説明

二核金属錯体、および当該二核金属錯体を用いたポリカルボナートの製造方法

【課題】ポリカルボナートの合成において高い触媒活性を示す触媒および触媒システム、ならびに当該触媒を用いたポリカルボナートの製造方法を提供する。
【解決手段】式(I):


(式中、Mは、Co(III)、Cr(III)およびAl(III)からなる群から選択される3価金属であり、Zは、アニオン性配位子である。)で表される二核金属錯体、および当該二核金属錯体の存在下で、エポキシド化合物と二酸化炭素を共重合させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシド化合物と二酸化炭素を共重合するための金属錯体に関する。また、本発明は、金属錯体を用いてエポキシド化合物と二酸化炭素を共重合することを含む、ポリカルボナートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシド化合物と二酸化炭素との共重合によって得られるポリカルボナートは、二酸化炭素を合成樹脂の原料に利用する点で興味深い。また、脂肪族ポリカルボナートは、透明性を有しかつ所定温度以上に加熱すると完全に分解するため、一般成形物、フィルム、ファイバーなどの用途に使用できることに加えて、光ファイバー、光ディスクなどの光学材料、あるいはセラミックバインダー、ロストフォームキャスティングなどの熱分解性材料として利用することも可能である。さらに、脂肪族ポリカルボナートは、生体内で分解可能であるため、徐放性の薬剤カプセルなどの医用材料、生分解性樹脂の添加剤または生分解性樹脂の主成分として応用できる。
【0003】
脂肪族ポリカルボナートは、これまでに様々な触媒または触媒システムを用いることによって合成されている。例えば、特許文献1(米国特許出願公開第2006/0089252号)には、特定の構造式を有するコバルト系触媒を好ましくは塩の形態の助触媒と組み合わせて用いてプロピレンオキシドと二酸化炭素を共重合させることにより、ポリ(プロピレンカルボナート)を製造することが記載されている。
【0004】
非特許文献1(Konsler, R.G.; Karl, J.; Jacobsen, E.N. J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, p.10780-10781)には、二核クロム錯体を触媒として用いたメソエポキシドの不斉開環反応が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0089252号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Konsler, R.G.; Karl, J.; Jacobsen, E.N. J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, p.10780-10781
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリカルボナートの合成において、エポキシド化合物と二酸化炭素が一分子ずつ反応した副生成物である環状カルボナートの生成量や、ポリカルボナート鎖の規則性を乱すことになる、ポリカルボナート鎖中のポリエーテル単位の比率を可能な限り低く抑えつつ、高い触媒活性、例えば高いTOF(Turnover Frequency、触媒中の単位物質量の金属当たり、単位時間当たりの、エポキシド化合物のポリマーへの転化量)を発揮する触媒が、依然として必要とされている。
【0008】
また、触媒濃度を低くすることは、高分子量のポリカルボナートを合成する上で有利である。そのため、高分子量のポリカルボナートを合成する用途では、低い触媒濃度であっても触媒活性が低下しない触媒が必要とされている。
【0009】
また、一般的な触媒反応においては、反応温度をより高温にすると、反応速度を向上させる、すなわち触媒活性を高めてより短時間で反応を完了させることができる。そのため、効率的にポリカルボナートを合成するために、より高温で使用できる触媒が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願は、上記課題を解決するために以下の発明を提供する。
【0011】
1.式(I):
【化1】

(式中、R1は、各ベンゼン環上のm1個またはm2個の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアシルオキシ基、F、Cl、BrまたはIから選択され;Aは、置換または非置換の、アルキレン基、アリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、エステル基、アミド基、およびこれらの基が複数直列に結合した基からなる群から選択される、2価の連結基であり;Mは、コバルト(III)、クロム(III)およびアルミニウム(III)からなる群から選択される3価金属であり;YおよびY’はそれぞれ、2個の炭素原子を介して2個のイミノ窒素を連結する2価の連結基であって、その2個の炭素原子に1または複数の、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される置換基が結合していてもよく、あるいはその2個の炭素原子が置換または非置換の、飽和もしくは不飽和の脂肪族環または芳香環の一部を構成してもよく;Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子であり;m1はそれぞれ独立して0〜4の整数であり;m2はそれぞれ独立して0〜3の整数である。)で表される二核金属錯体の存在下で、エポキシド化合物と二酸化炭素を共重合させることを特徴とする、ポリカルボナートの製造方法。
【0012】
2.前記二核金属錯体が、式(II):
【化2】

(式中、R2、R3、R4、R5は、それぞれ、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択され、2つのR2、2つのR3、2つのR4、2つのR5は、それぞれ互いに同じであり、R2およびR3のいずれか一方とR4およびR5のいずれか一方とが互いに結合して、置換または非置換の、飽和または不飽和の脂肪族環を形成してもよく、但しR2、R3、R4およびR5の全てが水素原子である場合は除かれる;R6、R7は、それぞれ、炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアシルオキシ基、F、Cl、BrまたはIから選択され、2つのR6、2つのR7は、それぞれ互いに同じであり;Aは、置換または非置換の、アルキレン基、アリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、エステル基、アミド基、およびこれらの基が複数直列に結合した基からなる群から選択される、2価の連結基であり;Mは、コバルト(III)、クロム(III)およびアルミニウム(III)からなる群から選択される3価金属であり;Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)で表される、項目1に記載の方法。
【0013】
3.前記二核金属錯体が、式(III):
【化3】

(式中、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子であり;nは1から16の整数である。)で表される、項目1に記載の方法。
【0014】
4.前記二核金属錯体が、式(IV):
【化4】

(式中、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子であり;nは1から16の整数である。)で表される、項目1に記載の方法。
【0015】
5.前記エポキシド化合物が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【0016】
6.[R84N]+、[R84P]+、[R83P=N=PR83+および式(V):
【化5】

(式中、R8は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基であり;R9は、イミダゾリウム環の炭素上の0〜3個の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)からなる群から選択されるリンおよび/または窒素を含むカチオンと、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオンとの塩からなる助触媒を前記二核金属錯体と組み合わせて用いて、エポキシド化合物と二酸化炭素を共重合させることを特徴とする、項目1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【0017】
7.式(I):
【化6】

(式中、R1は、各ベンゼン環上のm1個またはm2個の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアシルオキシ基、F、Cl、BrまたはIから選択され;Aは、置換または非置換の、アルキレン基、アリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、エステル基、アミド基、およびこれらの基が複数直列に結合した基からなる群から選択される、2価の連結基であり;Mは、コバルト(III)、クロム(III)およびアルミニウム(III)からなる群から選択される3価金属であり;YおよびY’はそれぞれ、2個の炭素原子を介して2個のイミノ窒素を連結する2価の連結基であって、その2個の炭素原子に1または複数の、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される置換基が結合していてもよく、あるいはその2個の炭素原子が置換または非置換の、飽和もしくは不飽和の脂肪族環または芳香環の一部を構成してもよく;Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子であり;m1はそれぞれ独立して0〜4の整数であり;m2はそれぞれ独立して0〜3の整数である。)で表される二核金属錯体。
【0018】
8.式(II):
【化7】

(式中、R2、R3、R4、R5は、それぞれ、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択され、2つのR2、2つのR3、2つのR4、2つのR5は、それぞれ互いに同じであり、R2およびR3のいずれか一方とR4およびR5のいずれか一方とが互いに結合して、置換または非置換の、飽和または不飽和の脂肪族環を形成してもよく、但しR2、R3、R4およびR5の全てが水素原子である場合は除かれる;R6、R7は、それぞれ、炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアシルオキシ基、F、Cl、BrまたはIから選択され、2つのR6、2つのR7は、それぞれ互いに同じであり;Aは、置換または非置換の、アルキレン基、アリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、エステル基、アミド基、およびこれらの基が複数直列に結合した基からなる群から選択される、2価の連結基であり;Mは、コバルト(III)、クロム(III)およびアルミニウム(III)からなる群から選択される3価金属であり;Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)で表される、項目7に記載の二核金属錯体。
【0019】
9.式(III):
【化8】

(式中、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子であり;nは1から16の整数である。)で表される、項目7に記載の二核金属錯体。
【0020】
10.式(IV):
【化9】

(式中、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子であり;nは1から16の整数である。)で表される、項目7に記載の二核金属錯体。
【0021】
11.前記式(IV)において、Zがペンタフルオロベンゾアートであり、nが3〜10の整数である、項目10に記載の二核金属錯体。
【0022】
12.[R84N]+、[R84P]+、[R83P=N=PR83+および式(V):
【化10】

(式中、R8は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基であり;R9は、イミダゾリウム環の炭素上の0〜3個の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)からなる群から選択されるリンおよび/または窒素を含むカチオンと、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオンとの塩からなる助触媒を、項目7〜11のいずれか1つに記載の二核金属錯体と組み合わせた触媒システム。
【発明の効果】
【0023】
従来の単核金属錯体は、触媒濃度を低くすると極端に活性が低下するが、本発明の二核金属錯体は、低い触媒濃度条件においても良好な活性を維持することができる。そのため、本発明の二核金属錯体は、低い触媒濃度条件が必要とされる、高分子量のポリカルボナート合成に有利である。
【0024】
本発明の二核金属錯体は、従来の単核金属錯体と比較して、より高温(例えば40℃)でも使用できるため、より高い触媒活性を実現することができる(例えば、Angew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, p.5484に、下式の単核コバルト錯体が40℃で失活することが記載されている)。
【化11】

【0025】
なお、上述の記載は、本発明の全ての実施態様および本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的でより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0027】
本発明の一実施態様では、エポキシド化合物と二酸化炭素の共重合によるポリカルボナートの製造に有用な二核金属錯体を、以下の式(I):
【化12】

で表すことができる。本発明の二核金属錯体は、上記式(I)に示されるように、ビスシッフ塩基型の配位子(サリチルアルデヒドとエチレンジアミンとの脱水縮合生成物の骨格を有する配位子はサレン配位子と呼ばれることもある)のイミン部分由来の2個の窒素原子およびフェノール性水酸基由来の2個の酸素原子が金属中心Mに四座配位し、アニオン性配位子Zが金属中心Mにさらに配位した2つのユニットが、連結基Aによってつながった構造を有している。
【0028】
いかなる理論に拘束されることを望むわけではないが、本発明の二核金属錯体においては、どちらか一方の金属中心がエポキシド化合物を活性化するルイス酸としてはたらき、もう一方の金属中心上にあるポリマー成長末端が、活性化されたエポキシド化合物に求核攻撃して、共重合が進行すると考えられている。このように2つの金属中心が協同的に作用することが、本発明において優れた触媒活性が達成される一つの理由であると考えられる。
【0029】
1は、各ベンゼン環上のm1個またはm2個の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアシルオキシ基、F、Cl、BrまたはIから選択される。m1はそれぞれ独立して0〜4の整数であり、m2はそれぞれ独立して0〜3の整数である。ここでm1、m2が0である場合、対応するベンゼン環上に置換基がないことを表す。
【0030】
1の具体例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの、直鎖または分岐の炭素数1〜10のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基などの炭素数3〜10のシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,6−キシリル基、メシチル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントリル基などの置換または非置換の炭素数6〜20のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、ビニルオキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、アリルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基などの炭素数1〜10のアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、デカノイル基などの炭素数2〜10のアシル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基などの炭素数2〜10のアシルオキシ基;F、Cl、Br、I、などが挙げられる。R1は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,6−キシリル基、メシチル基、メトキシ基、エトキシ基、ビニルオキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、アリルオキシ基、アセチル基、アセトキシ基、F、Cl、Br、またはIであることが好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、またはフェニル基であることがより好ましく、tert−ブチル基であることが特に好ましい。
【0031】
m1は2であることが好ましく、このとき、R1の位置は、配位子のサリチルアルデヒドに相当する部位のベンゼン環の3位と5位であることが好ましい。また、m2は1であることが好ましく、このとき、R1の位置は、配位子のサリチルアルデヒドに相当する部位のベンゼン環の3位であることが好ましい。
【0032】
Aは、2つのビスシッフ塩基型の配位子をつなぐ2価の連結基であり、それら配位子のベンゼン環上の炭素原子と結合している。2価の連結基Aは、アルキレン基、アリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、エステル基、アミド基、およびこれらの基が複数直列に結合した基からなる群から選択される。2価の連結基を構成する炭素数は1〜18であることが好ましい。2価の連結基Aは、置換されていても非置換でもよく、ここで、置換基の炭素原子は2価の連結基を構成する炭素数に含まれない。2価の連結基Aは、配位子のサリチルアルデヒドに相当する部位のベンゼン環の5位で結合していることが好ましい。
【0033】
2価の連結基Aの具体例として、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,12−ドデシレン基、1,16−ヘキサデシレン基などのアルキレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、1,6−ナフチレン基、1,7−ナフチレン基、1,8−ナフチレン基などのアリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、エステル基、アミド基、およびこれらの基が複数直列に結合した基(例えば、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、式:−OC(=O)(CH2nC(=O)O−(式中、nは1〜16の整数である。)で表される2価基など)が挙げられる。
【0034】
2価の連結基Aは置換基を有してもよい。そのような置換基の例として、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、ブチル基など)、アリール基(例えばフェニル基など)、アミノ基(例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基など)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基など)、アシル基(例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基など)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基などが挙げられ、アルキル基、アルコキシ基が好ましい。
【0035】
2価の連結基Aとして好適なものとして、式:−OC(=O)(CH2nC(=O)O−(式中、nは1〜16の整数である。)が挙げられる。より優れた触媒活性を達成するには、nを3〜10の整数とすることが好ましい。nをこのような範囲とすることは、二核金属錯体の分子内で反応が有利に進行する距離に2つの金属中心を保ちつつ、炭素−炭素内部回転の自由度を減らして、2つの金属中心を分子内相互作用に有利な立体配置とするのに、特に有利である。
【0036】
Mは、コバルト(III)、クロム(III)およびアルミニウム(III)からなる群から選択される3価金属であり、コバルト(III)であることが好ましい。
【0037】
YおよびY’はそれぞれ、2個の炭素原子を介して2個のイミノ窒素を連結する2価の連結基である。その2個の炭素原子に1または複数の、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される置換基が結合していてもよい。
【0038】
Yおよび/またはY’の炭素原子に結合する、置換または非置換のアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖状の置換または非置換のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。アルキル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0039】
Yおよび/またはY’の炭素原子に結合する、置換または非置換のシクロアルキル基としては、炭素数3〜10の置換または非置換のシクロアルキル基が好ましく、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基などが挙げられる。シクロアルキル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0040】
Yおよび/またはY’の炭素原子に結合する、置換または非置換のアリール基としては、炭素数6〜20の置換または非置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基などの置換または非置換のアリール基が挙げられる。アリール基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0041】
Yおよび/またはY’の炭素原子に結合する、置換または非置換のヘテロアリール基としては、炭素数5〜20の置換または非置換のヘテロアリール基が好ましく、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラリジニル基、キノリル基、イソキノリル基などの置換または非置換のヘテロアリール基が挙げられる。ヘテロアリール基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0042】
Yの2個の炭素原子および/またはY’の2個の炭素原子が、置換または非置換の、飽和もしくは不飽和の脂肪族環または芳香環の一部を構成してもよい。このような飽和もしくは不飽和の脂肪族環または芳香環として、例えば、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、ベンゼン環などが挙げられ、これらの脂肪族環または芳香族環は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基などの、1または複数の置換基で置換されていてもよい。
【0043】
そのような2価の連結基YおよびY’の具体例として、上述したような、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される1または複数の置換基で置換されていてもよいエチレン基が挙げられ、このエチレン基は無置換であるか、1または複数のメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、またはフェニル基で置換されていることが好ましい。また、2価の連結基YおよびY’の具体例として、隣接する2個の炭素原子がそれぞれ別のイミノ窒素に結合している置換または非置換のシクロアルキレン基(例えばシクロヘキサン−1,2−ジイル基)またはフェニレン基(例えば1,2−フェニレン基)も挙げられる。これらの中でシクロヘキサン−1,2−ジイル基が好ましい。
【0044】
Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。アニオン性配位子Zはエポキシド化合物のエポキシド炭素に対して求核性を有する場合がある。Zの具体例として、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、プロピオナート、シクロヘキシルカルボキシラートなどの脂肪族カルボキシラート;ベンゾアート、p−メチルベンゾアート、3,5−ジクロロベンゾアート、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート、4−tert−ブチルベンゾアート、ペンタフルオロベンゾアート、ナフタレンカルボキシラートなどの芳香族カルボキシラート;メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシドなどのアルコキシド;フェノキシド、o−ニトロフェノキシド、p−ニトロフェノキシド、m−ニトロフェノキシド、2,4−ジニトロフェノキシド、3,5−ジニトロフェノキシド、3,5−ジフルオロフェノキシド、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシド、1−ナフトキシド、2−ナフトキシドなどのアリールオキシドなどが挙げられる。Zは、F-、Cl-、Br-、I-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることが好ましく、F-、Cl-、Br-、I-、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることがより好ましく、F-、Cl-、Br-、I-、ベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることが特に好ましい。
【0045】
好適な二核金属錯体として、例えば以下の式(III):
【化13】

で表されるものが挙げられる。Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子であり、具体例および好適なものは上記のとおりである。nは1〜16の整数であり、2価の連結基Aについて説明したように、より優れた触媒活性を達成するには、3〜10の整数であることが好ましい。
【0046】
本発明の一実施態様では、二核金属錯体に含まれる2つの金属中心−配位子部分が、互いに鏡像関係となる構造を有することが好ましい。いかなる理論に拘束されることを望むわけではないが、キラルエポキシド化合物(例えばプロピレンオキシド)を二酸化炭素と共重合させる場合、金属中心周りに不斉環境があると、その不斉環境に好適な立体配置を有する、キラルエポキシド化合物のいずれか一方のエナンチオマーの活性化がより有利に進行すると考えられる。そのため、キラルエポキシド化合物のラセミ混合物と二酸化炭素の共重合反応において、2つの金属中心−配位子部分が鏡像関係にあるこの実施態様の二核金属錯体を用いれば、キラルエポキシド化合物の活性化を両方のエナンチオマーについて同じように有利に進行させることができるため、共重合反応をより促進することができる。当然ながら、この実施態様の二核金属錯体もまた、上述したような、2つの金属中心の協同的作用に起因すると考えられる優れた触媒活性を示すことから、キラルエポキシド化合物のラセミ混合物に限らず、アキラルエポキシド化合物を用いた二酸化炭素との共重合にも適している。
【0047】
そのような構造を有する二核金属錯体として、例えば以下の式(II):
【化14】

で表されるものが挙げられる。
【0048】
2、R3、R4、R5は、それぞれ、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択され、2つのR2、2つのR3、2つのR4、2つのR5は、それぞれ互いに同じである。また、R2およびR3のいずれか一方とR4およびR5のいずれか一方とが互いに結合して、置換または非置換の、飽和または不飽和の脂肪族環を形成してもよい。但し、金属中心周りに不斉環境が生じない、R2、R3、R4およびR5の全てが水素原子である場合は除かれる。
【0049】
2、R3、R4、R5として選択される、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基の具体例は、上記式(I)で表される二核金属錯体の、2価の連結基YおよびY’の炭素原子に結合してもよい置換基として記載したものと同じであり、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、およびフェニル基が好ましい。
【0050】
また、R2およびR3のいずれか一方とR4およびR5のいずれか一方とが互いに結合して、置換または非置換の、飽和または不飽和の脂肪族環を形成する場合、このような飽和もしくは不飽和の脂肪族環として、例えば、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環などが挙げられ、シクロヘキサン環を形成することが好ましい。これらの脂肪族環は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基などの、1または複数の置換基で置換されていてもよい。
【0051】
6、R7は、それぞれ、炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアシルオキシ基、F、Cl、BrまたはIから選択され、2つのR6、2つのR7は、それぞれ互いに同じである。R6およびR7の具体例および好適なものは、上記式(I)で表される二核金属錯体のR1について記載したものと同じである。
【0052】
A、MおよびZは、上記式(I)で表される二核金属錯体について上述したとおりである。
【0053】
本発明の二核金属錯体として、以下の式(IV):
【化15】

で表されるものが特に好ましい。Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子であり、具体例および好適なものは上述したとおりである。nは1〜16の整数であり、2価の連結基Aについて説明したように、より優れた触媒活性を達成するには、3〜10の整数であることが好ましい。
【0054】
本発明は、上述したように、2つの金属中心が協同的に作用することから、助触媒を併用しなくても高い触媒活性を実現できる。しかしながら、さらに高い触媒活性が必要とされる場合などは、上記二核金属錯体に助触媒をさらに組み合わせた触媒システムを用いて、エポキシド化合物と二酸化炭素の共重合を行うこともできる。助触媒をさらに用いることにより、共重合の反応速度を高める、および/または共重合体の交互規則性を高める、および/または副生成物である環状カルボナートの生成を抑制することができる。
【0055】
上記二核金属錯体と組み合わせることが可能な助触媒の一例は、リンおよび/または窒素を含むカチオンと対アニオンとからなる塩である。そのような助触媒として、[R84N]+、[R84P]+、[R83P=N=PR83+(式中、R8は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)および式(V):
【化16】

(式中、R8は、上記説明したとおりであり、R9は、イミダゾリウム環の炭素上の0〜3個の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)からなる群から選択されるリンおよび/または窒素を含むカチオンと、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオンとの塩を使用できる。
【0056】
8およびR9の具体例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などの、直鎖または分岐のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,6−キシリル基、メシチル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントリル基などの置換または非置換のアリール基が挙げられる。R8およびR9は、上記カチオン([R84N]+、[R84P]+、[R83P=N=PR83+、式(V)のイミダゾリウム)が全体として共重合反応に有利な立体的効果を発揮する、すなわち適切な嵩高さを有するように、選択して組み合わせることができる。
【0057】
上記塩を構成するカチオンとして、[R84N]+、[R83P=N=PR83+、または式(V)のイミダゾリウムを使用することが好ましく、[R83P=N=PR83+を使用することがより好ましい。
【0058】
四級アンモニウム[R84N]+の具体例として、テトラブチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、トリシクロヘキシルメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウムなどが挙げられる。
【0059】
四級ホスホニウム[R84P]+の具体例として、テトラブチルホスホニウム、テトラヘキシルホスホニウム、テトラシクロヘキシルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、テトラ(メトキシフェニル)ホスホニウムなどが挙げられる。
【0060】
ビス(ホスホラニリデン)アンモニウム[R83P=N=PR83+の具体例として、ビス(トリブチルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(エチルジフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(n−ブチルジフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(ジメチルフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(トリトリルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(トリナフチルホスホラニリデン)アンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムが好ましい。
【0061】
式(V)のイミダゾリウムの具体例として、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムなどが挙げられる。
【0062】
上記塩を構成するアニオンとして、Zについて上述したものを挙げることができ、F-、Cl-、Br-、I-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることが好ましく、F-、Cl-、Br-、I-、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることがより好ましく、F-、Cl-、Br-、I-、ベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることが特に好ましい。
【0063】
上記カチオンおよびアニオンからなる塩として、例えば、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムアセタート、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムフルオリド(PPNF)、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド(PPNCl)、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムペンタフルオロベンゾアート(PPNOBzF5)、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1−エチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウムクロリドなどが挙げられ、PPNF、PPNClおよびPPNOBzF5が好ましい。
【0064】
上記の二核金属錯体を用いたポリカルボナートの合成に使用するエポキシド化合物として、式(VI):
【化17】

(式中、R10およびR11は、同一でも異なっていてもよく、H、置換もしくは非置換のアルキル基、または置換もしくは非置換のアリール基であるか、またはR10とR11が互いに結合して置換もしくは非置換の環を形成してもよい。)で表されるものが使用できる。
【0065】
10およびR11のアルキル基として、炭素数1〜10の直鎖または分岐の置換または非置換のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−メチル−1−エチル−n−ペンチル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチル基、1−エチル−1,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−2,2−ジメチル−n−プロピル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などが挙げられ、メチル基であることが好ましい。アルキル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルファニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または複数の置換基で置換されていてもよい。
【0066】
10およびR11の置換または非置換のアリール基として、置換または非置換の、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基などが挙げられ、フェニル基であることが好ましい。アリール基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などの別のアリール基、アルコキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルファニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子などから選択される1または複数の置換基で置換されていてもよい。
【0067】
10およびR11は、互いに結合して置換または非置換の環を形成してもよく、好ましくは炭素数4〜10の、置換または非置換の脂肪族環を形成してもよい。例えば、R10とR11が−(CH24−を介して互いに結合した場合、シクロヘキサン環を形成する。このように形成された環は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、アルコキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルファニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子などから選択される1または複数の置換基で置換されていてもよい。
【0068】
そのようなエポキシド化合物として、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、3−フェニルプロピレンオキシド、3,3,3−トリフルオロプロピレンオキシドなどが挙げられ、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、またはそれらの組み合わせが好ましく、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはそれらの組み合わせがより好ましい。
【0069】
エポキシド化合物と二酸化炭素の共重合は、加圧可能な公知の重合反応装置、例えばオートクレーブを用いて行うことができる。共重合の反応温度は、一般に約0℃以上、約100℃以下とすることができ、約10℃以上、約80℃以下であることが好ましく、約20℃以上、約60℃以下であることがより好ましい。反応温度を高くすると反応速度が増加してTOFを向上させることができるが、過度に高い反応温度では触媒が失活して必要な水準の触媒活性が得られない場合がある。本発明の二核金属錯体は、従来の単核金属錯体と比較して、高温条件(例えば40℃)で触媒活性が低下しないため、従来より短時間で効率的にポリカルボナートを合成することができる。また、重合溶液(溶液重合の場合)または重合生成物(バルク重合の場合)の粘度は温度の上昇に伴い低下するのが一般的であるため、共重合をより高温で行うことが可能な本発明によれば、これらの重合溶液または重合生成物の攪拌効率が上がり、反応容器の単位体積当たりの生産性を向上できる場合がある。
【0070】
共重合時の二酸化炭素の分圧は、一般に約0.1MPa以上、約20MPa以下とすることができ、約10MPa以下であることが好ましい。窒素、アルゴンなどの不活性ガスが二酸化炭素と一緒に反応雰囲気中に存在してもよい。
【0071】
エポキシド化合物と触媒である二核金属錯体のモル比は、一般にエポキシド化合物:二核金属錯体中の金属=約1000:1以上、約2000:1以上、または約3000:1以上であり、触媒の利用効率を高めたい場合は、約10,000:1以上とすることもできる。錯体濃度が低いと一般に反応時間が長くなるため、上記モル比は、エポキシド化合物:二核金属錯体中の金属=約100,000:1以下、または約50,000:1以下とすることが一般的である。必要に応じて使用される助触媒の量は、二核金属錯体中の金属1モルに対して、一般に約0.1〜約10モルとすることができ、約0.5〜約5モルであることが好ましく、約0.8〜約1.2モルであることがより好ましい。
【0072】
共重合は無溶媒で行ってもよく、必要に応じて溶媒を使用して行ってもよい。使用可能な溶媒として、例えば、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、ジメチルホルムアミドなどのアミド、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル、プロピレンカルボナート、ジメチルカルボナートなどのカルボナート系溶媒およびそれらの組み合わせを用いることができ、ジクロロメタン、トルエン、ジメチルホルムアミドおよび1,2−ジメトキシエタンが好ましく、ジクロロメタンおよび1,2−ジメトキシエタンがより好ましい。溶媒を使用する場合、その量は、エポキシド化合物1質量部に対して、一般に約0.1〜約100質量部とすることができ、約0.2〜約50質量部であることが好ましく、約0.5〜約20質量部であることがより好ましい。
【0073】
所望量のエポキシド化合物が重合した後、公知の後処理を行うことができる。例えば、塩酸、メタノール、塩酸/メタノール混合物などを反応停止剤として反応混合物に投入し、必要に応じて昇温および/または攪拌して反応を終了することができる。その後、例えば、貧溶媒としてメタノール、ヘキサンなどを用いてポリマーを再沈殿してもよく、ソックスレー抽出器を利用して固体状混合物から錯体を抽出してもよい。また、カラムクロマトグラフィーなどの周知の手段を用いて、ポリマーをさらに精製してもよい。
【実施例】
【0074】
本実施例で得られた化合物の1H−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトルの測定は、JEOL社製JNM−ECP500もしくはJNM−ECS400を用いて行った。ポリカルボナートの分子量測定は、GLサイエンス社製高速液体クロマトグラフィーシステム(DG660B・PU713・UV702・RI704・CO631A)とSHODEX社製KF−804Fカラム2本を用いて、テトラヒドロフランを溶出液として(40℃,1.0mL/分)、ポリスチレン標準を基準に換算して測定し、解析ソフトウェア(Scientific Software社製EZChrom Elite)で処理して決定した。
【0075】
(R,R)−6および(S,S)−6は、文献記載の方法に従って合成した(Chem. Eur. J. 2009, 15, 1186.)。(R,R)−7dは文献記載の方法に従って合成した(J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 6929.)。(R,R)−(R,R)−8aは文献記載の方法に従って合成した(J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 10780.)。rac−5は文献記載の方法に従って合成した(米国特許第7304172号)。
【0076】
【化18】

【0077】
1.(R,R)−7の合成
1−1.(R,R)−7aの合成:Pyrex(登録商標)製丸底フラスコにドデカン二酸(230mg,1.0mmol)、(R,R)−6(101mg,0.20mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(27mg,0.22mmol)、ジクロロメタン(4mL)を入れ、攪拌した。ここに、ジシクロヘキシルカルボジイミド(41mg,0.20mmol)をジクロロメタン(1mL)に溶解させた溶液を加え、室温で4時間攪拌した。生じた沈殿物を濾別し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で精製して、(R,R)−7aを得た。収量104mg、収率72%。1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ=8.30(s,1H),8.23(s,1H),7.31(d,J=2.4Hz,1H),6.98(d,J=2.4Hz,1H),6.91(d,J=2.7Hz,1H),6.75(d,J=2.7Hz,1H),3.34−3.32(m,2H),2.49(t,J=7.5Hz,2H),2.35(t,J=7.5Hz,2H),1.96−1.92(m,2H),1.88−1.87(m,2H),1.77−1.68(m,4H),1.65−1.60(m,2H),1.49−1.44(m,2H),1.41−1.29(m,30H),1.24(s,9H);13C−NMR(500MHz,CDCl3)δ=180.1,172.9,166.0,164.8,158.2,158.1,141.7,140.1,138.6,136.5,127.0,126.1,122.9,121.5,118.3,117.9,72.6,72.3,35.1,35.0,34.4,34.18,34.15,33.31,33.25,31.5,29.6,29.5,29.34,29.27,29.22,29.17,25.1,24.8,24.4.
【0078】
1−2.(R,R)−7bの合成:ノナン二酸(188mg,1.0mmol)、(R,R)−6(101mg,0.20mmol)を用いて、1−1と同様の方法で、(R,R)−7bを得た。収量114mg、収率84%。1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ=8.32(s,1H),8.25(s,1H),7.34(d,J=2.3Hz,1H),7.00(d,J=2.3Hz,1H),6.94(d,J=2.7Hz,1H),6.78(d,J=2.7Hz,1H),3.35−3.33(m,2H),2.51(t,J=7.6Hz,2H),2.37(t,J=7.6Hz,2H),1.97−1.91(m,2H),1.89−1.87(m,2H),1.76−1.70(m,4H),1.68−1.63(m,2H),1.49−1.45(m,2H),1.43−1.39(m,24H),1.26(s,9H);13C−NMR(500MHz,CDCl3)δ=180.1,172.8,166.0,164.8,158.2,158.1,141.6,140.1,138.6,136.5,127.0,126.1,122.9,121.5,118.3,117.9,72.5,72.3,35.1,35.0,34.4,34.14,34.12,33.3,33.2,31.5,29.6,29.3,29.00,28.97,25.0,24.7,24.4.
【0079】
1−3.(R,R)−7cの合成:ヘキサン二酸(120mg,0.82mmol)、(R,R)−6(83mg,0.16mmol)を用いて、1−1と同様の方法で、(R,R)−7cを得た。収量79mg、収率78%。1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ=8.32(s,1H),8.24(s,1H),7.33(d,J=2.5Hz,1H),7.00(d,J=2.5Hz,1H),6.94(d,J=2.8Hz,1H),6.78(d,J=2.8Hz,1H),3.35−3.33(m,2H),2.55(t,J=7.0Hz,2H),2.43(t,J=7.0Hz,2H),1.97−1.93(m,2H),1.89−1.87(m,2H),1.81−1.74(m,6H),1.49−1.45(m,2H),1.42(s,9H),1.40(s,9H),1.25(s,9H);13C−NMR(500MHz,CDCl3)δ=179.5,172.3,166.0,164.8,158.3,158.1,141.6,140.1,138.7,136.5,127.0,126.1,122.9,121.5,118.3,117.9,72.6,72.3,35.1,35.0,34.2,34.0,33.7,33.3,33.2,31.5,29.6,29.3,24.39,24.37,24.15.
【0080】
【化19】

【0081】
2.(R,R)−(S,S)−8の合成
2−1.(R,R)−(S,S)−8aの合成:Pyrex(登録商標)製丸底フラスコに(R,R)−7a(206mg,0.29mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(39mg,0.32mmol)、(S,S)−6(145mg,0.29mmol)、ジクロロメタン(15mL)を入れ、攪拌した。ここに、ジシクロヘキシルカルボジイミド(59mg,0.29mmol)をジクロロメタン(3mL)に溶解させた溶液を加え、室温で3.5時間攪拌した。生じた沈殿物を濾別し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた粗生成物をリサイクル型サイズ排除クロマトグラフィー(溶出液:クロロホルム)で精製して、(R,R)−(S,S)−8aを得た。収量254mg、収率70%。1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ=13.86(s,2H),13.62(s,2H),8.31(s,2H),8.23(s,2H),7.31(d,J=2.3Hz,2H),6.98(d,J=2.3Hz,2H),6.92(d,J=2.9Hz,2H),6.75(d,J=2.9H,2H),3.35−3.30(m,4H),2.49(t,J=7.5Hz,4H),1.97−1.92(m,4H),1.88−1.87(m,4H),1.74−1.68(m,8H),1.48−1.44(m,4H),1.41−1.28(m,48H),1.31(m,10H),1.24(s,18H);13C−NMR(125MHz,CDCl3)δ=172.9,166.0,164.8,158.2,158.1,141.7,140.1,138.6,136.5,127.0,126.1,122.9,121.5,118.3,117.9,72.6,72.4,35.1,35.0,34.5,34.2,33.34,33.27,31.6,29.6,29.4,29.3,25.1,24.4.
【0082】
2−2.(R,R)−(S,S)−8bの合成:(R,R)−7b(140mg,0.206mmol)、(S,S)−6(104mg,0.206mmol)を用いて、2−1と同様の方法で、(R,R)−(S,S)−8bを得た。収量169mg、収率70%。1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ=13.87(s,2H),13.62(s,2H),8.30(s,2H),8.23(s,2H),7.31(d,J=2.4Hz,2H),6.98(d,J=2.4Hz,2H),6.91(d,J=2.7Hz,2H),6.75(d,J=2.7H,2H),3.33−3.31(m,4H),2.50(t,J=7.6Hz,4H),1.96−1.91(m,4H),1.88−1.86(m,4H),1.73−1.69(m,8H),1.47−1.38(m,46H),1.23(s,18H);13C−NMR(125MHz,CDCl3)δ=172.8,166.0,164.8,158.2,158.1,141.7,140.1,138.6,136.5,127.0,126.1,122.9,121.5,118.3,117.9,72.6,72.3,35.1,35.0,34.4,34.2,33.3,31.5,29.6,29.3,29.1,25.0,24.4.
【0083】
2−3.(R,R)−(S,S)−8cの合成:(R,R)−7c(223mg,0.350mmol)、(S,S)−6(177mg,0.350mmol)を用いて、2−1と同様の方法で(攪拌時間は3時間)、(R,R)−(S,S)−8cを得た。収量137mg、収率35%。1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ=13.88(s,2H),13.61(s,2H),8.30(s,2H),8.21(s,2H),7.31(d,J=2.4Hz,2H),6.98(d,J=2.4Hz,2H),6.92(d,J=2.7Hz,2H),6.76(d,J=2.7H,2H),3.33−3.31(m,4H),2.57−2.55(m,4H),1.96−1.91(m,4H),1.89−1.87(m,4H),1.83−1.81(m,4H),1.75−1.70(m,4H),1.48−1.44(m,4H),1.40(s,18H),1.37(s,18H),1.23(s,18H);13C−NMR(125MHz,CDCl3)δ=172.3,166.0,164.8,158.3,158.1,141.6,140.1,138.7,136.5,127.0,126.1,122.9,121.5,118.3,117.9,72.6,72.4,35.1,35.0,34.2,34.0,33.34,33.26,31.6,29.6,29.3,24.44,24.42.
【0084】
2−2.(R,R)−(S,S)−8dの合成:(R,R)−7d(271mg,0.437mmol)、(S,S)−6(222mg,0.437mmol)を用いて、2−1と同様の方法で(攪拌時間は2時間)、(R,R)−(S,S)−8dを得た。収量139mg、収率29%。1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ=13.89(s,2H),13.61(s,2H),8.31(s,2H),8.22(s,2H),7.31(d,J=2.6Hz,2H),6.98(d,J=2.6Hz,2H),6.93(d,J=2.9Hz,2H),6.77(d,J=2.9H,2H),3.36−3.30(m,4H),2.65(t,J=7.3Hz,4H),2.13(quintet,J=7.3Hz,2H),1.97−1.92(m,4H),1.89−1.87(m,4H),1.75−1.71(m,4H),1.49−1.45(m,4H),1.40(s,18H),1.38(s,18H),1.24(s,18H);13C−NMR(125MHz,CDCl3)δ=171.9,166.0,164.8,158.3,158.1,141.5,140.1,138.7,136.5,127.0,126.1,122.9,121.5,118.3,117.9,72.6,72.4,35.1,35.0,34.2,33.34,33.26,31.6,29.6,29.3,24.4.
【0085】
【化20】

【0086】
3.二核金属錯体の合成
3−1.(R,R)−(S,S)−1の合成:アルゴン雰囲気下、Pyrex(登録商標)製Schlenk管に(R,R)−(S,S)−8a(109mg,0.09mmol)、酢酸コバルト(II)(32mg,0.18mmol)、エタノール(5mL)を入れ、室温で2時間攪拌した。生じた赤色の沈殿物をアルゴン雰囲気下で濾別し、0℃に冷やしたエタノールでその沈殿物を洗浄し、減圧下で乾燥させて(R,R)−(S,S)−9aを得た(赤色固体、99mg,0.075mmol)。得られた赤色固体をPyrex(登録商標)製丸底フラスコに入れ、ペンタフルオロ安息香酸(32mg,0.15mmol)とジクロロメタン(5mL)を加えて空気下室温で13時間攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮、乾燥させて(R,R)−(S,S)−1を得た。収量127mg、収率81%(2段階)。1H−NMR(DMSO−d6,500MHz)δ=7.92(s,2H),7.89(s,2H),7.52(s,2H),7.49(s,2H),7.33(s×2,2H),7.10(s×2,2H),3.63−3.62(m,4H),3.12−3.05(m,4H),2.60(t,J=7.3Hz,4H),2.05−2.03(m,4H),1.97−1.95(m,4H),1.78−1.60(m,50H),1.43−1.34(m,26H).
【0087】
3−2.(R,R)−(S,S)−2の合成:(R,R)−(S,S)−8b(73mg,0.063mmol)、酢酸コバルト(II)(22mg,0.13mmol)を用いて、3−1と同様の方法で(攪拌時間は3.5時間)、(R,R)−(S,S)−9bを得た(44mg,0.034mmol)。次いで、ペンタフルオロ安息香酸(14mg,0.068mmol)を用いて、3−1と同様の方法で(攪拌時間は18時間)、(R,R)−(S,S)−2を得た。収量51mg、収率48%(2段階)。1H−NMR(DMSO−d6,500MHz)δ=7.93(s,2H),7.89(s,2H),7.52(s,2H),7.49(s,2H),7.34(s,2H),7.11(s,2H),3.66−3.60(m,4H),3.12−3.06(m,4H),2.62(t,J=7.7Hz,4H),2.06−2.02(m,4H),1.97−1.89(m,4H),1.78−1.60(m,46H),1.46−1.43(m,4H),1.34(s,18H).
【0088】
3−3.(R,R)−(S,S)−3の合成:(R,R)−(S,S)−8c(115mg,0.103mmol)、酢酸コバルト(II)(36mg,0.21mmol)を用いて、3−1と同様の方法で(攪拌時間は1.5時間)、(R,R)−(S,S)−9cを得た(96mg,0.078mmol)。次いで、ペンタフルオロ安息香酸(33mg,0.16mmol)を用いて、3−1と同様の方法で(攪拌時間は18時間)、(R,R)−(S,S)−3を得た。収量127mg、収率74%(2段階)。1H−NMR(DMSO−d6,500MHz)δ=7.93(s,2H),7.90(s,2H),7.52(s,2H),7.49(s,2H),7.35(s,2H),7.13(s,2H),3.64−3.62(m,4H),3.12−3.05(m,4H),2.70−2.67(m,4H),2.05−2.03(m,4H),1.97−1.91(m,4H),1.80−1.75(m,40H),1.64−1.61(m,4H),1.34(s,18H).
【0089】
3−4.(R,R)−(S,S)−4の合成:(R,R)−(S,S)−8d(119mg,0.108mmol)、酢酸コバルト(II)(38mg,0.215mmol)を用いて、3−1と同様の方法で(攪拌時間は1.5時間)、(R,R)−(S,S)−9dを得た(27mg,0.022mmol)。次いで、ペンタフルオロ安息香酸(9mg,0.04mmol)を用いて、3−1と同様の方法で(攪拌時間は6時間)、(R,R)−(S,S)−4を得た。収量36mg、収率20%(2段階)。1H−NMR(DMSO−d6,500MHz)δ=7.93(s,2H),7.89(s,2H),7.52(s,2H),7.49(s,2H),7.37(s,2H),7.16(s,2H),3.64−3.62(m,4H),3.12−3.06(m,4H),2.78−2.74(m,6H),2.06−2.01(m,4H),1.97−1.89(m,4H),1.78(s,18H),1.75(s,18H),1.34(s,18H).
【0090】
3−5.(R,R)−(R,R)−1の合成:(R,R)−(R,R)−8a(94mg,0.078mmol)、酢酸コバルト(II)(27mg,0.16mmol)を用いて、3−1と同様の方法で(攪拌時間は1.5時間)、(R,R)−(R,R)−9aを得た(89mg,0.067mmol)。次いで、ペンタフルオロ安息香酸(29mg,0.14mmol)を用いて、3−1と同様の方法で(攪拌時間は18時間)、(R,R)−(R,R)−1を得た。収量113mg、収率83%(2段階)。1H−NMR(DMSO−d6,500MHz)δ=7.92(s,2H),7.89(s,2H),7.52(s,2H),7.49(s,2H),7.33(s,2H),7.10(s,2H),3.64−3.62(m,4H),3.12−3.05(m,4H),2.60(t,J=7.1Hz,4H),2.05−2.03(m,4H),1.97−1.95(m,4H),1.78−1.60(m,50H),1.43−1.34(m,26H).
【0091】
【化21】

【0092】
【化22】

【0093】
4.プロピレンオキシドと二酸化炭素との交互共重合(実施例1−13、比較例1、2)
アルゴン雰囲気下、ステンレス製50mL耐圧反応容器にプロピレンオキシド(2.0mL,29mmol)と、表1に示したコバルト錯体を、表1に示したプロピレンオキシド:錯体中のコバルト金属のモル比([PO]/[Co])となるような量で入れ、二酸化炭素5.0MPaを圧入した。表1に示した温度で2時間(実施例9のみ0.5時間)攪拌し、二酸化炭素を抜いた。反応混合物をジクロロメタンに溶解させ、内部標準としてフェナントレンを加えた。均一に溶解させた後、少量を抜き取り、それを濃縮した。得られた残渣の1H−NMRスペクトルから、単位時間当たり、かつ単位物質量のコバルト当たりの、共重合体中に取り込まれたプロピレンオキシドの物質量[TOF,単位はmol・(mol Co)-1・h-1]、共重合体中のカルボナート結合(carbonate linkage,%)とエーテル結合の割合を見積もった。また、13C−NMRスペクトルから頭−尾構造の割合(head-to-tail,%)およびメソ−メソ三連子に対するラセモ−ラセモ三連子の割合([rr]/[mm])を見積もった。また、高速液体クロマトグラフィーによって数平均分子量(Mn,g・mol-1)ならびに分子量分布(Mw/Mn)を見積もった。結果を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
二核コバルト錯体は、高濃度([PO]/[Co]=1000)と低濃度([PO]/[Co]=3000以上)で、それほど活性が落ちない(実施例1と2、実施例3〜5、実施例7、8、12を参照)。一方、類似した配位子構造を有する単核金属錯体では、低濃度で活性が極端に低下する(比較例1と2を参照)。このように、本発明の二核金属錯体は、低い触媒濃度条件が必要とされる、高分子量のポリカルボナート合成に有利である。
【0096】
また、本発明の二核金属錯体は、従来の単核コバルト錯体と比較して、より高温(40℃)でも使用できる(実施例9、10を参照)ため、より高い触媒活性を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、二酸化炭素を炭素源として利用した脂肪族ポリカルボナートを工業的に製造するのに非常に有用である。また、本発明によって得られる脂肪族ポリカルボナートは、例えば光学材料、熱分解性材料、医用材料、生分解性樹脂などとして、様々な用途で利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、R1は、各ベンゼン環上のm1個またはm2個の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアシルオキシ基、F、Cl、BrまたはIから選択され;Aは、置換または非置換の、アルキレン基、アリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、エステル基、アミド基、およびこれらの基が複数直列に結合した基からなる群から選択される、2価の連結基であり;Mは、コバルト(III)、クロム(III)およびアルミニウム(III)からなる群から選択される3価金属であり;YおよびY’はそれぞれ、2個の炭素原子を介して2個のイミノ窒素を連結する2価の連結基であって、その2個の炭素原子に1または複数の、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される置換基が結合していてもよく、あるいはその2個の炭素原子が置換または非置換の、飽和もしくは不飽和の脂肪族環または芳香環の一部を構成してもよく;Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子であり;m1はそれぞれ独立して0〜4の整数であり;m2はそれぞれ独立して0〜3の整数である。)で表される二核金属錯体の存在下で、エポキシド化合物と二酸化炭素を共重合させることを特徴とする、ポリカルボナートの製造方法。
【請求項2】
前記二核金属錯体が、式(II):
【化2】

(式中、R2、R3、R4、R5は、それぞれ、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択され、2つのR2、2つのR3、2つのR4、2つのR5は、それぞれ互いに同じであり、R2およびR3のいずれか一方とR4およびR5のいずれか一方とが互いに結合して、置換または非置換の、飽和または不飽和の脂肪族環を形成してもよく、但しR2、R3、R4およびR5の全てが水素原子である場合は除かれる;R6、R7は、それぞれ、炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアシルオキシ基、F、Cl、BrまたはIから選択され、2つのR6、2つのR7は、それぞれ互いに同じであり;Aは、置換または非置換の、アルキレン基、アリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、エステル基、アミド基、およびこれらの基が複数直列に結合した基からなる群から選択される、2価の連結基であり;Mは、コバルト(III)、クロム(III)およびアルミニウム(III)からなる群から選択される3価金属であり;Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)で表される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二核金属錯体が、式(III):
【化3】

(式中、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子であり;nは1から16の整数である。)で表される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記二核金属錯体が、式(IV):
【化4】

(式中、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子であり;nは1から16の整数である。)で表される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記エポキシド化合物が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
[R84N]+、[R84P]+、[R83P=N=PR83+および式(V):
【化5】

(式中、R8は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基であり;R9は、イミダゾリウム環の炭素上の0〜3個の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)からなる群から選択されるリンおよび/または窒素を含むカチオンと、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオンとの塩からなる助触媒を前記二核金属錯体と組み合わせて用いて、エポキシド化合物と二酸化炭素を共重合させることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
式(I):
【化6】

(式中、R1は、各ベンゼン環上のm1個またはm2個の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアシルオキシ基、F、Cl、BrまたはIから選択され;Aは、置換または非置換の、アルキレン基、アリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、エステル基、アミド基、およびこれらの基が複数直列に結合した基からなる群から選択される、2価の連結基であり;Mは、コバルト(III)、クロム(III)およびアルミニウム(III)からなる群から選択される3価金属であり;YおよびY’はそれぞれ、2個の炭素原子を介して2個のイミノ窒素を連結する2価の連結基であって、その2個の炭素原子に1または複数の、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される置換基が結合していてもよく、あるいはその2個の炭素原子が置換または非置換の、飽和もしくは不飽和の脂肪族環または芳香環の一部を構成してもよく;Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子であり;m1はそれぞれ独立して0〜4の整数であり;m2はそれぞれ独立して0〜3の整数である。)で表される二核金属錯体。
【請求項8】
式(II):
【化7】

(式中、R2、R3、R4、R5は、それぞれ、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択され、2つのR2、2つのR3、2つのR4、2つのR5は、それぞれ互いに同じであり、R2およびR3のいずれか一方とR4およびR5のいずれか一方とが互いに結合して、置換または非置換の、飽和または不飽和の脂肪族環を形成してもよく、但しR2、R3、R4およびR5の全てが水素原子である場合は除かれる;R6、R7は、それぞれ、炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアシルオキシ基、F、Cl、BrまたはIから選択され、2つのR6、2つのR7は、それぞれ互いに同じであり;Aは、置換または非置換の、アルキレン基、アリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、エステル基、アミド基、およびこれらの基が複数直列に結合した基からなる群から選択される、2価の連結基であり;Mは、コバルト(III)、クロム(III)およびアルミニウム(III)からなる群から選択される3価金属であり;Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)で表される、請求項7に記載の二核金属錯体。
【請求項9】
式(III):
【化8】

(式中、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子であり;nは1から16の整数である。)で表される、請求項7に記載の二核金属錯体。
【請求項10】
式(IV):
【化9】

(式中、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子であり;nは1から16の整数である。)で表される、請求項7に記載の二核金属錯体。
【請求項11】
前記式(IV)において、Zがペンタフルオロベンゾアートであり、nが3〜10の整数である、請求項10に記載の二核金属錯体。
【請求項12】
[R84N]+、[R84P]+、[R83P=N=PR83+および式(V):
【化10】

(式中、R8は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基であり;R9は、イミダゾリウム環の炭素上の0〜3個の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)からなる群から選択されるリンおよび/または窒素を含むカチオンと、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオンとの塩からなる助触媒を、請求項7〜11のいずれか1つに記載の二核金属錯体と組み合わせた触媒システム。

【公開番号】特開2011−195635(P2011−195635A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61342(P2010−61342)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】