二核酵素の強力な阻害剤としてのジアリールアルカン類
本発明は、活性な植物抽出物およびこれらの抽出物の中で二核酵素の作用を特異的に阻害する特定の化合物(ジアリールアルカンおよび/またはジアリールアルカノール)を識別するために酵素阻害アッセイを化学的デレプリケーション法と組み合わせる方策を実施する。本発明に含まれるのは、二核酵素、特にチロシナーゼの活性を阻害し、メラニンの過剰生成を防止する1つまたは複数のジアリールアルカンおよび/またはジアリールアルカノールで構成される物質の組成物である。本発明は二核酵素、特にチロシナーゼの活性を阻害するための方法、および二核酵素の作用に関連する疾病および状態を予防および治療するための方法もやはり提供する。本発明はさらに、メラニンの過剰生成およびそれに関連する皮膚の疾病と状態を予防および治療するための方法を含む。二核酵素の作用およびメラニンの過剰生成に関連する疾病および状態を予防および治療するための方法は、合成された、および/または1つまたは複数の植物から単離された1つまたは複数のジアリールアルカンおよび/またはジアリールアルカノールを含む組成物の有効な量を医薬として許容可能な担体と一緒に、必要とする宿主に投与することを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年5月28日に提出され、その全文を本願明細書に参照で組み入れられる「Diarylalkanes as Potent Inhibitors of Binuclear Enzymes」という表題の米国仮特許出願公開第60/575,599号明細書の恩典を権利主張するものである。
【0002】
本発明は概して、二核酵素が介在する疾病および状態の予防および治療に関する。特に、本発明は二核活性部位を有する酵素の活性を阻害する方法を含む。本発明に含まれるものは1つまたは複数のジアリールアルカン(類)で構成される新規の組成物である。本発明のジアリールアルカン類は1つまたは複数の植物源から単離することが可能であり、または有機合成によって得ることが可能である。本発明にさらに含まれるものはこれらの化合物を天然源から単離するための方法およびこれらの化合物を合成するための方法である。一実施形態では、これらのジアリールアルカン類は植物源から単離する天然の化合物の合成的化学修飾によって得られる。
【背景技術】
【0003】
皮膚の過剰色素沈着を阻止または予防することが可能な製品に関して大きな需要が存在する。皮膚の天然色素であるメラニンはメラニン細胞の中に存在する膜結合オルガネラであるメラノソームで合成される含窒素高分子化合物である。メラニンは肌質(遺伝的素質)および環境条件に応じて異なった濃度で生成される。メラニン細胞は表皮の基底膜に生じる細胞であって、細胞含有量の5%と10%の間の割合を占める(1cm2当たり約1200〜1500のメラニン細胞)。紫外(UV)光といった要因で刺激されると、メラニン細胞は一層急速に分裂し、それにより、さらに大量のメラニンを生成する。その後、メラニンは成熟メラノソームで表皮の角化細胞へと輸送され、茶色の肌色として目に見えるようになる。
【0004】
ヒトの皮膚のメラニン細胞の数は肌の色に関係なく程度の差はあるが同じである。肌の色は生成されるメラニンの量およびタイプ(黒色のユーメラニンまたは黄色から赤褐色のフェオメラニン)に大きく依存する。アジア人および皮膚の白い人々は皮膚の黒い人々よりも低レベルのユーメラニンを有し、したがって放射の影響に対抗して低い防護を有する。赤毛の人々はフェオメラニンの色素沈着で特徴付けられ、光防護を殆どまたは全く有さない。付け加えると、皮膚内のメラニンの分布もやはり多様である。白い皮膚の人々では色素の大部分が基底層中にあり、それに対して黒い皮膚の人々ではメラニンは全体に広がって角質層の中に達する。
【0005】
メラニンの過剰生成は様々なタイプの異常な皮膚色、毛色、およびその他の皮膚の疾病および状態の原因になりかねない。皮膚の色素沈着疾患に関連して主として2つの状態がある。UV曝露および老化によって引き起こされる異常に高レベルのメラニンを含む皮膚の黒化、および結果として老人斑、肝斑、および薬物および外傷/疾病で誘発される色素沈着過度につながる皮膚色素の異常な分布である(Seiberg et al.(2000)J.Invest.Dermatol.115:162、Paine et al.(2000)J.Invest.Dermatol.116:587)。
【0006】
メラニン形成(メラニンの生成)の調節因子は図1に例示されるように様々な方式で機能するように設計または選択することが可能である。図1を参照すると、これらはメラノソーム構造の調節に直接作用してメラニン合成の前に機能することが可能であり、メラニンの合成に含まれるチロシナーゼなどの酵素の生成または機能を阻害することによって作用することが可能であり、ユーメラニン/フェオメラニンの比を変えることが可能であるかまたはメラニン細胞から角化細胞へのメラノソームの移送に関与する制動メカニズムによって機能することが可能である(Briganti et al.(2003)Pigment Cell Research 16:101〜110)。
【0007】
チロシナーゼはメラニンの生成に重要な酵素である。これは3つの反応、すなわち3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)へのチロシンのヒドロキシル化、DOPAキノンへのDOPAの酸化、およびインドールキノンへのDHI(5,6−ジヒドロキシインドール)の酸化を触媒する。(Hearing et al.(1991)FASEB 53:515)。チロシナーゼがその触媒活性のために基質と二価の金属イオンの両方を必要とすることは判定されている。皮膚の色を薄くする目的でメラニンの合成を阻害するために現在使用される方法は主として、直接的にチロシナーゼ自体と相互作用するか、または間接的に例えば必要な金属イオンを錯化するかのどちらかによってチロシナーゼ活性を阻害する物質を基本としている。
【0008】
チロシナーゼはタイプ3の銅タンパク質の部類に属し、活性部位に2つの銅イオンを有する。チロシナーゼの活性部位の構造の研究は、これら2つの銅イオンが接近した間隔にあること、および各々のイオンが図2に例示されるように3つのヒスチジンへと側鎖のN−ε窒素原子を通じて配位させられることを明らかにした(Pfiffner and Lerch(1981)Biochem.20:6029、Cuff et al.(1998)J.Mol.Biol.278:855)。二核の銅イオンは3通りの主要な酸化還元形式、すなわちCuI−CuI還元形、過酸化物として可逆的にO2に結合するCuII−O2−CuII形、および通常ではCu2+イオンが小さいリガンドによって架橋される酵素の静止形で存在することが可能である。CuII−O2−CuIIの酸化還元状態がチロシナーゼの酵素活性に重要であることは判定されている。この状態では、チロシナーゼは(チロシンなどの)モノフェノールのオルトの位置への第2のヒドロキシル基の導入、メラニンの生合成に重要である反応を触媒する。
【0009】
チロシナーゼの活性部位でモノフェノールの接近、リガンド形成、または酸化を妨害するどのような化合物もチロシナーゼの有効な阻害剤となり、場合によってはメラニン生成の減少およびさらに薄い皮膚の色に結び付くであろう。概して述べると、チロシナーゼの活性部位の銅イオンは酸素、窒素、硫黄およびハロゲンの孤立電子対の電子で容易にキレートすることが可能である(Weder et al.(1999)Inorg.Chem.38:1736)。図3は知られているいくつかのチロシナーゼ阻害剤(Briganti et al.(2003)Pigment Cell Research 16:101〜110、Seo et al.(2003)J.Agric.Food Chem.51:2837)の構造および作用のメカニズムを例示している。
【0010】
図3を参照すると、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)に類似した構造を有する化合物、例えばヒドロキノンは両方共、チロシナーゼを阻害し、やはりメラニン細胞溶解剤であることが理解され得る。(米国特許第5,523,077号)。例えば、代表的なクマコケモモであるUvae ursiの葉から単離されるアルブチンは天然由来のヒドロキノンのβ−グルコピラノシドであり、チロシナーゼを阻害してヒトのメラニン細胞内のメラニン合成に影響を与える(Chakraborty et al.(1998)Pigment Cell Res.11:206、米国特許第5,980,904号)。アルブチンの作用のメカニズムはチロシナーゼの活性部位での結合に関するL−チロシンまたはL−ドーパとの競合を含む。これはタンパク質の発現または合成を抑制しない。(Maeda and Fukuda(1996)J.Pharmacol.Exp.276:765)。合成アルブチン型の化合物もやはりヒトのチロシナーゼを強力に阻害する。(Sugimoto et al.(2003)Chem.Pharm.Bull.51:798)。ベニバナ(Carthamus tinctorius L.)の培養細胞から単離される新規のジキノンであるキノベオンAはコウジ酸よりも大きなチロシナーゼ阻害活性を有する。(Kanehira et al.(2003)Planta Med.69:457)。長期の時間にわたって、または高濃度で使用されれば、ヒドロキノン類は深刻な副作用を有しかねない。付け加えると、ヒドロキノン類は永久的な色素脱失につながりかねず、したがってUV光に晒されたときの皮膚の光感受性を増大させる可能性がある。
【0011】
現在使用されている耐容性の良好な脱色物質は天然起源のものである。例えば、コウジ酸は或る種の細菌を含む炭水化物溶液から誘導される天然のヒドロキシル−γ−ピロンである。図3を参照すると、コウジ酸は酸化されたオルト−ジヒドロキシフェノールであることが理解され得る。コウジ酸は金属イオン、特にCuIIで強いキレートを形成することが知られている。(Gerard and Hugel(1975)Bull.Soc.Chim.Fr.42:2404)。これはチロシナーゼの強力な競合的であるが、遅延結合型の阻害剤である。(Cabanes et al.(1994)J.Pharm.Pharmacol.46:982)。コウジ酸は二銅(II)錯体および二銅二酸素錯体付加化合物の両方に強力に結合する架橋リガンドとして作用し、したがって酵素へのカテコール基質の結合を阻止することを最近の研究が示した。(Battaini et al.(2000)JBIC 5:262)。皮膚漂白剤としての使用のためにコウジ酸およびそのエステルが特許化された。(米国特許第4,369,174号、第4,771,060号、第5,824,327号、第5,427,775号、第4,990,330号参照)。
【0012】
フラボノイドはチロシナーゼの阻害剤として報告された他の分類の天然物である。(Shimizu et al.(2000)Planta Med.66:11、Xie et al.(2003)Biochem.68:487)。活性なチロシナーゼ阻害剤はフラボン類(Likhitwitayawuid et al.(2000)Planta Med.66:275)、フラボノール類(Kubo and Kinst−Hori(1999)J.Agric.Food Chem.47:4121)、プレニル化されたフラボノイド類(Kuniyoshi et al.(2002)Planta Med.68:79、Son et al.(2003)Planta Med.69:559、Kim.et al.(2003)Biol.Pharm.Bull.26:1348)、フラバン類(No et al.(1999)Life Sci.65:PL241、Kim et al.(2004)Biomacromolecules 5:474)、およびジヒドロカルコン類(Shoji et al.(1997)Biosci.Biotechnol.Biochem.61:1963)を含む。
【0013】
他のタイプのチロシナーゼ阻害剤は、フェノール誘導体類(Sakuma et al.(1999)Arch.Pharm.Res.22:335、Kerry and Rice−Evans(1999)J.Neurochem.73:247、Battaini et al.(2002)J.Biol.Chem.277:44606)、ベンズアルデヒド類(Kubo and Kinst−Hori(1999)Plant Medica 65:19、Chen et al.(2003)J.Enzyme Inhib.Med.Chem.18:491、Nihei et al.(2004)Bioorg.Med.Chem.14:681)、安息香酸誘導体類(Curto et al.(1999)Biochem.Pharmacol.57:663、Chen et al.(2003)J.Protein Chem.22:607、Miyazawa et al.(2003)J.Agric.Food Chem.51:9653、Kubo et al.(2003)Z.Naturforsch[C]58:713)、クペロン(Xie et al.(2003)Int.J.Biochem.Cell Biol.35:1658)、甘草(Glycyrrhiza uralensis)の根から得られるベンゾジピラン(Yokota et al.(1998)Pigment Cell Res.11:335)、チオヒドロキシル化合物(Park et al.(2003)J.Protein Chem.22:613)、テルペノイド類(Oh et al.(2002)Planta Med.68:832)、およびオキサゾロジネチオン(Seo et al.(1999)Planta Med.65:683)を含む。知られている最も強力な天然チロシナーゼ阻害剤はスチルベン類(IC50=0.3〜5μM)(Shin et al.(1998)Biochem.Biophys.Res.Commun.243:801、Ohguchi et al.(2003)Biosci.Biotechnol.Biochem.67:1587)、スチルベングリコシド類(Iida et al.(1995)Planta Med.61:425)、および4置換型レゾルシノール類(Shimizu et al.(2000)Planta Med.66:11)である。
【0014】
4置換型レゾルシノール類の構造/活性の研究は−CH2C6H5などの疎水性で大きくない置換基およびアルキル基、すなわち−CH2CH2CH3が10μM未満のIC50を備えて最大の効能を有することを示す(Shimizu et al.(2000)Planta Med.66:11)。4置換型レゾルシノール類の作用のメカニズムはDL−β−(3,4−ジヒドロキシフェニル)アラニン(DL−ドーパ)の酸化の遅行型の結合拮抗阻害として特徴付けされてきており(Jimenez and Garcia−Carmona(1997)J.Agric.Food Chem.45:2061)、二核銅イオンに対するさらなる金属キレート作用の理解はされていない。
【0015】
ユリ科の仲間であるアロエは多くの生物学的に活性の物質を含む複雑な植物である。(Cohen et al.(1992)「Wound Healing/Biochemical and Clinical Aspects」,1st ed.W B Saunders,Philadelphia)。360種を超えるアロエが知られており、これらの大部分はアフリカ原産である。歴史的に、アロエ製品は火傷、痛み、およびその他の傷の治療のために皮膚用用途に使用されてきた。アロエ植物から臨床活性を有する化合物を識別することにこれらの使用は多量の研究を促進してきた。(例えばGrindlay and Reynolds(1986)J.of Ethnopharmacology 16:117〜151、Hart et al.(1988)J.of Ethnopharmacology 23:61〜71参照)。
【0016】
Yagiらはアロエから単離される一群の化合物、特にアロエシンとその誘導体のうちの1つ、2”−O−フェルロイルアロエシンを開示しており、これらはチロシナーゼの有効な阻害剤である。(Yagi et al.(1987)Plant Medica 515〜517、Yagi et al.(1977)Z.Naturforsch 32c:731〜734)。C−グルコシル化された5−メチルクロモンであるアロエシンは0.92mMのIC50で投与量依存的にヒトのチロシナーゼヒドロキシラーゼ活性を阻害し、IC50=0.41mMを有するコウジ酸、IC50=3.02mMを有するアルブチンに比べて0.92mMのIC50で投与量依存性の方式でDOPAオキシダーゼ活性もやはり阻害した。チロシナーゼ酵素活性およびその結果生じるメラニン形成のアロエシンによる阻害はB16F1マウスメラノーマ細胞を使用して細胞を根拠とする分析で確認された。メラニンの生合成は投与量依存性の方式でアロエシンによって(IC50=0.167mMで)阻害された。(Jones et al.(2002)Pigment.Cell Res.15:335)。アロエのクロモンに関するチロシナーゼ阻害の作用メカニズムは銅イオンの還元に関連していると推測される。天然(米国特許第6,451,357号)、半合成(米国特許第5,801,256号、米国特許第6,083,976号)および処方されたアロエクロモン(米国特許第6,123,959号)の両方がそれらの皮膚漂白能力に関して特許化された。
【0017】
アスコルビン酸(合成および柑橘類果実などの天然源からのビタミンC)およびその誘導体もやはり皮膚漂白のために利用されてきた。殆どのケースで、ビタミンCはコウジ酸または他のチロシナーゼ阻害剤と共に処方される(米国特許第4,919,921号、第6,458,379号、および第5,916,915号)。他に報告された皮膚漂白化合物はオリーブ植物からの抽出物(米国特許第6,682,763号)、不飽和の長鎖脂肪酸(米国特許第6,669,932号)、クルクミン類(米国特許第6,641,845号)、酵素抽出物(米国特許第6,514,506号)、クメストロール(米国特許第6,503,941号)、ヒドロキシルカルボン酸類(米国特許第6,417,226号、第6,365,137号、第5,609,875号、第5,262,153号)、β−グルカン類(米国特許第6,251,877号)、アロエクロモン類(米国特許第6,083,976号)、フェニルアラニン化合物(米国特許第5,767,158号)、ルチン(米国特許第5,145,782号)、エスシノール(米国特許第5,728,683号)、サリチル酸類(米国特許第5,700,784号)、アンギオジェニン(米国特許第5,698,185号)、メルカプトデキストラン(米国特許第6,077,503号)、エラグ酸(米国特許第6,066,312号)、ホスフィン酸類(米国特許第6,280,715号)、ホウ素含有化合物(米国特許第5,993,835号)、植物抽出物(葛根から:米国特許第6,352,685号、桑から:米国特許第6,197,304号、第6,066,312号、第5,872,254号、アセロラチェリー発酵物から:米国特許第5,747,006号、フラノンから:米国特許第5,602,256号、その他:米国特許第5,773,014号)を含む。
【0018】
ジアリールアルカン類は希少部類の天然物である。今日までCD−ROMの「the Dictionary of Natural Products」(Chapman&Hall/CRC,Version12:2 January 2004)にリストアップされた179,000以上の天然化合物があり、そのうちのわずか82がジアリールアルカン類(n=3)である。カジノキ(Broussonetia papyrifera)はクワ科の落葉木であり、20以上のジアリールプロパン類がこの属単独から単離されている(Keto et al.(1986)Chem.Pharm.Bull.34:2448、Ikuta et al.(1986)Chem.Pharm.Bull.34:1968、Takasugi et al.(1984)Chem.Lett.689、Gonzalez et al.(1993)Phytochem.32:433)。カジノキの抽出物の分画に向けられたバイオアッセイが4つのジアリールプロパン類を生じさせ、これらはアロマターゼ阻害活性を有さなかった。(Lee et al.(2001)J.Nat.Prod.64:1286)。しかしながら、同じ植物から単離された2つのプレニル化されたジアリールプロパン類はいくつかの癌細胞系に対して細胞毒性を示し(Ko et al.(1999)J.Nat.Prod.62:164)、ブラウソニンAは抗真菌活性を示した(Iida et al.(1999)Yakugaku Zasshi 119:964)。
【0019】
いくつかのジアリールアルカン類がイリアンテラ(Iryanthera)種(ニクズク科)からやはり単離された。(Alvea et al.(1975)Phytochem.14:2832、de Almeida et al.(1979)Phytochem.18:1015、Braz et al.(1980)Phytochem.19:1195、Diaz et al.(1986)Phytochem.25:2395)。イリアンテラ・ランシフォリア(Iryanthera lancifolia)から単離された4つのジヒドロカルコン類は抗酸化活性を示した。(Silva et al.(1999)J.Nat.Prod.62:1475)。いくつかのジアリールプロパン類がニクズク科のバイロラ種からやはり単離された。(Braz et al.(1976)Phytochem.15:567、Hagos et al.(1987)Plant Med.53:57、Gonzalez et al.(1993)Phytochem.32:433、Kijjoa et al.(1981)Phytochem.20:1385、Talukdar et al.(2000)Phytochem.53:155)。
【0020】
天然源から単離される他のジアリールプロパン類はマルバルキノカリン(Pterocarpus marsuprium)(マメ科)(Rao et al.(1984)Phytochem.23:897、Maurya et al.(1985)J.Nat.Prod.48:313)、クロモジ(Lindera umbellate)(クスノキ科)(Morimoto et al.(1985)Chem.Pharm.Bull.33:2281)、ムギワラギク・ムンジー(Helichrysum mundii)(キク科)(Bohlmann et al.(1978)Phytochem.17:1935)、ビスカム・アングラタム(Viscum angulatum)(ヤドリギ科)(Lin et al.(2002)J.Nat.Prod.65:638)から由来するそれら、滑らかな筋肉弛緩効果を有するサバンナアカシア(Acacia tortilis)(マメ科)(hagos et al.(1987)Planta Med.53:27)、キサントセルシス・ザンベジアカ(Xanthocercis zambesiaca)(マメ科)(Bezuidenhout et al.(1988)Phytochem.27:2329)から由来するそれら、およびクネマ・グロメラータ(Knema glomerata)(ニクズク科)から得られる細胞毒性化合物(Zeng et al.(1994)J.Nat.Prod.57:376)を含む。
【0021】
JP05213729Aは皮膚炎、しみ、そばかす、および日焼けの結果生じる色素症の治療のためのメラニン阻害剤として合成ジヒドロカルコンの使用を教示している。特許請求された化合物は以下の一般式を有し、
【0022】
【化1】
【0023】
式中、XはH、OH、または=Oから選択され、RはHまたはMeであり、R1〜R5は、H、OR、およびNH2から独立して選択される。このようにして、開示されたジヒドロカルコンは一方のフェニル環上で単一のヒドロキシ/メトキシ置換基を含み、第2の環に5つの非特異的な置換基(R1〜R5)を含む。特許請求された組成物のいずれについても酵素阻害は測定されず、メラニンの阻害は培養皮膚細胞によって作り出されるメラニンの量およびUV刺激に続いて生じる動物の皮膚の色変化の測定によって判定された。本発明では、特開平17−213729に開示された化合物のうちの1つ、1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−(4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノールが合成され、チロシナーゼを阻害する能力が測定された。この化合物はチロシナーゼの緩やかな阻害(IC50=305μM、表2)を示しただけであった。本発明は独特の置換パターンを有する新規のジアリールアルカン類を教示するものであって、2つの芳香環のうちの少なくとも一方Ar1またはAr2が1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で置換され、前記R’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではない。これらの化合物はチロシナーゼの活性を阻害する予期しない能力を示し、それは特開平17−213729で教示された化合物よりも4〜600倍大きい。本出願に教示される化合物のいずれについても今日まで公表された報告は無いと考えられる。
【発明の開示】
【0024】
本発明は二核活性部位を有する、本願明細書で二核酵素と称される酵素の活性を阻害するための方法を含み、前記方法は有効量の1つまたは複数のジアリールアルカン(類)を、必要とする宿主に投与することを含み、前記ジアリールアルカン類は合成され、および/または1つまたは複数の植物から単離される。本発明の範囲に含まれる二核酵素の範例は、限定はされないが、チロシナーゼ、アルギナーゼ、ウレアーゼ、チトクロムcオキシダーゼ、プロトンポンプヘム銅酸化酵素、二機能性一酸化炭素デヒドロゲナーゼ/アセチルCo−Aシンターゼ、リボヌクレオチド還元酵素、メタロ−β−ラクタマーゼ、H(+)−ATPアーゼおよび代替オキシダーゼ、および細菌性ホスホトリエステラーゼを含む。一実施形態では二核酵素はチロシナーゼである。
【0025】
本発明はまた、二核酵素の活性に関連する疾病および状態の予防および治療のための方法を含む。本発明による予防と治療の方法は治療に有効な量の1つまたは複数のジアリールアルカン(類)を、必要とする宿主に内服または局所で投与することを含む。阻害される二核酵素に応じて、ジアリールアルカンは抗微生物剤、抗真菌剤、抗マラリア剤、抗ウィルス剤、雄および雌の性的刺激を制御する手段としての一酸化窒素生成の調節剤、抗炎症薬剤、酸化防止剤、薬剤代謝の調節剤、および癌および充実性腫瘍の成長の阻害剤として使用することが可能である。ジアリールアルカンはまた、歯周病、口腔の前癌状態、口腔の癌、および他の口腔の悪性疾患、過敏な歯ぐきと歯、続発症、歯髄炎、刺激状態、口腔義歯の身体移植、外傷性傷害、損傷、歯軋りおよび口内、歯ぐきまたは舌の他の小さな傷によって引き起こされる痛みと炎症、歯の疫病および結石、歯の脱石灰、タンパク質分解、および虫歯(腐食)の予防と治療に使用されることも可能である。
【0026】
本発明はさらに、メラニンの過剰生成または不均一な分布に関連した疾病および状態の予防と治療のための方法を含み、前記方法は治療に有効な量の1つまたは複数のジアリールアルカン(類)を、必要とする宿主に内服または局所で投与することを含む。メラニンの過剰生成または不均一な分布に関連した疾病および状態は、限定はされないが、日焼け、(皮膚の老化、肝臓疾患、火傷および局所外傷によって引き起こされる)色素沈着過度の斑点、(真菌、微生物、およびウィルス感染によって生じる炎症状態に起因する)皮膚の色素沈着、白斑、上皮性悪性腫瘍、メラノーマ、ならびに他の哺乳動物の皮膚病を含む。
【0027】
この方法はまた、紫外(UV)放射、化学物質、熱、風および乾燥環境への曝露から結果として生じる皮膚の黒化および損傷を予防および治療するために使用されることも可能である。最後に、この方法は皺、たるんだ皮膚、目の周囲の皺とくまを予防および治療し、過敏な皮膚を落ち着かせ、皮膚炎および他のアレルギー関連の皮膚の状態を予防および治療するために使用することが可能である。上述の皮膚の疾病および状態の予防および治療のための使用に加えて、本願明細書に述べられる医薬組成物は改善された皮膚の色、向上した弾力性、減少させられて遅らされる老化、促進された若々しい外見ときめ、および増大したしなやかさ、硬さ、滑らかさおよび柔軟性を伴なった滑らかで若々しい皮膚の外観の恩典をもたらす有効な組成物を与える。
【0028】
金属イオンでキレートすることによって、ジアリールアルカンは宿主の血流中に必須の金属イオンを送達するため、および/または皮膚または血液/脳関門、ならびに他の膜を透過して金属イオンを輸送するために使用されることもやはり可能である。この実施形態では、本方法は治療に有効な量の1つまたは複数のジアリールアルカン(類)を、送達されるべき金属イオン(類)と一緒に、必要とする宿主に投与することを含む。この能力の中で、限定はされないが、貧血およびその他の鉄欠乏症、炎症、肥満と糖尿病、歯周病、口腔の前癌状態、口腔の癌、および他の口腔の悪性疾患、過敏な歯ぐきと歯、続発症、歯髄炎、刺激状態、口腔義歯の身体移植、外傷性傷害、損傷、歯軋りおよび口内、歯ぐきまたは舌の他の小さな傷によって引き起こされる痛みと炎症、歯の疫病および結石、歯の脱石灰、タンパク質分解、および虫歯(腐食)、ウィルス感染不眠症、抑制された免疫機能、骨粗鬆症、無月経症、月経困難症、癲癇、高血圧、コレステロール血症、冠状動脈および脳の血管痙攣、下痢、パーキンソン病、アルツハイマー病、癌、関節リウマチ、男性不妊、および黄斑変性を含む疾病および状態を治療するためにジアリールアルカン類が使用することが可能である。限定はされないが、この金属イオンは銅、クロム、鉄、亜鉛、ホウ素、リチウム、セレン、カルシウム、マンガン、マグネシウム、モリブデン、および他の金属イオンを含む群から選択される。
【0029】
さらに別の実施形態では、ジアルキルアルカン類およびジアルキルアルカノール類が食品産業で果実、キノコ、および他の食料品の褐変および色変化を防止するために使用することが可能である。
【0030】
本発明はまた、1つまたは複数のジアリールアルカン類から成る新規の物質の組成物を含み、前記ジアリールアルカン類は以下の一般構造で表わされる化合物の群から選択され、
【0031】
【化2】
【0032】
式中、
Ar1およびAr2は置換型の5または6員の芳香環または芳香族複素環から成る群から独立して選択され、各々の6員の芳香環または芳香族複素環は1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で独立して置換され、各々の5員の芳香環または芳香族複素環は1〜4個のR’基(R’1〜R’4)で置換されるが、例外としてAr1とAr2の両方が6員の芳香環、すなわちフェニル基であるとき、Ar1とAr2のうちの少なくとも一方は1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で置換され、前記R’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
ここで、
R’は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)は、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、
R6、およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、およびXから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、n=1〜10である。好ましい実施形態ではn=2〜4である。
【0033】
一実施形態では、前記ジアリールアルカンは以下の一般構造で表わされる化合物から成る群から選択され、
【0034】
【化3】
【0035】
式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R’1、R’2、R’3、R’4、およびR’5は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)は、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、R1〜R5のうちの少なくとも2つ、またはR’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
R6およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、およびXから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、n=1〜10である。好ましい実施形態ではn=2〜4である。
【0036】
一実施形態では、本発明のジアリールアルカン類は、限定はされないが、キク科、マメ科、クスノキ科、マメ科、ユリ科、ヤドリギ科、クワ科、およびニクズク科を含む植物の科から選択される1つまたは複数の植物から単離される。本発明のジアリールアルカン類はまた、限定はされないが、アカシア属、コウゾ属、キキョウラン属、ムギワラギク属、イリアンテラ属、クネマ属、クロモジ属、シタン属、ヤドリギ属、およびキサントセルシス属を含む高木植物の属から抽出、濃縮、および精製することもやはり可能である。これらのジアリールアルカン類は、限定はされないが、茎、茎皮(stem bark)、心材、幹、幹皮(trunk bark)、小枝、塊茎、根、根皮(root bark)、ヤング・シュート(young shoot)、種子、根茎、花および他の生殖器官、葉および他の気生部分を含む植物の多様な部分に見出すことが可能である。好ましい実施形態では、ジアリールアルカン類はコウゾ属、キキョウラン属、およびイリアンテラ属の植物または植物類から単離される。
【0037】
他の実施形態では、本発明のジアリールアルカン類は合成によって得られる。この発明に含まれるのはジアリールアルカン類およびジアリールアルカノール類を合成する方法であって、前記方法は以下の一般構造を有する化合物を還元することを含み、
【0038】
【化4】
【0039】
式中、
R1〜R5およびR’1〜R’5およびnは上記に定義される通りであり、R6とR7は一緒に1つまたは複数のカルボニル基を形成する。還元剤はアルコール類へのケトン類の還元のためのいずれの知られている還元剤から選択されることも可能であり、限定はされないが、ボロヒドリド類、触媒存在下でのH2、NaH、およびLiAlH4を含む。一実施形態では、還元剤はNaBH4である。
【0040】
さらに別の実施形態では、ジアリールアルカン類は植物源から単離される天然由来の化合物の合成化学修飾によって得られる。例えば、天然由来の化合物のブテインが植物源から単離され、脱水処理され、還元されて相当するジアリールアルカノールを生じる。
【0041】
さらに別の実施形態では、ジアリールアルカン類は2つの適切な置換型芳香族化合物の反応によって得られる。2つの置換型芳香族化合物からこれらの化合物を合成するための実現可能な化学反応は、限定はされないが、置換型ベンズアルデヒドと置換型アセトフェノンの間のアルドール縮合、アルデヒドとケトンの間のクライゼン−シュミット反応もしくは交差アルドール縮合、分子上のカルボニル基への付加反応を通じて1つの置換型芳香環を第2の置換型芳香環に連結する有機マグネシウムハロゲン化物を使用したグリニャール反応、分子内異性化によるクライゼン転位(ここでは適切な置換基を備えたエステル化フェノールがフェノールのオルトの位置で第2の芳香環に結合するように異性化され、続いて還元反応が行なわれるであろう)、および鈴木カップリング反応(ここでは2つの置換型芳香環がアリールボロン酸へと変換され、次いで、慎重に選択されるパラジウム触媒を使用してハロゲン化アルキルによって連結される)を含む。これらの反応は当業者によく知られており、そのような反応のための条件はこれらの化合物の合成に関して本願明細書に開示される情報を使用して決定することが可能である。
【0042】
本発明は、活性な植物抽出物およびこれらの抽出物の中で二核酵素を特異的に阻害する特定の化合物を識別するために阻害アッセイと化学的デレプリケーション法を組み合わせる方策を実施する。この手法は薬剤の構造を最適化し、効果を最大限にするための天然物の単離、有機合成、分子モデリング、および酵素阻害アッセイの組み合わせを含む。この方法は、「Method for Generating,Screening and Dereplicating Natural Product Libraries for the Discovery of Therapeutic Agents」という表題で2002年6月27日に提出され、本願明細書にその全文を参照で組み入れられる米国特許公開第10/185,758号明細書に述べられている。この方法の有効性は下記で実施例の節に述べられるようにチロシナーゼ阻害アッセイを使用して実証される。この発明の方法に従って評価されたジアリールアルカン類の純度は0.01%から100%の範囲にあって、化合物(類)を得るために使用される方法論によって決まる。
【0043】
好ましい実施形態では、必要性を有する宿主に投与されるジアリールアルカンの用量は有効で無毒の量であって、概して、最終製剤の合計重量に基づき0.001%から100%の範囲、および/または宿主の体重に基づき1キログラム当たり0.01mgから200mgの範囲から選択される。当業者は、日常的な臨床試験を使用して、治療する特定の病気のために最適の用量を判定することが可能である。本発明は、望ましい生理学的活性を有する物質の組成物を得るための、ジアリールアルカンの合成、および/または単離、精製および製剤について商業的に実現可能な選択肢を提供する。本発明の組成物は当業者に知られているいずれの方法によって投与されることも可能である。投与の様式は、限定はされないが、腸溶性(経口)投与、非経口性(静脈内、皮下、および筋肉内)投与、および局所塗布を含む。本発明による治療の方法は、合成された、および/または単一の植物または複数の植物から単離された純粋または混合物のジアリールアルカン類を、治療に有効な量で必要とする宿主に内服または局所で投与することを含む。好ましい実施形態では、この組成物は局所に投与される。
【0044】
前述の概説および下記の詳細な説明の両方が範例であって解説のためのものに過ぎず、特許請求される本発明を限定するものではないことは理解されるべきである。
【好ましい態様の詳細な説明】
【0045】
本発明は概して、二核酵素によって仲介される疾病および状態の予防および治療に関する。特に、本発明は二核活性部位を有する酵素の活性を阻害するための方法を含む。本発明に含まれるものは1つまたは複数のジアリールアルカン(類)で構成される新規の組成物である。本発明のジアリールアルカン類は1つまたは複数の植物源から単離することが可能であり、または有機合成によって得られることが可能である。本発明にさらに含まれるものはこれらの化合物を天然源から単離するための方法およびこれらの化合物を合成するための方法である。一実施形態では、これらのジアリールアルカン類は植物源から単離される天然由来の化合物の合成化学修飾によって得られる。
【0046】
本発明の態様に言及するために様々な用語が本願明細書で使用される。本発明の構成要素の説明の明瞭化に役立てるために、以下の定義が与えられる。別の方式で規定されない限り、本願明細書に使用されるすべての技術用語および科学用語は本発明が属する技術の当業者によって共通して理解される意味を有する。
【0047】
本願明細書に使用される用語「或る」の実在はその実在の1つまたは複数を称し、例えば、或るジアリールアルカンは1つまたは複数のジアリールアルカンを称する。同様に、用語「或る」、「1つまたは複数の」および「少なくとも1つの」は本願明細書では交換可能に使用される。
【0048】
本願明細書で使用される「ジアリールアルカン類」は以下の一般構造を有する芳香族化合物の特定の部類であって、本発明は1つまたは複数のジアリールアルカン類から成る新規の物質組成物もやはり含み、前記ジアリールアルカン類は以下の一般構造で表わされる化合物の群から選択され、
【0049】
【化5】
【0050】
式中、
Ar1およびAr2は、置換型5または6員の芳香環または芳香族複素環から成る群から独立して選択され、各々の6員の芳香環または芳香族複素環は、1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で独立して置換され、各々の5員の芳香環または芳香族複素環は1〜4個のR’基(R’1〜R’4)で置換されるが、例外としてAr1とAr2の両方が6員の芳香環、すなわちフェニル基であるとき、Ar1とAr2のうちの少なくとも一方は1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で置換され、前記R’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
ここで、
R’は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)は、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、およびIから成る群から選択されるハロゲンであり、
R6およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、およびXから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、n=1〜10である。好ましい実施形態ではn=2〜4である。
【0051】
一実施形態では、前記ジアリールアルカン類は以下の一般構造で表わされる化合物の群から選択され、
【0052】
【化6】
【0053】
式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R’1、R’2、R’3、R’4、およびR’5は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)は、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、R1〜R5のうちの少なくとも2つ、またはR’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
R6、およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、およびXから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、およびIから成る群から選択されるハロゲンであり、n=1〜10である。好ましい実施形態ではn=2〜4である。
【0054】
本願明細書で使用される「ジアリールアルカノール」は2つの芳香環の間のアルキル炭素に付いた少なくとも1つのヒドロキシル基(R6および/またはR7=−OH)を有する特定のタイプの「ジアリールアルカン類」である。
【0055】
本願明細書に使用される「二核酵素」は二核活性部位を有する酵素を称し、その範例は上記で検討されたように活性部位に2つの銅イオンを有するチロシナーゼである。限定はされないが、二核酵素はチロシナーゼ、アルギナーゼ、ウレアーゼ、チトクロムcオキシダーゼ、プロトンポンプヘム銅酸化酵素、二機能一酸化炭素デヒドロゲナーゼ/アセチルCo−Aシンターゼ、リボヌクレオチド還元酵素、メタロ−β−ラクタマーゼ、H(+)−ATPアーゼおよび代替オキシダーゼ、および細菌性ホスホトリエステラーゼを含む。
【0056】
本願明細書に使用される「治療の」は、防止、治療および/または予防を含む。使用時には、治療はヒトならびに他の動物に向けられる。
「医薬としてまたは治療薬として有効な用量または量」は望ましい生物学的結果を誘導するのに十分な用量を称する。その結果は疾病の徴候、症状、または原因の緩和、またはいずれかの他の生物学的システムの望ましい変化であることもあり得る。正確な用量は、限定はされないが、対象の年齢およびサイズ、疾病および達成される治療を含めた様々な要因に応じて変わるであろう。
【0057】
「プラセボ」は不活性な物質で疾病の徴候、症状、または原因を緩和することが起こり得て、望ましい生物学的を誘導するのに十分な医薬または治療薬として有効な投与もしくは投与量の置き換え物質を称する。
【0058】
「宿主」または「患者」または「対象」は治療が望まれる生きた哺乳動物、ヒト、または動物である。「宿主」または「患者」または「対象」は概して、本発明の方法に従って実施される治療の受容対象を称する。本願明細書に述べられる発明が獣医ならびにヒト用途に使用され得ること、「宿主」という用語が限定の方式で解釈されてはならないことは気付かれるはずである。獣医用途のケースでは、投与量の範囲は下記で述べられるように動物の体重を考慮して決定される可能性が高い。
【0059】
本願明細書で使用される「医薬として許容可能な担体」は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げず、投与される宿主に対して毒性が無いあらゆる担体を称する。限定はされないが、「医薬として許容可能な担体」の範例は生理食塩水溶液、すなわちリンゲル液、緩衝生理食塩水溶液、水、デキストロース溶液、血清アルブミン、および処方を錠剤およびカプセルにするための他の賦形剤および保存料といったいずれの標準的な医薬担体も含む。
【0060】
本発明は二核活性部位を有する、本願明細書で二核酵素と称される酵素の活性を阻害するための方法を含み、前記方法は有効量の1つまたは複数のジアリールアルカン(類)を、必要とする宿主に投与することを含み、前記ジアリールアルカン類は合成され、および/または1つまたは複数の植物から単離される。本発明の範囲に含まれる二核酵素の範例は、限定はされないが、チロシナーゼ、アルギナーゼ、ウレアーゼ、チトクロムcオキシダーゼ、プロトンポンプヘム銅酸化酵素、二機能一酸化炭素デヒドロゲナーゼ/アセチルCo−Aシンターゼ、リボヌクレオチド還元酵素、メタロ−β−ラクタマーゼ、H(+)−ATPアーゼおよび代替オキシダーゼ、および細菌性ホスホトリエステラーゼを含む。一実施形態では二核酵素はチロシナーゼである。
【0061】
本発明はまた、二核酵素の活性に関連する疾病および状態の予防および治療のための方法を含む。本発明による予防と治療の方法は治療に有効な量の1つまたは複数のジアリールアルカン(類)を、必要とする宿主に内服または局所で投与することを含む。阻害される二核酵素に応じて、ジアリールアルカンは抗微生物剤、抗真菌剤、抗マラリア剤、抗ウィルス剤、雄および雌の性的刺激を制御する手段としての一酸化窒素生成の調節剤、抗炎症薬剤、酸化防止剤、薬剤代謝の調節剤、歯周病、口腔の前癌状態、口腔の癌、および他の口腔の悪性疾患、過敏な歯ぐきと歯、続発症、歯髄炎、刺激状態、口腔義歯の身体移植、外傷性傷害、損傷、歯軋りおよび口内、歯ぐきまたは舌の他の小さな傷によって引き起こされる痛みと炎症、歯の疫病および結石、歯の脱石灰、タンパク質分解、および虫歯(腐食)の予防と治療のため、および癌および充実性腫瘍の成長の阻害剤として使用することが可能である。
【0062】
本発明はさらに、メラニンの過剰生成または不均一な分布に関連した疾病および状態の予防と治療のための方法を含み、前記方法は治療に有効な量の1つまたは複数のジアリールアルカン(類)を、必要とする宿主に内服または局所で投与することを含む。メラニンの過剰生成または不均一な分布に関連した疾病および状態は、限定はされないが、日焼け、(皮膚の老化、肝臓疾患、火傷および局所外傷によって引き起こされる)色素沈着過度の斑点、(真菌、微生物、およびウィルス感染によって生じる炎症状態に起因する)皮膚の色素沈着、白斑、上皮性悪性腫瘍、メラノーマ、ならびに他の哺乳動物の皮膚病を含む。
【0063】
この方法はまた、紫外(UV)放射、化学物質、熱、風および乾燥環境への曝露から結果として生じる皮膚の黒化および損傷を予防および治療するために使用されることも可能である。最後に、この方法は皺、たるんだ皮膚、目の周囲の皺とくまを予防および治療し、過敏な皮膚を落ち着かせ、皮膚炎および他のアレルギー関連の皮膚の状態を予防および治療するために使用することが可能である。上述の皮膚の疾病および状態の予防および治療のための使用に加えて、本願明細書に述べられる医薬組成物は改善された皮膚の色、向上した弾力性、減少させられて遅らされる老化、促進された若々しい外見ときめ、および増大したしなやかさ、硬さ、滑らかさおよび柔軟性を伴なった滑らかで若々しい皮膚の外観の恩典をもたらす有効な組成物を与える。
【0064】
金属イオンでキレートすることによって、ジアリールアルカンは宿主の血流中に必須の金属イオンを送達するため、および/または皮膚または血液/脳関門、ならびに他の膜を透過して金属イオンを輸送するために使用されることもやはり可能である。この実施形態では、本方法は治療に有効な量の1つまたは複数のジアリールアルカン(類)を、送達されるべき金属イオン(類)と一緒に、必要とする宿主に投与することを含む。この能力の中で、限定はされないが、貧血およびその他の鉄欠乏症、炎症、肥満と糖尿病、歯周病、口腔の前癌状態、口腔の癌、および他の口腔の悪性疾患、過敏な歯ぐきと歯、続発症、歯髄炎、刺激状態、口腔義歯の身体移植、外傷性傷害、損傷、歯軋りおよび口内、歯ぐきまたは舌の他の小さな傷によって引き起こされる痛みと炎症、歯の疫病および結石、歯の脱石灰、タンパク質分解、および虫歯(腐食)、ウィルス感染を含む疾病および状態を治療するためにジアリールアルカン類が使用することが可能である。限定はされないが、この金属イオンは銅、鉄、亜鉛、セレン、マグネシウム、および他の金属イオンを含む群から選択される。
【0065】
さらに別の実施形態では、ジアルキルアルカン類が食品産業で果実、キノコ、および他の食料品の褐変および色変化を防止するために使用することが可能である。
以下に従って使用することが可能であるジアリールアルカンは上述の一般構造で例示される化合物を含む。本発明のジアリールアルカン類は合成法によって得られることが可能であり、または限定はされないが、キク科(Compositae)、マメ科(Fabaceae)、クスノキ科(Lauraceae)、マメ科(Leguminosae)、ユリ科(Liliaceae)、ヤドリギ科(Loranthaceae)、クワ科(Moracea)、およびニクズク科(Myristicaceae)を含む群から選択される1つまたは複数の植物の科から単離することが可能である。本発明のジアリールアルカン類は、限定はされないが、アカシア(Acacia)、コウゾ(Broussonetia)、キキョウラン(Dianella)、ムギワラギク(Helichrysum)、イリアンテラ(Iryanthera)、クネマ(Knema)、クロモジ(Lindera)、シタン(Pterocarpus)、ヤドリギ(Viscum)、およびキサントセルシス(Xanlhocercis)を含む高木植物の属から抽出、濃縮、および精製することが可能である。これらのジアリールアルカン類は、限定はされないが、茎、茎の皮、心材、幹、幹の皮、小枝、塊茎、根、根の皮、葉柄、種子、地下茎、花および他の繁殖可能な組織、葉および他の空中の部分を含む植物の多様な部分に見出することが可能である。一実施形態では、ジアリールアルカン類はコウゾ属、キキョウラン属、およびイリアンテラ属の植物または植物類から単離される。
【0066】
他の実施形態では、本発明のジアリールアルカン類は合成によって得られる。この発明に含まれるのはジアリールアルカン類およびジアリールアルカノール類を合成する方法であって、前記方法は以下の一般構造を有する化合物を還元することを含み、
【0067】
【化7】
【0068】
式中、
R1〜R5およびR’1〜R’5およびnは上記に定義される通りであり、R6とR7は一緒に1つまたは複数のカルボニル基を形成する。還元剤はアルコール類へのケトン類の還元のためのいずれの知られている還元剤から選択されることも可能であり、限定はされないが、ボロヒドリド類、触媒存在下でのH2、NaH、およびLiAlH4を含む。一実施形態では、還元剤はNaBH4である。
【0069】
さらに別の実施形態では、ジアリールアルカン類は植物源から単離される天然由来の化合物の合成化学修飾によって得られる。例えば、天然由来の化合物のブテインが植物源から単離され、脱水処理され、還元されて相当するジアリールアルカノールを生じる。
【0070】
さらに別の実施形態では、ジアリールアルカン類は2つの適切な置換型芳香族化合物の反応によって得られる。2つの置換型芳香族化合物からこれらの化合物を合成するための実現可能な化学反応は、限定はされないが、置換型ベンズアルデヒドと置換型アセトフェノンの間のアルドール縮合、アルデヒドとケトンの間のクライゼン−シュミット反応もしくは交差アルドール縮合、分子上のカルボニル基への付加反応を通じて1つの置換型芳香環を第2の置換型芳香環に連結する有機マグネシウムハロゲン化物を使用したグリニャール反応、分子内異性化によるクライゼン転位(ここでは適切な置換基を備えたエステル化フェノールがフェノールのオルトの位置で第2の芳香環に結合するように異性化され、続いて還元反応が行なわれるであろう)、および鈴木カップリング反応(ここでは2つの置換型芳香環がアリールボロン酸へと変換され、次いで、慎重に選択されるパラジウム触媒を使用してハロゲン化アルキルによって連結される)を含む。これらの反応は当業者によく知られており、そのような反応のための条件はこれらの化合物の合成に関して本願明細書に開示される情報を使用して決定することが可能である。
【0071】
本出願全体にわたって様々な引用が与えられることに留意すべきである。これらの引用の各々は本願明細書に参照でその全文を特に組み入れられる。
本発明は、活性な植物抽出物およびこれらの抽出物の中で二核酵素チロシナーゼを特異的に阻害する特定の化合物を識別するためにチロシナーゼ阻害アッセイを化学的デレプリケーション法と組み合わせる方策を実施する。上記で言及したように、チロシナーゼを阻害する酵素はメラニン生成の減少につながり、したがって、皮膚を効果的に白くすることが可能である。実施例1で述べられるように、乾燥植物粉末を有機溶剤で抽出することによって植物抽出物のライブラリが作り出された。実施例2で述べられるように、チロシナーゼ阻害アッセイはJones et al.(2002)Pigment.Cell Res.15:335によって報告された方法に従って展開された。このアッセイを使用して、合計1144の植物抽出物が、キノコのチロシナーゼの活性を阻害するそれらの能力について選別された。この一次選別は強力なチロシナーゼ阻害活性を備えた20の植物抽出物(ヒット率1.75%)を識別した。表1は、4つの異なる属から単離された4つのこれら抽出物のチロシナーゼ阻害割合を描いている。
【0072】
活性な植物抽出物から活性な化合物を効率的に識別するために、実施例3で述べられるように高い処理能力の分画法が使用された。簡単に述べると、活性抽出物は高処理能力精製(HTP)システムを使用して分画された。各々の画分はその後、実施例2で述べられる一次アッセイのように、チロシナーゼ活性を阻害するその能力について試験された。デレプリケーションの後、PDAを備えたHPLCと、分かっているチロシナーゼ阻害剤(例えばポリフェノール類およびクロモン類)を含む画分の構造データベース検索と除外に連結されたMS検出器の組み合わせを使用し、具体例を示す目的でヒメコウゾSieb.Et Zucc(クワ科)およびキキョウラン(L.)DC(ユリ科)の抽出物を使用して合計7つの活性抽出物が、実施例4〜6に述べられるようにバイオアッセイの手引書による大規模の単離精製のために選び出された。
【0073】
実施例4は、実施例1〜3で述べられる一般的方法を使用したヒメコウゾSieb.Et Zucc(クワ科)(植物全体)からの新規のジアリールアルカン、すなわち1−(2−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−プロパン(UP288)(1)の抽出、分離および精製を述べている。図4はUP288を含むHTP画分のHPLC/UVクロマトグラムを例示している。活性化合物UP288の構造は実施例4に述べられるように分光法の組み合わせを使用して解明された。図5はUP288の化学構造および13C−NMRスペクトルを描いている。図6はコウジ酸に相対したUP288に関してチロシナーゼ阻害の用量反応曲線およびIC50値を例示している。この図は、UP288(1)がコウジ酸のように強力なチロシナーゼ阻害剤であってIC50=24μMを有することを例示している。
【0074】
意外にも、全く異なる科の植物であるキキョウラン(L.)DC(ユリ科)から、実施例5で述べられるように2つの類似したジアリールアルカンが単離および同定された。図7はキキョウラン(P0389)(植物全体)からのこれら2つの活性化合物(UP302a(2)およびUP302b(3))のバイオアッセイの手引書による単離を図式的に描いている。図7を参照すると、合計264の収集サンプルからわずか15のカラム画分が強力なチロシナーゼ阻害を示したことが理解され得る。組み合わされた活性画分のHPLC分析(図8)は活性化合物が既に濃密に濃縮された最良のプールの中の微量成分であることを示した。労力を費やす分離精製の努力が2つの新たな活性化合物をもたらし、これらは実施例5および図9に例示されるようにNMRおよび他の分光学的な方法によって1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302a、IC50=0.24μM)(2)および1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,5’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(IP302b、IC50=1.2μM)(3)であると十分に定性分析された。
【0075】
実施例6はキキョウラン(DE)(植物全体)から単離される最も強力なチロシナーゼ阻害剤であるUP302a(2)の大規模単離を述べている。実施例6を参照すると、4.3kgの乾燥バイオマスからシリカゲルCG−161およびC−18樹脂による多数回のカラム分画の後に合計30mgの純粋なUP302a(2)が得られた。単離された化合物の構造および生物学的機能が確認された。
【0076】
ジアリールアルカン/ジアリールアルカノールの低い天然の潤沢度のせいで、これら生物学的に活性な化合物を合成するための方法がこの部類の化合物の代替の商業的供給源として開発された。実施例7は置換型カルコンの還元を介したジアリールアルカン類の合成のための一般的な方法を述べている。具体例を示す目的で、水素化ホウ素ナトリウムを使用した1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール(5)への2,4−ジヒドロキシフェニル)−3’,4’−ジメトキシフェニルカルコン(4)の還元が述べられている。しかしながら、実施例7で述べられるようにいくつかの他のジアリールアルカンがこの一般的な方法を使用して合成されている。合成された化合物のすべてが高から中程度のチロシナーゼ阻害活性を示した。実施例7に述べられた一般的な方法を参照すると、いずれの他の知られている還元剤もこの還元を達成するために使用することが可能であって、限定はされないが、他のボロヒドリド類、触媒存在下でのH2、NaH、およびLiAlH4を含む。
【0077】
実施例7に述べられた一般的な反応を使用して、いくつかの他の置換型ジアリールプロパノンが実施例8、9および10に実証されたようにジアリールプロパンおよび/またはジアリールプロパノールへと変換された。実施例11は出発材料の天然源から単離されるフラボノイドのグリコシドを使用してジアリールプロパノールの合成を実証している。
【0078】
他の実施形態では、本発明は2つの適切な置換型芳香族化合物の反応によってこの部類の化合物を合成するための方法を含む。この実施形態は、具体例を示す目的で3−メトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸とレゾルシノールの反応を使用して実施例12に例示されている。2つの置換型芳香族化合物からこれらの化合物を合成するための実現可能な化学反応は、限定はされないが、置換型ベンズアルデヒドと置換型アセトフェノンの間のアルドール縮合、アルデヒドとケトンの間のクライゼン−シュミット反応もしくは交差アルドール縮合、分子上のカルボニル基への付加反応を通じて1つの置換型芳香環を第2の置換型芳香環に連結する有機マグネシウムハロゲン化物を使用したグリニャール反応、分子内異性化によるクライゼン転位(ここでは適切な置換基を備えたエステル化フェノールがフェノールのオルトの位置で第2の芳香環に結合するように異性化され、続いて還元反応が行なわれるであろう)、および鈴木カップリング反応(ここでは2つの置換型芳香環がアリールボロン酸へと変換され、次いで、慎重に選択されるパラジウム触媒を使用してハロゲン化アルキルによって連結される)を含む。これらの反応は当業者によく知られており、そのような反応のための条件はこれらの化合物の合成に関して本願明細書に開示される情報を使用して決定することが可能である。
【0079】
実施例13は、本発明の方法に従って合成されたいくつかのジアリールアルカンおよびジアリールアルカノールについてIC50値を述べている。これらの化合物は実施例2に述べられた一般的な方法を使用して評価された。各々のサンプルのIC50値は、特定の時間および濃度で反応が直線的であったことを確認するための反応速度論ソフトウェアを使用して計算された。実施例7〜12に述べられた方法を使用して合計24の化合物が合成され、チロシナーゼを阻害する能力について評価された。これらの結果は表2に述べられる。表2を参照すると、合成ジアリールアルカノールのIC50が天然由来のジアリールプロパンに匹敵することが理解され得る。したがってこれら2つの部類の化合物はほぼ同じ量にチロシナーゼを阻害することが可能である。最も活性なジアリールアルカン類および/またはジアリールアルカノール類は2つの芳香環の間に3つの炭素を有した。実施例17に述べられる計算を使用して、平行かつ重なり合った分子内立体構造を作り出すためにこの構造的特徴が重大であると実証された。しかしながら、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4’−メトキシフェニル)−1−エタノール(IC50=77μM)および1,4−ビス−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン(IC50=700μM)のように2つの芳香環の間に2つおよび4つの炭素を含むジアリールアルカノールもやはりチロシナーゼ活性を大幅に阻害することが可能であった。
【0080】
実施例2に述べられた方法を使用し、UP302a(2)によるチロシナーゼの阻害を、実施例14に述べられるように基質としてL−DOPAを使用して評価した。これらの結果は図10に述べられる。この研究はUP302a(2)が長期持続効果を有する強力な競合阻害剤であることを明らかにした。興味深いことに、チロシナーゼ活性はUP302aとのインキュベーションの後の数日間は再開されなかった。対照的に、コウジ酸とのインキュベーションの後のわずか1時間後にチロシナーゼ活性は完全に復元されたUP302aの芳香環への置換基のうちの2つはメトキシ基であったので、阻害剤が容易にヒドロキシル化および/または酸化されることはあり得ない。これはUP302aの阻害活性の有効性および持続性の両方を説明することができる。このようにして、これらの化合物が長期持続性の効果を有すると結論付けられることが可能である。
【0081】
特許請求される組成物の有効性は、実施例15に述べられるように、B−16細胞株のin vitroで形成されるメラニンの阻害を測定することによってもやはり実証された。これらの結果は図11に述べられる。UP302a(2)による内因性メラニンの減少量はコウジ酸のそれよりもほぼ6倍大きかった。付け加えると、UP302aによるMSH誘発型メラニン生成の阻害もやはりコウジ酸よりも有意に大きかった。予期されたように、UP288(1)はB−16細胞株のモデルでコウジ酸に匹敵した。
【0082】
実施例16は2つのジアリールプロパンUP288(1)とUP302aのコウジ酸に相対した細胞毒性を評価するためのアッセイを述べている。3つの被検化合物すべてのIC50よりも高い250μMの濃度で、ジアリールプロパンはコウジ酸のそれに類似した安全性のプロファイルを示した。
【0083】
実施例17は、活性ジアリールアルカン類およびジアリールアルカノール類の最も安定な3−D構造を判定するために実施された分子モデリング分析を述べている。分子力学の計算はChem3Dソフトウェアを使用して実施された。これらの計算は、最も強力なチロシナーゼ阻害剤である1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302a(2)、IC50=0.24μM)が極めて独特の三次元構造を有し、図12に例示されるように2つの芳香環が互いに重なり合っていることを明らかにした。立体構造に関して最小化される全体的エネルギーは−4.7034KJ/Molであり、2つの芳香環の間の距離は3.28Åである。第1の芳香環上のフェノール性ヒドロキシル基は第2の芳香環上の2つのメトキシ基の真上にあり、2つの酸素原子との間の距離は図14に例示されるようにそれぞれ2.99Åおよび3.16Åである。二核酵素チロシナーゼの活性部位は過酸化物の酸化状態[CuII−O2−CuII]にある酸素分子へと錯化された2つの銅イオンを有し、これは、チロシナーゼが(チロシンなどの)モノフェノールの芳香環のオルトの位置でのヒドロキシル基の導入を触媒するメカニズムにとって重要である。(Decker et al.(2000)Angew.Chem.Int.Ed.39:1591)。原子間距離は、Cu−Cuについては3.56Å、Cu−Oについては1.90Å、およびO−Oについては1.41Åであると報告された。(Kitajima et al.(1989)J.Am.Chem.Soc.111:8975)。1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302a、IC50=0.24μM)の平行構造は、図13および14に例示されるように[CuII−O2−CuII]錯体の両方の銅イオンと、上部および下部の両方から完全にキレートする。阻害剤による活性部位の両方の銅イオンへのこの二重のキレート形成は酵素へのL−ドーパなどの基質の接近を完全に遮断し、したがってこのタンパク質の機能を効果的に阻害するであろう。同じ手法を使用して、表2にリストアップされた単離および合成ジアリールアルカン類およびジアリールアルカノール類が分析された。この分析の結果は、捻れ型または非平行型構造を有する化合物がチロシナーゼの活性を阻害する能力を有さないかまたは弱い能力を有するかのどちらかであることを示した。
【0084】
これらの研究から、最も効果的なジアリールアルカン阻害剤が第1の芳香環上に2〜3個の置換基、第2の芳香環上に0〜複数個の置換基を有すると判定された。最も好ましい構造は、少なくとも一方の芳香環が位置2および4で置換される構造である。これらの環は、単離された2つの化合物1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,3’,4’,5’−テトラヒドロ−ベゾ(b)ジオキソシン−8−イル)−1−プロパノール、IC50=72μM、および3−(5’−クロロ−1’−メチル−1’−ヒドロイミダゾール−2’−イル)−1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1−プロパノール、IC50=225μMによって実証されるように6員の芳香環および/または芳香族複素環であることが好ましい。
【0085】
本発明の組成物は当業者に知られているいずれの方法によって投与されることも可能である。投与の様式は、限定はされないが、腸溶性(経口)投与、非経口性(静脈内、皮下、および筋肉内)投与、および局所塗布を含む。本発明による治療の方法は、治療に有効な量のジアリールアルカンまたは2つ以上のジアリールアルカン類の混合物を、必要とする患者に内服または局所で投与することを含む。
【0086】
本発明の組成物は医薬組成物として処方することが可能であって、これは医薬および/または化粧品として許容可能な賦形剤、アジュバント、および/または担体などの他の化合物を含む。例えば、本発明の組成物は治療される宿主が受容することが可能な賦形剤中に処方することが可能である。賦形剤はジアリールアルカンまたはジアリールアルカン類の混合物などの治療薬剤のための希釈剤またはベヒクルとして使用される不活性の物質である。そのような賦形剤の範例は、限定はされないが、水、バッファ、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、マンニトール、ハンクス液、保存料、および他の水性の生理学的平衡塩類溶液を含む。固定油、ゴマ油、オレイン酸エチル、またはトリグリセリドなどの非水性の賦形剤もやはり使用することが可能である。他の有用な処方はカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランといった増粘剤を含む懸濁液を含む。賦形剤はまた、等張性および化学的安定性を高める物質などの微量の添加剤を含むこともあり得る。バッファの範例はリン酸バッファ、重炭酸バッファ、トリスバッファ、ヒスチジン、クエン酸、およびグリシン、またはそれらの混合物を含み、その一方で保存料の範例は、限定はされないが、EDTA、EDTA二ナトリウム、BHA、BHT、ビタミンC、ビタミンE、亜硫酸水素ナトリウム、SnCl2、チメロサール、m−またはo−クレゾール、ホルマリンおよびベンジルアルコールを含む。標準的な処方は液体、または投与のために懸濁液もしくは溶液として適切な液体中に取られることが可能な固体のどちらかである。したがって液体以外の処方では、賦形剤はデキストロース、ヒト血清アルブミン、保存料を含んでも良く、これに滅菌水または生理食塩水が投与前に添加されても良い。
【0087】
本発明の一実施形態では、組成物はアジュバントまたは担体を含むこともやはり可能である。アジュバントは通常、特定の生理活性薬剤に対する宿主の生物学的応答を概して促進する物質である。限定はされないが、適切なアジュバントはフロイントアジュバント、他の細菌細胞壁成分、アルミニウム、マグネシウム、銅、亜鉛、鉄、カルシウム、および他の金属イオンに基づく塩、シリカ、ポリヌクレオチド、トキソイド、血清タンパク質、ウィルス被覆タンパク質、他の細菌由来の製剤、γ−インターフェロン、ブロック共重合体アジュバント(例えばHunter’s Titermaxアジュバント(Vaxcel.TM.,Inc.Norcross,Ga)、Ribiアジュバント(Ribi ImmunoChem Research,Inc.,Hamilton,Mont.から入手可能))、およびサポニン類とその誘導体(例えばQuil A(Superfos Biosector A/S,Denmarkから入手可能))を含む。担体は通常、治療される宿主内で治療組成物の半減期を増大させる化合物である。限定はされないが、適切な担体はポリマーの制御放出製剤、生体分解性の移植物、リポソーム、細菌、ウィルス、オイル類、エステル類、およびグリコール類を含む。
【0088】
一実施形態では、組成物は制御放出製剤として調製され、これは本発明の組成物を徐々に宿主の中に放出する。本願明細書で使用されるように、制御放出製剤は制御放出賦形剤の中に本発明の組成物を含む。適切な制御放出賦形剤は当業者に知られているであろう。好ましい制御放出製剤は生体分解性(すなわち生体浸食性)である。
【0089】
本発明の治療薬剤は、限定はされないが、軟膏、ゲル、ローション、またはクリーム系を含む治療組成物を局所投与するための当業者に知られているいずれかの適切な手段によって、または練り歯磨き、うがい薬として、またはデンタルフロス材料にコーティングされて、またはエマルジョンとして、パッチ、包帯またはマスク、非粘着性ガーゼ、帯具、綿棒、ふき取り布として局所的に投与されることが好ましい。実施例18は処方の合計重量中で純粋および/または混合物のジアリールアルカン(類)0.01%および0.1%の活性内容物を備えた2つのクリーム製剤の調製を述べている。そのような局所塗布剤は、局所性投与のための知られているいずれかの標準的手段を使用して疾患に冒されたいずれの領域にも局所的に投与することが可能である。治療組成物は投与の方法に応じて様々な単位用量形式で投与することが可能である。特定の様式の供給については、本発明の治療組成物は本発明の賦形剤の中に処方されても良い。本発明の治療薬剤はいずれの宿主に投与されることも可能であって、宿主は哺乳動物であることが好ましく、ヒトであることがさらに好ましい。投与の特定の様式は治療される状態に応じて決まるであろう。
【0090】
一実施形態では、適切な軟膏は望ましい濃度、すなわち局所処方の総重量に基づいて0.001%から100%の範囲から概して選択される有効で無毒性の量の単一のジアリールアルカンまたは2つ以上のジアリールアルカン類の混合物、65〜100%(好ましくは75〜96%)の白色軟パラフィン、0〜15%の流動パラフィン、および0〜7%(好ましくは3〜7%)のラノリンまたはその誘導体もしくは合成同等物で構成される。他の実施形態では、この軟膏はポリエチレン−流動パラフィンのマトリックスを含むことも可能である。
【0091】
一実施形態では、適切なクリームは上記に与えられるような望ましい濃度の単一のジアリールアルカンまたは2つ以上のジアリールアルカン類の混合物と一緒になった乳化系で構成される。この乳化系は2〜10%のポリオキシエチレンアルコール類(例えば商標名Cetomacrogol 1000で入手可能な混合物)、10〜25%のステアリルアルコール、20〜60%の流動パラフィン、および10〜65%の水、これらと共に1%のN,N”−メチレンビス[N’−[3−(ヒドロキシメチル)−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル]尿素](Imidurea USNFの名称で入手可能)、0.1〜1%のアルキル4−ヒドロキシ安息香酸(例えば商標名NipastatでNipa Laboratoriesから入手可能な混合物)、0.01〜0.1%のブチル4−ヒドロキシ安息香酸ナトリウム(商標名Nipabutyl sodiumでNipa Laboratoriesから入手可能)、および0.1〜2%のフェノキシエタノールで構成される。
【0092】
一実施形態では、適切なゲルは半固体系で構成され、ここでは液相が高度の架橋を伴なった三次元ポリマーマトリックスの中に拘束される。この液相は水と共に、望ましい量の単一のジアリールアルカンまたは2つ以上のジアリールアルカン類の混合物、0〜20%の水混和性の添加剤(例えばグリセロール、ポリエチレングリコール、またはプロピレングリコール)、0.1〜10%、好ましくは0.5〜2%の増粘剤(これは、限定はされないが、例えば0.1〜2%のメチル4−ヒドロキシ安息香酸(メチルパラベン)またはフェノキシエタノール差量を含む群から選択される1つまたは複数の保存料と一緒になった、限定はされないが、トラガカント、ペクチン、カラギーン、寒天およびアルギン酸を含む群から選択される天然物、または限定はされないが、メチルセルロースおよびカルボキシポリメチレン(カルボポール)を含む群から選択される合成もしくは半合成の化合物であっても良い)で構成されても良い。他の適切な担体は望ましい量の単一のジアリールアルカンまたは2つ以上のジアリールアルカン類の混合物、それと共に70〜90%のポリエチレングリコール(例えばU.S.National Formulary(USNF)に従って調製された40%のポリエチレングリコール3350と60%のポリエチレングリコール400を含むポリエチレングリコール軟膏)、5〜20%の水、0.02〜0.25%の酸化防止剤(例えばブチル化されたヒドロキシトルエン)、および0.005〜0.1%のキレート剤(例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA))で構成される。
【0093】
上記で使用された軟パラフィンという用語はクリームもしくは軟膏担体の白色軟パラフィンおよび黄色軟パラフィンを包含する。ラノリンという用語は天然の羊毛脂および精製された羊毛脂を包含する。ラノリンの誘導体は、これらの物理的または化学的特性を変えるために化学修飾されているラノリン類を特に含み、合成のラノリン同等物はラノリンの代替品として医薬および化粧品の技術で知られていて使用され、例えばラノリン代用品と称されることもあり得る合成または半合成の化合物または混合物を特に含む。
【0094】
使用され得るラノリンの或る適切な合成同等物はSoftisan649として知られている商標名Softisanで入手可能な材料である。Dynamit Novel Aktiengesellscaftから入手可能なSoftisan649は天然植物性脂肪酸、イソステアリン酸、およびアジピン酸のグリセリンエステルであり、その特性はH.Hermsdorf in Fette,Seifen,Anstrichmittel,Issue No.84,No.3(1982),pp3〜6で検討されている。
【0095】
適切な軟膏またはクリーム担体の成分として以上に述べられたその他の物質およびそれらの特性は標準的基準の研究、例えば薬局方で検討されている。Cetmacrogol 1000は式CH3(CH2)m(OCH2CH2)nOHを有し、式中、mは15または17であることが可能であり、nは20〜24であることが可能である。ブチル化されたヒドロキシトルエンは2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールである。Nipastatはメチル、エチル、プロピル、およびブチル4−ヒドロキシ安息香酸の混合物である。
【0096】
本発明の組成物は従来の医薬技術によって作り出することが可能である。したがって、前述の組成物は例えば、高温、好ましくは60〜70℃で軟パラフィン、あるとすれば流動パラフィン、およびラノリンまたはその誘導体もしくは合成同等物を一緒に混合することによって都合良く調製することが可能である。その後、この混合物が室温に冷却され、コルチコステロイドおよびいずれかの他の成分と共にムピロシンの水和結晶カルシウム塩を添加された後に適切な分散を確実にするために撹拌することが可能である。
【0097】
投与の方式に関係なく、特定の用量は宿主の概算の体重に従って計算される。上述の処方の各々を含む治療のために適切な用量を決定するために必要とされるこの計算のさらなる微調整は、特に本願明細書に開示される用量情報および分析の観点で、当業者によって規定通りに為され、余計な実験を必要とせずに彼らによって日常的に実行される業務の範囲内である。これらの投与量は、適切な用量反応データと結び付けて利用される用量決定のための確立された分析法の使用を通じて確認することが可能である。
【0098】
以下の実施例は単に具体例を示す目的で与えられるものであって本発明の範囲を限定するように意図されていない。
【実施例1】
【0099】
乾燥植物からの有機抽出物の調製
乾燥処理された植物材料が2mm以下の粒子サイズに磨り潰され、一部分(60g)が三角フラスコに移され、600mlのメタノール:ジクロロメタン(1:1)で抽出処理された。この混合物が1時間振とう処理され、濾過され、バイオマスがメタノール:ジクロロメタン(1:1)(600ml)で再び抽出処理された。各々の植物材料からの有機抽出物を供給するためにこれらの有機抽出物が組み合わされ、真空下で蒸発処理された。その後、各々の抽出物(約75mg)が1.5mlのDMSO中に溶解されて50mg/mlの濃度にされ、これが次いで−70℃の冷凍庫に貯蔵された。抽出液のアリコートが実施例2に述べられるチロシナーゼアッセイのために使用された。
【実施例2】
【0100】
チロシナーゼ阻害アッセイ
チロシナーゼ阻害アッセイはJones et al.(2002)Pigment.Cell Res.15:335によって報告された方法を使用して実行された。この方法を使用して、チロシナーゼの基質であるL−ドーパをドーパクロムに変換した後に450nmでの吸収をモニターする。チロシナーゼが2000U/mlで50mMのリン酸カリウムバッファ、pH6.8(アッセイバッファ)中に調製され、使用の前に1mlのアリコートで−20℃で貯蔵された。分析に使用するために、ストック酵素溶液が解凍され、アッセイバッファで200U/mlに希釈された。基質であるL−DOPAの2mM作業溶液が各々の分析のためにアッセイバッファ中に調製された。サンプルが10%DMSO(0.5ml)中に溶解され、アッセイバッファで5mlに希釈された。反応混合物が0.050mlの2mM L−DOPA、0.050mlの200U/mlキノコチロシナーゼ、および0.050mlの阻害剤で構成された。アッセイバッファで反応体積が200μlに調節された。アッセイは96穴のFalcon3097平底マイクロタイタープレート(Beckton Dickinson,NJ)中で実施された。ドーパクロムの出現はWALLAC1420 Multilable Counter(Turku,Finland)で測定された。1分当たりの450nmでの吸収の変化量(ΔA450)によって測定される直線的酵素速度から平均速度が判定された。試験サンプルによるチロシナーゼの阻害割合は次の式(1)を使用してサンプルvs.対照区の吸光度の比較によって判定された。
【0101】
(陰性対照区の吸収−サンプルの吸収)/陰性対照区の吸収×100 (1)
結果は表1に述べられる。
【0102】
【表1】
【実施例3】
【0103】
活性植物抽出物のHTP分画
活性有機抽出物(400mg)が予め充填された順相のフラッシュカラム(内径2cm×8.2cm、10gシリカゲル)に装填された。このカラムが(A)50:50のEtOAc:ヘキサンおよび(B)メタノールの勾配移動相を備えたHitachi高処理能力精製(HTP)システムを使用して5mL/minの流量で30分で100%Aから100%Bの条件で溶離された。分離は広帯域波長のUV検出器を使用してモニターされ、画分はGilsonフラクションコレクターを使用して1.9mL/wellで96深穴プレートに集められた。サンプルプレートは低真空および遠心分離で乾燥処理された。各々のセルのサンプルを溶解するためにDMSO(1.5mL)が使用され、チロシナーゼ阻害アッセイのために正副2つで一部分(100μL)が取られた。
【実施例4】
【0104】
ヒメコウゾ(Broussonetica kazinoki:BK)(植物全体)からの1−(2−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−プロパン(1)抽出、分離および精製
【0105】
【化8】
【0106】
ヒメコウゾ(植物全体100g)が磨り潰され、800mlのMeOH:DCM(1:2)で3回抽出処理された。乾燥抽出物(6g)がシリカゲルカラムを使用してヘキサン/酢酸エチル(50/50)からMeOHへの勾配溶剤溶離で分画された。画分は88本の試験管2セットに集められた。各々の画分をチェックするためにLC/MS/PDAが利用され、その後、これらはその組成物の類似性に基づいて組み合わされた。組み合わされた画分は溶剤を除去するために蒸発乾燥処理され、それらのチロシナーゼ阻害活性が実施例2に述べられたようにして測定された。画分(P0346−HTP−F2−P0346−HTP−F4)が最も活性であることが見出され、これらの画分が組み合わされてBK−F2−−4と標識された。溶剤蒸散の後、BK−F2−−4はさらに水/MeOH勾配を使用して予め充填された逆相カラム(C−18カラム)で分離された。18の化合物ピークが分離の後に観察された。14回の逆相カラム処理が実施され、各々の回の類似した画分が組み合わされた。組み合わされて濃縮された画分中のUP288と称される或る化合物のピークは強いチロシナーゼ阻害活性を示した(図4)。準備段階のHPLCによる分離精製の後に、6mgの1−(2−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−プロパン(UP288)(1)が得られた。この化合物の構造はMSおよびNMR分光法(1H、13C、HMQCおよびHMBC)を使用して解明された。図5はUP288の化学構造と13C−NMRスペクトルを描いている。UP288はIC50値24μMを備えてコウジ酸のそれに匹敵する活性を有するチロシナーゼ阻害剤である。図6はUP288およびコウジ酸についてチロシナーゼ阻害の用量反応曲線およびIC50値を例示している。
【0107】
1−(2−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−プロパン(UP288)。収率0.006%(純度>96%、HPLC)、UVλMax:281.0nm、MS(Super Sound Ionization,Positive ion detection):m/z289(M+1,100%)
【0108】
【化9】
【実施例5】
【0109】
Dianella ensifolia(P0389)(植物全体)からの1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302a)(2)および1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,5’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302b)(3)の抽出、分離および精製
【0110】
【化10】
【0111】
キキョウラン(P0389、植物全体300g)が磨り潰され、800mlのMeOH:DCM(1:2)で3回抽出処理された。乾燥抽出物(5g)がシリカゲルカラムを使用してヘキサン/酢酸エチル(50/50)からMeOHへの勾配溶剤溶離で分画された。画分は264本の試験管2セットに集められた。各々の画分をチェックするためにLC/MS/PDAが利用され、その後、これらはその組成物の類似性に基づいて22の画分に組み合わされた。(図7)。組み合わされた画分は溶剤を除去するために蒸発乾燥処理され、それらのチロシナーゼ阻害活性が実施例2に述べられたようにして測定された。画分P0389−HTP−F12、P0389−HTP−F13およびP0389−HTP−F14が最も活性であることが見出され、これらの画分が組み合わされてDE−F12−14と標識された。溶剤蒸散の後、DE−F12−14はさらに水/MeOH勾配を使用して予め充填された逆相カラム(RPカラム)で分離された。2つの主要な化合物ピークと11の微量の化合物ピークが分離の後に観察された。これらのピークの各々に対応する化合物がその後の7回のRP−カラムでの追加的な分離で単離された。集められた化合物のすべてが乾燥処理されてチロシナーゼ阻害活性について試験された。11の微量ピークのうちのUP302aおよびUP302bとそれぞれ称される2つが強いチロシナーゼ阻害活性を示した。(図8)。分離精製の後、2つの活性化合物1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302a、10mg)(2)および1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,5’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302b、6mg)(3)が得られた。これら2つの化合物の構造はMSおよびNMR分光法(1H、13C、gHSQCおよびHMBC)を使用して解明された。図9はUP302aのgHSQCスペクトルを描いている。チロシナーゼ阻害アッセイは、UP302aが0.24μMのIC50を備えて最も強力な阻害剤であり、その一方でUP302bが12μMのIC50を有することを示した。
【0112】
1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302a)(2)。収率0.02%(純度>98%、HPLC)、UVλMax:279.8nm、MS(Super Sound Ionization,Positive ion detection):m/z303(M+1,100%)
【0113】
【化11】
【0114】
1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,5’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302b)(3)。収率0.01%(純度>95%、HPLC)、UVλMax:279.8nm、MS(Super Sound Ionization,Positive ion detection):m/z303(M+1,100%)
【0115】
【化12】
【実施例6】
【0116】
キキョウラン(Dianella ensifolia:DE)(植物全体)からの1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302a)(2)の大規模単離
キキョウラン(植物全体4.3kg)が集められ、磨り潰され、メタノールを溶剤として浸透抽出装置を使用して3回抽出処理された。抽出物が組み合わされ、メタノールを除去するために蒸発処理された。その後、粗抽出物が水に懸濁され、DCMで分離された。これらの層が分離され、DCM層が蒸発処理されて60gの物質を与えた。両方の層のLC−MS/PDA分析は、UP302aの大部分がDCM層に存在し、水の層には微量しか存在しないことを明らかにした。DCM抽出物はヘキサン−ETOACの勾配で溶離させて3つの別々のシリカゲルカラムで分画された。合計15の部分画分が得られ、HPLC−MS/PDAによって分析された。標的の化合物(UP302a)が画分6〜9で見出され、これらが組み合わされて合計3gの濃縮されたUP302aを生じた。この濃縮UP302aがさらに、水−MeOH勾配で溶離させてCG−161樹脂で充填されたオープンカラムで分離された。合計23の画分が集められ、UP302aは画分15〜21に溶離した。その後、画分15〜21は組み合わされ、溶剤が蒸発させられて700mgの固体を生じ、これらがさらにC−18カラムで準備段階のHPLCによって精製されて30mgのUP302aを生じた。構造、チロシナーゼ阻害活性、および精製産物の純度がNMR、酵素阻害アッセイ、およびLC−MS/PDAによって確認された。
【実施例7】
【0117】
置換型カルコン類の水素化ホウ素ナトリウム還元によるジアリールアルカン類の合成
具体例を示す目的で、置換型カルコン類の水素化ホウ素ナトリウム還元によるジアリールアルカン類の合成のための一般的方法が2,4−ジヒドロキシ−3,4−ジメトキシカルコン(4)を使用して下記に述べられる。
【0118】
【化13】
【0119】
2,4−ジヒドロキシ−3,4−ジメトキシカルコン(4)(40mg)がl−プロパノール(5ml)中に溶解され、続いて水素化ホウ素ナトリウム(15mg)が添加され、この混合物が室温で2時間反応させられた。反応が完了すると、20%の酢酸(0.2ml)が添加され、この混合物が80℃に5分間加熱され、冷却された。その後、この混合物が予め充填されたC18カラム上でMeOH/H2O勾配で遊離させられて分離処理されることで1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール(5)を与えた。化合物(5)の構造はMS、UV分光法、1Dおよび2Dの1H−NMRによって確認された。
【0120】
1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール(5)。収率60%(純度>98%、HPLC)、UVλMax:278.5nm、MS(Super Sound Ionization,Positive ion detection):m/z305(M+1,100%)
【0121】
【化14】
【0122】
上述の一般的方法を使用して次の化合物、すなわち2,4−ジヒドロキシ−2’−ヒドロキシカルコン、2’−ヒドロキシ−4’−メトキシ−2,4−ジメトキシカルコン、4’−ヒドロキシ−4−ヒドロキシカルコン、2’,4’−ジヒドロキシ−2−ヒドロキシカルコン、2’,4’−ジヒドロキシ−3,4−ジメトキシカルコン、2’,4’,6’−トリメトキシ−3,4−ジメトキシカルコン、および2’−ヒドロキシ−4’−メトキシ−3,4,5−トリメトキシカルコンがそれらの対応するアルコール類へと還元されることで1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−(4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4,6−トリメトキシフェニル)−3−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、および1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(3’,4’,5’−トリメトキシフェニル)−1−プロパノールを与えた。
【実施例8】
【0123】
置換型ジアリールプロパノンの水素化ホウ素ナトリウム還元による置換型ジフェニルプロパノールの合成
置換型ジアリールプロパノンの水素化ホウ素ナトリウム還元による置換型ジフェニルプロパノールの合成のための方法が、具体例を示す目的で1−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノン(6)の還元を使用して下記に述べられる。
【0124】
【化15】
【0125】
1−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノン(6)(5mg)が1−プロパノール(1ml)中に溶解され、続いて水素化ホウ素ナトリウム(2mg)が添加され、この混合物が室温で5時間反応させられた。反応が完了すると、過剰の水素化ホウ素ナトリウムを中和するために20%酢酸(0.2ml)が加えられた。その後、この反応混合物が予め充填されたC18カラム上でMeOH/H2O勾配で遊離させられて分離処理されることで1−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール(7)を与えた。
【0126】
上述の一般的合成手順に続いて、以下のジアリールアルカン化合物、すなわち1−(2−ヒドロキシ−4,6−ジメトキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノン、3−(5’−ベンジルオキシ−4’−メトキシ−2’−メチルフェニル)−1−(2−ヒドロキシ−4,5−ジメトキシフェニル)−1−プロパノン、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,3’,4’,5’−テトラヒドロベゾ(b)ジオキソシン−8’−イル)−1−プロパノン、および3−(5’−クロロ−1’−メチル−1’−ヒドロイミダゾール−2’−イル)−1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1−プロペノンが還元されて1−(2−ヒドロキシ−4,6−ジメトキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、3−(5’−ベンジルオキシ−4’−メトキシ−2’−メチルフェニル)−1−(2−ヒドロキシ−4,5−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,3’,4’,5’−テトラヒドロベゾ(b)ジオキソシン−8−イル)−1−プロペノール、および3−(5’−クロロ−1’−メチル−1’−ヒドロイミダゾール−2’−イル)−1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1−プロペノールをそれぞれ与えた。
【実施例9】
【0127】
1,3−ビス(2,4−ジメトキシフェニル)−プロパン−1,3−ジオール(9)の合成
【0128】
【化16】
【0129】
1,3−ビス(2,4−ジメトキシフェニル)−プロパン−1,3−ジオン(8)(5mg)が1−プロパノール(1ml)中に溶解され、続いて水素化ホウ素ナトリウム(3mg)が添加され、この混合物が室温で3時間反応させられた。反応が完了すると、過剰の水素化ホウ素ナトリウムを中和するために20%酢酸(0.2ml)が加えられた。その後、この混合物が予め充填されたC18カラム上でMeOH/H2O勾配で遊離させられて分離処理されることで1,3−ビス(2,4−ジメトキシフェニル)−プロパン−1,3−ジオール(9)を与えた。
【実施例10】
【0130】
ネオヘスペリジンからの1−(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)−3−(3’−ヒドロキシ−4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール(11)の合成
【0131】
【化17】
【0132】
ネオヘスペリジンはジヒドロカルコンのグリコシドである。総重量100mgのネオヘスペリジンが1NのHCl(10ml)中に懸濁させられ、80℃に2時間加熱された。この加水分解生成物(10)が冷却され、酢酸エチル(3×10ml)で抽出処理された。酢酸エチル層が組み合わされ、酢酸エチルを除去するために蒸発処理され、1−プロパノール(5ml)中に溶解された。このプロパノール溶液に水素化ホウ素ナトリウム(25mg)が添加され、室温で2時間撹拌された。反応が完了すると、この混合物が予め充填されたC18カラム上でMeOH/H2O勾配で遊離させられて分離処理されることで1−(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)−3−(3’−ヒドロキシ−4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール(11)を与えた。
【実施例11】
【0133】
1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1−プロパノール(14)を合成するためのブトリンの抽出、精製および構造修正
【0134】
【化18】
【0135】
ブトリンはブッテア・フロンドサ(Butea frondosa)の乾燥処理した花からメタノールで抽出処理され、多数回の逆相カラムクロマトグラフィ分離法によって精製された高含有量のフラバノン−グリコシドである。HClで加水分解することによって糖を除去した後、ブチン(12)が生成され、RP−HTPによって精製された(植物全体からの収率1.5%)。その後、ブテイン(13)を得るためにブチンが80℃にて10%の水酸化ナトリウムで処理され、これが水素化ホウ素ナトリウムで還元されて1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1−プロパノール(14)(IC50=250nM)を得た。
【実施例12】
【0136】
1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール(19)の合成
【0137】
【化19】
【0138】
レゾルシノール(15)、3−メトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸(16)、およびH2SO4(5%)がTHF中で4時間還流されることで7,4’−ジヒドロキシ−3’−メトキシフラバノン(17)(収率90%)を与えた。その後、生成物7,4’−ジヒドロキシ−3’−メトキシフラバノン(17)が80℃にて1時間、10%の水酸化ナトリウムで処理され、続いて、プロパノール中で水素化ホウ素ナトリウムによって還元されることで1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール(19)を与えた(LC−MS/PDA検出で確認)。未精製産物は極めて強いチロシナーゼ阻害活性を示す。この混合物がHTPによってさらに精製された。
【実施例13】
【0139】
合成ジアリールアルカンによるチロシナーゼ阻害のIC50測定
合成ジアリールアルカンによるチロシナーゼ阻害は実施例2に述べられた方法を使用して測定された。各々のサンプルのIC50値は特定の時間および濃度で反応が直線的であったことを確認するための反応速度論ソフトウェアを使用して計算された。実施例7〜12に述べられた方法を使用して合計24の化合物が合成され、チロシナーゼを阻害する能力について評価された。これらの結果は表2に述べられる。
【0140】
【表2】
【実施例14】
【0141】
酵素阻害反応速度論
実施例2に述べられた方法を使用し、基質としてL−DOPAを0.75、1.25、および2.5mMの濃度で使用して、阻害剤(UP302a)の様々な濃度(0、261、522、1044nM)でチロシナーゼの阻害を評価した。図10に示されるように、UP302aが強力で長期持続性の競合阻害剤であることが見出された。チロシナーゼ活性はUP302aとのインキュベーションの後の数日間は再開されなかった。対照的に、コウジ酸とのインキュベーションの後のわずか1時間後にチロシナーゼ活性は完全に復元された。
【実施例15】
【0142】
B−16細胞株からのメラニン生成の阻害
メラニン生成の阻害は2つの異なるアッセイを使用して評価した。第1のアッセイでは、β−MSHによる誘発を行わずにメラニン生成の阻害を評価し、それに対して第2のアッセイでは細胞培養培地でβ−MSH誘発を伴なってメラニン生成の阻害を測定した。簡単に述べると、B16F1細胞(ATCC#CRL−622)を密集成長させ、その後、1ウェル当たり40,000細胞で植菌した。細胞は5%CO2を含む高湿環境で37℃にて一晩付着可能にされた。2日目に、阻害剤を0〜1000μMの範囲の濃度で3サンプル一組で細胞に添加し、4日間インキュベートした。メラニン形成を誘発するために必要とされるβ−MSHの量は、0〜1000nMの範囲の濃度で10倍ずつ上げながらホルモンを添加することによって判定した。適切なβ−MSH濃度が決定されると、細胞を上記のように植菌して一晩付着可能にし、その後、0〜1000μMの範囲の濃度でチロシナーゼ阻害剤と共にインキュベートした。発色を毎朝目視でモニターした。発色後、200μlの細胞上清が各々のウェルから取り出し、450nmで吸光度を測定した。結果の読み取り値を、β−MSH誘発を伴なった細胞アッセイと伴なわない細胞アッセイでのメラニン形成に関してIC50を判定するために使用した。細胞毒性の初期の比較に関して、乳酸脱水素酵素アッセイ(LDH)を実施するために250μM処理ウェルを使用した。LDHは損傷を受けた、または死んだ細胞から漏れ出る代謝酵素である。この酵素はNAD+の存在下で発色団を変換して分光学的にモニターすることが可能な色の変化を生じさせる。
【0143】
このアッセイの結果は、コウジ酸よりも良い阻害剤が無ければ、試験した天然の阻害物質(UP288、UP302a、およびUP302b)はすべて少なくとも優れていることを明らかにした。2セットの条件下ではIC50値にある程度の差異があった。コウジ酸による阻害は内因性での実験に関する170μMのIC50から誘発実験での67μMのIC50へと向上した。コウジ酸に相対して試験された阻害剤のうち、化合物UP302bは2セットの条件下でIC50に増大を示した唯一のものであって、5.2μMのIC50から34μMのIC50へと増大した。チロシナーゼ阻害に関して測定されたIC50は試験された化合物すべてに関して比較的同じであったが、例外として2つの化合物UP302およびUP302bは内因性アッセイでの28μMと5.2μM、誘発アッセイでの40μMと34μMに比べて0.2μMと0.3μMの低いIC50をそれぞれ有した。これらの違いは、他の阻害剤に比べてUP302a(2)およびUP302b(3)によって低下した細胞浸透性に起因する可能性が高い。しかしながら、これらの酵素阻害の強さによってこれは克服される。
【0144】
表3はコウジ酸に相対した阻害剤UP288とUP302aに関するこれら2つのアッセイの結果を与える。
【実施例16】
【0145】
細胞毒性アッセイ
乳酸脱水素酵素アッセイ(LDH)を実施するために、化合物で処理されたウェルが使用された。LDHは損傷を受けた、または死んだ細胞から漏れ出る代謝酵素である。この酵素はNAD+の存在下で発色団を変換して分光学的にモニターすることが可能な色の変化を生じさせる。細胞毒性は250μMの濃度で調べられた。この濃度で、これらの化合物はいずれもコウジ酸を有意に超える細胞毒性ではなかった。しかしながら、1つの濃度(250μM)のみで細胞毒性が試験されたことが留意されるされるべきである。表3に示されるように、UP288(1)およびUP302a(1)は中程度の細胞毒性を示し、これはコウジ酸と匹敵した。
【0146】
【表3】
【実施例17】
【0147】
分子力学(MM2)計算
分子力学の計算はエネルギーの最小化および最も安定な3−D構造の判定を目的としてChem3Dソフトウェアを使用して実施された。以下のパラメータ、すなわちステップ間隔=2.0fs、フレーム間隔=10fs、10,000ステップで終了、加熱/冷却速度=1.000Kcal/atom/PS、目標温度=3000K、特性:π結合次数および立体エネルギーの概要が使用された。すべての天然と合成の化合物、および他のジアリールアルカンとジアリールアルカノールの構造が分析された。キキョウラン(L.)DC.の植物全体から単離される最も強力なチロシナーゼ阻害剤である1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302a(2)、IC50=0.24μM)が極めて独特の三次元構造を有し、2つの芳香環が互いに重なり合っていることが見出された。立体構造に関する最小の全体的エネルギーは−4.7034KJ/Molである。2つの芳香環の間の距離は3.28Åであった。第1の芳香環上のフェノール性ヒドロキシル基は第2の芳香環上の2つのメトキシル基の真上にあり、2つの酸素原子との間の距離は図12〜14に例示されるようにそれぞれ2.99Åおよび3.16Åであった。この分子内平行構造は、二核酵素の両方の銅イオンが過酸化物の形[CuII−O2−CuII]にあるときにこの化合物がこれらを上部と下部から完全にキレートすることを可能にする。
【実施例18】
【0148】
クリームへのジアリールアルカン組成物の製剤化
UP302aは主要な活性成分として置換型ジアリールプロパンで構成される。これらの化合物は、限定はされないが、エタノール、プロピレングリコール、およびエチレングリコールを含む高い極性の溶剤中に可溶性である。これらは医薬および/または化粧品として許容可能な賦形剤、アジュバント、および/または担体と共に処方することが可能である。そのような賦形剤の範例は、限定はされないが、水、バッファ、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、マンニトール、ハンクス液、保存料、および他の水性の生理学的平衡塩類溶液を含む。限定はされないが、固定油、ゴマ油、オレイン酸エチル、またはトリグリセリドを含む非水性の賦形剤もやはり使用することが可能である。限定はされないが、他の有用な処方は、限定はされないが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランを含めた増粘剤を含有する懸濁液を含む。賦形剤もやはり、色と化学的安定性を促進する酸化防止剤といった微量の添加物または保存料を含むことがあり得る。UP302はまた、皮膚浸透性を高めるためにリポソーム処方で調製すること、または活性成分の組成物を宿主の中に徐々に放出する制御放出製剤として調製することが可能である。
【0149】
UP302aは軟膏、ゲル、ローション、またはクリーム担体として、またはエマルジョン、パッチ、包帯またはマスク、非粘着性ガーゼ、帯具、綿棒、ふき取り布として局所的に投与されることが好ましい。そのような局所使用は、局所投与用に知られているいずれかの標準的な手段を使用していずれの病気の領域にも局所的に投与することが可能である。UP302はヒトおよび動物のいずれにも投与することが可能である。
【0150】
UP302aの治療薬組成物は、投与の方法および標的の徴候に応じて様々な単位用量形式で投与することができる。有効で無毒性の量は概して、局所処方の総重量に基づき0.01%から5%の範囲に推奨される。表4および5に例示されるようにUP302aの2つの異なる濃度(重量で0.01%と0.5%)がクリームに製剤化した。これらのクリームを調製するために、ジアリールアルカンが室温で水に溶解され、溶液に完全に分散させられるまで(約5分間)ブレンダーでホモジナイズされて組成物Aを生じさせた。撹拌せず、またはかき混ぜることなく室温でUltrez−21カルボマーがホモジナイズされた溶液に、表面に振りかけてこれらが完全に湿潤化して(白い領域が見えなくなる)溶液中に落ちるまで放置することによって添加された。その後、穏やかに撹拌しながら溶液が40℃に加熱され、グリセリンが添加され、この組成物が追加の5分間混ぜ合わされて組成物Bを与えた。40℃で、組成物Aが組成物Bに添加され、均一になるまで(約5分間)この組成物が十分に混ぜ合わされる。結果として得られるエマルジョンが30℃に冷却され、撹拌棒および/またはスパチュラで撹拌しながら中和剤で滴定してpHが約5.5(5.3から5.7)に調節される。中和で誘発されるカルボマーの構造変化に起因してエマルジョンは高度に粘性になった。撹拌するとこのエマルジョンはエマルジョンクリームに適した粘度を達成するであろう。この組成物が均一になるまで混ぜ合わされ、清潔な貯蔵容器に注がれ、2℃から8℃で貯蔵される。
【0151】
【表4】
【0152】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】メラニン形成の過程を、この過程を調節するための様々な見込まれるメカニズムと共に例示する図である。
【図2】チロシナーゼの活性部位の構造を例示する図である。この図で理解され得るように、2つの銅イオンが接近した間隔にあり、各々が3つのヒスチジンへと側鎖のN−ε窒素原子を通じて配位させられる
【図3A】知られているチロシナーゼ阻害剤の構造、名称、作用のメカニズム、および他の効果を描く図である。
【図3B】知られているチロシナーゼ阻害剤の構造、名称、作用のメカニズム、および他の効果を描く図である。
【図4】強調されるUP288(1−(2−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−プロパン)(1)を含むHTP部分のHPLC/UVクロマトグラムを例示する図である。
【図5】UP288(1)の化学構造および13C−NMRスペクトルを描く図である。
【図6】UP288およびコウジ酸についてチロシナーゼ阻害の用量反応曲線およびIC50値を例示する図である。
【図7】キキョウラン(Dianella ensifolia)(P0389)(植物全体)から得られる2つの活性化合物(UP302aおよびUP302b)のバイオアッセイ手引書による単離を描く図である。
【図8】複数回のカラム分画の後の濃縮されたUP302画分のHPLC/UVクロマトグラムを描く図である。
【図9】UP302a(2)のgHSQCスペクトルを描く図であって、プロトンと炭素の間の結合を例示している。
【図10】阻害剤UP302aおよび基質L−DOPAの様々な濃度でチロシナーゼの活性の阻害を例示するグラフである。この反応速度論の調査はUP302aがチロシナーゼ酵素の競合阻害剤であることを明らかにした。
【図11】コウジ酸およびUP302a(2)による、マウスB16F1細胞の内因性メラニン生成の阻害を例示する図である。各々のサンプルは10通りの異なる濃度で3サンプル一組で試験された。
【図12】MM2エネルギー最小化処理の後のUP302aの三次元構造を描く図である。
【図13】CuII−O2−CuII酸化状態にある2つの銅イオンに配位させられたときのUP302aの三次元構造を描く図である。
【図14】実施例17で計算されるように、過酸化物の形(CuII−O2−CuII)にある銅イオンでキレート化されたときのUP302aの隣り合う原子間の距離を描く図である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年5月28日に提出され、その全文を本願明細書に参照で組み入れられる「Diarylalkanes as Potent Inhibitors of Binuclear Enzymes」という表題の米国仮特許出願公開第60/575,599号明細書の恩典を権利主張するものである。
【0002】
本発明は概して、二核酵素が介在する疾病および状態の予防および治療に関する。特に、本発明は二核活性部位を有する酵素の活性を阻害する方法を含む。本発明に含まれるものは1つまたは複数のジアリールアルカン(類)で構成される新規の組成物である。本発明のジアリールアルカン類は1つまたは複数の植物源から単離することが可能であり、または有機合成によって得ることが可能である。本発明にさらに含まれるものはこれらの化合物を天然源から単離するための方法およびこれらの化合物を合成するための方法である。一実施形態では、これらのジアリールアルカン類は植物源から単離する天然の化合物の合成的化学修飾によって得られる。
【背景技術】
【0003】
皮膚の過剰色素沈着を阻止または予防することが可能な製品に関して大きな需要が存在する。皮膚の天然色素であるメラニンはメラニン細胞の中に存在する膜結合オルガネラであるメラノソームで合成される含窒素高分子化合物である。メラニンは肌質(遺伝的素質)および環境条件に応じて異なった濃度で生成される。メラニン細胞は表皮の基底膜に生じる細胞であって、細胞含有量の5%と10%の間の割合を占める(1cm2当たり約1200〜1500のメラニン細胞)。紫外(UV)光といった要因で刺激されると、メラニン細胞は一層急速に分裂し、それにより、さらに大量のメラニンを生成する。その後、メラニンは成熟メラノソームで表皮の角化細胞へと輸送され、茶色の肌色として目に見えるようになる。
【0004】
ヒトの皮膚のメラニン細胞の数は肌の色に関係なく程度の差はあるが同じである。肌の色は生成されるメラニンの量およびタイプ(黒色のユーメラニンまたは黄色から赤褐色のフェオメラニン)に大きく依存する。アジア人および皮膚の白い人々は皮膚の黒い人々よりも低レベルのユーメラニンを有し、したがって放射の影響に対抗して低い防護を有する。赤毛の人々はフェオメラニンの色素沈着で特徴付けられ、光防護を殆どまたは全く有さない。付け加えると、皮膚内のメラニンの分布もやはり多様である。白い皮膚の人々では色素の大部分が基底層中にあり、それに対して黒い皮膚の人々ではメラニンは全体に広がって角質層の中に達する。
【0005】
メラニンの過剰生成は様々なタイプの異常な皮膚色、毛色、およびその他の皮膚の疾病および状態の原因になりかねない。皮膚の色素沈着疾患に関連して主として2つの状態がある。UV曝露および老化によって引き起こされる異常に高レベルのメラニンを含む皮膚の黒化、および結果として老人斑、肝斑、および薬物および外傷/疾病で誘発される色素沈着過度につながる皮膚色素の異常な分布である(Seiberg et al.(2000)J.Invest.Dermatol.115:162、Paine et al.(2000)J.Invest.Dermatol.116:587)。
【0006】
メラニン形成(メラニンの生成)の調節因子は図1に例示されるように様々な方式で機能するように設計または選択することが可能である。図1を参照すると、これらはメラノソーム構造の調節に直接作用してメラニン合成の前に機能することが可能であり、メラニンの合成に含まれるチロシナーゼなどの酵素の生成または機能を阻害することによって作用することが可能であり、ユーメラニン/フェオメラニンの比を変えることが可能であるかまたはメラニン細胞から角化細胞へのメラノソームの移送に関与する制動メカニズムによって機能することが可能である(Briganti et al.(2003)Pigment Cell Research 16:101〜110)。
【0007】
チロシナーゼはメラニンの生成に重要な酵素である。これは3つの反応、すなわち3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)へのチロシンのヒドロキシル化、DOPAキノンへのDOPAの酸化、およびインドールキノンへのDHI(5,6−ジヒドロキシインドール)の酸化を触媒する。(Hearing et al.(1991)FASEB 53:515)。チロシナーゼがその触媒活性のために基質と二価の金属イオンの両方を必要とすることは判定されている。皮膚の色を薄くする目的でメラニンの合成を阻害するために現在使用される方法は主として、直接的にチロシナーゼ自体と相互作用するか、または間接的に例えば必要な金属イオンを錯化するかのどちらかによってチロシナーゼ活性を阻害する物質を基本としている。
【0008】
チロシナーゼはタイプ3の銅タンパク質の部類に属し、活性部位に2つの銅イオンを有する。チロシナーゼの活性部位の構造の研究は、これら2つの銅イオンが接近した間隔にあること、および各々のイオンが図2に例示されるように3つのヒスチジンへと側鎖のN−ε窒素原子を通じて配位させられることを明らかにした(Pfiffner and Lerch(1981)Biochem.20:6029、Cuff et al.(1998)J.Mol.Biol.278:855)。二核の銅イオンは3通りの主要な酸化還元形式、すなわちCuI−CuI還元形、過酸化物として可逆的にO2に結合するCuII−O2−CuII形、および通常ではCu2+イオンが小さいリガンドによって架橋される酵素の静止形で存在することが可能である。CuII−O2−CuIIの酸化還元状態がチロシナーゼの酵素活性に重要であることは判定されている。この状態では、チロシナーゼは(チロシンなどの)モノフェノールのオルトの位置への第2のヒドロキシル基の導入、メラニンの生合成に重要である反応を触媒する。
【0009】
チロシナーゼの活性部位でモノフェノールの接近、リガンド形成、または酸化を妨害するどのような化合物もチロシナーゼの有効な阻害剤となり、場合によってはメラニン生成の減少およびさらに薄い皮膚の色に結び付くであろう。概して述べると、チロシナーゼの活性部位の銅イオンは酸素、窒素、硫黄およびハロゲンの孤立電子対の電子で容易にキレートすることが可能である(Weder et al.(1999)Inorg.Chem.38:1736)。図3は知られているいくつかのチロシナーゼ阻害剤(Briganti et al.(2003)Pigment Cell Research 16:101〜110、Seo et al.(2003)J.Agric.Food Chem.51:2837)の構造および作用のメカニズムを例示している。
【0010】
図3を参照すると、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)に類似した構造を有する化合物、例えばヒドロキノンは両方共、チロシナーゼを阻害し、やはりメラニン細胞溶解剤であることが理解され得る。(米国特許第5,523,077号)。例えば、代表的なクマコケモモであるUvae ursiの葉から単離されるアルブチンは天然由来のヒドロキノンのβ−グルコピラノシドであり、チロシナーゼを阻害してヒトのメラニン細胞内のメラニン合成に影響を与える(Chakraborty et al.(1998)Pigment Cell Res.11:206、米国特許第5,980,904号)。アルブチンの作用のメカニズムはチロシナーゼの活性部位での結合に関するL−チロシンまたはL−ドーパとの競合を含む。これはタンパク質の発現または合成を抑制しない。(Maeda and Fukuda(1996)J.Pharmacol.Exp.276:765)。合成アルブチン型の化合物もやはりヒトのチロシナーゼを強力に阻害する。(Sugimoto et al.(2003)Chem.Pharm.Bull.51:798)。ベニバナ(Carthamus tinctorius L.)の培養細胞から単離される新規のジキノンであるキノベオンAはコウジ酸よりも大きなチロシナーゼ阻害活性を有する。(Kanehira et al.(2003)Planta Med.69:457)。長期の時間にわたって、または高濃度で使用されれば、ヒドロキノン類は深刻な副作用を有しかねない。付け加えると、ヒドロキノン類は永久的な色素脱失につながりかねず、したがってUV光に晒されたときの皮膚の光感受性を増大させる可能性がある。
【0011】
現在使用されている耐容性の良好な脱色物質は天然起源のものである。例えば、コウジ酸は或る種の細菌を含む炭水化物溶液から誘導される天然のヒドロキシル−γ−ピロンである。図3を参照すると、コウジ酸は酸化されたオルト−ジヒドロキシフェノールであることが理解され得る。コウジ酸は金属イオン、特にCuIIで強いキレートを形成することが知られている。(Gerard and Hugel(1975)Bull.Soc.Chim.Fr.42:2404)。これはチロシナーゼの強力な競合的であるが、遅延結合型の阻害剤である。(Cabanes et al.(1994)J.Pharm.Pharmacol.46:982)。コウジ酸は二銅(II)錯体および二銅二酸素錯体付加化合物の両方に強力に結合する架橋リガンドとして作用し、したがって酵素へのカテコール基質の結合を阻止することを最近の研究が示した。(Battaini et al.(2000)JBIC 5:262)。皮膚漂白剤としての使用のためにコウジ酸およびそのエステルが特許化された。(米国特許第4,369,174号、第4,771,060号、第5,824,327号、第5,427,775号、第4,990,330号参照)。
【0012】
フラボノイドはチロシナーゼの阻害剤として報告された他の分類の天然物である。(Shimizu et al.(2000)Planta Med.66:11、Xie et al.(2003)Biochem.68:487)。活性なチロシナーゼ阻害剤はフラボン類(Likhitwitayawuid et al.(2000)Planta Med.66:275)、フラボノール類(Kubo and Kinst−Hori(1999)J.Agric.Food Chem.47:4121)、プレニル化されたフラボノイド類(Kuniyoshi et al.(2002)Planta Med.68:79、Son et al.(2003)Planta Med.69:559、Kim.et al.(2003)Biol.Pharm.Bull.26:1348)、フラバン類(No et al.(1999)Life Sci.65:PL241、Kim et al.(2004)Biomacromolecules 5:474)、およびジヒドロカルコン類(Shoji et al.(1997)Biosci.Biotechnol.Biochem.61:1963)を含む。
【0013】
他のタイプのチロシナーゼ阻害剤は、フェノール誘導体類(Sakuma et al.(1999)Arch.Pharm.Res.22:335、Kerry and Rice−Evans(1999)J.Neurochem.73:247、Battaini et al.(2002)J.Biol.Chem.277:44606)、ベンズアルデヒド類(Kubo and Kinst−Hori(1999)Plant Medica 65:19、Chen et al.(2003)J.Enzyme Inhib.Med.Chem.18:491、Nihei et al.(2004)Bioorg.Med.Chem.14:681)、安息香酸誘導体類(Curto et al.(1999)Biochem.Pharmacol.57:663、Chen et al.(2003)J.Protein Chem.22:607、Miyazawa et al.(2003)J.Agric.Food Chem.51:9653、Kubo et al.(2003)Z.Naturforsch[C]58:713)、クペロン(Xie et al.(2003)Int.J.Biochem.Cell Biol.35:1658)、甘草(Glycyrrhiza uralensis)の根から得られるベンゾジピラン(Yokota et al.(1998)Pigment Cell Res.11:335)、チオヒドロキシル化合物(Park et al.(2003)J.Protein Chem.22:613)、テルペノイド類(Oh et al.(2002)Planta Med.68:832)、およびオキサゾロジネチオン(Seo et al.(1999)Planta Med.65:683)を含む。知られている最も強力な天然チロシナーゼ阻害剤はスチルベン類(IC50=0.3〜5μM)(Shin et al.(1998)Biochem.Biophys.Res.Commun.243:801、Ohguchi et al.(2003)Biosci.Biotechnol.Biochem.67:1587)、スチルベングリコシド類(Iida et al.(1995)Planta Med.61:425)、および4置換型レゾルシノール類(Shimizu et al.(2000)Planta Med.66:11)である。
【0014】
4置換型レゾルシノール類の構造/活性の研究は−CH2C6H5などの疎水性で大きくない置換基およびアルキル基、すなわち−CH2CH2CH3が10μM未満のIC50を備えて最大の効能を有することを示す(Shimizu et al.(2000)Planta Med.66:11)。4置換型レゾルシノール類の作用のメカニズムはDL−β−(3,4−ジヒドロキシフェニル)アラニン(DL−ドーパ)の酸化の遅行型の結合拮抗阻害として特徴付けされてきており(Jimenez and Garcia−Carmona(1997)J.Agric.Food Chem.45:2061)、二核銅イオンに対するさらなる金属キレート作用の理解はされていない。
【0015】
ユリ科の仲間であるアロエは多くの生物学的に活性の物質を含む複雑な植物である。(Cohen et al.(1992)「Wound Healing/Biochemical and Clinical Aspects」,1st ed.W B Saunders,Philadelphia)。360種を超えるアロエが知られており、これらの大部分はアフリカ原産である。歴史的に、アロエ製品は火傷、痛み、およびその他の傷の治療のために皮膚用用途に使用されてきた。アロエ植物から臨床活性を有する化合物を識別することにこれらの使用は多量の研究を促進してきた。(例えばGrindlay and Reynolds(1986)J.of Ethnopharmacology 16:117〜151、Hart et al.(1988)J.of Ethnopharmacology 23:61〜71参照)。
【0016】
Yagiらはアロエから単離される一群の化合物、特にアロエシンとその誘導体のうちの1つ、2”−O−フェルロイルアロエシンを開示しており、これらはチロシナーゼの有効な阻害剤である。(Yagi et al.(1987)Plant Medica 515〜517、Yagi et al.(1977)Z.Naturforsch 32c:731〜734)。C−グルコシル化された5−メチルクロモンであるアロエシンは0.92mMのIC50で投与量依存的にヒトのチロシナーゼヒドロキシラーゼ活性を阻害し、IC50=0.41mMを有するコウジ酸、IC50=3.02mMを有するアルブチンに比べて0.92mMのIC50で投与量依存性の方式でDOPAオキシダーゼ活性もやはり阻害した。チロシナーゼ酵素活性およびその結果生じるメラニン形成のアロエシンによる阻害はB16F1マウスメラノーマ細胞を使用して細胞を根拠とする分析で確認された。メラニンの生合成は投与量依存性の方式でアロエシンによって(IC50=0.167mMで)阻害された。(Jones et al.(2002)Pigment.Cell Res.15:335)。アロエのクロモンに関するチロシナーゼ阻害の作用メカニズムは銅イオンの還元に関連していると推測される。天然(米国特許第6,451,357号)、半合成(米国特許第5,801,256号、米国特許第6,083,976号)および処方されたアロエクロモン(米国特許第6,123,959号)の両方がそれらの皮膚漂白能力に関して特許化された。
【0017】
アスコルビン酸(合成および柑橘類果実などの天然源からのビタミンC)およびその誘導体もやはり皮膚漂白のために利用されてきた。殆どのケースで、ビタミンCはコウジ酸または他のチロシナーゼ阻害剤と共に処方される(米国特許第4,919,921号、第6,458,379号、および第5,916,915号)。他に報告された皮膚漂白化合物はオリーブ植物からの抽出物(米国特許第6,682,763号)、不飽和の長鎖脂肪酸(米国特許第6,669,932号)、クルクミン類(米国特許第6,641,845号)、酵素抽出物(米国特許第6,514,506号)、クメストロール(米国特許第6,503,941号)、ヒドロキシルカルボン酸類(米国特許第6,417,226号、第6,365,137号、第5,609,875号、第5,262,153号)、β−グルカン類(米国特許第6,251,877号)、アロエクロモン類(米国特許第6,083,976号)、フェニルアラニン化合物(米国特許第5,767,158号)、ルチン(米国特許第5,145,782号)、エスシノール(米国特許第5,728,683号)、サリチル酸類(米国特許第5,700,784号)、アンギオジェニン(米国特許第5,698,185号)、メルカプトデキストラン(米国特許第6,077,503号)、エラグ酸(米国特許第6,066,312号)、ホスフィン酸類(米国特許第6,280,715号)、ホウ素含有化合物(米国特許第5,993,835号)、植物抽出物(葛根から:米国特許第6,352,685号、桑から:米国特許第6,197,304号、第6,066,312号、第5,872,254号、アセロラチェリー発酵物から:米国特許第5,747,006号、フラノンから:米国特許第5,602,256号、その他:米国特許第5,773,014号)を含む。
【0018】
ジアリールアルカン類は希少部類の天然物である。今日までCD−ROMの「the Dictionary of Natural Products」(Chapman&Hall/CRC,Version12:2 January 2004)にリストアップされた179,000以上の天然化合物があり、そのうちのわずか82がジアリールアルカン類(n=3)である。カジノキ(Broussonetia papyrifera)はクワ科の落葉木であり、20以上のジアリールプロパン類がこの属単独から単離されている(Keto et al.(1986)Chem.Pharm.Bull.34:2448、Ikuta et al.(1986)Chem.Pharm.Bull.34:1968、Takasugi et al.(1984)Chem.Lett.689、Gonzalez et al.(1993)Phytochem.32:433)。カジノキの抽出物の分画に向けられたバイオアッセイが4つのジアリールプロパン類を生じさせ、これらはアロマターゼ阻害活性を有さなかった。(Lee et al.(2001)J.Nat.Prod.64:1286)。しかしながら、同じ植物から単離された2つのプレニル化されたジアリールプロパン類はいくつかの癌細胞系に対して細胞毒性を示し(Ko et al.(1999)J.Nat.Prod.62:164)、ブラウソニンAは抗真菌活性を示した(Iida et al.(1999)Yakugaku Zasshi 119:964)。
【0019】
いくつかのジアリールアルカン類がイリアンテラ(Iryanthera)種(ニクズク科)からやはり単離された。(Alvea et al.(1975)Phytochem.14:2832、de Almeida et al.(1979)Phytochem.18:1015、Braz et al.(1980)Phytochem.19:1195、Diaz et al.(1986)Phytochem.25:2395)。イリアンテラ・ランシフォリア(Iryanthera lancifolia)から単離された4つのジヒドロカルコン類は抗酸化活性を示した。(Silva et al.(1999)J.Nat.Prod.62:1475)。いくつかのジアリールプロパン類がニクズク科のバイロラ種からやはり単離された。(Braz et al.(1976)Phytochem.15:567、Hagos et al.(1987)Plant Med.53:57、Gonzalez et al.(1993)Phytochem.32:433、Kijjoa et al.(1981)Phytochem.20:1385、Talukdar et al.(2000)Phytochem.53:155)。
【0020】
天然源から単離される他のジアリールプロパン類はマルバルキノカリン(Pterocarpus marsuprium)(マメ科)(Rao et al.(1984)Phytochem.23:897、Maurya et al.(1985)J.Nat.Prod.48:313)、クロモジ(Lindera umbellate)(クスノキ科)(Morimoto et al.(1985)Chem.Pharm.Bull.33:2281)、ムギワラギク・ムンジー(Helichrysum mundii)(キク科)(Bohlmann et al.(1978)Phytochem.17:1935)、ビスカム・アングラタム(Viscum angulatum)(ヤドリギ科)(Lin et al.(2002)J.Nat.Prod.65:638)から由来するそれら、滑らかな筋肉弛緩効果を有するサバンナアカシア(Acacia tortilis)(マメ科)(hagos et al.(1987)Planta Med.53:27)、キサントセルシス・ザンベジアカ(Xanthocercis zambesiaca)(マメ科)(Bezuidenhout et al.(1988)Phytochem.27:2329)から由来するそれら、およびクネマ・グロメラータ(Knema glomerata)(ニクズク科)から得られる細胞毒性化合物(Zeng et al.(1994)J.Nat.Prod.57:376)を含む。
【0021】
JP05213729Aは皮膚炎、しみ、そばかす、および日焼けの結果生じる色素症の治療のためのメラニン阻害剤として合成ジヒドロカルコンの使用を教示している。特許請求された化合物は以下の一般式を有し、
【0022】
【化1】
【0023】
式中、XはH、OH、または=Oから選択され、RはHまたはMeであり、R1〜R5は、H、OR、およびNH2から独立して選択される。このようにして、開示されたジヒドロカルコンは一方のフェニル環上で単一のヒドロキシ/メトキシ置換基を含み、第2の環に5つの非特異的な置換基(R1〜R5)を含む。特許請求された組成物のいずれについても酵素阻害は測定されず、メラニンの阻害は培養皮膚細胞によって作り出されるメラニンの量およびUV刺激に続いて生じる動物の皮膚の色変化の測定によって判定された。本発明では、特開平17−213729に開示された化合物のうちの1つ、1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−(4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノールが合成され、チロシナーゼを阻害する能力が測定された。この化合物はチロシナーゼの緩やかな阻害(IC50=305μM、表2)を示しただけであった。本発明は独特の置換パターンを有する新規のジアリールアルカン類を教示するものであって、2つの芳香環のうちの少なくとも一方Ar1またはAr2が1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で置換され、前記R’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではない。これらの化合物はチロシナーゼの活性を阻害する予期しない能力を示し、それは特開平17−213729で教示された化合物よりも4〜600倍大きい。本出願に教示される化合物のいずれについても今日まで公表された報告は無いと考えられる。
【発明の開示】
【0024】
本発明は二核活性部位を有する、本願明細書で二核酵素と称される酵素の活性を阻害するための方法を含み、前記方法は有効量の1つまたは複数のジアリールアルカン(類)を、必要とする宿主に投与することを含み、前記ジアリールアルカン類は合成され、および/または1つまたは複数の植物から単離される。本発明の範囲に含まれる二核酵素の範例は、限定はされないが、チロシナーゼ、アルギナーゼ、ウレアーゼ、チトクロムcオキシダーゼ、プロトンポンプヘム銅酸化酵素、二機能性一酸化炭素デヒドロゲナーゼ/アセチルCo−Aシンターゼ、リボヌクレオチド還元酵素、メタロ−β−ラクタマーゼ、H(+)−ATPアーゼおよび代替オキシダーゼ、および細菌性ホスホトリエステラーゼを含む。一実施形態では二核酵素はチロシナーゼである。
【0025】
本発明はまた、二核酵素の活性に関連する疾病および状態の予防および治療のための方法を含む。本発明による予防と治療の方法は治療に有効な量の1つまたは複数のジアリールアルカン(類)を、必要とする宿主に内服または局所で投与することを含む。阻害される二核酵素に応じて、ジアリールアルカンは抗微生物剤、抗真菌剤、抗マラリア剤、抗ウィルス剤、雄および雌の性的刺激を制御する手段としての一酸化窒素生成の調節剤、抗炎症薬剤、酸化防止剤、薬剤代謝の調節剤、および癌および充実性腫瘍の成長の阻害剤として使用することが可能である。ジアリールアルカンはまた、歯周病、口腔の前癌状態、口腔の癌、および他の口腔の悪性疾患、過敏な歯ぐきと歯、続発症、歯髄炎、刺激状態、口腔義歯の身体移植、外傷性傷害、損傷、歯軋りおよび口内、歯ぐきまたは舌の他の小さな傷によって引き起こされる痛みと炎症、歯の疫病および結石、歯の脱石灰、タンパク質分解、および虫歯(腐食)の予防と治療に使用されることも可能である。
【0026】
本発明はさらに、メラニンの過剰生成または不均一な分布に関連した疾病および状態の予防と治療のための方法を含み、前記方法は治療に有効な量の1つまたは複数のジアリールアルカン(類)を、必要とする宿主に内服または局所で投与することを含む。メラニンの過剰生成または不均一な分布に関連した疾病および状態は、限定はされないが、日焼け、(皮膚の老化、肝臓疾患、火傷および局所外傷によって引き起こされる)色素沈着過度の斑点、(真菌、微生物、およびウィルス感染によって生じる炎症状態に起因する)皮膚の色素沈着、白斑、上皮性悪性腫瘍、メラノーマ、ならびに他の哺乳動物の皮膚病を含む。
【0027】
この方法はまた、紫外(UV)放射、化学物質、熱、風および乾燥環境への曝露から結果として生じる皮膚の黒化および損傷を予防および治療するために使用されることも可能である。最後に、この方法は皺、たるんだ皮膚、目の周囲の皺とくまを予防および治療し、過敏な皮膚を落ち着かせ、皮膚炎および他のアレルギー関連の皮膚の状態を予防および治療するために使用することが可能である。上述の皮膚の疾病および状態の予防および治療のための使用に加えて、本願明細書に述べられる医薬組成物は改善された皮膚の色、向上した弾力性、減少させられて遅らされる老化、促進された若々しい外見ときめ、および増大したしなやかさ、硬さ、滑らかさおよび柔軟性を伴なった滑らかで若々しい皮膚の外観の恩典をもたらす有効な組成物を与える。
【0028】
金属イオンでキレートすることによって、ジアリールアルカンは宿主の血流中に必須の金属イオンを送達するため、および/または皮膚または血液/脳関門、ならびに他の膜を透過して金属イオンを輸送するために使用されることもやはり可能である。この実施形態では、本方法は治療に有効な量の1つまたは複数のジアリールアルカン(類)を、送達されるべき金属イオン(類)と一緒に、必要とする宿主に投与することを含む。この能力の中で、限定はされないが、貧血およびその他の鉄欠乏症、炎症、肥満と糖尿病、歯周病、口腔の前癌状態、口腔の癌、および他の口腔の悪性疾患、過敏な歯ぐきと歯、続発症、歯髄炎、刺激状態、口腔義歯の身体移植、外傷性傷害、損傷、歯軋りおよび口内、歯ぐきまたは舌の他の小さな傷によって引き起こされる痛みと炎症、歯の疫病および結石、歯の脱石灰、タンパク質分解、および虫歯(腐食)、ウィルス感染不眠症、抑制された免疫機能、骨粗鬆症、無月経症、月経困難症、癲癇、高血圧、コレステロール血症、冠状動脈および脳の血管痙攣、下痢、パーキンソン病、アルツハイマー病、癌、関節リウマチ、男性不妊、および黄斑変性を含む疾病および状態を治療するためにジアリールアルカン類が使用することが可能である。限定はされないが、この金属イオンは銅、クロム、鉄、亜鉛、ホウ素、リチウム、セレン、カルシウム、マンガン、マグネシウム、モリブデン、および他の金属イオンを含む群から選択される。
【0029】
さらに別の実施形態では、ジアルキルアルカン類およびジアルキルアルカノール類が食品産業で果実、キノコ、および他の食料品の褐変および色変化を防止するために使用することが可能である。
【0030】
本発明はまた、1つまたは複数のジアリールアルカン類から成る新規の物質の組成物を含み、前記ジアリールアルカン類は以下の一般構造で表わされる化合物の群から選択され、
【0031】
【化2】
【0032】
式中、
Ar1およびAr2は置換型の5または6員の芳香環または芳香族複素環から成る群から独立して選択され、各々の6員の芳香環または芳香族複素環は1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で独立して置換され、各々の5員の芳香環または芳香族複素環は1〜4個のR’基(R’1〜R’4)で置換されるが、例外としてAr1とAr2の両方が6員の芳香環、すなわちフェニル基であるとき、Ar1とAr2のうちの少なくとも一方は1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で置換され、前記R’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
ここで、
R’は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)は、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、
R6、およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、およびXから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、n=1〜10である。好ましい実施形態ではn=2〜4である。
【0033】
一実施形態では、前記ジアリールアルカンは以下の一般構造で表わされる化合物から成る群から選択され、
【0034】
【化3】
【0035】
式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R’1、R’2、R’3、R’4、およびR’5は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)は、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、R1〜R5のうちの少なくとも2つ、またはR’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
R6およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、およびXから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、n=1〜10である。好ましい実施形態ではn=2〜4である。
【0036】
一実施形態では、本発明のジアリールアルカン類は、限定はされないが、キク科、マメ科、クスノキ科、マメ科、ユリ科、ヤドリギ科、クワ科、およびニクズク科を含む植物の科から選択される1つまたは複数の植物から単離される。本発明のジアリールアルカン類はまた、限定はされないが、アカシア属、コウゾ属、キキョウラン属、ムギワラギク属、イリアンテラ属、クネマ属、クロモジ属、シタン属、ヤドリギ属、およびキサントセルシス属を含む高木植物の属から抽出、濃縮、および精製することもやはり可能である。これらのジアリールアルカン類は、限定はされないが、茎、茎皮(stem bark)、心材、幹、幹皮(trunk bark)、小枝、塊茎、根、根皮(root bark)、ヤング・シュート(young shoot)、種子、根茎、花および他の生殖器官、葉および他の気生部分を含む植物の多様な部分に見出すことが可能である。好ましい実施形態では、ジアリールアルカン類はコウゾ属、キキョウラン属、およびイリアンテラ属の植物または植物類から単離される。
【0037】
他の実施形態では、本発明のジアリールアルカン類は合成によって得られる。この発明に含まれるのはジアリールアルカン類およびジアリールアルカノール類を合成する方法であって、前記方法は以下の一般構造を有する化合物を還元することを含み、
【0038】
【化4】
【0039】
式中、
R1〜R5およびR’1〜R’5およびnは上記に定義される通りであり、R6とR7は一緒に1つまたは複数のカルボニル基を形成する。還元剤はアルコール類へのケトン類の還元のためのいずれの知られている還元剤から選択されることも可能であり、限定はされないが、ボロヒドリド類、触媒存在下でのH2、NaH、およびLiAlH4を含む。一実施形態では、還元剤はNaBH4である。
【0040】
さらに別の実施形態では、ジアリールアルカン類は植物源から単離される天然由来の化合物の合成化学修飾によって得られる。例えば、天然由来の化合物のブテインが植物源から単離され、脱水処理され、還元されて相当するジアリールアルカノールを生じる。
【0041】
さらに別の実施形態では、ジアリールアルカン類は2つの適切な置換型芳香族化合物の反応によって得られる。2つの置換型芳香族化合物からこれらの化合物を合成するための実現可能な化学反応は、限定はされないが、置換型ベンズアルデヒドと置換型アセトフェノンの間のアルドール縮合、アルデヒドとケトンの間のクライゼン−シュミット反応もしくは交差アルドール縮合、分子上のカルボニル基への付加反応を通じて1つの置換型芳香環を第2の置換型芳香環に連結する有機マグネシウムハロゲン化物を使用したグリニャール反応、分子内異性化によるクライゼン転位(ここでは適切な置換基を備えたエステル化フェノールがフェノールのオルトの位置で第2の芳香環に結合するように異性化され、続いて還元反応が行なわれるであろう)、および鈴木カップリング反応(ここでは2つの置換型芳香環がアリールボロン酸へと変換され、次いで、慎重に選択されるパラジウム触媒を使用してハロゲン化アルキルによって連結される)を含む。これらの反応は当業者によく知られており、そのような反応のための条件はこれらの化合物の合成に関して本願明細書に開示される情報を使用して決定することが可能である。
【0042】
本発明は、活性な植物抽出物およびこれらの抽出物の中で二核酵素を特異的に阻害する特定の化合物を識別するために阻害アッセイと化学的デレプリケーション法を組み合わせる方策を実施する。この手法は薬剤の構造を最適化し、効果を最大限にするための天然物の単離、有機合成、分子モデリング、および酵素阻害アッセイの組み合わせを含む。この方法は、「Method for Generating,Screening and Dereplicating Natural Product Libraries for the Discovery of Therapeutic Agents」という表題で2002年6月27日に提出され、本願明細書にその全文を参照で組み入れられる米国特許公開第10/185,758号明細書に述べられている。この方法の有効性は下記で実施例の節に述べられるようにチロシナーゼ阻害アッセイを使用して実証される。この発明の方法に従って評価されたジアリールアルカン類の純度は0.01%から100%の範囲にあって、化合物(類)を得るために使用される方法論によって決まる。
【0043】
好ましい実施形態では、必要性を有する宿主に投与されるジアリールアルカンの用量は有効で無毒の量であって、概して、最終製剤の合計重量に基づき0.001%から100%の範囲、および/または宿主の体重に基づき1キログラム当たり0.01mgから200mgの範囲から選択される。当業者は、日常的な臨床試験を使用して、治療する特定の病気のために最適の用量を判定することが可能である。本発明は、望ましい生理学的活性を有する物質の組成物を得るための、ジアリールアルカンの合成、および/または単離、精製および製剤について商業的に実現可能な選択肢を提供する。本発明の組成物は当業者に知られているいずれの方法によって投与されることも可能である。投与の様式は、限定はされないが、腸溶性(経口)投与、非経口性(静脈内、皮下、および筋肉内)投与、および局所塗布を含む。本発明による治療の方法は、合成された、および/または単一の植物または複数の植物から単離された純粋または混合物のジアリールアルカン類を、治療に有効な量で必要とする宿主に内服または局所で投与することを含む。好ましい実施形態では、この組成物は局所に投与される。
【0044】
前述の概説および下記の詳細な説明の両方が範例であって解説のためのものに過ぎず、特許請求される本発明を限定するものではないことは理解されるべきである。
【好ましい態様の詳細な説明】
【0045】
本発明は概して、二核酵素によって仲介される疾病および状態の予防および治療に関する。特に、本発明は二核活性部位を有する酵素の活性を阻害するための方法を含む。本発明に含まれるものは1つまたは複数のジアリールアルカン(類)で構成される新規の組成物である。本発明のジアリールアルカン類は1つまたは複数の植物源から単離することが可能であり、または有機合成によって得られることが可能である。本発明にさらに含まれるものはこれらの化合物を天然源から単離するための方法およびこれらの化合物を合成するための方法である。一実施形態では、これらのジアリールアルカン類は植物源から単離される天然由来の化合物の合成化学修飾によって得られる。
【0046】
本発明の態様に言及するために様々な用語が本願明細書で使用される。本発明の構成要素の説明の明瞭化に役立てるために、以下の定義が与えられる。別の方式で規定されない限り、本願明細書に使用されるすべての技術用語および科学用語は本発明が属する技術の当業者によって共通して理解される意味を有する。
【0047】
本願明細書に使用される用語「或る」の実在はその実在の1つまたは複数を称し、例えば、或るジアリールアルカンは1つまたは複数のジアリールアルカンを称する。同様に、用語「或る」、「1つまたは複数の」および「少なくとも1つの」は本願明細書では交換可能に使用される。
【0048】
本願明細書で使用される「ジアリールアルカン類」は以下の一般構造を有する芳香族化合物の特定の部類であって、本発明は1つまたは複数のジアリールアルカン類から成る新規の物質組成物もやはり含み、前記ジアリールアルカン類は以下の一般構造で表わされる化合物の群から選択され、
【0049】
【化5】
【0050】
式中、
Ar1およびAr2は、置換型5または6員の芳香環または芳香族複素環から成る群から独立して選択され、各々の6員の芳香環または芳香族複素環は、1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で独立して置換され、各々の5員の芳香環または芳香族複素環は1〜4個のR’基(R’1〜R’4)で置換されるが、例外としてAr1とAr2の両方が6員の芳香環、すなわちフェニル基であるとき、Ar1とAr2のうちの少なくとも一方は1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で置換され、前記R’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
ここで、
R’は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)は、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、およびIから成る群から選択されるハロゲンであり、
R6およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、およびXから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、n=1〜10である。好ましい実施形態ではn=2〜4である。
【0051】
一実施形態では、前記ジアリールアルカン類は以下の一般構造で表わされる化合物の群から選択され、
【0052】
【化6】
【0053】
式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R’1、R’2、R’3、R’4、およびR’5は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)は、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、R1〜R5のうちの少なくとも2つ、またはR’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
R6、およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、およびXから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、およびIから成る群から選択されるハロゲンであり、n=1〜10である。好ましい実施形態ではn=2〜4である。
【0054】
本願明細書で使用される「ジアリールアルカノール」は2つの芳香環の間のアルキル炭素に付いた少なくとも1つのヒドロキシル基(R6および/またはR7=−OH)を有する特定のタイプの「ジアリールアルカン類」である。
【0055】
本願明細書に使用される「二核酵素」は二核活性部位を有する酵素を称し、その範例は上記で検討されたように活性部位に2つの銅イオンを有するチロシナーゼである。限定はされないが、二核酵素はチロシナーゼ、アルギナーゼ、ウレアーゼ、チトクロムcオキシダーゼ、プロトンポンプヘム銅酸化酵素、二機能一酸化炭素デヒドロゲナーゼ/アセチルCo−Aシンターゼ、リボヌクレオチド還元酵素、メタロ−β−ラクタマーゼ、H(+)−ATPアーゼおよび代替オキシダーゼ、および細菌性ホスホトリエステラーゼを含む。
【0056】
本願明細書に使用される「治療の」は、防止、治療および/または予防を含む。使用時には、治療はヒトならびに他の動物に向けられる。
「医薬としてまたは治療薬として有効な用量または量」は望ましい生物学的結果を誘導するのに十分な用量を称する。その結果は疾病の徴候、症状、または原因の緩和、またはいずれかの他の生物学的システムの望ましい変化であることもあり得る。正確な用量は、限定はされないが、対象の年齢およびサイズ、疾病および達成される治療を含めた様々な要因に応じて変わるであろう。
【0057】
「プラセボ」は不活性な物質で疾病の徴候、症状、または原因を緩和することが起こり得て、望ましい生物学的を誘導するのに十分な医薬または治療薬として有効な投与もしくは投与量の置き換え物質を称する。
【0058】
「宿主」または「患者」または「対象」は治療が望まれる生きた哺乳動物、ヒト、または動物である。「宿主」または「患者」または「対象」は概して、本発明の方法に従って実施される治療の受容対象を称する。本願明細書に述べられる発明が獣医ならびにヒト用途に使用され得ること、「宿主」という用語が限定の方式で解釈されてはならないことは気付かれるはずである。獣医用途のケースでは、投与量の範囲は下記で述べられるように動物の体重を考慮して決定される可能性が高い。
【0059】
本願明細書で使用される「医薬として許容可能な担体」は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げず、投与される宿主に対して毒性が無いあらゆる担体を称する。限定はされないが、「医薬として許容可能な担体」の範例は生理食塩水溶液、すなわちリンゲル液、緩衝生理食塩水溶液、水、デキストロース溶液、血清アルブミン、および処方を錠剤およびカプセルにするための他の賦形剤および保存料といったいずれの標準的な医薬担体も含む。
【0060】
本発明は二核活性部位を有する、本願明細書で二核酵素と称される酵素の活性を阻害するための方法を含み、前記方法は有効量の1つまたは複数のジアリールアルカン(類)を、必要とする宿主に投与することを含み、前記ジアリールアルカン類は合成され、および/または1つまたは複数の植物から単離される。本発明の範囲に含まれる二核酵素の範例は、限定はされないが、チロシナーゼ、アルギナーゼ、ウレアーゼ、チトクロムcオキシダーゼ、プロトンポンプヘム銅酸化酵素、二機能一酸化炭素デヒドロゲナーゼ/アセチルCo−Aシンターゼ、リボヌクレオチド還元酵素、メタロ−β−ラクタマーゼ、H(+)−ATPアーゼおよび代替オキシダーゼ、および細菌性ホスホトリエステラーゼを含む。一実施形態では二核酵素はチロシナーゼである。
【0061】
本発明はまた、二核酵素の活性に関連する疾病および状態の予防および治療のための方法を含む。本発明による予防と治療の方法は治療に有効な量の1つまたは複数のジアリールアルカン(類)を、必要とする宿主に内服または局所で投与することを含む。阻害される二核酵素に応じて、ジアリールアルカンは抗微生物剤、抗真菌剤、抗マラリア剤、抗ウィルス剤、雄および雌の性的刺激を制御する手段としての一酸化窒素生成の調節剤、抗炎症薬剤、酸化防止剤、薬剤代謝の調節剤、歯周病、口腔の前癌状態、口腔の癌、および他の口腔の悪性疾患、過敏な歯ぐきと歯、続発症、歯髄炎、刺激状態、口腔義歯の身体移植、外傷性傷害、損傷、歯軋りおよび口内、歯ぐきまたは舌の他の小さな傷によって引き起こされる痛みと炎症、歯の疫病および結石、歯の脱石灰、タンパク質分解、および虫歯(腐食)の予防と治療のため、および癌および充実性腫瘍の成長の阻害剤として使用することが可能である。
【0062】
本発明はさらに、メラニンの過剰生成または不均一な分布に関連した疾病および状態の予防と治療のための方法を含み、前記方法は治療に有効な量の1つまたは複数のジアリールアルカン(類)を、必要とする宿主に内服または局所で投与することを含む。メラニンの過剰生成または不均一な分布に関連した疾病および状態は、限定はされないが、日焼け、(皮膚の老化、肝臓疾患、火傷および局所外傷によって引き起こされる)色素沈着過度の斑点、(真菌、微生物、およびウィルス感染によって生じる炎症状態に起因する)皮膚の色素沈着、白斑、上皮性悪性腫瘍、メラノーマ、ならびに他の哺乳動物の皮膚病を含む。
【0063】
この方法はまた、紫外(UV)放射、化学物質、熱、風および乾燥環境への曝露から結果として生じる皮膚の黒化および損傷を予防および治療するために使用されることも可能である。最後に、この方法は皺、たるんだ皮膚、目の周囲の皺とくまを予防および治療し、過敏な皮膚を落ち着かせ、皮膚炎および他のアレルギー関連の皮膚の状態を予防および治療するために使用することが可能である。上述の皮膚の疾病および状態の予防および治療のための使用に加えて、本願明細書に述べられる医薬組成物は改善された皮膚の色、向上した弾力性、減少させられて遅らされる老化、促進された若々しい外見ときめ、および増大したしなやかさ、硬さ、滑らかさおよび柔軟性を伴なった滑らかで若々しい皮膚の外観の恩典をもたらす有効な組成物を与える。
【0064】
金属イオンでキレートすることによって、ジアリールアルカンは宿主の血流中に必須の金属イオンを送達するため、および/または皮膚または血液/脳関門、ならびに他の膜を透過して金属イオンを輸送するために使用されることもやはり可能である。この実施形態では、本方法は治療に有効な量の1つまたは複数のジアリールアルカン(類)を、送達されるべき金属イオン(類)と一緒に、必要とする宿主に投与することを含む。この能力の中で、限定はされないが、貧血およびその他の鉄欠乏症、炎症、肥満と糖尿病、歯周病、口腔の前癌状態、口腔の癌、および他の口腔の悪性疾患、過敏な歯ぐきと歯、続発症、歯髄炎、刺激状態、口腔義歯の身体移植、外傷性傷害、損傷、歯軋りおよび口内、歯ぐきまたは舌の他の小さな傷によって引き起こされる痛みと炎症、歯の疫病および結石、歯の脱石灰、タンパク質分解、および虫歯(腐食)、ウィルス感染を含む疾病および状態を治療するためにジアリールアルカン類が使用することが可能である。限定はされないが、この金属イオンは銅、鉄、亜鉛、セレン、マグネシウム、および他の金属イオンを含む群から選択される。
【0065】
さらに別の実施形態では、ジアルキルアルカン類が食品産業で果実、キノコ、および他の食料品の褐変および色変化を防止するために使用することが可能である。
以下に従って使用することが可能であるジアリールアルカンは上述の一般構造で例示される化合物を含む。本発明のジアリールアルカン類は合成法によって得られることが可能であり、または限定はされないが、キク科(Compositae)、マメ科(Fabaceae)、クスノキ科(Lauraceae)、マメ科(Leguminosae)、ユリ科(Liliaceae)、ヤドリギ科(Loranthaceae)、クワ科(Moracea)、およびニクズク科(Myristicaceae)を含む群から選択される1つまたは複数の植物の科から単離することが可能である。本発明のジアリールアルカン類は、限定はされないが、アカシア(Acacia)、コウゾ(Broussonetia)、キキョウラン(Dianella)、ムギワラギク(Helichrysum)、イリアンテラ(Iryanthera)、クネマ(Knema)、クロモジ(Lindera)、シタン(Pterocarpus)、ヤドリギ(Viscum)、およびキサントセルシス(Xanlhocercis)を含む高木植物の属から抽出、濃縮、および精製することが可能である。これらのジアリールアルカン類は、限定はされないが、茎、茎の皮、心材、幹、幹の皮、小枝、塊茎、根、根の皮、葉柄、種子、地下茎、花および他の繁殖可能な組織、葉および他の空中の部分を含む植物の多様な部分に見出することが可能である。一実施形態では、ジアリールアルカン類はコウゾ属、キキョウラン属、およびイリアンテラ属の植物または植物類から単離される。
【0066】
他の実施形態では、本発明のジアリールアルカン類は合成によって得られる。この発明に含まれるのはジアリールアルカン類およびジアリールアルカノール類を合成する方法であって、前記方法は以下の一般構造を有する化合物を還元することを含み、
【0067】
【化7】
【0068】
式中、
R1〜R5およびR’1〜R’5およびnは上記に定義される通りであり、R6とR7は一緒に1つまたは複数のカルボニル基を形成する。還元剤はアルコール類へのケトン類の還元のためのいずれの知られている還元剤から選択されることも可能であり、限定はされないが、ボロヒドリド類、触媒存在下でのH2、NaH、およびLiAlH4を含む。一実施形態では、還元剤はNaBH4である。
【0069】
さらに別の実施形態では、ジアリールアルカン類は植物源から単離される天然由来の化合物の合成化学修飾によって得られる。例えば、天然由来の化合物のブテインが植物源から単離され、脱水処理され、還元されて相当するジアリールアルカノールを生じる。
【0070】
さらに別の実施形態では、ジアリールアルカン類は2つの適切な置換型芳香族化合物の反応によって得られる。2つの置換型芳香族化合物からこれらの化合物を合成するための実現可能な化学反応は、限定はされないが、置換型ベンズアルデヒドと置換型アセトフェノンの間のアルドール縮合、アルデヒドとケトンの間のクライゼン−シュミット反応もしくは交差アルドール縮合、分子上のカルボニル基への付加反応を通じて1つの置換型芳香環を第2の置換型芳香環に連結する有機マグネシウムハロゲン化物を使用したグリニャール反応、分子内異性化によるクライゼン転位(ここでは適切な置換基を備えたエステル化フェノールがフェノールのオルトの位置で第2の芳香環に結合するように異性化され、続いて還元反応が行なわれるであろう)、および鈴木カップリング反応(ここでは2つの置換型芳香環がアリールボロン酸へと変換され、次いで、慎重に選択されるパラジウム触媒を使用してハロゲン化アルキルによって連結される)を含む。これらの反応は当業者によく知られており、そのような反応のための条件はこれらの化合物の合成に関して本願明細書に開示される情報を使用して決定することが可能である。
【0071】
本出願全体にわたって様々な引用が与えられることに留意すべきである。これらの引用の各々は本願明細書に参照でその全文を特に組み入れられる。
本発明は、活性な植物抽出物およびこれらの抽出物の中で二核酵素チロシナーゼを特異的に阻害する特定の化合物を識別するためにチロシナーゼ阻害アッセイを化学的デレプリケーション法と組み合わせる方策を実施する。上記で言及したように、チロシナーゼを阻害する酵素はメラニン生成の減少につながり、したがって、皮膚を効果的に白くすることが可能である。実施例1で述べられるように、乾燥植物粉末を有機溶剤で抽出することによって植物抽出物のライブラリが作り出された。実施例2で述べられるように、チロシナーゼ阻害アッセイはJones et al.(2002)Pigment.Cell Res.15:335によって報告された方法に従って展開された。このアッセイを使用して、合計1144の植物抽出物が、キノコのチロシナーゼの活性を阻害するそれらの能力について選別された。この一次選別は強力なチロシナーゼ阻害活性を備えた20の植物抽出物(ヒット率1.75%)を識別した。表1は、4つの異なる属から単離された4つのこれら抽出物のチロシナーゼ阻害割合を描いている。
【0072】
活性な植物抽出物から活性な化合物を効率的に識別するために、実施例3で述べられるように高い処理能力の分画法が使用された。簡単に述べると、活性抽出物は高処理能力精製(HTP)システムを使用して分画された。各々の画分はその後、実施例2で述べられる一次アッセイのように、チロシナーゼ活性を阻害するその能力について試験された。デレプリケーションの後、PDAを備えたHPLCと、分かっているチロシナーゼ阻害剤(例えばポリフェノール類およびクロモン類)を含む画分の構造データベース検索と除外に連結されたMS検出器の組み合わせを使用し、具体例を示す目的でヒメコウゾSieb.Et Zucc(クワ科)およびキキョウラン(L.)DC(ユリ科)の抽出物を使用して合計7つの活性抽出物が、実施例4〜6に述べられるようにバイオアッセイの手引書による大規模の単離精製のために選び出された。
【0073】
実施例4は、実施例1〜3で述べられる一般的方法を使用したヒメコウゾSieb.Et Zucc(クワ科)(植物全体)からの新規のジアリールアルカン、すなわち1−(2−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−プロパン(UP288)(1)の抽出、分離および精製を述べている。図4はUP288を含むHTP画分のHPLC/UVクロマトグラムを例示している。活性化合物UP288の構造は実施例4に述べられるように分光法の組み合わせを使用して解明された。図5はUP288の化学構造および13C−NMRスペクトルを描いている。図6はコウジ酸に相対したUP288に関してチロシナーゼ阻害の用量反応曲線およびIC50値を例示している。この図は、UP288(1)がコウジ酸のように強力なチロシナーゼ阻害剤であってIC50=24μMを有することを例示している。
【0074】
意外にも、全く異なる科の植物であるキキョウラン(L.)DC(ユリ科)から、実施例5で述べられるように2つの類似したジアリールアルカンが単離および同定された。図7はキキョウラン(P0389)(植物全体)からのこれら2つの活性化合物(UP302a(2)およびUP302b(3))のバイオアッセイの手引書による単離を図式的に描いている。図7を参照すると、合計264の収集サンプルからわずか15のカラム画分が強力なチロシナーゼ阻害を示したことが理解され得る。組み合わされた活性画分のHPLC分析(図8)は活性化合物が既に濃密に濃縮された最良のプールの中の微量成分であることを示した。労力を費やす分離精製の努力が2つの新たな活性化合物をもたらし、これらは実施例5および図9に例示されるようにNMRおよび他の分光学的な方法によって1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302a、IC50=0.24μM)(2)および1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,5’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(IP302b、IC50=1.2μM)(3)であると十分に定性分析された。
【0075】
実施例6はキキョウラン(DE)(植物全体)から単離される最も強力なチロシナーゼ阻害剤であるUP302a(2)の大規模単離を述べている。実施例6を参照すると、4.3kgの乾燥バイオマスからシリカゲルCG−161およびC−18樹脂による多数回のカラム分画の後に合計30mgの純粋なUP302a(2)が得られた。単離された化合物の構造および生物学的機能が確認された。
【0076】
ジアリールアルカン/ジアリールアルカノールの低い天然の潤沢度のせいで、これら生物学的に活性な化合物を合成するための方法がこの部類の化合物の代替の商業的供給源として開発された。実施例7は置換型カルコンの還元を介したジアリールアルカン類の合成のための一般的な方法を述べている。具体例を示す目的で、水素化ホウ素ナトリウムを使用した1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール(5)への2,4−ジヒドロキシフェニル)−3’,4’−ジメトキシフェニルカルコン(4)の還元が述べられている。しかしながら、実施例7で述べられるようにいくつかの他のジアリールアルカンがこの一般的な方法を使用して合成されている。合成された化合物のすべてが高から中程度のチロシナーゼ阻害活性を示した。実施例7に述べられた一般的な方法を参照すると、いずれの他の知られている還元剤もこの還元を達成するために使用することが可能であって、限定はされないが、他のボロヒドリド類、触媒存在下でのH2、NaH、およびLiAlH4を含む。
【0077】
実施例7に述べられた一般的な反応を使用して、いくつかの他の置換型ジアリールプロパノンが実施例8、9および10に実証されたようにジアリールプロパンおよび/またはジアリールプロパノールへと変換された。実施例11は出発材料の天然源から単離されるフラボノイドのグリコシドを使用してジアリールプロパノールの合成を実証している。
【0078】
他の実施形態では、本発明は2つの適切な置換型芳香族化合物の反応によってこの部類の化合物を合成するための方法を含む。この実施形態は、具体例を示す目的で3−メトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸とレゾルシノールの反応を使用して実施例12に例示されている。2つの置換型芳香族化合物からこれらの化合物を合成するための実現可能な化学反応は、限定はされないが、置換型ベンズアルデヒドと置換型アセトフェノンの間のアルドール縮合、アルデヒドとケトンの間のクライゼン−シュミット反応もしくは交差アルドール縮合、分子上のカルボニル基への付加反応を通じて1つの置換型芳香環を第2の置換型芳香環に連結する有機マグネシウムハロゲン化物を使用したグリニャール反応、分子内異性化によるクライゼン転位(ここでは適切な置換基を備えたエステル化フェノールがフェノールのオルトの位置で第2の芳香環に結合するように異性化され、続いて還元反応が行なわれるであろう)、および鈴木カップリング反応(ここでは2つの置換型芳香環がアリールボロン酸へと変換され、次いで、慎重に選択されるパラジウム触媒を使用してハロゲン化アルキルによって連結される)を含む。これらの反応は当業者によく知られており、そのような反応のための条件はこれらの化合物の合成に関して本願明細書に開示される情報を使用して決定することが可能である。
【0079】
実施例13は、本発明の方法に従って合成されたいくつかのジアリールアルカンおよびジアリールアルカノールについてIC50値を述べている。これらの化合物は実施例2に述べられた一般的な方法を使用して評価された。各々のサンプルのIC50値は、特定の時間および濃度で反応が直線的であったことを確認するための反応速度論ソフトウェアを使用して計算された。実施例7〜12に述べられた方法を使用して合計24の化合物が合成され、チロシナーゼを阻害する能力について評価された。これらの結果は表2に述べられる。表2を参照すると、合成ジアリールアルカノールのIC50が天然由来のジアリールプロパンに匹敵することが理解され得る。したがってこれら2つの部類の化合物はほぼ同じ量にチロシナーゼを阻害することが可能である。最も活性なジアリールアルカン類および/またはジアリールアルカノール類は2つの芳香環の間に3つの炭素を有した。実施例17に述べられる計算を使用して、平行かつ重なり合った分子内立体構造を作り出すためにこの構造的特徴が重大であると実証された。しかしながら、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4’−メトキシフェニル)−1−エタノール(IC50=77μM)および1,4−ビス−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン(IC50=700μM)のように2つの芳香環の間に2つおよび4つの炭素を含むジアリールアルカノールもやはりチロシナーゼ活性を大幅に阻害することが可能であった。
【0080】
実施例2に述べられた方法を使用し、UP302a(2)によるチロシナーゼの阻害を、実施例14に述べられるように基質としてL−DOPAを使用して評価した。これらの結果は図10に述べられる。この研究はUP302a(2)が長期持続効果を有する強力な競合阻害剤であることを明らかにした。興味深いことに、チロシナーゼ活性はUP302aとのインキュベーションの後の数日間は再開されなかった。対照的に、コウジ酸とのインキュベーションの後のわずか1時間後にチロシナーゼ活性は完全に復元されたUP302aの芳香環への置換基のうちの2つはメトキシ基であったので、阻害剤が容易にヒドロキシル化および/または酸化されることはあり得ない。これはUP302aの阻害活性の有効性および持続性の両方を説明することができる。このようにして、これらの化合物が長期持続性の効果を有すると結論付けられることが可能である。
【0081】
特許請求される組成物の有効性は、実施例15に述べられるように、B−16細胞株のin vitroで形成されるメラニンの阻害を測定することによってもやはり実証された。これらの結果は図11に述べられる。UP302a(2)による内因性メラニンの減少量はコウジ酸のそれよりもほぼ6倍大きかった。付け加えると、UP302aによるMSH誘発型メラニン生成の阻害もやはりコウジ酸よりも有意に大きかった。予期されたように、UP288(1)はB−16細胞株のモデルでコウジ酸に匹敵した。
【0082】
実施例16は2つのジアリールプロパンUP288(1)とUP302aのコウジ酸に相対した細胞毒性を評価するためのアッセイを述べている。3つの被検化合物すべてのIC50よりも高い250μMの濃度で、ジアリールプロパンはコウジ酸のそれに類似した安全性のプロファイルを示した。
【0083】
実施例17は、活性ジアリールアルカン類およびジアリールアルカノール類の最も安定な3−D構造を判定するために実施された分子モデリング分析を述べている。分子力学の計算はChem3Dソフトウェアを使用して実施された。これらの計算は、最も強力なチロシナーゼ阻害剤である1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302a(2)、IC50=0.24μM)が極めて独特の三次元構造を有し、図12に例示されるように2つの芳香環が互いに重なり合っていることを明らかにした。立体構造に関して最小化される全体的エネルギーは−4.7034KJ/Molであり、2つの芳香環の間の距離は3.28Åである。第1の芳香環上のフェノール性ヒドロキシル基は第2の芳香環上の2つのメトキシ基の真上にあり、2つの酸素原子との間の距離は図14に例示されるようにそれぞれ2.99Åおよび3.16Åである。二核酵素チロシナーゼの活性部位は過酸化物の酸化状態[CuII−O2−CuII]にある酸素分子へと錯化された2つの銅イオンを有し、これは、チロシナーゼが(チロシンなどの)モノフェノールの芳香環のオルトの位置でのヒドロキシル基の導入を触媒するメカニズムにとって重要である。(Decker et al.(2000)Angew.Chem.Int.Ed.39:1591)。原子間距離は、Cu−Cuについては3.56Å、Cu−Oについては1.90Å、およびO−Oについては1.41Åであると報告された。(Kitajima et al.(1989)J.Am.Chem.Soc.111:8975)。1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302a、IC50=0.24μM)の平行構造は、図13および14に例示されるように[CuII−O2−CuII]錯体の両方の銅イオンと、上部および下部の両方から完全にキレートする。阻害剤による活性部位の両方の銅イオンへのこの二重のキレート形成は酵素へのL−ドーパなどの基質の接近を完全に遮断し、したがってこのタンパク質の機能を効果的に阻害するであろう。同じ手法を使用して、表2にリストアップされた単離および合成ジアリールアルカン類およびジアリールアルカノール類が分析された。この分析の結果は、捻れ型または非平行型構造を有する化合物がチロシナーゼの活性を阻害する能力を有さないかまたは弱い能力を有するかのどちらかであることを示した。
【0084】
これらの研究から、最も効果的なジアリールアルカン阻害剤が第1の芳香環上に2〜3個の置換基、第2の芳香環上に0〜複数個の置換基を有すると判定された。最も好ましい構造は、少なくとも一方の芳香環が位置2および4で置換される構造である。これらの環は、単離された2つの化合物1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,3’,4’,5’−テトラヒドロ−ベゾ(b)ジオキソシン−8−イル)−1−プロパノール、IC50=72μM、および3−(5’−クロロ−1’−メチル−1’−ヒドロイミダゾール−2’−イル)−1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1−プロパノール、IC50=225μMによって実証されるように6員の芳香環および/または芳香族複素環であることが好ましい。
【0085】
本発明の組成物は当業者に知られているいずれの方法によって投与されることも可能である。投与の様式は、限定はされないが、腸溶性(経口)投与、非経口性(静脈内、皮下、および筋肉内)投与、および局所塗布を含む。本発明による治療の方法は、治療に有効な量のジアリールアルカンまたは2つ以上のジアリールアルカン類の混合物を、必要とする患者に内服または局所で投与することを含む。
【0086】
本発明の組成物は医薬組成物として処方することが可能であって、これは医薬および/または化粧品として許容可能な賦形剤、アジュバント、および/または担体などの他の化合物を含む。例えば、本発明の組成物は治療される宿主が受容することが可能な賦形剤中に処方することが可能である。賦形剤はジアリールアルカンまたはジアリールアルカン類の混合物などの治療薬剤のための希釈剤またはベヒクルとして使用される不活性の物質である。そのような賦形剤の範例は、限定はされないが、水、バッファ、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、マンニトール、ハンクス液、保存料、および他の水性の生理学的平衡塩類溶液を含む。固定油、ゴマ油、オレイン酸エチル、またはトリグリセリドなどの非水性の賦形剤もやはり使用することが可能である。他の有用な処方はカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランといった増粘剤を含む懸濁液を含む。賦形剤はまた、等張性および化学的安定性を高める物質などの微量の添加剤を含むこともあり得る。バッファの範例はリン酸バッファ、重炭酸バッファ、トリスバッファ、ヒスチジン、クエン酸、およびグリシン、またはそれらの混合物を含み、その一方で保存料の範例は、限定はされないが、EDTA、EDTA二ナトリウム、BHA、BHT、ビタミンC、ビタミンE、亜硫酸水素ナトリウム、SnCl2、チメロサール、m−またはo−クレゾール、ホルマリンおよびベンジルアルコールを含む。標準的な処方は液体、または投与のために懸濁液もしくは溶液として適切な液体中に取られることが可能な固体のどちらかである。したがって液体以外の処方では、賦形剤はデキストロース、ヒト血清アルブミン、保存料を含んでも良く、これに滅菌水または生理食塩水が投与前に添加されても良い。
【0087】
本発明の一実施形態では、組成物はアジュバントまたは担体を含むこともやはり可能である。アジュバントは通常、特定の生理活性薬剤に対する宿主の生物学的応答を概して促進する物質である。限定はされないが、適切なアジュバントはフロイントアジュバント、他の細菌細胞壁成分、アルミニウム、マグネシウム、銅、亜鉛、鉄、カルシウム、および他の金属イオンに基づく塩、シリカ、ポリヌクレオチド、トキソイド、血清タンパク質、ウィルス被覆タンパク質、他の細菌由来の製剤、γ−インターフェロン、ブロック共重合体アジュバント(例えばHunter’s Titermaxアジュバント(Vaxcel.TM.,Inc.Norcross,Ga)、Ribiアジュバント(Ribi ImmunoChem Research,Inc.,Hamilton,Mont.から入手可能))、およびサポニン類とその誘導体(例えばQuil A(Superfos Biosector A/S,Denmarkから入手可能))を含む。担体は通常、治療される宿主内で治療組成物の半減期を増大させる化合物である。限定はされないが、適切な担体はポリマーの制御放出製剤、生体分解性の移植物、リポソーム、細菌、ウィルス、オイル類、エステル類、およびグリコール類を含む。
【0088】
一実施形態では、組成物は制御放出製剤として調製され、これは本発明の組成物を徐々に宿主の中に放出する。本願明細書で使用されるように、制御放出製剤は制御放出賦形剤の中に本発明の組成物を含む。適切な制御放出賦形剤は当業者に知られているであろう。好ましい制御放出製剤は生体分解性(すなわち生体浸食性)である。
【0089】
本発明の治療薬剤は、限定はされないが、軟膏、ゲル、ローション、またはクリーム系を含む治療組成物を局所投与するための当業者に知られているいずれかの適切な手段によって、または練り歯磨き、うがい薬として、またはデンタルフロス材料にコーティングされて、またはエマルジョンとして、パッチ、包帯またはマスク、非粘着性ガーゼ、帯具、綿棒、ふき取り布として局所的に投与されることが好ましい。実施例18は処方の合計重量中で純粋および/または混合物のジアリールアルカン(類)0.01%および0.1%の活性内容物を備えた2つのクリーム製剤の調製を述べている。そのような局所塗布剤は、局所性投与のための知られているいずれかの標準的手段を使用して疾患に冒されたいずれの領域にも局所的に投与することが可能である。治療組成物は投与の方法に応じて様々な単位用量形式で投与することが可能である。特定の様式の供給については、本発明の治療組成物は本発明の賦形剤の中に処方されても良い。本発明の治療薬剤はいずれの宿主に投与されることも可能であって、宿主は哺乳動物であることが好ましく、ヒトであることがさらに好ましい。投与の特定の様式は治療される状態に応じて決まるであろう。
【0090】
一実施形態では、適切な軟膏は望ましい濃度、すなわち局所処方の総重量に基づいて0.001%から100%の範囲から概して選択される有効で無毒性の量の単一のジアリールアルカンまたは2つ以上のジアリールアルカン類の混合物、65〜100%(好ましくは75〜96%)の白色軟パラフィン、0〜15%の流動パラフィン、および0〜7%(好ましくは3〜7%)のラノリンまたはその誘導体もしくは合成同等物で構成される。他の実施形態では、この軟膏はポリエチレン−流動パラフィンのマトリックスを含むことも可能である。
【0091】
一実施形態では、適切なクリームは上記に与えられるような望ましい濃度の単一のジアリールアルカンまたは2つ以上のジアリールアルカン類の混合物と一緒になった乳化系で構成される。この乳化系は2〜10%のポリオキシエチレンアルコール類(例えば商標名Cetomacrogol 1000で入手可能な混合物)、10〜25%のステアリルアルコール、20〜60%の流動パラフィン、および10〜65%の水、これらと共に1%のN,N”−メチレンビス[N’−[3−(ヒドロキシメチル)−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル]尿素](Imidurea USNFの名称で入手可能)、0.1〜1%のアルキル4−ヒドロキシ安息香酸(例えば商標名NipastatでNipa Laboratoriesから入手可能な混合物)、0.01〜0.1%のブチル4−ヒドロキシ安息香酸ナトリウム(商標名Nipabutyl sodiumでNipa Laboratoriesから入手可能)、および0.1〜2%のフェノキシエタノールで構成される。
【0092】
一実施形態では、適切なゲルは半固体系で構成され、ここでは液相が高度の架橋を伴なった三次元ポリマーマトリックスの中に拘束される。この液相は水と共に、望ましい量の単一のジアリールアルカンまたは2つ以上のジアリールアルカン類の混合物、0〜20%の水混和性の添加剤(例えばグリセロール、ポリエチレングリコール、またはプロピレングリコール)、0.1〜10%、好ましくは0.5〜2%の増粘剤(これは、限定はされないが、例えば0.1〜2%のメチル4−ヒドロキシ安息香酸(メチルパラベン)またはフェノキシエタノール差量を含む群から選択される1つまたは複数の保存料と一緒になった、限定はされないが、トラガカント、ペクチン、カラギーン、寒天およびアルギン酸を含む群から選択される天然物、または限定はされないが、メチルセルロースおよびカルボキシポリメチレン(カルボポール)を含む群から選択される合成もしくは半合成の化合物であっても良い)で構成されても良い。他の適切な担体は望ましい量の単一のジアリールアルカンまたは2つ以上のジアリールアルカン類の混合物、それと共に70〜90%のポリエチレングリコール(例えばU.S.National Formulary(USNF)に従って調製された40%のポリエチレングリコール3350と60%のポリエチレングリコール400を含むポリエチレングリコール軟膏)、5〜20%の水、0.02〜0.25%の酸化防止剤(例えばブチル化されたヒドロキシトルエン)、および0.005〜0.1%のキレート剤(例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA))で構成される。
【0093】
上記で使用された軟パラフィンという用語はクリームもしくは軟膏担体の白色軟パラフィンおよび黄色軟パラフィンを包含する。ラノリンという用語は天然の羊毛脂および精製された羊毛脂を包含する。ラノリンの誘導体は、これらの物理的または化学的特性を変えるために化学修飾されているラノリン類を特に含み、合成のラノリン同等物はラノリンの代替品として医薬および化粧品の技術で知られていて使用され、例えばラノリン代用品と称されることもあり得る合成または半合成の化合物または混合物を特に含む。
【0094】
使用され得るラノリンの或る適切な合成同等物はSoftisan649として知られている商標名Softisanで入手可能な材料である。Dynamit Novel Aktiengesellscaftから入手可能なSoftisan649は天然植物性脂肪酸、イソステアリン酸、およびアジピン酸のグリセリンエステルであり、その特性はH.Hermsdorf in Fette,Seifen,Anstrichmittel,Issue No.84,No.3(1982),pp3〜6で検討されている。
【0095】
適切な軟膏またはクリーム担体の成分として以上に述べられたその他の物質およびそれらの特性は標準的基準の研究、例えば薬局方で検討されている。Cetmacrogol 1000は式CH3(CH2)m(OCH2CH2)nOHを有し、式中、mは15または17であることが可能であり、nは20〜24であることが可能である。ブチル化されたヒドロキシトルエンは2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールである。Nipastatはメチル、エチル、プロピル、およびブチル4−ヒドロキシ安息香酸の混合物である。
【0096】
本発明の組成物は従来の医薬技術によって作り出することが可能である。したがって、前述の組成物は例えば、高温、好ましくは60〜70℃で軟パラフィン、あるとすれば流動パラフィン、およびラノリンまたはその誘導体もしくは合成同等物を一緒に混合することによって都合良く調製することが可能である。その後、この混合物が室温に冷却され、コルチコステロイドおよびいずれかの他の成分と共にムピロシンの水和結晶カルシウム塩を添加された後に適切な分散を確実にするために撹拌することが可能である。
【0097】
投与の方式に関係なく、特定の用量は宿主の概算の体重に従って計算される。上述の処方の各々を含む治療のために適切な用量を決定するために必要とされるこの計算のさらなる微調整は、特に本願明細書に開示される用量情報および分析の観点で、当業者によって規定通りに為され、余計な実験を必要とせずに彼らによって日常的に実行される業務の範囲内である。これらの投与量は、適切な用量反応データと結び付けて利用される用量決定のための確立された分析法の使用を通じて確認することが可能である。
【0098】
以下の実施例は単に具体例を示す目的で与えられるものであって本発明の範囲を限定するように意図されていない。
【実施例1】
【0099】
乾燥植物からの有機抽出物の調製
乾燥処理された植物材料が2mm以下の粒子サイズに磨り潰され、一部分(60g)が三角フラスコに移され、600mlのメタノール:ジクロロメタン(1:1)で抽出処理された。この混合物が1時間振とう処理され、濾過され、バイオマスがメタノール:ジクロロメタン(1:1)(600ml)で再び抽出処理された。各々の植物材料からの有機抽出物を供給するためにこれらの有機抽出物が組み合わされ、真空下で蒸発処理された。その後、各々の抽出物(約75mg)が1.5mlのDMSO中に溶解されて50mg/mlの濃度にされ、これが次いで−70℃の冷凍庫に貯蔵された。抽出液のアリコートが実施例2に述べられるチロシナーゼアッセイのために使用された。
【実施例2】
【0100】
チロシナーゼ阻害アッセイ
チロシナーゼ阻害アッセイはJones et al.(2002)Pigment.Cell Res.15:335によって報告された方法を使用して実行された。この方法を使用して、チロシナーゼの基質であるL−ドーパをドーパクロムに変換した後に450nmでの吸収をモニターする。チロシナーゼが2000U/mlで50mMのリン酸カリウムバッファ、pH6.8(アッセイバッファ)中に調製され、使用の前に1mlのアリコートで−20℃で貯蔵された。分析に使用するために、ストック酵素溶液が解凍され、アッセイバッファで200U/mlに希釈された。基質であるL−DOPAの2mM作業溶液が各々の分析のためにアッセイバッファ中に調製された。サンプルが10%DMSO(0.5ml)中に溶解され、アッセイバッファで5mlに希釈された。反応混合物が0.050mlの2mM L−DOPA、0.050mlの200U/mlキノコチロシナーゼ、および0.050mlの阻害剤で構成された。アッセイバッファで反応体積が200μlに調節された。アッセイは96穴のFalcon3097平底マイクロタイタープレート(Beckton Dickinson,NJ)中で実施された。ドーパクロムの出現はWALLAC1420 Multilable Counter(Turku,Finland)で測定された。1分当たりの450nmでの吸収の変化量(ΔA450)によって測定される直線的酵素速度から平均速度が判定された。試験サンプルによるチロシナーゼの阻害割合は次の式(1)を使用してサンプルvs.対照区の吸光度の比較によって判定された。
【0101】
(陰性対照区の吸収−サンプルの吸収)/陰性対照区の吸収×100 (1)
結果は表1に述べられる。
【0102】
【表1】
【実施例3】
【0103】
活性植物抽出物のHTP分画
活性有機抽出物(400mg)が予め充填された順相のフラッシュカラム(内径2cm×8.2cm、10gシリカゲル)に装填された。このカラムが(A)50:50のEtOAc:ヘキサンおよび(B)メタノールの勾配移動相を備えたHitachi高処理能力精製(HTP)システムを使用して5mL/minの流量で30分で100%Aから100%Bの条件で溶離された。分離は広帯域波長のUV検出器を使用してモニターされ、画分はGilsonフラクションコレクターを使用して1.9mL/wellで96深穴プレートに集められた。サンプルプレートは低真空および遠心分離で乾燥処理された。各々のセルのサンプルを溶解するためにDMSO(1.5mL)が使用され、チロシナーゼ阻害アッセイのために正副2つで一部分(100μL)が取られた。
【実施例4】
【0104】
ヒメコウゾ(Broussonetica kazinoki:BK)(植物全体)からの1−(2−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−プロパン(1)抽出、分離および精製
【0105】
【化8】
【0106】
ヒメコウゾ(植物全体100g)が磨り潰され、800mlのMeOH:DCM(1:2)で3回抽出処理された。乾燥抽出物(6g)がシリカゲルカラムを使用してヘキサン/酢酸エチル(50/50)からMeOHへの勾配溶剤溶離で分画された。画分は88本の試験管2セットに集められた。各々の画分をチェックするためにLC/MS/PDAが利用され、その後、これらはその組成物の類似性に基づいて組み合わされた。組み合わされた画分は溶剤を除去するために蒸発乾燥処理され、それらのチロシナーゼ阻害活性が実施例2に述べられたようにして測定された。画分(P0346−HTP−F2−P0346−HTP−F4)が最も活性であることが見出され、これらの画分が組み合わされてBK−F2−−4と標識された。溶剤蒸散の後、BK−F2−−4はさらに水/MeOH勾配を使用して予め充填された逆相カラム(C−18カラム)で分離された。18の化合物ピークが分離の後に観察された。14回の逆相カラム処理が実施され、各々の回の類似した画分が組み合わされた。組み合わされて濃縮された画分中のUP288と称される或る化合物のピークは強いチロシナーゼ阻害活性を示した(図4)。準備段階のHPLCによる分離精製の後に、6mgの1−(2−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−プロパン(UP288)(1)が得られた。この化合物の構造はMSおよびNMR分光法(1H、13C、HMQCおよびHMBC)を使用して解明された。図5はUP288の化学構造と13C−NMRスペクトルを描いている。UP288はIC50値24μMを備えてコウジ酸のそれに匹敵する活性を有するチロシナーゼ阻害剤である。図6はUP288およびコウジ酸についてチロシナーゼ阻害の用量反応曲線およびIC50値を例示している。
【0107】
1−(2−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−プロパン(UP288)。収率0.006%(純度>96%、HPLC)、UVλMax:281.0nm、MS(Super Sound Ionization,Positive ion detection):m/z289(M+1,100%)
【0108】
【化9】
【実施例5】
【0109】
Dianella ensifolia(P0389)(植物全体)からの1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302a)(2)および1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,5’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302b)(3)の抽出、分離および精製
【0110】
【化10】
【0111】
キキョウラン(P0389、植物全体300g)が磨り潰され、800mlのMeOH:DCM(1:2)で3回抽出処理された。乾燥抽出物(5g)がシリカゲルカラムを使用してヘキサン/酢酸エチル(50/50)からMeOHへの勾配溶剤溶離で分画された。画分は264本の試験管2セットに集められた。各々の画分をチェックするためにLC/MS/PDAが利用され、その後、これらはその組成物の類似性に基づいて22の画分に組み合わされた。(図7)。組み合わされた画分は溶剤を除去するために蒸発乾燥処理され、それらのチロシナーゼ阻害活性が実施例2に述べられたようにして測定された。画分P0389−HTP−F12、P0389−HTP−F13およびP0389−HTP−F14が最も活性であることが見出され、これらの画分が組み合わされてDE−F12−14と標識された。溶剤蒸散の後、DE−F12−14はさらに水/MeOH勾配を使用して予め充填された逆相カラム(RPカラム)で分離された。2つの主要な化合物ピークと11の微量の化合物ピークが分離の後に観察された。これらのピークの各々に対応する化合物がその後の7回のRP−カラムでの追加的な分離で単離された。集められた化合物のすべてが乾燥処理されてチロシナーゼ阻害活性について試験された。11の微量ピークのうちのUP302aおよびUP302bとそれぞれ称される2つが強いチロシナーゼ阻害活性を示した。(図8)。分離精製の後、2つの活性化合物1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302a、10mg)(2)および1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,5’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302b、6mg)(3)が得られた。これら2つの化合物の構造はMSおよびNMR分光法(1H、13C、gHSQCおよびHMBC)を使用して解明された。図9はUP302aのgHSQCスペクトルを描いている。チロシナーゼ阻害アッセイは、UP302aが0.24μMのIC50を備えて最も強力な阻害剤であり、その一方でUP302bが12μMのIC50を有することを示した。
【0112】
1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302a)(2)。収率0.02%(純度>98%、HPLC)、UVλMax:279.8nm、MS(Super Sound Ionization,Positive ion detection):m/z303(M+1,100%)
【0113】
【化11】
【0114】
1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,5’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302b)(3)。収率0.01%(純度>95%、HPLC)、UVλMax:279.8nm、MS(Super Sound Ionization,Positive ion detection):m/z303(M+1,100%)
【0115】
【化12】
【実施例6】
【0116】
キキョウラン(Dianella ensifolia:DE)(植物全体)からの1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302a)(2)の大規模単離
キキョウラン(植物全体4.3kg)が集められ、磨り潰され、メタノールを溶剤として浸透抽出装置を使用して3回抽出処理された。抽出物が組み合わされ、メタノールを除去するために蒸発処理された。その後、粗抽出物が水に懸濁され、DCMで分離された。これらの層が分離され、DCM層が蒸発処理されて60gの物質を与えた。両方の層のLC−MS/PDA分析は、UP302aの大部分がDCM層に存在し、水の層には微量しか存在しないことを明らかにした。DCM抽出物はヘキサン−ETOACの勾配で溶離させて3つの別々のシリカゲルカラムで分画された。合計15の部分画分が得られ、HPLC−MS/PDAによって分析された。標的の化合物(UP302a)が画分6〜9で見出され、これらが組み合わされて合計3gの濃縮されたUP302aを生じた。この濃縮UP302aがさらに、水−MeOH勾配で溶離させてCG−161樹脂で充填されたオープンカラムで分離された。合計23の画分が集められ、UP302aは画分15〜21に溶離した。その後、画分15〜21は組み合わされ、溶剤が蒸発させられて700mgの固体を生じ、これらがさらにC−18カラムで準備段階のHPLCによって精製されて30mgのUP302aを生じた。構造、チロシナーゼ阻害活性、および精製産物の純度がNMR、酵素阻害アッセイ、およびLC−MS/PDAによって確認された。
【実施例7】
【0117】
置換型カルコン類の水素化ホウ素ナトリウム還元によるジアリールアルカン類の合成
具体例を示す目的で、置換型カルコン類の水素化ホウ素ナトリウム還元によるジアリールアルカン類の合成のための一般的方法が2,4−ジヒドロキシ−3,4−ジメトキシカルコン(4)を使用して下記に述べられる。
【0118】
【化13】
【0119】
2,4−ジヒドロキシ−3,4−ジメトキシカルコン(4)(40mg)がl−プロパノール(5ml)中に溶解され、続いて水素化ホウ素ナトリウム(15mg)が添加され、この混合物が室温で2時間反応させられた。反応が完了すると、20%の酢酸(0.2ml)が添加され、この混合物が80℃に5分間加熱され、冷却された。その後、この混合物が予め充填されたC18カラム上でMeOH/H2O勾配で遊離させられて分離処理されることで1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール(5)を与えた。化合物(5)の構造はMS、UV分光法、1Dおよび2Dの1H−NMRによって確認された。
【0120】
1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール(5)。収率60%(純度>98%、HPLC)、UVλMax:278.5nm、MS(Super Sound Ionization,Positive ion detection):m/z305(M+1,100%)
【0121】
【化14】
【0122】
上述の一般的方法を使用して次の化合物、すなわち2,4−ジヒドロキシ−2’−ヒドロキシカルコン、2’−ヒドロキシ−4’−メトキシ−2,4−ジメトキシカルコン、4’−ヒドロキシ−4−ヒドロキシカルコン、2’,4’−ジヒドロキシ−2−ヒドロキシカルコン、2’,4’−ジヒドロキシ−3,4−ジメトキシカルコン、2’,4’,6’−トリメトキシ−3,4−ジメトキシカルコン、および2’−ヒドロキシ−4’−メトキシ−3,4,5−トリメトキシカルコンがそれらの対応するアルコール類へと還元されることで1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−(4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4,6−トリメトキシフェニル)−3−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、および1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(3’,4’,5’−トリメトキシフェニル)−1−プロパノールを与えた。
【実施例8】
【0123】
置換型ジアリールプロパノンの水素化ホウ素ナトリウム還元による置換型ジフェニルプロパノールの合成
置換型ジアリールプロパノンの水素化ホウ素ナトリウム還元による置換型ジフェニルプロパノールの合成のための方法が、具体例を示す目的で1−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノン(6)の還元を使用して下記に述べられる。
【0124】
【化15】
【0125】
1−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノン(6)(5mg)が1−プロパノール(1ml)中に溶解され、続いて水素化ホウ素ナトリウム(2mg)が添加され、この混合物が室温で5時間反応させられた。反応が完了すると、過剰の水素化ホウ素ナトリウムを中和するために20%酢酸(0.2ml)が加えられた。その後、この反応混合物が予め充填されたC18カラム上でMeOH/H2O勾配で遊離させられて分離処理されることで1−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール(7)を与えた。
【0126】
上述の一般的合成手順に続いて、以下のジアリールアルカン化合物、すなわち1−(2−ヒドロキシ−4,6−ジメトキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノン、3−(5’−ベンジルオキシ−4’−メトキシ−2’−メチルフェニル)−1−(2−ヒドロキシ−4,5−ジメトキシフェニル)−1−プロパノン、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,3’,4’,5’−テトラヒドロベゾ(b)ジオキソシン−8’−イル)−1−プロパノン、および3−(5’−クロロ−1’−メチル−1’−ヒドロイミダゾール−2’−イル)−1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1−プロペノンが還元されて1−(2−ヒドロキシ−4,6−ジメトキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、3−(5’−ベンジルオキシ−4’−メトキシ−2’−メチルフェニル)−1−(2−ヒドロキシ−4,5−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,3’,4’,5’−テトラヒドロベゾ(b)ジオキソシン−8−イル)−1−プロペノール、および3−(5’−クロロ−1’−メチル−1’−ヒドロイミダゾール−2’−イル)−1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1−プロペノールをそれぞれ与えた。
【実施例9】
【0127】
1,3−ビス(2,4−ジメトキシフェニル)−プロパン−1,3−ジオール(9)の合成
【0128】
【化16】
【0129】
1,3−ビス(2,4−ジメトキシフェニル)−プロパン−1,3−ジオン(8)(5mg)が1−プロパノール(1ml)中に溶解され、続いて水素化ホウ素ナトリウム(3mg)が添加され、この混合物が室温で3時間反応させられた。反応が完了すると、過剰の水素化ホウ素ナトリウムを中和するために20%酢酸(0.2ml)が加えられた。その後、この混合物が予め充填されたC18カラム上でMeOH/H2O勾配で遊離させられて分離処理されることで1,3−ビス(2,4−ジメトキシフェニル)−プロパン−1,3−ジオール(9)を与えた。
【実施例10】
【0130】
ネオヘスペリジンからの1−(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)−3−(3’−ヒドロキシ−4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール(11)の合成
【0131】
【化17】
【0132】
ネオヘスペリジンはジヒドロカルコンのグリコシドである。総重量100mgのネオヘスペリジンが1NのHCl(10ml)中に懸濁させられ、80℃に2時間加熱された。この加水分解生成物(10)が冷却され、酢酸エチル(3×10ml)で抽出処理された。酢酸エチル層が組み合わされ、酢酸エチルを除去するために蒸発処理され、1−プロパノール(5ml)中に溶解された。このプロパノール溶液に水素化ホウ素ナトリウム(25mg)が添加され、室温で2時間撹拌された。反応が完了すると、この混合物が予め充填されたC18カラム上でMeOH/H2O勾配で遊離させられて分離処理されることで1−(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)−3−(3’−ヒドロキシ−4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール(11)を与えた。
【実施例11】
【0133】
1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1−プロパノール(14)を合成するためのブトリンの抽出、精製および構造修正
【0134】
【化18】
【0135】
ブトリンはブッテア・フロンドサ(Butea frondosa)の乾燥処理した花からメタノールで抽出処理され、多数回の逆相カラムクロマトグラフィ分離法によって精製された高含有量のフラバノン−グリコシドである。HClで加水分解することによって糖を除去した後、ブチン(12)が生成され、RP−HTPによって精製された(植物全体からの収率1.5%)。その後、ブテイン(13)を得るためにブチンが80℃にて10%の水酸化ナトリウムで処理され、これが水素化ホウ素ナトリウムで還元されて1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1−プロパノール(14)(IC50=250nM)を得た。
【実施例12】
【0136】
1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール(19)の合成
【0137】
【化19】
【0138】
レゾルシノール(15)、3−メトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸(16)、およびH2SO4(5%)がTHF中で4時間還流されることで7,4’−ジヒドロキシ−3’−メトキシフラバノン(17)(収率90%)を与えた。その後、生成物7,4’−ジヒドロキシ−3’−メトキシフラバノン(17)が80℃にて1時間、10%の水酸化ナトリウムで処理され、続いて、プロパノール中で水素化ホウ素ナトリウムによって還元されることで1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール(19)を与えた(LC−MS/PDA検出で確認)。未精製産物は極めて強いチロシナーゼ阻害活性を示す。この混合物がHTPによってさらに精製された。
【実施例13】
【0139】
合成ジアリールアルカンによるチロシナーゼ阻害のIC50測定
合成ジアリールアルカンによるチロシナーゼ阻害は実施例2に述べられた方法を使用して測定された。各々のサンプルのIC50値は特定の時間および濃度で反応が直線的であったことを確認するための反応速度論ソフトウェアを使用して計算された。実施例7〜12に述べられた方法を使用して合計24の化合物が合成され、チロシナーゼを阻害する能力について評価された。これらの結果は表2に述べられる。
【0140】
【表2】
【実施例14】
【0141】
酵素阻害反応速度論
実施例2に述べられた方法を使用し、基質としてL−DOPAを0.75、1.25、および2.5mMの濃度で使用して、阻害剤(UP302a)の様々な濃度(0、261、522、1044nM)でチロシナーゼの阻害を評価した。図10に示されるように、UP302aが強力で長期持続性の競合阻害剤であることが見出された。チロシナーゼ活性はUP302aとのインキュベーションの後の数日間は再開されなかった。対照的に、コウジ酸とのインキュベーションの後のわずか1時間後にチロシナーゼ活性は完全に復元された。
【実施例15】
【0142】
B−16細胞株からのメラニン生成の阻害
メラニン生成の阻害は2つの異なるアッセイを使用して評価した。第1のアッセイでは、β−MSHによる誘発を行わずにメラニン生成の阻害を評価し、それに対して第2のアッセイでは細胞培養培地でβ−MSH誘発を伴なってメラニン生成の阻害を測定した。簡単に述べると、B16F1細胞(ATCC#CRL−622)を密集成長させ、その後、1ウェル当たり40,000細胞で植菌した。細胞は5%CO2を含む高湿環境で37℃にて一晩付着可能にされた。2日目に、阻害剤を0〜1000μMの範囲の濃度で3サンプル一組で細胞に添加し、4日間インキュベートした。メラニン形成を誘発するために必要とされるβ−MSHの量は、0〜1000nMの範囲の濃度で10倍ずつ上げながらホルモンを添加することによって判定した。適切なβ−MSH濃度が決定されると、細胞を上記のように植菌して一晩付着可能にし、その後、0〜1000μMの範囲の濃度でチロシナーゼ阻害剤と共にインキュベートした。発色を毎朝目視でモニターした。発色後、200μlの細胞上清が各々のウェルから取り出し、450nmで吸光度を測定した。結果の読み取り値を、β−MSH誘発を伴なった細胞アッセイと伴なわない細胞アッセイでのメラニン形成に関してIC50を判定するために使用した。細胞毒性の初期の比較に関して、乳酸脱水素酵素アッセイ(LDH)を実施するために250μM処理ウェルを使用した。LDHは損傷を受けた、または死んだ細胞から漏れ出る代謝酵素である。この酵素はNAD+の存在下で発色団を変換して分光学的にモニターすることが可能な色の変化を生じさせる。
【0143】
このアッセイの結果は、コウジ酸よりも良い阻害剤が無ければ、試験した天然の阻害物質(UP288、UP302a、およびUP302b)はすべて少なくとも優れていることを明らかにした。2セットの条件下ではIC50値にある程度の差異があった。コウジ酸による阻害は内因性での実験に関する170μMのIC50から誘発実験での67μMのIC50へと向上した。コウジ酸に相対して試験された阻害剤のうち、化合物UP302bは2セットの条件下でIC50に増大を示した唯一のものであって、5.2μMのIC50から34μMのIC50へと増大した。チロシナーゼ阻害に関して測定されたIC50は試験された化合物すべてに関して比較的同じであったが、例外として2つの化合物UP302およびUP302bは内因性アッセイでの28μMと5.2μM、誘発アッセイでの40μMと34μMに比べて0.2μMと0.3μMの低いIC50をそれぞれ有した。これらの違いは、他の阻害剤に比べてUP302a(2)およびUP302b(3)によって低下した細胞浸透性に起因する可能性が高い。しかしながら、これらの酵素阻害の強さによってこれは克服される。
【0144】
表3はコウジ酸に相対した阻害剤UP288とUP302aに関するこれら2つのアッセイの結果を与える。
【実施例16】
【0145】
細胞毒性アッセイ
乳酸脱水素酵素アッセイ(LDH)を実施するために、化合物で処理されたウェルが使用された。LDHは損傷を受けた、または死んだ細胞から漏れ出る代謝酵素である。この酵素はNAD+の存在下で発色団を変換して分光学的にモニターすることが可能な色の変化を生じさせる。細胞毒性は250μMの濃度で調べられた。この濃度で、これらの化合物はいずれもコウジ酸を有意に超える細胞毒性ではなかった。しかしながら、1つの濃度(250μM)のみで細胞毒性が試験されたことが留意されるされるべきである。表3に示されるように、UP288(1)およびUP302a(1)は中程度の細胞毒性を示し、これはコウジ酸と匹敵した。
【0146】
【表3】
【実施例17】
【0147】
分子力学(MM2)計算
分子力学の計算はエネルギーの最小化および最も安定な3−D構造の判定を目的としてChem3Dソフトウェアを使用して実施された。以下のパラメータ、すなわちステップ間隔=2.0fs、フレーム間隔=10fs、10,000ステップで終了、加熱/冷却速度=1.000Kcal/atom/PS、目標温度=3000K、特性:π結合次数および立体エネルギーの概要が使用された。すべての天然と合成の化合物、および他のジアリールアルカンとジアリールアルカノールの構造が分析された。キキョウラン(L.)DC.の植物全体から単離される最も強力なチロシナーゼ阻害剤である1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−プロパン(UP302a(2)、IC50=0.24μM)が極めて独特の三次元構造を有し、2つの芳香環が互いに重なり合っていることが見出された。立体構造に関する最小の全体的エネルギーは−4.7034KJ/Molである。2つの芳香環の間の距離は3.28Åであった。第1の芳香環上のフェノール性ヒドロキシル基は第2の芳香環上の2つのメトキシル基の真上にあり、2つの酸素原子との間の距離は図12〜14に例示されるようにそれぞれ2.99Åおよび3.16Åであった。この分子内平行構造は、二核酵素の両方の銅イオンが過酸化物の形[CuII−O2−CuII]にあるときにこの化合物がこれらを上部と下部から完全にキレートすることを可能にする。
【実施例18】
【0148】
クリームへのジアリールアルカン組成物の製剤化
UP302aは主要な活性成分として置換型ジアリールプロパンで構成される。これらの化合物は、限定はされないが、エタノール、プロピレングリコール、およびエチレングリコールを含む高い極性の溶剤中に可溶性である。これらは医薬および/または化粧品として許容可能な賦形剤、アジュバント、および/または担体と共に処方することが可能である。そのような賦形剤の範例は、限定はされないが、水、バッファ、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、マンニトール、ハンクス液、保存料、および他の水性の生理学的平衡塩類溶液を含む。限定はされないが、固定油、ゴマ油、オレイン酸エチル、またはトリグリセリドを含む非水性の賦形剤もやはり使用することが可能である。限定はされないが、他の有用な処方は、限定はされないが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランを含めた増粘剤を含有する懸濁液を含む。賦形剤もやはり、色と化学的安定性を促進する酸化防止剤といった微量の添加物または保存料を含むことがあり得る。UP302はまた、皮膚浸透性を高めるためにリポソーム処方で調製すること、または活性成分の組成物を宿主の中に徐々に放出する制御放出製剤として調製することが可能である。
【0149】
UP302aは軟膏、ゲル、ローション、またはクリーム担体として、またはエマルジョン、パッチ、包帯またはマスク、非粘着性ガーゼ、帯具、綿棒、ふき取り布として局所的に投与されることが好ましい。そのような局所使用は、局所投与用に知られているいずれかの標準的な手段を使用していずれの病気の領域にも局所的に投与することが可能である。UP302はヒトおよび動物のいずれにも投与することが可能である。
【0150】
UP302aの治療薬組成物は、投与の方法および標的の徴候に応じて様々な単位用量形式で投与することができる。有効で無毒性の量は概して、局所処方の総重量に基づき0.01%から5%の範囲に推奨される。表4および5に例示されるようにUP302aの2つの異なる濃度(重量で0.01%と0.5%)がクリームに製剤化した。これらのクリームを調製するために、ジアリールアルカンが室温で水に溶解され、溶液に完全に分散させられるまで(約5分間)ブレンダーでホモジナイズされて組成物Aを生じさせた。撹拌せず、またはかき混ぜることなく室温でUltrez−21カルボマーがホモジナイズされた溶液に、表面に振りかけてこれらが完全に湿潤化して(白い領域が見えなくなる)溶液中に落ちるまで放置することによって添加された。その後、穏やかに撹拌しながら溶液が40℃に加熱され、グリセリンが添加され、この組成物が追加の5分間混ぜ合わされて組成物Bを与えた。40℃で、組成物Aが組成物Bに添加され、均一になるまで(約5分間)この組成物が十分に混ぜ合わされる。結果として得られるエマルジョンが30℃に冷却され、撹拌棒および/またはスパチュラで撹拌しながら中和剤で滴定してpHが約5.5(5.3から5.7)に調節される。中和で誘発されるカルボマーの構造変化に起因してエマルジョンは高度に粘性になった。撹拌するとこのエマルジョンはエマルジョンクリームに適した粘度を達成するであろう。この組成物が均一になるまで混ぜ合わされ、清潔な貯蔵容器に注がれ、2℃から8℃で貯蔵される。
【0151】
【表4】
【0152】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】メラニン形成の過程を、この過程を調節するための様々な見込まれるメカニズムと共に例示する図である。
【図2】チロシナーゼの活性部位の構造を例示する図である。この図で理解され得るように、2つの銅イオンが接近した間隔にあり、各々が3つのヒスチジンへと側鎖のN−ε窒素原子を通じて配位させられる
【図3A】知られているチロシナーゼ阻害剤の構造、名称、作用のメカニズム、および他の効果を描く図である。
【図3B】知られているチロシナーゼ阻害剤の構造、名称、作用のメカニズム、および他の効果を描く図である。
【図4】強調されるUP288(1−(2−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−プロパン)(1)を含むHTP部分のHPLC/UVクロマトグラムを例示する図である。
【図5】UP288(1)の化学構造および13C−NMRスペクトルを描く図である。
【図6】UP288およびコウジ酸についてチロシナーゼ阻害の用量反応曲線およびIC50値を例示する図である。
【図7】キキョウラン(Dianella ensifolia)(P0389)(植物全体)から得られる2つの活性化合物(UP302aおよびUP302b)のバイオアッセイ手引書による単離を描く図である。
【図8】複数回のカラム分画の後の濃縮されたUP302画分のHPLC/UVクロマトグラムを描く図である。
【図9】UP302a(2)のgHSQCスペクトルを描く図であって、プロトンと炭素の間の結合を例示している。
【図10】阻害剤UP302aおよび基質L−DOPAの様々な濃度でチロシナーゼの活性の阻害を例示するグラフである。この反応速度論の調査はUP302aがチロシナーゼ酵素の競合阻害剤であることを明らかにした。
【図11】コウジ酸およびUP302a(2)による、マウスB16F1細胞の内因性メラニン生成の阻害を例示する図である。各々のサンプルは10通りの異なる濃度で3サンプル一組で試験された。
【図12】MM2エネルギー最小化処理の後のUP302aの三次元構造を描く図である。
【図13】CuII−O2−CuII酸化状態にある2つの銅イオンに配位させられたときのUP302aの三次元構造を描く図である。
【図14】実施例17で計算されるように、過酸化物の形(CuII−O2−CuII)にある銅イオンでキレート化されたときのUP302aの隣り合う原子間の距離を描く図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二核酵素の活性を阻害するための方法であって、1つまたは複数のジアリールアルカン類を含む組成物を有効な量投与することを含む方法。
【請求項2】
前記ジアリールアルカンが以下の構造を有する化合物の群から選択され、
【化1】
式中、
Ar1およびAr2は、置換された5または6員の芳香環または芳香族複素環から成る群から独立して選択され、各々の6員の芳香環または芳香族複素環は、1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で独立して置換され、各々の5員の芳香環または芳香族複素環は1〜4個のR’基(R’1〜R’4)で置換されるが、例外として、Ar1とAr2の両方が6員の芳香環、すなわちフェニル基であるときは、Ar1とAr2のうちの少なくとも一方が1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で置換され、前記R’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
ここで、
R’は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)はアルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、
R6、およびR7は−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、およびXから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、およびIから成る群から選択されるハロゲンであり、
n=1〜10である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
n=2〜4である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ジアリールアルカン類が以下の一般構造で表わされる化合物の群から選択され、
【化2】
式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R’1、R’2、R’3、R’4、およびR’5は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)はアルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、R1〜R5のうちの少なくとも2つ、またはR’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
R6およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、およびXから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、
n=1〜10である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
n=2〜4である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ジアリールアルカンが、1−(2−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−プロパン、1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,5’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(2’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4、6−トリヒドロキシフェニル)−3−(4’−アミノフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−フェニル−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(3’,4’,5’−トリメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4’−メトキシフェニル)−1−エタノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,3’,4’,5’−テトラヒドロベンゾ(b)ジオキソシン−8’−イル)−1−プロパノール、3−(5’−クロロ−1’−メチル−1’−ヒドロイミダゾール−2’−イル)−1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4,6−ジメトキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−エタノール、1,4−ビス−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン、1−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2’,4’−ジクロロフェニル)−1−エタノール、1−(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)−3−(3’−ヒドロキシ−4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1,3−ビス−(2,4−ジメトキシフェニル)−プロパン−1,3−ジオール、1−(2,4、6−トリヒドロキシフェニル)−3−(3’−ヒドロキシ−4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、および1−(2,4、6−トリメトキシフェニル)−3−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1−プロパノールから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ジアリールアルカンが有機合成で得られるか、または1つまたは複数の植物から単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ジアリールアルカンが茎、茎皮、幹、幹皮、小枝、塊茎、根、根皮、ヤング・シュート、種子、根茎、花および他の生殖器官、葉および他の気生部分から成る群から選択される植物の部分から単離される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ジアリールアルカンがキク科、マメ科、クスノキ科、マメ科、ユリ科、ヤドリギ科、クワ科、およびニクズク科から成る群から選択される植物の科から単離される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ジアリールアルカンがアカシア属、コウゾ属、キキョウラン属、ムギワラギク属、イリアンテラ属、クネマ属、クロモジ属、シタン属、ヤドリギ属、およびキサントセルシス属から成る群から選択される植物の属から単離される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
二核酵素がチロシナーゼ、アルギナーゼ、ウレアーゼ、チトクロムcオキシダーゼ、プロトンポンプヘム銅酸化酵素、二機能一酸化炭素デヒドロゲナーゼ/アセチルCo−Aシンターゼ、リボヌクレオチド還元酵素、メタロ−β−ラクタマーゼ、H(+)−ATPアーゼおよび代替オキシダーゼ、および細菌性ホスホトリエステラーゼから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記二核酵素がチロシナーゼである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
二核酵素に関連する疾病および状態を予防および治療するための方法であって、1つまたは複数のジアリールアルカン(類)を含む組成物を有効な量、必要とする宿主に投与することを含む方法。
【請求項14】
前記ジアリールアルカンが以下の構造を有する化合物の群から選択され、
【化3】
式中、
Ar1およびAr2は、置換された5または6員の芳香環または芳香族複素環から成る群から独立して選択され、各々の6員の芳香環または芳香族複素環は、1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で独立して置換され、各々の5員の芳香環または芳香族複素環は1〜4個のR’基(R’1〜R’4)で置換されるが、例外として、Ar1とAr2の両方が6員の芳香環、すなわちフェニル基であるときは、Ar1とAr2のうちの少なくとも一方が1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で置換され、前記R’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
ここで、
R’は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、−X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)は、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、およびIから成る群から選択されるハロゲンであり、
R6およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、およびXから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、
n=1〜10である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
n=2〜4である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ジアリールアルカン類が以下の一般構造で表わされる化合物の群から選択され、
【化4】
式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R’1、R’2、R’3、R’4、およびR’5は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)は、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、R1〜R5のうちの少なくとも2つ、またはR’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
R6およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、および−Xから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、およびIから成る群から選択されるハロゲンであり、
n=1〜10である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
n=2〜4である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記ジアリールアルカンが1−(2−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−プロパン、1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,5’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(2’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4、6−トリヒドロキシフェニル)−3−(4’−アミノフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−フェニル−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(3’,4’,5’−トリメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4’−メトキシフェニル)−1−エタノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,3’,4’,5’−テトラヒドロベンゾ(b)ジオキソシン−8’−イル)−1−プロパノール、3−(5’−クロロ−1’−メチル−1’−ヒドロイミダゾール−2’−イル)−1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4,6−ジメトキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−エタノール、1,4−ビス−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン、1−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2’,4’−ジクロロフェニル)−1−エタノール、1−(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)−3−(3’−ヒドロキシ−4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1,3−ビス−(2,4−ジメトキシフェニル)−プロパン−1,3−ジオール、1−(2,4、6−トリヒドロキシフェニル)−3−(3’−ヒドロキシ−4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、および1−(2,4、6−トリメトキシフェニル)−3−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1−プロパノールから成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記ジアリールアルカンが有機合成で得られるか、または1つまたは複数の植物から単離される、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記ジアリールアルカンが茎、茎皮、幹、幹皮、小枝、塊茎、根、根皮、ヤング・シュート、種子、地下茎、花および他の生殖器官、葉および他の気生部分から成る群から選択される植物の部分から単離される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ジアリールアルカンがキク科、マメ科、クスノキ科、マメ科、ユリ科、ヤドリギ科、クワ科、およびニクズク科から成る群から選択される植物の科から単離される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ジアリールアルカンがアカシア属、コウゾ属、キキョウラン属、ムギワラギク属、イリアンテラ属、クネマ属、クロモジ属、シタン属、ヤドリギ属、およびキサントセルシス属から成る群から選択される植物の属から単離される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
二核酵素がチロシナーゼ、アルギナーゼ、ウレアーゼ、チトクロムcオキシダーゼ、プロトンポンプヘム銅酸化酵素、二機能一酸化炭素デヒドロゲナーゼ/アセチルCo−Aシンターゼ、リボヌクレオチド還元酵素、メタロ−β−ラクタマーゼ、H(+)−ATPアーゼおよび代替オキシダーゼ、および細菌性ホスホトリエステラーゼから成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
組成物が0.01〜200mg/宿主体重kgから選択される用量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
組成物が、治療薬製剤の総重量に基づき0.001%〜100%から選択される用量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
組成物が、医薬、外皮用薬剤、または化粧品として許容可能な担体中の約0.001重量パーセント(wt%)〜99.9wt%のジアリールアルカンまたはジアリールアルカン類の混合物で構成される医薬、外皮用薬剤、または化粧品の製剤の形態で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項27】
投与の経路が局所、エアロゾル、坐薬、皮内、筋肉内、および静脈内投与から成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項28】
組成物が非粘着性ガーゼ、帯具、綿棒、ふき取り布、パッチ、マスク、保護剤、クレンザー、デンタルフロス材、防腐剤、溶液剤、クリーム、ローション、軟膏、ゲルまたはエマルジョン、液剤、練り歯磨き、うがい液剤、化粧用ペースト、石鹸、または粉末剤を使用して投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
組成物がさらに、医薬、外皮用薬剤、および化粧品として局所用途に適した従来の賦形剤、および場合によってはアジュバント、および/または担体、および/または通常もしくは制御放出のベヒクルで構成される、請求項13に記載の方法。
【請求項30】
二核酵素によって仲介される疾病または状態が、微生物感染症、真菌感染症、マラリア感染症、ウィルス感染症、一酸化窒素生成の低下、雄および雌の異常な性的刺激、炎症状態、酸化的ストレス、異常な薬物代謝、癌、および充実性腫瘍から成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項31】
二核酵素によって仲介される疾病または状態が、口腔義歯の身体移植、外傷性傷害、損傷、歯軋りおよび口内、歯ぐきまたは舌の他の小さな傷、歯の疫病および結石、歯の脱石灰、タンパク質分解、および虫歯(腐食)によって引き起こされる、歯周病、口腔の前癌状態、口腔の癌、および他の口腔の悪性疾患、過敏な歯ぐきと歯、続発症、歯髄炎、刺激状態、痛みと炎症から成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項32】
メラニンの過剰生成または不均一な分布に関連した疾病および状態の予防と治療のための方法であって、治療に有効な量の1つまたは複数のジアリールアルカン類を、それを必要とする宿主に内服または局所で投与することを含む方法。
【請求項33】
メラニンの過剰生成または不均一な分布に関連した前記疾病および状態が紫外光への曝露に起因する皮膚の黒化と損傷;日焼け;皮膚の老化、肝臓疾患、火傷および局所外傷によって引き起こされる過剰色素沈着の斑点;真菌、微生物、およびウィルス感染によって生じる炎症状態に起因する皮膚の色素沈着;白斑(vitilago)、カルシノーマ、メラノーマから成る群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
金属イオンを送達するための方法であって、治療に有効な量の1つまたは複数のジアリールアルカン類を、供給されるべき1つ又は複数の金属イオンと一緒に、それを必要とする宿主に投与することを含む方法。
【請求項35】
前記金属イオンが銅、鉄、亜鉛、ホウ素、リチウム、セレン、カルシウム、クロム、モリブデン、マグネシウム、およびマンガンから成る群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記金属イオンが血流中、膜を透過してまたは皮膚を介して送達される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記膜が血液/脳関門である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記金属が、貧血およびその他の鉄欠乏症、炎症;肥満と糖尿病、ウィルス感染症、不眠症、抑制された免疫機能、骨粗鬆症、無月経症、月経困難症、癲癇、高血圧、コレステロール血症、冠状動脈および脳の血管痙攣、下痢、パーキンソン病、アルツハイマー病、癌、関節リウマチ;口腔義歯の身体移植、外傷性傷害、損傷、歯軋りおよび口内、歯ぐきまたは舌の他の小さな傷、歯の疫病および結石、歯の脱石灰、タンパク質分解、および虫歯(腐食)によって引き起こされる、歯周病、口腔の前癌状態、口腔の癌、および他の口腔の悪性疾患、過敏な歯ぐきと歯、続発症、歯髄炎、刺激状態、痛みと炎症;男性不妊、および黄斑変性からなる群から選択される疾病または状態を治療するために投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
以下の一般式を有する化合物の群から選択されるジアリールアルカンであって、
【化5】
式中、
Ar1およびAr2は置換された5または6員の芳香環または芳香族複素環から成る群から独立して選択され、各々の6員の芳香環または芳香族複素環は、1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で独立して置換され、各々の5員の芳香環または芳香族複素環は1〜4個のR’基(R’1〜R’4)で置換されるが、例外として、Ar1とAr2の両方が6員の芳香環、すなわちフェニル基であるときは、Ar1とAr2のうちの少なくとも一方が1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で置換され、前記R’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
ここで、
R’は−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)は、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、およびIから成る群から選択されるハロゲンであり、
R6およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、および−Xから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、およびIから成る群から選択されるハロゲンであり、
n=1〜10である、ジアリールアルカン。
【請求項40】
n=2〜4である、請求項39に記載のジアリールアルカン。
【請求項41】
以下の一般構造を有する化合物の群から選択されるジアリールアルカンであって、
【化6】
式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R’1、R’2、R’3、R’4、およびR’5は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)は、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され;Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、R1〜R5のうちの少なくとも2つ、またはR’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
R6、およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、および−Xから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、およびIから成る群から選択されるハロゲンであり、
n=1〜10であるジアリールアルカン。
【請求項42】
n=2〜4である、請求項41に記載のジアリールアルカン。
【請求項43】
R6および/またはR7のうちの少なくとも一方がOH基である、請求項41に記載のジアリールアルカン。
【請求項44】
1−(2−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−プロパン、1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,5’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(2’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4、6−トリヒドロキシフェニル)−3−(4’−アミノフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−フェニル−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(3’,4’,5’−トリメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4’−メトキシフェニル)−1−エタノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,3’,4’,5’−テトラヒドロベンゾ(b)ジオキソシン−8’−イル)−1−プロパノール、3−(5’−クロロ−1’−メチル−1’−ヒドロイミダゾール−2’−イル)−1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4,6−ジメトキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−エタノール、1,4−ビス−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン、1−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2’,4’−ジクロロフェニル)−1−エタノール、1−(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)−3−(3’−ヒドロキシ−4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1,3−ビス−(2,4−ジメトキシフェニル)−プロパン−1,3−ジオール、1−(2,4、6−トリヒドロキシフェニル)−3−(3’−ヒドロキシ−4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、および1−(2,4、6−トリメトキシフェニル)−3−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1−プロパノールから成る群から選択されるジアリールアルカン。
【請求項45】
ジアリールアルカンを合成するための方法であって、以下の一般構造:
【化7】
(式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R’1、R’2、R’3、R’4、およびR’5は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)は、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、R1〜R5のうちの少なくとも2つ、またはR’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
R6およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、−Xから成る群から独立して選択され、R6およびR7の1つ以上は一緒に=Oを形成し、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、およびIから成る群から選択されるハロゲンであり、
n=1〜10である)を有する化合物を還元することを含む方法。
【請求項46】
前記ジアリールアルカンが有機合成によって得られるか、または1つまたは複数の植物から単離される、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記ジアリールアルカンが、ボロヒドリド類、触媒存在下でのH2、NaH、およびLiAlH4から成る群から選択される還元剤を用いて置換ジアリールアルカノンから還元される、請求項41に記載の方法。
【請求項1】
二核酵素の活性を阻害するための方法であって、1つまたは複数のジアリールアルカン類を含む組成物を有効な量投与することを含む方法。
【請求項2】
前記ジアリールアルカンが以下の構造を有する化合物の群から選択され、
【化1】
式中、
Ar1およびAr2は、置換された5または6員の芳香環または芳香族複素環から成る群から独立して選択され、各々の6員の芳香環または芳香族複素環は、1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で独立して置換され、各々の5員の芳香環または芳香族複素環は1〜4個のR’基(R’1〜R’4)で置換されるが、例外として、Ar1とAr2の両方が6員の芳香環、すなわちフェニル基であるときは、Ar1とAr2のうちの少なくとも一方が1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で置換され、前記R’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
ここで、
R’は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)はアルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、
R6、およびR7は−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、およびXから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、およびIから成る群から選択されるハロゲンであり、
n=1〜10である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
n=2〜4である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ジアリールアルカン類が以下の一般構造で表わされる化合物の群から選択され、
【化2】
式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R’1、R’2、R’3、R’4、およびR’5は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)はアルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、R1〜R5のうちの少なくとも2つ、またはR’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
R6およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、およびXから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、
n=1〜10である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
n=2〜4である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ジアリールアルカンが、1−(2−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−プロパン、1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,5’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(2’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4、6−トリヒドロキシフェニル)−3−(4’−アミノフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−フェニル−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(3’,4’,5’−トリメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4’−メトキシフェニル)−1−エタノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,3’,4’,5’−テトラヒドロベンゾ(b)ジオキソシン−8’−イル)−1−プロパノール、3−(5’−クロロ−1’−メチル−1’−ヒドロイミダゾール−2’−イル)−1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4,6−ジメトキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−エタノール、1,4−ビス−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン、1−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2’,4’−ジクロロフェニル)−1−エタノール、1−(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)−3−(3’−ヒドロキシ−4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1,3−ビス−(2,4−ジメトキシフェニル)−プロパン−1,3−ジオール、1−(2,4、6−トリヒドロキシフェニル)−3−(3’−ヒドロキシ−4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、および1−(2,4、6−トリメトキシフェニル)−3−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1−プロパノールから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ジアリールアルカンが有機合成で得られるか、または1つまたは複数の植物から単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ジアリールアルカンが茎、茎皮、幹、幹皮、小枝、塊茎、根、根皮、ヤング・シュート、種子、根茎、花および他の生殖器官、葉および他の気生部分から成る群から選択される植物の部分から単離される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ジアリールアルカンがキク科、マメ科、クスノキ科、マメ科、ユリ科、ヤドリギ科、クワ科、およびニクズク科から成る群から選択される植物の科から単離される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ジアリールアルカンがアカシア属、コウゾ属、キキョウラン属、ムギワラギク属、イリアンテラ属、クネマ属、クロモジ属、シタン属、ヤドリギ属、およびキサントセルシス属から成る群から選択される植物の属から単離される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
二核酵素がチロシナーゼ、アルギナーゼ、ウレアーゼ、チトクロムcオキシダーゼ、プロトンポンプヘム銅酸化酵素、二機能一酸化炭素デヒドロゲナーゼ/アセチルCo−Aシンターゼ、リボヌクレオチド還元酵素、メタロ−β−ラクタマーゼ、H(+)−ATPアーゼおよび代替オキシダーゼ、および細菌性ホスホトリエステラーゼから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記二核酵素がチロシナーゼである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
二核酵素に関連する疾病および状態を予防および治療するための方法であって、1つまたは複数のジアリールアルカン(類)を含む組成物を有効な量、必要とする宿主に投与することを含む方法。
【請求項14】
前記ジアリールアルカンが以下の構造を有する化合物の群から選択され、
【化3】
式中、
Ar1およびAr2は、置換された5または6員の芳香環または芳香族複素環から成る群から独立して選択され、各々の6員の芳香環または芳香族複素環は、1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で独立して置換され、各々の5員の芳香環または芳香族複素環は1〜4個のR’基(R’1〜R’4)で置換されるが、例外として、Ar1とAr2の両方が6員の芳香環、すなわちフェニル基であるときは、Ar1とAr2のうちの少なくとも一方が1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で置換され、前記R’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
ここで、
R’は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、−X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)は、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、およびIから成る群から選択されるハロゲンであり、
R6およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、およびXから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、
n=1〜10である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
n=2〜4である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ジアリールアルカン類が以下の一般構造で表わされる化合物の群から選択され、
【化4】
式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R’1、R’2、R’3、R’4、およびR’5は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)は、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、R1〜R5のうちの少なくとも2つ、またはR’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
R6およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、および−Xから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、およびIから成る群から選択されるハロゲンであり、
n=1〜10である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
n=2〜4である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記ジアリールアルカンが1−(2−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−プロパン、1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,5’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(2’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4、6−トリヒドロキシフェニル)−3−(4’−アミノフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−フェニル−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(3’,4’,5’−トリメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4’−メトキシフェニル)−1−エタノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,3’,4’,5’−テトラヒドロベンゾ(b)ジオキソシン−8’−イル)−1−プロパノール、3−(5’−クロロ−1’−メチル−1’−ヒドロイミダゾール−2’−イル)−1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4,6−ジメトキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−エタノール、1,4−ビス−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン、1−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2’,4’−ジクロロフェニル)−1−エタノール、1−(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)−3−(3’−ヒドロキシ−4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1,3−ビス−(2,4−ジメトキシフェニル)−プロパン−1,3−ジオール、1−(2,4、6−トリヒドロキシフェニル)−3−(3’−ヒドロキシ−4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、および1−(2,4、6−トリメトキシフェニル)−3−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1−プロパノールから成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記ジアリールアルカンが有機合成で得られるか、または1つまたは複数の植物から単離される、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記ジアリールアルカンが茎、茎皮、幹、幹皮、小枝、塊茎、根、根皮、ヤング・シュート、種子、地下茎、花および他の生殖器官、葉および他の気生部分から成る群から選択される植物の部分から単離される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ジアリールアルカンがキク科、マメ科、クスノキ科、マメ科、ユリ科、ヤドリギ科、クワ科、およびニクズク科から成る群から選択される植物の科から単離される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ジアリールアルカンがアカシア属、コウゾ属、キキョウラン属、ムギワラギク属、イリアンテラ属、クネマ属、クロモジ属、シタン属、ヤドリギ属、およびキサントセルシス属から成る群から選択される植物の属から単離される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
二核酵素がチロシナーゼ、アルギナーゼ、ウレアーゼ、チトクロムcオキシダーゼ、プロトンポンプヘム銅酸化酵素、二機能一酸化炭素デヒドロゲナーゼ/アセチルCo−Aシンターゼ、リボヌクレオチド還元酵素、メタロ−β−ラクタマーゼ、H(+)−ATPアーゼおよび代替オキシダーゼ、および細菌性ホスホトリエステラーゼから成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
組成物が0.01〜200mg/宿主体重kgから選択される用量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
組成物が、治療薬製剤の総重量に基づき0.001%〜100%から選択される用量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
組成物が、医薬、外皮用薬剤、または化粧品として許容可能な担体中の約0.001重量パーセント(wt%)〜99.9wt%のジアリールアルカンまたはジアリールアルカン類の混合物で構成される医薬、外皮用薬剤、または化粧品の製剤の形態で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項27】
投与の経路が局所、エアロゾル、坐薬、皮内、筋肉内、および静脈内投与から成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項28】
組成物が非粘着性ガーゼ、帯具、綿棒、ふき取り布、パッチ、マスク、保護剤、クレンザー、デンタルフロス材、防腐剤、溶液剤、クリーム、ローション、軟膏、ゲルまたはエマルジョン、液剤、練り歯磨き、うがい液剤、化粧用ペースト、石鹸、または粉末剤を使用して投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
組成物がさらに、医薬、外皮用薬剤、および化粧品として局所用途に適した従来の賦形剤、および場合によってはアジュバント、および/または担体、および/または通常もしくは制御放出のベヒクルで構成される、請求項13に記載の方法。
【請求項30】
二核酵素によって仲介される疾病または状態が、微生物感染症、真菌感染症、マラリア感染症、ウィルス感染症、一酸化窒素生成の低下、雄および雌の異常な性的刺激、炎症状態、酸化的ストレス、異常な薬物代謝、癌、および充実性腫瘍から成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項31】
二核酵素によって仲介される疾病または状態が、口腔義歯の身体移植、外傷性傷害、損傷、歯軋りおよび口内、歯ぐきまたは舌の他の小さな傷、歯の疫病および結石、歯の脱石灰、タンパク質分解、および虫歯(腐食)によって引き起こされる、歯周病、口腔の前癌状態、口腔の癌、および他の口腔の悪性疾患、過敏な歯ぐきと歯、続発症、歯髄炎、刺激状態、痛みと炎症から成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項32】
メラニンの過剰生成または不均一な分布に関連した疾病および状態の予防と治療のための方法であって、治療に有効な量の1つまたは複数のジアリールアルカン類を、それを必要とする宿主に内服または局所で投与することを含む方法。
【請求項33】
メラニンの過剰生成または不均一な分布に関連した前記疾病および状態が紫外光への曝露に起因する皮膚の黒化と損傷;日焼け;皮膚の老化、肝臓疾患、火傷および局所外傷によって引き起こされる過剰色素沈着の斑点;真菌、微生物、およびウィルス感染によって生じる炎症状態に起因する皮膚の色素沈着;白斑(vitilago)、カルシノーマ、メラノーマから成る群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
金属イオンを送達するための方法であって、治療に有効な量の1つまたは複数のジアリールアルカン類を、供給されるべき1つ又は複数の金属イオンと一緒に、それを必要とする宿主に投与することを含む方法。
【請求項35】
前記金属イオンが銅、鉄、亜鉛、ホウ素、リチウム、セレン、カルシウム、クロム、モリブデン、マグネシウム、およびマンガンから成る群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記金属イオンが血流中、膜を透過してまたは皮膚を介して送達される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記膜が血液/脳関門である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記金属が、貧血およびその他の鉄欠乏症、炎症;肥満と糖尿病、ウィルス感染症、不眠症、抑制された免疫機能、骨粗鬆症、無月経症、月経困難症、癲癇、高血圧、コレステロール血症、冠状動脈および脳の血管痙攣、下痢、パーキンソン病、アルツハイマー病、癌、関節リウマチ;口腔義歯の身体移植、外傷性傷害、損傷、歯軋りおよび口内、歯ぐきまたは舌の他の小さな傷、歯の疫病および結石、歯の脱石灰、タンパク質分解、および虫歯(腐食)によって引き起こされる、歯周病、口腔の前癌状態、口腔の癌、および他の口腔の悪性疾患、過敏な歯ぐきと歯、続発症、歯髄炎、刺激状態、痛みと炎症;男性不妊、および黄斑変性からなる群から選択される疾病または状態を治療するために投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
以下の一般式を有する化合物の群から選択されるジアリールアルカンであって、
【化5】
式中、
Ar1およびAr2は置換された5または6員の芳香環または芳香族複素環から成る群から独立して選択され、各々の6員の芳香環または芳香族複素環は、1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で独立して置換され、各々の5員の芳香環または芳香族複素環は1〜4個のR’基(R’1〜R’4)で置換されるが、例外として、Ar1とAr2の両方が6員の芳香環、すなわちフェニル基であるときは、Ar1とAr2のうちの少なくとも一方が1〜5個のR’基(R’1〜R’5)で置換され、前記R’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
ここで、
R’は−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)は、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、およびIから成る群から選択されるハロゲンであり、
R6およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、および−Xから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、およびIから成る群から選択されるハロゲンであり、
n=1〜10である、ジアリールアルカン。
【請求項40】
n=2〜4である、請求項39に記載のジアリールアルカン。
【請求項41】
以下の一般構造を有する化合物の群から選択されるジアリールアルカンであって、
【化6】
式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R’1、R’2、R’3、R’4、およびR’5は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)は、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され;Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、R1〜R5のうちの少なくとも2つ、またはR’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
R6、およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、および−Xから成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、およびIから成る群から選択されるハロゲンであり、
n=1〜10であるジアリールアルカン。
【請求項42】
n=2〜4である、請求項41に記載のジアリールアルカン。
【請求項43】
R6および/またはR7のうちの少なくとも一方がOH基である、請求項41に記載のジアリールアルカン。
【請求項44】
1−(2−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−プロパン、1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、1−(3−メチル−2,4−ジメトキシフェニル)−3−(2’,5’−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(2’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(2’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4、6−トリヒドロキシフェニル)−3−(4’−アミノフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−フェニル−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(3’,4’,5’−トリメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4’−メトキシフェニル)−1−エタノール、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−3−(2’,3’,4’,5’−テトラヒドロベンゾ(b)ジオキソシン−8’−イル)−1−プロパノール、3−(5’−クロロ−1’−メチル−1’−ヒドロイミダゾール−2’−イル)−1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2−ヒドロキシ−4,6−ジメトキシフェニル)−3−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(3’,4’−ジメトキシフェニル)−1−エタノール、1,4−ビス−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2,3−ジメチルブタン、1−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−(2’,4’−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール、1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2’,4’−ジクロロフェニル)−1−エタノール、1−(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)−3−(3’−ヒドロキシ−4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、1,3−ビス−(2,4−ジメトキシフェニル)−プロパン−1,3−ジオール、1−(2,4、6−トリヒドロキシフェニル)−3−(3’−ヒドロキシ−4’−メトキシフェニル)−1−プロパノール、および1−(2,4、6−トリメトキシフェニル)−3−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1−プロパノールから成る群から選択されるジアリールアルカン。
【請求項45】
ジアリールアルカンを合成するための方法であって、以下の一般構造:
【化7】
(式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R’1、R’2、R’3、R’4、およびR’5は、−H、−OH、−SH、−OR、−CN、−SR、−NH2、−NHR、−NR2、X、および単糖または2〜6個の単糖類から構成されるオリゴ糖のグリコシドから成る群から独立して選択され、前記単糖(類)は、アルドペントース、メチルアルドペントース、アルドヘキソース、ケトヘキソース、およびこれらの化学的誘導体から成る群から独立して選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、Iから成る群から選択されるハロゲンであり、R1〜R5のうちの少なくとも2つ、またはR’1〜R’5のうちの少なくとも2つはHではなく、
R6およびR7は、−H、−OH、−OR、−CN、−NHR、−NH2、−Xから成る群から独立して選択され、R6およびR7の1つ以上は一緒に=Oを形成し、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、Br、F、およびIから成る群から選択されるハロゲンであり、
n=1〜10である)を有する化合物を還元することを含む方法。
【請求項46】
前記ジアリールアルカンが有機合成によって得られるか、または1つまたは複数の植物から単離される、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記ジアリールアルカンが、ボロヒドリド類、触媒存在下でのH2、NaH、およびLiAlH4から成る群から選択される還元剤を用いて置換ジアリールアルカノンから還元される、請求項41に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2008−501030(P2008−501030A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515432(P2007−515432)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/018884
【国際公開番号】WO2005/117849
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(504000568)ユニゲン・ファーマシューティカルス・インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/018884
【国際公開番号】WO2005/117849
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(504000568)ユニゲン・ファーマシューティカルス・インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】
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