がある限り、反復され得る。さらに、DNAの最終惹起投与とペプチドの最初の増幅投与間の時間は重要でない。好ましくはそれは約7日又はそれ以上であり、数ヶ月を超え得る。多数回のDNA及び/又はペプチドの注射は、数日間(好ましくは2〜7日)継続する代替的注入により低減され得る。注射として投与されうるものと同様の物質のボーラスを用いた注入を開始し、その後、緩徐注入(DNAに関して約25〜2,500μg/日を送達するために24〜12,000μl/日、ペプチドに関して0.1〜10,000μg/日)するのが有益であり得る。これは、手動で、又はプログラム可能なポンプ、例えばインスリンポンプの使用により成し遂げられ得る。このようなポンプは当該技術分野で既知であり、いくつかの実施形態において所望され得る周期的スパイク及びその他の投与量プロフィールを可能にする。
【0090】
なお、この方法はタンパク質の接合、アジュバントの付加等を伴わずに、うまくペプチドを使用するが、増幅工程では、このような構成成分の非存在は必要とされない、ということに留意すべきである。したがって接合ペプチド、アジュバント、免疫増強剤等が実施形態において用いられ得る。種々の形態のペプチドエピトープ又は抗原から成るか又はそ
れらを包含するペプチドパルス標識樹状細胞、懸濁液、例えばリポソーム処方物、凝集物、乳濁液、マイクロ粒子、ナノ結晶を含めた、リンパ節に投与される或いはリンパ系に向かわせる能力を有するペプチドのより複雑な組成物は、該方法における遊離ペプチドの代わりに置換され得る。逆に言えば、節内投与によるペプチド追加免疫は、控えめなレベルでもTメモリー細胞の誘導を達成する任意の手段及び/又は経路により初回刺激の後に実施され得る。
【0091】
抗原発現のモザイク現象による、或いは抗原の突然変異又は欠失による耐性の出現を低減するためには、多数の、好ましくは約2〜4つの抗原に対して共在的に免疫感作することが有益である。抗原の任意の組合せが用いられ得る。特定の腫瘍の抗原発現のプロフィールを用いて、どの抗原又は抗原の組合せを用いるかを確定し得る。例示的方法は、米国特許仮出願第______/______号(代理人ドケット番号:MANNK.035PR2)(本明細書と同じ日付に提出)(表題:(種々の種類の癌のための診断における腫瘍関連抗原の組合せ(COMBINATIONS OF TUMOR-ASSOCIATED ANTIGENS IN DIAGNOTISTICS FOR VARIOUS TYPES OF CANCERS))に見出される。選定された癌の治療に特に適している抗原の特定の組合せは、米国特許出願第60/479,554号及び______/______号(代理人ドケット番号:MANNK.035A)及びPCT特許出願(公開番号______)(参照として上記で引用及び援用されている)に開示されている。複数の抗原に対する又は単一抗原からのエピトープに対する免疫応答を誘発するために、これらの方法を用いて、多数の免疫原性存在物を、独立して又は混合物として送達し得る。免疫原が独立して送達される場合、異なる存在物が、異なるリンパ節に、又は同一リンパ節(単数又は複数)に異なる時間に、又は同一リンパ節(単数又は複数)に同一時間に投与される、というのが好ましい。これは、全ての構成成分ペプチドに溶解性及び安定性を提供する単一処方物を考案するのが困難であり得るペプチドの送達に特に関係がある。単一核酸分子は、多数の免疫原をコードし得る。代替的には、複数の抗原に関する全ての構成成分免疫原のうちの1つ又はサブセットをコードする多数の核酸分子は、粘性が問題になるような高濃度の核酸を必要とせずに所望の用量が提供され得る限り、一緒に混合され得る。
【0092】
好ましい実施形態では、方法は、リンパ系への直接投与を要する。好ましい実施形態では、これはリンパ節へである。輸入リンパ管が同様に好ましい。リンパ節の選択は重要でない。鼠径部リンパ節がそれらのサイズ及び接近可能性のために好ましいが、腋窩及び頚部リンパ節並びに扁桃が同様に有益であり得る。単一リンパ節への投与は、免疫応答を誘導するか又は増幅するために十分であり得る。多数のリンパ節への投与は、応答の信頼性及び大きさを増大し得る。
【0093】
このような免疫感作方法から利益を得ることができる患者は、彼等のMHCタンパク質発現プロフィール及び全身レベルの免疫応答性を特定するための方法を用いて補充される。さらに彼等の免疫レベルは、標準技法を、末梢血へのアクセスとともに用いてモニタリングされ得る。最後に、治療プロトコールは、誘導又は増幅期に対する応答性、並びに抗原発現における変動に基づいて調整され得る。例えば反復惹起用量は、数セットの惹起用量後に増幅するというよりむしろ、好ましくは検出可能応答が得られるまで投与され得、次に増幅ペプチド用量(単数又は複数)を投与する。同様に、予定された増幅又は維持用量のペプチドは、それらの有効性が徐々に弱まり、抗原特異的調節T細胞数が増大し、又は寛容のいくつかの他の証拠が観察されたならば、中断され、そしてさらなる惹起が施された後、ペプチドによる増幅を再開し得る。免疫感作方法により免疫応答性を評価し、監視するための診断技法の組込みは、米国特許仮出願第______/______号(代理人ドケット番号:MANNK.040PR)(表題:診断方法を治療方法と統合することによる能動免疫療法の効力改善(IMPROVED EFFICACY OF ACTIVE IMMUNOTHERAPPY BY INTEGRATING DIAGNOSTIC WITH THERAPEUTIC METHODS))(本出願と同一日付で提出)により完全に考察されている。
【実施例】
【0094】
以下の実施例は例証のためにすぎず、いかなる点でも本発明又はその種々の実施形態の範囲を限定するものではない。
【0095】
実施例1.リンパ内免疫感作による免疫応答の高有効性誘導
ヒトMHCクラスI(A*0201、「HHD」と呼ばれる;Pascolo et al. J. Exp.
Med. 185(12):2043-51, 1997参照)のキメラ一本鎖バージョンを発現する導入遺伝子を保有するマウスを、以下のように節内投与により免疫感作した。誘導のためにメラン−A26−35 A27L類似体を発現するプラスミド(pSEM)を用いて、5群のマウス(n=3)を、異なる注射経路:皮下(sc)、筋肉内(im)及びリンパ内(in、鼠径部リンパ節中への直接接種を使用)を用いることにより、免疫感作し、1週間後に増幅した。免疫感作及び投与量のスケジュールを、図1Aに示す。増幅1週間後、マウスを屠殺し、脾臓細胞を調製して、タグ化抗CD8mAb及びメランA26−35特異的T細胞受容体を認識する四量体を用いて染色した。代表的データを図1Bに示す。皮下及び筋肉内投与は、約1%又はそれ未満の四量体+CD8+T細胞の頻度を達成する一方、プラスミドのリンパ内投与は6%より多い頻度を達成した。さらに脾臓細胞をメラン−Aペプチドを用いてex vivoで刺激して、種々のE:T比で51Cr標識標的細胞(T2細胞)に対して試験した(図1C)。リンパ節内注射により免疫感作された動物からの脾臓細胞は、この標準細胞傷害性検定において、種々のE:T比で最高レベルのin vitro溶解を示した。
【0096】
実施例2.異なる形態の免疫原が投与される順序の効果
種々の順でのプラスミド(pSEM)又はペプチド(Mel A;ELAGIGILTV;配列番号1)の節内投与により、HHDマウスを免疫感作した。pSEMによりコードされる免疫原性ポリペプチドは、米国特許出願第10/292,413号(公開番号20030228634A1)(表題:標的関連抗原のエピトープをコードする発現ベクター及びそれらの設計方法(EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS AND METHODS FOR THEIR DESIGN))に開示されている。
【0097】
免疫感作のプロトコール(図2)は、以下より成る:
i)誘導期/誘導用量:0日目及び4日目での、25μg(マイクログラム)のプラスミド又は50μg(マイクログラム)のペプチドを含有する25μl(マイクロリットル)の滅菌生理食塩水の鼠径部リンパ節への両側注射。
ii)増幅用量:実施例1に上記したように、誘導期の完了後2週間で開始される。
【0098】
脾臓細胞の単離と、pAPCの存在下でのコグネイトペプチドを用いたin vitro刺激の後に、標準技法により免疫応答を測定した。多数の検定から生じる結果を考慮に入れ、種々のエフェクター及び調節機能の評価を促し、応答のより全体的な見地を提供することにより、免疫応答のプロフィールを描くのが好ましい。用いられる検定の種類に対する検討がなされ得、単にそれらの数に対しては検討されない;例えば異なる前炎症性サイトカインに関する2つの検定は、1つの検定にケモカイン又は免疫抑制サイトカインに関する検定をプラスしたものと同じ情報を提供するというわけではない。
【0099】
実施例3.実施例2に記載したように免疫感作されたマウスのELISPOT(エリスプロット)分析
ELISPOT分析は、サイトカイン産生性のペプチド特異的T細胞の頻度を測定する。図3は、二重反復試験における代表例を示し、図4は、サイトカイン産生細胞の数/106個の応答体細胞として個々に表されるデータの要約を示す。結果は、ペプチドで免疫感作されたマウスとは対照的に、プラスミド感作又はプラスミド惹起/ペプチド増幅マウ
スは、メランAペプチドを認識するIFN−γ(ガンマ)産生T細胞の頻度増大を生じた、ということを示す。プラスミドで惹起させ、ペプチドで増幅させた4匹のマウスのうちの4匹が、1/2000を上回る頻度を示した。これに対して、プラスミドを用いたプロトコールにより免疫感作された4匹のマウスのうち2匹が、1/2000を上回る頻度を示した。免疫原としてペプチドのみを用いたマウスのうち、IFN−γ産生T細胞内で応答増大を始めたものはなかった。実際、ペプチドの反復投与は、プラスミドによる惹起後に投与されたペプチドと鮮明な対照を成して、このような細胞の頻度を減少した。
【0100】
実施例4.実施例2に記載したように免疫感作されたマウスの細胞溶解活性の分析
各群からプール化脾臓細胞を調製し(採取し、細かく刻み、赤血球溶解した脾臓)、rIL−2の存在下で7日間、LPS刺激化メランAペプチド被覆同一遺伝子型pAPCとともにインキュベートした。細胞を洗浄し、メランAペプチド(ELA)でパルス標識した51Crタグ化T2標的細胞を異なる比率で用いて、4時間インキュベートした。上清中に放出された放射能を、γ(ガンマ)計数器を用いて測定した。応答を、溶解%=(試料シグナル−バックグラウンド)/(最大シグナル−バックグラウンド)×100(式中、バックグラウンドは、検定培地中でインキュベートした場合に標的細胞単独により放出される放射能を表し、最大シグナルは、界面活性剤で溶解された標的細胞により放出される放射能である)として定量した。図5は、上記の細胞傷害性検定の結果を例示する。ペプチドによるin vitro刺激後に達成された細胞溶解活性のレベルは、誘導用量としてペプチドを受容したものより、in vivoでの誘導用量としてDNAを受容した群に関するほうが非常に大きかった。上記のELISPOTデータと一致して、DNA組成物を用いた免疫応答の誘導は、安定した、増幅可能なエフェクター機能をもたらしたが、一方、ペプチドのみを用いる免疫感作は、より少ない応答を生じ、その大きさは反復投与時にさらに減少した。
【0101】
実施例5.交差反応性
脾臓細胞を調製し、3つの異なるペプチド:メランA類似体免疫原、並びにそれに対応するヒト及びネズミエピトープを表すもの:で被覆された標的細胞に対して、実施例に上記したように用いた。図6に示したように、3つの標的の全てにおいて同様の細胞溶解活性が観察されたが、これは、天然配列に対する応答の交差反応性を実証する。
【0102】
実施例6.リンパ節へのペプチドの反復投与は免疫偏向及び調節T細胞を誘導する
上記の(そして図2に記載した)免疫感作手順により生成される特異的T細胞のサイトカインプロフィールを、ELISA又はルミネックス(Luminex)(登録商標)(ルミネックス(登録商標)分析は、多様な方式で培養中のT細胞により産生されるサイトカインを測定するための方法である)により評価した。上記のようにして生成した混合リンパ球培養物の7日目の上清を、以下の生物学的応答変更因子を測定するために用いた:MIP−Iα、RANTES及びTGF−β(捕捉ELISA。抗サイトカイン抗体及び特定の試薬(例えばビオチンタグ化抗体、ストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼ及び比色基質)を被覆したプレートを使用;R & D Systems)。他のサイトカインは、専門のメーカー(BD Pharmingen)により提供されるT1/T2及びT炎症キットを用いて、ルミネックス(登録商標)により測定した。
【0103】
図7Aのデータは、3つの異なる免疫感作プロトコールを比較し、免疫応答のプロフィールに及ぼすプロトコールの予期しない作用を示す:プラスミド惹起は前炎症性サイトカインを分泌するT細胞の誘導を可能にしたが、一方、反復ペプチド投与は調節性又は免疫抑制サイトカイン、例えばIL−10、TGF−ベータ及びIL−5を生成した。ペプチドのみのプロトコールのために用いられた免疫感作スケジュールは、その代わりに応答のエフェクター期を延長するリンパ系内のエピトープの継続的というよりむしろ周期的存在を提供した、と理解されるべきである。最後に、ペプチド増幅後のプラスミド惹起は、増
大量のT細胞ケモカインMIP−1α及びRANTESの産生をもたらした。T細胞ケモカイン、例えばMIP−1α及びRANTESは、腫瘍又は感染部位に対する遊走を調節するのに重要な役割を演じ得る。免疫サーベイランス中、標的関連抗原に特異的なT細胞は、コグネイトリガンドに遭遇して、増殖し、媒介物質、例えばケモカインを産生し得る。これらは、抗原が認識される部位でT細胞の動員を増幅し、より強力な応答を可能にする。データは、バルク培養物から得られた上清から作成した(二重反復試験の平均+SE、2つの個々の測定値)。
【0104】
標準方法により肺間質組織及び脾臓から細胞を取り出して、CD8、CD62L及びCD45RBに対する抗体を、四量体作用物質と一緒に用いて染色し、メランA特異的T細胞を同定した。図7Bのデータは、CD8+四量体+T細胞のゲート集団を表す(y軸CD45RB及びx軸CD62L)。
【0105】
同時に、結果は、ペプチドのみを注射された動物における免疫偏向を実証する(IFN−ガンマ低減、TNF−アルファ産生、IL−10、TGF−ベータ及びIL−5増大、CD62L− 低CD45RB CD8+四量体+調節細胞の強い誘導)。
【0106】
実施例7.リンパ節に投与される非複製プラスミド(惹起)とペプチド(増幅)を交互に用いることによる免疫応答の高効果誘導
ヒトMHCクラスIHLA.A2遺伝子に関してトランスジェニックであるHHDマウスの3群を、メランA腫瘍関連抗原に対するリンパ内投与により免疫感作した。pSEMプラスミド(25μg/リンパ節)又はELAペプチド(ELAGIGILTV、メランA26−35 A27L類似体)(25μg/リンパ節)のどちらかを用いた鼠径部リンパ節への直接接種により動物を初回刺激(誘導)し、3日後に、二次注射した。10日後、同一方式でpSEM又はELAを用いてマウスを追加免疫し、その後、3日後に最終追加免疫して、応答を増幅し(同様の免疫感作スケジュールに関する図11A参照)、以下の誘導&増幅組合せを生じた:pSEM+pSEM、pSEM+ELA及びELA+ELA(マウス12匹/群)。10日後、メランA特異的四量体試薬(HLA−A*0201MART1(ELAGIGILTV)−PE、Beckman Coulter)を用いて、免疫応答をモニタリングした。後眼窩洞静脈を介して個々のマウスを採血し、2000rpmで25分間、密度勾配遠心分離(Lympholyte Mammal, Cedarlane Labs)を用いてPBMCを単離した。CD8に対するマウス特異的抗体(BD Biosciences)及びメランA四量体試薬を用いてPBMCを同時染色し、FACS口径フローサイトメーター(BD)を用いてフローサイトメトリーにより具体的なパーセンテージを確定した。異なる初回刺激/追加免疫組合せにより生成されたメランA特異的CD8+細胞のパーセンテージを、図8A及び8Bに示す。プラスミド−初回刺激/ペプチド−追加免疫群(pSEM+ELA)は、全ての動物間で、4.6の平均四量体パーセンテージを有する強い免疫応答を引き出した。応答動物マウスは2又はそれ以上の四量体パーセンテージを有することが明示されたが、これは、非免疫感作対照群の平均+標準偏差(SE)の3倍と等しい値を表す。このような値は、当該技術分野で非常に強い応答と考えられ、通常は、複製ベクターを用いてのみ達成され得る。pSEM+ELA免疫感作群は、応答体であることが判明した12匹のマウスのうちの10匹を含有したが、これは、対照群と比較した場合に申し分ない有意差を表す(p(フィッシャー)=0.036)。その他の2つの免疫感作系列:pSEM+pSEM及びELA+ELAは、12匹の応答体のうち6匹を生じたが、0.05より大きいp値を有し、統計学的有意を低下させた。これらのマウスの免疫を測定するために、ペプチド被覆標的細胞をin vivoで用いて動物に抗原投与した。脾臓細胞を同腹対照HHDマウスから単離し、20μg/mLのELAペプチドとともに2時間インキュベートした。次に、これらの細胞をCFSEhi蛍光で染色し(4.0μM、15分間)、ペプチドとともにインキュベートされていない、CFSElo蛍光(0.4μM)で染色された対照脾臓細胞を同一比で用いて、免疫感作マウスに静脈内同時注射した。18時間後、脾
臓、リンパ節、PBMC及び肺を抗原投与動物(5匹/群)から除去し、フローサイトメトリーによりCFSE蛍光を測定することにより、標的細胞の特異的排除を測定した。結果を図8Cに示す。pSEM+ELA初回刺激/追加免疫群では、5匹のうちの4匹が強い免疫応答を実証し、試験した組織の各々において標的物の約50%をうまく掃去した。各実験群に関する代表的ヒストグラムを同様に示す(PBMC)。
【0107】
実施例8.DNAで誘導され、四量体レベルがベースラインに近づくまで静止された動物における免疫メモリー細胞を、ペプチド追加免疫は有効に再活性化する
図9Aに記載したようにして免疫感作後のマウス(5匹/群)において、メランA四量体レベルを測定した。免疫感作スケジュールの完了後5週間までに、四量体レベルはベースライン近くに戻っていた。ELAペプチドを用いて6週目に動物を追加免疫して、免疫応答が回復され得たか否かを確定した。pSEMプラスミドを免疫感作前に取得する動物(DNA/DNA、図9C)は、ELA増幅後のメランA特異的CD8+T細胞の非先例的な拡大を実証し、レベルは10%より大きい範囲であった。他方、ELAペプチドを注射前に取得する動物(図9A)は、より低頻度の四量体染色細胞により示されるように、ELA追加免疫からほとんど利益を得なかった。DNAを取得し、その後初回免疫感作としてペプチドを摂取したマウスは、他の群と比較して、ペプチド増幅を受けた時点で、有意ではあるが、中間の拡大を示した(図9B)。これらの結果は、DNA/DNA−惹起及びペプチド−増幅免疫感作戦略に関する強力な論理的根拠を明瞭に実証する。
【0108】
実施例9.リンパ系及び非リンパ系器官において高頻度の特異的T細胞の頻度を達成するための免疫感作の最適化
図9A〜Cに記載したように、プラスミド注射の一連の2つのクラスターによる惹起免疫感作とその後のペプチドによる増幅に付されたマウスは、強力な免疫応答を生じた。これに関するさらなる証拠は、ペプチド投与の前(図10A)及び後(図10B)の四量体レベルを例示する図10A〜Cに示されている。個々のマウスにおける四量体レベルは、T細胞の全CD8+集団の30%までがDNA/DNA/ペプチド免疫感作プロトコールを受けているマウスであることを明瞭に表す。これらの結果を図10Cのグラフに要約する。さらに高四量体レベルは、この厳密な免疫感作プロトコールを受けている動物の血液、リンパ節、脾臓及び肺中で明らかに証明された(図10D)。
【0109】
実施例10.プラスミド及びペプチド免疫原の精確な投与順は免疫応答の大きさを確定する
マウスの6群(n=4)を、鼠径部リンパ節への直接接種による初回刺激及び増幅を用いて、メランA26−35 A27L類似体(pSEM)又はメランAペプチドを発現するプラスミドで免疫感作した。免疫感作のスケジュールを図11Aに示す(50μgのプラスミド又はペプチド/リンパ節の用量、両側的)。2群のマウスをプラスミドを用いて開始し、プラスミド又はペプチドで増幅した。逆に、2群のマウスは、ペプチドを用いて開始し、ペプチド又はプラスミドで増幅した。最後に2群の対照マウスを、ペプチドか又はプラスミドで開始したが、増幅しなかった。最終接種後4週目に、脾臓を採取し、脾臓細胞懸濁液を調製し、プールして、抗IFN−γ抗体で被覆されたELISPOTプレート中でメランAペプチドで刺激した。インキュベーション後48時間目に、検定を展開し、メランAを認識したサイトカイン産生T細胞の頻度を自動的に計数した。データを、特異的T細胞/100万個の応答体細胞の頻度(三重反復試験の平均+SD)として図5Bに表した。データは、プラスミド及びペプチドの開始及び増幅用量の順を逆にすると応答の全体的大きさに実質的作用を及ぼし、一方、プラスミド惹起とその後のペプチド増幅は最大応答を生じ、ペプチドの開始用量とその後のプラスミド増幅は、ペプチドの反復投与と同様の、有意に弱い応答を発生する、ということを示した。
【0110】
実施例11.免疫応答と免疫感作のプロトコールとの相関、並びにリンパ系及び非リン
パ系器官内の標的細胞の掃去により明示されるin vivo効力
惹起及び増幅プロトコールにより得られた免疫応答を評価するために、4群の動物(n=7)をin vivoでメランA被覆標的細胞を用いて抗原投与した。脾臓細胞を同腹対照HHDマウスから単離し、20μg/mLのELAペプチドとともに2時間インキュベートした。次に、これらの細胞をCFSEhi蛍光で染色し(4.0μM、15分間)、CFSElo蛍光(0.4μM)で染色された対照脾臓細胞を同一比で用いて、免疫感作マウスに静脈内同時注射した。18時間後、脾臓、リンパ節、PBMC及び肺を抗原投与動物から除去し、フローサイトメトリーによりCFSE蛍光を測定することにより、標的細胞の特異的排除を測定した。図12A及び12Bは、非免疫感作対照動物又はペプチド/ペプチド、DNA/ペプチド若しくはDNA/DNAの免疫感作プロトコールを受けている動物の組織からのCFSEヒストグラムプロットを示す(2匹の代表的マウスを各群から示す)。DNA−惹起/ペプチド−増幅群は、リンパ系、並びに非リンパ系器官中の標的細胞の高レベルな特異的死滅を実証し(図12C)、そして四量体レベルとの特定の相関を実証した免疫感作プロトコールのみを表す(図12D、試験した全組織に関してr2=0.81又はそれ以上)。
【0111】
実施例12.厳密な惹起及び増幅プロトコールにより免疫感作された動物中のヒト腫瘍細胞のクリアランス
厳密なプロトコールを用いた免疫感作後にヒト黒色腫腫瘍細胞を用いてマウスに抗原投与することにより、メランA抗原に対する免疫をさらに試験した。図13Aは、試験した3つの群に関して用いられた厳密な免疫感作戦略を示す。免疫感作マウスは、図13Bに例示したようにCFSEloで標識した等比率の624.28HLA.A2−対照細胞と混合されたCFSEhi蛍光で標識したヒト標的細胞624.38HLA.A2+の2回の静脈内注射を受けた。14時間後、マウスを屠殺し、肺(ヒト標的が蓄積する器官)を、フローサイトメトリーにより標的細胞の特異的溶解に関して分析した。図13Cは、各群からのマウス由来の代表的CFSEヒストグラムプロットを示す。DNA−惹起と、その後のペプチド−増幅は、肺中の標的の約80%の特異的死滅により実証されるように、ヒト腫瘍細胞に対してマウスを明瞭に免疫感作した。より長い系列のDNA−惹起注射も、メランA四量体と反応性であるCD8+細胞のさらなる頻度増大をもたらした。
【0112】
実施例13.DNA−惹起、ペプチド−増幅戦略はSSX−2由来エピトープKASEKIFYV(SSX241−49)に対する強い免疫を生じる
図14Aに明示された免疫感作スケジュールを用いてSSX2腫瘍関連抗原に対して免疫感作された動物は、強い免疫応答を実証した。図14Bは、pCBPプラスミドで初回刺激(惹起)され、SSX241−49K41F又はK41Yペプチド類似体で追加免疫された(増幅された)マウスの代表的四量体染色を示す。これらの類似体は、SSX241−49エピトープに特異的なT細胞と交差反応性である。これらの例は、惹起及び増幅プロトコールが、利用可能なCD8 T細胞の80%に近いSSX2抗原特異性を引き出し得る、ということを例示する。pCBPプラスミド及びその設計原理は、米国特許出願第10/292,413号(公開番号20030228634A1)(表題:標的関連抗原のエピトープをコードする発現ベクター及びそれらの設計方法(EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS AND METHODS FOR THEIR DESIGN))に開示されている。さらなる方法論、組成物、ペプチド及びペプチド類似体は、米国特許仮出願第______/______号(代理人ドケット番号:MANNK.038PR)(本出願と同じ日付に提出)(表題:SSX−2ペプチド類似体(SSX-2 PEPTIDE ANALOGS))に見出される。さらなる方法論、組成物、ペプチド及びペプチド類似体は、米国特許仮出願第______/______号(代理人ドケット番号:MANNK.039PR)(本出願と同じ日付に提出)(表題:NY−ESOペプチド類似体(NY-ESO PEPTIDE ANALOGS))に開示されている。
【0113】
実施例14.惹起及び増幅戦略を用いて同時に異なる抗原上に位置するエピトープに対
する免疫応答を引き出し得る
4群のHHDマウス(n=6)を、pSEM単独;pCBP単独;pSEM及びpCBPを混合物として用いて;又は左リンパ節にpSEM及び右リンパ節にpCBPを用いて、リンパ節内注射を介して免疫感作した。これらの注射の10日後に、同一方式でELA又はSSX2ペプチドのどちらかで追加免疫を実施した。全免疫感作マウスを、非免疫感作対照と比較した。同時に2つの抗原標的物の特異的溶解の評価を可能にする三重ピークCFSEin vivo細胞傷害性検定を用いて、ELA又はSSX2ペプチドで被覆されたHHD同腹仔脾臓細胞を用いて抗原投与した。同数の対照−CFSElo、SSX2−CFSEmed及びELA−CFSEhi細胞を免疫感作マウス中に静脈内注入し、18時間後、マウスを屠殺して、フローサイトメーターを用いたCFSE蛍光により標的細胞排除を脾臓(図15A)及び血液(図15B)中で測定した。図15A及び15Bは、個々のマウスからのSSX2及びメランA抗原標的物の特異的溶解パーセントを示し、図15Cは、棒グラフフォーマットで結果を要約する。2つのワクチンの混合物による動物の免疫感作は、両抗原に対する免疫を生成し、30+/−11の脾臓中の平均SSX2特異的溶解パーセント及びメランAに関して97+/−1を示す最高免疫応答を生じた。
【0114】
実施例15.DNA惹起及びペプチド増幅の反復サイクルは強力な免疫を達成し、維持する
3群の動物(n=12)は、2サイクルの以下の免疫感作プロトコールを受けた:DNA/DNA/DNA;DNA/ペプチド/ペプチド;又はDNA/DNA/ペプチド。免疫感作の各サイクル後のマウスにおいてメランA四量体レベルを測定し、図16に示す。初期DNA/DNA/ペプチド免疫感作サイクルは、平均21.1+/−3.8パーセントの四量体+CD8+T細胞を生じた(他の2つの群の約2倍高い)。2回目の惹起及び増幅免疫感作後、DNA/DNA/ペプチド群に関する平均四量体パーセンテージは32.6+/−5.9に54.5%増大した(これはDNA/ペプチド/ペプチドレベルの2.5倍、DNA/DNA/DNA群レベルの8.25倍高い)。さらにこれらの条件下で、他の免疫感作スケジュールは、四量体陽性T細胞の頻度の増大をほとんど達成しなかった。
【0115】
実施例16.交互のプラスミド及びペプチドベクターからなる免疫誘導及び増幅療法により誘発される長寿命メモリーT細胞
4匹のHHDトランスジェニック動物(3563、3553、3561及び3577)は、2サイクルの以下の惹起及び増幅プロトコールを受けた:DNA/DNA/ペプチド。最初のサイクルは、−31、−28、−17、−14、−3、0日目における免疫感作を包含した;第2サイクルは、14、17、28、31、42及び45日目における免疫感作を包含した。120日目にペプチドを用いてマウスに追加免疫した。各サイクルの免疫感作後7〜10日目と2回目の免疫感作サイクル後90日まで定期的に、マウスにおいてメラン−A四量体レベルを測定した。グラフ中の矢印は、サイクルの完了に対応する(図17A)。4匹の動物は全て最終追加免疫(増幅)後の応答を見せたが、これは寛容の誘導というよりむしろ免疫メモリーの持続性を実証する。
【0116】
5匹のHHDトランスジェニック動物(3555、3558、3566,3598及び3570)は、2サイクルの以下の惹起及び増幅プロトコールを受けた:DNA/ペプチド/ペプチド。前と同様に、最初のサイクルは、−31、−28、−17、−14、−3、0日目における免疫感作を包含した;第2サイクルは、14、17、28、31、42及び45日目における免疫感作を包含した。120日目にペプチドを用いてマウスに追加免疫した。各サイクルの免疫感作後7〜10日目と2回目の免疫感作サイクル後90日まで定期的に、マウスにおいてメランA四量体レベルを測定した(図17B)。比較すると、各サイクルにおける後期DNA注射の代わりにペプチドを置き換えるこの惹起及び増幅プロトコールは、この実験では、免疫メモリー減少又は応答性低減を生じた。
【0117】
実施例17.実質的拡大能力を有する長寿命メモリーT細胞は節内DNA投与により生成される
7匹のHHDトランスジェニック動物は、2サイクルの以下の免疫感作プロトコールを受けた:DNA/DNA/DNA。最初のサイクルは、−31、−28、−17、−14、−3、0日目における免疫感作を包含した;第2サイクルは、14、17、28、31、42及び45日目における免疫感作を包含した。120日目にペプチドを用いてマウスに追加免疫した。各サイクルの免疫感作後7〜10日目と2回目の免疫感作サイクル後90日まで定期的に、マウスにおいてメランA四量体レベルを測定した(図18)。7匹の動物は全て、2回の免疫感作サイクル中又はその後に四量体+細胞の境界線上頻度%を示したが、ペプチド追加免疫後に強力な応答を見せ、このことは、実質的免疫メモリーを実証する。
【0118】
実施例18.抗原+免疫増強アジュバントの種々の組合せはCTL応答の惹起のために有効である
ペプチドの節内投与は、TLRのようなアジュバントを含むか又は関連した作因(複製性又は非複製性)のリンパ内投与により誘発される免疫応答を増幅するための非常に強力な手段である。
【0119】
被験体(例えばマウス、ヒト又はその他の哺乳類)を、ベクター、例えばプラスミド、ウイルス、ペプチド+アジュバント(CpG、dsRNA、TLRリガンド)、組換えタンパク質+アジュバント(CpG、dsRNA、TLRリガンド)、死微生物又は精製抗原(例えば免疫増強活性を有する細胞壁構成成分)を用いた節内注入又は注射により惹起し、アジュバントを含有しないペプチドの節内注射により増幅する。四量体染色及びその他の方法により追加免疫の前及び後に測定した免疫応答は、大きさの実質的増大を示す。これに対比して、他の経路によるアジュバントを含有しないペプチドを利用する追加免疫は、免疫応答の同一の増大を達成しない。
【0120】
実施例19.ペプチドの節内投与は、任意の投与経路による抗原+免疫増強アジュバントにより誘発される免疫応答を増幅するための非常に強力な手段である
被験体(例えばマウス、ヒト又はその他の哺乳類)を、ベクター、例えばプラスミド、ウイルス、ペプチド+アジュバント(CpG、dsRNA、TLRリガンド)、組換えタンパク質+アジュバント(CpG、dsRNA、TLRリガンド)、死微生物又は精製抗原(例えば免疫増強活性を有する細胞壁構成成分)の非経口的又は粘膜投与により免疫感作し、アジュバントを含有しないペプチドの節内注射により増幅する。四量体染色及びその他の方法により追加免疫の前及び後に測定した免疫応答は、大きさの実質的増大を示す。これに対比して、節内以外の経路によるアジュバントを含有しないペプチドを利用する追加免疫は、免疫応答の同一の増大を達成しない。
【0121】
実施例20.惹起及び増幅免疫感作プロトコールを用いた寛容性破壊
寛容性を破壊するか又は自己抗原(例えば腫瘍関連抗原)に対する免疫応答性を回復するために、被験体(例えばマウス、ヒト又はその他の哺乳類)を、ベクター、例えばプラスミド、ウイルス、ペプチド+アジュバント(CpG、dsRNA、TLRリガンド)、組換えタンパク質+アジュバント(CpG、dsRNA、TLR擬態)、死微生物又は精製抗原で免疫感作し、アジュバントを含有しないペプチド(自己エピトープに対応する)の節内注射により追加免疫する。四量体染色及びその他の方法により追加免疫の前及び後に測定した免疫応答は、免疫応答の大きさの実質的増大を示す(「寛容性破壊」)。
【0122】
実施例21.惹起及び増幅免疫感作のための臨床的実行
臨床及び実験室判定基準を用いて、新生物又は感染性疾患のための治療を要するとして
、患者を診断し;治療するか、或いは第一段階の治療を用いないで;能動免疫療法に関する評価に言及する。疾患の性質及び治療物質の特質による、付加的判定基準(抗原プロファイリング、MHCハプロ型分類、免疫応答性)に基づいて、登録を行なう。精確な順でのベクター(プラスミド)及びタンパク質抗原(ペプチド)のリンパ内注射又は注入(ボーラス、プログラム可能なポンプ又はその他の手段)により、治療(図19)を実行する。最も好ましいプロトコールは、プラスミド惹起とその後のペプチドの増幅投与(単数又は複数)を含む反復周期を包含する。このようなサイクルの頻度及び継続は、免疫学的、臨床的及びその他の手段により測定される応答によって調整し得る。投与される組成物は、一価又は多価であり、多数のベクター、抗原又はエピトープを含有し得る。投与は、1つ又は多数のリンパ節に同時にか、或いは時差的な方式であり得る。この療法を受けている患者は、症候の改善を実証する。
【0123】
実施例22.病原性T細胞の免疫偏向又は非活性化の誘導のための臨床的実行
自己免疫又は炎症性障害を有する患者を、臨床及び実験室判定基準を用いて診断し、治療するか又は第一段階の治療を用いないで、能動免疫療法に関する評価に言及する。疾患の性質及び治療物質の特質による、付加的判定基準(抗原プロファイリング、MHCハプロ型分類、免疫応答性)に基づいて、登録を行なう。T1促進アジュバントを欠くか及び/又は免疫偏向を増幅する免疫修飾物質を伴うペプチドのリンパ内注射又は注入(ボーラス、プログラム可能なポンプ又はその他の手段)により、治療を実行する。しかしながらペプチドボーラス注射は、この方法により免疫偏向を発生させるための好ましい方式である。ペプチドを用いた治療は、免疫に及ぼす所望の作用又は臨床状態が得られるまで、毎週、2週間毎に又は低頻度で(例えば毎月)実行し得る。このような治療は、1回投与、又は図2の群2の場合のような多数回の近い間隔での投与を包含し得る。その後、低頻度注射を包含する調整療法を用いて、維持療法を開始し得る。投与される組成物は、一価又は多価であり、多数のエピトープを含有し得る。組成物は、リンパ系中のペプチドの存在を延長する任意の構成成分を含有しないのが好ましい。投与は、1つ又は多数のリンパ節に同時にか、或いは時差的な方式であり、免疫感作ペプチド又は無関連エピトープ(「エピトープ拡散」)に特異的なT細胞を、関連臨床方法に加えて測定することにより、応答をモニタリングし得る。
【0124】
実施例23.免疫原性組成物(例えばウイルスワクチン)
以下のスケジュール:0,3、14及び17日目:に従って、鼠径部リンパ節の両側に、25μgのプラスミドベクターを、6群(n=6)のHLA−A2トランスジェニックマウスに注射する。ベクターは、HIVgagからの3つのA2拘束性エピトープ(SLYNTVATL、VLAEAMSQV、MTNNPPIPV)、polからの2つ(KLVGKLNWA、ILKEPVHGV)及びenvからの1つ(KLTPLCVTL)をコードする。最終回の惹起の2週間後、これら5つのペプチド全てを包含する混合物をマウスに注射する(5μg/ペプチド/節、両側、3日おき)。平行して、5群のマウスに個々のペプチドを注射する(5μg/ペプチド/節、両側、3日おき)。7日後に、マウスを採血し、各ペプチドに対する四量体染色により応答を評価する。その後、マウスの半数に、env、gag又はpolを発現する組換えワクシニアウイルスを抗原投与し(103TCID50/マウス)、7日目に、慣用的プラーク検定を用いて卵巣で、ウイルス力価を測定する。他の半数を屠殺し、脾臓細胞をペプチドで5日間刺激して、ペプチドで被覆された標的細胞に対する細胞傷害活性を測定する。対照として、マウスにプラスミド又はペプチド単独を注射した。プラスミドで惹起させ、ペプチドで増幅させたマウスは、四量体染色及び細胞傷害性により、5つのペプチド全てに対するより強力な免疫を示す。
【0125】
より一般的に、寛容性を破壊し、免疫応答性を回復し、又は非自己抗原、例えばウイルス、細菌、寄生生物又は微生物に対する免疫を誘導するために、被験体(例えばマウス、ヒト又はその他の哺乳類)を、ベクター、例えばプラスミド、ウイルス、ペプチド+アジ
ュバント(CpG、dsRNA、TLR擬態)、組換えタンパク質+アジュバント(CpG、dsRNA、TLR擬態)、死微生物又は精製抗原(例えば細胞壁構成成分)で免疫感作し、アジュバントを含有しないペプチド(自己エピトープに対応する)の節内注射により追加免疫する。四量体染色及びその他の方法により追加免疫の前及び後に測定した免疫応答は、免疫応答の大きさの実質的増大を示す。このような戦略を用いて、感染に対して防御するか、或いはHBV、HCV、HPV、CMV、インフルエンザウイルス、HIV、HTLV、RSV等のような作因により引き起こされる慢性感染を治療し得る。
【0126】
本発明の多数の変形及び選択的因子を開示してきた。さらなる変形及び選択因子が当業者には明らかである。本発明の種々の実施形態は、これらの変形又は因子のいずれかを特定的に含むか又は排除し得る。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1A】図1Aは、リンパ内免疫感作による免疫応答の誘導を示す図である。
【図1B】図1Bは、リンパ内免疫感作による免疫応答の誘導を示す図である。
【図1C】図1Cは、リンパ内免疫感作による免疫応答の誘導を示す図である。
【図2】図2は、抗原の標的化(リンパ節)送達によるMHCクラスI拘束性エピトープに対する免疫を制御するか又は操作するためのプロトコールの例を示す図である。
【図3】図3は、図4に記載されたデータに対応する代表的ウエルに関する視覚的透視図を表す図である。
【図4】図4は、ELISPOTにより測定し、ペプチドを認識するIFN−γ(ガンマ)産生T細胞の数(頻度)として表した、図2に記載されたプロトコールの適用に起因する免疫応答の大きさを示す図である。
【図5】図5は、図2に示したような抗原の標的化送達により生成されたT細胞の細胞傷害性プロフィールを示す図である。
【図6】図6は、図2に示したプロトコールにより生成されたMHCクラスI拘束性T細胞の交差反応性を示す図である。
【図7A】図7Aは、3クラスの生物学的応答変更因子(前炎症性サイトカイン、ケモカイン又は化学誘引物質、並びに免疫調節又は抑制ケモカイン)の成員を産生するリンパ球の能力として表される免疫のプロフィールと、その後の図2に記載した免疫感作プロトコールの適用を示す図である。
【図7B】図7Bは、図2に記載した免疫感作プロトコールにより生成されたT細胞に関するフローサイトメトリーにより表現型分けされる細胞表面マーカーを示す。リンパ節へのペプチドの反復投与は、免疫偏向及び調節T細胞を誘導する図である。
【図8A】図8Aは、DNA、ペプチド、或いはDNA及びペプチドの惹起/増幅配列で免疫感作したマウスにおける、四量体により測定した特異的T細胞の頻度を示す図である。
【図8B】図8Bは、DNA、ペプチド、或いはDNA及びペプチドの惹起/増幅配列で免疫感作したマウスにおける、四量体により測定した特異的T細胞の頻度を示す図である。
【図8C】図8Cは、DNA(「pSEM」)、ペプチド(「ELA」=ELAGIGILTV)、或いはDNA及びペプチドの惹起/増幅配列で免疫感作したマウスにおける、種々のリンパ系及び非リンパ系器官におけるin vivoで生じる特異的細胞傷害を示す図である。
【図9A】図9Aは、ペプチドで免疫感作し、ペプチドで増幅した動物における循環四量体染色T細胞の持続性/崩壊を、ペプチド追加免疫後の再生応答とともに示す図である。
【図9B】図9Bは、DNAで惹起し、ペプチドで増幅した動物における循環四量体染色T細胞の持続性/崩壊を、ペプチド増幅後の再生応答とともに示す図である。
【図9C】図9Cは、DNAで免疫感作し、DNAで増幅した動物における循環四量体染色T細胞の持続性/崩壊を、ペプチド追加免疫後の再生応答とともに示す図である。
【図10A】図10Aは、種々の2サイクル免疫感作プロトコールを用いた抗原特異的CD8+T細胞の拡大を示す図である。
【図10B】図10Bは、種々の3サイクル免疫感作プロトコールを用いた抗原特異的CD8+T細胞の拡大を示す図である。
【図10C】図10Cは、種々のプロトコールを用いて初回刺激され、ペプチドで増幅された動物における四量体染色により検出される循環抗原特異的T細胞の拡大を示す図である。
【図10D】図10Dは、リンパ系及び非リンパ系器官における、種々の免疫感作療法後の、そして四量体染色により検出された抗原特異的T細胞の拡大を示す図である。
【図11A】図11Aは、プラスミドDNA及びペプチドを用いてマウスを免疫感作する予定表の一例を示す図である。
【図11B】図11Bは、種々の免疫感作プロトコール(それぞれの又は逆の順序でのDNA及びペプチドの変更)により引き起こされたELISPOT分析により確定した免疫応答を示す図である。
【図12A】図12Aは、プラスミド及びペプチドで免疫感作したマウスにおける、血液及びリンパ節における抗原性標的細胞のin vivo欠乏を示す図である。
【図12B】図12Bは、プラスミド及びペプチドで免疫感作したマウスにおける、脾臓及び肺における抗原性標的細胞のin vivo欠乏を示す図である。
【図12C】図12Cは、12A、Bに提示された結果の要約を示す図である。
【図12D】図12Dは、種々のプロトコールにより免疫感作したマウスにおける特異的T細胞の頻度及び抗原性標的細胞のin vivoクリアランス間の相関を示す図である。
【図13A】図13Aは、プラスミドDNA及びペプチドでマウスを免疫感作する予定表、並びにそれらのマウスにおいて実施する測定の性質を示す図である。
【図13B】図13Bは、免疫感作マウスにおけるヒト腫瘍細胞のin vivoクリアランスの確定のために用いられるプロトコールに関連した予定表を記載する図である。
【図13C】図13Cは、プラスミド及びペプチドで免疫感作したマウスにおける、抗原性標的細胞(ヒト腫瘍細胞)のin vivo欠乏を示す図である。
【図14A】図14Aは、14Bに示した抗SSX−2応答を発生させるために用いる免疫感作プロトコールを示す図である。
【図14B】図14Bは、四量体染色により検出した、循環SSX−2特異的T細胞の拡大と、その後のDNA惹起/ペプチド増幅療法の適用を示す図である。
【図15A】図15Aは、メランA(ELAGIGILTV)及びSSX2(KASEKIFYV)のエピトープに対して同時に免疫感作するために種々の惹起及び増幅プロトコールを受けたマウスの脾臓中の抗原性標的細胞のin vivoクリアランスを示す図である。
【図15B】図15Bは、メランA(ELAGIGILTV)及びSSX2(KASEKIFYV)のエピトープに対して同時に免疫感作するために種々の惹起及び増幅プロトコールを受けたマウスの血液中の抗原性標的細胞のin vivoクリアランスを示す図である。
【図15C】図15Cは、図15A、Bに詳細に示した結果を要約する図である。
【図16】図16は、2サイクルの種々の惹起及び増幅プロトコールを受けているマウスにおける、四量体染色により測定した循環抗原特異的CD8+T細胞の拡大を示す図である。
【図17A】図17Aは、DNA/DNA/ペプチド(A)又はDNA/ペプチド/ペプチド(B)から成る2サイクルの惹起及び増幅プロトコールを受けている動物における、循環抗原特異的T細胞の持続性を示す図である。
【図17B】図17Bは、DNA/DNA/ペプチド(A)又はDNA/ペプチド/ペプチド(B)から成る2サイクルの惹起及び増幅プロトコールを受けている動物における、循環抗原特異的T細胞の持続性を示す図である。
【図18】図18は、DNA/DNA/DNAから成る2サイクルの惹起及び増幅プロトコールを受けている動物における持続性記憶を示す図である。
【図19】図19は、DNA/ペプチド惹起及び増幅プロトコールを用いた患者の登録及び処置のための臨床実行スキームを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示される本発明は、MHCクラスI拘束性免疫応答を誘導して、応答の性質及び大きさを制御し、病原性過程における有効な免疫学的介入を促進するための方法及び組成物に関する。特に本発明は、免疫原性組成物、それらの性質、並びにそれらが有効に用いられる投与の順序、時機及び経路に関する。
【背景技術】
【0002】
[関連技術分野の説明]
主要組織適合性複合体及びT細胞標的認識
リンパ球(T細胞)は、特定の抗原シグナルに対する応答において機能する抗原特異的免疫細胞である。Bリンパ球及びそれらが産生する抗体も、抗原特異的存在物である。しかしながらBリンパ球とは違って、T細胞は、遊離又は可溶性形態で抗原に応答しない。T細胞が抗原に応答するには、主要組織適合性複合体(MHC)として既知の提示複合体に結合される抗原を必要とする。
【0003】
MHCタンパク質は、T細胞がネイティブ又は「自己」細胞を外来細胞から区別する手段を提供する。MHC分子は、T細胞によりその後監視される潜在的ペプチドエピトープを提示する免疫受容体の一部類である。2種類のMHC、即ちクラスI MHC及びクラスII MHCが存在する。CD4+T細胞は、クラスII MHCタンパク質と相互作用し、主にヘルパー表現型を有し、一方、CD8+T細胞は、クラスI MHCタンパク質と相互作用し、主に細胞溶解性表現型を有するが、それらは各々、調節機能、特に抑制機能も示し得る。両MHCは、細胞の外表面にそれらの構造の大部分を有する膜貫通型タンパク質である。さらに両クラスのMHCは、それらの外側部分にペプチド結合溝を有する。ネイティブ又は外来のタンパク質の小断片、が結合され、細胞外環境に提示されるのは、この溝においてである。
【0004】
抗原提示細胞(APC)と呼ばれる細胞は、MHCを用いてT細胞に抗原を表示する。T細胞は、それがMHC上に提示される場合、抗原を認識する。この要件は、MHC拘束と呼ばれる。抗原が認識可能MHCにより表示されない場合、T細胞は認識せず、抗原シグナルに作用しない。認識可能MHCに結合されたペプチドに特異的な細胞は、これらのMHC−ペプチド複合体と結合して、免疫応答の次の段階に進行する。
【0005】
公称MHCクラスI又はII拘束性エピトープに対応するペプチドは、T細胞応答を誘導し、増幅し、あるいは操作する目的のために送達され得る最も簡単な形態の抗原のうちの1つである。ペプチドエピトープはin vivo初回抗原刺激T細胞株、クローン又はT細胞ハイブリドーマをin vitroで再刺激するに際して有効であることが示されている、という事実にもかかわらず、それらのin vivo効力は非常に制限されている。これは、以下の2つの主要要因のためである:
(1)急速な腎クリアランス及び/又はin vivo分解により引き起こされて、APCへの接近制限を生じるペプチドの不十分な薬物動態(PK)プロフィール;
(2)強力且つ持続的免疫応答、特にTc1又はTh1細胞(IFN−γ及びTNF−アルファを産生)から成る応答を誘導するか又は増幅するための抗原誘導性T細胞受容体(TCR)依存性シグナル伝達単独(シグナル1)の不足。さらに、ペプチドに関連した限定PKを回避するための、大用量のペプチド又はデポー助剤の使用は、ある種の免疫増強又は変調アジュバントが一緒に用いられない限り、種々の程度の非応答性又は「免疫偏向」を誘発し得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
[発明の概要]
本発明の実施の形態は、MHCクラスI拘束性エピトープに対する免疫応答を操作するための、特に誘導し、惹起し、及び/又は増幅するための方法及び組成物を包含する。
【0007】
いくつかの実施の形態は、免疫感作方法に関する。この方法は、例えば、第一の抗原の少なくとも一部分を含むか又はコードする免疫原を含む第一の組成物を哺乳類に送達する工程、及び増幅ペプチドを含む第二の組成物を哺乳類のリンパ系に直接投与する工程を包含し得、ペプチドは第一の抗原のエピトープに対応し、第一の組成物及び第二の組成物は同一でない。本方法は、エフェクターT細胞応答を得て、それに関して検定し、又は検出する工程をさらに包含し得る。
【0008】
第一の組成物は抗原又はその免疫原性断片をコードする核酸を含み得る。第一の組成物はpAPC中のエピトープを発現し得る核酸を含み得る。核酸は原生動物、細菌、ウイルス又はウイルスベクターの一構成成分として送達され得る。第一の組成物は、例えば免疫原性ポリペプチド及び免疫増強剤を含み得る。免疫増強剤はサイトカイン、トール様受容体リガンド等であり得る。アジュバントは免疫刺激配列、RNA等を含み得る。
【0009】
免疫原性ポリペプチドは増幅ペプチドであり得る。免疫原性ポリペプチドは第一の抗原であり得る。免疫原性ポリペプチドは原生動物、細菌、ウイルス、ウイルスベクター又はウイルス様粒子等の一構成成分として送達され得る。アジュバントは原生動物、細菌、ウイルス、ウイルスベクター又はウイルス様粒子等の一構成成分として送達され得る。第二の組成物はアジュバント及び免疫増強剤を含まないものであり得る。送達する工程は哺乳類のリンパ系への直接投与を包含し得る。哺乳類のリンパ系への直接投与はリンパ節又はリンパ管への直接投与を包含し得る。直接投与は2又はそれ以上のリンパ節又はリンパ管に対してであり得る。リンパ節が、例えば、鼠径部、腋窩、頚部及び扁桃リンパ節であり得る。エフェクターT細胞応答は細胞傷害性応答であり得る。エフェクターT細胞応答は前炎症性サイトカインの産生を包含し得、サイトカインは、例えばγ−IFN又はTNFαであり得る。エフェクターT細胞応答はT細胞ケモカインの産生を包含し得、ケモカインは、例えばRANTES又はMIP−1αである。
【0010】
エピトープは、例えば、ハウスキーピングエピトープ又は免疫エピトープであり得る。送達する工程又は投与する工程は、例えば、1回ボーラス注射、反復ボーラス注射を包含し得る。送達する工程又は投与する工程が連続注入を包含し得、注入は、例えば、約8〜約7日間の持続期間を有し得る。この方法は、送達する工程の終了と投与する工程の開始の間の間隔を包含し得、間隔は少なくとも約7日間であり得る。間隔はまた、約7〜約14日間、約17日間、約20日間、約25日間、約30日間、約40日間、約50日間、約60日間であり得る。間隔は約75日、約80日、約90日、約100日を上回ることができる。
【0011】
第一の抗原は疾患関連抗原であり得、疾患関連抗原は、腫瘍関連抗原、病原体関連抗原であり得る。実施の形態は、上述した免疫感作方法を利用して疾患を治療する方法を包含する。第一の抗原は標的関連抗原であり得る。標的は新生細胞、病原体感染細胞等であり得る。例えば、いかなる疾患を治療する方法も標的となり得る。病原体感染細胞は、例えばウイルス、細菌、原生動物、真菌、又は、例えば、プリオンにより感染される細胞を包含し得る。
【0012】
エフェクターT細胞応答は、例えばサイトカイン検定、エリスポット検定、細胞傷害性
検定、四量体検定、DTH応答、臨床応答、腫瘍縮小、腫瘍クリアランス、腫瘍進行の抑制、病原体力価減少、病原体クリアランス及び疾患症候の寛解から成る群から選択される少なくとも1つの指標により検出され得る。本方法は、エフェクターT細胞応答を得て、それに関して検出し、又は検定する過程をさらに包含し得る。
【0013】
別の実施の形態は、第一の抗原又はその免疫原性断片をコードする核酸を含む第一の組成物を哺乳類に送達すること、及びペプチドを含む第二の組成物を哺乳類のリンパ系に直接投与することであって、ペプチドは第一の抗原のエピトープに対応する、直接投与すること、を包含する免疫感作方法に関する。本方法は、抗原に対するエフェクターT細胞応答を得て、それに関して検出し、又は検定することをさらに包含し得る。
【0014】
また、実施の形態は、存在する抗原特異的免疫応答の増大方法に関する。本方法は、ペプチドを含む第二の組成物を哺乳類のリンパ系に直接投与することであって、ペプチドは抗原のエピトープに対応し、組成物は免疫応答を誘導するために用いられていない、直接投与することを包含し得る。本方法は抗原特異的免疫応答の増大を得て、それに関して検出し、又は検定することをさらに包含し得る。この増大は応答を長時間持続すること、静止T細胞を再活性化すること、抗原特異的T細胞の集団を拡大すること等を包含し得る。いくつかの態様では、この組成物は免疫増強剤を含まなくてもよい。
【0015】
他の実施の形態は、第一の抗原の少なくとも一部分及び第二の抗原の少なくとも一部分を含むか又はコードする免疫原を含む第一の組成物を哺乳類に送達すること、及び、第一のペプチドを含む第二の組成物、及び第二のペプチドを含む第三の組成物を哺乳類のリンパ系に直接投与することであって、第一のペプチドは第一の抗原のエピトープに対応し、第二のペプチドは第二の抗原のエピトープに対応する、直接投与することを包含する免疫感作方法に関する。ここで、第一の組成物は第二の又は第三の組成物と同一でない。本方法は、第一の及び第二の抗原に対するエフェクターT細胞応答を得て、それに関して検出し、又は検定することをさらに包含し得る。第二の及び第三の組成物はそれぞれ第一の及び第二のペプチドを含み得る。
【0016】
さらに別の実施の形態は、抗原特異的寛容原性又は調節性免疫応答を発生させる方法に関する。本方法は、アジュバントを含まないペプチドを哺乳類のリンパ系に直接、定期的に投与する工程であって、ペプチドは抗原のエピトープに対応し、哺乳類はエピトープにナイーブである工程、を包含し得る。本方法は、寛容原性又は調節性T細胞免疫応答を得て、それに関して検出し、又は検定することをさらに包含する。免疫応答は、例えば、炎症性障害の治療を補助し得る。炎症性障害は、例えば、クラスII MHC拘束性免疫応答であり得る。免疫応答は免疫抑制性サイトカインの産生を包含し得、サイトカインは、例えば、IL−5、IL−10又はTGB−βである。
【0017】
実施の形態は、免疫原性用量系列を哺乳類のリンパ系に直接投与することを包含し、系列は少なくとも1惹起用量及び少なくとも1増幅用量を含み、惹起用量は免疫原をコードする核酸を含み得、増幅用量は任意のウイルス、ウイルスベクター又は複製−コンピテントベクターを含有しない、免疫感作方法に関する。本方法は、抗原特異的免疫応答を得ることをさらに包含し得る。本方法は、例えば、1〜6惹起用量を含み得る。本方法は、複数惹起用量を投与することを包含し得、用量は1〜約7日間の期間に亘って投与される。惹起用量、増幅用量、又は惹起及び増幅用量は多数対の注射で投与され得、対の第一成員は、対の第二成員の約4日以内に投与され得、異なる対の第一成員間の間隔は少なくとも約14日であり得る。最終惹起用量投与及び一次増幅用量投与間の間隔は、例えば約7〜約100日であり得る。
【0018】
その他の実施の形態は、1〜6惹起用量及び少なくとも1増幅用量を含む哺乳類におけ
る免疫応答を誘導するための免疫原性組成物セットに関し、惹起用量は免疫原をコードする核酸を含み得、増幅用量はペプチドエピトープを含み得、エピトープは核酸を発現するpAPCにより提示され得る。1用量はアジュバント、たとえばRNA、をさらに含み得る。惹起及び増幅用量は、リンパ系、リンパ節等への直接投与に適した担体中に存在し得る。核酸はプラスミドであり得る。エピトープは、例えば、表1〜4に列挙されるクラスI HLAエピトープであり得る。HLAは好ましくはHLA−A2であり得る。免疫原はエピトープアレイを含み得、エピトープアレイは遊離配列を含み得る。免疫原は本質的に標的関連抗原から成り得る。標的関連抗原は腫瘍関連抗原、微生物抗原、他のいかなる抗原等であり得る。免疫原はエピトープクラスターを含むことができる標的関連抗原の断片を含み得る。
【0019】
別の実施の形態は、1〜6惹起用量及び少なくとも1増幅用量を含む、哺乳類におけるクラスI MHC拘束性免疫応答を誘導するための免疫原性組成物セットを含み得、惹起用量は免疫原又は免疫原をコードする核酸及び免疫増強剤を含み得、増幅用量はペプチドエピトープを含み得、エピトープはpAPCにより提示され得る。免疫原をコードする核酸は、免疫増強剤として機能する免疫刺激配列をさらに含み得る。免疫原は、ウイルス、又は免疫増強剤を含むか又は誘導する複製コンピテントベクターであり得る。免疫原は細菌、細菌溶解物又は精製細胞壁構成成分であり得る。細菌細胞壁構成成分はまた、免疫増強剤として機能し得る。免疫増強剤は、例えば、TLRリガンド、免疫刺激配列、CpG含有DNA、dsDNA、飲食作用パターン認識受容体(PRR)リガンド、LPS、キラヤサポニン、ツカレソール及び前炎症性サイトカインであり得る。
【0020】
その他の実施の形態は、種々のサイトカインプロフィールの生成方法に関する。本発明のいくつかの実施の形態では、ペプチドの節内投与はプラスミドDNAワクチンを用いて初期誘導された応答を増幅するのに有効であり得る。さらにサイトカインプロフィールは異なり、プラスミドDNA誘導/ペプチド増幅に関して、一般にDNA/DNA又はペプチド/ペプチドプロトコールより大きいケモカイン(化学誘引物質ケモカイン)並びにより少ない免疫抑制サイトカイン産生を生じることができる。
【0021】
さらに別の実施の形態は、惹起及び増幅免疫プロトコールにおける使用のためのアジュバントを含まない薬剤の製造におけるペプチドの使用に関する。組成物、キット、免疫原及び化合物は、種々の疾患の治療のために薬剤中に用いられて、本明細書中記載されているように免疫応答を増幅し、特定のサイトカインプロフィール等を生成し得る。実施の形態は、免疫応答を増幅する方法におけるアジュバントを含まないペプチドの使用に関する。
【0022】
実施の形態は、MHC、例えば表1〜4に列挙されたものに対する特異性を有するエピトープに関連した方法、使用、療法及び組成物に向けられる。その他の実施の形態は、表1〜4に列挙された1つ又は複数のMHC並びにそれらの組合せを包含するが、一方、その他の実施の形態は任意の1つ又は複数のMHC又はそれらの組合せを特定的に除外する。表3〜4は、列挙されたHLA抗原に関する頻度を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[好ましい実施形態の詳細な説明]
本出願は、米国特許仮出願第60/479,393号(2003年6月17日提出、表題:MHCクラスI拘束性免疫応答の制御方法)の全ての方法、図面及び組成物を含む開示内容に対して35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張する。
【0024】
本発明の実施形態は、例えば標的細胞に特異的な免疫細胞を生成するための、標的細胞に対する有効免疫応答を指図するための、又は炎症性障害に作用し/治療するための方法
及び組成物を提供する。この方法及び組成物は、例えば免疫原性組成物、例えばワクチン及び治療薬、並びに予防的及び治療的方法を包含し得る。本明細書中で開示されるのは、抗原の形態、配列、並びにそれが投与される時機を選択し、第二のリンパ系器官に直接抗原を送達することにより、免疫応答の大きさだけでなく、質的性質が管理され得る、新規の、予期せぬ発見である。
【0025】
いくつかの好ましい実施形態は、T細胞応答を惹起し、増幅するための組成物及び方法に関する。例えばこのような方法は、核酸コード免疫原を含む組成物が動物に送達される惹起工程を包含し得る。組成物は、動物の種々の位置に送達され得るが、好ましくはリンパ系、例えばリンパ節に送達される。惹起工程は、例えば一定期間に亘るか又は一定期間にわたる連続方式での組成物の1又は複数回の送達を包含し得る。好ましくは本方法は、ペプチド免疫原を含む組成物を投与することを包含する増幅工程をさらに含み得る。増幅工程は、例えば一定期間に亘る間隔で、1回大量投与で、又は一定期間に亘って連続的に、1又は複数回実施され得る。全ての実施形態で必要であるというわけではないが、いくつかの実施形態は、免疫増強剤又はアジュバントを含む組成物の使用を包含し得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、免疫原の性質並びにそれが遭遇する状況によって、誘発される免疫応答はその特定の活性及び構成が異なり得る。特に、ペプチドを用いた免疫感作は細胞傷害性/細胞溶解性T細胞(CTL)応答を発生させ得るが、さらなる注射によりこの応答をさらに増幅する試みは、その代わりに調節性T細胞集団の拡大及び観察可能なCTL活性の減少をもたらし得る。したがって付加的免疫増強活性を伴わずにリンパ節内の細胞表面に高MHC/ペプチド濃度を付与する組成物は、調節性又は寛容原性応答を意図を持って促進するために用いられ得る。これに対比して、豊富な免疫増強シグナルを提供する免疫原性組成物(例えばトール様受容体リガンド(又はそれらが誘導するサイトカイン/自己分泌因子))は、限定抗原のみを提供する場合でさえ、豊富な抗原(例えば注入ペプチド)とのその後の遭遇が観察された活性の性質を変えることなく応答を増幅するよう、応答を誘導するだけでなく、同様にそれを惹起する。したがっていくつかの実施形態は、免疫応答プロフィール、例えば、得られた応答の種類並びに産生されたサイトカインの種類の制御に関する。いくつかの実施形態は、CTLの拡大又はさらなる拡大を促進するための方法及び組成物に関し、例えばCTLよりも調節細胞の拡大を促進するための方法及び組成物に関する実施形態が存在する。
【0027】
開示された方法は、ペプチドのみを用いる、又は惹起−及び増幅方法に従わない多数のプロトコールに対して有益である。上記のように、多数のペプチドベースの免疫感作プロトコール及びベクターベースのプロトコールは、欠点を有する。しかしながら、うまくいった場合、ペプチドベースの免疫感作又は免疫増幅戦略は、他の方法、例えば特に微生物ベクターと比べて有利である。これは、より多くの複合ベクター、例えば生弱毒化ウイルス又は細菌ベクターは、有害副作用、例えばin vivo複製又は組換えを誘導し得る;又はベクターそれ自体に対する中和抗体の生成のために反復投与時に無力になる、という事実のためである。さらに、強力な免疫原に成るためにこのようにして利用される場合、ペプチドは、プロテアソーム媒介性プロセシングの必要性を回避する(タンパク質又はより複雑な抗原を用いる場合と同様に、「交差プロセシング」又はその後の細胞感染の状況において)。それは、MHCクラスI拘束性提示のための細胞性抗原プロセシングは、妥当な標的に対応するエピトープの免疫原性を潜在的に妨害する亜優勢エピトープを上回る優勢(好ましい)エピトープを固有に選択する現象であるためである。最後に、有効なペプチドベースの免疫感作は、免疫療法の開発の過程を簡単にし、短縮する。
【0028】
したがって有効なペプチドベースの免疫増幅方法、特に例えば本明細書中に記載された方法は、免疫療法(例えば癌及び慢性感染のための)又は予防的ワクチン接種(ある種の感染性疾患に対する)に対しかなりの利益を有し得る。付加的利益は、特に厄介な、安全
でない又は複雑なアジュバント技法の同時使用の場合、回避することにより達成され得るが、このような技法は本明細書中に記載された種々の実施形態に利用され得る。
【0029】
定義:
本明細書中の用語の使用の状況から明らかである場合を除いて、以下の列挙された用語は一般に、この記載の目的のために指示された意味を有するであろう。
【0030】
プロフェッショナル抗原提示細胞(pAPC) − T細胞同時刺激分子を保有し、T細胞応答を誘導し得る細胞。十分に特性化されたpAPCとしては、樹状細胞、B細胞及びマクロファージが挙げられる。
【0031】
末梢細胞 − pAPCでない細胞。
【0032】
ハウスキーピングプロテアソーム − 普通は末梢細胞中で活性であり、そして一般的にはpAPC中に存在しないか又は活性が強くないプロテアソーム。
【0033】
免疫プロテアソーム − pAPCにおいて一般に活性であるプロテアソーム。免疫プロテアソームは感染組織中の、又はインターフェロンへの曝露後のいくつかの末梢細胞中でも活性である。
【0034】
エピトープ − 免疫応答を刺激し得る分子又は物質。好ましい実施形態では、本定義によるエピトープとしては、ポリペプチド及びポリペプチドをコードする核酸が挙げられ、この場合、ポリペプチドは免疫応答を刺激し得るが、必ずしもこれらに限定されない。その他の好ましい実施形態では、この定義によるエピトープとしては、細胞の表面上に提示されるペプチドが挙げられ、ペプチドは、T細胞受容体(TCR)と相互作用し得るよう、クラスI MHCの結合溝に非共有結合的に結合されるが、必ずしもこれに限定されない。クラスI MHCにより提示されるエピトープは、未熟又は成熟形態であり得る。「成熟」とは、ハウスキーピングエピトープを含むか又は本質的にそれらからなり得るが、プロセシング、例えば単独で又は組合せて、プロテアソーム消化、N末端トリミング又は外因性酵素活性の作用(これらに限定されない)により除去される一次翻訳産物中の他の配列も含む任意の前駆体(「未熟」)と区別してMHCエピトープを指す。したがって成熟エピトープは、やや長いポリペプチド中に埋め込まれて提供され得、その免疫学的可能性は、少なくとも一部は、埋込みペプチドによるものである;同様に、成熟エピトープは、TCRにより認識されるMHC結合溝中で結合され得るその最終形態で提供され得る。
【0035】
MHCエピトープ − 哺乳類クラスI又はクラスII主要組織適合性複合体(MHC)分子に対する既知の又は予測結合親和性を有するポリペプチド。いくつかの特に十分に特性化されたクラスI MHC分子は、表1〜4に示されている。
【0036】
ハウスキーピングエピトープ − 好ましい実施形態では、ハウスキーピングエピトープは、MHCエピトープであり、そしてハウスキーピングプロテアソームが優勢に活性である細胞上に提示されるポリペプチド断片と定義される。別の好ましい実施形態では、ハウスキーピングエピトープは、1〜数個のさらなるアミノ酸が隣接した、上記の定義によるハウスキーピングエピトープを含有するポリペプチドと定義される。別の好ましい実施形態では、ハウスキーピングエピトープは、上記の定義によるハウスキーピングエピトープをコードする核酸と定義される。例示的ハウスキーピングエピトープは、米国特許出願第10/117,937号(公開番号20030220239A1)(2002年4月4日提出)及び10/657,022に、並びにPCT出願PCT/US2003/027706(公開番号WO04022709A2)(2003年9月5日提出);並びに米国
特許仮出願第60/282,211号(2001年4月6日提出);60/337,017(2001年11月7日提出);60/363210(2002年3月7日提出)及び60/409,123(2002年9月5日提出)に提示されている。列挙された出願は各々、エピトープ配列(EPITOPE SEQUENCES)と表題を付けられている。
【0037】
免疫エピトープ − 好ましい実施形態では、免疫エピトープは、MHCエピトープであり、そして免疫プロテアソームが優勢に活性である細胞上に提示されるポリペプチド断片と定義される.別の好ましい実施形態では、免疫エピトープは、即ち1〜数個のさらなるアミノ酸により隣接される、上記の定義による免疫エピトープを含有するポリペプチドと定義される。別の好ましい実施形態では、免疫エピトープは、クラスI MHCに対する既知又は予測親和性を有する少なくとも2つのポリペプチド配列を有するエピトープクラスター配列を含むポリペプチドと定義される。さらに別の好ましい実施形態では、免疫エピトープは、上記の定義のいずれかによる免疫エピトープをコードする核酸と定義される。
【0038】
標的細胞 − 好ましい実施形態では、標的細胞は、例えばウイルス又はその他の細胞内寄生生物に感染した細胞、又は新生細胞といった、免疫系の構成成分により作用され得る病原状態に関連した細胞である。別の実施形態では、標的細胞は本発明のワクチン及び方法により標的化される細胞である。この定義による標的細胞の例としては、新生細胞及び細胞内寄生生物、例えばウイルス、細菌又は原生動物が寄生する細胞が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。標的細胞としては、適正なエピトープ遊離並びに免疫プロテアソームを発現する細胞によるプロセシングを確定するか又は確証するための、所望のエピトープに対するT細胞特異性又は免疫原性を確定するための検定の一部としてのCTLにより標的化される細胞も挙げられる。このような細胞は遊離配列を発現するよう形質転換され得るし、或いは細胞は単にペプチド/エピトープでパルス標識され得る。
【0039】
標的関連抗原(TAA) − 標的細胞中に存在するタンパク質又はポリペプチド。
【0040】
腫瘍関連抗原(TuAA) − 標的細胞が新生細胞であるTAA。
【0041】
HLAエピトープ − ヒトクラスI又はクラスII HLA複合体分子に対する既知又は予測結合親和性を有するポリペプチド。特に十分に特性化されたクラスI HLAは、表1〜4に示されている。
【0042】
抗体 − 生化学的に得られるか、又は組換えDNAの使用によるか又は任意のその他の手段によるものであれ、全部又は一部のIg結合ドメインから成る天然免疫グロブリン(Ig)、ポリ又はモノクローナル、或いは任意の分子。例としては、とりわけ、F(ab)、一本鎖Fv、及びIg可変部−ファージ被覆タンパク質融合物が挙げられる。
【0043】
実質的類似性 − この用語は、配列の検査により判定した場合に、重要でない様式で参照配列と異なる配列を指すために用いられる。同一アミノ酸配列をコードする核酸配列は、縮重位置の違い又は任意の非コード領域の長さ又は組成の小差にかかわらず、実質的に類似する。保存的置換又はわずかな長さ変動のみが異なるアミノ酸配列は、実質的に類似している。さらに、N末端フランキング残基の数が異なるハウスキーピングエピトープ、或いはいずれかの末端のフランキング残基の数が異なる免疫エピトープ及びエピトープクラスターを含むアミノ酸配列は、実質的に類似する。実質的に類似のアミノ酸配列をコードする核酸は、それ自体も実質的に類似する。
【0044】
機能的類似性 − この用語は、生物学的又は生化学的特性試験により判定した場合に、重要でない様式で参照配列と異なる配列を指すために用いられるが、配列は実質的に類
似しない場合がある。例えば2つの核酸は、同一配列のためのハイブリダイゼーションプローブとして有用であり得るが、異なるアミノ酸配列をコードする。交差反応性CTL応答を誘導する2つのペプチドは、それらが非保存的アミノ酸置換により異なる場合でさえ、機能的に類似する(したがって、実質的類似性定義内であり得ない)。同一エピトープを認識する抗体対又はTCRは、どんな構造的差異が存在しようと、互いに機能的に類似であり得る。免疫原性の機能的類似性に関する試験は、「変性」抗原で免疫感作し、標的抗原を認識する誘発応答、例えば抗原応答、CTL応答、サイトカイン産生等(これらに限定されない)の能力を試験することにより実行され得る。したがって2つの配列は、同一機能を保持しながら、ある点で異なるよう設計され得る。開示された又は特許請求された配列のこのような設計配列変異体は、本発明の実施形態の1つである。
【0045】
発現カセット − プロモーター並びにその他の転写及び翻訳制御要素、例えばエンハンサー、終了コドン、内部リボソーム進入部位及びポリアデニル化部位(これらに限定されない)に操作可能的に連結されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列。カセットは、一宿主分子から別の分子にそれを動かすのを促す配列も包含し得る。
【0046】
埋込みエピトープ − いくつかの実施形態では、埋込みエピトープは、長いポリペプチド内に全体的に含入されるエピトープである;他の実施形態では、この用語は、エピトープが長いポリペプチドに関して、内部位置に全体的に存在しないよう、N末端又はC末端のみが埋め込まれるエピトープも包含し得る。
【0047】
成熟エピトープ − エピトープがMHCペプチド結合溝中に結合される場合に存在する以上の付加的配列を有さないペプチド。
【0048】
エピトープクラスター − 共有MHC拘束性因子に対する結合親和性を有する2又はそれ以上の既知の又は予測エピトープを含むタンパク質配列、例えばネイティブタンパク質配列の一セグメントであるポリペプチド又はそれをコードする核酸配列。好ましい実施形態では、クラスター内のエピトープの密度は、完全タンパク質配列内の共有MHC拘束性因子に対する結合親和性を有する全ての既知又は予測エピトープの密度より大きい。エピトープクラスターは、米国特許出願第09/561,571号(表題:エピトープクラスター(EPITOPE CLUSTERS))に開示され、より詳細に定義されている。
【0049】
遊離配列 − 例えば免疫プロテアソーム活性、N末端トリミング及び/又はその他の過程又は活性を含めた、単独での又は任意の組合せでの、プロセシング活性によりハウスキーピングエピトープを遊離させる状況を提供する大型配列中に埋め込まれたハウスキーピングエピトープを含むか又はそれをコードする、設計又は遺伝子工学処理配列。
【0050】
CTLp − CTL前駆体は、細胞溶解活性を示すために誘導され得るT細胞である。それによりCTLpが一般的に観察される、二次in vitro溶解活性は、ナイーブ、エフェクター及びメモリーCTLのin vivoでの任意の組合せから生じ得る。
【0051】
メモリーT細胞 − 抗原により予め活性化されたT細胞は、身体中のその位置とは関係なく、静止中の生理学的状態にあり、エフェクター機能を獲得するために抗原への再曝露を要する。表現型的には、それらは一般にCD62L−CD44hiCD107α−IGN−γ−LTβ−TNF−α−であり、そして細胞周期のG0にある。
【0052】
エフェクターT細胞 − 抗原との遭遇時に、エフェクター機能を容易に示すT細胞。エフェクターT細胞は一般に、リンパ系を出て、免疫学的末梢に進入し得る。表現型的には、それらは一般にCD62L−CD44hiCD107α+IGN−γ+LTβ+TNF−α+であり、そして活発に循環する。
【0053】
エフェクター機能 − 一般に、細胞溶解性活性の獲得及び/又はサイトカイン分泌を一般に含むT細胞活性化。
【0054】
T細胞応答の誘導 − 多数の実施形態においては、ナイーブ細胞、又はいくつかの状況では静止中細胞からT細胞応答を発生させて、T細胞を活性化する工程を包含する。
【0055】
T細胞応答の増幅 − 多数の実施形態においては、細胞の数、活性化細胞の数、活性のレベル、増殖の速度、又は特定の応答に関与するT細胞の類似のパラメーターを増大する工程を包含する。
【0056】
惹起 − 多数の実施形態においては、T細胞の誘導性関連の免疫プロフィールに特定の安定性を付与する誘導を包含する。
【0057】
トール様受容体(TLR) − トール様受容体(TLR)は、微生物の特定の構成成分及びある種の宿主分子により活性化されるパターン認識受容体の一ファミリーである。生得の免疫系の一部として、それらは多数の病原体に対する最前線の防御に寄与するだけでなく適応免疫においても一役を演じる。
【0058】
トール様受容体(TLR)リガンド − トール様受容体を結合し、活性化し得る任意の分子。例としては:インターフェロンを誘導することに関して既知のポリIC A合成二本鎖RNAが挙げられるが、これに限定されない。ポリマーは、ポリイノシン酸及びポリシチジル酸の各々の一鎖、二本鎖RNA、非メチル化CpGオリゴデオキシリボヌクレオチド又はその他の免疫刺激配列(ISS)、リポ多糖(LPS)、β−グルカン及びイミダゾキノリン、並びにその誘導体及び類似体から作られる。
【0059】
免疫増強アジュバント − pAPC又はT細胞を活性化するアジュバント、例えば:TLRリガンド、飲食作用パターン認識受容体(PRR)リガンド、キラヤサポニン、ツカレソール、サイトカイン等。いくつかの好ましいアジュバントは、Marciani, D.J. Drug Discovery Today 8: 934-943, 2003に開示されている。
【0060】
免疫刺激配列(ISS) − 一般に非メチル化CpG配列を含有するオリゴデオキシリボヌクレオチド。CpGは、細菌生産性DNA、特にプラスミド中にも埋め込まれ得る。さらなる実施形態は、種々の類似体を包含する:好ましい実施形態の1つは、1つ又は複数のホスホロチオエート結合又は非生理学的塩基を有する分子である。
【0061】
ワクチン − 好ましい実施形態では、ワクチンは、疾患の予防を提供するか又は補助する免疫原性組成物であり得る。他の実施形態では、ワクチンは、疾患の治癒を提供するか又は補助し得る。他の実施形態では、ワクチン組成物は、疾患の改善を提供するか又は補助し得る。ワクチン免疫原性組成物のさらなる実施形態は、治療薬及び/又は予防薬として用いられ得る。
【0062】
免疫感作 − 疾患に対する部分的又は完全防御を誘導するための方法。代替的には抗原に対する免疫系応答を誘導するか又は増幅するための方法。第二の定義では、この方法は、防御的免疫応答、特に前炎症性又は能動免疫を意味し得るが、調節的応答も含み得る。したがっていくつかの実施形態では、免疫感作は寛容化(免疫系が前炎症性又は能動免疫の産生を回避する方法)とは区別され、一方、他の実施形態では、この用語は寛容化を包含する。
【0063】
【表1】
【0064】
【表1−2】
【0065】
【表1−3】
【0066】
【表1−4】
【0067】
【表2−1】
【0068】
【表2−2】
【0069】
【表2−3】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表4−2】
【0073】
【表5】
【0074】
【表5−2】
【0075】
【表5−3】
【0076】
以下の考察は、本発明の実施についての本発明人らの理解を記述する。しかしながらこの考察は、特許請求の範囲に記述されていない実施についてのいかなる特定の理論にも本
特許を限定するものではない。
【0077】
腫瘍過程又は微生物感染の有効な免疫媒介性制御は一般に、移動、エフェクター機能及びメモリー細胞への分化といったような多数の能力を付与された抗原特異的T細胞の誘導及び拡大を包含する。免疫応答の誘導は、種々の方法により試みられ、そして異なる形態の抗原の投与を包含し、免疫応答の大きさ及び質に種々の作用を及ぼす。免疫応答の制御を達成する場合の一限定因子は、プロセシングし、その結果生じるエピトープを特定T細胞に有効に提示し得るpAPCを標的化することである。
【0078】
この問題の解決は、第二のリンパ系器官、pAPCに富む微小環境及びT細胞への直接抗原送達である。抗原は、例えばポリペプチドとして、又は発現抗原として、任意の種々のベクターにより送達され得る。免疫の大きさ及び質に関する結果は、例えばベクターの投与量、処方、性質、並びに分子環境を含めた因子により制御され得る。本発明の実施形態は、免疫応答の制御を増強し得る。免疫応答の制御は、例えば調節的応答から前炎症性応答まで、必要に応じて異なる種類の免疫応答を誘導する能力を包含する。好ましい実施形態は、能動免疫療法のための大きな関心事であるMHCクラスI拘束性エピトープに対する応答の大きさ及び質の制御増強を提供する。
【0079】
従来の免疫感作方法は、一定の重要な制限を示した:第一に、非常にしばしば、ワクチンの力価に関する結論は、超高感度読み出し検定のうちの1つから、又は非常に限定されたパネルから生成された免疫原性データから推定された。しばしば、予防接種療法の推測力価にもかかわらず、臨床応答は有意でないか又は最適状態であった。第二に、免疫感作後、T調節細胞は、より慣用的なTエフェクター細胞とともに、生成され及び/又は拡大され、このような細胞は所望の免疫応答の機能を妨害し得る。能動免疫療法におけるこのようなメカニズムの重要性は、近年やっと認識されてきたに過ぎない。
【0080】
免疫原の節内投与は、免疫応答の大きさ及びプロフィールの制御のための基礎を提供する。このような投与の結果として成し遂げられるpAPCの有効in vivo負荷は、その最も簡単な形態で、即ちペプチドエピトープで、あるいは一般に不十分な薬物動態に関連した抗原を用いることによってさえ、免疫の実質的大きさを与えることを可能とする。応答の質は、免疫原の性質、ベクター及び免疫感作のプロトコールにより、さらに制御され得る。このようなプロトコールは、慢性感染又は腫瘍過程における応答を増強し/変更するために適用され得る。
【0081】
免疫感作は在来、免疫応答の大きさを増大するために抗原の反復投与によってきた。DNAワクチンの使用は、高い質の応答を生じたが、反復追加免疫用量を用いた場合でさえ、このようなワクチンを用いて高度の大きさの応答を得ることは困難であった。応答の両特質、即ち高い質及び低い大きさは、これらのベクターを用いて達成されるMHC上の相対的に低レベルのエピトープ負荷によるものと思われる。その代わりに、臨床的有用性に必要とされる応答の高度の大きさを達成するために、生ウイルスベクター中にコードされた抗原を用いてこのようなワクチンを追加免疫することは、より一般的になってきた。しかしながら生ベクターの使用は、例えば潜在的安全性問題、前の投与により誘導されたベクターに対する体液性応答のための後期追加免疫の有効性低減、並びに作製及び製造の経費を含めたいくつかの欠点を伴い得る。したがって生ベクター又はDNA単独の使用は、高い質の応答を引き出すが、限定的大きさ又は応答の継続性を生じ得る。
【0082】
本明細書中に開示されるのは、ペプチドに適用される場合、それらを免疫療法ツールとして有効にさせるプロトコールに並びに方法に関する実施形態である。このような方法は、ペプチドの貧PKを回避し、特定の、そしてしばしばより複雑な療法の状況で適用される場合、免疫応答の強い増幅及び/又は制御を生じる。好ましい実施形態では、リンパ系
器官へのペプチドの直接投与は、Tcl細胞から成る強力、中等度又は軽度(慣用的技法による検出のレベル又はそれより低いレベル)でありさえする免疫応答を誘導する初回刺激剤後に、免疫応答の予期せぬ強力な増幅を生じる。本発明の好ましい実施形態は免疫感作の全ての段階で抗原のリンパ内投与を用い得るが、アジュバントを含まないペプチドのリンパ内投与が最も好ましい。リンパ内投与を利用するペプチド増幅は、予め誘導された現存免疫応答に適用され得る。先の誘導は、抗原への自然曝露により、又は一般的に用いられる投与経路、例えば皮下、皮内、腹腔内、筋肉内及び粘膜投与(これらに限定されない)により生じ得る。
【0083】
本明細書中にも示されているように、特異的T細胞のその後の拡大を生じる最適開始は、富同時刺激状況(例えばリンパ節中)で、限定量の抗原(プラスミドコード抗原の限定されたたびたびの発現に起因し得るような)にナイーブT細胞を曝露することにより良好に達成され得る。それは、抗原提示細胞上のMHC−ペプチド複合体を高親和性で認識するT細胞受容体を保有するT細胞の活性化を生じ得るし、その後の刺激に対してより反応性であるメモリー細胞の生成を生じ得る。有益な同時刺激環境は、免疫増強剤の使用により増大されるか又は確実にされ、このようにしてリンパ内投与は有益であるが、全ての実施形態において免疫応答の開始のために必要とされるわけではない。
【0084】
遊離ペプチドの不十分な薬物動態はほとんどの投与経路においてそれらの使用を妨げたが、2次リンパ系器官、特にリンパ節への直接投与は、連続注入又は高頻度(例えば毎日)注射により多少継続的に抗原のレベルが保持される場合、有効であることが立証された。CTLの生成のためのこのような節内投与は、米国特許出願第09/380,534号及び09/776,232(公開番号20020007173)に、並びにPCT出願PCT/US98/14289(公開番号WO9902183A2)(各々、表題:CTL応答の誘導方法(A METHOD OF INDUCING A CTL RESPONSE))に教示されている。本発明のいくつかの実施形態では、ペプチドの節内投与は、プラスミドDNAワクチンで最初に誘導された応答を増幅するのに有効であった。さらにサイトカインプロフィールは異なり、プラスミドDNA誘導/ペプチド増幅に関しては、一般にDNA/DNA又はペプチド/ペプチドプロトコールよりも大きいケモカイン(化学誘引物質サイトカイン)及びより低い免疫抑制性サイトカイン産生を生じた。
【0085】
したがってこのようなDNA誘導/ペプチド増幅プロトコールは、癌及び慢性感染のための治療用ワクチンを含めた組成物の有効性を改善し得る。このような免疫療法のための有益なエピトープ選択原理は、米国特許出願第09/560,465号、10/026,066(公開番号20030215425A1)及び10/005,905(全て表題:抗原提示細胞におけるエピトープ惹起(EPITOPE SYNCHRONIZATION IN ANTIGEN PRESENTING CELLS));09/561,074(表題:エピトープ発見方法(METHOD OF EPITOPE DISCOVERY));09/561,571(表題:エピトープクラスター(EPITOPE CLUSTERS));10/094,699(公開番号20030046714A1)(表題:癌のための抗新脈管調製物(ANTI-NEOVASCULATURE PREPARATIONS FOR CANCER));及び10/117,937(公開番号20030220239A1)及び10/657,022、並びにPCT出願PCT/US2003/027706(公開番号WO04022709A2)(ともに表題:エピトープ配列(EPITOPE SEQUENCES))に開示されている。ワクチンプラスミドの全体的設計の態様は、米国特許出願第09/561,572号(表題:標的関連抗原のエピトープをコードする発現ベクター(EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS))及び10/292,413号(公開番号20030228634A1)(表題:標的関連抗原のエピトープをコードする発現ベクター及びそれらの設計方法(EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS AND METHODS FOR THEIR DESIGN));10/225,568号(公開番号20030138808)、PCT出願PCT/US2003/026231(公開番号WO20
04/018666)及び米国特許第6,709,844号(表題:プラスミド増殖における望ましくない複製中間体の回避(AVOIDANCE OF UNDESIRABLE REPLICATION INTERMEDIATES IN PLASMIND PROPAGATION))に開示されている。特定の癌に対して免疫応答を向ける場合の特定の利点のある特異抗原組合せは、米国特許仮出願第60/479,554号及び米国特許出願第______/______号(代理人ドケット番号:MANNK.035A)及びPCT特許出願(公開番号______)(ともに表題:(種々の種類の癌のためのワクチン中の腫瘍関連抗原の組合せ(COMBINATIONS OF TUMOR-ASSOCIATED ANTIGENS IN VACCINES FOR VARIOUS TYPES OF CANCERS))(それぞれ2003年6月17日提出)に開示されている。
【0086】
意外にも、在来の初回抗原刺激−追加免疫スケジュールによるペプチドの反復節内注射は、初回投与単独後に観察された応答と比較して、細胞溶解性応答の大きさ低減を生じた。免疫応答プロフィールの試験は、これが、非応答性というよりむしろ免疫調節(抑制)の誘導の結果であることを示す。これは、DNAコード化免疫原、典型的にはプラスミドを包含する誘導及び増幅プロトコールと対照を成す。抗原の節内注射によるpAPCの直接負荷は一般に、他の非経口経路を介して送達される抗原の薬物動態を矯正するために一般的に用いられるアジュバントに対する必要性を減少するか又は不要にする。したがって一般に前炎症性であるこのようなアジュバントがなければ、ペプチド免疫感作を用いて従来観察されているものと異なる(即ち調節性又は寛容原性)免疫応答プロフィールの誘導を促し得る。応答は、以下の実施例に示されるように、初回注射部位から離れた第二のリンパ系器官で測定されるため、このような結果は、進行中の炎症反応を緩和する(抑制する)ための本発明の実施形態による方法及び組成物の使用を支持する。このアプローチは、同一抗原又は炎症の部位に関連した任意の適切な抗原を標的化し、免疫抑制性サイトカインにより媒介される第三者作用に頼ることにより、クラスII MHC拘束性病因を有する炎症性障害に関する場合でさえ、有用であり得る。
【0087】
反復ペプチド投与が細胞溶解性免疫応答の漸減を生じる、という事実にもかかわらず、非複製組換えDNA(プラスミド)のような作因による誘導はその後の投与に実質的影響を及ぼし、組換えDNA及びペプチドにより発現されるエピトープに対する免疫の強い増幅を可能にし、その細胞溶解性を惹起させる。実際、組換えDNAベクター又はペプチドの1回又は多数回投与がそれぞれ免疫応答を達成しないか又は適度の免疫応答を達成した場合、DNAによる誘導及びペプチドによる増幅は、応答体の比率として、並びに応答の大きさとして、実質的により高い応答を達成した。示された例では、組換えDNA誘導/ペプチド増幅プロトコールを用いることにより、応答速度は少なくとも二倍であり、そして応答の大きさ(平均及び中央値)は少なくとも三倍であった。したがって好ましいプロトコールは、リンパ系及び非リンパ系器官内で、in vivoで抗原細胞を取扱い得る免疫(Tcl免疫)の誘導を生じる。ほとんどの癌免疫療法における一限定要因は、おそらくはMHC/ペプチド提示低減による、免疫媒介性攻撃に対する腫瘍細胞の限定感受性である。好ましい実施形態では、免疫の強い拡大は、DNA誘導/ペプチド増幅により達成され、毒性微生物による感染後に一般に観察されるのと一般に等しいか又はそれ以上の免疫応答の大きさを伴う。この大きさ増大は、不十分なMHC/ペプチド提示を補うのに役立ち得るし、例えばHLAトランスジェニックマウスのような特殊化前臨床モデルにおいて示されるようなヒト腫瘍細胞のクリアランスを生じる。
【0088】
組換えDNA惹起投与の特定の配列とその後のリンパ系器官に投与されたペプチド追加免疫を包含するこのような誘導及び増幅プロトコールは、したがって、例えば、感染性又は新生物性疾患の予防又は治療のための、強力なT細胞応答の誘導、増幅及び維持の目的のために有用である。このような疾患は、癌腫(例えば腎臓、卵巣、乳房、肺、結腸直腸、前立腺、頭部及び頚部、膀胱、子宮、皮膚)、黒色腫、種々の起源の腫瘍、並びに概して、定義された又は定義可能な腫瘍関連抗原、例えば腫瘍胎児性(例えばCEA、CA19−9、CA125、CRD−BP、Das−1、5T4、TAG−72等)、組織分化
(例えばメランA、チロシナーゼ、gp100、PSA、PSMA等)又は癌−精巣抗原(例えばPRAME、MAGE、LAGE、SSX2、NY−ESO−1等;表5参照)であり得る。癌−精巣遺伝子及びがん治療に関するそれらの関連性は、Scanlon et al., Cancer Immunity 4: 1-15, 2004で検討されている。腫瘍新脈管系に関連する抗原(例えばPSMA、VEGFR2、Tie−2)も、米国特許出願第10/094,699号(公開番号20030046714A1)(表題:癌のための抗新脈管系調製物(ANTI-NEOVASCULATURE PREPARATIONS FOR CANCER))に開示されているように、癌性疾患との結びつきにおいて有用である。この方法及び組成物は、種々の生物体及び疾患状態を標的化するために用いられ得る。例えば標的生物体としては、細菌、ウイルス、原生動物、真菌等が挙げられ得る。標的疾患は、例えばプリオンにより引き起こされるものを包含し得る。例示的疾患、生物体及び抗原、並びに標的生物体、細胞及び疾患に関連したエピトープは、米国特許出願第09/776,232号(公開番号20020007173A1)に記載されている。検討され得る感染性疾患の中には、慢性感染(HIV、単純ヘルペスウイルス、CMV、B及びC型肝炎ウイルス、パピローマウイルス等)を確立する傾向がある作因により引き起こされるもの、及び/又は急性感染(例えばインフルエンザウイルス、麻疹、RSV、エボラウイルス)と結び付けられるものがある。興味深いのは、発癌能力(予防又は治療の見地から)を有するウイルス、例えばパピローマウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス及びHTLV−1である。これらの感染性作因は全て、ペプチドエピトープのような組成物を設計するための基礎として用いられ得る定義された又は定義可能な抗原を有する。
【0089】
このような方法の好ましい用途(例えば図19参照)としては、好ましくは免疫学的不活性ビヒクル又は処方物中(用量範囲1ng/kg〜10mg/kg、好ましくは0.005〜5mg/kg)の、組換えDNA(用量範囲0.001〜10mg/kg、好ましくは0.005〜5mg/kg)の多数回(例えば1〜10又はそれ以上、2〜8、3〜6、好ましくは約4又は5)投与と、その後のペプチドの1又は複数回(好ましくは約2)の投与、が挙げられる。用量は必ずしも被験体のサイズに伴って直線状に決められるわけではなく、ヒトに関する用量はより低いほうに向かう傾向があり、マウスに関する用量は高いほうに向かう可能性があって、これらの部分は多岐に亘る。注射時のプラスミド及びペプチドの好ましい濃度は、一般に約0.1μg/ml〜10mg/mlであり、最も好ましい濃度は約1mg/mlであり、一般に被験体のサイズ又は種とは関係ない。しかしながら特に強力なペプチドは、この範囲の低末端方向に、例えば1〜100μg/mlに最適濃度を有する。寛容を促進するためにペプチドのみのプロトコールが用いられる場合、これらの範囲の高いほうの末端に向かう用量が一般に好ましい(例えば0.5〜10mg/ml)。この配列は、in vivoでの強力な免疫応答を維持する必要がある限り、反復され得る。さらに、DNAの最終惹起投与とペプチドの最初の増幅投与間の時間は重要でない。好ましくはそれは約7日又はそれ以上であり、数ヶ月を超え得る。多数回のDNA及び/又はペプチドの注射は、数日間(好ましくは2〜7日)継続する代替的注入により低減され得る。注射として投与されうるものと同様の物質のボーラスを用いた注入を開始し、その後、緩徐注入(DNAに関して約25〜2,500μg/日を送達するために24〜12,000μl/日、ペプチドに関して0.1〜10,000μg/日)するのが有益であり得る。これは、手動で、又はプログラム可能なポンプ、例えばインスリンポンプの使用により成し遂げられ得る。このようなポンプは当該技術分野で既知であり、いくつかの実施形態において所望され得る周期的スパイク及びその他の投与量プロフィールを可能にする。
【0090】
なお、この方法はタンパク質の接合、アジュバントの付加等を伴わずに、うまくペプチドを使用するが、増幅工程では、このような構成成分の非存在は必要とされない、ということに留意すべきである。したがって接合ペプチド、アジュバント、免疫増強剤等が実施形態において用いられ得る。種々の形態のペプチドエピトープ又は抗原から成るか又はそ
れらを包含するペプチドパルス標識樹状細胞、懸濁液、例えばリポソーム処方物、凝集物、乳濁液、マイクロ粒子、ナノ結晶を含めた、リンパ節に投与される或いはリンパ系に向かわせる能力を有するペプチドのより複雑な組成物は、該方法における遊離ペプチドの代わりに置換され得る。逆に言えば、節内投与によるペプチド追加免疫は、控えめなレベルでもTメモリー細胞の誘導を達成する任意の手段及び/又は経路により初回刺激の後に実施され得る。
【0091】
抗原発現のモザイク現象による、或いは抗原の突然変異又は欠失による耐性の出現を低減するためには、多数の、好ましくは約2〜4つの抗原に対して共在的に免疫感作することが有益である。抗原の任意の組合せが用いられ得る。特定の腫瘍の抗原発現のプロフィールを用いて、どの抗原又は抗原の組合せを用いるかを確定し得る。例示的方法は、米国特許仮出願第______/______号(代理人ドケット番号:MANNK.035PR2)(本明細書と同じ日付に提出)(表題:(種々の種類の癌のための診断における腫瘍関連抗原の組合せ(COMBINATIONS OF TUMOR-ASSOCIATED ANTIGENS IN DIAGNOTISTICS FOR VARIOUS TYPES OF CANCERS))に見出される。選定された癌の治療に特に適している抗原の特定の組合せは、米国特許出願第60/479,554号及び______/______号(代理人ドケット番号:MANNK.035A)及びPCT特許出願(公開番号______)(参照として上記で引用及び援用されている)に開示されている。複数の抗原に対する又は単一抗原からのエピトープに対する免疫応答を誘発するために、これらの方法を用いて、多数の免疫原性存在物を、独立して又は混合物として送達し得る。免疫原が独立して送達される場合、異なる存在物が、異なるリンパ節に、又は同一リンパ節(単数又は複数)に異なる時間に、又は同一リンパ節(単数又は複数)に同一時間に投与される、というのが好ましい。これは、全ての構成成分ペプチドに溶解性及び安定性を提供する単一処方物を考案するのが困難であり得るペプチドの送達に特に関係がある。単一核酸分子は、多数の免疫原をコードし得る。代替的には、複数の抗原に関する全ての構成成分免疫原のうちの1つ又はサブセットをコードする多数の核酸分子は、粘性が問題になるような高濃度の核酸を必要とせずに所望の用量が提供され得る限り、一緒に混合され得る。
【0092】
好ましい実施形態では、方法は、リンパ系への直接投与を要する。好ましい実施形態では、これはリンパ節へである。輸入リンパ管が同様に好ましい。リンパ節の選択は重要でない。鼠径部リンパ節がそれらのサイズ及び接近可能性のために好ましいが、腋窩及び頚部リンパ節並びに扁桃が同様に有益であり得る。単一リンパ節への投与は、免疫応答を誘導するか又は増幅するために十分であり得る。多数のリンパ節への投与は、応答の信頼性及び大きさを増大し得る。
【0093】
このような免疫感作方法から利益を得ることができる患者は、彼等のMHCタンパク質発現プロフィール及び全身レベルの免疫応答性を特定するための方法を用いて補充される。さらに彼等の免疫レベルは、標準技法を、末梢血へのアクセスとともに用いてモニタリングされ得る。最後に、治療プロトコールは、誘導又は増幅期に対する応答性、並びに抗原発現における変動に基づいて調整され得る。例えば反復惹起用量は、数セットの惹起用量後に増幅するというよりむしろ、好ましくは検出可能応答が得られるまで投与され得、次に増幅ペプチド用量(単数又は複数)を投与する。同様に、予定された増幅又は維持用量のペプチドは、それらの有効性が徐々に弱まり、抗原特異的調節T細胞数が増大し、又は寛容のいくつかの他の証拠が観察されたならば、中断され、そしてさらなる惹起が施された後、ペプチドによる増幅を再開し得る。免疫感作方法により免疫応答性を評価し、監視するための診断技法の組込みは、米国特許仮出願第______/______号(代理人ドケット番号:MANNK.040PR)(表題:診断方法を治療方法と統合することによる能動免疫療法の効力改善(IMPROVED EFFICACY OF ACTIVE IMMUNOTHERAPPY BY INTEGRATING DIAGNOSTIC WITH THERAPEUTIC METHODS))(本出願と同一日付で提出)により完全に考察されている。
【実施例】
【0094】
以下の実施例は例証のためにすぎず、いかなる点でも本発明又はその種々の実施形態の範囲を限定するものではない。
【0095】
実施例1.リンパ内免疫感作による免疫応答の高有効性誘導
ヒトMHCクラスI(A*0201、「HHD」と呼ばれる;Pascolo et al. J. Exp.
Med. 185(12):2043-51, 1997参照)のキメラ一本鎖バージョンを発現する導入遺伝子を保有するマウスを、以下のように節内投与により免疫感作した。誘導のためにメラン−A26−35 A27L類似体を発現するプラスミド(pSEM)を用いて、5群のマウス(n=3)を、異なる注射経路:皮下(sc)、筋肉内(im)及びリンパ内(in、鼠径部リンパ節中への直接接種を使用)を用いることにより、免疫感作し、1週間後に増幅した。免疫感作及び投与量のスケジュールを、図1Aに示す。増幅1週間後、マウスを屠殺し、脾臓細胞を調製して、タグ化抗CD8mAb及びメランA26−35特異的T細胞受容体を認識する四量体を用いて染色した。代表的データを図1Bに示す。皮下及び筋肉内投与は、約1%又はそれ未満の四量体+CD8+T細胞の頻度を達成する一方、プラスミドのリンパ内投与は6%より多い頻度を達成した。さらに脾臓細胞をメラン−Aペプチドを用いてex vivoで刺激して、種々のE:T比で51Cr標識標的細胞(T2細胞)に対して試験した(図1C)。リンパ節内注射により免疫感作された動物からの脾臓細胞は、この標準細胞傷害性検定において、種々のE:T比で最高レベルのin vitro溶解を示した。
【0096】
実施例2.異なる形態の免疫原が投与される順序の効果
種々の順でのプラスミド(pSEM)又はペプチド(Mel A;ELAGIGILTV;配列番号1)の節内投与により、HHDマウスを免疫感作した。pSEMによりコードされる免疫原性ポリペプチドは、米国特許出願第10/292,413号(公開番号20030228634A1)(表題:標的関連抗原のエピトープをコードする発現ベクター及びそれらの設計方法(EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS AND METHODS FOR THEIR DESIGN))に開示されている。
【0097】
免疫感作のプロトコール(図2)は、以下より成る:
i)誘導期/誘導用量:0日目及び4日目での、25μg(マイクログラム)のプラスミド又は50μg(マイクログラム)のペプチドを含有する25μl(マイクロリットル)の滅菌生理食塩水の鼠径部リンパ節への両側注射。
ii)増幅用量:実施例1に上記したように、誘導期の完了後2週間で開始される。
【0098】
脾臓細胞の単離と、pAPCの存在下でのコグネイトペプチドを用いたin vitro刺激の後に、標準技法により免疫応答を測定した。多数の検定から生じる結果を考慮に入れ、種々のエフェクター及び調節機能の評価を促し、応答のより全体的な見地を提供することにより、免疫応答のプロフィールを描くのが好ましい。用いられる検定の種類に対する検討がなされ得、単にそれらの数に対しては検討されない;例えば異なる前炎症性サイトカインに関する2つの検定は、1つの検定にケモカイン又は免疫抑制サイトカインに関する検定をプラスしたものと同じ情報を提供するというわけではない。
【0099】
実施例3.実施例2に記載したように免疫感作されたマウスのELISPOT(エリスプロット)分析
ELISPOT分析は、サイトカイン産生性のペプチド特異的T細胞の頻度を測定する。図3は、二重反復試験における代表例を示し、図4は、サイトカイン産生細胞の数/106個の応答体細胞として個々に表されるデータの要約を示す。結果は、ペプチドで免疫感作されたマウスとは対照的に、プラスミド感作又はプラスミド惹起/ペプチド増幅マウ
スは、メランAペプチドを認識するIFN−γ(ガンマ)産生T細胞の頻度増大を生じた、ということを示す。プラスミドで惹起させ、ペプチドで増幅させた4匹のマウスのうちの4匹が、1/2000を上回る頻度を示した。これに対して、プラスミドを用いたプロトコールにより免疫感作された4匹のマウスのうち2匹が、1/2000を上回る頻度を示した。免疫原としてペプチドのみを用いたマウスのうち、IFN−γ産生T細胞内で応答増大を始めたものはなかった。実際、ペプチドの反復投与は、プラスミドによる惹起後に投与されたペプチドと鮮明な対照を成して、このような細胞の頻度を減少した。
【0100】
実施例4.実施例2に記載したように免疫感作されたマウスの細胞溶解活性の分析
各群からプール化脾臓細胞を調製し(採取し、細かく刻み、赤血球溶解した脾臓)、rIL−2の存在下で7日間、LPS刺激化メランAペプチド被覆同一遺伝子型pAPCとともにインキュベートした。細胞を洗浄し、メランAペプチド(ELA)でパルス標識した51Crタグ化T2標的細胞を異なる比率で用いて、4時間インキュベートした。上清中に放出された放射能を、γ(ガンマ)計数器を用いて測定した。応答を、溶解%=(試料シグナル−バックグラウンド)/(最大シグナル−バックグラウンド)×100(式中、バックグラウンドは、検定培地中でインキュベートした場合に標的細胞単独により放出される放射能を表し、最大シグナルは、界面活性剤で溶解された標的細胞により放出される放射能である)として定量した。図5は、上記の細胞傷害性検定の結果を例示する。ペプチドによるin vitro刺激後に達成された細胞溶解活性のレベルは、誘導用量としてペプチドを受容したものより、in vivoでの誘導用量としてDNAを受容した群に関するほうが非常に大きかった。上記のELISPOTデータと一致して、DNA組成物を用いた免疫応答の誘導は、安定した、増幅可能なエフェクター機能をもたらしたが、一方、ペプチドのみを用いる免疫感作は、より少ない応答を生じ、その大きさは反復投与時にさらに減少した。
【0101】
実施例5.交差反応性
脾臓細胞を調製し、3つの異なるペプチド:メランA類似体免疫原、並びにそれに対応するヒト及びネズミエピトープを表すもの:で被覆された標的細胞に対して、実施例に上記したように用いた。図6に示したように、3つの標的の全てにおいて同様の細胞溶解活性が観察されたが、これは、天然配列に対する応答の交差反応性を実証する。
【0102】
実施例6.リンパ節へのペプチドの反復投与は免疫偏向及び調節T細胞を誘導する
上記の(そして図2に記載した)免疫感作手順により生成される特異的T細胞のサイトカインプロフィールを、ELISA又はルミネックス(Luminex)(登録商標)(ルミネックス(登録商標)分析は、多様な方式で培養中のT細胞により産生されるサイトカインを測定するための方法である)により評価した。上記のようにして生成した混合リンパ球培養物の7日目の上清を、以下の生物学的応答変更因子を測定するために用いた:MIP−Iα、RANTES及びTGF−β(捕捉ELISA。抗サイトカイン抗体及び特定の試薬(例えばビオチンタグ化抗体、ストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼ及び比色基質)を被覆したプレートを使用;R & D Systems)。他のサイトカインは、専門のメーカー(BD Pharmingen)により提供されるT1/T2及びT炎症キットを用いて、ルミネックス(登録商標)により測定した。
【0103】
図7Aのデータは、3つの異なる免疫感作プロトコールを比較し、免疫応答のプロフィールに及ぼすプロトコールの予期しない作用を示す:プラスミド惹起は前炎症性サイトカインを分泌するT細胞の誘導を可能にしたが、一方、反復ペプチド投与は調節性又は免疫抑制サイトカイン、例えばIL−10、TGF−ベータ及びIL−5を生成した。ペプチドのみのプロトコールのために用いられた免疫感作スケジュールは、その代わりに応答のエフェクター期を延長するリンパ系内のエピトープの継続的というよりむしろ周期的存在を提供した、と理解されるべきである。最後に、ペプチド増幅後のプラスミド惹起は、増
大量のT細胞ケモカインMIP−1α及びRANTESの産生をもたらした。T細胞ケモカイン、例えばMIP−1α及びRANTESは、腫瘍又は感染部位に対する遊走を調節するのに重要な役割を演じ得る。免疫サーベイランス中、標的関連抗原に特異的なT細胞は、コグネイトリガンドに遭遇して、増殖し、媒介物質、例えばケモカインを産生し得る。これらは、抗原が認識される部位でT細胞の動員を増幅し、より強力な応答を可能にする。データは、バルク培養物から得られた上清から作成した(二重反復試験の平均+SE、2つの個々の測定値)。
【0104】
標準方法により肺間質組織及び脾臓から細胞を取り出して、CD8、CD62L及びCD45RBに対する抗体を、四量体作用物質と一緒に用いて染色し、メランA特異的T細胞を同定した。図7Bのデータは、CD8+四量体+T細胞のゲート集団を表す(y軸CD45RB及びx軸CD62L)。
【0105】
同時に、結果は、ペプチドのみを注射された動物における免疫偏向を実証する(IFN−ガンマ低減、TNF−アルファ産生、IL−10、TGF−ベータ及びIL−5増大、CD62L− 低CD45RB CD8+四量体+調節細胞の強い誘導)。
【0106】
実施例7.リンパ節に投与される非複製プラスミド(惹起)とペプチド(増幅)を交互に用いることによる免疫応答の高効果誘導
ヒトMHCクラスIHLA.A2遺伝子に関してトランスジェニックであるHHDマウスの3群を、メランA腫瘍関連抗原に対するリンパ内投与により免疫感作した。pSEMプラスミド(25μg/リンパ節)又はELAペプチド(ELAGIGILTV、メランA26−35 A27L類似体)(25μg/リンパ節)のどちらかを用いた鼠径部リンパ節への直接接種により動物を初回刺激(誘導)し、3日後に、二次注射した。10日後、同一方式でpSEM又はELAを用いてマウスを追加免疫し、その後、3日後に最終追加免疫して、応答を増幅し(同様の免疫感作スケジュールに関する図11A参照)、以下の誘導&増幅組合せを生じた:pSEM+pSEM、pSEM+ELA及びELA+ELA(マウス12匹/群)。10日後、メランA特異的四量体試薬(HLA−A*0201MART1(ELAGIGILTV)−PE、Beckman Coulter)を用いて、免疫応答をモニタリングした。後眼窩洞静脈を介して個々のマウスを採血し、2000rpmで25分間、密度勾配遠心分離(Lympholyte Mammal, Cedarlane Labs)を用いてPBMCを単離した。CD8に対するマウス特異的抗体(BD Biosciences)及びメランA四量体試薬を用いてPBMCを同時染色し、FACS口径フローサイトメーター(BD)を用いてフローサイトメトリーにより具体的なパーセンテージを確定した。異なる初回刺激/追加免疫組合せにより生成されたメランA特異的CD8+細胞のパーセンテージを、図8A及び8Bに示す。プラスミド−初回刺激/ペプチド−追加免疫群(pSEM+ELA)は、全ての動物間で、4.6の平均四量体パーセンテージを有する強い免疫応答を引き出した。応答動物マウスは2又はそれ以上の四量体パーセンテージを有することが明示されたが、これは、非免疫感作対照群の平均+標準偏差(SE)の3倍と等しい値を表す。このような値は、当該技術分野で非常に強い応答と考えられ、通常は、複製ベクターを用いてのみ達成され得る。pSEM+ELA免疫感作群は、応答体であることが判明した12匹のマウスのうちの10匹を含有したが、これは、対照群と比較した場合に申し分ない有意差を表す(p(フィッシャー)=0.036)。その他の2つの免疫感作系列:pSEM+pSEM及びELA+ELAは、12匹の応答体のうち6匹を生じたが、0.05より大きいp値を有し、統計学的有意を低下させた。これらのマウスの免疫を測定するために、ペプチド被覆標的細胞をin vivoで用いて動物に抗原投与した。脾臓細胞を同腹対照HHDマウスから単離し、20μg/mLのELAペプチドとともに2時間インキュベートした。次に、これらの細胞をCFSEhi蛍光で染色し(4.0μM、15分間)、ペプチドとともにインキュベートされていない、CFSElo蛍光(0.4μM)で染色された対照脾臓細胞を同一比で用いて、免疫感作マウスに静脈内同時注射した。18時間後、脾
臓、リンパ節、PBMC及び肺を抗原投与動物(5匹/群)から除去し、フローサイトメトリーによりCFSE蛍光を測定することにより、標的細胞の特異的排除を測定した。結果を図8Cに示す。pSEM+ELA初回刺激/追加免疫群では、5匹のうちの4匹が強い免疫応答を実証し、試験した組織の各々において標的物の約50%をうまく掃去した。各実験群に関する代表的ヒストグラムを同様に示す(PBMC)。
【0107】
実施例8.DNAで誘導され、四量体レベルがベースラインに近づくまで静止された動物における免疫メモリー細胞を、ペプチド追加免疫は有効に再活性化する
図9Aに記載したようにして免疫感作後のマウス(5匹/群)において、メランA四量体レベルを測定した。免疫感作スケジュールの完了後5週間までに、四量体レベルはベースライン近くに戻っていた。ELAペプチドを用いて6週目に動物を追加免疫して、免疫応答が回復され得たか否かを確定した。pSEMプラスミドを免疫感作前に取得する動物(DNA/DNA、図9C)は、ELA増幅後のメランA特異的CD8+T細胞の非先例的な拡大を実証し、レベルは10%より大きい範囲であった。他方、ELAペプチドを注射前に取得する動物(図9A)は、より低頻度の四量体染色細胞により示されるように、ELA追加免疫からほとんど利益を得なかった。DNAを取得し、その後初回免疫感作としてペプチドを摂取したマウスは、他の群と比較して、ペプチド増幅を受けた時点で、有意ではあるが、中間の拡大を示した(図9B)。これらの結果は、DNA/DNA−惹起及びペプチド−増幅免疫感作戦略に関する強力な論理的根拠を明瞭に実証する。
【0108】
実施例9.リンパ系及び非リンパ系器官において高頻度の特異的T細胞の頻度を達成するための免疫感作の最適化
図9A〜Cに記載したように、プラスミド注射の一連の2つのクラスターによる惹起免疫感作とその後のペプチドによる増幅に付されたマウスは、強力な免疫応答を生じた。これに関するさらなる証拠は、ペプチド投与の前(図10A)及び後(図10B)の四量体レベルを例示する図10A〜Cに示されている。個々のマウスにおける四量体レベルは、T細胞の全CD8+集団の30%までがDNA/DNA/ペプチド免疫感作プロトコールを受けているマウスであることを明瞭に表す。これらの結果を図10Cのグラフに要約する。さらに高四量体レベルは、この厳密な免疫感作プロトコールを受けている動物の血液、リンパ節、脾臓及び肺中で明らかに証明された(図10D)。
【0109】
実施例10.プラスミド及びペプチド免疫原の精確な投与順は免疫応答の大きさを確定する
マウスの6群(n=4)を、鼠径部リンパ節への直接接種による初回刺激及び増幅を用いて、メランA26−35 A27L類似体(pSEM)又はメランAペプチドを発現するプラスミドで免疫感作した。免疫感作のスケジュールを図11Aに示す(50μgのプラスミド又はペプチド/リンパ節の用量、両側的)。2群のマウスをプラスミドを用いて開始し、プラスミド又はペプチドで増幅した。逆に、2群のマウスは、ペプチドを用いて開始し、ペプチド又はプラスミドで増幅した。最後に2群の対照マウスを、ペプチドか又はプラスミドで開始したが、増幅しなかった。最終接種後4週目に、脾臓を採取し、脾臓細胞懸濁液を調製し、プールして、抗IFN−γ抗体で被覆されたELISPOTプレート中でメランAペプチドで刺激した。インキュベーション後48時間目に、検定を展開し、メランAを認識したサイトカイン産生T細胞の頻度を自動的に計数した。データを、特異的T細胞/100万個の応答体細胞の頻度(三重反復試験の平均+SD)として図5Bに表した。データは、プラスミド及びペプチドの開始及び増幅用量の順を逆にすると応答の全体的大きさに実質的作用を及ぼし、一方、プラスミド惹起とその後のペプチド増幅は最大応答を生じ、ペプチドの開始用量とその後のプラスミド増幅は、ペプチドの反復投与と同様の、有意に弱い応答を発生する、ということを示した。
【0110】
実施例11.免疫応答と免疫感作のプロトコールとの相関、並びにリンパ系及び非リン
パ系器官内の標的細胞の掃去により明示されるin vivo効力
惹起及び増幅プロトコールにより得られた免疫応答を評価するために、4群の動物(n=7)をin vivoでメランA被覆標的細胞を用いて抗原投与した。脾臓細胞を同腹対照HHDマウスから単離し、20μg/mLのELAペプチドとともに2時間インキュベートした。次に、これらの細胞をCFSEhi蛍光で染色し(4.0μM、15分間)、CFSElo蛍光(0.4μM)で染色された対照脾臓細胞を同一比で用いて、免疫感作マウスに静脈内同時注射した。18時間後、脾臓、リンパ節、PBMC及び肺を抗原投与動物から除去し、フローサイトメトリーによりCFSE蛍光を測定することにより、標的細胞の特異的排除を測定した。図12A及び12Bは、非免疫感作対照動物又はペプチド/ペプチド、DNA/ペプチド若しくはDNA/DNAの免疫感作プロトコールを受けている動物の組織からのCFSEヒストグラムプロットを示す(2匹の代表的マウスを各群から示す)。DNA−惹起/ペプチド−増幅群は、リンパ系、並びに非リンパ系器官中の標的細胞の高レベルな特異的死滅を実証し(図12C)、そして四量体レベルとの特定の相関を実証した免疫感作プロトコールのみを表す(図12D、試験した全組織に関してr2=0.81又はそれ以上)。
【0111】
実施例12.厳密な惹起及び増幅プロトコールにより免疫感作された動物中のヒト腫瘍細胞のクリアランス
厳密なプロトコールを用いた免疫感作後にヒト黒色腫腫瘍細胞を用いてマウスに抗原投与することにより、メランA抗原に対する免疫をさらに試験した。図13Aは、試験した3つの群に関して用いられた厳密な免疫感作戦略を示す。免疫感作マウスは、図13Bに例示したようにCFSEloで標識した等比率の624.28HLA.A2−対照細胞と混合されたCFSEhi蛍光で標識したヒト標的細胞624.38HLA.A2+の2回の静脈内注射を受けた。14時間後、マウスを屠殺し、肺(ヒト標的が蓄積する器官)を、フローサイトメトリーにより標的細胞の特異的溶解に関して分析した。図13Cは、各群からのマウス由来の代表的CFSEヒストグラムプロットを示す。DNA−惹起と、その後のペプチド−増幅は、肺中の標的の約80%の特異的死滅により実証されるように、ヒト腫瘍細胞に対してマウスを明瞭に免疫感作した。より長い系列のDNA−惹起注射も、メランA四量体と反応性であるCD8+細胞のさらなる頻度増大をもたらした。
【0112】
実施例13.DNA−惹起、ペプチド−増幅戦略はSSX−2由来エピトープKASEKIFYV(SSX241−49)に対する強い免疫を生じる
図14Aに明示された免疫感作スケジュールを用いてSSX2腫瘍関連抗原に対して免疫感作された動物は、強い免疫応答を実証した。図14Bは、pCBPプラスミドで初回刺激(惹起)され、SSX241−49K41F又はK41Yペプチド類似体で追加免疫された(増幅された)マウスの代表的四量体染色を示す。これらの類似体は、SSX241−49エピトープに特異的なT細胞と交差反応性である。これらの例は、惹起及び増幅プロトコールが、利用可能なCD8 T細胞の80%に近いSSX2抗原特異性を引き出し得る、ということを例示する。pCBPプラスミド及びその設計原理は、米国特許出願第10/292,413号(公開番号20030228634A1)(表題:標的関連抗原のエピトープをコードする発現ベクター及びそれらの設計方法(EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS AND METHODS FOR THEIR DESIGN))に開示されている。さらなる方法論、組成物、ペプチド及びペプチド類似体は、米国特許仮出願第______/______号(代理人ドケット番号:MANNK.038PR)(本出願と同じ日付に提出)(表題:SSX−2ペプチド類似体(SSX-2 PEPTIDE ANALOGS))に見出される。さらなる方法論、組成物、ペプチド及びペプチド類似体は、米国特許仮出願第______/______号(代理人ドケット番号:MANNK.039PR)(本出願と同じ日付に提出)(表題:NY−ESOペプチド類似体(NY-ESO PEPTIDE ANALOGS))に開示されている。
【0113】
実施例14.惹起及び増幅戦略を用いて同時に異なる抗原上に位置するエピトープに対
する免疫応答を引き出し得る
4群のHHDマウス(n=6)を、pSEM単独;pCBP単独;pSEM及びpCBPを混合物として用いて;又は左リンパ節にpSEM及び右リンパ節にpCBPを用いて、リンパ節内注射を介して免疫感作した。これらの注射の10日後に、同一方式でELA又はSSX2ペプチドのどちらかで追加免疫を実施した。全免疫感作マウスを、非免疫感作対照と比較した。同時に2つの抗原標的物の特異的溶解の評価を可能にする三重ピークCFSEin vivo細胞傷害性検定を用いて、ELA又はSSX2ペプチドで被覆されたHHD同腹仔脾臓細胞を用いて抗原投与した。同数の対照−CFSElo、SSX2−CFSEmed及びELA−CFSEhi細胞を免疫感作マウス中に静脈内注入し、18時間後、マウスを屠殺して、フローサイトメーターを用いたCFSE蛍光により標的細胞排除を脾臓(図15A)及び血液(図15B)中で測定した。図15A及び15Bは、個々のマウスからのSSX2及びメランA抗原標的物の特異的溶解パーセントを示し、図15Cは、棒グラフフォーマットで結果を要約する。2つのワクチンの混合物による動物の免疫感作は、両抗原に対する免疫を生成し、30+/−11の脾臓中の平均SSX2特異的溶解パーセント及びメランAに関して97+/−1を示す最高免疫応答を生じた。
【0114】
実施例15.DNA惹起及びペプチド増幅の反復サイクルは強力な免疫を達成し、維持する
3群の動物(n=12)は、2サイクルの以下の免疫感作プロトコールを受けた:DNA/DNA/DNA;DNA/ペプチド/ペプチド;又はDNA/DNA/ペプチド。免疫感作の各サイクル後のマウスにおいてメランA四量体レベルを測定し、図16に示す。初期DNA/DNA/ペプチド免疫感作サイクルは、平均21.1+/−3.8パーセントの四量体+CD8+T細胞を生じた(他の2つの群の約2倍高い)。2回目の惹起及び増幅免疫感作後、DNA/DNA/ペプチド群に関する平均四量体パーセンテージは32.6+/−5.9に54.5%増大した(これはDNA/ペプチド/ペプチドレベルの2.5倍、DNA/DNA/DNA群レベルの8.25倍高い)。さらにこれらの条件下で、他の免疫感作スケジュールは、四量体陽性T細胞の頻度の増大をほとんど達成しなかった。
【0115】
実施例16.交互のプラスミド及びペプチドベクターからなる免疫誘導及び増幅療法により誘発される長寿命メモリーT細胞
4匹のHHDトランスジェニック動物(3563、3553、3561及び3577)は、2サイクルの以下の惹起及び増幅プロトコールを受けた:DNA/DNA/ペプチド。最初のサイクルは、−31、−28、−17、−14、−3、0日目における免疫感作を包含した;第2サイクルは、14、17、28、31、42及び45日目における免疫感作を包含した。120日目にペプチドを用いてマウスに追加免疫した。各サイクルの免疫感作後7〜10日目と2回目の免疫感作サイクル後90日まで定期的に、マウスにおいてメラン−A四量体レベルを測定した。グラフ中の矢印は、サイクルの完了に対応する(図17A)。4匹の動物は全て最終追加免疫(増幅)後の応答を見せたが、これは寛容の誘導というよりむしろ免疫メモリーの持続性を実証する。
【0116】
5匹のHHDトランスジェニック動物(3555、3558、3566,3598及び3570)は、2サイクルの以下の惹起及び増幅プロトコールを受けた:DNA/ペプチド/ペプチド。前と同様に、最初のサイクルは、−31、−28、−17、−14、−3、0日目における免疫感作を包含した;第2サイクルは、14、17、28、31、42及び45日目における免疫感作を包含した。120日目にペプチドを用いてマウスに追加免疫した。各サイクルの免疫感作後7〜10日目と2回目の免疫感作サイクル後90日まで定期的に、マウスにおいてメランA四量体レベルを測定した(図17B)。比較すると、各サイクルにおける後期DNA注射の代わりにペプチドを置き換えるこの惹起及び増幅プロトコールは、この実験では、免疫メモリー減少又は応答性低減を生じた。
【0117】
実施例17.実質的拡大能力を有する長寿命メモリーT細胞は節内DNA投与により生成される
7匹のHHDトランスジェニック動物は、2サイクルの以下の免疫感作プロトコールを受けた:DNA/DNA/DNA。最初のサイクルは、−31、−28、−17、−14、−3、0日目における免疫感作を包含した;第2サイクルは、14、17、28、31、42及び45日目における免疫感作を包含した。120日目にペプチドを用いてマウスに追加免疫した。各サイクルの免疫感作後7〜10日目と2回目の免疫感作サイクル後90日まで定期的に、マウスにおいてメランA四量体レベルを測定した(図18)。7匹の動物は全て、2回の免疫感作サイクル中又はその後に四量体+細胞の境界線上頻度%を示したが、ペプチド追加免疫後に強力な応答を見せ、このことは、実質的免疫メモリーを実証する。
【0118】
実施例18.抗原+免疫増強アジュバントの種々の組合せはCTL応答の惹起のために有効である
ペプチドの節内投与は、TLRのようなアジュバントを含むか又は関連した作因(複製性又は非複製性)のリンパ内投与により誘発される免疫応答を増幅するための非常に強力な手段である。
【0119】
被験体(例えばマウス、ヒト又はその他の哺乳類)を、ベクター、例えばプラスミド、ウイルス、ペプチド+アジュバント(CpG、dsRNA、TLRリガンド)、組換えタンパク質+アジュバント(CpG、dsRNA、TLRリガンド)、死微生物又は精製抗原(例えば免疫増強活性を有する細胞壁構成成分)を用いた節内注入又は注射により惹起し、アジュバントを含有しないペプチドの節内注射により増幅する。四量体染色及びその他の方法により追加免疫の前及び後に測定した免疫応答は、大きさの実質的増大を示す。これに対比して、他の経路によるアジュバントを含有しないペプチドを利用する追加免疫は、免疫応答の同一の増大を達成しない。
【0120】
実施例19.ペプチドの節内投与は、任意の投与経路による抗原+免疫増強アジュバントにより誘発される免疫応答を増幅するための非常に強力な手段である
被験体(例えばマウス、ヒト又はその他の哺乳類)を、ベクター、例えばプラスミド、ウイルス、ペプチド+アジュバント(CpG、dsRNA、TLRリガンド)、組換えタンパク質+アジュバント(CpG、dsRNA、TLRリガンド)、死微生物又は精製抗原(例えば免疫増強活性を有する細胞壁構成成分)の非経口的又は粘膜投与により免疫感作し、アジュバントを含有しないペプチドの節内注射により増幅する。四量体染色及びその他の方法により追加免疫の前及び後に測定した免疫応答は、大きさの実質的増大を示す。これに対比して、節内以外の経路によるアジュバントを含有しないペプチドを利用する追加免疫は、免疫応答の同一の増大を達成しない。
【0121】
実施例20.惹起及び増幅免疫感作プロトコールを用いた寛容性破壊
寛容性を破壊するか又は自己抗原(例えば腫瘍関連抗原)に対する免疫応答性を回復するために、被験体(例えばマウス、ヒト又はその他の哺乳類)を、ベクター、例えばプラスミド、ウイルス、ペプチド+アジュバント(CpG、dsRNA、TLRリガンド)、組換えタンパク質+アジュバント(CpG、dsRNA、TLR擬態)、死微生物又は精製抗原で免疫感作し、アジュバントを含有しないペプチド(自己エピトープに対応する)の節内注射により追加免疫する。四量体染色及びその他の方法により追加免疫の前及び後に測定した免疫応答は、免疫応答の大きさの実質的増大を示す(「寛容性破壊」)。
【0122】
実施例21.惹起及び増幅免疫感作のための臨床的実行
臨床及び実験室判定基準を用いて、新生物又は感染性疾患のための治療を要するとして
、患者を診断し;治療するか、或いは第一段階の治療を用いないで;能動免疫療法に関する評価に言及する。疾患の性質及び治療物質の特質による、付加的判定基準(抗原プロファイリング、MHCハプロ型分類、免疫応答性)に基づいて、登録を行なう。精確な順でのベクター(プラスミド)及びタンパク質抗原(ペプチド)のリンパ内注射又は注入(ボーラス、プログラム可能なポンプ又はその他の手段)により、治療(図19)を実行する。最も好ましいプロトコールは、プラスミド惹起とその後のペプチドの増幅投与(単数又は複数)を含む反復周期を包含する。このようなサイクルの頻度及び継続は、免疫学的、臨床的及びその他の手段により測定される応答によって調整し得る。投与される組成物は、一価又は多価であり、多数のベクター、抗原又はエピトープを含有し得る。投与は、1つ又は多数のリンパ節に同時にか、或いは時差的な方式であり得る。この療法を受けている患者は、症候の改善を実証する。
【0123】
実施例22.病原性T細胞の免疫偏向又は非活性化の誘導のための臨床的実行
自己免疫又は炎症性障害を有する患者を、臨床及び実験室判定基準を用いて診断し、治療するか又は第一段階の治療を用いないで、能動免疫療法に関する評価に言及する。疾患の性質及び治療物質の特質による、付加的判定基準(抗原プロファイリング、MHCハプロ型分類、免疫応答性)に基づいて、登録を行なう。T1促進アジュバントを欠くか及び/又は免疫偏向を増幅する免疫修飾物質を伴うペプチドのリンパ内注射又は注入(ボーラス、プログラム可能なポンプ又はその他の手段)により、治療を実行する。しかしながらペプチドボーラス注射は、この方法により免疫偏向を発生させるための好ましい方式である。ペプチドを用いた治療は、免疫に及ぼす所望の作用又は臨床状態が得られるまで、毎週、2週間毎に又は低頻度で(例えば毎月)実行し得る。このような治療は、1回投与、又は図2の群2の場合のような多数回の近い間隔での投与を包含し得る。その後、低頻度注射を包含する調整療法を用いて、維持療法を開始し得る。投与される組成物は、一価又は多価であり、多数のエピトープを含有し得る。組成物は、リンパ系中のペプチドの存在を延長する任意の構成成分を含有しないのが好ましい。投与は、1つ又は多数のリンパ節に同時にか、或いは時差的な方式であり、免疫感作ペプチド又は無関連エピトープ(「エピトープ拡散」)に特異的なT細胞を、関連臨床方法に加えて測定することにより、応答をモニタリングし得る。
【0124】
実施例23.免疫原性組成物(例えばウイルスワクチン)
以下のスケジュール:0,3、14及び17日目:に従って、鼠径部リンパ節の両側に、25μgのプラスミドベクターを、6群(n=6)のHLA−A2トランスジェニックマウスに注射する。ベクターは、HIVgagからの3つのA2拘束性エピトープ(SLYNTVATL、VLAEAMSQV、MTNNPPIPV)、polからの2つ(KLVGKLNWA、ILKEPVHGV)及びenvからの1つ(KLTPLCVTL)をコードする。最終回の惹起の2週間後、これら5つのペプチド全てを包含する混合物をマウスに注射する(5μg/ペプチド/節、両側、3日おき)。平行して、5群のマウスに個々のペプチドを注射する(5μg/ペプチド/節、両側、3日おき)。7日後に、マウスを採血し、各ペプチドに対する四量体染色により応答を評価する。その後、マウスの半数に、env、gag又はpolを発現する組換えワクシニアウイルスを抗原投与し(103TCID50/マウス)、7日目に、慣用的プラーク検定を用いて卵巣で、ウイルス力価を測定する。他の半数を屠殺し、脾臓細胞をペプチドで5日間刺激して、ペプチドで被覆された標的細胞に対する細胞傷害活性を測定する。対照として、マウスにプラスミド又はペプチド単独を注射した。プラスミドで惹起させ、ペプチドで増幅させたマウスは、四量体染色及び細胞傷害性により、5つのペプチド全てに対するより強力な免疫を示す。
【0125】
より一般的に、寛容性を破壊し、免疫応答性を回復し、又は非自己抗原、例えばウイルス、細菌、寄生生物又は微生物に対する免疫を誘導するために、被験体(例えばマウス、ヒト又はその他の哺乳類)を、ベクター、例えばプラスミド、ウイルス、ペプチド+アジ
ュバント(CpG、dsRNA、TLR擬態)、組換えタンパク質+アジュバント(CpG、dsRNA、TLR擬態)、死微生物又は精製抗原(例えば細胞壁構成成分)で免疫感作し、アジュバントを含有しないペプチド(自己エピトープに対応する)の節内注射により追加免疫する。四量体染色及びその他の方法により追加免疫の前及び後に測定した免疫応答は、免疫応答の大きさの実質的増大を示す。このような戦略を用いて、感染に対して防御するか、或いはHBV、HCV、HPV、CMV、インフルエンザウイルス、HIV、HTLV、RSV等のような作因により引き起こされる慢性感染を治療し得る。
【0126】
本発明の多数の変形及び選択的因子を開示してきた。さらなる変形及び選択因子が当業者には明らかである。本発明の種々の実施形態は、これらの変形又は因子のいずれかを特定的に含むか又は排除し得る。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1A】図1Aは、リンパ内免疫感作による免疫応答の誘導を示す図である。
【図1B】図1Bは、リンパ内免疫感作による免疫応答の誘導を示す図である。
【図1C】図1Cは、リンパ内免疫感作による免疫応答の誘導を示す図である。
【図2】図2は、抗原の標的化(リンパ節)送達によるMHCクラスI拘束性エピトープに対する免疫を制御するか又は操作するためのプロトコールの例を示す図である。
【図3】図3は、図4に記載されたデータに対応する代表的ウエルに関する視覚的透視図を表す図である。
【図4】図4は、ELISPOTにより測定し、ペプチドを認識するIFN−γ(ガンマ)産生T細胞の数(頻度)として表した、図2に記載されたプロトコールの適用に起因する免疫応答の大きさを示す図である。
【図5】図5は、図2に示したような抗原の標的化送達により生成されたT細胞の細胞傷害性プロフィールを示す図である。
【図6】図6は、図2に示したプロトコールにより生成されたMHCクラスI拘束性T細胞の交差反応性を示す図である。
【図7A】図7Aは、3クラスの生物学的応答変更因子(前炎症性サイトカイン、ケモカイン又は化学誘引物質、並びに免疫調節又は抑制ケモカイン)の成員を産生するリンパ球の能力として表される免疫のプロフィールと、その後の図2に記載した免疫感作プロトコールの適用を示す図である。
【図7B】図7Bは、図2に記載した免疫感作プロトコールにより生成されたT細胞に関するフローサイトメトリーにより表現型分けされる細胞表面マーカーを示す。リンパ節へのペプチドの反復投与は、免疫偏向及び調節T細胞を誘導する図である。
【図8A】図8Aは、DNA、ペプチド、或いはDNA及びペプチドの惹起/増幅配列で免疫感作したマウスにおける、四量体により測定した特異的T細胞の頻度を示す図である。
【図8B】図8Bは、DNA、ペプチド、或いはDNA及びペプチドの惹起/増幅配列で免疫感作したマウスにおける、四量体により測定した特異的T細胞の頻度を示す図である。
【図8C】図8Cは、DNA(「pSEM」)、ペプチド(「ELA」=ELAGIGILTV)、或いはDNA及びペプチドの惹起/増幅配列で免疫感作したマウスにおける、種々のリンパ系及び非リンパ系器官におけるin vivoで生じる特異的細胞傷害を示す図である。
【図9A】図9Aは、ペプチドで免疫感作し、ペプチドで増幅した動物における循環四量体染色T細胞の持続性/崩壊を、ペプチド追加免疫後の再生応答とともに示す図である。
【図9B】図9Bは、DNAで惹起し、ペプチドで増幅した動物における循環四量体染色T細胞の持続性/崩壊を、ペプチド増幅後の再生応答とともに示す図である。
【図9C】図9Cは、DNAで免疫感作し、DNAで増幅した動物における循環四量体染色T細胞の持続性/崩壊を、ペプチド追加免疫後の再生応答とともに示す図である。
【図10A】図10Aは、種々の2サイクル免疫感作プロトコールを用いた抗原特異的CD8+T細胞の拡大を示す図である。
【図10B】図10Bは、種々の3サイクル免疫感作プロトコールを用いた抗原特異的CD8+T細胞の拡大を示す図である。
【図10C】図10Cは、種々のプロトコールを用いて初回刺激され、ペプチドで増幅された動物における四量体染色により検出される循環抗原特異的T細胞の拡大を示す図である。
【図10D】図10Dは、リンパ系及び非リンパ系器官における、種々の免疫感作療法後の、そして四量体染色により検出された抗原特異的T細胞の拡大を示す図である。
【図11A】図11Aは、プラスミドDNA及びペプチドを用いてマウスを免疫感作する予定表の一例を示す図である。
【図11B】図11Bは、種々の免疫感作プロトコール(それぞれの又は逆の順序でのDNA及びペプチドの変更)により引き起こされたELISPOT分析により確定した免疫応答を示す図である。
【図12A】図12Aは、プラスミド及びペプチドで免疫感作したマウスにおける、血液及びリンパ節における抗原性標的細胞のin vivo欠乏を示す図である。
【図12B】図12Bは、プラスミド及びペプチドで免疫感作したマウスにおける、脾臓及び肺における抗原性標的細胞のin vivo欠乏を示す図である。
【図12C】図12Cは、12A、Bに提示された結果の要約を示す図である。
【図12D】図12Dは、種々のプロトコールにより免疫感作したマウスにおける特異的T細胞の頻度及び抗原性標的細胞のin vivoクリアランス間の相関を示す図である。
【図13A】図13Aは、プラスミドDNA及びペプチドでマウスを免疫感作する予定表、並びにそれらのマウスにおいて実施する測定の性質を示す図である。
【図13B】図13Bは、免疫感作マウスにおけるヒト腫瘍細胞のin vivoクリアランスの確定のために用いられるプロトコールに関連した予定表を記載する図である。
【図13C】図13Cは、プラスミド及びペプチドで免疫感作したマウスにおける、抗原性標的細胞(ヒト腫瘍細胞)のin vivo欠乏を示す図である。
【図14A】図14Aは、14Bに示した抗SSX−2応答を発生させるために用いる免疫感作プロトコールを示す図である。
【図14B】図14Bは、四量体染色により検出した、循環SSX−2特異的T細胞の拡大と、その後のDNA惹起/ペプチド増幅療法の適用を示す図である。
【図15A】図15Aは、メランA(ELAGIGILTV)及びSSX2(KASEKIFYV)のエピトープに対して同時に免疫感作するために種々の惹起及び増幅プロトコールを受けたマウスの脾臓中の抗原性標的細胞のin vivoクリアランスを示す図である。
【図15B】図15Bは、メランA(ELAGIGILTV)及びSSX2(KASEKIFYV)のエピトープに対して同時に免疫感作するために種々の惹起及び増幅プロトコールを受けたマウスの血液中の抗原性標的細胞のin vivoクリアランスを示す図である。
【図15C】図15Cは、図15A、Bに詳細に示した結果を要約する図である。
【図16】図16は、2サイクルの種々の惹起及び増幅プロトコールを受けているマウスにおける、四量体染色により測定した循環抗原特異的CD8+T細胞の拡大を示す図である。
【図17A】図17Aは、DNA/DNA/ペプチド(A)又はDNA/ペプチド/ペプチド(B)から成る2サイクルの惹起及び増幅プロトコールを受けている動物における、循環抗原特異的T細胞の持続性を示す図である。
【図17B】図17Bは、DNA/DNA/ペプチド(A)又はDNA/ペプチド/ペプチド(B)から成る2サイクルの惹起及び増幅プロトコールを受けている動物における、循環抗原特異的T細胞の持続性を示す図である。
【図18】図18は、DNA/DNA/DNAから成る2サイクルの惹起及び増幅プロトコールを受けている動物における持続性記憶を示す図である。
【図19】図19は、DNA/ペプチド惹起及び増幅プロトコールを用いた患者の登録及び処置のための臨床実行スキームを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫感作方法であって、
第一の抗原の少なくとも一部分を含むか又はコードする免疫原を含む第一の組成物を哺乳類に送達する工程、及び
増幅ペプチドを含む第二の組成物を哺乳類のリンパ系に直接投与する工程を包含し、前記ペプチドは前記第一の抗原のエピトープに対応し、前記第一の組成物及び前記第二の組成物は同一でない、免疫感作方法。
【請求項2】
前記第一の組成物は抗原又はその免疫原性断片をコードする核酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第一の組成物はpAPC中のエピトープを発現し得る核酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記核酸は原生動物、細菌、ウイルス又はウイルスベクターの一構成成分として送達される、請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
前記第一の組成物は免疫原性ポリペプチド及び免疫増強剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記免疫増強剤はサイトカインである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記免疫増強剤はトール様受容体リガンドである、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記アジュバントは免疫刺激配列を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記アジュバントはRNAを含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記免疫原性ポリペプチドは前記増幅ペプチドである、請求項5記載の方法。
【請求項11】
前記免疫原性ポリペプチドは前記第一の抗原である、請求項5記載の方法。
【請求項12】
前記免疫原性ポリペプチドは原生動物、細菌、ウイルス、ウイルスベクター又はウイルス様粒子の一構成成分として送達される、請求項5記載の方法。
【請求項13】
前記アジュバントは原生動物、細菌、ウイルス、ウイルスベクター又はウイルス様粒子の一構成成分として送達される、請求項5記載の方法。
【請求項14】
前記第二の組成物はアジュバント及び免疫増強剤を含まない、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記送達する工程は哺乳類のリンパ系への直接投与を包含する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
哺乳類のリンパ系への直接投与はリンパ節又はリンパ管への直接投与を包含する、請求項1又は請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記直接投与は2又はそれ以上のリンパ節又はリンパ管に対してである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
リンパ節は鼠径部、腋窩、頚部及び扁桃リンパ節から成る群から選択される、請求項1
6記載の方法。
【請求項19】
前記第一の抗原に対するエフェクターT細胞応答を得ることをさらに包含する、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記エフェクターT細胞応答は前炎症性サイトカインの産生を包含する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記サイトカインはγ−IFN又はTNFαである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記エフェクターT細胞応答はT細胞ケモカインの産生を包含する、請求項19記載の方法。
【請求項23】
前記ケモカインはRANTES又はMIP−1αである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記エピトープはハウスキーピングエピトープである、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記エピトープは免疫エピトープである、請求項1記載の方法。
【請求項26】
前記送達する工程又は前記投与する工程は1回のボーラス注射を包含する、請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記送達する工程又は前記投与する工程は反復のボーラス注射を包含する、請求項1記載の方法。
【請求項28】
前記送達する工程又は前記投与する工程は連続注入を包含する、請求項1記載の方法。
【請求項29】
前記注入は約8〜約7日間の持続期間を有する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記送達する工程の終了と前記投与する工程の開始の間に間隔を有し、該間隔は少なくとも約7日間である、請求項1記載の方法。
【請求項31】
前記間隔は約7〜約14日間である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記間隔は約75日を上回る、請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記第一の抗原は疾患関連抗原である、請求項1記載の方法。
【請求項34】
前記疾患関連抗原は腫瘍関連抗原である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記疾患関連抗原は病原体関連抗原である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
請求項35記載の方法を包含する、疾患の治療方法。
【請求項37】
前記第一の抗原は標的関連抗原である、請求項1記載の方法。
【請求項38】
前記標的は新生細胞である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記標的は病原体感染細胞である、請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記病原体感染細胞は原生動物、細菌、真菌、ウイルス又はプリオンにより感染されている、請求項37記載の方法。
【請求項41】
前記エフェクターT細胞応答はサイトカイン検定、エリスポット検定、細胞傷害性検定、四量体検定、DTH応答、臨床応答、腫瘍縮小、腫瘍クリアランス、腫瘍進行の抑制、病原体力価減少、病原体クリアランス及び疾患症候の寛解から成る群から選択される少なくとも1つの指標により検出される、請求項1記載の方法。
【請求項42】
前記エフェクターT細胞応答は細胞傷害性T細胞応答である、請求項19記載の方法。
【請求項43】
免疫感作方法であって、
第一の抗原又はその免疫原性断片をコードする核酸を含む第一の組成物を哺乳類に送達する工程、及び
ペプチドを含む第二の組成物を哺乳類のリンパ系に直接投与することを包含し、前記ペプチドは前記第一の抗原のエピトープに対応する、免疫感作方法。
【請求項44】
前記抗原に対するエフェクターT細胞応答を得ることをさらに包含する、請求項43記載の方法。
【請求項45】
存在する抗原特異的免疫応答の増大方法であって、
ペプチドを含む組成物を哺乳類のリンパ系に直接投与する工程であって、前記ペプチドは前記抗原のエピトープに対応し、前記組成物は前記免疫応答を誘導するために用いられていない工程、及び
抗原特異的免疫応答の増大を得る工程
を包含する、存在する抗原特異的免疫応答の増大方法。
【請求項46】
前記増大は前記応答を長時間持続させることを包含する、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記増大は静止T細胞を再活性化することを包含する、請求項45記載の方法。
【請求項48】
前記増大は抗原特異的T細胞の集団を拡大することを包含する、請求項45記載の方法。
【請求項49】
前記組成物は免疫増強剤を含まない、請求項45記載の方法。
【請求項50】
免疫感作方法であって、
第一の抗原の少なくとも一部分及び第二の抗原の少なくとも一部分を含むか又はコードする免疫原を含む第一の組成物を哺乳類に送達する工程、及び
第一のペプチドを含む第二の組成物、及び第二のペプチドを含む第三の組成物を哺乳類のリンパ系に直接投与する工程を包含し、前記第一のペプチドは前記第一の抗原のエピトープに対応し、前記第二のペプチドは前記第二の抗原のエピトープに対応し、前記第一の組成物は前記第二又は第三の組成物と同一でない、免疫感作方法。
【請求項51】
前記抗原に対するエフェクターT細胞応答を得ることをさらに包含する、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記第二及び第三の組成物はそれぞれ前記第一の及び第二のペプチドを含む、請求項50記載の方法。
【請求項53】
抗原特異的寛容原性又は調節性免疫応答を発生させる方法であって、
アジュバントを含まないペプチドを含む組成物を哺乳類のリンパ系に直接、定期的に投与する工程であって、前記ペプチドは前記抗原のエピトープに対応し、前記哺乳類はエピトープにナイーブである工程、
を包含する、抗原特異的寛容原性又は調節性免疫応答を発生させる方法。
【請求項54】
寛容原性又は調節性T細胞免疫応答を得ることをさらに包含する、請求項53記載の方法。
【請求項55】
前記免疫応答は炎症性障害の治療を補助する、請求項53記載の方法。
【請求項56】
前記炎症性障害はクラスII MHC拘束性免疫応答から生じる、請求項55記載の方法。
【請求項57】
前記免疫応答は免疫抑制性サイトカインの産生を包含する、請求項53記載の方法。
【請求項58】
前記サイトカインはIL−5、IL−10又はTGB−βである、請求項57記載の方法。
【請求項59】
免疫感作方法であって、
免疫原性用量系列を哺乳類のリンパ系に直接投与する工程を包含し、前記系列は少なくとも1惹起(entraining)用量及び少なくとも1増幅用量を含み、前記惹起用量は免疫原をコードする核酸を含み、前記増幅用量は任意のウイルス、ウイルスベクター又は複製−コンピテントベクターを含有しない、免疫感作方法。
【請求項60】
1〜6惹起用量を含む、請求項59記載の方法。
【請求項61】
複数惹起用量を投与することを包含し、前記用量は1〜約7日間の期間に亘って投与される、請求項59記載の方法。
【請求項62】
惹起用量、増幅用量、又は惹起及び増幅用量が多数対の注射で投与され、対の第一成員は、対の第二成員の約4日以内に投与され、異なる対の第一成員間の間隔は少なくとも約14日である、請求項59記載の方法。
【請求項63】
最終惹起用量投与及び第一の増幅用量投与間の間隔は約7〜約100日である、請求項62記載の方法。
【請求項64】
抗原特異的免疫応答を得ることをさらに包含する、請求項59記載の方法。
【請求項65】
1〜6惹起用量及び少なくとも1増幅用量を含む、哺乳類における免疫応答を誘導するための免疫原性組成物セットであって、前記惹起用量は免疫原をコードする核酸を含み、前記増幅用量はペプチドエピトープを含み、前記エピトープは核酸を発現するpAPCにより提示される、免疫原性組成物のセット。
【請求項66】
1用量はアジュバントをさらに含む、請求項65記載のセット。
【請求項67】
前記アジュバントはRNAである、請求項66記載のセット。
【請求項68】
前記惹起及び増幅用量がリンパ系への直接投与に適した担体中に存在する、請求項65記載のセット。
【請求項69】
前記惹起及び増幅用量はリンパ節への直接投与に適した担体中に存在する、請求項68記載のセット。
【請求項70】
前記核酸はプラスミドである、請求項65記載のセット。
【請求項71】
前記エピトープはクラスI HLAエピトープである、請求項65記載のセット。
【請求項72】
前記クラスI HLAは表1−4から選択される、請求項71記載のセット。
【請求項73】
前記HLAはHLA−A2である、請求項72記載のセット。
【請求項74】
前記免疫原はエピトープアレイを含む、請求項65記載のセット。
【請求項75】
前記エピトープアレイは遊離配列を含む、請求項74記載のセット。
【請求項76】
前記免疫原は本質的に標的関連抗原から成る、請求項65記載のセット。
【請求項77】
前記標的関連抗原は腫瘍関連抗原である、請求項76記載のセット。
【請求項78】
標的関連抗原は微生物抗原である、請求項76記載のセット。
【請求項79】
前記免疫原はエピトープクラスターを含む標的関連抗原の断片を含む、請求項65記載のセット。
【請求項80】
1〜6惹起用量及び少なくとも1増幅用量を含む、哺乳類におけるクラスI MHC拘束性免疫応答を誘導するための免疫原性組成物セットであって、前記惹起用量は免疫原又は免疫原をコードする核酸及び免疫増強剤を含み、前記増幅用量はペプチドエピトープを含み、前記エピトープはpAPCにより提示される、免疫原性組成物セット。
【請求項81】
前記免疫原をコードする核酸は免疫増強剤として機能する免疫刺激配列をさらに含む、請求項80記載のセット。
【請求項82】
前記免疫原はウイルス、又は免疫増強剤を含むか又は誘導する複製コンピテントベクターである、請求項80記載のセット。
【請求項83】
前記免疫原は細菌、細菌溶解物又は精製細胞壁構成成分であり、該細菌細胞壁構成成分は免疫増強剤として機能する、請求項80記載のセット。
【請求項84】
前記免疫増強剤はTLRリガンド、免疫刺激配列、CpG含有DNA、dsRNA、飲食作用パターン認識受容体(PRR)リガンド、LPS、キラヤサポニン、ツカレソール及び前炎症性サイトカインから成る群から選択される、請求項80記載のセット。
【請求項1】
免疫感作方法であって、
第一の抗原の少なくとも一部分を含むか又はコードする免疫原を含む第一の組成物を哺乳類に送達する工程、及び
増幅ペプチドを含む第二の組成物を哺乳類のリンパ系に直接投与する工程を包含し、前記ペプチドは前記第一の抗原のエピトープに対応し、前記第一の組成物及び前記第二の組成物は同一でない、免疫感作方法。
【請求項2】
前記第一の組成物は抗原又はその免疫原性断片をコードする核酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第一の組成物はpAPC中のエピトープを発現し得る核酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記核酸は原生動物、細菌、ウイルス又はウイルスベクターの一構成成分として送達される、請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
前記第一の組成物は免疫原性ポリペプチド及び免疫増強剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記免疫増強剤はサイトカインである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記免疫増強剤はトール様受容体リガンドである、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記アジュバントは免疫刺激配列を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記アジュバントはRNAを含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記免疫原性ポリペプチドは前記増幅ペプチドである、請求項5記載の方法。
【請求項11】
前記免疫原性ポリペプチドは前記第一の抗原である、請求項5記載の方法。
【請求項12】
前記免疫原性ポリペプチドは原生動物、細菌、ウイルス、ウイルスベクター又はウイルス様粒子の一構成成分として送達される、請求項5記載の方法。
【請求項13】
前記アジュバントは原生動物、細菌、ウイルス、ウイルスベクター又はウイルス様粒子の一構成成分として送達される、請求項5記載の方法。
【請求項14】
前記第二の組成物はアジュバント及び免疫増強剤を含まない、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記送達する工程は哺乳類のリンパ系への直接投与を包含する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
哺乳類のリンパ系への直接投与はリンパ節又はリンパ管への直接投与を包含する、請求項1又は請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記直接投与は2又はそれ以上のリンパ節又はリンパ管に対してである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
リンパ節は鼠径部、腋窩、頚部及び扁桃リンパ節から成る群から選択される、請求項1
6記載の方法。
【請求項19】
前記第一の抗原に対するエフェクターT細胞応答を得ることをさらに包含する、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記エフェクターT細胞応答は前炎症性サイトカインの産生を包含する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記サイトカインはγ−IFN又はTNFαである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記エフェクターT細胞応答はT細胞ケモカインの産生を包含する、請求項19記載の方法。
【請求項23】
前記ケモカインはRANTES又はMIP−1αである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記エピトープはハウスキーピングエピトープである、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記エピトープは免疫エピトープである、請求項1記載の方法。
【請求項26】
前記送達する工程又は前記投与する工程は1回のボーラス注射を包含する、請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記送達する工程又は前記投与する工程は反復のボーラス注射を包含する、請求項1記載の方法。
【請求項28】
前記送達する工程又は前記投与する工程は連続注入を包含する、請求項1記載の方法。
【請求項29】
前記注入は約8〜約7日間の持続期間を有する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記送達する工程の終了と前記投与する工程の開始の間に間隔を有し、該間隔は少なくとも約7日間である、請求項1記載の方法。
【請求項31】
前記間隔は約7〜約14日間である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記間隔は約75日を上回る、請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記第一の抗原は疾患関連抗原である、請求項1記載の方法。
【請求項34】
前記疾患関連抗原は腫瘍関連抗原である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記疾患関連抗原は病原体関連抗原である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
請求項35記載の方法を包含する、疾患の治療方法。
【請求項37】
前記第一の抗原は標的関連抗原である、請求項1記載の方法。
【請求項38】
前記標的は新生細胞である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記標的は病原体感染細胞である、請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記病原体感染細胞は原生動物、細菌、真菌、ウイルス又はプリオンにより感染されている、請求項37記載の方法。
【請求項41】
前記エフェクターT細胞応答はサイトカイン検定、エリスポット検定、細胞傷害性検定、四量体検定、DTH応答、臨床応答、腫瘍縮小、腫瘍クリアランス、腫瘍進行の抑制、病原体力価減少、病原体クリアランス及び疾患症候の寛解から成る群から選択される少なくとも1つの指標により検出される、請求項1記載の方法。
【請求項42】
前記エフェクターT細胞応答は細胞傷害性T細胞応答である、請求項19記載の方法。
【請求項43】
免疫感作方法であって、
第一の抗原又はその免疫原性断片をコードする核酸を含む第一の組成物を哺乳類に送達する工程、及び
ペプチドを含む第二の組成物を哺乳類のリンパ系に直接投与することを包含し、前記ペプチドは前記第一の抗原のエピトープに対応する、免疫感作方法。
【請求項44】
前記抗原に対するエフェクターT細胞応答を得ることをさらに包含する、請求項43記載の方法。
【請求項45】
存在する抗原特異的免疫応答の増大方法であって、
ペプチドを含む組成物を哺乳類のリンパ系に直接投与する工程であって、前記ペプチドは前記抗原のエピトープに対応し、前記組成物は前記免疫応答を誘導するために用いられていない工程、及び
抗原特異的免疫応答の増大を得る工程
を包含する、存在する抗原特異的免疫応答の増大方法。
【請求項46】
前記増大は前記応答を長時間持続させることを包含する、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記増大は静止T細胞を再活性化することを包含する、請求項45記載の方法。
【請求項48】
前記増大は抗原特異的T細胞の集団を拡大することを包含する、請求項45記載の方法。
【請求項49】
前記組成物は免疫増強剤を含まない、請求項45記載の方法。
【請求項50】
免疫感作方法であって、
第一の抗原の少なくとも一部分及び第二の抗原の少なくとも一部分を含むか又はコードする免疫原を含む第一の組成物を哺乳類に送達する工程、及び
第一のペプチドを含む第二の組成物、及び第二のペプチドを含む第三の組成物を哺乳類のリンパ系に直接投与する工程を包含し、前記第一のペプチドは前記第一の抗原のエピトープに対応し、前記第二のペプチドは前記第二の抗原のエピトープに対応し、前記第一の組成物は前記第二又は第三の組成物と同一でない、免疫感作方法。
【請求項51】
前記抗原に対するエフェクターT細胞応答を得ることをさらに包含する、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記第二及び第三の組成物はそれぞれ前記第一の及び第二のペプチドを含む、請求項50記載の方法。
【請求項53】
抗原特異的寛容原性又は調節性免疫応答を発生させる方法であって、
アジュバントを含まないペプチドを含む組成物を哺乳類のリンパ系に直接、定期的に投与する工程であって、前記ペプチドは前記抗原のエピトープに対応し、前記哺乳類はエピトープにナイーブである工程、
を包含する、抗原特異的寛容原性又は調節性免疫応答を発生させる方法。
【請求項54】
寛容原性又は調節性T細胞免疫応答を得ることをさらに包含する、請求項53記載の方法。
【請求項55】
前記免疫応答は炎症性障害の治療を補助する、請求項53記載の方法。
【請求項56】
前記炎症性障害はクラスII MHC拘束性免疫応答から生じる、請求項55記載の方法。
【請求項57】
前記免疫応答は免疫抑制性サイトカインの産生を包含する、請求項53記載の方法。
【請求項58】
前記サイトカインはIL−5、IL−10又はTGB−βである、請求項57記載の方法。
【請求項59】
免疫感作方法であって、
免疫原性用量系列を哺乳類のリンパ系に直接投与する工程を包含し、前記系列は少なくとも1惹起(entraining)用量及び少なくとも1増幅用量を含み、前記惹起用量は免疫原をコードする核酸を含み、前記増幅用量は任意のウイルス、ウイルスベクター又は複製−コンピテントベクターを含有しない、免疫感作方法。
【請求項60】
1〜6惹起用量を含む、請求項59記載の方法。
【請求項61】
複数惹起用量を投与することを包含し、前記用量は1〜約7日間の期間に亘って投与される、請求項59記載の方法。
【請求項62】
惹起用量、増幅用量、又は惹起及び増幅用量が多数対の注射で投与され、対の第一成員は、対の第二成員の約4日以内に投与され、異なる対の第一成員間の間隔は少なくとも約14日である、請求項59記載の方法。
【請求項63】
最終惹起用量投与及び第一の増幅用量投与間の間隔は約7〜約100日である、請求項62記載の方法。
【請求項64】
抗原特異的免疫応答を得ることをさらに包含する、請求項59記載の方法。
【請求項65】
1〜6惹起用量及び少なくとも1増幅用量を含む、哺乳類における免疫応答を誘導するための免疫原性組成物セットであって、前記惹起用量は免疫原をコードする核酸を含み、前記増幅用量はペプチドエピトープを含み、前記エピトープは核酸を発現するpAPCにより提示される、免疫原性組成物のセット。
【請求項66】
1用量はアジュバントをさらに含む、請求項65記載のセット。
【請求項67】
前記アジュバントはRNAである、請求項66記載のセット。
【請求項68】
前記惹起及び増幅用量がリンパ系への直接投与に適した担体中に存在する、請求項65記載のセット。
【請求項69】
前記惹起及び増幅用量はリンパ節への直接投与に適した担体中に存在する、請求項68記載のセット。
【請求項70】
前記核酸はプラスミドである、請求項65記載のセット。
【請求項71】
前記エピトープはクラスI HLAエピトープである、請求項65記載のセット。
【請求項72】
前記クラスI HLAは表1−4から選択される、請求項71記載のセット。
【請求項73】
前記HLAはHLA−A2である、請求項72記載のセット。
【請求項74】
前記免疫原はエピトープアレイを含む、請求項65記載のセット。
【請求項75】
前記エピトープアレイは遊離配列を含む、請求項74記載のセット。
【請求項76】
前記免疫原は本質的に標的関連抗原から成る、請求項65記載のセット。
【請求項77】
前記標的関連抗原は腫瘍関連抗原である、請求項76記載のセット。
【請求項78】
標的関連抗原は微生物抗原である、請求項76記載のセット。
【請求項79】
前記免疫原はエピトープクラスターを含む標的関連抗原の断片を含む、請求項65記載のセット。
【請求項80】
1〜6惹起用量及び少なくとも1増幅用量を含む、哺乳類におけるクラスI MHC拘束性免疫応答を誘導するための免疫原性組成物セットであって、前記惹起用量は免疫原又は免疫原をコードする核酸及び免疫増強剤を含み、前記増幅用量はペプチドエピトープを含み、前記エピトープはpAPCにより提示される、免疫原性組成物セット。
【請求項81】
前記免疫原をコードする核酸は免疫増強剤として機能する免疫刺激配列をさらに含む、請求項80記載のセット。
【請求項82】
前記免疫原はウイルス、又は免疫増強剤を含むか又は誘導する複製コンピテントベクターである、請求項80記載のセット。
【請求項83】
前記免疫原は細菌、細菌溶解物又は精製細胞壁構成成分であり、該細菌細胞壁構成成分は免疫増強剤として機能する、請求項80記載のセット。
【請求項84】
前記免疫増強剤はTLRリガンド、免疫刺激配列、CpG含有DNA、dsRNA、飲食作用パターン認識受容体(PRR)リガンド、LPS、キラヤサポニン、ツカレソール及び前炎症性サイトカインから成る群から選択される、請求項80記載のセット。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2007−523863(P2007−523863A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517407(P2006−517407)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/019546
【国際公開番号】WO2005/002621
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(503208552)マンカインド コーポレイション (50)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/019546
【国際公開番号】WO2005/002621
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(503208552)マンカインド コーポレイション (50)
【Fターム(参考)】
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