説明

二極性トランスカロテノイド塩およびそれらの使用

【課題】ヒトを含む哺乳類において、赤血球と身体組織との間での酸素の拡散率を改善させることに有用であるトランスカロテノイド塩化合物を合成する方法、それらを可溶化させる方法、およびそれらの使用法を提供する。
【解決手段】共役炭素−炭素二重結合を含有する対称ジアルデヒドを、トリフェニルホスホランとカップリングさせ、その生成物を鹸化することによるトランスカロテノイド塩化合物。この化合物をアルカリ水に添加する、生理食塩水に添加して未溶解物を濾過する等の方法により可溶化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二極性トランスカロテノイド塩化合物、それらを可溶化させる方法、それらを作製する方法、およびそれらを使用する方法に関する。これらの二極性トランスカロテノイド塩(BTCS)化合物は、ヒトを含む哺乳類において赤血球と身体組織との間での酸素の拡散率を改善させることにおいて有用である。
【0002】
発明の背景
カロテノイドは、その配列が分子の中心で反転される様式で結合されたイソプレノイド単位から構成される炭化水素の一種である。分子のバックボーン(骨格)は、共役炭素−炭素二重結合および単結合から構成され、ペンダント基もまた有し得る。カロテノイドの骨格は40個の炭素を含有するとかつては考えられていたが、カロテノイドは40個未満の炭素原子を含有する炭素骨格も有し得ると長年認識されてきた。炭素−炭素二重結合を取り巻く4つの単結合はすべて、同じ平面に存在する。ペンダント基が炭素−炭素二重結合の同じ側に存在する場合、それらの基はシスと称され、ペンダント基が炭素−炭素二重結合の向かい側に存在する場合、それらはトランスと称される。多数の二重結合のために、カロテノイドの幾何(シス/トランス)異性の広い可能性が存在し、溶液中で異性化が容易に起きる。最近の一連の書籍は、カロテノイドの多くの特性等に関する優れた参照文献である(「CAROTENOIDS」、G.BRITTON、S.LIAAEN-JENSENおよびH. PFANDER, BIRKHAUSER VERLAG, BASEL著、1995年、その全体が参照により本明細書に援用される)。
【0003】
多くのカロテノイドは無極性であり、したがって水中に不溶である。これらの化合物は非常に疎水性であり、そのことが生物学的用途のためのその配合を困難なものにしている。というのは、それらを可溶化させるためには水性溶媒ではなく有機溶媒を使用しなくてはならないためである。他のカロテノイドは単極性であり、界面活性剤の特徴(疎水性部分および親水性極性基)を有する。したがって、これらの化合物は、大部分の液体中に溶解するのではなく、水溶液の表面に引き寄せられる。数種の天然の二極性カロテノイド化合物が存在し、これらの化合物は、中心の疎水性部分ならびに分子の両端に1つずつ2つの極性基を含有する。カロテノイドスルフェートは「最大0.4MG/MLの水中での有意な溶解性」を有することが報告されている(「CAROTENOIDS」, VOL. 1A, P.283)。二極性と考えられ得る他のカロテノイドもまた水中にはあまり可溶性ではない。これらとしては、ジアルデヒドおよびジケトンが挙げられる。クロセチンのジピリジン塩もまた報告されているが、その水中での溶解性は室温で1MG/ML未満である。二極性カロテノイドの他の例はクロセチンおよびクロシン(ともに香辛料のサフラン中に見られる)である。しかしながら、クロセチンは水中にほんのわずかに可溶性である。実際に、二極性カロテノイドすべてのうち、クロシンのみが水中での有意な溶解性を示す。
【0004】
米国特許第4,176,179号、同第4,070,460号、同第4,046,880号、同第4,038,144号、同第4,009,270号、同第3,975,519号、同第3,965,261号、同第3,853,933号、および同第3,788,468号は、クロセチンの各種用途に関する。
【0005】
米国特許第5,107,030号は、2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンジアールおよびその誘導体を作製する方法に関する。
【0006】
米国特許第6,060,511号は、トランスナトリウムクロセチネート(TSC)およびその用途に関する。TSCは、天然に存在するサフランを水酸化ナトリウムと反応させ、続いて抽出することにより作製される。
【0007】
ROY ET AL., SHOCK 10, 213-7. (1998)では、出血させたラット(55%の血液容量)に、10分後にトランスナトリウムクロセチネート(TSC)のボーラスを与え、続いてもう30分後に生理食塩水を与えた。TSC処理した動物すべてが生存したが、対照はすべて死亡した。全体内酸素消費がTSC群では増加し、約15分後には正常静止値の75%に達していた。
【0008】
LAIDIG ET AL, J AM CHEM. SOC. 120, 9394-9395 (1998)は、TSCの計算モデリングに関する。人工TSC分子は、それを水分子で取り囲むことで「水和」されていた。TSCの近傍での水の疎水性配列により、酸素分子が系を通って拡散するのをより容易となっていた。およそ30%の拡散における計算上の増加は、IN VITROおよび動物実験の両方で得られた結果と一致していた。
【0009】
SINGER ET AL., CRIT CARE MED 28, 1968-72 (2000)において、TSCは、急性低酸素症のラットモデルにおいて血行力学的状態および延長されたラットの生存を改善させた。低酸素症は、低酸素濃度(10%)の空気混合物を使用して誘発させた。10分後に、動物に生理食塩水またはTSCのいずれかを付与した。低酸素血症は、血流の減少および塩基欠乏の増加を引き起こした。対照群では6匹の動物のうち2匹のみが生存した。処理群はすべて、二時間以上の間良好な血行力学的安定性で、その後はゆっくりした下り勾配で生存した。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、二極性トランスカロテノイド塩(BTCS)化合物、および下記構造:
YZ−TCRO−ZY
(式中、Y=カチオン、
Z=上記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格)
を有するかかる化合物の合成に関する。
【0011】
本発明はまた、個々のBTCS化合物組成物(TSC組成物を含む)に関し、ここではUV波長範囲で見られるピークの吸光度で除算した可視波長で見られる最高ピークの吸光度が8.5より大きく、好適には9より大きく、最も好適には9.5より大きい。
【0012】
本発明はまた、各種疾患を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳類に治療上有効量の次式:
YZ−TCRO−ZY
を有する化合物を投与することを含む方法に関する。
【0013】
本発明はまた、次式:
YZ−TCRO−ZY
を有する化合物を可溶化および合成する幾つかの方法を包含する。
【0014】
本発明はまた、本発明の化合物を送達するための吸入器に関する。
【0015】
発明の詳細な説明
新規種類のカロテノイドおよびカロテノイド関連化合物が発見された。これらの化合物を「二極性トランスカロテノイド塩」(BTCS)と称する。
【0016】
<本発明の化合物>
本発明は、疎水性カロテノイドまたはカロテノイド関連骨格により水溶液中に溶解することが可能な化合物種である二極性トランスカロテノイド塩、およびそれらを作製する方法に関する。これらの塩のカチオンは、多数の種であってもよいが、好適にはナトリウムまたはカリウム(これらはたいていの生物学的系に見られる)であり得る。本願と共通人の所有に係る米国特許第6,060,511号(その全体が参照により本明細書に援用される)は、サフランを出発としてトランスナトリウムクロセチネート、すなわちTSC(BTCSの1種)を作製する抽出方法について記載している。
【0017】
二極性トランスカロテノイド塩に関する一般構造は、下記:
YZ−TCRO−ZY
であり、
式中、
Y(これは、2つの末端で同じであっても異なってもよい)=カチオン、好ましくは、NAまたはKまたはLI。Yは好適には、一価の金属イオンである。Yはまた、有機カチオン、例えば、R、R(式中、RはH、またはC2N+1(ここで、Nは1〜10、好適には1〜6である))であり得る。例えば、Rは、メチル、エチル、プロピルまたはブチルであり得る。
【0018】
Z(これは、2つの末端で同じであっても異なってもよい)=上記カチオンと会合される極性基。カロテノイド(またはカロテノイド関連化合物)上の末端炭素を任意に包含し、この基はカルボキシル(COO)基またはCO基であり得る。この基はまたスルフェート基(OSO)またはモノホスフェート基(OPO)、(OP(OH)O)、ジホスフェート基、トリホスフェートまたはそれらの組合せであってもよい。
【0019】
TCRO=線状のトランスカロテノイドまたはカロテノイド関連骨格(好適には100個未満の炭素)であり、ペンダント基(以下に定義される)を有し、通常「共役」すなわち交互の炭素−炭素二重結合および単結合を含む(一実施形態では、TCROはリコペンで見られるように完全に共役していない)。ペンダント基は通常メチル基であるが、以下に議論するように他の基であってもよい。好適な実施形態では、骨格の単位は、その配列が分子の中心で逆さまであるような様式で結合される。炭素−炭素二重結合を取り巻く4つの単結合はすべて、同じ平面に存在する。ペンダント基が炭素−炭素二重結合の同じ側に存在する場合、それらの基はシスと称され、ペンダント基が炭素−炭素二重結合の向かい側に存在する場合、それらはトランスと称される。本発明の化合物はトランスである。シス異性体は通常不利益であり、拡散率における結果が増加されない。一実施形態では、トランス異性体(ここで、骨格は線状のままである)が利用され得る。
【0020】
トランスカロテノイドまたはカロテノイド関連骨格の例は、下記:
【化5】

【0021】
(式中、ペンダント基X(これは同じであっても異なってもよい)は、水素(H)原子、あるいは10個以下、好適には4個以下の炭素を有する線状または分岐状基(任意のハロゲンを含有する)、またはハロゲンである。Xの例は、メチル基(CH)、エチル基(C)、ハロゲン含有アルキル基(C1〜C10)(例えば、CHCL)、またはハロゲン(例えば、CLまたはBR)である。ペンダントX基は、同じであっても異なってもよいが、利用されるX基は骨格を線状に維持しなければならない。
【0022】
多くのカロテノイドが天然に存在するが、カロテノイド塩は存在しない。本願と共通人の所有に係る米国特許第6,060,511号は、トランスナトリウムクロセチネート(TSC)に関する。TSCは、天然に存在するサフランを水酸化ナトリウムと反応させ、続いて主としてトランス異性体に関して選択する抽出を行うことにより作製される。
【0023】
BTCSのシスおよびトランス異性体の存在は、水溶液中に溶解されたカロテノイド試料に関して紫外−可視スペクトルに注目することで決定され得る。スペクトルを考慮すると、250〜256NMのUV波長範囲で見られるピークの吸光度で除算した、416〜423NM(この数字は使用する溶媒に依存する)の可視波長範囲で見られる最高ピークの吸光度の値を用いて、トランス異性体の純度レベルを決定することができる。BTCSが水に溶解されている場合、最高可視波長範囲ピークは約421NMであり、UV波長範囲ピークは約254NMである。M. CRAW AND C. LAMBERT, PHOTOCHEMISTRY AND PHOTOBIOLOGY, VOL. 38(2), 241-243 (1983)(その全体が参照により本明細書に援用される)によれば、算出の結果(その場合クロセチンが分析された)は3.1であり、これは精製後に6.6まで増加した。
【0024】
本願と共通人の所有になる米国特許第6,060,511号のトランスナトリウムクロセチン(天然に存在するサフランを水酸化ナトリウムと反応させ、続いて主としてトランス異性体に関して選択する抽出を行うことにより作製されたTSC)に関して、CRAWおよびLAMBERTの分析を実施すると、得られた値は通常、およそ7〜7.5である(一度8.4の値が観察された)。本発明の合成TSCに関して試験を実施すると、その比は通常、8.5より大きく(例えば、8.5〜10)、好適には9より大きく(例えば、9〜10)、最も好適には9.5より大きい。実施例5の改良方法により合成されるTSCに関しては、比は通常9.5より大きい(例えば、9.5〜12)。合成された物質は、「より純粋なもの(PURER)」または高度に精製されたトランス異性体である。
【0025】
最近、TSCが室温で10MG/MLより大きい水性溶解度を有することが見出されており、これは、このような長い疎水性部分を含有する分子にとっては珍しい。TSCはまた、液体を通しての酸素の拡散率を増加させることも見出されている。
【0026】
米国特許第6,060,511号は、サフランを出発としてTSCを作製する抽出方法について記載しているが、サフランの使用によりたった1つのカロテノイド骨格が塩に組み込まれ得るため、同じ手順を使用して他の二極性カロテノイド塩を作製することはできない。
【0027】
本明細書中に開示する発明は、全種類の化合物(各種カロテノイドまたはカロテノイド関連骨格を含有する二極性トランスカロテノイド塩)の合成を可能にする。かかる化合物は、水溶液中に可溶性であり、酸素利用の増加を引き起こすといった好適な生物学的用途を有する。この増加は、二極性トランスカロテノイド塩の疎水性部分(骨格)が、隣接する水分子の結合に影響を及ぼす能力の結果であると考えられる。事実上、このことにより酸素分子はこの近傍ではあるが、より遠方へ拡散することが可能である。
【0028】
<本発明の化合物および組成物の可溶化>
本発明は、トランスカロテノイドまたはカロテノイド関連骨格分子の水溶液中の溶解を可能にする。溶解の新規方法は以下に関連する。上記方法は、任意の二極性トランスカロテノイド塩およびその組成物に適用される。
【0029】
BTCS含有生理食塩水注入溶液
大量(推定血液損失の3倍程度)の等張生理食塩水(生理食塩水とも呼ぶ)は、出血性ショック用の治療として注入される。等張生理食塩水溶液は、身体中に注入されたときに血漿のイオン強度を乱さないように、水1リットル当たり9GのNACLを含有する。生理食塩水へのTSCの添加は、より優れた注入液体をもたらす結果を示したが、単にTSC粉末を生理食塩水と混合するだけでは、かかる溶液を作製することはできない。どんなに多くのTSCを添加しても(最大1MLあたり数ミリグラムまで)、TSCの約50%が生理食塩水中に溶解するに過ぎず、それは、TSCの未溶解粒子が依然として存在することを意味する。これを防止するためには、必要とされる2倍以上の量のTSCを添加し、続いて溶解しない粒子を遠心分離で除去することにより、ストック溶液を作製することができる。ストック溶液の実際の組成は、UV−可視分光法を用いて確証することができる。このストック溶液を生理食塩水に添加することができ、TSCは溶解したままである。
【0030】
この方法を用いて、他のタイプの塩化ナトリウム溶液、ならびにKCL、NASO、乳酸塩等のような他の塩の溶液中に溶解させることができる。幾つか(例えば、1〜3MG/ML)をこの様式で溶液中に入れることができる。
【0031】
炭酸ナトリウムの希釈溶液はBTCSを溶解する
TSCのようなBTCSは、超希釈炭酸ナトリウム溶液中に溶解する。炭酸ナトリウムの希釈(例えば、0.00001〜0.001M)溶液を、PHが8.0になるまで脱イオン水に滴下することができる(脱イオン水のPHは通常5〜6)。これには、例えば脱イオン水50ML当たり数滴の超希釈炭酸ナトリウムを要するに過ぎない。この炭酸ナトリウム−脱イオン水溶液は、大量のTSC(10MG/MLより大きい)を完全に溶解させることが可能であり、それはBTCSのカロテノイド部分の疎水性を考慮すると珍しい。
【0032】
BTCSは、炭酸ナトリウム水の滅菌ボトルと一緒に粉末として供給され得る。続いて、この濃縮溶液を直接注射することができる(血漿よりも低いイオン強度を有する溶液を非常に少量注射することができる)か、または濃縮溶液を生理食塩水に添加した後、注射することができる。TSCが炭酸ナトリウム−水溶媒中に溶解され、続いてより多くの同じ溶媒が添加される場合、TSCは溶液中に留まる。
【0033】
別の実施形態では、炭酸ナトリウムではなく、炭酸水素ナトリウムが使用される。塩基性PHを有する脱イオン水をもたらす他の塩もまた使用することができる。
【0034】
カロテノイド骨格濃度5〜10MG/MLは、この手順を用いて達成することができる。
【0035】
水はBTCSを溶解する
TSCは水(水道水、蒸留水、脱イオン水)中に溶解するが、これらの溶液は、溶液が塩基性となるようにPHが調節された場合のみ安定である。TSCは、正常水中よりも脱イオン水(非常にわずかなNAイオンが存在する)中でより可溶性である。TSCのようなBTCSは、ぴったりの脱イオン化水のみに溶解するが、純粋な脱イオン化水を当該溶液に添加する場合、TSCは析出するであろう。BTCSは、ぴったりの脱イオン化水のみに溶解するが、さらなる脱イオン化水は、PHがわずかに塩基性となるように調節されない場合にはBTCSの沈殿を引き起こし得る。
【0036】
BTCSを可溶化させる他の方法
BTCSは、送達を高める送達系中に配合され得る。後述のの本発明の化合物の配合を参照されたい。
【0037】
<本発明の化合物の合成>
二極性トランスカロテノイド塩
二極性トランスカロテノイド塩を合成するのに使用することができる新規合成方法を以下に記載する。当業者に明らかな合成の様々な工程における変形が存在し得る。
【0038】
A.TSC合成
トランスナトリウムクロセチネート(TSC)は、共役炭素−炭素二重結合を含有する対称C10ジアルデヒド(2,7−ジメチルオクタ−2,4,6−トリエン−1,8−ジアール)を[3−カルボメトキシ−2−ブタエン−1−イリデン]トリフェニルホスホランとカップリングさせることにより合成することができる。これは、クロセチンのトランスジメチルエステルの形成をもたらす。次に、このジメチルエステルを、鹸化により最終TSC生成物へ変換する。通常、鹸化は、水酸化ナトリウム水またはTHF(テトラヒドロフラン)中に溶解させた水酸化ナトリウムのいずれかでエステルを処理することにより達成される。しかしながら、これらの方法は、今回の場合では最良の結果を提供しなかった。今回の場合、鹸化は、NAOH/メタノール溶液でエステルを処理することにより非常に良好に達成することができる。鹸化後、TSCは真空乾燥することにより回収される。
【0039】
この合成で使用されるC10ジアルデヒドおよびトリフェニルホスホラン反応物は、種々の経路を介して作製することができる。例えば、C10ジアルデヒドは、ウィッテッヒ化学を用いてブロモ酢酸エチルおよびフランを出発して調製された。チグリン酸は、所望のホスホランを作製するための出発物質であった。種々の長さのカロテノイド骨格は、種々の長さの反応物(例えば、C14ジアルデヒドおよびトリフェニルホスホラン)を結合させることにより作製することができる。この手順により、種々のトランス二極性カロテノイド塩の形成がもたらされる。種々のペンダント基を得るために、変更もまたなされ得る(TSCは、ペンダント基に関してはメチル基を有する)。
【0040】
この様式で作製されるTSCは、室温で10MG/ML未満のレベルで水(PHは、炭酸ナトリウムの超希釈溶液で8.0に調節される)中に可溶性である。他の二極性トランスカロテノイド塩は、中性以上のPHを有する水中に室温で可溶性である。本明細書中で使用する場合、「可溶性」は、室温で水1ML当たり5MGより大きい量が溶解することを意味する(上述の通り、カロテノイドの参照文献は、0.4MG/MLが「非常に有意な溶解性」であると主張しているが、それは溶解性の本定義未満である)。
【0041】
B.一般合成
カロテノイドまたはカロテノイド関連構造は、以下の様式で構築することができる:
【化6】

【0042】
(3−カルボメトキシ−2−ブテン−1−イリデン)トリフェニルホスホラン(またはXがメチル基以外の関連化合物)は、イソプレノイド単位(またはイソプレノイド関連単位)を対称カロテノイド(またはカロテノイド関連化合物)の両末端に付加するための重要な前駆体である。このプロセスは無限に繰り返すことができる。例えば、ジメチルトランスクロセチネートは、上述の化学を用いて相当する対称的なジアルデヒドに還元することができる。このジアルデヒドは、過剰な(3−カルボキシメトキシ−2−ブテン−1−イリデン)トリフェニルホスホランと反応させて、相当するジエステルを得ることができる。この合成順序は、何度も何度も繰り返すことができる。
【0043】
<改良合成>
2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンジアールは、TSCの合成への重要な中間体である。この重要な前駆体は3つの二重結合を有しており、したがって幾つかの異性体が可能である。TSCに関して、オールトランス異性体(E,E,E−異性体)が必要とされる。一般合成経路には、幾つかの工程で比較的低収率かつ乏しい選択性の11工程の合成が包含される(実施例1を参照)。結果として、途中で幾つかの中間体を精製するのにカラムクロマトグラフィが必要とされる。
【0044】
改良合成経路はかなり簡素である(以下の反応スキームを参照)。米国特許第5,107,030(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されるような3工程プロセスは、ジアルデヒドの幾何異性体の混合物を生じる(米国特許第5,107,030号はこの混合物に言及していない)。実施例1に記載する本発明の方法では、メタノールまたは酢酸エチルから数回の再結晶により、96〜97%の所望の異性体(オールトランス、すなわちE,E,E−異性体)が59%の収率で得られる。
【0045】
本発明の改良合成方法は、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランまたはジアルキルエーテル(ここで、アルキル基は、C1〜C10の直鎖または分岐アルキル基のうちの1つまたは2つである)のような適切な溶媒中での、スルフィン酸RSOH(式中、Rは、C1〜C10の直鎖もしくは分岐アルキル基またはアリール基(置換フェニル基)(例えば、パラトルエンスルフィン酸)である)による異性化により、残存するジアルデヒドの異性体混合物を所望のトランスアルデヒド(E,E,E)に変換することを包含する。純粋な所望のジアルデヒドのさらに8%の収率が得られ、最終工程の全収率を59%から67%の収率に上げる。この収率改良は重要である。この異性化工程は、米国特許第5,107,030号の第三工程に組み込んで、良好な収率を獲得することができる。
【0046】
改良合成経路:
【化7】

【0047】
2つの望ましくない異性体:
【化8】

【0048】
望ましいジルデヒドへの望ましくないジアルデヒドの異性化:
【化9】

【0049】
鹸化は、メタノール中にジエステルを溶解させた後、NAOHのような塩基を添加することにより達成される(その結果、BTCSのYはNAである)。あるいは、ジエステルを、すでに塩基を含有するメタノール中に溶解させることができる。NAOHは通常、水溶液(20〜60重量%)であるが、固体であってもよい。ジエステルを溶解させるためのメタノールに対する代替物は、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノールである。鹸化は、商業的に様々な方法で実施することができる。一相系または二相系(一方が有機相で一方が水相)を使用することができる。
【0050】
トランスクロセチンはまた、上述の方法に従って合成することができる。
【0051】
さらに、TSCに関して報告されているように、カロテノイド骨格の水との疎水性相互作用が拡散率の増加をもたらすため、かかるBTCS化合物は、水を通しての酸素の拡散率を増加させる(これもまた、炭素鎖長のような最終生成物に組み込まれる疎水性部分の性質に依存する)。
【0052】
<本発明の化合物の配合物>
二極性トランスカロテノイド塩の濃縮溶液は、上述のように、炭酸ナトリウムの超希釈溶液中に二極性トランスカロテノイド塩を溶解させることにより作製することができる。次に、得られた混合物をその様式で使用することができるか、または生理食塩水または他の水性溶媒でさらに希釈することができる。さらに、二極性トランスカロテノイド塩の溶液は、塩溶液中に二極性トランスカロテノイド塩を直接溶解させた後、溶解しない任意の物質を取り除くことにより作製することができる。
【0053】
二極性トランスカロテノイド塩は、室温では乾燥形態で安定であり、長期間保管することができる。好適には、経口の場合、かかる塩の配合物は、胃ではなく腸で吸収される。
【0054】
本発明の化合物は単独で投与することができるが、本発明の化合物は、薬学的配合物の一部として投与することができる。かかる配合物は、当業者に既知の薬学的に許容可能なキャリア、ならびに他の治療剤(以下を参照)を含み得る。好適には、配合物は、本発明の化合物の酸素の拡散率を改善させる能力を阻害する化合物を含まない。
【0055】
本発明の化合物および組成物の適切な投与量は、治療される状態の重篤性に依存する。「治療上有効」であるべき用量に関して、その用量は、所望の効果を有さなくてはならず、すなわち酸素の拡散率を増加させなくてはならない。その結果、これにより酸素関連パラメータが正常値へと回復される。
【0056】
投与は、経口、鼻、局所、非経口(皮下、筋内、静脈内、皮内および骨内を含む)、膣または直腸を含む任意の適切な経口投与によってもよい。投与の好ましい経路は、状況に応じる。BTCSが非常に迅速に血流に進入することが必要である場合、吸入経路は緊急状況での治療に好適である。したがって、配合物としては、かかり経路による投与に適したもの(噴霧されるべき液体または粉末)が挙げられる。好ましい経路は、例えば患者の状態および年齢により様々であり得ることが理解されよう。配合物は、単位投薬形態、例えば錠剤および徐放性カプセルで利便性よく提供することができ、また薬剤学の技術分野で既知の方法により調製および投与することができる。配合物は、BTCSの即時放出、あるいは徐放すなわち制御放出用であり得る。例えば、WO99/15150(その全体が参照により本明細書に援用される)の制御放出配合物を参照されたい。
【0057】
経口投与に適した本発明の化合物は、丸剤、カプセル、カシェ剤または錠剤のような別個の単位として、粉末または顆粒として、あるいは溶液、懸濁液または乳濁液として提供することができる。経口投与に適した配合物としてはさらに、ロゼンジ、香錠、および適切な基剤または液体キャリア中に投与される吸入ミストが挙げられる。皮膚への局所投与用の配合物は、有効薬剤および薬学的に許容可能なキャリアを含む軟膏、クリーム、ジェルおよびペーストとして、あるいは経皮パッチで提供され得る。
【0058】
キャリアが固体である鼻内投与に適した配合物としては、鼻腔を通っての迅速な吸入により投与され得る特定サイズの粉末が挙げられる。キャリアが液体である適切な配合物は、例えば鼻スプレーまたは点鼻剤として投与され得る。
【0059】
非経口投与に適した配合物としては、酸化防止剤、緩衝液、静菌剤および配合物を対象レシピエントの血液と等張にさせる溶質を含有することができる水性および非水性滅菌注射溶液、ならびに沈殿防止剤および増粘剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁液が挙げられる。配合物は、単位用量または複数回用量容器、例えば密封アンプルおよびバイアルで提供することができ、また凍結乾燥することができ、これは使用直前に注射用水のような滅菌液体キャリアを添加することのみを要する。注射溶液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0060】
<本発明の化合物および組成物の用途>
各種状態が、身体組織への酸素の送達により制御または媒介される。本発明の化合物および組成物は、クロセチンに関して記載されるのと同じ薬学的用途で同じ有効量で使用することができる。米国特許第4,176,179号、同第4,070,460号、同第4,046,880号、同第4,038,144号、同第4,009,270号、同第3,975,519号、同第3,965,261号、同第3,853,933号および同第3,788,468号(それらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に援用される)を参照されたい。
【0061】
TSCは、水溶液を通っての酸素の拡散率を約30%分増加されることがわかっている。したがって、本発明の化合物は、とりわけ、呼吸疾患、出血性ショックおよび心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、気腫、喘息、高血圧、脳水腫、乳頭腫、脊髄障害のような低酸素(低酸素症)を特徴とする疾患/状態を治療するのに有用である。他の二極性トランスカロテノイド塩は、類似の特性を有する。かかる化合物はまた、酸素療法およびヘモグロビンまたはフルオロカーボンの使用のような、身体における酸素利用を増加させるために一般に提唱されている他の方法と併用して使用することができる。
【0062】
本発明の一実施形態では、BTCSは、酸素を投与しながら患者に投与される。あるいは、ヘモグロビンまたはフルオロカーボンおよびBTCSを一緒に与えることができる。これらの場合、相加効果が実現される。
【0063】
これらの塩のいずれかに関して治療に必要とされる最小投与量は、酸素の拡散率が増加する投与量である。本発明の化合物の有効投与量は、治療される状態、状態の重篤性、対処される各哺乳類患者の病期および個々の特徴に依存する。しかしながら、投与量は、体重1KG当たり有効化合物約0.001MG〜1KG当たり最大約500MG、好適には約0.01〜30MG/KG(体重)に及ぶ。静脈内投与は好適であるが、筋内的、皮下的または吸入による経路のような他の注射経路もまた使用することができる。経皮送達または骨内送達であり得るように、経口投与もまた使用することができる。
【0064】
呼吸障害
二極性トランスカロテノイド塩は、呼吸障害を治療するのに使用することができる。これらは、酸素の動脈分圧が減少されている状態(例えば、正常値90〜100MMHGではなく60〜70MMHG値)として記載される。かかる疾患は、気腫、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)または慢性肺疾患(COPD)である。
【0065】
TSCは、酸素の分圧が低い場合(これは、気腫、ARDSおよびCOPDの症状である)、血中の酸素分圧値を増加させる。血中の酸素分圧を増加させることにより、気腫、ARDSおよびCOPDの症状の多くが軽減される。TSCは疾患の原因を治癒しないが、根本的な原因に起因する酸化性窮迫および損失を軽減する。
【0066】
出血性ショック
出血性ショックは、酸素消費の減少を特徴とする。二極性トランスカロテノイド塩は、より多くの酸素を赤血球から組織へ拡散させることにより、身体の酸素消費を増加させる。TSCは、出血性ショックを被ったラットの酸素消費を増加することがわかっており、またショックの他の症状も相殺することがわかっている。本発明の化合物は、低血圧を増加させ、上昇した心拍数を下げ、ショック中に発症する血液アシドーシスを逆転させる。本発明の化合物はまた、出血性ショックに続く臓器損失を減少させる。
【0067】
本発明の化合物は、吸入により本発明の化合物を投与するか、本発明の化合物を注射するか、または標準蘇生液(リンゲル乳酸塩または生理食塩水)に本発明の化合物を添加することにより、出血性ショックに使用することができる。
【0068】
心血管疾患
西洋文化では、死亡の主要な原因は、虚血性心疾患である。死は、心臓の収縮する能力が徐々に低下すること、または頻繁には突然停止のいずれかに起因し得る。突然心臓死(SCD)は、症状が始まった後の最初の60秒から24時間後の期間に及ぶ。これらの死は通常、急性冠動脈閉塞(封鎖)または心室細動(これは閉塞に起因し得る)の結果である。
【0069】
心筋虚血は、心筋への酸素の供給が不十分である場合に存在する。冠動脈血流が極めて低い場合、心筋は機能することができず、死亡する。筋肉の当該領域は、梗塞を起こしていると言われる。最も多くの場合、冠動脈血流の減少は、冠動脈に見られるアテローム性動脈硬化症により引き起こされる。虚血は、機械的性能および電気的性能の障害ならびに筋肉細胞損傷をもたらし、これにより致死性不整脈、いわゆる心室細動(VF)が引き起こされ得る。心室細胞では、心臓の心室の電気活性が混沌とし、不規則な拍動および認識不可能なパターンを伴う心電図をもたらす。心室細細動は、心筋虚血および心筋梗塞を伴って頻繁に見られ、突然心臓死のほとんどの原因である。二極性トランスカロテノイド塩は、心筋虚血を治療するのに有益である。アテローム性動脈硬化症は、頻繁に心筋梗塞への前兆であり、これもまたこれらの塩で治療することができる。
【0070】
虚血
二極性トランスカロテノイド塩はまた、腎臓、肝臓、脊髄および脳虚血(脳卒中を含む)のような他の形態の虚血(組織または臓器への不十分な血流)を治療するのに有益である。
【0071】
高血圧
高血圧(すなわち、高い血圧)は、多くの場合心血管疾患に関連する。本発明の化合物は、血圧を下げるのに使用することができる。
【0072】
性能の増強
BTCSは有酸素代謝を高め、歩行、ランニング、リフティング等の間に酸素消費レベルを増加させる。持久力も増大される。
【0073】
外傷性脳損傷
外傷性脳損傷に続く低酸素症は、脳損傷の増大をもたらす結果となる。BTCSは、衝突損傷(限局性または広範性損傷)後に脳組織における酸素レベルを増加させる。衝突損傷の例としては、自動車/オートバイの事故および落下が挙げられる。BTCSはまた、過剰酸素療法が使用される場合に、正常脳組織に到達する酸素量を増強する。
【0074】
アルツハイマー病
BTCSは、アルツハイマー病において脳酸素消費レベルを増加させ、したがってアルツハイマー病の症状を軽減させる。血流および酸素消費は、痴呆症にかかっていない老人に見られる30%以下ほどのレベルに下降する(WURTMAN, SCIENTIFIC AMERICAN, VOLUME 252, 1985)。
【0075】
BTCSにより創出される脳における酸素消費レベルの増加はまた、記憶喪失を低減させる。
【0076】
糖尿病
BTCSは、潰瘍、壊疽および糖尿病性網膜症のような糖尿病の合併症を治療するのに有用である。糖尿病性の足の潰瘍は、高圧酸素呼吸治療により、より良好に治癒する(M. KALANI ET AL. JOURNAL OF DIABETES & ITS COMPLICATIONS, VOL 16, NO.2, 153-158, 2002)。
【0077】
BTCSはまた、低酸素圧力に関連する糖尿病性網膜症の合併症に役立つ(DENNINGHOFF ET AL., DIABETES TECHNOLOGY & THERAPEUTICS, VOL. 2, NO.1, 111-113, 2000)。
【0078】
他の用途
二極性トランスカロテノイド塩はまた、脊髄損傷、脳水腫および皮膚乳頭症の治療に使用することができる。すべての場合において、二極性トランスカロテノイドは、症状を軽減し、より低い重篤性となる。これは、二極性トランスカロテノイド塩の使用に起因する酸素消費における増加に起因すると考えられる。
【0079】
BTCSはまた、酸素由来のフリーラジカルを除去する。
【0080】
以下の実施例は例示的であり、本発明の組成物および方法を限定するものではない。当業者に明瞭である通常遭遇する各種条件およびパラメータの他の適切な変更および脚色は、本発明の精神および範囲内である。
【実施例1】
【0081】
トランスナトリウムクロセチネートの合成
【化10】

【0082】
トランスナトリウムクロセチネートは、共役炭素−炭素二重結合を含有する対称C10ジアルデヒドを[3−カルボメトキシ−2−ブテン−1−イリデン]トリフェニルホスホランとカップリングさせることにより合成される。次に、この生成物は、NAOH/メタノールの溶液を用いて鹸化される。
【0083】
ブロモ酢酸エチルに、酢酸エチルに溶解した(およそ2モル/リットルの濃度で)トリフェニルホスフィンを徐々に添加する。単離および塩基による処理の後、生成物をヨウ化メチル、続いて苛性アルカリで処理して、ホスホランを形成することができる。カロテノイド骨格を形成するための基本化合物は、この場合ではフランのような環状化合物を出発として作製することができる。フランを臭素およびメタノールと反応させ、続いて選択的脱プロトン化工程によりモノアルデヒドが形成される。続いて、これをホスホランとカップリングさせる。酸性条件下で他のジメチルアセタール基を脱保護して、遊離アルデヒドが得られた。次に、この化合物を再び同じホスホランと反応させて、ジエチルジエステルを得る。エステル基をアルコールに還元して、続く酸化(例えば、MNOを用いて)により、ジアルデヒド形態のC10骨格が生じる。これを後にチグリン酸から作製したホスホランと反応させる。チグリン酸を酸性条件下でメタノールを用いてエステル化して、メチルエステルを得て、続いて臭素化工程を行う。生じたアリル型ブロミド異性体が形成され、結晶化を用いて分離することができる。続いて所望の臭化物を水酸化ナトリウムで処理することにより、所望のホスホランが生じる。次に、このホスホランおよびC10ジアルデヒドを、トルエンまたはベンゼンのような溶媒中に溶解させて、還流させる。生じた生成物を粉末として単離した後、40%NAOH/メタノール混合物で鹸化して、溶媒を除去した後、TSCを形成する。
【0084】
トランスナトリウムクロセチネート1(TSC)は、17工程の合成順序にて全収率1
.5%で調製した。合計4.1GのTSCを、出発原料としてブロモ酢酸エチル、フランおよびチグリン酸から調製した。
【化11】

【0085】
トランスナトリウムクロセチネート(TSC)は、ジメチルクロセチネートの鹸化から合成され、その調製は、BUCHTAおよびANGREEにより報告された全合成に基づいていた。ジメチルクロセチネートの調製の背後にある合成戦略は、対称C10ジアルデヒド(2,7−ジメチルオクタ−2,4,6−トリエン−1,8−ジアール)を[3−カルボメトキシ−2−ブテン−1−イリデン]トリフェニルホスホランとカップリングさせることに基づいていた。
【化12】

【0086】
元のBUCHTAおよびANGREEの文献は「トランス−2,2−ビスメチル−クロセチン−ジメチルエステルおよびトランス−クロセチン−ジメチルエステルの全合成(THE TOTAL SYNTHESIS OF TRANS-2,2-BISMETHYL-CROCETIN-DIMETHYL ESTER AND TRANS-CROCETIN-DIMETHYL ESTER)」という表題であったが、実験の詳細および収率は報告されていなかった。C10ジアルデヒドおよびホスホランにつながる各種工程に関する手順は、広範囲の文献に続いて見出された。最終的に、TSCは、出発原料としてブロモ酢酸エチル、フランおよびチグリン酸を用いて、17工程の合成順序にて全収率1.5%で調製された。
【0087】
10対称ジアルデヒドは、ウィッティッヒ化学を用いてブロモ酢酸エチルおよびフランから調製した。ブロモ酢酸エチルをトリフェニルホスフィンおよびヨウ化メチルで処理して、ホスホラン6を得た:
【化13】

【0088】
第一工程の収率は、まずまずの92%であった。この順序の続く工程の定量は、ホスホラン4およびホスホニウム塩5の性質により複雑であった。これらの化合物はともに、ロータリーエバポレータにより濃縮する間に激しく発泡する極めて粘性のシロップであった。両化合物は、塩化メチル溶液として利便性よく取り扱うことができ、ホスホラン6の総収率は、定量の観点からまずまずのようであった(75%を上回ると推定される)。
【0089】
フランを臭素で開環させて、フマルアルデヒドビス(ジメチルアセタール)8を得た。
【化14】

【0090】
酸性条件下でのビス(ジメチルアセタール)8の一脱保護によりアルデヒド9が得られ、次にこれをホスホラン6とカップリングさせて、45%の収率で10を得た。酸性条件下を用いて、ジメチルアセタール10を脱保護した。11をホスホラン6で処理することにより、ジエステル12が得られた。DIBAL−Hによりエステル基をアルコールに還元して、続くMNOを用いた酸化によりC10ジアルデヒド14が得られた。14のトランス立体化学がNMRにより決定された。特に、化合物のC対称により、13C NMRスペクトルで予想される5つの共鳴が得られ、H NMRスペクトルは、δ9.54(1H)、7.07(2H)および1.95(3H)でシグナルを示した。
【化15】

【0091】
工程H〜Kの収率範囲は、初期のパイロット研究からスケールアップ反応までの単離の改善を反映している。
【0092】
チグリン酸15を4工程順序でホスホラン4に変換した。15におけるフィッシャーエステル化条件によりメチルエステル16が得られた。NBSとの反応によりγ−ブロモチグリン酸メチル59%、α−ブロモチグリン酸メチル26%の混合物が得られ、物質の残余は未反応の出発原料であった。位置異性体の形成は、報告された文献に基づいて予想された。続く工程では、ホスホニウム塩のα/γ混合物を再結晶して、所望のγ−ホスホニウムブロミド19を得た。続く水酸化ナトリウムでの処理によりホスホラン20が得られた。
【化16】

【0093】
ホスホラン20およびC10ジアルデヒド14をベンゼン中で還流しながらカップリングさせた。ジメチルクロセチネート21を赤色粉末として単離した。メチルエステルの鹸化は予想よりも困難であることがわかった。室温および還流にてTHF/HO中でエステル21を2当量のNAOHで処理することでは物質は変化しないままであった。溶解度がかなりの問題であるようだったので、ピリジンを添加した。これによりほとんどの固形物が溶解したが、ピリジンおよび2.5N NAOHの混合物を還流させても生成物は生じなかった。標準的なTHF/2.5N NAOH鹸化条件もまたエステルに対してなんら影響がなかった。結局、還流にて一晩の40%NAOH/メタノールが首尾よいことがわかった。これにより橙色固体としてTSC1が得られた。
【化17】

【0094】
H NMRスペクトルを得るために、TSCを溶解させる試みを行った。しかしながら、TSCはほとんどの有機溶媒(クロロホルム、DMSO、ピリジン、メタノール、アセトン、および氷酢酸)中に事実上不溶性であった。このプロジェクトから生産されたTSCは、IR、UV、HPLCおよび元素分析で特性化した。IRは1544および1402CM−1に特徴的な吸光度(共役カルボキシレートと一致)を示した。UVおよびHPLCは、実際のTSCと一致した。元素分析では満足のいく値が得られた。
【0095】
反応順序の総収率は1.5%であった(フランに基づいて)。
【0096】
以下に合成を詳述する:
試薬および化学物質はすべて、ALDRICHまたはSIGMAから購入し、別記しない限り受け取った状態で使用した。溶媒は、ACS試薬またはHPLC純度としてFISHER SCIENTIFICKから購入し、さらに精製せずに使用した。無水溶媒は、SURE/SEAL(登録商標)ボトル中にALDRICHから購入し、さらに精製せずに直接使用した。脱イオン水は施設内のCULLIGAN水処理システムから得られた。
【0097】
融点は、MEL−TEMP IIにて得られ、補正しなかった。赤外スペクトルは、PERKIN−ELMER 1600 FTIR分光光度計で測定した。核磁気スペクトルは、試料の性質に応じて内部または外部重水素ロックにより5MMの多核プローブを用いてJEOL FX90Q分光光度計で測定した。プロトンおよびカーボンNMRのケミカルシフトは、それぞれTMSまたは重水素化溶媒に対して割り当てられた。リンNMRスペクトルは、外部標準として5%リン酸水の共軸挿入管を用いてプロトン−デカップリングモードで一般的に実施された。
【0098】
反応の進行を評価するか、または生成物の組成を推定するためのガスクロマトグラフィによるルーチンな分析は、水素炎イオン化検出器および HEWLETT PACKARD 3394A積分器を装備したVARIAN 3700ガスクロマトグラフィで実施した。20℃/分で50から250℃までプログラムを用いて、250℃で10分保持しながら、溶液1マイクロリットルを、ヘリウムキャリアガスを用いた15メートルのDB5カラム(内径0.53MMおよび膜厚1.5ミクロン)上へ注入した。インジェクターおよび検出器の温度は通常250℃に設定した。
【0099】
薄層クロマトグラフィは、検出の方法に応じて蛍光指示薬を用いて、または蛍光指示薬を用いずに、BAKER−FLEX 2.5×7.5CMのシリカゲルプレート上で実施した。発色させたプレート上の成分をUVで検出した。
【0100】
元素分析は、QUANTITATIVE TECHNOLOGIES, INC., WHITEHOUSE, N.J.で実施した。
【0101】
[(エトキシカルボニル)メチレン]トリフェニルホスホラン(4)(ACL−G29−1)
トリフェニルホスフィン(235.6G、0.90MOL)をETOAC(540ML)中に溶解した。固形分すべてが溶解するのにおよそ30分を要した。当該プロセスは吸熱性であった(外気温が20℃であった場合、溶液は13℃まで冷却)。ETOAC(400ML)中のブロモ酢酸エチルの溶液(100ML、0.90MOL)を1.5時間かけて滴下した。添加中に白色の沈殿物を形成した。外気温(18℃)で一晩(20時間)攪拌した。
【0102】
固形分を真空濾過により収集し、多量のETOですすいだ。45℃で一晩、真空乾燥させて、白色固体として3(356.3G、収率92.6%(0.83MOL))を得た。H NMRは文献値と一致した。
【0103】
固形分を塩化メチレン(3L)中に溶解させて、12Lのフラスコ中で45分間強攪拌しながら1M NAOH(3.6L)で処理した。有機層を分離して、水相をさらなる塩化メチレン(2×1L)で抽出した。有機層を乾燥させて(MGSO)、容積およそ1Lが残留するまで濃縮した。物質を少量取り出して、H NMRで検査し、文献値と一致することがわかった。
【0104】
[1−(エトキシカルボニル)エチリデン]トリフェニルホスホニウムヨージド(5)(ACL−G29−2)
反応フラスコを氷浴で冷却しながら、ACL−G29−1からの物質をヨードメタン(64.0ML、1.03MOL)で処理した。添加が完了した時点(1時間)で、反応混合物をTLC(シリカゲル、10%MEOH/CHCL)により検査し、相当量の出発原料が残留していることが示された。氷浴を取り外して、1.5時間後に反応混合物をTLCで検査して、主要バンド(出発原料が筋を引いている)のタイトニングに基づいて完了したと思われた。ロータリーエバポレータで反応混合物を濃縮し、ほとんどの溶媒が除去された場合に生成物は発泡し始め、蒸気ダクトまで上昇した。出現したホスホニウム塩5は極めて粘性のあるシロップであり、これは取り扱いを容易にするために塩化メチレン溶液として保持した。5の性質により、物質を定量化しなかった。
【0105】
[1−(エトキシカルボニル)エチリデン]トリフェニルホスホラン(6)(ACL−G29−2A)
5の一部をCHCL(350ML)中に溶解し、1M NAOH(500ML)とともに45分間強攪拌した。有機層を分離して、水相をCHCL(2×100ML)で抽出した。併せた有機層を乾燥させて(MGSO)、濃縮して、黄色固体として6(8.0G)を得た。H NMRスペクトルは、文献値と一致した。
【0106】
フマルアルデヒドビス(ジメチルアセタール)(8)(ACL−G29−3)
無水MEOH(650ML)中のフラン(88.0G、1.29MOL)の溶液をN下で−45℃にまで冷却した。−45℃以下を維持するような速度で、2.5時間かけて臭素(68.0ML、1.32MOL)の溶液を滴下した。赤色溶液を2.5時間かけて−10℃まで加温して、さらに2時間保持した。反応混合物は淡琥珀色であった。NACOの添加により相当量の気体放出および4℃の発熱が生じた。反応混合物をドライアイスで冷却して、残りのNACO(合計210G)を50分かけて添加した。−10℃で一晩(11時間)保持した後、冷却用浴を取り外して、反応混合物を室温まで加温して、20時間攪拌した。
【0107】
塩を真空濾過により取り出して、およそ150MLが除去されるまでVIGREUXカラムにより濾液を真空蒸留した。さらなる塩を析出させて、蒸留ポットを激しくぶつからせていた。濾過後、もう150MLを蒸留して、さらに塩が溶液から出現した。再び、激しいぶつかり合いが問題であった。蒸留器ポットを冷却して、濾過して、濾液をETO(400ML)で処理し、沈殿物を真空濾過により取り出した。少なくとも120Gの塩が収集された(塩の初期収穫物は定量化せずに廃棄した)。水アスピレータにより25℃にてロータリーエバポレータでETOの大部分を除去した。VIGREUXカラムを用いて蒸留を再開し、透明無色液体として8を収集した(175.2G)(収率76.9%)(沸点86〜92℃/9トル(文献値:85〜90℃/15トル))。H NMRスペクトルは、所望の生成物に関して一致した。GC分析:純度81.9%。
【0108】
フマルアルデヒドモノ(ジメチルアセタール)(9)(ACL−G29−4)
フマルアルデヒドビス(ジメチルアセタール)8(5.29G、0.03MMOL)をアセトン(120ML)中に溶解した。HO(1.80ML)およびアンバーリスト15(1.20G)を順次添加した。混合物を5分間強攪拌した後、濾過して、樹脂を除去した。この間に、溶液は無色から黄色になった。室温にてロータリーエバポレータで濾液を濃縮して、淡茶色残渣をKUGELROHRで蒸留して(37℃/200ミリトル)、黄色液体として9(2.80G、収率71.8%)として得た。最初に蒸留ポットがぶつかりあった際に物質の少量を損失した。H NMRスペクトルは、所望の生成物に関して一致した。GC分析は純度80%を示した。
【0109】
(ACL−G29−7)
フマルアルデヒドビス(ジメチルアセタール)8(72.1G、0.41MMOL)をアセトン(1600ML)中に溶解した。HO(25.0ML)およびアンバーリスト15(16.7G、アセトンで予洗)を添加した。混合物を5分間強攪拌した後、濾過して、酸性樹脂を除去した。反応混合物はわずかに黄色味を帯びており、従来の大量スケール調製よりもはるかに薄かった。GC分析は34.5%および出発原料46.1%を示した。もう5分間樹脂で処理した。GC分析は59.5%および出発原料21.7%を示した。もう10分間樹脂で処理した(合計時間20分)。GC分析は73.9%および出発原料2.0%を示した。室温にてロータリーエバポレータで濾液を濃縮して、茶色オイル54Gを得た。真空蒸留により黄緑色オイル(34.48G)が得られた。GC分析は、17.5%(9.00分)および6.9%(9.14分)の主要不純物を伴って、純度64.7%(8.22分)を示した。正味収量22.3G(0.17MOL)を回収した。GCによる前部カットの分析は極めて汚れた物質を示した。
【0110】
(ACL−G29−13)
アンバーリスト15(8.61G)をアセトン(100ML)中30分間攪拌し、濾過により収集した。アセタール8(35.0G。0.16MOL)をアセトニトリル(620ML)中に溶解し、機械的に攪拌しながら、酸性樹脂および脱イオンHO(10.0ML、0.55MOL)を添加した。反応の進行はTLC(10:3 ヘキサン:ETO)によりモニタリングし、15分後にはほとんどの出発原料が変換されていた。20分後、ほんのわずかなジメチルアセタールが検出された。樹脂を濾過により除去して、40℃以下にてロータリーエバポレータで濾液を濃縮した。粗製生成物をBIOTAGEカラム(7.5×9.0CM)上に載せて、ヘキサン中の15%ETOで溶出させて、19.8G(収率65%)を得た。
【0111】
6,6−ジメトキシ−2−メチルヘキサ−2,4−ジエノエート(10)
(ACL−G29−5)
イリド6(7.80G、22MOL)を塩化メチレン(65ML)中に溶解した。フマルアルデヒドモノ(ジメチルアセタール)9(2.80G、17MMOL)溶液を添加して、溶液を一晩攪拌した。ロータリーエバポレータで減圧にて溶媒を除去した。粗製物のH NMRにより、所望の生成物は存在することが示された。静置すると、結晶が成長した(推定ではトリフェニルホスフィンオキシド)。固体(真空濾過による乾燥後の14.1G)を石油エーテル中にスラリー状態とし、濾過した。濾液を濃縮して、析出した固体を伴う黄色オイルを得て、これを塩化メチレン(15ML)中に溶解して、BIOTAGE4×7.5CMカラム上でクロマトグラフィにかけ、塩化メチレンで溶出させて、黄色オイルとして10(18G、収率50%)を得た。当該黄色オイルのH NMRは、文献値と一致したが、わずかな塩化メチレンが残留しており(0.75当量)、そのため物質を45分間ロータリーエバポレータにかけた。質量は1.5G(収率40.6%)に減り、塩化メチレンの共鳴は消失した。GC分析は12.6分に主なピークが見られた(87.5%)(50℃、5分保持、20℃/分で最終温度250℃まで)。
【0112】
(ACL−G29−6)
塩化メチレン(650ML)中のイリド6(59.2G、0.16MOL)溶液を氷浴中で冷却し、9(25.7G、0.19MMOL)溶液を添加した。溶液を一晩攪拌して、氷浴を溶かした。TLC(ヘキサン:ETO 10:3)は、生成物に非常に接近して流れる少なくとも3つの他の化合物を示した。アルデヒドの検査は、GC分析により純度50%を示した。溶媒を除去して、固体/オイル混合物を得た。
【0113】
(ACL−G29−8)
イリド6(59.2G、0.16MOL)およびアセタール9(0.19MMOL)を塩化メチレン(1.1L)中でカップリングさせて、上述のようにワークアップして、黄緑色オイル(80G)を得た。粗製反応混合物の一部(もとの80Gのうち4.13G)をKUGELROHRにかけ、50℃/250ミリトルで蒸留した。無色オイル2.28Gが濃縮され、H NMRは、それが出発原料である一方で、生成物10は蒸留ポット中に残留していた(1.85G)ことを示した。50℃/250ミリトルでのKUGELROHR蒸留により、粗製生成物の塊から揮発性成分を除去した(正味35G)。
【0114】
エチル 2−メチル−6−オキソ−ヘキサ−2,4−ジエノエート(11)
(ACL−G29−9)
パイロット蒸留ポットからのアセタール10(ACL−G29−8、1.85G、9MMOL)をアセトン(33ML)中に溶解した。脱イオンHO(0.50ML)およびアンバーリスト15樹脂(0.35G、アセトンで予洗)を添加した。混合物を20分間攪拌した。濾過して、ロータリーエバポレータで濃縮して、黄緑色オイル(1.53G)を得た。4.5×7CMのBIOTAGE上でクロマトグラフィにかけ、ヘキサン中の15%ETOで溶出させた。この系では分離は不完全であったが、主な成分0.32Gを単離して、分析した。H NMRスペクトルは、文献データと一致し、IR(1711、1682CM−1)は所望の生成物と一致した。GC95.6%。さらに0.35Gを回収したが、それはより極性の低いおよび高い物質で汚染されていた。H NMRスペクトルは、かなり純粋な物質を示した。GC 90.6%。収率:42%。
【0115】
ジエチル 2,7−ジメチルオクタ−2,4,6−トリエン−1,8−ジオエート(12)
(ACL−G29−10)
G29−9からのアルデヒド11(0.65G、3.5MMOL)を塩化メチレン中に溶解して、磁気的に攪拌した。イリド(1.59G、4.4MMOL)を添加した。淡黄緑色溶液が数分以内により濃い色合いの黄色になった。10分後のTLCは、出発原料がほぼ完全に消費されたことを示した。20時間攪拌した後、シリカゲルで部分的に充填したピペットに通して反応混合物(褐色溶液)を濾過した。濾液を濃縮して、褐色オイルを得た。少量のCHCLを伴うヘキサン中の5%ETOに固体を溶解させた。4.5×7.5CMのBIOTAGE上でクロマトグラフィにかけ、ヘキサン中の15%ETOで溶出させた。主な生成物を白色結晶として単離した(0.45G、収率50%)。H NMRスペクトルは、文献データと一致した。
【0116】
(ACL−G29−14)
さらなる量の12を上述のように調製して、クロマトグラフィ精製後に21.8G(81.6%)を得た。H NMRスペクトルは、所望の生成物と一致した。
【0117】
2,7−ジメチルオクタ−2,4,6−トリエン−1,8−ジオール(13)
(ACL−G29−11)
ジエステル12(0.45G、1.8MMOL)を無水ヘキサン(15.0ML)中に溶解した。物質のいくらかは溶けたようであったが、混合物は完全に濁っていた。混合物を−78℃浴中で冷却すると、より多くの物質が溶液から出てくるようであった。ニートのDIBAL−H(2.50ML)を無水ヘキサン(総容積10.0ML)中に溶解し、ジエステルをドライアイス浴で冷却しながら、その一部(およそ2ML)を反応混合物へ不注意に吸い上げて移した。合計5.0ML(6.7MMOL)が添加されるまで、さらなる量のDIBAL−H溶液を添加した。CO浴を加温した。2時間50分間攪拌した後、ジエステルが完全に消費したことがTLCで示された。浴温度を−20℃に調節して、20分かけて0℃に加温した。混合物をHO/シリカゲル(2ML/7G)で30分間処理した。KCOおよびMGSOを添加した。濾過して固形分を除去して、塩化メチレンで完全にすすいだ。濃縮して、白色固体(0.14G、収率50%)を得た。TLC R=0.21(5% MEOH/CHCL)は非常に極性が高い。塩化メチレンですすぐことは、生成物のすべてを回収するのに十分では有り得なかった。H NMRスペクトルは文献値と一致した。
【0118】
(ACL−G29−15)
ジエステル(5.4G、21MMOL)を無水ヘキサン(175ML、乏しい溶解度)中に溶解し、−78℃に冷却して、35分間かけてDIBAL−H(無水ヘキサン50ML中14.5ML)の溶液で処理した。添加中に激しい気体の発生が観察された。スラリーの色は、初期に白色から濃黄色となり、さらなるDIBAL−Hを添加するにつれこれが薄くなっていった。2時間かけて−40℃に加温した後、−28℃浴へ一晩移した。反応混合物をHO/シリカゲル(4ML/14.4G)の均質混合物で30分間処理した。MGSO(7.5G)およびKCO(5.1G)を添加し、反応混合物を冷却用浴から取り出した。20分攪拌した後、ガラス漏斗に通した。固形分を塩化メチレンで洗浄した。これにより相当量の沈殿物が形成した。ロータリーエバポレータに設置しながら加温して、沈殿固体を溶解させた。ガラス漏斗上に残留した固体をETOAC(4×75ML)で洗浄して、濾液を濃縮した。
【0119】
CHCLですすぐことにより、淡黄色固体(1.7G)を得た。H NMRスペクトルは文献値と一致した。ETOACですすぐことにより、オフホワイト色固体(全回収量2.7G、収率75%)を得た。H NMRスペクトルは文献値と一致した。
【0120】
(ACL−G29−17)
ジエステル(16.4G、6.5MMOL)をN下にて無水ヘキサン(500ML)中で攪拌し、−78℃に冷却した。て、1時間かけてヘキサン(150ML)中のDIBAL−H(45ML、253MMOL)の溶液を添加した。−30℃に加温して、一晩(総時間17.5時間)攪拌した。HO/シリカゲル(12.3G/43.7G)の均質混合物を添加して、45分間かけて混合物を手動でぐるぐる回した。KCO(15.5G)およびMGSO(23.5G)を添加した。さらに30分間ぐるぐる回した。ガラス漏斗で濾過して、塩化メチレンですすぎ(沈殿物が形成され、おそらく蒸発冷却により引き起こされる)、濾液を濃縮した。固形分を数回ETOAC(およそ100MLずつ、合計容積2L)ですすいで、もとの濾液とともにプールした。濃縮して、黄色固体(8.9G、粗製収率81%)を得た。H NMRスペクトルは所望の生成物と一致した。
【0121】
2,7−ジメチルオクタ−2,4,6−トリエン−1,8−ジアール(14)
(ACL−G29−12)
MNO(7.80G、90MMOL)のスラリーをN下にて氷浴中で冷却した。ジオール13(0.14G、0.8MMOL)をアセトン溶液(5.0ML)としてピペットで添加した。さらに2.0MLのアセトンを用いて、フラスコをすすぎ、移送を完了させた。反応混合物を攪拌しながら、氷浴を一晩溶かした。HYFLOによる濾過により固形分を除去し、濃縮して、黄色固体を得た。最小量のCHCLを伴う10%ETO/ヘキサン中に当該物質を溶解して、シリカゲルのカラム(30×190MM)にかけて、10%ETO/ヘキサンで溶出させた。生成物は、溶出する際に黄色いバンドとして追跡することができ、14を淡黄色固体(37MG、収率26%)として単離した。H NMRスペクトルは文献値と一致した。
【0122】
(ACL−G29−16)
アセトン(500ML)中のジオール13(2.70G、16MMOL)の溶液をN下にて氷浴中で冷却した。MNO(60.0G、0.69MMOL)を20分間かけて少しずつ添加した。反応混合物を一晩攪拌しながら、氷浴を溶かした。反応混合物をHYFLOにより濾過して、濾液を濃縮して、黄色固体(1.6G、粗製収率61%)を得た。H NMRスペクトルは文献値と一致した。粗製黄色固体を塩化メチレン(少量のヘキサン中の10%ETOとともに添加)中に溶解して、4×7.5CMのBIOTAGEシリカゲルカラムに載せた。初期はヘキサン中の10%エーテル(1L)で溶出し、続いて15%ETO(1L)および20%ETO(0.5L)へ極性を上げた。黄色固体(1.0G、収率38%)を回収した。H NMRスペクトルは所望の生成物と一致した。
【0123】
(ACL−G29−21)
アセトン(500ML)中のジオール13(9.31G、60MMOL)の溶液をN下にて氷浴中で冷却した。MNO(100G、1.15MOL)を添加して、氷浴を一晩溶かしながら、混合物を攪拌した。24時間後IRで検査して、相当量の生成物が形成したが、依然としてほんの微量のアルコールが存在していた。さらに酸化剤50Gを添加し、もう一晩攪拌し続けた。反応混合物の一部を濾過して、H NMRで検査し、出発原料の消費に基づいて、反応が完了したようであった。反応混合物の残部をHYFLOのパッドに通して濾過して、アセトンで完全にすすいだ。濃縮して、濃黄色固体を得た。ベンゼン40MLで一度共沸させた後、40℃で5時間、続いて室温で一晩真空乾燥させた。5.28G(収率58%)を回収した。H NMRおよびIRスペクトルは所望の生成物と一致した。
【0124】
チグリン酸メチル(16)
オーバーヘッド攪拌機、冷却器および温度計を取り付けた2Lの3つ口フラスコ中に、メタノール900ML中のチグリン酸15(89.8G、0.9MOL)および5MLの濃硫酸(0.09MOL)の溶液を還流下にて20時間加熱した。溶液を25℃にまで冷却し、過剰のメタノールをロータリーエバポレータで30℃および27IN HGの真空で取り除いた。回収したメタノール留出液のGC分析により、オーバーヘッド中に生成物が示された。得られた2相の淡褐色濃縮液をエチルエーテル500ML中に溶解して、水250ML、10%炭酸水素ナトリウム水250MLおよび飽和食塩水250MLで順次洗浄した。エーテル溶液を無水炭酸カリウムで乾燥させて、濾過して、ロータリーエバポレータで25℃および27IN HGの真空で取り除いて、ほぼ無色オイルとして粗製チグリン酸メチル(43.6G)(収率42%)を得た。GLC分析により、出発チグリン酸に関する3.8分と比較して2.7分の保持時間を有する1つの主要な揮発性生成物が示された。CDCL中のプロトンNMRにより、ほんのいくらかのエチルエーテルの混入を伴った予想シグナルが示された:1.79PPM(D,3H)、1.83(S,3H)、3.73(S,3H)、6.86(Q,6.6HZ)。IR(KBR上でニート):1718CM−1にエステルのカルボニル。このオイルはそのまま次工程で使用した。
【0125】
γ−ブロモチグリン酸メチル(17)
オーバーヘッド攪拌機、冷却器および温度計を取り付けた1Lの4つ口フラスコ中に、四塩化炭素500ML中の粗製チグリン酸メチル(43.6G、0.38MOL)、N−ブロモサクシンイミド(68G、0.38MOL)および70%過酸化ベンゾイル(5.34G、0.015MOL)の攪拌混合物を還流下にて2時間加熱した。20℃に冷却した後、不溶性のサクシンイミド(38.1G、回収率100%)を吸引濾別した。濾液を水250MLで三回洗浄して、MGSOで乾燥させて、続いて25℃および26IN HGの真空で取り除いて、黄色オイル(78.8G)を得た。CDCL中のこのオイルのプロトンNMRにより複雑なスペクトルが得られた。所望のγ−ブロモエステルに関するメチレンプロトンは、4.04PPMを中心とするダブレット(8.6HZ)に割り当てられた一方で、α−ブロモ異性体に関する同じプロトンは4.24PPMにあるシングレットとされた。これらのシグナルおよび1.6〜2.0PPMのメチルマルチプレットのプロトン積分値から以下の組成(モル%)が提唱された:
γ−ブロモエステル: 59%
α−ブロモエステル: 26%
出発原料 : 15%
この粗製オイルはいかなるさらなる精製をせずに次工程で使用した。
【0126】
この反応はまた、たったの0.87当量のN−ブロモサクシンイミドを用いて、その他は同一条件下で0.05モルスケールでも実施した。この粗製オイルの組成は、γ−ブロモエステル52%、α−ブロモエステル24%および未反応のチグリン酸メチル23%としてそのプロトンNMRに基づいて推定された。このオイルのGLC分析は、ややより複雑であり、他の少量成分を示した。
【0127】
γ−ブロモチグリン酸メチルのトリフェニルホスホニウム塩(19)
温度計、100MLの定圧添加漏斗および静止窒素系に接続した冷却器を取り付けた2Lの4つ口フラスコ中で、ベンゼン350ML中の粗製γ−ブロモチグリン酸メチル(78.8G)の攪拌溶液をベンゼン350ML中のトリフェニルホスフィン(95G、0.36MOL)の溶液で1.75時間かけて処理した。混合物の温度は、24から27℃にまでわずかに発熱した(その他は外気条件)。添加後、反応を一晩強攪拌して、フラスコの壁に付着した黄色がかったガム状物質を含有する白色固体のスラリーを得た。黄色がかったガム状物質を乱すことなく白色個体をガラス漏斗へと吸引濾過した。フラスコをベンゼン100MLで二度洗浄して、フィルターへ注いだ。フィルターケーキをベンゼン50ML、続いてヘキサン50MLで二度洗浄した。湿ったケーキを外気温で真空オーブン中で5.5時間乾燥させた。乾燥した白色粉末[93G、MP=125℃DEC]を加熱しながらアセトニトリル150ML中に溶解して、透明な黄色溶液を得た。酢酸エチル(300ML)をこの熱溶液に添加して、酢酸エチル約100MLを添加した後、生成物が結晶化し始めた。フラスコを冷蔵庫に一晩保管した。生成物を吸引濾過して、最小量の1:2のアセトニトリルおよび酢酸エチルで洗浄した:45.0G、MP=187〜190℃(DEC)。文献MP=183℃(DEC)。
【0128】
反応フラスコ中のゴム上の固体を、アセトニトリル10MLおよび酢酸エチル20MLから再結晶させた。同様に、ベンゼン母液からさらなる固体を一晩沈殿させた。これらの固体を濾過して、同じ様式で再結晶させた。両方の試料を2時間冷蔵して、吸引濾過して、さらなる生成物(13.3G)を得た。
【0129】
ベンゼン濾液をロータリーエバポレータで取り除き、黄色オイルをアセトニトリル10ML中に溶解し、酢酸エチル20MLで沈殿させた。スラリーを冷蔵庫に一晩保管して、白色固体としてさらなる生成物(4.6G)を得た。M.P. 185〜187℃(DEC)。白色固体としての所望のホスホニウム塩の総収率は、62.9G、すなわち粗製チグリン酸メチルに基づいて収率36.2%であった。プロトンNMR(CDCL、TMS) PPM 1.55(D,4HZ,3H)、3.57(S,3H)、4.9(DD,15.8&7.9HZ,2H)、6.55(ブロード Q,6.6〜7.9HZ,1H)、7.4〜7.9(M,15H)。プロトンデカップリングによるリンNMR(CDCL、5%HPO水共軸外標準) 22.08PPM。部分的カーボンNMR(CDCL):CH(166.6PPM,D,JCP=3HZ)、オレフィンH(117.5PPM,D,JCP=86.1HZ)、CO(52.0PPM)、PHP−(25.4PPM,D,JCP=50.6HZ)およびCH(13.4P
PM,D,JCP=2.4HZ)。部分的IR(KBRペレット):1711CM−1にあるエステルカルボニル。
【0130】
(3−カルボメトキシ−2−ブテン−1−イリデン)トリフェニルホスホラン(20)
オーバーヘッド攪拌機、添加漏斗および温度計を取り付けた5Lの5つ口フラスコ中で、水250ML中の水酸化ナトリウム(5.12G、0.128MOL)の溶液を、水2,500ML中のγ−ブロモチグリン酸メチルのトリフェニルホスホニウム塩(58.3G、0.128MOL)の強攪拌溶液を25℃にて41分間かけて滴下した。黄色スラリーを室温で10分間攪拌し、続いて吸引濾過した。フィルターケーキを水1,800MLで洗浄し、続いて窒素ブランケットを取り付けたフィルター上で完全に乾燥させた。次に、黄色固体を室温および27”HG真空にてPにより真空デシケータ中で一晩乾燥させた。35.3G(収率73.7%)。MP=145〜150℃。文献MP=145〜165℃。プロトンデカップリングによるCDCL中のリンNMRは、17.1PPMおよび21.1PPMに93:7の比で2つのピークを示した。プロトンNMR(CDCL、TMS) PPM 1.89(S,3H)、3.58(S,3H)、7.3〜7.8(M,17H)。少量であるが検出可能な1.74PPMにあるシングレットがこのスペクトルで明らかであり、これは不純物に起因していた。この固体をさらに精製せずに次工程で使用した。
【0131】
ジメチルクロセチネート(21)
(ACL−G29−18)
ジアルデヒド14(0.48G、2.9MMOL)を100MLの丸底フラスコへ添加した。ベンゼン(20ML)を添加して、固体を磁気的攪拌で溶解させた。イリドを添加し、ベンゼンをさらに10ML使用して、当該化合物をフラスコへと洗浄した。強還流に6時間加温した。反応混合物を一晩冷却させた。文献の報告と対比して、非常に少量の固体が形成された。反応混合物を濃縮して、残渣をMEOH(30ML)中に溶解し、30分間沸騰させた。外気温にまで冷却し、固体を真空濾過により収集した。CDCL0.5MLに20MGを溶解させることにより、NMR試料を調製し、多少驚くべきことに、これは完全に溶解するのにヒートガンで加温する必要があった。H NMRスペクトルを記録して、所望の生成物と一致することがわかった。残りの物質を熱ベンゼン中に溶解して、濾過して、濾液を濃縮し、MEOH中に溶解して、氷浴中で冷却し、赤色固体を収集した(334MG、収率33%)。この物質は最初に単離した物質よりも可溶性でないようだった。
【0132】
(ACL−G29−18A)
ジアルデヒド14(5.78G、35MMOL)をN下にてベンゼン(300ML)に溶解した。イリド20(35.3G、94MMOL)を添加して、混合物を加温して6時間還流させ、濃赤色溶液を形成した。反応混合物を一晩冷却させた後、真空濾過により赤色固体を収集し、メタノールですすいだ。500MLのRBFへ移して、メタノールおよそ65MLを用いて30分間還流させた。冷却して、赤色固体を収集した。冷メタノールですすいで、真空乾燥させて、赤色固体として21(3.00G)を得た。H NMRおよびIRスペクトルは、所望の生成物と一致した。
【0133】
もともとの濾液(反応混合物からの)をロータリーエバポレータで濃縮し、黒っぽい残渣をメタノール100ML中に溶解して、40分間還流させた。氷浴中で冷却させて、真空濾過により赤色固体を収集した。冷メタノールですすいで、真空乾燥させて、赤色固体として21(1.31G)を得た。H NMRスペクトルは、所望の生成物と一致した。濾液をプールして、濃縮して、メタノール75ML中に溶解して、室温で一晩静置した。赤色固体を真空濾過により回収した:0.38G。H NMRスペクトルは、所望の生成物と一致した。より多くの固体が濾液中で形成された。真空濾過により単離して、赤色固体(0.127G)を得た。IRは上記と一致した。総回収率:4.89G、39%。
【0134】
THF/NAOHを用いた鹸化の試み
(ACL−G29−19)
THF(2ML)中のジエステル21(100MG、0.28MMOL)および1N NAOH(0.56ML、2当量)の攪拌懸濁液を添加した。室温で一晩攪拌した。TLCは出発原料のみを示した。加温して還流させたが、数時間後変化はなかった。より多くの固体を溶解させようとTHF(6ML)を添加したが、重要ではなかったようだった。一晩還流し続けた。より多くのTHFを添加し(約6ML、TLCは出発原料のみを示した)、もう一晩還流させた。濃縮して、出発原料のみをH NMRにより検査した(メチルおよびメチルエステルの積分値に基づく)。加熱用マントルで加温しながらピリジン(10ML)中に溶解させた。2.5N NAOH(1.0ML)を添加した。数分後に濃橙色溶液が深紅色になった。加熱用マントルを取り外し、固体が形成し始め、マントルを30分間再度適用し、続いて室温で一晩攪拌した。高圧下で濃縮した。残渣はクロロホルム、DMSO、ピリジンに不溶性であり、HOに難溶性であった。IR(ヌジョールムル)は、出発原料の特徴であるC=O吸収を示した。
【0135】
2.5N NAOHおよびTHFを用いた鹸化
(ACL−G29−20)
ジエステル21(37MG、0.10MMOL)をフラスコに秤量し、ジエチルエーテル(4ML)中で攪拌した。溶媒は橙色を帯びたが、固体は依然として存在していた。2.5N NAOH 1MLを添加して、加温して還流させた。30分後、エーテルのほとんどは蒸発した。これにTHF(3ML)を入れ替え、数時間還流を続けた。真空濾過で固体を収集し、脱イオン水ですすいだ後、真空オーブン中で乾燥させた。IRは出発原料のみを示した。
【0136】
40%NAOHを用いた鹸化(1)
(ACL−G29−22)
ジエステル21(32MG、8.9MMOL)をフラスコ中に秤量して、メタノール(1.5ML)中で攪拌した。溶媒は橙色/赤色を帯びたが、固体は依然として存在していた。40%NAOH 1.5MLを添加して、加温して17時間還流させた。室温に冷却した後、真空濾過で橙色固体を収集し、脱イオン水ですすいだ。40℃にて真空乾燥させて、橙色粉末として1を得た(21MG、59%)。IR(KBRペレット) 3412、1544、1402CM−1。化合物はおそらく吸湿性である。高磁場のカルボニルシフトは共役と一致した。
【0137】
(ACL−G29−22A)
ジエステル1 35MGを用いて繰り返し、15時間還流させた。反応混合物を氷浴中で冷却し、真空濾過により収集し、冷脱イオン水ですすいだ。40℃にて真空乾燥させた。橙色固体として1を回収した(25.5MG、65%)。
【0138】
(ACL−G29−23)
ジエステル21(0.48G、1.3MMOL)をメタノール(15.0ML)および40%水酸化ナトリウム(15.0ML)中に溶解し、加温して還流させた。不均一赤色固体が約2時間後に橙色になった。6時間後に加熱をやめて、混合物を一晩冷却させた。橙色固体を真空濾過により収集し、冷脱イオン水で洗浄した。真空乾燥させて、脆い橙色固体を得た(0.36G、収率68%)。
【0139】
(ACL−G29−24)
ジエステル21(1.10G、3.1MMOL)を100MLの回収フラスコに入れて、加熱してメタノール(20ML)および40%NAOH(20ML)中で12時間還流させた。氷浴中で冷却させた後、橙色固体を真空濾過により収集し、冷脱イオン水ですすいだ。真空乾燥させて、1.4G(100%)を得た。C2022NA−0.4HOに関する分析計算値:C,63.29、H,6.05、NA,12.11、HO,1.90。実測値:C,63.41、H,6.26、NA,11.75、HO,1.
93。
【0140】
(ACL−G29−25)
ジエステル21(3.00G、8.4MMOL)をメタノール(80ML)および40%NAOH(60ML)中で12時間還流させた。上述のように生成物を橙色固体として単離した(2.7G、80%)。C2022NA−0.4HOに関する分析計算値:C,63.29、H,6.05、NA,12.11、HO,1.90。実測値:C,63.20、H,6.00、NA,11.93、HO,1.81。試料ACL−G29−23、−24および−25をめのう乳鉢ですり砕いて、ACL−G29−Aとして併せた。
【0141】
参照文献
1.E.BUCHTA AND F. ANDREE NATURWISS. 1959, 46, 74.
2.F.J.H.M. JANSEN, M.KWESTRO, D. SCHMITT, J. LUGTENBURG RECL. TRAV. CHIM. PA
YS-BAS 1994, 113, 552.
3.R. GREE, H. TOURBAH, R. CARRIE TETRAHEDRON LETTERS 1986, 27, 4983.
4.G.M. COPPOLA SYN. COMMUN. 1984, 1021.
5.D.S. LETHAM AND H. YOUNG PHYTOCHEMISTRY 1971, 10, 2077.
6.E.BUCHTA AND F. ANDREE CHEM. BER. 1960, 93, 1349.
【実施例2】
【0142】
トランスカリウムノルビキシネート
【化18】

【0143】
トランスカリウムノルビキネートは、共役炭素−炭素二重結合を含有する対称C20ジアルデヒドを[1−(エトキシカルボニル)メチリデン]トリフェニルホスホランとカップリングさせることにより合成される。この化合物の調製は、フラン出発原料を適切な環状構造に置き換えることを除いて、トランスナトリウムクロセチネートに関してすでに列挙した調製と類似する。次に、この生成物をKOH/メタノール溶液を用いて鹸化する。
【実施例3】
【0144】
より長鎖のBTCSの合成
【化19】

【0145】
上述の化合物は、共役炭素−炭素二重結合を含有する対称C20ジアルデヒドを過剰の[3−カルボメトキシ−2−ブテン−1−イリデン]トリフェニルホスホランに添加することにより合成される。この化合物の調製は、フラン出発原料を適切な環状構造に置き換えることを除いて、トランスナトリウムクロセチネートに関してすでに列挙した調製と類似する。次に、トランス40炭素生成物は、クロマトグラフィーのような方法を用いて単離される。次に、この生成物をNAOH/メタノール溶液を用いて鹸化する。
【実施例4】
【0146】
吸入によるTSC
TSCを吸入経路によりラットに与えた。10匹のラットには肺へ直接TSCを与えた。これは、気管にチューブを挿入し、空気約3〜6MLとともにTSC溶液(希炭酸ナトリウム溶液中に溶解したTSC)0.2MLを噴霧することにより行われた。研究した投与量すべて(0.5〜2MG/KG)に関して、薬剤の約20%が、薬剤と施した1分後以内に血流に存在していた。8〜1.6MG/KGの投与量に関して、薬剤は、少なくとも2時間血流に存在していた。
【実施例5】
【0147】
改良合成法
2−ブテニル−1,4−ビスホスホン酸テトラエチルの調製
【化20】

【0148】
250MLの3つ口フラスコにテフロン(登録商標)被覆熱電対、60ML定圧添加漏斗および簡易蒸留ヘッドを装備した。窒素雰囲気下にて、140℃にてJKEM制御計に接続させた加熱用マントルでニートのトリエチルホスフィン(59ML、0.344MOL)を加熱した。トランス−1,4−ジクロロ−2−ブテン(26.9G、0.215MOL)およびトリエチルホスフィン(35ML、0.204MOL)の溶液を134〜144℃で93分間かけて滴下した。次に、透明溶液を窒素下にて140℃で維持した。37分後、酢酸エチル1ML中の分取量(1滴)のガスクロマトグラフィにより所望の生成物、中間生成物および2つの出発原料が示された。
【0149】
140℃で15.5時間後、分取量(ETOAC 0.5ML中1滴)のガスクロマトグラフィにより、出発ジクロリドおよび中間体生成物は検出されずに所望の生成物が示された。16時間後、淡黄色溶液を窒素下にて室温に冷却した。淡黄色オイルを2バルブ受け器およびドライアイス−アセトン浴中で冷却したさらなるバルブを備えたKUGELROHRで25〜100℃および0.1〜0.2トルで蒸留して、無色オイル(14.8G)を前部カットとして得た。ガスクロマトグラフィによりKUGELROHRポット中に生成物のみが示された。この淡琥珀色オイルをKUGELROHRで140℃および0.1〜0.15トルで蒸留して、無色オイルとして留出物を得た:66.45G(収率94.1%)。ガスクロマトグラフィによりたった1つの揮発性成分が示された。GC−MS分析により、この成分が所望の生成物であることが示され、328M/Zに小分子イオンおよび191M/Zにベースイオン(POETの損失)が得られた。プロトンNMRは所望の生成物と一致した。カーボンNMRもまた所望のビス(ホスホン酸ジエステル)と一致し、ロングレンジ(W−カップリング)およびアリル型カーボンへの正常炭素−リンカップリングのみを示した。
【0150】
ポット残渣−淡黄色オイル−0.8G。
【0151】
1,1,8,8−テトラメトキシ−2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンの調製
【化21】

【0152】
窒素雰囲気下にて、トルエン10MLおよびシクロヘキサン10ML中のトランス−2−ブテニル−1,4−ビスホスホン酸テトラエチル(3.3G、10.0MMOL)、ピルビン酸アルデヒドジメチルアセタール(2.6ML、21.5MMOL)の磁気的攪拌混合物を無水炭酸カリウム(10.2G、73.8MMOL)および粉末水酸化ナトリウム(1.25G、31.2MMOL)で順次処理した。溶液は瞬時に黄色になった。生じたスラリーを窒素下にて外気温で攪拌した。反応はゆっくりと発熱し、約25分後に最大38℃に到達した。また、ガム状沈殿物が形成され、これは磁気的攪拌にマイナスの影響を与えた。2.5時間後、黄橙色溶液の分取量(トルエン0.5ML中に1滴)のガスクロマトグラフィにより、2つの出発原料および3つの他の新規成分が示された。
【0153】
外気温で16.75時間後、橙色溶液の分取量(トルエン0.5ML中に1滴)のガスクロマトグラフィにより、少量の出発ビス(ホスホン酸ジエステル)のみが示された。ガム状物を伴う生じた橙色混合物(攪拌することができない)を氷浴中で冷却し、10%NACL水100MLでクエンチした。スパチュラを連動させることにより固形分をこの水溶液中に溶解した。次に、混合物を1:1のエーテル:ヘキサン200MLで抽出した。有機層を10%NACL水(20ML)、続いて飽和食塩水(100ML)で洗浄した。無色有機層をNASOで乾燥させた。ガスクロマトグラフィにより3つの主要な成分が示され、出発ビス(ホスホン酸ジエステル)は検出されなかった。薄相クロマトグラフィにより2つの主要なスポットおよび1つの少量のスポットが示された。NASOを吸引濾別して、エーテルで洗浄した。濾液を35℃にてロータリーエバポレータで濃縮して、無色オイル(1.8G)を得た。GC−MS分析により、3つの主要な揮発成分が異性体生成物であることが示され、256M/Zに分子イオンおよび75M/Zにベースイオン[(MEO)CH]が得られた。プロトンNMRもまた他の未確認不純物を伴った異性体生成物の混合物と一致した。粗製生成物の収率=70.3%。
【0154】
1,1,8,8−テトラメトキシ−2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンの調製
【化22】

【0155】
窒素下にて、トルエン200MLおよびシクロヘキサン200ML中のトランス−2−ブテニル−1,4−ビスホスホン酸テトラエチル(63.2G、0.19MOL)、ピルビン酸アルデヒドジメチルアセタール(50ML、0.41MOL)の機械的攪拌混合物を無水炭酸カリウム(196G、1.42MOL)および粉末水酸化ナトリウム(24.0G、0.60MOL)で順次処理した。溶液は瞬時に黄色になった。生じたスラリーを窒素下にて外気温で攪拌した。反応は約11分後に61℃に発熱し、攪拌混合物を氷浴中で冷却して、温度を35℃に下げた。29〜35℃で4.7時間後、分取量(トルエン0.5ML中に3滴)のガスクロマトグラフィにより、出発ビス(ホスホネート)が存在しないことが示された。5時間後、混合物を氷浴中で13℃に冷却して、10%塩化ナトリウム水400MLを添加し、その際温度は30℃に上昇した。さらに10%塩化ナトリウム水(1,500ML)を添加し、混合物を1:1のエーテル:ヘキサン3,000MLで抽出した。薄黄色有機層を10%塩化ナトリウム水(2×1,000ML)、続いて飽和食塩水(1,000ML)で洗浄した。薄黄色有機層をNASOで乾燥させ、濾過して、30℃にてロータリーエバポレータで濃縮して、淡黄色オイル(43.4G)を得た。ガスクロマトグラフィにより、出発ビス(ホスホネート)は検出されずに混合物の89%を含む3つの主要な成分が示された。TLC分析により1つの主要な成分および3つの少量の成分が示された。
【0156】
プロトンNMRにより異性体生成物とトルエンが示された。当該オイルをKUGELROHRで50℃および0.2トルにて30分間さらに蒸発させた(31.9G)。プロトンNMRにより、トルエンは検出されずに異性体ビス(アセタール)生成物が示された。収率=65.5%。
【0157】
より高いペイロードでの2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンジアールの調製
【化23】

【0158】
窒素雰囲気下にて、テトラヒドロフラン(160ML)、水(80ML)および氷酢酸(320ML)中の粗製1,1,8,8−テトラメトキシ−2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエン異性体(31.9G、124.4MMOL)の磁気的攪拌溶液を、テフロン(登録商標)被覆熱電対によるJKEM制御器で制御した加熱用マントルで45℃にて加熱した。30分後、混合物は最大54℃に発熱し、続いて45℃の設定温度に戻った。3時間後の分取量(THF0.5ML中に3滴)のガスクロマトグラフィにより、いくらか残留している出発原料、2つの主要な生成物および1つの少量の生成物が示された。黄色反応溶液を氷浴中で21℃にまで冷却した後、4:1のエーテル:ジクロロメタン(2,000ML)で希釈した。次に、この溶液を20%NACL水(2,000ML×2)、4:1の20%NACL水:1M NAOH水(2,000ML×3)および20%NACL水(1,000ML×2)で順次洗浄した。黄色有機層をMGSOで乾燥させ、濾過して、ロータリーエバポレータで濃縮して、黄色固体(18.9G)を得た。ガスクロマトグラフィにより、1つの主要な成分および1つの少量の成分、出発ビス(アセタール)が示された。TLC分析により1つの主要なスポットおよび数個の少量のより極性の高い不純物が示された。この固体を還流メタノール250ML中に溶解し、室温にまで冷却した後、1時間氷浴中で冷却した。スラリーを吸引濾過して、黄色綿様針状物質(14.15G)が得られた。ガスクロマトグラフィにより、異性体ジアルデヒドの95:5の混合物が示された。この固体を還流メタノール200MLから再び再結晶させ、室温にまで冷却した後、一晩冷蔵庫で冷却した。
【0159】
最初の2回の洗浄は、中性PHにより明白である通り酢酸を除去したようであった。三度目の洗浄は赤くなり、依然として塩基性であり、生成物の除去をほのめかしていた。
【0160】
スラリーを吸引濾過して、冷蔵庫冷却したメタノールで洗浄して、黄色針状物質(11.2G)を得た。ガスクロマトグラフィにより異性体ジアルデヒドの97:3の混合物が示された。TLC分析により1つのスポットが示された。針状物質を真空オーブン中で45℃にて160分間、一定の重量(10.75G)になるまで乾燥させた。未補正MP=154〜156℃。文献MP=161〜162℃。プロトンNMRおよびカーボンNMRは所望の対称アルデヒドと一致した。
【0161】
再結晶からの2つのメタノール濾液を併せた。薄相クロマトグラムにより生成物と他の不純物が示された。濾液を濃縮して、各種収穫物を以下に示すように収集した。
【表1】

【0162】
収穫物2&3:これらの併せた収穫物を還流酢酸エチル20ML中に溶解させ、室温にまで冷却した後、冷蔵庫で1時間置いた。スラリーを吸引濾過して、冷蔵庫冷却した酢酸エチルで洗浄して、黄色針状物質(1.95G)を得た。ガスクロマトグラフィにより異性体の86:14の混合物が示された。この固体を再び酢酸エチル(10ML)中で再結晶して、黄色針状物質(1.55G)を得た。ガスクロマトグラフィにより92:8の比の異性体が示された。酢酸エチル(10ML)からの第3の再結晶により黄色針状物質(1.25G)を得た。MP=152〜154℃。ガスクロマトグラフィにより96:4の異性体比が示された。プロトンNMRにより所望のジアルデヒドと確認された。GC−MS分析は所望のジアルデヒドと一致し、164M/Zに顕著なMイオンおよび91M/Zにベースイオンを示した。
【0163】
酢酸エチル濾液をメタノール濾液からの黄色固体(収穫物4)と併せて、ロータリーエバポレータで濃縮して、黄色固体(6.0G)を得た。ガスクロマトグラフィにより、他の不純物とともに2つの異性体の53:34の混合物が示された。
【0164】
DICTIONARY OF ORGANIC COMPOUNDS. VERSON 10:2, SEPT, 2002.
固体をジクロロメタン100ML中に溶解して、DAVISILグレード643シリカゲル(33.5G)を添加した。混合物を35℃にてロータリーエバポレータで取り除いた。次に、吸着した物質を伴ったシリカゲルをBIOTAGE系用の試料導入モジュールに添加し、そこにはすでにガラスウールのプラグおよび砂の層が含まれていた。次に、シリカゲルにフィルター紙を乗せた。BIOTAGE75Sカラムを遠心圧35PSIおよび溶媒圧20PSIで予め溶媒混合物で湿らせた。カラムを85:15のヘキサン:酢酸エチル(6,000ML)で溶出させた。前湿潤段階を含む何も含まれない容積1,000MLを採取した。250MLの分画を収集し、薄相クロマトグラム分析に基づいて併せた。これらの分画を以下に示すようにロータリーエバポレータで35℃にて濃縮した。
【表2】

【0165】
分画5〜10:黄色固体をヘキサン中でスラリーとし、吸引濾過して、明黄色固体(2.5G)を得た。ガスクロマトグラフィにより67:33の比でジアルデヒド異性体の混合物が示された。
【0166】
総収率96〜97%。E,E,E−ジアルデヒド=10.75+1.25=12.0G(収率58.8%)。
【0167】
パラトルエンスルフィン酸による2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンジアールの異性化
【化24】

【0168】
窒素雰囲気下にて、2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンジアールの2:1異性体混合物およびそのオフ異性体(2.5G、15.2MMOL)、4−トルエンスルフィン酸(0.35G、2.2MMOL)および無水1,4−ジオキサン50MLを還流下で15分間加熱した。分取量(7滴)を4:1のエーテル:ジクロロメタン0.5MLで希釈して、KCOで乾燥させた。ガスクロマトグラフィにより、所望の異性体およびオフ異性体の91:9の混合物が示された。
【0169】
室温で一晩冷却した後、生じたスラリーを4:1のエーテル:ジクロロメタン100ML中に溶解し、水(50ML×3)、0.2M NAOH水(50ML)、水(50ML×2)および飽和食塩水(50ML×3)で順次洗浄した。層を分離した後、残留ラグ層をジクロロメタンに溶解させた。併せた有機層をMGSOで乾燥させて、濾過して、ロータリーエバポレータで40℃にて濃縮して、橙色固体(2.2G)を得た。ガスクロマトグラフィにより所望のジアルデヒド対オフ異性体の93:7の比が示された。この固体をヘキサン中でスラリーとし、吸引濾過して、橙色固体(2.15G)を得た。還流酢酸エチル20MLから、30〜40℃も冷却した後、冷蔵庫に1時間置くことによりこの固体を再結晶した。スラリーを吸引濾過して、冷蔵庫冷却した酢酸エチルで洗浄して、黄橙色針状物質(1.65G)を得た。MP=158〜160℃。文献MP=161〜162℃。ガスクロマトグラフィにより所望のジアルデヒド対オフ異性体の96:4の比が示された、プロトンNMRおよびカーボンNMRは所望のジアルデヒド異性体と一致した。収率=66%。
【0170】
メタノール中塩化チオニルを用いたチグリン酸メチルのスケールアップ調製
【化25】

【0171】
メタノール3,000ML中のチグリン酸(397.35G、3.97MOL)の機械的攪拌溶液をニートの塩化チオニル(397ML、5.44MOL)で外部冷却せずに130分間かけて滴下処理し、その際温度は14℃から80分後には最大50℃にまで上昇した。分取量のガスクロマトグラフィによりエステルへの完全な変換が示され、チグリン酸は検出されなかった。外気温で1時間攪拌した後、銀メッキした真空ジャケット付きVIGREUXカラム(400MM×20MM)を通して大気圧で溶液を蒸留した。ポット温度58〜63℃で、主として57〜61℃にて濃縮液を収集した(2時間で630ML)。ガスクロマトグラフィにより留出物中にかなりのメチルエステルが示された。
【0172】
VIGREUXカラムをより効率の悪いカラム(30×2CM W/刻み目がより小さい)と交換して、蒸留の速度を加速させた。69〜71℃のポット温度で、65〜69℃のヘッド温度を有する留出物を収集した(2.25時間かけて1,300ML)。
【0173】
ガスクロマトグラフィにより留出物中にかなりのメチルエステルが示された。ポット温度が87℃に到達するまで大気圧蒸留を続け、69〜83℃のヘッド温度でこの期間中に留出物を収集した(2時間かけて975ML)。ガスクロマトグラフィにより初期の分画よりも留出物中にかなり多くのメチルエステルが示された。
【0174】
ポット中の黄色二相混合物をエーテル(300&200ML)で抽出し、KCOで乾燥させ、濾過して、ロータリーエバポレータで25℃にて濃縮して、橙色オイル(132.6G)(収率29.3%)を得た。ガスクロマトグラフィにより生成物が示された。プロトンNMRおよびカーボンNMRはわずかなエチルエーテルを伴って所望の生成物と一致した。エーテル濃縮液のガスクロマトグラフィによりオーバーヘッド中にいくらかメチルエステルが示された。
【0175】
留出物3:第3のメタノール留出物(975ML)をロータリーエバポレータで25℃にて濃縮して、二相混合物(100〜150ML)を得た。この混合物をエーテル(100&50ML)で抽出し、KCOで乾燥させた。
【0176】
留出物2:第2のメタノール留出物(1,300ML)をロータリーエバポレータで25℃にて濃縮して、二相混合物(30〜50ML)を得た。この混合物をエーテル(2×50ML)で抽出し、KCOで乾燥させた。
【0177】
留出物2および留出物3に関する濃縮エーテル抽出物を併せて、吸引濾過して、ロータリーエバポレータで25℃にて濃縮して、無色オイル(77.3G)を得た。
【0178】
プロトンNMRおよびカーボンNMRは所望のメチルエステルのこれまでのスペクトルと合致した。
【0179】
総収量=132.6+77.3=209.9G(46.3%)
あるいは、1)チグリン酸メチルは、ALFA, LANCASTERまたはACROS.から市販されており、2)パイロットはJOC, 64, 8051-8053(1999)によりパイロットを実施して、ホスホニウム塩を作製することができる。
【0180】
チグリン酸メチルの臭素化
【化26】

【0181】
四塩化炭素2,000ML中のチグリン酸メチル(209.9G、1.84MOL)およびN−ブロモサクシンイミド(327.5G、1.84MOL)、70%過酸化ベンゾイル(3.2G、0.009MOL)の機械的攪拌スラリーを、5Lの反応フラスコと還流冷却管との間に1LのKUGELROHRバルブを用いて加熱して還流させた(78〜81℃)。2時間後、還流を停止して、マントルを外して、スターラーを止めた。固形分はすべて、CCL溶液上に浮遊し、ないに等しいNBSを伴うサクシンイミドを示唆した。スラリーを氷浴中で20℃にまで冷却し、吸引濾過して、オフホワイト色固体(180.7G)を得た。洗浄はしなかった。黄色濾液を水(1L×3)で洗浄して、MGSOで乾燥させた。ガスクロマトグラフィにより、他の少量の成分と一緒に出発チグリン酸メチルおよび2つのモノブロミドが1:2:1の比で示された。
【0182】
MGSOを濾別した後、淡黄色濾液をロータリーエバポレータで35℃にて濃縮して、淡黄色オイル(327.1G)を得た。プロトンNMRおよびガスクロマトグラフィにより以下の組成が示唆された。
【表3】

【0183】
50%アッセイ用に調節した所望の生成物の収率=46.0%
このオイルはそのまま次工程で使用する。
【0184】
わずかに高いペイロードでのアセトニトリル中のトリフェニルホスフィンを用いたγ−ブロモチグリン酸メチルのスケールアップ反応
【化27】

【0185】
5Lの四つ口フラスコ中窒素雰囲気下にて、無水アセトニトリル1,300ML中のγ−ブロモチグリン酸メチルの粗製混合物(322.6G、85%アリル型ブロミド、1.42MOL)を機械的に攪拌した。
【0186】
酢酸エチル2,000ML中のトリフェニルホスフィン(387.0G、1.48MOL)の溶液を4時間かけて滴下した。添加中、最初の75分で約40%を添加した後に温度は22℃から最大30℃に上昇した。120分かけてトリフェニルホスフィン溶液の60%を添加した後に、溶液は濁るようになり、残部の添加により固体が沈殿し続けた。添加後、漏斗を酢酸エチル(600ML)ですすいで、反応混合物に足した。クリームスラリーは週末の間外気温で攪拌した。
【0187】
白色スラリーを吸引濾過して、ケーキを2:1の酢酸エチル:アセトニトリル(150ML×3)で洗浄した。白色固体(352.55G)を真空オーブン中で40℃にて4時間乾燥させた(2時間後に一定重量)(322.55G)。MP=187〜188℃(DEC)。文献MP=183℃(DEC)。プロトンNMRおよびカーボンNMRは所望のホスホニウム塩に関する従来のスペクトルと合致した。LC−MS分析により1つの主要成分が示され、その陽モードでのエレクトロスプレーマススペクトルは所望のホスホニウム塩と一致し、375M/Zに分子イオンを提供した。リンNMRにより22.0PPMに単一のリンシグナルが示された。
【0188】
出発チグリン酸メチルに基づいた収率=100×322.55/(455.32×1.84×322.6/327.1)=39.0%。
【0189】
(3−カルボメトキシ−2−Z−ブテン−1−イリデン)トリフェニルホスホランの調製
【化28】

【0190】
脱イオン水3,400ML中の(3−カルボメトキシ−2−E−ブテン−1−イリデン)トリフェニルホスホニウムブロミド(154.8G、0.34MOL)の機械的に攪拌したわずかなスラリーを、23℃にて32分間かけて水500ML中の水酸化ナトリウム(13.6G、0.34MOL)の溶液で滴下処理し、明白な発熱はなかったが、褐黄色固体の沈殿がすぐに見られた。15分間攪拌した後、褐黄色スラリーを吸引濾過して、水(1,500ML)で洗浄して、吸引乾燥させて、明黄色固体(151.7G)を得た。この固体を真空オーブン中で35〜45℃にて(午後3時50分)一晩乾燥させた。
【0191】
真空オーブン中で35〜45℃にて22.5時間乾燥させた後、一定重量が得られた(107.8G)。MP=144〜160℃。文献MP=145〜165℃。プロトンNMRは、NMR場強度における差異を考慮して、所望のイリドの従来のスペクトルに類似していた。カーボンNMRにより、50.2PPMおよび11.8PPMにメチル炭素が示され、それは複雑な芳香族領域を伴い、オレフィン炭素およびイリド炭素に関する明白なシグナルは見られなかった。収率=84.7%。
【0192】
ジメチルクロセチネートのパイロット調製
【化29】

【0193】
窒素雰囲気下にて、ベンゼン(128ML)中の(3−カルボメトキシ−2−Z−ブテン−1−イリデン)トリフェニルホスホラン(12.8G、34.2MMOL)および2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンジアール(2.1G、12.8MMOL)の磁気的攪拌混合物を加熱して、タイマーを使用して6時間還流させた。
【0194】
生じたスラリーを氷浴中で40分間冷却して、吸引濾過して、ベンゼンで洗浄して、吸引乾燥させて、凍ったベンゼンを溶かして、赤色固体(2.1G)を得た。TLC分析により単一の黄色いスポットが示された。この固体を真空オーブン中で40〜45℃にて70分間乾燥させた(1.85G(収率40.5%))。未補正MP=210〜213℃。文献MP=214〜216℃。プロトンNMRは、90MHZ計器でのジメチルクロセチンの従来のスペクトルに類似していた。カーボンNMRにより残留ベンゼンである可能性がある1つの少量の不純物シグナルを伴って、所望のジメチルエステルに関する正確なケミカルシフトを有する11個の特有のカーボンシグナルすべてが示された。エレクトロスプレーマススペクトルによりフラグメントの分解および再結合が示唆された。
【0195】
TLC分析により、赤色濾液がさらなる生成物であるトリフェニルホスフィンオキシドおよび単離固体よりもわずかに低いRを有する橙色成分を含有することが示された。赤色濾液をロータリーエバポレータで35℃にて濃縮して、赤色固体(13.2G)を得た。この固体をメタノール(25ML)中で還流下にて加熱した。次に、生じたスラリーを氷浴中で冷却して、60分後に吸引濾過して、メタノールで洗浄して、赤色固体(0.6G)を得た。この固体を真空オーブン中で45℃にて135分間乾燥させた(0.5G)。MP=203〜208℃。プロトンNMRにより残留不純物を伴って所望のジエステルが示された。カーボンNMRにより所望の生成物に関するシグナルのみが示された。TLC分析により筋状の生成物スポットが示された。
【0196】
濾液を濃縮して、保管した。
【0197】
E. BUCHTA & F. ANDREE, CHEM BER, 93, 1349 (1960).
クロセチンのジメチルエステルの第2の調製
【化30】

【0198】
窒素雰囲気下にて、2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンジアール(11.95G、12.8MMOL)を、ベンゼン400ML中の(3−カルボメトキシ−2−Z−ブテン−1−イリデン)トリフェニルホスホラン(73.0G、195.0MMOL)の機械的攪拌スラリーに一度に添加した後、ベンゼン330MLを足した。得られた褐色スラリーを加熱してタイマーを使用して6時間還流させ、窒素下にて一晩室温に冷却した。
【0199】
生じたスラリーを氷浴中で6〜10℃に冷却して、吸引濾過して、ベンゼン(50ML×2)で洗浄して、赤色固体(10.05G)を得た。TLC分析により単一の黄色いスポットが示された。この固体を真空オーブン中で40℃にて(午後9時)3.5時間乾燥させ、質量損失はなかった(10.05G(収率38.7%))。MP=211〜214℃。文献MP=214〜216℃。プロトンNMRおよびカーボンNMRは、クロセチンの所望のジメチルエステルに関する従来のスペクトルと合致した。
【0200】
赤色濾液をロータリーエバポレータで40℃にて濃縮し、赤色固体(84.4G)を得た。TLC分析は、パイロット実施に類似していた。この固体を還流下にて磁気的に攪拌しながらメタノール165ML中でスラリー状にした。次に、生じたスラリーを氷浴中で2.5時間冷却して、吸引濾過して、最少量のメタノールで洗浄して、橙色ペースト(10.5G)を得た。TLC分析により単一の黄色いスポットが得られた。このペーストを真空オーブン中で45℃にて190分間乾燥させた(5.6G)。MP=201〜208℃。NMRにより未知の芳香族不純物を伴って所望のジエステルが示された。
【0201】
この純粋でない固体および初期の実施からの2つの他の類似の固体(合計6.5G)を還流クロロホルム(75ML)に溶解して、メタノールで希釈して、一晩冷蔵庫中で冷却した。
【0202】
スラリーを吸引濾過して、最少量のメタノールで洗浄して、赤色結晶固体(6.1G)を得た。この固体を真空オーブン中で45℃にて3時間、一定重量になるまで乾燥した(4.25G)。MP=211〜213℃。プロトンNMRおよびカーボンNMRにより他のオレフィン系不純物または芳香族不純物が示された。当該固体を還流トルエン(150ML)中に溶解して、最終的には冷蔵庫中で130分間冷却した。スラリーを吸引濾過して、トルエンで洗浄して、赤色固体(2.05G)を得た。この固体を真空オーブン中で45℃にて50分間乾燥させ、重量変化は見られなかった(2.05G)。MP=214〜216℃。プロトンNMRによりいくらかの残留トルエンおよびないに等しいオフ異性体不純物を伴って所望のジメチルクロセチンが示された。カーボンNMRにより所望のジメチルクロセチンが示され、オフ異性体不純物は検出不可能であり、トルエンと一致する2〜3個の新規残留シグナルが存在した。収率=45.5%。
【0203】
クロセチンの二ナトリウム塩の調製
【化31】

【0204】
ジメチルクロセチン(13.95G、39.1MMOL)および40重量%水酸化ナトリウム水(273ML、3.915MOL)およびメタノール(391ML)の機械的攪拌スラリーを還流下で74℃にてタイマーを使用して12時間加熱した。
【0205】
フィルター紙を備えたブフナー漏斗およびガラス漏斗に通して橙色スラリーを吸引濾過した。ゆっくり濾過した。ガラス漏斗中のスラリーをブフナー漏斗中の固体に添加した。橙色ペーストを水(100ML×3)、続いてメタノール(50ML×3)で洗浄した。橙色ペーストを真空オーブン中で45〜50℃にて乾燥させた。
【0206】
乾燥しきった後にフィルターが詰まるまでガラス濾過を通してより迅速に濾過した。しかしながら、水洗浄によりフィルターの詰まりが除かれた。
【0207】
21時間後、橙色塊は24.25Gの重量になった。当該物質をスパチュラで粉砕して、真空オーブン中で45〜50℃にて乾燥させた。
【0208】
合計65.5時間の乾燥の後、橙色粉末の量は23.1Gだった。赤外スペクトルによりTSCの報告されているIRスペクトルと比較して余分のバンド、特に3424および1444CM−1に大きなバンドが示された。プロトンNMRによりメチルエステルの徴候は示されなかった。しかしながら、オレフィン領域およびメチル領域の積分値は、おそらく整相問題に起因して外れていた。
【0209】
過剰重量は水酸化ナトリウムに起因すると仮定して、橙色固体を脱イオン水400ML中で35分間磁気的に攪拌した。スラリーを吸引濾過して、ケーキを脱イオン水(50ML×2)で洗浄して、橙色ペーストを得た。この物質を真空オーブン中で45〜50℃にて一定重量になるまで乾燥させた。約7時間後、当該固体を圧搾して、粉砕して、さらに真空オーブン中で45℃にて一晩乾燥させた。
【0210】
45℃で21時間乾燥した後、固体量は13.25Gだった。さらに粉砕して、真空オーブン中で45℃にて乾燥させた後、固体量は13.15Gだった。赤外スペクトルは報告されているIRスペクトルと一致した。プロトンNMRは二ナトリウム塩と一致するプロトンNMRスペクトルが得られた。HPLC分析により、おそらく1つの少量の不純物を伴って1つの主要な成分が示された。主要成分のエレクトロスプレー陰イオンマススペクトルはクロセチンの所望の二ナトリウム塩と一致した。カーボンNMRにより、クロセチンの二ナトリウム塩に関する10個すべての特有のカーボンシグナルが示され、分子の対称性が確証された。
【0211】
水、水酸化ナトリウムおよびメタノールのもとの濾液は水洗浄中にさらに固体を沈殿させた。このスラリーを吸引濾過して、水で洗浄して、橙色ペーストを得た。このペーストを真空オーブン中で45℃にて18.5時間乾燥させて、橙色固体(0.65G)を得た。スペクトルデータは、クロセチンの所望の二ナトリウム塩と一致した。この固体を第1の収穫物と併せた。収率=13.15+0.65=13.8G(94.8%)。
【0212】
第1の収穫物の元素分析により、所望の生成物に関する許容できない値が示され、クロセチンの二ナトリウム塩に水酸化ナトリウムが混入していることが示唆された。
【0213】
クロセチンの二ナトリウム塩の水洗浄
クロセチンの二ナトリウム塩(13.6G)を脱イオン水150ML中でスラリー状にし、室温で1時間磁気的に攪拌した。スラリーをブフナー漏斗上へと吸引濾過した。次に、橙色ペーストを水で洗浄して、橙色濾液のPHをモニタリングした。
【0214】
橙色のペーストをラバーダムでフィルター上で吸引乾燥した。このペーストを25〜55℃にて5.5時間、真空乾燥させて脆い橙色固体(11.2G)を得た。この固体を粉砕して、ボトルに移し、真空オーブン中で45℃にて一晩乾燥させた。
【0215】
量=11.1G。回収率=81.6%。IRおよびプロトンNMRスペクトルは、クロセチンの所望の二ナトリウム塩の従来のIRおよびプロトンNMRスペクトルと合致した。HPLC分析により420NMで単一成分が示され、その陰イオンモードでのエレクトロスプレーマススペクトルはクロセチンと一致した。
【0216】
カーボンNMRにより、クロセチンの所望の二ナトリウム塩に関する正確なケミカルシフトを有する10個すべての特有のカーボンシグナルが示された。元素分析により所望の生成物に関する許容可能なデータが得られた。
【0217】
参照文献
1.TETRAHEDRON LETTERS, 27, 4983-4986 (1986)。
【0218】
2.F.J.H.M. JANSEN, M. KWESTRO, D. SCHMITT & J. LUGTENBURG. RECL. TRAV. CHEM. PAYS-BAS, 113, 552-562 (1994)およびそこで引用された参照文献。
【0219】
3.J.H. BABLER、米国特許第4,107,030号(1992年4月21日)。
【0220】
4.T.W. GIBSON & P. STRASSBURGER, J. ORG. CHEM., 41, 791 (1976) & J.M. SNYDER & C.R. SCHOLFIELD, J. AM. OIL CHEM. SOC., 59, 469 (1982)。
【実施例6】
【0221】
改良合成方法に従って作製されるTSCの純度測定
実施例5の方法に従って合成したTSC物質に関して、421NMの吸光度対254NMの吸光度の比は、UV−可視分光光度計を用いて11.1であった。
【実施例7】
【0222】
TSCの経口投与
TSCは、経口的に(胃管による技法)投与すると血流に吸収されることがラットで示されている。2匹のラットにおいて、与えた投与量の1〜2%が、付与後15〜30分時点で血流に存在することがわかった。実際に経口的に吸収された最大量は、その時点よりも初期に起こった。
【0223】
開示する本発明を逸脱することなく、本発明の化合物および組成物の両方、ならびに関連方法に対して、数多くの変更および付け足しがなされ得ることが当業者には容易に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造を有する化合物であって、TSCでない化合物:
YZ−TCRO−ZY
式中、
Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格
である。
【請求項2】
Yは、NA、K、LIからなる群から選択される一価の金属イオン、またはR、R(式中、RはH、またはC2N+1(ここで、Nは1〜10である)である)からなる群から選択される有機カチオンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Zは、カルボキシル(COO)基、スルフェート基(OSO)もしくはモノホスフェート基(OPO)、(OP(OH)O)、ジホスフェート基、トリホスフェート基またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
TCROは、炭素原子を含有する共役炭素−炭素二重結合および単結合であり、炭素−炭素二重結合を取り巻く4つの単結合はすべて同じ平面に存在し、前記化合物は線状である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
TCROが次式で表される、請求項1に記載の化合物:
【化1】

式中、
同じであっても異なってもよいXは、H、任意にハロゲンを含有する10個以下の炭素を有する線状もしくは分岐状基、またはハロゲンである。
【請求項6】
TCROが次式で表される、請求項1に記載の化合物:
【化2】

式中、
同じであっても異なってもよいXは、H、任意にハロゲンを含有する10個以下の炭素を有する線状もしくは分岐状基、またはハロゲンである。
【請求項7】
TCROが次式で表される、請求項1に記載の化合物:
【化3】

式中、
同じであっても異なってもよいXは、H、任意にハロゲンを含有する10個以下の炭素を有する線状もしくは分岐状基、またはハロゲンである。
【請求項8】
TCROが次式で表される、請求項1に記載の化合物:
【化4】

式中、
同じであっても異なってもよいXは、H、任意にハロゲンを含有する10個以下の炭素を有する線状もしくは分岐状基、またはハロゲンである。
【請求項9】
下記構造を有するBTCSを可溶化させる方法であって:
YZ−TCRO−ZY
(式中、Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格)
該方法は、
A)炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムの希釈溶液を調製する工程と、
B)前記希釈溶液を脱イオン水に添加して、PHを7以上に上げる工程と、
C)BTCSを工程B)の溶液に添加する工程と
を含む方法。
【請求項10】
下記構造を有するBTCSを可溶化させる方法であって:
YZ−TCRO−ZY
(式中、Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格)
該方法は、
A)BTCSを生理食塩水溶液に添加する工程と、
B)未溶解物質を除去する工程と
を含む方法。
【請求項11】
下記構造を有するBTCSを可溶化させる方法であって:
YZ−TCRO−ZY
(式中、Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格)
該方法は、
A)塩基を水に添加して塩基性溶液を作製する工程と、
C)BTCSを前記溶液に添加する工程と
を含む方法。
【請求項12】
下記構造を有するBTCSを可溶化させる方法であって:
YZ−TCRO−ZY
(式中、Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格)
該方法は、
A)脱塩水を調製する工程、
B)BTCSを工程A)の溶液に添加する工程
を含む方法。
【請求項13】
前記化合物がトランスナトリウムクロセチネートである、請求項9、10、11または12に記載の方法。
【請求項14】
哺乳類において酸素の拡散率を増加させる方法であって、哺乳類に治療上有効な量の次式を有する化合物を投与することを含み、該化合物がTSCでない方法:
YZ−TCRO−ZY
式中、
Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格
である。
【請求項15】
前記投与が吸入によるものである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
呼吸疾患を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳類に治療上有効な量の次式を有する化合物を投与することを含み、該化合物がTSCでない方法:
YZ−TCRO−ZY
式中、
Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格)
である。
【請求項17】
気腫を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳類に治療上有効な量の次式を有する化合物を投与することを含み、該化合物がTSCでない方法:
YZ−TCRO−ZY
式中、
Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格
である。
【請求項18】
出血性ショックを治療する方法であって、治療を必要とする哺乳類に治療上有効な量の次式を有する化合物を投与することを含み、該化合物がTSCでない方法:
YZ−TCRO−ZY
式中、
Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格
である。
【請求項19】
心血管疾患を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳類に治療上有効な量の次式を有する化合物を投与することを含み、該化合物がTSCでない方法:
YZ−TCRO−ZY
式中、
Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格
である。
【請求項20】
アテローム性動脈硬化症を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳類に治療上有効な量の次式を有する化合物を投与することを含み、該化合物がTSCでない方法:
YZ−TCRO−ZY
式中、
Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格
である。
【請求項21】
喘息を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳類に治療上有効な量の次式を有する化合物を投与することを含み、前記化合物がTSCでない方法:
YZ−TCRO−ZY
式中、
Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格
である。
【請求項22】
脊髄障害を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳類に治療上有効な量の次式を有する化合物を投与することを含み、該化合物がTSCでない方法:
YZ−TCRO−ZY
式中、
Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格
である。
【請求項23】
脳水腫を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳類に治療上有効な量の次式を有する化合物を投与することを含み、前記化合物がTSCでない方法:
YZ−TCRO−ZY
式中、
Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格
である。
【請求項24】
乳頭腫を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳類に治療上有効な量の次式を有する化合物を投与することを含み、該化合物がTSCでない方法:
YZ−TCRO−ZY
式中、
Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格
である。
【請求項25】
低酸素症を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳類に治療上有効な量の次式を有する化合物を投与することを含み、該化合物がTSCでない方法:
YZ−TCRO−ZY
式中、
Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格
である。
【請求項26】
次式を有するBTCS化合物を合成する方法であって:
YZ−TCRO−ZY
(式中、Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格)
該方法は、
A)共役炭素−炭素二重結合を含有する対称ジアルデヒドを、トリフェニルホスホランとカップリングさせる工程と、
B)工程A)の生成物を鹸化する工程と
を含む方法。
【請求項27】
工程A)のカップリングが、[3−カルボメトキシ−2−ブテン−1−イリデン]トリフェニルホスホランを用いて行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
工程A)の生成物が、NAOHとメタノールの溶液を用いて鹸化される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
工程A)の後に、カップリング反応の所望の生成物を単離する工程が行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
共役炭素−炭素二重結合を含有する対称ジエステルを鹸化して、BTCSを形成する方法であって:
A)共役炭素−炭素二重結合を含有する対称ジエステルを、メタノール、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノールからなる群から選択される化合物で可溶化させる工程と、
B)工程A)の溶液を塩基と混合する工程と
を含む方法。
【請求項31】
前記塩基がNAOH、KOHおよびLIOHからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ジエステルがメタノールおよびNAOHを用いて鹸化される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
請求項26に従って合成されたBTCS化合物。
【請求項34】
可視波長に見られる最高ピークの吸光度をUV波長範囲に見られるピーク吸光度で除算した値が、8.5より大きいBTCS化合物。
【請求項35】
可視波長に見られる最高ピークの吸光度をUV波長範囲に見られるピーク吸光度で除算した値が、8.5より大きいTSC化合物。
【請求項36】
哺乳類において酸素の拡散率を増加させる方法であって、哺乳類に治療上有効な量のBTCSを投与することを含み、該BTCSは、可視波長範囲に見られる最高ピーク吸光度をUV波長範囲に見られるピーク吸光度で除算した値が8.5より大きい方法。
【請求項37】
気腫を治療する方法であって、哺乳類に治療上有効な量のBTCSを投与することを含み、該BTCSは、可視波長範囲に見られる最高ピーク吸光度をUV波長範囲に見られるピーク吸光度で除算した値が8.5より大きい方法。
【請求項38】
出血性ショックを治療する方法であって、哺乳類に治療上有効な量のBTCSを投与することを含み、該BTCSは、UV波長範囲に見られるピークの吸光度で除算した可視波長に見られる最高ピーク吸光度の値が8.5より大きい方法。
【請求項39】
前記BTCSがTSCである、請求項36、37または38に記載の方法。
【請求項40】
哺乳類において酸素の拡散率を増加させる方法であって、吸入により、哺乳類に治療上有効な量のTSCを投与することを含む方法。
【請求項41】
下記構造を有するBTCS化合物を含有する吸入器:
YZ−TCRO−ZY
式中、
Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格
である。
【請求項42】
前記BTCS化合物がTSCである、請求項40に記載の吸入器。
【請求項43】
オレフィン系ジアルデヒドの異性体混合物をオールトランスアルデヒドに変換する方法であって、前記ジアルデヒドの異性体混合物を溶媒中においてスルフィン酸で異性化することを含む方法。
【請求項44】
前記スルフィン酸が、式RSOH(式中、Rは、C1〜C10の直鎖もしくは分岐アルキル基またはアリール基である)を有する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記溶媒が1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、またはジアルキルエーテル(ここで、アルキル基は、C1〜C10の直鎖または分岐アルキル基である)からなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記スルフィン酸がパラトルエンスルフィン酸であり、前記溶媒が1,4−ジオキサンである、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記オレフィン系ジアルデヒドが2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンジアールである、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記オレフィン系ジアルデヒドが2,7−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンジアールであり、前記スルフィン酸がパラトルエンスルフィン酸であり、前記溶媒が1,4−ジオキサンである、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
虚血を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳類に治療上有効な量の次式を有する化合物を投与することを含み、該化合物がTSCでない方法:
YZ−TCRO−ZY
式中、
Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格
である。
【請求項50】
外傷性脳損傷を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳類に治療上有効な量の次式を有する化合物を投与することを含み、該化合物がTSCでない方法:
YZ−TCRO−ZY
式中、
Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格
である。
【請求項51】
哺乳類の動作を高める方法であって、前記哺乳類に治療上有効な量の次式を有する化合物を投与することを含む方法:
YZ−TCRO−ZY
式中、
Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格
である。
【請求項52】
糖尿病合併症を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳類に治療上有効な量の次式を有する化合物を投与することを含む方法:
YZ−TCRO−ZY
式中、
Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格
である。
【請求項53】
アルツハイマー病を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳類に治療上有効な量の次式を有する化合物を投与することを含む方法:
YZ−TCRO−ZY
式中、
Y=カチオン、
Z=前記カチオンと会合される極性基、および
TCRO=トランスカロテノイド骨格
である。
【請求項54】
哺乳類において虚血を治療する方法であって、哺乳類に治療上有効な量のBTCSを投与することを含み、該BTCSは、可視波長で見られる最高ピーク吸光度をUV波長範囲で見られるピーク吸光度で除算した値が8.5より大きい方法。
【請求項55】
外傷性脳損傷を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳類に治療上有効な量のBTCSを投与することを含み、該BTCSは、可視波長で見られる最高ピーク吸光度をUV波長範囲で見られるピーク吸光度で除算した値が8.5より大きい方法。
【請求項56】
哺乳類において動作を高める方法であって、哺乳類に有効な量のBTCSを投与することを含み、該BTCSは、可視波長で見られる最高ピーク吸光度をUV波長範囲で見られるピーク吸光度で除算した値が8.5より大きい方法。
【請求項57】
糖尿病を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳類に治療上有効な量のBTCSを投与することを含み、該BTCSは、可視波長で見られる最高ピーク吸光度をUV波長範囲で見られるピーク吸光度で除算した値が8.5より大きい方法。
【請求項58】
アルツハイマー病を治療する方法であって、治療を必要とする哺乳類に治療上有効な量のBTCSを投与することを含み、該BTCSは、可視波長で見られる最高ピーク吸光度をUV波長範囲で見られるピーク吸光度で除算した値が8.5より大きい方法。
【請求項59】
前記BTCSがTSCである、請求項54、55、56、57または58に記載の方法。

【公開番号】特開2010−106029(P2010−106029A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−274988(P2009−274988)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【分割の表示】特願2003−571422(P2003−571422)の分割
【原出願日】平成15年2月25日(2003.2.25)
【出願人】(504322138)ディフュージョン・ファーマシューティカルズ・エルエルシー (8)
【Fターム(参考)】