説明

事故防止システム、事故防止方法、及び事故防止プログラム

【課題】患者の行動に起因する事故が発生し易い状況を把握し、当該状況の回避のための具体的な対策を立案できる、事故防止システムを提供すること。
【解決手段】事故防止システム1は、要素動作の組み合わせである実現パターンを特定する実現パターン情報と、要素動作を特定する要素動作情報と、要素動作を達成可能なレベルを特定する達成可能レベル情報と、管理対象の能力を評価する尺度である能力要素を特定する能力要素情報と、管理対象に求められる必要能力を特定する必要能力情報とを相互に関連付けて格納する必要能力DB41と、管理対象の現実能力を特定する現実能力情報の入力を受け付ける入力部10と、現実能力情報と必要能力DB41に格納された情報とに基づいて、要素動作に対応する全ての能力要素において現実能力が必要能力に達している達成可能レベルを特定し、要素動作を管理対象が行う際の基本対応計画を作成する基本対応計画作成部31とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事故防止システム、事故防止方法、及び事故防止プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療事故の防止や低減が強く求められている。医療事故は、医療スタッフによるサービス提供プロセスにおいて発生する事故(例えば与薬事故、患者の取り違え事故等)と、患者の行動に起因する事故(例えば、転倒事故、転落事故、チューブ抜去事故等)とに大別される。この内、医療スタッフによるサービス提供プロセスにおいて発生する事故については、サービス提供プロセスの標準化、策定された標準の遵守、サービス提供プロセスに対する公知の各種分析手法の適用等の対策が採られている。
【0003】
一方、患者の行動に起因する事故については、例えば各患者について転倒・転落事故に関連するリスクファクター(年齢、性別、既往歴等)を評価し、当該患者における転倒・転落事故のリスクレベルを数値化することを目的としたアセスメントスコアシートが用いられていた(例えば、非特許文献1)。
【0004】
さらに、アセスメントスコアシートにより特定されるリスクレベル毎に検討すべき対策(群)を対応付けることや、リスクファクター(群)毎に検討すべき対策(群)を対応付けることも提案されている(例えば、非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】山本かよ他、「転倒・転落事故予防のためのアセスメントスコアシートの活用実態」、神戸市看護大学紀要 Vol.10、2006年、P49−59
【非特許文献2】「医療の質・安全の向上を目指す病院合同改善プロジェクト」転倒転落対策タスクチーム編、「NDP 転倒・転落対策のガイドライン」、2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載の如きアセスメントシートを用いた従来の方法では、所定のリスクファクターに基づき各患者が転倒・転落等の事故を起こし易いのか否かを数値的に評価するに過ぎなかった。すなわち、各患者が、例えば食事、更衣、移動、排泄等の様々なADL(Activities of Daily Living)を構成する一連の動作のどの場面で事故を起こし易いのかについては考慮されていなかった。従って、各種の動作に対する患者の能力を考慮して、個々の患者において事故が発生し易い状況を把握し、当該状況を回避するための具体的な対策を立案することが困難であった。
【0007】
また、非特許文献2に記載の如き従来の方法では、リスクファクターと対策とを直接的に対応付けていたため、事故が発生し易い状況を具体的に把握することができず、対策を実施するか否かの判断の根拠が不明確な場合があった。このため、個々の管理対象において事故が発生し易い状況を回避するための具体的な計画を立案することができなかった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、個々の患者において事故が発生し易い状況を把握し、当該状況を回避するための具体的な計画を立案することができる、事故防止システム、事故防止方法、及び事故防止プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の事故防止システムは、管理環境において管理される管理対象の行動に起因する事故を防止するためのシステムであって、前記管理対象の目的を実現するための行動を構成する一連の要素動作の中で前記事故の発生の可能性に影響し得る要素動作の組み合わせである実現パターンを特定するための実現パターン情報と、前記実現パターンにおける前記要素動作を特定するための要素動作情報と、前記要素動作毎に前記管理対象が当該要素動作を達成可能なレベルを特定するための達成可能レベル情報と、前記要素動作を行う上での前記管理対象の能力を評価する尺度である複数の能力要素を特定するための能力要素情報と、前記要素動作を行う際に前記事故の発生を防止するために前記管理対象に求められる能力である必要能力を前記能力要素毎に特定するための必要能力情報とを、相互に関連付けて格納する能力情報格納手段と、前記必要能力に対して、前記管理対象が現実に保有している能力である現実能力を特定するための現実能力情報の入力を受け付ける現実能力情報入力手段と、前記現実能力情報入力手段が入力を受け付けた現実能力情報と、前記能力情報格納手段に格納された前記要素動作情報、前記達成可能レベル情報、前記能力要素情報、及び前記必要能力情報とに基づいて、前記要素動作毎に、当該要素動作に対応する全ての前記能力要素において前記現実能力が前記必要能力に達している前記達成可能レベルを特定し、当該特定した達成可能レベルに基づいて、当該要素動作を前記管理対象が行う際の基本対応計画を作成する基本対応計画作成手段と、を備える。
【0010】
また、請求項2に記載の事故防止システムは、請求項1に記載の事故防止システムにおいて、前記事故の発生の可能性に影響し得る前記管理対象の状態変化が当該管理対象に生じる可能性を示す現象を特定する現象情報と、前記状態変化が前記管理対象に生じた場合において前記事故の発生の可能性を低減するために取るべき対応を特定する状態変化対応情報とを、相互に関連付けて格納する状態変化対応情報格納手段と、前記管理対象に発生した前記現象を特定するための現象発生情報の入力を受け付ける現象発生情報入力手段と、前記現象発生情報入力手段が入力を受け付けた現象発生情報に対応する前記現象情報に関連付けられている前記状態変化対応情報を前記状態変化対応情報格納手段から取得し、当該取得した状態変化対応情報に基づいて状態変化対応計画を作成する状態変化対応計画作成手段と、を備える。
【0011】
また、請求項3に記載の事故防止システムは、請求項1又は2に記載の事故防止システムにおいて、前記管理対象の能力を特定する能力情報と、当該管理対象の行動傾向を特定する傾向情報と、当該管理対象に対する追加対応を特定する追加対応情報とを、相互に関連付けて格納する追加対応情報格納手段と、前記管理対象の現実の行動傾向を特定する現実傾向情報の入力を受け付ける現実傾向情報入力手段と、前記現実能力情報入力手段が入力を受け付けた現実能力情報に対応する前記能力情報と、前記現実傾向情報入力手段が入力を受け付けた現実傾向情報に対応する前記傾向情報とに関連付けられている前記追加対応情報を前記追加対応情報格納手段から取得し、当該取得した追加対応情報に基づいて、前記管理対象に対する追加対応計画を作成する追加対応計画作成手段と、を備える。
【0012】
また、請求項4に記載の事故防止システムは、請求項1から3のいずれか一項に記載の事故防止システムにおいて、前記管理対象が現実に管理されている前記管理環境の特性を特定するための現実管理環境情報を取得する現実管理環境情報取得手段を備え、前記能力情報格納手段は、前記管理環境の特性を特定する管理環境情報を、前記実現パターン情報、前記要素動作情報、前記能力要素情報、及び前記必要能力情報と相互に関連付けて格納し、前記基本対応計画作成手段は、前記現実管理環境情報取得手段が取得した現実管理環境情報と前記能力情報格納手段に格納された前記管理環境情報とに基づいて、前記要素動作を前記管理対象が行う際の基本対応計画を作成する。
【0013】
また、請求項5に記載の事故防止システムは、請求項1から4のいずれか一項に記載の事故防止システムにおいて、前記管理対象に対する管理内容を特定する管理情報と、当該管理内容による管理に必要なリソースを特定するリソース情報とを、相互に関連付けて格納するリソース情報格納手段と、前記基本対応計画作成手段によって作成された前記基本対応計画に対応する前記管理情報に関連付けて格納されている前記リソース情報を前記リソース情報格納手段から取得し、当該取得したリソース情報に基づき、前記管理対象の管理に必要なリソースを特定する必要リソース特定手段と、を備える。
【0014】
また、請求項6に記載の事故防止方法は、管理環境において管理される管理対象の行動に起因する事故を防止するための方法であって、前記管理対象の目的を実現するための行動を構成する一連の要素動作の中で前記事故の発生の可能性に影響し得る要素動作の組み合わせである実現パターンを特定するための実現パターン情報と、前記実現パターンにおける前記要素動作を特定するための要素動作情報と、前記要素動作毎に前記管理対象が当該要素動作を達成可能なレベルを特定するための達成可能レベル情報と、前記要素動作を行う上での前記管理対象の能力を評価する尺度である複数の能力要素を特定するための能力要素情報と、前記要素動作を行う際に前記事故の発生を防止するために前記管理対象に求められる能力である必要能力を前記能力要素毎に特定するための必要能力情報とを、相互に関連付けて記憶手段に格納する能力情報格納ステップと、前記必要能力に対して、前記管理対象が現実に保有している能力である現実能力を特定するための現実能力情報の入力を入力手段を介して受け付ける現実能力情報入力ステップと、前記現実能力情報入力ステップで入力を受け付けた現実能力情報と前記能力情報格納ステップで前記記憶手段に格納された前記要素動作情報、前記達成可能レベル情報、前記能力要素情報、及び前記必要能力情報とに基づいて、前記要素動作毎に、当該要素動作に対応する全ての前記能力要素において前記現実能力が前記必要能力に達している前記達成可能レベルを特定し、当該特定した達成可能レベルに基づいて、当該要素動作を前記管理対象が行う際の基本対応計画を作成する基本対応計画作成ステップと、を含む。
【0015】
また、請求項7に記載の事故防止プログラムは、請求項6に記載の方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の事故防止システム、請求項6に記載の事故防止方法、又は請求項7に記載の事故防止プログラムによれば、現実能力情報入力手段が入力を受け付けた現実能力情報と能力情報格納手段に格納された必要能力情報とに基づいて、現実能力が必要能力に達している能力要素を要素動作毎に特定し、当該特定した要素動作毎の能力要素に基づいて、当該要素動作を管理対象が行う際の基本対応計画を作成するので、各種の動作に対する管理対象毎の能力を考慮し、個々の管理対象において事故が発生し易い状況を回避するための具体的な計画を立案することができる。
【0017】
請求項2に記載の事故防止システムによれば、現象発生情報入力手段が入力を受け付けた現象発生情報に対応する現象情報に関連付けられている状態変化対応情報を状態変化対応情報格納手段から取得し、当該取得した状態変化対応情報に基づいて、管理対象に対する状態変化対応計画を作成するので、予測される管理対象の状態変化に対応して状態変化対応計画を作成することができ、事故が発生し易い状況を未然に回避することができる。
【0018】
請求項3に記載の事故防止システムによれば、現実能力情報入力手段が入力を受け付けた現実能力情報に対応する能力情報と、現実傾向情報入力手段が入力を受け付けた現実傾向情報に対応する傾向情報とに関連付けられている追加対応情報を追加対応情報格納手段から取得し、当該取得した追加対応情報に基づいて、管理対象に対する追加対応計画を作成するので、管理対象の現実の能力及び傾向に応じた追加的な計画を作成することができ、管理対象の傾向に起因して事故が発生し易い場合であっても事故の発生を的確に防ぐことができる。
【0019】
請求項4に記載の事故防止システムによれば、現実管理環境情報取得手段が取得した現実管理環境情報と能力情報格納手段に格納された管理環境情報とに基づいて、要素動作を管理対象が行う際の基本対応計画を作成するので、管理環境の特性に応じて異なる必要能力を考慮して、個々の管理対象において事故が発生し易い状況を回避するための具体的な計画を立案することができる。
【0020】
請求項5に記載の事故防止システムによれば、基本対応計画作成手段によって作成された基本対応計画に対応する管理情報に関連付けて格納されているリソース情報をリソース情報格納手段から取得し、当該取得したリソース情報に基づき、管理対象の管理に必要なリソースを特定するので、管理に必要となるリソースと管理者が実際に保有しているリソースとを考慮した上で、適切な計画を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】事故防止システムを例示するブロック図である。
【図2】必要能力DBに格納されている情報を例示した表である。
【図3】患者の状態が低下する場合における状態変化対応計画を作成するための情報を例示した表である。
【図4】患者の状態が回復する場合における状態変化対応計画を作成するための情報を例示した表である。
【図5】追加対応DBに格納されている情報を例示した表である。
【図6】計画作成処理のフローチャートである。
【図7】基本対応計画作成部が出力部によって出力させた入力画面を例示した図である。
【図8】基本対応計画作成部出力部に出力させた実現パターン毎の達成レベル及びリスク評価結果を例示した図である。
【図9】基本対応計画作成部が作成した基本対応計画を例示した表である。
【図10】状態変化対応計画作成部が出力部によって出力させた入力画面を例示した図である。
【図11】出力部によって出力された基本対応計画、状態変化対応計画、及び追加対応計画を例示した図である。
【図12】実施の形態2に係る必要能力DBに格納されている情報を例示した表である。
【図13】計画作成処理のフローチャートである。
【図14】実施の形態3に係る事故防止システムを例示するブロック図である。
【図15】リソースDBに格納されている情報を例示した表である。
【図16】必要リソース特定処理のフローチャートである。
【図17】患者毎に特定された基本対応計画を例示した表である。
【図18】管理を行う時間帯毎に基本対応計画の実現可能性を判定した結果を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る事故防止システム、事故防止方法、及び事故防止プログラムの各実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、これら各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。なお、本発明に係る事故防止システム、事故防止方法、及び事故防止プログラムは、各種の管理環境において管理される管理対象の行動に起因する事故を防止するために用いることができるが、以下の各実施の形態では、病院において管理される患者の行動に起因する事故を防止する場合を例として説明する。
【0023】
〔実施の形態1〕
最初に、実施の形態1について説明する。この実施の形態1は、基本対応計画作成手段、状態変化対応計画作成手段、及び追加対応計画作成手段を備えた形態である。
【0024】
(構成)
まず、実施の形態1に係る事故防止システムの構成を説明する。図1は、実施の形態1に係る事故防止システムを例示するブロック図である。図1に示すように、この事故防止システム1は、入力部10、出力部20、制御部30、及びデータ記録部40を備えている。
【0025】
(構成−入力部)
入力部10は、管理対象である患者が現実に保有している能力である現実能力を特定するための現実能力情報の入力を受け付ける現実能力情報入力手段であり、患者に発生した現象を特定するための現象発生情報の入力を受け付ける現象発生情報入力手段であり、患者の現実の行動傾向を特定する現実傾向情報の入力を受け付ける現実傾向情報入力手段である。この入力部10としては、例えば公知のキーボード、マウス、タッチパネル等の入力手段を用いることができる。なお、入力部10が入力を受け付ける各種の情報の詳細については後述する。
【0026】
(構成−出力部)
出力部20は、制御部30の制御に基づいて各種の情報を出力する出力手段であり、例えば公知の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの如きフラットパネルディスプレイを使用することができる。
【0027】
(構成−制御部)
制御部30は、事故防止システム1を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、実施の形態1に係る事故防止プログラムは、任意の記録媒体又はネットワークを介して事故防止システム1にインストールされることで、制御部30の各部を実質的に構成する。
【0028】
この制御部30は、機能概念的に、基本対応計画作成部31、状態変化対応計画作成部32、及び追加対応計画作成部33を備えている。
【0029】
基本対応計画作成部31は、患者の目的を実現するための行動を構成する一連の要素動作を当該患者が行う際の基本対応計画を作成する基本対応計画作成手段である。ここで、「患者の目的を実現するための行動」としては、例えばADLが該当する。状態変化対応計画作成部32は、事故の発生の可能性を低減するために取るべき状態変化対応計画を作成する状態変化対応計画作成手段である。追加対応計画作成部33は、患者に対する追加対応計画を作成する追加対応計画作成手段である。これらの制御部30の各構成要素によって実行される処理の詳細については後述する。
【0030】
(構成−データ記録部)
データ記録部40は、事故防止システム1の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、外部記録装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。
【0031】
このデータ記録部40は、必要能力データベース(以下、データベースを「DB」と称する)41、状態変化対応DB42、及び追加対応DB43を備えている。
【0032】
(構成−データ記録部−必要能力DB)
必要能力DB41は、患者の目的を実現するための行動を構成する一連の要素動作を行う際に事故の発生を防止するために患者に求められる能力に関連する情報を格納する能力情報格納手段である。図2は、必要能力DB41に格納されている情報を例示した表である。図2に示したように、必要能力DB41には、項目「実現パターン」、「要素動作」、「達成可能レベル」、「能力要素」、「リスク評価」、及び「必要な対策」に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。さらに、要素動作を行う際に事故の発生を防止するために管理対象に求められる能力である必要能力を特定するための必要能力情報も、必要能力DB41に格納されている。
【0033】
項目「実現パターン」に対応して格納される情報は、患者の目的を実現するための行動を構成する一連の要素動作の中で事故の発生の可能性に影響し得る要素動作の組み合わせである実現パターンを特定するための実現パターン情報であり、例えば図2では「ベッド上尿器排尿」「端座位尿器排尿」等が格納されている。
【0034】
項目「要素動作」に対応して格納される情報は、実現パターンにおける要素動作を特定するための要素動作情報であり、例えば図2では「ベッド上で側臥位を保持する」「ズボン・下着の上げ下げ」等が格納されている。
【0035】
項目「達成可能レベル」に対応して格納される情報は、患者が要素動作を達成可能なレベルを特定するための情報であり、例えば図2では「安全に自立達成可能」「条件付なら安全に自立達成可能」等が格納されている。
【0036】
項目「能力要素」に対応して格納される情報は、要素動作を行う上での前記管理対象の能力を評価する尺度である複数の能力要素を特定するための能力要素情報であり、例えば図2では「見る」「認識」「つかむ」等が格納されている。
【0037】
項目「リスク評価」に対応して格納される情報は、患者が要素動作を達成可能なレベルに応じた具体的なリスクの内容を特定するためのリスク評価情報であり、例えば図2では「転落のリスクなし」「ベッド柵がないと転落のリスク有」等が格納されている。
【0038】
項目「必要な対策」に対応して格納される情報は、上述のリスク評価情報に基づき特定される具体的なリスクを回避するために必要な対策を特定するための情報であり、例えば図2では「特になし」「ベッド柵の検討・整備」等が格納されている。
【0039】
さらに、要素動作を行う際に事故の発生を防止するために管理対象に求められる能力である必要能力を特定するための必要能力情報が、項目「達成可能レベル」に対応して格納されている情報と、項目「能力要素」に対応して格納されている能力要素情報との双方に関連付けて格納されている。この必要能力情報としては、例えば必要能力に対応する数値(図2では1から5までの整数)が格納される。
【0040】
(構成−データ記録部−状態変化対応DB)
状態変化対応DB42は、状態変化が患者に生じた場合において事故の発生の可能性を低減するために取るべき対応を特定する状態変化対応情報を格納する状態変化対応情報格納手段である。図3及び図4は状態変化対応DB42に格納されている情報を例示した表であり、図3は状態低下が患者に生じた場合において取るべき対応を特定する状態変化対応情報を例示した表、図4は状態回復が患者に生じた場合において取るべき対応を特定する状態変化対応情報を例示した表である。
【0041】
図3に示すように、患者の状態低下に対応するための状態変化対応DB42には、項目「トリガーとなる症状」、「同時に現れる症状」、「注意するイベント」、「一時的な状態低下につながる症状」、「指導内容」、「行動制限」、及び「再評価のタイミング」に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。
【0042】
項目「トリガーとなる症状」、「同時に現れる症状」、及び「注意するイベント」に対応する情報としては、患者の状態低下を早期に発見して事故の発生の可能性を低減するために管理者(例えば看護士等のスタッフ)が取るべき対応(例えば、常にチェックすべき症状やイベント)を特定する状態変化対応情報が格納される。まず、項目「トリガーとなる症状」に対応して格納される情報は、状態低下が患者に生じる可能性を示す現象のトリガーとなる症状を特定するための情報であり、例えば図3では「吐血、下血」や「発熱を伴う疾患」等が格納されている。また、項目「同時に現れる症状」に対応して格納される情報は、状態低下が患者に生じる可能性を示す現象が発生した場合に、同時に患者に発生する症状を特定するための情報であり、例えば図3では「めまい、ふらつきなど」や「寒気など」が格納されている。また、項目「注意するイベント」に対応して格納される情報は、管理者がチェックすべきイベントを特定する情報であり、例えば図3では「血液検査(SPO2)で異常」や「睡眠剤使用開始時、又は処方内容変更」等が格納されている。
【0043】
項目「一時的な状態低下につながる症状」に対応して格納される情報は、事故の発生の可能性に影響し得る患者の状態変化が当該患者に生じる可能性を示す現象を特定する現象情報であり、例えば図3では患者の状態悪化が当該患者に生じる可能性を示す現象を特定する情報として、「急性的な貧血」や「睡眠剤」等が格納されている。
【0044】
項目「指導内容」、及び「行動制限」に対応する情報としては、状態低下が患者に生じた場合において事故の発生の可能性を低減するために患者や家族に対して取るべき対応(患者自身や家族に対する指導内容や患者の行動制限の範囲)を特定する状態変化対応情報が格納される。まず、項目「指導内容」に対応して格納される情報は、患者や家族に対する具体的な指導の内容を特定する情報であり、例えば図3では「貧血の影響」や「睡眠剤の影響」等が格納されている。また、項目「行動制限」に対応して格納される情報は、患者の行動制限の範囲を特定する情報であり、例えば図3では「・自立→監視、・監視→介助or1つ下のパターンで監視、・介助→そのままor1つ下のパターンで介助」が格納されている。
【0045】
項目「再評価のタイミング」に対応して格納される情報は、作成した計画の再評価を行うべきタイミングを特定するための情報であり、例えば図3では「薬の効いてくる時間帯」や「体温が大きく変化した時」が格納されている。
【0046】
また、図4に示すように、患者の状態回復に対応するための状態変化対応DB42には、項目「回復が予想される症状」、「トリガーとなる症状」、「同時に現れる症状」、「注意するイベント」、「指導内容」、「行動制限」、及び「再評価のタイミング」に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。
【0047】
項目「回復が予想される症状」に対応して格納される情報は、事故の発生の可能性に影響し得る患者の状態変化が当該患者に生じる可能性を示す現象を特定する現象情報であり、例えば図4では、患者の状態回復が当該患者に生じる可能性を示す現象を特定する情報として、「めまい」や「貧血」等が格納されている。
【0048】
項目「トリガーとなる症状」、「同時に現れる症状」、及び「注意するイベント」に対応する情報としては、状態回復が患者に生じた場合において事故の発生の可能性を低減するために管理者(例えば看護士等のスタッフ)が取るべき対応(例えば、特に注意すべき症状やイベント)を特定する状態変化対応情報が格納される。まず、項目「トリガーとなる症状」に対応して格納される情報は、状態回復が患者に生じる可能性を示す現象のトリガーとなる症状を特定するための情報であり、例えば図4では「術後・治療後の日数」や「吐血、下血がおさまる」等が格納されている。また、項目「同時に現れる症状」に対応して格納される情報は、状態回復が患者に生じる可能性を示す現象が発生した場合に、同時に患者に発生する症状を特定するための情報であり、例えば図4では「めまいの軽減」や「めまい、ふらつきの軽減」等が格納されている。また、項目「注意するイベント」に対応して格納される情報は、管理者がチェックすべきイベントを特定する情報であり、例えば図4では「自律神経系検査で回復傾向」や「血液検査(SPO2)で回復傾向」等が格納されている。
【0049】
項目「指導内容」、及び「行動制限」に対応する情報としては、状態回復が患者に生じた場合において事故の発生の可能性を低減するために患者や家族に対して取るべき対応(患者自身や家族に対する指導内容や患者の行動制限の範囲)を特定する状態変化対応情報が格納される。まず、項目「指導内容」に対応して格納される情報は、患者や家族に対する具体的な指導の内容を特定する情報であり、例えば図4では「現状のリスク、回復可能性、回復時のリスク」が格納されている。また、項目「行動制限」に対応して格納される情報は、患者の行動制限の範囲を特定する情報であり、例えば図4では「様子を見ながら,現在の状態から入院前の状態まで移行」が格納されている。
【0050】
項目「再評価のタイミング」に対応して格納される情報は、作成した計画の再評価を行うべきタイミングを特定するための情報であり、例えば図4では「予測外行動時、又は最短で1時間後」等が格納されている。
【0051】
(構成−データ記録部−追加対応DB)
追加対応DB43は、追加対応計画作成部33が患者に対する追加対応計画を作成する際に用いる情報を格納する追加対応情報格納手段である。図5は追加対応DB43に格納されている情報を例示した表である。図5に示すように、追加対応DB43には、項目「傾向」、「能力」、及び「対策」に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。
【0052】
項目「傾向」に対応して格納される情報は、患者の行動傾向を特定する傾向情報であり、例えば図5では、「指導可能」、「指導困難」、及び「意識無」が格納されている。
【0053】
項目「能力」に対応して格納される情報は、患者の能力を特定する能力情報であり、例えば図5では「歩行可能」、「歩行困難」、「立位保持困難」、「座位保持困難」等が格納されている。
【0054】
項目「対策」に対応して格納される情報は、患者に対する追加対応を特定する追加対応情報であり、例えば図5では、追加対応の種類を示す小項目「早期発見」、「影響緩和」、「特殊なリソース」、及び「抑制」に対応する追加対応情報が格納されている。例えば項目「早期発見」に対応して「離床センサ」や「ベッドセンサ」等、項目「影響緩和」に対応して「防具」や「防具、マット」等、項目「特殊なリソース」に対応して「和式ベッド」や「ベッド柵の検討、和式ベッド」等、項目「抑制」に対応して「車椅子用コントロールベルト(車椅子使用時)」や「コントロールベルト(家族希望時)」等が格納されている。
【0055】
(処理)
次に、このように構成される事故防止システム1によって実行される計画作成処理について説明する。図6は計画作成処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この計画作成処理は、例えば事故防止システム1への電源投入後、入力部10を介して計画作成処理を実行すべき旨の指示入力があった場合に起動される。
【0056】
計画作成処理の起動後、基本対応計画作成部31は、入力部10が現実能力情報の入力を受け付けるまで待機する(SA1、No)。ここで、入力部10を介した現実能力情報の入力方法は任意で、例えば基本対応計画作成部31は図7に示すような入力画面を出力部20によって出力させる。図7に例示した入力画面では、各能力要素が5段階にレベル分けされており(例えば能力要素「認識」についてはレベル5が「問題ない」、レベル4が「多少の問題がある可能性がある」、レベル3が「問題がある」、レベル2が「特に問題(昏迷、ターミナル、せん妄)」、レベル1が「意識無」)、各レベルに対応してチェックボックスが設けられている。管理者等の利用者が、患者が現実に保有している能力である現実能力に対応するレベルのチェックボックスをマウス等の入力部10を用いてチェックすることにより、入力部10を介して現実能力情報の入力が受け付けられることとなる。
【0057】
図6に戻り、入力部10が現実能力情報の入力を受け付けた場合(SA1、Yes)、基本対応計画作成部31は、入力部10が入力を受け付けた現実能力情報と、必要能力DB41に格納された要素動作情報、達成可能レベル情報、能力要素情報、及び必要能力情報とに基づいて、要素動作毎に、当該要素動作に対応する全ての能力要素において現実能力が必要能力に達している達成可能レベルを特定する(SA2)。例えば、現実能力情報として、能力要素「見る」についてレベル5、能力要素「認識」についてレベル3、能力要素「側臥位になる」についてレベル4が入力された場合、必要能力DB41に格納された要素動作情報、達成可能レベル情報、能力要素情報、及び必要能力情報によれば、実現パターン「ベッド上尿器排尿」における要素動作「ベッド上で側臥位を保持する」については、能力要素「見る」は現実能力が達成可能レベル「安全に自立達成可能」に達しており、能力要素「認識」は現実能力が達成可能レベル「リスクは伴うが自立達成可能」に達しており、能力要素「側臥位になる」は現実能力が達成可能レベル「条件付なら安全に自立達成可能」に達していることが特定される。すなわち、要素動作「ベッド上で側臥位を保持する」に対応する能力要素「見る」、「認識」、及び「側臥位になる」の全てにおいて現実能力が必要能力に達している達成可能レベルは、「リスクは伴うが自立達成可能」であることが特定される。
【0058】
次に基本対応計画作成部31は、SA2で要素動作毎に特定した達成可能レベルに基づき、実現パターンを構成する全ての要素動作において現実能力が達している達成可能レベルを特定し、その達成レベルに応じた具体的なリスクの内容を実現パターン毎に出力部20に出力させる(SA3)。例えば、図2に示した実現パターン「ベッド上尿器排尿」において、要素動作「ベッド上で側臥位を保持する」に対応する全ての能力要素において現実能力が必要能力に達している達成可能レベルが「リスクは伴うが自立達成可能」、要素動作「ズボン・下着の上げ下げ」に対応する全ての能力要素において現実能力が必要能力に達している達成可能レベルが「介助付きなら達成可能」、要素動作「尿器を取る・戻す」及び「尿器内に排尿する」に対応する全ての能力要素において現実能力が必要能力に達している達成可能レベルが「安全に自立達成可能」である場合、これらの全ての要素動作において現実能力は少なくとも達成可能レベル「介助付きなら達成可能」に達していることが特定される。この達成可能レベル「介助付きなら達成可能」に応じた具体的なリスクの内容としては、図2の例では「介助がないと転落のリスク有」が特定される。同様に各実現パターンについて特定した達成レベル及びリスク評価結果を、基本対応計画作成部31は出力部20を介して出力させる。図8は、SA3において基本対応計画作成部31が出力部20に出力させた実現パターン毎の達成レベル及びリスク評価結果を例示した図である。さらに基本対応計画作成部31は、図8に示すように、実現パターン毎の達成レベル及びリスク評価結果に加えて患者に行わせる実現パターンを選択するための選択欄(項目「実現パターンの選択」に対応する欄」)を出力部20に表示させ、管理者に実現パターンの選択を促す。
【0059】
図6に戻り、基本対応計画作成部31は、患者に行わせる実現パターンが入力部10を介して選択されるまで待機し(SA4、No)、実現パターンが選択された場合(SA4、Yes)、選択された実現パターンを構成する各要素動作についてのリスク評価結果及び必要な対策を、基本対応計画として作成する(SA5)。具体的には、SA2で要素動作毎に特定した当該要素動作に対応する全ての能力要素において現実能力が必要能力に達している達成可能レベルに対応するリスク評価結果及び必要な対策を、必要能力DB41に格納されている情報に基づいて特定し、これを基本対応計画とする。図9は基本対応計画作成部31が作成した基本対応計画の内容を例示した表である。例えば、患者に行わせる実現パターンとしてSA4において「ベッド上尿器排尿(ベッド上動作)」が選択された場合、図9に示すように、実現パターン「ベッド上尿器排尿(ベッド上動作)」を構成する要素動作「ベッド上で側臥位を保持する」、「ズボン・下着の上げ下げ」、「尿器を取る・戻す」、及び「尿器内に排尿する」の各々について、リスク評価結果「ベッド柵等がないと転落のリスク有」、「見守りがないと転落のリスク有」、「介助がないと転落のリスク有」、「ベッド柵等がないと転落のリスク有」と、必要な対策「ベッド柵の検討・整備」、「見守り」、「介助」、「ベッド柵の検討・整備」とがそれぞれ対応付けられて、基本対応計画が作成される。
【0060】
図6に戻り、SA5で基本対応計画作成部31が基本対応計画を作成した後、状態変化対応計画作成部32は、入力部10が現象発生情報の入力を受け付けたか否かを判定する(SA6)。ここで、入力部10を介した現象発生情報の入力方法は任意で、例えば状態変化対応計画作成部32は図10に示すような入力画面を出力部20によって出力させる。図10に例示した入力画面では、「状態悪化が生じる可能性を示す現象」に該当する現象のチェックボックスと、「状態回復が生じる可能性を示す現象」に該当する現象のチェックボックスとが設けられている。管理者等の利用者が、患者に発生した現象に対応するチェックボックスをマウス等の入力部10を用いてチェックすることにより、入力部10を介して現象発生情報の入力が受け付けられることとなる。
【0061】
図6に戻り、入力部10が現象発生情報の入力を受け付けた場合(SA6、Yes)、状態変化対応計画作成部32は、入力部10が入力を受け付けた現象発生情報に対応する現象情報に関連付けられている状態変化対応情報を状態変化対応DB42から取得する(SA7)。例えば現象発生情報として「急性的な貧血」が入力された場合、図3の状態変化対応DB42によれば、対応する状態変化対応情報として、項目「トリガーとなる症状」については「吐血、下血」、項目「同時に現れる症状」については「めまい、ふらつきなど」、項目「注意するイベント」については「血液検査(SPO2)で異常」、項目「指導内容」については「−」、項目「行動制限」については「・自立→監視、・監視→介助or1つ下のパターンで監視、・介助→そのままor1つ下のパターンで介助」、及び項目「再評価のタイミング」については「−」が取得される。また、現象発生情報として「めまい」が入力された場合、図4の状態変化対応DB42によれば、対応する状態変化対応情報として、項目「トリガーとなる症状」については「(術後・治療後の日数)」、項目「同時に現れる症状」については「めまいの軽減」、項目「注意するイベント」については「自律神経系検査で回復傾向」、項目「指導内容」については「現状のリスク 回復可能性 回復時のリスク」、項目「行動制限」については「様子を見ながら,現在の状態から入院前の状態まで移行」、及び項目「再評価のタイミング」については「予測外行動時 最短で1時間後」が取得される。
【0062】
図6に戻り、状態変化対応計画作成部32は、SA7で取得した状態変化対応情報に基づいて、患者に対する状態変化対応計画を作成する(SA8)。例えば、状態変化対応情報として項目「行動制限」について「・自立→監視、・監視→介助or1つ下のパターンで監視、・介助→そのままor1つ下のパターンで介助」が取得された場合、患者に対して取るべき対応として、患者が自立している場合は患者の行動を監視下に制限し、患者の行動が監視下にある場合は当該患者の行動を介助又は1段階容易な実現パターンに制限し、患者が介助されている場合は当該患者の行動を現状維持又は1段階容易な実現パターンに制限する旨の計画が作成される。
【0063】
SA6において入力部10が現象発生情報の入力を受け付けなかった場合(SA6、No。例えば、現象発生情報の入力を行うことなく所定時間が経過した場合や、現象発生情報の入力を行わない旨が入力部10を介して入力された場合)、またはSA8の処理の後、追加対応計画作成部33は、入力部10が現実傾向情報の入力を受け付けたか否かを判定する(SA9)。ここで、入力部10を介した現実傾向情報の入力方法は任意で、例えばSA1において入力部10が現実能力情報の入力を受け付けた場合において(SA1、Yes)、能力要素「認識」について入力された現実能力情報に基づく現実傾向情報の入力も受け付けたと判定してもよい。例えば、能力要素「認識」についてレベル5「問題ない」が入力された場合は現実傾向情報として「指導可能」が入力されたものとし、能力要素「認識」についてレベル2「特に問題(昏迷、ターミナル、せん妄)」からレベル4「多少の問題がある可能性がある」が入力された場合は現実傾向情報として「指導困難」が入力されたものとし、能力要素「意識無」が入力された場合は現実傾向情報として「意識無」が入力されたものとしてもよい。あるいは、現実能力情報とは独立して、現実傾向情報の入力をマウス等の入力部10を介して受け付けるようにしてもよい。
【0064】
入力部10が現実傾向情報の入力を受け付けたと判定した場合(SA9、Yes)、追加対応計画作成部33は、入力部10が入力を受け付けた現実能力情報に対応する能力情報と、入力部10が受け付けた現実傾向情報に対応する傾向情報とに関連付けられている追加対応情報を、追加対応DB43から取得する(SA10)。例えば、図7の入力画面において、能力要素「歩行」についてレベル2「介助をすればできる(歩行困難)」が入力され、能力要素「認識」についてレベル3「問題がある」が現実能力情報として入力された(現実傾向情報として「指導困難」が入力されたとする)場合、これらに対応する能力情報「歩行困難」及び対応する傾向情報「指導困難」に関連付けられている追加対応情報として、早期発見について「離床センサ」、影響緩和について「防具」、特殊なリソース及び抑制について「特になし」が追加対応DB43から取得される。
【0065】
図6に戻り、追加対応計画作成部33は、SA10で取得した追加対応情報に基づいて、患者に対する追加対応計画を作成する(SA11)。例えば追加対応情報として、早期発見について「離床センサ」が取得された場合、歩行が困難且つ事故防止のための指導が困難な患者による歩行動作を早期に発見し事故を防止するため、患者がベッドから離れて立ち上がろうとする動作を検出する離床センサの設置を追加対応計画として作成する。
【0066】
SA9において入力部10が現実傾向情報の入力を受け付けなかった場合(SA9、No)、またはSA11の処理の後、基本対応計画作成部31は、SA5で作成された基本対応計画、SA8で状態変化対応計画が作成された場合には当該状態変化対応計画、及びSA11で追加対応計画が作成された場合には当該追加対応計画を、出力部20を介して出力させる(SA12)。図11は、出力部20によって出力された基本対応計画、状態変化対応計画、及び追加対応計画を例示した図である。例えば図11に示すように、入力部10が入力を受け付けた患者に関する現実能力情報や現象発生情報、現実傾向情報等に応じて、当該患者に対する基本対応計画、状態変化対応計画、及び追加対応計画が画面上に並列表示される。なお、基本対応計画、状態変化対応計画、及び追加対応計画を、出力部20を介して出力させると共に、管理対象である患者を一意に識別する識別情報と相互に関連付けてデータ記録部40に記録するようにしてもよい。SA12の処理の後、制御部30は計画作成処理を終了する。
【0067】
(効果)
このように実施の形態1によれば、入力部10が入力を受け付けた現実能力情報と、必要能力DB41に格納された要素動作情報、達成可能レベル情報、能力要素情報、及び必要能力情報とに基づいて、要素動作毎に、当該要素動作に対応する全ての能力要素において現実能力が必要能力に達している達成可能レベルを特定し、当該特定した達成可能レベルに基づいて、当該要素動作を患者が行う際の基本対応計画を作成するので、各種の動作に対する患者毎の能力を考慮し、個々の患者において事故が発生し易い状況を回避するための具体的な計画を立案することができる。
【0068】
また、入力部10が入力を受け付けた現象発生情報に対応する現象情報に関連付けられている状態変化対応情報を状態変化対応DB42から取得し、当該取得した状態変化対応情報に基づいて状態変化対応計画を作成するので、予測される患者の状態変化に対応して状態変化対応計画を作成することができ、事故が発生し易い状況を未然に回避することができる。
【0069】
また、入力部10が入力を受け付けた現実能力情報に対応する能力情報と、入力部10が入力を受け付けた現実傾向情報に対応する傾向情報とに関連付けられている追加対応情報を追加対応DB43から取得し、当該取得した追加対応情報に基づいて、患者に対する追加対応計画を作成するので、患者の現実の能力及び傾向に応じた追加的な計画を作成することができ、患者の傾向に起因して事故が発生し易い場合であっても事故の発生を的確に防ぐことができる。
【0070】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。この形態は、管理環境情報取得手段を備えた形態である。なお、実施の形態2の構成は特記する場合を除いて実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたものと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0071】
(構成−入力部)
まず、実施の形態2に係る事故防止システム1の構成について説明する。実施の形態2に係る事故防止システム1の入力部10は、現象発生情報や現実傾向情報に加えて、患者が現実に管理されている管理環境の特性を特定するための現実管理環境情報の入力を受け付ける。
【0072】
(構成−制御部)
制御部30は、基本対応計画作成部31、状態変化対応計画作成部32、及び追加対応計画作成部33に加えて、管理環境情報取得部を備えている(図示省略)。管理環境情報取得部は、患者が現実に管理されている管理環境の特性を特定するための現実管理環境情報を取得する現実管理環境情報取得手段である。
【0073】
(構成−データ記録部−必要能力DB)
図12は、本実施の形態2に係る必要能力DB41に格納されている情報を例示した表である。図12に示すように、必要能力DB41は、項目「管理環境」に対応する情報が、他の項目に対応する情報と相互に関連付けて格納されている。この項目「管理環境」に対応して格納される情報は、管理環境の特性を特定するための管理環境情報であり、例えば図12では「尿器の設置場所」や「掴まれるベッド柵の有無」を特定する情報が格納されている。
【0074】
(処理)
次に、実施の形態2に係る事故防止システム1によって実行される計画作成処理について説明する。図13は計画作成処理のフローチャートである。ただし、本実施の形態2における計画作成処理のSB3からSB12は、図6のSA3からSA12と同様であるため、説明を省略する。
【0075】
計画作成処理の起動後、基本対応計画作成部31は、入力部10が現実能力情報の入力を受け付け、且つ管理環境情報取得部が現実管理環境情報を取得するまで待機する(SB1、No)。なお、管理環境情報取得部が現実管理環境情報を取得する方法は任意で、例えば入力部10を介して入力された管理環境情報を取得する。
【0076】
入力部10が現実能力情報の入力を受け付け、且つ管理環境情報取得部が現実管理環境情報を取得した場合(SB1、Yes)、基本対応計画作成部31は、入力部10が入力を受け付けた現実能力情報及び管理環境情報取得部が取得した現実管理環境情報に対応する管理環境情報と、必要能力DB41に格納された要素動作情報、達成可能レベル情報、能力要素情報、必要能力情報、及び管理環境情報とに基づいて、要素動作毎に、当該要素動作に対応する全ての能力要素において現実能力が必要能力に達している達成可能レベルを特定する(SB2)。
【0077】
例えば、現実能力情報として、能力要素「見る」についてレベル5、能力要素「認識」についてレベル3、能力要素「側臥位になる」についてレベル5、能力要素「端座位保持」についてレベル3が入力され、現実管理環境情報として、「尿器の設置場所」について「身体を乗り出して手を伸ばさないと届かない場所」、「掴まれるベッド柵の有無」について「有」が入力された場合、必要能力DB41に格納された要素動作情報、管理環境情報、達成可能レベル情報、能力要素情報、及び必要能力情報によれば、実現パターン「ベッド上尿器排尿」における要素動作「尿器を取る・戻す」については、能力要素「見る」は現実能力が達成可能レベル「安全に自立達成可能」に達しており、能力要素「認識」は現実能力が達成可能レベル「リスクは伴うが自立達成可能」に達しており、能力要素「側臥位になる」は現実能力が達成可能レベル「リスクは伴うが自立達成可能」に達しており、能力要素「端座位保持」は現実能力が達成可能レベル「リスクは伴うが自立達成可能」に達していることが特定される。すなわち、要素動作「尿器を取る・戻す」に対応する能力要素「見る」、「認識」、「側臥位になる」、及び「端座位保持」の全てにおいて現実能力が必要能力に達している達成可能レベルは、「リスクは伴うが自立達成可能」であることが特定される。
【0078】
(効果)
このように実施の形態2によれば、現実管理環境情報取得部が取得した現実管理環境情報と必要能力DB41に格納された管理環境情報とに基づいて、要素動作を患者が行う際の基本対応計画を作成するので、管理環境の特性に応じて異なる必要能力を考慮して、個々の患者において事故が発生し易い状況を回避するための具体的な計画を立案することができる。
【0079】
〔実施の形態3〕
次に、実施の形態3について説明する。この形態は、必要リソース特定手段を備えた形態である。なお、実施の形態3の構成は特記する場合を除いて実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたものと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0080】
(構成)
まず、実施の形態3に係る事故防止システム1の構成について説明する。図14は、実施の形態3に係る事故防止システム1を例示するブロック図である。
【0081】
(構成−制御部)
制御部30は、図14に示すように、機能概念的に、基本対応計画作成部31、状態変化対応計画作成部32、及び追加対応計画作成部33に加えて、必要リソース特定部34を備えている。必要リソース特定部34は、管理対象である患者の管理に必要なリソースを特定する必要リソース特定手段である。
【0082】
(構成−データ記録部)
データ記録部40は、必要能力DB41、状態変化対応DB42、及び追加対応DB43に加えて、リソースDB44を備えている。リソースDB44は、患者の管理に必要なリソースに関する情報を格納するリソース情報格納手段である。図15は、リソースDB44に格納されている情報を例示した表である。図15に示したように、リソースDB44には、項目「実現パターン」、「管理内容」、及び「必要リソース」に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。
【0083】
項目「実現パターン」に対応して格納される情報は実現パターン情報であり、例えば図15では「ベッド上尿器排尿」「端座位尿器排尿」等が格納されている。
【0084】
項目「リスク評価結果」及び「必要な対策」に対応して格納される情報は、患者に対する管理内容を特定する管理情報であり、例えば図15では項目「リスク評価結果」に対応して「転落のリスクなし」等、項目「必要な対策」に対応して「特になし」等が格納されている。
【0085】
項目「必要リソース」に対応して格納される情報は、管理内容による管理に必要なリソースを特定するリソース情報であり、例えば図15では小項目「人的リソース」に対応して「0」等が格納され、小項目「物的リソース」に対応して「尿器」等が格納されている。
【0086】
(処理)
次に、このように構成される事故防止システム1によって実行される必要リソース特定処理について説明する。図16は必要リソース特定処理のフローチャートである。この必要リソース特定処理は、例えば事故防止システム1への電源投入後、入力部10を介して必要リソース特定処理を実行すべき旨の指示入力があった場合に起動される。
【0087】
必要リソース特定処理の起動後、必要リソース特定部34は、計画作成処理において基本対応計画が作成されたか否かを判定する(SC1)。その結果、基本対応計画が作成されていない場合(SC1、No)、必要リソースを特定すべき対象となる基本対応計画がないものとし、制御部30は必要リソース特定処理を終了する。
【0088】
一方、計画作成処理において基本対応計画が作成された場合(SC1、Yes)、必要リソース特定部34は、当該作成された基本対応計画を管理対象の患者毎に特定する(SC2)。基本対応計画の特定方法は任意で、例えば患者を一意に識別する識別情報を入力部10を介して取得し、当該取得した識別情報に関連付けてデータ記録部40に記録されている基本対応計画を特定する。図17は、患者毎に特定された基本対応計画を例示した表である。この図17に示したように、管理を行う時間帯(図17では「日勤帯」、「準夜勤帯(照明点灯中)」等)毎に基本対応計画を特定してもよい。
【0089】
図16に戻り、必要リソース特定部34は、SC2で特定した基本対応計画に対応する管理情報に関連付けて格納されているリソース情報をリソースDB44から取得し、当該取得したリソース情報に基づき、各患者の管理に必要なリソースを特定する(SC3)。例えば、図17の例において、患者ID「0001」の患者に対する夜勤帯の基本対応計画として実現パターン「ベッド上尿器排尿」における基本対応計画「介助がないと転落のリスク有」が特定された場合、図15によれば、当該基本対応計画に対応するリソース情報として人的リソース「4」及び物的リソース「尿器」が特定される。
【0090】
図16に戻り、必要リソース特定部34は、特定した各患者の基本対応計画についての必要リソースの合計と、管理者(例えば病院)の保有リソースとを比較し、基本対応計画の実現可能性を判定し、当該判定結果を出力部20を介して出力させる(SC4)。管理者の保有リソースは、例えばデータ記録部40に管理を行う時間帯毎に記録されている。図18は、管理を行う時間帯毎に基本対応計画の実現可能性を判定した結果を例示した図である。この図18では、人的リソースと物的リソース(ここでは、上述の「尿器」に加え「車椅子」を物的リソースに加えた例を示す)のそれぞれの判定結果と、さらにこれら人的リソースの判定結果と物的リソースの判定結果に基づく総合判定の結果とを、管理を行う時間帯毎に示している。ここでは、人的リソースと物的リソースの各々について、保有リソースが必要リソースの合計以上である場合には判定結果が「OK」とされ、保有リソースが必要リソースの合計未満の場合には判定結果が「NG」とされる。また、人的リソースの判定結果が「OK」であり、かつ、物的リソースの判定結果が「OK」である場合には、総合判定の判定結果が「OK」とされ、それ以外の場合には、総合判定の判定結果が「NG」とされる。例えば、図18の例では、管理を行う時間帯が日勤帯である場合に関して、人的リソースに関しては、必要リソースの合計=28が、保有リソース=30以下であるため、判定結果=OKとなっている。同様に、同時間帯の物的リソースに関して、尿器については、必要リソースの合計=6が、保有リソース=10以下であるため、判定結果=OKとなっており、車椅子については、必要リソースの合計=4が、保有リソース=8以下であるため、判定結果=OKとなっている。そして、同時間帯に関して、人的リソースの判定結果=OKであり、物的リソースの判定結果=OKであるため、総合判定結果=OKとなっている。SC4の処理の後、制御部30は必要リソース特定処理を終了する。
【0091】
(効果)
このように実施の形態3によれば、基本対応計画作成部31によって作成された基本対応計画に対応する管理情報に関連付けて格納されているリソース情報をリソースDB44から取得し、当該取得したリソース情報に基づき、患者の管理に必要なリソースを特定するので、管理に必要となるリソースと管理者が実際に保有しているリソースとを考慮した上で、適切な計画を決定することができる。
【0092】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0093】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。
【0094】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散又は統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散又は統合して構成できる。
【0095】
(各実施の形態の相互の関係について)
上記説明した各実施の形態は、任意の組み合わせで相互に組み合わせることができる。例えば、実施の形態2と実施の形態3とを組み合わせてもよい。この場合、リソースDB44には、管理情報、リソース情報、及び管理環境情報を相互に関連付けて格納される。そして、基本対応計画作成部31によって作成された基本対応計画に対応する管理情報と、現実管理環境情報取得部が取得した現実管理環境情報とに関連付けて格納されているリソース情報をリソースDB44から取得し、当該取得したリソース情報に基づき、患者の管理に必要なリソースを特定する。これにより、管理環境に応じて必要なリソースが異なる点(例えば、ベッドからトイレまでの距離に応じて付き添いに必要な時間が異なる点や、尿器の設置場所に応じて必要な人的リソースが異なる点等)を考慮した上で、適切な計画を決定することができる。
【0096】
(管理計画作成処理について)
上述の実施の形態1では、図6のSA4で基本対応計画作成部31が基本対応計画を作成した後に、入力部10が現象発生情報の入力を受け付けたか否かを状態変化対応計画作成部32が判定する(SA5)と説明したが、管理計画作成処理の実行中に随時入力部10を介して現象発生情報の入力を受け付けられるようにし、現象発生情報の入力が受け付けられた場合にはSA6及びSA7の処理を割り込み処理として実行するようにしてもよい。
【0097】
(必要リソース特定処理について)
上述の実施の形態1又は2で説明した管理計画作成処理において作成された各患者の基本対応計画を電子カルテに入力するとともに、上述の実施の形態3で図16を参照して説明した必要リソース特定処理においてSC4で実現可能と判断された基本対応計画について、SC3で特定された各患者の管理に必要なリソースを当該各患者の電子カルテに入力するようにしてもよい。これにより、電子カルテに入力された基本対応計画及び当該基本対応計画に必要なリソースに基づき、個々の患者に対する管理や、各患者の配置、医療スタッフの配置、あるいは物的リソースの配置等、病床全体の管理が可能となる。
【符号の説明】
【0098】
1 事故防止システム
10 入力部
20 出力部
30 制御部
31 基本対応計画作成部
32 状態変化対応計画作成部
33 追加対応計画作成部
34 必要リソース特定部
40 データ記録部
41 必要能力DB
42 状態変化対応DB
43 追加対応DB
44 リソースDB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理環境において管理される管理対象の行動に起因する事故を防止するためのシステムであって、
前記管理対象の目的を実現するための行動を構成する一連の要素動作の中で前記事故の発生の可能性に影響し得る要素動作の組み合わせである実現パターンを特定するための実現パターン情報と、前記実現パターンにおける前記要素動作を特定するための要素動作情報と、前記要素動作毎に前記管理対象が当該要素動作を達成可能なレベルを特定するための達成可能レベル情報と、前記要素動作を行う上での前記管理対象の能力を評価する尺度である複数の能力要素を特定するための能力要素情報と、前記要素動作を行う際に前記事故の発生を防止するために前記管理対象に求められる能力である必要能力を前記能力要素毎に特定するための必要能力情報とを、相互に関連付けて格納する能力情報格納手段と、
前記必要能力に対して、前記管理対象が現実に保有している能力である現実能力を特定するための現実能力情報の入力を受け付ける現実能力情報入力手段と、
前記現実能力情報入力手段が入力を受け付けた現実能力情報と、前記能力情報格納手段に格納された前記要素動作情報、前記達成可能レベル情報、前記能力要素情報、及び前記必要能力情報とに基づいて、前記要素動作毎に、当該要素動作に対応する全ての前記能力要素において前記現実能力が前記必要能力に達している前記達成可能レベルを特定し、当該特定した達成可能レベルに基づいて、当該要素動作を前記管理対象が行う際の基本対応計画を作成する基本対応計画作成手段と、
を備える事故防止システム。
【請求項2】
前記事故の発生の可能性に影響し得る前記管理対象の状態変化が当該管理対象に生じる可能性を示す現象を特定する現象情報と、前記状態変化が前記管理対象に生じた場合において前記事故の発生の可能性を低減するために取るべき対応を特定する状態変化対応情報とを、相互に関連付けて格納する状態変化対応情報格納手段と、
前記管理対象に発生した前記現象を特定するための現象発生情報の入力を受け付ける現象発生情報入力手段と、
前記現象発生情報入力手段が入力を受け付けた現象発生情報に対応する前記現象情報に関連付けられている前記状態変化対応情報を前記状態変化対応情報格納手段から取得し、当該取得した状態変化対応情報に基づいて状態変化対応計画を作成する状態変化対応計画作成手段と、
を備える請求項1に記載の事故防止システム。
【請求項3】
前記管理対象の能力を特定する能力情報と、当該管理対象の行動傾向を特定する傾向情報と、当該管理対象に対する追加対応を特定する追加対応情報とを、相互に関連付けて格納する追加対応情報格納手段と、
前記管理対象の現実の行動傾向を特定する現実傾向情報の入力を受け付ける現実傾向情報入力手段と、
前記現実能力情報入力手段が入力を受け付けた現実能力情報に対応する前記能力情報と、前記現実傾向情報入力手段が入力を受け付けた現実傾向情報に対応する前記傾向情報とに関連付けられている前記追加対応情報を前記追加対応情報格納手段から取得し、当該取得した追加対応情報に基づいて、前記管理対象に対する追加対応計画を作成する追加対応計画作成手段と、
を備える請求項1又は2に記載の事故防止システム。
【請求項4】
前記管理対象が現実に管理されている前記管理環境の特性を特定するための現実管理環境情報を取得する現実管理環境情報取得手段を備え、
前記能力情報格納手段は、
前記管理環境の特性を特定する管理環境情報を、前記実現パターン情報、前記要素動作情報、前記能力要素情報、及び前記必要能力情報と相互に関連付けて格納し、
前記基本対応計画作成手段は、
前記現実管理環境情報取得手段が取得した現実管理環境情報と前記能力情報格納手段に格納された前記管理環境情報とに基づいて、前記要素動作を前記管理対象が行う際の基本対応計画を作成する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の事故防止システム。
【請求項5】
前記管理対象に対する管理内容を特定する管理情報と、当該管理内容による管理に必要なリソースを特定するリソース情報とを、相互に関連付けて格納するリソース情報格納手段と、
前記基本対応計画作成手段によって作成された前記基本対応計画に対応する前記管理情報に関連付けて格納されている前記リソース情報を前記リソース情報格納手段から取得し、当該取得したリソース情報に基づき、前記管理対象の管理に必要なリソースを特定する必要リソース特定手段と、
を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の事故防止システム。
【請求項6】
管理環境において管理される管理対象の行動に起因する事故を防止するための方法であって、
前記管理対象の目的を実現するための行動を構成する一連の要素動作の中で前記事故の発生の可能性に影響し得る要素動作の組み合わせである実現パターンを特定するための実現パターン情報と、前記実現パターンにおける前記要素動作を特定するための要素動作情報と、前記要素動作毎に前記管理対象が当該要素動作を達成可能なレベルを特定するための達成可能レベル情報と、前記要素動作を行う上での前記管理対象の能力を評価する尺度である複数の能力要素を特定するための能力要素情報と、前記要素動作を行う際に前記事故の発生を防止するために前記管理対象に求められる能力である必要能力を前記能力要素毎に特定するための必要能力情報とを、相互に関連付けて記憶手段に格納する能力情報格納ステップと、
前記必要能力に対して、前記管理対象が現実に保有している能力である現実能力を特定するための現実能力情報の入力を入力手段を介して受け付ける現実能力情報入力ステップと、
前記現実能力情報入力ステップで入力を受け付けた現実能力情報と前記能力情報格納ステップで前記記憶手段に格納された前記要素動作情報、前記達成可能レベル情報、前記能力要素情報、及び前記必要能力情報とに基づいて、前記要素動作毎に、当該要素動作に対応する全ての前記能力要素において前記現実能力が前記必要能力に達している前記達成可能レベルを特定し、当該特定した達成可能レベルに基づいて、当該要素動作を前記管理対象が行う際の基本対応計画を作成する基本対応計画作成ステップと、
を含む事故防止方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法をコンピュータに実行させる事故防止プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−186988(P2011−186988A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54234(P2010−54234)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(502099201)
【出願人】(504426089)
【出願人】(510067968)