説明

事務機器の振動吸収装置

【課題】地震発生時等における事務機器の振動を吸収して該事務機器の移動や転倒を防ぐことができる事務機器の振動吸収装置を提供すること。
【解決手段】弾性部材によって構成された弾性マット1を複合機(事務機器)10とその設置面Fとの間に介装して事務機器の振動吸収装置を構成する。例えば、前記弾性マット1を、内部に空気を封入したエアマットで構成する。又、前記弾性マット1の上下面に吸着材を貼り付ける。更に、前記弾性マット1のコーナー部に、複合機(事務機器)10の底面に取り付けられたキャスター11を避けて切欠き1aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィス内に設置された複写機やプリンター等の事務機器の地震等における過大な振動を吸収して該事務機器の移動や転倒を防ぐための振動吸収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィスでの複写機やプリンター等の事務機器の地震等による過大な振動に対する安全対策が望まれている。
【0003】
事務機器の振動に対する安全対策として、例えば特許文献1には、事務機器を設置する床面上に固定部材をボルトで固定し、この固定部材にワイヤーの一端を係止部材を介して固定するとともに、該ワイヤーを事務機器の固定ブラケットに通してキャスターに当接させた状態で事務機器下部の周囲を囲むように張設し、同ワイヤーの他端をロック手段を介して床面又は壁面に係止する構成が提案されている。これによれば、地震や過大な衝撃が発生した場合には、ワイヤーが過大な外力を受けて伸びるため、このワイヤーの伸びによって過大な外力が吸収されて事務機器が保護される。
【0004】
又、特許文献2には、複数のキャスターとアジャスターを有する事務機器に加えられる衝撃や振動を吸収する手段として、キャスターを受ける輪止め(振動吸収部材)と床面上に固定されたベース板との間に摩擦板を設ける構成が提案されている。これによれば、衝撃・振動エネルギーのうち、従来の衝撃・振動吸収手段では吸収し切れなかったエネルギーを摩擦板の滑りによって吸収することができるため、地震等によって過度の衝撃や振動が加わった場合の事務機器の転倒が防がれるともに、事務機器内部に加わる加速度を減じて事務機器内部の破損や内部ユニット類の飛び出し、扉類の開きを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−280288号公報
【特許文献2】特開平10−048902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1において提案された構成では、固定部材を床面上にボルトで固定する必要があるため、床面に傷が残る他、床面の状況によっては固定部材をボルトによって固定することができないという問題がある。
【0007】
又、特許文献2において提案された構成では、ゴム等の弾性材で構成された輪止めの一部に切り込みが形成されているため、キャスターからの外力や振動によって輪止めが切り込み部から開き、輪止めが所期の機能を果たさなくなるばかりか、その強度が不足して破損する可能性があるという問題がある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とする処は、地震発生時等における事務機器の振動を吸収して該事務機器の移動や転倒を防ぐことができる事務機器の振動吸収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、弾性部材によって構成され、事務機器とその設置面との間に介装される弾性マットを用いた事務機器の振動吸収装置であって、前記弾性マットは、事務機器の底面に当接する第1平面部と前記設置面に当接する第2平面部を対向して備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記弾性マットを、内部に空気を封入したエアマットで構成したことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記弾性マットの前記第1平面部及び前記第2平面部に吸着材を貼り付けたことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記弾性マットのコーナー部に、事務機器の底面に取り付けられたキャスターを避けて切欠きを形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、地震発生時等において事務機器の振動が弾性マットによって効果的に吸収されるとともに、弾性マットの事務機器と設置面との接触面積が大きいために事務機器の設置面上での滑りが抑制されるため、事務機器の移動と転倒が確実に防がれる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、クッション性の高いエアマットによって事務機器の振動が一層効果的に吸収される。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、弾性マットの第1平面及び第2平面に装着された吸着材によって弾性マットの上下面が事務機器の底面と設置面に密着するため、これらの間に発生する大きな摩擦抵抗によって事務機器の設置面上での滑りが一層効果的に防がれる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、弾性マットの四隅に形成された切欠きがキャスターの移動を規制する壁となって機能するため、事務機器の設置面上での移動が一層効果的に防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る振動吸収装置を備える事務機器の設置状態を示す正面図である。
【図2】本発明に係る振動吸収装置を構成するエアマットの斜視図である。
【図3】本発明に係る振動吸収装置を構成するエアマットの断面斜視図である。
【図4】本発明に係る振動吸収装置を構成するエアマットの別形態を示す分解斜視図である。
【図5】図4に示すエアマットを介して設置された事務機器下部の斜視図である。
【図6】図5のA−A線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明に係る振動吸収装置を備える事務機器の設置状態を示す正面図、図2は本発明に係る振動吸収装置を構成するエアマットの斜視図、図3は同エアマットの断面斜視図、図4は同エアマットの別形態を示す分解斜視図、図5は図4に示すエアマットを介して設置された事務機器下部の斜視図、図6は図5のA−A線矢視図である。
【0020】
図1に示す事務機器10は、複写機能とプリンター機能及びファクシミリ機能を兼備した複合機であって、該複合機10は、その底面の四隅に取り付けられた計4つのキャスター11(図1には2つのみ図示)によって水平な設置面F上に設置されているが、複合機10と設置面Fとの間には弾性マットとしてのエアマット1が介装されている。
【0021】
上記エアマット1は、本発明に係る振動吸収装置を構成するものであって、図2及び図4に示すように、ゴム等の弾性材によって薄い矩形の袋状に成形され、その内部には空気注入口2から空気が封入されている。そして、このエアマット1は水平方向に延在して上下方向に対向する第1平面部1bおよび第2平面部1cを有しており、四隅のコーナー部には、キャスター11との干渉を避けるための切欠き1aが形成されている。第1平面部1b及び第2平面部1cは複合機10の装置本体の底面10aとほぼ等しい面積を有している。複合機10を設置場所に設置した状態で、複合機10の底面10aと設置面Fの間にエアマット1を挿入して配置する。そして、第1平面部1bと第2平面部1cの間の側面部に設けられた空気注入口2からポンプ等を用いて空気を注入して塞ぐ。注入された空気の圧力により、第1平面部1bは複合機10の底面10aに圧接され、第2平面部1cは設置面Fに圧接される。エアマット1はゴム等の弾性材で構成されているため、摩擦係数が比較的高く、第1平面部1bと複合機10の底面10a及び第2平面部1cと設置面Fの間で滑りが発生しにくい。そのため、複合機10は振動や押される等の衝撃を受けた場合に、設置面Fから移動することが防止される。又、エアマット1は弾性部材であり、内部に空気が注入されているため、弾性変形により振動や衝撃の一部が吸収されるため、複合機10が転倒しにくくなる。
【0022】
ところで、図4に示すように、図2及び図2に示すエアマット1の第1平面部1b及び第2平面部1cにゴム材や固形ゼリー状材料から成る薄い矩形の吸着材3を貼り付けても良い。このように第1平面部1b及び第2平面部1cに吸着材が3貼り付けられたエアマット1を複合機10と設置面Fとの間に介装した様子を図5及び図6に示すが、このように上下面第1平面部1b及び第2平面部1cに吸着材3が貼り付けられたエアマット1を複合機10と設置面Fとの間に介装することによって、地震発生時等において複合機10の振動がクッション性が高くて振動吸収性に優れたエアマット1によって効果的に吸収されるとともに、エアマット1の複合機10と設置面Fとの接触面積が大きいために複合機10の設置面F上での滑りが抑制されるため、複合機10の移動と転倒が確実に防がれる。この場合、エアマット1の第1平面部1b及び第2平面部1cには吸着力が大きな吸着材3が貼り付けられているため、エアマット1の第1平面部1b及び第2平面部1cが吸着材3を介して複合機10の底面と設置面Fに密着し、これらの間に発生する大きな摩擦抵抗によって複合機10の設置面F上での滑りが一層効果的に防がれる。
【0023】
又、本実施の形態では、エアマット1の四隅に形成された切欠き1aがキャスター11の移動を規制する壁となって機能するため、エアマット1を複写機10の底面10aに対して偏ることなく適切な位置に設置することが容易になる。又、複合機10の底面10aに補強等のための絞りが形成されて、エアマット1の第1平面部1bとの接触面積が、第2平面部1cと設置面Fの接触面積より小さな場合でも、複合機10の底面10aとエアマット1の第1平面部0bの滑りがキャスター11の切欠き1aへの当接によって規制されるため、複合機10の設置面F上での移動が一層効果的に防がれるという効果が得られる。
【0024】
尚、以上の実施の形態では、弾性マットとしてエアマットを用いた形態について説明したが、弾性マットとしては全体がゴムで構成された中実のゴムマット、内部に水等の空気以外の流体が充填された流体マット等を使用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 エアマット(弾性マット)
1a エアマットの切欠き
2 エアマットの空気注入口
3 吸着材
10 複合機(事務機器)
11 キャスター
F 設置面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性部材によって構成され、事務機器とその設置面との間に介装される弾性マットを用いた事務機器の振動吸収装置であって、
前記弾性マットは、事務機器の底面に当接する第1平面部と前記設置面に当接する第2平面部を対向して備えることを特徴とする事務機器の振動吸収装置。
【請求項2】
前記弾性マットを、内部に空気を封入したエアマットで構成したことを特徴とする請求項1に記載の事務機器の振動吸収装置。
【請求項3】
前記弾性マットの前記第1平面部及び前記第2平面部に吸着材を貼り付けたことを特徴とする請求項1又は2記載の事務機器の振動吸収装置。
【請求項4】
前記弾性マットのコーナー部に、事務機器の底面に取り付けられたキャスターを避けて切欠きを形成したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の事務機器の振動吸収装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−230265(P2012−230265A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98788(P2011−98788)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】