説明

二多段式駐車装置用のチェーンたるみ防止装置

【課題】パレットが入出庫高さに位置する時に、強風を受けてもチェーンのたるみを防止することができる二多段式駐車装置用のチェーンたるみ防止装置を提供する。
【解決手段】パレット12の前側又は後側のチェーン14の下端部に所定の間隔を隔てて固定された1対のばね取り付け金具24と、1対のばね取り付け金具に両端がそれぞれ取付けられ、その間に最短長さから最長長さまで引張力を付加する引張ばね22とを備える。前記間隔は、引張ばね22の自然長よりも長い。また、最長長さは、パレット12の昇降時にチェーン14に生じる張力によりチェーン14が直線状に延びた状態におけるばね取り付け金具24間の長さである。また、最短長さは、最長長さよりたるみ量分以上短く、かつ入出庫高さにおいてばね取り付け金具24より上方に位置するチェーン14に所定の張力を付加する長さである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一の設置スペースに2段以上の駐車スペースが設けられた二多段式駐車装置用のチェーンたるみ防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二多段式駐車装置は、地上のみに駐車スペースが設けられる地上式と、地上と地下に駐車スペースが設けられるピット式とに大別できる。地上式とピット式のいずれも、車両の入出庫は、入出庫高さ(FL)に位置するパレット上に車両を直接入庫し、又は入出庫高さのパレット上から車両を出庫することで行われる。
そして、二多段式駐車装置は、パレットを駐車スペースに昇降または横行させることにより、同一の設置スペースに2段以上の駐車スペースを設け、車両を駐車している。
【0003】
従来の一般的な二多段式駐車装置は、例えば特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−105997号公報、「多段式駐車装置」
【特許文献2】特開平5−287929号公報、「立体駐車場におけるパレット昇降装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1及び図2は、従来の駐車装置の概略構成図である。この図において(A)は、パレット51が駐車位置にある状態、(B)は、駐車位置から入出庫高さにパレット51が下降した状態を示す。また、(C)は、(B)のC−C矢視図である。
【0006】
図1(A)のように、パレット51の幅方向両端部にチェーン53の下端が固定され、チェーン53の繰り下げまたは繰り上げにより、パレット51が昇降するようになっている。
また図1(C)のように、パレット51が水平姿勢から傾かないようにするため、チェーン53は、パレット51の奥行方向両端部に配置する必要がある。
【0007】
しかし、図2のように、パレット51が入出庫高さに下降し、床面54に着床している状態では、停止位置の検出から実際の停止までの時間遅れにより、チェーン53がたるんだ状態になる。そのため、強風によって、チェーン53がたるんで弓なりに変形することがある。
この場合、チェーン53が駐車中の車両1に接触して傷を付ける可能性や、歩行中の利用者と接触する可能性がある。特に、三段式や四段式のようにチェーン53が長い場合に、このような問題が生じる可能性が高くなる。
【0008】
本発明はかかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、パレットが入出庫高さに位置する時に、強風を受けてもチェーンのたるみを防止することができる二多段式駐車装置用のチェーンたるみ防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、同一の設置スペースに2段以上の駐車スペースが設けられ、
車両が入出庫する入出庫高さとそれより上方の駐車スペースとの間で車両を載せて昇降可能なパレットと、
下端がパレットの四隅に固定され、鉛直に上方に延び、パレットを吊下げて昇降する複数のチェーンと、
チェーンを繰り下げ又は繰り上げするチェーン駆動装置とを備える二多段式駐車装置用のチェーンたるみ防止装置であって、
パレットの前側又は後側のチェーンの下端部に所定の間隔を隔てて固定された1対のばね取り付け金具と、
1対のばね取り付け金具に両端がそれぞれ取付けられ、その間に最短長さから最長長さまで引張力を付加する引張ばねとを備える、ことを特徴とする二多段式駐車装置用のチェーンたるみ防止装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
上述した本発明によれば、パレットの前側又は後側のチェーンの下端部に所定の間隔を隔てて固定された1対のばね取り付け金具と、1対のばね取り付け金具に両端がそれぞれ取付けられ、その間に最短長さから最長長さまで引張力を付加する引張ばねとを備えたことによって、チェーンのたるみが発生する部分をチェーンの下端部に限定することができる。
【0011】
また、引張ばねは、入出庫高さにおいてばね取り付け金具より上方に位置するチェーンに張力を付加するので、パレットが入出庫高さに位置する時に、強風を受けてもチェーンのたるみを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の駐車装置の概略構成図である。
【図2】従来の駐車装置のチェーンが緩んだ状態の図である。
【図3】本発明のチェーンたるみ防止装置を備えた二多段式駐車装置の正面図である。
【図4】本発明によるチェーンたるみ防止装置の構成図である。
【図5】チェーンが最長長さであるチェーンたるみ防止装置の構成図である。
【図6】チェーンが最短長さであるチェーンたるみ防止装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0014】
図3は、本発明のチェーンたるみ防止装置を備えた二多段式駐車装置の正面図である。
この例において、二多段式駐車装置10は、同一の設置スペースに3段(1F,2F,3F)の駐車スペースが設けられた地上3段昇降横行式の二多段式駐車装置である。
【0015】
この例において、3段のうち1Fに位置する2つのパレット12aは、水平に横行可能であり、2Fに位置する2つのパレット12bは、横行と昇降が可能であり、3Fに位置する3つのパレット12cは、昇降のみが可能になっている。
従って、この例において、車両1の収容台数は、3×3−2=7台である。
以下、パレット12a〜12cを特に区別しない場合は、単にパレット12と呼ぶ。
【0016】
なお、本発明は上述した二多段式駐車装置10に限定されず、それ以外の二多段式駐車装置10であってもよい。
例えば、駐車スペースの段数は、2段以上であれば、4段以上であってもよい。また、同一段の収容台数も3台に限定されず、2台でも4台以上でもよい。
以下、図3に基づき、本発明を説明する。
【0017】
車両1が入出庫する入出庫高さ(FL)は、この例で3連であり、A,B,Cの3つの入出庫部を有する。パレット12(パレット12a〜12c)の全幅はすべて同一であり、各入出庫部A,B,Cは、3つのパレット12が必要な隙間(例えば40mm以下)を隔てて互いに隣接して位置するようになっている。
【0018】
1Fに位置する2つのパレット12aは、その長さ方向両端部に車輪36aを有し、1Fに設けられた2本の水平レール38aに沿って図示しない水平駆動装置により水平に横行し、入出庫部A,B,Cのいずれかにおいて、車両1を直接入出庫させるようになっている。以下、入出庫とは、入庫と出庫を意味する。
【0019】
2Fに位置する2つのパレット12bは、これを吊上げる矩形フレーム40の長さ方向両端部に車輪36bを有し、2Fに設けられた2本の水平レール38bに沿って図示しない水平駆動装置により水平に横行し、入出庫部A,B,Cのいずれかにおいて、車両1を直接入出庫させるようになっている。
矩形フレーム40は、最上段と最下段の間の中間段に駐車するパレット12bを囲みパレット12bを吊下げて横方向に移動可能に設置されている。
【0020】
本発明の二多段式駐車装置10は、車両1が入出庫する入出庫高さ(FL)と、この入出庫高さより上方の駐車スペースとの間で車両1を載せて昇降可能なパレット12を有する。
この昇降可能なパレット12には、上述した2Fに位置する2つのパレット12bと、3Fに位置する3つのパレット12cが該当する。
【0021】
本発明の二多段式駐車装置10は、さらに、チェーン駆動装置16を備えパレット12を昇降させるようになっている。
チェーン駆動装置16は、車両1と干渉しない位置で鉛直に延びる可撓性のあるチェーン14を繰り上げ又は繰り下げして、その下端14a(図4参照)を昇降させる。
【0022】
2F用のチェーン駆動装置16は、矩形フレーム40に固定され、矩形フレーム40と共に水平に横行する。
3F用のチェーン駆動装置16は、本体フレーム42に固定され、本体フレーム42から3つのパレット12をそれぞれ独立に昇降させるようになっている。
【0023】
また、この例において、4本のチェーン14の下端14a(図4参照)は荷重バランスを考慮して、パレット12の前後の計4箇所に固定され、チェーン駆動装置16により、パレット12を水平に保持したまま昇降するようになっている。
【0024】
図4は、本発明によるチェーンたるみ防止装置の構成図である。
【0025】
パレット12は、車両1が入出庫する入出庫高さと、それより上方の駐車スペースとの間で車両1を載せ、チェーン14により吊るされた状態で昇降する。パレット12には、車両1が積載される。
パレット12が入出庫高さにある時に、パレット12に車両1が乗り込み可能、または、パレット12から車両1が乗り出し可能になっている。入庫時には、入出庫高さにあるパレット12へ、車両1が、パレット12の縦方向に自走して入庫し、パレット12は、入出庫高さよりも上方にある駐車位置へ上昇させられる。その後、出庫時には、車両1が積載され駐車位置にあるパレット12が入出庫高さへ下降させられ、入出庫高さのパレット12から、車両1がパレット12の縦方向に自走して出庫する。
【0026】
チェーン14は、下端がパレット12の四隅に固定され、鉛直に上方に延び、パレット12を吊下げて昇降する。
【0027】
チェーン駆動装置16は、各チェーン14を下方に繰り下げることによりパレット12を下降させ、各チェーン14を上方に繰り上げることによりパレット12を上昇させる。
【0028】
図4の例では、チェーン駆動装置16は、スプロケット18を有する。スプロケット18は、駐車装置10の静止側構造体において、駐車位置に対応する高さに回転可能に設置されている。スプロケット18の外周面には、チェーン14が掛けられており、スプロケット18は、駆動モータ(図示せず)により搬送されるチェーン14に同期して回転させられることにより、チェーン14を下方へ繰り下げる。また、スプロケット18は、駆動モータにより逆回転させられることにより、チェーン14を上方へ繰り上げる。
【0029】
図4において、本発明のチェーンたるみ防止装置20は、パレット12が入出庫高さに位置する時にチェーン14が撓むことによる車両1や利用者との接触を防止するためのものである。
この例において、チェーンたるみ防止装置20は、パレット12の前側又は後側のチェーン14の下端部(パレット12に近い位置)に設置されている。
パレット12に近い位置において設置されていることによって、パレット12を昇降させた場合においても、チェーンたるみ防止装置20がスプロケット18と干渉するのを防止することができる。
【0030】
図5は、チェーンが最長長さであるチェーンたるみ防止装置の構成図であり、図6は、チェーンが最短長さであるチェーンたるみ防止装置の構成図である。
【0031】
本発明のチェーンたるみ防止装置20は、1対のばね取り付け金具24と、引張ばね22とを備える。
【0032】
ばね取り付け金具24は、チェーン14と引張ばね22とを、引張ばね22の上部及び下部において連結するための金具である。1対のばね取り付け金具24は、パレット12の前側又は後側のチェーン14の下端部に所定の間隔を隔てて固定される。
引張ばね22は、1対のばね取り付け金具24に両端がそれぞれ取付けられ、その間に最短長さから最長長さまで引張力を付加するようになっている。
【0033】
ばね取り付け金具24における上部24aと下部24bとの間隔は、引張ばね22の自然長よりも長く設定されている。
そのため、パレット12が入出庫高さに位置していない状態、すなわちパレットの昇降時に、チェーン14に生じる張力によってチェーン14が直線状になるため、図5のように引張ばね22は最長長さ(伸びた状態)になる。
【0034】
一方、パレット12が入出庫高さに位置する状態、すなわち床面に着床している状況においては、チェーン14は鉛直下方向からの負荷から開放されることになる。
そのため、この場合においては、引張ばね22もその弾性力によってその最短長さに戻るため、ばね取り付け金具24における上部24aと下部24bとの設置間におけるチェーン14は、図6のように、その部分に限りたわむことになる。
【0035】
引張ばね22の最長長さは、パレット12の昇降時にチェーン14に生じる張力によりチェーン14が直線状に延びた状態におけるばね取り付け金具24間の長さである。
また、引張ばね22の最短長さは、最長長さよりたるみ量分以上短い長さである。
さらに、引張ばね22は、入出庫高さにおいてばね取り付け金具24より上方に位置するチェーン14に所定の張力を付加するバネ定数を有する。このバネ定数は、最短長さにおいて、ばね取り付け金具24より上方に位置するチェーン14に付加する張力が、強風によってチェーン14に発生する張力より大きくなるように設定されている。
【0036】
この構成により、強風を受けチェーン14がたるもうとする場合でも、ばね取り付け金具24より上方に位置するチェーン14に付加された張力によりそのたるみを防止することができる。
【0037】
図5、図6において、ばね取り付け金具24は、チェーン14が屈曲する面内(図で紙面に平行な平面内)において、チェーン14に屈曲方向の曲げモーメントが作用するように、前記面内でチェーン14の外側に張り出した張出し部25を有している。
また引張ばね22の両端は、張出し部25にそれぞれ取付けられる。
この構成により、ばね取り付け金具24が取付けられた部分のチェーン14に屈曲方向の曲げモーメントを作用させ、図6に示すように、チェーン14を所望の方向にスムースに曲げることができる。
【0038】
なお、ばね取り付け金具24における上部24aと下部24bは、引張ばね22の設置位置を調整するためにチェーン14において複数ヶ所に設ける構成であってよい。なお、図4及び図5においては、計6つのばね取り付け金具24を設置した状態になっている。
【0039】
この構成を有することによって、パレット12が床面に着床した時において、チェーン14のたるみが発生する部分の位置を調整することが可能になることにより、このたるみの発生により、車両1や利用者との接触を防止することができる。
【0040】
上述した本発明によれば、パレット12の前側又は後側のチェーン14の下端部に所定の間隔を隔てて固定された1対のばね取り付け金具24と、1対のばね取り付け金具24に両端がそれぞれ取付けられ、その間に最短長さから最長長さまで引張力を付加する引張ばね22とを備えたことによって、チェーン14のたるみが発生する部分をチェーン14の下端部に限定することができる。
【0041】
また、引張ばね22の最短長さは、最長長さより入出庫高さにおいてチェーン14に生じるたるみ量以上短く、かつ入出庫高さにおいてばね取り付け金具24より上方に位置するチェーン14に所定の張力を付加する長さであるので、パレット12が入出庫高さに位置する時に、強風を受けてもチェーン14のたるみを防止することができる。
【0042】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
1 車両、
10 二多段式駐車装置、
12,12a,12b,12c パレット、
14 チェーン、14a 下端、
16 チェーン駆動装置、18 スプロケット、
20 チェーンたるみ防止装置、
22 引張ばね、
24 ばね取り付け金具、
24a 上部、24b 下部、25 張出し部、
36a,36b 車輪、
38a,38b 水平レール、
40 矩形フレーム、42 本体フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の設置スペースに2段以上の駐車スペースが設けられ、
車両が入出庫する入出庫高さとそれより上方の駐車スペースとの間で車両を載せて昇降可能なパレットと、
下端がパレットの四隅に固定され、鉛直に上方に延び、パレットを吊下げて昇降する複数のチェーンと、
チェーンを繰り下げ又は繰り上げするチェーン駆動装置とを備える二多段式駐車装置用のチェーンたるみ防止装置であって、
パレットの前側又は後側のチェーンの下端部に所定の間隔を隔てて固定された1対のばね取り付け金具と、
1対のばね取り付け金具に両端がそれぞれ取付けられ、その間に最短長さから最長長さまで引張力を付加する引張ばねとを備える、ことを特徴とする二多段式駐車装置用のチェーンたるみ防止装置。
【請求項2】
前記ばね取り付け金具は、チェーンが屈曲する面内において、チェーンに屈曲方向の曲げモーメントが作用するように、前記面内でチェーンの外側に張り出した張出し部を有しており、
前記引張ばねの両端は、張出し部にそれぞれ取付けられる、ことを特徴とする請求項1に記載のチェーンたるみ防止装置。
【請求項3】
1対のばね取り付け金具の間隔は、引張ばねの自然長よりも長く、
前記最長長さは、パレットの昇降時にチェーンに生じる張力によりチェーンが直線状に延びた状態におけるばね取り付け金具間の長さであり、
前記最短長さは、最長長さより前記たるみ量分以上短い長さであり、
前記引張ばねは、入出庫高さにおいてばね取り付け金具より上方に位置するチェーンに所定の張力を付加するバネ定数を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のチェーンたるみ防止装置。
【請求項4】
前記バネ定数は、最短長さにおいて、チェーンに付加する張力が、強風によってチェーンに発生する張力より大きくなるように設定されている、ことを特徴とする請求項3に記載のチェーンたるみ防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−83097(P2013−83097A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223945(P2011−223945)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000198363)IHI運搬機械株式会社 (292)