説明

二光子光増感剤、それらを含むナノ粒子および薬物としてのそれらの使用

本発明は、式(I):


(式中、基AおよびBは、互いに独立して、-CH=CH-または-C≡C-を表し、用語t、u、v、wは、互いに独立して、0〜9の範囲の値を表し、基Y1およびY2は、互いに独立して、1〜9個の炭素原子を有するアルキル基(直鎖状、分枝鎖状または置換された)を表すことができ、、基Z1、Z2、Z3およびZ4は、互いに独立して、OH、NH2、SHのような化学的に反応性の基Wを表すことができ、基Z5およびZ6は、互いに独立して水素原子を表す)の化合物、こられの化合物によって官能化されたシリカナノ粒子、および薬物としてのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二光子光増感剤、該二光子光増感剤の少なくとも一つを含むシリカナノ粒子、ならびに薬物としての該二光子光増感剤およびナノ粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
光増感剤は、規定された波長範囲、例えば可視または近赤外スペクトルの照射を吸収することができる化合物である。該照射吸収は、光増感剤をより高エネルギーの電子状態に励起する。光増感剤は、それらの励起エネルギーを他の分子(特に酸素分子)に移すことができるが、エネルギーは、蛍光を含む他の競合機構により放出もされる。
【0003】
一光子光増感剤のほとんどは、ポルフィリン誘導体である;しかしながら、ただ一つのポルフィリンは、興味のあるスペクトル領域で低い二光子吸収(TPA)断面積を有する(テトラフェニルポルフィンは15 GM)(Drobizhevら, Chem. Phys. Lett. 2002, 355, 175-182)。巨大だが一光子共鳴TPA断面積が、蛍光量子収率の確実な減少(抑制がなければ)および残りの一光子吸収がTPAバンドと重複することを犠牲にして、拡張されたポルフィリン (Rathら, J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 11608-11609) (Misraら, Org. Lett. 2006, 8, 629-631)、ジインポルフィリンダイマー (Ogawaら, J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 13356-13357)、縮合ポルフィリンダイマー (Kimら, J. Phys. Chem. A 2005, 109, 2996-2999)、ポルフィリン多量体(arrays) (Ahnら, Am. Chem. Soc. 2006, 128, 1700-1704)、または超分子集合体 (Ogawaら, J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 13356-13357) (Ogawaら, J. Med. Chem. 2006, 49, 2276-2283)を用いて得られる。
【0004】
この一光子共鳴増強は、巨大なTPA値に由来するが、選択的なTPAに起因するいくつかの利点、特に3D分解能(resolution)の損失ももたらすことが強調されるべきである。
【0005】
分子二光子吸収(TPA)は、ここ数年、光線力学的療法(PDT)のような、それが提示する広範囲な適用との関連で、増大する注目を得ている (Bhawalkarら, J. Clin. Laser Med. Surg. 1997, 15, 201-204) (Kimら, J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 2669-2675) (Collinsら, Nat Photon 2008, 2, 420)。この適用は、(この非線形過程の確率を増加させるため)両方のパルス線源、すなわちフェムト秒、ピコ秒、または場合によりナノ秒レーザーと非常に高いTPA断面積を示す発色団を必要とし(このことがレーザー源の観点から提案する強力だが幅広くもあるバンドが、多用途のために強く望ましい)、より効率的な励起あるいは励起強度の減少のいずれか(より費用のかからないレーザー源の使用)を可能にする。このことはまた、生体媒体中で非常に選択的な励起、固有の3次元分解能、およびより低い励起強度を用いることによる光障害の減少に対する能力を含む、生物学的または生物医学的適用に対して非常に多くの利点を提示する。対象とされる適用により、TPA発色団は異なる要件を満たさなければならない、すなわち、分子工学は、ペクトル領域および特定の付加的特徴の観点から、所望の適用に依存する。例えば、生体撮像の場合、高い蛍光量子収率、光安定性および無害であることが要求されるのに対して、PDTに対しては、高い一重項酸素の産生が必要とされる。
【0006】
光線力学的療法は、光増感剤に依存している。光増感剤は、特に悪性組織に局在し、可視または近赤外領域の適当な波長の光源により励起されるとき、それらのエネルギーをそれらの周りの過剰な分子酸素へ伝達する。
【0007】
光増感剤の活性化は、フリーラジカルおよび一重項酸素のような反応性の酸素種を発生させる。これらの活性な酸素種、および特に一重項酸素は、それらを取り囲む細胞に対して毒性があり、それらの近接の悪性組織の破壊をもたらす。これらの反応性の酸素種は、細胞膜を酸化し、光増感剤を含む細胞の不可逆的な損傷をもたらす。
【0008】
光線力学的療法は、二重の選択性:光増感剤を含む組織の選択的照射および標的組織に対する光増感剤の選択性に基づく。照射がなければ、光増感剤は毒性ではなく、したがって、生体によるそれらの拡散はほとんど重要でない。
【0009】
光増感剤は、インビボでの使用に適するために、いくつかの性質を示さなければならない。それは、容易に癌細胞を標的とし、水溶性で、製造および官能化するのが容易で、照射に曝されなければ非毒性で、一般的な酵素に対して安定で、健常組織により迅速に廃棄されなければならない。しかしながら、光増感剤のクラスに属するほとんどの分子は、疎水性であり、特に非経口的注射による生体内へのそれらの導入は、複雑な製剤を必要とする。そのような製剤は、特にコロイド懸濁液、リポソーム、ナノ粒子である。これらの製剤は、水性媒体中での光増感剤の安定性を可能にし、癌細胞へのそれらの輸送を可能にする。癌細胞の標的化は、特に、特定のバイオターゲッティング要素により達成される。これらの製剤のもう一つの制約は、光増感剤の効力を保つことであり、それは、それらの周りの分子酸素から反応性の酸素種を発生させる能力を意味する。あるタイプの製剤は、光増感剤の励起状態と相互作用し、光増感剤の効力を減少する。
【0010】
シリカナノ粒子中の光増感剤の製剤は、光線力学的療法に対する有望な方法として認められている。そのような製剤は、WO2004/067508; WO2008/030624 ; I. Royら, J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 7860-7865に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、これらの製剤は、しばしば、光増感剤が標的とする癌細胞に達するまえに、生体内で光増感剤の早期の漏出を引き起こす。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的の一つは、さらに官能化することができる新しい二光子光増感剤を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、シリカナノ粒子中に取り込まれることができ、該シリカナノ粒子と共有的に結合させることができる新しい二光子光増感剤を提供することである。
本発明の目的の一つは、二光子光増感剤の二光子吸収の性質の損失なしに、該二光子光増感剤によって官能化されたシリカナノ粒子を提供することである。
【0013】
本発明のもう一つの目的は、二光子光増感剤で官能化された非毒性のシリカナノ粒子を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、二光子光増感剤で官能化されたシリカナノ粒子を提供することであり、該シリカナノ粒子は特定の細胞を標的とするように官能化もされる。
本発明のもう一つの目的は、二光子光増感剤で官能化されたシリカナノ粒子を提供することであり、該シリカナノ粒子は前記光増感剤の一光子励起を避けるために官能化もされる。
【0014】
本発明は、一番目に、生物医学的適用:ターゲッティング、モニタリング(蛍光画像)および療法(PDTのための一重項酸素の光増感産生)のために、同じ二光子光増感剤中の蛍光と一重項酸素の両方を組み合わせることを目指し、二番目に、癌細胞の照射まで光増感剤の完全な効力を保つために、ナノ粒子からの光増感剤の漏出を避けることを目指している。
【0015】
本発明は、式(I)の化合物に関する:
【化1】

【0016】
[式中、
基AおよびBは、互いに独立して、-CH=CH-または-C≡C-を表し、
用語t、u、v、wは、互いに独立して、0〜9の範囲の値を表し、
基Y1およびY2は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- 1〜9個の炭素原子を有するアルキル基(直鎖状、分枝鎖状または置換された)、または
- 式:-(CH2)n-O-(CH2CH2O)mCH3(ここで、n < 4、mは1〜6で変化する)のポリエチレングリコール鎖、または
- 式:-(CH2)p-NR3+ X-(ここで、X-は、ハロゲン、トシレート、サルフェート、ホスフェート、NTf2、PF6アニオンから選択され、pは1〜6で変化し、Rは1〜9個の炭素原子の直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖である)
を表し、
【0017】
基Z1、Z2、Z3およびZ4は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- OH、NH2、SHのような化学的に反応性の基W、
- -α-β-δで構成される分子クリップとして用いられる基V、
(ここで、
*αは、カルバメート、ウレア、チオカルバメート、アミドのような官能性結合基であり、
*βは、1〜9個の炭素原子を含む、直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖であり、
*δは、Si(OR')3基(ここで、R'は1〜9個の炭素原子の直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖である)である)、または
【0018】
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲のアリール、アリールオキシ、アラアルキル、アラアルキルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ基、または
- 1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 式:-(CH2)q-O-(CH2CH2O)r-CH2CH2-W(ここで、q < 4、rは1〜6で変化し、Wは前記で定義された化学的に反応性の基である)のポリエチレングリコール鎖
を表す、
但し、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つは、
- OH、NH2、SHのような化学的に反応性の基W、
- -α-β-δで構成される分子クリップとして用いられる基V、
(ここで、
*αは、カルバメート、ウレア、チオカルバメート、アミドのような官能性結合基であり、
*βは、1〜9個の炭素原子を含む、直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖であり、
*δは、Si(OR')3基(ここで、R'は1〜9個の炭素原子の直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖である)である)、または
【0019】
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲のアリール、アリールオキシ、アラアルキル、アラアルキルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ基、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 式:-(CH2)q-O-(CH2CH2O)r-CH2CH2-W(ここで、q < 4、rは1〜6で変化し、Wは前記で定義された化学的に反応性の基である)のポリエチレングリコール鎖
を表し、
【0020】
基Z5およびZ6は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- 1〜9個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 1〜9個の炭素原子の範囲の、アルコキシ基、炭素環式基、複素環式基、芳香族基
を表すか、または
- Z5およびZ6は、エチレングリコール基を介して一緒に結合し、それゆえに、それらが結合するチオフェン基と一緒に3,4-エチレンジオキシチオフェン基(EDOT):
【0021】
【化2】

を与える]。
【0022】
「化学的に反応性の基」の用語は、少なくとも一つの求核中心を含む化学官能基を意味し、ここで、該求核中心は、酸素、窒素または硫黄のような原子から構成され得る。求核的化学官能基は、例えばアルコール、アミン、チオール、ヒドラジン、ヒドロキシルアミンであり得る。
【0023】
「分子クリップ」の用語は、原料の構造に組み込むことが可能な少なくとも一つの官能基を含む化学基を意味し、それゆえに、該分子クリップにより官能化されている化合物を原料と結合させる。分子クリップ基(V基)のアルコキシシラン基(δ部分)は、材料の種類のために、化合物に対する錨として働き、本願発明において、該材料はシリカ(酸化ケイ素)である。
【0024】
前記のように、基Vは、-α-β-δ(ここで、αは官能性結合基である)により構成される。二光子吸収性を有する中核部の末端の第3級アミンのアルキル鎖は、α基を介してV基と結合する。したがって、Z1がV基である場合、Z1は、
【化3】

として表すことができる。
【0025】
「官能性結合基」の用語は、少なくとも二つの異なる部分により置換され、これらの部分の間に共有結合を生じる化学官能基を意味する。該官能性結合基は、少なくとも二つの化学官能化の化学反応により得られ、それぞれの官能化は、官能基に結合される前記部分の一つにより行われる。
【0026】
式(I)の化合物は、光増感剤として用いられることができる。「光増感剤」の用語は、別の物質(分子)に光化学反応または光物理反応を誘発し、該反応で構造的に変化しない光吸収物質を意味する。本発明において、誘発される光化学反応は一重項酸素の発生である。一重項二酸素(IO2)分子は、励起された光増感剤から三重項電子状態の二酸素分子への励起移動により、三重項二酸素分子(IIIO2)から得られる。
【0027】
「ハロゲン」の用語は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチン原子を意味する。
好ましくは、X-は、式(I)の化合物の蛍光を完全に消光させないアニオンから選択される。蛍光量子収率が5%、特に2%、特に1%、特に0.1%未満に減少されるとき、および特に0%であるときに、蛍光の完全な消光が達成される。
【0028】
「蛍光量子収率」の用語は、吸収された光子の数に対する放出される光子の数の比を意味する。この収率は、蛍光光子の放出を伴って基底状態に戻る励起された分子の割合である。
【0029】
「蛍光を消光させる」の用語は、化合物の蛍光強度の減少を意味する。励起状態反応、エネルギー移動、複合体形成および衝突消光のような種々の過程が消光をもたらし得る。結果として、消光は、しばしば圧力および温度に大きく依存する。分子酸素およびヨウ素イオンが一般的な化学消光剤である。分子酸素へのエネルギー移動による消光は、一重項酸素を発生する。一重項酸素および他の反応性酸素種の発生が、本願発明の化合物の特徴である。
【0030】
本願発明の化合物は、二光子吸収性を有する広範な共役の中核部から構成され、該中核部は、その末端で第3級窒素により範囲が設定されている。該中核部は次の式を有する:
【化4】

【0031】
該中核部は、中央のフルオレン環において、前記で定義された側鎖Y1およびY2により、末端の第3級アミンにおいて、Z1〜Z4基を保持するアルキル基で官能化されている。
基Y1およびY2は、二つの理由:
- πステーキング(staking)の妨害、および
- 化合物の溶解度の調節
で重要である。
【0032】
本発明の化合物の芳香族環は、πステーキングしやすく、それは、化合物の電子特性を妨げる。かさ高い基によるY1およびY2位置の官能化は、化合物の凝集を防ぐ。
【0033】
本発明の化合物の有機および水性の両媒体中での良好な溶解度が重要である。アンモニウム塩またはポリエチレングリコール鎖のような親水性基によるY1およびY2位置の官能化は、水溶液系での化合物の溶解度を高める。
【0034】
有利な態様によれば、本発明は、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような化学基W、または前記で定義されたような分子クリップとして用いられる基Vを表す、前記で定義された式(I)の化合物に関する。
【0035】
基VおよびWは、二つの異なるタイプの化合物を表す。
W基によって官能化された化合物は、それらのW基が化合物の二光子特性を減ずることなく、さらに官能化され得るので、光増感剤の合成における重要な道しるべ(milestone)である。
V基によって官能化された化合物は、δ部分のアルコキシシラン官能基を介してシリカナノ粒子中に容易に取り込まれるので重要である。
【0036】
有利な態様によれば、本発明は、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような化学基Wを表す、前記で定義された式(I)の化合物に関する。
ここで、式(I)の化合物は、
有利な態様によれば、本発明は、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような分子クリップとして用いられる基Vを表す、前記で定義された式(I)の化合物に関する。
【0037】
有利な態様によれば、本発明は、
Z5およびZ6部分が、
- 水素原子を表すか、または
- Z5およびZ6がエチレングリコール基を介して一緒に結合し、したがって、それらが結合するチオフェン基と一緒に3,4-エチレンジオキシチオフェン基(EDOT)を与える
前記で定義された式(I)の化合物に関する。
【0038】
EDOT基は、無置換のチオフェン基より強い電子供与体である。化合物を構成する基の電子供与性は、該化合物のσ2(二光子吸収断面積)を変更する。
増大された電子供与効果は、化合物の吸収帯を赤外波長の方へ移す。
【0039】
有利な態様によれば、本発明は、式(II):
【化5】

(式中、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5、Z6、Y1、Y2およびB基は、上記で定義されたとおりである)
の化合物に関する。
【0040】
有利な態様によれば、本発明は、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような、化学基Wまたは分子クリップとして用いられる基Vを表す、前記で定義された式(II)の化合物に関する。
【0041】
有利な態様によれば、本発明は、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような化学基Wを表す、前記で定義された式(II)の化合物に関する。
【0042】
有利な態様によれば、本発明は、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような分子クリップとして用いられる基Vを表す、前記で定義された式(II)の化合物に関する。
【0043】
有利な態様によれば、本発明は、式(III):
【化6】

(式中、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5、Z6、Y1、Y2およびA基は、上記で定義されたとおりである)
の化合物に関する。
【0044】
有利な態様によれば、本発明は、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような、化学基Wまたは分子クリップとして用いられる基Vを表す、前記で定義された式(III)の化合物に関する。
【0045】
有利な態様によれば、本発明は、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような化学基Wを表す、前記で定義された式(III)の化合物に関する。
【0046】
有利な態様によれば、本発明は、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような分子クリップとして用いられる基Vを表す、前記で定義された式(III)の化合物に関する。
【0047】
もう一つの態様によれば、本発明は、式(IV):
【化7】

(式中、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5、Z6、Y1、Y2およびB基は、上記で定義されたとおりである)
の化合物に関する。
【0048】
式(IV)の化合物は、化合物の二光子吸収/光安定性の折り合いを最適化することを目的とする二重結合と三重結合の特定の配列のため、本発明に特によく適している。
【0049】
有利な態様によれば、本発明は、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような、化学基Wまたは分子クリップとして用いられる基Vを表す、前記で定義された式(IV)の化合物に関する。
【0050】
有利な態様によれば、本発明は、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような化学基Wを表す、前記で定義された式(IV)の化合物に関する。
【0051】
有利な態様によれば、本発明は、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような分子クリップとして用いられる基Vを表す、前記で定義された式(IV)の化合物に関する。
【0052】
有利な態様によれば、本発明は、
Z5およびZ6基が、
- 水素原子を表すか、または
- Z5およびZ6がエチレングリコール基を介して一緒に結合し、したがって、それらが結合するチオフェン基と一緒に3,4-エチレンジオキシチオフェン基(EDOT)を与える
前記で定義された式(IV)の化合物に関する。
【0053】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基の少なくとも一つが、1〜9個の炭素原子を有する(直鎖状、分枝鎖状または置換された)アルキル基を表し、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような化学基Wを表す、前記で定義された式(IV)の化合物に関する。
【0054】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基の少なくとも一つが、1〜9個の炭素原子を有する(直鎖状、分枝鎖状または置換された)アルキル基を表し、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような分子クリップとして用いられる基Vを表す、前記で定義された式(IV)の化合物に関する。
【0055】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基が、1〜9個の炭素原子を有する(直鎖状、分枝鎖状または置換された)アルキル基を表し、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような化学基Wを表す、前記で定義された式(IV)の化合物に関する。
【0056】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基が、1〜9個の炭素原子を有する(直鎖状、分枝鎖状または置換された)アルキル基を表し、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような分子クリップとして用いられる基Vを表す、前記で定義された式(IV)の化合物に関する。
【0057】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基の少なくとも一つが、式:-(CH2)n-O-(CH2CH2O)mCH3(ここで、n < 4、mは1〜6で変化する)のポリエチレングリコール鎖を表し、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような化学基Wを表す、前記で定義された式(IV)の化合物に関する。
ポリエチレングリコール鎖による、Y1およびY2の少なくとも一つの官能化は、水性溶媒中での化合物の溶解度を増加する。
【0058】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基の少なくとも一つが、式:-(CH2)n-O-(CH2CH2O)mCH3(ここで、n < 4、mは1〜6で変化する)のポリエチレングリコール鎖を表し、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような分子クリップとして用いられる基Vを表す、前記で定義された式(IV)の化合物に関する。
【0059】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基が、式:-(CH2)n-O-(CH2CH2O)mCH3(ここで、n < 4、mは1〜6で変化する)のポリエチレングリコール鎖を表し、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような化学基Wを表す、前記で定義された式(IV)の化合物に関する。
【0060】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基が、式:-(CH2)n-O-(CH2CH2O)mCH3(ここで、n < 4、mは1〜6で変化する)のポリエチレングリコール鎖を表し、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような分子クリップとして用いられる基Vを表す、前記で定義された式(IV)の化合物に関する。
【0061】
有利な態様によれば、本発明は、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、OH、NH2、SH官能基からなる化学基Wを表す、前記で定義された化合物に関し、該化合物は、次の式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)または(IX):
【0062】
【化8】

または
【0063】
【化9】

または
【0064】
【化10】

または
【0065】
【化11】

または
【0066】
【化12】

の一つである。
【0067】
本発明の化合物は、化学的に反応性の基(W基)を一より多く含むことが、さらなる化学修飾および異なる官能基で化合物を官能化できる可能性に対する化合物の反応性を増加させるので、有利である。
【0068】
有利な態様によれば、本発明は、
Z5およびZ6基が、
- 水素原子を表すか、または
- Z5およびZ6がエチレングリコール基を介して一緒に結合し、したがって、それらが結合するチオフェン基と一緒に3,4-エチレンジオキシチオフェン基(EDOT)を与える
前記で定義された式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)または(IX)の化合物に関する。
【0069】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基の少なくとも一つが、1〜9個の炭素原子を有する(直鎖状、分枝鎖状または置換された)アルキル基を表す、前記で定義された式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)または(IX)の化合物に関する。
【0070】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基の少なくとも一つが、1〜9個の炭素原子を有する(直鎖状、分枝鎖状または置換された)アルキル基を表し、
Z5およびZ6基が、
- 水素原子を表すか、または
- Z5およびZ6がエチレングリコール基を介して一緒に結合し、したがって、それらが結合するチオフェン基と一緒に3,4-エチレンジオキシチオフェン基(EDOT)を与える
前記で定義された式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)または(IX)の化合物に関する。
【0071】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基が、1〜9個の炭素原子を有する(直鎖状、分枝鎖状または置換された)アルキル基を表す、前記で定義された式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)または(IX)の化合物に関する。
【0072】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基が、1〜9個の炭素原子を有する(直鎖状、分枝鎖状または置換された)アルキル基を表し、
Z5およびZ6基が、
- 水素原子を表すか、または
- Z5およびZ6がエチレングリコール基を介して一緒に結合し、したがって、それらが結合するチオフェン基と一緒に3,4-エチレンジオキシチオフェン基(EDOT)を与える
前記で定義された式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)または(IX)の化合物に関する。
【0073】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基の少なくとも一つが、式:-(CH2)n-O-(CH2CH2O)mCH3(ここで、n < 4、mは1〜6で変化する)のポリエチレングリコール鎖を表す、前記で定義された式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)または(IX)の化合物に関する。
【0074】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基の少なくとも一つが、式:-(CH2)n-O-(CH2CH2O)mCH3(ここで、n < 4、mは1〜6で変化する)のポリエチレングリコール鎖を表し、
Z5およびZ6基が、
- 水素原子を表すか、または
- Z5およびZ6がエチレングリコール基を介して一緒に結合し、したがって、それらが結合するチオフェン基と一緒に3,4-エチレンジオキシチオフェン基(EDOT)を与える
前記で定義された式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)または(IX)の化合物に関する。
【0075】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基が、式:-(CH2)n-O-(CH2CH2O)mCH3(ここで、n < 4、mは1〜6で変化する)のポリエチレングリコール鎖を表す、前記で定義された式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)または(IX)の化合物に関する。
【0076】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基が、式:-(CH2)n-O-(CH2CH2O)mCH3(ここで、n < 4、mは1〜6で変化する)のポリエチレングリコール鎖を表し、
Z5およびZ6基が、
- 水素原子を表すか、または
- Z5およびZ6がエチレングリコール基を介して一緒に結合し、したがって、それらが結合するチオフェン基と一緒に3,4-エチレンジオキシチオフェン基(EDOT)を与える
前記で定義された式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)または(IX)の化合物に関する。
【0077】
有利な態様によれば、本発明は、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、前記で定義されたような分子クリップとして用いられる基Vを表す、前記で定義された化合物に関し、該化合物は、次の(X)、(XI)、(XII)、(XIII)または(XIV):
【0078】
【化13】

または
【0079】
【化14】

または
【0080】
【化15】

または
【0081】
【化16】

または
【0082】
【化17】

【0083】
本発明の化合物は、分子クリップ基(V基)を一より多く含むことが有利である。ナノ粒子の構造中の該化合物の固着は、該化合物に存在する基Vの数とともに増加する。
いくつかの基Vを含む化合物は、ナノ粒子からの漏出が少ない傾向にある。
【0084】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基の少なくとも一つが、1〜9個の炭素原子を有する(直鎖状、分枝鎖状または置換された)アルキル基を表す、前記で定義された式(X)、(XI)、(XII)、(XIII)または(XIV)の化合物に関する。
【0085】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基の少なくとも一つが、1〜9個の炭素原子を有する(直鎖状、分枝鎖状または置換された)アルキル基を表し、
Z5およびZ6基が、
- 水素原子を表すか、または
- Z5およびZ6がエチレングリコール基を介して一緒に結合し、したがって、それらが結合するチオフェン基と一緒に3,4-エチレンジオキシチオフェン基(EDOT)を与える
前記で定義された式(X)、(XI)、(XII)、(XIII)または(XIV)の化合物に関する。
【0086】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基が、1〜9個の炭素原子を有する(直鎖状、分枝鎖状または置換された)アルキル基を表す、前記で定義された式(X)、(XI)、(XII)、(XIII)または(XIV)の化合物に関する。
【0087】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基が、1〜9個の炭素原子を有する(直鎖状、分枝鎖状または置換された)アルキル基を表し、
Z5およびZ6基が、
- 水素原子を表すか、または
- Z5およびZ6がエチレングリコール基を介して一緒に結合し、したがって、それらが結合するチオフェン基と一緒に3,4-エチレンジオキシチオフェン基(EDOT)を与える
前記で定義された式(X)、(XI)、(XII)、(XIII)または(XIV)の化合物に関する。
【0088】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基の少なくとも一つが、式:-(CH2)n-O-(CH2CH2O)mCH3(ここで、n < 4、mは1〜6で変化する)のポリエチレングリコール鎖を表す、前記で定義された式(X)、(XI)、(XII)、(XIII)または(XIV)の化合物に関する。
【0089】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基の少なくとも一つが、式:-(CH2)n-O-(CH2CH2O)mCH3(ここで、n < 4、mは1〜6で変化する)のポリエチレングリコール鎖を表し、
Z5およびZ6基が、
- 水素原子を表すか、または
- Z5およびZ6がエチレングリコール基を介して一緒に結合し、したがって、それらが結合するチオフェン基と一緒に3,4-エチレンジオキシチオフェン基(EDOT)を与える
前記で定義された式(X)、(XI)、(XII)、(XIII)または(XIV)の化合物に関する。
【0090】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基が、式:-(CH2)n-O-(CH2CH2O)mCH3(ここで、n < 4、mは1〜6で変化する)のポリエチレングリコール鎖を表す、前記で定義された式(X)、(XI)、(XII)、(XIII)または(XIV)の化合物に関する。
【0091】
有利な態様によれば、本発明は、Y1およびY2基が、式:-(CH2)n-O-(CH2CH2O)mCH3(ここで、n < 4、mは1〜6で変化する)のポリエチレングリコール鎖を表し、
Z5およびZ6基が、
- 水素原子を表すか、または
- Z5およびZ6がエチレングリコール基を介して一緒に結合し、したがって、それらが結合するチオフェン基と一緒に3,4-エチレンジオキシチオフェン基(EDOT)を与える
前記で定義された式(X)、(XI)、(XII)、(XIII)または(XIV)の化合物に関する。
【0092】
もう一つの態様によれば、本発明は、次の式:
【化18】

【0093】
(式中、Y1およびY2は同種であり、
*n-ブチルアルキル鎖、または
*-(CH2CH2)O(CH2CH2)O(CH2CH2)OCH3
を表す)
【0094】
【化19】

【0095】
(式中、Y1およびY2は同種であり、
*n-ブチルアルキル鎖、または
*-(CH2CH2)O(CH2CH2)O(CH2CH2)OCH3
を表す)
【0096】
【化20】

【0097】
【化21】

の化合物に関する。
【0098】
もう一つの態様によれば、本発明は、次の式:
【化22】

(式中、Y1およびY2は同種であり、-(CH2CH2)O((CH2CH2)O)2CH3基を表す)
【0099】
【化23】

(式中、Y1およびY2は同種であり、-(CH2CH2)O((CH2CH2)O)2CH3基を表す)
【0100】
【化24】

【0101】
【化25】

の化合物に関する。
【0102】
有利な態様によれば、本発明は、720 nm〜900 nmの範囲の少なくとも一つの波長値に対して、二光子吸収断面積が約300 GMより大きく、特に約750 GMより大きい、前記で定義された化合物に関する。
【0103】
二光子吸収は、分子をある状態(通常は基底状態)からより高エネルギーの電子状態へと励起するために、同一周波数の二光子の同時吸収である。分子の関与する低い状態と高い状態とのエネルギー差は、二光子のエネルギーの合計に等しい。二光子吸収は、線吸収よりいくつもの桁弱く、それゆえ、ありふれた現象ではない。それは、吸収の強さが光強度の2乗に依存する点で線吸収とは異なり、それゆえ、それは非線形光学過程である。
【0104】
「GM」の用語は、二光子吸収断面積の単位を意味する。「GM」は、Goeppert-Mayerを表し、1 GMは10-50 cm4 s photon-1である。
二光子吸収断面積の値は、励起光子の波長に依存する。本発明の式(I)から(XIV)の化合物は、生物学的適用に専用され、したがって、化合物が、光線力学的療法に一般的に用いられる放射波長に対して重要な断面積を示すようにすることが重要である。
【0105】
例えば、式:
【化26】

【化27】

の6aおよび6bの化合物は、720 nmで、6aに関しては1340 GM、6bに関しては1530 GMの二光子断面積を有する。
【0106】
有利な態様によれば、本発明は、トルエン中での一重項酸素発生の量子収率が、約3%より高い、特に約5%より高い、特に約10%より高い、前記で定義された化合物に関する。
【0107】
有利な態様によれば、本発明は、トルエンまたはエタノール中での蛍光の量子収率が、約5%〜約95%、特に約10%〜約90%、特に約20%〜約80%の範囲にある、前記で定義された化合物に関する。
【0108】
光子吸収は、光増感剤のエネルギーを増加する。基底状態に戻すこの励起エネルギーの消失は、蛍光、エネルギー移動またはその他の消失過程により起こり得る。蛍光は光子の放出に対応する。
【0109】
蛍光量子収率が100%に等しければ、あらゆる励起された分子の過剰なエネルギーは、光子の放出により消失する
一重項酸素発生の量子収率が100%に等しければ、あらゆる励起された分子の過剰なエネルギーは、光増感剤の周囲に存在する三重項酸素分子への該過剰なエネルギーの移動、および一重項酸素種の発生により消失する。
【0110】
本発明の光増感剤は、蛍光および酸素発生特性を有する。一重項酸素発生の量子収率は、100%または0%に等しくはない。蛍光の量子収率は、100%または0%に等しくはない。
【0111】
有利な態様によれば、本発明は、トルエンまたはエタノール中での蛍光の量子収率が約5%〜約95%の範囲にあり、トルエン中での一重項酸素発生の量子収率が約3%より高い、特に、トルエンまたはエタノール中での蛍光の量子収率が約10%〜約90%の範囲にあり、トルエン中での一重項酸素発生の量子収率が約5%より高い、特に、トルエンまたはエタノール中での蛍光の量子収率が約20%〜約80%の範囲にあり、トルエン中での一重項酸素発生の量子収率が約10%より高い、前記で定義された化合物に関する。
【0112】
本発明は、前記で定義された少なくとも一つの化合物から構成され、シリカナノ粒子に共有的に結合する少なくとも一つの光増感剤を含み、場合により、該ナノ粒子の表面に接合された(grafted)遮蔽部分を含み、場合により、該ナノ粒子の表面に接合された生体標的部分を含む、シリカナノ粒子に関する。
【0113】
本発明の式(I)〜(XIV)の光増感剤は、ナノ粒子に共有的に結合される。共有結合は、ナノ粒子からの光増感剤の漏出を防ぐ。光増感剤は、シリカナノ粒子内に「捕捉され」ないが、ナノ粒子構造の一部である。より正確には、それらはナノ粒子の壁に共有的に結合している。
【0114】
「遮蔽部分」の用語は、シリカナノ粒子内に含まれる光増感剤の一光子吸収波長に相当する波長での一光子吸収特性を有する、分子または分子断片を意味する。遮蔽部分の一光子吸収波長は、190〜600 nm、特に250〜500 nm、特に250〜400 nmの範囲である。
遮蔽部分は、ナノ粒子の表面と共有結合している。
【0115】
「生体標的部分」の用語は、標的細胞の表面の受容体と相互作用しやすい分子を意味する。生体標的部分は、ナノ粒子のある種の細胞に対する親和性を高め、細胞内でのナノ粒子の内在化の確率を増加する。生体標的部分は、サッカライド残基、リン酸化されたまたはされていないペプチドもしくは他の小さい有機分子であり得る。
【0116】
生体標的部分は、ナノ粒子の表面が細胞膜の受容体と相互作用するので、ナノ粒子の表面に設置される。
生体標的部分は、生体標的部分とシリカナノ粒子表面との直接の共有結合によるか、または遮蔽部分を介するかのいずれかによりナノ粒子と結合される。「遮蔽部分を介してシリカナノ粒子と結合された生体標的部分」とは、それぞれ、生体標的部分が遮蔽部分と共有結合し、該遮蔽部分がシリカナノ粒子と共有結合することを意味する。
【0117】
有利な態様によれば、本発明は、
- 前記で定義された少なくとも一つの化合物により構成され、シリカナノ粒子と共有結合された少なくとも一つの光増感剤、
- 前記ナノ粒子の表面に接合された生体標的部分、および
- 前記ナノ粒子の表面に接合された遮蔽部分
を含むシリカナノ粒子に関する。
【0118】
光増感剤の漏出を防ぐことは、ナノ粒子の効率を改善し、毒性の危険性を減らす。細胞が照射されるとき、その毒性はナノ粒子を含む細胞内にある。ナノ粒子が生体標的部分で被覆されれば、癌細胞が特異的に標的とされ得る。本発明において、「〜で被覆される」の用語は、「〜で表面に接合される」を意味する。
【0119】
光増感剤がナノ粒子から解離することができるなら、光増感剤は、生体全体にゆっくりと拡散し、腫瘍を特異的に標的としないであろう。さらに、この場合、それらが照射されれば、ナノ粒子標的癌細胞は、それらの効力の一部を損する。
【0120】
有利な態様によれば、本発明は、
- 前記で定義された少なくとも一つの化合物により構成され、シリカナノ粒子と共有結合された少なくとも一つの光増感剤、および
- 遮蔽部分を介して前記ナノ粒子の表面に接合された生体標的部分
を含むシリカナノ粒子に関する。
【0121】
遮蔽部分を介して生体標的部分を結び付けることは、生体標的部分と遮蔽部分とからなる部分が、別々に製造され、シリカナノ粒子に一工程で接合することができるので有利である。
【0122】
有利な態様によれば、本発明は、前記で定義された少なくとも一つの化合物により構成され、シリカナノ粒子と共有結合された少なくとも一つの光増感剤を含み、
- 前記ナノ粒子の表面に接合された生体標的部分を欠き、
- 前記ナノ粒子の表面に接合された遮蔽部分を欠く
ナノ粒子に関する。
【0123】
ナノ粒子の表面に生体標的部分を接合することは、それが腫瘍細胞中で該ナノ粒子の受動的エンドサイトーシスを増加し、したがって、該腫瘍細胞の光線療法に対する感受性を増加するので有利である。
【0124】
有利な態様によれば、本発明は、
- 前記で定義された少なくとも一つの化合物により構成され、シリカナノ粒子と共有結合された少なくとも一つの光増感剤、
- 前記ナノ粒子の表面に接合された遮蔽部分
を含み、
- 前記ナノ粒子の表面に接合された生体標的部分
を欠く、シリカナノ粒子に関する。
【0125】
有利な態様によれば、本発明は、
- 前記で定義された少なくとも一つの化合物により構成され、シリカナノ粒子と共有結合された少なくとも一つの光増感剤、
- 前記ナノ粒子の表面に直接接合された生体標的部分
を含み、
-前記ナノ粒子の表面に接合された遮蔽部分
を欠く、シリカナノ粒子に関する。
【0126】
ナノ粒子の表面を生体標的部分および遮蔽部分と接合することは、それが腫瘍細胞中でナノ粒子のエンドサイトーシスを増加し、患者の皮膚の光感受性を減少するので有利である。
したがって、腫瘍細胞は光線療法に対してより感受性となり、患者の皮膚は、光に対して感受性が低くなる。光に対する皮膚の前記の感受性は、光線療法の主な望ましくな副作用の一つである。
【0127】
本発明は、前記で定義された少なくとも一つの化合物により構成され、シリカナノ粒子と共有結合される少なくとも一つの光増感剤を含み、場合により、該ナノ粒子の表面に接合された遮蔽部分を含み、場合により、該ナノ粒子の表面に接合された生体標的部分を含む、シリカナノ粒子の少なくとも一つにより構成された、シリカナノ粒子組成物に関する。
【0128】
「シリカナノ粒子組成物」の用語は、同じ光増感剤または異なる光増感剤を有するいくつかのナノ粒子の組合せを意味する。本発明のナノ粒子は、安定化剤、保存剤、賦形剤のような、当業者によく知られた他の成分を含んでもよい。
【0129】
有利な態様によれば、本発明は、前記光増感剤が二光子照射により励起され、該二光子照射波長値が約650 nm〜1200 nm、特に約720 nm〜900 nmの範囲にある、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
【0130】
有利な態様によれば、本発明は、
- 前記で定義された少なくとも一つの化合物により構成され、シリカナノ粒子と共有結合された少なくとも一つの光増感剤、
- 前記ナノ粒子の表面に接合された遮蔽部分、および
- 前記ナノ粒子の表面に接合された生体標的部分
を含む、シリカナノ粒子組成物に関する。
【0131】
有利な態様によれば、本発明は、
- 前記で定義された少なくとも一つの化合物により構成され、シリカナノ粒子と共有結合された少なくとも一つの光増感剤、および
- 遮蔽部分を介して前記ナノ粒子の表面に接合された生体標的部分
を含む、シリカナノ粒子組成物に関する。
【0132】
有利な態様によれば、本発明は、前記で定義された少なくとも一つの化合物により構成され、シリカナノ粒子と共有結合された少なくとも一つの光増感剤を含み、
- 前記ナノ粒子の表面に接合された生体標的部分を欠き、
- 前記ナノ粒子の表面に接合された遮蔽部分を欠く
ナノ粒子組成物に関する。
【0133】
有利な態様によれば、本発明は、
- 前記で定義された少なくとも一つの化合物により構成され、シリカナノ粒子と共有結合された少なくとも一つの光増感剤、
- 前記ナノ粒子の表面に接合された遮蔽部分
を含み、
- 前記ナノ粒子の表面に接合された生体標的部分
を欠く、シリカナノ粒子組成物に関する。
【0134】
有利な態様によれば、本発明は、
- 前記で定義された少なくとも一つの化合物により構成され、シリカナノ粒子と共有結合された少なくとも一つの光増感剤、
- 前記ナノ粒子の表面に直接接合された生体標的部分
を含み、
-前記ナノ粒子の表面に接合された遮蔽部分
を欠く、シリカナノ粒子組成物に関する。
【0135】
もう一つの態様によれば、本発明は、シリカナノ粒子が系統的な(organized)多孔性を有する、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
「系統的な多孔性」の用語は、孔の規則的分布、三次元分布、幾何分布を意味する。
系統的な多孔度は、粒子の交換面を増加し、該粒子による酸素の拡散を容易にする。
【0136】
もう一つの態様によれば、本発明は、シリカナノ粒子がメソ多孔性である、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
「メソ多孔性」の用語は、系統的な多孔性構造を有し、2〜10 nmの間の孔サイズを有する材料を意味する。
【0137】
有利な態様によれば、本発明は、シリカナノ粒子が、約0.1 nm〜約10 nmの範囲、特に約1 nm〜約5 nmの範囲、特に約2 nm〜約2.4 nmの範囲の孔サイズを有する、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
【0138】
ナノ粒子の構造中の孔のサイズは重要である。10 nmより大きい孔は、脆く不安定な構造を生む。0.1 nmより小さい孔は、小さすぎて、構造による分子の適当な拡散を許さない。それゆえ、該構造はもはや多孔性でない。
【0139】
有利な態様によれば、本発明は、シリカナノ粒子が、約30 nm〜約300 nmの範囲、特に約50 nm〜約150 nmの範囲、特に約80 nm〜約100 nmの範囲のサイズを有する、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
【0140】
ナノ粒子のサイズは重要である。300 nmより大きい粒子は、大きすぎて、エンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれない。30 nmより小さい粒子は、小さすぎて、メソ多孔性構造の形成を許さない。
【0141】
もう一つの態様によれば、本発明は、シリカナノ粒子の表面に接合された、腫瘍性組織を特異的に標的とする生体標的部分を含む、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
【0142】
「腫瘍性組織」の用語は、細胞の異常増殖の結果としての組織の異常な塊を意味する。細胞のこのクローンの増殖は、その周りの正常な細胞の増殖を上回り、正常な細胞の増殖と非協調である。組織のこの異常な塊は、良性、前悪性または悪性であり得る。
【0143】
有利な態様によれば、本発明は、シリカナノ粒子の表面に接合された生体標的部分が、糖誘導体、特にマンノース誘導体である、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
【0144】
「糖誘導体」の用語は、グルコース、ガラクトース、マンノースのようなサッカライド、それらのデオキシ誘導体のような糖類似体、例えばフコース、ラムノース、それらのアセチル化誘導体、例えばN-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミンなど、それらのリン酸化誘導体、例えばグルコース-6-ホスフェートもしくはマンノース-6-ホスフェートなど、またはシアリルグループを意味する。
【0145】
生体標的部分は、癌細胞により、または該癌細胞の表面に過剰に発現される特定の受容体と合致する。シリカナノ粒子の表面に生体標的部分が存在することは、癌細胞に対するナノ粒子の親和性を増加する。
【0146】
もう一つの態様によれば、本発明は、シリカナノ粒子の表面に接合された遮蔽部分を含み、それらが、190〜600 nm、特に250〜500 nm、特に250〜400 nmの波長での放射を特異的に吸収する、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
【0147】
もう一つの態様によれば、本発明は、シリカナノ粒子の表面に接合された遮蔽部分を含み、該遮蔽部分の濃度が、0.01 mmol/g〜1 mmol/g、特に0.05 mmol/g〜0.5 mmol/g、特に0.1 mmol/g〜0.3 mmol/gの範囲であり、該ナノ粒子が生体標的部分を欠いている、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
【0148】
遮蔽効果が余りに低すぎ、患者の皮膚が自然光に感受性となるので、遮蔽部分の濃度は、0.01 mmol/g未満であるべきではない。粒子の表面に接合できる遮蔽部分の量は、該粒子の表面により限定されるので、1 mmol/gを超えることはできない。
【0149】
もう一つの態様によれば、本発明は、シリカナノ粒子の表面に接合された遮蔽部分を含み、該遮蔽部分の濃度が、1 μmol/g〜約2 mmol/gの範囲、特に約0.01 mmol/g〜約1 mmol/gの範囲、特に約0.1 mmol/g〜約0.4 mmol/gの範囲であり、該ナノ粒子の表面に直接接合された生体標的部分を含む、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
【0150】
もう一つの態様によれば、本発明は、シリカナノ粒子の表面に接合された遮蔽部分を含み、該遮蔽部分の濃度が、約1 μmol/g〜約2 mmol/gの範囲、特に約0.01 mmol/g〜約1 mmol/gの範囲、特に約0.1 mmol/g〜約0.4 mmol/gの範囲であり、該遮蔽部分を介して該ナノ粒子の表面に直接接合された生体標的部分を含む、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
【0151】
有利な態様によれば、本発明は、前記遮蔽部分がフェニルアミノシクロブテンジオン部分である、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
有利な態様によれば、本発明は、前記遮蔽部分がフェニルアミノシクロブテンジオン部分であり、前記生体標的部分がフェニルシクロブテンジオン部分を介してシリカナノに接合されている、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
【0152】
もう一つの態様によれば、本発明は、前記で定義された光増感剤の濃度が、該光増感剤を含むナノ粒子の全質量に対して、約0.1 マイクロモル/g〜約100 マイクロモル/gの範囲、特に約0.5 マイクロモル/g〜約30 マイクロモル/gの範囲、特に約1 マイクロモル/g〜約10 マイクロモル/gの範囲である、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
【0153】
100 μmol/gより高い光増感剤の濃度は、ナノ粒子の形成および安定性を害するので、望ましくない。0.1 μmol未満の光増感剤の濃度は、ナノ粒子内に含まれる光増感剤の量が少なすぎ、光線療法で少しも有意な効果を有することができないので、望ましくない。
【0154】
もう一つの態様によれば、本発明は、シリカナノ粒子の表面に接合された生体標的部分の濃度が、約1 μmol/g〜約2 mmol/gの範囲、特に約0.01 mmol/g〜約1 mmol/gの範囲、特に約0.1 mmol/g〜約0.4 mmol/gの範囲である、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
【0155】
ナノ粒子の表面に接合される生体標的部分の濃度は、生体分子標的効果を害するので、1 μmol/gより下か、または1 mmol/gより上にあるべきでない。
【0156】
有利な態様によれば、本発明は、シリカナノ粒子に前記で定義されたように共有結合した光増感剤の濃度が、1 μmol/g〜約10 μmol/gの範囲であり、
該シリカナノ粒子が、メソ多孔性であり、80 nm〜約100 nmの範囲の直径を有し、生体標的部分を欠き、遮蔽部分を欠いている、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
【0157】
有利な態様によれば、本発明は、シリカナノ粒子に前記で定義されたように共有結合した光増感剤の濃度が、約0.1 マイクロモル/g〜約50 マイクロモル/gの範囲であり、
該シリカナノ粒子が、メソ多孔性であり、約30 nm〜約300 nmの範囲の直径を有し、
該ナノ粒子の表面に接合した生体標的部分を含み、該生体標的部分が約1 マイクロモル/g〜約2 mmol/gの範囲の濃度であり、該生体標的部分がマンノースからの誘導体であり、
該ナノ粒子が遮蔽部分を欠いている、
前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
【0158】
有利な態様によれば、本発明は、シリカナノ粒子に前記で定義されたように共有結合した光増感剤の濃度が、約0.1 マイクロモル/g〜約50 マイクロモル/gの範囲であり、
該シリカナノ粒子が、メソ多孔性であり、約30 nm〜約300 nmの範囲の直径を有し、
該ナノ粒子が生体標的部分を欠いており、
該ナノ粒子が、その表面に接合した遮蔽部分を含み、該遮蔽部分がフェニルアミノシクロブテンジオン部分である、
前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
【0159】
有利な態様によれば、本発明は、シリカナノ粒子に前記で定義されたように共有結合した光増感剤の濃度が、約0.1 マイクロモル/g〜約50 マイクロモル/gの範囲であり、
該シリカナノ粒子が、メソ多孔性であり、約30 nm〜約300 nmの範囲の直径を有し、
該シリカナノ粒子が
- 約1 マイクロモル/g〜約2 mmol/gの範囲の濃度で、その表面に、マンノースの誘導体である生体標的部分、および
- フェニルアミノシクロブテンジオン部分である遮蔽部分
を含む、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
【0160】
有利な態様によれば、本発明は、シリカナノ粒子に前記で定義されたように共有結合した光増感剤の濃度が、約0.1 マイクロモル/g〜約50 マイクロモル/gの範囲であり、
該シリカナノ粒子が、メソ多孔性であり、約30 nm〜約300 nmの範囲の直径を有し、
該ナノ粒子が
- その表面に接合した遮蔽部分(該遮蔽部分はフェニルアミノシクロブテンジオン部分である)、および
- 前記フェニルアミノシクロブテンジオン部分を介して前記ナノ粒子の表面に接合した生体標的部分(該生体標的部分は、約1 マイクロモル/g〜約2 mmol/gの範囲の濃度であり、該生体標的部分は、マンノースからの誘導体である)
を含む、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物に関する。
【0161】
本発明は、
前記で定義された少なくとも一つの化合物、または
前記で定義された少なくとも一つのシリカナノ粒子組成物、および
医薬的に許容な担体
を含む医薬組成物に関する。
【0162】
本発明は、
前記で定義された少なくとも一つの化合物、または
前記で定義された少なくとも一つのシリカナノ粒子組成物、および
少なくとも一つの抗腫瘍剤、および
医薬的に許容な担体
を含む医薬組成物に関する。
【0163】
「抗腫瘍剤」の用語は、腫瘍細胞の成長または増殖を阻害するか、もしくは低下する化学化合物、または腫瘍細胞のアポトーシスを誘発する化合物を意味する。腫瘍剤は、
*シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレチラミン、シクロホスホアミド、コラムブシル、イフォスファミドのようなアルキル化剤、
*アザチオプリン、メルカプトプリンまたはピリミジンのような代謝拮抗剤、
*ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン)、タキサン(タキソール、ドセタキセル)またはポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド)のような植物性アルカロイド、
*カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシド、エトポシド ホスフェート、テンポシドまたはエピポドフィロトキシンのようなトポイソメラーゼ阻害剤、
*ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシンまたはブレオマイシンのような抗腫瘍抗生物質
の中から選択される。
【0164】
本発明は、
前記で定義された少なくとも一つのシリカナノ粒子組成物、
少なくとも一つの抗腫瘍剤、および
医薬的に許容な担体
を含む、前記で定義された医薬組成物に関する。
【0165】
本発明のナノ粒子の孔内に抗腫瘍剤を取り込むことができる。そのようにして得られる組成物は、本発明の利点、すなわち二光子光療法の効率および精度、腫瘍細胞の選択的生体標的、およびナノ粒子の遮蔽による患者の皮膚の保護と古典的な抗腫瘍剤の効果とを兼ね備える。
抗腫瘍剤がナノ粒子の孔内に取り込まれると、抗腫瘍剤の水溶性が増加する。
【0166】
ナノ粒子中に抗癌剤を取り込むことは、当該技術で既に記載されている:Lu J, Liong M, Zink JI, Tamanoi F. Mesoporous silica nanoparticles as a delivery system for hydrophobic anticancer drugs. Small 2007;3 (8):1341-6。
【0167】
本発明は、
前記で定義された少なくとも一つのシリカナノ粒子組成物、
少なくとも一つの抗腫瘍剤、および
医薬的に許容な担体
を含む、前記で定義された医薬組成物に関し、
ここで、前記シリカナノ粒子は、該ナノ粒子に共有結合した前記で定義された化合物の少なくとも一つから構成される光増感剤を少なくとも一つ含み、場合により、該ナノ粒子の表面に接合した遮蔽部分を含み、場合により、該ナノ粒子の表面に接合した生体標的部分を含む。
【0168】
本発明は、
前記で定義された少なくとも一つのシリカナノ粒子組成物、
少なくとも一つの抗腫瘍剤、および
医薬的に許容な担体
を含む、前記で定義された医薬組成物に関し、
ここで、前記シリカナノ粒子は、ナノ粒子に前記で定義されたように共有結合した光増感剤の濃度が約0.1 マイクロモル/g〜約50 マイクロモル/gの範囲であり、
該シリカナノ粒子は、メソ多孔性であり、約30 nm〜約300 nmの範囲の直径を有し、
該ナノ粒子は、
- その表面に接合した遮蔽部分(該遮蔽部分はフェニルアミノシクロブテンジオン部分である)、および
- 前記フェニルアミノシクロブテンジオン部分を介して前記ナノ粒子の表面に接合した生体標的部分(該生体標的部分は、約1 マイクロモル/g〜約2 mmol/gの範囲の濃度であり、該生体標的部分は、マンノースからの誘導体である)
を含む。
【0169】
本発明は、
前記で定義された少なくとも一つのシリカナノ粒子組成物、
少なくとも一つの抗腫瘍剤、および
医薬的に許容な担体
を含む、前記で定義された医薬組成物に関し、
ここで、前記シリカナノ粒子は、式:
【0170】
【化28】

【0171】
【化29】

の化合物6aまたは6bの少なくとも一つを含む。
【0172】
本発明は、
前記で定義された少なくとも一つのシリカナノ粒子組成物、
少なくとも一つの抗腫瘍剤、および
医薬的に許容な担体
を含む、前記で定義された医薬組成物に関し、
ここで、前記抗腫瘍剤は、カンプトテシン、パクリタキセルまたはドキソルビシンの中から選択される。
【0173】
もう一つの態様によれば、本発明は、
前記で定義された少なくとも一つの化合物、または
前記で定義された少なくとも一つのシリカナノ粒子組成物、および
医薬的に許容な担体
を含む、前記で定義された医薬組成物に関し、
ここで、前記シリカナノ粒子は、ナノ粒子に前記で定義されたように共有結合した光増感剤の濃度が約0.1 マイクロモル/g〜約50 マイクロモル/gの範囲であり、
該シリカナノ粒子は、メソ多孔性であり、約30 nm〜約300 nmの範囲の直径を有し、
該ナノ粒子は、
- その表面に接合した遮蔽部分(該遮蔽部分はフェニルアミノシクロブテンジオン部分である)、および
- 前記フェニルアミノシクロブテンジオン部分を介して前記ナノ粒子の表面に接合した生体標的部分(該生体標的部分は、約1 マイクロモル/g〜約2 mmol/gの範囲の濃度であり、該生体標的部分は、マンノースからの誘導体である)
を含む。
【0174】
有利な態様によれば、本発明は、
前記で定義された化合物の少なくとも一つを、約0.001 μmol/mL〜約0.1 μmol/mL、特に約0.002 μmol〜約0.05 μmol、特に約0.0025 μmol〜約0.001 μmol、または
前記で定義されたナノ粒子の少なくとも一つを、約0.05 μg/mL〜約0.05 mg/mL、特に約0.5 μg/mL〜約100 μg/mL、特に約5 μg/mL〜約40 μg/mL、および
医薬的に許容な担体
を含む、前記で定義された医薬組成物に関する。
【0175】
有利な態様によれば、本発明は、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物の少なくとも一つ、および医薬的に許容な担体を含み、該ナノ粒子が生体標的部分および遮蔽部分を欠いている、前記で定義された医薬組成物に関する。
【0176】
有利な態様によれば、本発明は、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物の少なくとも一つ、および医薬的に許容な担体を含み、該ナノ粒子がその表面に接合した生体標的部分を含み、該ナノ粒子が遮蔽部分を欠いている、前記で定義された医薬組成物に関する。
【0177】
有利な態様によれば、本発明は、前記で定義されたシリカナノ粒子組成の少なくとも一つ、および医薬的に許容な担体を含み、該ナノ粒子が、
- その表面に直接接合した生体標的部分、および
- その表面に接合した遮蔽部分
を含む、前記で定義された医薬組成物に関する。
【0178】
有利な態様によれば、本発明は、前記で定義されたシリカナノ粒子組成の少なくとも一つ、および医薬的に許容な担体を含み、該ナノ粒子が、
- その表面に接合した遮蔽部分、および
- 該遮蔽部分を介してその表面に接合した生体標的部分
そ含む、前記で定義された医薬組成物に関する。
【0179】
生理学的血清または静脈内注射用のその他の許容な担体が、本発明の許容な医薬的な担体となり得る。本医薬組成物は、注射、経口投与、舌下投与、粘膜上への気化によるか、またはパッチを用いて皮膚から患者に投与され得る。投与される医薬組成物の量は、1 mg/kg(患者の体重1 kg当たりの組成物のmg)〜1 g/kg、特に10 mg/kg〜100 mg/kg、特に20 mg/kg〜50 mg/kgで変化し得る。
投与2〜24 時間後に、腫瘍は照射される。該医薬組成物の投与は、腫瘍の退縮により、1または数回繰り返され得る。
【0180】
本発明は、前記で定義された少なくとも一つの化合物、但し、Z1、Z2、Z3およびZ4はどれも、分子クリップとして用いられる基Vを表すことはできない化合物の、基Z1、Z2、Z3およびZ4の少なくとも一つが、分子クリップとして用いられる基Vを表す前記で定義された化合物の製造のための使用に関する。
【0181】
本発明は、式(I):
【化30】

【0182】
[式中、
基AおよびBは、互いに独立して、-CH=CH-または-C≡C-を表し、
用語t、u、v、wは、互いに独立して、0〜9の範囲の値を表し、
基Y1およびY2は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- 1〜9個の炭素原子を有するアルキル基(直鎖状、分枝鎖状または置換された)、または
- 式:-(CH2)n-O-(CH2CH2O)mCH3(ここで、n < 4、mは1〜6で変化する)のポリエチレングリコール鎖、または
- 式:-(CH2)p-NR3+ X-(ここで、X-は、ハロゲン、サルフェート、ホスフェート、NTf2、PF6アニオンから選択され、pは1〜6で変化し、Rは1〜9個の炭素原子の直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖である)のアンモニウム基
を表し、
【0183】
基Z1、Z2、Z3およびZ4は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- OH、NH2、SHのような化学的に反応性の基W、
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲のアリール、アリールオキシ、アラアルキル、アラアルキルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ基、または
- 1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 式:-(CH2)q-O-(CH2CH2O)r-CH2CH2-W(ここで、q < 4、rは1〜6で変化し、Wは前記で定義された化学的に反応性の基である)のポリエチレングリコール鎖
を表す、
【0184】
但し、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つは、
- OH、NH2、SHのような化学的に反応性の基W、
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲のアリール、アリールオキシ、アラアルキル、アラアルキルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ基、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 式:-(CH2)q-O-(CH2CH2O)r-CH2CH2-W(ここで、q < 4、rは1〜6で変化し、Wは前記で定義された化学的に反応性の基である)のポリエチレングリコール鎖
を表し、
【0185】
基Z5およびZ6は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- 1〜9個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 1〜9個の炭素原子の範囲の、アルコキシ基、炭素環式基、複素環式基、芳香族基
を表すか、または
- Z5およびZ6は、エチレングリコール基を介して一緒に結合し、それゆえに、それらが結合するチオフェン基と一緒に3,4-エチレンジオキシチオフェン基(EDOT):
【0186】
【化31】

を与える]
の少なくとも一つの化合物の、
【0187】
Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、-α-β-δで構成される分子クリップとして用いられる基V
(ここで、
*αは、カルバメート、ウレア、チオカルバメート、アミドのような官能性結合基であり、
*βは、1〜9個の炭素原子を含む、直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖であり、
*δは、Si(OR’)3基(ここで、R’は1〜9個の炭素原子の直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖である)である)を表す、式(I)の化合物の合成のための使用に関する。
【0188】
好ましくは、X-は、式(I)の化合物の蛍光を完全に消光させないアニオンの中から選択される。蛍光量子収率が5%、特に2%、特に1%、特に0.1%未満に減少されるとき、および特に0%であるときに、完全な消光が達成される。
【0189】
有利な態様によれば、本発明は、次の式:
【化32】

【0190】
(式中、Y1およびY2は同種であり、
*n-ブチルアルキル鎖、または
*-(CH2CH2)O(CH2CH2)O(CH2CH2)OCH3
を表す)
【0191】
【化33】

【0192】
(式中、Y1およびY2は同種であり、
*n-ブチルアルキル鎖、または
*-(CH2CH2)O(CH2CH2)O(CH2CH2)OCH3
を表す)
【0193】
【化34】

【0194】
【化35】

を有する化合物の、
【0195】
Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、-α-β-δで構成される分子クリップとして用いられる基V
(ここで、
*αは、カルバメート、ウレア、チオカルバメート、アミドのような官能性結合基であり、
*βは、1〜9個の炭素原子を含む、直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖であり、
*δは、Si(OR’)3基(ここで、R’は1〜9個の炭素原子の直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖である)である)を表す、式(I)の化合物の合成のための使用に関する。
【0196】
本発明は、式(I):
【化36】

【0197】
[式中、
基AおよびBは、互いに独立して、-CH=CH-または-C≡C-を表し、
用語t、u、v、wは、互いに独立して、0〜9の範囲の値を表し、
基Y1およびY2は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- 1〜9個の炭素原子を有するアルキル基(直鎖状、分枝鎖状または置換された)、または
- 式:-(CH2)n-O-(CH2CH2O)mCH3(ここで、n < 4、mは1〜6で変化する)のポリエチレングリコール鎖、または
- 式:-(CH2)p-NR3+ X-(ここで、X-は、ハロゲン、サルフェート、ホスフェート、NTf2、PF6アニオンの中から選択され、pは1〜6で変化し、Rは1〜9個の炭素原子の直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖である)
を表し、
【0198】
基Z1、Z2、Z3およびZ4は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- OH、NH2、SHのような化学的に反応性の基W、
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲のアリール、アリールオキシ、アラアルキル、アラアルキルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ基、または
- 1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 式:-(CH2)q-O-(CH2CH2O)r-CH2CH2-W(ここで、q < 4、rは1〜6で変化し、Wは前記で定義された化学的に反応性の基である)のポリエチレングリコール鎖
を表す、
【0199】
但し、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つは、
- OH、NH2、SHのような化学的に反応性の基W、
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲のアリール、アリールオキシ、アラアルキル、アラアルキルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ基、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 式:-(CH2)q-O-(CH2CH2O)r-CH2CH2-W(ここで、q < 4、rは1〜6で変化し、Wは前記で定義された化学的に反応性の基である)のポリエチレングリコール鎖
を表し、
【0200】
基Z5およびZ6は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- 1〜9個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 1〜9個の炭素原子の範囲の、アルコキシ基、炭素環式基、複素環式基、芳香族基
を表すか、または
- Z5およびZ6は、エチレングリコール基を介して一緒に結合し、それゆえに、それらが結合するチオフェン基と一緒に3,4-エチレンジオキシチオフェン基(EDOT):
【0201】
【化37】

を与える]
の少なくとも一つの化合物の、
【0202】
Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、-α-β-δで構成される分子クリップとして用いられる基V
(ここで、
*αは、カルバメート、ウレア、チオカルバメート、アミドのような官能性結合基であり、
*βは、1〜9個の炭素原子を含む、直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖であり、
*δは、Si(OR’)3基(ここで、R’は1〜9個の炭素原子の直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖である)である)を表す、式(I)の光増感剤として用いられる少なくとも一つの化合物を含む、少なくとも一つのシリカナノ粒子によって構成されるシリカナノ粒子組成物の製造のための使用に関する。
【0203】
好ましくは、X-は、式(I)の化合物の蛍光を完全に消光させないアニオンの中から選択される。蛍光量子収率が5%、特に2%、特に1%、特に0.1%未満に減少されるとき、および特に0%であるときに、完全な消光が達成される。
【0204】
有利な態様によれば、本発明は、次の式:
【化38】

【0205】
(式中、Y1およびY2は同種であり、
*n-ブチルアルキル鎖、または
*-(CH2CH2)O(CH2CH2)O(CH2CH2)OCH3
を表す)
【0206】
【化39】

【0207】
(式中、Y1およびY2は同種であり、
*n-ブチルアルキル鎖、または
*-(CH2CH2)O(CH2CH2)O(CH2CH2)OCH3
を表す)
【0208】
【化40】

【0209】
【化41】

を有する少なくとも一つの化合物の、上記で定義されたナノ粒子の製造のための使用に関する。
【0210】
もう一つの態様によれば、本発明は、上記で定義された少なくとも一つの化合物、但し、Z1、Z2、Z3およびZ4はどれも、化学的に反応性の基Wを表すことはできない化合物の、上記で定義されたナノ粒子の製造のための使用に関する。
【0211】
有利な態様によれば、本発明は、次の式:
【化42】

(式中、Y1およびY2は同種であり、-(CH2CH2)O((CH2CH2)O)2CH3基を表す)
を有する少なくとも一つの化合物の、前記で定義されたシリカナノ粒子組成物の製造のための使用に関する。
【0212】
本発明は、少なくとも一つの
前記で定義された化合物、または
前記で定義されたシリカナノ粒子組成物の
癌の治療用医薬の製造のための使用に関する。
【0213】
もう一つの態様によれば、本発明は、癌細胞の結像を可能にするプローブの実装(implementation)のための、
式(I):
【化43】

【0214】
[式中、
基AおよびBは、互いに独立して、-CH=CH-または-C≡C-を表し、
用語t、u、v、wは、互いに独立して、0〜9の範囲の値を表し、
基Y1およびY2は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- 1〜9個の炭素原子を有するアルキル基(直鎖状、分枝鎖状または置換された)、または
- 式:-(CH2)n-O-(CH2CH2O)mCH3(ここで、n < 4、mは1〜6で変化する)のポリエチレングリコール鎖、または
- 式:-(CH2)p-NR3+ X-(ここで、X-は、ハロゲン、トシレート、サルフェート、ホスフェート、NTf2、PF6アニオンの中から選択され、pは1〜6で変化し、Rは1〜9個の炭素原子の直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖である)
を表し、
【0215】
基Z1、Z2、Z3およびZ4は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- OH、NH2、SHのような化学的に反応性の基W、
-α-β-δで構成される分子クリップとして用いられる基V
(ここで、
*αは、カルバメート、ウレア、チオカルバメート、アミドのような官能性結合基であり、
*βは、1〜9個の炭素原子を含む、直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖であり、
*δは、Si(OR’)3基(ここで、R’は1〜9個の炭素原子の直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖である)である)、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲のアリール、アリールオキシ、アラアルキル、アラアルキルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ基、または
- 1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 式:-(CH2)q-O-(CH2CH2O)r-CH2CH2-W(ここで、q < 4、rは1〜6で変化し、Wは前記で定義された化学的に反応性の基である)のポリエチレングリコール鎖
を表す、
【0216】
但し、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つは、
- OH、NH2、SHのような化学的に反応性の基W、または
-α-β-δで構成される分子クリップとして用いられる基V
(ここで、
*αは、カルバメート、ウレア、チオカルバメート、アミドのような官能性結合基であり、
*βは、1〜9個の炭素原子を含む、直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖であり、
*δは、Si(OR’)3基(ここで、R’は1〜9個の炭素原子の直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖である)である)、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲のアリール、アリールオキシ、アラアルキル、アラアルキルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ基、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 式:-(CH2)q-O-(CH2CH2O)r-CH2CH2-W(ここで、q < 4、rは1〜6で変化し、Wは前記で定義された化学的に反応性の基である)のポリエチレングリコール鎖
を表し、
【0217】
基Z5およびZ6は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- 1〜9個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 1〜9個の炭素原子の範囲の、アルコキシ基、炭素環式基、複素環式基、芳香族基
を表すか、または
- Z5およびZ6は、エチレングリコール基を介して一緒に結合し、それゆえに、それらが結合するチオフェン基と一緒に3,4-エチレンジオキシチオフェン基(EDOT):
【0218】
【化44】

を与える]
の少なくとも一つの化合物、または式(I)の前記の化合物の少なくとも一つを含む少なくとも一つのシリカナノ粒子の使用に関する。
【0219】
好ましくは、X-は、式(I)の化合物の蛍光を完全に消光させないアニオンの中から選択される。蛍光量子収率が5%、特に2%、特に1%、特に0.1%未満に減少されるとき、および特に0%であるときに、完全な消光が達成される。
【0220】
本願において、「プローブ」の用語は、特定の標的の検出および位置確認のために用いられる道具を意味する。
【0221】
「結像」の用語は、臨床目的(疾患を明らかにする、診断するまたは調べようとすることを追求する医学的手段)または医科学(普通の解剖学および生理学の研究を含む)のために、人体(またはその一部および機能)の画像を作成するために用いられる非侵襲性の技法および方法を意味する。
【0222】
「癌細胞」の用語は、制御されない増殖(正常な限度を超えた分裂)、浸潤(隣接した組織のへの侵入および破壊)および時には転移(リンパ液または血液による体内の他の場所への広がり)を示す一群の細胞を意味する。
【0223】
本発明の組成物を用いる光線力学的療法は、全ての固形癌、具体的には1 cmより下位のサイズで転移を有する癌、具体的には泌尿器癌(腎臓、膀胱、前立腺、睾丸)、具体的には前立腺癌を治療するのに適する。この療法は、消化管癌(食道、胃、肝臓、膵臓、胆管および結腸直腸)、具体的には結腸直腸癌にも適応される。
【0224】
人体は、可視波長を透過しない。それゆえ、蛍光染料を用いる一光子結像は非常に効率的でない。同じ染料が良好な二光子吸収を有するなら、そのときは、その相当する励起は、一光子励起が起こったであろう波長の約2倍で起こるであろう。結果として、人体が良好な透過性を示す近赤外領域での励起を用いることができる。
【0225】
有利な態様によれば、本発明は、癌細胞の結像を可能にするプローブの実装のための、前記で定義された少なくとも一つの医薬組成物の使用に関する。
【0226】
もう一つの態様によれば、本発明は、少なくとも一つの
前記で定義された化合物、または
前記で定義されたシリカナノ粒子組成物の
癌の治療用および腫瘍の医学画像用医薬の製造のための使用に関する。
【0227】
有利な態様によれば、本発明は、前記で定義された化合物またはシリカナノ粒子組成物の使用に関し、ここで、該化合物またはナノ粒子の照射時間は、約3秒〜60分、特に約3秒〜15分、特に約3秒〜9分の範囲である。
【0228】
有利な態様によれば、本発明は、前記で定義された化合物またはシリカナノ粒子組成物の使用に関し、ここで、光増感剤として用いられる該化合物は、二光子照射により励起され、該二光子照射波長値は、約650 nm〜1200 nm、特に約720 nm〜900 nmの範囲である。
【0229】
有利な態様によれば、本発明は、前記で定義された化合物またはシリカナノ粒子組成物の使用に関し、ここで、光増感剤として用いられる該化合物の二光子吸収断面積は、720 nm〜900 nmの範囲の少なくとも一つの波長値に対し、約300 GMより大きく、特に約750 GMより大きい。
【図面の簡単な説明】
【0230】
【図1A】図1Aは、顕微鏡を用いて撮影されたMDA-MB-231細胞の3枚の写真を表す。図1Aの左部分は、コントロール細胞を表す。本細胞は本発明の化合物と一緒にインキュベートされなかったが、二光子照射により処理された。図1Aの中央部分は、シリカナノ粒子DB052と一緒に24時間インキュベートされ、二光子照射により処理された細胞を表す。図1Aの右部分は、マンノースが被覆されたシリカナノ粒子DB069と一緒に24時間インキュベートされ、二光子照射により処理された細胞を表す。
【図1B】図1Bは、DB069ナノ粒子と一緒に24時間インキュベートされたMDA-MB-231細胞の写真を表す。本写真は、点線で具体化された二つの領域に分けられる。写真の右側は、二光子照射により処理された細胞に対応し、写真の左側は、二光子照射により処理されなかった細胞に対応する。 図1Aおよび1Bは、本発明の粒子を用いる光線力学的療法の特異性を示している。細胞が本発明のナノ粒子と一緒にインキュベートされたとき、照射された領域で細胞死が観察され、起こっている。
【図2A】図2Aは、顕微鏡を用いて撮影されたMDA-MB-231細胞の3枚の写真を表す。図2Aの左部分は、コントロール細胞を表す。本細胞は本発明の化合物と一緒にインキュベートされなかったが、二光子照射により処理された。図2Aの中央部分は、シリカナノ粒子DB052と一緒に24時間インキュベートされ、二光子照射により処理された細胞を表す。図2Aの右部分は、マンノースが被覆されたシリカナノ粒子DB069と一緒に24時間インキュベートされ、二光子照射により処理された細胞を表す。図2Aは、試料が二光子照射により処理され、本発明のナノ粒子と一緒にインキュベートされると、細胞密度の減少を示している。
【図2B】図2Bは、無処理(ナノ粒子なし、照射なし)のコントロール実験に対する生細胞のパーセントを示す柱状グラフを表す。本柱状グラフは、それぞれが異なる実験に関する六つの柱により構成される。縦座標軸は、それぞれの実験におけるコントロールに対する生細胞のパーセントを表す。左から1番目の柱は、コントロール細胞を表す。これらの細胞は照射により処理されず、DB052ナノ粒子(表面被覆なしのナノ粒子)またはDB069ナノ粒子(マンノースの表面被覆を有するナノ粒子)のいずれかを用いてもインキュベートされなかった。左から2番目の柱は、DB052ナノ粒子またはDB069ナノ粒子のいずれかを用いてもインキュベートされなかった照射細胞を表す。細胞生存は100%(コントロール細胞に対して)である。左からの3番目の柱は、DB052ナノ粒子でインキュベートされた照射細胞を表す。細胞生存は67%(コントロール細胞に対して)である。左から4番目の柱は、DB069ナノ粒子でインキュベートされた照射細胞を表す。細胞生存は24%(コントロール細胞に対して)である。左から5番目の柱は、DB052ナノ粒子でインキュベートされた非照射細胞を表す。細胞生存は107%(コントロール細胞に対して)である。左から6番目の柱は、DB069ナノ粒子でインキュベートされた非照射細胞を表す。細胞生存は108%(コントロール細胞に対して)である。 光線力学的療法の効率は、ナノ粒子DB052でインキュベートされた細胞について33%の死およびDB069でインキュベートされた細胞について76%の死で示される。治療効率は、ナノ粒子の表面をマンノースで被覆することによって改善される。さらに、非照射ナノ粒子に毒性がないことは、本発明の化合物を用いた光線力学的療法の特異性を示している。
【図3A】図3Aは、顕微鏡を用いて撮影されたMCF7細胞の3枚の写真を表す。図3Aの左部分は、コントロール細胞を表す。該細胞は、本発明の化合物でインキュベートされなかったが、二光子照射により処理された。図3Aの中央部分は、シリカナノ粒子DB052と一緒に2時間インキュベートされ、二光子照射によって処理された細胞を表す。図3Aの右部分は、マンノースが被覆されたシリカナノ粒子DB069と一緒に2時間インキュベートされ、二光子照射によって処理された細胞を表す。
【図3B】図3Bは、無処理(ナノ粒子なし、照射なし)のコントロール実験に対するMCF7生細胞のパーセントを示す柱状グラフを表す。本柱状グラフは、それぞれが異なる実験に関する三つの柱により構成される。縦座標軸は、それぞれの実験におけるコントロールに対する生細胞のパーセントを表す。図3Bの左の柱は、コントロール細胞を表す。これらの細胞は照射により処理されず、DB052ナノ粒子(表面被覆なしのナノ粒子)またはDB069ナノ粒子(マンノースの表面被覆を有するナノ粒子)のいずれかを用いてもインキュベートされなかった。図3Bの中央の柱は、DB052ナノ粒子と一緒に2時間インキュベートされた照射細胞(3秒照射)を表す。細胞生存は69%(コントロール細胞に対して)である。図3Bの右の柱は、DB069ナノ粒子と一緒に2時間インキュベートされた照射細胞(3秒照射)を表す。細胞生存は54%(コントロール細胞に対して)である。 図3Aおよび3Bは、本発明の粒子を用いての光線力学的療法処理によって、細胞死が誘発されることを示している。治療の効率は、ナノ粒子DB052と一緒にインキュベートされ、該ナノ粒子と一緒の2時間のインキュベーション後に照射された細胞について、31%の死、ナノ粒子DB069と一緒にインキュベートされ、該ナノ粒子と一緒の2時間のインキュベーション後に照射された細胞について、46%の死によって示される。
【図4A】図4Aは、顕微鏡を用いて撮影されたMCF7細胞の3枚の写真を表す。図4Aの左部分は、コントロール細胞を表す。該細胞は、本発明の化合物でインキュベートされなかったが、二光子照射により処理された。図4Aの中央部分は、シリカナノ粒子DB052と一緒に4時間インキュベートされ、二光子照射によって処理された細胞を表す。図4Aの右部分は、マンノースが被覆されたシリカナノ粒子DB069と一緒に4時間インキュベートされ、二光子照射によって処理された細胞を表す。
【図4B】図4Bは、無処理(ナノ粒子なし、照射なし)のコントロール実験に対するMCF7生細胞のパーセントを示す柱状グラフを表す。本柱状グラフは、それぞれが異なる実験に関する三つの柱により構成される。縦座標軸は、それぞれの実験におけるコントロールに対する生細胞のパーセントを表す。左の柱は、コントロール細胞を表す。これらの細胞は照射により処理されず、DB052ナノ粒子(表面被覆なしのナノ粒子)またはDB069ナノ粒子(マンノースの表面被覆を有するナノ粒子)のいずれかを用いてもインキュベートされなかった。中央の柱は、DB052ナノ粒子と一緒に4時間インキュベートされた照射細胞(3秒照射)を表す。細胞生存は64%(コントロール細胞に対して)である。右の柱は、DB069ナノ粒子と一緒に4時間インキュベートされた照射細胞(3秒照射)を表す。細胞生存は44%(コントロール細胞に対して)である。 図4Aおよび4Bは、本発明の粒子を用いての光線力学的療法処理によって、細胞死が誘発されることを示している。治療の効率は、ナノ粒子DB052と一緒にインキュベートされ、該ナノ粒子と一緒の4時間のインキュベーション後に照射された細胞について、36%の死、ナノ粒子DB069と一緒にインキュベートされ、該ナノ粒子と一緒の4時間のインキュベーション後に照射された細胞について、56%の死によって示される。 図3A、3B、4Aおよび4Bは、マンノースで表面被覆されたナノ粒子の治療効率の増加を示している。
【図5】図5は、無処理(ナノ粒子なし、照射なし)のMCF7細胞のコントロール実験に対するMDA-MB-231生細胞のパーセントを示す柱状グラフを表す。本柱状グラフは、それぞれが異なる実験に関する四つの柱により構成される。縦座標軸は、それぞれの実験におけるコントロールに対する生細胞のパーセントを表す。左から1番目の柱は、コントロール細胞を表す。これらの細胞は照射により処理されず、DB069ナノ粒子(マンノースの表面被覆を有するナノ粒子)と一緒にインキュベートされなかった。左から2番目の柱は、DB069ナノ粒子と一緒に2時間インキュベートされた照射細胞(3秒照射)を表す。細胞生存は54%(コントロール細胞に対して)である。左から3番目の柱は、DB069ナノ粒子と一緒に4時間インキュベートされた照射細胞(3秒照射)を表す。細胞生存は44%(コントロール細胞に対して)である。左から4番目の柱は、DB069ナノ粒子と一緒に24時間インキュベートされた照射細胞(3秒照射)を表す。これらの細胞はどれも生存しなかった、したがって、柱は現れない。 図5は、光線力学的療法の効率は、本発明のナノ粒子と一緒に細胞をインキュベートする時間と共に増加することを示している。
【図6】図6は、無処理(ナノ粒子なし、照射なし)のY-79細胞のコントロール実験に対するY-79生細胞のパーセントを示す柱状グラフを表す。本柱状グラフは、それぞれが異なる実験に関する三つの柱により構成される。縦座標軸は、それぞれの実験におけるコントロールに対する生細胞のパーセントを表す。左の柱は、コントロール細胞を表す。これらの細胞は照射により処理されず、DB052ナノ粒子(表面被覆なしのナノ粒子)またはDB069ナノ粒子(マンノースの表面被覆を有するナノ粒子)のいずれかを用いてもインキュベートされなかった。中央の柱は、DB052ナノ粒子と一緒に24時間インキュベートされた照射細胞(3秒照射)を表す。細胞生存は70%(コントロール細胞に対して)である。右の柱は、DB069ナノ粒子と一緒に24時間インキュベートされた照射細胞(3秒照射)を表す。細胞生存は33%(コントロール細胞に対して)である。 図6は、本発明のDB052およびDB069粒子が、網膜芽種細胞Y-79に対して細胞毒性を誘発したことを示している。 これらの結果は、マンノースが被覆されたナノ粒子(DB069)に対しての増大した効率を示している。
【図7】図7A、7B、7C、7D、7Eは、顕微鏡を用いて撮影されたHCT-116細胞の5枚の写真を表す。図7Aはコントロール細胞を表す。該細胞は、本発明の化合物と一緒にインキュベートされず、二光子照射によって処理された。図7Bは、シリカナノ粒子DB052(光増感剤 7a (2.90 μmol/g)を含み、マンノース被覆なし、シクロブテンジオン-アミノフェニル被覆なしのシリカナノ粒子)と一緒に4時間インキュベートされ、二光子照射によって処理された細胞を表す。図7Cは、シリカナノ粒子DB069(光増感剤 7a (2.90 μmol/g)を含み、マンノース被覆 (マンノース濃度:0.532 mmol/g)およびシクロブテンジオン被覆 (シクロブテンジオン濃度:0.532 mmol/g)のシリカナノ粒子)と一緒に4時間インキュベートされ、二光子照射によって処理された細胞を表す。図7Dは、シリカナノ粒子DB060(光増感剤 7a (4.50 μmol/g)を含み、マンノース被覆なし、シクロブテンジオン-アミノフェニル被覆なしのシリカナノ粒子)と一緒に4時間インキュベートされ、二光子照射によって処理された細胞を表す。。図7Eは、マンノース被覆のシリカナノ粒子DB103(光増感剤 7a (4.50 μmol/g)を含み、マンノース被覆 (マンノース濃度:0.089 mmol/g)およびシクロブテンジオン-アミノフェニル被覆 (シクロブテンジオン-アミノフェニル濃度:0.089 mmol/g)のシリカナノ粒子)と一緒に4時間インキュベートされ、二光子照射によって処理された細胞を表す。 図7A〜7Eは、大量の光増感剤を含むナノ粒子の改善された治療効率およびマンノース被覆のナノ粒子の改善された治療効率を示している。ナノ粒子なしでの二光子照射は、細胞死を誘発しない。
【図8】図8は、ヌードマウスに注入されたHCT-116腫瘍細胞の増殖を表すグラフである。腫瘍の初期サイズは、0.009〜0.01 cm3の範囲である。腫瘍容積は2日毎に測定される。横座標軸は腫瘍細胞注入後の日数を表す。縦座標軸は、cm3での腫瘍容積を表す。矢印は二光子照射を示す。マウスは一度の照射(3分 3回 二曝露間0.25秒で)で処理される。三組の結果がこのグラフに描かれている。三角形で表される第一組は、コントロールマウス(二光子照射なし、本発明のナノ粒子なし)の腫瘍容積に対応する。線形回帰曲線が描かれている(ダッシュ記号)。点で表される第二組は、二光子照射によって処理され、本願発明のナノ粒子で処理されなかったマウスの腫瘍容積に対応する。線形回帰曲線が描かれている(ダッシュ記号)。菱形で表される第三組は、二光子照射で処理され、本発明のDB069ナノ粒子で処理されたマウスの腫瘍容積に対応する。線形回帰曲線が描かれている。 図8は、小さい癌は、本発明のナノ粒子を用いる光線力学的療法に強く反応することを示している。
【図9】図9は、ヌードマウスに注入されたHCT-116腫瘍細胞の増殖を表すグラフである。腫瘍の初期サイズは、0.02〜0.04 cm3の範囲である。腫瘍容積は2日毎に測定される。横座標軸は腫瘍細胞注入後の日数を表す。縦座標軸は、cm3での腫瘍容積を表す。矢印は二光子照射を示す。マウスは一度の照射(3分 3回 二曝露間0.25秒で)で処理される。四組の結果がこのグラフに描かれている。三角形で表される第一組は、コントロールマウス(二光子照射なし、本発明のナノ粒子なし)の腫瘍容積に対応する。線形回帰曲線が描かれている(ダッシュ記号)。点で表される第二組は、二光子照射によって処理され、本願発明のナノ粒子で処理されなかったマウスの腫瘍容積に対応する。線形回帰曲線が描かれている(ダッシュ記号)。正方形で表される第三組は、本願発明のナノ粒子で処理されたが、二光子照射によって処理されなかったマウスの腫瘍容積に対応する。線形回帰曲線が描かれている(ダッシュ記号)。菱形で表される第四組は、二光子照射で処理され、本発明のDB069ナノ粒子で処理されたマウスの腫瘍容積に対応する。線形回帰曲線が描かれている。 図9は、中サイズの癌は、本発明のナノ粒子を用いる光線力学的療法に反応し、それらの増殖速度が減少することを示している。
【図10】図10は、エタノール中での化合物6aの吸収および発光スペクトルを表す。横座標軸は、nmでの発光または吸収放射波長を表す。縦座標軸は、任意の単位での放射の正規化相対強度を表す。二つの曲線が示されている。左から1番目の曲線(灰色)は、化合物6aの吸収スペクトルを表す。左から2番目の曲線(黒色)は、化合物6aの発光スペクトルを表す。
【図11】図11は、THF中、異なる波長での化合物6aの二光子吸収断面積を表す。横座標軸は、nmでの吸収放射波長を表す。縦座標軸は、GMでの二光子吸収断面積を表す。
【図12】図12は、エタノール中での化合物6bの吸収および発光スペクトルを表す。横座標軸は、nmでの発光または吸収放射波長を表す。横座標軸は、任意の単位での放射の正規化相対強度を表す。二つの曲線が示されている。左から1番目の曲線(灰色)は、化合物6bの吸収スペクトルを表す。左から2番目の曲線(黒色)は、化合物6bの発光スペクトルを表す。
【図13】図13は、THF中、異なる波長での化合物6bの二光子吸収断面積を表す。横座標軸は、nmでの吸収放射波長を表す。縦座標軸は、GMでの二光子吸収断面積を表す。
【図14】図14は、エタノール中でのUV-可視吸収スペクトルを表す。横座標軸は、nmでの吸収放射波長を表す。縦座標軸は、任意の単位での正規化相対強度を表す。三つの曲線が示されている。1番目の曲線(黒色線)は、光増感剤6aの吸収スペクトルを表す。2番目の曲線(黒色点)は、光増感剤なしのナノ粒子の吸収スペクトルを表す。3番目の曲線(黒色ダッシュ)は、ナノ粒子DB060(封入された光増感剤6aを有する)の吸収スペクトルを表す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0231】
実験の部
A 光増感剤の合成
化学的に反応性の基を有する化合物
一般的方法:
空気-または水-感受性の反応は、乾燥アルゴン下で行われた。溶媒は一般的に乾燥され、使用前に蒸留された。反応は、Merck シリカゲル 60 F254 が前もって被覆されたアルミシートでの薄層クロマトグラフィーによってモニターされた。カラムクロマトグラフィー:Merck シリカゲル Si 60 (40-63 μm, 230-400 メッシュまたは63-200 μm, 70-230 メッシュ)。融点は、Electrothermal IA9300 デジタル融点計器で測定された。NMR:Bruker ARX 200 (1H: 200.13 MHz, 13C: 50.32 MHz)またはAvance AV 300 (1H: 300.13 MHz, 13C: 75.48 MHz), CDCl3溶液で;1H ケミカルシフト (δ)は、内部標準としてのTMS (テトラメチルシラン)に対してのppmで与えられ、J値はHzで、13C ケミカルシフトは、77.0 ppmでのCDCl3の中央ピークに対してで与えられる。高および低分解マススペクトル測定は、EBE TOF ジオメトリー、m-ニトロベンジルアルコール(mNBA)中、Cs+ を用いる8 kVでのLSIMS (液体二次イオン質量分析); 4 kVでのES+ (電子スプレーイオン化, 正電荷モード);70 eVでのEI (電子イオン化)を有するMicromass MS/MS ZABSpec TOF測定器を用いて、Centre Regional de Mesures Physiques de l'Ouest (C.R.M.P.O., Rennes)で行われた。元素分析はC.R.M.P.O.で行われた。
【0232】
実施例 1
フルオレン中核部の一般的合成:
2,7-ジヨードフルオレンをトルエン中に入れ、3分間超音波処理した。トルエン中に、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)を加え、続いてアルキルハライドまたはトシレートを加えた。最後に、NaOH (50 重量%溶液)を加えた。反応混合物を脱気し、アルゴン下、60℃で20時間加熱し、次いで室温に冷却した。次いで、反応混合物をCH2Cl2および水で希釈した。有機層を分離し、水層をCH2Cl2で抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、次いで1M HClおよび最後に飽和NaCl溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥した。蒸発乾固後、粗試料をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製し、対応する9,9-ジアルキル-2,7-ジヨード-9H-フルオレンを得た。
【0233】
実施例 2
光増感剤の一般的合成:
対応する9,9-ジアルキル-2,7-ジヨード-9H-フルオレンから、2-メチル-3-ブチン-2-オールを用いる二重のパラジウム(II)-触媒クロスカップリング、続いて得られた中間体の塩基推進の脱保護により、フルオレン中核部を得た。適当な(3,4-置換されたまたは置換されていない) 5-ヨードチオフェン-2-カルボキシアルデヒドを用いる9,9-ジアルキル-2,7-ジエチニル-9H-フルオレンの二重の薗頭カップリングにより、対応する5,5'-(9,9-ジアルキル-9H-フルオレン-2,7-ジイルジ-2,1-エチンジイル)ビス-2-チオフェンカルボキシアルデヒドを得た。これらのジアルデヒドの[[4-[エチル(2-ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル]メチル]トリフェニルホスホニウム ヨーダイド (Porres, L.; Bhatthula, B. K. G.; Blanchard-Desce, M. Synthesis 2003, 1541-1544)とのウィッティヒ縮合により、単一の(E,E)-立体異性体として対応する光増感剤を得た。
【0234】
実施例 3
4,4'-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2,7-ジイル)ビス(2-メチル-3-ブチン-2-オール)
【化45】

【0235】
20分間のアルゴン吹付けにより、37.5 mLのトルエン/Et3N (5/1)中の9,9-ジブチル-2,7-ジヨード-9H-フルオレン (Li, F.; Chen, Z.; Wei, W.; Cao, H.; Gong, Q.; Teng, F.; Qian, L.; Wang, Y. J. Phys. D: Appl. Phys. 2004, 37, 1613-1616) (6.00 g, 11.3 mmol)の溶液から空気を除いた。次いで、CuI (86 mg, 0.45 mmol)、Pd(PPh3)2Cl2 (316 mg, 0.45 mmol)および2-メチル-3-ブチン-2-オール (2.84 g, 33.8 mmol)を加え、混合物を40℃で16時間撹拌した。溶媒蒸発後、残渣をカラムクロマトグラフィー (ヘプタン/CH2Cl2 30:70 次いでCH2Cl2)により精製し、4.37 g (87%)の4,4'-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2,7-ジイル)ビス(2-メチル-3-ブチン-2-オール)を得た。
【0236】
1H NMR (200.13 MHz, CDCl3) δ 7.60 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.40 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.38 (s, 2H), 2.16 (s, 2H), 1.94 (m, 4H), 1.66 (s, 12H), 1.07 (m, 4H), 0.66 (t, J = 7.3, 6H), 0.52 (m, 4H);
13C NMR (50.32 MHz, CDCl3) δ 150.8, 140.5, 130.7, 126.0, 121.3, 119.8, 93.9, 82.9, 65.7, 55.0, 40.1, 31.5, 25.7, 23.0, 13.8;
HRMS (EI) C31H38O2 (M+・)に対する計算値 m/z 442.2872, 実測値 442.2859
分析(Anal.) C31H38O2 (442.64)に対する計算値: C, 84.12; H, 8.65 実測値: C, 84.01; H, 8.71
【0237】
実施例 4
9,9-ジブチル-2,7-ジエチニル-9H-フルオレン
【化46】

【0238】
20 mLのトルエン/i-PrOH (3/1)中の4,4'-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2,7-ジイル)ビス(2-メチル-3-ブチン-2-オール) (1.04 g, 2.35 mmol)の溶液に、固体のKOH (0.39 g)を加えた。混合物を還流下で0.5時間加熱した。冷却後、KOHを濾別し、溶媒を蒸発し、残渣をカラムクロマトグラフィー (ヘプタン/CH2Cl2 70:30 次いで20:80)により精製し、0.54 g (71%)の2,7-ジエチニル-9,9-ジブチル-9H-フルオレンを得た。
【0239】
1H NMR (200.13 MHz, CDCl3) δ 7.63 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.48 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.46 (s, 2H), 3.15 (s, 2H), 1.94 (m, 4H), 1.07 (m, 4H), 0.67 (t, J =7.2 Hz, 6H), 0.54 (m, 4H);
13C NMR (50.32 MHz, CDCl3) δ 151.0, 140.9, 131.2, 126.5, 120.8, 119.9, 84.5, 77.4, 55.1, 40.0, 25.8, 22.9, 13.7;
HRMS (EI) C25H26 (M+・)に対する計算値 m/z 326.2035, 実測値 326.2036
分析 C25H26 (326.48)に対する計算値: C, 91.97; H, 8.03 実測値: C, 92.17; H, 8.07
【0240】
実施例5
5,5'-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2,7-ジイルジ-2,1-エチンジイル)ビス-2-チオフェンカルボキシアルデヒド
【化47】

【0241】
20分間のアルゴン吹付けにより、6.5 mLのトルエン/Et3N (4/1)中の2,7-ジエチニル-9,9-ジブチル-9H-フルオレン (0.150 g, 0.460 mmol)および5-ヨードチオフェン-2-カルボキシアルデヒド (Wu, L.-H.; Chu, C.-S.; Janarthanan, N.; Hsu, C.-S. J. Polym. Res. 2000, 7, 125-134 ) (0.251 g, 1.06 mmol)の溶液から空気を除いた。次いで、CuI (7.0 mg, 0.0037 mmol)およびPd(PPh3)2Cl2 (27 mg, 0.0039 mmol)を加え、10分間脱気を続けた。その後、混合物を40℃で16時間撹拌した。溶媒を減圧下に除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー (ヘプタン/CH2Cl2 50:50 次いで40:60)により精製し、245 mg (97%)の5,5'-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2,7-ジイルジ-2,1-エチンジイル)ビス-2-チオフェンカルボキシアルデヒドを得た。
【0242】
1H NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ 9.80 (s, 2H), 7.61および7.26 (AX, JAX = 3.9 Hz, 4H), 7.62 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.47 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.45 (s, 2H), 1.93 (m, 4H), 1.02 (m, 4H), 0.60 (t, J =7.3 Hz, 6H), 0.51 (m, 4H);
13C NMR (75.46 MHz, CDCl3) δ 182.4, 151.4, 143.9, 141.4, 136.1, 133.0, 132.5, 131.0, 126.0, 120.9, 120.4, 98.9, 82.6, 55.3, 40.1, 25.9, 23.0, 13.8;
HRMS (ESI) C35H30O2S2 (M+・)に対する計算値 m/z 546.16872, 実測値 546.1687
【0243】
実施例 6
5,5'-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2,7-ジイルジ-2,1-エチンジイル)ビス(3,4-エチレンジオキシ-2-チオフェンカルボキシアルデヒド)
【化48】

【0244】
20分間のアルゴン吹付けにより、トルエン/Et3N (4/1)中の2,7-ジエチニル-9,9-ジブチル-9H-フルオレンおよび5-ヨード-3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボキシアルデヒド (Jessing, M.; Brandt, M.; Jensen, K. J.; Christensen, J. B.; Boas, U. J. Org. Chem. 2006, 71, 6734) (2.3 当量)の溶液から空気を除いた。次いで、CuI (2×4 mol%)およびPd(PPh3)2Cl2 (2×4 mol%)を加え、10分間脱気を続けた。その後、混合物を40℃で16時間撹拌した。溶媒を減圧下に除去し、粗生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー (ヘプタン/CH2Cl2 50:50 次いで40:60)により精製し、5,5'-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2,7-ジイルジ-2,1-エチンジイル)ビス(3,4-エチレンジオキシ-2-チオフェンカルボキシアルデヒド)を得た。
【0245】
実施例 7
5-[[7-[[5-[(1E)-2-[4-(ジヘキシルアミノ)フェニル]エテニル]チエニ-2-イル]エチニル]-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル]エチニル]チオフェン-2-カルボキシアルデヒド
【化49】

【0246】
無水CH2Cl2 (40 mL)中の5,5'-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2,7-ジイルジ-2,1-エチンジイル)ビス-2-チオフェンカルボキシアルデヒド (1.14 g, 2.085 mmol)および[[4-(ジヘキシルアミノ)フェニル]メチル]トリフェニルホスホニウム ヨーダイド (1.66 g, 2.501 mmol)の溶液に、tBuOK (0.352 g, 3.137 mmol)を加えた。混合物を20℃で16時間撹拌し、次いでシリカゲルの短いパッドにより濾過した。溶媒を減圧下に除去し、粗生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー (へプタン/CH2Cl2 勾配 70:30〜30:70)により精製し、701 mg (42%)の5-[[7-[[5-[(1E)-2-[4-(ジヘキシルアミノ)フェニル]エテニル]チエニ-2-イル]エチニル]-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル]エチニル]チオフェン-2-カルボキシアルデヒドを得た。
【0247】
1H NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ 9.88 (s, 1H), 7.70 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.69および7.35 (AX, JAX = 3.9 Hz, 2H), 7.68 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.56-7.49 (m, 4H), 7.33および6.61 (AA'XX', JAX = 8.9 Hz, 4H), 7.17および6.87 (AX, JAX = 3.8 Hz, 2H), 6.95 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 6.86 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 3.28 (m, 4H), 2.00 (m, 4H), 1.60 (m, 4H), 1.33 (m, 12H), 1.11 (m, 4H), 0.91 (t, J = 6.8 Hz, 6H), 0.69 (t, J = 7.3 Hz, 6H), 0.59 (m, 4H)
【0248】
実施例 8
光増感剤 6a(本願において、化合物CR109とも呼ばれる)
【化50】

【0249】
無水CH2Cl2 (10 mL)中の5,5'-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2,7-ジイルジ-2,1-エチンジイル)ビス-2-チオフェンカルボキシアルデヒド (0.241 g, 0.441 mmol)および[[4-[エチル(2-ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル]メチル]トリフェニルホスホニウム ヨーダイド (Porres, L.; Bhatthula, B. K. G.; Blanchard-Desce, M. Synthesis 2003, 1541-1544) (0.576 g, 1.016 mmol)の溶液に、tBuOK (0.149 g, 1.325 mmol)を加えた。混合物を20℃で16時間撹拌し、次いでシリカゲルの短いパッドにより濾過した。溶媒を減圧下に除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー (CH2Cl2/AcOEt 98:2 次いで95:5)により精製し、134 mg (35%)の6aを得た。
【0250】
1H NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ 7.66 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.50 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.48 (m, 2H), 7.35および6.73 (AA'XX', JAX = 8.9 Hz, 8H), 7.17および6.89 (AX, JAX = 3.6 Hz, 4H), 6.98 (d, J = 16.0 Hz, 2H), 6.85 (d, J = 16.0 Hz, 2H), 3.81 (t, J = 5.7 Hz, 4H), 3.50 (t, J = 5.7 Hz, 4H), 3.50 (q, J = 7.1 Hz, 4H), 1.99 (m, 4H), 1.66 (s, 2H), 1.18 (t, J = 7.0 Hz, 6H), 1.07 (m, 4H), 0.69 (t, J = 7.3 Hz, 6H), 0.59 (m, 4H);
13C NMR (75.46 MHz, CDCl3) δ 151.1, 148.1, 145.8, 140.7, 132.7, 130.5, 129.6, 127.9, 125.6, 125.0, 124.8, 121.8, 120.4, 120.0, 117.2, 112.5, 94.9, 84.0, 60.3, 55.2, 52.4, 45.6, 40.2, 25.9, 23.1, 13.9, 12.0;
HRMS (ESI) C57H61N2O2S2 [(M+H)+]に対する計算値 m/z 869.41745, 実測値 869.4173
【0251】
【表1】

【0252】
化合物 6aのエタノール中での吸収および発光スペクトル(図10)、化合物 6aのTHF中での二光子吸収(図11)および化合物 6aのUV-可視吸収スペクトル(図14)が示されている。
【0253】
実施例 9
光増感剤 9a
【化51】

【0254】
無水CH2Cl2 (10 mL)中の5-[[7-[[5-[(1E)-2-[4-(ジヘキシルアミノ)フェニル]エテニル]チエニ-2-イル]エチニル]-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル]エチニル]チオフェン-2-カルボキシアルデヒド (300 mg, 0.373 mmol)および[[4-[エチル(2-ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル]メチル]トリフェニルホスホニウム ヨーダイド (666 mg, 1.175 mmol)の溶液に、tBuOK (219 mg, 1.958 mmol)を加えた。混合物を20℃で16時間撹拌し、次いでシリカゲルの短いパッドにより濾過した。溶媒を減圧下に除去し、粗生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー (ヘプタン/CH2Cl2 勾配 50:50〜20:80)により精製し、302 mg (84%)の9aを得た。
【0255】
1H NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ 7.69 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.56 (m, 2H), 7.55 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.38および6.75 (AA'XX', JAX = 8.9 Hz, 4H), 7.38および6.66 (AA'XX', JAX = 8.9 Hz, 4H), 7.22および6.922 (AX, JAX = 3.7 Hz, 2H), 7.22および6.912 (AX, JAX = 3.7 Hz, 2H), 7.02 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.01 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 6.918 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 6.908 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 3.81 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 3.50 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 3.46 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 3.32 (m, 4H), 2.05 (m, 4H), 1.89 (br s, 1H), 1.64 (m, 4H), 1.38 (m, 12H), 1.20 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.16 (m, 4H), 0.97 (t, J = 6.6 Hz, 6H), 0.74 (t, J = 7.3 Hz, 6H), 0.67 (m, 4H);
13C NMR (75.46 MHz, CDCl3) δ 151.1, 147.9, 146.0, 145.7, 140.64, 140.57, 132.6, 130.4, 129.9, 129.5, 127.8, 125.6, 125.0, 124.7, 124.4, 123.5, 121.8, 121.7, 120.4, 120.0, 119.9, 117.1, 116.3, 112.5, 111.5, 94.9, 94.7, 84.0, 83.9, 60.2, 55.1, 52.4, 51.0, 45.6, 40.2, 31.7, 27.2, 26.8, 25.9, 23.0, 22.7, 14.0, 13.8, 11.9
【0256】
実施例 10
光増感剤 11a
【化52】

【0257】
無水CH2Cl2中の5-[[7-[[5-[(1E)-2-[4-(ジヘキシルアミノ)フェニル]エテニル]チエニ-2-イル]エチニル]-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル]エチニル]チオフェン-2-カルボキシアルデヒドおよび[[4-[エチル[2-(4-ヒドロキシフェノキシ)エチル]アミノ]フェニル]メチル]トリフェニルホスホニウム ヨーダイドの溶液に、tBuOK (2 当量)を加えた。混合物を20℃で16時間撹拌し、次いでシリカゲルの短いパッドにより濾過した。溶媒を減圧下に除去し、粗生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー (ヘプタン/CH2Cl2)により精製し、光増感剤 11aを得た。
【0258】
実施例 11
光増感剤 14
【化53】

【0259】
無水CH2Cl2中の5,5'-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2,7-ジイルジ-2,1-エチンジイル)ビス(3,4-エチレンジオキシ-2-チオフェンカルボキシアルデヒド)および[[4-[エチル(2-ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル]メチル]トリフェニルホスホニウム ヨーダイド (2.33 当量)の溶液に、tBuOK (3 当量)を加えた。混合物を20℃で16時間撹拌し、次いでシリカゲルの短いパッドにより濾過した。溶媒を減圧下に除去し、粗生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー (CH2Cl2/AcOEt)により精製し、光増感剤 14を得た。
【0260】
実施例 12
2,7-ジヨード-9,9-ビス[2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]-9H-フルオレン
【化54】

【0261】
1.0 gの2,7-ジヨードフルオレン (2.4 mmol)を4 mLのトルエンに入れ、3分間超音波処理した。これに、0.25 gのテトラブチルアンモニウム ブロマイド (TBAB) (0.78 mmol)加え、続いて2 mLのトルエン中の2.5 gの2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル p-トルエンスルホネート (TEG-OTs, 7.82 mmol)を加えた。最後に、4 mLのNaOH (50 重量%溶液)を加えた。反応混合物を脱気し、アルゴン下、60℃で20時間加熱し、次いで室温に冷却した。次いで、反応混合物を60 mLのCH2Cl2および30 mLの水で希釈した。有機層を分離し、水層をCH2Cl2 (3×15ml)で抽出した。合わせた有機層を水 (2×50 mL)で洗浄し、次いで1M HCl (50 ml)および最後に60 mLの飽和NaCl溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥した。蒸発乾固後、粗試料をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー (CH2Cl2/AcOEt 65:35)により精製し、1.0 gの2,7-ジヨード-9,9-ビス[2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]-9H-フルオレン (59%)を得た。
【0262】
1H NMR (CDCl3) δ 2.33 (t, 4H, J = 7.8 Hz), 2.76 (t, 4H, J = 6.9 Hz), 3.21 (m, 4H), 3.35 (s, 6H), 3.39(m, 4H), 3.56-3.48 (m, 8H), 7.40 (d, 2H, J = 8 Hz), 7.67 (dd, 2H, J = 8 Hz, J = 1.3 Hz), 7.73 (d, 2H, J = 1.3 Hz);
13C NMR (CDCl3) δ 39.4, 51.7, 59.1, 66.7, 70.0, 70.46, 70.49, 71. 9, 93. 3, 121.6, 132.5, 136.5, 139.1, 150.8
分析 C27H36O6I2 (710.38)に対する計算値: C, 45.65; H, 5.11 実測値: C, 46.06; H, 5.12
【0263】
実施例 13
2,7-ジエチニル-9,9-ビス[2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]-9H-フルオレン
【化55】

【0264】
20分間のアルゴン吹付けにより、7.5 mLのトルエン/Et3N (4/1)中の2,7-ジヨード-9,9-ビス[2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]-9H-フルオレン (0.452 g, 0.636 mmol)の溶液から空気を除いた。次いで、CuI (5 mg, 4 mol%)、Pd(PPh3)2Cl2 (18 mg, 4 mol%)および2-メチル-3-ブチン-2-オール (0.185 mL, 1.9 mmol)を加え、混合物を40℃で18時間撹拌した。反応の終了はTLCでモニターされた。溶媒の蒸発後、粗生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー (CH2Cl2/AcOEt 20:80 次いでAcOEt)により精製し、0.372 g (94%)の4,4'-[9,9-ビス[2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]-9H-フルオレン-2,7-ジイル]ビス(2-メチル-3-ブチン-2-オール)を得た。
【0265】
1H NMR (CDCl3) δ 1.66 (s, 12H), 2.34 (s, 2H), 2.36 (t, 4H, J = 6.9 Hz), 2.72 (t, 4H, J = 6.9 Hz), 3.18 (m, 4H), 3.36 (s, 6H), 3.38 (m, 4H), 3.56-3.48 (m, 8H), 7.41 (dd, 2H, J = 7.8 Hz, J = 1.2 Hz), 7.47 (d, 2H, J = 1.2 Hz), 7.59 (d, 2H, J = 7.8 Hz);
13C NMR (CDCl3) δ 15.3, 31.5, 39.6, 51. 3, 59.0, 65.6, 66.8, 70.0, 70.4, 71.8, 82.6, 94.5, 112.0, 121.8, 126.6, 131.1, 139.8, 149.2
【0266】
9 mLのトルエンおよび2 mLのi-PrOH中の4,4'-[9,9-ビス[2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]-9H-フルオレン-2,7-ジイル]ビス(2-メチル-3-ブチン-2-オール) (0.363g, 0.58 mmol)の溶液に、固体のNaOH (0.15 g, 3.75 mmol)を加えた。混合物を還流下に1.5時間加熱した。冷却後、NaOHを濾別し、溶媒を蒸発し、残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー (CH2Cl2/AcOEt 60:40)により精製し、0.171 g (58%)の2,7-ジエチニル-9,9-ビス[2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]-9H-フルオレンを得た。
【0267】
mp 68 ℃;
1H NMR (CDCl3) δ 2.37 (t, 4H, J = 7.8 Hz), 2.74 (t, 4H, J = 7.2 Hz), 3.17 (s, 2H), 3.20 (m, 4H), 3.35 (s, 6H), 3.39 (m, 4H), 3.54-3.47 (m, 8H), 7.50 (dd, 2H, J = 7.8 Hz, J = 1.3 Hz), 7.55 (d, 2H, J = 1.3 Hz). 7. 63 (d, 2H, J = 7.8 Hz);
13C NMR (CDCl3) δ 39.5, 51.3, 59.1, 65.9, 66.8, 70.0, 70.4, 71.8, 77.9, 84.1, 120.1, 121.2, 127.0, 131.7, 140.2, 149.3
分析 C31H38O6 (506.63)に対する計算値: C, 73.49; H, 7.56 実測値: C, 73.59; H, 7.64
【0268】
実施例 14
5,5'-[9,9-ビス[2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]-9H-フルオレン-2,7-ジイルジ-2,1-エチンジイル]ビス-2-チオフェンカルボキシアミド
【化56】

【0269】
20分間のアルゴン吹付けにより、8.2 mLのトルエンおよび1.8 mLのEt3N中の2,7-ジエチニル-9,9-ビス[2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]-9H-フルオレン (0.120 g, 0.237 mmol)の溶液から空気を除いた。次いで、Pd(PPh3)2Cl2 (10 mg, 6 mol%)およびCuI (2.7 mg, 6 mol%)ならびに5-ヨードチオフェン-2-カルボキシアルデヒド (0.135 g, 0.568 mmol)を加え、15分間脱気を続けた。その後、混合物を40℃で17時間撹拌した。反応の終了後、反応混合物を濾過し、蒸発乾固した。粗生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー (CH2Cl2/AcOEt 60:40 次いでAcOEt)により精製し、0.140 g (81%)の5,5'-[9,9-ビス[2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]-9H-フルオレン-2,7-ジイルジ-2,1-エチンジイル]ビス-2-チオフェンカルボキシアルデヒドを得た。
【0270】
mp 84 ℃;
1H NMR (CDCl3) δ 2.43 (t, 4H, J = 7.5 Hz), 2.79 (t, 4H, J = 7.2 Hz), 3.21 (m, 4H), 3.33 (s, 6H), 3.39 (m, 4H), 3.54-3.46 (m, 8H), 7.37 (d, 2H, J = 3.9 Hz), 7.57 (dd, 2H, J = 1.5 Hz, J = 7.1 Hz), 7.62 (d, 2H, J = 1.2 Hz), 7.71 (d, 2H, J = 7.1 Hz), 7.72 (d, 2H, J = 3.9 Hz), 9.90 (s, 2H);
13C NMR (CDCl3) δ 39.6, 51.6, 59.0, 66.8, 70.1, 70.4, 70.5, 71.8, 83.0, 98.5, 120.5, 121.2, 126.6, 131.3, 132.6, 132.8, 136.2, 140.7, 143.9, 149.7, 182.5
HRMS (ESI) C41H42O8NaS2 [(M+Na)+]に対する計算値 m/z 749.2219, 実測値 749.2226
分析 C41H42O8S2 (726.90)に対する計算値: C, 67.75; H, 5.82; S, 8.82 実測値: C, 67.86; H, 5.82; S, 8.63
【0271】
実施例 15
光増感剤 6b(本願において、化合物SMU33とも呼ばれる)
【化57】

【0272】
無水CH2Cl2 (5 mL)中の5,5'-[9,9-ビス[2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル]-9H-フルオレン-2,7-ジイルジ-2,1-エチンジイル]ビス-2-チオフェンカルボキシアルデヒド (0.040 g, 0.055 mmol)の溶液に、tBuOK (18.5 mg, 0.165 mmol)および[[4-[エチル(2-ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル]メチル]トリフェニルホスホニウム ヨーダイド (0.081 g, 0.143 mmol)を加えた。混合物を20℃で20時間撹拌し、次いでCH2Cl2 (15 mL)で希釈した。溶媒を減圧下に除去し、残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製した。望まない生成物をCH2Cl2/AcOEt (90:10〜0:100)で溶出し、次いで所期の生成物をCH2Cl2/MeOH (95:5)で溶出し、0.020 g (35%)の6bを得た。
【0273】
1H NMR (CDCl3) δ 1.19 (t, 6H, J = 7.0 Hz), 1.68 (t, 2H, J = 5.7 Hz), 2.41 (t, 4H, J = 7.3 Hz), 2.79 (t, 4H, J = 7.3 Hz), 3.22 (m, 4H), 3.33 (s, 6H), 3.40 (m, 4H), 3.55-3.43 (m, 16H), 3.83 (q, 4H, J = 5.7 Hz), 6.74 (d, 4H, J = 8.9 Hz), 6.86 (d, 2H, J = 15.8 Hz), 6.90 (d, 2H, J = 3.6 Hz), 6.99 (d, 2H, J = 15.8 Hz), 7.18 (d, 2H, J = 3.6 Hz), 7.36 (d, 4H, J = 8.9 Hz), 7.51 (dd, 2H, J = 7.8 Hz, J = 1.4 Hz), 7.57 (m, 2H), 7.65 (d, 2H, J = 7.8 Hz);
13C NMR (CDCl3) δ 12.0, 39.7, 45.6, 51.4, 52.4, 59.0, 60.3, 66.9, 70.0, 70.4, 70.5, 71.9, 84.4, 94.5, 112.5, 117.1, 120.1, 120.2, 122.1, 124.8, 125.0, 126.0, 127.9, 129.6, 130.8, 132.8, 139.9, 145.9, 148.0, 149.4;
HRMS (ESI) C63H72N2O8S2 (M+.)に対する計算値 m/z 1048.4730, 実測値 1048.4742
【0274】
化合物 6bのエタノール中での吸収および発光スペクトル(図12)、化合物 6bのTHF中での二光子吸収(図13)が示されている。
光増感剤 6aおよび6bは、有機媒体中での良好な光増感効率(トルエン中での一重項酸素発生に対して22% 量子収率)と同時に生物環境でのモニタリングおよびスクリーニングに対して興味ある蛍光(エタノール中での蛍光に対して65% 量子収率、オレンジ色の発光)を示す。溶液中で測定された近赤外でのそれらの二光子吸収特性は、非常に興味深い(最大値で1000 GMより優れた二光子吸収断面積および良好な二光子励起効率で700〜900 nmの範囲の照射を可能にする広いスペクトル)。
【0275】
【表2】

【0276】
分子クリップ基を有する化合物
官能化された化合物の一般的な合成
乾燥THF中、アルゴン下の化学的に反応性の基を有する (1 当量)化合物に、イソシアナートプロピルトリエトキシシラン (2.2 当量)および触媒としてのトリエチルアミンを加えた。新しく蒸留されたTHFを加えた。反応混合物を70℃で2日間撹拌した。反応の終了は赤外線分光法でチェックされた。反応混合物を減圧下に乾燥し、シリカゲルのクロマトグラフィーにより精製した。精製された化合物をMgSO4で乾燥し、濾過し、蒸発乾固した。
【0277】
実施例 16
化合物 7a
【化58】

【0278】
光増感剤 6a (75 mg, 8.4 10-2 mmol)を、新しく蒸留されたTHFに溶解した。イソシアナートプロピルトリエトキシシラン (2.1 当量, 1.76 10-1 mmol)および数滴のトリエチルアミンを加えた。該THF溶液を3日間還流した。反応混合物を蒸発させ、次いで、溶出混液CH2Cl2/AcOEt (90/10; rf 0.2)を用いるシリカゲルで精製した。光増感剤トリアルコキシシラン誘導体 7aを31% 収率で得た。
【0279】
実施例 17
化合物 7b
【化59】

【0280】
光増感剤 6b (5.9.10-5 mol, 62 mg)存在下の反応容器をアルゴン雰囲気下に置いた。新しく蒸留されたTHF (5 mL)を加えた。次いで、イソシアナートプロピルトリエトキシシラン (2.2 当量, 1.3 10-4 mol)および 触媒として3滴のトリエチルアミンを加えた。反応混合物を70℃で2日間撹拌した。反応の終了は赤外線分光法でチェックされた。反応混合物を減圧下に乾燥し、CH2Cl2/AcOEt 混液 (7/3 次いで5/5)により溶出されるシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製した。MgSO4で乾燥、濾過および蒸発乾固後、生成物を赤外線、NMRおよびUV-可視分光法により特徴付けた。
【0281】
化合物 9b
【化60】

【0282】
光増感剤 9a (30.3 mg, 3.14 10-2mmol)を、新たに蒸留したTHFに溶解した。イソシアナートプロピルトリエトキシシラン (1.1 当量, 3.45 10-2 mmol)および数滴のトリエチルアミンを3 mlのTHFに溶解し、前記溶液に加えた。THF溶液を2日間還流した。反応混合物を蒸発させ、精製せずに次の封入工程のために用いた。
【0283】
B ナノ粒子合成
生体標的部分なしのナノ粒子
実施例 18
メソ多孔性ナノ粒子の合成 (DB052およびDB060)
ナノ粒子を塩基性媒体中での直接(direct)マイクロエマルジョン(水中油型)によって合成した。
セチルトリメチルアンモニウム ブロマイド (CTAB) (686 mg, 1.8 10-3 mol)を25℃で、水酸化ナトリウム (40 mL, 0.2 M)に溶解した。テトラエトキシシラン (3.5 mL, 1.57 10-2 mmol)を、前で合成された光増感剤トリアルコキシシラン誘導体 7a (DB052に対して4.7 mgおよびDB060に対して9.2 mg)のエタノール溶液と一緒に滴下した。40秒後、脱イオン水 (260 mL)を加えた。溶液を6分間撹拌し、次いで、HCl (0.2 M, 約50 mL)を用いてpH 7に素早く中和した。ナノ粒子を遠心分離 (10分, 1分当たり20000 回転)により回収し、超音波を用いてEtOHでかき混ぜ、遠心分離した。室温で3時間のMeOH/NaCl (285 mL, 1.3重量%)での処理で界面活性剤を抽出した。遠心分離後、抽出を2回繰り返し、次いで、ナノ粒子を水およびエタノールで洗浄した。
【0284】
これらのナノ粒子は、六方晶型MCM41ネットワークを有するメソ多孔性である。メソ孔は約3 nmであった。封入された光増感剤の存在は、UV-可視吸収によって示される (図 14)。
【0285】
エタノール中の分散体でのナノ粒子DB052およびDB060の光物理学的および二光子吸収特性が表 1に示され、それは、該ナノ粒子が、封入された光増感剤の蛍光特性および近赤外での二光子励起に対するそれらの応答(強度の光増感をより効率的にすることができる)を保持することを示している。
本発明の重要な特徴は、光増感剤がナノ粒子から浸出することを防ぐ光増感剤のナノ粒子への共有接合であることに注目することが重要である。
【0286】
【表3】

【0287】
生体標的部分を有するナノ粒子
光増感剤を封入するナノ粒子の合成のさらなる工程は、癌細胞の生体標的を可能にする生体分子による、該ナノ粒子表面の官能化である。この表面の接合化のために、いくつかの有機カップリング剤が用いられた。有機カップリング剤は、シリカに固定するためにクロロまたはアルコキシシラン官能基、および生体分子と結合するためにアミン、チオール、アルコール、ヒドラジン、セミカルバジド、イソシアネート、酸またはアルデヒド官能基を含む。
【0288】
ナノ粒子表面の官能化のために用いられる生体分子は、異なるタイプのもの、例えばマンノース、ガラクトース、ラムノース、マンノース 6-ホスフェート、マンノース 6-ホスフェート類似体であることができる。
ナノ粒子表面は、一つのアミン官能基を含むトリアルコキシシラン(例えば、アミノプロピルトリエトキシシランまたはアミノプロピルトリメトキシシラン)によって官能化された。本表面アミン官能基は、α-マンノース フェニルアミノシクロブテンジオン誘導体と反応する。マンノースの配分は、レゾルシノール/H2SO4溶液との反応後のUV-可視吸収によりモニターされた(吸収量メトリックアッセイ)。
【0289】
実施例 19
ナノ粒子表面へのアミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)接合
脱イオン水中で、ナノ粒子 DB052またはDB060 (350 mg)を超音波によって懸濁した。APTS (500 μL)を滴下した。pH 6.5までHCl (0.2 M)を加えた。反応混合物を18時間撹拌し、遠心分離(10分, 1分当たり20000回転)した。ナノ粒子を水で2回およびエタノールで3回洗浄(超音波および遠心分離)した。ナノ粒子を単離した(350 mg)。
アミン官能基は、ニンヒドリンを用いる定量分析によって特徴付けられた。エタノール中で観測されたUV-可視吸収スペクトルは、光増感剤がまだ存在し、合成の間に害されなかったことを示した。
【0290】
実施例 20
ナノ粒子上へα-マンノース表面接合 (DB069)
【化61】

【0291】
エタノール (5 mL)中で、ナノ粒子 DB052 (200 mg)を超音波によって30分間かき混ぜた。α-マンノース フェニルアミノシクロブテンジオン誘導体 (71 mg, 1.8 10-4 mol, ここの上の構造)をエタノール/水 混液 (10 ml, 3/2)に溶解した。本α-マンノース フェニルアミノシクロブテンジオン誘導体溶液を、前記ナノ粒子懸濁液に滴下した。トリエチルアミン (500 μL)を加え、懸濁液を18時間撹拌した。遠心分離後、ナノ粒子を、水に懸濁し遠心分離(3サイクル)し、次いでエタノールに分散し遠心分離(2サイクル)した。官能化されたナノ粒子 (DB069)を得た(200 mg)。
【0292】
実施例 21
ナノ粒子上へα-マンノース表面接合 (DB103)
エタノール/H2O (3/2) (10 mL)とトリエチルアミン (400 μL)の混合物中にα-マンノース フェニルアミノシクロブテンジオン (250 mg; 0.37 mmol)を溶解し、APTS (アミノプロピルトリエトキシシラン)が接合されたナノ粒子 DB060 (EtOH 10 ml中に250 mg)の溶液に滴下した。混合物を16時間撹拌した。次いでナノ粒子を遠心分離し、水およびエタノールで洗浄し、真空下で乾燥して、232 mgの接合されたナノ粒子を得た。DB103ナノ粒子の表面に接合されたα-マンノース フェニルアミノシクロブテンジオンの濃度は、0.089 mmol/gである。
二光子光増感剤を封入するナノ粒子の特性(サイズ、多孔度、光増感剤および生体標的分子の濃度)が測定された。それらのデータを表 2に示す。
【0293】
【表4】

【0294】
内部光増感剤の数に対して、粒子の表面に接合された大過剰のフェニルアミノシクロブテンジオン部分は、光増感において遮蔽効果を誘発する(フェニルアミノシクロブテンジオン官能基の近UVおよび可視波長での強い吸収のため)。
この強い遮蔽効果は、近赤外でのフェニルアミノシクロブテンジオンの二光子吸収断面積は非常に弱いので、二光子励起とは関係がない。
【0295】
抗腫瘍剤を封入するナノ粒子
実施例 22
カンプトテシン(CPT)の装填
マンノース誘導体被覆ナノ粒子 (50 mg)を、CPT (5 mg)を含むDMSO (3 mL)中に懸濁した。その懸濁液を室温で24時間撹拌した。遠心分離後、ナノ粒子を水で2回洗浄し、真空下で乾燥した。
【0296】
ナノ粒子に装填されたCPTの量の決定
カンプトテシン装填ナノ粒子 (4 mg)をDMSO (5 mL)と一緒に懸濁し超音波処理した。懸濁液を遠心分離し、放出CPT分子を含む上清液のUV-可視スペクトルを測定した。ナノ粒子1 g当たり12 μmolのCPTが装填されていることが決定された。
【0297】
C 生物学的結果
生体分子および遮蔽部分で官能化されているかされていない異なるナノ粒子の光線力学活性を、いくつかの癌細胞株で調べた。癌細胞株に取り込まれたナノ粒子の細胞毒性能力は、ナノ粒子に封入された光感受性体(photosensibilisators)(PS)の二光子照射により誘発された。PDT治療の興味は、これらのナノ粒子のレーザー照射なしでの細胞毒性の欠如によっても示された。これらのナノ粒子の特異的な標的および活性なエンドサイトーシスは、表面官能化ナノ粒子と対応する生体分子とのコインキュベーション(co-incubation)による以前の特許(08/05034)に既に記載され、示されている。
細胞株は全て、American Type Culture Collection (ATCC)で入手でき、ATCCの推奨に従って推奨される培地で培養される。
【0298】
インビトロ
ナノ粒子DB052(それらの表面に接合された遮蔽部分または生体標的部分を欠いている)およびナノ粒子DB069(それらの表面にフェニルアミノシクロブテンジオンおよびマンノースが接合されている)を、MDA-MB-231乳癌 (Maynadier M, Ramirez JM, Cathiard AM, Platet N, Gras D, Gleizes M, Sheikh MS, Nirde P, Garcia M. Unliganded estrogen receptor alpha inhibits breast cancer cell growth through interaction with a cyclin-dependent kinase inhibitor (p21(WAF1)). FASEB J. 2008 Mar;22(3):671-81. Epub 2007 Oct 2)における二光子光線力学的療法で試験した。照射された細胞(770 nmで)と非照射細胞との比較は、一方では、二光子照射での非処理および自然光下でもナノ粒子の細胞毒性の欠如を示し、他方では、二光子照射下では強い細胞毒性を示し、該細胞毒性は、生体標的(または生体分子)部分の存在によって高められる。
【0299】
これらの試験は、二光子光線力学的療法に対する、二元で官能化されたナノ粒子(二光子光増感剤が封入され、生体標的部分と遮蔽部分が接合した)の高い効率を示す。
さらに、本発明のナノ粒子において、光増感剤は、ナノ粒子の表面に接合された部分の遮蔽効果のために、一光子可視照射(すなわち自然光)により励起されないことに注目することが重要である。この特性は、患者を治療前の間(注入と照射の間)および/または治療後(除去)の間、暗闇に居ることを患者に強いる増感の問題から解放することを可能にするであろうから、治療計画書を検討するときに特に重要である。
この効果は、治療計画書の重要な改善になる。
【0300】
実施例 23
24時間インキュベーションでのMDA-MD-231 乳癌細胞株に対するナノ粒子 DB052 (MSN (メソ多孔性シリカナノ粒子))およびDB069 (MSN-マンノース)のPDT効率 (図 1A、1B)
MDA-MB-231細胞を、10% ウシ胎仔血清(FBS)が加えられたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM) (MDA-MB-231 通常の培地)中、37℃、5% CO2の湿潤雰囲気下に保持した。実験のために、細胞を、700 細胞/70 μl 媒体のウエルの密度で、黒色のポリスチレンフレームを有する384 マルチウエルガラスボトム (0.17 mm)中で平板培養した。MDA-MB-231 癌細胞を20 μg/mlのナノ粒子と一緒に24時間インキュベートした。次いで、培地を除き、細胞を洗浄し、通常の培地に保持する。
【0301】
80 MHzの割合で、100 フェトム秒幅のパルスを発生するモード同期Ti:サファイアレーザーを備えた共焦点顕微鏡で、二光子照射を行った。レーザービームは、顕微鏡対物レンズ(10X, NA 0.4)により焦点を合わされた。細胞を、1 秒のそれぞれについて3 スキャンからなる760 nmでの二光子照射にかけた。スキャンされた部分は、ウエルの全体を照射するためにウエルの4クォート(4 quarts)で1.5×1.5 mm2 であった。試料に供給された平均パワーが、熱電気光エネルギーメーター(thermoelectric optical energy meter)を用いて測定され、80 mWであった。二光子照射2日後、生存細胞のパーセントが、MTS 酵素アッセイ(Cell Titer 96, G3580, Promega)により測定された。
【0302】
図1Aおよび1Bは、MSNもしくはMSN-マンノースを用いて(または用いないで)、24時間インキュベートし、二光子照射により処理されたMDA-MB-231細胞の顕微鏡写真を示す。
図1Aおよび1Bは、本発明の粒子を用いた光線力学的療法の特異性を示している。細胞が本発明のナノ粒子と一緒にインキュベートされたとき、細胞死が照射領域で観察され、起こる。
治療効率は、ナノ粒子表面のマンノースの被覆により改善される。さらに、非照射ナノ粒子の毒性の非存在は、本発明の化合物を用いた光線力学的療法の特異性を示す。
【0303】
実施例 24
4時間インキュベーションでのMDA-MD-231 乳癌細胞株に対するナノ粒子 DB052 (MSN)およびDB069 (MSN-マンノース)のPDT効率 (図 2A、2B)
条件は、実施例 21のそれらと同じで、インキュベーション時間だけが異なった。この実施例において、インキュベーション時間は4時間であった。
二光子照射により処理され、本発明のナノ粒子と一緒にインキュベートされた試料で、細胞密度の減少が観察された(図 2A)。
光線力学的処置の効率(図 2B)が、ナノ粒子DB052と一緒にインキュベートされた細胞の33%の死、およびDB069と一緒にインキュベートされた細胞の76%の死によって示された。治療効率は、ナノ粒子表面のマンノースの被覆によって改善された。
さらに、非照射ナノ粒子の毒性の非存在は、本発明の化合物を用いた光線力学的療法の特異性を示す。
【0304】
実施例 25
2時間および4時間インキュベーションでのMCF7 乳癌細胞株に対するナノ粒子 DB052 (MSN)およびDB069 (MSN-マンノース)のPDT効率 (図 3A、3B、4Aおよび4B)
MCF7 細胞 (Maynadier M, Ramirez JM, Cathiard AM, Platet N, Gras D, Gleizes M, Sheikh MS, Nirde P, Garcia M. Unliganded estrogen receptor alpha inhibits breast cancer cell growth through interaction with a cyclin-dependent kinase inhibitor (p21(WAF1)). FASEB J. 2008 Mar;22(3):671-81. Epub 2007 Oct 2)を、10% FBSが加えられたF-12ダルベッコ改変イーグル培地(F-12 DMEM) (MCF7 通常の培地)中、37℃、5% CO2の湿潤雰囲気下に保持した。実験のために、細胞を、2000 細胞/70 μl 媒体のウエルの密度で、黒色のポリスチレンフレームを有する384 マルチウエルガラスボトム (0.17 mm)中で平板培養した。MCF7 癌細胞を20 μg/mlのナノ粒子と一緒に2時間または4時間インキュベートした。次いで、培地を除き、細胞を洗浄し、通常の培地に保持する。
【0305】
80 MHzの割合で、100 フェトム秒幅のパルスを発生するモード同期Ti:サファイアレーザーを備えた共焦点顕微鏡で、二光子照射を行った。レーザービームは、顕微鏡対物レンズ(10X, NA 0.4)により焦点を合わされた。細胞を、1 秒のそれぞれについて3 スキャンからなる760 nmでの二光子照射にかけた。スキャンされた部分は、ウエルの全体を照射するためにウエルの4クォートで1.5×1.5 mm2 であった。試料に供給された平均パワーが、熱電気光エネルギーメーターを用いて測定され、80 mWであった。二光子照射2日後、生存細胞のパーセントが、MTS 酵素アッセイ(Cell Titer 96, G3580, Promega)により測定された。
細胞死が、本発明のナノ粒子を用いた光線力学的療法により誘発された。
【0306】
2時間インキュベーション
本発明による化合物を用いたインキュベーションおよび照射は、細胞死を誘発する(図 3A)。
治療の効率は、ナノ粒子とのインキュベーションの2時間後、ナノ粒子DB052を用いた照射およびインキュベートされた細胞の31%の死、およびナノ粒子DB069を用いた照射およびインキュベートされた細胞の46%の死によって示される(図 3B)。
【0307】
4時間インキュベーション
本発明による化合物を用いたインキュベーションおよび照射は、細胞死を誘発する(図 4A)。
治療の効率は、ナノ粒子とのインキュベーションの4時間後、ナノ粒子DB052を用いた照射およびインキュベートされた細胞の36%の死、およびナノ粒子DB069を用いた照射およびインキュベートされた細胞の56%の死によって示される(図 4B)。
【0308】
図 4A、4B、5Aおよび5Bは、マンノースで被覆されたナノ粒子表面の治療効率の増加を示している。
さらに、ナノ粒子と一緒にインキュベートされたが二光子照射により処理がされなかった細胞で得られた提示されていない結果は、毒性の非存在を示す。
【0309】
実施例 26
ナノ粒子DB069(MSN-マンノース)のMCF7 乳癌細胞株への動力学的効果(図 5)
条件は、実施例 23のそれらと同じで、インキュベーション時間だけが異なった。この実施例において、DB069とのインキュベーション時間は、2時間、4時間および24時間で、誘発された細胞死は、それぞれ46%、56%および100%であった(図 5)。
この実施例は、光線力学的療法の効率は、本発明のナノ粒子と一緒に細胞をインキュベートする時間と共に増加することを示している。
【0310】
実施例 27
24時間インキュベーションでのY-79網膜芽種細胞株に対するナノ粒子 DB052 (MSN)およびDB069 (MSN-マンノース)のPDT効率 (図 6)
Y-79 細胞 (Laville I, Pigaglio S, Blais JC, Doz F, Loock B, Maillard P, Grierson DS, Blais J. Photodynamic efficiency of diethylene glycol-linked glycoconjugated porphyrins in human retinoblastoma cells. J Med Chem. 2006 Apr 20;49(8):2558-67)は、非接着性細胞であり、それらを20% FBSが加えられたRoswell Park Memorial Institute 培地(RPMI 1640) (Y-79 通常の培地)中、37℃、5% CO2の湿潤雰囲気下に保持した。実験のために、細胞を、2000 細胞/70 μl 媒体のウエルの密度で、黒色のポリスチレンフレームを有する384 マルチウエルガラスボトム (0.17 mm)中で平板培養した。Y-79網膜芽種細胞を20 μg/mlのナノ粒子と一緒に24時間インキュベートした。
【0311】
80 MHzの割合で、100 フェトム秒幅のパルスを発生するモード同期Ti:サファイアレーザーを備えた共焦点顕微鏡で、二光子照射を行った。レーザービームは、顕微鏡対物レンズ(10X, NA 0.4)により焦点を合わされた。細胞を、1 秒のそれぞれについて3 スキャンからなる760 nmでの二光子照射にかけた。スキャンされた部分は、ウエルの全体を照射するためにウエルの4クォートで1.5×1.5 mm2 であった。試料に供給された平均パワーが、熱電気光エネルギーメーターを用いて測定され、80 mWであった。二光子照射2日後、生存細胞のパーセントが、MTS 酵素アッセイ(Promegaから)により測定された。
DB052およびDB069 ナノ粒子は、Y-79網膜芽種細胞株に対して、それぞれ30%および67%の細胞毒性を誘発した (図 6)。
これらの結果は、マンノース被覆ナノ粒子(DB069)の増大した効率を示している。
【0312】
実施例 28
4時間インキュベーションでのHCT-116 結腸癌細胞株に対するナノ粒子 DB052 (MSN)、DB060 (MSN)、DB069 (MSN-マンノース)およびDB103 (MSN-マンノース)のPDT効率 (図 7A、7B、7C、7D、7E)
HCT-116 細胞 (Zhan Y, Ginanni N, Tota MR, Wu M, Bays NW, Richon VM, Kohl NE, Bachman ES, Strack PR, Krauss S. Control of cell growth and survival by enzymes of the fatty acid synthesis pathway in HCT-116 colon cancer cells. Clin Cancer Res. 2008 Sep 15;14(18):5735-42)を、10% FBSが加えられたMac Coy 培地(HCT-116 通常の培地)中、37℃、5% CO2の湿潤雰囲気下に保持した。実験のために、細胞を、2000 細胞/70 μl 媒体のウエルの密度で、黒色のポリスチレンフレームを有する384 マルチウエルガラスボトム (0.17 mm)中で平板培養した。HCT-116 細胞を、マンノースで官能化されたナノ粒子(DB069 (図 7C)、DB103 (図 7E))または官能化されていないナノ粒子(DB052 (図 7B)、DB060 (図 7D))の20 μg/mlと一緒に4時間インキュベートした。DB060およびDB103は、DB052およびDB069より高い量の二光子PSにより特徴付けられた。
【0313】
80 MHzの割合で、100 フェトム秒幅のパルスを発生するモード同期Ti:サファイアレーザーを備えた共焦点顕微鏡で、二光子照射を行った。レーザービームは、顕微鏡対物レンズ(10X, NA 0.4)により焦点を合わされた。細胞を、1 秒のそれぞれについて3 スキャンからなる760 nmでの二光子照射にかけた。スキャンされた部分は、ウエルの全体を照射するためにウエルの4クォートで1.5×1.5 mm2 であった。試料に供給された平均パワーが、熱電気光エネルギーメーターを用いて測定され、80 mWであった。結果は顕微鏡での直接観察によりモニターされた。
図 7A〜7Eは、実施例 26のHCT-116 細胞の顕微鏡写真であり、図 7Aはコントロール細胞を示す。
図 7A〜7Eは、より多くの量の光増感剤を含むナノ粒子の改善された治療効率、およびマンノース被覆ナノ粒子の改善された治療効率を示す。ナノ粒子なしでの二光子照射は細胞死を誘発しない。
【0314】
実施例 29
DB052またはDB069と一緒にインキュベートされた培養細胞の日光曝露の細胞毒性効果研究
細胞培養のため、MDA-MB-231およびMCF-7 ヒト乳癌細胞 (ATCC)を、10% ウシ胎仔血清(FBS)および50 μg mL-1 ゲンタマイシンで補完されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中でごく普通に培養した。HCT-116 ヒト結腸直腸癌細胞 (ATCC)を、10% ウシ胎仔血清(FBS)および50 μg mL-1 ゲンタマイシンで補完されたMac Coyの培地中でごく普通に培養した。これらの全ての細胞型を、5% CO2下、37℃の湿潤雰囲気中で増殖させた。日光曝露の細胞毒性効果の実験のため、96-ウエルプレート中に、3・104 細胞/100 μlの培地中のウエルで細胞を播種し、24時間増殖させた。次いで、細胞を20 μg mL-1のDB052またはDB069と一緒に4時間インキュベートした。MSNとのインキュベーション後、細胞を洗浄し、新しい培地中に保持し、次いで、1時間、日光曝露に付すか、または付さなかった。照射二日後、MSNの細胞毒性を評価するために、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド; Promega (MTT)アッセイを行った。手短に言えば、ミトコンドリア内酵素活性を測定するため、細胞を0.5 mg mL-1 MTTの存在下で4時間インキュベートした。次いで、MTT沈殿を150 μl エタノール/DMSO (1:1)溶液に溶解し、540 nmで吸光度を読み取った。そのデータを表 3に示す。
【0315】
【表5】

【0316】
インビボ
DB069ナノ粒子の光線力学活性を、マウスの皮下腫瘍で調べた。
【0317】
実施例 30
HCT-116 異種移植片からのヌードマウス腫瘍でのナノ粒子DB069 (MSN-マンノース)のPDT効率 (図 8および9)
- J0: ヌードマウス (Swiss)を、10,000,000 HCT-116細胞および再構成細胞外マトリックス (Matrigel 5 mg/ml)を含む単細胞懸濁液100 μlの皮下注射により異種移植した。
- J15: 腫瘍を測定し、同質群を制定した。
【0318】
- J18: マウスを、ナノ粒子 (2 mg/ml)が加えられた生理血清か、または加えられない生理血清(コントロール) 200 μlの静脈注射により処理した。注射3時間後、マウスを麻酔し、腫瘍を、腫瘍の3つの異なる場所に、3×3分間、760 nmでの二光子照射に付した。
- J21-J45: 腫瘍を測定 (L×l×h)し、それらの容積を式: (L×l×h)×0.52で決定した。
- J45: マウスを屠殺し、腫瘍を集め、測定した。
【0319】
図 8は、0.009〜0.01 cm3に含まれる出発容積を有する腫瘍の結果を示している。図 8は、腫瘍が、本発明のナノ粒子を用いる光線力学療法に強く反応することを示している。
図 9は、0.02〜0.04 cm3に含まれる出発容積を有する腫瘍の結果を示している。図 9は、腫瘍が、本発明のナノ粒子を用いる光線力学療法に反応することを示している。
【0320】
実施例 31
ナノ粒子の医薬組成物の投与
本発明のナノ粒子が添加された生理血清の輸液(20 mg/kgの用量で)が、患者に投与される。
注入の終了2〜24時間後、腫瘍部位を、二光子励起に対して決定された波長で、5〜60分間照射した。
腫瘍の退縮により、この実験が1または数回繰り返される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
基AおよびBは、互いに独立して、-CH=CH-または-C≡C-を表し、
用語t、u、v、wは、互いに独立して、0〜9の範囲の値を表し、
基Y1およびY2は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- 1〜9個の炭素原子を有するアルキル基(直鎖状、分枝鎖状または置換された)、または
- 式:-(CH2)n-O-(CH2CH2O)mCH3(ここで、n < 4、mは1〜6で変化する)のポリエチレングリコール鎖、または
- 式:-(CH2)p-NR3+ X-(ここで、X-は、ハロゲン、トシレート、サルフェート、ホスフェート、NTf2、PF6アニオンから選択され、pは1〜6で変化し、Rは1〜9個の炭素原子の直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖である)
を表し、
基Z1、Z2、Z3およびZ4は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- OH、NH2、SHのような化学的に反応性の基W、
- -α-β-δで構成される分子クリップとして用いられる基V、
(ここで、
*αは、カルバメート、ウレア、チオカルバメート、アミドのような官能性結合基であり、
*βは、1〜9個の炭素原子を含む、直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖であり、
*δは、Si(OR')3基(ここで、R'は1〜9個の炭素原子の直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖である)である)、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲のアリール、アリールオキシ、アラアルキル、アラアルキルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ基、または
- 1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 式:-(CH2)q-O-(CH2CH2O)r-CH2CH2-W(ここで、q < 4、rは1〜6で変化し、Wは前記で定義された化学的に反応性の基である)のポリエチレングリコール鎖
を表す、
但し、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つは、
- OH、NH2、SHのような化学的に反応性の基W、
- -α-β-δで構成される分子クリップとして用いられる基V、
(ここで、
*αは、カルバメート、ウレア、チオカルバメート、アミドのような官能性結合基であり、
*βは、1〜9個の炭素原子を含む、直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖であり、
*δは、Si(OR')3基(ここで、R'は1〜9個の炭素原子の直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖である)である)、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲のアリール、アリールオキシ、アラアルキル、アラアルキルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ基、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 式:-(CH2)q-O-(CH2CH2O)r-CH2CH2-W(ここで、q < 4、rは1〜6で変化し、Wは前記で定義された化学的に反応性の基である)のポリエチレングリコール鎖
を表し、
基Z5およびZ6は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- 1〜9個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 1〜9個の炭素原子の範囲の、アルコキシ基、炭素環式基、複素環式基、芳香族基
を表すか、または
- Z5およびZ6は、エチレングリコール基を介して一緒に結合し、それゆえに、それらが結合するチオフェン基と一緒に3,4-エチレンジオキシチオフェン基(EDOT):
【化2】

を与える]
の化合物。
【請求項2】
式(IV):
【化3】

(式中、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5、Z6、Y1、Y2およびB基は、請求項1で定義されたとおりである)
の請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
次の式:
【化4】

(式中、Y1およびY2は同種であり、
*n-ブチルアルキル鎖、または
*-(CH2CH2)O(CH2CH2)O(CH2CH2)OCH3
を表す)
【化5】

(式中、Y1およびY2は同種であり、
*n-ブチルアルキル鎖、または
*-(CH2CH2)O(CH2CH2)O(CH2CH2)OCH3
を表す)
【化6】

【化7】

の請求項1または2のいずれかに記載の化合物。
【請求項4】
次の式:
【化8】

(式中、Y1およびY2は同種であり、-(CH2CH2)O((CH2CH2)O)2CH3基を表す)
【化9】

(式中、Y1およびY2は同種であり、-(CH2CH2)O((CH2CH2)O)2CH3基を表す)
【化10】

【化11】

の請求項1または2のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいすれか1つで定義された少なくとも一つの化合物から構成され、シリカナノ粒子に共有的に結合する少なくとも一つの光増感剤を含み、場合により、該ナノ粒子の表面に接合された遮蔽部分を含み、場合により、該ナノ粒子の表面に接合された生体標的部分を含む、シリカナノ粒子。
【請求項6】
請求項1〜4のいすれか1つで定義された少なくとも一つの化合物により構成され、シリカナノ粒子と共有結合される少なくとも一つの光増感剤を含み、場合により、該ナノ粒子の表面に接合された遮蔽部分を含み、場合により、該ナノ粒子の表面に接合された生体標的部分を含む、シリカナノ粒子の少なくとも一つにより構成された、シリカナノ粒子組成物。
【請求項7】
シリカナノ粒子が系統的な多孔性を有する、請求項6に記載のシリカナノ粒子組成物。
【請求項8】
シリカナノ粒子がメソ多孔性である、請求項6または7のいずれかに記載のシリカナノ粒子組成物。
【請求項9】
シリカナノ粒子の表面に接合された、腫瘍性組織を特異的に標的とする生体標的部分を含む、請求項6〜8のいずれか一つに記載のシリカナノ粒子組成物。
【請求項10】
シリカナノ粒子の表面に接合され、特異的に190〜600 nm、特に250〜500 nmの波長での放射を吸収する遮蔽部分を含む、請求項6〜8のいずれか一つに記載のシリカナノ粒子組成物。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の光増感剤の濃度が、該光増感剤を含むナノ粒子の全質量に対して、約0.1 マイクロモル/g〜約100 マイクロモル/gの範囲、特に約0.5 マイクロモル/g〜約30 マイクロモル/gの範囲、特に約1 マイクロモル/g〜約10 マイクロモル/gの範囲である、請求項6〜10のいずれか一つに記載のシリカナノ粒子組成物。
【請求項12】
シリカナノ粒子の表面に接合された生体標的部分の濃度が、1 μmol/g〜約2 mmol/gの範囲、特に約0.01 mmol/g〜約1 mmol/gの範囲、特に約0.1 mmol/g〜約0.4 mmol/gの範囲である、請求項6〜11のいずれか一つに記載のシリカナノ粒子組成物。
【請求項13】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の少なくとも一つの化合物、または
請求項6〜12のいずれか一つに記載の少なくとも一つのシリカナノ粒子組成物、および
医薬的に許容な担体
を含む医薬組成物。
【請求項14】
請求項3または4のいずれかに記載の少なくとも一つの化合物、または
請求項6〜12のいずれか一つに記載の少なくとも一つのシリカナノ粒子組成物、および
医薬的に許容な担体
を含む請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の少なくとも一つの化合物、但し、Z1、Z2、Z3およびZ4はどれも、分子クリップとして用いられる基Vを表すことはできない化合物の、基Z1、Z2、Z3およびZ4の少なくとも一つが、分子クリップとして用いられる基Vを表す請求項1に記載の化合物の製造のための使用。
【請求項16】
式(I):
【化12】

[式中、
基AおよびBは、互いに独立して、-CH=CH-または-C≡C-を表し、
用語t、u、v、wは、互いに独立して、0〜9の範囲の値を表し、
基Y1およびY2は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- 1〜9個の炭素原子を有するアルキル基(直鎖状、分枝鎖状または置換された)、または
- 式:-(CH2)n-O-(CH2CH2O)mCH3(ここで、n < 4、mは1〜6で変化する)のポリエチレングリコール鎖、または
- 式:-(CH2)p-NR3+ X-(ここで、X-は、ハロゲン、サルフェート、ホスフェート、NTf2、PF6アニオンから選択され、但し、該アニオンは、式(I)の化合物の蛍光を消光しない、pは1〜6で変化し、Rは1〜9個の炭素原子の直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖である)のアンモニウム基
を表し、
基Z1、Z2、Z3およびZ4は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- OH、NH2、SHのような化学的に反応性の基W、
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲のアリール、アリールオキシ、アラアルキル、アラアルキルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ基、または
- 1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 式:-(CH2)q-O-(CH2CH2O)r-CH2CH2-W(ここで、q < 4、rは1〜6で変化し、Wは前記で定義された化学的に反応性の基である)のポリエチレングリコール鎖
を表す、
但し、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つは、
- OH、NH2、SHのような化学的に反応性の基W、
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲のアリール、アリールオキシ、アラアルキル、アラアルキルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ基、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 式:-(CH2)q-O-(CH2CH2O)r-CH2CH2-W(ここで、q < 4、rは1〜6で変化し、Wは前記で定義された化学的に反応性の基である)のポリエチレングリコール鎖
を表し、
基Z5およびZ6は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- 1〜9個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 1〜9個の炭素原子の範囲の、アルコキシ基、炭素環式基、複素環式基、芳香族基
を表すか、または
- Z5およびZ6は、エチレングリコール基を介して一緒に結合し、それゆえに、それらが結合するチオフェン基と一緒に3,4-エチレンジオキシチオフェン基(EDOT):
【化13】

を与える]
の少なくとも一つの化合物の、
Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つが、-α-β-δで構成される分子クリップとして用いられる基V
(ここで、
*αは、カルバメート、ウレア、チオカルバメート、アミドのような官能性結合基であり、
*βは、1〜9個の炭素原子を含む、直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖であり、
*δは、Si(OR’)3基(ここで、R’は1〜9個の炭素原子の直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖である)である)を表す、式(I)の光増感剤として用いられる少なくとも一つの化合物を含む、少なくとも一つのシリカナノ粒子によって構成されるシリカナノ粒子組成物の製造のための使用。
【請求項17】
請求項5に記載のナノ粒子を製造するための、請求項1、2または4に記載の少なくとも一つの化合物の使用、但し、Z1、Z2、Z3およびZ4はどれも、化学的に反応性の基Wを表すことはできない。
【請求項18】
少なくとも一つの
請求項1〜4のいずれか一つに記載の化合物、または
請求項6〜12のいずれか一つに記載のシリカナノ粒子組成物の
癌の治療用医薬の製造のための使用。
【請求項19】
式(I):
【化14】

[式中、
基AおよびBは、互いに独立して、-CH=CH-または-C≡C-を表し、
用語t、u、v、wは、互いに独立して、0〜9の範囲の値を表し、
基Y1およびY2は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- 1〜9個の炭素原子を有するアルキル基(直鎖状、分枝鎖状または置換された)、または
- 式:-(CH2)n-O-(CH2CH2O)mCH3(ここで、n < 4、mは1〜6で変化する)のポリエチレングリコール鎖、または
- 式:-(CH2)p-NR3+ X-(ここで、X-は、ハロゲン、トシレート、サルフェート、ホスフェート、NTf2、PF6アニオンの中から選択され、但し、該アニオンは、式(I)の化合物の蛍光を消光しない、pは1〜6で変化し、Rは1〜9個の炭素原子の直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖である)のアンモニウム基
を表し、
基Z1、Z2、Z3およびZ4は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- OH、NH2、SHのような化学的に反応性の基W、
- -α-β-δで構成される分子クリップとして用いられる基V
(ここで、
*αは、カルバメート、ウレア、チオカルバメート、アミドのような官能性結合基であり、
*βは、1〜9個の炭素原子を含む、直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖であり、
*δは、Si(OR’)3基(ここで、R’は1〜9個の炭素原子の直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖である)である)、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲のアリール、アリールオキシ、アラアルキル、アラアルキルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ基、または
- 1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 式:-(CH2)q-O-(CH2CH2O)r-CH2CH2-W(ここで、q < 4、rは1〜6で変化し、Wは前記で定義された化学的に反応性の基である)のポリエチレングリコール鎖
を表す、
但し、Z1、Z2、Z3またはZ4基の少なくとも一つは、
- OH、NH2、SHのような化学的に反応性の基W、または
- -α-β-δで構成される分子クリップとして用いられる基V
(ここで、
*αは、カルバメート、ウレア、チオカルバメート、アミドのような官能性結合基であり、
*βは、1〜9個の炭素原子を含む、直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖であり、
*δは、Si(OR’)3基(ここで、R’は1〜9個の炭素原子の直鎖状または分枝鎖状のアルキル鎖である)である)、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲のアリール、アリールオキシ、アラアルキル、アラアルキルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ基、または
- 前記で定義された化学的に反応性の基Wを含み、1〜10個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 式:-(CH2)q-O-(CH2CH2O)r-CH2CH2-W(ここで、q < 4、rは1〜6で変化し、Wは前記で定義された化学的に反応性の基である)のポリエチレングリコール鎖
を表し、
基Z5およびZ6は、互いに独立して、
- 水素原子、または
- 1〜9個の炭素原子の範囲の、直鎖状、分枝鎖状または置換された、場合によっては不飽和のアルキル鎖、または
- 1〜9個の炭素原子の範囲の、アルコキシ基、炭素環式基、複素環式基、芳香族基
を表すか、または
- Z5およびZ6は、エチレングリコール基を介して一緒に結合し、それゆえに、それらが結合するチオフェン基と一緒に3,4-エチレンジオキシチオフェン基(EDOT):
【化15】

を与える]
の少なくとも一つの化合物、または式(I)の前記の化合物の少なくとも一つを含む少なくとも一つのシリカナノ粒子の、癌細胞の結像を可能にするプローブの実装のための使用。
【請求項20】
少なくとも一つの
請求項1〜4のいずれか一つに記載の化合物、または
請求項6〜20のいずれか一つ記載のナノ粒子組成物の
癌の治療用および腫瘍の医学画像用医薬の製造のための使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図3A】
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【図4A】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図2B】
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【図3B】
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【図4B】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−513632(P2013−513632A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543599(P2012−543599)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069035
【国際公開番号】WO2011/073054
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【出願人】(504239043)ユニベルシテ ド レ−ンヌ 1 (1)
【出願人】(591100596)アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル (59)
【出願人】(509211099)ユニベルシテ・モンペリエ・2・シアンス・エ・テクニク (8)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE MONTPELLIER 2 SCIENCES ET TECHNIQUES
【Fターム(参考)】