説明

二塔式ガス化装置による複合発電方法及び装置

【課題】蒸気タービン発電装置の発電量とガスタービン発電装置もしくは燃料電池の発電量による総発電量を目標負荷の増・減に対して安定して追随させる。
【解決手段】目標負荷26の増・減が指令された時は、目標負荷26に基づいて原料供給装置17による原料供給量の増・減と、蒸気供給弁18による蒸気供給量の増・減と、給水ポンプ13による給水量の増・減を行って総和発電量を増・減させる安定運転制御を行い、同時に、蒸気ガバナ15の開度を増・減して蒸気タービン発電装置16による発電量を直ちに増・減すると共に、補助燃料供給装置24による補助燃料23の供給量を増・減し、且つ給水ポンプ13による給水量を増・減して排熱回収ボイラ12による蒸気発生量を増・減することにより、蒸気タービン発電装置16による発電量の増・減を、ガスタービン発電装置もしくは燃料電池20の発電量に先行させて行うことで総和発電量を目標負荷26に追随させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン発電装置の発電量とガスタービン発電装置もしくは燃料電池の発電量による総発電量を目標負荷の増・減に対して確実に追随できるようにした二塔式ガス化装置による複合発電方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、石炭ガス化複合発電プラントとしては、負荷増・減時に際して蒸気タービンへ供給する蒸気量を一時的に増・減し、蒸気タービン発電量を先行的に補正する手段を備えたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1においては、ガス化炉から供給されるガス圧力が大きな遅れを伴っているため、特に負荷変化時にガス圧力が大きく変動する欠点があるとしており、このために、前記したように負荷増・減時には蒸気タービンへ供給する蒸気量を一時的に増・減して蒸気タービン発電装置の発電量を先行的に補正することにより、負荷追従性が高められるとしている。
【特許文献1】特開平04−027702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される石炭ガス化複合発電プラントは、特許文献1の第6図に示されているように、ガス化炉で生成した燃料ガスをガスタービン発電装置へ供給して発電を行い、ガスタービン発電装置出口の排気ガスは排熱回収ボイラに導いて蒸気を発生させ、この蒸気を蒸気タービン発電装置へ供給することにより発電を行うものであり、このプラントでは一時的な負荷上昇に対してガス化炉での燃料ガスの生成量をすばやく増加させることはできないため、蒸気タービン発電装置の出力を先行的に増加させるようにしており、ここで特許文献1では、蒸気タービン発電装置による発電量の一時的な増加は、蒸気系の保有蒸気量が十分に大きいため問題は生じないと記述されている。
【0005】
しかし、特許文献1に示される石炭ガス化複合発電プラントにおいては、発生蒸気量を直ちに変化させることはできないために、単に蒸気ガバナを開けて蒸気タービン発電装置への蒸気供給量を増加して発電量を増加させようとし場合には、蒸気圧力が直ちに低下してしまう。このために、特許文献1において蒸気タービン発電装置の発電量を一時的に増加する制御は極めて短時間しか対応できないという問題がある。
【0006】
又、一時的な負荷上昇時に、ガス化炉に対する原料の供給量を増加する操作を同時に行うようにしても、前記したようにガスタービンに導かれる燃料ガスのガス圧力の遅れが大きいことから、ガスタービン発電装置による発電量が増加するまでには時間がかかってしまい、よって一時的な負荷上昇時に、ガスタービン発電装置による発電量と蒸気タービン発電装置による発電量の総和発電量を目標負荷に沿わせて追随させることは困難であり、よって負荷追従性を高めることはできないという問題があった。
【0007】
本発明は、蒸気タービン発電装置の発電量とガスタービン発電装置もしくは燃料電池の発電量による総発電量を目標負荷の増・減に対して確実に追随させることができる二塔式ガス化装置による複合発電方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、燃焼炉とガス化炉を有し、燃焼炉で加熱した流動媒体をガス化炉に供給して流動媒体の熱を用い原料をガス化して燃料ガスを生成し、ガス化炉の流動媒体と未反応のチャーを燃焼炉に導入してチャーを燃焼させることにより前記流動媒体を加熱するようにした二塔式ガス化炉と、少なくとも前記燃焼炉からの排気ガスを導入し給水ポンプからの水と熱交換して蒸気を発生する排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラからの蒸気を蒸気ガバナを介して導入し発電を行う蒸気タービン発電装置と、前記ガス化炉に原料を供給する原料供給装置と、ガス化炉に前記排熱回収ボイラからの蒸気の一部をガス化剤として供給する蒸気供給弁と、ガス化炉で生成した燃料ガスをガスガバナを介して導入し発電を行うガスタービン発電装置もしくは燃料電池と、前記燃焼炉に補助燃料を供給する補助燃料供給装置とを有する二塔式ガス化装置による複合発電方法であって、
目標負荷に基づいて原料供給装置による原料供給量と、蒸気供給弁による蒸気供給量と、給水ポンプによる給水量とを制御して蒸気タービン発電装置による発電量とガスタービン発電装置もしくは燃料電池による発電量とをバランスした総和発電量に保持するように安定運転制御する負荷追従装置を設け、
目標負荷の増・減が指令された時は、目標負荷に基づいて原料供給装置による原料供給量の増・減と、蒸気供給弁による蒸気供給量の増・減と、給水ポンプによる給水量の増・減を行って総和発電量を増・減させる安定運転制御を行い、
同時に、蒸気ガバナの開度を増・減して蒸気タービン発電装置による発電量を直ちに増・減すると共に、補助燃料供給装置による補助燃料の供給量を増・減し、且つ給水ポンプによる給水量を増・減して排熱回収ボイラによる蒸気発生量を増・減することにより、蒸気タービン発電装置による発電量の増・減を先行させて総和発電量を目標負荷に追随させることを特徴とする二塔式ガス化装置による複合発電方法、に係るものである。
【0009】
上記二塔式ガス化装置による複合発電方法において、前記ガスタービン発電装置出口の排気ガスを排熱回収ボイラに導入して熱交換し排熱回収ボイラによる排熱回収量を増加させることは好ましい。
【0010】
又、上記二塔式ガス化装置による複合発電方法において、前記ガス化炉からの燃料ガスを排熱回収ボイラに導入して熱交換し排熱回収ボイラによる排熱回収量を増加させることは好ましい。
【0011】
本発明は、燃焼炉とガス化炉を有し、燃焼炉で加熱した流動媒体をガス化炉に供給して流動媒体の熱を用い原料をガス化して燃料ガスを生成し、ガス化炉の流動媒体と未反応のチャーを燃焼炉に導入してチャーを燃焼させることにより前記流動媒体を加熱するようにした二塔式ガス化炉と、少なくとも前記燃焼炉からの排気ガスを導入し給水ポンプからの水と熱交換して蒸気を発生する排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラからの蒸気を蒸気ガバナを介して導入し発電を行う蒸気タービン発電装置と、前記ガス化炉に原料を供給する原料供給装置と、ガス化炉に前記排熱回収ボイラからの蒸気の一部をガス化剤として供給する蒸気供給弁と、ガス化炉で生成した燃料ガスをガスガバナを介して導入し発電を行うガスタービン発電装置もしくは燃料電池と、前記燃焼炉に補助燃料を供給する補助燃料供給装置とを有する二塔式ガス化装置による複合発電装置であって、
目標負荷に基づいて原料供給装置による原料供給量指令と、蒸気供給弁による蒸気供給量指令と、給水ポンプによる給水量指令とを発して蒸気タービン発電装置による発電量とガスタービン発電装置もしくは燃料電池による発電量とがバランスした総和発電量に保持されるように制御する安定運転制御器を有する負荷追従装置を備えており、
該負荷追従装置は、目標負荷が増・減した時に、原料供給装置による原料供給量を増・減する原料調節信号と、蒸気供給弁による蒸気供給量を増・減する蒸気調節信号とを発して安定運転状態で総和発電量を増・減するガス側指令手段と、
蒸気ガバナの開度を増・減する蒸気ガバナ開度調節信号と、補助燃料供給装置による補助燃料供給量を増・減する補助燃料調節信号と、給水ポンプによる給水量を増・減する給水量調節信号とを発して蒸気タービン発電装置による発電量の増・減を先行させる蒸気側指令手段と、を有することを特徴とする二塔式ガス化装置による複合発電装置、に係るものである。
【0012】
上記二塔式ガス化装置による複合発電装置において、前記ガスタービン発電装置出口の排気ガスを排熱回収ボイラに導くようにしたことは好ましい。
【0013】
又、上記二塔式ガス化装置による複合発電装置において、前記ガス化炉で生成される燃料ガスを排熱回収ボイラに導くようにしたことは好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の二塔式ガス化装置による複合発電方法及び装置によれば、目標負荷の増・減が指令された時は、目標負荷に基づいて原料供給装置による原料供給量の増・減と、蒸気供給弁による蒸気供給量の増・減と、給水ポンプによる給水量の増・減を行って総和発電量を増・減させる安定運転制御を行い、同時に、蒸気ガバナの開度を増・減して蒸気タービン発電装置による発電量を直ちに増・減すると共に、補助燃料供給装置による補助燃料の供給量を増・減し、且つ給水ポンプによる給水量を増・減して排熱回収ボイラによる蒸気発生量を増・減することにより、蒸気タービン発電装置による発電量の増・減を先行させて総和発電量を目標負荷に追随させるようにしたので、特に目標負荷の増加時には、蒸気タービン発電装置による発電量を直ちにしかも長時間に亘って安定して増加することができ、よって総和発電量を目標負荷に対して確実に追随できるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すブロック図であり、図1中、1は二塔式ガス化炉である。二塔式ガス化炉1は、燃焼炉2とガス化炉3とを有しており、燃焼炉2で加熱された流動媒体4はサイクロン式の分離器5で排気ガス6と分離されてガス化炉3に供給され、流動媒体4の熱によりガス化炉3に供給される原料7を蒸気8と共にガス化して燃料ガス9を生成し、ガス化炉3内の流動媒体と未反応のチャーは供給路10により燃焼炉2に導入して、チャーを空気11と共に燃焼させることにより前記流動媒体の加熱を行うようになっている。
【0017】
図1中、12は前記燃焼炉2から導出され分離器5で流動媒体4が分離された排気ガス6を導入するようにした排熱回収ボイラであり、排熱回収ボイラ12では給水ポンプ13から供給される水14を前記排気ガス6と熱交換して蒸気8を発生するようになっており、該排熱回収ボイラ12で発生した蒸気8は、蒸気ガバナ15を介し蒸気タービン発電装置16に導入して発電を行うようになっている。
【0018】
前記ガス化炉3には、石炭或いはその他の炭素質燃料等からなる原料7を供給する原料供給装置17が設けてあると共に、前記排熱回収ボイラ12で発生した蒸気8の一部をガス化剤として供給する蒸気供給弁18が設けてあり、ガス化炉3で生成した燃料ガス9は、ガスガバナ19を介しガスタービン発電装置もしくは燃料電池20に導入して発電を行うようになっている。ここで、前記ガス化炉3からの燃料ガス9を前記排熱回収ボイラ12に導入して排熱回収すると共に燃料ガス9の冷却を行うことは好ましく、更に、前記ガスタービン発電装置20出口の排気ガス22を前記排熱回収ボイラ12に導入して排熱回収することは好ましい。又、前記燃料ガス9の精製を行うためのガス精製装置21を必要に応じて備え、精製した燃料ガス9を前記ガスタービン発電装置もしくは燃料電池20に供給するようにしてもよい。
【0019】
前記燃焼炉2には、二塔式ガス化炉1の起動時等に石炭やLPG等の補助燃料23を供給して燃焼させるようにした補助燃料供給装置24を設けている。
【0020】
図1中、25は負荷追従装置であり、該負荷追従装置25には、目標負荷26(MWD)が入力されていると共に、蒸気タービン発電装置16による発電量を検出する検出器27とガスタービン発電装置もしくは燃料電池20による発電量を検出する検出器28からの夫々の発電量検出信号27a,28aが入力されている。
【0021】
負荷追従装置25には、目標負荷26に基づいて原料供給装置17に送る原料供給量指令29と、蒸気供給弁18に送る蒸気供給量指令30と、給水ポンプ13に送る給水量指令31と、更には、ガスガバナ192送るガスガバナ開度指令32aと蒸気ガバナに送る蒸気ガバナ開度指令32bとを発して、蒸気タービン発電装置16による発電量とガスタービン発電装置もしくは燃料電池20による発電量とがバランスした総和発電量を得るように安定制御を行うための安定運転制御器33が備えられている。安定運転制御器33は、目標負荷26が増・減した時には、安定運転を保持した状態において各指令29,30,31,32a,32bの変更を行うようになっている。
【0022】
更に、前記負荷追従装置25には、目標負荷26が増・減した時に、ガスガバナ19の開度を増・減する蒸気ガバナ開度調節信号34と、補助燃料供給装置24による補助燃料供給量を増・減する補助燃料調節信号35と、前記給水ポンプ13による給水量を増・減する給水量調節信号36とを発する蒸気先行指令手段37を備えている。
【0023】
以下に上記形態の作用を説明する。
【0024】
負荷追従装置25の安定運転制御器33は、目標負荷26に基づいて原料供給装置17に対する原料供給量指令29と、蒸気供給弁18に対する蒸気供給量指令30と、給水ポンプ13に対する給水量指令31を発し、同時にガスガバナ19に対するガスガバナ開度指令32aと蒸気ガバナに対する蒸気ガバナ開度指令32bとを発することにより、蒸気タービン発電装置16による発電量とガスタービン発電装置もしくは燃料電池20による発電量とがバランスして総和発電量が目標負荷26に一致するように常に安定した制御を行うようになっている。
【0025】
ここで、安定運転時に原料供給装置17を制御する原料供給量指令29は、予め設計した複合発電プラントにおけるマテリアルバランスに従った値から作成したテーブル等を用いて算出することができる。即ち、図2に示すように、複合発電プラントの安定運転時におけるガス化炉3に対する原料供給量と、ガス化炉3で生成される燃料ガス生成量と、排熱回収ボイラ12で発生れさる蒸気発生量の関係は一意に求められる。更に詳しくは、原料供給量に対するガスタービン発電装置もしくは燃料電池20による発電量と、分離器5からの排気ガス6、ガスタービン発電装置20出口の排気ガス22、及び燃料ガス9と熱交換する排熱回収ボイラ12からの蒸気8を用いて発電する蒸気タービン発電装置16による発電量との関係は予め求めることができるので、これらの関係をテーブル化して探索することにより、任意の目標負荷26に対して安定運転できる原料供給量指令29を算出することができ、この原料供給量指令29を用いて複合発電プラントを安定運転することができる。
【0026】
図3は負荷追従装置25の制御フローチャートである。目標負荷26が総和発電量よりも大きい負荷増加指令Iが発せられた時は、負荷追従装置25の安定運転制御器33は、ステップS1に示すように原料供給装置17に指令する原料供給量指令29の増加と、蒸気供給弁18に指令する蒸気供給量指令30の増加と、給水ポンプ13に指令する給水量指令31の増加とを行い、更に、これに伴ってガスガバナ19に指令するガスガバナ開度指令32aの増加と、蒸気ガバナ15に指令する蒸気ガバナ開度指令32bの増加とを行うことで安定運転指令の変更を行い、これによってプラント全体の総和発電量が安定運転された状態で増加するよう制御される。
【0027】
しかし、前記したように安定運転指令に従って原料供給量を増加しても、ガス化炉3に供給された原料7がガス化されて燃料ガス9の圧力(供給量)が上昇するのはゆっくりでありガスタービン発電装置もしくは燃料電池20による発電量が増加するまでには時間が掛かるため、図4に示すように、負荷増加指令Iに対して安定運転指令による総和発電量Aには遅れが生じてしまう。
【0028】
このため、前記負荷増加指令Iが発せられた時には、図3のステップS1のように安定運転指令の変更を行うと共に、ステップS2に示すように、蒸気先行指令手段37により蒸気ガバナ15の開度を増加する蒸気ガバナ開度調節信号34を発して、直ちに蒸気タービン発電装置16による発電量を増加させると共に、蒸気タービン発電装置16で消費する蒸気8および前述のガス化炉3で消費される蒸気8の増加分に相当する水14を供給するように給水ポンプ13に給水量調節信号36を発し、更に、蒸気8の増加分に相当する熱量を得るのに必要な補助燃料23を燃焼炉2に供給するように補助燃料供給装置24に補助燃料調節信号35を発するようにしている。
【0029】
上記したように、蒸気ガバナ15の開度を増加すると蒸気タービン発電装置16に供給される蒸気量は直ちに増加するので、蒸気タービン発電装置16による発電量は直ちに増加される。ここで、蒸気ガバナ15の開度を増加すると、排熱回収ボイラ12内の蒸気が減少して蒸気圧力が低下し、これによって蒸気タービン発電装置16による発電量が低下することが考えられるが、燃焼炉2には補助燃料23が供給されて導出される排気ガス6の排熱温度が上昇することによって蒸気圧力は直ちに回復されるため、前記ガスタービン発電装置もしくは燃料電池20の発電量が増加するまでの遅れは、図4にハッチングで示すように蒸気タービン発電装置16の発電量の増加による補償発電量Bによって埋められ、よって総和発電量を負荷増加指令Iに確実に追随させて増加させることができる。供給量を増加した原料7のガス化が安定し、ガスタービン発電装置もしくは燃料電池20による発電量が安定運転による目標値に近くなると、蒸気ガバナ15の開度を減少すると共に補助燃料23の供給を減少させて、図4の変更後目標負荷が保持されるように安定運転制御が行われる。
【0030】
上記したように、目標負荷26の負荷増加指令Iが発せられた時には、蒸気ガバナ15を開けて蒸気タービン発電装置16に対する蒸気8の供給量を直ち増加すると共に、補助燃料供給装置24により燃焼炉2に補助燃料23を供給して排気ガス6の温度を上昇させるようにしているので、蒸気タービン発電装置16の発電量を直ちにしかも長時間に亘って安定して増加することができ、よって、総和発電量を負荷増加指令Iに確実に追随させて負荷追従性を高めることできる。
【0031】
一方、図3において、目標負荷26が総和発電量よりも小さい負荷下降指令IIが発せられた時は、負荷追従装置25の安定運転制御器33は、ステップS3のように原料供給装置17に指令する原料供給量指令29の減少と、蒸気供給弁18に指令する蒸気供給量指令30の減少と、給水ポンプ13に指令する給水量指令31の減少とを行い、更に、これに伴ってガスガバナ19に指令するガスガバナ開度指令32aの減少と、蒸気ガバナ15に指令する蒸気ガバナ開度指令32bの減少とを行うことで安定運転指令の変更を行い、これによって複合発電プラント全体の総和発電量が安定運転された状態で減少するように制御される。
【0032】
しかし、上記したように安定運転指令に従って原料供給量を減少して、プラント全体の総和発電量を安定した状態で減少させた場合には、ガス化炉3からの燃料ガス9の変化がゆっくりであるために、蒸気タービン発電装置16の発電量が遅れて減少することになり、よって総和発電量の減少が負荷下降指令IIに対して遅れることになる。
【0033】
このため、前記負荷下降指令IIが発せられた時には、図3に示すステップS3の安定運転指令の変更を行うと共に、ステップS4に示すように、蒸気先行指令手段37により蒸気ガバナ15の開度を減少する蒸気ガバナ開度調節信号34を発して直ちに蒸気タービン発電装置16による発電量を減少させると共に、蒸気タービン発電装置16で消費する蒸気8および前述のガス化炉3で消費される蒸気8の減少分に相当する水14の供給量を減少するように給水ポンプ13に給水量調節信号36を発し、更に、蒸気8の減少分に相当する熱量を得る補助燃料23の供給量を減少するよう補助燃料供給装置24に補助燃料調節信号35を発するようにしている。これによって、プラント全体の総和発電量は安定して負荷下降指令IIに追随するようになる。尚、上記負荷下降指令IIが発せられた際に、排熱回収ボイラ12による蒸気8が余剰となった場合には、凝縮して再び排熱回収ボイラ12に供給するようにしてもよく、又は、外部に排出するようにしてもよい。
【0034】
図3においては、目標負荷26が総和発電量に対して大の場合と小の場合とに分けて制御する場合について例示したが、過渡応答処理に、|総和発電量−目標負荷|>許容値のように範囲を持たせて、目標負荷26と総和発電量との差が許容値を越えたときのみに前記制御を行うようにしてもよい。
【0035】
更に、前記補助燃料供給装置24による燃焼炉2への補助燃料23の供給は、前記安定運転制御時にも常に供給して補助燃料23の供給量を増減する制御を行うようにしてもよく、或いは、負荷増加指令Iが発せられた時のみに補助燃料23を供給するようにしてもよい。
【0036】
又、上記形態では燃焼炉2へ補助燃料23を供給することで、排熱回収ボイラ12による排熱回収量を増・減して蒸気タービン発電装置16による発電量を増・減させる場合について例示したが、排熱回収ボイラ12における排熱回収量を増減させる手段として、補助燃料23を増減する代わりに、或いは補助燃料23を増減することに加えて、燃焼炉2に供給されるチャーの量を増・減させる、即ち、ガス化炉3へ投入する原料7を増・減してチャーの供給量を増・減するようにしてもよい。
【0037】
尚、本発明は、上記形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示すブロック図である。
【図2】安定運転時におるガス化炉に対する原料供給量と、ガス化炉で生成される燃料ガス生成量と排熱回収ボイラで発生れさる蒸気発生量の関係の概念を示す線図である。
【図3】負荷追従装置の制御フローチャートである。
【図4】目標負荷の負荷増加指令が発せられた時における本発明による運転方法の概念を示す線図である。
【符号の説明】
【0039】
1 二塔式ガス化炉
2 燃焼炉
3 ガス化炉
4 流動媒体
6 排気ガス
7 原料
8 蒸気
9 燃料ガス
12 排熱回収ボイラ
13 給水ポンプ
14 水
15 蒸気ガバナ
16 蒸気タービン発電装置
17 原料供給装置
18 蒸気供給弁
19 ガスガバナ
20 ガスタービン発電装置もしくは燃料電池
22 排気ガス
23 補助燃料
24 補助燃料供給装置
25 負荷追従装置
26 目標負荷
29 原料供給量指令
30 蒸気供給量指令
31 給水量指令
33 安定運転制御器
34 蒸気ガバナ開度調節信号
35 補助燃料調節信号
36 給水量調節信号
37 蒸気先行指令手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼炉とガス化炉を有し、燃焼炉で加熱した流動媒体をガス化炉に供給して流動媒体の熱を用い原料をガス化して燃料ガスを生成し、ガス化炉の流動媒体と未反応のチャーを燃焼炉に導入してチャーを燃焼させることにより前記流動媒体を加熱するようにした二塔式ガス化炉と、少なくとも前記燃焼炉からの排気ガスを導入し給水ポンプからの水と熱交換して蒸気を発生する排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラからの蒸気を蒸気ガバナを介して導入し発電を行う蒸気タービン発電装置と、前記ガス化炉に原料を供給する原料供給装置と、ガス化炉に前記排熱回収ボイラからの蒸気の一部をガス化剤として供給する蒸気供給弁と、ガス化炉で生成した燃料ガスをガスガバナを介して導入し発電を行うガスタービン発電装置もしくは燃料電池と、前記燃焼炉に補助燃料を供給する補助燃料供給装置とを有する二塔式ガス化装置による複合発電方法であって、
目標負荷に基づいて原料供給装置による原料供給量と、蒸気供給弁による蒸気供給量と、給水ポンプによる給水量とを制御して蒸気タービン発電装置による発電量とガスタービン発電装置もしくは燃料電池による発電量とをバランスした総和発電量に保持するように安定運転制御する負荷追従装置を設け、
目標負荷の増・減が指令された時は、目標負荷に基づいて原料供給装置による原料供給量の増・減と、蒸気供給弁による蒸気供給量の増・減と、給水ポンプによる給水量の増・減を行って総和発電量を増・減させる安定運転制御を行い、
同時に、蒸気ガバナの開度を増・減して蒸気タービン発電装置による発電量を直ちに増・減すると共に、補助燃料供給装置による補助燃料の供給量を増・減し、且つ給水ポンプによる給水量を増・減して排熱回収ボイラによる蒸気発生量を増・減することにより、蒸気タービン発電装置による発電量の増・減を先行させて総和発電量を目標負荷に追随させることを特徴とする二塔式ガス化装置による複合発電方法。
【請求項2】
前記ガスタービン発電装置出口の排気ガスを排熱回収ボイラに導入して熱交換し排熱回収ボイラによる排熱回収量を増加させることを特徴とする請求項1に記載の二塔式ガス化装置による複合発電方法。
【請求項3】
前記ガス化炉からの燃料ガスを排熱回収ボイラに導入して熱交換し排熱回収ボイラによる排熱回収量を増加させることを特徴とする請求項1又は2に記載の二塔式ガス化装置による複合発電方法。
【請求項4】
燃焼炉とガス化炉を有し、燃焼炉で加熱した流動媒体をガス化炉に供給して流動媒体の熱を用い原料をガス化して燃料ガスを生成し、ガス化炉の流動媒体と未反応のチャーを燃焼炉に導入してチャーを燃焼させることにより前記流動媒体を加熱するようにした二塔式ガス化炉と、少なくとも前記燃焼炉からの排気ガスを導入し給水ポンプからの水と熱交換して蒸気を発生する排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラからの蒸気を蒸気ガバナを介して導入し発電を行う蒸気タービン発電装置と、前記ガス化炉に原料を供給する原料供給装置と、ガス化炉に前記排熱回収ボイラからの蒸気の一部をガス化剤として供給する蒸気供給弁と、ガス化炉で生成した燃料ガスをガスガバナを介して導入し発電を行うガスタービン発電装置もしくは燃料電池と、前記燃焼炉に補助燃料を供給する補助燃料供給装置とを有する二塔式ガス化装置による複合発電装置であって、
目標負荷に基づいて原料供給装置による原料供給量指令と、蒸気供給弁による蒸気供給量指令と、給水ポンプによる給水量指令とを発して蒸気タービン発電装置による発電量とガスタービン発電装置もしくは燃料電池による発電量とがバランスした総和発電量に保持されるように制御する安定運転制御器を有する負荷追従装置を備えており、
該負荷追従装置は、目標負荷が増・減した時に、原料供給装置による原料供給量を増・減する原料調節信号と、蒸気供給弁による蒸気供給量を増・減する蒸気調節信号とを発して安定運転状態で総和発電量を増・減するガス側指令手段と、
蒸気ガバナの開度を増・減する蒸気ガバナ開度調節信号と、補助燃料供給装置による補助燃料供給量を増・減する補助燃料調節信号と、給水ポンプによる給水量を増・減する給水量調節信号とを発して蒸気タービン発電装置による発電量の増・減を先行させる蒸気側指令手段と、を有することを特徴とする二塔式ガス化装置による複合発電装置。
【請求項5】
前記ガスタービン発電装置出口の排気ガスを排熱回収ボイラに導くようにしたことを特徴とする請求項4に記載の二塔式ガス化装置による複合発電装置。
【請求項6】
前記ガス化炉で生成される燃料ガスを排熱回収ボイラに導くようにしたことを特徴とする請求項4又は5に記載の二塔式ガス化装置による複合発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−121461(P2010−121461A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293460(P2008−293460)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】