説明

二官能性ポリアザ大環状キレート剤

式(I)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤(式中、可変部A、L、Q、Q、X、Y、Z、Z、m、nおよびrは、本明細書で定義するとおりである)。上記キレート剤と、90Y、111Liまたは177Luのイオン等の金属イオンとの錯体;生物学的担体に共有結合された前記錯体のコンジュゲート;および前記コンジュゲートを含有する医薬組成物も記述される。前記医薬組成物の投与を伴う哺乳動物の治療的処置方法も記述される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二官能性ポリアザ大環状(polyazamacrocyclic)キレート剤、それらのキレート剤と金属イオンとの錯体、およびそれらの錯体と生物学的担体とのコンジュゲートに関する。より具体的には、本発明は、ランタン系列の金属イオンと予想外に迅速な錯化反応速度(錯化キネティクス)を示す配位子構造に関する。結果として得られるキレート構造は、効率のよい迅速な金属イオン取り込みが望ましい特徴であるような核医学用途に役立つ。
【背景技術】
【0002】
画像診断および治療用放射性医薬品は現代医学において重要な役割を果たしている。現在の応用例で使用されている重要な放射性核種の多くはランタン系列に位置する金属である。この金属族は、診断用途にも治療用途にも利用することができる多様な核特性を有する。ほとんど全ての場合、これらの金属イオンは単塩の形態では本質的に有毒であり、それらを生体適合性にするには、有機キレート化合物(配位子)中に封鎖しなければならない。さらにまた、配位子アーキテクチャーは、生物学的ターゲティング分子に取り付けるための連結基を生み出すのに、極めて重要である。
【0003】
ランタノイド金属イオン用のキレート剤は、医学の進歩を一つの推進力として、長年にわたって活発な基礎および応用研究の対象となってきた。例えば、新しい診断モダリティとしての磁気共鳴映像法(MRI)の出現に伴って、画質を強化するために、常磁性金属に基づく造影剤が必要になったが、この用途にはランタン系列のガドリニウムが好ましい。結果として、MRI用にインビボ適用の厳しさにも耐え得る新しい配位子系の設計および合成は、指数関数的に増加してきた。同じように重要なのは、これらと同じ配位子系が、放射性医薬剤に役立つような極めて望ましい核特性を有するランタン系列の他のメンバー(153Sm、177Lu、166Ho、90Y)にも採用されているという事実である。類似する配位子が全てのランタノイドイオンに適応できるのは、ランタン系列に固有の極めて均一かつ予測可能な性質のせいである。
【0004】
ヒト使用が意図された全てのキレートにとって、決定的に重要な前提条件は、それらが体内で安定な状態を保つこと(金属の解離が起こらないこと)と、それらを適度に素早く調製できることである。後者の点は、同位体半減期が製剤プロセスにおいて決定的に重要な考慮事項であるような核用途には、より一層当てはまる。キレート安定性は、熱力学的不活性および速度論的不活性という観点で評価される。生物医学的用途にとって最も望ましいキレートは、最も高い熱力学的安定性を有するものである。しかしこれらの配位子系は通常、より長い反応時間を要求し、最終錯体を形成させるために余分なエネルギー投入が必要になる。
【0005】
MRIにも核医学にも用いられる最も一般的な配位子の一つは、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)であった。DTPAは、ランタン系列と熱力学的に安定な錯体を形成し、かつ適度に迅速な錯化の反応速度を示す、線状エチレンアミン系キレート剤である。最近は、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)に基づく大環状キレート剤が、DTPAと比較してランタノイドとの熱力学的安定性が改良されていることから、医学におけるその重要性を増しつつある。それにもかかわらず、DTPAとDOTAはどちらも、生物学的ターゲティングベクターに共有結合するために修飾され、現在、これらの二官能性キレート剤(BFCA)は、成長しつつある生体標的(biotargeted)放射性医薬品市場の礎石になっている。DTPA系二官能性キレート剤を使用する利点として知られているのは、錯化の反応速度がDOTAよりも速いことであり、モノクローナル抗体上に存在するBFCAの数が非常に少ないことおよび必然的に希薄な錯化環境を考えると、これは極めて重要な考慮事項になり得る。しかし、低レベルの金属がインビボで確かにDTPA標的コンジュゲートから解離することを示唆する一群の知見が増えつつあり、これは重大な考慮事項となり得る。逆に、このタイプの毒性問題は、DOTA系BFCAを使用することによって回避されるが、錯化の反応速度が遅いという問題に対処する必要が残る。
【0006】
DTPAの迅速な錯化反応速度とDOTAが示す優れた熱力学的インビボ安定性とを合わせ有した二官能性キレート剤(BFCA)を開発することは有益である。これらの望ましい特徴を有する新規BFCは、放射性医薬品産業において広く役立ち、迅速な錯化および長期安定性が必要条件であるような任意の用途において、まだ満たされていない需要に応じることになる。
【0007】
数多くのテトラアザ大環状配位子系が文献に報告され、関連DOTA型配位子に観察される特性と類似する錯化特性を有することが示されている。例えば米国特許第6,670,456号および同第5,403,572号には、ポリアザ二環式コア、そのポリアザ二環式コアの主鎖につながれた生体分子との結合を形成する能力を有する末端官能基を有する連結基、ならびにそのポリアザ二環式コアの窒素原子の一つを介してつながれた随意の官能化環状脂肪族または芳香族基(この基もまた、生体分子との結合を形成する能力を有する)を有する一般分子が、開示されている。これらの報文では、高い熱力学的および速度論的安定性が要求される生物学的用途にとってのゴールドスタンダードとして、DOTA型配位子系が詳述されている。今までDOTAの性能をしのぐ能力を有する配位子系の例は存在していなかった。
【発明の開示】
【0008】
本発明は二官能性ポリアザ大環状キレート剤、それらのキレート剤と金属イオンとの錯体、およびそれらの錯体と生物学的担体とのコンジュゲートに関する。より具体的には、本発明は、ランタン系列の金属イオンと予想外に迅速な錯化反応速度を示す配位子構造に関する。結果として得られるキレート構造は、効率のよい迅速な金属イオン取り込みが望ましい特徴であるような核医学用途に役立つ。
【0009】
本発明は、以下の式(I)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤または薬学的に許容できるその塩を提供する。
【化1】

(式中、
【化2】

各Qは、独立して、(CHRCORまたは(CHRPOである;
は、水素、(CHRCORまたは(CHRPOである;
各Rは、独立して、水素、ベンジルまたはC−Cアルキルである;
およびRは、独立して、H、C−Cアルキルまたは(C−Cアルキル)フェニルである;
各Rは、独立して、水素;C−Cアルキルまたは(C−Cアルキル)フェニルである;
Aは、CH、N、C−Br、C−Cl、C−SOH、C−OR、C−OR、N−R10、または
【化3】

である;
ZおよびZは、独立して、CH、N、C−SOH、N−R10、C−CH−ORまたはC−C(O)−R11である;
Eは、O、SまたはPである;
は、H、C−Cアルキル、ベンジル、または少なくとも一つのR12で置換されたベンジルである;
は、C−C16アルキルアミノである;
10は、C−C16アルキル、ベンジル、または少なくとも一つのR12で置換されたベンジルである;
11は、−O−(C−Cアルキル)、OHまたはNHR−である;
12は、H、NO、NH、イソチオシアナト、セミカルバジド、チオセミカルバジド、マレイミド、ブロモアセトアミドまたはカルボキシルである;
XおよびYは、それぞれ独立して水素であるか、隣接するXおよびYと一緒になって追加の炭素−炭素結合を形成してもよい;
nは、0または1である;
mは、0から10まで(両端を含む)の整数である;
pは、1または2である;
rは、0または1である;
wは、0または1である;
Lは、それが接続される炭素原子の一つに共有結合されて、その一水素原子と置き換わるリンカー/スペーサー基であり、前記リンカー/スペーサー基は以下の式によって表される。
【化4】

(式中、
sは、0または1の整数である;
tは、0から20まで(両端を含む)の整数である;
は、Hであるか、生物学的担体への共有結合を可能にする求電子性または求核性部分であるか、生物学的担体に取り付けることができる合成リンカーであるか、またはそれらの前駆体である (H or an electrophilic or nucleophilic moiety which allows for covalent attachment to a biological carrier, or synthetic linker which can be attached to a biological carrier, or precursor thereof);
Cycは、環状脂肪族部分、芳香族部分、脂肪族複素環式部分、または芳香族複素環式部分を表し、前記部分のそれぞれは、場合によっては、生物学的担体への結合を妨害しない一つ以上の基で置換される。))
【0010】
式(I)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤の例として、以下の式(II)〜(V)のキレート剤が挙げられる。
【化5A】

【化5B】

(式中、可変部M、R、L、X、Y、R、m、nおよびrは、上に定義したとおりであり、uは0、1、2、3、4または5である。)
【0011】
より具体的には、本発明は、以下の式(VI)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤を提供する。
【化6】

(式中、可変部A、Z、Z、L、X、Y、Q、Q、m、nおよびrは、上に定義したとおりである。)
【0012】
式(VI)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤の例として、以下の式(VIa)〜(VIf)のキレート剤が挙げられる。
【化7A】

【化7B】

(式中、可変部A、Z、Z、L、X、Y、Q、Q、m、nおよびrは、上に定義したとおりである。)
【0013】
本発明は、以下の式(VII)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤にも関する。
【化8】

(式中、可変部L、X、Y、Q、Q、m、nおよびrは、上に定義したとおりである。)
【0014】
式(VII)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤の例として、以下の式(VIIa)〜(VIIc)のキレート剤が挙げられる。
【化9】

(式中、可変部L、X、Y、Q、Q、m、nおよびrは、上に定義したとおりである。)
【0015】
本発明は、Qが(CHRCOR(式中、R、Rおよびpは、上に定義したとおりである)である上記式(VI)および(VII)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤にも関する。
【0016】
本発明はさらに、以下の式(VIII)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤を提供する。
【化10】

(式中、可変部L、X、Y、Q、R、m、nおよびrは、上に定義したとおりである。)
【0017】
式(VIII)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤の例として、以下の式(VIIIa)〜(VIIIc)のキレート剤が挙げられる。
【化11】

(式中、可変部L、X、Y、Q、R、m、nおよびrは、上に定義したとおりである。)
【0018】
本発明は、以下の式(IX)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤も提供する。
【化12】

(式中、可変部L、X、Y、R、m、nおよびrは、上に定義したとおりである。)
【0019】
式(IX)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤の例として、以下の式(IXa)〜(IXc)のキレート剤が挙げられる。
【化13】

(式中、可変部L、X、Y、R、m、nおよびrは、上に定義したとおりである。)
【0020】
本発明はさらに、以下の式(X)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤を提供する。
【化14】

(式中、可変部RおよびRは、上に定義したとおりであり、uは0、1、2、3、4または5である。)
【0021】
式(X)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤の例として、以下の式(Xa)〜(Xc)のキレート剤が挙げられる。
【化15】

(式中、可変部R、Rおよびuは、上に定義したとおりである。)
【0022】
本発明はさらに、以下の式(XI)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤を提供する。
【化16】

(式中、可変部RおよびRは、上に定義したとおりである。)
【0023】
式(XI)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤の例として、以下の式(XIa)〜(XIc)のキレート剤が挙げられる。
【化17】

(式中、可変部RおよびRは、上に定義したとおりである。)
【0024】
もう一つの態様において、本発明は、以下の式(XII)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤に関する。
【化18】

(式中、可変部L、X、Y、Q、Q、m、nおよびrは、上に定義したとおりである。)
【0025】
式(XII)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤の例として、以下の式(XIIa)〜(XIIc)のキレート剤が挙げられる。
【化19】

(式中、可変部L、X、Y、Q、Q、m、nおよびrは、上に定義したとおりである。)
【0026】
本発明は、Qが(CHRCORであり、R、Rおよびpが上に定義したとおりである上記式(XII)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤にも関する。
【0027】
本発明は、以下の式(XIII)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤も提供する。
【化20】

(式中、可変部L、X、Y、Q、R、m、nおよびrは、上に定義したとおりである。)
【0028】
式(XIII)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤の例として、以下の式(XIIIa)〜(XIIIc)のキレート剤が挙げられる。
【化21】

(式中、可変部L、X、Y、Q、R、m、nおよびrは、上に定義したとおりである。)
【0029】
本発明はさらに、以下の式(XIV)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤を提供する。
【化22】

(式中、可変部L、X、Y、R、m、nおよびrは、上に定義したとおりである。)
【0030】
式(XIV)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤の例として、以下の式(XIVa)〜(XIVc)のキレート剤が挙げられる。
【化23】

(式中、可変部L、X、Y、R、m、nおよびrは、上に定義したとおりである。)
【0031】
本発明は、以下の式(XV)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤も提供する。
【化24】

(式中、可変部RおよびRは上に定義したとおりであり、uは0、1、2、3、4または5である。)
【0032】
式(XV)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤の例として、以下の式(XVa)〜(XVc)のキレート剤が挙げられる。
【化25】

(式中、可変部R、Rおよびsは、上に定義したとおりである。)
【0033】
本発明はさらに、以下の式(XVI)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤を提供する。
【化26】

(式中、可変部RおよびRは、上に定義したとおりである。)
【0034】
式(XVI)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤の例として、以下の式(XVIa)〜(XVIc)のキレート剤が挙げられる。
【化27】

【化28】

(式中、可変部RおよびRは、上に定義したとおりである。)
【0035】
本発明は、RがNO、NH、イソチオシアナト、セミカルバジド、チオセミカルバジド、マレイミド、ブロモアセトアミドまたはカルボキシルである、上に定義した式(I)、(II)、(III)、(IV)、(IV)、(VI)、(VIa〜f)、(VII)、(VIIa〜c)、(VIII)、(VIIIa〜c)、(IX)、(IXa〜c)、(X)、(Xa〜c)、(XI)、(XIa〜c)、(XII)、(XIIa〜c)、(XIII)、(XIIIa〜c)、(XIV)、(XIVa〜c)、(XV)、(XVa〜c)、(XVI)、および(XVIa〜c)の二官能性ポリアザ大環状キレート剤にも関する。
【0036】
もう一つの態様において、本発明は、上に定義した式(I)、(II)、(III)、(IV)、(IV)、(VI)、(VIa〜f)、(VII)、(VIIa〜c)、(VIII)、(VIIIa〜c)、(IX)、(IXa〜c)、(X)、(Xa〜c)、(XI)、(XIa〜c)、(XII)、(XIIa〜c)、(XIII)、(XIIIa〜c)、(XIV)、(XIVa〜c)、(XV)、(XVa〜c)、(XVI)、および(XVIa〜c)の一つの二官能性ポリアザ大環状キレート剤と、La、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y、Pt、Cu、Re、Tc、Cr、Fe、Mg、MnおよびScからなる群より選択される安定金属または放射性金属のイオンとを含む錯体を提供する。
【0037】
もう一つの態様において、本発明は、上に定義した式(I)、(II)、(III)、(IV)、(IV)、(VI)、(VIa〜f)、(VII)、(VIIa〜c)、(VIII)、(VIIIa〜c)、(IX)、(IXa〜c)、(X)、(Xa〜c)、(XI)、(XIa〜c)、(XII)、(XIIa〜c)、(XIII)、(XIIIa〜c)、(XIV)、(XIVa〜c)、(XV)、(XVa〜c)、(XVI)、および(XVIa〜c)の一つの二官能性ポリアザ大環状キレート剤と、90Y、177Lu、111In、64Cu、67Cu、153Sm、153Gd、159Gd、166Ho、149Pm、175Yb、47Sc、142Pr、99mTc、188Re、186Re、67Ga、68Ga、89Zr、および212Biからなる群より選択される金属のイオンとを含む錯体を提供する。
【0038】
さらにもう一つの態様において、本発明は、タンパク質、抗体、抗体フラグメント、ホルモン、ペプチド、成長因子、抗原またはハプテンなどの生物学的担体に共有結合された上に定義した錯体の一つを含んでなるコンジュゲートを提供する。
【0039】
さらにもう一つの態様において、本発明は、タンパク質、抗体、抗体フラグメント、ホルモン、ペプチド、成長因子、抗原またはハプテンなどの生物学的担体に共有結合された上に定義した式(I)、(II)、(III)、(IV)、(IV)、(VI)、(VIa〜f)、(VII)、(VIIa〜c)、(VIII)、(VIIIa〜c)、(IX)、(IXa〜c)、(X)、(Xa〜c)、(XI)、(XIa〜c)、(XII)、(XIIa〜c)、(XIII)、(XIIIa〜c)、(XIV)、(XIVa〜c)、(XV)、(XVa〜c)、(XVI)、および(XVIa〜c)の一つの二官能性ポリアザ大環状キレート剤を含んでなるコンジュゲートを提供する。
【0040】
もう一つの態様において、本発明は、上に定義したコンジュゲートと薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0041】
もう一つの態様において、本発明は、癌を有する哺乳動物の治療的処置方法であって、上に定義した医薬組成物の治療有効量を前記哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
【0042】
本明細書のキレーター(chelator)は、金属イオン903+111In3+および177Lu3+への錯化に関して、2,2’,2’’,2’’’−(2−(4−ニトロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトライル)四酢酸[(±)−p−NO−Bz−DOTA]および2,2’−(6−(カルボキシ(2−メトキシ−5−ニトロフェニル)メチル)−3,6,9,15−テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−1(15),11,13−トリエン−3,9−ジイル)二酢酸[(±)−NPCTA]よりも、改善された反応速度を示すと共に、金属イオン903+111In3+および177Lu3+との錯化に関して、(±)−p−NO−Bz−DOTAとの比較で、類似する安定性またはより良好な安定性を示すので、毒性インビボ作用を避けるために迅速な錯化および高い安定性が極めて重要である治療的使用または診断的使用に、より適している。
【0043】
さらにまた、本明細書のキレーターは、米国特許第6,670,456号および同第5,403,572号に包括的に開示されているキレーターと比較して、そのポリアザ二環式コアの窒素原子の一つを介してつながれた生体分子との結合を形成する能力を有する官能化環状脂肪族または芳香族基(これはキレーターに錯化したイオンの安定性を低下させ得る)を含まない点で、選択に値する。
【0044】
本発明のこれらのおよび他の特徴は、添付の図面を参照してなされる以下の説明から、よりいっそう明白になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明は、二官能性ポリアザ大環状キレート剤、それらのキレート剤と金属イオンとの錯体、およびそれらの錯体と生物学的担体とのコンジュゲートに関する。より具体的には、本発明は、ランタン系列の金属イオンと予想外に迅速な錯化反応速度を示す配位子構造に関する。結果として得られるキレート構造は、効率のよい迅速な金属イオン取り込みが望ましい特徴であるような核医学用途に役立つ。
【0046】
本発明の原理が理解しやすくなるように、以下の説明では、図面に示す典型的実施形態に言及し、それらを説明するために特定の用語を使用する。しかしそれが本発明の範囲の限定を意図するものでないことは理解される。本明細書に例示する発明の特徴のいかなる改変およびさらなる変更も、本明細書に例示する発明の原理の他のいかなる応用も、本明細書を手にした当業者に思い浮かぶものは、本発明の範囲に包含されるとみなされるべきである。
【0047】
本明細書にいう「錯体」とは、金属イオンと錯化した本発明の化合物、例えば式(I)の錯体であって、少なくとも一つの金属原子がキレートまたは封鎖(sequester)されているものを指す。
【0048】
本発明の錯体は、当技術分野で周知の方法によって製造することができる。例えば、DwyerおよびMellor「Chelating Agents and Metal Chelates」(Academic Press (1964))の第7章を参照されたい。Kamekoら編「Synthetic Production and Utilization of Amino Acids」(John Wiley & Sons (1974))に記載されているアミノ酸の製造方法も参照されたい。錯体製造の一例では、ビシクロポリアザ大環状ホスホン酸をpH5〜7の水性条件下で常磁性金属イオンと反応させる。形成された錯体は化学結合によるものであり、安定な常磁性核種組成物(例えば配位子からの常磁性核種の解離に対して安定なもの)をもたらす。
【0049】
本発明の錯体は、少なくとも約1:1、約1:1から約3:1、より具体的には約1:1から約1.5:1の配位子対金属のモル比で、形成させ、投与することができる。錯化していない配位子は動物にとって有毒であったり、心停止または低カルシウム血症性痙攣を引き起こしたりする可能性があるので、大過剰の配位子は望ましくない。
【0050】
「コンジュゲート」とは、生物学的担体に共有結合された金属イオンキレートを指す。
【0051】
本明細書で使用する用語「生物学的担体」は、任意の生物学的ターゲティングベクター、例えばタンパク質、抗体、抗体フラグメント、ホルモン、ペプチド、成長因子、抗原、ハプテン、または本発明において特異的な生物学的ターゲット部位を認識する機能を果たす他の任意の担体を指す。抗体および抗体フラグメントとは、任意のポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、哺乳動物抗体、単鎖抗体、二量体抗体および三量体抗体、またはそれらの抗体フラグメントを指す。そのような生物学的担体は、官能化された錯体に取り付けると、取り付けられたイオンを特異的な標的組織に運ぶ役割を果たす。
【0052】
「二官能性キレート剤」という用語は、金属イオンをキレートする能力を有するキラント(chelant)部分と、そのキラント部分に共有結合され、生物学的担体(例えば、腫瘍細胞エピトープまたは腫瘍細胞抗原に対する特異性を有する、抗体または抗体フラグメントなどの分子)に共有結合するための手段としての機能を果たす能力を有する部分とを有する化合物を指す。そのような化合物は、例えば放射性金属イオンと錯化させ、特異的抗体に共有結合された場合、治療用途および診断用途にとって、極めて有用である。これらのタイプの錯体は、取り付けられた抗体の特異性によってターゲティングされる腫瘍細胞に、放射性金属を運ぶために用いられている(例えばMearsら,Anal.Biochem.142,68−74(1984);Krejcarekら,Biochem.And Biophys.Res.Comm.77,581−585(1977)を参照されたい)。
【0053】
本明細書に記載する二官能性キレート剤(式Iで表されるもの)は、金属イオンをキレートまたは封鎖して金属イオンキレート(本明細書では上に定義したように「錯体」ともいう)を形成させるために使用することができる。これらの錯体は、官能化部分(式IのRで表される部分)が存在するので、生物活性物質、例えばデキストラン、受容体に対して特異的親和性を有する分子に共有結合されるか、好ましくは抗体または抗体フラグメントに共有結合されることができる。したがって、本明細書に記載する錯体は、抗体もしくは抗体フラグメントに共有結合すること、または受容体に対して特異的親和性を有することができ、本明細書では「コンジュゲート」と呼ばれる。
【0054】
「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヘテロ抗体、またはそれらのフラグメントを指す。本発明で使用される抗体は、例えば癌、腫瘍、細菌、真菌、白血病、リンパ腫、免疫系の細胞が関与する自己免疫障害、除去されるべき正常細胞、例えば骨髄および前立腺組織、HIVを含むウイルス感染細胞、寄生虫、マイコプラズマ、分化抗原および他の細胞膜抗原、病原体表面抗原、毒素、酵素、アレルゲン、薬物および任意の生物活性分子などに対する抗体であることができる。抗体のいくつかの例は、HuM195(抗CD33)、CC−11、CC−46、CC−49、CC−49 F(ab’)、CC−83、CC−83 F(ab’)、およびB72.3、1116−NS−19−9(抗結腸直腸癌)、1116−NS−3d(抗CEA)、703D4(抗ヒト肺癌)、704A1(抗ヒト肺癌)およびB72.3である。ハイブリドーマ細胞株1116−NS−19−9、1116−NS−3d、703D4、704A1、CC49、CC83およびB72.3はAmerican Type Culture Collectionに寄託され、それぞれATCC HB 8059、ATCC CRL 8019、ATCC HB 8301、ATCC HB 8302、ATCC HB 9459、ATCC HB 9453およびATCC HB 8108という受託番号を有する。
【0055】
抗体フラグメントには、FabフラグメントおよびF(ab’)フラグメント、ならびに所望する1または複数のエピトープに対する特異性を有する抗体の任意の部分が包含される。
【0056】
「放射性金属キレート/抗体コンジュゲート」または「コンジュゲート」という用語を使用する場合、その「抗体」には完全な抗体および/または抗体フラグメント(その半合成変種または遺伝子組換え変種を含む)が包含されるものとする。そのような抗体は通常、高度に特異的な反応性を有する。
【0057】
本明細書に記載するコンジュゲートで使用し得る抗体または抗体フラグメントは、当技術分野で周知の技法によって製造することができる。高度に特異的なモノクローナル抗体は、当技術分野で周知のハイブリドーマ技法によって生産することができる。例えばKohlerおよびMilstein(Nature,256,495−497 (1975);およびEur.J.Immunol.,6,511−519(1976))を参照されたい。そのような抗体は通常、抗体標的コンジュゲート中で高度に特異的な反応性を有し、所望する任意の抗原またはハプテンに対する抗体を使用することができる。好ましくは、コンジュゲートに使用される抗体は、所望のエピトープに対して高い特異性を有するモノクローナル抗体またはそのフラグメントである。
【0058】
本明細書にいう「薬学的に許容できる塩」とは、動物(好ましくは哺乳動物)の治療または診断に役立つように十分に無毒である、式(I)の錯体またはコンジュゲートの任意の塩または塩の混合物を指す。したがってこれらの塩は本発明において有用である。有機源および無機源の両方から標準的反応によって形成されるそれらの塩の代表例として、例えば硫酸、塩酸、リン酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、パルミチン酸、コール酸、パルモ酸(palmoic acid)、粘液酸、グルタミン酸、グルコン酸、d−ショウノウ酸、グルタル酸、グリコール酸、フタル酸、酒石酸、ギ酸、ラウリン酸、ステアリン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ソルビン酸、ピクリン酸、安息香酸、ケイ皮酸および他の適切な酸が挙げられる。アンモニウムまたは1−デオキシ−1−(メチルアミノ)−D−グルシトール、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、および他の類似イオンなどといった有機源および無機源の両方から標準的反応によって形成される塩も包含される。特に好ましいのは、塩がカリウム、ナトリウム、またはアンモニウムである式(I)の錯体またはコンジュゲートの塩である。上記の塩の混合物も包含される。
【0059】
本発明は、そのための生理学的に許容できる担体、賦形剤またはビヒクルと共に使用される。そのような製剤を製造するための方法は周知である。製剤は懸濁液、注射可能な溶液、または他の適切な製剤の形態をとり得る。生理学的に許容できる懸濁媒を佐剤と共に、または佐剤を伴わずに使用することができる。
【0060】
診断または疾患の治療的処置には「有効量」の製剤が使用される。その用量は、疾患およびその動物の物理的パラメータ、例えば体重に依存して変動する。本発明の製剤を使ったインビトロ診断法も考えられる。
【0061】
本発明のキラントの一部については、他の使用法として、身体からの望ましくない金属(すなわち鉄)の除去、さまざまな目的でなされるポリマー支持体への取り付け(例えば診断剤として)、および選択抽出による金属イオンの除去を挙げることができる。
【0062】
式(I)の化合物の遊離酸は、例えばカルボキシレートがプロトン化される場合および/または窒素原子がプロトン化される場合(すなわちHCl塩が形成される場合)には、上記化合物がプロトン化された形態でも使用することができる。
【0063】
そのようにして形成された錯体は抗体またはそのフラグメントに取り付けられ(共有結合され)、治療および/または診断目的に使用することができる。錯体および/またはコンジュゲートは、インビボ使用またはインビトロ使用のために製剤化することができる。製剤化されたコンジュゲートの好ましい使用法は、動物(特にヒト)における疾患状態(例えば癌)の診断である。
【0064】
金属放射性核種を確保するために本発明のキレート剤(配位子)を使用する生体標的放射性医薬品は、二つの方法で製造することができる。1)前錯化(pre-complexation)−金属配位子錯体(キレート)をまず最初に製造してから、そのキレートを生体ターゲティング基(例えばモノクローナル抗体)に共有結合することができる;2)後錯化(post-complexation)−配位子と生体ターゲティング分子との共有結合コンジュゲートを第1段階で製造してから、金属放射性核種の導入および錯化を行うことができる。どちらの方法にも長所と短所がある。方法1は、錯化を容易にするために強制的条件を利用することができるという観点からは魅力的であるが、その後のターゲティングベクターへの錯体の取り付けには、病院では迅速に行うことが困難な、より精巧な化学変換が要求される。対照的に、方法2は、配位子とターゲティングベクターのコンジュゲーションに要求される、より複雑な化学を、放射性核種によって導入される時間的制約なしに、制御された環境下で行うことが可能になる点で望ましい。次に、錯化ステップは病院薬局において臨床技術者が現場で行い得るが、このステップが問題になる場合もある。というのも、配位子結合コンジュゲートの方が、迅速かつ完全な錯化に有利な厳しい条件に対して、はるかに高い感受性を有するからである。
【0065】
生体標的放射性医薬品を製造するためのこれら二つのアプローチのうち、放射性核種の迅速かつ完全な組み込みを容易にする適当な配位子および/または条件を考案できるのであれば、後錯化戦略が最も望ましいことは明らかである。後錯化アプローチ用の配位子設計に至る最も望ましい道は、サイクレンまたはサイクレン類似体などの大環状ポリアミンの有利な熱力学的属性に基づく。また、錯化への速度論的障壁を最小限に抑えることができる構造およびコンフォメーション成分を導入することもできる。例えば、その金属イオンが要求する必要なコンフォメーションへの配位子結合部位の事前組織化(pre-organization)を強化することができる分子アーキテクチャーは、より速い錯化反応速度をもたらすはずである。
【0066】
本明細書に記載する二官能性キレート剤(式Iで表されるもの)は、ランタン系列の金属と安定で不活性な錯体を形成するように設計される。錯化反応速度は、主鎖構造の剛性、配位供与原子の電子的特徴、および金属結合部位のコンフォメーション的接近可能性(conformational accessibility)を変化させることによって調整することができる。
【0067】
理論に拘束されることは望まないが、本発明に付随する速度論的利点は、金属の結合(ligating)要件に合致する好ましい分子構造(事前組織化)をもたらす構造修飾の関数である。このようにして、配位子−金属結合イベントは、苛酷な反応条件を必要とすることなく加速される。
【0068】
二官能性キレート剤に関して、迅速な錯化キネティクスを促す事前組織化された最適な配位子構造の生成は、連結基の賢明な配置による影響を著しく受ける。このように、連結基は、金属ドッキングプロセスの初期段階では金属結合部位から離れた位置をとり、その後、錯化によって誘導される二次的コンフォメーションをとって、そのコンフォメーションが可逆的解離経路から金属を効果的に遮蔽することになるように、工作することができる。連結基の位置配向(positional orientation)は、金属イオンの幾何学的要求を満たすために決定的に重要な配位供与原子およびそれらの並列する孤立電子対の電子的性質にも影響を及ぼす。本発明では、これまでに観察されたことがなく今までの研究では利用されたこともない劇的な相違を示す比較例を利用して、この点を検討する。
【0069】
本発明は、本発明のコンジュゲートと薬学的に許容できる担体とを含む製剤、特に薬学的に許容できる担体が液体である製剤も包含する。
【0070】
本発明は、癌を有する哺乳動物の治療的処置方法であって、前記哺乳動物に治療有効量の本発明の製剤を投与することを含む方法も対象とする。
【0071】
したがって本発明は、獣医学用およびヒト医学用の医薬製剤として提供される本発明のコンジュゲートを使って実施することができる。そのような医薬製剤は、活性剤(コンジュゲート)を、そのための生理学的に許容できる担体、賦形剤またはビヒクルと共に含む。そのような製剤を製造するための方法は周知である。担体は、製剤中の他の成分と適合し、その受容者にとって不適切なほど有害ではないという意味で、生理学的に許容することができなければならない。コンジュゲートは、上述のように治療有効量で、かつ所望の用量を達成するのに適した量で与えられる。
【0072】
本発明のキレート剤と適切な金属イオンとの錯体、およびそれらの錯体のコンジュゲートは、医用画像診断手法で使用することができる。例えば、Gd+3、Mn+2またはFe+3などの常磁性金属イオンを使って形成される本発明の錯体、およびこれらの錯体の対応するコンジュゲートは、磁気共鳴映像法(MRI)において造影剤として働くことができる。また、Tb3+、Eu3+、Sm3+またはDy3+などのランタノイド金属イオンを使って形成される本発明の錯体、およびこれらの錯体の対応するコンジュゲートは、蛍光イメージング手法に使用することができる。
【0073】
本発明は、そのための生理学的に許容できる担体、賦形剤またはビヒクルと共に使用することができる。製剤は、懸濁液、注射可能な溶液または他の適切な製剤の形態をとり得る。生理学的に許容できる懸濁媒は、佐剤と共に、または佐剤を伴わずに使用し得る。
【0074】
製剤には、非経口(皮下、筋肉内、腹腔内、および静脈内等)投与、経口投与、直腸投与、局所投与、経鼻投与、または眼投与に適した製剤が包含される。製剤は、薬学分野において周知である任意の方法によって製造することができる。そのような方法は、コンジュゲートをそのための担体、賦形剤またはビヒクルと混和するステップを含む。一般に、製剤は、コンジュゲートを液体担体、微粉末固形担体、またはその両方と均一かつ密接に混和した後、必要であれば、生成物を所望の製剤に付形することによって製造することができる。また、本発明の製剤は、希釈剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、表面活性剤、増粘剤、潤滑剤、保存剤などから選択される一つ以上の補助成分を、さらに含んでもよい。また、処置レジメンには非放射性担体による予備処置が含まれるかもしれない。
【0075】
本発明の注射可能組成物は懸濁液または溶液の形態をとり得る。適切な製剤の製造において、一般に、酸型よりも塩の方が水溶性が高いことはわかる。溶液型の場合は、錯体(または、それが望ましい場合は、別々の成分)を生理学的に許容できる担体に溶解する。そのような担体は、適切な溶媒、必要であればベンジルアルコールなどの保存剤、および緩衝剤を含む。有用な溶媒には、例えば水、水性アルコール、グリコール、およびリン酸エステルまたは炭酸エステルなどがある。そのような水性溶液は50体積%以下の有機溶媒を含有する。
【0076】
注射可能懸濁液は、担体として液状懸濁媒を(佐剤と共に、または佐剤を伴わずに)必要とする本発明の組成物である。懸濁媒としては、例えば水性ポリビニルピロリドン、植物油または高精製鉱油などの不活性油、ポリオール、または水性カルボキシメチルセルロースを挙げることができる。錯体を懸濁状態に保つために必要であるなら、適切な生理学的に許容できる佐剤を、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、およびアルギナートなどの増粘剤から選択することができる。多くの界面活性剤は、例えばレシチン、アルキルフェノール、ポリエチレンオキシド付加物、ナフタレンスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、およびポリオキシエチレンソルビタンエステルなどの懸濁化剤としても有用である。
【0077】
式Iによって表される本発明の12員大環状二官能性キラントの一般合成アプローチでは、主鎖置換を達成するために、12員テトラアザ大環状分子の形成に、官能化部分を使用する。米国特許第5,428,139号、同第5,480,990号、および同第5,739,294号に記載されているスキームに、これらの部分を代入することにより、式Iの官能化キラントに至るさまざまな合成系路を予見することができる。
【0078】
より具体的に述べると、式(XI)の化合物は、Stetterら(Stetter,H.;Frank,W.;Mertens,R.「Preparation and complexation of polyazacycloalkane−N−acetic acids」Tetrahedron (1981),37(4),767−72)またはAimeら(Aime,S.;Botta,M.;Crich,S.G.;Giovenzana,G.B.;Jommi,G.;Pagliarin,R.;Sisti,M.Inorg.Chem.1997,36,2992−3000)に記載されているPCTA(2,2’,2’’−(3,6,9,15−テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−1(15),11,13−トリエン−3,6,9−トリイル)三酢酸)に関するオリジナル合成手法の変法に基づいて合成することができ、これらの文献の開示は引用により組み込まれて本明細書の一部となる。
【0079】
式(XIb)の化合物を製造するために使用することができる方法の一例をスキーム1に示す。この方法では、DMF中で2,6−ビス(クロロメチル)ピリジン(XXIII)を(XXII)と共に環化して(XXIV)を製造した後、脱保護し、ブロモ酢酸を使って4−(4−ニトロベンジル)−3,6,9−トリトシル−3,6,9,15−テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−1(15),11,13−トリエン(XXIV)をアルキル化することにより、2,2’,2’’−(4−(4−ニトロベンジル)−3,6,9,15−テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−1(15),11,13−トリエン−3,6,9−トリイル)三酢酸(XXV)を得る。次に(XXV)のニトロ基の水素化を、10%パラジウム炭触媒を使って周囲圧で達成することにより、アニリン中間体2,2’,2’’−(4−(4−アミノベンジル)−3,6,9,15−テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−1(15),11,13−トリエン−3,6,9−トリイル)三酢酸(XXVI)を得る。アニリン化合物(XXVI)から反応性求電子性イソチオシアネート2,2’,2’’−(4−(4−イソチオシアナトベンジル)−3,6,9,15−テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−1(15),11,13−トリエン−3,6,9−トリイル)三酢酸(XXVII)への変換は、クロロホルム/水およびチオホスゲンにより、2相反応媒質を使って行われる。
【化29】

スキーム1.化合物(XXV)ならびにその求核性および求電子性誘導体を製造する合成方法
【0080】
中間体XXIIはスキーム2に示す合成アプローチに基づいて製造される。トシルクロリドおよびトリエチルアミンを使ってN−(2−アミノエチル)−3−(4−ニトロフェニル)プロパン−1,2−ジアミン(XX)を保護することにより、トリトシル化化合物4−メチル−N−(2−(4−メチルフェニルスルホンアミド)−3−(4−ニトロフェニル)プロピル)−N−(2−(4−メチルフェニルスルホンアミド)エチル)ベンゼンスルホンアミド(XXI)を得る。(XXI)をエタノール中のナトリウムエトキシドで脱プロトン化すると、化合物(XXI)の二ナトリウム塩である化合物(XXII)が生じる。化合物(XX)はCorsonらの方法(Corson,D.T.;Meares,C.F.Bioconjugate Chem.2000,11,292−299、この文献の開示は引用により組み込まれ本明細書の一部となる)に従って製造される。
【化30】

スキーム2.中間体(XXII)を製造する合成方法
【0081】
もう一つの例として、式(XVIb)の化合物は、Amorimら(Amorim,M.T.S.;Delgado,Rita;Frausto da Silva,J.J.R.;Candida,M.;Vaz,T.A.;Vilhena,M.Fernanda「Metal complexes of 1−oxa−4,7,10−triazacyclododecane−N,N’,N’’−triacetic acid」Cent.Quim.Estrut,Inst.Super.Tec,Lisbon,Port.Talanta (1988),35(9),741−5、この文献の開示は引用により組み込まれて本明細書の一部となる)に記載されているOXO−DO3A(2,2’,2’’−(1−オキサ−4,7,10−トリアザシクロドデカン−4,7,10−トリイル)三酢酸)に関するオリジナル合成手法の変法に基づいて合成することができる。
【0082】
式(XVIb)の化合物を製造するための方法の一例をスキーム3に示す。この方法では、DMF中で2,2’−オキシビス(エタン−2,1−ジイル)ビス(4−メチルベンゼンスルホネート)(XXVIII)を(XXII)と共に環化して5−(4−ニトロベンジル)−1−オキサ−4,7,10−トリアザシクロドデカン−4,7,10−トリイル トリス(4−メチルベンゼンスルホネート)(XXIX)を製造した後、脱保護し、ブロモ酢酸を使って(XXIX)をアルキル化することにより、2,2’,2’’−(5−(4−ニトロベンジル)−1−オキサ−4,7,10−トリアザシクロドデカン−4,7,10−トリイル)三酢酸(XXX)を得る。次に(XXX)のニトロ基の水素化を、10%パラジウム炭触媒を使って周囲圧で達成することにより、アニリン中間体2,2’,2’’−(5−(4−アミノベンジル)−1−オキサ−4,7,10−トリアザシクロドデカン−4,7,10−トリイル)三酢酸(XXXI)を得る。(XXXI)から反応性求電子性イソチオシアネート2,2’,2’’−(5−(4−イソチオシアナトベンジル)−1−オキサ−4,7,10−トリアザシクロドデカン−4,7,10−トリイル)三酢酸(XXXII)への変換は、クロロホルム/水およびチオホスゲンにより、2相反応媒質を使って行われる。
【化31】

スキーム3.化合物(XXX)ならびにその求核性および求電子性誘導体を製造する合成方法
【0083】
式(XIc)の化合物を製造するために使用することができる方法の一例をスキーム4に示す。この方法では、DMF中で2,6−ビス(クロロメチル)ピリジン(XXIII)を(XXXIII)と共に環化して5−(4−ニトロベンジル)−3,6,9−トリトシル−3,6,9,15−テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−1(15),11,13−トリエン(XXXIV)を製造した後、脱保護し、ブロモ酢酸を使って(XXXIV)をアルキル化することにより、2,2’,2’’−(5−(4−ニトロベンジル)−3,6,9,15−テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−1(15),11,13−トリエン−3,6,9−トリイル)三酢酸(XXXV)を得る。次に(XXXV)のニトロ基の水素化を、10%パラジウム炭触媒を使って周囲圧で達成することにより、アニリン中間体(XXXVI)を得る。アニリン2,2’,2’’−(5−(4−アミノベンジル)−3,6,9,15−テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−1(15),11,13−トリエン−3,6,9−トリイル)三酢酸(XXXVI)から反応性求電子性イソチオシアネート2,2’,2’’−(5−(4−イソチオシアナトベンジル)−3,6,9,15−テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−1(15),11,13−トリエン−3,6,9−トリイル)三酢酸(XXXVII)への変換は、クロロホルム/水およびチオホスゲンにより、2相反応媒質を使って行われる。
【化32】

スキーム4.化合物(XXXV)ならびにその求核性および求電子性誘導体を製造する合成方法
【0084】
中間体XXXIIIはスキーム5に示す合成アプローチに基づいて製造される。メチル 2−アミノ−3−(4−ニトロフェニル)プロパノエート塩酸塩をトリエチルアミンで処理することによって製造される化合物2−アミノ−3−(4−ニトロフェニル)プロピオン酸メチル(XXXVIII)を、2−ブロモ酢酸メチルおよびジイソプロピルエチルアミンと反応させることにより、2−(2−メトキシ−2−オキソエチルアミノ)−3−(4−ニトロフェニル)プロピオン酸メチル(XXXIX)を製造する。(XXXIX)をメタノール中のアンモニアで処理することにより、化合物2−(2−アミノ−2−オキソエチルアミノ)−3−(4−ニトロフェニル)プロパンアミド(IL)を製造する。(IL)をTHF中のBHで還元することにより、N2−(2−アミノエチル)−3−(4−ニトロフェニル)プロパン−1,2−ジアミン(ILI)を得る。(ILI)のアミノ基をトシルクロリドで保護することにより、4−メチル−N−(1−(4−メチルフェニルスルホンアミド)−3−(4−ニトロフェニル)プロパン−2−イル)−N−(2−(4−メチルフェニルスルホンアミド)エチル)ベンゼンスルホンアミド(ILII)を得る。(ILII)の末端アミノ基を脱保護すると、二ナトリウム塩(XXXIII)が形成される。
【化33】

スキーム5.中間体(XXXIII)を製造する合成方法
【0085】
式(XVIc)の化合物を製造するために使用することができる方法の一例をスキーム6に示す。この方法では、DMF中で2,2’−オキシビス(エタン−2,1−ジイル) ビス(4−メチルベンゼンスルホネート)(XXIII)を(XXXIII)と共に環化して6−(4−ニトロベンジル)−4,7,10−トリトシル−1−オキサ−4,7,10−トリアザシクロドデカン(ILIII)を製造した後、脱保護し、ブロモ酢酸を使って(ILIII)をアルキル化することにより、2,2’,2’’−(6−(4−ニトロベンジル)−1−オキサ−4,7,10−トリアザシクロドデカン−4,7,10−トリイル)三酢酸(ILIV)を得る。次に(ILIV)のニトロ基の水素化を、10%パラジウム炭触媒を使って周囲圧で達成することにより、アニリン中間体2,2’,2’’−(6−(4−アミノベンジル)−1−オキサ−4,7,10−トリアザシクロドデカン−4,7,10−トリイル)三酢酸(ILV)を得る。アニリン(ILV)から反応性求電子性イソチオシアネート2,2’,2’’−(6−(4−イソチオシアナトベンジル)−1−オキサ−4,7,10−トリアザシクロドデカン−4,7,10−トリイル)三酢酸(ILVI)への変換は、クロロホルム/水およびチオホスゲンにより、2相反応媒質を使って行われる。
【化34】

スキーム6.化合物(ILIV)ならびにその求核性および求電子性誘導体を製造する合成方法
【0086】
式(XIa)の化合物を製造するために使用することができる方法の一例をスキーム7に示す。化合物ピリジン−2,6−ジカルバルデヒド(ILVII)をモノ保護して、モノ−アセタール 6−(1,3−ジオキソラン−2−イル)ピコリンアルデヒド(ILVIII)を形成させる。(ILVIII)をグリニャール試薬(4−ニトロベンジル)マグネシウムブロミド(ILIX)と反応させて、アルコール 1−(6−(1,3−ジオキソラン−2−イル)ピリジン−2−イル)−2−(4−ニトロフェニル)エタノール(L)を製造する。アルコール(L)をHClで脱保護し、その結果生じたアルデヒドをNaBHで還元することにより、ジオール 1−(6−(ヒドロキシメチル)ピリジン−2−イル)−2−(4−ニトロフェニル)エタノール(LI)を製造する。(IL)を塩化チオニルで塩素化することにより、化合物2−(1−クロロ−2−(4−ニトロフェニル)エチル)−6−(クロロメチル)ピリジン(LII)を得る。(LII)を(LIII)と共に環化すると、生成物2−(4−ニトロベンジル)−3,6,9−トリトシル−3,6,9,15−テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−1(15),11,13−トリエン(LIV)が得られる。最後に、(LIV)を脱保護し、ブロモ酢酸でアルキル化することにより、化合物2,2’,2’’−(2−(4−ニトロベンジル)−3,6,9,15−テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−1(15),11,13−トリエン−3,6,9−トリイル)三酢酸(LV)を製造する。化合物(LV)のニトロ基は、上に概略を示した方法と同じ方法で、対応するアミノおよびイソチオシアネート誘導体に変換することができる。
【化35】

スキーム7.化合物(LV)を製造する合成方法
【0087】
式(XVIa)の化合物を製造するために使用することができる方法の一例をスキーム8に示す。化合物2,2’−オキシジアセトアルデヒド(LVI)をモノ保護して、モノアセタール 2−((1,3−ジオキソラン−2−イル)メトキシ)アセトアルデヒド(LVII)を形成させる。(LVII)をグリニャール試薬(4−ニトロベンジル)マグネシウムブロミド(ILIX)と反応させて、アルコール 1−((1,3−ジオキソラン−2−イル)メトキシ)−3−(4−ニトロフェニル)プロパン−2−オール(LVIII)を製造する。アルコール(LVIII)をHClで脱保護し、その結果生じたアルデヒドをNaBHで還元することにより、ジオール 1−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−(4−ニトロフェニル)プロパン−2−オール(LVIX)を製造する。(LVIX)を塩化チオニルで塩素化することにより、化合物1−(2−クロロ−3−(2−クロロエトキシ)プロピル)−4−ニトロベンゼン(LVX)を得る。(LVX)を(LIII)と共に環化すると、生成物3−(4−ニトロベンジル)−4,7,10−トリトシル−1−オキサ−4,7,10−トリアザシクロドデカン(LVXI)が得られる。最後に、(LVXI)を脱保護し、ブロモ酢酸でアルキル化することにより、化合物2,2’,2’’−(3−(4−ニトロベンジル)−1−オキサ−4,7,10−トリアザシクロドデカン−4,7,10−トリイル)三酢酸(LVXII)を製造する。化合物(LVXII)のニトロ基は、上に概略を示した方法と同じ方法で、対応するアミノおよびイソチオシアネート誘導体に変換することができる。
【化36】

スキーム8.化合物(LVXII)を製造する合成方法
【0088】
上述の合成スキームはラセミ配位子またはラセミキレーターの製造に関するものであるが、エナンチオマー的に純粋なもしくはエナンチオマー的に濃縮された出発物質を使用することにより、またはこれらのスキーム内に当技術分野で広く知られる分割ステップを一つ以上含めることにより、(L)または(D)−立体配置を有するエナンチオマー的に純粋なまたはエナンチオマー的に濃縮された配位子を製造するために、これらのスキームは容易に変更することができると理解すべきである。
【0089】
本明細書で使用する「錯化度」および「錯化百分率(percent complexation)」という用語は可換的に使用され、二官能性キラントとうまく錯化したイオンを錯化反応に使用した総イオンで割った百分率を意味すると定義される。本反応のイオン錯体を作製した場合に得られる錯化百分率の値は、陽イオン交換による測定で、90%より高くすること、または95%より高くすることができる。
【0090】
本発明のコンジュゲートは、まず最初に錯体を形成させ、次に生物学的担体に取り付けることによって製造することができる。したがって本プロセスでは、配位子を製造または取得し、イオンとの錯体を形成させてから、生物学的担体が加えられる。もう一つの選択肢として本プロセスでは、まず最初に配位子を生物学的担体にコンジュゲートしてから、イオンとの錯体を形成させてもよい。本発明のイオン−コンジュゲートの形成をもたらす適切なプロセスは、いずれも本発明の範囲に包含される。
【0091】
本発明の錯体、二官能性キレートおよびコンジュゲートは、本明細書で説明するように、診断剤として有用である。これらの製剤は、二つの成分(すなわち配位子と金属、錯体と抗体、または配位子/抗体と金属)が使用に先だって適当な時点で混合されるように、キットの形をとることができる。混合済みであるか、キットの形態であるかを問わず、本製剤は、通常、薬学的に許容できる担体を必要とする。
【0092】
式(I)のキレート(式中、RはNH、イソチオシアナト、セミカルバジド、チオセミカルバジド、マレイミド、ブロモアセトアミド、またはカルボキシル基である)を、所望のターゲット組織に対する特異性を有する天然分子または合成分子にイオン結合または共有結合させることによって、組織特異性を実現することもできる。このアプローチの考え得る応用の一つは、キレートを患部組織に輸送して可視化を可能にするキレートコンジュゲートモノクローナル抗体の使用によるものである。そうすれば外科医は適当な検出器と共役させたUV光源で軟組織を照射し、必要であれば、示された組織を外科的に除去することができる。
【0093】
以下の実施例は本発明をさらに例示するために記載するものであって、本発明の限定であると解釈してはならない。
【0094】
材料
化合物2,2’,2’’−((4S)−4−(4−ニトロベンジル)−3,6,9,15−テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−1(15),11,13−トリエン−3,6,9−トリイル)三酢酸[(L)−p−NO−Bz−PCTA];および2,2’,2’’−((4S)−4−(4−イソチオシアナトベンジル)−3,6,9,15−テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−1(15),11,13−トリエン−3,6,9−トリイル)三酢酸[(L)−p−NCS−Bz−PCTA]は、(S)−N−(2−アミノエチル)−3−(4−ニトロフェニル)プロパン−1,2−ジアミンから出発し、スキーム1に概略を示した方法に従って製造した。2,2’,2’’−((4R)−4−(4−ニトロベンジル)−3,6,9,15−テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−1(15),11,13−トリエン−3,6,9−トリイル)三酢酸[(D)−p−NO−Bz−PCTA]は、(R)−N−(2−アミノエチル)−3−(4−ニトロフェニル)プロパン−1,2−ジアミンから出発し、スキーム1に概略を示した方法に従って製造した。
【化37】

【0095】
2,2’,2’’,2’’’−(2−(4−ニトロベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトライル)四酢酸[(±)−p−NO−Bz−DOTA]および2,2’,2’’−(1−オキサ−4,7,10−トリアザシクロドデカン−4,7,10−トリイル)三酢酸[(±)−OXO]は、Macrocyclics,Inc.(テキサス州ダラス)によって供給された。2,2’−(6−(カルボキシ(2−メトキシ−5−ニトロフェニル)メチル)−3,6,9,15−テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−1(15),11,13−トリエン−3,9−ジイル)二酢酸[(±)−NPCTA]は、米国特許第5,480,990号(この特許の開示は引用により組み込まれて本明細書の一部となる)に記載の方法に従って製造した。
【化38】

【0096】
化合物(S)−2,2’,2’’−(5−(4−ニトロベンジル)−1−オキサ−4,7,10−トリアザシクロドデカン−4,7,10−トリイル)三酢酸[(L)−p−NO−Bz−OXO]および(R)−2,2’,2’’−(5−(4−ニトロベンジル)−1−オキサ−4,7,10−トリアザシクロドデカン−4,7,10−トリイル)三酢酸[(D)−p−NO−Bz−OXO]は、それぞれ(S)−N−(2−アミノエチル)−3−(4−ニトロフェニル)プロパン−1,2−ジアミンおよび(R)−N−(2−アミノエチル)−3−(4−ニトロフェニル)プロパン−1,2−ジアミンから出発し、スキーム3に概略を示した方法に従って製造した。
【化39】

【0097】
錯化研究
一般論
配位子対金属イオンのモル比を、速度論的研究の場合は100:1、安定性研究の場合は200:1、モル比研究の場合は2:1から200:1の範囲の値にして、ポリアザ大環状配位子((L)−p−NO−Bz−PCTA;(D)−p−NO−Bz−PCTA;(L)−p−NCS−Bz−PCTA;(±)−p−NO−Bz−DOTA、(±)−NPCTA、(±)−OXOおよび(L)−p−NO−Bz−OXO)を金属イオン(903+111In3+177Lu3+)と緩衝液中、室温で混合した。
【0098】
903+および111In3+が関わる錯化研究は、50〜100mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0〜7.0)で行い、177Lu3+が関わる錯化研究は、50mM〜100mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4〜5)で行った。
【0099】
安定性研究では、配位子と金属イオンとの錯体を含有する溶液100μLを、血清またはpH=2、4もしくは6の0.1Mグリシン緩衝液500μLと混合した。
【0100】
1μLの試料を、速度論的研究では10分間隔で採取し、[配位子]/[金属イオン]の値が配位子の錯化百分率に及ぼす影響を研究する実験では60分後に採取し、本発明の配位子を使って形成される錯体の安定性を研究する実験の場合は1〜3日という離れた間隔で採取した。SAHAが一般論として説明した方法(「Fundamentals of Nuclear Pharmacy」Springer、第4版、151〜158頁、この文献の開示は引用により組み込まれ本明細書の一部となる)に従い、シリカゲルペーパー(1cm×6cm)と移動相(アセトン:食塩水v/v=1:1)とを使って、遊離金属および標識されたキレートを薄層クロマトグラフィーで分離する。シリカゲルペーパーを半分に切断し、各半分をガンマウェルカウンターで測定する。速度論的研究の結果を図1〜3に示し、[配位子]/[金属イオン]が配位子の錯化百分率に及ぼす影響を研究する実験の結果を図4〜6に示し、安定性研究の結果を図7〜9に示す。図4〜9に示す各結果は3回の独立した試行の平均である。
【実施例1】
【0101】
ポリアザ大環状配位子と金属イオンとの錯化の反応速度
A)903+が関わる錯化研究
最も速い錯化の初速度は(L)−p−NO−Bz−PCTA(10分後に95%錯化)で観測され、その後に順次、(±)−p−NO−Bz−DOTA、(±)−OXO、(D)−p−NO−Bz−PCTA、(L)−p−NCS−Bz−PCTA、(L)−p−NO−Bz−OXOおよび(±)−NPCTAが続いた。(±)−p−NO−Bz−DOTA、(±)−OXOおよび(L)−p−NO−Bz−OXOの場合、95%を上回る錯化百分率の値が、30分後に達成された。一般に、最も高い金属イオンの錯化百分率は配位子(L)−p−NO−Bz−PCTA、(±)−p−NO−Bz−DOTA、(±)−OXOおよび(L)−p−NO−Bz−OXOで観測された。
【0102】
(±)−NPCTAに付随する比較的遅い錯化の反応速度は、大環状環上のペンダントリンカーp−NO−Bz基の位置に関連する立体効果または電子効果に起因すると考えることができる。
【0103】
B)111In3+が関わる錯化研究
最も速い錯化の初速度は(±)−OXO、(L)−p−NO−Bz−OXOおよび(L)−NCS−Bz−PCTAで観測され(それぞれ10分後に錯化百分率の値が95%を超えていた)、その後に順次、(L)−p−NO−Bz−PCTA(10分後に約95%錯化)、(D)−p−NO−Bz−PCTA、(±)−p−NO−Bz−DOTAおよび(±)−NPCTAが続いた。
【0104】
最も高い金属イオンの錯化百分率は配位子(±)−OXO、(L)−p−NO−Bz−OXO、(±)−NCS−Bz−PCTAおよび(L)−p−NO−Bz−PCTAで観測され、これらは95%を上回る最大錯化値を有した。(±)−p−NO−Bz−DOTAは、40分後に約89%の最大錯化値を示した。
【0105】
(±)−NPCTAに付随する比較的遅い錯化の反応速度は、大環状環上のペンダントリンカーp−NO−Bz基の位置に関連する立体効果または電子効果に起因すると考えることができる。
【0106】
C)177Lu3+が関わる錯化研究
最も速い錯化の初速度は(L)−p−NO−Bz−PCTAおよび(L)−p−NO−Bz−OXOで観測され(10分後に>95%錯化)、その後に順次、(±)−OXO、(±)−p−NO−Bz−DOTA、(D)−p−NO−Bz−PCTA、(±)−NPCTAおよび(L)−p−NCS−Bz−PCTAが続いた。(±)−OXOおよび(±)−p−NO−Bz−DOTAはそれぞれ10分後に約95%の錯化を示したが、(D)−p−NO−Bz−PCTAは10分後に約91%の錯化しか示さなかった。(±)−p−NO−Bz−DOTAおよび(±)−NPCTAでは、それぞれ40分後および50分後にのみ、最大錯化百分率が観測された。
【0107】
一般に、最も高い金属イオンの錯化百分率は、配位子(L)−p−NO−Bz−PCTA、(L)−p−NO−Bz−OXO、(±)−OXO、および(±)−p−NO−Bz−DOTAで観測された。
【0108】
(±)−NPCTAに付随する比較的遅い錯化の反応速度は、大環状環上のペンダントリンカーp−NO−Bz基の位置に関連する立体効果または電子効果に起因すると考えることができる。
【実施例2】
【0109】
[配位子]/[金属イオン]が配位子の錯化百分率に及ぼす影響
A)[配位子]/[903+]が配位子の錯化百分率に及ぼす影響
(±)−p−NO−Bz−DOTAおよび(L)−p−NO−Bz−PCTAの場合、95%を上回る錯化百分率の値が、2:1という配位子/903+のモル比で達成された。(D)−p−NO−Bz−PCTAの場合、約95%の錯化が、10:1という配位子/903+のモル比で達成された。(±)−OXOおよび(L)−p−NO−Bz−PCTAでは、95%錯化を上回る値が、5:1以上という配位子/903+のモル比で得られた。(±)−NPCTAの場合は、配位子/903+のモル比が20:1を超えても、90%錯化という値は達成されなかった。
【0110】
B)[配位子]/[111In3+]が配位子の錯化百分率に及ぼす影響
(L)−p−NO−Bz−PCTAおよび(L)−p−NO−Bz−OXOの場合、95%を上回る錯化百分率の値が、2:1という配位子/111In3+のモル比で達成された。(D)−p−NO−Bz−PCTAの場合、約95%の錯化が、10:1という配位子/111In3+のモル比で達成された。(±)−p−NO−Bz−DOTAの場合、約94%の錯化が、5:1という配位子/111In3+のモル比で達成された。しかし(±)−p−NO−Bz−DOTAでは、95%を上回る錯化百分率の値は20:1を超える配位子/111In3+のモル比でさえ達成されなかった。(±)−OXOの場合、95%錯化を上回る値が、5:1以上という配位子/111In3+のモル比で得られた。(±)−NPCTAでは、約76%錯化という値が、5:1という配位子/111In3+のモル比で達成された。
【0111】
C)[配位子]/[177Lu3+]が配位子の錯化百分率に及ぼす影響
(L)−p−NO−Bz−OXOでは、配位子/177Lu3+のモル比の値が2:1以上で、95%錯化を上回る値が達成された。(L)−p−NO−Bz−PCTAの場合は、5:1という配位子/177Lu3+のモル比で、約95%という錯化百分率の値が達成された。(D)−p−NO−Bz−PCTAの場合、5:1という配位子/177Lu3+のモル比で、95%を上回る錯化が達成された。(±)−p−NO−Bz−DOTAの場合は、100:1という配位子/177Lu3+のモル比でしか、95%を上回る錯化は達成されなかった。(±)−OXOの場合は、10:1以上という配位子/177Lu3+のモル比で、95%錯化を上回る値が得られた。(±)−NPCTAでは、配位子/177Lu3+のモル比の値が20:1を超えても、約95%という錯化の値は達成されなかった。
【実施例3】
【0112】
安定性研究
血清または0.1Mグリシン緩衝液(pH=2、4もしくは6)における(±)−p−NO−Bz−DOTA−金属イオン錯体および(L)−p−NO−Bz−PCTA−金属イオン錯体の安定性を、時間の関数として、図7〜9に示す(この場合、金属イオンは903+111In3+または177Lu3+である)。
【0113】
血清において、(L)−p−NO−Bz−PCTA−903+錯体は(±)−p−NO−Bz−DOTA−903+錯体よりも相対的に安定だった。これら二つの錯体の安定性はグリシン緩衝液(pH2、4または5)でも同様だった。
【0114】
(L)−p−NO−Bz−PCTA−111In3+錯体と(±)−p−NO−Bz−DOTA−111In3+錯体はどちらも0.1Mグリシン緩衝液(pH2、4または5)中で、同じ程度に安定だった。血清において、(L)−p−NO−Bz−PCTA−111In3+錯体は、長期にわたると、(±)−p−NO−Bz−DOTA−111In3+錯体よりも相対的に安定だった。
【0115】
(L)−p−NO−Bz−PCTA−177Lu3+錯体と(±)−p−NO−Bz−DOTA−177Lu3+錯体はどちらも、0.1Mグリシン緩衝液(pH2、4または5)と比較して血清中の方が、相対的に安定性が低かった。0.1Mグリシン緩衝液(pH2、4または5)のそれぞれ一つにおいて、(±)−p−NO−Bz−DOTA−177Lu3+錯体は(L)−p−NO−Bz−PCTA−177Lu3+錯体よりも相対的に安定だった。
【0116】
以上、一つ以上の実施形態に関して、本発明を説明した。しかし、特許請求の範囲に定義する本発明の範囲から逸脱することなく数多くの改変および変更を加え得ることは、当業者には明らかである。
【0117】
引用されたものは全て引用により組み込まれて本明細書の一部となる。
【0118】
[参考文献]
(1)Mark Woods,Z.K.,A.Dean Sherry Journal of Suprmolecular Chemistry 2002,2,1−15.
(2)Wynn A.Volkert,a.T.J.H.Chem.Rev.1999,99,2269−2292.
(3)Peter Caravan,J.J.E.,Thomas J.McMurryおよびRandall B.Lauffer Chem.Rev.1999,99,2293−2352.
(4)G.M.Lanza,R.L.,S.Caruthers,S.A.Wickline MEDICAMUNDI 2003,47,34−39.
(5)Edwards,S.L.a.D.S.Bioconjugate Chemistry 2001,12,7−34.
(6)Paul A.Whetstone、N.G.B.,Todd M.CorneillieおよびClaude F.Meares Bioconjugate Chemistry 2004,15,3−6.
(7)Julie B.Stimmel,M.E.S.およびFrederick C.Kull,Jr.Bioconjugate Chemistry 1995,6,219−225.
(8)Hyun−soon Chong,K.G.,Dangshe Ma,Diane E.Milenic,Terrish OverstreetおよびBrechbiel,M.W.J.Med.Chem.2002,45,3458−3464.
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】(±)−p−NO−Bz−DOTA、(L)−p−NO−Bz−PCTA、(D)−p−NO−Bz−PCTA、(±)−NPCTAおよび(±)−OXOと903+との錯化の反応速度を示す。
【図2】(±)−p−NO−Bz−DOTA、(L)−p−NO−Bz−PCTA、(D)−p−NO−Bz−PCTA、(±)−NPCTA、(±)−OXOおよび(±)−p−NCS−Bz−PCTAと111In3+との錯化の反応速度を示す。
【図3】(±)−p−NO−Bz−DOTA、(L)−p−NO−Bz−PCTA、(D)−p−NO−Bz−PCTA、(±)−NPCTA、(±)−OXOおよび(±)−p−NCS−Bz−PCTAと177Lu3+との錯化の反応速度を示す。
【図4】配位子/金属イオン比が配位子への金属イオンの錯化の百分率に及ぼす影響を示す。この場合、配位子は(±)−p−NO−Bz−DOTA、(L)−p−NO−Bz−PCTA、(D)−p−NO−Bz−PCTA、(±)−NPCTAまたは(±)−OXOであり、金属イオンは903+である。
【図5】配位子/金属イオン比が配位子への金属イオンの錯化の百分率に及ぼす影響を示す。この場合、配位子は(±)−p−NO−Bz−DOTA、(L)−p−NO−Bz−PCTA、(D)−p−NO−Bz−PCTA、(±)−NPCTAまたは(±)−OXOであり、金属イオンは111In3+である。
【図6】配位子/金属イオン比が配位子への金属イオンの錯化の百分率に及ぼす影響を示す。この場合、配位子は(±)−p−NO−Bz−DOTA、(L)−p−NO−Bz−PCTA、(D)−p−NO−Bz−PCTA、(±)−NPCTAまたは(±)−OXOであり、金属イオンは177Lu3+である。
【図7】血清またはグリシン緩衝液(pH=2、4または6)における(±)−p−NO−Bz−DOTA−903+錯体および(L)−p−NO−Bz−PCTA−903+錯体の安定性を時間の関数として示す。
【図8】血清またはグリシン緩衝液(pH=2、4または6)における(±)−p−NO−Bz−DOTA−111In3+錯体および(L)−p−NO−Bz−PCTA−111In3+錯体の安定性を時間の関数として示す。
【図9】血清またはグリシン緩衝液(pH=2、4または6)における(±)−p−NO−Bz−DOTA−177Lu3+錯体および(L)−p−NO−Bz−PCTA−177Lu3+錯体の安定性を時間の関数として示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】

(式中、
【化2】

各Qは、独立して、(CHRCORまたは(CHRPOであり、
は、水素、(CHRCORまたは(CHRPOであり、
各Rは、独立して、水素、ベンジルまたはC−Cアルキルであり、
およびRは、独立して、H、C−Cアルキルまたは(C−Cアルキル)フェニルであり、
各Rは、独立して、水素;C−Cアルキルまたは(C−Cアルキル)フェニルであり、
Aは、CH、N、C−Br、C−Cl、C−SOH、C−OR、C−OR、N−R10、または
【化3】

であり、
ZおよびZは、独立して、CH、N、C−SOH、N−R10、C−CH−ORまたはC−C(O)−R11であり、
Eは、O、SまたはPであり、
は、H、C−Cアルキル、ベンジル、または少なくとも一つのR12で置換されたベンジルであり、
は、C−C16アルキルアミノであり、
10は、C−C16アルキル、ベンジル、または少なくとも一つのR12で置換されたベンジルであり、
11は、−O−(C−Cアルキル)、OHまたはNHR−であり、
12は、H、NO、NH、イソチオシアナト、セミカルバジド、チオセミカルバジド、マレイミド、ブロモアセトアミドまたはカルボキシルであり、
XおよびYは、それぞれ独立して水素であるか、隣接するXおよびYと一緒になって追加の炭素−炭素結合を形成してもよく、
nは、0または1であり、
mは、0から10まで(両端を含む)の整数であり、
pは、1または2であり、
rは、0または1であり、
wは、0または1であり、
Lは、それが接続される炭素原子の一つに共有結合されて、その一水素原子と置き換わるリンカー/スペーサー基であり、前記リンカー/スペーサー基は以下の式によって表され、
【化4】

(式中、
sは、0または1の整数であり、
tは、0から20まで(両端を含む)の整数であり、
は、Hであるか、生物学的担体への共有結合を可能にする求電子性または求核性部分であるか、生物学的担体に取り付けることができる合成リンカーであるか、またはそれらの前駆体であり、
Cycは、環状脂肪族部分、芳香族部分、脂肪族複素環式部分、または芳香族複素環式部分を表し、前記部分のそれぞれは、場合によっては、生物学的担体への結合を妨害しない一つ以上の基で置換される))
の二官能性ポリアザ大環状キレート剤、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項2】
前記キレート剤が、式(II)
【化5】

(式中、可変部M、L、X、Y、Q、R、m、nおよびrは、上に定義したとおりである)
で表される請求項1に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項3】
前記キレート剤が、式(III)
【化6】

(式中、可変部M、L、X、Y、R、m、nおよびrは、上に定義したとおりである)
で表される請求項2に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項4】
前記キレート剤が、式(IV)
【化7】

(式中、可変部M、R、Rは上に定義したとおりであり、uは0、1、2、3、4または5である)
で表される請求項3に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項5】
前記キレート剤が、式(V)
【化8】

(式中、可変部M、R、Rは、上に定義したとおりである)
で表される請求項3に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項6】
前記キレート剤が、式(VI)
【化9】

(式中、可変部A、Z、Z、L、X、Y、Q、Q、m、nおよびrは、上に定義したとおりである)
で表される請求項1に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項7】
前記キレート剤が、式(VII)
【化10】

(式中、可変部L、X、Y、Q、Q、m、nおよびrは、請求項1に定義したとおりである)
で表される請求項6に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項8】
Qが、(CHRCOR(式中、R、Rおよびpは、請求項1に定義したとおりである)である請求項7に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項9】
前記キレート剤が、式(VIII)
【化11】

(式中、可変部L、X、Y、Q、R、m、nおよびrは、請求項1に定義したとおりである)
で表される請求項7に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項10】
前記キレート剤が、式(IX)
【化12】

(式中、可変部L、X、Y、R、m、nおよびrは、請求項1に定義したとおりである)
で表される請求項9に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項11】
前記キレート剤が、式(X)
【化13】

(式中、可変部RおよびRは請求項1に定義したとおりであり、uは0、1、2、3、4または5である)
で表される請求項10に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項12】
前記キレート剤が、式(XI)
【化14】

(式中、可変部RおよびRは、請求項1に定義したとおりである)
で表される請求項11に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項13】
前記キレート剤が、式(XIa)
【化15】

(式中、可変部RおよびRは、請求項1に定義したとおりである)
で表される請求項12に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項14】
前記キレート剤が、式(XIb)
【化16】

(式中、可変部RおよびRは、請求項1に定義したとおりである)
で表される請求項12に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項15】
前記キレート剤が、式(XIc)
【化17】

(式中、可変部RおよびRは、請求項1に定義したとおりである)
で表される請求項12に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項16】
前記キレート剤が、式(XII)
【化18】

(式中、可変部L、X、Y、Q、Q、m、nおよびrは、上に定義したとおりである)
で表される請求項1に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項17】
Qが、(CHRCOR(式中、R、Rおよびpは、請求項1に定義したとおりである)である請求項16に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項18】
前記キレート剤が、式(XIII)
【化19】

(式中、可変部L、X、Y、Q、R、m、nおよびrは、請求項1に定義したとおりである)
で表される請求項16に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項19】
前記キレート剤が、式(XIV)
【化20】

(式中、可変部L、X、Y、Q、R、m、nおよびrは、請求項1に定義したとおりである)
で表される請求項18に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項20】
前記キレート剤が、式(XV)
【化21】

(式中、可変部RおよびRは請求項1に定義したとおりであり、uは0、1、2、3、4または5である)
で表される請求項19に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項21】
前記キレート剤が、式(XVI)
【化22】

(式中、可変部RおよびRは、請求項1に定義したとおりである)
で表される請求項20に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項22】
前記キレート剤が、式(XVIa)
【化23】

(式中、可変部RおよびRは、請求項1に定義したとおりである)
で表される請求項21に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項23】
前記キレート剤が、式(XVIb)
【化24】

(式中、可変部RおよびRは、請求項1に定義したとおりである)
で表される請求項21に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項24】
前記キレート剤が、式(XVIc)
【化25】

(式中、可変部RおよびRは、請求項1に定義したとおりである)
で表される請求項21に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項25】
が、NO、NH、イソチオシアナト、セミカルバジド、チオセミカルバジド、マレイミド、ブロモアセトアミドまたはカルボキシルである請求項1に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤。
【請求項26】
請求項1に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤と、La、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y、Cr、Cu、Pt、Re、Tc、Fe、Mg、MnおよびScからなる群より選択される安定金属または放射性金属のイオンとを含む錯体。
【請求項27】
生物学的担体に共有結合された請求項26に記載の錯体を含むコンジュゲート。
【請求項28】
前記生物学的担体が、タンパク質、抗体、抗体フラグメント、ホルモン、ペプチド、成長因子、抗原またはハプテンである請求項27に記載のコンジュゲート。
【請求項29】
請求項1に記載の二官能性ポリアザ大環状キレート剤と、90Y、177Lu、111In、64Cu、67Cu、153Sm、153Gd、159Gd、166Ho、149Pm、175Yb、47Sc、142Pr、99mTc、188Re、186Re、67Ga、68Ga、89Zr、および212Biからなる群より選択される金属のイオンとを含む錯体。
【請求項30】
生物学的担体に共有結合された請求項29に記載の錯体を含むコンジュゲート。
【請求項31】
前記生物学的担体が、タンパク質、抗体、抗体フラグメント、ホルモン、ペプチド、成長因子、抗原またはハプテンである請求項30に記載のコンジュゲート。
【請求項32】
請求項27に記載のコンジュゲートと、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
【請求項33】
請求項30に記載のコンジュゲートと、薬学的に許容できる担体とを含む医薬製剤。
【請求項34】
癌を有する哺乳動物の治療的処置方法であって、請求項33に記載の医薬組成物の治療有効量を前記哺乳動物に投与することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−529501(P2009−529501A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557566(P2008−557566)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【国際出願番号】PCT/CA2007/000369
【国際公開番号】WO2007/104135
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(508272983)エムディーエス・(カナダ・)インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】