説明

事務用クリップ

【課題】 インデックス作成およびクリップ廃棄作業の簡素化を図ることができる事務用クリップを提供すること。
【解決手段】 板状体を弾性変形可能に折り曲げることにより形成された二つの挟持部エレメント1a,1bおよびこれら両挟持部エレメント1a,1bを連結するエレメント連結部1cを有し、このうち両挟持部エレメント1a,1bによって被挟持物Pを挿抜自在に挟圧保持するクリップであって、前記板状体を、合成樹脂材料および紙材料からなる混合材料によって形成した構成とされる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、書類等の被挟持物を綴じる場合に使用して好適な事務用クリップに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、複数の紙葉類(書類)を挟持する事務用クリップとしては、図4に示すような摘み付きのクリップあるいは図5に示すような摘み無しのクリップが知られている。このような事務用クリップを使用するには、クリップ41,51における二つの弾性片41a,51aを拡開させ、これら両弾性片41a,51aによって書類を挟圧保持することにより行われる。
【0003】この場合、前者(摘み付きのクリップ41)にあっては、通常親指および人差し指による操作力をクリップ摘み42a,42bに付与することにより両弾性片41a,41aを拡開させるものであるため、高齢者,病人あるいは障害者などのように把持力が弱いと、その使用が困難である。一方、後者(摘み無しのクリップ51)にあっては、クリップ操作具(図示せず)によって両弾性片51aを拡開させるものであるため、把持力の弱い人でもその使用が容易である。このため、書類等の被挟持物を綴じる場合には、従来から摘み無しのクリップ51が多用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、この種の事務用クリップは、高い弾性力を確保するためにステンレス等の金属材料、あるいは取り扱い上の安全性を確保するためにポリカーボネート等の合成樹脂材料によって形成されているため、クリップ表面に油性・水性のボールペンや鉛筆等で文字・記号,絵等を書くことができなかった。この結果、例えばインデックスをクリップで作成する場合には、文字等が書かれた紙等をクリップ表面に貼付する必要が生じ、そのインクデックス作成を煩雑にするという課題があった。また、事務用クリップが金属材料あるいは合成樹脂によって形成されていることは、廃棄物分別上の可燃物として取り扱うことができなかった。このため、書類等の被挟持物を綴じたクリップを廃棄する場合には、被挟持物からクリップを取り外す必要が生じ、その廃棄作業を煩雑にするという課題もあった。
【0005】本発明は、このような技術的課題を解決するためになされたもので、インデックス作成およびクリップ廃棄作業の簡素化を図ることができる事務用クリップを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記した目的を達成するためになされた本発明に係る事務用クリップは、板状体を弾性変形可能に折り曲げることにより形成された二つの挟持部エレメントおよびこれら両挟持部エレメントを連結するエレメント連結部を有し、このうち両挟持部エレメントによって被挟持物を挿抜自在に挟圧保持するクリップであって、前記板状体を、合成樹脂材料および紙材料からなる混合材料によって形成したことを特徴とする。このように構成されているため、クリップ表面に油性・水性のボールペンや鉛筆等で文字・記号,絵等を書くことができる。したがって、例えばインデックスをクリップに作成する場合には、文字等が書かれた紙等をクリップ表面に貼付する必要がないため、そのインデックス作成の簡素化を図ることができる。
【0007】また、板状体を、合成樹脂材料および紙材料からなる混合材料によって形成したことは、クリップを廃棄物分別上の可燃物として取り扱うことができる。したがって、廃棄時にクリップと書類等の被挟持物とを分別する必要がなくなるため、被挟持物を綴じたままクリップを廃棄することができ、その廃棄作業の簡素化を図ることができる。
【0008】ここで、前記混合材料の全重量に対して前記紙材料の占める重量割合α%が、51≦α≦57の範囲にある重量割合に設定されていることが望ましい。このように構成されているため、クリップ成形がプラスチック成形技術を用いて行われる。また、クリップの剛性および曲げ強度が損われない。この場合、紙材料の重量割合α%が、α>57であると射出成形に適さず、またα<51であると廃棄時に分別する必要が生じる。
【0009】そして、前記両挟持部エレメントのうち一方の挟持部エレメントに、前記被挟持物に接触可能な第一凸部を設け、他方の挟持部エレメントに、前記第一凸部に嵌合可能な凹部およびこの凹部の両側に前記被挟持物に接触可能な第二凸部を設け、これら第二凸部が、前記被挟持物の挿抜方向に所定の間隔をもって並列する二つの凸部からなることが望ましい。このように構成されているため、被挟持物の挿抜方向に並列する二位置において被挟持物を挟圧保持することができる。したがって、被挟持物に対する挟圧保持力を十分に確保することができ、比較的少ない枚数(例えば5枚程度)の被挟持物を挟持する場合にも挟圧保持力を保証することができる。
【0010】また、前記両挟持部エレメント間に、その各エレメント中央部を外側に突出させることにより、前記クリップによって挟持される被挟持物の挿入端部を臨ませるような空間部を設けることが望ましい。このように構成されているため、クリップによって挟持される最大厚さの被挟持物の先端部を空間部に臨ませても、この先端部の両挟持部エレメントに対する接触を回避することができ、両挟持部エレメントによる挟圧保持力を確保した状態で最大厚さの被挟持物を綴じることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る事務用クリップにつき、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1R>1(a)〜(c)は、本発明が適用された事務用クリップを示す平面図および側面図と背面図である。図2は、同じく本発明が適用された事務用クリップの使用状態を示す斜視図である。図3(a)および(b)は、本発明が適用された事務用クリップを操作する場合に用いるクリップ操作具とその使用例を示す斜視図である。なお、本事務用クリップの使用はクリップ操作具によって可能となるため、図3に示す「クリップ操作具」について説明してから、図1および図2に示す「事務用クリップ」について説明する。
【0012】「クリップの操作具」図3(a)に示すように、符号31で示すクリップ操作具は、図3(b)に示すクリップ1を収容可能な空間部31aおよびこの空間部31aの内外に開口する貫通窓31bを有する操作具筐体31と、この操作具筐体31の貫通窓31b内を被挟持物Pの挿抜方向に摺動する操作用ノブ32とを備えている。前記操作具筐体31の前方端部には、前記空間部31aに連通し、かつ被挟持物Pを挿抜可能な差込口31cが設けられている。この差込口31c内の両側部には、図3(b)に示すように、前記クリップ1の各耳部4,5(挟持部エレメント)を拡開させるための二股状のばね部33a,34a付きクリップ拡開用ばね片33,34が装着されている。また、前記操作具筐体31の後方端部には、前記空間部31aに連通し、かつクリップ1を挿入可能な挿入口31dが設けられている。前記操作用ノブ32は、引張用コイルスプリング(図示せず)によって操作具後方(初期位置)に付勢されており、前記空間部31aに収容されたクリップ1を前記差込口31cから外部に押し出すように構成されている。
【0013】「事務用クリップ」図1(a)〜(c)に示すように、符号1で示すクリップは、例えば略矩形状の板状体を弾性変形可能に折り曲げることにより形成された略トライアングル状の書類綴じ具であって、図2に示すように書類等の被挟持物Pを挟圧保持する二つの挟持部エレメント1a,1bおよびこれら両挟持部エレメント1a,1bを連結するエレメント連結部1cを有している。そして、全体が合成樹脂材料(例えばポリプロピレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリカーボネート)および紙材料(例えば古紙)からなる混合材料によって形成されている。このクリップ1における混合材料の全重量に対する紙材料の占める重量(絶乾重量)割合は51%に設定されている。
【0014】なお、前記クリップ1における混合材料の全重量に対して紙材料の占める重量(絶乾重量)割合α%は、51≦α≦57の範囲にある重量割合に設定されていることが望ましい。これにより、プラスチック成形技術を用いてクリップ成形が行われ、またクリップ1の剛性および曲げ強度が損われない。この場合、紙材料の重量割合α%が、α>57であると射出成形に適さない。また、α<51であると紙材料(廃棄物分別上の可燃物)として取り扱われず、クリップ1によって綴じた書類を廃棄する際に分別する必要が生じる。
【0015】前記両挟持部エレメント1a,1bは、エレメント基端部(エレメント連結部側の端部)から挟持部Aに向かって漸次接近するように、前記エレメント連結部1cに対して傾斜した状態で折り曲げ形成されている。前記両挟持部エレメント1a,1b間には、その各エレメント中央部を外側に突出させることにより、前記クリップ1によって挟持される被挟持物Pの先端部を臨ませるような側面ほぼ二等辺三角形状の空間部1dが設けられている。これにより、クリップ1によって挟持される最大厚さの被挟持物Pの先端部を空間部1dに臨ませても、この先端部の両挟持部エレメント1a,1bに対する接触を回避することができ、両挟持部エレメント1a,1bによる挟圧保持力を確保した状態で最大厚さの被挟持物Pを綴じることができる。
【0016】また、前記両挟持部エレメント1a,1bの先端部には、前記挟持部Aから各エレメント先端に向かって漸次離間し、かつ被挟持物Pを挿入方向に案内するガイド部2,3が設けられている。そして、前記各挟持部エレメント1a,1bの先端部には、側方に突出するエレメント拡開用の耳部4,5が一体に設けられている。
【0017】前記挟持部エレメント1aの先端部内面には、前記被挟持物Pに接触可能な断面ほぼ二等辺三角形状の第一凸部6が前記耳部4の内面にわたって一体に設けられている。前記挟持部エレメント1bの先端部内面には、前記第一凸部6に嵌合可能な断面ほぼ二等辺三角形状の凹部7が前記耳部5の内面にわたって設けられている。また、前記挟持部エレメント1bの先端部内面には、前記凹部7の両側に位置し、前記被挟持物Pに接触可能な断面ほぼ二等辺三角形状の第二凸部8,9が前記耳部5の内面にわたって一体に設けられている。これら第二凸部8,9は、前記被挟持物Pの挿抜方向に所定の間隔をもって並列する二つの凸部によって形成されている。これにより、被挟持物Pの挿抜方向に並列する二位置において被挟持物Pを挟圧保持するように構成されている。
【0018】一方、前記エレメント連結部1cは、両側部において前記両挟持部エレメント1a,1bのヒンジ部としての機能を有し、前記両挟持部エレメント1a,1bが弾性変形し得るように構成されている。また、前記エレメント連結部1cの両側部には、所定の曲率をもつ内側面およびこの内側面の曲率より小さい曲率をもつ外側面が形成されている。そして、前記エレメント連結部1cの長さは前記挟持部エレメント1a,1bの長さより小さい寸法に設定され、その厚さは前記挟持部エレメント1a,1bの厚さより若干大きい寸法に設定されている。
【0019】このように構成された事務用クリップにおいては、前記したように合成樹脂材料および紙材料によって形成されているため、クリップ表面に油性・水性のボールペンや鉛筆等で文字・記号,絵等を書くことができる。したがって、本実施形態においては、例えばインデックスをクリップで作成する場合には、文字等が書かれた紙等をクリップ表面に貼付する必要がないため、そのインデックス作成の簡素化を図ることができる。
【0020】また、クリップ1における混合材料の全重量に対して紙材料の占める重量割合が51%以上であるため、クリップ1を廃棄物分別上の可燃物として取り扱えることができる。したがって、本実施形態においては、廃棄時にクリップ1と書類等の被挟持物Pとを分別する必要がなくなるため、被挟持物Pを綴じたままクリップ1を廃棄することができ、その廃棄作業の簡素化を図ることができる。また、本実施形態においては、被挟持物Pの挿抜方向に並列する二位置で被挟持物Pを挟圧保持することができるため、被挟持物Pに対する挟圧保持力を十分に確保することができ、比較的少ない枚数(例えば5枚程度)の被挟持物P(書類)を挟持する場合にも挟圧保持力を保証することができる。
【0021】次に、本実施形態における事務用クリップによって被挟持物(書類)を綴る方法につき、図1〜図3を用いて説明する。先ず、図3(a)に示すクリップ操作具31の挿入口31dから空間部31aにクリップ1を挿入して操作用ノブ32の前方に配置するとともに、被挟持物Pの先端部をクリップ操作具31の差込口31c内に挿入する。この場合、被挟持物Pを挿入すると、被挟持物Pが拡開用ばね片33の両ばね部33a,33a間および拡開用ばね片34の両ばね部34a,34a間に配置される。次に、操作用ノブ32を押圧操作することによりクリップ1を前方に移動させる。この場合、クリップ1が移動すると、両挟持部エレメント1a,1bの耳部4,5が拡開用ばね片33,34の上下(外側)に配置される。
【0022】そして、操作用ノブ32を押圧操作することによりクリップ1を前方にさらに移動させる。この場合、クリップ1が移動すると、図3(b)に示すように両挟持部エレメント1a,1bが差込口31c内で拡開用ばね片33,34(ばね部33a,34a)の外側面に密着したまま拡開し、その後に閉じる。このため、これら両挟持部エレメント1a,1b間の第一凸部2および各第二凸部8,9によって被挟持物Pが挟圧保持される。この後、被挟持物Pの先端部をクリップ操作具31の差込口31cから外部に引き抜く。このようにして、被挟持物Pがクリップ1によって綴られる。
【0023】
【発明の効果】以上の説明で明らかなとおり、本発明に係る事務用クリップによると、インデックス作成およびクリップ廃棄作業の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(c)は、本発明が適用された事務用クリップを示す平面図および側面図と背面図である。
【図2】本発明が適用された事務用クリップの使用状態を示す斜視図である。
【図3】(a)および(b)は、本発明が適用された事務用クリップを操作する場合に用いるクリップ操作具とその使用例を示す斜視図である。
【図4】従来の事務用クリップ(1)を示す側面図ある。
【図5】従来の事務用クリップ(2)を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 クリップ
1a,1b 挟持部エレメント
1c エレメント連結部
1d 空間部
2,3 ガイド部
4,5 耳部
6 第一凸部
7 凸部
8,9 第二凸部
A 挟持部
P 被挟持物

【特許請求の範囲】
【請求項1】 板状体を弾性変形可能に折り曲げることにより形成された二つの挟持部エレメントおよびこれら両挟持部エレメントを連結するエレメント連結部を有し、このうち両挟持部エレメントによって被挟持物を挿抜自在に挟圧保持するクリップであって、前記板状体を、合成樹脂材料および紙材料からなる混合材料によって形成したことを特徴とする事務用クリップ。
【請求項2】 前記板状体の全重量に対して前記紙材料の占める重量割合α%が、51≦α≦57の範囲にある重量割合に設定されていることを請求項1に記載された事務用クリップ。
【請求項3】 前記両挟持部エレメントのうち一方の挟持部エレメントに、前記被挟持物に接触可能な第一凸部を設け、他方の挟持部エレメントに、前記第一凸部に嵌合可能な凹部およびこの凹部の両側に前記被挟持物に接触可能な第二凸部を設け、これら第二凸部が、前記被挟持物の挿抜方向に所定の間隔をもって並列する二つの凸部からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された事務用クリップ。
【請求項4】 前記両挟持部エレメント間に、その各エレメント中央部を外側に突出させることにより、前記クリップによって挟持される被挟持物の挿入端部を臨ませるような空間部を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された事務用クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2003−19886(P2003−19886A)
【公開日】平成15年1月21日(2003.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−207445(P2001−207445)
【出願日】平成13年7月9日(2001.7.9)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【出願人】(000241810)北越製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】