説明

二機能性の生体材料の組成物、方法、および使用

本発明は、第1の結合ドメインおよび第2の結合ドメインを有するペプチド・リンカーを含む二機能性の特異性構造であって、第1の結合ドメインは、第1の生体材料に対して選択的であり、および第2の結合ドメインは、第2の生体材料に対して選択的である特異性構造を含む。また、本発明は、本発明の二機能性の構造を作製し、同定する方法、およびこれを使用する方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2002年9月4日に出願されたBelcher et al.に対する仮出願番号第60/408,528号の利益を請求し、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、一般に、高分子化学の分野に、特に生体材料として使用するための生物学的に修飾されたポリマーに関する。
【0003】
政府支援の陳述
米国連邦政府は、本発明に一定の権利を有するであろう。本出願の主題は、 の部門からの連邦政府研究費番号 下で一部が行われた。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
本発明の範囲を限定することなく、その背景は、ポリマーを有機的または生物学的な置換基(以後、二機能性の生体材料)と共に組み込むことによって生物学的物質(以後、生体材料)を開発することに関して記載してある。列記したヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列は、コンピュータ読み取り可能な形態で材料の参照として組み入れられる。
【0005】
これまで、この分野において、生物学的な材料を開発する手段として、種々のアプローチがとられており、天然の生物学的な組織(すなわち、有機組織)に似ているか、またはこれらによって認識される生物学的な特徴を提供するために、伝統的に非生物学的な(すなわち、非有機的な)材料を1つまたは複数の方法で修飾している。修飾には、タンパク質の吸着および自己構築の使用、所望の官能基を有する新規のグラフト共ポリマーの合成、並びに直接の共有結合性の表面修飾を含んだ。最終的に、このような生物学的な材料を製造する目的は、分子デザインの変化に適応するほど十分に柔軟であり、合成するのが容易であり、および多くの異なる生物学的な使用(たとえば、跛行、内植、移植、生物学的な再生、増殖、および生物学的な交換、修飾、または置換として)に適用することができる生体材料を作製することである。
【0006】
生物学的な材料の作製における最近の研究には、微細製造技術の使用を含む。ここでは、タンパク質およびその他の分子構造(細胞および/または組織を含む)が生物学的な性質(たとえば、1つもしくは複数の生物学または有機化合物と結合する)を示す材料の表面に付着されており;付着は、通常、材料に対するタンパク質またはその他の分子構造の非特異的または特異的な認識を介している。たとえば、材料の表面上にミクロのパターンを作製するために、PDMSスタンプでのマイクロコンタクト・プリンティング(microcontact printing)が使用される。第二段階では、タンパク質またはその他の分子構造を材料の固体表面に吸着させる。このような技術を使用することによる望ましくない結果としては、吸着が不均一性であり、不規則な表面を生じ、その多くが最初に要求される必要な生物学的な性質を示さないことがある。これは、本プロセスが主に分子構造と材料表面との間の非特異的な相互作用に依存しているために、これらの非特異的な相互作用によって最適な表面に満たないランダムに配向された分子を有することとなる。
【0007】
その他には、操作されたポリマーを使用して、材料に対して操作されたポリマー表面であって、ポリマー表面に対する分子構造の接着を均一に制御し、かつ1つまたは複数の細胞を表面に付着させるために使用することができ、一方で細胞の表現形発現を維持したままであると考えられるポリマー表面を有する。欠点は、ほとんどのポリマーが、共有結合性に生物学的な構造に対して付着することができる適切な官能基を現実には有さないということである。この基本的な欠陥は、1つまたは複数の生物学的な構造(たとえば、有機化合物、生物学的な化合物、細胞、組織、その他)に対して誘引性になるように修飾されない限り、生物学的な表面としてのポリマーの使用を制限してしまう。ポリマーを機能的に修飾する一般的な方法は、ポリマーバックボーン内に単量体単位を組み込むことによって既存のポリマー表面に反応性基(たとえば、ポリ(L-リジン))を導入することを含む。しかし、このような方法は、複雑な合成系が必要であるために費用が高くなり、均一な生体材料表面(すなわち、1つまたは複数の生物学的な構造を含む表面)が作製されない。
【0008】
代わりの方法は、材料の表面上にペプチドを固定するシラン化技術である。本方法は、酸化チタン表面に末端官能基を有するシランフィルムを沈着させることによって行われた。加えて、生じる表面を異なる二機能性のリンカーでさらに修飾することができ、最終的にいくつかの生物学的なタンパク質によって、使用される細胞の認識配列であるArg-Gly-Asp(RGD)などのペプチド配列の共有結合を生じさせた。また、本技術では、アミノシランなどの種々のシラン様の化合物を使用して改変した。従って、以下を含む二機能性のリンカーとの多くの反応が行われた:(a)アルデヒド・イミンとペプチド・アミンとの間の結合を生じさせるためのグルタルアルデヒド;および、(b)アミドおよびペプチドのカルボキシル基の間の結合を生じさせるためのペプチドおよびカルボジイミドの混合物とアミノシラン。しかし、これらの反応では、これらが1つまたは複数の定義された部位で特異的なペプチドの付着を生じる能力の範囲内に限定された。従って、無順序かつ不均一な表面が生じる。
【0009】
特異的な結合表面を有する生物学的な材料を作製するために、次の表面修飾技術を使用した。たとえば、ペプチドに結合されたポリマーを使用して、神経表面(たとえば、神経組織の細胞外マトリックスに類似)を作製するために1つの技術が開発された。ここでは、表面(たとえば、カーボン様のフィルム)に炭素-炭素二重結合を導入するために、ナトリウムナフタリドでポリ(テトラフルオロエチレン-コ-ヘキサフルオロプロピレン)を還元し、次いで還元表面をさらに修飾してヒドロキシル基(たとえば、ヒドロホウ素化/酸化で)またはカルボン酸基(たとえば、酸化により)を導入した。したがって、ポリマーは、1つまたは複数のペプチドに結合することができるヒドロキシル(-CHXOH)またはカルボン酸(-COOH)表面のいずれかを含む。実際に、5-および6-マーのペプチドの付着は、神経突起の伸張を促進することが見いだされた(すなわち、増殖を修飾した)。
【0010】
タンパク質の吸着および付着の影響を受けにくい表面を有する材料も開発されている。これらの材料は、特異的な分子および/または細胞の間の相互作用を促進するように、生物学的な成分でさらに修飾してもよい。タンパク質の結合の影響を受けにくいポリ(エチレングリコール)またはPEGなどのポリマーは、これらの修飾のための使用に適している。加えて、RGD配列を含むものなどのペプチド(たとえば、アクリルアミドイルペプチド)をPEGジアシレートの混合物に組み込んで、ペプチド修飾されたポリマーを作製してもよい。残念ながら、この技術は、材料(すなわち、ポリマー)表面におけるペプチドの空間配向を制御することができず、限られたタイプおよびサイズの生物学的な構造でのみ機能する。この種の修飾は、共有結合性の反応を経たペプチドの固定化に重要であり得るペグ化(Pegylation)能力を有するポリマーに限定される。
【0011】
上記によって証明されるように、現在の技術は、表面ともう一つの生物学的な構造(たとえば、核酸、タンパク質、細胞、組織、器官、発色団、その他)との間の相互作用を可能にし、および促進する性質を示す表面である機能的な表面を有する生物学的な材料を作製することができない。従って、このような費用効果的であり、その広範囲にわたる適用を可能にする1つまたは複数の生物学的な構造に適応できる技術を開発する必要がある。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本明細書に開示された発明は、修飾された二機能的に結合された生体高分子であって、機能的な結合は、生体材料表面と細胞または生物分子との間のものである生体高分子の組成物、方法、および使用である。
【0013】
本発明は、特異的な結合モチーフおよび/または結合特性を有する分子構造を調製するための分子スクリーニング法で有利である。これらの分子構造は、ポリマーリンカーとして使用される。さらに重大なことに、本発明は、1つまたは複数の特異的に必要とされる性質を示す分子構造の自己選別およびスクリーニングが可能である。たとえば、1つまたは複数の選択された材料に対して高親和性で特異的に結合するリンカーを選択すること、および調製することができる。
【0014】
一つの態様において、本発明は、特異的な結合特性を有するペプチド結合モチーフ、特に1つまたは複数の材料に対して高親和性を有するものを調製するためのペプチド・スクリーニング法を使用する。より詳細には、本発明は、二機能性の特異性構造、二機能性のペプチド・リンカーまたは第1および第2の結合ドメインを有するペプチドであって、第1の結合ドメインは、第1の生体材料に対して選択的であり、第2の結合ドメインは、第2の生体材料に対して選択的であるペプチドを含む。第1の結合ドメインは、特異的に生体高分子と結合してもよく、たとえば、SEQ. ID. NOS.:1〜22のアミノ酸配列のペプチドから選択される。また、第2の結合ドメインは、同じものの一部であっても(たとえば、キメラ)または第1の結合ドメインを有する第1のペプチドに付着される異なるペプチドであってもよい。
【0015】
本発明の二機能性の特異的な構造、二機能性のペプチド・リンカー、またはペプチドのドメインの一方または両方に結合していてもよい材料もしくは生体適合材料の例は、プラスチック、セラミック、金属、コンポジット、ポリマー、および修飾、および/またはこれらの組み合わせを含む。本発明の標的のもう一つの例は、1つまたは複数の塩化物の不純物を添加したポリピロール・サブユニット、ポリ乳酸に基づいたポリマー、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)に基づいたポリマー、磁性材料、生体適合性および/または生物分解性のマトリックスを含む生体高分子であってもよく、これらは、シート状に形成されてもよい。さらにもう一つの態様は、1つまたは複数の成長因子、たとえば神経組織と生体適合性のものである。
【0016】
本発明のもう一つの態様において、組織特異的な性質を示す合成ポリマーが開発される。次いで、生じる「天然の」ポリマーは、跛行、移植、内植、生物学的な再生、増殖、および生物学的な交換(弁、肢、その他)としてなどの生物学的な目的のために使用してもよい。
【0017】
さらにもう一つの態様において、合成ポリマーの表面は、上に示したとおりの1つまたは複数のスクリーニング法を使用して修飾される。たとえば、タンパク質外殻の一部分にペプチド挿入物を示し、発現するランダムなバクテリオファージ・ライブラリーを使用して、1つまたは複数の材料によって必要とされる1つまたは複数の性質を示すリンカーを調製する。材料として合成ポリマーが使用される場合、1つまたは複数のポリマーと特異的に結合するペプチドが選択される。本発明の使用に適したポリマーの例は、塩素(PPyCl)およびポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)で不純物を添加した酸化型のポリピロールである。
【0018】
本発明のさらに別の態様において、1つまたは複数の二機能的に結合されたポリマーは、リンカーの一端(すなわち、生物学的な分子または構造)が、ポリマーに結合し、他方の末端が、別の生物学的な構造(たとえば、核酸、ペプチド、タンパク質、発色団、薬物、成長因子、細胞、発色団、またはその他の有機分子)に結合するように合成される。たとえば、ポリマーは、一端にポリマー結合ドメインと、他方の末端に細胞、薬物、または成長因子と結合するドメインを有する1つまたは複数のペプチドを含んでいてもよい。上記したいくつかの生物学的な適用は、二機能的に結合されたポリマーに適している。重大なことに、ポリマー(または、使用されるであろうその他の材料)の物性は変えられない。二機能的に結合されたポリマーは、跛行、内植、移植、生物学的な再生、増殖、および生物学的な交換(弁、肢、その他)としてのものを含む種々の生物学的な適用にこれを使用するためにさらに成形し、または修飾してもよい。この種の表面修飾法は、種々の合成物質表面の機能付与、および次に、選択的な表面反応性に適用することができる。
【0019】
本発明の二価リンカーを作製する方法は、選択的に生体材料と結合するペプチドのライブラリーから、第1の結合ドメイン・ペプチド;および、選択的に標的物質と結合するペプチドを有する第2の結合ドメインを含むペプチドを選択する工程を含む。ペプチドは、約7〜約30アミノ酸の長さを有していてもよい。ペプチドは、ペプチド・ファージディスプレイ・ライブラリーから、結合し、および/または選択されてもよく、SEQ. ID. NOS.:1〜22から選択されるペプチドを含んでいてもよい。
【0020】
本発明の組成物、方法、および使用は、生物学的な材料を開発するために使用される現在の技術を超えて明らかな利点を示す。注目すべきことに、本発明は、非特異的な吸着または共有結合の方法を必要としない。さらに、本発明は、目的に合わせて1つまたは複数の所望の性質を示す生物学的な材料を開発し、調製してもよい。
【0021】
もう一つの態様において、本発明は、直接組織再生に使用される独特な表面を有する修飾された生物学的な材料である。一つの態様において、表面は、濃度依存的な様式で特異的に生物学的な構造を示す。このような提示は、勾配として示されたときに、たとえば神経誘導チャネルに類似した、時間依存的な様式で細胞の活性、増殖、および/または再生をガイドするために使われてもよい。特に、本発明は、使用するときに、複数の外科的手法が必要でなく、組織再生手法に付随する費用および手術関連の複雑化を減少させる。
【0022】
さらにもう一つの態様において、本発明は、ハイブリッドまたは二機能性の生物学的な材料が作製されるような、組織工学のためものである。二機能性の生物学的な材料は、その表面に、特異的または非特異性なパターンで1つまたは複数の生物学的な性質(すなわち、生物学的な構造の結合を介したもの)を示してもよい。ハイブリッド生体材料は、天然の組織もしくは天然の器官と同様に挙動し、または同様の性質を示すように設計されている。ハイブリッドまたは二機能的な生物学的な材料の適用には、組織再生において、および/またはバイオリアクターもしくはバイオセンサー、並びにターゲットされた薬物デリバリーとしてこれを使用することを含む。
【0023】
本発明は、第1の結合ドメインおよび第2の結合ドメインを含むペプチド・リンカーを含む二機能性の特異性構造であって、第1の結合ドメインは、電気伝導性ポリマーまたは生物分解性の材料である第1の生体材料に対して高親和性を有する特異的な結合について選択的であり、および第2の結合ドメインは、第2の生体材料に対して高親和性を有する特異的な結合について選択的である二機能性の特異性構造を提供する。
【0024】
また、本発明は、第1の結合ドメインおよび第2の結合ドメインを含む二機能性のペプチド・リンカーであって、第1の結合ドメインは、合成の生体適合性のポリマー表面に対して選択的であり、第2の結合ドメインは材料に対して選択的である二機能性のペプチド・リンカーを提供する。
【0025】
発明の詳細な記載
本発明の種々の態様の製作および使用を以下に詳述してあるが、本発明は、多種多様な特定の状況で実施されるであろう多くの適用可能な発明概念を提供することが認識されるべきである。本明細書において論議される特定の態様は、単に本発明を製作し使用するための特定の方法を例示するだけであり、本発明の範囲を限定しない。例示の態様の種々の修飾および組み合わせ、並びに本発明のその他の態様が、明細書を参照することにより当業者には明らかであろう。従って、添付の請求の範囲がこのようなあらゆる修飾または態様を含むことが企図される。
【0026】
本明細書に使用される全ての技術的および科学的な用語は、他に定義されない限り、本発明が属する技術分野の当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。
【0027】
本発明の理解を容易にするために、多くの用語を以下に定義してある。本明細書において定義される用語は、本発明に関連する領域の当業者によって共通に理解される意味を有する。「ある」および「本」などの用語は、単一の実体だけをいうことは企図されず、例示のために具体例が使用される一般的な分類を含む。用語法は、本明細書において本発明の特定の態様を記載するために使用されるが、しかし、これらの使用は、請求項において概説したものを除いて、本発明を限定しない。
【0028】
以下は、本出願に適用される用語である。本明細書で使用されるものとして、「材料」は、他の材料および/または分子と接触してもよい表面を有する物質である。材料は、微細製造されてもよく、単一化合物、積層化合物、またはポリマーもしくはポリマー混合物、プラスチック、ガラス、金属、半導体、有機、または無機の化合物、およびこれらの組み合わせなどの1つまたは複数の分子または化学製品の化合物の混合物からできていてもよい。材料が層化されているときは、「表面」層は、1つまたは複数の生物学的な構造と接触するものである。
【0029】
本明細書において使用されるものとして、「生体材料」とも称される「生物学的な材料」は、細胞の原核生物および真核生物の生物学的な活性、プロセス、反応、相互作用、または遭遇を模倣し、反映し、または似せた様式で結合し、接触し、反応し、併用し、および/または相互作用することが可能なように、生物学的な性質を示し、行い、または模倣する材料である。生物学的な材料は、生物学的な構造が付着されたか、または生物学的な構造が接触した材料であって、接触は、荷電されたもの、共有結合性、極性を与えられたもの、静電的相互作用、流動、または水素結合などの分子相互作用によるものである材料を含む。
【0030】
「生物学的な構造」は、本明細書に使用されるものとして、生物学的起源の構造であり、一般に、アミノ、カルボキシル、チオール、もしくはヒドロキシルなどの官能基を有する有機または炭素含有の化合物であると考えられる。生物学的な構造の例は、核酸、ペプチド、タンパク質、発色団、細胞、サイトカイン、補因子、成長因子、組織、器官、脂肪酸、糖、有機ポリマー、およびその他の単純なまたは複雑な炭素含有分子、並びにこれらの組み合わせを含む。また、生物学的な構造は、有機または無機の修飾を含む生物学的バックボーンを有する構造であってもよい(たとえば、生物学的バックボーンに対する電荷、構造、分極率、水素結合、静電的相互作用、および流動をさらに組み込むもの含む修飾であるが、これらに限定されない)。また、生体分子とも称されるこれらの生物学的な構造は、いくつかの生物学的な活性を有する複雑な分子であり、生物学的な構造並びに薬物などのその他の複雑な分子に使用される例の全てを含むことができる。本発明において、生体分子および生物学的な構造の用語は、交換可能に使用される。生物学的な構造は、生物学的または非生物学的な方法によって産生され、合成され、または操作されてもよい。一つの態様において、1つまたは複数の宿主細胞(たとえば、組織培養細胞もしくはクローン、細菌細胞、またはバクテリオファージ)などの生物学的な構造を使用して、その他の生物学的な構造を発現する。
【0031】
本発明は、第1の生物学的な構造、材料、および第2の生物学的な構造の間の独特および/または改善された相互作用の開発を含む。図1〜3は、微視的および巨視的なレベルで示したこれらの相互作用の例を示す。特に、このような相互作用は、本明細書において使用されるものとして、生体材料と第2の生物学的な構造を接触させて、大きな複合体を生じさせることができる生物学的な構造をいうための生物学的な「リンカー」を含む。接触は、共有結合性、電気的、静電性、水素結合性、極性、磁性、その他などの、生物学的な構造が遭遇するいずれのタイプのものであってもよい。図1は、ペプチドであるリンカー、並びにその一端の生体材料および他端の1つまたは複数の異なる生物学的な構造との相互作用の例であって、この例の生物学的な構造が、生体分子および細胞である例である。
【0032】
使用されるリンカーは、短い、または長い生物学的な構造であってもよい。これらは、細胞などのもう一つの生物学的な構造内で合成され、操作され、または発現される天然の構造であってもよい。一つの態様において、リンカーは、異なる生物学的な構造によって操作され、および/または発現される。たとえば、バクテリオファージは、ペプチドまたは薬物などの1つまたは複数のランダムな生物学的な構造もしくは分子で遺伝的に操作されたウイルスとして生物学的な構造(たとえば、またはファージディスプレイ)を発現すること、または示すことができる。一つのケースにおいて、生物学的な分子は、一部のウイルスの外側の外被として発現される特定の長さのランダムなペプチドである。
【0033】
生物学的な構造を得るための発現系を用いる利点は、大量の生物学的な構造(たとえば、ライブラリー)を提供して(すなわち、ファージ上に示す)、1つもしくは複数の材料に特異的で、および/または1つもしくは複数の特定の生物学的な環境において活性である構造の迅速な同定が可能になることである。したがって、1つまたは複数の選択された材料を認識する特異的な生物学的な構造(たとえば、ペプチド)は、表面または材料を操作することと類似する方法で同定することができる。さらに、材料は、二機能性の生物学的な構造(もう一つの生物学的な構造または生物学的な材料に接触させる能力を有するもの)を使用し、次いで、二機能性の生体材料が本発明によって認識されるものとして作製されたときに、生物学的な材料(生体材料)になる。二機能性の生体材料のための適用は、例として組織工学、組織置換、移植、生物学的な増殖、分化、または発生を含む。本発明の二機能性の生体材料を作製する組成物および方法のさらなる例を以下に示してある。
【0034】
材料特異的な生物学的な構造を同定するためのファージディスプレイの使用
大量の1つまたは複数の生物学的な構造を作製するために、繊維状ウイルス(すなわち、バクテリオファージ)を使用してもよい。特定の特性(たとえば、長さ、生来の構造、種)を有する生物学的な構造のランダムな組合せを含む商業的に入手可能なライブラリーを使用してもよい。たとえば、M13大腸菌ファージの微量な外被タンパク質(pIII)に特定のな長さのペプチド(たとえば、直線的な12アミノ酸、直線的な7アミノ酸、またはペプチド上の第1位および第9位のシステインが2つのシステイン間のジスルフィド結合によってループを生じるように強制された7アミノ酸)などの生物学的な構造の各種取り合わせを含む、バクテリオファージ・ライブラリー(また、本明細書において、ファージ・ライブラリーともいわれる)を開発した。このような大規模なライブラリーを使用するもう一つの利点は、選択された材料に接触するか、または結合することができる1つまたは複数の特異的な生物学的な構造(たとえば、ペプチド)を見いだした後に、材料に接触すること、または結合することに関与する特異的なアミノ酸を見いだすためにライブラリーを使用することができることである。これらに対して特異的な生物学的な構造および/または特徴を見いだすために使用する方法の例は、スクリーニング法とも称され、図4に示してある。バイオ・パニングにおいてこれらを使用するためのファージディスプレイライブラリーおよび実験法は、たとえば、Belcher et al.に対する以下の米国特許公報にさらに記載されている:(1)「Biological Control of Nanoparticle Nucleation, Shape, and Crystal Phase」;2003年4月10日に刊行された2003/0068900;(2)「Nanoscale Ordering of Hybrid Materials Using Genetically Engineered Mesoscale Virus」;2003年4月17日に刊行された2003/0073104;(3)「Biological Control of Nanoparticles」;2003年6月19日に刊行された2003/0113714;および(4)「Molecular Recognition of Materials」;2003年8月7日に刊行された2003/0148380。
【0035】
本発明を一連の実際の実施例によって例示した。本発明の一つの態様において、Ph. D.-12(商標)ファージディスプレイライブラリーキット(Phage Display Peptide Library Kit:New England Biolabs, Beverly, MA)を使用して生物学的な構造(たとえば、ペプチド)をスクリーニングした。キットは、M13大腸菌ファージのpIII外被タンパク質に融合された、約109の異なる12-アミノ酸の直線状ペプチド挿入物を有するライブラリーを含む。1μLの初期容積のファージディスプレイライブラリー(溶液中で、1×1012ファージ/μLに対応する)を使用して、本明細書においてバイオ・パニングといわれる方法で、1つまたは複数の材料に対してスクリーニングを開始した。バイオ・パニングは、0.1%(体積/体積)のTween-20を含む1mLのトリス-緩衝塩類溶液(TBS)(0.1%のTBS-T)中で行い;それぞれの材料を室温で少なくとも約1時間ライブラリーと共にインキュベートした。次いで、材料を1mLの0.1%のTBS-Tで洗浄し、非特異的なファージを捨てた。材料の表面に対して特異的でないあらゆるファージの結合を崩壊させるために、500μLのグリシン-HCl(pH2)を上記の混合物に室温で少なくとも約9分間添加した。次いで、溶液を収集し、トリス-HCl(pH9)で中性のpHにした。次いで、溶液量の半分を、少なくとも一晩培養した大腸菌(E. coli) ER2837 bacteria(New England Biolabs, Beverly, MA)に入れた(増殖培地で1:100希釈)。
【0036】
ファージ細菌溶液を摂氏37度において振盪機で少なくとも約5時間インキュベートした(ウイルスを細菌に感染させる)。細菌を遠心分離(少なくとも、約14,000 rpmで10分間)によって収集し、ファージを冷蔵された温度(摂氏4度)でポリ(エチレングリコール)またはPEGによって少なくとも約15分間沈殿させた。第2の遠心分離(少なくとも約10,000 rpmで15分間)を続いて行い、ペレットを200μLのTBSに再懸濁した。同時に、ファージの濃度も算出した(一般に、ファージ細菌溶液の試料から、および/または材料と共にインキュベートしているときには、ファージ溶液の試料から)。使用する技術は、分子生物学の技術分野の当業者に周知のものであり、ファージをプレーティングすること、または種々の濃度のファージ溶液を既知量の細菌に感染させることを含む。感染技術を使用するときは、lacZ遺伝子を有する細菌を使用してもよく、「力価プレート」上の細菌の増殖を視覚的に決定するために、イソプロピルチオ-β-D-ガラクトシド(IPTG)および5-ブロモ-4-クロロ-3-ヒドロキシインドリル-β-D-ガラクトース(X−gal)の存在下および非存在下でまいてもよい。次いで、ファージ濃度を以下によって決定してもよい:
力価プレートからのファージの濃度(pfu/μL)×(1μl/1E-6L)×(5コピーのpIII/1pfu)×(1mole/6.023×l023分子)(1)
式中、pfu=プラーク形成単位。
【0037】
材料特異的な生物学的な構造のハイスループット・スクリーニング
材料特異的な生物学的な構造、およびこれらの材料特異的な接触または結合領域を決定するために、一般に数回のバイオ・パニングのラウンドが使用される。それぞれのバイオ・パニングのラウンドについて、材料に対して次のラウンドのバイオ・パニングに使用する量(体積として)を決定するために、ファージ濃度が使用される。ファージの量が少なくとも約109pfuであった材料の新しい部分を、次のスクリーニングのために使用した。材料の結合に関与する共通配列を決定するために、複数ラウンドのバイオ・パニング、一般に少なくとも約5ラウンドを行う。
【0038】
3回目〜5回目のラウンドのバイオ・パニングで、青いプラークを拾い、それぞれを、1:100の大腸菌の一晩培養を有する増殖培地で別々に増幅し、5時間増殖(たとえば、増幅)させた。次いで、細菌を30秒間の遠心分離によって分離し、500μLのファージ溶液をPEGで室温において10分間沈殿し、続いて10分間の遠心分離によってファージをペレットにした。ペレットをNaI溶液中に懸濁させ(ファージ・タンパク質外被を破裂させる)、DNAをファージから沈殿させるためにエタノール(約250μL)を使用した。沈殿したDNAを少なくとも約60μLの化学薬品のない濾水に懸濁し、ヌクレオチド配列を得て、図4に示すようにペプチド配列に(N末端からC末端に)変換した。pIIIタンパク質外被上にペプチド挿入物がない遺伝的に操作されていないファージ(たとえば、天然に存在するものか、または、野生型[WT])は、バイオ・パニングの間に(すなわち、IPTGおよびX-galの存在下において力価プレート上にまいたときに)透明プラークとして現れる。
【0039】
上記の方法の後、および数回のラウンドのスクリーニングまたはバイオ・パニングの後、生物学的な構造のコンセンサス領域(たとえば、コンセンサス・ペプチドまたはアミノ酸配列)が見いだされ、材料の接触または結合に関与する、好ましい領域または共通の領域を示すであろう。迅速な分析のためには、上記の方法のいくつかの工程を、分子生物学の技術分野の当業者には周知の通り、過度の実験なしで自動化してもよい。
【0040】
二機能性の生体材料を開発するための材料の例
一般に、本発明のための理想的な材料は、生物学的な構造と接触して、非特異的な相互作用―生理学の技術分野の当業者に周知の相互作用を超える相互作用を形成するであろうものである。本発明のための材料の例は、プラスチック、セラミック、金属、その他の複合物、ポリマー、並びに修飾および/またはこれらの組み合わせを含む。材料は、形成され、混合され、または別の表面に堆積されたものであってもよい。
【0041】
本発明の好ましい態様は、バイオ・パニング実験における合成の電気伝導ポリマーを含む電気伝導性ポリマーの使用を含む。電気伝導性ポリマーは、神経再生の技術分野において既知である:(1)Wong et al.に対するU.S. Patent No. 5,843,741(1998年12月1日)「Method for Altering the Differentiation of Anchorage Dependent Cells on an Electrically Conductive Polymer」;(2)Shastri et al.に対するU.S. Patent No. 6,095,148(2000年8月1日)「Neuronal Stimulation using Electrically Conductive Polymer」。たとえば、ポリマーは、電子非局在化および低エネルギー光学遷移を生じる抱合型のポリマーバックボーンを含むことができ、およびこの種のポリマーは、電導性ポリマーとして当該技術分野において既知である。電導性ポリマーは、これらを電気的装置、光学的装置、および検出装置に適用し、並びに生物学的および生物医学的な適用の可能性により、材料の重要な分類である。原型の電子電導性ポリマーは、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリ(フェニレン・ビニレン)(PPV)、ポリ-パラ-フェニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンなどを含む。不純物の添加は、これらの伝導率、並びにこれらの水における溶解度を改善するための、ポリアニリンおよびポリピロールなどの電導性ポリマーを使用することができる。たとえば、自己ドープしたスルホン化ポリアニリン(SPAN)および不純物を添加したポリピロール(PPy)は、荷電されたバックボーンを有し、水に高い溶解性を有する。PPVは、水溶性の前駆体の使用によって作製することができ、並びに不純物添加剤と共に使用することもできる。
【0042】
種々の電導性および半導体ポリマーを記載する特許文献は、以下を含み:
(a)Aldissiに対する第4,929,389号(「Water-Soluble Conductive Polymer」);(b)Kochem et al.に対する第5,294,372号および第5,401,537号(「Aqueous Dispersions of Intrinsically Electroconductive Polyalkoxythiophenes, a Process for their Preparation and their Use」);(c)Chenに対する第5,670,607号(「Miscible Forms of Electrically Conductive Polyaniline」);(d)Wudl et al.に対する第5,569,798号(「Self-Doped Polymers」);(e)Saida et al.に対する第5,648,453号および第5,688,873号(「Electroconductive Polymer and Process for Producing the Polymer」);(f)Viswanathanに対する第5,968,417号(「Conducting Compositions of Matter」);および、(g)Heeger et al.に対する第6,534,329号(「Visible Light Emitting Diodes Fabricated from Soluble Semiconductor Polymer」)、これらはそれぞれ、合成および特性付けを含むこれらの全ての教示について参照として本明細書に組み入れられる。これらの特許は、たとえばポリマーバックボーンに共有結合で結合するブロンステッド酸基、双性イオン構造、自己ドーピング、ポリマー鎖を酸化または還元させるアクセプターおよびドナーでのドーピング、中性およびイオン状態の間の循環、安定性、および半導電性または電導性の挙動を提供する電子系のπ共役を記載する。加えて、電導性ポリマーの多くの適用も記載されている。
【0043】
また、電気伝導性ポリマーは、たとえば、Concise Encyclopedia of Polymer Science, J.I. Kroschwitz, Ex. Ed., John Wiley, 1990, pages 298-300に記載されており、これは、参照として本明細書に組み入れられる。ポリマーは、たとえば低エネルギー光学遷移、低イオン化ポテンシャル、および高電子親和力などの性質を提供することができる共役π電子バックボーンを有するものとして記載されている。これらは、従来のポリマーよりも容易に酸化または還元することができる。以下のタイプの導電性ポリマーのドーピングが記載されている:ポリアセチレン、ポリ(p-フェニレン)、ポリ(硫化p-フェニレン)、ポリピロール、およびポリチオフェン。
【0044】
さらなる電導性ポリマー、および種々の基質上でのパターニングにおけるこれらの使用は、Calvert et al.に対するU.S. Patent No. 5,976,284(「Patterning Conducting Polymer Surfaces and Process for Preparing the Same and Devices Containing the Same」)に記載されている。この‘284特許は、原理的に、少なくともσ>10-3 S/cm、好ましくは少なくともσ>10-1 S/cmの導電性を有する任意のポリマーを電導性ポリマーとして使用することができることを教示している。また、電導性ポリマーは、Chapter 11 of Organic Conductors, J.P. Farger, Ed. Marcel Dekker, NY, N.Y., 1994にも記載されており、これは参照として本明細書に組み入れられる。電導性ポリマーは、たとえば、シスおよびトランスのポリアセチレン(PA)、ポリジアセチレン(PDA)、ポリパラフェニレン(PPP)、ポリピロール(PPy)、ポリチオフェン(PT)、ポリビチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレンビニレン(PPV)、ポリチエニルビニレン(PTV)、ポリフェニレニスルファイド(PPS)、およびポリアニリン(PAni)を含み、これらのポリマーの構造は、‘284特許に示されている。これらの構造において、H原子は、C1-18-アルキル、またはフェニルまたはカルボキシレートもしくはスルホナートなどのイオン性の基を含む基などの置換基によって置換されてもよいことが理解される。これらの基は、直接またはエステル、エーテル、もしくはアミド結合を介して付着されてもよい。一般に、置換は、電導性ポリマーの導電性を悪化させるが、たとえば空気/水界面での溶解度または配向などの特徴を増強してもよい。これらの電導性ポリマーの合成および性質をさらに記載するその他の参照には、以下が含まれる:

【0045】
たとえば、塩素ドーピングしたポリピロール(PPyCl)は、電気伝導性材料であり;ポリピロールの酸化型バージョンは、神経再生のための基質として使用されてきた。この種の材料の利点は、それが電気ポリマー化され(electropolymerized)、シートまたはその他の関心対象の形状を形成することができることである。
【0046】
また、材料は、生物分解可能であってもよい。たとえば、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)は、調製するのが容易であり、その表面領域、並びにその分解速度を制御することができる。たとえば、328ページの考察を含むSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, Ed. J.R. Robinson, 1978(この全体が参照として本明細書に組み入れられる)を参照されたい。
【0047】
ポリピロールのエレクトロ重合
ポリピロールを電流が通ることができるように酸化した。ラジカル陰イオンとして塩化物または「ドーピング剤」を添加すると、非常に共役したバックボーンに沿って電気的中性を提供する。本発明の一つの態様において、PPyClフィルムは、インジウムスズ酸化物(ITO)に電気化学的に沈着させた伝導性のホウケイ酸ガラスである(Delta Technologies, Still Water, MN)。スライドとして形成されたITOガラスは、ヘキサン、メタノール、およびジクロロメタン中でのそれぞれ5分間の超音波処理によって使用前に掃除してもよい。
【0048】
PPyCLの電気化学的沈着は、飽和カロメル参照電極、プラチナガーゼ対電極、および作用電極としてのITOスライドからなる三電極を準備して作製した。ポリマーは、ドーパントとして0.1MのNaCl(Fisher, Scientific, Palatine, IL)を含む0.1Mのピロール単量体(Fisher, Scientific, Palatine, IL)の水溶液から、720mV(飽和したカロメル参照対)の一定電位で沈着した。直流電圧供与源としてPine Instruments AFRDE5双ポテンショスタットを使用した。時間にわたる電流の積分によって決定されるフィルムの厚さは、30〜40μmの範囲であった。厚みは、50mC/cm2の基準値に基づいて電荷の通過によって制御した。作用電極を通過する電荷は、デジタルディスプレイのためのマルチメータ(Sperry, DM-8A)に結合した積算電流計(IT001, Cypress Systems, Inc.)によって正確に測定した。フィルムを滅菌水でリンスして、使用前に少なくとも約2日間デシケータ中で乾燥した。
【0049】
材料特異的な生物学的な構造:材料に対する選択
特異的な材料を選択する生物学的な構造をさらに解析して、材料に対する接触がどのように、またどこで生じるかを決定してもよい。一つの態様において、ペプチドなどの生物学的な構造をシーケンスして、コンセンサス結合領域が決定される。生物学的な構造は、バイオ・パニングのラウンドの後か、または、非特異的な相互作用が除かれる(たとえば、材料を洗浄して、ペプチドなどの未結合の生物学的な構造を除去する)付着のその他の方法で得てもよい。本方法は、分子生物学術の当業者に周知である。
【0050】
一つの態様において、ファージに発現されたペプチドをPPyClに結合させることができ、3〜5ラウンドのバイオパン後に増殖したプラークをシーケンスした。シーケンシングの結果を図5に示してあり(1文字アミノ酸略語を使用)、その中に優勢な配列(SEQ ID NO.:1)が見いだされたが;しかし、これがコンセンサス結合領域であることを確かめるためにさらなる統計解析を行うべきである。本発明の一つの態様において、官能基の反応性を、アミノ酸側鎖、すなわち塩基性、酸性、疎水性、ヒドロキシル、芳香族、アミド、メチオニン、およびプロリン(シーケンスした試料中に存在しないときは、システインなどの1つまたは複数のアミノ酸を除外してもよい)と共にグループ化する。解析では、生物学的な構造(ペプチド)-生物学的な構造(ペプチド)の相互作用、並びに生物学的な構造(ペプチド)-材料の相互作用のタイプが生じることを示す。
【0051】
図6は、位置あたりのパーセント・アミノ酸群を示す統計解析の例を示す。たとえば、図6において、ヒドロキシル・アミノ酸群は、親の組み合わせ・ライブラリーにおけるこれらの存在と比較して2倍以上現れる。コンセンサス領域は、

であることを図6の最後のラインに表してある。さらに、コンセンサス結合領域をアミノ酸官能基の反応性について解析し(図7)、官能基と材料との間(すなわち、生物学的な構造および材料の表面の間)で起こり得る相互作用を例証するのを助ける。
【0052】
材料特異的な生物学的な構造:特異性の確認
いくつかの生物学的な構造、特に別の生物学的な構造の助けによって大量に産生される(たとえば、細菌またはバクテリオファージなどの宿主細胞で発現される)ものは、材料間の相互作用の結果だけでなく、生物学的な構造を産生するために使用する発現系または方法に基づいたコンセンサス領域であるコンセンサス領域を含んでもよい。本発明の一つの態様において、生物学的な構造のコンセンサス領域は、特にバイオパニング(たとえば、増幅)の間に細胞増殖から生じるコンセンサス領域でないことを検証する。たとえば、修飾された宿主が天然に存在する宿主よりも増殖する場合は、コンセンサス領域を含む修飾された宿主は、材料特異的な相互作用によるものではなく、その増殖能力によって選択された可能性がある。
【0053】
検証は、宿主に特異的なコンセンサス領域(または、コンセンサス領域を含む全生物学的な構造)を発現すること、宿主を培養すること、および修飾されていない宿主から得られたものと増殖数を比較することを含む。たとえば、一つの態様において、PPyClと相互作用するための材料のコンセンサス領域を含むペプチドをファージ上に提示させて、前述したように増幅した。これらのファージの力価カウントを、図8に示すようにランダムなファージおよびWT(PPyClと相互作用できず、またはこれに対して生じないもの)の増幅と比較した。
【0054】
図8は、PPyCl特異的なファージ(PPyClバー)が、8±2×107 pfu/μL、または方程式(1)から得られる0.66±0.05nMの濃度で、10-7希釈の間に8±2の平均カウント増幅したことを示す。ランダムに選択した操作されたファージでは、0.58±0.05nMの濃度で10-7希釈の間に7±2の平均ファージ・カウントに増幅した。WTファージでは、10-7希釈の間または0.17±0.05nMの濃度で、2±2の平均ファージ・カウントに増幅した。解析したそれぞれの群について増殖パターンは同じであったため、PPyCl特異的なファージは、増殖または発現に関連したコンセンサス領域ではなく、PPyCl特異的なコンセンサス領域を発現することがわかる。
【0055】
生物学的構造-材料の相互作用の決定
生物学的な構造のコンセンサス領域は、材料と一種の特異的な相互作用を受けることが推定される。相互作用は、以前に記載されているいずれの相互作用(たとえば、共有結合性、電気的、静電的、水素結合性、極性、磁性、その他)であってもよい。生物学的構造と材料との間で生じる相互作用のタイプを決定するために、および相互作用が特異的であることを決定するために、いくつかの方法を利用できる。方法は、分子生物学の当業者に容易に認識され、いくつかの実施例を後述する。
【0056】
力価カウント
PPyClに対するペプチドの結合研究としての力価カウントの使用は、準定量的であり、PPyCl特異的なファージ、ランダムに選択した操作されたファージ、またはWTファージあたりのファージ・カウントの相対的な結合の比較を提供する。1×108 pfuファージの初期量をPPyClと相互作用させる。次いで、PPyCl試料を1mLの0.1%のTBS-Tで少なくとも約3回洗浄して、結合していないファージを除去した。9分間の500μLのグリシン-HCl(pH2.2)による結合したファージの溶出を使用して、表面に結合したファージを分離させた。力価カウントをコンセンサス・ペプチド・ファージ実験から得て、WTおよびランダムなペプチド・ファージの力価カウントと比較した(およびPPyClの表面から溶出することができるファージの量を比較することによって、PPyCl特異的なファージ、ランダムに選択した操作されたファージ、およびWTの結合能力を比較するために使用する)。500μLのグリシン-HCl(pH2.2)を使用する力価カウント法では、その他のファージよりもうまくPPyCl特異的なファージが結合することを示した(図9)。ランダムに選択した操作されたファージは、29ファージの平均カウントで最低の回収であった。WTは、57カウントの平均的な回収であった。PPyCl特異的なファージは、124カウントの回収率(表面結合したファージ)であった。
【0057】
免疫化学
免疫化学技術によって、PPyClの表面に結合した蛍光ラベルファージを顕微鏡によって視覚化し、材料に結合したファージの数の定量を可能にする。フルオレッセインでラベルしたストレプトアビジン(Exaplha, Boston, MA)をファージに付着させるために、pVIIIに特異的なM13バクテリオファージに対するビオチン化された抗体(Anti-fd Bacteriophage-Biotin Conjugate from rabbit, Sigma-Aldrich Corp., St. Louis, MO)およびビオチン-ストレプトアビジンの相互作用を使用した。ファージは、蛍光顕微鏡を使用して材料上で視覚化した。ファージは、1×104 pfu/μLの濃度であり、少なくとも約1時間1cm×0.5cmのPPyClの試料と相互作用させた。次いで、材料(PPyCL)を1mLの0.1%のTBS-Tで少なくとも約3回洗浄し、結合していないファージを材料から除去した。1:400希釈の一次抗体(10)(抗体:4%のウシ血清アルブミン[BSA]のpH7.5のTBS溶液)を少なくとも約1時間室温で材料に添加した。試料を1mLのTBS(pH7.5)で少なくとも約2回洗浄した。1:200希釈(フルオレッセインでラベルしたストレプトアビジン:4%のBSAのpH7.5のTBS溶液)のフルオレッセインでラベルしたストレプトアビジンの二次抗体(20)を室温で暗い所で少なくとも約30分間材料に添加した。次いで、材料を1mLのTBS(pH7.5)で少なくとも2回洗浄し、顕微鏡スライド上にマウントした後に視覚化した。イメージを図10に示してあり、微分干渉コントラストオプティクスおよび488nmの選択した励起波長を有する(フルオレッセインのために)Kr/Ar混合気体レーザーを備えたライカTCS 4D共焦点顕微鏡を使用し、発光は、40X油浸レンズで収集した(Microscopy Laboratory of the Institute for Cellular and Molecular Biology, University of Texas, Austin, TX)。
【0058】
図10Bから、PPyCl-ファージは、PPyCl表面と特異的に相互作用したことが示される。図10B〜Gは、PPyCl-特異的な相互作用である高輝度の蛍光を示す(ランダムな結合はほとんどない)。PPyCl特異的なファージ上のペプチド配列がPPyClに対して特異的であったことを確認するために、ランダムなファージおよびWTを使用した。ランダムなファージ上に発現されたペプチド配列は、PPyCl-ファージ上に示されるペプチド配列とは異なっており、また低い強度を有することから、PPyCl-特異的なファージは、特異的にPpyClと結合するが、ランダムなファージは、特異的な相互作用がないことが示差される。たとえば、相互作用が特異的である、図10B(PPyCl特異的なファージ)および図10D(WT)を比較されたい(たとえば、PPyCl特異的なペプチドでより高い蛍光強度である)。図10E〜Gは、抗体、フルオレッセインでラベルしたストレプトアビジン、およびマウンティング媒体からの蛍光の量は、ラベルしたファージの強度と比較して最小限であることを示す。全ての試料は、レーザーではなく、100WのHgランプによって撮像した反射率イメージ(図10A)を除いて、同じレーザー光の強度および露出時間を使用して撮像した。
【0059】
本発明は、材料の表面が生物学的な構造との相互作用を促進するように修飾されていてもよく、二機能性の生体材料を作製するために使用することができることを証明する。免疫化学を使用するものなどの方法により、材料と生物学的な構造との間の相互作用が特異的であることが見いだされる。一つの態様において、THRTSTLDYFVIのペプチド配列は、材料PPyClと特異的に相互作用するコンセンサス領域である。さらなる態様は、材料表面上の生物学的な構造の濃度を空間的に制御することを含み、リンカーとして1つまたは複数の生物学的な構造を含む。たとえば、神経組織で使用したときに、本発明の生体材料は、神経細胞などの生物学的な構造および神経成長因子またはその他の神経に作用する薬剤もしくは薬物などの神経特異的な生体分子を含むことができる。本発明は、組織工学産業の可能性をさらに拡大する。本発明のさらにもう一つの態様において、材料は、生物分解可能であるものなどの(合成により、または天然に)時間とともに修飾され得るものである。さらなる実際の実施例を以下に示してある。
【0060】
生物分解性材料の使用例
いくつかの材料は、これらの分解速度、免疫原性の反応、その他などを制御する可能性があり、したがって、改善された二機能性の生体材料として役立つであろう。分解速度を制御することにより、組織に関した適用に適した生体材料を設計することができる。本発明の一つの態様において、材料のこのような生物分解性のPLGAは、型に鋳造される。使用される鋳造方法は、ポリマー化学術の当業者に直ちに明らかなものである。一つの例において、材料は、溶媒鋳造である。もう一つの態様において、材料は、平滑面を有する厚さが少なくとも約80〜150μmであろうフィルムに鋳造される。
【0061】
PLGAは、通常85:15パーセントの比率(乳酸:グリコール酸)またはPLGA(85:15)で使用される。PLGAフィルムは、1mLのジクロロメタン(Fisher, Scientific, Palatine, IL)を100mgのPLGA(Polysciences Inc., Warrington, PA)に添加して、100mg/mLの濃度を得ることによって構築される。混合物を均一に攪拌し、溶剤蒸発のためにパイレックス(商標)100mLガラス・ビーカー中で一晩乾燥させる。少なくとも約150〜80μmのフィルムの厚さは、PLGAおよびジクロロメタンなどの溶媒の相対濃度によって決定した。PLGAフィルムは、UV保護された乾燥剤中で少なくとも約1月間保管してもよい。PLGAの多くの形態は、時間とともにエステル結合の加水分解を受けるか、または酸化する。
【0062】
PLGAは、生物学的に適合性の材料であるが;しかし、特に1つまたは複数の選択された生物学的な構造と相互作用する能力を有していない。本発明は、PLGAに特異的である生物学的な構造を同定するための方法を提供する。
【0063】
分解可能な材料に特異的な生物学的な構造
PLGAに特異的であったペプチドなどの生物学的な構造は、2回目のまたはもっと後のバイオ・パニングラウンド後に選択したファージから得られた。2〜4ラウンドのバイオ・パニングから得られたペプチド配列の結果を図11に示してある。
【0064】
PLGAまたはPLGA-1の最初のスクリーニングから得られたペプチド配列に対してより完全な解析を行った(図12)。位置あたりのアミノ酸群のパーセントを決定し、共通配列およびペプチドのコンビナトリアル・ライブラリーのアミノ酸群のパーセント存在率と比較した(図13)。PLGA-1について図12に示したコンセンサス領域は、

である。
【0065】
位置あたりのパーセント・アミノ酸群は、比較的良好なコンセンサス配列の確認を与えるが、これでは、コンセンサス配列が完全に予測されない。たとえば、第4位は、ルイス塩基として作用するアミノ酸および酸性の反応性基を有する、第4位に対して競合すると思われる疎水性の反応性基を含むアミノ酸に対して相対的に高い値を有する。また、コンセンサス配列中の塩基性反応性基にマッチしない疎水性のヒドロキシル反応性基に対して高い値を有する第8位に対する場合でもこのとおりである。また、本発明者らは、配列の始まりのヒドロキシル反応性基およびペプチドの配列の最後の疎水性の反応性基の領域に関心を持った。これは三次元ペプチド構造の内部にコイル状ペプチドの疎水性部分および水溶液中のペプチドの外側にヒドロキシル部分を有する共通のタンパク質構造と一致する。PLGAの表面に対するペプチドの結合を決定して、最終的にPLGAに対するペプチドの結合においてヒドロキシルおよび疎水性アミノ酸がなんの役割を有するかを決定するためには、さらに徹底的な解析が必要とされる。
【0066】
ペプチド配列中の類似点を決定するために、第2のペプチド・スクリーニングをPLGAに対して行った。12-merのペプチドのライブラリーでのPLGAの第2のスクリーニングをPLGA-2に対して行った(12merのペプチドのライブラリーでのPLGA-1のスクリーニングと同様の方法を使用する)。PLGAについての第2のスクリーニングの結果を図14に示してある。このPLGAの第2のスクリーニングで、位置あたりのアミノ酸群のパーセントを決定し、コンセンサス配列およびペプチドのコンビナトリアル・ライブラリーのアミノ酸群のパーセント存在率と比較した(図15および16)。PLGA-2について図15に示したコンセンサス領域は、

である。
【0067】
PLGA-1

およびPLGA-2

について得られた配列は、一端に局在化したヒドロキシル反応性基およびペプチド中の一つのアスパラギン酸などの類似点を示す。
【0068】
1つまたは複数の生物学的構造が生物分解性材料に特異的であることの確認
PLGA-1およびPLGA-2についてのコンセンサス領域が材料に特異的であるが、増殖またはバイオ・パニングなどの宿主変異性に特異的でないことを確かめるために、材料特異的なファージをさらに解析した。PLGA-1およびPLGA-2をランダムおよびWTファージと比較した。
【0069】
PLGAについての増幅研究では、PLGA-1およびPLGA-2特異的なファージが、ランダムなファージ・ライブラリーまたはWTと同じレベルに増幅することができ(図17)、したがって特異的な相互作用であったことを示す。図17は、PLGA-1ファージが最も増幅し、0.66±0.05nMの濃度を意味する10-7希釈の間に8±2の平均ファージ・カウントを有することを示す。PLGA-1およびPLGA-2のカウントは、ほぼ同じで;PLGA-2について10-7希釈の間に5±2(0.42+0.05nMの濃度)である。ランダムなファージは、10-7希釈の間に7±2カウントに増幅し(0.58±0.05nMの濃度)、およびWTは、0.17±0.05nMの濃度で2±1(同じ希釈)カウントに増幅した。
【0070】
生物学的な構造と生物分解性の材料との間の相互作用の決定
特異的な生物学的構造と生物分解性の材料との間の相互作用により、材料およびまたは、必要に応じて生物学的な構造を認識し、後で修飾することが可能になる。力価カウント(図18)および免疫化学の使用は、PLGAとペプチドの間の相互作用を決定するために利用できる方法のうちのほんのいくつかの例である。PLGAは、フルオレッセイン(520nm)と同じ発光波長で蛍光を発するので、変形例として蛍光免疫化学は使用しなかった。代わりに、原子力光学顕微鏡法(AFM)を使用する視覚化を用いた(図19)。
【0071】
力価カウント
少なくとも約1x108 pfuのファージで材料(たとえば、PLGA)に添加した。材料を1mLの0.1% TBS-Tで少なくとも約5回洗浄した。少なくとも約9分間、500μLのグリシン-HCl(pH2.2)で材料を溶出することによって非特異的なファージを除去した。比較するために、PLGA支配的なファージ、WT、およびランダムなファージから力価カウントを得た。
【0072】
図18は、ランダムなファージがPLGAに特異的でないために、ランダムなファージは、1±1ファージの平均カウントで最も低い回復をもたらすことを示す。PLGA-1は、ランダムなファージ(5±2ファージの平均カウント)よりも結合することが見いだされた。PLGA-2の親和性は、高く(39±4ファージの平均カウント)、WTは72±10ファージの平均カウントを有した。
【0073】
AFMイメージング
ファージの材料との相互作用の定性分析は、AFMを使用して行った。室温で、少なくとも約1時間、PLGAを1×108 pfuのPLGA-1およびWTと相互作用させた。次いで、材料を1mLの0.1% TBS-Tで少なくとも約5回洗浄し、視覚化のためにAFMディスク上にのせた。AFMは、Zeiss Axiovert 100s-2tv上に取り付けられたデジタル・計測器バイオスコープ(Digital Instruments Bioscope)を備え、Gスキャナを有するチップ・スキャニング・モードで作動する。イメージは、タッピングモードを使用して空気中でとった。125-μmカンチレバーでエッチングしたシリコン・プローブを、これらの共鳴振動数(200〜400kHz)近くで駆動する少なくとも約20〜100N/mの弾力係数で使用した。走査速度は、約1〜5μm/sであった。イメージは、試料の偏りを除去するために一次面を使用して平均化した。
【0074】
PLGA-1特異的なファージを選択し、結合特異性について定性的に解析した。図19AおよびBは、AFMイメージを示す。ファージ上に発現されたペプチドは、特異的な分子認識イベントを経て材料に対する結合を可能にする。ファージが材料に結合する能力を有さない場合、これらは、0.1%のTBS-Tでの洗浄の間に除去されると考えられる。図19Bは、WT試料上にファージが存在しないことは、すべての結合が非特異的であることを示すことを示す。
【0075】
本発明は、これらの使用の例として、組織工学の適用のために、または哺乳類の薬物デリバリー媒体としてその後に使用される材料特異的な生物学的な構造を見いだすために使用してもよい。二機能性のリンカーを有する生体材料は、材料表面に関心対象の1つもしくは複数の生物学的な構造が優位を占めるか、または単に表すだけのために使用してもよい。ペプチドまたはその他の生物学的な構造などの二機能性のリンカーは、2つの「粘着性」末端を有するものであって、いずれか一方が材料に、および他方が生物学的な構造群に、または代わりに生物学的な構造に結合する。必要な場合には、その後に層をなした生体材料を構築してもよい。重大なことに、本発明の各部の多くは、容易に自動化されるであろう。
【0076】
また、生体材料に対する特異的な認識および結合をもたらす独立した合成ペプチドまたはペプチド類似体は、RGBもしくはたとえばファージディスプレイ・スクリーニングによって同定されたペプチド配列に基づくその他の認識ユニットに結合することができるリンカー基と共に、または伴わずに作製することができる。さらに、独立したペプチド類は、化学的または生物学的な合成経路によって作製されてもよいし、このようなペプチドのウイルス発見の間に見られるものと同様に機能するか、または機能を増強することができると考えられる。文献の参照では、ウイルスに結合したときにポジティブな結合認識配列として同定されたペプチドは、ウイルスを伴わずに使用することができることの例を記載している。たとえば、

を参照されたい。
【0077】
ポリピロール系について、さらなる実際の実施例のデータが得られた。ペプチドを合成し、その配列をT59ファージから決定した(すなわち、SEQ IN NO. 1)。ペプチドが、ファージが存在しなくても単独でPPyClと結合するかどうかを決定するために、結合アッセイを行った。結果を図20に提供してあり、PPyPSS(ポリスチレンスルホン酸)で不純物を添加したポリピロール、およびポリスチレン(PS)と比較して、T59ペプチドは、PPyClと特異的に結合することを証明する。
【0078】
加えて、血清添加培地中におけるT59ペプチドの結合安定性も、免疫蛍光を使用する実際の実施例において評価した(以前の全ての実験が塩類緩衝液中で行われた点に留意されたい)。結果を図21に示してあり、T59ペプチドの有意な画分が、血清添加培地中における3週間のインキュベーション後でもPPyClに結合したままだったことを例証し、T59ペプチドとPPyCl表面との間の強く安定した相互作用を示差している。
【0079】
最後に、実際の実施例で細胞接着を研究するために、細胞接着を促進するラミニン由来のペプチドRGDでPPyCl特異的なT59ペプチドをC末端で修飾した。図22に示した結果は、T59-RGD修飾されたPPyClは、無修飾PPyClと比較したときに細胞接着を促進したことを例証する。これらの研究は、細胞接着および遊走の制御が重要である組織工学の適用のために、PPyClのバイオミメティク・デザインのためのT59ペプチドの使用を証明した。
【0080】
表題「Fabrication of Novel Interactive Biomaterials via Peptide Integration for Tissue Engineering Applications」のKiley Preston-Halfmann MillerによるM.A.学位論文(University of Texas)は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。この学位論文は、以下節を含む:導入(第1章);ペプチドの選択(第2章);塩素ドーピングしたポリピロール(第3章);ポリ(乳酸-コ-共同グリコール酸)(第4章);および結論(第5章)。本発明の実施の際にさらなるガイダンスを提供する36個の参照に対する引用は、55〜57ページに提供されている。
【0081】
本発明は、例示の態様に関して記載したが、本明細書は、限定的に解釈されることは企図されない。例示の態様の種々の修飾および組み合わせ、並びに本発明のその他の態様は、本明細書を参照することにより、当業者にとって明らかとなるであろう。従って、添付の請求の範囲は、このような任意の修飾または態様を含むことが企図される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
本発明の特徴および利点のより完全な理解のために、添付の図面と共に本発明の詳細な説明に対してここで参照を行う。
(図1)本発明に従った材料および生体分子を接続する二機能性のリンカーの微視的な説明図である。
(図2)宿主内部で使用する二機能性のシステムの微視的な説明図である。
(図3)本発明に従って、材料表面上の濃度勾配に生体分子を含む二機能性のリンカーを有する生体材料を使用して神経誘導チャネルを介してガイドされる神経細胞軸索の巨視的な説明図である。
(図4)材料表面を認識する1つまたは複数のペプチドを選択するために使用したスクリーニング(バイオ・パニング)プロセスの説明図である。
(図5)PPyCl特異的なファージから得られるバイオ・パニングラウンド3〜5からのペプチド配列を含む。
(図6)12アミノ酸の位置に対して、位置あたりのパーセント・アミノ酸発生率を比較することによって決定された、PPyClに対して優勢な配列を

として示してあり、それぞれのカラムの最大パーセントは、ペプチド内のその位置について最高のアミノ酸発生率に対応する。
(図7)PPyClの位置あたりのパーセント・アミノ酸群が、共通配列および群全体の発症率と比較することができる(pIII上に発現されたペプチドの組み合わせのライブラリーに関連して)値を与えることを示す。
(図8)PPyClについて選択したファージの増幅研究の例を示し、PPyCl配列は、

であり、ランダム配列は、

である。
(図9)PPyClについて選択したファージの結合親和性研究の例であり、PPyCl配列は、

であり、ランダム配列は、

である。
(図10)(A)ファージを有するPPyCl、(B)10-20のPPyCl特異的なファージ、(C)10-20のランダムなファージ、(D)10-20のWT、(E)10-20、(F)20、および(G)マウンティング媒体類の反射率イメージであり、PPyCl配列は、

であり、ランダム配列は

である。
(図11)本発明に従って、PLGA-特異的なファージから得られるバイオパン・ラウンド2〜4から、ペプチド配列を含む
(図12)12アミノ酸の位置に対して、位置あたりのパーセント・アミノ酸発生率を比較することによって決定された、PLGAに対して優勢な配列を

として示してあり、それぞれのカラムの最大パーセントは、その位置について最高のアミノ酸発生率に対応する。
(図13)PLGA-1の位置あたりのパーセント・アミノ酸群が、共通配列および全体のアミノ酸群の発症率と比較することができる値を与えることを示す(pIII上に発現されたペプチドのコンビナトリアル・ライブラリーと比較して)。
(図14)PLGA特異的なファージから得られるバイオパンのラウンド3〜5からのペプチド配列を含む。
(図15)12アミノ酸の位置に対して、位置あたりのパーセント・アミノ酸発生率を比較することによって決定された、PLGAに対して優勢な配列を

として示してあり、それぞれのカラムの最大パーセントは、その位置について最高のアミノ酸発生率に対応する。
(図16)PLGA-2の位置あたりのパーセント・アミノ酸群が、共通配列およびアミノ酸群の発症率の全体の割合と比較することができる値を与えることを示す(pIII上に発現されたペプチドのコンビナトリアル・ライブラリーと比較して)。
(図17)PLGAについて選択したファージの増幅研究の例であって、PLGA-1配列は、

であり、
PLGA-2配列は、

であり、およびランダム配列は、

である。
(図18)PLGAについて選択したファージの結合親和性を示しており、PLGA-1配列は、

であり、
PLGA-2配列は、

であり、およびランダム配列は、本発明に従って

である。
(図19)(A)数回の洗浄後に材料に結合したPLGA-1ファージであって、スケール・バーは、1μmを表し、(B)PLGAに対するWTであって、試料は、20nmのz-スケールでの4μm×4μmであるAFMイメージを含む。
(図20)T59ペプチド

(T59ファージ由来の配列から合成される)は、PPyClに結合するが、PPyPSSまたはポリスチレン(PS)に結合しないことを証明する。結合は、ビオチン化されたT59ペプチドおよびストレプトアビジン-FITC標識化を使用して研究した。(a)T59ペプチドが添加されていない対照基質。(b)0.5×0.5cm2のPPyCl基質に結合した15μMペプチド。(c)0.5×0.5cm2のPPyCl基質に結合した15μMペプチド。(d)0.5×0.5cm2ポリスチレン(PS)基質に結合した15μMペプチド。全ての試料を等濃度のストレプトアビジン-FITCと共にインキュベートした。バー、10μm。
(図21)PPyClに結合したT59ペプチド(SEQ ID NO.1)は、血清含有培地中で安定なことを示す。結合は、ビオチン化されたT59ペプチドおよびストレプトアビジン-FITCラベルを使用して研究した。(a)T59ペプチドが添加されていない対照基質、(b)および(c)0.5×0.5cm2のPPyCl基質を15μMペプチドと共にインキュベートし、次いで、試料を血清含有培地(pH7.4および15%の血清中)に3時間(b)、7日間(c)、および3週間(d)置いた。バー、10μm。
(図22)GRGDSで修飾したT59ペプチド(SEQ ID NO.1)は、無血清環境におけるPPyClに対するPC12細胞の接着を促進することを示す。(a)無血清培地中においてPPyClに対するT59-RGDを伴わない、および(b)60μMのT59-RGDペプチドで、〜106細胞/試料をインキュベーションすることにより、0.75×0.75cm2のPPyCl表面に対して相互作用し、無血清培地中で細胞接着を促進した。バー、10μm。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10A】

【図10B】

【図10C】

【図10D】

【図10E】

【図10F】

【図10G】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二機能性の特異性構造であって;
第1の結合ドメインおよび第2の結合ドメインを含むペプチド・リンカーであって、第1の結合ドメインは、電気伝導性ポリマーまたは生物分解性の材料である第1の生体材料に対して高親和性を有する特異的結合について選択的であり、および第2の結合ドメインは、第2の生体材料に対して高親和性を有する特異的結合について選択的を含む特異性構造。
【請求項2】
第1の生体材料が電気伝導性合成ポリマーである、請求項1記載の特異性構造。
【請求項3】
第1の生体材料が生物分解性の材料である、請求項1記載の特異性構造。
【請求項4】
第1のまたは第2の結合ドメインがペプチドとしてさらに定義される、請求項1記載の特異性構造。
【請求項5】
第2の結合ドメインが、核酸、ペプチド、タンパク質、発色団、薬物、成長因子、発色団、または有機分子の結合のためのものである、請求項1記載の特異性構造。
【請求項6】
第2の結合ドメインがプラスチック、セラミック、金属、磁性、コンポジット、ポリマー、並びに修飾、および/またはこれらの組み合わせに対する結合のためのものである、請求項1記載の特異性構造。
【請求項7】
第2の結合ドメインが細胞または生体分子に対する結合する、請求項1記載の特異性構造。
【請求項8】
第1の結合ドメインおよび第2の結合ドメインを含む二機能性のペプチド・リンカーであって、
第1の結合ドメインは、合成の生体適合性ポリマー表面に対して選択的であり、および第2の結合ドメインは、材料に対して選択的であるペプチド・リンカー。
【請求項9】
二機能性のリンカーを作製する方法であって:
生体材料に対して選択的に結合するペプチドのライブラリーから、第1の結合ドメイン・ペプチドを含むペプチドを選択する工程;および、
標的物質に対して選択的に結合するペプチドと共に第2の結合ドメインを含める工程、
を含む方法。
【請求項10】
ライブラリーがペプチド・ファージディスプレイ・ライブラリーである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
第2の結合ドメインが、選択的にタンパク質と結合するペプチドとしてさらに定義される、請求項9記載の方法。
【請求項12】
第2の結合ドメインがペプチドとしてさらに定義され、およびペプチドが選択的にプラスチック、セラミック、金属、磁性、コンポジット、ポリマー、並びに修飾および/またはこれらの組み合わせと結合する、請求項9記載の方法。
【請求項13】
電気伝導性合成ポリマーと選択的に結合するペプチドのライブラリーから、第1の結合ドメイン・ペプチドを含むペプチドを選択することを含む方法。
【請求項14】
生物分解性の材料と選択的に結合するペプチドのライブラリーから、第1の結合ドメイン・ペプチドを含むペプチドを選択することを含む方法。
【請求項15】
ライブラリーが、ペプチド・ファージディスプレイ・ライブラリーである、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
電気伝導性ポリマーと特異的に結合するペプチドを含む組成物。
【請求項17】
生物分解性の材料に特異的に結合するペプチドを含む組成物。
【請求項18】
ペプチドが標的に結合するようにさらに機能をもつ、請求項16または17記載の組成物。
【請求項19】
請求項16記載の組成物によって修飾された表面である電気伝導性ポリマー。
【請求項20】
請求項17記載の組成物によって修飾された表面である生物分解性の材料。

【公表番号】特表2006−517186(P2006−517186A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545260(P2004−545260)
【出願日】平成15年9月4日(2003.9.4)
【国際出願番号】PCT/US2003/027489
【国際公開番号】WO2004/035612
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(503163480)ボード オブ リージェンツ ユニバーシティ オブ テキサス システム (7)
【Fターム(参考)】