説明

二族金属炭酸塩化された過塩基性アルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の製造方法

【課題】二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の新規な製法の提供。
【解決手段】炭酸塩化した過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の製法で、二酸化炭素とエチレングリコールの両原料としてエチレンカーボネートを使用する。エチレンカーボネートを用いる反応条件で、アルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の炭酸塩化と過塩基化が可能で、又炭酸塩化した過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の粘度は許容レベル(100℃で1000cSt以下)になる。更に、C2〜C6アルキ
レングリコールと二酸化炭素を用いたアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の炭酸塩化にも関し、又炭酸塩化した過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を含む清浄分散酸化防止性添加剤であって、炭酸塩化した過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物のCaに対するCO2比が0.01以上である添加剤にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二族金属炭酸塩化による過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を製造する新規な方法であって、二酸化炭素とエチレングリコールの両方の原料としてエチレンカーボネートを使用する方法に関するものである。特に、本発明のエチレンカーボネートを使用する反応条件下では、アルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の過塩基化が可能であり、また炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の粘度は許容レベル内に、一般には100℃で1000cSt以下に保たれる。また、本発明は
、二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の製造方法であって、二酸化炭素とエチレングリコールを使用する方法にも関する。さらにまた、本発明は、二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を含む清浄分散酸化防止性添加剤組成物であって、上記の二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物のCaに対するCO2の比が少なくとも0.01
である添加剤組成物にも関する。
【0002】
さらにまた、本発明は、二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を含む潤滑油添加剤にも関するものであり、添加剤は硫黄分が少なく、一般にはASTM試験第D4951−92番で測定したときに0.3パーセント以下である。
【0003】
さらにまた、本発明は、アルキルフェノール、アルデヒドおよびN−フェニル−1,4−フェニレンジアミンの反応生成物からなるマンニッヒ縮合物にも関する。
【背景技術】
【0004】
ディーゼル機関および火花点火内燃機関の作動に付随して一般に、可動エンジン部分に密着し、それによりエンジン効率を低下させるスラッジ、ラッカー及び樹脂状堆積物が形成される。これらの堆積物の生成を防止または低減するために、潤滑油混合用の各種各様の化学物質添加剤が開発されている。これらの添加剤は通常、清浄剤および分散剤と呼ばれている。分散剤は、エンジン作動中堆積物の生成を抑制するために、堆積物形成物質を油に懸濁した状態にする能力を有する。清浄剤は、エンジン作動中先在する堆積物を除去して、鉄道、船舶及び自動車機関内の酸を中和する能力を有する。
【0005】
非常に多くの鉄道及びタグボート用のディーゼル機関は、銀めっき軸受を使用している。その結果、潤滑油には堆積物抑制およびアルカリ価に加えて、許容可能な銀の摩耗抑制および腐食性能が要求される。マンニッヒ塩基及びその塩は、塩素化およびジチオリン酸エステル添加剤の使用に関連した欠点を伴うことなく、そのような機関内の銀軸受部分を保護するのに有効であることが知られている。
【0006】
マンニッヒ塩基及びその塩はまた、潤滑油、燃料、グリースおよびプラスチックにおいて酸化防止剤として特に有用であることも知られている。炭化水素物質は、老化、日光露光および通常の使用において化学作用を非常に受けやすい。そのような酸化は、潤滑剤、燃料およびグリース中に望ましくない残留物の堆積を招き、またプラスチックの退色を招くことがある。
【0007】
往々にして、堆積物や摩耗、酸化を抑制するための添加剤の潤滑油および燃料への含有は混和性の問題を引き起こしている。さらに、これら全ての機能を達成するために、多数の添加剤を加えることは不経済でもある。従って、これら所望とする全ての機能を発揮する単独の多機能添加剤を開発することが大いに必要とされている。
【0008】
分散剤、清浄剤、酸化防止剤および耐摩耗剤として一般に使用されている潤滑油添加剤の一部類に、アルキルフェノール、アルデヒドおよびアミンのマンニッヒ縮合物がある。
【0009】
先行技術で潤滑油添加剤として知られている種々のマンニッヒ縮合物は、金属塩である。目下のところ先行技術では、エンジン内の酸を中和するために高いアルカリ価を保有し、同時に許容可能な粘度を有する二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を製造する炭酸塩化方法が知られていない。本発明の炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物は、より高いアルカリ価保有と許容可能な粘度ゆえに、一つの添加剤に清浄分散剤、耐摩耗剤および酸化防止剤の機能を与えるから、先行技術に係るアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の塩よりも優れている。
【0010】
エンジン内の酸を中和する添加剤組成物の能力は、組成物の全塩基価(TBN)またはアルカリ価保有を決定することにより求めることができる。TBNが大きいほど、これら組成物がエンジン作動中に発生する酸を中和する能力が高いことを反映している。しかしながら、組成物のTBNは存在する希釈油の量に直接関係する。よって、組成物が濃縮されているほど、希釈剤を多く含むものよりも大きいTBNを示すことになる。
【0011】
アルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の二族金属塩組成物の製造については、当該分野ではよく知られている。多数の特許文献において、アルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の二族金属塩の製造方法が論じられているが、いずれもその方法には炭酸塩化工程が含まれていない。
【0012】
例えば、特許文献1には、アルキレンポリアミン、アルデヒドおよび置換フェノールの縮合物の金属塩を製造する方法が開示されている。
【0013】
特許文献2には、N,N’−ビス(アルキル置換ヒドロキシベンジル)アルキレンジアミンの厳密に中和したカルシウム塩と、ポリアルキレンポリアミンまたはポリアルキレンポリアミンの尿素縮合誘導体であるN,N’−ビス(ポリアザアルキルアミノ)ウレイレンのビス(アルケニルコハク酸イミド)との混合物の製造が開示されている。
【0014】
特許文献3には、アルキルヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒドおよびアミンの縮合物またはそのアルカリ金属塩を、金属塩基と反応させることにより得られる塩の製造が開示されている。これらの塩は、有機工業用油に優れた清浄特性を付与する。
【0015】
特許文献4には、潤滑油、金属スルホネート、並びにアルキレンポリアミン、アルデヒドおよび置換フェノールの縮合物の少なくとも一種の金属塩を含む組成物の使用によって、天然ガスを燃料とする内燃機関の排気弁の後退を防止する方法が教示されている。
【0016】
特許文献5には、バリウム過塩基性カルシウムスルホネートとフェノール系酸化防止剤であるアルカリ土類アミノフェネートとの組合せからなる、有機熱媒液用の改善された汚れ止め添加剤が開示されている。
【0017】
特許文献6には、C8〜C40脂肪族アルキル置換ヒドロキシ芳香族、アルデヒドおよび
アミンの縮合反応から誘導された高度の環生成を有する、重合アルキル−ヒドロキシベンジルN置換アミンの製造が開示されている。
【0018】
特許文献7には、テトラプロペニルフェノール、ホルムアルデヒドおよびジエチレントリアミンから、反応体のモル比が1モルのテトラプロペニルフェノール対0.5〜0.85モルのホルムアルデヒド対少なくとも0.3モルのジエチレントリアミンである場合に
、顕著な粘度特性とアルカリ価特性を有するマンニッヒ塩基の塩を製造することが開示されている。
【0019】
特許文献8には、中間留分燃料油用の流動性向上剤として共付加炭化水素と組み合わせて使用するための、油溶性マンニッヒ塩基のホウ酸化誘導体の製造が開示されている。
【0020】
特許文献9には、プロピレン四量体でアルキル化したフェノールと直鎖アルファ−オレフィンでアルキル化したフェノールとからなるフェノール系混合物から、マンニッヒ塩基組成物及びそれらの金属塩を製造することが開示されている。
【0021】
特許文献10には、アルキル基の分子量が約600乃至約3000である高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物のマンニッヒ縮合物を含む添加剤組成物を含有する液体炭化水素燃焼燃料が開示されている。
【0022】
特許文献11には、ホルムアルデヒド、アミノ酸およびフェノールの反応生成物でキレート化した一族、一b族及び八族から選ばれた金属を含む有機金属添加剤を含有する新規な潤滑油組成物が開示されている。
【0023】
特許文献12、13及び14には、他の添加剤に加えてマンニッヒ反応生成物のカルシウム塩を含有する鉄道ディーゼル機関用の潤滑油組成物が開示されている。マンニッヒ塩基は、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物、特にパラ−アルキルフェノールを用いて製造される。生成物のTBNはおよそ160であった。
【0024】
一般に、マンニッヒ塩基は、アルキルフェノールをアルデヒドおよびアミンと反応させることにより製造される、ただし、アミンは第一級又は第二級脂肪族又は芳香族アミン又はポリアミンであり、そしてアルデヒドは脂肪族又は芳香族アルデヒドである。フェノールのアルキル基は、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。縮合反応中、任意に促進剤を使用してもよい。
【0025】
先行技術に係るマンニッヒ塩基の金属塩の製造方法は、一般に金属酸化物、水酸化物又はヒドロペルオキシドを添加することに依っている。塩の生成を促すために、任意にエチレングリコールを反応混合物に添加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許第3036003号明細書
【特許文献2】米国特許第3340190号明細書
【特許文献3】米国特許第3586629号明細書
【特許文献4】米国特許第3798163号明細書
【特許文献5】米国特許第3958624号明細書
【特許文献6】米国特許第4025316号明細書
【特許文献7】米国特許第4088586号明細書
【特許文献8】米国特許第4140492号明細書
【特許文献9】米国特許第4157308号明細書
【特許文献10】米国特許第4231759号明細書
【特許文献11】米国特許第4655949号明細書
【特許文献12】米国特許第4734211号明細書
【特許文献13】米国特許第4764296号明細書
【特許文献14】米国特許第4820432号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は、二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の新規な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の新規な製造方法であって、二酸化炭素とエチレングリコールの両原料としてエチレンカーボネートを使用する方法に関する。特に、本発明ではエチレンカーボネートを使用する反応条件下で、マンニッヒアルキルフェノールの本明細書で定義するような過塩基化が可能であり、同時に、炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の粘度は許容レベル内に、一般には100℃で1000cSt以下に保たれる。また、本発明
は、二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の製造方法であって、二酸化炭素とエチレングリコールを使用する方法にも関する。また、本発明は、二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を含む清浄分散酸化防止性添加剤組成物であって、二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物のCaに対するCO2の比が少なくとも0.01である添加
剤組成物にも関する。
【0029】
また、本発明は、二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を含む潤滑油添加剤にも関するものであり、添加剤は硫黄分が少なく、一般にはASTM試験第D4951−92番で測定したときに0.3パーセント以下である。本発明の二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物中の硫黄分は、二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の製造に使用した希釈剤によってもたらされるものと思われる。
【0030】
特には、本発明の二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の製造方法は、下記の方法からなる:
アルキル基が、得られる二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を油溶性とするのに充分な数の炭素原子を含むアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物、二族金属の酸化物、水酸化物又はC1〜C6アルコキシド、一種以上の促進剤、およびエチレンカーボネートまたはモノアルキル又はジアルキル置換のエチレンカーボネートから選ばれる下記構造を有するアルキレンカーボネートを、二酸化炭素およびアルキレングリコールをその場で生成させて二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を含む生成物を生成させるのに充分な時間と温度、および反応当量で混合させて反応混合物を生成させる方法。
【0031】
【化1】

【0032】
[ただし、R1およびR2は独立に、水素または炭素原子1〜3個を含むアルキルである]
【0033】
上記のアルキレンカーボネート構造において、R1とR2のうちの一方は水素であり、他方は水素またはメチルであることが好ましい。言い換えれば、アルキレンカーボネートはエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートであることが好ましい。より好ましくは、R1とR2は両方とも水素である、すなわちアルキレンカーボネートはエチレンカー
ボネートである。
【0034】
別の態様では、本発明の方法に使用されるアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を、前述したように二族金属塩で置き換えることができる。
【0035】
本発明の更に別の態様は、二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の製造方法であって、アルキレンカーボネートをC2〜C10アルキレング
リコールと二酸化炭素で置き換えた方法に関する。C2〜C10アルキレングリコールはエ
チレングリコールであることが好ましい。
【0036】
アルキレンカーボネートは、約15分乃至約120分の時間をかけて反応混合物に添加する。好ましくは、アルキレンカーボネートを約30分乃至約90分の時間をかけて反応混合物に添加し、より好ましくは、アルキレンカーボネートを約40分乃至約60分の時間をかけて反応混合物に添加する。
【0037】
本発明の方法に使用される促進剤は、一般にはC2〜C10アルキレングリコールである

【0038】
本発明の方法に任意に使用される促進剤としては、一般には水、C1〜C5モノ又はジアルコール、またはC2〜C10アルキレングリコール、またはそれらの混合物を挙げること
ができる。好ましくは、任意に使用される促進剤はC2〜C10アルキレングリコールであ
り、より好ましくは水である。
【0039】
任意に、本発明の方法はさらに、反応混合物をろ過して沈降物を除去することにより生成物を回収する工程を含む。
【0040】
本発明の二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の製造方法の別の態様は、下記の工程からなる:
(a)アルキル基が、得られる二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を油溶性とするのに充分な数の炭素原子を含むアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物、および一種以上の促進剤、および二族金属の酸化物、水酸化物又はC1〜C6アルコキシドを混ぜ合わせることにより反応混合物を形成する工程、そして
(b)該反応混合物を、エチレンカーボネートまたはモノアルキル又はジアルキル置換エチレンカーボネートから選ばれる、下記構造を有するアルキレンカーボネートと、二酸化炭素およびアルキレングリコールをその場で生成させ、二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を含む生成物を生成させるのに充分な時間と温度、そして反応当量で行なう工程。
【0041】
【化2】

【0042】
[ただし、R1およびR2は独立に、水素または炭素原子1〜3個を含むアルキルである]
【0043】
上記のアルキレンカーボネート構造において、R1とR2のうちの一方は水素であり、他
方は水素またはメチルであることが好ましい。言い換えれば、アルキレンカーボネートはエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートであることが好ましい。より好ましくは、R1とR2は両方とも水素である、すなわちアルキレンカーボネートはエチレンカーボネートである。
【0044】
本発明の方法の別の態様に使用されるアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物は、前述したように二族金属塩で置換することができる。
【0045】
別の態様の更に別の態様は、二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の製造方法であって、工程(b)のアルキレンカーボネートをC2〜C10アルキレングリコールと二酸化炭素で置き換えた方法に関する。C2〜C10アルキレングリコールはエチレングリコールであることが好ましい。
【0046】
アルキレンカーボネートは、約15分乃至約120分の時間をかけて反応混合物に添加する。好ましくは、アルキレンカーボネートを約30分乃至約90分の時間をかけて反応混合物に添加し、より好ましくは、アルキレンカーボネートを約40分乃至約60分の時間をかけて反応混合物に添加する。
【0047】
本発明の上記方法の工程(a)で使用される促進剤は、C2〜C10アルキレングリコー
ルである。
【0048】
この方法の工程(a)で任意に使用される促進剤は、一般には水、C1〜C5モノ又はジアルコール、またはC2〜C10アルキレングリコール、またはそれらの混合物である。好
ましくは、任意に使用される促進剤はC2〜C10アルキレングリコールであり、より好ま
しくは水である。
【0049】
任意に、この態様の方法はさらに、反応混合物をろ過して沈降物を除去することにより生成物を回収する工程を含む。
【0050】
本発明の二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の製造方法の別の態様は、下記の工程からなる:
(a)アルキル基が、得られる二族金属炭酸塩化された過塩基性アルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を油溶性とするのに充分な数の炭素原子を含むアルキルフェノールを、不活性炭化水素希釈剤の存在下でアルデヒドおよびアミンと混ぜ合わせることにより、第一の反応混合物を形成する工程、
(b)該第一反応混合物を、二族金属の酸化物、水酸化物又はC1〜C6アルコキシドおよび促進剤からなる第二の反応混合物と接触させて、第三の反応混合物を形成する工程、そして
(c)該第三反応混合物を、エチレンカーボネートまたはモノアルキル又はジアルキル置換エチレンカーボネートから選ばれる下記構造を有するアルキレンカーボネートと、二酸化炭素およびアルキレングリコールをその場で生成させて、二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を含む生成物を生成させるのに充分な時間と温度、そして反応当量で行なう工程。
【0051】
【化3】

【0052】
[ただし、R1およびR2は独立に、水素または炭素原子1〜3個を含むアルキルである]
【0053】
上記のアルキレンカーボネート構造において、R1とR2のうちの一方は水素であり、他方は水素またはメチルであることが好ましい。言い換えれば、アルキレンカーボネートはエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートであることが好ましい。より好ましくは、R1とR2は両方とも水素である、すなわちアルキレンカーボネートはエチレンカーボネートである。
【0054】
本発明の上記態様の工程(a)において、反応混合物の温度は約35℃乃至約170℃の範囲にある。
【0055】
更に別の態様では、二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の製造方法であって、工程(c)のアルキレンカーボネートをC2〜C10アルキ
レングリコールと二酸化炭素で置き換えた方法に関する。C2〜C10アルキレングリコー
ルはエチレングリコールであることが好ましい。
【0056】
アルキレンカーボネートは、約15分乃至約120分の時間をかけて反応混合物に添加する。好ましくは、アルキレンカーボネートを約30分乃至約90分の時間をかけて反応混合物に添加し、より好ましくは、アルキレンカーボネートを約40分乃至約60分の時間をかけて反応混合物に添加する。
【0057】
上記本発明の態様の方法の工程(b)で使用される促進剤は、C2〜C10アルキレング
リコールである。
【0058】
上記本発明の態様の工程(b)で任意に使用される促進剤は、一般には水、C1〜C5モノ又はジアルコール、またはC2〜C10アルキレングリコール、またはそれらの混合物で
ある。好ましくは、促進剤はC2〜C10アルキレングリコールであり、より好ましくは水
である。
【0059】
工程(a)において、アミンは、脂肪族アミン、芳香族アミン、エタノールアミンなどの多官能価アミン、またはそれらの混合物であってよく、少なくとも1個の活性水素またはメチレン基の存在により特徴付けられる少なくとも1個のアミノ基を含み、かつアミンは第一級アミノ基のみ、第二級アミノ基のみ、または第一級と第二級の両アミノ基を含む。
【0060】
脂肪族アミンは、アルキレンジアミン、ジアルキルアミン、ポリアルキレンポリアミン、またはそれらの混合物であってよい。芳香族アミンは、単環芳香族アミン、または二環芳香族アミンであってよい。
【0061】
工程(a)において、アルデヒドは、脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒド、複素環式アルデヒド、またはそれらの混合物であってよい。好ましくは、脂肪族アルデヒドはホル
ムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドであり、芳香族アルデヒドはベンズアルデヒドであり、そして複素環式アルデヒドはフルフラールである。
【0062】
工程(a)のアルキルフェノール、アルデヒドおよびアミンのモル比は、約1:1.8:1乃至約1:3:1である。
【0063】
アルキルフェノールのアルキル基は、直鎖アルキル基であっても分枝鎖アルキル基であってもよく、一般には炭素原子少なくとも10個を含み、好ましくは炭素原子約12個〜炭素原子約50個を含む。
【0064】
好ましくは、アルキルフェノールのアルキル基は、炭素原子約15〜約35個を含む主に直鎖のアルキル基約25乃至約100モルパーセントと、炭素原子約9〜約18個を含む分枝鎖アルキル基約75乃至約0モルパーセントを含む。好ましくは、アルキルフェノールのアルキル基は、炭素原子約15〜約35個を含む主に直鎖のアルキル基約40乃至約70モルパーセントと、炭素原子約9〜約18個を含む分枝鎖アルキル基約60乃至約30モルパーセントを含む。
【0065】
好ましい態様では、アルキルフェノールのアルキル基は主としてフェノール環のパラ位に結合している。アルキル基のパラ位結合を含むアルキルフェノールは、全アルキルフェノールの約70乃至約95重量パーセントであることが好ましい。より好ましくは、アルキル基のパラ位結合を含むアルキルフェノールは、全アルキルフェノールの約80乃至約95重量パーセントである。
【0066】
二族金属の酸化物、水酸化物又はC1〜C6アルコキシドは、カルシウム、バリウム及びマグネシウムの酸化物、水酸化物又はC1〜C6アルコキシドおよびそれらの混合物からなる群より選ばれる。好ましくは、水酸化カルシウムである。
【0067】
任意に、この態様の方法はさらに、反応混合物をろ過して沈降物を除去することにより生成物を回収する工程を含む。
【0068】
本発明の炭酸塩化法は、Caに対するCO2の比が少なくとも約0.01、好ましくは
約0.1乃至約0.6の範囲、より好ましくは約0.3乃至約0.5の範囲にある二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の製造に特に有用である。
【0069】
本発明の方法は、バッチ法でも連続法でも実施することができる。圧力の多少の変化は、本発明の炭酸塩化法に僅かな影響しか及ぼさないと思われる。
【0070】
また、本発明は、二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を含む清浄分散酸化防止性添加剤であって、Caに対するCO2の比が少なくとも
約0.01、好ましくは約0.1乃至約0.6の範囲、より好ましくは約0.3乃至約0.5の範囲にある添加剤にも関する。
【0071】
本発明の清浄分散酸化防止性添加剤は、マンニッヒアルキルフェノールがアルキルフェノール、アルデヒドおよび脂肪族アミン、芳香族アミン、多官能価アミン又はそれらの混合物の縮合物であり、該添加剤のCaに対するCO2の比が少なくとも約0.01、好ま
しくは約0.1乃至約0.6の範囲、より好ましくは約0.3乃至約0.5の範囲にある、二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を含む。
【0072】
また、本発明は、アルキルフェノール、アルデヒドおよびN−フェニル−1,4−フェ
ニレンジアミンの反応生成物からなるマンニッヒ縮合物であって、アルキルフェノールのアルキル基が炭素原子約10個〜炭素原子約50個を含む直鎖アルキル基または分枝鎖アルキル基である縮合物にも関する。好ましくは、アルキルフェノールのアルキル基は炭素原子約12個〜炭素原子約24個を有する。アルデヒドは、脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒド、複素環式アルデヒド、またはそれらの混合物である。好ましくは、脂肪族アルデヒドはパラホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒドである。より好ましくは、本発明のマンニッヒ縮合物においてアルキルフェノールのアルキル基は炭素原子約12個を有し、アルデヒドはパラホルムアルデヒドであり、そしてアミンはN−フェニル−1,4−フェニレンジアミンである。
【発明の効果】
【0073】
本発明の方法を用いるアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の炭酸塩化は、先行技術に係るアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の塩と比較して、生成物の如何なる質的損失も無しに、生成物に良好なアルカリ価保有および許容可能な粘度をもたらす。また、本発明の方法の生成物は、高い塩基分、少ない粗生成沈降物および速いろ過速度を含めて化学的及び物理的性状も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
[定義]
以下の用語は、本明細書で使用するとき、特に断わらない限りは以下の意味を有する:
【0075】
「アルコキシ」は、アルコールと反応性金属の反応生成物として生成しうる化合物を意味する。
【0076】
「アルキレングリコール」は、隣接する炭素原子上に2個のヒドロキシ基を持つ脂肪族ジオールを意味する。
【0077】
「アルキルフェノール」は、1個以上のアルキル置換基を持つフェノール基を意味し、そのうちの少なくとも1個はフェノールに油溶性を付与するのに充分な数の炭素原子を有する。
【0078】
「炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物」は、アルキルフェノールをアルデヒドおよびアミンと反応させて製造したマンニッヒ塩基を、本発明の方法に記載したように炭酸塩化と過塩基化した後に得られる生成物を意味する、ただし、アミンは第一級又は第二級脂肪族又は芳香族アミン又はポリアミンであり、アルデヒドは脂肪族又は芳香族アルデヒドである。
【0079】
「エチレンカーボネート」の使用には、プロピレンカーボネート等のようなアルキル置換アルキレンカーボネートも含まれる。
【0080】
「過塩基性」は、本明細書で使用するとき、カルシウムに対する二酸化炭素の比が少なくとも0.01で0.6ぐらい高くてもよい、そのような二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を説明するものである。
【0081】
「促進剤」は、本発明の方法における炭酸塩化工程で促進補助をすることができるC2
〜C10アルキレングリコールを意味する。
【0082】
「任意に使用される促進剤」は、本発明の方法で補助することができる任意の極性化学物質、例えば水、C1〜C5モノ又はジアルコール、またはエチレングリコール、またはそれらの混合物を意味する。
【0083】
「一種以上の促進剤」は、上記に定義したように促進剤または任意に使用される促進剤を意味する。
【0084】
「反応当量」は、エチレングリコールおよび二酸化炭素と同等の任意の物質、例えばカルボン酸の半エステルを意味する。
【0085】
硫黄分は、ASTM試験第D4951−92番により測定した。
【0086】
「全塩基価」又は「TBN」は、試料1グラムにおけるKOHのミリグラムと等価な塩基の量を意味する。試料のTBNは、ASTM試験第D2896番またはその他任意の同様の方法により決定することができる。
【0087】
二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物のカルシウム分は、次のような方法を使用して測定した:
【0088】
0.5グラム乃至2.0グラムの試料を、プラスチックライニングを施したねじ込キャップ付きの8ミリリットルガラスびんに入れ、そして8%の鉱油、340Dおよび50ppmのAg内部標準元素を含むオキソ−キシレンの溶液で希釈した。誘導結合高周波プラズマ発光分光分析計で誘導結合プラズマを用いて分析を行う。結果を、百万分の部(w/w)または重量パーセントで記載する。
【0089】
二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の二酸化炭素分は、次のような方法を使用して測定した:
【0090】
およそ100mgの試料を計量して試験管に入れ、p−トルエンスルホン酸で酸性化してCO2を遊離させる。遊離した気体を数個のスクラバーに通して洗い流し、妨害物質を
取り除く。得られた気体流を、モノエタノールアミン(MEA)およびpH感受指示薬を含む溶液に吹き込む。CO2を溶液に加えることでpHが変化して、指示薬の色が変わる
。色変化を可視分光光度計で検出し、そして制御電量分析計により溶液中の電極でヒドロキシルイオンを発生させて、pHを元の値に戻す。滴定充填量は、クーロンの法則により試料中の酸により発生した炭素の元の量に遡って相関している。その結果を、重量パーセントCO2で記す。
【0091】
二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の動粘度は、次のような改良ASTM試験第D445番を使用して測定した:
【0092】
一部(1〜5ミリリットル)の試料を、検量式ザイトフッホス腕木粘度計に充填する。試料および粘度計を温度制御浴に浸して熱平衡状態にする。粘度計に試料のレベルの印を付ける。瞬間的に僅かな圧力を掛けることによって試料を流れさせ、流れ始めた後は試料を重力で流す。試料が粘度計の2つの印の間を流れる時間を測定する。この時間は、前もって決定した検量定数によって試料の粘度に相関している。結果を、100℃センチストークスとして記載する。
【0093】
特に断わらない限りは、比率は全て重量パーセントであり、圧力は大気圧である。
【0094】
二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を水酸化カルシウムで中和したのち炭酸塩化工程を追加することによって、二族金属アルキルフェノールマンニッヒのアルカリ価保有を増加できることが測定された。「過塩基性」は、本明細書で使用するとき、カルシウムに対する二酸化炭素の比が少なくとも0.01で0.6
ぐらい高くてもよい、そのような二族金属アルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を説明する用語である。二族金属アルキルフェノールマンニッヒ縮合物の中和は一般には、水酸化カルシウムを用いて炭酸塩化無しで行われるので、逆に、二族金属炭酸塩化されていないアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物では、カルシウムに対する二酸化炭素の同等の比率は0.0である。
【0095】
如何なる理論にも結びつかないが、炭酸塩化工程の二族金属炭酸塩化過塩基性生成物の一つの可能な化学構造は、下記のように表せると考えられる:
【0096】
【化4】

【0097】
[ただし、Rはアルキルであり、Aはアミンまたはポリアミンである]
【0098】
今日の自動車用の潤滑油組成物は、0.3パーセント以下という非常に低い硫黄レベルを要求していて、そして将来的には組成物は更に低いレベルの硫黄を要求することになろう。従って、添加剤自体が、完成潤滑油製品に硫黄を僅かしか、あるいは全く加えてはならない。しかしながら、二族金属過塩基性硫化アルキルフェノールなどの従来の清浄分散添加剤は、添加剤の硫黄分が高いために完成潤滑油製品の硫黄分を増加させている。本発明の炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物添加剤には、添加剤の最終硫黄分が0.3パーセント以下であることで、従来の清浄分散添加剤を越える明らかな利点がある。なお、その硫黄分はおそらくは、炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を製造するのに使用した希釈油中に存在したものである。炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物自体は硫黄を含んでいない。
【0099】
前述したように、本発明は、エチレンカーボネートまたはアルキレン置換エチレンカーボネートを用いて、アルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を迅速に炭酸塩化する新規な方法にも関する。我々は、炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の製造の炭酸塩化工程で、エチレンカーボネートを二酸化炭素とエチレングリコールの両原料として使用できることを発見した。エチレンカーボネートを使用する反応条件では、アルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の迅速な炭酸塩化が、先行技術に係る方法では可能でなかった炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の製造に適している。
【0100】
本発明の方法によるアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の炭酸塩化は、先行技術に係るアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の塩と比較して、生成物の如何なる質的損失も無しに、生成物に良好なアルカリ価保有および許容可能な粘度をもたらす。また、本発明の方法の生成物は、高い塩基分、少ない粗生成沈降物および速いろ過速度を含めて化学的及び物理的性状も良好である。
【実施例】
【0101】
[実施例の一般操作] 炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の製造
以下に、本発明に従う炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の製造で一般的に使用した操作について記載する。表1及び表6に、実施例1〜46及びA−Eの製造に用いた特定の量を記す。
【0102】
金属製のじゃま板インサート、タービン羽根型機械的撹拌器および還流冷却器(頂部を密閉)を備えた4リットル五つ口樹脂製かま型反応器に、下記の成分を入れて混ぜた:
10〜C15アルキルフェノール 804.8グラム
消泡剤、ポリジメチルシロキサン(ダウ・コーニング社より購入した
ダウ・コーニング200(商品名)) 7.5グラム
パラホルムアルデヒド 168.2グラム
150ニュートラル油(エクソンモービル社より購入、0.278
及び0.374パーセントの硫黄を含有) 480.8グラム
【0103】
反応器の内容物を600rpmで撹拌し、温度を50℃に上げ、そしてモノメチルアミン88.4gを1/2時間かけて添加した。次の1時間で温度を70℃乃至95℃に上げ、温度を95℃以下に保つために必要に応じて冷却を行った。次いで、温度を1/2時間で140℃まで上げ、その後1/2時間の間140℃に維持した。この時間の終りに大気により減圧を中断し、そして硫黄0.278及び0.374パーセントを含む150ニュートラル油244.4グラムを、反応器に加えた。反応器を80℃乃至90℃に冷却し、そして下記の追加成分を反応器に加えた:
水酸化カルシウム 213.6グラム
水 18.8グラム
【0104】
圧力を500mmHgに下げながら、反応器の温度を120℃に上げた。大気により減圧を中断して、エチレングリコール58.6グラムを1/2時間かけて反応混合物に添加した。温度を120℃に維持しながら、次の1/2時間で圧力を徐々に500mmHgまで下げた。
【0105】
次の1時間で温度を160℃に上げた。その後、窒素ガスで減圧を中断して、エチレンカーボネートを1/2時間かけて反応混合物に添加した。
【0106】
次いで、反応器を最大に減圧しながら、温度を200℃に上げた。温度を200℃で1/2時間維持した。
【0107】
次いで、窒素ガスで減圧を中断して、150ニュートラル油233.2グラムを反応混合物に加えて混合した。
【0108】
ろ過助剤を加えてろ過した後、生成物を集めた。
【0109】
[実施例1〜46] 炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の製造
実施例1〜29では反応混合物に添加したアミンが単一のアミンであり、一方実施例30〜46を二種類のアミンの組合せを用いて実施したこと以外は、上述した操作を使用して実施例1〜46を実施した。試験実施例1〜46で一定のままであった成分は、充填モル比で1.942のパラホルムアルデヒド、0.899のCa(OH)2、および0.3
62の水であった。
【0110】
下記表1に、実施例1〜29で変更した成分を列挙する。
【0111】
【表1】

【表2】

【0112】
下記表2〜表5に、実施例1〜29で得られた結果を記す。
【0113】
表2は、マンニッヒ塩基を製造するのにモノメチルアミンを用いた場合に得られた結果を示す。
【0114】
表 2
─────────────────────────────────────
実施例 CO2/Ca TBN 硫黄 粘度 沈降物
(重量%) (100℃cSt) (容量%)
─────────────────────────────────────
1 0.394 159 0.21 154 NA*
2 0.425 188 0.17 219 12.0
3 0.424 200 0.20 402 3.6
4 0.350 196 0.16 551 4.8
5 0.342 207 0.17 693 1.4
6 0.422 186 0.20 103 4.0
7 0.492 180 0.14 214 10.0
─────────────────────────────────────
*:データ入手不能
【0115】
表3は、マンニッヒ塩基を製造するのにジエチレントリアミンを用いた場合に得られた結果を示す。
【0116】
表 3
─────────────────────────────────────
実施例 CO2/Ca TBN 硫黄 粘度 沈降物
(重量%) (100℃cSt) (容量%)
─────────────────────────────────────
8 0.316 258 0.18 302 11.0
9 NA* 252 0.20 609 14.0
10 0.310 221 0.16 1181 14.0
11 0.336 200 0.19 599 1.3
12 0.489 155 0.16 251 16.0
─────────────────────────────────────
*:データ入手不能
【0117】
表4は、マンニッヒ塩基を製造するのにエタノールアミンを用いた場合に得られた結果を示す。実施例13では、生成物が非常に固体状であったためにデータが得られなかった。
【0118】
表 4
─────────────────────────────────────
実施例 CO2/Ca TBN 硫黄 粘度 沈降物
(重量%) (100℃cSt) (容量%)
─────────────────────────────────────
14 0.436 208 0.64 852 0.8
15 0.347 216 0.16 1103 1.5
16 0.390 214 0.17 1374 0.8
17 0.385 211 0.15 1282 2.2
18 0.374 208 0.13 748 0.5
19 0.401 209 <0.05 721 0.5
20 0.392 199 0.13 685 1.2
21 0.384 209 0.15 831 0.3
22 0.400 207 <0.12 1042 0.3
23 0.385 205 <0.04 917 0.3
24 0.382 195 0.19 331 0.8
25 0.390 200 0.19 525 0.9
26 0.413 196 0.13 403 4.0
27 0.369 197 0.16 349 6.8
28 0.369 197 0.16 349 6.8
─────────────────────────────────────
【0119】
表5は、マンニッヒ塩基を製造するのにN−フェニル−1,4−フェニレンジアミンを用いた場合に得られた結果を示す。
【0120】
表 5
─────────────────────────────────────
実施例 CO2/Ca TBN 硫黄 粘度 沈降物
(重量%) (100℃cSt) (容量%)
─────────────────────────────────────
29 0.144 87 0.10 374 8.0
─────────────────────────────────────
【0121】
下記表6に、実施例30〜46で変更した成分を列挙する。
【0122】
ベンゼンのアルキル基が80パーセントの直鎖C20〜C24と20パーセントの分枝鎖C10〜C15であるアルキルベンゼンスルホネート50グラムを、実施例35、36、38、39及び45の反応混合物に添加した。実施例45にはエチレングリコールを添加しなかった。
【0123】
【表3】

【0124】
下記表7及び表8に、表6の上記実施例30〜46で得られた結果を記す。
【0125】
表7は、マンニッヒ塩基を製造するのに二種類のアミンの組合せである、モノメチルアミンと1,4−フェニレンジアミンを用いた場合に得られた結果を示す。
【0126】
表 7
─────────────────────────────────────
実施例 CO2/Ca TBN 硫黄 粘度 沈降物
(重量%) (100℃cSt) (容量%)
─────────────────────────────────────
30 0.413 194 0.19 307 5.6
31 0.425 176 0.17 175 6.0
32 0.411 186 NA* 284 8.4
33 NA* 152 0.23 117 9.2
34 0.397 154 0.19 100 NA*
35 0.446 160 0.23 89 12.3
36 0.414 171 0.27 113 NA*
37 0.455 197 0.23 502 3.2
38 0.450 193 0.26 NA* 3.2
39 0.454 190 <0.06 178 5.0
─────────────────────────────────────
*:データ入手不能
【0127】
表8は、マンニッヒ塩基を製造するのに二種類のアミンの組合せである、エタノールアミンと1,4−フェニレンジアミンを用いた場合に得られた結果を示す。
【0128】
表 8
─────────────────────────────────────
実施例 CO2/Ca TBN 硫黄 粘度 沈降物
(重量%) (100℃cSt) (容量%)
─────────────────────────────────────
40 0.437 183 0.25 573 NA*
41 0.356 190 0.08 681 5.6
42 0.347 196 0.07 947 2.4
43 0.323 203 0.05 926 2.4
44 0.349 195 0.19 967 2.2
44 0.386 195 0.0 966 4.0
45 0.385 102 0.21 59 10.4
46 0.350 201 0.00 589 4.0
─────────────────────────────────────
*:データ入手不能
【0129】
[実施例A〜E] エチレングリコールと二酸化炭素を用いる炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物の製造
アルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を炭酸塩化するのに、エチレンカーボネートをエチレングリコールおよび二酸化炭素で置き換えたこと以外は、上記実施例30〜46で使用したのと同じ操作を使用して実施例A〜Eの実験を行った。実施例A〜Eで一定のままであった成分は、充填モル比で1.942のパラホルムアルデヒド、0.899のCa(OH)2、および0.362の水であった。エチレングリコールを1/2時間かけて添
加し、また二酸化炭素を1時間かけて添加した。
【0130】
実施例A〜Dでは、ベンゼンのアルキル基が80パーセントの直鎖C20〜C24と20パーセントの分枝鎖C10〜C15であるアルキルベンゼンスルホネート50グラムを反応混合物に添加した。
【0131】
【表4】

【0132】
下記表Bに、実施例A〜Eで得られた結果を記す。
【0133】
表 B
─────────────────────────────────────
実施例 CO2/Ca TBN 硫黄 粘度 沈降物
(重量%) (100℃cSt) (容量%)
─────────────────────────────────────
A 0.480 134 0.29 78 NA*
B 0.600 130 0.17 88 NA*
C 0.375 140 0.29 162 8.0
D 0.564 149 0.26 235 7.2
E 0.456 198 0.31 434 7.2
─────────────────────────────────────
*:データ入手不能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を製造するための下記の方法:
アルキル基が、得られる二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を油溶性とするのに充分な数の炭素原子を含むアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物、二族金属の酸化物、水酸化物又はC1〜C6アルコキシド、一種以上の促進剤、およびエチレンカーボネートまたはモノアルキル又はジアルキル置換のエチレンカーボネートから選ばれる下記構造を有するアルキレンカーボネート:
【化1】

[R1およびR2は独立に、水素または炭素原子1〜3個を含むアルキルである]
を、二酸化炭素およびアルキレングリコールをその場で生成させて二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を含む生成物を生成させるのに充分な時間と温度、および反応当量で混合させて反応混合物を生成させる。
【請求項2】
二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を製造するための下記の方法:
アルキル基が、得られる二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を油溶性とするのに充分な数の炭素原子を含むアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物、二族金属の酸化物、水酸化物又はC1〜C6アルコキシド、一種以上の促進剤、およびC2〜C10アルキレングリコールと二酸化炭素とを、二族金属炭酸塩化された過
塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を含む生成物を生成させるのに充分な時間と温度で行なって反応混合物を生成させる。
【請求項3】
2〜C10アルキレングリコールがエチレングリコールである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アルキルフェノールのマンニッヒ縮合物が二族金属の塩である請求項2に記載の方法。
【請求項5】
二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を製造するための下記の工程からなる方法:
(a)アルキル基が、得られる二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を油溶性とするのに充分な数の炭素原子を含むアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物、および一種以上の促進剤、および二族金属の酸化物、水酸化物又はC1〜C6アルコキシドを混ぜ合わせることにより反応混合物を形成する工程、そして
(b)該反応混合物を、エチレンカーボネートまたはモノアルキル又はジアルキル置換エチレンカーボネートから選ばれる、下記構造を有するアルキレンカーボネート:
【化2】

[R1およびR2は独立に、水素または炭素原子1〜3個を含むアルキルである]
と、二酸化炭素およびアルキレングリコールをその場で生成させ、二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を含む生成物を生成させるのに充分な時間と温度、そして反応当量で行なう工程。
【請求項6】
二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を製造するための、下記の工程からなる方法:
(a)アルキル基が、得られる二族金属炭酸塩化された過塩基性アルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を油溶性とするのに充分な数の炭素原子を含むアルキルフェノールを、不活性炭化水素希釈剤の存在下でアルデヒドおよびアミンと混ぜ合わせることにより、第一の反応混合物を形成する工程、
(b)該第一反応混合物を、二族金属の酸化物、水酸化物又はC1〜C6アルコキシドおよび促進剤からなる第二の反応混合物と接触させて、第三の反応混合物を形成する工程、そして
(c)該第三反応混合物を、エチレンカーボネートまたはモノアルキル又はジアルキル置換エチレンカーボネートから選ばれる下記構造を有するアルキレンカーボネート:
【化3】

[R1およびR2は独立に、水素または炭素原子1〜3個を含むアルキルである]
と、二酸化炭素およびアルキレングリコールをその場で生成させて、二族金属炭酸塩化された過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を含む生成物を生成させるのに充分な時間と温度、そして反応当量で行なう工程。
【請求項7】
アルキルフェノールのマンニッヒ縮合物が二族金属の塩である請求項1、5または6のいずれかの項に記載の方法。
【請求項8】
アルキレンカーボネートを、約15分乃至約120分の時間をかけて反応混合物に添加する請求項1、5または6のいずれかの項に記載の方法。
【請求項9】
アルキレンカーボネートを、約30分乃至約90分の時間をかけて反応混合物に添加する請求項1、5または6のいずれかの項に記載の方法。
【請求項10】
1とR2のうちの一方が水素であり、そして他方が水素またはメチルである請求項1、5または6のいずれかの項に記載の方法。
【請求項11】
アルキレンカーボネートがエチレンカーボネートである請求項1、5または6のいずれかの項に記載の方法。
【請求項12】
促進剤がC2〜C10アルキレングリコールからなる請求項1、5または6のいずれかの
項に記載の方法。
【請求項13】
第二の促進剤が、水、C1〜C5モノ又はジアルコール、エチレングリコールまたはそれらの混合物からなる請求項1、5または6のいずれかの項に記載の方法。
【請求項14】
さらに、反応混合物をろ過して沈降物を除去することにより生成物を回収する工程を含む請求項1、5または6のいずれかの項に記載の方法。
【請求項15】
アミンが、脂肪族アミン、芳香族アミン、多官能価アミンまたはそれらの混合物であって、少なくとも一個の活性水素またはメチレン基の存在により特徴付けられる少なくとも一個のアミノ基を含み、かつアミンが第一級アミノ基のみか、第二級アミノ基のみか、あるいは第一級と第二級の両アミノ基を含んでいる請求項1、5または6のいずれかの項に記載の方法。
【請求項16】
脂肪族アミンが、アルキレンジアミン、ジアルキルアミン、ポリアルキレンポリアミンまたはそれらの混合物である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
芳香族アミンが、単環芳香族アミン、二環芳香族アミンまたはそれらの混合物である請求項15に記載の方法。
【請求項18】
アルデヒドが、脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒド、複素環式アルデヒドまたはそれらの混合物である請求項1、5または6のいずれかの項に記載の方法。
【請求項19】
脂肪族アルデヒドがホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
芳香族アルデヒドがベンズアルデヒドである請求項18に記載の方法。
【請求項21】
複素環式アルデヒドがフルフラールである請求項18に記載の方法。
【請求項22】
アルキルフェノール、アルデヒドおよびアミンのモル比が約1:1.8:1乃至約1:3:1である請求項1、5または6のいずれかの項に記載の方法。
【請求項23】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子少なくとも10個を含む直鎖アルキル基または分枝鎖アルキル基である請求項1、5または6のいずれかの項に記載の方法。
【請求項24】
直鎖アルキル基または分枝鎖アルキル基が、炭素原子約12個〜炭素原子約50個を含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子約15〜約35個を含む主に直鎖のアルキル基約25乃至約100モルパーセントと、炭素原子約9〜約18個を含む分枝鎖アルキル基約75乃至約0モルパーセントを含む請求項23に記載の方法。
【請求項26】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子約15〜約35個を含む主に直鎖のアルキル基約40乃至約70モルパーセントと、炭素原子約9〜約18個を含む分枝鎖アルキル基約60乃至約30モルパーセントを含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
アルキルフェノールのアルキル基が主としてフェノール環のパラ位に結合している請求項1、5または6のいずれかの項に記載の方法。
【請求項28】
アルキル基のパラ位結合を含むアルキルフェノールが、全アルキルフェノールの約70乃至約95重量パーセントである請求項27に記載の方法。
【請求項29】
二族金属の酸化物、水酸化物又はC1〜C6アルコキシドが、カルシウム、バリウム及びマグネシウムの酸化物、水酸化物又はC1〜C6アルコキシドおよびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項1、5または6のいずれかの項に記載の方法。
【請求項30】
二族金属の酸化物、水酸化物又はC1〜C6アルコキシドが水酸化カルシウムである請求項29に記載の方法。
【請求項31】
生成物のCaに対するCO2の比が約0.01乃至約0.6の範囲にある請求項1、5
または6のいずれかの項に記載の方法により製造された生成物。
【請求項32】
Caに対するCO2の比が約0.01乃至約0.6の範囲にある二族金属炭酸塩化され
た過塩基性のアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物を含む清浄分散酸化防止性添加剤。
【請求項33】
Caに対するCO2の比が約0.3乃至約0.5の範囲にある請求項32に記載の清浄
分散酸化防止性添加剤。
【請求項34】
Caに対するCO2の比が約0.01乃至約0.6の範囲にある二族金属炭酸塩化で過
塩基性とされたアルキルフェノールのマンニッヒ縮合物[ただし、アルキルフェノールのマンニッヒ縮合物は、アルキルフェノール、アルデヒドおよび脂肪族アミン、芳香族アミン、多官能価アミン又はそれらの混合物の縮合物である]を含む清浄分散酸化防止性添加剤。
【請求項35】
該縮合物添加剤のCaに対するCO2の比が約0.3乃至約0.5の範囲にある請求項
34に記載の清浄分散酸化防止性添加剤。
【請求項36】
アルキルフェノール、アルデヒドおよびN−フェニル−1,4−フェニレンジアミンの反応生成物からなるマンニッヒ縮合物。
【請求項37】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子約10個〜炭素原子約50個を含む直鎖アルキル基または分枝鎖アルキル基である請求項36に記載の縮合物。
【請求項38】
アルキルフェノールのアルキル基が、炭素原子約12個〜炭素原子約24個を含む請求項37に記載の縮合物。
【請求項39】
アルデヒドが、脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒド、複素環式アルデヒドまたはそれらの混合物である請求項36に記載の縮合物。
【請求項40】
脂肪族アルデヒドがパラホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒドである請求項39に記載の縮合物。

【公開番号】特開2011−213725(P2011−213725A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107425(P2011−107425)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【分割の表示】特願2004−328888(P2004−328888)の分割
【原出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】