説明

二官能クラウンエーテル

【課題】新規クラウンエーテルの提供。
【解決手段】反応性アルケニル基で終端する長さ約1〜約20の原子のリンカー鎖を含むクラウンエーテルであって、前記反応性アルケニル基が前記クラウンエーテルを合成樹脂担体粒子に共有結合させるための反応性部位を与えることを特徴とするクラウンエーテル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高性能陽イオン交換クロマトグラフィーに有益な新規組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は改良された液体クロマトグラフィーを行うのに有益である新規組成物に関する。更に特別には、本発明は改良されたクロマトグラフィー組成物及び陽イオン交換クロマトグラフィーを行う方法に関するものであり、この場合、(1)通常のイオン性陽イオン交換官能基、例えば、スルホネート、カルボキシレート及び/またはホスホネート並びに(2)ノニオン性クラウンエーテルをベースとする官能基の両方がその中に使用される合成樹脂担体粒子に結合され、それによりアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、アミン等を含む多種の陽イオン種に関する特異な分離特性及び選択性を与える二官能固定相を与える。それ故、現在記載される組成物は新規かつ増進された陽イオン分離能を与える。
【0003】
異なる陽イオンの混合物からの陽イオンの分離は典型的には陽イオン交換体としてイオン性、酸性基を有する陽イオン交換固定相を使用する陽イオン交換クロマトグラフィーにより行われる(非特許文献1)。陽イオン交換クロマトグラフィーは溶液中の陽イオンの分析及び分離について公知の技術であり、この場合、その技術は典型的には電解質を含む溶離溶液を使用するクロマトグラフィー分離工程を含む。クロマトグラフィー分離工程中に、導入されたサンプルの陽イオンは陽イオン交換官能基が結合されている不溶性固定相を含むクロマトグラフィーカラムにより溶離される。次いでカラム中を移動し、固定相と接触する陽イオンはこれらの官能性陽イオン交換部位で交換することができる。時間の長い期間にわたって陽イオン交換部位と相互作用する陽イオンは時間の短い期間にわたってこれらの部位と相互作用する陽イオンの後にクロマトグラフィーカラムから溶離する。たいていの場合、イオン性酸性基、例えば、スルホネート基、カルボキシレート基もしくはホスホネート基またはこれらの混合物が典型的な陽イオン交換カラムの主官能基として使用される。
【0004】
典型的な陽イオン交換クロマトグラフィーカラムの固定相に結合される官能基の型に応じて、異なる陽イオン溶離プロフィールが得られる。例えば、カルボキシレート官能基及びホスホネート官能基の混合物を使用する通常の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムは、リチウムがカラムから最初に溶離し、続いてナトリウム、アンモニウム、カリウム、マグネシウム、マンガンそして最後にカルシウムの順で溶離する溶離プロフィールを与える(非特許文献2)。しかしながら、或る種の陽イオン種は直前または直後に溶離する別の陽イオン種と重なるピーク中に溶離し、それにより完全には有効ではない分離を与える。更に、一種の陽イオン種が別の陽イオン種よりもかなり高い濃度で存在する場合、これらの混合物からの2種の分離は非常に困難であるかもしれない。それ故、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムの分離能を増進するための更に別の手段を与える組成物及び方法が非常に有益であろう。
【0005】
クラウンエーテルは種々の異なる陽イオン種と錯体を選択的に生成することができる巨大環ポリエーテル化合物である(非特許文献3〜5)。これらの化合物は“クラウン”と称される。何とならば、それらの化学構造が王冠の形状に似ているからであり、また錯生成により陽イオン種を“環状にする”それらの能力のためである。陽イオンと錯生成するクラウンエーテル分子の能力は巨大環構造により形成された孔のサイズに依存し、結果として、異なるサイズのクラウンエーテルは陽イオンの錯生成についてかなり異なる特異性を示す(非特許文献6)。例えば、或る種のクラウンエーテルはナトリウムイオンと錯体を容易に生成するが、カリウムイオンと有効に錯生成することができず、別のクラウンエーテルはセシウムまたはルビジウムと有効に錯生成するが、カルシウムまたはリチウムと錯生成しない。多くのクラウンエーテル分子の陽イオン錯生成特性が文献に良く実証されていた。例えば、非特許文献6、7を参照のこと。
【0006】
クラウンエーテル化合物はクロマトグラフィー固定相の一部にされ、陽イオン交換クロマトグラフィーカラム中で陽イオン交換官能基として使用されていた(非特許文献5,7〜15)。しかしながら、クラウンエーテル官能基のみをベースとする陽イオン交換樹脂はクラウンエーテル巨大環構造からの陽イオンの結合及び放出の遅い速度のために不十分なクロマトグラフィー効率をしばしば示し、また多くの用途についてあまりにも選択的に“陽イオン特異性”であるかもしれない。
【0007】
クラウンエーテル官能基は固相に独立かつ別々に結合される通常の非クラウンエーテル陽イオン交換官能基、例えば、スルホネート、カルボキシレートまたはホスホネートと組み合わせて従来使用されていなかった。合成樹脂担体粒子への官能性クラウンエーテルの結合とのイオンクロマトグラフィーに使用される通常の陽イオン交換樹脂の組み合わせ(それにより二官能陽イオン交換樹脂をもたらす)がここに提供される。これらの二官能樹脂は新規な陽イオン分離能を与える。
【0008】
【非特許文献1】Small,Ion Chromatography,Plenum Press,New York(1989)
【非特許文献2】Reyら,Journal of Chromatography A 739:87-97(1996)
【非特許文献3】Izattら, Chem. Rev.85:271(1985)
【非特許文献4】Bajajら,Coord. Chem. Rev.87:55(1988)
【非特許文献5】Lambら,Journal of Chromatography 482:367-380(1989))
【非特許文献6】Buschmannら,Journal of Solution Chemistry 23(5):569-577(1994))
【非特許文献7】Hiraoka,“Crown Ethers and Analogous Compounds”,Elsevier Science Publishers,Amsterdam,(1992)
【非特許文献8】Blasiusら,Journal of Chromatography 167:307-320(1978)
【非特許文献9】Delphinら,Anal. Chem.50(7): 843-848(1978)
【非特許文献10】Hayashitaら,Anal. Chem.62:2283-2287(1990)
【非特許文献11】Shiraiら,Journal of Polymer Science A: Polymer Chemistry 28: 2563-2567(1990)
【非特許文献12】Hayashitaら,Anal. Chem.63: 1844-1847(1991)
【非特許文献13】Hayashita及びBartsch,Anal. Chem.63:1847-1850(1991)
【非特許文献14】Okadaら,Anal. Chem.66:1654-1657(1994)
【非特許文献15】Laubliら,Journal of Chromatography A 706:103-107(1995))
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、新規な二官能陽イオン交換クロマトグラフィー組成物が形成され、これは異なる陽イオンの混合物から陽イオンを分離する増進された能力を可能にし、特に通常のスルホネート、カルボキシレートまたはホスホネートをベースとするクロマトグラフィーカラムからほぼ同時に溶離する陽イオンの分離を増進し、かつ/または大過剰の濃度の別の異なる陽イオン中の痕跡量の一種の陽イオンの存在を検出するのに用途がある。更に特別には、本発明は(1)通常の非クラウンエーテル陽イオン交換基、例えば、スルホネート、カルボキシレートまたはホスホネート並びに(2)少なくとも一種の特定の陽イオン種と錯体を生成するクラウンエーテル官能基の両方を独立に結合した二官能固定相を使用することによりカラムからのその種の溶離が遅延されるようにその陽イオン種の通常の溶離プロフィールがシフトされ、それにより増進された陽イオン分離を与えるという新規な知見に少なくとも一部基いている。それ故、本発明はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、アミン等を含む多種の陽イオン種に関する特異な分離特性を与える新規な二官能固定相及びその使用方法を提供する。
【0010】
これに関して、本発明の一つの局面は
(a)合成樹脂担体粒子、
(b)前記合成樹脂担体粒子に結合されたクラウンエーテル官能基(前記クラウンエーテル官能基はそれと接触する溶離剤中に存在する少なくとも一種の陽イオンと錯体を生成することができ、それにより二官能陽イオン交換組成物からの前記の少なくとも一種の陽イオンの溶離を遅延する)、及び
(c)前記合成樹脂担体粒子に結合された非クラウンエーテル陽イオン交換官能基(前記非クラウンエーテル陽イオン交換官能基は前記溶離剤中に存在する陽イオンと相互作用することができる)
を含む陽イオン交換クロマトグラフィー用の二官能陽イオン交換組成物を提供する。好ましい実施態様において、非クラウンエーテル陽イオン交換官能基はスルホネート基、カルボキシレート基もしくはホスホネート基またはこれらの混合物であり、かつ/または担体粒子に結合されたクラウンエーテル基は通常少なくとも一種の陽イオンに対し異なる錯生成アフィニティーを有する2種以上の異なるクラウンエーテルを含む。クラウンエーテル官能基は約1個から約20個の原子の長さであってもよいリンカー鎖(そのリンカー鎖の原子は未置換または好ましくはアルキル基、アルコキシル基、ヒドロキシアルキル基もしくはヒドロキシル基で置換されている炭素原子、酸素原子または硫黄原子であってもよい)により合成樹脂担体粒子に共有結合されてもよい。
【0011】
本発明の別の局面は反応性アルケニル基(その反応性アルケニル基はクラウンエーテルを合成樹脂担体粒子に共有結合するための反応性部位を与える)で終端する約1個から約20個の原子の長さのリンカー鎖を含むクラウンエーテル分子を提供する。好ましい実施態様において、クラウンエーテル分子に結合されたリンカー鎖は約2個から約20個の原子の長さであり、かつ/または末端アルケニル基はビニル基である。
本発明の更に別の局面は陽イオン交換クロマトグラフィー用の上記二官能陽イオン交換組成物を含むクロマトグラフィーカラムを提供する。
【0012】
本発明の更に別の局面は少なくとも第一陽イオン及び第二陽イオンを含む混合物中で第一陽イオンを第二の異なる陽イオンから分離する方法を提供し、その方法は上記二官能陽イオン交換組成物を含むクロマトグラフィーカラムを陽イオンの混合物と接触させることを含む。記載された方法において、固相に結合されたクラウンエーテル官能基は第一陽イオンと錯体を生成することができ、それにより第二陽イオンの溶離に対しカラムからのその溶離を遅延し、それにより2種の陽イオンの有効な分離を与える。好ましい実施態様において、その方法は大過剰の濃度の別の陽イオン、好ましくは夫々NH4+及びNa+から痕跡量の一種の陽イオンを分離するのに使用される。
本発明のその他の局面は本明細書を読むと明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
A.二官能陽イオン交換クロマトグラフィー組成物
本発明の二官能陽イオン交換組成物は合成樹脂担体粒子を含み、これらの粒子に(1)それらと接触する溶離剤中に存在する少なくとも一種の陽イオンと錯体を生成することができ、それにより組成物からの前記の少なくとも一種の陽イオンの溶離を遅延するクラウンエーテル官能基、及び(2)また溶離剤中に存在する陽イオンと相互作用することができる非クラウンエーテル陽イオン交換官能基が結合されている。クラウンエーテル官能基及び非クラウンエーテル官能基は互いに独立であり、独立の様式でクロマトグラフィー組成物の一部とされていてもよい。これらの陽イオン交換組成物は、それらがクラウンエーテル陽イオン交換官能基及び非クラウンエーテル陽イオン交換官能基の両方を有する点で“二官能”である。本明細書に使用される“一官能”は陽イオン交換組成物が非クラウンエーテル官能基、例えば、スルホネート、カルボキシレート、ホスホネートまたはこれらの混合物のみを使用することを意味する。
【0014】
現在記載される組成物の合成樹脂担体粒子はその性質が有機または無機であってもよく、以下に記載されるクラウンエーテル陽イオン交換官能基及び非クラウンエーテル陽イオン交換官能基の結合を支持するあらゆる好適な不溶性クロマトグラフィー材料から形成されてもよい。例えば、合成ポリマーイオン交換樹脂、例えば、ポリ(フェノール−ホルムアルデヒド)、ポリアクリルもしくはポリメタクリルの酸もしくはニトリル、アミン−エピクロロヒドリンコポリマー、ポリエチレンもしくはポリプロピレンへのスチレンのグラフトポリマー、ポリ(2−クロロメチル−1,3−ブタジエン)、ポリ(ビニル芳香族)樹脂、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンもしくはビニルピリジン、メタクリル酸の相当するエステル、スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、及び同様の不飽和モノマー、モノビニリデン環を含む窒素複素環化合物を含むモノビニリデンモノマーから誘導された樹脂、上記モノマーのコポリマー、シリカ並びにC18誘導体化シリカが全て好適である。
【0015】
本発明に使用される合成樹脂担体粒子のサイズ範囲は典型的には5-20μであるが、それよりもかなり小さいまたは大きい粒子がまた使用されてもよい。粒子は所望される特別な用途に応じて多孔性または非多孔性であってもよい。
本発明の合成樹脂担体粒子は、例えば、それが不溶性である水性媒体中のモノマーの液滴の懸濁を伴う公知の懸濁重合技術により形成し得る。適当な条件下でモノマーが重合するであろう。これはモノマーを懸濁媒体中で添加剤と混合することにより行い得る。この媒体が攪拌される時、モノマーが液滴に分散し、重合が完結するまで攪拌が続く。使用される合成樹脂は、特にスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーを含む、当業界で公知であるマクロ多孔性の型のものであることが好ましい。コポリマーは、例えば、Ikadaら,Journal of Polymer Science 12:1829-1839(1974)の方法に従ってまたはMeitznerらの米国特許第4,382,124号に記載されたようにして調製し得る。合成樹脂担体粒子の合成に関するその他の技術が米国特許第3,915,642号、同第3,918,906号、同第3,920,398号、同第3,925,019号及びダウ・ケミカル社(ミッドランド、ミシガン)により発行されたモノグラフ“Dowex:Ion Exchange”第三編,(1964)に見られる。
【0016】
合成樹脂担体粒子は架橋ポリマーまたはコポリマー、例えば、約0重量%〜約100重量%のジビニルベンゼンモノマーを含むスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー(これはベンゾイルペルオキシドの如き触媒の存在下で重合する)のビーズを含むことが好ましい。スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーは約25重量%〜約80重量%のジビニルベンゼンモノマーを含むことが更に好ましい。スチレンをベースとするポリマーの調製、構造及び形態の詳細な総説がGuyot及びBartholin,Prog.Polym.Sci.8:277-332(1982)により示される。
“非クラウンエーテル陽イオン交換官能基”は本明細書に記載された二官能陽イオン交換組成物の合成樹脂担体粒子に結合される。たいていの場合、ここに使用される非クラウンエーテル陽イオン交換官能基は、陽イオン交換クロマトグラフィーの分野で公知であり、普通に使用される官能基、例えば、スルホネート基、カルボキシレート基またはホスホネート基である。上記非クラウンエーテル陽イオン交換官能基の混合物を使用する陽イオン交換樹脂がまた当業界で知られており、現在記載される二官能陽イオン交換組成物に使用されるであろう。非クラウンエーテル陽イオン交換官能基の混合物が使用される場合、このような官能基のあらゆる混合物が所望の用途に応じて使用されてもよい。しかしながら、本発明の好ましい実施態様において、使用される混合物はカルボキシレート基及びホスホネート基の両方の混合物である。合成樹脂担体粒子(以下を参照のこと)に結合された時、非クラウンエーテル陽イオン交換官能基はそれと接触する溶離剤中に存在する陽イオンと相互作用することができる。このような非クラウンエーテル陽イオン交換官能基を含む固定相の例として、例えば、イオンパックCS3、イオンパックCS10、イオンパックCS12、イオンパックCS12A、イオンパックCG12A、イオンパックCS14、イオンパック・ファースト・カチオンI及びII、オムニパックPCX-100(全てダイオネックス・コーポレーション(サニイベール、CA)から入手し得る)及びKollaら,Chromatographia 23:465(1987)により記載されたカルボキシレート陽イオン交換官能基を含むシリカをベースとするポリマー被覆固定相が挙げられる。
【0017】
また、クラウンエーテル官能基が本明細書に記載された二官能陽イオン交換組成物の合成樹脂担体粒子に結合される。本明細書に定義された“クラウンエーテル官能基”はそれと接触する溶離剤中に存在する少なくとも一種の陽イオンと錯体を生成することができ、それにより二官能陽イオン交換組成物からの錯生成された陽イオンの溶離を遅延する。多くの異なるクラウンエーテルが当業界で知られており、これらの全てが種々の異なる用途について本発明に使用され、それらの構造、合成の方法及び陽イオン錯生成特性が良く実証されていた(Blasiusらの上記文献(1978)、Delphinらの上記文献(1978)、Lambらの上記文献(1989)、Hayashitaらの上記文献(1990)、Shiraiらの上記文献(1990)、Hayashitaらの上記文献(1991)、Hayashita及びBartschの上記文献(1991)、Hiraokaの上記文献(1992)、Buschmannらの上記文献(1994)、Okadaらの上記文献(1994)及びLaubliらの上記文献(1995))。例えば、本発明に使用されるクラウンエーテルとして、9−クラウン−3、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、21−クラウン−7、24−クラウン−8、27−クラウン−9、30−クラウン−10並びに一つ以上の置換基(これらは芳香族置換基、例えば、ベンゾ−またはジベンゾ−クラウンエーテル、ヘテロ芳香族、特にピリジンの誘導体、酸素、硫黄もしくは窒素を含む複素環非芳香族環式環、例えば、テトラヒドロフラン、ピペリジン及びピロリジン、脂環式置換基、飽和炭素環、例えば、シクロペンタン及びシクロヘキサン、脂肪族置換基等である)を有するクラウンエーテル分子が挙げられる(本発明の限定ではない)(Christensenら,Chem.Rev.74:351(1974)、Lindoy,Chem.Soc.Rev.4:421(1975)、Bradshawら,J.Heterocycl.Chem.11:649(1974)、Christensenら,Science 174:459(1971)及びPedersenら,Angew.Chem.int.Ed.Engl.11:16(1972)を参照のこと)。好ましい実施態様において、使用されるクラウンエーテルは18−クラウン−6である。このようなクラウンエーテルは市販されており、または当業界で公知である技術を使用して合成されてもよい。
【0018】
また、クラウンエーテル巨大環式環構造中の酸素原子の一つ以上が窒素(Buschmannらの上記文献(1994))、硫黄(Buschmannらの上記文献(1994))、リン(Parlesら,J.Amer.Chem.Soc.92:3500(1970))または-CH2(Richmanら,J.Amer.Chem.Soc.96:2268(1974)及びTimkoら,J.Amer.Chem.Soc.96:7097(1974))により置換されていてもよく、かつ/または巨大環式構造の炭素原子が必要によりアルキル基、アルコキシ基、カルボキシ基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはヒドロキシル基により置換されていてもよい。これらの誘導体化クラウンエーテル分子の全ての使用が本発明により包含される。
現在記載される二官能陽イオン交換組成物中に使用されるクラウンエーテルはそれと接触する溶離剤中に存在する少なくとも一種の陽イオン種と錯体を生成することができるであろう。通常、使用されるクラウンエーテルは約1〜3種の陽イオン種、好ましくは約1〜2種の異なる陽イオン種、更に好ましくは唯一の陽イオン種との錯生成について選択性を示すであろう。クラウンエーテルが唯一の陽イオン種と選択的に錯生成する場合、その種は通常K+、Na+、Li+、またはNH4+である。使用される一種以上のクラウンエーテル分子と錯生成しない陽イオンについて、これらの陽イオンの溶離プロフィールは二官能組成物中に使用される非クラウンエーテル陽イオン交換基の型にのみ依存する。しかしながら、使用される一種以上のクラウンエーテルと錯体を生成するこれらの陽イオンの溶離はその他の陽イオンに対し遅延される。このようなものとして、いずれかの特別な陽イオン種に対するカラムの選択性は関係する既知の選択性を有する適当なクラウンエーテル分子を使用することにより最適化し得る。上記のように、広範囲の異なるクラウンエーテル分子の錯生成選択性が良く実証されていた。
【0019】
或る用途について、本発明の二官能陽イオン交換組成物は2種以上の異なるクラウンエーテル官能基を含んでもよく、そのクラウンエーテル官能基の夫々が同じまたは異なる陽イオン錯生成特異性を有する。換言すれば、2種以上の異なるクラウンエーテル官能基が二官能陽イオン交換組成物に使用される場合、それらは特別な陽イオンに対する同じ錯生成アフィニティーを有してもよく、または少なくとも一種の陽イオンとの錯生成に関して異なるアフィニティーを有してもよい。通常、約1〜3種の異なるクラウンエーテル官能基、好ましくは約1〜2種の異なるクラウンエーテル官能基、更に好ましくは唯一のクラウンエーテル官能基が二官能陽イオン交換組成物に使用される。
【0020】
クラウンエーテル官能基を合成樹脂担体粒子に結合するのに利用できるリンカーがクラウンエーテル官能基に結合される。ここに使用されるリンカー鎖は合成樹脂担体粒子へのクラウンエーテルの共有結合のための潜在的な部位として利用できる末端反応性アルケニル基を有する長さ約1原子から約20原子までの直鎖(分岐を含まない)を含む。このようなものとして、合成樹脂担体粒子へのそれらの結合の前に、本発明のクラウンエーテル化合物は下記の構造を有する。
CE-----L-----RA
(式中、“CE”は上記のクラウンエーテル分子を表し、“L”はリンカー鎖を表し、かつ“RA”は末端反応性アルケニル基、好ましくはビニル基を表す)
リンカー鎖は関係する陽イオンと錯生成するクラウンエーテルの能力に有意に影響しない部位でクラウンエーテルに結合されてもよい。上記のように、リンカー鎖“L”の真っ直ぐな主鎖は長さ約1〜約20原子、通常長さ約2〜約20原子、更に通常長さ約3〜約15原子、好ましくは長さ約4〜約10原子、更に好ましくは長さ約4〜約7原子、最も好ましくは長さ約5原子である。リンカー鎖は直鎖または分岐、好ましくは直鎖であってもよく、また飽和もしくは不飽和炭素原子、ヘテロ原子、例えば、酸素原子、窒素原子もしくは硫黄原子及び/または芳香族基を含んでいてもよい。リンカー鎖は飽和もしくは不飽和炭素原子、更に好ましくは飽和炭素原子を含むことが好ましい。リンカー鎖が分岐している場合、真っ直ぐなリンカー主鎖は依然として長さ約1〜約20原子であり、分岐リンカー基は通常合計で約40以下の炭素原子、好ましくは合計で約30以下の炭素原子、更に好ましくは合計で約25以下の炭素原子を含むであろう。分岐はそれがルーチン実験により測定し得るカラム性能に有意に悪影響しない場合にリンカー鎖中のいずれかの原子の位置で生じてもよい。
【0021】
上記のように、リンカー鎖“L”は炭素原子またはヘテロ原子、例えば、酸素もしくは硫黄を含んでもよい。通常、リンカー基は0〜約3のヘテロ原子、更に通常0〜2、好ましくは0〜1、更に好ましくは0個のヘテロ原子を含むであろう。ヘテロ原子はそれらが組成物の陽イオン分離特性に有意な悪影響を有しない位置でリンカー鎖中に位置されてもよい。ヘテロ原子がリンカー鎖中に有効に位置される場所の決定は当業者の技能レベル内にある。
リンカー鎖“L”の一つ以上の原子はまた独立にアルキル置換、アルコキシル置換、ヒドロキシアルキル置換またはヒドロキシル置換されていてもよい。このような置換は通常の合成技術を使用してリンカー鎖のいずれかの原子で都合良く行われてもよい。たいていの場合、アルキル置換基、アルコキシル置換基及びヒドロキシアルキル置換基は約10個未満の炭素原子、通常約6個未満の炭素原子、更に通常約4個未満の炭素原子、好ましくは約3個未満の炭素原子、更に好ましくは1個の炭素原子を有する。
リンカー鎖が共有結合されるクラウンエーテル官能基の調製は当業者の技能レベル内にある。例えば、Ikedaら,J.Org.Chem.45:5355(1980)及びMcDanielら,J.Heterocycl.Chem.26:413(1989)は種々の異なる誘導体化クラウンエーテル分子の既知の調製方法を記載している。
【0022】
非クラウンエーテル陽イオン交換官能基及びクラウンエーテル官能基は当業界で知られている方法により合成樹脂担体粒子に結合し得る。いずれかの官能基の型が最初に合成固定相に結合され、続いて官能基のその他の型の結合が行われてもよく、または官能基の異なる型が同時に固定相に結合されてもよい。
上記非クラウンエーテル陽イオン交換官能基及びクラウンエーテル交換官能基は種々の手段により合成樹脂担体粒子に“結合”されてもよい。例えば、ここに使用される官能基は共有結合されてもよく、またはAfeyanらに発行された米国特許第5,503,933号に記載された方法を使用することにより合成樹脂担体粒子の表面にグラフトされてもよい。詳しくは、Afeyanらにより記載された方法では、固体担体に結合される両方の分子及び固体担体それ自体が利用可能な不飽和基、例えば、反応性アルケニル基を有し、化合物が利用可能な不飽和基の間の遊離基反応により固体担体に共有結合されるようになる。ここに使用される非クラウンエーテル官能基及びクラウンエーテル官能基並びに合成樹脂担体粒子はこのような利用可能な不飽和基を有するので、記載された方法が使用されて官能基の二つの型を合成樹脂担体粒子に共有結合し得る(Jepsonら,Pure Appl.Chem.65:489(1993)を参照のこと)。
【0023】
クラウンエーテル官能基が非クラウンエーテル官能基の前に固体担体に結合される場合、非官能化固体担体へのクラウンエーテルの化学結合または吸着が使用し得る。例えば、クラウンエーテルをベースとするポリマー樹脂はジビニルベンゼンをクラウンエーテルビニルモノマーと共重合することにより生成し得る。ジビニルベンゼン架橋ビニルベンジルクロリドコポリマーは官能クラウンエーテルと反応させられて共有結合された固定相を与えることができる。クラウンエーテルを含む縮合ポリマーはギ酸中のホルムアルデヒドとジベンゾクラウン誘導体の縮合またはフェノール及びホルムアルデヒドとモノベンゾクラウンエーテルとの縮合により生成し得る。
【0024】
加えて、非クラウンエーテル官能基及びクラウンエーテル官能基は独立または同時にラテックスポリマーに混入されてもよく、これが米国特許第5,324,752号に記載されているように合成樹脂担体粒子の表面に付着される。詳しくは、米国特許第5,324,752号に記載されているように、ラテックスポリマーの調製は夫々の末端に利用可能なアルケニル基を有するジビニル架橋モノマー及び必要により別のモノアルケニルモノマーとの一種以上のモノマー(これらは非クラウンエーテル官能基またはクラウンエーテル官能基のいずれかまたは両方を含み、一つの末端に反応性アルケニル基を有する)の重合を伴う。その反応に添加される任意のモノアルケニルモノマーの量は最終ポリマー生成物中に存在する陽イオン交換部位の相対数を希釈または調節するための手段を与える。上記成分は水相中で重合されてコロイド粒子の懸濁液(これらは普通ラテックスと称される)を生成し、これらが順にラテックスポリマー及び固相の両方に不可逆に結合する官能部位を有する“分散剤”材料を介して固相に不可逆に結合され、それによりそれらの間に永久結合を形成する。重合反応は通常の乳化重合技術、例えば、好適な乳化剤の存在下の好適な溶媒中のモノマーの懸濁液の加熱及び攪拌により行われてもよい。また、重合は懸濁方法、塊状方法または溶液方法、続いてボールミル、ロッドミル等の如き機械手段による所望のサイズへの樹脂の粉砕により行われてもよい。
【0025】
架橋モノマー及び任意に添加されるモノアルケニル希釈モノマーは多くの異なる公知の合成反応により生成し得る。詳しくは、架橋モノマーは夫々の末端にアルケニル基を有する分子であり、その末端アルケニル基を分離する基は、例えば、芳香族または脂肪族であってもよく、また一つ以上のヘテロ原子、例えば、酸素または硫黄を有していてもよい。任意に添加されるモノマーは一つの末端アルケニル基を有し、スチレン、アクリレートまたはメタクリレートをベースとしていてもよい。本発明に使用される特別なジアルケニル架橋剤として、例えば、ジビニルベンゼン、ジエチレングリコールジメタクリレート及びエチレンメタクリレートまたはこれらの夫々のアクリレートが挙げられる。特別な任意に添加されるモノアルケニルモノマーとして、例えば、スチレン、メチルメタクリレート及び2−エトキシエチルメタクリレートまたはこれらの夫々のアクリレートが挙げられる。選ばれたモノマー成分の相対反応性は同様であることが好ましく、こうして最終ラテックスポリマー生成物中のモノマー単位の夫々のほぼ均一な分布を確実にする。
【0026】
上記のように調製されたラテックスポリマーはラテックスポリマー及び固体担体粒子の両方に不可逆的に結合する“分散剤”材料のブリッジを介して合成樹脂担体粒子の表面に“付着”されてもよく(それによりそれに“結合”され)、それによりその間にブリッジを形成する(米国特許第5,324,752号を参照のこと)。固体担体粒子及びラテックスポリマーに応じて、分散剤は重合に使用される水性媒体中の懸濁中に凝集を抑制または防止することができるあらゆる材料であってもよい。例えば、分散剤はメタクリル酸コポリマー、ポリマレエート、スルホン化ポリマー、ポリビニルピロリドンエステル、植物系ゴム、リグニン及びセルロース誘導体のいずれか一種から選ばれてもよい。好ましい実施態様において、分散剤材料はポリビニルアルコール、スルホン化リグニン、ポリビニルピロリジン、アラビアゴム、ゼラチン、マレイン酸−酢酸ビニルコポリマーまたはスチレン−無水マレイン酸コポリマーから生成し得る。通常、分散剤は水中約0.1重量%〜約25重量%の分散剤を含む。
【0027】
合成樹脂担体粒子への分散剤の不可逆結合は種々のメカニズムによる共有結合により生じ得る。一つのメカニズムは遊離基重合反応による共有結合によるものである。遊離基は典型的には生成される樹脂担体粒子ポリマー中で発生され、ポリマーの重合を持続するだけでなく、分岐、橋かけの新しい鎖の形成及び架橋を促進する。開始剤が樹脂担体粒子の重合工程に利用でき、これが重合反応を開始し、維持する。開始剤濃度が充分に高い場合、更に多くの遊離基部位が重合反応に消費されるよりも発生され、存在するその他の化学種、例えば、分散剤がそれらと反応し得る。こうして、分散剤が樹脂支持体粒子ポリマーに共有結合し得る。例えば、ポリビニルアルコール分散剤は、開始剤濃度が充分に高い場合に別のポリマーに共有結合されるようになることが示唆されていた(Ikadaら,Journal of PolymerScience 12:1829-1839(1974))。懸濁重合中の粒子形成の方法を研究する間に、ポリ塩化ビニルが分散剤に化学的にグラフトし得ることが観察された(Kirkら,Encyclopedia of Chemical Technology,第3編,23巻,888-890頁(1983))。
【0028】
樹脂担体粒子への分散剤の不可逆結合の第二の方法は永久の物理的からみ合いによるものであり得る。このメカニズムでは、比較的小さいポリマー、例えば、スルホン化リグニン分散剤またはポリビニルアルコール分散剤は、重合反応が起こる際に樹脂担体粒子ポリマーと永久にからみ合うようになり得る。
上記のように生成されたラテックスポリマーへの分散剤の不可逆結合は、例えば、前記のような共有結合、または静電力により生じ得る。例えば、合成樹脂担体粒子はスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーからつくられ、また分散剤はスルホン化リグニン及びアラビアゴム分散剤の混合物であってもよい。スルホン化リグニンは共有結合または永久からみ合いにより合成樹脂担体粒子に不可逆結合することができ、それによりラテックスポリマーが静電的に凝集し得る負に帯電された表面を与える。上記の特別な実施方法が米国特許第5,324,752号明細書に見られる。
【0029】
クラウンエーテル官能基はまた通常の官能化固体担体を酸塩化物で処理し、次いでその組成物をモノアザクラウンと反応させて安定なアミド共有結合を形成することにより通常の非クラウンエーテル官能基を既に結合した合成樹脂担体に結合し得る。また、ヒドロキシメチルクラウンはクロロメチルを含む樹脂を使用することによりエーテル形成により結合されてもよい。リンカー基を有するクラウンエーテルはまた末端シリコン含有官能基によりシリカ表面に結合されてもよい。
固体担体に結合されたクラウンエーテル官能基の数と較べた非クラウンエーテル陽イオン交換官能基の数は所望される用途に応じて大いに変化し得る。通常、固相に結合された非クラウンエーテル陽イオン交換官能基の数はそれに結合されたクラウンエーテル官能基の数の約35-65%の数、好ましくは約40-60%の数、更に好ましくは約45-55%の数である。
【0030】
非クラウンエーテル陽イオン交換官能基及びクラウンエーテル官能基を上記のように合成樹脂担体粒子に結合した後、官能化粒子は公知の方法を使用してクロマトグラフィーカラムに装填され、高性能陽イオン交換クロマトグラフィーに使用し得る。例えば、米国特許第4,351,909号明細書は、合成樹脂担体粒子へのラテックスポリマーの凝集または共有結合が行われ、その後にカラムがこれらの粒子で加圧装填されるクロマトグラフィーカラムの調製方法を開示している。一方では、クロマトグラフィーカラムが合成樹脂担体粒子で加圧装填され、続いてその後にラテックスポリマーがそれに凝集されてもよい。米国特許第4,438,047号及び同第4,351,909号明細書を参照のこと。
【0031】
B.二官能陽イオン交換組成物の使用
本発明の二官能陽イオン交換クロマトグラフィー組成物は主として陽イオン交換クロマトグラフィーに使用される溶離剤水溶液中の陽イオンの分離に有益である。これは種々の異なる適用を行う能力を与える。例えば、通常のスルホネート、カルボキシレート及び/またはホスホネートをベースとする陽イオン交換カラムを使用することにより飲料水中の大濃度のナトリウムの存在下の痕跡量のアンモニウムの存在を検出しようとする試みは困難であることが判明した。何とならば、大きいナトリウムピークはその直後に続く極めて小さいアンモニウムピークをしばしば不明瞭にするからである。しかしながら、アンモニウム陽イオンと特異的に錯生成するが、ナトリウム陽イオンと錯生成しないクラウンエーテル官能基を含む本発明の二官能陽イオン交換組成物を使用することにより、アンモニウムの溶離がナトリウムに対し遅延され、それにより有意に有効な分離及び小さいアンモニウムピークを検出する能力を与える。このようなものとして、現在記載される二官能組成物は大過剰の別の異なる陽イオンの存在下の痕跡量の一種の陽イオンの存在を検出するのに良く適している。これに関して、本明細書に記載された陽イオン交換樹脂は大過剰の第二の異なる陽イオンの存在下の第一陽イオンの存在を検出するのに有益である。通常、第二陽イオンは第一陽イオンより0〜4000倍大きい濃度、好ましくは第一陽イオンより約0〜2000倍大きい濃度、更に好ましくは第一陽イオンより約0〜500倍大きい濃度で存在する。
【0032】
更に、普通使用される陽イオン交換カラムは陽イオンの種々の混合物から陽イオンを分離するのに有益であるが、得られる分離はしばしば所望されるよりも小さい。何とならば、2種以上の異なる陽イオンがほぼ同時に溶離し得るからである。しかしながら、クラウンエーテル官能基が通常ほぼ同時に溶離する2種の陽イオンのうちの一種のみと錯生成するのに選択的である二官能陽イオン交換樹脂を使用することにより、有効かつ完全な分離が得られる。それ故、現在記載される二官能陽イオン交換組成物は両方の陽イオンを含む混合物中の第一陽イオンを第二陽イオンから分離する方法に容易に使用され、使用されるクラウンエーテル官能基は第二陽イオンではなく第一陽イオンのみを錯生成するのに選択的である。
本発明の更なる詳細が以下の非限定実施例に示される。
【実施例】
【0033】
実施例1−2−(オクタ−7−エニル)−18−クラウン6の調製
工程1.7−オクテニルヘキサエチレングリコール
カリウム金属(11.1g)を乾燥窒素雰囲気を保つ反応容器中で無水ジオキサン(200ml)に添加した。容器の内容物を攪拌し、約50℃に加熱した。次いでペンタエチレングリコール(137g、新たに蒸留した)を数回に分けて添加し、その間温度を約85℃以下に保った。カリウム金属を完全に溶解した後、混合物の攪拌を約1時間続け、次いで1,2−エポキシデセン49gを添加した。次いで反応混合物を80℃で12時間攪拌して放置した。次いで、反応を室温に冷却した後、混合物を濃HClでpH=2に慎重に酸性にし、固体を濾別した。濾液を蒸発させて粘稠な液体(203g)を得た。液体を真空で分別して、最初に過剰のペンタエチレングリコールを143-162℃/0.1mm Hgで回収し(71g)、続いてヘキサエチレングリコールの純粋なオクテニル誘導体(bp 210-218℃/0.05mm Hg、66g)を回収した。
【0034】
工程2.2−(7−オクテニル)−18−クラウン−6
乳鉢を使用して水酸化カリウム(34g)を粉末にし、無水ジオキサン(50ml)を含むフラスコに入れた。その水酸化物のスラリーを攪拌し、乾燥窒素の雰囲気中で60℃に加熱した。この温度で、無水ジオキサン(150ml)中のへキサエチレングリコールのオクテニル誘導体(32g)及びp−トルエンスルホニルクロリド(15.7g)の溶液を6時間の期間にわたって非常に遅く添加した。その反応混合物を12時間にわたって55-60℃で攪拌して放置し、次いで室温に平衡にした。次いで固体を濾別し、残っているジオキサンの全てを除去するまで濾液を蒸発させた。残渣(48g;褐色の粘稠な液体)を少量の二塩化メチレン(50ml)で希釈し、アルミナの短い床に通した。カラムをヘキサン(500ml)及び二塩化メチレン(500ml)で溶離した。合わせた溶離液を蒸発させて赤色の粘稠な液体37gを得た。この液体はガスクロマトグラフィーにより示されるように約60%の濃度の2−(オクタ−7−エニル)
−18−クラウン−6を含む。純粋なクラウンエーテルを真空下の分別及び約162-166℃/0.04mm Hgの沸点を有する生成物の回収により約25-50%の収率(約12g)で得ることができる。しかしながら、部分精製した粗生成物を蒸留しないで使用することができる。
【0035】
実施例2−2−(10−ウンデシレニルオキシメチル)−18−クラウン−6の調製
2−(10−ウンデシレニルオキシメチル)−18−クラウン−6の調製をWuら,Anal.Chem.62:968(1990)により実質的に記載されたようにして行うことができる。しかしながら、本合成の目的のために、その化合物を以下に記載されたように適合したManeckeら,Makromol.Chem.182:3017(1981)の方法により調製した。
無水アルゴンの雰囲気下のジオキサン(25ml、無水)中の水素化ナトリウム(60%の油分散液0.7g)の懸濁液に、ジオキサン(25ml、無水)中の2−ヒドロキシメチル−18−クラウン−6(1.0g)の溶液を添加した。得られる混合物を室温で75分間攪拌し、次いでジオキサン(10ml、無水)中の10−ウンデシレニルブロミド(1.6g)の溶液を添加した。攪拌を15時間続けた。次いでその反応混合物を水に注ぎ、希HClでpH=1に酸性にし、二塩化メチレンで抽出した。次いで合わせた抽出液を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。残っている溶媒を除去し、残渣を真空下で蒸発蒸留にかけた。ウンデシレニルオキシメチルクラウンを140-160℃/0.04mm Hgで回収した。収量-1.4g。
【0036】
実施例3−2−(4−ビニルベンジルオキシメチル)−18−クラウン−6の調製
2−(4−ビニルベンジルオキシメチル)−18−クラウン−6の調製を以下に記載されたように適合したManeckeら,Makromol.Chem.182:3017(1981)により実質的に記載されたようにして行った。ジオキサン(50ml)中の水素化ナトリウム(1.7g、油中60%の分散液)の無水アルゴン下に攪拌した懸濁液に、2−ヒドロキシメチル−18−クラウン−6(4.0g)を添加した。室温で45分後に、ジオキサン(10ml)中の4−ビニルベンジルクロリド(4.5g)の溶液を添加した。次いで得られる混合物を室温で15時間攪拌し、水に注ぎ、二塩化メチレンで抽出した。合わせた抽出液を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。残っている溶媒を除去し、シリカゲルによるクロマトグラフィーを使用して残渣を精製した。得られる誘導体化クラウンエーテルをメタノール−水酸化アンモニウム(25:1)混合物で溶離した。
収量5.5g。
【0037】
実施例4−2−アリルオキシメチル−18−クラウン−6の調製
2−アリルオキシメチル−18−クラウン−6の調製を以下に記載されたように適合したIkedaら,J.Org.Chem.45:5355(1980)により実質的に記載されたようにして行った。
工程I.アリルオキシメチルヘキサエチレングリコール
カリウム金属(4.3g)を無水ジオキサン(100ml)を含むフラスコに入れた。フラスコの内容物を無水アルゴンの雰囲気中で攪拌し、次いでペンタエチレングリコール(50.3g)を15分間にわたって数回に分けて少しずつ添加した。反応混合物の温度を徐々に約75℃にし、カリウムの全てを溶解するまで混合物を攪拌し、次いで1時間以上攪拌した。次いでアリルグリシジルエーテル(12.5g)を一度に添加し、得られる混合物を80-100℃で15時間攪拌した。反応の終了時に、その混合物を室温に冷却し、濃HClでpH=1に慎重に酸性にし、沈殿した固体を濾別した。濾液を蒸留フラスコに移し、溶媒を除去した。残渣を真空下で分別し、過剰のペンタエチレングリコール(bp 138-145℃/0.05mm Hg;33g)を回収し、続いて生成物(アリルオキシメチルヘキサエチレングリコール;bp 180-184℃/0.04mm Hg;18g)を回収した。
【0038】
工程II.2−アリルオキシメチル−18−クラウン−6
水酸化カリウムペレット(18.6g)を乳鉢中で充分に粉末にし、無水ジオキサン(90ml)とともに反応フラスコに入れた。無水アルゴンの雰囲気を維持し、60℃で激しく攪拌しながら、無水ジオキサン(125ml)中にp−トルエンスルホニルクロリド(9.9g)及びヘキサエチレングリコールのアリルオキシメチル誘導体(17.8g)を含む溶液を6時間にわたって滴下して添加した。完全な添加後に、反応混合物を60℃で15時間攪拌して放置した。次いで反応混合物を室温に冷却し、固体を濾別した。濾液を減圧で濃縮して粗生成物、褐色の液体(25g)を得た。次いでこの粗生成物を真空下に分別にかけてbp 122-131℃/0.02mm Hgを有するフラクションを回収した。収量7.0g。
【0039】
実施例5−2−(3−ブテニル)−18−クラウン−6の調製
この化合物をMcDanielら,J.Heterocycl.Chem.26:413(1989)に記載されたようにして調製し得るが、ここでの調製を以下に記載されるように適合されたIkedaら,J.Org.Chem.45:5355(1980)により実質的に記載されたようにして行った。
工程I.3−ブテニルヘキサエチレングリコール
カリウム金属(4.5g)を無水ジオキサン(150ml)を含むフラスコに入れた。フラスコの内容物を無水アルゴンの雰囲気中で攪拌し、次いでペンタエチレングリコール(60g)を15分間にわたって数回にわけて添加した。反応混合物の温度を徐々に約80℃にし、次いでカリウムの全てを溶解するまで混合物を攪拌し、次いで2時間以上攪拌した。1,2−エポキシヘキセン(12g)を一度に添加し、得られる混合物を80-100℃で15時間攪拌した。次いで混合物を室温に冷却し、濃HCLでpH=1に慎重に酸性にし、沈殿した固体を濾別した。次いで濾液を蒸留フラスコに移し、溶媒を除去した。残渣を真空下に分別し、過剰のペンタエチレングリコール(bp 138-145℃/0.05mmHg;33g)、続いて生成物(ブテニルヘキサエチレングリコール;bp 162-168℃/0.04mmHg;22g)を回収した。
【0040】
工程II.2−(3−ブテニル)−18−クラウン−6
水酸化カリウムペレット(26g)を乳鉢中で充分に粉末にし、無水ジオキサン(50ml)とともに反応フラスコに入れた。無水アルゴンの雰囲気を維持し、60℃で激しく攪拌しながら、無水ジオキサン(125ml)中にp−トルエンスルホニルクロリド(14.5g)及びヘキサエチレングリコールのブテニル誘導体(24.8g)を含む溶液を6時間にわたって滴下して添加した。次いで反応混合物を15時間にわたって60℃で攪拌して放置した。次いで反応混合物を室温に冷却し、固体を濾別した。濾液を減圧で濃縮して粗生成物、褐色の液体37gを得た。この粗生成物を真空下に分別にかけてbp 148-155℃/0.1mmHgを有するフラクションを回収した。収量13.5g。
【0041】
実施例6−通常のカラムvs二官能カラムによる陽イオン交換クロマトグラフィー
本発明の二官能陽イオン交換組成物の利点を通常の陽イオン交換カラムで得られたクロマトグラフィー結果に対する二官能カラムで得られたクロマトグラフィー結果の比較により実証した。詳しくは、図1は通常のカルボキシレート/ホスホネートグラフト固定相(イオンパックCS12A、ダイオネックス・コーポレーション、サニイベール、CA)を使用するアルカリ金属、アルカリ土類金属及びアンモニウムのクロマトグラフィー分離を示す。陽イオン混合物は下記の濃度で存在する下記の陽イオンを含んでいた:リチウム-0.5mg/L、ナトリウム-2.0mg/L、アンモニウム-2.5mg/L、カリウム-5.0mg/L、マグネシウム-2.5mg/L及びカルシウム-5.0mg/L。溶離剤は1.0ml/分の流量及び25μlの注入容積で22mN硫酸であった。
【0042】
図1に示されるように、通常の遺伝子交換カラムは15分未満の期間にわたって混合物中に存在する6種の異なる陽イオンの夫々を成功裏に分離した。しかしながら、混合物中に存在する異なる陽イオンを或る程度まで分離したが、リチウム、ナトリウム、アンモニウム及びカリウムは互いに非常に近くで溶離し、それにより分離が完全ではない可能性を生じた。ナトリウムピーク及びアンモニウムピークの分解能が所望された程ではなかったことに注目のこと。
【0043】
カリウムイオンと大きな程度まで錯生成するが、アンモニウムイオンと小さい程度に錯生成するクラウンエーテル官能基を含む本発明の二官能陽イオン交換組成物が異なる陽イオンの混合物からの陽イオン分離を選択的に増進することができるか否かを測定するために、18−クラウン−6官能基を上記カルボキシレート/ホスホネートをベースとする固定相に共有結合グラフトして二官能相を得た。下記の濃度を有する陽イオンの混合物を調製し、次いで二官能カラムに適用した:リチウム-1.0mg/L、ナトリウム-4.0mg/L、アンモニウム-10.0mg/L、カリウム-10.0mg/L、マグネシウム-5.0mg/L及びカルシウム-10.0mg/L。溶離剤は1.2ml/分の流量及び25μlの注入容積で10mN硫酸及び9%のアセトニトリルであった。このクロマトグラフィー分離の結果を図2に示す。
【0044】
図2に示されるように、リチウム陽イオン、ナトリウム陽イオン、マグネシウム陽イオン及びカルシウム陽イオンに関する溶離プロフィールは図1に示された通常の陽イオン交換カラムで得られた溶離プロフィールと非常に似ており、カラムに結合されたクラウンエーテル官能基がこれらの異なる陽イオンとの錯生成に特異的ではなかったという事実と一致した。しかしながら、対照的に、ナトリウムピークとアンモニウムピークの間の分解能が増進され、カリウム陽イオンの溶離が図1の通常のカラムのその溶離と較べて有意に遅延された。これらの結果はカリウム陽イオン及びアンモニウム陽イオンが二官能カラムに結合されたクラウンエーテル官能基と錯体を生成し、それによりアンモニウム及びカリウムの両方がカラムから溶離する速度に有意な遅延を生じるという概念と一致する。この遅延はナトリウムピーク及びアンモニウムピークの大きな分離を可能にしただけでなく、リチウム、ナトリウム及びアンモニウムからのカリウムの明らかな分離を可能にした。このようなものとして、二官能カラムは溶離プロフィールで一種の陽イオン(カリウム)をその他の近くに溶離する陽イオン(リチウム、ナトリウム及びアンモニウム)から離れて選択的に移動するのに成功し、それにより増進された分離特性を与えた。
更に、非クラウンエーテル陽イオン交換官能基は比較的水和されるので、それは予期しないことに近くのクラウンエーテル官能性の速度論を改良する。
【0045】
実施例7−過剰量の別の陽イオンの存在下の痕跡量の一種の陽イオンの検出
上記図2に使用された二官能陽イオン交換カラムを使用して、4000倍過剰のナトリウム陽イオン中の痕跡量のアンモニウム陽イオンの存在が検出し得るかどうかを測定した。二官能カラムに適用された陽イオン混合物は下記の濃度で下記の陽イオンを有していた:ナトリウム-100mg/L及びアンモニウム-0.025mg/L。溶離剤は1.2ml/分の流量及び25μlの注入容積で10mN硫酸及び9%のアセトニトリルであった。このクロマトグラフィー分離の結果を図3に示す。
図3に示された結果は、本発明の二官能陽イオン交換組成物を含むクロマトグラフィーカラムを使用することにより、混合物中に存在する痕跡量のアンモニウム陽イオンに相当するピークがピークの改良された分解能の結果として容易に検出し得たことを実証する。この分解能及び検出は、固定相が二官能ではなかった場合には可能ではないであろう。このようなものとして、現在記載される二官能陽イオン交換クロマトグラフィー組成物は少なくとも4000倍過剰の別の異なる陽イオンの存在下の痕跡量の特別な陽イオンの成功裏の検出を可能にする。
【0046】
実施例8−巨大多孔性ポリマー樹脂へのカルボキシレート官能基及びリンカーのグラフト及び陽イオン分離のための使用
無水マレイン酸0.36gをプロピレンカーボネート9.64gに溶解した。一旦溶解すると、エチルビニルエーテル0.36を添加し、反応混合物を良く混合した。次いで巨大多孔性(450m2/g、55%架橋)ポリマー樹脂2.4gを反応混合物に添加し、樹脂を良く分散させ、次いでバゾ52 0.06gを添加した。混合物を約5分間音波処理し、次いでオーブンに入れて52℃で約6時間混転した。次いで反応混合物をオーブンから除去し、ブフナーロート中で濾過し、別のアリコートの沸騰水及びアセトンで少なくとも3回の洗浄サイクルで洗浄した。樹脂を0.5M NaOH 200 mlに入れ、次いで水及び1M HClで連続して洗浄した。
上記通常の陽イオン交換樹脂をクロマトグラフィーカラム(4x250mm)に装填し、使用して1.0mL/分の流量で上記実施例6に記載したように2.2mN硫酸中でリチウム陽イオン、ナトリウム陽イオン、アンモニウム陽イオン、カリウム陽イオン、マグネシウム陽イオン及びカルシウム陽イオンの混合物を分離した。得られた分離プロフィールを図4に示す。図4に示されるように、通常の陽イオン交換カラムは陽イオンを分離することができたが、ナトリウム陽イオン、アンモニウム陽イオン及びカリウム陽イオンの分離は非常に不十分であった。
【0047】
実施例9−巨大多孔性ポリマー樹脂へのクラウンエーテル官能基及び非クラウンエーテルカルボキシレート官能基の両方並びにリンカーの同時グラフト及び陽イオン分離のための使用
無水マレイン酸0.36gをプロピレンカーボネート9.64gに溶解した。一旦溶解すると、エチルビニルエーテル0.36及び2−(3−ブテニル)−18−クラウン−6 0.41gを添加し、反応混合物を良く混合した。次いで巨大多孔性(450m2/g、55%架橋)ポリマー樹脂2.4gを反応混合物に添加し、樹脂を良く分散させ、次いでバゾ52 0.06gを添加した。混合物を約5分間音波処理し、次いでオーブンに入れて52℃で約6時間混転した。次いで反応混合物をオーブンから除去し、ブフナーロート中で濾過し、別のアリコートの沸騰水及びアセトンで少なくとも3回の洗浄サイクルで洗浄した。樹脂を0.5M NaOH 200mlに入れ、次いで水及び1M HClで連続して洗浄した。
上記二官能樹脂をクロマトグラフィーカラム(4x250 mm)に装填し、使用して、29分で溶離剤を22mN硫酸から13mN硫酸に変えた以外は上記実施例8に記載したように2.2mN硫酸中でリチウム陽イオン、ナトリウム陽イオン、アンモニウム陽イオン、カリウム陽イオン、マグネシウム陽イオン及びカルシウム陽イオンの混合物を分離した。得られた分離プロフィールを図5に示す。
図5に示されるように、二官能カラムは非常に有効な方法で陽イオンを分離することができた。図4に示された通常のカラムで得られた陽イオン分離と比較して、二官能カラムはナトリウム及びアンモニウムのかなり良好な分離を与えた。
更に、カリウムの溶離は有意に遅延され、それによりカリウムを最後に溶離させた。それ故、得られた分離は図4に示された通常の陽イオン交換カラムで得られた分離よりもかなり良好であった。
【0048】
実施例10−二官能組成物を得るためのグラフトされたカルボキシレート官能基及びリンカーを既に含む樹脂へのクラウンエーテル官能基のグラフト並びに陽イオン分離のための使用
上記実施例8で調製した陽イオン交換樹脂2.4gをプロピレンカーボネート19.3g中に分散させた。一旦分散すると、2−(3−ブテニル)−18−クラウン−6 0.41gを添加し、反応混合物を良く混合した。次いでバゾ52 0.06gを添加した。混合物を約5分間音波処理し、次いでオーブンに入れて52℃で約6時間混転した。次いで反応混合物をオーブンから除去し、ブフナーロート中で濾過し、別のアリコートの沸騰水及びアセトンで少なくとも3回の洗浄サイクルで洗浄した。樹脂を0.5M NaOH 200mlに入れ、次いで水及び1M HClで連続して洗浄した。
上記二官能樹脂をクロマトグラフィーカラム(4x250mm)に装填し、使用して、上記実施例8に記載されたようにして2.2mN硫酸中でリチウム陽イオン、ナトリウム陽イオン、アンモニウム陽イオン、カリウム陽イオン、マグネシウム陽イオン及びカルシウム陽イオンの混合物を分離した。得られた分離プロフィールを図6に示す。
【0049】
図6に示されるように、二官能カラムは非常に有効な方法で陽イオンを分離することができた。図4に示された通常の陽イオン交換カラムで得られた陽イオン分離と比較して、二官能カラムはナトリウム及びアンモニウムのかなり良好な分離を与えた。更に、カリウムの溶離は有意に遅延され、それによりカリウムをナトリウム及びアンモニウムの両方の後に良く溶離させた。それ故、得られた分離は図4に示された通常の陽イオン交換カラムで得られた分離よりもかなり良好であった。
以上の記載は本発明を実施するのに使用し得る特別な方法を詳述する。このような特別な方法を詳述したので、当業者は本発明の成果を使用する際に同じ情報に到達するのに別の信頼できる方法を創案する方法を充分に良く知るであろう。しかしながら、こうして、上記の詳細が明細書に明らかであるので、それは本発明の全範囲を限定するものと見なされるべきではない。むしろ、本発明の範囲は請求の範囲の合法的な構成のみにより決められるべきである。本明細書に引用された全ての文書は参考として明らかに含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】典型的なカルボキシレート/ホスホネートをベースとする陽イオン交換カラムによる種々の陽イオンの溶離プロフィール。通常のカルボキシレート/ホスホネートをベースとする陽イオン交換クロマトグラフィーカラムからのリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの混合物の溶離プロフィールが示される。ピーク番号は下記の陽イオンを表す:1−リチウム、2−ナトリウム、3−アンモニウム、4−カリウム、5−マグネシウム及び6−カルシウム。
【図2】本発明の二官能陽イオン交換カラムによる種々の陽イオンの溶離プロフィール。本発明の二官能陽イオン交換クロマトグラフィーカラムからのリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの混合物の溶離プロフィールが示される。ピーク番号は下記の陽イオンを表す:1−リチウム、2−ナトリウム、3−アンモニウム、4−マグネシウム、5−カルシウム及び6−カリウム。
【図3】本発明の二官能陽イオン交換カラムによる4000倍過剰のナトリウム陽イオンの存在下の痕跡量のアンモニウム陽イオンの検出。本発明の二官能陽イオン交換クロマトグラフィーカラムからのナトリウム陽イオン及びアンモニウム陽イオンの混合物の溶離プロフィールが示される。ピーク番号1はアンモニウムピークである。
【図4】通常の一官能カルボキシレートをベースとする陽イオン交換カラムによる種々の陽イオンの溶離プロフィール。通常の一官能カルボキシレートをベースとする陽イオン交換クロマトグラフィーカラムからのリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの混合物の溶離プロフィールが示される。ピーク番号は下記の陽イオンを表す:1−リチウム、2−ナトリウム、3−アンモニウム、4−カリウム、5−マグネシウム及び6−カルシウム。
【図5】本発明の二官能陽イオン交換カラムによる種々の陽イオンの溶離プロフィール。本発明の二官能陽イオン交換クロマトグラフィーカラムからのリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの混合物の溶離プロフィールが示される。ピーク番号は下記の陽イオンを表す:1−リチウム、2−ナトリウム、3−アンモニウム、4−マグネシウム、5−カルシウム及び6−カリウム。
【図6】本発明の二官能陽イオン交換カラムによる種々の陽イオンの溶離プロフィール。本発明の二官能陽イオン交換クロマトグラフィーカラムからのリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの混合物の溶離プロフィールが示される。ピーク番号は下記の陽イオンを表す:1−リチウム、2−ナトリウム、3−アンモニウム、4−カリウム、5−マグネシウム及び6−カルシウム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性アルケニル基で終端する長さ約1〜約20の原子のリンカー鎖を含むクラウンエーテルであって、前記反応性アルケニル基が前記クラウンエーテルを合成樹脂担体粒子に共有結合させるための反応性部位を与えることを特徴とするクラウンエーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−291038(P2008−291038A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166098(P2008−166098)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【分割の表示】特願平10−539747の分割
【原出願日】平成10年3月11日(1998.3.11)
【出願人】(591025358)ダイオネックス コーポレイション (38)
【Fターム(参考)】