説明

事前印刷済みカラー画素を選択的に露出および隠蔽することによる物理媒体の個人化

透明と不透明との間で変化させ、それによって感光子層または印刷された基板から不透明色を選択的に露出するために、カード上の感光子層を選択的に露光させることによってカラー画像を形成することによる、IDカードの個人化。その他のシステムおよび方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に、保安文書の個人化に関し、より具体的には、感光子材料の1つ以上の層を光子に露光することによって着色、黒色、および白色画素を選択的に露出することにより、文書上に画像を形成することによる個人化に関する。
【背景技術】
【0002】
物理媒体の多くの形態は、大量生産およびエンドユーザ個人化の両方を必要とする。たとえば、IDカードは、非常に多くの人口に対して製造される必要がある一方で、各個別のカードは、そのカードを携帯する人物を一意的に特定しなければならない。機器コストは非常に多くの生産運転にわたって償却されてもよいので、比較的高額な機器において大量生産段階が実行されてもよい。その一方で、エンドユーザ個人化は、好ましくは比較的少量で客先において実行されてもよく、このためはるかに低い機器コストを必要とする。
【0003】
多くのIDカードにとって、カードの特徴がデジタル記録されていようが物理的であろうが、カード上の全ての情報の安全性は、最も重要である。安全性は、媒体が物理的に改ざんされたか否かを明らかにする何らかの特徴と結びつけられている場合もある。IDカードを改ざんしようとする試みを阻止する機構の1つは、積層加工である。媒体の物理的な初期状態を破壊することなく剥離されることが不可能な積層内に物理媒体を固定することは、媒体の安全性完全性を保護するのに非常に役立つ。
【0004】
個人をID対象物と結びつけるための非常に重要な機構の1つは、ID対象物に人物の写真を掲載することである。運転免許証、パスポート、IDカード、社員バッジなどの全ては、通常はその対象物が関連づけられる個人の画像を担持している。
【0005】
レーザー刻印は、写真を用いて発行後のIDカードを個人化する先行技術の1つの手法を提供する。図1は、このような先行技術によるIDカード50を形成する様々な層の分解斜視図である。IDカード50は、レーザー刻印可能な透明ポリカーボネート層57を含んでもよい。カード上の画像領域を選択的にレーザーに露光することにより、ポリカーボネート層57の特定の箇所が黒くなり、それによってグレースケール画像を形成してもよい。
【0006】
従来、ポリカーボネート(PC)ID製品は、レーザー刻印技術を用いて個人化されてきた。これは、特定のポリカーボネート層の内部の炭素粒子を粒子の周りのポリカーボネートが黒くなる程度まで加熱する、レーザービームに基づいている。粒子は炭素以外のものとなるように選択されることも可能であるが、たとえば写真を形成するために望ましいコントラストおよびグレーレベル数を作り出すのは、ポリカーボネートの固有特性である。グレートーンは、レーザー出力および文書を走査する速度によって制御される。この技術は、ID市場の標準である。しかしながら、この手法の限界は、このやり方ではカラー画像が形成され得ないことである。
【0007】
特定の市場および用途において、カラー画像を備えるIDカードを有することが望ましい。
【0008】
従来、カラー写真は、染料拡散熱転写(D2T2)技術を用いて、IDカードに掲載されてきたが、これはPVCおよびPET製品に利用可能であった。近年では、D2T2技術の発達により、ポリカーボネート製カードもカラー個人化することが可能になった。この技術は平滑な印刷表面を必要とし、印刷画像は被覆膜で遮蔽されなければならず、これはホログラムタイプであってもよい。Gemalto S/A(Meudon,France)は、2007年秋より市場で入手可能な、デスクトップ型D2T2ソリューションを開発した。
【0009】
表面印刷カラー個人化の欠点は、図1に示されるようなポリカーボネート層構造の内部に存在するレーザー刻印写真およびデータほど安全ではないことである。
【0010】
別の代替先行技術において、カラー画像は、製品が仕上げられる前にデジタル印刷を用いて形成されてもよい。これは、IDカード上に高画質画像を掲載することを可能にする。とはいえこの技術は、多くの欠点を有する:個人化およびカード本体製造は同じ場所でなされなければならず、これはさらに一般的には、行政当局が市民登録データを境界外に送ることを好まないため文書発行地内である必要があり、カラー印刷写真はPC層が互いに融合するのを防止し、シート上のカードのいずれかがさらなる生産ステップの間に汚れた場合には、個人化されたカードがプロセスの最初から再製造されなければならず、非常に複雑な製造プロセスを招く。
【0011】
2008年5月6日付けのLutzらの米国特許第7,368,217号明細書、「Multilayer Image,Particularly a Multicolor Image」は、カラー色素が仕上げられたシートに印刷されて、各色が感色性レーザーを用いて所望のトーンまで脱色される技術を記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記より、安価な客先の機器を用いて個人化段階の間に安全な改ざん防止カラー画像を形成する機構を用いてIDカードなどに画像を掲載する機構を提供するための、改善された方法の需要が存在することは、明らかであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第7,368,217号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004259975号明細書
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】発行後のカードの物理的外観のある程度の個人化を可能にする、先行技術によるIDカードの分解斜視図である。
【図2】本明細書に記載の技術の一実施形態によるIDカードの上面図である。
【図3a】図2に示されるIDカードの代替実施形態の断面図である。
【図3b】図2に示されるIDカードの代替実施形態の断面図である。
【図3c】図2に示されるIDカードの代替実施形態の断面図である。
【図4】一実施形態において、図2および図3に示されるカードの1つの層の特定の箇所を透明から不透明に変化させる目的のために依存される化学反応を示す。
【図5】印刷画素格子の一実施形態の図である。
【図6a】印刷画素格子の代替実施形態の図である。
【図6b】印刷画素格子の代替実施形態の図である。
【図7】図解目的のために提示された例示的写真画像である。
【図8a】図7の写真画像の一部分の拡大図である。
【図8b】図7の画像の1つの画素を表示するために使用される1つの印刷画素のさらなる拡大図である。
【図9a】図3に提示された様々な層が1つの印刷画素に特有の色を生成するためにどのように操作されるかを示す図である。
【図9b】図3に提示された様々な層が1つの印刷画素に特有の色を生成するためにどのように操作されるかを示す図である。
【図10】印刷画素格子および感光子層を有する図2および図3に示されるIDカード上の画像を形成するように個人化機器を制御するために使用されてもよいマスクを形成するためのプロセスを示す、フローチャートである。
【図11】IDカード上の実際の画像を形成するために、図10のプロセスから形成されたマスクを使用するプロセスを示す、フローチャートである。
【図12】IDカード上の画像を形成するために使用されてもよい個人化機器の、第一の実施形態を示す図である。
【図13】IDカード上の画像を形成するために使用されてもよい個人化機器の、第二の実施形態を示す図である。
【図14】図12または図13などの機器を用いて図9から図11のプロセスにしたがって図2および図3のIDカードを個人化するために修正された、IDカードライフサイクルのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図中、類似の構成要素および/または特徴は、同じ参照符号を有してもよい。さらに、同じタイプの様々な構成要素は、ダッシュおよび類似構成要素の間で識別する第二符号を参照符号の後に付けることによって、あるいは文字またはプライム記号(’)またはダブルプライム記号(”)を参照符号に添付することによって、識別されてもよい。明細書において第一参照符号のみが使用される場合、その記述は、第二参照符号、添付文字、またはプライム記号とは関係なく、同じ第一参照符号を有する類似構成要素のうちのいずれにも適用可能である。
【0016】
以下の詳細な説明において、例示により、本発明が実践される特定の実施形態を示す添付図面が参照される。これらの実施形態は、当業者が本発明を実践することができるように十分詳細に記載される。異なっていたとしても、本発明の様々な実施形態は必ずしも互いに排他的ではないことは、理解されるべきである。たとえば、一実施形態と関連して本明細書に記載される特定の特徴、構造、または特性は、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、別の実施形態において実現されてもよい。加えて、開示される各実施形態の範囲内の個別要素の位置または配置は、本発明の精神および範囲を逸脱することなく変更されてもよいことは、理解されるべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で受け取られるべきではなく、本発明の範囲は、請求項が権利を得ることができる全範囲の同等物とともに、適切に解釈された、添付請求項によってのみ定義される。図中、類似の参照番号は、いくつかの図面にわたって同じかまたは類似の機能を指す。
【0017】
本発明の一実施形態は、それによってIDカード、キャッシュカード、スマートカード、パスポート、バリューペーパー(value paper)などの物理媒体が、製造後環境において個人化されてもよい機構を提供する。この技術は、積層が適用された後に、積層内のそのような物品上に画像を掲載するために使用されてもよい。代替実施形態において、個人化の後にIDカードに保護積層が追加される。このため、物品、たとえばスマートカードは、工場設定において大量生産方式で製造されてもよく、客先において比較的安価で簡単な機器上で個人化されてもよい。この技術は、改ざん防止された画像を用いて、スマートカード、キャッシュカード、IDカードなどの物品をこうして個人化するための機構を提供する。ここで、わかりやすい説明を提供するために、IDカードという用語は、このような物理媒体のいくつかが厳密な意味において「カード」ではなくても、本明細書記載の技術が適用される全種類の物理媒体を指すために使用される。IDカードという用語の適用を限定することなく、スマートカード(接触および非接触スマートカードのいずれも)、運転免許証、パスポート、政府発行IDカード、キャッシュカード、社員IDカード、セキュリティ文書、登記簿などの個人用バリューペーパー、所有権証明などを含む、ただしこれらに限定されない、全てのこのような代替案を含むように意図される。
【0018】
典型的なスマートカードライフサイクルにおいて、カードはまず、工場設定において製造される。製造ステップは、通常はクレジットカードの形状のプラスチック基板上に集積回路モジュールおよびコネクタを配置するステップを含む。集積回路モジュールは、システムプログラムおよび特定の標準アプリケーションを含んでもよい。カードはまた、たとえば顧客のロゴなど、何らかの図形がインプリントされてもよい。
【0019】
次に、カードは客先に納品される。
【0020】
カードのエンドユーザであるその顧客に安全なIDカードを発行したいと望む客先、たとえば政府機関、企業、または金融機関は、次にカードを個人化する。個人化、業界用語で「パーソナル化(perso)」は、顧客がそのアプリケーションプログラムをカードに実装し、エンドユーザ固有情報をカードに実装することを含む。パーソナル化は、たとえば名前または写真をカードに印刷することによって、各エンドユーザ向けにカードの物理的外観を個人化することを含む。
【0021】
一旦カードが個人化されてしまうと、カードはエンドユーザに、たとえば社員または顧客のクライアントに、ステップ40で発行される。
【0022】
その他のIDカードも類似のライフサイクルを有する。
【0023】
図1は、たとえば顧客による発行後のカードの物理的外観のある程度の個人化を可能にする、先行技術によるIDカード50の分解斜視図である。このようなカード50は、たとえば以下の層を有する:
透明ポリカーボネート(PC)層59
レーザー刻印可能な透明PC層57
乳白色PCコア55
レーザー刻印可能な透明PC層53
透明PC層51
【0024】
偽造防止対策として、最上部PC層59は、ある程度のエンボス加工67および可変レーザー画像/マルチレーザー画像(CLI/MLI)69を含んでもよい。セキュリティをさらに強化するために、カード50は、DOVID65、すなわちホログラム、キネグラム、またはその他の安全な画像などの回折光可変画像素子、およびSealy’s Window63(改ざんされると不透明になる透明窓がカードに設けられている、Gemalto S.A.(Meudon,France)により提供されるセキュリティ機能)などの特徴を含んでもよい。カード50は、非接触チップおよびアンテナシステム61も収容してもよい。
【0025】
個人化の間、レーザー刻印可能な透明層57および53には、グレースケール画像および識別文字列が提供されてもよい。
【0026】
図2は、本明細書に記載される技術の一実施形態によるIDカード100の上面図である。簡潔に言うと、IDカード100には、基板(たとえばPCコア)と積層との間に位置する材料のいくつかの層で構成された画像領域205が設けられている。これら画像領域層の最下層は、異なる色を有する複数の明確に配置された領域からなる印刷画素格子(図3から図8参照)である。印刷画素格子は、感光子材料の透明層および不透明層によって被覆されている。透明層は選択的にある程度の不透明黒色に変化させられてもよく、不透明層は選択的に透明に変化させられてもよい。このように、感光子層の選択的操作により、画像領域205のいずれの箇所も、黒色(または下層格子サブサブピクセルの濃い色合い)、または白色など、印刷画素格子からの特定の色を表示するようになっていてもよい。画像領域のアドレス可能な箇所(以下に説明されるように、アドレス可能な箇所は本明細書においてサブサブピクセルと称される)の感光子層を選択的に操作することによって、画像が形成されてもよい。印刷画素格子および感光子層の構造、ならびに画像を形成するためにこれらの層を操作するプロセスは、以下により詳細に説明される。
【0027】
IDカード100は、企業ロゴまたはその他の図形が印刷されていてもよい。以下により詳細に記載される固有のプロセスおよび製造を通じて、IDカード100は、画像領域205に印刷された、たとえば対象エンドユーザの写真など、カラー画像203を含む。IDカード100は、印刷された名前207を用いてさらに個人化されていてもよい。印刷された名前207は、画像203をIDカード100に適用するための本明細書記載のものと同じ技術を用いてカードに適用されてもよい。
【0028】
図3aは、線a−aに沿った図2のIDカード100の断面図である。IDカード100は基板107からなる。基板107は、たとえば、ポリカーボネートポリ塩化ビニル(PVC)、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ABSと組み合わせられたPVC、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PETG、およびポリカーボネート(PC)から選択されるプラスチック材料で構成されてもよい。図1の先行技術によるIDカード50と同様に、IDカード100は、たとえばレーザー刻印可能なPC層53および59ならびに透明PC層51および59など、追加層を含んでもよい。
【0029】
印刷画素格子111は、画像領域205に対応する基板の領域内で、基板107の1つの表面上に位置する(基板107は本明細書において、たとえば不透明PC層55と類似の、透明PC層53または57、あるいは代替材料で構成された内層など、カード100の内層のいずれかを指すと考えられる)。たとえば図4から図8に関連して以下により詳細に記載される、印刷画素格子111は、従来のオフセット印刷を用いて、またはカラーパターンを基板上に正確に配置するためのその他の技術を用いて、基板上に印刷されてもよい。
【0030】
印刷画素格子111は、透明感光子層105によって被覆されている。透明感光子層105は、特定の波長および強度の光子に露光されると透明からある程度の不透明に変化する材料から作られる。適切な材料は、炭素ドープポリカーボネートを含む。従来、ポリカーボネート(PC)製ID製品は、レーザー刻印技術を用いて個人化されてきた。この個人化は、粒子の周りのポリカーボネートが黒くなる程度まで特定のポリカーボネート層の内部の炭素粒子を加熱するレーザービームに基づく。粒子は炭素以外の材料であってもよいが、写真画像の形成を可能にするのに望ましいコントラストおよびグレーレベル数を形成するのは、ポリカーボネートの固有特性である。グレートーンは、レーザー出力、および画像領域205を走査する速度によって制御される。このため、炭素ドープ透明PC層は、選択箇所をNd−YAGレーザーまたはファイバーレーザーに露光させることによって、暗度スケールに沿って選択的に不透明層に変化させられてもよい。Nd−YAGレーザーは、赤外光スペクトルの1064ナノメートルの波長の光を放射する。利用可能なその他のNd−YAGレーザー波長は、940、1120、1320、および1440ナノメートルを含む。これらの波長は全て、10から50ワットの範囲内の強度を伴って透明PC層を不透明黒色または部分的不透明にするのに適している。典型的な用途において、Nd−YAGレーザーは、およそ4秒の間だけ画像領域上を(以下により詳細に説明されるやり方で)走査され、必要に応じて特定の箇所を露光する。透明PC層を不透明または部分的に不透明にするのに適しているファイバーレーザーは、600から2100ナノメートルの範囲の波長で動作する。いくつかの特定のレーザーおよび波長が上記で説明されたが、透明PC層の箇所を不透明に変化させる、たとえば紫外線レーザーなどのいずれの代替光子源も、その代わりに採用されてよい。
【0031】
透明感光子層105は、特定の波長および強度の光子への露光によって透明層に変化させられてもよい不透明層103で被覆されている。不透明−透明感光子層に適した材料は、たとえば熱転写または染料昇華を通じて透明−不透明層105の上に置かれてもよい、白色可漂白インクを含む。例として、Siegwerk Druckfarben AG(Siegburg, Germany)によるSICURA CARD 110N WA (71−010159−3−1180)(商品コード033250)、Datacard Group(Minnetonka,Minnesota,USA)または大日本印刷株式会社(東京、日本)より入手可能な染料拡散熱転写(D2T2)インクを含む。このような材料は、アドレス可能な箇所(サブサブピクセル)ごとに数ミリ秒だけ10から50ワットの範囲の強度を伴って、たとえば335ナノメートルまたは532ナノメートルの波長の紫外線レーザーによって特定箇所を露光することにより、選択的に変化させられてもよい。不透明−透明層103のサブサブピクセルを変化させるために、レーザーは画像領域上を連続的に走査され、インクの漂白または蒸発によって不透明−透明層103内で乳白色から透明に変化させられることになるこれらのサブサブピクセルを露光する。代替実施形態において、不透明−透明層103のインクを除去する同じ紫外線レーザー波長は、紫外線レーザーから利用可能な残留出力があるときに、不透明−透明層103の除去されたサブサブピクセルの下の炭素ドープ透明−不透明層105を変化させるためにも、使用されてよい。
【0032】
代替実施形態において、不透明−透明層103は、化学的写真処理を必要としない乾式写真プロセスの影響を受けやすい、感光子層である。その一例は、酸化チタンを用いるスピロピランフォトクロム(PVCを用いて製造するために使用される材料と似ている)である。このプロセスは、スピロピランと金属イオンとの間の着色錯体の光化学的挙動に基づいている。図4は、化学反応を示す。閉環構造であるスピロピランSP2 401が紫外光に曝されると、着色された開環構造403に変化する。SP2 401の適切な代替物は、インドリンスピロピラン(3’、3’−ジメチル−1−イソプロピル−8−メトキシ−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2−インドリン])である。
【0033】
図3bに示される代替実施形態において、不透明−透明層103は、ドープ有機半導体層106で補強されている。ドープ有機半導体層106は、不透明−透明層103が不透明から透明に変化する速度を向上させるための増幅器として有用である。ドープ有機半導体層106の例示的材料は、ポリビニルカルバゾールおよびポリチオフェンを含む。ポリビニルカルバゾール層106は、50立方センチメートルのジクロロメタン中で2.5グラムのポリビニルカルバゾールを蒸発させることによって設けられてもよい。半導体層106は好ましくは、不透明−透明層103内のフォトクロミック効果に必要とされるエネルギーレベルに匹敵するようにドープされる。
【0034】
スピロピランベースの不透明−透明層103のフォトクロミック効果は、可視または紫外光への露光によって実現されてもよい。好適な強度は、10から300秒の持続時間にわたって30から300ミリメートルの距離で、50から200ワットの範囲である。
【0035】
乾式カラー印刷プロセス向けの乳剤の調製の原理は、Robillard教授によって特許取得されている(米国特許出願公開第2004259975号明細書)。実現可能性調査の結果は、J.Robillardらの、Optical Materials,2003,vol.24,pp.491〜495に記載されている。プロセスは、画像を形成および定着させるために、特に紫外または可視範囲の光を必要とする写真乳剤を包含する。乳剤は、着色されたフォトクロミック色素および増幅システムを含み、周知の銀含有従来材料に匹敵する感光性を呈する。一般的に、このプロセスはいずれの種類の担体(紙、組織、ポリマー膜)にも適用可能である。
【0036】
最後に、IDカード100は、上部積層109aおよび下部積層109bで被覆される。積層109は、画像領域205内に形成された画像203を物理的操作から保護するという点において、安全性を提供する。上部積層109aは、透明−不透明層105および不透明−透明層103を変化させるために使用される光子波長に対して透過性でなければならない。さらに、積層温度は、たとえば摂氏125から180度の範囲内など、透明−不透明層105または不透明−透明層103を変化させないように十分に低くなければならない。適切な材料は、PVC、PVC−ABS、PET、PETG、およびPCを含む。
【0037】
図3cは、個人化段階の間にカード上に形成されるカラー画像を用いて個人化されてもよいIDカード100”の、さらに別の代替実施形態の断面図である。感光子印刷画素格子111”は、次に乳白色PC層107”の上に位置する炭素ドープPC層105の上に位置している。印刷画素格子111”はこの場合、適切な波長および強度の光子への露光によって選択的に除去されてもよい、複数のサブサブピクセルからなる。画像領域205は、着色されたサブサブピクセルを感光子画素格子111”から選択的に除去することによって、ならびにその選択部分を透明から黒色に変化させる光子エネルギーに炭素ドープPC層105を選択的に曝すことによって、カラー画像203でカスタマイズされてもよい。
【0038】
カードライフサイクルの生産段階の間にカード全体を用意することが望ましいが、本明細書に記載される技術を適用するいくつかの実施形態では、上部積層109aが不透明−透明層103または111”からの染料の蒸発を妨げる可能性があるので、これは実用的ではない。したがって、感光子層のうちの1つの変化が、たとえば不透明から透明など、1つの状態から別の状態へ変化するプロセスの間に蒸発または何らかの形態の材料除去を必要とする場合、上部積層109aは、たとえば画像領域205が本明細書に記載されるように個人化された後など、個人化段階の間に追加されてもよい。このような積層加工は、大日本印刷株式会社(東京、日本)のDNP CL−500D積層媒体、またはその他の適切な積層技術を用いて実行されてもよい。
【0039】
ここで印刷画素格子111の構造を検討するが、その小部分は図5に示されている。印刷画素格子111は、印刷画素501のアレイで構成されている。印刷画素501は、画像のビットマップの1画素、たとえばbmp形式のファイルにおける1つの画素に対応する。図5に示される印刷画素格子111の小部分は、印刷画素501の4×7の格子を含んでいる。現実の印刷画素格子111では、有意な画像を形成するために、各次元においてはるかに多くの印刷画素を有する格子が必要であろう。各印刷画素501は、各々が、たとえば例に示されるように緑色、青色、および赤色など、固有の色に各々対応する3つの矩形のサブピクセル503a、503b、および503cを含む。様々な色の組み合わせを形成することができるようにすることを目的として、各サブピクセル503は、複数のサブサブピクセル505にさらに分割されている。図5の例では、各サブピクセル503は、サブサブピクセル505の2×6の格子で構成されている。
【0040】
印刷画素という用語は本明細書において、印刷画素格子内に印刷されたデジタル画像における、そして各々が印刷画素の部分を形成する複数のサブピクセルを有する、画素の同等物、ならびに画像領域205を被覆する感光子層中の対応する領域を指すために、使用される。サブピクセルは、印刷画素の単色領域である。サブサブピクセルは、サブピクセル中の単一のアドレス可能な場所である。したがって、サブピクセルは1つ以上のサブサブピクセルで構成されている。サブサブピクセルは、印刷画素格子またはいずれかの感光子層のうちの一方から、その露出色を得てもよい。
【0041】
図6aおよびbは、六角形のサブピクセル503’で構成されている印刷画素501’で構成された代替印刷画素格子111’の図である。図6bに示されるように、各六角形サブピクセル503’は、接続されると六角形のサブピクセル503’を形成する6つの三角形サブサブピクセル505’で構成されている。理解されるように、図5、図6aおよびbは2つの異なる印刷画素構造を示しているが、より多くの可能な構造が存在する。このような代替案は全て、本明細書に例示される印刷画素構造の同等物と見なされるべきである。
【0042】
図7は、モデルのカラー写真701であり、図解例としてここに提示される。モデルの右目の左下4分の1(703)を検討する(左右は見る人の視点からである)。モデルの目のこの部分703は、図8においてより拡大されて示されている。画像701は、画像を形成する印刷画素501を作り出す各サブサブピクセル505のため、透明−不透明層105、不透明−透明層103から、および印刷画素格子111から、特定の色を選択的に着色することによって、形成される。眼の部分703の左下印刷画素501”を検討する。左下印刷画素501”は、モデルの下まぶた上にあり、ピンクがかった赤の配色を有する。この配色を実現するために、赤色サブピクセル503c”の大部分が、下層の印刷画素格子の12個のサブサブピクセル505のうちの8つによって露出される。青色サブサブピクセルは乳白色層によって完全に隠されており、緑色サブサブピクセルのほとんどは黒色層によって隠されており、それによって印刷画素501”に中間明度および主に赤色の配色を付与する。
【0043】
図9aは、黒色印刷画素501a、白色印刷画素501b、赤色印刷画素501c、および青色印刷画素501dの各々の断面を表示することにより、印刷画素501にとって望ましい色を生成するための、不透明−透明層103および透明−不透明層105の操作を示す。図9に示される各印刷画素501aから501dについて、各縦列は1つのサブピクセル503を表す。サブサブピクセル505は、図9には示されていない。ベタ黒色印刷画素501aを生成するためには、不透明−透明層103は、印刷画素の不透明−透明層103を乳白色(W)から透明(T)に変化させるのに必要な状態変化光に印刷画素501aを曝すことによって、透明(T)にされる。ベタ白色印刷画素501bを生成するためには、不透明−透明層103の初期状態は白色なので、印刷画素501bはまったく照射されない。ベタ白色印刷画素501bについては、透明−不透明層105は、乳白色層103によって塞がれるので、いずれの値を有してもよい。しかしながら、通常は、これは透明(T)のままである。赤色印刷画素501cを生成するためには、不透明−透明層103および透明−不透明層105の両方が、赤色(R)サブピクセル上の領域でその透明状態(T)で構成される。この効果は、透明−不透明層105を元の状態にしたままで不透明−透明層103のための状態変更光子に不透明−透明層103を曝露することによって、生じる。緑色または青色のいずれかのサブピクセルの不透明−透明層103は透明(T)に変化させられてもよく、透明−不透明層105上の対応する箇所は、黒色サブピクセルを露出するために黒色(K)に変化させられてもよい。無着色サブピクセルまたはサブサブピクセルのために黒色および白色サブピクセルまたはサブサブピクセルを組み合わせることは、画素501の明度を調節するために使用されてもよい。青色画素501dは、赤色画素501cと同様に生成される。
【0044】
図9bは、図3cに示される代替IDカード100”の感光子印刷画素層111”および炭素ドープ透明層の操作を示す。黒色画素501a”を作成するためには、感光子印刷画素層111”の箇所の全てのサブピクセル503の除去可能インクが除去される(−)。白色不透明−透明層103と同様に、紫外線レーザー露光で特定のインクが漂白されて、除去されてもよい。同じインクは、透明−不透明層105を全て黒色(K)に変化させるために使用されてもよいYAGレーザーを透過させてもよく、こうして画素501a”を黒色にする。画素501b”を白色のままにするためには、印刷画素111”層の色素沈着が除去される(−)。しかしながら、透明−不透明層105はレーザーに露光されず、したがって透明(T)のままであり、それによって画素501b”を白色のままにする。赤色については、緑色および青色サブピクセルの色素沈着が、紫外線レーザーへの露光によって除去され(−)、その一方で、それぞれ赤色(R)サブピクセルに対応する透明−不透明層105は、より暗い背景を提供するために、ある色合いの灰色に変化させられてもよい。図9bはいくつかの可能な組み合わせを示すのみであることは、特筆すべきである。隣り合うサブピクセルを黒色と白色の間で、ならびに下層のグレースケール値で変化させることにより、多くの異なる効果が実現されるだろう。
【0045】
図9はサブピクセルレベルでの感光子層の操作を示しているが、実際の印刷画素501が多くのサブサブピクセル505で構成されていること、ならびに多くの色および明度の多様性が、所定の印刷画素501に望ましい配色および明度を生成するのに適切な組み合わせで着色、黒色、および白色サブサブピクセルを選択的に露出することによって生成されてもよいことは、特筆すべきである。
【0046】
ここで、透明−不透明層105および不透明−透明層103のマスクの計算を検討する。どのサブサブピクセル505が乳白色のまま残されるべきか、不透明黒色に変化させられるべきか、または印刷画素格子111から下地色を露出させるべきかの判断は、感光子層の各々のマスクによって制御される。これらのマスクは、たとえば、画像領域205の各サブサブピクセルのオン/オフ値、あるいは特定の感光子層が各サブサブピクセルに提供すべき不透明性のレベルを示す値を、有してもよい。図10は、これらのマスクを計算するための一実施形態のステップを示すフローチャートである。マスクを作成するためのその他の可能なアルゴリズムもあるので、本記述は限定的と見なされるべきではない。
【0047】
プロセス110は、たとえばbmp形式のデジタル画像121を、入力として受け付ける。Bmp形式の画像ファイル121は、特定のRGB(赤色−緑色−青色)値の画像中の各画素のビットマップである。プロセス110は画像ファイル121を、露光マスク白125aおよび露光マスク黒125bに変換する。これらの露光マスク125は、透明−不透明層105および不透明−透明層103のサブサブピクセルの露出を制御するためのコントローラ355(図12および図13)への入力として、提供される。マスク125の設計の目的は、デジタル画像ファイル121の画像と類似している画像を形成することである。
【0048】
ここで、印刷画素格子111の各印刷画素501に対するソース画像121の各画素の間には1対1対応があると考えられる。あるいは、事前処理変換アルゴリズムが適用可能である。さらに、プロセス110は、図5に示されるように、それぞれ緑色、青色、および赤色の3つの矩形サブピクセル503を備える正方形の印刷画素501に関して記載される。代替実施形態において、その他の画素およびサブピクセルの形状および色も可能である。たとえば、一代替案において、印刷画素パターンは、感光子層103または105のうちの1つに取って代わってもよい、黒色または白色のいずれか(または両方)のサブピクセルを含む。さらに別の代替案では、印刷画素パターンは、表示色のさらなる多様性を可能にするために、シアン、マゼンタ、およびイエローなどの色を含む。このような代替案について、プロセス110は、印刷画素パターンおよび被覆感光子層におけるこのような異なる構造に適合するために修正されるだろう。
【0049】
ある観点から、プロセス110の目的は、結果的に得られる画像203の各印刷画素について、各色のサブピクセル503のうちのどの程度が視認可能であるべきかを判断することである。第二の目的は、透明−不透明層105の不透明性の判定であるが、これはこの層が様々な度合いの不透明性を取り得るからである。第三に、プロセス110は、サブサブピクセルを完全に隠す黒色と白色との間の比率、ならびにこのようなサブサブピクセルの箇所を判断する。
【0050】
各ソース画素の明度は、以下の式によって、ステップ127で決定される:
【数1】

ここでred、green、およびblueはソース画像の数値成分であり、ゼロから最大値(255)までの範囲の値を有する。結果的に得られる明度値は、したがって同じ範囲(0〜最大値(255))である。
【0051】
次に、whitelevel調整RGB値が、ステップ129で計算される。この計算は、白レベルの計算から始まる:
【数2】

調整RGB値が以下によって計算される:
【数3】

ここでred、green、およびblueは、ソース画像中のRGB値である。
【0052】
次に、ステップ131において以下のように、色相強調が計算され、調整RGB値が色相強調に合わせてさらに調整される:
【数4】

この計算は、各印刷画素501について、完全に露出されるべき各赤色、緑色、および青色サブピクセルの分量を生成する。分量は、各色のサブピクセルに利用可能なサブサブピクセルの数と一致するように変換される:
【数5】

ここでtotalSubSubはサブピクセル503あたりのサブサブピクセル505の数であり、numSubSubRED、numSubSubGREEN、およびnumSubSubBLUEの各々は、それぞれ赤色、緑色、および青色の対応する部分でサブピクセル503を被覆するのに必要となるサブサブピクセルの数に対応する浮動小数点値である。
【0053】
次に、各印刷画素が、ステップ133において以下のように明度調整される:
【数6】

ここでbrightnessはステップ127で計算されたbrightnessである。
【0054】
したがって、ステップ133は、以下に記載される計算において使用されるために完全に不透明黒色でなければならない、各印刷画素501の全体部分を計算する。
【0055】
各色の露出されたサブサブピクセルの数、ならびに黒色被覆のサブサブピクセルの数はいずれも、計算中の量子化誤差の犠牲である。本明細書記載のサブピクセルあたり12個のサブサブピクセルの場合では、この量子化誤差は、見る人の目には、画像に対して容易に知覚可能な効果を有しておらず、量子化誤差は無視されてもよい。印刷画素がサブピクセルあたりより少ないサブサブピクセルで設計されている場合には、これらの量子化誤差は、形成された画質においてより知覚しやすくなる。人間の目は、色誤差よりも明度誤差の方がはるかに感知しやすいので、明度量子化誤差を修正することが優先される。透明−黒色感光層105の調節機能は、補正の機会を提供する。
【0056】
3色(赤色、緑色、青色)の各々に5つのサブサブピクセルを備える印刷画素、ならびに単一の白色サブサブピクセル(WSSP)で構成された第四の(そしてはるかに小さい)白色サブピクセルを、検討する。このような印刷画素は、合計4×4のサブサブピクセルを備える正方形の印刷画素である。この単一の白色サブピクセル上の黒色被覆を変化させることは、明度量子化誤差を補償する機構を提供する。この補償は、アルゴリズムの開始時において、(所望の画素全体の色が純白であっても)この単一の白色サブサブピクセルを黒色であると見なすことによって、実行されてもよい。そして明度量子化誤差が発生すると、この白色サブサブピクセルWSSPは、量子化誤差を克服するために、所望のグレースケールレベルまで暗くされてもよい(さらなる明度が望ましい場合には、代わりに追加黒色被覆サブサブピクセルが白色被覆に割り当てられ、するとその単一の白色サブサブピクセルWSSPを暗くすることによって違いができる)。以下は、サブピクセルあたり5つの着色されたサブサブピクセルおよび1つの白色サブサブピクセルを有する印刷画素構成の順位付けリスト用のサンプルコードである:
【数7】



【0057】
この時点で、各サブピクセル503についていくつの各サブサブピクセル505が露出されるべきか、およびいくつのサブサブピクセルが黒色になるべきかがわかるので、白色サブピクセルの数はその残りである:
【数8】

【0058】
次に、不透明(白色または黒色)になるべきサブサブピクセルが、ステップ135において、印刷画素501を構成するサブサブピクセル505の格子上にマッピングされる。印刷画素501の周囲に位置する不透明性を有することが、優先される。この結果は、不透明サブサブピクセルにされる相対的優先順位に応じてサブサブピクセルを順序づけることによって、実現される。不透明サブサブピクセルは、全ての不透明サブサブピクセルが特定箇所に割り当てられるまで、この優先順位にしたがって配置される。特定のサブサブピクセルに不透明性を割り当てることで、そのサブサブピクセルが属するサブピクセルが、印刷画素格子層111から露出されたサブピクセルをあまりにも少なく有する場合、不透明性は、不透明性優先順位における次のサブサブピクセルに割り当てられる。
【0059】
この時点で、不透明性マップ123は計算されている。
【0060】
次に、黒色被覆マップが計算される。この計算は、ステップ137において、明度位置決め優先度を決定することから始まる。明度境界の明確な表示を実現するため、ソース画像121は、明確な明度境界を特定するため、および各印刷画素501の明度位置決め優先度を設定するために分析される;明度境界上にない印刷画素については、明度位置決め優先度は割り当てられない。
【0061】
ソース画像121の各画素について、最大brightnessContrastの方向および大きさは、明度位置決め優先度が決定されている画素の明度を無視して隣り合う画素を比較することによって、特定される。
【0062】
このように、明度コントラストは、上下、左右、左上−右下、右上−左下の対に関して決定される。一例として、上下対の明度コントラストは:
【数9】

【0063】
これら隣り合う画素対のいずれかの最大brightnessContrastが、たとえば96/255など、所定の閾値未満である場合、brightnessPositioningContrastはいずれに対しても設定されない。最大brightnessContrastが閾値以上である場合には、最大brightnessContrastを有する対の暗い方が、画素のbrightnessPositioningContrastとして想起される。
【0064】
次に、ステップ139において、暗度順位付け優先度が計算される。黒色サブサブピクセルの配置の優先順位を決定するために、印刷画素501を構成するサブサブピクセル505は、その画素のbrightnessPositioningContrastとの相対接近度にしたがって順位付けられる。brightnessPositioningContrastがない場合には、明るいサブピクセル503上に位置するサブサブピクセル505に優先順位が、すなわち緑色、赤色、青色の順で付与され、優先順位第二位は、印刷ずれへの感度を低下させるために印刷画素501の縁に位置するサブサブピクセルに付与される。サブサブピクセルの暗度順位付けリストは、こうして作成される。
【0065】
次に、不透明黒色サブピクセルは、ステップ141において、印刷画素を構成するサブサブピクセルに割り当てられる。各黒色不透明サブサブピクセルは、サブサブピクセルの暗度順位付けリストによって提供された順序で、サブサブピクセルに割り当てられる。割り当てられるべき黒色不透明画素が不透明性マップ123において不透明として符号されていない場合、そのサブサブピクセルは黒色として符号されず、サブサブピクセルの暗度順位付けリストにおける次のサブサブピクセルが検討される。サブサブピクセルが不透明性マップ123において不透明として符号されている場合には、これは黒色として符号される。
【0066】
この最後には、プロセス110は、不透明−透明層103の白色サブサブピクセルおよび透明−不透明層105から露出された黒色サブサブピクセルの位置を決定済みである。次に、これらのマップは、ステップ143において、感光子層103および105の各々の露光パターンに変換され、乳白色−透明層に対応する白色用の露光マスク125a、および透明−黒色層に対応する黒色用の露光マスク125bとなる。
【0067】
図11は、IDカード100上に実際の画像を形成するための、プロセス110から作成されたマスクを用いるプロセス150を示すフローチャートである。まず、ステップ151において、画像を形成するために感光子層103および105の正確な露光を保証するために、IDカード100および露光機器が位置合わせされる。ずれがあると、印刷画素アレイ111から誤ったサブサブピクセルを露出させてしまう可能性がある。このため、正確な位置合わせは非常に重要である。
【0068】
次に、ステップ153において、乳白色から透明に変化させられるべき不透明−透明層103においてサブサブピクセルのマスキングをはずすために、白色層マスク125aが使用される。
【0069】
次にステップ155において、不透明から透明に変化させるために、画像領域が適切な波長および強度で光子に露光される。
【0070】
次に、ステップ157において、透明−不透明層105は、黒色に変化させられるべきサブサブピクセルをまずマスク剥離することによって、透明から黒色に変化させられる。
【0071】
マスク剥離されたサブサブピクセルは次に、ステップ159において、透明から黒色への変化を生じるために、必要な光子に露光される。
【0072】
最後に、定着ステップ161を通じて、画像が定着される。画像が定着される方法、すなわち不透明−透明層103および透明−不透明層105が別の状態に変化しないようにする方法は、材料によって異なる。最も直接的なケースは、不透明−透明層103が可漂白インクの場合である。特定の可漂白インクは、紫外線レーザーに露光されると蒸発することがわかっている。このため、不透明−透明層103がその層からの色素沈着の除去によって不透明から透明に変化させられるとき、不透明に戻ることは不可能である。これは一方通行の変化である。
【0073】
不透明−透明層103がスピロピラン層である場合、層は、層内に定着物質、たとえばラジカル開始剤として過酸化ベンゾイルを備える光網状化可能ポリマーとしてのLudopalを含むことにより、定着可能とされてもよい。この層103は、およそ5秒にわたりおよそ3.5ミリワット/cmの出力で488nmから564nmの範囲の紫外光への露光を通じて、定着されてもよい。適切な機器は、Thomas Scientific(Swedesboro,New Jersey,USA)によるブラックレイランプB−100A, No.6283K−10, 150Wを含む。代替案として、スピロピラン不透明−透明層103は、中速で摂氏125度で、たとえば3M Dry Silver Developer Heated Rollsなどの加熱ロールを用いて定着されてもよい。
【0074】
ここで、IDカード100の画像領域205に画像203を形成するために使用されてもよい機器を検討する。図12は、上述のやり方で画像203を形成するための個人化ステーション351の第一の実施形態のブロック図である。BMPデジタル画像121がマスク計算機353に入力される。マスク計算機353は、図10に関連して本明細書中に上述されたプロセス110の計算を実行するようにプログラムされた、汎用コンピュータであってもよい。マスク計算機353はこのため、マスク計算機353のプロセッサによって実行可能な命令を記憶するための記憶媒体を含む。プロセッサが、プロセス110の操作を実行する命令を含むこれらの命令をその内部メモリにロードし、入力BMP画像121に対して命令を実行すると、マスク計算機353はマスク125を作成する。
【0075】
マスク125は、プロセスコントローラ355に入力される。プロセスコントローラ355は、図11のプロセス150のステップを実行するようにプログラムされている。このためプロセスコントローラ355は、光子点源361から照射された光子ビーム359がマイクロミラー357に配向されたときに、マイクロミラーがマスク125にしたがって露光されるべき画像領域205のサブサブピクセルにのみ光子ビームを再配向するように、マイクロミラー357のアレイを制御するために、マスクを使用してもよい。コントローラ355はまた、これらのサブサブピクセルの適切な露光時間を生じるように光子源361を制御するようにも、プログラムされてよい。代替実施形態は、マイクロミラー357の代わりにマイクロフレネルレンズのアレイを使用する。このような実施形態において、各フレネルレンズは、特定のサブサブピクセルに焦点を合わせる。
【0076】
図13は、IDカード100の画像領域205に画像203を形成するための個人化ステーション351’の代替実施形態である。個人化ステーション351’の場合、コントローラ355’は、複数の光源からなる光アレイ363を制御するために、マスク125を受け付けるようにプログラムされている。光アレイ363は、画像領域205内の対応する箇所の感光子層を変化させるのに適切な波長および強度の光子を発生させる。一実施形態において、光アレイ363によって発生した光子ビームは、光子ビームの軌道を生じるための1つ以上のレンズ365を通じて、画像領域205内の適切なサブサブピクセル箇所に合焦される。
【0077】
図14は、本明細書に記載される技術を含むように意図されたスマートカードライフサイクル370のフローチャートである。カード製造ステップ10において、印刷画素格子111はステップ11で各カードの基板107上に印刷される。これは、たとえば、標準的なオフセット印刷を通じて実行されてもよい。次に透明−不透明層105層は、ステップ13においてカード上に付着される。次に不透明−透明層103は、ステップ15においてカード上に配置される。そして最後に、ステップ17aにおいて、カードが積層される。IDカード100のいくつかの実施形態において、画像203がカード100上に形成された後で積層ステップが実行されることは、特筆すべきである。
【0078】
結果的に得られる製造済みカード100は、全て随意的に積層109の下にある、印刷画素層111、透明−不透明層105、および不透明−透明層103からなる画像領域205を有する。カード100はここで、ステップ20において顧客に納品されてもよい。
【0079】
図3cに示されるIDカード100”の実施形態については、上記ステップの順番がある程度再編成されてもよいことは、特筆すべきである。
【0080】
客先において、カード100はステップ30でエンドユーザ向けに個人化されてもよい。これは、様々な指定色のサブサブピクセルを選択的に露出または隠蔽する光子に画像領域の選択箇所を露出する機器を制御するために使用されてもよいマスク125に画像ファイルを変換することによって、本明細書中に上述される方式で、ステップ31においてエンドユーザの画像をカードに表示することを含む。画像が形成された後、これはステップ33において定着される。あるいは、カード100は、たとえばカードにフィルタリングワニスを塗布することなどによって、感光子層を変化させるであろう光子を除去するフィルタを追加することにより、変化から保護されてもよい。さらに別の代替案において、上部積層109aと感光子層103および105との間に追加透明層が含まれる。この追加層もまた感光子層である。この追加層は、光子エネルギーまたは熱に曝されると、不透明−透明層103および透明−不透明層105を変化させる波長を透過させる状態から、これらの波長に対して不透過性の状態に変化し、それによって画像203を修正しようとするいかなる試みも防止する。
【0081】
本明細書中に上述のように、いくつかの実施形態において、不透明から透明への変化は、不透明−透明層103からインクを蒸発させることに依存している。したがって、パーソナル化段階30は、画像領域205の個人化の後の積層17bで完了してもよい。個人化後の積層ステップ17bもまた、画像203を別途さらに変化させることが可能な光子を遮断するフィルタを設置する別の機会を提供するが、その場合には定着ステップ33および積層ステップ17bは1つのステップと見なされてもよい。
【0082】
最後に、カード100はエンドユーザに対して発行40されてもよい。
【0083】
こうして、スマートカードライフサイクルは、積層下のカード上にエンドユーザ画像を掲載することによって発行後個人化を提供するように、成功裏に修正されており、それによって、高度な耐改ざん性を提供しながらカードの個人化を改良した。
【0084】
上記より、製造環境において、IDカード、キャッシュカード、スマートカード、パスポート、バリューペーパーなどの繊細な物品の個人化を可能にする技術が本明細書中に上記に提示されてきたことは、明らかである。この技術は、積層が適用される前または後に適用されてもよい、積層内のこのような物品上に画像を掲載するために、使用されてもよい。このため、物品、たとえばスマートカードは、工場設定において大量生産方式で製造されてもよく、客先において比較的安価で簡単な機器上で個人化されてもよい。この技術は、改ざん防止された画像を用いて、スマートカード、キャッシュカード、IDカードなどの物品をこうして個人化するための機構を提供する。
【0085】
上記の説明はスマートカードの個人化に焦点を当てており、これは上述の技術が理想的に適合する分野であるが、本明細書におけるスマートカードへの依存は単なる例と見なされるべきである。この技術は、画像を用いる安全な個人化から恩恵を受ける、その他の装置および文書にも適用可能である。いくつかの例は、IDカード、キャッシュカード、スマートカード、パスポート、バリューペーパーを含む。
【0086】
本発明の特定の実施形態が記載および図解されてきたが、本発明は、記載および図解された通りの特定の形態および構成に限定されるべきではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理媒体上の画像領域に画像を形成する方法であって、
基板表面上に印刷画素パターンを印刷するステップであり、印刷画素パターンは複数の印刷画素を含み、各印刷画素は異なる色の複数のサブピクセルで構成されているステップと、
少なくとも1つの感光子層で印刷画素パターンを被覆するステップであり、各感光子層は複数の状態のうちの1つにあり、各感光子層は選択箇所において、2つの状態のうちの一方から2つの状態のうちの他方に変化可能であるステップと、
物理媒体全体にわたって選択されたパターンの少なくとも1つの感光子層のうちの少なくとも1つの状態を変化させ、それによってサブピクセルの選択されたサブセットおよびその他のサブピクセルに対応する感光子層の部分を選択的に露出し、それによって露出されたサブピクセルおよびその他のサブピクセルに対応する感光子層部分で構成された画像を形成するステップと、を含む方法。
【請求項2】
第一感光子層は視覚的に不透明であり、第一選択波長および強度の光子に露光されると視覚的に透明に変化し;第二感光子層は視覚的に透明であり、第二選択波長および強度の光子に露光されると視覚的に不透明に変化し;第一感光子層の第一選択部分は、表面上、または表面上に位置する印刷画素パターンと第一感光子層との間のいずれかの感光子層上のサブピクセルを露出するために露光され;第二感光子層の第二選択部分は、表面上、および表面と第二感光子層との間のいずれかの感光子層上のサブピクセルを塞ぐために露光される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一感光子層は乳白色から視覚的に透明に変化し、第二感光子層は視覚的に透明から不透明黒色に変化し、第二感光子層は、第一感光子層と基板表面上に位置する印刷画素パターンとの間に配置される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第一波長および強度の光子に対して露出されるべき着色サブピクセルの上に位置する第一感光子層の領域を露光することによって着色サブピクセルを露出するステップと;特定箇所に対応する第一感光子層の領域を第一波長および強度の光子に露光させることによって特定箇所に対応する第二感光子層の領域を露出すること、ならびに特定箇所に対応する第二感光子層の領域を第二波長および強度の光子に露光させることによって特定箇所に対応する第二感光子層の領域を暗くすることで、特定箇所に黒色サブピクセルを形成するステップと、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第一感光子層は白色可漂白インクである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
追加露光ステップによって感光子層の選択露光部分を定着させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
物理媒体の画像領域の一部分を紫外光に露光させることによって感光子層の選択露光部分を定着させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
サブピクセルの選択されたサブセットを熱に曝すことによって感光子層のサブピクセルの選択されたサブセットを定着させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
感光子層の変化は光子露光によって発生した熱に起因する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
変化ステップは、個々のサブピクセルのサブサブピクセルを露出させ、それによって画素パターン中の異なるサブピクセルに多様な色強度を提供するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
各サブピクセルは複数のサブサブピクセルを含み、少なくとも1つの感光子層のうちの少なくとも1つの状態を変化させるステップは、
いずれかのサブピクセルのサブサブピクセルのサブセットを露出させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
どのサブサブピクセルがデジタル画像中の対応する画素から露出されるべきかを判断するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
どのサブサブピクセルが露出されるべきかを判断するステップは、デジタル画像中の対応する画素の明度、およびデジタル画像の画素の色相に基づいている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
どのサブサブピクセルが露出されるべきかを判断するステップは、デジタル画像中のコントラスト推移に基づいている、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
光子への選択的露光によって個人化可能な媒体であって、
複数の印刷画素を含む印刷画素パターンを有する印刷画素パターン層であり、各印刷画素は異なる色の複数のサブピクセルで構成されている、印刷画素パターン層と、
第一波長および強度の光子に露光されると第一状態から第二状態に推移する感光子材料で構成された、少なくとも1つの感光子層と、を含む媒体。
【請求項16】
少なくとも1つの感光子材料は、
画素パターンを被覆し、第一波長および強度の光子に露光されるとある程度の不透明度に推移する感光子材料で構成された、透明層と、
画素パターンを被覆し、第二波長および強度の光子に露光されると透明に推移する感光子材料で構成された、不透明層とを含む、請求項15に記載の光子への選択的露光によって個人化可能な媒体。
【請求項17】
透明層は、レーザー刻印可能な炭素ドープポリカーボネート層である、請求項16に記載の光子への選択的露光によって個人化可能な媒体。
【請求項18】
不透明層は可漂白インクである、請求項16に記載の光子への選択的露光によって個人化可能な媒体。
【請求項19】
不透明層は、特定の波長および強度の光子への露光によって選択的に除去可能である、請求項15に記載の光子への選択的露光によって個人化可能な媒体。
【請求項20】
印刷画素パターンは、基板の表面上、および基板の表面と感光子層との間に位置している、請求項15に記載の光子への選択的露光によって個人化可能な媒体。
【請求項21】
印刷画素パターン層は感光子性であり、感光子層は印刷画素パターン層と基板との間に位置している、請求項15に記載の光子への選択的露光によって個人化可能な媒体。
【請求項22】
少なくとも1つの感光子層および印刷画素パターン層を被覆する少なくとも1つの積層をさらに含む、請求項15に記載の光子への選択的露光によって個人化可能な媒体。
【請求項23】
印刷画素パターンが印刷された表面を備える基板を有し、印刷画素パターンを被覆する少なくとも1つの感光子層を有する媒体上の画像領域に画像を形成する装置にして、各感光子層は複数の状態のうちの1つにあり、各感光子層は選択箇所において、2つの状態のうちの一方から2つの状態のうちの他方に変化可能である装置であって、
少なくとも1つの光子源と、
少なくとも1つの制御可能光子分配器と、
光子源および光子分配器に接続され、少なくとも1つの光源のうちの少なくとも1つを選択的に活性化するように、および制御可能光子分配器を制御して表面全体にわたって選択されたパターンの少なくとも1つの感光子層のうちの少なくとも1つを露光させ、それによって画素パターンのサブピクセルの選択されたサブセットおよび感光子層の部分を選択的に露出しそれによって露出されたサブピクセルおよび感光子層部分で構成された画像を形成するようにプログラムされた、コントローラと、を含む装置。
【請求項24】
制御可能光子分配器は、光子源によって放出された光子を媒体に対して選択的に反射させるようになっているマイクロミラーのアレイである、請求項23に記載の画像形成装置。
【請求項25】
制御可能光子分配器は、不透明状態と透明状態との間で変化してもよい制御可能素子のアレイによって形成されたマスクであり、各制御可能素子は、印刷画素パターンのサブピクセル、または印刷画素パターンのサブピクセルの一部分に対応する、請求項23に記載の画像形成装置。
【請求項26】
制御可能光子分配器は、選択されたサブピクセルまたはサブピクセルの部分に対応する媒体の領域を選択的に露光するようになっている位置制御可能レーザーである、請求項23に記載の画像形成装置。
【請求項27】
媒体を熱に対して曝露し、それによって各感光子層の状態を定着させる熱源をさらに含む、請求項23に記載の画像形成装置。
【請求項28】
媒体を紫外光に露光し、それによって各感光子層の状態を定着させる紫外光源をさらに含む、請求項23に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2013−508186(P2013−508186A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533561(P2012−533561)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064447
【国際公開番号】WO2011/045180
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(504326572)ジエマルト・エス・アー (31)
【Fターム(参考)】