説明

二次元コード,二次元コードリーダおよびプログラム

【課題】二次元コードにおけるセルに付けられた色を特定するにあたり、二次元コードを表す画像における撮影環境の影響を受けにくくする。
【解決手段】二次元コードは、セル群それぞれに、そのセル群で示すべき情報の対応づけられた情報色または組合せ色でマークが付けられており、セル群におけるセルCそれぞれのマークは、色成分の分布を表す多次元空間内で情報色の成分又は組み合わせ色における各色の成分のいずれかを最大化する座標位置に配置される成分領域内における特定の座標の色で付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルが配列されてなる二次元コード、および、この二次元コードを読み取って情報を識別する二次元コードリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、情報容量の大きい二次元コードとして、複数のセルそれぞれに色を付けることにより情報をエンコードしたものを提案している(特許文献1参照)。
この二次元コードでは、同一セルに複数の色のいずれかを付すという手法で、そのセルで表される情報をエンコードしているため、単一セル当たりの情報容量を大きくすることができる結果、二次元コード全体としての情報容量を大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−048070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただ、上記二次元コードでは、コードリーダ側でセルに付けられた色を特定するにあたり、二次元コードを表す画像の撮影環境によっては本来と異なる色として特定されてしまい、結果的にセルで表される情報が間違って識別されてしまうことがあった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、二次元コードにおけるセルに付けられた色を特定するにあたり、二次元コードを表す画像における撮影環境の影響を受けにくくするための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の構成によれば、m×n(1≦m,1≦n)にセルが配列されてなる二次元コードであって、前記m×nに配列されたセルをそれぞれ1以上のセルからなるセル群に分けた場合における各セル群には、それぞれ異なる情報が対応づけられた複数の色(以降「情報色」という)または色の組み合わせ(以降「組合せ色」という)のうち、該セル群で示すべき情報に対応づけられた前記情報色または前記組合せ色によりマークが付けられており、色成分の分布を表した多次元空間内において、それぞれ多次元領域として拡がる複数の成分領域内における特定の座標で表される成分のそれぞれが、前記情報色の成分または前記組み合わせ色における各色の成分に対応し、前記複数の成分領域のそれぞれは、前記情報色の成分又は前記組み合わせ色における各色の成分のいずれかを最大化する前記多次元空間内の座標位置に配置されることを特徴とする二次元コードが提供される。
【0007】
このように構成された二次元コードは、セル群それぞれに、そのセル群で示すべき情報の対応づけられた情報色または組合せ色でマークが付けられており、セル群におけるセルそれぞれのマークは、色成分の分布を表す多次元空間内で情報色の成分又は組み合わせ色における各色の成分のいずれかを最大化する座標位置に配置される成分領域内における特定の座標の色で付けられている。
【0008】
つまり、セルそれぞれに付けられたマークは、同一成分領域の色でマークが付けられたセルを除き、他のセルと色成分が干渉することはないため、少なくともセルそれぞれに付けられた色がいずれの成分領域内にあるかを特定できれば、その成分領域内における特定の座標の色であることまで特定しなくても、その成分領域における特定の座標の色でマークが付されたものと判定することができる。
【0009】
このことは、二次元コードを表す画像の撮影環境により本来と異なる色でマークが付された状態になっているセルであっても、マークの色が成分領域内に収まっていれば、その色を特定の座標の色、つまり本来の色として特定できることを意味している。
【0010】
このように、撮影環境により本来と異なる色になっていたとしても、その影響を成分領域により抑えることができるため、各セルにおけるマークの色を適切に判定でき、結果的にセル群で表される情報が間違って識別されてしまうことを防止できる。
【0011】
この構成において、「セル群にマークを付ける」とは、例えば、セル群における各セルを塗りつぶす,各セルに特定の記号を記録する,特定の図形(例えば、丸や多角形など各種図形)を記録する,などといったことである。
【0012】
また、上記構成における成分モデルは、多次元空間内で色成分の分布を表すものであればよく、その空間は、二次元以上の空間とすればよい。
また、上記構成において、成分モデルに配置した成分領域は、二次元コードにおいて使用すべき色の数だけ規定しておけばよく、それぞれの成分領域を干渉しない領域に配置することができれば、その具体的な数については特に限定されない。なお、ここでいう「干渉しない」とは、成分領域それぞれが重ならないように配置することであり、このためには、例えば、それぞれを一定以上の間隔で配置することが考えられる。
【0013】
本発明の第2の構成によれば、前記複数の成分領域内における前記特定の座標で表される成分は、少なくともシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色成分を含むことが好適である。
また、上記成分領域は、画像の撮影環境に応じて生じうる誤差の範囲を充分に包摂できる空間として規定すればよい。例えば、特定の座標における色を一般的な撮影環境下での色とし、この色から撮影環境に応じて生じうる誤差の範囲を含む領域を成分領域とすればよく、このための構成としては、上記構成を以下に示す第3の構成のようにすることが考えられる。
【0014】
第3の構成において、前記成分領域は、該成分領域内における前記特定の座標で表される成分に対応する、前記情報色の成分または前記組み合わせ色における各色の成分の、画像取得上の許容誤差範囲を含む領域として規定されることが好適である。
【0015】
この構成であれば、二次元コードを表す画像の撮像環境により本来と異なる色でマークが付された状態になっているセルであっても、本来の色が成分領域の中心座標であるため、マークの色が成分領域の外にはみ出しにくくなり、その色を特定の座標の色、つまり本来の色として特定できる可能性が高くなる。
【0016】
また、上記各構成は、前記m×nに配列されたセルそれぞれは、あらかじめ定められた色が付されたセパレータで分けられており、前記成分モデルに配置された前記成分領域内における特定の座標で表される成分それぞれは、複数の前記情報色における成分または複数の前記組合せ色における各色の成分、および、前記セパレータに付けられた色の成分、として用いられてよい。
【0017】
この構成であれば、セルに付されたマークの色とは異なる成分領域の色でセパレータが形成されているため、二次元コードを表す画像の撮影環境により本来と異なる色で形成された状態になっているセパレータであっても、その色が成分領域内に収まっていれば、その色を本来の色、つまり確実にセパレータとして特定できる。
【0018】
本発明の第4の構成によれば、m×n(1≦m,1≦n)にセルが配列されてなる二次元コードであって、前記m×nに配列されたセルをそれぞれ1以上のセルからなるセル群に分けた場合における各セル群には、それぞれ異なる情報が対応づけられた複数の色(以降「情報色」という)または色の組み合わせ(以降「組合せ色」という)のうち、該セル群で示すべき情報に対応づけられた前記情報色または前記組合せ色によりマークが付けられており、色成分の分布を表した多次元空間内において、それぞれ多次元領域として拡がる複数の成分領域内における特定の座標で表される成分のそれぞれが、前記情報色の成分または前記組み合わせ色における各色の成分に対応し、前記複数の成分領域内における前記特定の座標で表される成分は、少なくともシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色成分を含むことを特徴とする二次元コードが提供される。
【0019】
本発明の第5の特徴によれば、m×n(1≦m,1≦n)にセルが配列されてなる二次元コードを読み取って情報を識別する二次元コードリーダであって、前記二次元コードを示す画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段により取得された画像から、該画像で示される二次元コードにおけるセルそれぞれに付けられたマークそれぞれの色を特定するセル特定手段と、前記セル特定手段により特定されたセルの色に基づいて、前記二次元コードにおける1以上のセルからなるセル群に付けられた色または色の組合せに対応する情報それぞれを、1以上のセルからなるセル群の色または色の組合せと情報との対応関係が登録されたデータベースに基づいて特定し、該特定した情報それぞれを、前記画像取得手段により取得された画像で示される二次元コードから識別される情報群として取得する情報取得手段と、を備えており、色成分の分布を表した多次元空間内において、それぞれ多次元領域として拡がる複数の成分領域内における特定の座標で表される成分のそれぞれが、前記情報色の成分または前記組み合わせ色における各色の成分に対応し、前記複数の成分領域のそれぞれは、前記情報色の成分又は前記組み合わせ色における各色の成分のいずれかを最大化する前記多次元空間内の座標位置に配置され、前記セル特定手段は、前記二次元コードにおけるセルそれぞれに対して、該セルに付けられた色の成分がいずれの前記成分領域に分布されたものであるかを判定し、該判定した成分領域における特定の座標で表される成分の色を、そのセルに付けられた色であると特定する ことを特徴とする二次元コードリーダが提供される。
【0020】
このように構成された二次元コードリーダであれば、上記第1〜第4のいずれかの構成に係る二次元コードから情報を識別するのに適している。
【0021】
この構成において、前記セル特定手段が、前記二次元コードにおける各位置のセルそれぞれに対して、該セルに付けられた色の成分が、前記成分モデルに配置されたいずれの前記成分領域に分布されたものであるかを判定し、該判定した成分領域における中心座標で表される成分の色を、そのセルに付けられた色であると特定してよい。
【0022】
この構成であれば、二次元コードから情報を識別するのに適している。
【0023】
この構成において、前記セル特定手段は、前記成分モデルに配置された前記成分領域のうち、前記二次元コードにおいて各セルを分かつセパレータに割り当てられた成分領域内の成分で表される色となっている領域を、前記画像取得手段により取得された画像の画像領域から特定し、該特定した領域を前記二次元コードにおけるセパレータとみなし、該セパレータに分けられた領域それぞれを、前記二次元コードにおけるセルの位置として特定してよい。
【0024】
また、上記課題を解決するためには、コンピュータを、第5から第8のいずれかの構成に係る二次元コードリーダが備える全ての手段として機能させるためのプログラムとしてもよい。
【0025】
このプログラムにより制御されるコンピュータは、第5から第8のいずれかの構成に係る二次元コードリーダの一部を構成することができる。
なお、上述したプログラムは、コンピュータシステムによる処理に適した命令の順番付けられた列からなるものであって、各種記録媒体や通信回線を介して二次元コードリーダや、これを利用するユーザ等に提供されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】二次元コードリーダの構成を示すブロック図
【図2】二次元コードを示す図
【図3】成分モデルを示す図
【図4】情報識別処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(1)全体構成
二次元コードリーダ1は、図1に示すように、二次元コードリーダ1全体を制御する制御部10、各種情報を表示する表示部20、ユーザからの操作を受け付ける操作部30、メディアを介して二次元コードリーダ1外部からデータを入力可能なメディアドライブ40、画像を示す画像データを取得可能なカメラ50などを備えている。
【0028】
なお、この二次元コードリーダ1は、例えば、携帯電話端末、携帯情報端末、周知のパーソナルコンピュータなどに実装されるものとして構成される。
(2)二次元コードについて
ここで、二次元コードリーダ1により読み取る二次元コード100について説明する。
【0029】
二次元コード100は、図2に示すように、黒色のセパレータ110上にm×n(1≦m,1≦n)でセルC11〜Cmnが配列された構成となっている。なお、セルCそれぞれは、一定の隙間が設けられた状態で配列されている。
【0030】
この二次元コード100において、m×nに配列されたセルをそれぞれ1以上のセルからなるセル群に分けた場合における各セル群には、それぞれ異なる情報が対応づけられた複数の色(以降「情報色」という)または色の組み合わせ(以降「組合せ色」という)のうち、そのセル群で示すべき情報に対応づけられた情報色または組合せ色によりマークが付けられている。なお、本実施形態においては、セルCを該当色で塗りつぶし、セルCを該当色の領域とすることにより、セルCにマークを付けた状態としている。
【0031】
また、各行のセルCのうち、先頭(同図の左端,以下同様)に位置するセルC11〜Cm1は、二次元コード100の位置を特定するための特定セルとして割り当てられている。そして、この特定セルに付けられた色とセパレータ110とにより、二次元コード100の位置および向きを特定するためのパターンを形成している。
【0032】
これらセルCそれぞれに付けられたマークの色は、図3に示すように、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の分布を表した三次元空間内において、それぞれ三次元領域として球形に拡がる複数(本実施形態では「9」)の成分領域を、これら成分領域同士が互いに干渉しない大きさおよび位置関係で配置した成分モデルにより決められる。具体的にいえば、この成分モデルに配置された成分領域内における中心座標で表される成分それぞれが、情報色の成分または組合せ色における各色の成分として、セル群にマークが付けられている。
【0033】
ここでいう「成分領域同士が互いに干渉しない」とは、各成分領域が重複しないように、各成分領域同士の間隔を空けて配置したり、各成分領域の境界を隣接させて配置したり、することである。
【0034】
また、成分領域の大きさは、画像の撮影環境に応じて生じうる誤差の範囲を充分に包摂できる空間として規定したものであり、本実施形態では、特定座標における色を一般的な撮影環境下での色とし、この色から撮影環境に応じて生じうる誤差の範囲を含む領域を成分領域として規定している。
【0035】
また、二次元コード100における特定セルに付けられたマークの色、および、セパレータ110の色には、セルCに付すマークの色に用いられていない成分領域における中心座標の色(本実施形態では黒に近い成分の色)が用いられている。
(3)情報識別処理
以下に、二次元コードリーダ1(の制御部10)により実行される情報識別処理の処理手順を図4に基づいて説明する。この情報識別処理は、情報識別処理を開始するための操作が操作部30に対してなされた際に開始される。
【0036】
まず、画像データが取得される(s110)。ここでは、カメラ50に撮像された画像を示す画像データ、メディアドライブ40を介してメディアから入力される画像データ、制御部10自身で生成した画像データなどが、制御部10の内蔵メモリに読み込まれる。
【0037】
次に、s110にて取得された画像データについて、この画像データで示される画像の中に二次元コード100が存在するか否かがチェックされる(s120)。ここでは、まず、s110にて取得された画像データで示される画像から、二次元コード100の位置を特定するためのパターンの検索が行われる。そして、そのようなパターン,つまり特定セルおよびセパレータ110からなる領域が検出されたことをもって、二次元コード100が存在すると判定される。
【0038】
このs120による検索で、二次元コード100が存在しないと判定された場合(s120:NO)、本情報識別処理が終了する。
一方、s120による検索で、二次元コード100が存在すると判定された場合(s120:YES)、画像データで示される画像から二次元コード100それぞれの画像領域が抽出される(s130)。ここでは、s110にて取得された画像データで示される画像から、二次元コード100の位置を特定するためのパターンを有する画像領域が、それぞれ二次元コード100の画像領域として抽出される。そして、このようにして抽出された画像領域からなる画像データそれぞれが生成される。
【0039】
次に、s130にて抽出された二次元コード100の領域のうち、未処理の画像領域が存在するか否かがチェックされる(s140)。ここでは、s130にて抽出された二次元コード100の画像領域の中に、以降の処理で情報群の識別が行われていない未処理の画像領域が存在するか否かがチェックされる。
【0040】
このs140で未処理の画像領域が存在すると判定された場合には(s140:YES)、そのような未処理の画像領域のうち、いずれかの画像領域が以降の処理対象として選択される(s150)。
【0041】
次に、s150にて選択された画像領域から、この画像に含まれる二次元コード100におけるセルCそれぞれの位置が特定される(s160)。ここでは、まず、成分モデルに配置された成分領域のうち、二次元コード100において各セルCを分かつセパレータ110に割り当てられた成分領域内の成分で表される色となっている領域が、上記s150にて選択された画像領域から特定される。続いて、この領域を二次元コード100におけるセパレータ110とみなし、このセパレータ110に分けられた領域それぞれが、二次元コード100におけるセルCの位置として特定される。このとき、セパレータ110の領域であることは、画像領域において色を検出した領域が、セパレータ110に対応する成分領域内に分布された(位置する)成分となっていることをもって判定される。
【0042】
次に、s160にて位置が特定されたセルCそれぞれに付けられたマークの色が特定される(s170)。ここでは、s160にて位置が特定されたセルCそれぞれに対し、このセルCに付けられた色の成分が、成分モデルに配置されたいずれの成分領域に分布されたものであるかが判定され、こうして判定された成分領域における特定座標で表される成分の色が、そのセルCに付けられたマークの色として特定される。このとき、セルCの領域であることは、画像領域において色を検出した領域が、セルCに対応するいずれかの成分領域内に分布された成分となっていることをもって判定される。
【0043】
次に、s160にて特定されたセルCの位置、および、s170にて特定されたセルCの色に基づいて、二次元コード100における1以上のセルCからなるセル群に対応する情報群が識別される(s180)。ここでは、各セルCの位置およびマークの色に基づき、二次元コード100における1以上のセルCからなるセル群それぞれに付けられた色または色の組合せが特定され、こうして特定された色または色の組合せに対応する情報それぞれが、セル群それぞれの色または色の組合せと情報との対応関係が登録されたデータベースに基づいて特定される。こうして、特定された情報それぞれ(情報群)は、上記s150にて抽出された画像領域で示される二次元コード100から識別される情報群となる。
【0044】
こうして、s180による認識が行われたら、s140へ戻り、以降、s140からs180までが、s130にて抽出された全ての二次元コード100に対して行われるまで繰り返される。
【0045】
そして、s140にて未処理の画像領域が存在しないと判定された,つまりs140からs160までが全ての二次元コード100に対して行われたら(s140:NO)、s180にて認識された各情報群(s160で情報が認識されていなければ、その旨のメッセージ)が、表示部20に表示された後(s190)、本情報識別処理が終了される。なお、このs170では、表示部20に情報群が表示された後、操作部30に対して所定の操作が行われた場合に、この情報群がRAM16やメディアドライブ40にセットされたメディアに記録される。
(4)作用、効果
上記実施形態における二次元コード100は、セル群それぞれに、そのセル群で示すべき情報の対応づけられた情報色または組合せ色でマークが付けられており、セル群におけるセルCそれぞれのマークは、色成分の分布を表した成分モデルのうち、互いに干渉しない位置関係で配置された成分領域内における特定の座標の色で付けられている。
【0046】
つまり、セルCそれぞれに付けられたマークは、同一成分領域の色でマークが付けられたセルCを除き、他のセルCと色成分が干渉することはないため、少なくともセルCそれぞれに付けられた色がいずれの成分領域内にあるかを特定できれば、その成分領域内における特定の座標の色であることまで特定しなくても、その成分領域における特定の座標の色でマークが付されたものと判定することができる。
【0047】
このことは、二次元コード100を表す画像の撮影環境により本来と異なる色でマークが付された状態になっているセルCであっても、マークの色が成分領域内に収まっていれば、その色を特定の座標の色、つまり本来の色として特定できることを意味している。
【0048】
このように、撮影環境により本来と異なる色になっていたとしても、その影響を成分領域により抑えることができるため、制御部10側では、各セルCにおけるマークの色を適切に判定でき、結果的にセル群で表される情報が間違って識別されてしまうことを防止できる。

【0049】
また、上記実施形態であれば、二次元コード100を表す画像の撮影環境により本来と異なる色でマークが付された状態になっているセルCであっても、本来の色が成分領域の中心座標であるため、マークとして付された色が成分領域の外にはみ出しにくくなり、その色を特定座標の色、つまり本来の色として制御部10側で特定できる可能性が高い。
【0050】
また、上記実施形態であれば、二次元コード100は、セルCに付されるマークの色とは異なる成分領域の色でセパレータが形成されているため、制御部10側では、二次元コード100を表す画像の撮影環境により本来と異なる色で形成された状態になっているセパレータであっても、その色が成分領域内に収まっていれば、その色を本来の色、つまり確実にセパレータとして特定できる。
(5)変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0051】
例えば、上記実施形態においては、二次元コード100におけるセルCを該当色の領域として構成することにより、セルCにマークを付けた状態を実現している。しかし、セルCにマークを付けるためには、例えば、各セルに特定の記号を記録する、特定の図形(例えば、丸や多角形など各種図形)を記録する、などといったことにより、実現してもよい。
【0052】
また、上記実施形態においては、成分モデルが三次元空間である場合を例示した。しかし、この成分モデルについては、多次元空間で色成分の分布を表すものであれば、その空間を三次元以外の空間としてもよい。
【0053】
また、上記実施形態において、成分モデルに配置した成分領域は、二次元コード100において使用すべき色の数だけ規定しておけばよく、それぞれの成分領域を干渉しない領域に配置することができれば、その具体的な数については特に限定されない。
【0054】
また、上記実施形態においては、CMYの色空間で成分モデルを構成しているが、成分モデルの色空間は、三次元空間で色成分を表すものであれば、CMY以外の色空間を採用できることはいうまでもない。
【0055】
また、上記実施形態における二次元コード100のセパレータ110は、全て同一の色となっているが、このセパレータ110は、それぞれ同一方向に隣接するセルCに付けられたマークの色に応じてあらかじめ定めた色としてもよい。この場合、図4のs160でセルCの位置を特定するに際し、画像領域を一定方向に沿って走査する過程であるセルCの色が特定された後、この色に対応するセパレータ110の色が検出されたことをもって、先の色を特定したセルCの領域が終了してセパレータ110の領域に到達したと判定するように構成すればよい。この場合、セパレータ110の色を同一色に揃える必要がなくなるため、色の自由度が高くなり、より二次元コード100としてのデザイン性を高めることができる。
(6)本発明との対応関係
以上説明した実施形態において、図4のs110が本発明における画像取得手段であり、同図s160,s170が本発明におけるセル特定手段であり、同図s180が本発明における情報取得手段である。
【符号の説明】
【0056】
1…二次元コードリーダ、10…制御部、20…表示部、30…操作部、40…メディアドライブ、50…カメラ、100…二次元コード、110…セパレータ、C…セル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
m×n(1≦m,1≦n)にセルが配列されてなる二次元コードであって、
前記m×nに配列されたセルをそれぞれ1以上のセルからなるセル群に分けた場合における各セル群には、それぞれ異なる情報が対応づけられた複数の色(以降「情報色」という)または色の組み合わせ(以降「組合せ色」という)のうち、該セル群で示すべき情報に対応づけられた前記情報色または前記組合せ色によりマークが付けられており、
色成分の分布を表した多次元空間内において、それぞれ多次元領域として拡がる複数の成分領域内における特定の座標で表される成分のそれぞれが、前記情報色の成分または前記組み合わせ色における各色の成分に対応し、
前記複数の成分領域のそれぞれは、前記情報色の成分又は前記組み合わせ色における各色の成分のいずれかを最大化する前記多次元空間内の座標位置に配置される
ことを特徴とする二次元コード。
【請求項2】
前記複数の成分領域内における前記特定の座標で表される成分は、少なくともシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色成分を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の二次元コード。
【請求項3】
前記成分領域は、該成分領域内における前記特定の座標で表される成分に対応する、前記情報色の成分または前記組み合わせ色における各色の成分の、画像取得上の許容誤差範囲を含む領域として規定される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の二次元コード。
【請求項4】
m×n(1≦m,1≦n)にセルが配列されてなる二次元コードであって、
前記m×nに配列されたセルをそれぞれ1以上のセルからなるセル群に分けた場合における各セル群には、それぞれ異なる情報が対応づけられた複数の色(以降「情報色」という)または色の組み合わせ(以降「組合せ色」という)のうち、該セル群で示すべき情報に対応づけられた前記情報色または前記組合せ色によりマークが付けられており、
色成分の分布を表した多次元空間内において、それぞれ多次元領域として拡がる複数の成分領域内における特定の座標で表される成分のそれぞれが、前記情報色の成分または前記組み合わせ色における各色の成分に対応し、
前記複数の成分領域内における前記特定の座標で表される成分は、少なくともシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色成分を含む
ことを特徴とする二次元コード。
【請求項5】
m×n(1≦m,1≦n)にセルが配列されてなる二次元コードを読み取って情報を識別する二次元コードリーダであって、
前記二次元コードを示す画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段により取得された画像から、該画像で示される二次元コードにおけるセルそれぞれに付けられたマークそれぞれの色を特定するセル特定手段と、
前記セル特定手段により特定されたセルの色に基づいて、前記二次元コードにおける1以上のセルからなるセル群に付けられた色または色の組合せに対応する情報それぞれを、1以上のセルからなるセル群の色または色の組合せと情報との対応関係が登録されたデータベースに基づいて特定し、該特定した情報それぞれを、前記画像取得手段により取得された画像で示される二次元コードから識別される情報群として取得する情報取得手段と、を備えており、
色成分の分布を表した多次元空間内において、それぞれ多次元領域として拡がる複数の成分領域内における特定の座標で表される成分のそれぞれが、前記情報色の成分または前記組み合わせ色における各色の成分に対応し、
前記複数の成分領域のそれぞれは、前記情報色の成分又は前記組み合わせ色における各色の成分のいずれかを最大化する前記多次元空間内の座標位置に配置され、
前記セル特定手段は、前記二次元コードにおけるセルそれぞれに対して、該セルに付けられた色の成分がいずれの前記成分領域に分布されたものであるかを判定し、該判定した成分領域における特定の座標で表される成分の色を、そのセルに付けられた色であると特定する
ことを特徴とする二次元コードリーダ。
【請求項6】
前記複数の成分領域内における前記特定の座標で表される成分は、少なくともシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色成分を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の二次元コードリーダ。
【請求項7】
前記成分領域は、該成分領域内における前記特定の座標で表される成分に対応する、前記情報色の成分または前記組み合わせ色における各色の成分の、画像取得上の許容誤差範囲を含む領域として規定される
ことを特徴とする請求項5または6に記載の二次元コードリーダ。
【請求項8】
m×n(1≦m,1≦n)にセルが配列されてなる二次元コードを読み取って情報を識別する二次元コードリーダであって、
前記二次元コードを示す画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段により取得された画像から、該画像で示される二次元コードにおけるセルそれぞれに付けられたマークそれぞれの色を特定するセル特定手段と、
前記セル特定手段により特定されたセルの色に基づいて、前記二次元コードにおける1以上のセルからなるセル群に付けられた色または色の組合せに対応する情報それぞれを、1以上のセルからなるセル群の色または色の組合せと情報との対応関係が登録されたデータベースに基づいて特定し、該特定した情報それぞれを、前記画像取得手段により取得された画像で示される二次元コードから識別される情報群として取得する情報取得手段と、を備えており、
色成分の分布を表した多次元空間内において、それぞれ多次元領域として拡がる複数の成分領域内における特定の座標で表される成分のそれぞれが、前記情報色の成分または前記組み合わせ色における各色の成分に対応し、
前記複数の成分領域内における前記特定の座標で表される成分は、少なくともシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色成分を含み、
前記セル特定手段は、前記二次元コードにおけるセルそれぞれに対して、該セルに付けられた色の成分がいずれの前記成分領域に分布されたものであるかを判定し、該判定した成分領域における特定の座標で表される成分の色を、そのセルに付けられた色であると特定する
ことを特徴とする二次元コードリーダ。
【請求項9】
コンピュータを、請求項5乃至8のいずれか一項に記載の二次元コードリーダが備える全ての手段として機能させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−76587(P2011−76587A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92784(P2010−92784)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【分割の表示】特願2009−227617(P2009−227617)の分割
【原出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(504312966)
【出願人】(505302786)
【Fターム(参考)】