説明

二剤式シート状化粧料及びその使用方法

【課題】従来のシート状化粧料に比べて、化粧料の乳化状態、シート材への含浸状態及びシート状化粧料としての柔軟性を高めるとともに、含浸可能な化粧料の選択範囲を広げ、使用時における保湿機能、使用感及び簡便性に優れ、肌の状態を良好にできる二剤式シート状化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】
カルボキシビニルポリマー及び長鎖アルキルアクリレートモノマーとオレフィン性不飽和カルボン酸モノマーの共重合ポリマーのうち少なくとも一方の水溶性高分子を含有する第1剤が予めシート材に含浸されており、油性成分及び5〜15質量%の界面活性剤を含有する第2剤を使用時に添加して乳化物を調製することを特徴とする二剤式シート状化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二剤式シート状化粧料に関し、詳しくは、特定組成の乳化物を使用時にシート材において調製することで、従来のシート状化粧料に比べて、化粧料の乳化状態、シート材への含浸状態及びシート状化粧料としての柔軟性を高めるとともに、含浸可能な化粧料の選択範囲を広げ、使用時における保湿機能、使用感及び簡便性に優れ、肌の状態を良好にできる用時調整型の二剤式シート状化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シート状化粧料の形態としては、例えば、予め化粧料がシート材に含浸されているものや、使用時に化粧料をシート材に塗布又は含浸させるものなどがある。シート状化粧料は、パックや清拭剤等として多用されており、顔の全体又は部分的使用のみならず、首、肩、腕又は脚などの荒れやすい部位にも用いることができる。そして、化粧料が含浸されたシート材の閉塞効果によって高い保湿効果などが得られることから、肌の健康と美しさを保つ上で重要な役割を果たしている。
【0003】
近年、更なる肌への効果を求めるために、油性成分を配合した化粧料を用いたシート状化粧料が注目されている。このようなシート状化粧料のなかでも、油性成分を乳化物に配合したものは、時間経過とともに油分が分離したり、シート材への含浸性が悪かったりして、製品としての安定性に課題があった。
【0004】
これらの問題を解決するために、予め化粧料がシート材に含浸されている形態では、例えば、安定性を向上させるために、乳化物の油滴の粒子系を特定の範囲に調製した水中油型エマルジョン組成物を含浸させたシート状の化粧品塗付具(例えば、特許文献1参照。)がある。その他にも、油分を十分に含有させ、使用感や安定性を良好にするために、油分と界面活性剤との比率を特定の範囲に調製したO/W型乳化物を含浸させたシート状化粧料(特許文献2参照)の例がある。
【0005】
使用時に化粧料をシート材に塗布又は含浸させる形態では、用いる化粧料として、使用時に二剤を混合し、所定の剤形に調製してから肌に塗布する用時調製型の化粧料が従来も知られており、製剤中で不安定な薬剤を皮膚に補給する際の有効な方法である。例えば、安定性及び使用感に優れた化粧料を提供するために、油溶性ビタミン及び植物油を含有するオイル状の第1剤と、特定の植物、海藻又は菌体の抽出物又は培養液と、特定の増粘剤を含有するローション状の第2剤とを、使用時に混合する用時調製型化粧料(例えば、特許文献3参照。)がある。また、化粧料を密封することにより変質防止し、使用時にシート材に含浸させる構造のものもある。例えば、二種類のシートを重ね合わせたパックシートの内部にパック剤成分を封入した易破断性カプセルを内蔵させ、使用時に易破断性カプセルを破断させてパック剤成分をパックシート外部に滲出させるようにした身体各所用美容パック材(例えば、特許文献4参照。)がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のシート状化粧料の場合、乳化物の粒子を小さくするために特殊な乳化装置や配合成分の限定が必要となる。そのため、コスト高であったり、生産性が十分に確保できない、あるいはシート材の種類によっては含浸後の乳化粒子の移動が起きやすく化粧料の不均一化が生じるなどの問題がある。さらには、乳化物を含浸させたシート状化粧料を袋状容器に包装した場合、表面積の観点から経時で水分が蒸散しやすく、袋状容器内に水滴が発生し、通常のボトル容器などに充填された乳化化粧料よりも、乳化状態が悪化しやすいという問題もある。特許文献2に記載のシート状化粧料の場合、十分な油量を安定して乳化物に配合するためには、必要な界面活性剤量が増加して、肌へ
のべたつき感が増し、使用感の面で問題がある。特許文献3に記載の化粧料の場合、まず別々の容器に密封された二剤を混合して調製した後、別途用意したシート材に含浸する必要があり、手順の煩雑さや、容器又は包装面での課題がある。特許文献4に記載のパック剤の場合、カプセル内の薬剤のみで全体に浸透させるためには、シート材の大きさが限定されるとともに、カプセル内の乳化物を安定に保つにためには、配合可能な油分量が限定されるなど、限定条件がある。また、いずれにおいてもまた、乾いたシート材に乳化物を含浸させるためには、化粧料の量が多くなり、またシート状化粧料としての柔軟性が十分に得られずに使用時のごわつき感が生じるなどの使用感にも問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2000−503681号公報
【特許文献2】特開2002−249423号公報
【特許文献3】特開2006−193495号公報
【特許文献4】特開2005−154274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、油性成分を多く配合した乳化物を安定にシートに含浸させ、使用感に優れたシート化粧料を調製すること、簡便で使用性に優れた用時調製型の化粧料を提供することは困難であった。
【0009】
そこで、本発明においては、十分な油性成分を配合した乳化物を用いても、従来のシート状化粧料に比べて、化粧料の乳化状態、シート材への含浸状態及びシート状化粧料としての柔軟性を高めるとともに、含浸可能な化粧料の選択範囲を広げ、使用時における保湿機能、使用感及び簡便性に優れ、肌の状態を良好にできる用時調製型の二剤式シート状化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の水溶性高分子を配合した化粧料第1剤が予め含浸されたシート材において、油性成分及び界面活性剤を含有する第2剤を、使用時に添加して乳化物を調製することにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の二剤式シート状化粧料は、カルボキシビニルポリマー及び長鎖アルキルアクリレートモノマーとオレフィン性不飽和カルボン酸モノマーの共重合ポリマーのうち少なくとも一方の水溶性高分子を含有する第1剤が予めシート材に含浸されており、油性成分及び5〜15質量%の界面活性剤を含有する第2剤を使用時に添加して乳化物を調製するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、十分な油性成分を配合した乳化物を用いても、従来のシート状化粧料に比べて、化粧料の乳化状態、シート材への含浸状態及びシート状化粧料としての柔軟性を高めるとともに、含浸可能な化粧料の選択範囲を広げ、使用時における保湿機能、使用感及び簡便性に優れ、肌の状態を良好にできる用時調製型の二剤式シート状化粧料が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳述する。
【0014】
本発明の二剤式シート状化粧料は、化粧料第1剤と、化粧料第2剤と、シート材とから構成されている。第1剤は予めシート材に含浸されており、使用時に第2剤を添加することにより、シート材において二剤が混合され乳化物を調製すると同時に、乳化物を安定にシート材に含浸させることができる。通常、乾いたシート材に乳化物を含浸させた場合は、シート材に浸透していく過程で乳化粒子の崩壊が起こり、油分が吸着するなどして、乳化物自体の安定性を損ねるといった問題がある。しかし、本発明においては、シート材に予め化粧料第1剤が含浸されているため、シート材の繊維が濡れており、後から添加する化粧料第2剤が均一に行き渡るため、シート材において安定な乳化粒子を調製できる。さらに、乾いたシート材に乳化物を含浸させた場合は、シート材のごわつきや肌あたりの悪さを感じたり、浸透性が悪く含浸量を多くせざるを得ないためべたつきを感じたりする等の問題がある。一方、本発明のシート状化粧料は、予めシート材の繊維が濡れていることで、シート材の柔軟性が増すため、使用時の肌触りに優れ、また乳化物の浸透性の悪さを考慮して含浸量を過剰にする必要がないため、使用時に最適な含浸量に調製することができる。
【0015】
本発明における化粧料第1剤は、カルボキシビニルポリマー及び長鎖アルキルアクリレートモノマーとオレフィン性不飽和カルボン酸モノマーの共重合ポリマーのうち少なくとも一方の水溶性高分子を含有する。カルボキシビニルポリマーは、アクリル酸を主鎖として、架橋剤としてアリルショ糖やペンタエリスリトール等を含むカルボキシル基をもった水溶性高分子である。カルボキシビニルポリマーは市販品を用いることができ、例えば「カーボポール(Carbopol)940」,「カーボポール941」,「カーボポール980」,「カーボポール981」(Lubrizol Corporation製)等が挙げられる。
【0016】
長鎖アルキルアクリレートモノマーとオレフィン性不飽和カルボン酸モノマーの共重合ポリマーは、好適には長鎖アルキルアクリレートモノマー1〜50質量%とオレフィン性不飽和カルボン酸モノマー50〜99質量%を共重合した水溶性高分子である。長鎖アルキルアクリレートモノマーとしては、例えばデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート等の炭素数10〜30のアルキルアクリレート、好ましくは炭素数12〜22のアルキルアクリレート及び相当するメタクリレートの群から選ばれる1種以上のモノマーが挙げられる。オレフィン性不飽和カルボン酸モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−クロロ−アクリル酸、α−フェニルアクリル酸、ソルビン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸又は無水マレイン酸等のオレフィン系の二重結合及び少なくとも1つのカルボキシル基を含む重合性化合物の群から選ばれる1種以上のモノマーが挙げられる。好ましくは入手しやすく優れた重合能力を持つアクリル酸である。長鎖アルキルアクリレートモノマーとオレフィン性不飽和カルボン酸モノマーの共重合体は、この両モノマー以外に、メチレンビスアクリルアミド、アリルアクリレート、メタリルメタクリレート、ジビニルエーテル、アリルショ糖、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセリルトリアクリレート等のオレフィン性多官能性モノマーを配合して重合した架橋構造をもつ共重合体を、共重合体の特性を調製するために好ましく使用することができる。このときオレフィン系多官能性モノマーの配合量としては、長鎖アルキルアクリレートモノマーとオレフィン系多官能性モノマーの総量に対して0.01〜4質量%が好ましく、更に好ましくは0.2〜1.0質量%である。これら上記の共重合体は、公知の方法(例えば、特開昭51−6190号公報、特開平2−39312号公報等に記載された方法)で製造することができる。製造される共重合体の平均分子量としては約500,000〜5,000,000のものが好ましい。長鎖アルキルアクリレートモノマーとオレフィン性不飽和カルボン酸モノマーの共重合ポリマーは市販品を用いることができ、例えば「ペミュレン(Pemulen)TR−1」、「ペミュレンTR−2」、「カーボポール1342」(いずれもLubrizol Corporation社製
)等が挙げられる。
【0017】
カルボキシビニルポリマー及び長鎖アルキルアクリレートモノマーとオレフィン性不飽和カルボン酸モノマーの共重合ポリマーは、中和剤にて中和して使用することもできる。中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、リジン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジイソプロパノールアミン等の有機アミン、塩基性ポリペプチド等が挙げられる。
【0018】
上記水溶性高分子は何れか一方を単独で用いても、2種を組み合わせて用いてもよい。その配合量は、第1剤の総量を基準として合計0.01〜2質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜1質量%である。当該配合量の上限を超えると、よれを生じる場合があり、使用感の観点から好ましくなく、下限未満の配合量では、第2剤と混合して乳化物を調製した際の安定性を保てなかったり、シートから乳化物が垂れ落ちたりするなどの問題がある。
【0019】
また、本発明における第1剤には、本発明の効果を損なわない質的、量的範囲内で化粧品用として一般に使用され得るその他の水溶性高分子を用いてもよい。天然水溶性高分子としては、例えばグアーガム、ローカストビンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等が挙げられる。半合成水溶性高分子としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはその塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)、メチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系高分子;可溶性デンプン、カルキシメチルデンプン、メチルデンプン等のデンプン系高分子;アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸塩等のアルギン酸系高分子;多糖類系誘導体等が挙げられる。
【0020】
本発明における化粧料第2剤は、油性成分及び5〜15質量%の界面活性剤を含有する。この油性成分としては、化粧品用として一般に使用され得るものであれば、特に限定されない。例えばアルガンオイル、オリーブスクワラン、米スクワラン、米胚芽油、ホホバ油、ヒマシ油、紅花油、オリーブ油、マカデミアナッツ油、ヒマワリ油、アボガド油、キャノーラ油、キョウニン油、グレープシード油、カロット油、メドフォーム油、ローズヒップ油、シア脂、カカオ脂などの植物由来の油またはその水素添加物、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状シリコンなどのシリコン油、パラフィン、流動パラフィン、ワセリン、オレフィンオリゴマー、スクワランなどの炭化水素類、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、イソステアリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソプロピルなどのエステル油、2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリカプリル・カプリン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリルなどのトリグリセリド類が挙げられる。
【0021】
上記油性成分は何れかを単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その配合量は第2剤の総量を基準として85〜95質量%の範囲であることが好ましい。当該配合量の上限を超えると、第1剤と混合した際、十分に均一な乳化物が得られないことがあり、また下限未満の配合量では、第1剤と混合したあとのシート化粧料において十分な保湿効果が得られないことがある。
【0022】
本発明における化粧料第2剤に含まれる界面活性剤は、化粧品用として一般に使用され得
るものであれば、特に限定されない。例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖エステルなどの非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0023】
上記界面活性剤は何れかを単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その配合量は第2剤の総量を基準として5〜15質量%である。当該配合量の上限を超えると、べたつき感などが生じ使用感を低下させることがあり、また下限未満の配合量では、第2剤と混合する際、十分に均一な乳化物が得られないことがある。
【0024】
上記第1剤と第2剤の混合比率は、各剤の処方によって異なるが、好ましくは30:1〜10:3、より好ましくは20:1〜5:1の範囲である。
【0025】
本発明におけるシート材は、化粧料を含浸できるものであれば、特に制限はなく、通常化粧品として用いられるシート状支持体をすべて好適に用いることができる。例えば、コットン、パルプ、レーヨン、アクリル、ナイロン、ポリウレタン、シルク、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエステル−ポリエチレン、ポリプロピレン−ポリエチレン、及びエチレン−ビニルアルコール共重合ポリマーなどが挙げられる。これら1種単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。目付け量としては、シートを広げる際の使用性や、肌への密着性などの観点から、15〜120g/mが好ましく、より好ましくは30〜100g/mである。
【0026】
本発明において、上記シート材に化粧料第1剤を予め含浸させる方法は、シート状化粧料における公知の含浸手段を用いればよい。
【0027】
本発明の二剤式シート状化粧料において、予め化粧料第1剤が含浸されたシート材は任意の容器に収納することができる。シート材が収納された容器は、調製時の混合用容器としてそのまま使用できる。容器形状は、シート材を容易に収納できる袋状のものが好ましい。容器の材質としては、例えばアルミ、ポリエチレンなどが挙げられるが、柔軟性を有するものが好ましい。また、化粧料第2剤は、例えばチューブ、ボトル、アルミパウチなどの容器に充填すればよい。本発明の二剤式シート状化粧料の使用時は、シート材が収納された容器を開封し、その中に化粧料第2剤を投入し、そのまま容器の中で二剤を混合し乳化物を調製すれよい。容器が袋状の柔軟性を有するものであれば、二剤の混合時に袋状容器に追う圧付与することで、手を汚すことなく、十分な油性成分を配合した乳化物を均一に含浸させたシート状化粧料を作製できる。
【0028】
また、本発明における第1剤及び第2剤には、本発明の効果を損なわない質的、量的範囲内で、必要に応じて、通常化粧品に用いられる上記以外の界面活性剤、保湿剤、油分、香料、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、薬剤、水等が配合される。
【実施例】
【0029】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。なお、配合量はすべて質量%である。
【0030】
本実施例において、第1剤として用いる処方例1〜4を表1に示す。各処方は、成分(1)〜(9)及び(11)を混合した後、(10)を加えて中和し、更にホモミキサーで均一に分散して、透明な化粧料第1剤を調製した。なお、処方例2は水溶性高分子である(7)及び(8)を含まないものである。また、処方例3は水溶性高分子として(7)のみ、処方例4は同じく(8)のみを配合したものである。
【0031】
【表1】

【0032】
本実施例において、第2剤として用いる処方例5〜9を表2に示す。各処方は、油性化粧料の常法により化粧料第2剤を調製した。なお、処方例5は油性成分が5質量%未満であり、処方例9は同じく15質量%を超えるものである。
【0033】
【表2】

【0034】
処方例1〜4の何れかを第1剤として予めシート材に含浸し、処方例5〜9の何れかを第2剤として後から添加して調製した二剤式シート状化粧料の実施例及び比較例を評価した。表3は、前述の処方、方法により得られた第1剤及び第2剤を組み合わせて調製した実施例及び比較例である。シート材として、コットン100%、目付け量60g/m、全顔用に切り抜いた面積が0.037mのものを使用した。第1剤をシート材に20g含浸した後、アルミ袋に収納し、その後、第2剤をアルミ袋に2g投入して第1剤と混合してから、均一になるように30秒間アルミ袋の上から手で押して、乳化物が含浸されたシート化粧料を調製した。このようにして得られた実施例及び比較例の乳化物が含浸された二剤式シート状化粧料について、乳化状態、シートからの垂れ落ち、しっとり感、べたつき感について以下に示す方法及び基準で評価した。結果を表3に併せて示す。
【0035】
<乳化状態>
上記実施例および比較例を調製したあと、アルミ袋を切り開き、乳化状態を下記基準により評価した。
◎:良好に乳化されている
○:やや油浮きがあるが乳化状態を保っている
△:油浮きが多く、不均一である
×:分離している
<シートからの垂れ落ち>
上記実施例および比較例を調製したあと、アルミ袋からシートを取り出した際、含浸した乳化物の垂れ落ちのなさを下記基準で評価した。
◎:垂れ落ちがない
×:垂れ落ちがある
<しっとり感、べたつき感のなさ>
上記実施例及び比較例について、20〜40代の女性パネラー10名が、洗顔後の顔面に15分間使用した際のしっとり感、べたつき感のなさについて、良好(3点)、やや良好(2点)、普通(1点)、悪い(0点)の4段階で評価し、それぞれ回答した人数及び平均点を示した。平均点1点未満は所望の効果が得られていないと判断した。
【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
このように、実施例1〜5は、含浸後の乳化状態が良好で、シートからの垂れ落ちも無く、しっとり感、べたつき感のなさに優れたものであった。
【0039】
次に、第1剤が予めシート材に含浸されており、第2剤を後から添加して乳化物を調製した実施例6と、予め第1剤と第2剤の二剤を混合して乳化物を調製し、その後乳化物をシート材に含浸した比較例8を評価した。共通の条件として、第1剤に処方例1を20g用い、第2剤に処方例7を2g用い、シート材にパルプ50%、レーヨン50%、目付け量50g/m、全顔用に切り抜いた面積が0.037mのものを用いた。実施例6は、シート材に第1剤を含浸した後、シート材をアルミ袋に収納し、その後、第2剤をアルミ袋に投入して第1剤と混合してから、均一になるように30秒間アルミ袋の上から手で押して、乳化物が含浸されたシート状化粧料を調製したものである。比較例8は、第1剤と第2剤を予め別の容器で混合し、乳化物を作成した後、シート材の入ったアルミ袋に投入し、30秒間アルミ袋の上から手で押したものである。それぞれの乳化状態、含浸状態、
使用性、シートの柔軟性、肌触りについて以下に示す方法及び基準で評価した結果を表5に示す。
【0040】
<乳化状態>
上記実施例6および比較例8を調製したあと、アルミ袋を切り開き、乳化状態を下記基準により評価した。
◎:良好に乳化されている
○:やや油浮きがあるが乳化状態を保っている
△:油浮きが多く、不均一である
×:分離している
<含浸状態>
上記実施例6および比較例8を調製したあと、アルミ袋を切り開き、含浸状態を下記基準により評価した。
◎:シートに均一に乳化物が含浸されている
○:乾いた部分が10%以下
△:乾いた部分が10%を超え40%未満
×:乾いた部分が40%以上
<使用性>
上記実施例6及び比較例8について、20〜40代の女性パネラー10名が、それぞれを調製する際の使用性について、とても使いやすい(3点)、使いやすい(2点)、普通(1点)、使いにくい(0点)の4段階で評価し、それぞれ回答した人数及び平均点を示した。平均点1点未満は所望の効果が得られていないと判断した。
<シートの柔軟性、肌触り>
上記実施例及び比較例について、20〜40代の女性パネラー10名が、洗顔後の顔面に15分間使用した際のシートの柔軟性、肌触りについて、とてもよい(3点)、よい(2点)、普通(1点)、悪い(0点)の4段階で評価し、それぞれ回答した人数及び平均点を示した。平均点1点未満は所望の効果が得られていないと判断した。
【表5】

【0041】
このように、本発明に係る実施例の乳化物が含浸された用時調製型の二剤式シート状化粧料は、高い保湿機能をもち、乳化物の安定性や含浸性、シートの肌触りのよさ、などの観
点からも優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシビニルポリマー及び長鎖アルキルアクリレートモノマーとオレフィン性不飽和カルボン酸モノマーの共重合ポリマーのうち少なくとも一方の水溶性高分子を含有する第1剤が予めシート材に含浸されており、油性成分及び5〜15質量%の界面活性剤を含有する第2剤を使用時に添加して乳化物を調製することを特徴とする二剤式シート状化粧料。
【請求項2】
第2剤が85〜95質量%の油性成分及び5〜15質量%の界面活性剤からなるものである請求項1に記載の二剤式シート状化粧料。
【請求項3】
第1剤と第2剤の混合比率が10:1である請求項1または請求項2に記載の二剤式シート状化粧料。
【請求項4】
シート材が袋状容器に密封されたものである請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の二剤式シート状化粧料。
【請求項5】
袋状容器を開封して第2剤を投入後、当該袋状容器に押圧付与し、第1剤と第2剤を混合乳化させることを特徴とする請求項4に記載の二剤式シート状化粧料の使用方法。

【公開番号】特開2012−31097(P2012−31097A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171823(P2010−171823)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(306018365)クラシエホームプロダクツ株式会社 (188)
【Fターム(参考)】