説明

二層式クレンジング化粧料

【課題】優れた製剤の保存安定性を有し、二層系を維持し続けることができるとともに、混合時の均一性に優れ、均一状態が一定時間保持される二層式クレンジング化粧料、更には、クレンジング効果に優れるとともに、クレンジング後に油分を肌に残さずに洗い落とすことのできる使用感に優れた二層式クレンジング化粧料の提供。
【解決手段】塩化ベンザルコニウム又はN−ヤシ油脂肪酸アシル−L−アルギニンエチル・DL−ピロリドンカルボン酸塩を含有する液状水層と、液状油層の二層からなる二層式クレンジング化粧料であって、前記水層には両性界面活性剤および多価アルコールを含有し、且つ、前記油層には液状油剤を含有することを特徴とする二層式クレンジング化粧料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状水層と液状油層の二層からなる二層式クレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クレンジング化粧料としては、水性クレンジング化粧料、油性クレンジング化粧料、乳化クレンジング化粧料などがある。しかしながら、これらクレンジング化粧料には、それぞれ一長一短がある。具体的には、水性クレンジング化粧料は、べたつき感がなく使用感に優れるものの、クレンジングの主機能である、メイク汚れや皮脂汚れ除去効果に劣るといった問題がある。これに対し、油性クレンジング化粧料は、汚れ除去効果に格段優れた効果を奏するものの、べたつき感などの使用感に劣り、べたつき感を取り除くために再度洗顔しなければならないといった問題がある。また、乳化クレンジング化粧料は、水性クレンジング化粧料と油性クレンジング化粧料のそれぞれの短所をある程度改善することはできる反面、それぞれの長所である優れた効果を十分に発揮させることができないといった問題がある。
【0003】
そこで、従来の水性クレンジング化粧料の使用感と、油性クレンジング化粧料の汚れ除去効果を十分に発揮できる剤型として、水層と油層からなる二層式のクレンジング化粧料とする試みがなされている。このような二層式の大きな特徴は、使用時に振盪・攪拌することで水層と油層とが均一に分散し、その均一状態が一定時間保持されるとともに、混合後に静置することで元の二層へと分離するという性質を有するところにある。
【0004】
このような二層式のクレンジング化粧料とする試みとしては、両性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との併用技術(例えば、特許文献1を参照)、両性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との併用技術(例えば、特許文献2を参照)などが提案されている。
【0005】
しかしながら、これら試みよって二層式とすることはできるものの、水層と油層とが共に液状を呈する場合には、綺麗に二層に分離しないといった問題や、製剤の保存安定性に劣り、二層系を維持し難いといった問題がある。そこで、共に液状層である場合、油層と水層とを分離する試みとしては、例えば、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩を用いる技術(例えば、特許文献3および特許文献4を参照)、N−長鎖アシル塩基性アミノ酸誘導体類およびその酸付加塩を用いる技術(例えば、特許文献5を参照)などが提案されている。
【0006】
しかしながら、これら試みよって共に液状層の二層式とすることはできるものの、混合時の均一性の観点から、種々の界面活性剤を配合した場合、製剤の保存安定性に劣り、二層系が維持できないことから、用いられる界面活性剤の配合量に制限があるといった問題がある。また、界面活性剤を高配合できないことから、クレンジング後に油分を十分に洗い落とすことができず、べたつき感が残り、使用感に劣るといった問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−121130号公報
【特許文献2】特開2004−196713号公報
【特許文献3】特開平6−211628号公報
【特許文献4】特開2001−213724号公報
【特許文献5】特開2004−196713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、優れた製剤の保存安定性を有し、二層系を維持し続けるとともに、使用時には、混合の均一性に優れ、その均一状態が一定時間保持される二層式クレンジング化粧料、更には、クレンジング効果に優れるとともに、クレンジング後に油分を肌に残さずに洗い落とすことのできる使用感に優れた二層式クレンジング化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、
〔1〕塩化ベンザルコニウム又はN−ヤシ油脂肪酸アシル−L−アルギニンエチル・DL−ピロリドンカルボン酸塩を含有する液状水層と、液状油層の二層からなる二層式クレンジング化粧料であって、前記水層には両性界面活性剤および多価アルコールを含有し、且つ、前記油層には液状油剤を含有することを特徴とする二層式クレンジング化粧料、
〔2〕両性界面活性剤が、アミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤である前記〔1〕に記載の二層式クレンジング化粧料、
〔3〕更に、水層にヒドロキシエチルセルロースおよび/又はキサンタンガムを含有することを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の二層式クレンジング化粧料、並びに
〔4〕更に、水層にアシルアミノ酸塩型の陰イオン性界面活性剤および/又はHLB値8〜12の非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕の何れかに記載の二層式クレンジング化粧料
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の二層式クレンジング化粧料は、製剤の保存安定性に優れることから、二層系を維持し続けることができるという効果を奏する。また、混合時の均一性に優れるとともに、その均一状態が一定時間保持され続けるという効果を奏する。更には、メイク汚れや皮脂汚れ除去効果に優れるとともに、クレンジング後の油分を肌に残さずに洗い落とすことができることから、洗浄後のべたつき感がなく、使用感に優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の二層式クレンジング化粧料の液状水層には、塩化ベンザルコニウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−アルギニンエチル・DL−ピロリドンカルボン酸塩の何れか一方と、両性界面活性剤および多価アルコールが含有される。
【0012】
用いられる塩化ベンザルコニウムは、下記一般式(式1)で表される、アルキルジメチルアミンと塩化ベンジルとを加熱反応して得られる化合物である。
【化1】

(式中、Rは炭素数12〜14のアルキル基である。)
【0013】
尚、塩化ベンザルコニウムは、市販品をそのまま使用することができる。具体的には、例えば、カチオンG−50(商品名,三洋化成工業社製)、カチオーゲンBC−50(商品名,第一工業製薬社製)、カチナールMN−50A(商品名,東邦化学工業社製)などを例示することができる。
【0014】
塩化ベンザルコニウムの含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、保存安定性に優れ二層系を保つ観点から、化粧料中、0.005重量%以上が好ましく、より好ましくは0.01重量%以上である。また、混合時の均一性の観点から、1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以下である。これらの観点から、塩化ベンザルコニウムの含有量は、0.005〜1重量%が好ましく、より好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0015】
また、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−アルギニンエチル・DL−ピロリドンカルボン酸塩は、L−アルギニンとヤシ油脂肪酸との縮合物をエステル化し、DL−ピロリドンカルボン酸塩としたものである。
【0016】
尚、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−アルギニンエチル・DL−ピロリドンカルボン酸塩は、市販品をそのまま使用することができる。具体的には、例えば、CAE(商品名,味の素社製)などを例示することができる。
【0017】
N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−アルギニンエチル・DL−ピロリドンカルボン酸塩の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、保存安定性に優れ二層系を保つ観点から、化粧料中、0.005重量%以上が好ましく、より好ましくは0.01重量%以上である。また、混合時の均一性の観点から、0.5重量%以下が好ましく、より好ましくは0.3重量%以下である。これらの観点から、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−アルギニンエチル・DL−ピロリドンカルボン酸塩の含有量は、0.005〜0.5重量%が好ましく、より好ましくは0.01〜0.3重量%である。
【0018】
本発明においては、上記した塩化ベンザルコニウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−アルギニンエチル・DL−ピロリドンカルボン酸塩の何れか一方を用いることで、液状水層と液状油層とを分離させ二層式とすることができるとともに、混合後に一定時間静置することで元の二層へと分離させることができる。
【0019】
用いられる両性界面活性剤としては、例えば、グリシン型両性界面活性剤、アミノプロピオン酸型両性界面活性剤などのアミノ酸型両性界面活性剤;アミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤などのベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。好適な両性界面活性剤としては、保存安定性の観点、並びに、混合時の均一性を高め、その均一状態を一定時間保持する観点から、ベタイン型両性界面活性剤を用いることが好ましく、中でも、アミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤を用いることがより好ましい。
【0020】
具体的なアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、リシノレイン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジヒドロキシエチルベタインなどを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。これらアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤の中でも、上記の観点に加え、油分の洗い落ちの観点から、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインをより好適に用いることができる。
【0021】
両性界面活性剤の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、保存安定性の観点、混合時の均一性の観点、並びに、油分の洗い落ちの観点から、化粧料中、0.5重量%以上が好ましく、より好ましくは1重量%以上である。また、保存安定性の観点から、10重量%以下が好ましく、より好ましくは7重量%以下である。これらの観点から、両性界面活性剤の含有量は、0.5〜10重量%が好ましく、より好ましくは1〜7重量%である。
【0022】
用いられる多価アルコールとしては、例えば、グリコール類、グリセリン類、糖類などが挙げられる。具体的なグリコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオールなどを例示することができる。グリセリン類としては、例えば、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどを例示することができる。また、糖類としては、ソルビトール、マルチトール、トレハロースなどを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。好適な多価アルコールとしては、二層系を保つ観点から、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールを用いることが好ましい。
【0023】
多価アルコールの含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、二層系を保つ観点から、化粧料中、10重量%以上が好ましく、より好ましくは15重量%以上である。また、混合時の均一性を維持する観点から、40重量%以下が好ましく、より好ましくは35重量%以下である。これらの観点から、多価アルコールの含有量は、10〜40重量%が好ましく、より好ましくは15〜35重量%である。
【0024】
本発明の二層式クレンジング化粧料の液状水層は、優れた製剤の保存安定性を有し、二層系を維持し続ける観点、並びにクレンジング時の肌に対する刺激の観点から、pHが4〜7の範囲で調整させることが好ましく、5〜7の範囲で調整されることがより好ましい。用いられるpH調整剤としては、特に限定されないが、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウムリン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウムなどを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。また、pH調整剤の含有量は、液状水層を上記pH範囲内に調整するのに充分な量であり、これら成分の種類や使用量に応じて適宜配合すればよい。
【0025】
また、本発明の二層式クレンジング化粧料の液状水層には、均一混合状態の持続効果を高める観点および使用性を向上させる観点から、ヒドロキシエチルセルロースおよび/又はキサンタンガムを含有させることができる。これら成分の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、混合時の均一性と使用性の観点から、化粧料中、0・001重量%以上が好ましく、より好ましくは0.005重量%以上である。また、保存安定性の観点から、1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以下である。これらの観点から、水溶性増粘剤の含有量は、0.001〜1重量%が好ましく、より好ましくは0.005〜0.5重量%である。
【0026】
更に、本発明の二層式クレンジング化粧料の液状水層には、クレンジング後の油分の洗い落ちを更に高め、洗浄後のべたつき感を抑える観点から、アシルアミノ酸塩型の陰イオン性界面活性剤および/又はHLB値8〜12の非イオン性界面活性剤を含有させることができる。
【0027】
用いられるアシルアミノ酸塩型の陰イオン性界面活性剤としては、例えばN−アシルサルコシン塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシルメチルアラニン塩、N−アシルグリシン塩などが挙げられる。用いられる塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、チタンなどの金属塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン塩;アンモニウム塩などを例示することができる。
【0028】
具体的には、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウムなどのN−アシルアスパラギン酸塩;ラウロイルサルコシンカリウム、ラウロイルサルコシントリエタノールアミン、ミリストイルサルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウムなどのN−アシルサルコシン塩;ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸カリウム、ステアロイルグルタミン酸カリウム、ステアロイルグルタミン酸ニナトリウム、ココイルグルタミン酸カリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸トリエタノールアミンヤシ油脂肪酸・硬化牛脂脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウムなどのN−アシルグルタミン酸塩;ラウロイルメチルアラニンナトリウム、ラウロイルメチルアラニントリエタノールアミン、ミリストイルメチルアラニンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルアラニンナトリウムなどのN−アシルメチルアラニン塩;ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウムなどのN−アシルグリシン塩などを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。好適なアシルアミノ酸塩型の陰イオン性界面活性剤としては、油分の洗い落ちに優れる観点から、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウムを用いるのが好ましい。
【0029】
アシルアミノ酸塩型の陰イオン性界面活性剤の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、油分の洗い落ちを更に高める観点から、化粧料中、0.05重量%以上が好ましく、より好ましくは0.1重量%以上である。また、保存安定性の観点から、10重量%以下が好ましく、より好ましくは5重量%以下である。これらの観点から、アシルアミノ酸塩型の陰イオン性界面活性剤の含有量は、0.05〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0030】
また、HLB値8〜12の非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、アルキルポリエチレングリコールエステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0031】
具体的には、例えば、ミリスチン酸ポリ(6)グリセリル、オレイン酸ポリ(2)グリセリル、オレイン酸ポリ(10)グリセリル、ステアリン酸ポリ(2)グリセリル、ステアリン酸ポリ(10)グリセリル、ジステアリン酸ポリ(6)グリセリル、ジイソステアリン酸ポリ(6)グリセリル、ジイソステアリン酸ポリ(10)グリセリル、イソステアリン酸ポリ(10)グリセリル、トリステアリン酸ポリ(10)グリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(7)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(7)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(12〜14)アルキルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテルなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ジラウリン酸ポリオキシエチレン(8)グリコール、ジラウリン酸ポリオキシエチレン(12)グリコール、ジラウリン酸ポリオキシエチレン(20)グリコール、ジイソステアリン酸ポリオキシエチレン(12)グリコール、ジオレイン酸ポリオキシエチレン(12)グリコールなどのアルキルポリエチレングリコールエステル;(カプリル/カプリン酸)ポリオキシエチレン(6)グリセリル、ヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレン(7)グリセリル、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(5)グリセリル、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(8)グリセリル、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(10)グリセリル、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(15)グリセリル、トリイソステリン酸ポリオキシエチレン(20)グリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(30)グリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(40)グリセリル、ジイソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)グリセリル、ジイソステアリン酸ポリオキシエチレン(30)グリセリル、トリオレイン酸ポリオキシエチレン(20)グリセリル、トリオレイン酸ポリオキシエチレン(30)グリセリル、トリオレイン酸ポリオキシエチレン(40)グリセリル、などのポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステルなどを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。好適なHLB値8〜12の非イオン性界面活性剤としては、油分の洗い落ちに優れる観点から、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステルを用いることが好ましく、中でも、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(8)グリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(30)グリセリル、(カプリル/カプリン酸)ポリオキシエチレン(6)グリセリル、ヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレン(7)グリセリルを用いるのが好ましい。
【0032】
HLB値8〜12の非イオン性界面活性剤の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、油分の洗い落ちを更に高める観点から、化粧料中、0.05重量%以上が好ましく、より好ましくは0.1重量%以上である。また、保存安定性の観点から、10重量%以下が好ましく、より好ましくは5重量%以下である。これらの観点から、HLB値8〜12の非イオン性界面活性剤の含有量は、0.05〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0033】
尚、本発明においては、上記した両性界面活性剤の含有量(以下、Xと記する)と、アシルアミノ酸塩型の陰イオン性界面活性剤の含有量(以下、Yと記する)および/又はHLB値8〜12の非イオン性界面活性剤の含有量(以下、Zと記する)は、保存安定性の観点から、下記3つの不等式

含有量;X>Y
含有量;X>Z
含有量;X>Y+Z

の何れかを満たし調製されることが好ましい。これにより、クレンジング効果が更に高まるとともに、クレンジング後に油分を肌に残さずに容易に洗い落とすことが可能となる。加えて、製剤の保存安定性をも高めることができる。
【0034】
本発明の液状水層には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に通常化粧品に用いられる成分、例えば、清涼剤、動植物由来抽出エキス、低級アルコール、保湿剤、紫外線吸収剤、消炎剤、金属封鎖剤、ビタミン類、酸化防止剤、防腐・殺菌剤、着色剤、各種香料、精製水などを適宜目的に応じて配合することができる。
【0035】
二層式クレンジング化粧料中の液状水層の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、保存安定性の観点、並びに、混合時の均一性の観点から、40〜80重量%が好ましく、より好ましくは50〜70重量%である。
【0036】
一方、本発明の二層式クレンジング化粧料の液状油層には、液状油剤が含有される。用いられる液状油剤としては、室温で液状の油剤であれば特に限定されないが、例えば、液状の炭化水素油、液状のエステル油、液状のシリコーン油、液状の油脂、液状のロウ、液状の脂肪酸などが挙げられる。尚、本発明における室温とは、1〜30℃の温度範囲を表す。
【0037】
具体的な液状の炭化水素油としては、例えば、αオレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、流動イソパラフィン、流動パラフィンなどを例示することができる。
【0038】
具体的な液状のエステル油としては、例えば、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸オクチル、エチルヘキサン酸セチル、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、ジエチルヘキサン酸ネオペンチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリエチルヘキサン酸エリスリチル、トリオクタノイン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、ホホバエステル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリルなどを例示することができる。
【0039】
具体的なシリコーン油としては、例えば、メチルポリシロキサン、平均重合度が650〜7000である高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチコノールなどの鎖状シリコーン;メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの環状シリコーン;アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体などのアミノ変性シリコーン;カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーンなどの変性シリコーンなどを例示することができる。
【0040】
具体的な液状の油脂、ロウ、脂肪酸としては、例えば、アーモンド油、オリーブ油、コメヌカ油、マカデミアナッツ油、ホホバ油、イソステアリン酸、オレイン酸などを例示することができる。
【0041】
上記した液状油剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。好適な液状油剤としては、メイク汚れや皮脂汚れ除去の観点から、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、イソノナン酸イソノニル、2−エチルヘキサン酸セチル、オクタン酸セチル、デカメチルシクロペンタシロキサンを用いることが好ましい。
【0042】
液状油剤の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、汚れ除去の観点から、化粧料中、20重量%以上が好ましく、より好ましくは30重量%以上である。また、保存安定性の観点から、60重量%以下が好ましく、より好ましくは50重量%以下である。これらの観点から、液状油剤の含有量は、20〜60重量%が好ましく、より好ましくは30〜50重量%である。
【0043】
本発明の液状油層には、液に粘性を与えない範囲内であれば、上記した液状油剤の他に油溶性成分、例えば、ワセリン、シア脂などの室温で固形の油剤;トコフェロールなどの抗酸化剤;赤色215号、赤色223号、だいだい色201号などの油溶性染料;各種香料などを適宜目的に応じて配合することができる。
【0044】
二層式クレンジング化粧料中の液状油層の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、保存安定性の観点、並びに、混合時の均一性の観点から、20〜60重量%が好ましく、より好ましくは30〜50重量%である。
【0045】
また、本発明の二層式クレンジング化粧料における液状水層および液状油層の外観は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、審美性に優れる観点から、両層ともに透明で調製されることが好ましい。本発明では、製剤の保存安定性に優れた効果を奏することから、静置することで二層へと分離した後も優れた透明性を示すという効果をも奏する。
【0046】
本発明の二層式クレンジング化粧料の製造方法は、二層式とすることができれば特に限定されないが、例えば、塩化ベンザルコニウム又はN−ヤシ油脂肪酸アシル−L−アルギニンエチル・DL−ピロリドンカルボン酸塩を含有する液状水層と、液状油層とを個別調製した後に一方を加える方法などを例示することができる。
【0047】
また、本発明の二層式クレンジング化粧料は、洗顔剤、メイクアップ除去剤として好適に用いることができ、クレンジング後に油分を肌に残さずに洗い落とすことのできる使用感に優れたものであるから、油性クレンジング化粧料のように再度洗顔する必要がないものである。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、配合量は、特記しない限り「重量%」を表す。
【0049】
(試料の調製1)
表1および表2に記した組成に従い、実施例1〜5および比較例1〜4の各クレンジング化粧料を常法に準じてそれぞれ調製し、下記評価に供した。結果をそれぞれ表1および表2に併記する。
【0050】
(試験例1:保存安定性(剤型維持)の評価)
実施例1〜5および比較例1〜5の各試料を、150mL容の透明容器にそれぞれ封入し、−10℃の恒温槽、50℃の恒温槽、並びに、5℃から45℃を24時間サイクルで変温する恒温槽に夫々保存した。24時間後、各恒温槽から試料を取り出し、上下に15回振り、油層と水層とを混合後、再度、同温度条件下の恒温槽に保存した。評価は、前記操作を4週間繰り返した後の性状を下記評価基準に従って目視評価した。
【0051】
<保存安定性(剤型維持)の評価基準>
◎:混合前(調製直後)と変化なし(上層:油層、下層:水層)
○:油層と水層の界面が極わずか白濁している
△:油層と水層の界面に少量の乳化物が認められる
×:三層に分離している(上層:油層、中層:乳化物、下層:水層)又は混合している
【0052】
(試験例2:混合時の均一性の評価)
実施例1〜5および比較例1〜5の各試料を、150mL容の透明容器にそれぞれ封入した。化粧を施した女性専門パネル20名により、各試料を実際に上下に15回振って、手の平に吐出してもらい、「均一性」を下記評価基準に従って目視・官能評価した。
【0053】
<混合時の均一性の評価基準>
◎:20名中16名以上が均一に混合していると回答
○:20名中11〜15名が均一に混合していると回答
△:20名中6〜10名が均一に混合していると回答
×:20名中5名以下が均一に混合していると回答
【0054】
(試験例3:均一状態の持続の評価)
試験例2で混合された各試料において、明らかな二層系への分離が始まるまでに要する時間を測定し、下記評価基準に従って評価した。尚、「分離が始まる時間」とは、油層および水層が明らかに目視で確認できる状態になった時間のことを言う。
【0055】
<均一状態の持続の評価基準>
◎:5分以上〜15分未満
○:3分以上〜5分未満又は15分以上〜30分未満
△:1分以上〜3分未満又は30分以上〜1時間未満
×:1分未満又は1時間以上
【0056】
(試験例4:汚れ除去効果の評価)
試験例2の評価後、同パネルにより、実際にクレンジングを施してもらい、メイク汚れ除去効果を下記評価基準に従って官能評価した。尚、評価は、下記評価基準により算出された平均点から下記判定基準にしたがって判定を行った。
【0057】
<汚れ除去効果の評価基準>
5点:非常に良好(非常に良く落ちる)
4点:良好(良く落ちる)
3点:普通(落ちる)
2点:不良(あまり落ちない)
1点:非常に不良(全く落ちない)
【0058】
<汚れ除去効果の判定基準>
◎:平均4.0点以上
○:平均3.0点以上4.0点未満
△:平均2.0点以上3.0点未満
×:平均2.0点未満
【0059】
(試験例5:油分の洗い落ちの評価)
試験例4の評価後、同パネルにより、クレンジング直後(タオルドライ前)のべたつき感を下記評価基準に従って官能評価した。尚、評価は、下記評価基準により算出された平均点から下記判定基準にしたがって判定を行った。
【0060】
<油分の洗い落ちの評価基準>
5点:非常に良好(全くべたつき感がない)
4点:良好(べたつき感がない)
3点:普通
2点:不良(ややべたつき感がある)
1点:非常に不良(べたつき感がある)
【0061】
<油分の洗い落ちの判定基準>
◎:平均4.0点以上
○:平均3.0点以上4.0点未満
△:平均2.0点以上3.0点未満
×:平均2.0点未満
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
表1および表2に示された結果から、各実施例で得られた二層式クレンジング化粧料は、製剤の保存安定性に優れていることが分かる。また、混合時の均一性に優れ、その均一状態が一定時間保持されていることも分かる。加えて、汚れ除去効果に優れるとともに、クレンジング後の油分を肌に残さずに洗い落とせていることが分かる。
【0065】
一方、塩化ベンザルコニウム又はN−ヤシ油脂肪酸アシル−L−アルギニンエチル・DL−ピロリドンカルボン酸塩を含有しない比較例1は、製造直後は二層となるものの、試験例1の混合工程で混ざり合い、再び二層へと分離しないものであった。また、液状油剤を含有しない比較例2は、製造時に単一水層となることから、試験例1〜3に記載の評価については実施していない。更に、両性界面活性剤又は多価アルコールを含有しない比較例3および4では、製剤の保存安定性に劣るのみならず、汚れ除去効果および油分の洗い落ちにも劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ベンザルコニウム又はN−ヤシ油脂肪酸アシル−L−アルギニンエチル・DL−ピロリドンカルボン酸塩を含有する液状水層と、液状油層の二層からなる二層式クレンジング化粧料であって、前記水層には両性界面活性剤および多価アルコールを含有し、且つ、前記油層には液状油剤を含有することを特徴とする二層式クレンジング化粧料。
【請求項2】
両性界面活性剤が、アミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤である請求項1に記載の二層式クレンジング化粧料。
【請求項3】
更に、水層にヒドロキシエチルセルロースおよび/又はキサンタンガムを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の二層式クレンジング化粧料。
【請求項4】
更に、水層にアシルアミノ酸塩型の陰イオン性界面活性剤および/又はHLB値8〜12の非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の二層式クレンジング化粧料。

【公開番号】特開2010−222321(P2010−222321A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73375(P2009−73375)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】